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1952-12-08 第15回国会 衆議院 通商産業委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月八日(月曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 小金 義照君 理事 高木吉之助君    理事 河野 金昇君 理事 今澄  勇君    理事 永井勝次郎君       首藤 新八君    福井 順一君       福田  一君    南  好雄君       村上  勇君    宇田 耕一君       高橋 長治君    長谷川四郎君       山手 滿男君    田中織之進君  出席国務大臣         通商産業大臣 小笠原九郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       小平 久雄君         通商産業事務官         (繊維局長)  徳永 久次君         中小企業庁長官 岡田 秀男君  委員外出席者         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 十二月八日  理事村上勇君の補欠として高木吉之助君が理事  に当選した。     ――――――――――――― 十二月二日  中小企業振興対策強化に関する陳情書  (第五六一号)  中小企業対策強化に関する陳情書  (第五六二号)  公営電気事業売買電力料金認可基準改訂に  関する陳情書(第  五六三号)  電力会社電気設備工事費負担関係に関する陳  情書(第五六四  号)  電気料金地域差撤廃に関する陳情書  (第五六五号)  公共事業令失効に伴う緊急措置に関する陳情書  (第  五六六号) 同月四日  貿易基本政策に関する陳情書  (第六七一号)  天龍川の電源開発に関する陳情書  (第六九〇号)  只見川電源開発に関する陳情書  (第六九六号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  通商産業政策基本方針に関する説明聴取  繊維に関する件     ―――――――――――――
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより会議を開きます。  本日の日程に入ります前にお諮りいたしたいことがあります。理事村上勇君より理事を辞任いたしたいとの申出がありましたので、これを許可いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 坪川信三

    坪川委員長 御異議なければさようとりはからいいたします。つきましては理事補欠選任を行わなければなりませんが、理事補欠選任は、先例によりまして、委員長において御指名いたしたいと存じますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 坪川信三

    坪川委員長 御異議なければ高木吉之助君を御指名いたします。  この際前日の理事会において申合せいたしました事項を御報告いたします。本日はまず小笠原通商産業大臣より、通商産業政策基本方針について説明を聴取いたし、質疑の後、繊維に関する件についてその調査を進めることにいたします。次会においては造船に関する件、次には肥料に関する件、貿易に関する件、鉱業に関する件を順次日程に掲げ、その調査を進めることといたしますから、この点さよう御了承願います。  それではまず小笠原通商産業大臣より、通商産業政策基本方針について、その所見を求めます。通商産業大臣小笠原九郎君。
  5. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 最近におけるわが国貿易及び産業経済の情勢並びにこれが対策につきまして、簡単に御説明申し上げます。  まず貿易の動向でありますが、輸出につきましては、年初は主としてポンド地域オープンアカウント地域向けに大いに伸張し、著しい輸出超過となり、手持外貨量が累増いたしました結果、ポンド地域向けについては、為替及び数量両面輸出制限措置を採用するという状況でありましたものが、その後各国輸入制限措置強化等によつて、一月から六月までの上半期において七億一千万ドルに達した輸出認証額も、七月以降は月一億ドルを下まわる停滞状況にあります。  また輸入につきましては、一—六月の実績は九億ドルになつておりますが、その内容においては、ドル地域輸入が多額に上つたのに比べ、他の地域からの輸入価格の割高及び国内産業活動停滞等によりまして、きわめて不振となつております。かかる状況をもつて推移いたしますときは、昭和二十七年度輸出は約十一億五千万ドル、輸入約十八億ドル程度と予想されますので、昨年度、念のため申し上げますと、輸出十四億五千万ドル、輸入二十億ドルに比較いたしまして、いずれもかなりの減少となる傾向にあります。  この間の貿易収支支払い超過を補つているのが特需でありまして、四月以降九月までに、契約高一億七千万ドルとなつており、本年度の見通しとしては、駐留軍関係消費を合せ約七億四千万ドルと推定しております。一方国内産業活動は、かかる貿易停滞を端的に反映いたしまして、鉱工業生産指数の伸びは、四月以降一三五ないし一四○の水準で頭打ちとなり、物価水準もまた動乱前を約五割上まわる線で弱含みの横ばいを示しております。  これは一面朝鮮動乱によつてもたらされた景気上昇の修正もしくは正常化への過程とも見られるのでありますが、これを産業部門別に見ますと、綿糸布、鋼材の一部、ゴム製品ソーダ等の一部の工業におきましては、輸出停滞、内需の下振による在庫の累増、価格の低落を来し、長期にわたつて操業短縮を余儀なくされ、特に繊維部門におきましては、最近米綿価格の下落によつて綿糸一こり七万円を割る相場を呈しており、また硫安工業のごとき、国際競争激化のため、トン当り十数ドルの出血を覚悟して輸出強化せざるを得ない産業も見られるのであります。  以上のごとき経済状勢に対しまして、通商産業省といたしましては、わが国貿易及び産業規模拡大国内消費購買力の増大を促進し、雇用の拡大国民生活水準を向上せしめるために、次のごとき対策を講じたいと考えております。  まず第一に貿易振興対策でありますが、貿易各国と広く円滑に行われるためには、国際経済関係をすみやかに正常に復帰せしめる必要があり、これがため米国を初めとする通商航海条約の締結の促進、ガツトヘの加入、及び輸入制限の緩和を主眼とする日英一般支払い協定改訂等通商外交上の諸懸案の解決を推進する一方、東南アジア中南米等市場に対しましては、プラント輸出振興資源開発積極化技術者経済使節派遣通商あつせん施設の充実等経済協力の線を通じて、共存共栄の原則による市場の開拓をはかつて参りたいと考えます。  次に輸出減少は、ポンド地域及びオープンアカウント諸国輸入制限に主として基因し、かかる地域への輸出の増進は、わが国のかかる諸国よりの輸入促進することによつて、初めてなし得ると認められますので、別口外貨貸付制度拡充、スイッチ・トレードの利用、食糧、鉱産品買付長期契約化、その他協定貿易上の大幅なクレジットの供与等、諸般の輸入促進措置を講じて、長期かつ拡大した規模において貿易拡大均衡をはかりたいと存じます。  また、最近における西欧諸国との国際競争がとみにはげしくなつている現状にかんがみ、産業合理化を一段と推し進める一方、税制及び金融対策についても、少くとも西欧諸国の行つているところに劣らない程度には企業を援助する措置を講ずる必要が生じて来ておりますが、特に貿易業者強化することは最も緊要と認められますので、これにつきましては次の諸施策を講じたいと思います。  すなわち、戦後わが国商社は、資本力が脆弱であつて経済変動に対する抵抗力がきわめて弱く、加うるに戦前海外支店網をほとんど失つているのが現状でありますので、税制上の諸準備金制度拡充短期負債長期化商社合併促進等によつて、その資本力強化をはかるとともに、海外支店開設援助のため、低利長期外貨を貸し付ける等の方法によつて、その海外活動活発化をはかりたい所存であります。  右のごとく、貿易拡大について種種対策を講ずるといたしましても、最近の世界情勢におきましては、貿易の前途はなお楽観を許さぬものがありますので、この景気中だるみの間に、将来の発展に備えて、日本経済基礎を強固にし、経済脆弱面を鍛練しておく必要があります。従つてこの際保有外貨を活用して、産業合理化近代化促進するとともに、特に財政投資について、これを経済基礎的部門に集中し、電源開発基礎的資材価格国際価格へのさや寄せをはかりたいと存じます。  電源開発につきましては、まず既定計画明年度の総所要資金一千六百十億円のうち、一千二十五億円の政府資金を投じて繰上げ促進をはかるとともに、石炭業に対しましては、明年以降縦坑開鑿等の根本的な若返り方法を講じさせ、石炭価格の引下げと可採炭量の増加をはかる考えのもとに、目下その具体策を作成中であります。またプラント類輸出促進のためには、もとよりあらゆる産業基礎として、鉄鋼の価格国際水準まで引下げることが強く要望されますので、現に進行中の設備近代化三年計画の完遂に努力するとともに、東南アジア資源開発等による低廉で、安定した鉱石の確保と、その輸送の合理化をはかつて参りたいと存じます。  なお、兵器産業につきましては、年度当初以来相当量特需発注量もあり、輸出産業に準じこれを取扱いたいと思つておりますが、現在の段階においては、さしあたり不健全な企業の濫立により適正ならざる競争の激化することを防がなければならぬと考えられますので、今国会にもこの趣旨による兵器の製造及び販売に関する法律案を提案いたす予定でありまして、目下最後の仕上げを行つておる次第であります。法律案につきましてはいずれ近く上程せられました際に御説明を申し上げたいと存じます。  日本経済のいま一つの大きな欠陥といたしまして、資本蓄積の過小な点が考えられますが、これが対策としましては、金融適正化金利負担の軽減をはかりますとともに、産業政策重点を置いた税制改正により、企業内部蓄積を奨励助長し、企業経営健全化をはかり、特に最近における経済不況が主として流通過程における弾力性の喪失によつて激化している状況にかんがみ、貿易商社対策と並行いたしまして、商品流通面における円滑化について積極的な措置を講じたいと考えております。  最後中小企業に対する対策でありますが、最近の経済情勢においては、不況のしわ寄せがますます中小企業に集中される傾向が強くなつておるのであります。この際前国会において成立いたしました特定中小企業の安定に関する臨時措置法は、すでに現実に運用され、綿織物業を初めとして、全国に四十四の調整組合が設立され、なお念のため申し上げますと、その他に設立認可申請中のものが九組合あります。それぞれ生産調整を実施し、またはその準備を整えつつある状況であります。当省におきましては、今後さらにその運営の適切を期する一方、中小企業等協同組合法による組織化を一層強力に推進し、団結の強化現地診断及び指導の徹底により、中小企業への圧力に対する抵抗力強化する方針であります。特に中小企業問題において最も重点を占める金融対策につきましては、商工組合中央金庫強化拡充のため、とりあえず補正予算一般会計において二十億円の貸付を計上いたしましたが、なお中小企業に対する金融抜本策として、明年度においては、財政資金による長期かつ低利の資金を融通する制度を設けるべく、その具体案及び予算につき検討中でございます。また最近の多くの事例によりますと、資金量の豊富を要することももとよりでありますが、さらに一層中小企業者信用の不足を補う制度を充実いたしますことが緊要であると認められますので、中小企業信用保険制度利用促進するため、同制度に所要の改正を加えるとともに、信用保証制度強化改善をはかり、さきの資金源の充実と相まちまして、中小企業金融難解決に資する所存であります。
  6. 坪川信三

    坪川委員長 これにて説明は終了いたしました。  小笠原通商産業大臣予算委員会出席の要求がありますので、この際、ただいま説明されました点、並びに電気及びガスに関する臨時措置に関する法律案、並びに繊維に関する件について、大臣に対する質疑のみをまず先に行いたいと存じます。  それでは質疑の通告がありますから、順次これを許します。高木吉之助君。
  7. 高木吉之助

    高木(吉)委員 大臣にお伺いいたしますが、今春繊維界襲つた不況は、その後一時立直りの気配を見せたのでありますが、九月以来再び落調に転じまして、ことに人絹、綿糸市場は日を追うて悪化の一途をたどつているのであります。ことに綿糸につきましては、まつた恐慌状態にあるのでありますが、これが原因は、輸出貿易の不振と沈衰によりまして、国内市場を極度に圧迫している点にあることは、申すまでもないのであります。現下のような世界的輸入制限の障壁に対しまして、政府繊維不況打開のための輸出振興対策をいかにお考えになつているか、承りたいと存ずるのであります。
  8. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 仰せのごとくに、繊維産業状況はまことに私ども心配いたしておるのでありますが、輸出品のうち五〇%強が、今高木さんが言われたように中小企業生産品でもありますので、これが一たび輸出が不振となりますと、商品国内市場に氾濫して、こういつた不安定を来すのでありまして、どうしても輸出振興のために活発な経済外交を展開することが必要なんであります。そこでまず通商航海条約を初めといたしまして、独立国家としての正常なる国際経済関係回復に努めて、日本の方からの輸入促進によつて相手方輸入制限を緩和する、あるいは通商使節派遣によつて市場を開拓する、あるいは外貨貸付によつて本邦商社海外活動を助長する、かようなこと等を考えておるのでありますが、これは少し時間を要することでもございますので、できるだけの手を一つ一つでも早く打ちたいと考えている次第でございます。
  9. 高木吉之助

    高木(吉)委員 次にお尋ねいたしたいのでありますが、輸出不振のために本来輸出に向けられるべき商品国内に流れまして、そして国内市場を著しく撹乱しておるのが現状であります。その結果価格ははなはだしく不安定となり、ために海外需要また一段と萎縮しているのが、繊維市場の実情であります。政府はかかる事態を克服するために、政府出資のもとに、米国における商品金融会社の、ごとき調整機関を設けて、そして輸出不振の場合においては、内地転用になるところの輸出繊維製品を買い上げるというような措置を講ずるところの機関を設置するお考えはございませんか。この点をお伺いいたしたいと存じます。
  10. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この点は大紡績会社等の間にもありまして、先般新聞等にも出、また一万田日銀総裁の話などもございましたので、目下検討を進めております。
  11. 高木吉之助

    高木(吉)委員 なるべくすみやかにこれが実現を私は期待するのであります。どうか大臣におかれましても、十分検討の上、これが実現に向つて努力せられんことをお願いいたします。  次は、九月以来の繊維不況のために、中小商社倒産が続出いたしまして、年内でもすでにその数が二百を上まわり、なおかつこの状態を推移して参りますれば、二、三月の金融の危機というものはさらに激増するものと考えられまして、その成行きが非常に憂慮せられているのであります。ことに十一月中旬までの繊維関係業者倒産は実に百八十社を数えまして、債務総額は七百億ないし八百億に達しております。これは表面化しただけの数字でありまして、調査の漏れておるのを加えますと、その数は非常に莫大なものになるのであります。繊維わが国にとつて重要な産業であります関係上、これが救済はどうしても行わねばならない事柄であります。ことに商社倒産中小生産業者にまで影響いたしまして、今後その波及するところは、まことに恐るべきものがあると考えられるのであります。時あたかも年末に際して、中小企業金融の面において今までにない非常な苦しみを味わつておる際に、政府はこの中小企業繊維面における金融打開のために何かの御処置考えていただきたいと思うのでありますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  12. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私も実は高木さんと非常に憂いを同じうするものであります。何とかしてこの金融打開等のことについてやりたいと思つて努めておるのでございまするが、過日も申し上げましたように、とりあえず今度商工組合中央金庫の方に二十億の金が出ることになつておりますが、これを年末に使いまするほか、中小商工組合の方にも五十億ほどいろいろもどつて来るもの等で使う金もございまするし、また国民金融公庫等の金も、予算措置がとられる前におきましても金を出すように、日銀等へ話をして十分了解済みであります。決してこの金額は十分とは申されません、私も非常に不足だということはよくわかつておりまするが、将来の問題といたしましては、たとえば今の商工組合中央金庫の貸出し二十億を出資に振りかえるというようなことにいたしますると、債券の発行がその二十倍できるようにもなりますので、そんなふうにこの次には持つて参りたい。これは法の改正等を要しまするが、そんなぐあいにぜひ持つて参つて中小企業方々金融面をあらゆる方面から考えてみたい——考えてみたいんじやない、もう早くやつてみたいと思つておるのでありまするが、法の改正を要するものは今ここですぐにできませんので、とりあえずあの二十億出す次第でありますが、次の機会にはぜひそれをやりたいと思つておるのであります。そのほかに中小企業の安定に関する臨時措置法等の運用などで、必要なる操短とか出荷調節調整組合で活動してもらう、そうして経済安定をはかつていただくようにもしたい。また中小工業者の方も、借入れについて借入れのできる力を十分つけていただきたいと思つておる次第でございます。
  13. 高木吉之助

    高木(吉)委員 特に年末におきまして繊維関係中小企業は非常に困つておるのでございますから、この点大臣におかれましては留意せられまして、優先的な措置を講じていただきたいということを希望申し上げておく次第であります。  次にお伺いいたしたいのは、すべて繊維設備は放慢になつておりまして、実際の原料供給面よりも非常に過剰になつておる。これをこのまま捨てておきますと、ますます過剰生産になつて、滞貨を累積するという結果になるのでありまするが、政府におきましては、この際それらの新規の設備を制限するような処置をお考えになつておるかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  14. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいまのところ、これを制限するという法的の根拠は、高木さん御承知のように持つておりませんが、御心配のごとく、これは最近非常にふえて来て、過剰の状態にあることも事実でございまするので、これに適当に何か対処したいと思つて今研究中でございます。
  15. 高木吉之助

    高木(吉)委員 次は、現下綿糸不況状態にかんがみまして、これが操短に対しましては、今後いかなる方法を実施せられるお考えでございますか伺いたいと思います。
  16. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 操短問題につきましては、多少法律的に問題もあるようでございまするが、当業者の方の御措置にまかせて、今まで紡績方々自力でもつてすべての問題を解決されて来ておるのでありまして、大体法の許す範囲で、その自力における解決方をお認めしたいという考え方でございま
  17. 高木吉之助

    高木(吉)委員 次は、ただいま大臣が述べられました特定中小企業安定法による調整組合設立が漸次順調に進んでおるのでありますが、これらの調整組合生産調整を行うための必要な資金につきましては、非常に困つておるのであります。政府は積極的にこれらに対するところの融資の道を講じてる必要があると思うのですが、御所見はいかがでございましようか。
  18. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これはしごく御同感でございますが、さしむき私ども短期の借入金を長期にするということなども、やり得る一番手近な方法でははいかと思いまして、目下それについて、いろいろ事務的に話を進めおる次第であります。
  19. 高木吉之助

    高木(吉)委員 最後にもう一つお伺いいたしたいのであります。御承知通り織物消費税昭和二十五年の一月から廃止せられたのでございますが、廃止せられた当時におきまして、生産者あるいは販売業者の手持ちの商品は、すでに四割の課税を受けておるものがたくさんあるのであります。酒に対しましては、減税の方法をとられたのでありますが、織物消費税廃税をせられました際におきましては、それらの措置がとられておらない。これが莫大な数字つておりまして、三十何億という数が出ておるのですが、それらは全部業者あるいは販売業者が損失として計上せねばならないような状態になつておるのであります。政府は当然これを返還すべきであると考えるのでありますが、大臣の御所見を承つておきたいと思います。
  20. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 その点につきまして、あるいは言葉がちよつと悪いかもしれませんが、議員立法等をなさる場合におきましては、私ども十分その御意見を尊重いたしたいと考えております。
  21. 坪川信三

  22. 山手滿男

    山手委員 私は大臣にお伺いいたしたいのでありますが、今の大臣の御説明そのほかから伺つておりますと、どうも今までやつて来たことを羅列されたというふうな感じであつて、新味がちよつともないのであります。今までのいろいろな数字をよく検討してみますと、鉱工業生産においては、わが国はヨーロッパやそのほかの各国に列しましても、決して遜色のないくらいに回復をして参つておる。戦後すでに一三一というふうな数字を示しておるのでありまして、これはイタリアドイツに比べて何ら遜色はない。ところが、事貿易になりますると、ドイツ輸出が一三六、輸入が一三一、イタリア輸出が一四一、輸入が一二四であるのに対し、日本特需を入れましても、安本あたり調査を見ましても、あるいは国連の統計を見ましても、輸出が三六、輸入が四九というようなわけで、けたはずれの差があるのであります。これは私ども過去四、五箇年間にわたつて吉田内閣にたびたび言つて来たことであるし、先般の高橋通産大臣の時代に、例のポンドの問題がやかましくなつたときにも、いろいろやかましく議論をしたのでありますが、ポンド措置のごときは、政府が絶対に誤つてつた。これはもう明らかに政府の重大なるあやまちで、これに対して政府国民にあやまらなければならないと思つておるのですが、こういうふうに日本は現在貿易だけが非常にがた落ちに落ちておる。鉱工業生産昭和九年から十一年を一〇〇といたしますと一三一である。農業生産においても大体一〇〇ないし一〇一くらいのところまで達しておる。それから人口は戦前に比べると一二〇にもなつているという状態だ。ただ貿易だけが日本はこんなに少い。しかも戦争をやつたドイツイタリアもフランスも、各国戦前の百三、四十まで全部回復しているのに、日本だけが三九から四〇前後をうろついておるということはどういうことに原因があるのか、大臣はこういうことをこう解明しているんだという所信を披瀝されなければ、さつきのようなお話ではわれわれは新しい大臣のお説とも思えないのですが、この点お聞きしたいと思います。
  23. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 よくおわかりのように、このごろの貿易の不振は、大きく考えましたら二つの原因があるんじやないかと考えます。一つは、何と申しましても日本商品に対するポンド地域とか、そういう方面輸入制限があるということが一つの大きな貿易不振の原因であり、もう一つ日本の品物がコストが高くて、国際的競争力を持つのには日本商品が高過ぎる、こういう点が一つの大きなところであるんじやないか、こう思うのであります。そこで何と申しましても、まず各国輸入制限に対する通商条約なり、あるいは、たとえば日米協定のようなものをどうしてもうまく進めて参る以外に方法がないと一面では考えられますので、その点については今外務省の方でいろいろ努力をしてもらつている次第であります。そのうちの一つには、たとえばガツトヘの加入というような問題、これは大きな問題でございますが、ガツトヘの加入というような問題もございます。それからもう一つには、中共等へ西ヨーロッパ諸国並に物を出せるようにしてもらうというような問題もあろうかと存じます。さらに日本の物価の高いことについて、やはり国際競争力を持つためには、何と申しましても日本国内のコストを下げるようなぐあいに産業合理化その他をやつて参らなければなりません。また税制改正を要する部分については多少税制改正をやつて参る、こういうことが必要なのではないかと考えております。いずれにいたしましても、御指摘のように貿易がひとり取残された不振状況にありますことは、まことに遺憾であり、しかも日本貿易というものは日本にとつては最も大切なものでありますから、ただいま申し上げたような方法ついてだんだんとひとつ手を打つて参りたい、こう考えておる次第であります。
  24. 山手滿男

    山手委員 ちよつと私かぜを引いておるので大きな声は出せませんが、今大臣のお話は私は間違つていないと思うのですが、価格の構造と国際競争力の問題、これはなるほど大きな問題であろうと思うのでありますが、ただ単に頭から日本製品が高いということのために出ない、競争力が薄いんだというようなお考えではないと思うのでありますが、品種別に調査をしてみますると、戦後の歩んだ価格の道をずつと調べてみると、繊維製品は、英米に比べて日本競争力があつて、大体一〇%程度まさつておる、こういうふうに考えておる。それで綿糸とか人絹糸とか梳毛糸、そういうふうなものは大体十分な競争力を持つておると思う。ところが鉄鋼とか非鉄金属、電気銅というようなものは非常な問題ですが、機械類——自転車にしても貨物自動車にしても、あるいは硫安とか苛性ソーダというような化学製品に対しましても、こういうものは大体において二、三十パーセント競争力がこつちが下まわつておる、弱い。品種別によつていろいろ競争力のあるものとないものとがある。ところが競争力がないものはなぜ競争力がないかを調べてみると、大体原料の獲得の方法によつて競争力があるかないかが決しておるということが私は言えると思う。その原料の獲得方法政府がどういうふうに得さして、やるかという方法をきわめないで、ただ単に日本国内の品物が高いから出ないんだというふうな言い方をされることは説明になつていないし、政府の施策になつておらないと私は思う。この点についてはどう考えるか。それからもう一つ、今小笠原大臣のおつしやつたところの、列国が貿易の禁止的な処置をとつておる、あるいは通商航海条約がうまく行かない、ガットに加入ができない、こういうお話であります。なるほどガットの加入については、英国なんかもああいうふうな態度に出て、われわれなんかも義憤を感じているのでありますが、しかし戦後ずつと各国がやつておるところの貿易振興措置というものをつぶさに検討してみますと、日本政府のやつて来た貿易振興措置と格段の差異があるということがはつきりしておる。これは今日は私は気分が悪く熱があるから一々こまかいことは申し上げませんが、こまかく少し申し上げてみましても、フランスあたりは、輸出品に対しては国内課税の払いもどしをやつておる。社会保障費の八〇%までは払いもどすというような方法をやつておる。輸出する場合には、その輸出製品に関する分に対して、取引課税の三分の二くらいまでは払いもどすというふうな処置をとつておる。あるいはまた輸出の保障について天災地変や革命や為替の暴落等による損失について、フランスあたりは徹底的な政府の保護を加えておる。それから長期契約で、いわゆる。プラント輸出のようなものをやつて、その長期の契約の機械の価格が変動を見たような場合には、政府はそのプラント輸出によつて損をするような輸出業者に対してはめんどうを見るという処置に出ておる。だから機械類がどんどん出て行く。優先外貨の問題、あるいはまた新規の市場を開拓し得た業者に対しては、やはり開拓手数料というのでありましようか、その労を謝する意味で事業者関係の経費なんかは、やはりフランスではめんどうを見て、新しい地域にフランス製品を売り出すようにやつておる。イタリアについて見ましても、さつき高木君のお話について、商品金融会社の構想については、業者にまかしておくのだ、こつちの方は考えておくというような大臣のお話でありましたが、イタリアのごときは、イタリアの人絹は世界的な生産品でありますが、イタリアの人絹については、例のイタリア・デスポーザというのがあつて、これは一手販売会社でありますが、これが政府のたいへんな庇護のもとに世界中にイタリアの人絹を宣伝し、売りさばいており、価格を安定さしておる。これはさつきそういうような高木君のお話に対して、これまた紡績業者の自主性にまかすんだというふうな、政府は、どこかのお隣りのおやじのような御説明でありましたが、あにはからんや、この間からの日本綿糸の大暴落に対して、ニューヨークではたいへんな悪印象を受けておるという記事が昨日の新聞紙上にも報じられておる通りである。そういう事態に対して何ら手を打つておらぬが、イタリアあたりは、一手販売会社を人絹に対してもつくつて、世界的な飛躍を遂げようとしておる。いろいろな補助機関を置いたり、いろいろな手を打つておる。西ドイツのごときものは、もつと巧妙にやつておる。これはつぶさに私は申しませんが、またそこにおられる政府の皆さん方は手足を持つておられるから、もうよく調査をしてそういう諸外国のやつておる通商産業振興方策というものはよく御承知であろうと思う。それをただ単にガットに加入できないからとか、通商航海条約が遅れておるからとか、そのためにこうであるというふうなことを今ごろぬけぬけおつしやることは、国民はたいへん迷惑をするのでありますが、その点について大臣のもつと積極的な御説明をしていただきたい。
  25. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今お話のございました諸外国のやつておる通商産業政策をよく検討して、これに基いて適切なる措置をとるべきことは、これは私もぜひやりたいと思つております。ただ率直に申し上げますと、まだ私は日が浅いので、その点よく存じておりませんが、今お示しになつたような事柄については、きわめて示唆に富んだ御意見でございますので、これはぜひそういうことをやりたいと思つております。  なお繊維工業についてのお話でございますが、これは実に日本がすぐれておるのでございまして、繊維工業だけは生産費も安くて、国際競争力も十分持つておるのでありますが、売れ行き先のところがどうもいろいろ輸入制限その他のことをやりまして、その点で繊維工業輸出その他が停頓を見ておることははなはだ遺憾であります。従いまして今外国等の実例を国別にお示しになりましたから、それらの事柄をこちらも考えまして、適当の対策を講じたいと思つております。ただ私どもとしては、全般的に見ますると、何と申しましても日本の品物が高いのは、これは山手さんもおつしやいましたが、その通りでありますので、そのもとはといいますと、たとえば石炭とか電力とか、動力源が高いことがしからしめると思いますので、その点に対する施策を強力に進めておる次第でございます。なお鉄の問題につきましても、基幹産業でありまするので、東南アジア資源開発をすること等によりまして、今インドの鉄の問題等もああいうふうに話が進められておるのでございますが、そのほか各種のそういつた事柄を進めまして、でき得るだけ鉄鋼価格を安く持つて参る、そうしてほかの産業に対して好影響を与えますように進めたいと考えておる次第であります。  なおプラント輸出は、輸出入銀行の方を今度はもう少し資金長期化等をすることをまかりまして一特に東南アジア方面日本プラント輸出の余地が非常に大きいところでございますので、この点には極力努めたいと考えておるのであります。ただ一般的に申しまして、政府が保護しなければならぬものについては十分保護しなければなりませんが、山手さんも御記憶でしようが、下手なことをやりますと、特別なことを日本政府はやるじやないかといつて、従来苦情を各国から受けておりましたので、それを受けない程度で、緩急よろしきを得て、今後やつて行きたい、こう考えておる次第でございます。
  26. 山手滿男

    山手委員 独立をしたことでもありまするし、列国がやつている程度のことは、何も秘密でこそこそやるわけでもございませんので、堂々とひとつおやり願つた方がいいのじやないかと私は思うのであります。繊維輸出力、競争力はあるのだが、向うの関係で出ない、こういうふうなお話がありますが、私はそれはそれもありますが、日本国内の施策よろしきを得ないために出ないという大きな理由が、もう一つあると思うのであります。さつきも言いましたが、近日恐慌的な繊維の大暴落というものがあつて、今から二、三箇月、四、五箇月くらい前に契約をしておつた外国商社は、ほとんどさじを投げたという程度にびつくりしている。非常に日本繊維業界に対しても不信の声があがりつつあるようなふうに言われておるのであります。それはやつぱり品物が高ければ高くてもいい。一定のところにずつと安定をして行つていればいい。一番いかぬのは、あるときは少し高くなつたり、あるときはぐつと安くなつたりする不安定の状態で、価格がいつも動揺しているということが、一番がんになつているのだと私は思うのです。ところが政府は、今までいつも価格の安定ということについて、よそのだれかがやつている仕事のように思つて、無関心でおられたのではないか。この間紡績業者やそのほかが、価格の安定ということにからんで、十五万こりの操短に大体線を合せてくれ、勧告をしてくれというふうに、申し出たように思つておるのでありますが、それを押切つて——これは池田通産大臣がなりたてのときであつて、あの人の性格から来たのかもしれません。今の小笠原さんに申し上げることは少し酷であるかもしれませんが、今そこに繊維局長が控えておられますから、私は繊維局長から御答弁を願つてもいいのでありますが、わざわざ失望するような十六万五千こりに押しつけて、そうして価格暴落の原因をつくつておる。池田通産大臣不信任案が通つたとたんに、繊維はストップ高というような現象になつたというのは、その間の事情もあつたかと思いますが、十六五千こりにわざわざ押しつけて、この価格がめちやくちやに暴落する原因をつくつておる。ただ私がこう言うただけでは、おそらく繊維局長はよく御承知なのですが、議員や委員長もよくわからないだろうと思うので、少しそれを解明してきようは申し上げて、御参考にしようと思う。綿工業は、日本輸出産業だと言つてつたけれども、今日はたいへんな輸入産業です。私はこの間政府の発表を見ましたところが、つい三、四日前雑綿を十万こりよけい入れるようにして、米綿を少し少くするというようなお話でありましたが、大体月々原綿を九十億円輸入しておる。年間一千億あまりの原綿を政府輸入しておると思う。ところが最近の貿易の量は、大体綿布が三万こり前後、綿糸が三万四、五千こりをずつと輸出しておると思うのですが、そうすると、年間こういう状態が続くならば、大体四十億の十二倍四百八十億、そうすると、原綿代から製品の輸出を引くと、大体五、六百億というものは入超になつておる。従来日本 の綿業というものは、日本国内で消費するものは全部ただでかせいでおつたというのが、綿業の特性だつたのですが、今日では原綿代が五、六百億も国内で浪費をされておるというかつこうになつておる。ところがこれはどういう原因でこれが来ておるかというと、大体三万五千こりくらい日本輸出をしておつて政府は十六万五千こりの操短を勧告しておられるということになると、一月にして約十三万こり国内で消費をすることになる。これは年間に計算をして一人当りを出してみると、一人当り大体八ポンドの消費になる。昭和十二、三年、日本がかつて一番多く使つたときで、六ポンド前後です。六ポンドでもこれは工業用に使つたのが三割入つている。それを八ポンド国内に流そうというのですから、これは暴落するのは当然です。何も輸出がきかないからということで来ておるのではなくて、国内に必要以上にうんと倍も流すような施策をとつたから、こういう事態か起きた。そのしれが全部中小企業に来ておる。それを繊維局長はよく知つておる。池田さんが何と言おうとも、繊維局長は辞表をたたきつけてもそこあたりでがんばらなければうそだつたのですが、とうとうやつてしまつて、こういうことにしてしまつた。私はもつとこまかくお話を申し上げると、この問題だけでもこの委員会で徹底的に議論をして行くべきであつて、私は綿製品の消費量は大体四ポンド程度だと思つている。それを倍の八ポンドの消費をやらすというような生産をやらしておいて、そして大臣のお話では、それは紡績や何にまかしておるという話である。貿易じりを見ると、年間一千億の綿を入れて、四百億か五百億の輸出をしている。五百億の入超産業になつている。こういうことで大臣がこれから政治をおやりになるのでは心細いと思うから、だんだん長くなるのですが、大臣の御所見をひとつ承りたい。小笠原国務大臣 こまかいことと過去の成行きは私はあまり詳しく存じませんから、その必要があれば、繊維局長より答弁させます。  将来の問題につきましては私どもは、今までの貿易業者方々はすべての問題を自主的にやつておられたから、そういうふうに民主的、自主的におやりになることを希望しておるのであるけれども、それが日本のためにならぬ、また日本としてはそれでやつてはいかぬということに私は見きわめがつきますれば、これに対しては適当な措置をとることを、山手さんにはつきり申し上げておきます。
  27. 坪川信三

    坪川委員長 山手君に申し上げますが、他に大臣に対する質疑がまだ残つておりますので、簡潔に願います。
  28. 山手滿男

    山手委員 それは今私が言おうとしていることですよ。紡績業者の方は、こういう状態だから、現在では十五万こり以上ではその価格も暴落する。できれば十三万こりか十二万こりくらいまで持つて行きたいのだけれども、それでは中小紡や新紡などの立場もあるからということで、十五万こりまでの操短にして、大臣の勧告を出してくれ、こう言つたところが通産省は、そんなばかなことがあるか、お前らかつてなことを言うなといつて、十六万五千こりをすえ置くということで、しかも長期にわたつてああいうすえ置きの勧告をしてしまつた。それは業者が自主的に言つて来たことを、お前らはけしからぬといつて、通産省がきめてしまつた。これは繊維局長がそこにおるから、繊維局長からも答弁をしてもらいたい。そういうことはいかぬと言うのですよ。
  29. 徳永久次

    ○徳永政府委員 ただいま十二月の操短勧告を十六万五千こりにしたことについてお尋ねがあつたのですが、御承知のように最近になりまして、繊維価格が暴落しておりますが、その大きな原因は、綿花の値下りということから来ております。十六万五千こりにしましたことが、業者としまして需給関係数字に多少合わないという点もあり、その辺からある意味で、一口に申しますれば、がつかりしたような相場も出たというふうにも見受けられる点も確かにあるわけであります。しかしながらこの十六万五千という数字の出ました事情といいますか、そういう点は、私どもの立場からの見方というものを御理解いただけば、こういうことも納得していただけるのではないかというふうに思います。この点は私実は関係の業界にもよく説明しておるつもりでありますけれども、お尋ねがございますので、かいつまんで申し上げますと、綿製品関係の需給の数字を、私どもあれこれと、生産なり出荷なり輸出なり在庫なりというような数字を、いろいろと検討いたしながら、次の期の需給推算を見当づけ、これに対しまする生産数量というものをきめておるわけであります。十二月のものをきめます際に、統計的に現われております数字を申し上げますと、十月までの数字がわかるわけであります。十月末におきましての在庫の数字というものは、多少違いがあるかと思いますが、概算で申し上げますと、二十五万四千こりがメーカー及び商社を合せた数字として出て参つた。しこうしてその数字は前月に比べまして、一万七千こりの増加というような数字に相なつておるわけです。十月におきまして九月よりも一万七千こり在庫がふえたということは、確かに事実でございますが、しかしそれ以前の数字ちよつと見て参りますと、操短勧告を当初やりました三月末における在庫というものが、約三十七万こりあつた。それが逐次減少して参りまして、九月までは毎月減少して来た。二十日辺で減少程度が非常に少くなつて参りましたが、九月から十月になつて、初めて先ほど申しました一万七千こりというような状況を呈しておるわけであります。その間の統計的な数字から御判断いただきますと、紡績はかつてことしの三月ころは、三十七万こり持つてつた。これは当時立合い停止の問題も起りましたごとく、持過ぎ過剰であるということは確かに言えると思いますが、ともかくも三十七万こり持つてつたという事実、それ以後において逐次在庫は減少して参つたという事実、それからわずかに初めて十月におきまして一万七千こり在庫がふえたという事実、そこらの点を見ました場合に、十一月はこれは統計的にも使えませんし、十一月の市況が、綿花の暴落等もあつて、あるいは季節的な事情から見まして、そう活発でないということも想像されないわけではありません。従つて十一月になりまして、ストックが出るであろうということも推算をしないわけではございません。また同じような事情から、十二月に入りましたならば、十二月もさらに若干のストックが出るということも考えなかつたわけではございませんが、それらを合せて見まして、紡績の持つておりまする資金的な力から、その限界線を越すような数字になるほどのことはあるまいというふうに、私どもは判断いたしたわけであります。前の池田大臣もおそらく同様の判断をなさつたことと思います。ただ先ほどお話の中にもございました、前大臣はさような数字から、十二月もとりあえず従来の操短勧告の数量であつた十六万五千こり横すべりというふうにおきめになつたわけでありまして、一—三月以降のことにつきましては……。
  30. 坪川信三

    坪川委員長 徳永君に申し上げますが、要点だけを簡潔に願います。
  31. 徳永久次

    ○徳永政府委員 もう少し事情を見てからというのが、前大臣の御趣旨であつたようにも思うのでございまして、山手委員からお話のございましたように、十六万五千こりを長期にわたつておきめになつたということではないということを、御了解いただきたいと思うのであります。さような事情であつたわけでございますが、最初に申し上げましたごとく、何さま繊維界が原綿の価格の低下に伴いまして、製品価格が暴落する。従つて業者として相当苦しい事情にありました際でございましたので、冷静に統計的に判断しますればそれほどでないというような数字を、心理的にひどく感じたわけであります。さような受取り方の食い違いがおもな原因じやないかというふうに私ども考えております。
  32. 山手滿男

    山手委員 今の局長の話から行くと、要は原綿の暴落からこういう事態が起きたというお話でありますが、これはやはりよく考えてもらわなければいかぬと思うのです。それはもちろんそれもあります。ありますが、日本紡績産業というものは、いろいろな事情もあつて、六箇月原料を手当をして、持つている。ユーザンスは四箇月ある。ですから安くなつても高くなつても、ある一定の価格でできるだけ持ちこたえて、価格を安定させるように出て来ているのです。それをよくあなた方も御承知であるにもかかわらず、暴落したのは、原料の関係で暴落したのだというふうにきめつけられることになると、今の繊維産業が世界的に優位を保つて来ている原因を、日本政府自体が否認して行くというようなかつこうになるのであつて、これはよく政治的に含みのある態度で新大臣はやつていただかないと、間違いだと思う。絹は別ですが、人絹、スフあるいは毛、そういうものが全部暴落をしたのは、何に原因があるかというと、綿製品が暴落したことによつて、全部ほかの繊維関係の値段も押して来た、ここに今度の繊維の恐慌相場があるのだと思うのでありまして、綿が中心なんです。綿でこういう手を打つたものだから、スフや人絹糸やそのほか毛なんかに全部波及したわけです。ですから綿が中心ですから、綿に対する政策をがつちりひとつこの委員会にでも、これはもう事前によく話をしてもらつてつてもらわなければ、今までのような場当りでやるということでは困ります。
  33. 今澄勇

    今澄委員 そこで時間も大分なくなりましたから、私は大臣関係する点を簡単にひとつお伺いをしておきたいと思います。  第一点は従来の通産行政は吉田内閣の最も欠陥でございまして、兼務大臣か常にやつてみたり、あるいは閣内において発言権のない参議院の諸君が通産大臣なつたりして、今日の日本の全般的な行き詰まり的な傾向は、いわゆる内閣の政治力の中における通産担当者の無気力と無計画がもたらしたものであるということを申し上げて私は池田通産大臣退任の機会に、吉田内閣の中に大きく比重を占めておつた池田的色彩というものがこの際払拭せられて、日本産業行政というものが大きな国の政治の中心であるという本来の姿に返つて来ることをまず新通産大臣に御希望を申し上げておきます。  もう一点は、新通産大臣は非常に日本産業行政については堪能な方であると聞いており、その熱意もまことに相当なものだというお話でございますので、この機会に日本経済審議庁がああいつた姿になり、その結論は閣議に報告される程度のことで、計画的な日本産業の総合対策というものについての大きな欠陥が現在あるのじやないか。だから経済審議庁の長官を兼務せられておる小笠原大臣は、それらの経済審議庁で出た日本の全般的な計画的構想と、通産省が行うそういつたいろいろの通産行政と、閣議において大蔵省なり、外務省なりあるいは農林省なりと競合するいろいろな各省との問題を、一体今後はどのような観点と、どういう決意に立つておさばきになるかということを、御質問とともに私は御激励を申し上げて、日本のいわゆる商工行政というものの基礎をひとつ十分固め超行くような本格的施策をお願いしたい。これについてまずひとつ御答弁を願いたいと思います。
  34. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 御激励をいただいてまことに感謝にたえません。私ども日本の総合経済政策というものはぜひとも必要であり、またそれが立つことによつて通商産業行政等も行われるべきであると考えますので、この経済審議庁の方をもう少し強化すると申しまするか、総合的な国策をあそこで立てさせまして、それに基いてやりたいという熱意に私は燃えております。従いまして今後できまする分はでき得るだけこれを発表申し上げて、そうして皆様のお知恵も借りて、また皆様の御指導も得て、ぜひ日本はだれが考えてもこう持つて行くべきである、日本の通産行政というものはこう持つて行くものである、日本経済政策は総合的にはこう持つて行くものであるということを皆さんの前に明らかにして、その上でひとつ皆さんと御相談をし合つて、りつぱな総合行政とまた通産行政を行いたい、かように私は考えております。私は率直に申し上げまするが、まだ日が浅いので十分ここで私の意見を申し上げることができませんけれども、この次の機会がございましたならば、私は一度率直にそういうことを皆さんに申し上げて御批判を得、そうして御協力を得てこれを進めて参りたい、かように考えております。特に最近の通産行政についてお示しのごとく、遺憾な点があつたかと思いまするが、これは私はひとつ全力を尽して、閣議におきましても十分なる発言をいたしまして、皆様の御期待に沿いたい、かように考えておる次第でございます。
  35. 今澄勇

    今澄委員 今の私の質問は超党派的な、通産委員としての良心的な私の第一回の注文で、どうかひとつ大臣は今後の日本の商工守政というものに対する良心的なあり方を示してもらいたい。  それで第二点は今までの池田行政で長い間の、池田大蔵大臣時代から堅持せられました超均衡予算、ドツジ財政のもとにおいて、日本産業国内的な諸問題から、外国産業と自由競争ができないので、基礎産業的なものについては補給金的な国家の補助をやらなければ無理だということがわかつてつたものについても、一応これをドツジ財政の建前からそれらの補給金を切り落し、造船についても利子補給の名目をつけて、予算の中においても補給金的なものでありながらも、これをおそれたような、ほかの名目でこれらの産業を今日まで政府は多少とも援助するような形態をとつて来たが、この際わが国の肥料工業についても、プラント輸出についても、石炭についても、日本の重要基礎産業が私は補給金的な、外国産業日本基礎産業が食い荒されないような、いわゆる保護政策というものは常に弱小経済のもとにおいては必要なのであるが、これらの問題に対して通産大臣は従来通りこういう国管法的な形式は全然とらないのか。それとも場合によれば日本基礎産業に対するそれらの補給金なりあるいは保護対策をとつて、これを守りながら外国の蹂躙のもとにはゆだねないのだという対策で行かれるのか、これをひとつ大まかなあなたの見通しをお聞きしておきたいと思います。
  36. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私は現在の段階ではインフレに持つて行くような政策は困ると思うのでありますが、さればとて超均衡予算という一つの。プリンシプルにとらわれて、日本産業の発達にならないようでも困る、実情に即しないようでありますので、たとえて申しますならば、基幹産業あるいは動力のもとをなす電気、石炭等につきましては、先刻もちよつと御説明を申し上げました通り、財政資金を投入するということも申し上げておりますが、また中小産業につきましても、さつき申しましたごとく、財政資金によつて長期かつ低利資金を供給いたしたい。こういうことを私は申し上げておるのでありまして、私は実情に即して、これはぜひ日本産業の発達のために持つて行かなければならぬ、補助金がいいとか、悪いとか、そういうプリンシプルにこだわるべきものではない。実情に即したものに持つて行くということが今の日本では一番ふさわしいのではないかと、そう思いますので、この案を出します前にも大蔵大臣とは若干話がしてあるのでありまして、多分御承知でありましよう。大蔵大臣弾力性あるという言葉を使つております。この弾力性をどこまでやつてもらうかということにつきましては、インフレに持つて行かないで、しかも日本産業振興をはかり得る、そこに何とか一つのつり合いというもの、限度というものがあるでございましようが、そういうことに持つて参つて、ぜひとも日本産業をりつぱなものに再建いたしたい。かように実は私は考えております。
  37. 今澄勇

    今澄委員 そこで今度は、今までの懸案を二つほどお聞きしたい。その第一は、そういつたいろいろの観点から、今まで問題になつておる四日市の燃料廠の払下げでございますが、これは池田前通産大臣は従来の方針を改めて、全般的な兵器産業等との関連とにらみ合せて根本的構想をこの委員会において発表するということでございましたが、これらの四日市並びに日本の各軍事施設の、いわゆる賠償指定のはずれたものその他を含めた全般的計画が、あなたのお手元に今お持ち合せがあれば発表していただきたい。
  38. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今まで一応引継ぎは受けましたが、まだ具体的にどうして行くかということについては、何らその引継ぎは受けておりませんし、話も受けておりません。私は自分の頭のもとで今後この案を練つて、できるだけすみやかに解決したいと思つております。
  39. 今澄勇

    今澄委員 そこでその問題は大臣就任して間もないわけでありますから、この程度で留保して、今御答弁の中にありました中小企業についで御質問申し上げます。中小企業は先般中小企業庁が中小企業金融特別会計法というものをつくりまして、大著としばしば折衝の結果、国家財政資金の二百億なり、三百億をこれに投入して、そうしてこれを二十倍くらいの発券のもので商工中金にやらせるならば大きな金額になる。少くとも中小企業金融のこういう特別会計ができれば、これの使い方は私どもはいろいろ野党としても考えて御意見を申し上げようと思つたのであるが、池田通産大臣の就任されるや、この中小企業庁の事務当局が努力してつくり上げたものを一挙にぶちこわされたということも御承知の通りであります。そこで私はこの中小企業資金特別会計に対する構想というものか、現下日本中小企業金融難打開のためには抜本的な策に進む一つの道程としてここに三百億を計上して、これが二十倍の資金の元になれば、これは相当中小企業者の望んでおる金融難打開に進むのであるという意味において、通産大臣はこの構想に対してどのようにお考えになつておるか。さらにこれらの具体的な資金融通法というものが今内閣においても通産省においてもどういう状況であるかということをこの際御答弁願つておきたいと思います。
  40. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この中小企業金融特別会計をつくるかどうかということにつきましてのお話については、実は私も事務的にもこういう問題が起つておることをこの間中小企業庁の長官から伺つたのであります。その際にこれは相当適切なものだと自分としては思つたのでありますが、しかし前大臣のときに、これが今仰せられておる通り、抹殺されておるわけはどういうところにあるのか、あるいはこれが大蔵省との話合いでむずかしくなつておるのかどうか。むつかしくなつておるとすればどういう点がむずかしくなつておるのであろうか。こういう点を実はまだ私日にちがないため検討が十分進んでおりません。従いまして私どもとしては今ある組織を使つて年末金融等には参りたい、また将来についても参るということは、さき申しました通り、あるいは国民金融公庫であるとか、商工中央金庫であるとか、あるいは政府資金の預託であるとか、こういうことをやつてもらうようにしておりますが、お話の通りこの特別会計は非常にあとのためによいことだと考えますので何とか話合いがつくものなら実現させたいと考えておる次第であります。
  41. 今澄勇

    今澄委員 今の大臣の御答弁まことに重大な点で、これは農林中金に対する農林関係金融通法はすでに発動されてまことに好結果を収めておるのに、全国の中小企業の今日の苦難を前にして、少くとも池田通産大臣がこれを押えたという事実こそは、われわれが池田通産大臣を糾明不信任した根本的な姿であつて、決して失言その他の問題の言葉じりをとらえたものでないということはこの機会に申し上げておきたい。そして私は今ここで大蔵省との折衝においては事務当局間において大体話合いが妥結に進んでおつたということを通産大臣のお耳に入れておいて、きようは時間がないのでこの問題については今後大臣の御善処を要望し、私どもは新大臣がこれらの根本的な中小企業金融解決に進まれるように希望します。  最後繊維の問題が残つておりますが、通産大臣は過日の就任記者団会見で、中小業者に対する二十億の融資、すなわち商工中金に与えられた今次二十億はまことに焼け石に水だということを、私は新聞記事で見ただけでございますけれども、おつしやつておられるようであります。しからば私は新通産大臣が二十億は焼け石に水であるということをみずからお認めになつておるならば、ここに焼け石にならざるほんとうに助かる水をあなたがお出しになるだろうということを全国の業者が期待しておるのだが、年末金融を通じ、中小企業にあなたはそういう焼け石以外のどういう策があるかということをこの議場において御報告願いたい。
  42. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 あれは焼け石に水だと思うかというお話でありましたから、それで私も、これは率直なお話でありますが、そう思いますねと言いましたのはあなたも御承知でしよう。過日ここでも申しましたが、中小向けの金が一体今なんぼ出ておるかということを見ますと、七千四百億から出ておるのです。三百万円以下の中小業者に対する日本の総金融機関の貸出高は七千四百億からあるのでありまして、二十億というとその何厘かにしか相当しませんが、その二十億もないよりは非常にいいのであります。そうしてさつき申しました通り、これは今貸出しになつておりますけれども、しかしこれが商工中金への出資になりますれば、二十億で債券を出して四百億の元になりますから、これはぜひそう持つて参りたいと思つております。そこで私はそのときにそういう質問もなく、また申し上げる時間もなかつたのでありますが、実は最近の各金融機関の貸出しが中小企業に対しては減つておるが、このことをぜひふやしてもらう、たとえばここで一例を申し上げますと、全国の銀行が昭和二十五年七月に中小企業に対して貸しておつた額は総貸出高の三割一分であつた。それが今は何と二割四分に減つておるのであります。そうしますと、総貸出高は何ぼあるかというと二兆四千六百億円あるのでありますから、従いましてこれが今のように三一%から二四%に減つておるのであります。従つて七%分がふえますと相当大きな金額になるので、この点を市中金融機関に訴えたいという意味をつけ加えたかつたのです。それが実は漏れたので焼け石に水とだけを言つたので、何だ荒つぽいことを言うじやないか。荒つぽいことを言うのではなくて、実は私は数字の根拠をもつて申したので、言葉として私が言つたのではない。焼け石に水じやありませんかと言われたのでそう言えぬこともないと言つたのが実情であります。従いまして私は日本金融機関がやはり二十五年七月ぐらいまでもどつてもらつて、もう七%よけい貸してもらう、これは非常に大きな効果があるので、そういうことを皆さんとともに金融機関に訴えたいというのが私のほんとうの考え方だつたのです。そうすると年末金融に相当大きな潤いが来る、こう思つたのであります。
  43. 今澄勇

    今澄委員 それではこれで終りますが、最後に私はきよういろいろ抽象的に論議された絹織物、人絹織物等の話の中で、先般私がずつと視察をして当通産委員会からも幾たびか参りましたが、福井方面におけるあのいわゆる企業のさんたんたる情勢というものは、これはやはり絹織物、人絹織物等の問題を論議すれば、一応地方的にもこれらの業者の実態というものを大臣に御認識願つておかなければならぬと思います。私はそれらの不況は全部輸出不振から来ておつて、極度に悪いのですが、当面大臣は抽象的な問題でなくて、これらの絹、人絹織物等の窮状を何とか救い得るような応急対策というものが、この年末に際してないものかどうか。たとえばひもつき融資で商工中金がこのためどの程度流すとか、あるいは銀行のこういつたような組織によつてこの程度流すとか、あるいは税金の上においてこういう減免措置をするというような、何かこれらのものに対する具体的な方策があれば、これをお聞きして私の質問を終るものであります。
  44. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 金融のことにつきましては、先般申し上げました以外に具体的なものを持ち合しておりませんが、しかしこれは取扱う人の手心では相当やれる点がただいま申しました通りあるように考えられますので、こういう点についてやります。私も実は非常に忙しいので、まだ皆様の話を伺つておりませんが、紡績業の方も十日に立つて十一日に東京見えていろいろ話をされるそうでございます。その話はひとつよく伺いまして、とにかく当面のことは当面のことで解決する、長いものは長いもので解決する、こういうぐあいでひとつ進みたいと思つております。いずれにいたしましても私は通産行政をおあずかりした以上、御関係方々がどういうふうになれば幸福になれるかということを一意念願といたしましてやるつもりでございますから、この上ひとつよろしく御鞭撻のほどを願います。
  45. 永井勝次郎

    ○永井委員 大臣の時間がないようでありますから、基本的な点だけを述べまして、なお前回の委員会において質問を留保してあります大臣に対するストの関係につきましては、田中君にお願いいたしたいと思います。池田前通産大臣が、あのような状態でおやめになつた。やめるとともに繊維が上つた、株が上つたというように、非常に経済界が明るくなつた、こう言われておるのであります。これは要するに吉田内閣に対する、自由経済に対する業界の否認の具体的な表現ではないか、かように考えるのであります。先ほど来大臣の答弁を聞いておりますと、自由経済から計画経済への移行の片鱗を言葉のはしはしに出しておるようでありますが、大臣にこの点に対して明確にお伺いをいたしたいことは、貿易の不振にしましても、国内産業の行き詰まりにしても、要するに自由放任経済の行き詰まりの状態がようやく具体的な形になつて現われて来て、それが壁にぶつかつているのが現在の吉田内閣経済の実態ではないか、かように考えるのであります。従つて国内における政策の転換が貿易の不振を——先ほど大臣は二つほどあげましたけれども、問題はこんな上つらなところにあるのではなくて、掘り下げれば外交政策の行き詰まりであり、経済政策の行き詰まりである、かようにわれわれは考えるのであります。そこで自由経済の中で補助金を出したり何かやりますから、これはダンピングの一つの変形であるというようなことで、国際間で問題になるのだと考えるのでありますが、各国計画経済を強力に進めておる、こういう国際環境の中で、日本だけが自由放任の経済で立ち向つて行けるとお考えになるのかどうか、自由党内閣の中においてもある程度計画経済を進めて行かなければならぬ段階に発展して来ている、かようにお考えになられるのかどうか、この点の基本的な態度をひとつ明確にしていただきたいと考えます。貿易の不振の根本的な問題は何と申しましても先ほど山手委員からもお話がございました通り、鉄、石炭、そういつたような基幹産業、ことに原料の輸入高ということが根本的な問題であり、貿易の不振ということが根本的な問題であります。対支貿易にいたしましても、あるいは東南アジ向けのいろいろな諸問題にいたしましても、経済で打開できる条件というよりは、国の外交の面において打開する以外には道はないと考えるのであります。イデオロギーの承認ではなしに、こういう現実の情勢の確認の上に立つて、対支貿易東南アジアその他の諸地域、特にポンド地域との貿易について新たなる方向を打出すのでなければ、金融対策とか、あるいは若干の補助とか、そんな問題で問題が解決する段階ではないとわれわれは考えるのでありますが、これに対する大臣の認識をひとつ明らかにしていただきたいと思うのであります。  第三は中小企業に対する対策でありますが、中小企業は単に金融の問題であるとか、あるいは課税の問題であるとか、こういうような具体的な、表面に出ている問題の処理だけで問題が解決できるならば、非常にこれは安易なものであるとわれわれは考えおるのでありますが、そんなところに問題の基礎はあるのではなくて、日本産業構造の中における中小企業のあり方というものをはつきりと打出すのでなければ、そういう末梢的な問題の解決では解決はできぬ。従つて今後日本が国際経済の中に立ち向つて行くその経済施策において、中小企業はどういう方向を指向して政策をお進めになるお考えであるのか、この点をはつきりとお伺いしておきたいと存じます。  なお中小企業に対する年末金融の問題、先ほど今澄君からの御質問でいろいろお話がありましたけれども、輸血にいたしましても、輸血という名ばかりで、実際の有効量を輸血しなければ何ら効果はないのであります。年末金融においても有効量はあるはずでありますが、この年末金融の有効量をどういう程度にお考えになつておるのか、その有効量に対してどのくらい具体的に対策があるのか、これらの点を数字的にもつと詳しくお話を伺いたい、かように思うのであります。
  46. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいまいろいろお話がありましたが、実は根本の考え方が少し私どもはあなたと違つているのでありまして、従いましてすべての問題はそこから派生して来ているので、私どもといたしましては自由経済のもとにすべてを処理いたして参りたい、こういうふうに考えているのであります。但し実際問題が必要とします場合には、そのときどきにおいて実情に合うようなことをやつて参るのは、これは自由主義経済のもとにおいても当然でございまするので、そういうふうに私どもつて参りたい、かように考えているのでございます。  なお中小企業に対する有効量という問題でございますが、現在のところなし得る最善を私どもは尽すということでございまして、たとえば金が幾らでもあれば幾らでも出し得るのでありますが、金を出し得る面に限りがありますので、あの程度で私どもはごしんぼう願つているのでありますが、さつき申し上げました通り、次々と私どもは手を打つて中小企業金融措置を大きく持つて参りたい、かように考えている次第でございます。
  47. 永井勝次郎

    ○永井委員 日本が独立をした、今後独立をさらに強化して行かなければならぬという一つ経済構想の中において、独立日本経済構造をどういうふうに持つて行くのが、どの程度のものができれば独立日本が自立経済の上に立つて独立国としての実力を培養して行けると考えているのか、ただ単に独立だ、独立だ、条約ができたから独立だというようなことで、外国に依存する経済の中では独立というものはあり得ないと考えるのであります。独立というからには、経済的な自立がなければならぬ。経済自立の基本的な構想というものを大臣はどのように考え、その中において通産行政をどういうふうにおやりになるお考えであるか、この点だけをひとつ伺つておきたい。
  48. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 独立後の日本経済のあり方が前と異なるべきものであるということはまことに御同感であります。従いまして本委員会の本日旁頭に、私が日本通商及び産業政策の根本について申し述べましたので、これをここで繰返すことを省かしていただきたいと思います。
  49. 田中織之進

    ○田中(織)委員 私は主として炭鉱ストの問題についてお伺いしたいのでありますが、ただいまわが党の永井君の質問に対する大臣の答弁に関連して一点先に伺いたいのは、たとえば中小企業への金融の問題につきましても、金融機関の貸出率が昭和二十五年の七月より現在は七%減つている。従つて金融機関の方へ少くともその七%、二十五年の七月並に引上げろという要求をしたいという大臣の答弁でありましたが、なかなか金融機関が七%中小企業への金融を減らしたということには、金融機関には金融機関のりくつがあるのであります。それはやはり中小企業経済の実体そのものが非常に脆弱になつているというところに、金貸しをする金融機関の方が締めて来たという理由があるのであります。われわれが中小企業に対する金融問題あるいは振興対策をこうしろというような中には、中小企業に対する信用保証、その経営の内容を具体的にどういうふうに引上げて行くかということの対策を実は求めているのであります。その点から見まして、私は勢い総合的な対策でなければならない、かようにわが党としては考えるのでありまするが、まずこの点について大臣の重ねての御答弁を煩わしたいと思うのであります。
  50. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 さつき申し上げましたうちに、金融機関に要求するというようなことがございましたが、実は私ども金融機関に要求する権限を持ち合せておりませんので、金融機関の方の理解を得てそういう貸出しをしてもらいたいと、こういうことでありますが、別に要求するという権限を持つておりませんから、この点誤解のないようにお願いいたします。  それからなお今の信用が足らぬところはどうするかという問題につきましては、信用保険の制度を、現在あります保険の限度を今度の補正予算でさらに七十二億円増加いたすことに相なつておるのでありまして、それは相当お役立ちすることと考えております。
  51. 坪川信三

    坪川委員長 向うで質疑が始まつていますから、もう一つにお願いします。
  52. 田中織之進

    ○田中(織)委員 これはきわめて緊迫した問題でありまするのでこの際伺つておきたいのでありますが、六日の本会議における野党代表である伊藤卯四郎君の石炭及び電産の争議に対する緊急質問に対しまして、特に炭鉱争議の問題について、通産大臣は中労委の会長が相当の確信のもとに解決に努力をしているので、それを期待しているという旨の答弁をされたのでありますが、私のお伺いしたい第一点は、相当の確信というのは一体具体的な何を意味するか、これは中山中労委会長が相当な確信を持つておるというのか、それとも中労委会長の調停の効果というか、そういうものに対して通産大臣としてこれは解決へ向いて進むんだという意味の確信なのか、この点をまず明らかにしていただきたい。相当の確信というのは、きのうの朝示された中労委会長の調停案そのものを意味しているかどうかという点がお伺いしたい第一点であります。それから第二点は、中山中労委会長の異常な努力に対しましては、われわれといたしましても非常な敬意を払つておるのでありまするが、中労委は政府機関とは独立した立場にあるのであります。ただその中労委の動きだけを政府はたよつておるというのでは、これは石炭争議に対する政府としての対策というものは何もないということになるのであります。その意味から見て、中労委の動きというものを考えなければなりませんけれども政府自体としてこの石炭争議をどう解決して行こうとするお考えがあるのかを第二点として伺いたのであります。第三点は、きのうの朝示された中労委会長の調停案に対しまして、経営者側の態度は、まだ私この委員会に出るまでには聞いておりませんが、大体あの調停案はのめないということに新聞紙等の報道がされておるのであります。組合側は、まだ組合側の緊急中央執行委員会が終りませんから確定的には申されませんけれども、大体あの調停案では組合の要求しておる要求がほとんど通つておらない、その意味から見て、この調停案には応じられない、そういうことで、これは質問申し上げておる時間にも、いわば中労委会長のせつかくのきのうの提案というものが不調に終るという事態は、すでにもう明白になつて来たものと私は思うのでありますが、この段階に至つて政府としてはどうされるか、これが第三点であります。それから……。
  53. 坪川信三

    坪川委員長 田中君に申し上げますが、予算委員会でもう質疑者が発言を始めておりますので、またすぐ来ていただくことにしますから、一応この程度で打切つていただきたい、次に譲つていただきたいと思います。
  54. 田中織之進

    ○田中(織)委員 これはしかしきよう中労委会長の調停が不調になつたということで、再び炭鉱争議が長期化する。これが各産業に及ぼす影響はきわめて重大な問題でございますから、私はこの問題について率直にお答えしていただきたいと思います。
  55. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 最初の第一問に対しては、これは中山会長の自信でございます。私の自信ではございません。中山会長の自信のことを申し上げたのであります。第二の問題につきましては、これは通産大臣というものは争議の解決に立ち入るべき権限を持つておりません。従つて中労委のあつせん、なり労働大臣なりの御解決を切に希望しておる次第であります。第三の問題は、これは私ども通商行政をおあずかりする者といたしまして、一日も早く両者の互譲妥協によつて円満妥結を見んことを切望いたしております。
  56. 坪川信三

    坪川委員長 それでは繊維に関する件について、政府委員より説明を求めます。徳永繊維局長
  57. 田中織之進

    ○田中(織)委員 ぼくの質問は……。
  58. 坪川信三

    坪川委員長 予算委員会で通産関係の問題が終つたらすぐ参りますから、ちよつと待つてください。
  59. 徳永久次

    ○徳永政府委員 先ほど繊維関係につきまして御質問のありました点に対して大臣から大筋がお答えあつたわけでありますが、若干細目の補足の意味で申し上げておきたいと思います。一つ操短の問題につきましては先ほど申し上げましたわけでありますが、中小企業の問題につきましては、大きくは金融対策の問題と、もう一つは事業の健全化と申しますか、この問題になろうかと思うわけであります。その後者の問題につきましては、御承知のように目下のところ法的なものといたしまして中小企業安定法というものが前国会におきまして成立いたしております。私どもは今それの具体化を、業者側の組合の結成に即しながら当つておるわけであります。ただまだ時期尚早でございまして、その組合の結成、それから組合の結成後の具体的な調整規定と申しますか、相談等の段階に入ります点につきましては、まだきわめて不十分でございまして、ただいまのところでは染色関係一つ発足し、それから綿スフ織物関係の生産制限が発足しかけておるというのが現在の段階でございます。またその内容も、業者間の問題といたしましても、戦後無組織で放置されておりましたような事情もございまして、強度の統制に入るだけの態勢が十分整備いたしていないというような事情もございまして、すべり出しはゆるやかな点からスタートしておるという点もあるわけでありまして、この点は法の許します限り、今後逐次強化されて行くものというふうに私ども了解もし、またさような指導もいたしたいというふうに考えておるわけであります。さらにこの問題につきましては、業界側におきまして、先般議員側のおつくりいただきました安定法そのものの一部の改正といいますか、もつと実情に即するように、動かしてみました結果からの若干の問題もあるようでございまして、さような研究も行われておるわけでございまして、そういうものの成案も出るにつきまして、また皆様の御援助をお願いするということになろうかと思つておるわけであります。それから金融の問題につきまして、先ほど御指摘のありました中に、一つ商社金融の相当深刻な状況、あるいは倒産続出しつつあるような状況というようなお話があつたのでありますが、この点につきまして、私どもの若干承知もし、関心も持つている点を一、二点申し上げてみたいと思います。今回の繊維関係の糸価の暴落に関連いたしまして、極端に申し上げますならば、商社関係はそれぞれの商品取引所もございますので、その相場の変化というものを市場につなぐというような形におきまして、ある程度直接的な被害というものを少くするような自衛措置というものをとつたと思われるわけでございますが、しかし綿関係で申しましても、一万以上にわたります機屋というようなところになりますと、さような活発な措置というものもなかなかとりがたい存でありまして、手元に持つておりました商品の値下りから来ます損失、それから来る手形の落せないというような事情、それがひいては倒産というようなことになり、その分が商社の手形のまわらないというような事態に循環して参るような状況ができておるわけであります。この点につきまして、商社側におきましても、今回の暴落は相当大幅でありましたような関係から、従来のような措置だけで、ケース・バイ・ケース的に金融機関と話合いをしていただくというようなことだけでは済まないというようなふうに事態を考える動きが相当進行しておるようであります。私ども、この成行きにつきましては、たえず連絡もとりながら、それの具体化にお手伝いをいたしたいというふうに考えておるわけなのでありますが、そういう問題を考えて参りますると、単に商社だけ、あるいは単に機屋だけというふうな金融問題の料理の仕方では不十分だと私どもしみじみ感じておるわけであります。この点は、貸手の金融機関の事情もあり、商社、機屋と、縦断的に問題を考えなければなりませんが、非常に範囲も広い、数も多いというような事情もありまして、そういう機運が相当熟しかけてはおりますが、まだ十分にまとまつていない。私ども、必要がありますならば、縦断的な金融対策懇談会と申しますか、そういうふうなものをつくつていただいて、事態の根本的な解決の方途を見出すようなことも考えてみたいということで、それぞれの業界の世話役というようなものには内々御相談申し上げておるような次第であるわけです。  それからもう一つ、先ほどのお話の中にもございました商品金融会社、いわゆる一万田さんの構想といいますか、そういう形において新聞紙上をにぎわしております問題、これについての私どもの事情を申し上げたいと思つております。御承知のように、一万田さんが関西に行かれました際のお話の中にそういう点が出ておるわけであります。私どもいろいろと事情を聞いてみましたところによりますと、事前に一万由さんがそういう用意をなさつた発言でもないように見えるのでありまして、現地におきましての業者側の発言に、そういうものが必要であるということならば、金融機関としてはできるだけのお手伝いをしようという程度に言われたのが真相のようでございます。一万田さんは東京へ、先週の金曜日でございますか、お帰りになりまして、目下金融機関当局として、日銀なりあるいは政策委員会におきまして、その問題を、事務的にと申しますか、実行方法等につきましての検討を進められておるようでございます。他方業者側におきましては、紡績あるいは輸出商社側に、新聞紙をにぎわしております通りいろいろと案が練られおるわけでございますが、問題が簡単に固まつていない状況というものが、その問題の必要性はさることながら、同時に、具体的な問題のむずかしさというものを示しておる面があろうかと思います。今、輸出商社側なりあるいは紡績側から、内部的な業者側としての実情に即する案の作成に十分な検討をしつつある時期でございますので、それの固まるのを待ち、他方、金融機関側における事務的な検討の進行を見つつあるというのが率直に言いまして私どものただいまの段階でございますが、ただ、いずれにいたしましても、商品金融会社的なものがかりにまとまらないとしましても、それにかわると申しますか、繊維の現況における金融問題の重要性というものにつきまして、一万田総裁が十分の御認識と好意的な配慮を持つておられるということに私ども非常な希望を持つているわけであります。このまとまります形が商品金融会社的なものにかりにならないといたしましても、先ほど申しましたような繊維業界における金融、極端に申しますれば梗塞的な事態の起るおそれというものから、業界としているくと対案つくり上げようとしている。そういう問題の解決に十分役に立つような結果が生れることを期待もし、必要な限りの援助もしたいというふうに考えている次第でございます。先ほど来問題になりました点につきましての私ども考えをかいつまんで申し上げた次第であります。
  60. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 まず最初にお聞きしたいことは、横浜の生糸の取引所、  この取引所の使命を具体的にお話をしていただきたい。
  61. 徳永久次

    ○徳永政府委員 横浜には御承知のように生糸の取引所がございますが、これは実は農林省の所管になつておりますので、私から十分なお答えはいたしかねることを御了承いただきたいと思います。
  62. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 そういうことになると、現在生糸の取引所が現物のないのに思惑的な取引が行われておるが、実際面には少しも引渡しが行われていないという実情にあるのであります。これはやはり農林省の方の……。
  63. 徳永久次

    ○徳永政府委員 先ほど申しましたように、農林省の関係になつておりまして、取引所の今の運営状況等の問題点につきましては、私どもとして直接にお答えいたしかねるわけであります。
  64. 田中織之進

    ○田中(織)委員 今の長谷川委員からの質問に対する繊維局長の答弁、非常に不満です。それは取引所そのものの所管は農林省かもしれないけれども、これがひいては福井その他機業地に全国的に、ことに絹織物関係に原料関係で響いて来ることは、これは当然です。従つてこの横浜の生糸取引所がどういうふうに運営されているかということについては、通産省の繊維局長としてもう少し勉強しなければならぬと思う。この答弁きわめて私は不満です。
  65. 徳永久次

    ○徳永政府委員 たびたび申し上げますが、私どもの所管外のことにわたりまして申し上げまして、農林省に御迷惑をかけるということも、いたしかねるわけでございますので、その点御了承願いたいと思います。
  66. 田中織之進

    ○田中(織)委員 私は生糸の問題で、たまたま関連して質問を始めたのでありますけれども、先ほどからの繊維局長の御答弁を伺つておりましても、繊維産業が年末に非常に詰まつて、大暴落を来して、繊維業者が越年のために国会にも、この委員会に対しても、大挙陳情しなければならぬというような事態になつたことは、これはもう当然予見されたことなのです。従つて先ほどからの御答弁なり御説明を伺つておりますると、そういうことの見通しの上に立つた対策が通産省として——通産大臣は最近就任されたばかりでありまするから、無理だとしても、私は少くとも繊維局においてはその具体的な見通しのもとに立てた対策というものがなければならぬと思います。先ほどから各委員方々が問題にされておる点も、私はそこに帰着すると思うのです。そこで根本的なそういう繊維産業全体の、これは設備関係から来るものもあるし、原料関係から来るものもあると思いまするが、恒久的な対策の問題と、それから繊維関係産業が年を越すための応急の処置問題と二つにわかれると思うのです。恒久的な対策としてはどういうものを持つておるか、今言う一種の商品金融会社的な構想も、どちらかといえばこれは恒久的な対策の部類に入るべきなんだ。これは一万田放送で出て来ているのじやなくて、繊維局長の方から、むしろ通産省の意見としてこういうようにやるのだということが出て来るのが私は当然だと思いますので、そういう角度から、恒久対策について、どういうものを考えておるかということが一点。それから二点といたしましては、とにかく年の暮れを越さなければならぬのでありまするから、繊維産業に対してどれだけの金があればこの年が越されるか、これは一定の、年があけてからの一月、二月ごろまでの、少くとも二、三箇月の見通しのもとに、どれだけの金を繊維産業の方では要求しておるか、それを大蔵省と話合つて金融機関にどこまで出させるということの、ある程度の話合いでもすでにできているのかどうか。ただこの委員会説明されたり答弁されることは、責任のないことしか答弁してない。われわれ委員会で要求しているのは、そういう責任のないことじやないのです。従つて応急の処置として、繊維業者が越年するためには、これをどうしてもやはり金融の便、その他を政府でつけてもらわねばならぬから、国会へ押しかけて来ている。従つてその点については、繊維産業にどの程度資金のわくを確保しようとされておるのか、国会でたまたま取上げると、いつの間にか年末金融繊維関係の大手筋に対するわくは、ある程度つくられる、そして多く国会へ泣きついて来なければならぬような中小繊維業者は、中小企業の年末金融のわくでまかなわれてしまおうとするような傾向は、これは毎年繰返している。おそらくこの委員会に対しましても、年末までの間には、繊維産業だけではない、各産業が来るのです。この委員会で取上げたということになると、その産業の大手筋だけは、年末資金金融機関からある程度のものを心配してもらえて来ておるというのが、従来の毎年の年末金融の実例なのです。私はその意味で、繊維産業の年末金融の問題については、繊維局としては、総わくでどれだけのものを大蔵省なり、あるいは大蔵省を通じて金融機関にすでに話をされておるのか、もし話がされておらないとすれば、関係業者の陳情をただ聞きつぱなしじやなくて、少くとも関係の団体もあるわけでありますから、一定の資金量というものを予定して、私は大蔵省に対して通産省が大臣以下、通産省をあげてぶつかつて、この繊維業者の窮状というものを打開してやらなければならぬと思うのであります。そういう点について、その急場の問題についてどういうようにお考えになつておるのか、この二点について繊維局長から答弁を煩わしたいと思います。
  67. 徳永久次

    ○徳永政府委員 お尋ねが二つございまして、一つは恒久的な対策についてどう考えておるかという点でございますが、これは先ほど大臣がお答えになりましたように、繊維関係産業の特色といたしまして、輸出が伸びなければどうにもならないという、宿命的と申しますか、輸出の比重が相当に大きいという点があるわけであります。その点いろいろの努力を通産省全体としてやつておるわけであります。それにつきましても、先ほど山手委員からも御指摘ありましたように、外国の方がもつと気のきいたことをやつておるぞというようなおしかりもあつたのでありますが、それらの点につきましては、通産省としましても、先般外国のやつておる概況は、多少の資料もございますが、正確な点のわからない点もございますので、今企業局次長をしておる小室君が、そのための調査に緊急に向うに参つて短期間にできるだけのことを調べて来よう、そうして今後の通産政策の施策の資料にしようということで出かけておるような次第でございまして、その点は早晩何らか実を結ぶということを私どもも期待いたしておるわけであります。  それからもう一つは、日本繊維産業一つの難点といたしまして、設備が過剰であり、また業者数が非常に多いということから来ます、需給関係を自然に乱される要因というものがあります。御承知のように、現に綿関係につきましては、紡績につきまして操短勧告というようなものをやつておりますが、この制度が行政の方式としましてはいわば暫定的な形をとつておりますが、これをもつと制度的なものに切りかえるというようなこと、これが今省内で事務的に検討いたしておりますいわゆる重要産業安定法というようなものがさような意味を持つているわけです。さようなものに乗りかえる必要がある、また乗りかえることも、運用上より適切な効果が期待できるというようにも考えておるわけであります。それから中小企業の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、現に生産調節をやる法律は与えられ、これを現に実行に移しつつあるわけであります。しかし同時にその法律はまだ繊維産業の悩みを解決するには十分でないという点は業界において考えられておるわけでありまして、また私どもも目下研究もいたしておりますが、たとえば設備制限の問題等につきましても、先ほど大臣から申しましたように、私どもに研究を命ぜられておるわけでありますが、今繊維産業につきましては、一般原則論としまして、設備制限というようなことをやりますことは、各種の障害もいろいろあろうかと思いますが、繊維産業につきましては、これをやる妥当性が相当あるのではなかろうかというふうにも考えて、研究をしておるような次第でございます。さようなことによりまする需給が合理的に調節される仕組みと、根本的には輸出が伸びる政策というものが今後の政策のかなめでなければならぬというふうに思つておるわけであります。それにしましても、繊維産業は製品自体が国際的な商品でございますので、日本の力だけで動かし得ない相場の変化というものもいろいろとあるわけであります。これはいわば繊維産業の持つております産業自体の宿命的なものでございまして、これ自身には、極端に申しますれば、政府として手の打ちようがないということになりまして、政府としてはこれを自由経済の法則のもとに置きまして、取引所制度その他を通じまして、業者がその相場の成行きを機敏に判断し、それを自己責任において調節して行くというようなことを基本的な考えにすべきではないだろうか。しこうして国内的な取引所制度だけで不十分でありますならば、それをさらに外国の大きな市場に設置するというような機構、さようなことを役所として考えるのが、一つの行政の限界的な考え方であるのではなかろうかというふうに考えておるわけであります。  以上がどつちかと申しますと、ただいまの御質問の長期的な質問に対する考え方の荒筋を申し上げたわけでありますが、なお第二の点の目先の金融の問題につきましてどう考えるかということでございますが、この点は年末金融一般の問題としまして、通産省として考えていろいろと手が打たれておるわけであります。先ほど大臣からも荒筋につきましてのお答えもあつたわけでありますが、なお詳細につきましては、必要によりましては中小企業庁の長官もおいででございますので、長官からお聞き取りいただけたらよろしいのではないかと思います。私はどちらかと申しますと、直接のらち外にありまして、答弁者としては適当でないと思いますので、御了承いただきたいと思います。
  68. 田中織之進

    ○田中(織)委員 今の繊維局長の御答弁でありますけれども、私の言う恒久的な長期対策というものは、先ほど私どもの永井君の質問にも関連いたしますけれども、独立日本としての繊維産業というものは、産業規模からいつて、どこに目標を置いて、どう持つて行くのだという根本的な、従つてこれは総合的な対策ということになるのでありますけれども、これを今まで持つておらなかつた。これは先ほどから大臣も認められたように、少くともこれは紡績その他の企業の面においてもそうでありますけれども、非常な設備改善の点で支障になつて来ておる。そういう点について、今までそういう欠陥があるわけなんですから、それを長期一つの総合的な立場から見通した計画を立てて行かなければ、これはちよつとした市場の要素に基いても、繊維産業全体がぐらつくことになるので、これは私の希望でありますけれども、少くとも通産行政をあずかる通産省としては、そういう立場に立つて対策を立ててもらいたい。  それから第二の急場の問題についてのことでありますけれども、これは中小企業庁長官も見えておられるのでありますけれども、問題はやはり繊維生産関係の問題だけではなくて、繊維業者が悩んでおる問題は、どうして年を越すかという問題になると思います。それは勢い金融の問題になるので、少くとも繊維局長として、繊維業者が越年のためにはどれだけの資金量を求めておるかということぐらいはつかんでもらわなければ、勢いそれだけの資金量をどういう形で確保するか、これは直接金の心配は大蔵省がやるのだと言われますけれども、大蔵省に対して通産省から、繊維産業にはこれだけの資金を確保してやつてもらわなければ、これは来年度輸出の中心としての繊維産業全体に重大な影響を持つのだ、こういう角度で、急場のものについても、特に金融の問題についても、繊維局としてそれだけのものをつかんでやつていただいておるかどうか。今の答弁の様子から見ると、そこまでおそらくやつていないのじやないかと思いますけれども、現に国会等に年末迫つて押しかけて参られておる人たちは、通産省にそこまでの努力を期待しておると思うので、この点も別に答弁を煩わしませんが、私の希望を申し述べておきたい。  それからもう一点は、今輸出の問題にかかつて来るのだ、私もそう思います。ところで、たとえば中共向け輸出の問題等について、これは高橋参議院議員が通産大臣であつた当時、今度わが党から衆議院に出られておる帆足君、あるいは改進党の宮腰君等が北京で締結して来た貿易協定に基いて、いわゆる中共向けの輸出のわくを広げるという問題が取上げられた。これはその当時の通産省の事務当局の諸君でありますけれども、やはり日本産業の立場から見て、この中共向け輸出禁止という政治的なわくをはねのけるための事務当局の努力を私は非常に感謝しておる。ところが今日本はアメリカから直接の援助を受けていない。従つてアメリカが中共向けの輸出禁止をやつておるというようなことを日本がアメリカにならつてやらなければならぬ必要はない。先ほど大臣は、せめて西欧諸国か中共と取引をやつている程度のことは日本もやりたいと言われたけれども、この間の本会議における岡崎国務大臣の答弁では、日本がアメリカの立場に気がねをして、それ以上に積極的に中共向け輸出のわくを閉じて行くというふうな外交政策を堂々と本会議で示しておる。政府部内の少くとも通産省の事務当局は、繊維産業輸出に立つて行かなければならぬということになつたならば、一部にしかすぎませんけれども、たとえば中共向け繊維製品の輸出の問題について、岡崎外務大臣のそういうおべんちやら外交を修正されるまでの腰をきめて、通産事務当局は事をやらなければならぬ。今も企業局の小室君が行つておるということでありますけれども、そういう案をつくつて大臣を通じて——大臣は命がけでやると言つておるのですから、閣議で岡崎外交のそういう場当り外交を改めさせるまでやらなければ、産業行政をあずかつておるサービス省としての通産省の責任は果されないと私は思う。従つてこれは私の希望でありますけれどもポンド過剰だというとポンド向けの輸出を押えればいいというような今までの吉田内閣のこういうやり方を、繊維産業がどうしても輸出に立つて行かなければならぬという建前から見て、はねのけて行くだけの努力を事務当局に私は要望して、私の発言を終ります。
  69. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 関連して……。ただいま伺つたのですが、そうしますと、繊維局長として、現在輸出が非常に不振のため一般企業が苦しんでいるのだ。そこであなたのお考えで、この輸出産業の先行きの見通し、さらにそれを打開するためにどのようなお考えと、あなたの手でどのような打開策を講じておられるのか、簡単でいいが御説明を願いたいのであります。
  70. 徳永久次

    ○徳永政府委員 繊維産業輸出の将来についてどう考えておるかというお話でありますが、私ども率直に申しまして、繊維産業輸出の将来には相当な希望を持つておるわけであります。それは先ほど来皆様からも御指摘がございましたように、また大臣からもお答えしましたように、繊維産業の国際的な競争力というものは、ほとんどすべての繊維につきまして、極端に申せば世界一と言つていいくらいのものを持つておるわけであります。あとの政府側の施策よろしきを得ますならば、まだ伸びる可能性は十分にあるというふうに考えておるわけであります。それを伸ばします具体的な方策をどうするかということにつきましては、先ほど大臣のお話の中に、通商外交を積極的に振興するとか、あるいは輸出助成策についてもよそに劣らぬようなことはやるとおつしやつたのでありますけれども、私どもその線に沿つて、事務的にも従来も十分検討はされておるわけであります。直接には私の所管外にわたる点もございますが、繊維としまして、輸出の今年の実績で申しますと四六・七%を占めておるわけでございまして、輸出振興対策繊維振興対策になる面も非常に多いわけであります。その点につきましては、事務当局間では緊密な連絡をとりながら作業を進めておるということを御了承いただきたいと思います。
  71. 坪川信三

    坪川委員長 田中君に申し上げますが、大臣はもう五分して参りますから、政府委員に関連したのをおやり願いたいと思います。
  72. 田中織之進

    ○田中(織)委員 私の先ほどの炭鉱争議に関する質問の続きでありますが、先ほど通産大臣が私の質問の第二点に関連して、通産省としては争議には直接介入すべき立場にないので、中労委に期待しておるということでありますが、これは通産大臣の立場から見れば、争議そのものに通産省が介入して行くべきではないと私は思いますから、大臣のその点の答弁は理解できる。しかしこの争議が解決できるために、解決の条件をつくり出して行くために、通産省がとり得る対策は私はおのずから別個にあると思うのです。それをどういうように通産省としてとつて行くかということが、これは実は大臣に対する私のきようの質問の一番の重点なんです。なぜ私はそういう質問を申し上げるかというと、今ちようど予算委員会でも、ずつと前の終戦直後のいわゆる炭鉱住宅の融資の利子の還元の問題が大きな政治問題になろうとしている。これも当時石炭増産のために炭鉱住宅に対する融資というものは議会でも強く要請して処置せられたのであります。ところがやはり炭鉱産業の実情からということで、政府は財政法に違反してまで二十数億という利子を炭鉱業者開発銀行から払いもどすということまで実はやつた。これは通産省は知らないとは私は言わせない。そういうような財政法にやつてはいけないところのフエーヴアーまで炭鉱業者に通産省は相談に乗つて与えておる。従つてこの争議の解決の問題に勢いからんで来るわけでありますけれども、現在の石炭産業関係から見れば、先般鉱業連盟の早川専務理事も申されておりましたが、相当の黒字を上げておる。しかし私は通産省に考えてもらいたいということは、この間の本委員会における炭労の田中委員長の陳述にもありましたように、これは周知の事実なんです。他産業よりも石炭産業の賃金ベースが非常に低いということ、少くとも他産業並みに引上げるということのためには、全然赤字のものであるならば、それは労働組合の要求というものは無理かもしれない。しかし相当の黒字を上げておるのです。しかもこの長期のストに伴いまして、各方面にいろいろな摩擦影響が出てきておる、摩擦混乱のために、きよう私の郷里の和歌山県から正月用みかんの輸送のための貨車の割当ができないからというわけで、大挙陳情に見えておる。そうして私らの党に向つて、社会党は炭鉱争議を応援しておる。従つて貨車のまわりが悪くなつたことは、われわれ社会党の責任であるかのごとく言つておる。それなら私は受けて立ちます。国鉄の石炭対策を本格的に取上げたのは、本月に入つて三日に初めて石炭対策の協議を始めておるということでは私はどうもならぬと思う。そこでこれはほんとうは大臣からお答え願いたいのでありますが、政務次官もおられまするので、もしお答えくだされますならば政務次官からお答え願いたいと思うのでありますが、炭鉱の長期ストの影響というものは非常に深刻に発展して来ておるのであります。ここで争議そのものに通産大臣に私は介入してもらいたいということを要求するのではなくて、まず石炭産業の経営者側に対して、この争議をどういうように早期に解決するための努力を払つておるかということについて、通産大臣として、の経営者側への働きかけ、私らの立場から言うならば、石炭産業は相当の黒字を上げておるのですから、従つてこの企業の実態から、他産業に迷惑をかけない、国民生活に迷惑をかけさせないために、私らの立場から端的に言いますならば、組合の要求をいれて、争議を早く解決するようにしたらどうかということを、経営者側に通産大臣の立場で働きかけなければ、この争議の早期解決というものはあり得ないと思う。そこには勢いたとえば炭価の引上げの問題、あるいは融資の問題であるとかいうような問題がからんで来るだろうと思うのです。この間通産大臣予算委員会で御答弁になつておるように、たとえば炭鉱住宅の融資の問題については、政府は財政法に——われわれは違反しておると思いますけれども政府は抵触しないと強弁しておるようであります。二十数億という金が前にさかのぼつて還元されるというような処置までとられておるのであります。従つて私は経営者側とは通産省は、特に通産大臣というものは、密接な関係にあるものだと思いますけれども、争議そのものに私は介入しろというのではありません。しかしこの争議が解決するために、経営者側に対して、場合によれば国が相談に乗つてやらなければならぬ問題も私は出て来ると思うのであります。そういう点について、もつと端的に質問を申し上げますならば、経営者に対して大臣の期待しておつた中労委の会長の調停案が経営者の方でもけつておるというようなことで——これは本会議における答弁である、たけに、私は国民一つの安堵の念を持つてつたと思うのだが、きようの段階ではそうは行かない段階に来ておると思うのです。特に私は労働組合と通産大臣が話をしろとは言いませんけれども、経営者との間には、石炭産業に影響するところの重大な関係から見て、どういうように今まで手を打つて来ておるか、その過去の問題はともかくとして、この中労委の会長の調停が不調になつたという段階で、これからどういうように手を打つて行かれようとするかということを伺いたいのであります。  それともう一つ私は伺いたいのは、ガスの供給制限が行われて来ておる、争議が長期化するということになると、ガス事業を初め、国鉄の輸送関係も非常に詰まつて来るわけでありますが、関連産業において必要な石炭をどういうように確保するかという立場からも、私は少くとも通産省が直接密接な関係があるところの経営者側との間に、通産省の事務当局で、各産業から要請して来ておる石炭量を確保するための対策というものも立てられておると思うのでありますが、その石炭手当の面の対策をどういうようにお立てになつておるか、この点をただいま大臣が見えられましたから、お答えを願えれば幸いだと思うのであります。
  73. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいまの御質問でございまするが、御意向はよくわかりますけれども、通産省といたしまして経営者の方にかれこれ条件を出したり、いろいろしますことは、これは私どもは許されないところでありまして、私どもは争議の解決は労働大臣の方でやつてもらう以外にない。しかしながらお示しのごとくに非常に重大な影響を及ぼしますので、心から一日も早く解決してもらいたい、相互の互譲妥協によつて解決してもらいたい。かように考えておりますが、今お示しのごとく、それはみな組合の言う通りのんでやれというようなことを言うような立場に私ども全然おらぬことは田中さん自身がよく御承知であろうと思われます。なお石炭の手当等はどうしておるかという問題につきましては、先般申し上げました通り、百六十数万トンの輸入をこの十二月から三月までにはかりますほか、さらに必要に応じてなお相当額の輸入をもはかつて行きたい、かように考えておる次第でございます。
  74. 田中織之進

    ○田中(織)委員 大臣の立場というものも私はよく理解できるのでありますが、それではもう一点大臣にお伺いしたいのであります。先ほど、これは日本産業全体に関連する問題でありますが、動力源、熱源を確保する重要な産業部門に対しまして、財政資金の投入による振興という問題を大臣は御答弁になつたのであります。私はこの炭鉱争議に関連して通産大臣として動く余地のある面といたしまして、これはまだ大臣の構想だけでありますか。それとも動力産業、特に石炭産業等へのいわゆる財政資金の投入については具体的に何か御計画が立てられておるのかどうか。私はもしその計画が立てられておるといたしますならば、この争議に対する解決についても私は一つの好影響というか、そういうものが与えられると思うのでありますが、そういう具体的なものをお持ちになつておるのか。それとも大臣は今後の問題としてそういう形で資金を確保して行きたいという構想を持つておられるという意味合いであるかどうか。この点についてのお答えを願いたいと思います。
  75. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 電力の問題につきましては、外資を入れますことにも今骨を折つておりますし、財政資金の問題についても大蔵省と折衝いたしております。こちらの方にはこういう計画でやりたいということで、その計画については大蔵省へ話をしておりますが、それでは二十八年度で幾らの予算を出し、その後どうするということについてはまだ結論を得ておりません。けれどもその方面に対して今全力を尽しておる次第であります。石炭の縦坑の問題につきましては、縦坑開鑿が石炭を安く出し得る道でございまするので、私どもはこれも外資の投入についても話を向うへしておるのでございますが、同時にその足らぬ分については財政資金を出してもらいたい。一口に申せば三箇年ぐらいに五百億ぐらい出してもらうとそれが行くのだがということで、つまりこれは予算財政資金とのにらみ合いの交渉になりまするから、まだ金額ははつきりしておりませんが、やる構想を持つてお話していることは、過日来前大臣時代から話しておりますから、田中さんが新聞でごらんになつておる通りだと思います。ただ今二十八年度予算が事務的に折衝が始まつておりますので、私どもはこれを極力早く実現いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  76. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 私は最後に一点だけ伺つておきたいと思うのでございますが、長いこと実業界に蘊蓄があり、またすでに通産という面に対しての御体験のある大臣でございますので、伺いたいのですが、中小企業というお話が先ほど来ずつと続いて出ておるのでございますが、中小企業振興という言葉は今日なお言い続けられておるのでありますが、どつちかといえば食傷ぎみになつておるというのが現在の姿だと思うのであります。しかしこれに対しまして、口では唱えておりますけれども、この施策というものは旧態依然として、別段目新しい措置が講ぜられておらない。従つてこの無策なるがゆえに、行き当りばつたりの施策が今日まで続けられて来ておるのであります。もちろん覆いろいろな事情もあつたのかと思うのでありますが、いよいよ独立した今日になりまして、ここではつきりその政策、施策というものを立てなければならない中小企業の苦悶の姿は、ただ金詰まりであるというこの一点に集結されておるようでありますが、私はそうは考え得ないのであります。分析してみると、いろいろな点があり、困つた要素というものがさまざまな角度から現われて来ておると思うのであります。資金さえ入れれば中小企業というものは今も将来も救われて来るというのではなくて、いやしも国民の血税をもつて補助あるいは補償をし、保護政策をするという以上は、総花的にお茶を濁すということでなく、一貫した良識と責任ある計画をもつて政治を行つて行かなければならないと思うのであります。そこで中小企業対策というこの困難の点については、かつての社会の階級層に対する一種の道義的な経済倫理と申しましようか、冷酷苛烈な競争場の企業合理化というものに対して、どうバランスをとつて行くか、どういうふうに大臣は調節をとろうというお考えを持つているか。今日の自由資本主義経済の中における中小企業は、中小企業のわくの中には入つていても、本質的には異なつているものがあるのではないか。また中小の資本形態ではやつて行けないような業態もこの中に含まれておるのではないか。また一方大企業の能率経営では逆効果になるような、たとえば家庭工業とか、手工業的な企業も含まれておるのではないか。こういうような点について大臣は今後行つて行こうとするお考え等をお述べいただければ、まことに仕合せだと思うのであります。
  77. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 長谷川さんの御意見まことにごもつともと存じます。私どももこの中小工業に対して今までいろいろ言われておりながら、その実効が上つてないという点については、まつたく長谷川さんと感を同じうするのでありまして、何とかこれを実効あるようにしたいというように考えておるのでございまするが、これも率直に申し上げますると、まず税制の面、まず税の方での負担を軽減するというような面につきまして、これはいろいろやり方もあり、またそういうふうにも今日まで参つておるのでありますが、まあ金に困つておるからといつて金融措置につきましては今お話があつたように、私どももできるだけのことはいたしておりますが、しかしそれのみで尽きないという長谷川さんのお話はまつたく御同感であります。そこでそれではどうするか。こういいますと、やはり業種が今御指摘になつたように違うのでして、その違う業種をことごとく網羅してやるという、実は私は率直に言つて名案は持つておりません。何かこういうことをやれば非常に効果が上るがという案がありますれば、ひとつお聞かせを願つて、できるだけこれを実行いたしたいと存じます。ただ前の国会で成立いたしました特定中小企業の安定に関する臨時措置法、こういうものもすでに現実に運用しておるのでありまして、先刻申しましたように、織物業を初めとしてもう四十四の組合ができておるのでありまして、さらに九つほど申請されておりますから、それで一つ生産調整を実施して行きたいという考えも持つておりますが、しかし何と申しましても、中小企業にもう少し協同的な精神を発揮してもらいたい。さらに言葉をかえて言いますれば、農村にあるあの団結の強化が一番必要になつて来るのではないか、それからまた私の方の所管としましては、何とかして中小企業をよく持つて行くためにどういう点が悪いかということを診断することも必要でありまして、診断したらどういう薬を盛つたらいいかというような対策を立てることも必要と思います。そんなことをやつて税の面、金の面で個々の企業強化する、協同化を一層強化するというようなことでやつて参る以外に今のところは十分な案を持つておりません。もしそのほかにもこういうことをやれば中小工業が非常に育成され、将来伸びて行くんだ、こういうお話がございますれば、どうかお教えを願います。それを必ず実行して参りたいという考えを私は持つております。ただ私どもは今の場合許されておる範囲でこれをやつておるという次第でございます。しかしできるだけの力は尽したいと考えておる次第でございます。
  78. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 時間も過ぎておりますから簡単に申し上げますが、農林省の方は、地方に参りますと縦横無尽にあらゆる連絡機関を持つてつてこれを活用しておるのであります。ところがこれだけ大きな通産省と称する省であるにもかかわらず、地方へ出て行きますと何ら連絡を持つておらない。たとえばわずか五万円か十万円の金を出すのにも、何らそれらの機関を通さずに、直接みずからの省の手柄にしようというところに原因があるのではないか、従つてこれらを今大臣が申す通り、農林方面におけるがごとくわれわれの中小工業にいたしましても、もつとそれぞれの機関を十分活用して、協力をさすべきところは協力してもらわなければならない。みずから指導に当つておらないというところに大きな欠陥があるのではないかといわざるを得ません。輸出にいたしましても、その通りでございまして、現在ただ東南アジア方面に対する輸出が悪いんだというが、それなら政府はどのような手を打つているのか、こういう点については大いなる疑問を持たなければならないのであります。ただポンドの手持ちが多いからとか、あるいは国際的に価格がどうだとか、価格がそのような状態にあるならば、大臣みずから大蔵省方面と連絡をいたし、たとえば出血的な輸出をしている今日は、その税金をいらないというわけにも行かないだろうけれども、税金をある程度負けてやるとか、その点についての努力をしていただかなければ、とうていこれを打開することができないのじやないかと私は考えておるのであります。こまかい話は次会に伺うことにいたしますが、一応私の考えていることを大臣に御質問したわけであります。
  79. 坪川信三

    坪川委員長 他に御質問がなければ、本日はこの程度といたしまして、次会は来る十一日木曜日午前十時より開会いたし、貿易に関する件を調査いたしたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時五分散会