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1952-12-24 第15回国会 衆議院 通商産業委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月二十四日(水曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 小金 義照君 理事 高木吉之助君    理事 河野 金昇君 理事 今澄  勇君    理事 永井勝次郎君       中峠 國夫君    福井  勇君       福井 順一君    村上  勇君       宇田 耕一君    高橋 長治君       長谷川四郎君    山手 滿男君       伊藤卯四郎君    加藤 清二君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         通商産業大臣 小笠原三九郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       小平 久雄君         通商産業事務官         (鉱山局長)  川上 為治君  委員外出席者         大蔵事務官         (理財局総務課         長)      吉田 信邦君         参  考  人         (日本鉱業協会         会長)     羽仁 路之君         参  考  人         (全国金属鉱山         労働組合連合会         委員長)    原口 幸隆君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 十二月二十三日  委員峠國夫君、村上勇君及び木下重範辞任  につき、その補欠として永野護君、前田米藏君  及び風見章君が議長指名委員に選任された。 同月二十四日  委員永野護君、前田米藏君及び風見章辞任に  つき、その補欠として中峠國夫君、村上勇君及  び木下重範君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 十二月二十三日  中小企業等協同組合法の一部を改正する法律案  (今澄勇君外十二名提出衆法第二一号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  中小企業等協同組合法の一部を改正する法律案  (今澄勇君外十二名提出衆法第二一号)  鉱業に関する件  貿易に関する件     ―――――――――――――
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより会議を開きます。  本日はまず付託になりました中小企業等協同組合法の一部を改正する法律案議題といたし、提出者より提案理由を説明願います。今澄君。
  3. 今澄勇

    今澄委員 ただいま議題と相なりました中小企業等協同組合法の一部を改正する法律案について、その提案理由を御説明いたします。  終戦後七年有半をけみしまして、待望の独立を迎えましたが、政治上の独立を確立いたしますためには、経済自立の裏づけが必要であることは、贅言を要しないところであります。このためには、我が国経済の基盤を形成するところの中小商工業に対して、その育成振興を強力に具現いたさなければならないこともまた多言を要しないところであります。  しかるに、わが国中小企業は、資本力が脆弱であるのみならず、経営、技術の面においても不合理な点が多く、かかる欠陥が循環的に資本力の脆弱さを倍加いたしておるのが実情でございます。従つて国内外経済情勢変動の影響を最も敏感に受けやすい立場に置かれながら、財政、金融税制等中小企業を囲繞する外的な諸条件の合理化努力しなければならないと同時に、中小企業者自身もまた相互扶助精神に基く協同組合を組織し、団結の力によつて企業経営内容健全合理化をはかるための自立的、積極的な努力をもいたさなければなりません。  この組織化協同化に関する基本法として生誕いたしました、昭和二十四年法律第百八十一号中小企業協同組合法は、いわば中小企業基本法典とも申すべきものでありまして、公布以来三年有半本法に基く中小企業者組織化は着々として進捗いたし、その間法の不備を補い、短を改めて、今日に至つたのであります。  しかるに組合員相互自家保険に関しては、戦後の損害保険業者の独占的かつ高率保険料強行の重圧より免れんとする中小企業者自己防衛的手段として、爾来各地に保険組合運動、特に火災共済運動消費生活協同組合法に準拠し、あるいはまた中小企業協同組合またはこの連合会附帯事業として営まれまたは営まれんとする形勢が生じて参つたのであります。  このことは本法制定当時、関係者の間で、本法第七十条第一項第三号の事業協同組合事業中「組合員福利厚生に関する施設」の解釈につき、組合員相互保険に関する事業を包含するやいなやについて相当の論議があつたのでありまして、中小企業者の意図する相互協同精神画龍点睛を欠いたうらみを残したまま今日に至つたのであります。この際現行法規のあいまいな表現を一風し、中小企業等協同組合法中にあらためて火災保険組合及び火災保険中央会に関する条項を追加改正せんとするのが、本法律案提出の趣旨であります。次にその大要を申し上げます。  第一に、保険組合は、都道府県を区域とした地域組合に限定いたしました。これは保険そのものの性質から考え、危険を単位地域を現在の行政単位区域にまで拡大し、リスクの分散をはからんとするのがねらいであります。  第二に、組合員の資格に関しては、農林畜水産業者を除く中小企業者及びその従業員を対象とし、員外利用を認めない方針といたしたのであります。  第三は、中小企業者範囲の限定でありますが、これは、中小企業等協同組合法に規定する中小企業者範囲と同一といたした点であります。  第四は、保険の種類でありまして、これは人の生命または身体に関する事故による損害を除き、火災によつてこうむる損害を補填するための相互保険事業保険組合が営み、その再保険事業が同中央会が行うのであります。  第五は、保険組合は、非出資組合である点であります。  第六は、保険組合設立認可に関する事項を規定した点であります。これには厳重な保証要件を求めることといたし、一、地方公共団体または金融機関組合火災保険事業に要する資金を保証すること。二、保険会社または火災保険組合中央会において再保険を引受ることのうち、いづれかを具備しなければならないことといたした点であります。  第七の点は、保険組合に対する監督は、通商商業大臣の所管とし、その保険事業については、保険業法適用除外といたしたことであります。  以上が改正案の主要な点であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  4. 坪川信三

    坪川委員長 以上をもつて本案提案理由の説明は終了いたしました。本案に対する質疑は次会において行うことといたします。     ―――――――――――――
  5. 坪川信三

    坪川委員長 次に鉱業に関する件、特に産金政策に関し調査を進めたいと存じます。  この際お諮りいたします。本件に関しまして、日本鉱業協会会長励仁路之君及び全国金属鉱山労働組合連合会委員長原品幸隆君を参考人といたし、その意見を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 坪川信三

    坪川委員長 御異議がなければ、さよう決定いたします。  それでは、まず参考人より、産金事業現状及びその対策に関しまして意見の御陳述をお願いいたします。御意見の御陳述はお一人大体十五分以内にお願いいたしたいと存じます。まず日本鉱業協会会長加仁路之君、次に全国金属鉱山労働組合連合会委員長原品幸隆君の順序をもつて参考人よりの御意見をお願いいたしたいと思います。日本鉱業協会会長羽仁路之君。
  7. 羽仁路之

    羽仁参考人 私は、ただいま御紹介にあずかりました日本鉱業協会会長羽仁路之でございます。本日国会におきまして通産委員皆様方に親しくお目にかかりまして、産金業界を代表しまして、産金に対する私どもの所信を申し述べる機会を与えられましたことを感謝いたします。  戦前産金はなばなしい時代には、年産約二十六トンの生産をあげまして、外貨決済上輝かしい歴史を持つて、いましたわが国金山が、戦時中政府強制整備にあいまして、それから後今日に至つてもなおきわめて悲惨な状態に苦んでおりますことに関しましては、すでに業界からもしばしば陳情され、また言論機関からもたびたび報道しておりますので、諸先生方におかれましても御承知のことと存じます。私はここにあらためて金山窮状をるる申し述べますことをやめまして、今日わが国金鉱業が当面しております問題点と、これに対応するわれわれの要望を簡単に申し上げまして、これを国会においてすみやかにお取上げくださるようお願いいたしたいと存ずるのであります。  まず今日わが国金山が当面いたしております問題点のうち、最も重大な事柄として、二つを指摘いたしたいと思います。  第一の点は、政府昭和二十五年二月に、金鉱業復興対策に関する件を閣議決定いたしまして―これはお手元にお配りいたしました陳情書の十ページにあります通り経済安定本部、大蔵省、通商産業省の共同発表でございまして、近い将来における国内産金重要性を考慮して、金鉱業の健全な復興をはかることを決定しましてこのためには設備の復元資金の融資をあつせんする、また探鉱を促進するため探鉱奨励金を交付する、また税金も軽減するし、鉄道運賃割引をする等、一連の奨励策をきめて、当時休廃止中であつた金山の復活を慫慂されたのであります。産金業者政府のこの施策に正直に順応いたしまして、時あたかも銅、鉛、亜鉛等価格差補給金の打切られた直後のきわめて苦しい経営状態の中から、とにかく資金を調達しまして、約三十億円の建設資金を投じまして、労使努力の結果ようやく生産の段階にまで到達いたしたのであります。しかるにこのときにあたりまして、朝鮮動乱が勃発し、以来諸物価が非常に上昇して来ました。従つて産金業採算を根底からくつがえすに至つたのであります。今や金山はまつたく瀕死の状態にあるといつて間違いないと思います。いな、すでに有名な佐渡高玉春日荒川河津等の大金山ばかりでなく、中小金山が相続いて休山あるいは縮小を行つておるのであります。これにもかかわらず、政府は何らこれに対し救済の手を打つていないということは、まことに心外にたえないのであります。政府が三年前に奨励して、民間が追従いたして行つた三十億円の投資と、これによつて得られた生活が刻一刻と失はれつつあるのであります。このことを十分にお認めいただきたいのであります。  第二の点は、金の価格は十八年間もすえ置かれているということであります。御承知通り、金の政府買上げ価格は、一九三四年にアメリカで公定した一オンス三十五ドルが基準となつています。これを円に表示しますと、その後の為替相場変動が作用しまして、三百六十円レート決定に伴いまして、昭和二十五年三月以来は四百一円に決定いたしていますが、その元は十八年間すえ置きであります。ドル物価でさえ、この間に二倍半以上の値上りをいたしておるのであります。その上、わが国では朝鮮動乱勃発以来だけでも七割の物価騰貴であります。こういう状況金山現実に成り立つはずはありません。外国でもこの関係にかわりはありません。アメリカでは産金奨励策はとつておらないのでありますが、他の産金国ではそれぞれ税金大幅免除運賃割引補助金交付等助成策をとつているのであります。最近の情報によれば、カナダでは一オンス三十五ドル公定価格に対し、最高一オンス十三ドルまで補助金を出すことになつているようであります。ひとりわが国だけが、富裕国であるアメリカ並産金政策とらなければならないということは、われわれ業者としては納得できないのであります。朝鮮動乱以来、金物景気で、銅、鉛、亜鉛というような金属を兼営いたしております会社は、とにかく金山赤字ではありますけれども、維持して参つたのでありますが、すでに金物景気も頂上を越しまして、各種の金属は値下りをいたしました。どうしてもこの赤字金山経営できない。勢いそういう鉱山会社金山整理縮小をしなければならぬという状況に相なつたのであります。ところが金山専業としております業者の場合には、まつたく悲惨なものでありまして、銅、鉛、亜鉛等鉱山が非常に盛況でありました間も、同じ地下産業でありながら、まつたく赤字に苦しんで参りまして、低賃金支払つてじつとがまんしながら抜き掘りを敢行して参つたのであります。従つて鉱山の寿命を縮めて参つたのであります。その抜き掘りも今日ではすでに限界に達したのでありますが、会社を存続させるためには金山の閉鎖、縮小を行いたくとも、それさえもできないというような状況でございます。こまかい数字的なことは資料にございますが、代表的な専業の六社について見ますと、採鉱鉱石金品位全国金山平均が七・二グラムに対しまして、十グラム以上を掘つておるのでありますが、それでありましても年間約一億以上欠損を生じておるのであります。これは借入金とか、あるいは未払金で食い延ばしておる状況であります。そうしてすでに賃金支払いにさえ非常に難渋をして参つておるのであります。またさらにこれらの鉱山では、現状で操業しております限り、抜き掘りをいたします結果、埋蔵金星の四分の三が採算圏外に捨て去られておるのでありまして、資源愛護観点からもまことに大きな問題と信ずるのでございます。  以上私は金山の当面の問題点につきまして申し述べたのでありますが、それではさしあたりこの窮状を是正いたしますにはどういう対策をお願いしたいか、三点ばかりについて申し述べたいと存じます。  第一は、金の政府強制買上げということは、金の持ちます本質から見てまことにやむを得ないのではないかと思うのであります。しかし強制買上げをされます以上は、ただいま普通の金山平均コストが七百七グラムといたしまして、六百七十円程度かかるのでありまするが、一般市場価格は六畠ないし六裏声、われわれとしても金山合理化目標といたしまして、大体六百円を目標といたしておるのであります。政府買上げがただいま四百一円でありまして、二百円内外のコスト割になるのであります。少くとも政府強制買上げをされます以上は、この強制買上げ数量に適応いたしましてその補給をしていただきたい。  第二点は、ただいま政府買上げ四百円と申しますのは、一オンス三十五ドルを三百六十円レートで換算いたしたものでありますが、それに対しまして四円の手数料をとつておられる。換算いたしましてちようど四百五円になるのでありますから、その手数料のごときは政府の方で負けて四百五円で買上げを願いたい。グラム四円でありますので、これは一トンにいたしまして四百万円、六トン出すといたしますれば二千四百万円の少額にすぎぬのでありまするが、今日金山が血の出るような経営をしておるのでありますから、せめてこれだけの四円の手数料は当特われわれの方に返していただくということをお願いいたしたいのであります。  第三の点は、各国とも国際通貨基金で昨年加工用金自由販売を認めたのであります。それに追従いたしまして政府に要望いたしました結果、本年五月から加工用金販売を認められたのでありますが、これに対しまして使用範囲制限が非常についておるわけであります。しかるに一般市場には金の製品、たとえば金側時計というものが非常に氾濫しておるのであります。これは無税か脱税か、あるいは密輸入とかいろいろな方面から入つて来る金が使用されておるのでありますが、大蔵当局の見解によりますと、日本産金をそういうぜいたくに使うのは妥当でない、こういうような意見使用制限をまだ厳重に励行されておるのでありますが、事実はかくのごとく市場には金製品が氾濫いたしておる、従いまして、われわれといたしましては、ぜひ加工用金使用制限範囲を拡大して、これを自由にしていただきたいということを要望いたしたいのであります。同時に、ただいま加工用金の値段が五百十五円に頭を押えられております。世界各国とも、いずれも加工用金販売は大体自由にいたしておるのでありまして、これについての最高価格制定は大体ないようであります。この点につきまして、加工用金使用制限を廃止していただくと同時に、最高額を自由にさせていただきたい。もし万一、使用制限は拡大してもよろしい、しかし価格の点は引続き押えるという主張でありますならば、これに対しまして、政府買上げのものと同様五百十五円と六百円の差額の分は、助成策として補給をお願いしたい。ただいま金の方におきましては産金奨励意味探鉱奨励金というものが二十七年では八千万円ございます。この探鉱奨励金という形式でさしつかえないと思うのでありますが、産金助成という意味探鉱奨励金形式補給金を出していただきたい。六百円と政府買上げ差額、並びに、加工用金をもし制限されるならば、その最高価格一般に認められている大体六百円というものの差額、この補給をお願いしたいというわけであります。その数字はただいま資料としてお手元に差し上げました表によりますと、かりに三分の二政府買上げ、三分の一が加工用金というふうになりますれば、大体九億程度になるわけであります。加工用金範囲に三分の二、政府買上げ三分の一ということになりますればそれはさらに減るわけであります。大体われわれの業界の希望といたしましては以上三点であります。これにつきましては、特に本国会におきまして二十八年度予算の審議も聞もないということでございますので、金奨励補給金助成金という問題につきましては特に速急に御考慮をお願いしたいということを申し上げまして、鉱業協会の代表としてのお願いをいたします。
  8. 坪川信三

  9. 原口幸隆

    原口参考人 私は全鉱の原口でございますが、現在当面する金山整備に伴う労働不安を鉱山労働者を代表いたしまして一言述べさせていただきたいと思います。  金山窮状については、前国会を初め再三にわたつて請願採択によりまして御周知のことと存じますが、現実政府施策とわれわれの要請とはあまりにも大きな懸隔がございます。そして現在金山はいささかもその窮状が打開されず、かえつて事態は一層窮迫しておる状態であります。すなわち金山打開のために政府が施行されました唯一の方策は、本年八月加工用金価格引上げ、すなわちグラム五百十五円、産金業者手取り五百四円になりますが、これでありまして、この施策決定いたしますと同時に、われわれ労働者にとつては非常に不幸な事態が起つたのであります。すなわちそれまでは労使双方とも将来の政府の明るい施策に期待して、金山経営に対し、低賃金に甘んじながら生産に従事して来たのでありますが、この政府施策決定されますや、有名な佐渡金山を初めとして春日高玉荒川河津などの有力金山が一斉に休山、廃山になりました。そうして企業整備が断行され、さらに串木野金山探鉱停止奨励金の返上を決定したのであります。さらに多くの小さな金山操業停止は数限りないのであります。沼ノ上、大谷、津具、土肥、山ケ野、大口、鯛生、千歳などの金山窮状はますます深まり、最も有望とされております伊豆の持越金山採鉱を停止するに至つたのであります。戦前においては五百ないし六百の金山がございましたのが、昨年においてはわずかに六十八を数えるに至り、本年はさらにそれが六十に低下しております。この六十のうちでも大企業に属するものが十ありまして、あとの五十鉱山が純然たる中小鉱山でありまして、この前途は非常に憂うべきものがあるとわれわれは考えております。さらに労働賃金の面においても現在鉱山坑外ベース平均は約九千三百円ないし九千七百円になつておりますが、金山平均ベースは非常に低く、約二千円の差がある約七千円のベースしかありません。さらに年末に際してのいろいろな諸手当を合計しても、ほかの鉱山労働者の半分にも満たないのが現況であります。この現象は、今までの政府施策を待望して苦痛に苦痛を耐え忍んで来た労使双方が、期待とあまりにも相違した施策に絶望した結果、経営者前途に対する経営見通しを放擲して、山を休廃山ないしは縮小停止せざるを得なくなつた結果であろうと考えます。もちろん労働組合としては経営者に対し事業継続を熱望しておるのでありますが、残念ながら経営者においては今後の事業経営見通しがないという理由のもとに、以上の措置をとつて、現在非常な労働不安を起しておるわけであります。すなわちこの内容とするところは、現在の一グラム当り生産原価は、鉱山局において調査したところによれば、一グラム六百四十円かかる。物価局調査によれば六百六十九円かかる。それが先ほど申し上げたように、わずかに加工用金価格引上げですら五百十五円というような低額であるように、非常な差額を生じておるわけであります。一グラム当り二百円前後の赤字は、年産金量六トンといたしますと、十二億円の巨額に達します。企業赤字自由経済下においてはときにはやむを得ないこともあるでありましようが、金の場合は政府が依然として生産販売価格等に厳重な統制を一方において施行しておきながら、産金業に関する限りは政府の責任であり、政府産金業赤字経営休廃山の窮状から救済する義務があると私たちは考えております。金山赤字の最大の原因は、戦前と比較して、一般物価が三百五十倍になつたのに対し、金の公定価格は百三十二倍、約三分の一にしかすぎません。すなわち現在の四百一円という低い公定価格アメリカの一オンス三十五ドルという公債見合つてくぎづけにされておるという事実に基いております。     〔委員長退席小金委員長代理着席世界の金の大半、すなわち二万二千トンを保有するアメリカ金政策は、金価格を維持して、インフレを防ぐ点にあり、そのためにも、他国の産金の減少を顧慮しない面がありますし、他方アメリカ以外の産金国では、ドル不足貿易収支のアンバランスから、産金奨励に大わらわでありますが、三十五ドルアメリカ公債ではとうてい採算が合わず、アメリカ並び国際通貨基金などの意向にさからつてまでも実際には種々の奨励策を講じているのが現況であります。さらに公債引上げのためにも努力が傾注され、過般の通貨基金年次総会においても公債引上げが強調され、英連邦首相会議重要議題ともなつておるわけであります。日本においては占領当時はアメリカ金政策への絶対隷属に終始し、占領後も通貨基金加入不完全独立の印象を与えるアメリカヘの気がねから、根本的な産金対策は樹立できず、二十五年閣議決定を見ました金鉱業復興対策に関る件という問題もまつたくそのまま実地に移されず、閑却され、業界労使をあげての陳情請願にも何ら有効適切なる方策が講ぜられず、今年の夏に至つてようやく加工用金価格引上げがわれわれの失望裡決定されたわけであります。われわれの望むところは、いかに金山が危機にあるとはいいながら、社会的に公正妥当でないものを望んでおるのではありません。かかる観点から、産金対策労働組合立場から次の方向に推進されることを御要請申し上げる次第であります。第一には、探鉱奨励金の増額と支給方式の変更であります。平均生産原価平均販売価格との差額産金業赤字であり、要補償額でありますから、これを探鉱奨励金として交付すること。金額年間十億円であります。これは生産量に見合う探鉱義務とし、生産実績に応じて支給するものであり、この間の手続並びに監査を簡素化していただきたい。第一が重大な問題でありまして、第ニには、政府買上げ金価格引上げ。これは先ほど業者の方も言われたように、対米写真相場の四百五円にしてもついたい。つまり現在は四百一円で、その差額政府負担とする。しかしこのくらいの金額は非常にわずかでございますが、政府買上げ金価格引上げをしてもらいたい。  第三番目には、加工用金使用制限緩和割当数量の増加であります。この点は数日前に多少加工用金の幅が広がつたように聞いておりますが、さらに加工用金使用制限緩和割当数量の増加を要望し、この運営にあたつて不当なる、結果において矛盾を来すごときことのないような措置を御考慮願いたいということであります。  第四番目には、金山整備合理化資金の融資あつせんであります。昭和十八年の金山整備による設備の転用と休山という国策犠牲により金山の荒廃ははなはだしく、その後の施策貧困のため金山の痛手はいえず、今や戦後最大の危機に遭遇したのでありますが、とりあえず前三項の応急救済策によつて操業を維持せしめる一方、恒久的基本対策としてこれが自立態勢を確立せしめるための設備合理化を企図する必要があると考えます。合理化の方向としては、青化製錬所及び浮遊選鉱場の復元と送電線の建設でありまして、これが所要資金はさしあたり四十二億一千三百万円をもつて二十五鉱山に振り当てようとするものであります。最大のネつクは資金であり、しかも長期低利資金を要しますから、どうしても政府あつせん融資でなければなりません。  最後に、金鉱業に対する固定資産税、法人税、所得税の免税等について特別の御配慮が願いたい。以上でわれわれの要望する主要点を終るわけでありますが、金山休廃止に直面しているわれわれにとつては、重要な労働問題の様相を呈しておりますのみならず、将来の日本における産金の持つ重要な立場からも、政府施策による犠牲産業たる現在の産金業に対し、すみやかに公正かつ妥当な対策を確立されることをお願いする次第であります。統制経済的な施策を行つている以上、十分その裏づけを政府自体においてされたいと考えるわけであります。もしそれが不可能であるならば、金に対する一切の統制を撤廃されることを要請いたしたいと思います。  以上のことを申し上げまして、皆様の御理解ある御協力によりまして、われわれの当面する労働不安のみならず、将来の金属鉱山全体の復興のために御努力されんことを最後にお願いいたしまして、私の陣述を終りたいと思います。
  10. 小金義照

    小金委員長代理 以上をもつて参考人よりの御陣述は終りました。この際大蔵当局からの出席をぜひとりはからうようにいたしたいと思います。  これより質疑に入ります。質疑の通告がありますから順次これを許します。永井勝次郎君。
  11. 永井勝次郎

    ○永井委員 ただいまの参考人のお話によりまして、大体日本産金事業が瀕死の重症にあるという事情の輪廓だけは了解することができたわけであります。そこで協会長羽仁さんにお尋ねをいたしたいのでありますが、加工金を三分の一ないし三分の二自由にするということによつて動かされる金額はどのくらいであるか、それによつて赤字の補填がどのくらいできるのであるか。それから四百一円の政府買上げアメリカへ現送すると仮定しての、金利とか運送賃とか梱包とか、それぞれの所定手数料の差引によるもののようでありますが、現実にそういう金が送られているのかいないのか。送られているとすれば、そういう協定のもとにそれだけをとつてあるのか。不当に政府が差引いておるという結果になると思いますが、この点をひとつ伺いたい。  それから終戦後GHQが接収しておりました金が、日銀及び政府に返還された。この返還された金に対する再評価によるところの時価相場によつて、浮かされる金額がどのくらい見込まれるか、こういう諸点についてお答えを願いたい。
  12. 羽仁路之

    羽仁参考人 お答え賭し上げます。     〔小金委員長代理退席、委員長着席〕 加工用金はただいま三分の一でありますが、三分の二に上るといたしますと、ただいま四百一円で政府買上げて、加工用金としては五百十五円で売渡しておるのであります。大体グラム百円の差があるわけであります。しかして全然自由になりますと、加工用金が三分の一上る場合はプラスが一億七千万円だけふえる。また三分の二の場合は五億七千万円ふえる。それから四百一円に対する現送費でありますが、これは現実には大体現送費に若干手数料が入つておるそうでありますが、新しい産金の現送ということは、ただいままで聞いておりません。従いまして現実には、ただいまのところでは現送費は払つておらぬというように考えております。それから評価差額の問題でありますが、これは数量及び評価額をただいまはつきり承知しておりませんので、あらためてまた資料として数字を申し上げます。
  13. 永井勝次郎

    ○永井委員 大蔵省の方にお尋ねいたしますが、政府昭和二十五年に産金奨励の方針を公表したのであります。しかし具体的な方途はまだ示されていないのでありますが、産金事業を奨励し、増産しなければならぬという方向は示されたわけであります。その後実際に、産金事業は現在瀕死の重症にある。奨励の声明と実態とは非常な食い違い、矛盾を来しておるが、この矛盾を大蔵省はどう見ておるのであるか、そうしてこの矛盾をどういうふうに調整して、産金奨励の実績をどういうような方途によつて上げようとしておるのであるか、その具体的な内容、方針について伺いたい。
  14. 吉田信邦

    ○吉田説明員 お答え申し上げます。産金の問題につきましては、大蔵省といたしましても大いに生産の増加することを期待しております。しかしながら実際問題としてわが国産金事業は非常に高いコストのかかる現状にございまして、いわば海外の相場の関係等から申しまして、コストは非常に割高な関係になつております。従いまして生産を維持するについては、いろいろな困難があるわけであります。若干ながら探金奨励金というような道も開かれたわけであります。しかしそれのみではなかなか十分な生産を期待することは不可能でございます。今までのところ、産金のうち約三分の一をいわば市販用と申しますか、そういうような用途に充てて、これについては一般為替相場から裁定される四百五円という基本的な価格とは別に、より高い値段で売却できるような形がとられております。最近における生産は漸増の傾向にございます。また国民生活も漸次向上して参つておる今日、いたずらに金の使用制限するという形をとつておりましては、いわば密輸品の増加その他の形で結局日本の金関係の産業自体が悪影響を受けるという現状にありますので、今回第三・四半期からは今までの市販の量を倍にして、一方にはそういつた金関係のいろいろな産業の維持育成という方面に資するようにいたしますとともに、他方におきましては金鉱等におきまして、今まで高いコストのために採算が合わなかつた点が、これによつて相当の部分が救われるという方途をとりたいと考えておる次第でございます。たとえて申せば、今までこれらの市販用の金につきましては年額約三トン程度を見込んでおりましたが、これを五トン程度に引上げるという考えでございます。そういたしますと今までグラム当り四百九円で政府が払い出して、それを五百十五円で売つておりました。この間に、これらの市販用の金については、五百十五円引く四百九円ですから、一グラム当り百六円の差があつたわけであります。これの量が今までの三トンから五トンにふえるということによつて、相当程度今まで損失をカバーすることができるのではないかと思うのであります。なお政府買上げ価格につきましても、従来金現送料等を見込みまして、さらに造幣局等の手数料として四円を加算いたしまして、結局四百一円で買い上げ、四百九円で売るという形をとつておりましたが、これにつきましても四百五円で買い上げて、これを払いもどす際に四百七円で払いもどすというふうな改正をいたしたいと存じております。これによつてグラム当り六円、いわば産金関係の手取りがふえることになります。以上のような措置によりまして極力今のコストのアンバランスを是正するよう努力いたしたいと考えております。
  15. 永井勝次郎

    ○永井委員 先ほど産金関係業者からの話によりますと、日本産金コスト標準一グラム六百円というにらみをもつて企業合理化をはかつて行く、こういうふうに努力をして行くということでありますが、現在はそれ以上に生産コストが高い。ところが政府買上げは現在四百一円、不当に従来しぼりとつていた価格の部分を政府が全部はき出して直すとしても、一グラムについて五、六円の増額にしかならない。さらに加工金として相当量そのわくをはずすといたしましても、一グラムについて百円内外の増額にしかならない。いずれにいたしましても、現在生産されているコストから見ると相当下まわつており、赤字生産以外にはできないという実情にあるわけであります。小手先のそういう価格の若干の動かしだけで現状産金事業を維持して行くことはもちろんできませんし、また現在やつておる方法が、含有率の非常に高いところだけをねらつてようやく事業を維持しておるという状態で、不健全な実態であります。こういうような実態の上に立つて政府はやはり単に政府買上げ価格を若干引上げる、あるいは加工金としてわくを若干はずす、従来の不当な強制のわくをはずすにいたしましても、事業そのものの維持あるいは助長、あるいは増産計画というような段階まで踏み込んでいないのでありますが、さらにどういうような方法によつてこれらの赤字差額を補填して、産金振興の方向へ盛り上げて行くのであるか。そういう一つの経過的な措置を明確にせられたいと思います。
  16. 吉田信邦

    ○吉田説明員 ただいまお話がございましたように、金関係コスト価格の問題は、いろいろ重大な問題を含んでおります。しかしながら金の価格も、世界市場価格等を見ますと、いわゆるアメリカ等の公定は四百五円でありますし、またやみ市場等の価格にいたしましても、四百五十円前後というようなところでございまして、これを六百円、七百円という価格をつくるということになりますれば、当然密輸等の漸増という形になつて参りまして、そういう価格を維持することもできないし、またそういう生産を長く続けるということも実質的にはかなりの困難が出て来ると思います。現在の鉱山コストといたしましても、安いところはもちろん四百五円以下のコストでまかなわれるところもございますし、また七百五十円という高いコストのところもあるように思われます。しかしながら金の生産につきましては、やはり金とあわせて銀、銅等の産物が出るわけでありまして、これをどういうふうに組み合せれば得であるかといえば、ある鉱山においては金じやあまり得ができぬが、一緒にとれるところの銀でよいとか、あるいは銅でよいとかいうようなことで進められておるところが多々あると存じます。従いまして現在の日本のような貧弱な鉱山の場合におきましては、やはり金だけで独立して、それだけでも十分に採算が合うというふうにすべてが行くことは困難なのでありまして、あるいはそれと一緒にとれるところの銀、銅等のコストが非常に安いとか、そういうようなところに採算点が見出され、また採掘が進められるのではないかと考えております。従いまして全体として六百円、七百円というようなコストを維持するように、またそこまで掘れというところまで進むことがはたして国民経済的に言つて有利であるかどうかという疑問もあるのでありまして、逆に言えば、金を輸入した方がずつと国民としての負担も安くなるのだというような形にもなつて参ります。しかしながら金を輸入するというようなことは、もちろんできるだけ避けるべきことではありますが、いろいろな観点からいつて、一概に金を増産するからといつて、どんな高いコストでもよいから金を掘れというようなことはできませんし、またコストアメリカから来る四百五円のものよりも上まわるからといつて、それだからそんなものは出さないでよいのだというようなことは言うべきではないのでありまして、戦時中に荒廃した鉱山でもございますので、漸次合理化なりあるいはくふうの進め方によつてコストを下げて行き、まあこれならば戦前状態に復活してやつて行ける、そうして日本といたしましても旧来からあつた鉱山が維持できるというような程度のところに目安を置くべきではないか。そういう点から申しますと、ただいま申しましたように、市販用の金の範囲を拡大して、それによつて鉱山採算を救うという方法、あるいはわずかではありますが、政府としてはなるべく犠牲を払つて、金の現送料とかその他の手数料とか、いろいろなものが見込まれておりましたが、そういうようなものについては、なるべく政府自体でまかなうという方向で極力解決をいたしたい。また同時に従来の探鉱奨励金というようなものも、他の一般補助金補給金のような形のものと見合つて、全体の見地からできることはすべきではないかというふうに考えておる次第でございます。
  17. 今澄勇

    今澄委員 関連して一言御質問申し上げますが、今のあなたの説明によると、日本産金政策に対する大蔵省の考え方は、場合によれば安い金があればアメリカから輸入してもよいのだというようなことは、まことに私は聞き捨てならぬと思います。ちようど通産政務次官もおられますのでお聞きいたしますが、今日の造船においては、トン当りの鉄鋼の値段が外国に比べて二万円くらい高い。この二万円のコスト高で、日本の造船工業は諸外国とはなかなか太刀打ちができない。されば造船工業はなくなつていいのかということになつて来ると、断じてわが国はこれを守らなければならぬ。その意味において、日本鉱山鉱業政策の全般について私は聞きたいのですけれども、本日は産金事業になつておりますから、それに関連して産金についてお伺いいたします。通産省は国内産金事業を育成、保護助長するのか、それとも外国市場との競争でつぶれてもいいのかどうかという基本的な政策があればひとつ明らかにされたい。  第二点はもし国内産金事業を保護する立場をとるならば、今日の産金鉱業について、通産省は助成金を出してこれを保護するような対策を立てられるものかどうか、これに対する通産政務次官の御答弁を聞いてから大蔵省の方にお聞きしたいと思います。
  18. 小平久雄

    ○小平政府委員 今澄委員のお尋ねは、鉱山、とくに金鉱山対策について通産省は根本的にどう考えておるかというのが第一点でございますが、通産省といたしましては、もちろん広くわが国産業の育成ということが一大任務であります。またなるほどただいまのところは金そのものが通貨のもとにはなつておりませんが、われわれとしては長い目で見たとぎに、国際決済の手段としての金、あるいは広く一般民生のための金ということにつきましては憂慮いたしておりますので、これをどこまでも助長いたして参りたい。少くとも企業として成り立つところまではわれわれといたしましてはめんどうを見て参りたいと考えております。先ほど来いろいろと企業者あるいは従業員の代表の方、さらにはまたただいま大蔵省当局の説明もあつたのでありますが、通産省といたしましては、先ほど鉱業界の代表あるいは組合の代表の方からお話がありましたような大体の線に沿うて大蔵省と折衝いたしておるわけであります。今回の措置によりまして、市販分が従来の全生産量の三分の一から三分の二に拡大いたされましても、市販の価格が五百十五円のところにすえ置かれるということになると、金山全般でも大体六億前後の赤字になるのではないかと推定されますので、われわれといたしましては、探鉱奨励金としてぜひ大蔵省にも出していただき、そうすることによつて金山が少くとも企業としての維持ができるように今後とも努力いたしたいと考えておるのであります。助成の点はただいまあわせて申し上げましたが、一にかかつて今後探鉱奨励金を大蔵省でどの程度まで認めてくれるかという点に重点が今日の段階においてはあるのではないかと考えております。
  19. 今澄勇

    今澄委員 私はただいまの通産政務次官の答弁をまことに至当なものと思います。少くとも今日の日本国内産業全般にわたる通産省の方針について、大蔵省の所管する金の問題だけについて大きく協力しないということになると、日本全体の鉱業計画のバランスはくずれる。そこで大蔵省にお尋ね申し上げますが、私どもも予算の編成あるいは各省査定のいろいろな問題に関する大蔵省の権限等、特に日本の現下の行政機構においては、大蔵官僚というものがあまりにも日本の国の政治全般に対して干渉をし過ぎる傾向があると私は思います。だからあなたが今言われたように、もし安ければ外から金を買うなどという見解は、日本鉱山関係にいささかでも知識を持つておるところのわが国の産業を思うものにとつては、まことに聞き捨てならない大きな失言であると私は思います。大蔵省はすべからくこの日本の産金鉱業については、私は造船工業、もう一つは鉄鋼、銑鉄、これらの鉄鋼工業等の諸外国と太刀打ちのできない基幹産業について財政投資なり、国の助成金が私は必要であると思いますが、どうも金山については、探鉱奨励金という形で出ておるのであるから、これを今政務次官が申されました六億という数字は、当委員会においても私どもは研究して妥当であると思つております。大蔵省は一体この奨励金については、幾ばくの金額を出すつもりでおられるか、そうしてまた金の輸入をするなどというような、わが国の産金鉱業をして、もしこれを枯渇せしめるならば、将来世界が金決済に入つた場合においては、日本は重大なる不利を招くということに相なるのでございまして、私どもは将来の貿易決済のあり方並びに日本の産金鉱業の将来のために、大蔵省の―あなたは課長さんのようでございますが、ひとつもう少し視野を大きくして御答弁を願いたいと思います。
  20. 吉田信邦

    ○吉田説明員 ただいまの私の発言につきまして誤解が生じましたことを非常に申訳なく存じます。私は何も外国から金を輸入したらいいというようなことを申し上げる意思は決してなかつたのでありまして、そういうふうに聞えましたならば、私の言葉の足らざるところと思つてお許しを願いたいと存じます。ただ私の申し上げました点は、たとえば今の五百十五円という金の買上げ価格でございますが、これでとまらないで、六百円あるいは七百円ということが必要であるかしれません。しかしこれが六百円、七百円ということになると、密輸等が起つて、結局思わしくない結果が生じる。これはたとえば金時計等についても、ずいぶん密輸があつたようでございます。これは金の値段というよりもむしろ時計自体の値段がからんでおつたかもしれませんが、今の日本としてはどうもそういうことが起りやすい。そういう点を考えておりましたものですから、その点を申し上げたのでありまして、決してそういう意味ではないということを御了承願いたいと思います。またただいま探鉱奨励金のお話がありました。私理財局総務課長といたしまして、金を所管する立場といたしまして、実は私としては金の生産のより多からんことを願つております。またそうした意味で、でき得るならば探鉱奨励金もできるだけ多く出してもらつて、それによつてますます金の生産が進むことをこいねがつておるものでございます。ただここに主計官もお見えでございますが、私どもが金を所管するという立場から申せば、できるだけ探鉱奨励金をふやしてもらいたいということを常々要望いたしておるのであります。また別の立場の主計局としての違つた立場からすると、まだほかにもいろいろの支出の必要があるようでございます。そういつた意味から、なかなか思わしく行かないところもあるようでございます。ただいまお話のありましたように、決して思い上つて申し上げているわけではございませんので、どうぞその点は御了承を得たいと思います。
  21. 永井勝次郎

    ○永井委員 今日本の経済界の一つの悩みは、日本の商品が思う通り外国へ出ないということであります。少しやれば生産過剰になつて、仕向地がなくなつて国内にあふれて来る。それが生産過小という条件よりは、生産過剰になつて行くという条件が日本の現在当面している経済界の危機の実相ではないかとわれわれは考えている。そういうような立場からいたしますならば、国内において少しはコストが高くなつても、国内において労力をそこに注ぎ込んで、そうして無から有を生み出して来る、しかもこの生み出す条件のものが国際経済の貿易じりの決済におけるところの一つの価値を生み出して来るという、そういう対象である。こういう条件の中におきましては、今の日本の経済界の環境と、その中における日本国内の経済の条件というようなものを照らし合せて考えますならば、政府はこういう地下資源の開発等に当然金を思い切つて注ぎ込んで行かなければならないし、それがことに産金に対するところの問題であれば、特にこれらの問題を処理する基本的な方針を持つてずつと進めなければならぬ。あるときには産金を奨励するがごとく、かけ声だけをかけて、それではというので、業者が腰を切つて戦時中工場や施設をどんどんつぶされた荒廃した山を復興させて来ると、今度は買入れ価格によつてこれを強制し、しかも全然採算が引合わないような価格においてこれを統制する。片務的な形において経営内容に干渉して行く。しかも当然赤字になつて来る分に対するところの補填をしないということは、あまりにひどいやり方ではないかとわれわれは考えるのであります。従つていろいろな経済的な基本的な施策の上に立つて産金事情を大蔵省はどういうふうに考えているか、これを明確に伺いたいと思います。
  22. 吉田信邦

    ○吉田説明員 今後の生産がやや過剰になり気味であるということにつきましては、ごもつともでございます。またそういつた場合にある程度多少ペイしない仕事でも、遊んでいるのに比べれば、必要なことを大いにやらせるということは、財政事情の許す限りにおいて可能でもあり、必要でもある。結局そういう場合に政府補助金を与えるとすれば、租税負担の問題でございます。これは国民の租税にかかつて来るのであります。ほかのところで非常に安くできる物があり、そういつたところから得る利益を租税として徴収して、他の者に奨励のために配られるという形になるものではございません。そういつた意味から、おのずからそこに程度と限度はあると思います。金に関しましては、単にほかの事業とはかなり違つて、その性質からいつても、また将来の日本の国の富と申しますか、そういつた点から申しましても、非常に重要であると考えております。
  23. 小金義照

    小金委員 ちよつと関連して……。大体金鉱山の話は参考人の御意見及び永井、今澄両君の言われたことで尽きていると思います。今澄君のお話にもありましたが、大蔵省自体が思想統一かできていない。理財局は金が欲しい。主計局の方は今国民の税金を取上げて、これを鉱山の援助費といいますか、穴埋めに使うということは、これは租税だからという慎重な態度をとつておられる。これはある程度までごもつともなことである。また吉田総務課長が先ほど極端な例をあげられましたか、これは一つの例であります。その中間を行きたいというのが理財局の考え方だと思う。大蔵省が予算を編成するのに対してどういう態度をとるかということは、通産省とよく相談して、日本鉱業政策をどうするか、金鉱業政策をどうするかということに帰するだろうと思う。ところが金だけを取上げると、これは非常に鎖国的の意味がのる。秀吉の産金政策を初めとして鎖出的の意味がある。もう一つはまた金が世界的にすべて最後の決済は金でやるというような、非常に広汎な力を持つ、国際的な魔力を持つておる、こうまで言われておるのです。だから一つ金だけを取上げると、両方の極端に走りやすいから、私は金鉱業をどうして維持、育成して行くかということは、日本鉱業政策、地下資源の開発の基本的なものであるという立場からお考えを願いたいと思う。これを取上げないと、金の相場がどうだ、国際関係がどうだということだけでやりますと、目先の問題で終つてしまう。だから議論もいつまでたつても片づかない。私は十億かかろうが、十五億かかろうが、日本の地下資源の問題をどう取扱うかということから出発してもらえば、おのずから妥協点というか、帰着点はきまると思う。だから何億いるか、それらのことは議論の種になると思いますが、金鉱業者にこの際息をつかせるということばかりに重点を集中するといかぬ。金鉱業というものは、すべての地下資源開発の技術の集約されたものであり、先端を行くものである。だからこの問題を取上げるのにあたつては、ひとり金の価格ということだけに縛られずに、またそれに集中しないで、広く金属鉱業あるいは地下資源の開発という点から、金鉱業はなぜ生かさなければならぬかということをお考え願いたいと思う。そうするとおのずから出て来る。十数年前も理財局と主計局はいつもこの問題で意見が合わなかつた。これは当然な話でありますが、そこをどう調整するかが政府部内の努力だと思つております。これは今永井君や今澄君が言われたことをよく咀嚼されて御努力願いたいと思う。俗に坑夫と言いますが、今原口委員長から聞けば、労働組合の方は七千人だと言われる。錬金術その他の技術のことはよく言われますが、坑夫の持つておる技術はなかなか普通の人にはわからない。これは一定年令なり経験があつて、山の匂いによつて探鉱するのですから、これらの人たちがまた路頭に迷つたり、あるいはむやみに離職したり、休職したりすることは、山の匂いを追つてひを見つけ、坑道を切る資料を出す貴重な体験者を失つて行かなければならぬ。こういうようなことから考えますと、山で働く坑夫の身分といいますか、行く末を考えなければならぬ。こういういろいろな非常に広い意味を持つておるので、金だけを取上げてやりますと、とかく国際相場だとか、あるいは大蔵省の買上げ価格とか、あるいは自由販売の量とかいうことで議論が起りますが、大局から割り出してみると、一、二年あるいは数年のでこぼこはやむを得ないとしても、将来への大きなステツプになりますから、その脈はよく大蔵部内、通産関係というようなところで、政府当局の十分な御協議を願いたい。今通産政務次官が言われたように、維持、育成、発展の方策を立てなければならぬということはわれわれは全面的に賛成でありますから、その点を考えて、今度の二十八年度の予算等においては、十分織り込んでいただきたい、これだけ私関連して申しておきます。
  24. 永井勝次郎

    ○永井委員 加工用金は、先ほど従来の倍ほどと言われたのですが、これはやはり一定の価格をもつて数量だけを広げようというお考えですか。
  25. 吉田信邦

    ○吉田説明員 数量を広げるだけでございます。
  26. 永井勝次郎

    ○永井委員 もし政府買上げの四百五円は、国際通貨基金関係で、アメリカヘの気がねその他の事情から、これの値上げはできないとするならば、国内用に向ける加工用金の分は買上げ価格を解除して、自由販売の方途をとつたらどうか。そういうことによつて政府補助金を出さなくても、業者自体の企業技術によつて企業的な方法によつて自営ができると思いますが、そういうことのお考えはないでしようか。
  27. 吉田信邦

    ○吉田説明員 今の市販用の金を自由にするという点につきましては、これは一つの考え方として十分実行性がある問題だと思うのでございます。だから現在の国際通貨基金に加盟して、金は四百五円、またそれと関連して為替相場の三百六十円というのがきまつておる現状におきまして、四百五円は堅持しなければならないし、また通貨基金の関係で市販用が四百五円以上にできないとしても、一応できるだけ公的な機関に集めるようにというようなことにもなつております。従つて実際問題としては数量をふやすことによりまして、実際には統制の煩雑さ、うるささというものが漸次解消して行くのではないか。また産金量等の増加が出て参りますればよろしゆうございますが、さもないと同じ金の中でも、装飾用にまわつて歯医者の方にはさつぱりまわらぬとか、あるいは歯医者の方の金がえらい高いことになつてしまつて、国民の保健上重大な支障が生ずるとかいうような問題が生ずるおそれもなしといたしません。従つてこれは今後の推移に応じて、方向としては、漸次量も増し、また価格の点についても実際の市場価格に沿うように行くのが長い目で見た方向だと存じますが、さしあたります数量をふやして、需給関係等の状況を見ることにいたした次第でございます。
  28. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 吉田さんに伺うのですけれども、これに奨励金をよけい出せといつても、大蔵省では絶対よけいには出しはしない。ですから、あなたのお話のように加工用金をもつと範囲を広げてやることはできないかということと、手数料四円を撤廃するわけには行かないというようなことで行つたならば業者も幾分かそこで息をつく道があるのじやないか。だから、範囲をもつと広げることが適当かということと、四円の手数料制度を撤廃するわけに行かないかということ、これについて伺いたい。
  29. 吉田信邦

    ○吉田説明員 ただいまの御質問まつたくごもつともでございます。私どもといたしましては、今回数量を倍にいたすにあたりましては、使用用途につきましてはあまりこまかい制限はしないという立場で実は通産省その他と御協議いたしておる次第でございます。用途につきましては、一番恐れられるものは退蔵用でございまして、これは無制限でございます。あるいは、それがまた逆に密輸出とかその他の思わしからざる方面に流れるおそれがある。そういつた方面に流れることはあくまでも避けなければなりませんが、用途といたしましては、必ずしも従来のような考え方にとらわれずに、金として装飾用のものについても認めて行くようにした方がよいのじやないかというような方向で通産省と御相談いたしております。従つて現在のところはまだ御要望の数量が全額に満ちておりません。各省からの御要求についてはかなりまだ余裕がある、つまり倍にいたします関係上そういう要求が残つておるというような状況でございます。ことに日本の歴史のある金産業、今まで衰微しておつた金産業が発展する、金加工業その他の技術も進むという方向へ進まれることが望ましいので、できるだけそういう方向で、通産省その他各省の具体的な割当に対して御考慮いただきたいということで協議を進めておる次第であります。  また先ほどお話がありましたように、四円の手数料でございますが、これにつきましては今まで四百一円で買い上げておりましたのを、四百五円で買い上げることにいたしております。いわばその間の四円の金の現送料を見込んだ値段というものは削除することにいたしております。同時に今まで四百九円で還元いたしておりましたものも、まつたく実費というところまで切り下げて四百七円で払い下げることにしている次第でございます。
  30. 永井勝次郎

    ○永井委員 ただいま四百一円で買い上げていたものを四百五円で買つても、あるいは金加工用の金の数量をふやしたところで、決定的な赤字の条件というものは幾らか補填されるということで、赤字経営で出発して赤字経営で終ることは明白であります。こういう事柄に対して政府が統制を加える以上、それらの赤字経営に対する補填ということ、企業の成立ということに対して、どの程度の責任を持てるのか。この限度において企業が成り立つという目安を明確に持つていて、それができないのは業者が悪いのだ。こういう確信があつて、その価格を堅持され、統制を堅持され、そうしてこのわくからふやして産金企業の自立ができるような条件というものの手を、価格変動以外に少しも考えない。そういう現在のわくの中における基本的な考え方を伺いたいと思います。これで経営が成り立つと考えておるのか。赤字であるとするならば、赤字は背負つてしんぼうして、政府の方針だから自腹を切つてつてくれ、こういうのですか。
  31. 吉田信邦

    ○吉田説明員 なかなかむずかしい御質問でございますが、決して採算が合わないから合わないところはやめろという気持は毛頭ございません。できるだけ採算が合うように、そういうところの人もカバーできるように行きたいのでございます。大体できるならば商品としての金は自給、またその方に価格によつてできるだけカバーいたしたい。どうしてもできない部分については、従来やつております探鉱奨励金等の形をできるだけ採用いたしたい。その場合先ほどもお話がござましたよいうに、鉱山全体の問題とも関係があり、さらに広く言えば日本産業全体の問題とも関連いたしますので、どの程度の奨励金が支出できるかという点につきましては、先ほど来申し上げておるようないろいろ困難な事情がありますので、われわれとしてはできるだけその道を打開いたしたいとは考えておりますが、かといつてなかなか理想的なところまでは達し得ないという状態にあるのでございまして、今後われわれとしてはできるだけそういう方向で努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  32. 永井勝次郎

    ○永井委員 そうしますと、現在の統制を堅持して行く以上、各金山の実情によつて経営内容採算点は違うだろうけれども、その赤字の部分については、赤字の出ないように助成金を出すという方針をとるお考えでありますか。
  33. 吉田信邦

    ○吉田説明員 私の立場は非常にむずかしい立場でございまして、金を管理しているという立場から言えば、実は通産省とまつたく同じであります。大蔵省と名前がついておりますので、外から見るとその立場が非常に複雑になつて参ります。金を管理するという立場から申せば、通産省と同じような考えでおります。ただ実際問題として、まわりを見ておりますと、国民の税負担もなかなか高いし、減税もやらなければならない時代において、またほかの産業、産業のみならず現実の生活の重いもの、その他いろいろな方面の財政需要があつて、これをまかなうに主計局がいかに苦労しておるかということも知つておりますので、ひとり金だけの立場から、金にはまず最優先に確保せよというところまで言い切れない悩みがございます。全体のバランスを見てきめてほしい。しかしできるだけ多くしてほしい。そしてまた今お話がございましたような金のコスト割れの問題をできるだけ解決してもらいたいという希望を持ち、またそういう努力を続けておる次第でございます。
  34. 永井勝次郎

    ○永井委員 理財局は予算を査定する立場にございませんから、そのことはよくかわるのでありますが、金を管理し、金を統制して採算割れをしておるという実態は一番よく知つておるわけであります。従つてこういう採算割れをしておる実態のもとにおいて、価格統制を堅持して行くということは山をつぶすことであるという立場に立つて、山をつぶしてもよろしいならば現在の統制を堅持したらよろしい、山をつぶしては悪いというのならば、その赤字に対する補償はしなければならないはずであります。でありますから、そういう立場において主張されるのは当然であり、われわれは現在の統制管理が非常に不当であるる思うので、この点について質問するわけでありますから、理財局としては、みずから不統一ということの認識の上に立つならば、この不当な現実の是正のために努力する責任があるとわれわれは考えるわけであります。でありますから、赤字が現在出ておる、どのように四円、五円を動かしたところで、この赤字の補填ができないという現状においては、助成金を出すか統制を緩和するか、この二つの道以外にはないと思うのでありますが、この二つの道のどれに重点を置いてお考えになるか、とにかくもうかるもうからないは、これは別でありますが、原則として採算の合う経営を確立するために努力するお考えであるかどうか、そして努力する場合に、現在の統制を堅持して、そのかわり赤字になる部分については、会社の経理を監査した上で適当と思う助成金を出すというお考えであるか、あるいは助成金は一切出さぬ、そのかわり加工金の場合においては、相当程度の統制管理はこれを除いて、そしてその面において企業者が採算が合うように努力する、こういう二つの道のうちどつちの方向へ持つて行かれるつもりか、これをお聞きいたします。
  35. 吉田信邦

    ○吉田説明員 金の統制を解除するかどうかという問題につきましては、完全な意味で解除してしまうことはかえつて危険がある。現在の価格にいたしましても五百十五円の市販価格で、いわゆるやみ値というものはこれをやや上まわつておるようでございますが、そう二倍だ、三倍だというようなわけでもございません。従つて供給量がふえた場合に、はたしてその値段が現在の五百十五円よりもどれだけ高いところにおちつくかということについては保証の限りではございませんし、また自由になれば自由になるに従つて、国際的な密輸その他いろいろな方法で金が輸入されたりなんかするようなことにでもなつて参れば、五百十五円にしたことに伴つてかえつて逆効果を生じて来る。そういう点から言つて、完全に自由にすることは、かえつて業界のためにも、また金山の維持のためにも適当ではないと考えております。ただしかしながら、従来のように非常に使用制限して、金の需要そのものを無理に押えるという方式は避けたいというような意味合いにおいて、今回市販用を倍にいたした次第でございまして、これは実需の状況、今後どういう事情が出て来るかということを見ないとわかりませんが、さしあたりのところとしては大体この程度の数量があれば需要と供給がある程度バランスするのじやないかというふうに考えているわけでございます。また今度の新しい方法、つまり用途についてあまりこまかい制限をしないという方法をとつて、それがある程度なれて参りまして、それから先さらに需要が多くあるというふうになつて参つた場合にはそのときに考えることにいたしたい、つまりだんだん無理な統制をやめて行く、そして無理のない、しかし同時に金がいたずらに自由になつた結果、かえつて逆作用が起らないように、いわばそこいらで統制のよいところと自由のよいところと両方がかみ合わさつて、全生産のためにも効果のあるような方向へ進めたいというふうに考えております。なお金を自由にするか、補助金を出すかという二つの問題を御提示になりましたが、私どもとしては今申しましたような意味において、統制も無理な統制をやめ、業界のためにもまた金の生産のためにも影に立つ程度の統制をすると同時に、でき得れば探鉱奨励金等の方策によつて行くというこの二本建が一番望ましいのではないかと思つております。
  36. 永井勝次郎

    ○永井委員 統制の無理な点も緩和し、助成金も出して、上と下の両方から一つの企業採算点へしわ寄せして安定させるという方針に対してはわれわれも賛成でありまして、どうかそういう方向に進められんことを特に希望するのであります。なお産金企業をつふしてそこから失業者が出て来る、それを失業救済で救つて行くというようなばかげたことだけはやらないように、これは特に日本の総合的な経済の運営の面から考えて行かなければならないと思うのであります。そこで先ほど来通産政務次官の産金奨励に対する態度も明らかにされました。また大蔵当局の今後の産金企業に対する考え方及び統制管理に対する考え方等も大体明らかにされたのでありますが、こういう実情のもとにおいてて、現実企業を確立させてやつて行くためにはどうしたらいいかという考え方について、羽仁さんと原口さんからそれぞれ所見を伺いたいと思います。
  37. 羽仁路之

    羽仁参考人 産金業者といたしましては、金の国際的な関連性から見まして、一挙にこれが自由金の生産になるということは予想をしておらぬ。従いましてやはり金が貨幣関係政府の買入れになるという面はやむを得ないと思うのでありまして、これに対して今後金山が最小限度は生きるという方策政府としてとつていただきたいと思うのであります。御承知のように鉱山は普通の地上の工場と違いまして、一旦閉鎖したならばこれを復旧するということは莫大な経費がかかるし、またそれがために掘り得る原料をそこに放棄するということにも相なりますので、国家の金政策が非常に変動して、これがために金山が一時休廃するということは国家的に見ましても大きな損害であろうと思うのであります。金山が今日まで残つておりますのは、非常に少く、優秀な鉱山だけであります従つてわれわれとしては、きわめて謙虚な気持でお願いしておるのでありまして、現在辛うじて生きております金鉱山がせめて今後とも生きて行けるという最低のラインの要望をいたしておるのであります。従つて先ほど陳述いたしましたように、買上げに対する金の助成策ということはぜひお願いいたしたいのであります。さらにまた加工用金範囲の拡大、あるいはまた現送費というものを現在控除しておられまするが、これの業者への還付ということは引続いてお願いいたしたいと思います。われわれも決して、政府施策にたよつて、それによつて生きようという考えでいるのではありません。すでに万策尽きて、ぜひこれだけは国家として御考慮願いたいということなのでありまして、それは同時に国内資源の開発でもあるし、従業員の生活維持の対策にもなるのでありまして、助成策がことごとく国家に大きな負担をかけるとのみ考えられないのであります。どうかこれらの点を御考慮願いまして、国会におきましても十分な御支援を願いたいと思います。  それから永井さんからお話がありました連合軍から返還されました金の量でありますが、これは約百トンで、このうち日銀の保有のものが九十四トン。これはどういう評価になつているかということは私どもにははつきりわかりません。それから金資金特別会計で保有しているのが六トン、これは評価は十七円だそうであります。従つて現在の四百一円に比べますれば三百八十四円の差があるわけでありまして、その合計は二十三億になります。
  38. 原口幸隆

    原口参考人 お答えいたします。ただいま金山関係労働者が約七千人おります。そして現在企業整備の対象になつて生活の根底を奪われようとしているのが約千五百名前後おります。さらに先ほど大蔵省の方から述べられた点について、いわゆる金山というものはほかの含有鉱物と一緒に出て来るという点でまかなえるというお話もありましたが、現在の産金量の九〇%は金山単独山から出るわけでありまして、あとの一〇%が含有鉱物として出て来るわけであります。その金山自体の危機でありますので、今申し上げた労働者の数はわれわれの当面する重大な問題となつておりますし、また労働者側から見ても、賃金は現在の官公労のベースに比べても七千円前後にくぎづけされているという実態から考えて、いかに金山窮状に陥つているかということがおわかりのことと思うのであります。従つてどうしても金山復興ということが金属鉱山全体の労働者にとつても非常に重大な問題として、われわれの大会においては、その都度産金対策復興の問題は業者とともに生産闘争として私たちの大きな目標として取上げられて今日まで来ているわけであります。結論として、政府買上げ金価格引上げとか、加工用金使用制限の緩和という問題もありますが、やはり当面する問題の重大な救済策としては、探鉱奨励金の大幅な増額と支給方式の変更という点が中心にならなければならないとわれわれ労働組合としては考えております。
  39. 永井勝次郎

    ○永井委員 われわれが産金問題を重視して論議いたしますことは、日本の現在の経済構造が平和産業へ指向するか、戦時体制へ切りかえられて行くか、こういう事柄に対する一つの露頭としての産金事業に対する政府の腰の入れ方というものをわれわれは考えまして重視しておるのであります。武器等製造法というような法案が議場に現われてくるような現在の段階におきましては、平和産業が戦時経済に食われて、押しつぶされて、戦時中の産金業界のようなああいう事態が再びやつてくるのではないかということをわれわれは憂慮するのであります。こういうことがなしくずしに漸次やられて行くことに対して、われわれはここに具体的に現われて来る事象を通しまして、その根ざしておる根源を明確にして行かなければならないという点において、今日産金事業に対する政府の考え方をわれわれは重視しておるわけであります。従つて戦時中のああいうようなあやまちを再び起さないように、政府は特にこれらの問題について、総合的な見地から急速に政策を確立して、企業の安定とその確立をはかれんことを希望いたしまして、私の質問を終ります。
  40. 坪川信三

    坪川委員長 他に御質疑はありませんか。―この降参考人各位に一言委員会を代表いたしましてお礼を申し上げます。本日は御多用中本委員会に御出席になり、貴重なる意見の御開陳を願いましたことに対しまして、委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  この際暫時休憩いたします。     午後零時三十二分休憩      ――――◇―――――     午後零時五十三分開議
  41. 坪川信三

    坪川委員長 休憩前に引続き会議を開きます。宇田耕一君。
  42. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 この前の外務大臣に対する質問の留保されておる点はどこかと言いますと、ココム加入がロンドン及びパリ等の電報によつて明らかになつておりますが、その会議の経過内容等を聞かしていただきたいということをこちらから申出をしたところ、これは秘密であるから内容発表は差控えたい、こういうお話でありました。それではその会議には、だれがどういう資格で参加をしたのか、それを聞かしてもらいたいと思います。
  43. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはただいま経済局長が先方関係者と協議中だと思つております。まだ返事が来ていないのじやないかと思います。
  44. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 それでは話の進むはずがありませんから、その点についてあらためてその時期を外務大臣から委員会に示していただくようにとりはからつていただきたいと思います。  それから共産圏国に対する輸出貿易の点につきましては、今のお話の解明があつた後にした方がよいと思いますから、これはあらためて御質問いたします。  もう一つ最近非常に問題になつておるのは、やはり世界的に自由国家群におきましても、特に戦略物資等については、非常に強力な需給調整が行われております。それで需給調整の行われておる商品の統制内容というものがすみやかにわからないと―特に最近のわが国のように特需の発注が活発に行われるということになりますと、特需の注文を受ける品物の基礎材料、たとえば非鉄金属で申しますと、タングステン、モリブデン、コバルト、ニツケル等いろいろなものがありますが、そういうようなものは、ほとんどわが国でできないものばかりであります。それに対して各国ともに需給調整を強力に行つている、それを打開して日本の国際的な需要に応ずるような物資の調達あるいは兵器等の生産を行わなくてはならないでしようが、そういう点について外務省は主として国際的な、特に自由国家群との重要な物資の需給をはかつておるでしようか、それについて御意見をお伺いいたします。
  45. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは各国に対してそれぞれ話をいたすよりしかたがないと私は思います。国際的の機関というものはないと考えております。ただある国は非常によけいな金を持つて―たとえばアメリカのようにたくさん金を持つて、非常に多くの物資を入手している国は、その国に向つて今度はそれをわけてくれという話はあり得るので、各国ともにそういうことはやつていると思います。しかし国際的な機構というものはなく、各国別に話をする以外にないと思います。
  46. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 先般私が通産大臣に共産圏国に対する輸出の問題について質問をいたしましたときに、通産大臣は国連関係国の意向に沿つてものを処理したいということを何回か述べられております。経済、貿易関係から見ますと、国際連合に経済社会理事会がありますが、国際連合の経済社会理事会の中の専門委員会、たとば貿易専門委員会あるいは重要物資の統制に関する専門委員会等があります。それが年中ニユーヨークを中心にして開かれてる。また極東においてもエカフエというようなものもあります。ああいうものによるところの需給の調整に対するいろいろの研究討論というものが多いように思われますが、そういう点については外務省はその重要度というものをどういうふうに見ておられるのか、聞かしていただきたいと思います。
  47. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 国連の機構は、一般的に通商の障害を打破するとか、あるいは各国との間の交易を積極的にふやすとか、こういうような一般的の原則問題について取扱いをいたしておる。エカフエはその下にありまして、アジア方面のことについて、現実問題として、通商なり技術なりあるいは開発計画なりをどういうふうに行つて行くかということを討議しておるわけであります。これは見方によつてはおのおの重要なものであります。ことにエカフエのごときは、アジアに直接の問題でありますから、相当に重要視いたしております。今回もバンドンで開かれる会議には、タイの太田大使を初め、相当数の者を出してこれに参加しようと考えております。
  48. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 私は、国連の持つておる経済社会理事会の国際的な機構、そういうものに対する国民の理解はほとんどないに近い、乏しいと思います。そこで、外務省はそういう会議に出席をしていろいろな角度から貿易、経済その他について討論をなさるでしようが、そういう点民間に対してもう少し強く打出して宣伝をし、あるいはその真相を伝えることについて、何か具体的なお考えがあるかどうか。
  49. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはやるつもりでおります。具体的に言えば、エカフエ等の会議がありましたならば―今まで十分でなかつたのは、われわれの方でも十分なる人を出し、討論に参加する立場になかつたからですが、今度はちやんと話の中に入つていたしますから、これについては、会議の結果によりませんと、国民が興味を持つようなものが出て来るか出て來ないかで違いますけれども、十分発表すべきものはいたしたいと考えております。
  50. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 そういう点につきましては、私は民間人をもなるべく合理的に参加せしめるような方策をとつていただきたいと思います。  最近ヨーロつパから帰つて来た友人の話によりますと、フランス政府当局と話してみたいところが、ココムに日本を加入せしめた真相は、実を言えば、フランス当局の意見としては、アメリカが中心となつておるところの、極東地区諸国の共産圏国に対する輸出の管理を強化するという案は、どうしても日本の商品が自由国家群によけい流れる危険があるから、そういう方向に行かないようにするために、ココムの。パリ・リストを適用するという方向に持つて行つた方が、日本の商品の自由国家群に対する競争をなるべく少くするに役立つだろうと思つて、自分たちはココムに加入せしめることを主張したのだ、こういう話であります。そういう点ははたして真相に近いものかどうか、外務大臣にお伺いいたしたい。
  51. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 宇田君の友人なる方が、フランスのどういう人に会つて話されたのか知りませんけれども、おそらく責任あるフランス政府の当局ではないと思います。それはフランスの政府の人間にもいろいろな人がいますから、いろいろな意見は吐くでありましよう。ですから責任の地位にある人の正確な言葉でないものを、あまり御信用になにぬ方がいいと思います。私は、フランス側ではそんなさもしい、といつてはおかしいですが、考えではないと思います。日本独立国となつて、しかも極東において非常に重要な地位を占めておる、こういう国をヨーロつパのある機構に参加させるべきは当然であるという考え、別にそれによつていろいろのかけ引とか、うまく行くとかまずく行くとかいうことではなく、純粋にただそれだけの考えでわれわれを歓迎しておる、こうかたく信じております。
  52. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 もう一つ、カツトに加入せしめないということの裏には、やはり日本の自由国家群に対する輸出についての考えが、先ほどのフランス当局の話と同じような考え方、すなわち、日本が輸出貿易上の降路をどうしても他に求めざるを得なくなるであろう、他に降路を求めるということ、言葉をかえれば、共産圏国に対する輸出に日本を向けしむる間接の処置として、カツト加入を認めない方がいいのじやないかという説がイギリスで盛んに論議されておるのであるから、そういう点についてはよく注意しなければならないだろう、こういう話も聞いております。その点について外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  53. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私もそういうことが新聞の議論の中にあつたことを記憶しております。しかしこれは私の考えるところでは、イギリス側としては、ドル不足の現在において、日本に最恵国待遇をこの際ただちに与えることについてはかなり議論があり、そのために、イギリスだけじやありますまいが、そのほかの国も躊躇して延ばしておる。しかし一方においてはカツト加入は当然じやないか、これはそういう特殊の問題でなくて、一般的に日本のカツト加入は当然じやないかという議論がはなはだ多いと思つております。イギリスといえども、またその他の国といえ、ども、原則的に日本のカツト加入に反対であるということを一ぺんも言つたことはない。ただ時期的にずれておるということでありまして、日本がガツトに加入したいという議論に対して、それは反対であるということを正面から言うだけのりくつはどこの国も持つていないと思つております。
  54. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 関連して……。ガツト加入の問題でございますが、反対をしていないと言われましたが、先般行われた会議におけるイギリス側の発言では、日本は重要国であるからよく研究する必要があるという発言によつて延期させられた、こう承つておるのでございますが、それは事実でございますか。希望としては特恵レートが早く日本に許されるようにわれわれも考えておるわけなのでございますが、いかがでございましようか。
  55. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私が申したのは、どこの国でも原則的には反対しておらないということでありまして、延びたのは、何も反対だから延びたのでなく、今おつしやつたように、重要国であり。その影響するところが多いから、インターナシヨナル・コミテイーというものをつくりまして、総会と総会との間の特別の委員会でさらに研究してから結論を出そう、こういうことになつております。その委員会は来年二月ごろ開かれるだろうと思います。しかしいずれにしてもガツト加入については、関税協定等も促進しなければならないわけでありまして、この方にも相当時間はかかります。しかし私の申しておるのは、ガツト加入に対して、どこの国といえども、日本の国の加入は反対だという議論を開陳するだけの勇気はない。もつともなんだけれども、もつと余裕をくれ、もつと研究してみるからというのが今の実情であります。
  56. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 外国の事情は大体推察できますが、日本としてはこれについてはどういう態度に出られますか。
  57. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 日本としては当然すみやかなるガツト加入を主張するわけであります。またそれに必要な関税協定等の措置はできる国からどんどんつくつて行く、こういうつもりでおります。
  58. 坪川信三

    坪川委員長 本日はこの程度といたし、これをもつて散会いたします。     午後一時十一分散会