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1953-03-14 第15回国会 衆議院 地方行政委員会法務委員会連合審査会 第1号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
二十八年三月十四日(土曜日) 午前十一時十九分
開議
出席委員
地方行政委員会
委員長
青柳
一郎君
理事
鈴木 直人君
理事
床次 徳二君
理事
門司 亮君
理事
横路 節雄君 阿部 千一君 加藤 精三君 黒金 泰美君
佐藤善一郎
君 中井 一夫君 石坂 繁君
森田重次郎
君
平岡忠次郎
君 赤松 勇君 西村 力弥君 川村
継義
君
法務委員会
委員長
田嶋
好文
君
理事
小畑虎之助
君
理事
田万
廣文
君
小林かなえ
君 佐治
誠吉
君 古島 義英君 松永 東君 大川 光三君 後藤 義隆君 長井 源君 木下 郁君 多
賀谷真稔
君 古屋 貞雄君
出席国務大臣
法 務 大 臣
犬養
健君
出席政府委員
国家地方警察本
部長官
齋藤
昇君
国家地方警察本
部次長
谷口 寛君
国家地方警察本
部警視長
(
総務部長
) 柴田 達夫君
国家地方警察本
部警視長
(
刑事部長
) 中川
董治
君
国家地方警察本
部警視長
(
警備部長
) 山口 喜雄君
委員外
の
出席者
地方行政委員会
専門員
有松 昇君
地方行政委員会
専門員
長橋 茂男君
法務委員会専門
員 村 教三君
法務委員会専門
員 小木 貞一君 ————————————— 本日の会議に付した
事件
警察法案
(
内閣提出
第一一二号) —————————————
青柳一郎
1
○
青柳委員長
これより
地方行政委員会
、
法務委員会連合審査会
を開会いたします。 私が
委員長
の
職務
を行いますので、よろしくお願いいたします。
議事進行
上、まず
警察法案
について
審査
を進めることといたし、その後に、
刑事訴訟法
の一部を
改正
する
法律案
について
審査
をいたしたいと思います。 それではまず
警察法案
を議題とし、
政府
よりその
提案理由
の
説明
を聴取することといたします。
犬養法務大臣
。
犬養健
2
○
犬養国務大臣
今回提出いたしました
警察法案
につきまして、その
提案
の
理由
及びその要点を御
説明
いたします。 現在の
警察制度
は、
占領下
の初期におきまして
警察民主化
の方策として急激に
改革
が行われた結果生れたものでありまして、確かに
従前
の
警察
に見られなかつた民主的な
美点
を有してはおりますが、他面において
現下
の
わが国
の実情に適合しない部分のあるのはいなめない事実であります。すなわち現在の
制度
は
国家地方警察
と
自治体警察
の二本建とな
つて
おり、その
組織
はおのおの
管轄区域
を異にしておりますが、前者は
国家的性格
に過ぎて
自治的要素
を欠除し、後者は
完全自治
に過ぎて
国家的性格
を欠除し、
両者
それぞれ長短を兼ね有しているのであります。ゆえに忌憚なく申せば、この
制度自身
が
警察
本来の
性格
と
運営
にと
つて
必ずしも適合せざるものを内蔵している次第であります。かつ、これまでも
自治体警察
においても
国家地方警察
においても、相互間の
連絡調整
のためにはおのおのよく努めて参
つたの
ではありますが、何と申してもその
管轄区域
の相異より生ずる盲点の存在は世人のすでに指摘するところでありました。かつ
中小自治体警察
はその
単位
が小さきに失し、ために
効率的運営
に欠くるところのあつたこともこれまた認めざるを得なか
つたの
であります。さらに、国の
治安
の
責任
の所在につきましては、現
制度下
においてはきわめて不明確でありまして、この点に関する限り、
現下
の
警察組織
はかの
民主主義
の所産である
責任内閣制度
の
精神
から見て徹底せざるものがあるのであります。それゆえ、これらの点につきましては、
現行制度実施
後、過去五箇年有余の間にも、数度にわた
つて
警察法
の一部
改正
が行われたのでありますが、その後における
わが国治安情勢
は、これらの弱点を内蔵する
警察制度
の
根本的改正
が要請せられるに至
つて
いるのでありまして、
政府
におきましては、過般来慎重に検討を重ねました結果、
民主警察
の
美点
を保持しつつ、
上述
の不備を是正し、も
つて
治安
の
確保
と
行政責任
の
明確化
をはかるため、ここにこの
法律案
を提出し、御審議を願う次第であります。 この
法律案
の主たる点を申し上げますと、次の
通り
であります。すなわち、第一には、
警察
による
治安確保
についての
政府
の
責任
を明かにするため、
国務大臣
をも
つて
あてるところの
警察長官
を置きましたが、この
長官
の
権限
がともすれば、過大に陥らぬよう、その所掌する
職務
はこれを
法律
に明記して
制限
を加えたのみならず、
長官
の
責務
はあくまで
不偏不党
、かつ
公平中正
を旨とすべきことを
規定
して、かりにも
政治警察
の弊害の生ぜざるよう、厳格なる
保障
の
措置
を講じたのであります。かつ他方において、現在の
国家公安委員会
にかわるところの
国家公安監理会
は、
警察
が時の
政治勢力
に左右せられることのなきよう、常時
監視助言
の
機関
としてその
職責
を果すこととな
つて
おります。 第二には、先ほど申し述べました
自治体警察
、
国家地方警察
二本建の弊を除去し、
両者
それぞれの
組織
に内包する
欠陥
を是正せんがために、
国家地方警察
、
自治体警察
はともにこれを
廃止
して、新たに
都道府県単位
の
都道府県警察
を設け、これによ
つて
従来に比して一層
効率
的な
民主警察
の
運営
をはかることといたしました。なお、この場合、入口七十万以上の
大都市
については、それが
実質上府
県と同様の
規模
を有しております点にかんがみまして、もしもこれらの市が希望いたします場合には、
都道府県警察
と同一の
性格
を有する
市警察
を置き得る道を開いたのであります。 第三に、
都道府県警察
については、その民主的な
運営
を
保障
するため、その
処理
を
都道府県会安委員会
にゆだねましたが、一方
公安委員
は常時
警察長
の
考課
を記してこれを
中央
に具申し、かつ
警察長
並びに
警察官
に対して
罷免懲戒
の
勧告権
を有することとな
つたの
であります。かつこの
公安委員
の
構成
には
変更
を加えて
地方自治
の
機関
との
連繋
を一層緊密にしましたが、
警察署等
の
設置
、その他、
都道府県警察
に関する
地方的事項
はあげてこれを
都道府県条例
にゆだねるものといたしました、しかしてその
職員
の大多数は
地方公務員
とし、
警察
に要する
経費
は
国家
的な
警察事務
を除いてすべて
都道府県
の
負担
とする等、あとう限り
自治体警察
の特長と
美点
とを具備せしめることといたしました。この
精神
よりいたしまして個々の
犯罪捜査
の指揮のごときは、
中央
の
警察庁
はこれを
都道府県警察
の
職務
に一切をゆだねるべきものでありまして、
政府
は今般この点につき特にその意の存するところを明らかに示したのであります。 以上の諸点が
改正案
の骨子でありますが、この
制度
が実施される結果となりますれば、
警察官
の数において約一割三分程度を減少し、しかも
機構
の単一化によ
つて従前
に比してはるかに
効率
をあ
ぐべきことは論
を待ちません。なお、この
改正
が実施されます場合には、
国家地方警察
、
自治体警察
ともにその
職員
の
身分
に
変更
を生ずる結果となりますが、この場合にも努めて新らしい
警察機構
への受入れを円滑にし、俸給その他の
給与
、
恩給等
についても特に従来の
自治体警察
の
職員
であ
つた者
の既得の
立場
を尊重し、少しでも
不利益
な結果を招来せぬよう、万全の配慮を払う所存であります。しかして従来の
国家地方警察
、
市町村
の
自治体警察
がその用に供しておりました
財産物品等
につきましても、このたびの切りかえにともなう円滑な
処理
が行われて、新らしい
都道府県警察
の仕事に支障を来すことのないよう十分の
措置
を講ずる考えであります。 しかして本
法案
は幸いに成立いたしましたあかつきは、十月一日を
目途
として
施行
の日を
政令
で定めたいと存じますが、
上述
のごとく、円満なる
引継ぎ
の万全を期したるため、二十八年度中は
都道府県警察
に要する
経費
は
従前通り
の
負担区分
に
従つて
、すなわち
従前
の
国家地方警察
の
組織
に属するものについては国が、
市町村警察
の
組織
に属するものについては
市町村
が
従前通り
支弁することとし、二十八年度中はとの
法律施行
によ
つて
、国、
都道府県
、
市町村
間に
負担
の
変更
を来さないことといたしたのであります。 以上が、本
法律案提出
の
理由
及びその
内容
の概要を申し上げた次第であります。何とぞ御審議あらんことをお願いいたします。
青柳一郎
3
○
青柳委員長
引続き
政府
より
補足説明
を聴取いたすことといたします。
齋藤国警長官
。
齋藤昇
4
○齋藤(昇)
政府委員
法案
の内容につきまして、その逐条の順序に従い御説明申し上げたいと存じます。 この
法案
は、七章七十二箇条の本文及び附則三十七項からな
つて
おります。 第一章は総則といたしまして、この
法律
の目的、
警察
の
責務
及び
警察職員
の宣誓について
規定
しております。
現行法
におきましては、特に前文を置いて
法制定
の趣旨をそのうちに述べておりますが、今日の
法形式
として前文を置きますことは
法律
としては異例に属しますので、この際前文の形式を避け、従来前文に盛られておりました精神は、これをこの
法律
の目的として第一条に
規定
いたしました。第一条に
規定
するこの
法律
の目的とは、すなわち
民主的理念
を基調とする効率的な
警察
の
組織
を定めることであります。 次に
警察
の
責務
につきましては、おおむね
現行通り
その範囲を限定し、これを越えて
権限
を濫用することがあ
つて
はならない旨を
規定
したのでありますが、新たに
不偏不党
、
公平中正
を旨とすべきことを
規定
して
警察
のあるべき姿をさらに明らかにすることに努めました。 第二章は
警察庁
に関する
事項
を
規定
いたしております。
警察庁
を総理府の外局として置くこととし、
警察庁長官
は
国務大臣
をも
つて
充てるとともに、
警察庁
の
所掌事務
について、
都道府県警察
を指揮監督するものとして、国の
治安
に関する
政府
の
責任
を明確にいたした次第でありますが、
警察庁
の任務は、国の
治安確保
と
警察行政
における調整をはかることに限定し、その
所掌事務
の範囲を明示いたしております。また
警察庁
に
次長
一人を置くこととし、この
次長
の任免は大事な事柄でありますので、特に
国家公安監理会
の意見を聞いて行うことといたしております。
警察庁
の
内部部局
としては、従来の
総務部
を改めた
長官官房
のほか、従来と同じ警務、刑事、
警備
及び通信の四部を置くことといたしております。また
付属機関
としては、
警察
大学校、
科学捜査研究所
及び
皇宮警察本部
を置くこととしておりますが、これらは現在あるものをそのまま
規定
したものであります。また
地方支分部局
としては、
地方警備局
を仙台、東京、大阪、広島及び福岡に置くこととしたのでありますが、これらは従来の
管区本部
と異なり、縮小簡素化され、その
所掌業務
も
警備
、通信、
教育訓練
及び連絡に限られ、かつその範囲内の
事項
に
限つて
、
管内府県警察
を指揮監督することとされております。また
地方警備局
に
地方警察学校
が付置されることとな
つて
おりますが、これは従来の
管区学校
にあたるものであります。第五節は、
警察庁
の
職員
の
規定
で、
警察庁
に所要の
職員
を置く旨を定めておりますが、そのうち
警察庁
の
次長
、部長但し
通信部長
を除きまして、これらは
警察官
をも
つて
充て、
皇宮警察本部長
は、
皇宮護衛官
をも
つて
充てる等
現行通り
であります。 第三章は、
国家公安監理会
に関する
事項
を
規定
いたしております。
国家公安監理会
は、
警察庁
に所属せしめず、
内閣総理大臣
の所轄のもとに置かれ、その
委員
は五人、
内閣総理大臣
が国会の同意を得て任命し、その任期は五年とされておるのでありまして、任務としては、
警察庁長官
の
権限
が公正に行われているかどうかの監視に当り、
長官
に対して、必要と認める
勧告助言
を行うものとされております。しこうして
警察活動
の公正を保障するその職責の
重要性
にかんがみ、形式的な
資格制限
を設けず、広く人格高潔で
警察
に対する公正な判断をなし得る者のうちから任命することとな
つて
おります。また、こうした任務の
重要性
から
身分保障
、服務、報酬その他の点につきましては、すべて従来の
国家公安委員会
に関する
規定
にならい、その
権限
、
地位とも
に重きをなすものとされております。 第四章は、
都道府県警察
に関する
事項
を
規定
しております。第一節は、総則といたしまして、
都道府県警察
の設置、
責務
及び
経費
について
規定
いたしております。従来の
警察組織
が大きくは
国家地方警察
と
自治体警察
にわかれ、さらに
自治体警察
は多数の
市町村
にわかれ、そのために
警察
の効率を阻害されることが多か
つたの
みならず、
国家地方警察
は
地方自治
の色彩に欠け、
自治体警察
は
国家的性格
を欠除し、いずれも
警察
本来の性質に適合しない点にかんがみ、
国家地方警察
、
市町村警察とも
にこれを廃止して新たに
都道府県
に
警察
を置き、この都道府
郡警察
が
警察万般
の責めに
任ずるごと
といたしたのであります。
経費
の点につきましては、
都道府県
において
経費
を負担するのが原則でありますが、
警察
の
事務
のうちには一面に
国家的性格
を有するものが多々ありますので、
都道府県警察
に要する
経費
のうち、特に
国家的警察活動
と目される
事務
に要する
経費
及び
国家公務員
たる
警視
以上の
階級
にある
警察官
の
給与等
については、国が支弁することとするとともに、そのほかの
都道府県
の負担する
経費
についても、国が政令の定めるところによ
つて
、一部を負担するこことした次第であります。第二節は、
都道府県公安委員会
について
規定
しております。
都道府県公安委員会
は、各
都道府県
において
警察
に関する一切の責めに
任ずる機関
として、
都道府県警察
を全面的に管理する
権限
を有せしめることといたしました。その
組織
については新たに副知事一人と
都道府県議会
の議員のうちから議会で選挙された一人とを
委員
に加えて、知事及び県議会との連繋を緊密ならしめ、知事が
都道府県議会
の同意を得て任命する一般の
委員
三人と、計五人の
構成
といたしました。なお広く
適任者
を得やすからしめるため、一般の
公安委員
については
資格制限
を緩和し、制限は
警察
と検察の前歴に限ることとしました。その他の点につきましてはおおむね従来の
都道府県会安委員会
について
規定
されていたところと同様であります。第三節は、
都道府県警察
の
組織
について
規定
しております。都には
警視総監
、道府県にはそれぞれ
警察本部長
が置かれ、
都道府県会安委員会
の管理のもとに、
都道府県警察
を指揮することとされておりますが、その任免については、
警察庁長官
が
国家公安監理会
の意見を聞いて行うことといたしました。しかし、これに対して
都道府県公安委員会
は、常時
警察庁長官
と
国家公安監理会
に対し、
警視総監
、または
警察本部長
の考課を具状し、罷免、
懲戒
を勧告し得ることとしたのであります。また北海道には
道警察本部
のもとに、その地域をわか
つて
五以内の
方面本部
を置くことといたしました。
都道府県警察
の
本部
の部以上の
組織
、
警察署等
の
機構等
については、住民の意図をよく反映した
組織
をつくり得るものとするため、条例をも
つて
定めるものといたしました。また
警察署
のほかに、都及び数個の
警察署
を置く市の区域においては、数個の
警察署
を統轄し得る
地区警察部
を置き得る道を新たに開き、
大都市
における
警察運営
の適切を期し得ることといたしたのであります。
都道府県警察
の
職員
は
警視総監
または
警察本部長
が
公安委員会
の意見を聞いて任免することとしましたが、
公安委員会
はこれらの
職員
についても考課を行い、または
警視総監
または
警察本部長
に
懲戒
または罷免を勧告することができることといたしました。また、
都道府県警察
の
職員
については、
国家的性格
をも有する
警察事務
の円滑な遂行をはかるため、
警視
以上の
警察官
は
国家公務員
といたしましたが、それ以外の
職員
はすべて
地方公務員
といたしました。但しこれらの
地方公務員
たる
職員
についても、
警察
の
職務
の特質上、
国家公務員
たる
警察職員
に準じて、一般の
地方公務員
に対する
特例
を設け得ることとしているのであります。 第四節は市に関する
特例
でありまして、人口七十万以上の市においては、これらの市が府県同様の規模を有する点にかんがみまして、もしそれらの市において市議が三分の二以上の多数により議決した場合においては、
都道府県警察
とまつたく同じ
性格
の
市警察
を置くことができることとしたのであります。 第五章には
警察職員
に関する
事項
を
規定
いたしております。現在
国家地方警察
、
自治体警察
を合せ
警察官
の
定員
の合計は、十三万二千を越えておりますが、この
制度改革
後の新たな
定員
を約一割三分を減じて十一万五千人といたしましたが、なお従来より一層、
警察
の
職務
を果し得るものと確信しております。
警察官
の
階級
については、現在の
階級
のほかに
警視監
という
階級
を一つ附加いたしましたが、この
階級
に当るべきものとしては、
警察庁次長
及び
警視総監
を予定しております。第五十五条から第五十八条までは、
警察官
の
職権行使
についての
規定
であります。
警察官
は、本来その所属の
都道府県警察
の
管轄区域
内で職権を行使すべきことを原則としますが、例外として、
当該管轄区域
内における
職権行使
に関連する場合、
援助要求
のあつた場合、
現行犯人
に関する場合、及び
移動警察
について
関係都道府県公安委員会
の協議が
整つた
場合には、それぞれの
規定
に
従つて職権
を行使し得るように定めているのであります。また武器の携帯、
皇宮護衛官
、
被服装備品
の
支給貸与等
についても、この際それぞれ
法律
に明定する
措置
を講じた次第であります。 第六章は
国家非常事態
の
特別措置
に関する
事項
を
規定
いたしております。
国定非常事態
については、
現行警察法
の
規定
をそのまま踏襲いたしました。但し、
国務大臣
をも
つて
充てる
警察庁長官
が置かれることとなりましたので、
国家非常事態
につきまして、その布告と廃止以外については、
現行制度
では
内閣総理大臣
の
権限
とされているところを、
警察庁長官
の
権限
に移しました。 第七章は、雑則として、検察官との
関係警察
間における
管轄区域
の
変更
に伴う
措置
、
国有財産等
の
無償使用等
を
規定
いたしております。 附則は、この
法律
の
施行
について必要な
事項
を定めているのであります。第一項には、
施行期日
を公布の日から六箇月を越えない範囲内で政令で定めることといたしております。この
法律
の
施行
による
制度
の
改正
を円滑ならしめるためには、ある程度の
準備期間
を必要とすると考えますので、一応
施行期日
の目途を
昭和
二十八年十月一日と、し、状況によりそれより早く
施行
される場合をも考慮し、
施行期日
は、この
法律
の公布の日から六箇月以内において政令で定めることとしたのであります。第三項は、
市警察
の設置の手続について
規定
しているのでありまして、人口七十万以上の市がこの
法律施行
と同時に、この
法律
による
市警察
を持ち得るための手続は、この条項によるのであります。第四項から第六項までは最初の
国家公安監理会
の
委員
の任命について、第八項及び第九項は最初の
都道府県公安委員
の任命について
規定
を設けたものであります。第七項、第十項及び第十一項は
警察職員
の
身分
の
引継ぎ
についての
経過規定
であります。また第十二項は、現在の
警察官
の
定員
がさきにも述べましたように、十三万二千を越えておりますので、逐次
定員数
まで減少するまで、当分の間は十一万五千人を越える人員を置き得ることとしたものであります。第十三項から第十九項までは、現在の
国家地方警察
及び
自治体警察
の廃止に伴い、これらの
警察
の用に供されていた国または
市町村
の財産を、新たにできる
警察庁
及び
都道府県警察
の用に供するために、あるいは譲渡したり、あるいは使用したりする
財産処理
の方途を講ずる必要がありますので、このため必要なる
事項
を
規定
したものであります。第二十項から第二十二項までは、この
法律
が
施行
に
なつ
た場合における休職または
懲戒
、
不利益処分
に関する
審査
の請求、及び
公務災害補償
に関する
経過措置
について
規定
いたしております。第二十三項第二十五項までは、この
法律
が
施行
に
なつ
た場合における
昭和
二十八年度中における
特例措置
について
規定
いたしております。すなわち、この
法律
による
制度
の
根本改正
を、能率の低下や混乱を生ずることなく実施し、新
制度
への移行を円滑ならしめるため、
昭和
二十八年度中の
特例措置
として、この期間においては
市町村
の
公安委員会
を
都道府県公安委員会
の
下部機構
として存続させ、
都道府県警察
に要する
経費
の支弁についても、
従前
の例によることとし、また
職員
の給与についても、
従前
の
適用法令等
によることといたしたのであります。第二十六項から第三十二項までは、
恩給法
の
特例
についての
規定
でありまして、この
法律
の
施行
に伴う
職員
の
身分
の変動にかかわらず、
恩給法
を適用または準用し、かつ
在職期間
を通算し得る
規定
を設けたものであります。また第三十三項及び第三十四項は、
退職手当
の
特例
に関する
規定
でありまして、
職員
の
身分
の変動に伴う
在職期間
についての通算の
措置
に関して
規定
したものであります。第三十五項及び第三十六項は、この
法律施行
に伴い必要とされる
消防組織法
及び
恩給法
の
改正
についての
規定
であります。 以上
法律案
の主要な点につきまして概略を御説明申し上げた次第てあります。
青柳一郎
5
○
青柳委員長
それでは、これより本案に対する
質疑
を行います。
質疑
の通告がありますので、順次これを許します。
田嶋好文
君。
田嶋好文
6
○
田嶋法務委員長
私は衆議院の
法務委員長
という
立場
でおりますので、本日の私の
質疑
は、
自由党所属
の
委員
の
質問
というよりも、今日まで
法務委員会
がいろいろと
警察制度
について研究をなして参り、また調査もなして参りました
点等
を考えまして、ある程度
委員会
の意向というものを含めた
質問
になりますことを、あらかじめ御
承知おき
の上、お答えを願いたいと思うのであります。 日本の
警察制度
が新しく今日のように生れて参りましたのは、敗戦の結果だということにもなろうと思うのでございますが、しかし、戦前の
警察
、戦時中の
警察
をわれわれがつまびらかにいたしますときに、そこには確かに
警察
国家
的な
色彩
を帯び、
警察フアツシヨ化
のおそれのあることは、認めなければならないと思うものでございます。その
意味
からいたしまして、戦いに破れた結果の国の
構成
という
意味
ばかりではなくして、
民主化
をたどらなければならない、
民主国家
をたどらなければならない必然の結果として、今日の
警察制度
が生れたのではないか、
民主警察制度
が生れたのではないかと、私
たち
はこの
制度自体
を肯定するものであります。しかしながらこの肯定の上に立
つて
、今日までわれわれがいろいろと具体的に起きた事案を通じて
警察制度
を検討してみますときに、そうした
民主的要求
に応じてつくられました
警察制度
の中にいろいろの
欠陥
を見出し、その
欠陥
から当然
改正
されなければならぬ
点等
を見出されて参つたことも与党、野党を問わずしてひとしく私は一致した点じやないかと考えておるのであります。 まず第一に、私
たち
が今日の
警察制度
で一番なげかわしく思いましたことは、われわれ
国会
は憲法において国の
最高機関
として認められております以上は、いかなる国の
機関
といえども、われわれ
国会
に対して
責任
をとるべきことが当然の
国家
の
要求
であり、これは
責務
ではないかと考えておるのであります。ところがひとり今日の
警察制度
におきましては、
地方自治体警察等
を見ますときに、この
警察制度
から直接
不法原因
が生れましても、われわれ
国会
に対して何らの
責任
をとるべき
機関
がない。
国家自体責任
を追究することができないというまことに矛盾した現象が、ここに生れてお
つたの
でございます。これはぜひとも
国家構成
の上から
警察法
において第一に是正をされなければならぬと、与野党を問わずひとしく考えてお
つた点
ではないか。その点に今回の
警察制度
が目をつけられまして、そこに
一貫性
を立てようとしたことに対しては、われわれは敬意の一端を払わなければならぬ、こういうふうに考えております。また過
ぐるメーデー
の
事件
その他を通じて見まして、
警察制度
の中でわれわれが一番不安に考えますことは、
国家
を維持して行く上において、
治安確保
の点から見て、現在の
警察制度
が当を得ておつたかどうかという点でございます。
国家
に対する
責任
機関
がないといたしますならば、その結果から当然生れるべき結論でございまして、
国家
治安
の上からしましては、それは現在の
警察制度
は芳ばしきものでなかつたということは、これまた肯定せられなければならぬと思うのでございます。その点に対して、今度の
警察法
がいち早く目をつけられまして、
制度
的に
改革
しようといたしておる点も、私
たち
は与野党を問わず異論のない点ではないか、こう我田引水ではなくして、考えております。しなしながらこうした今日の
警察制度
の
欠陥
矛盾というものによ
つて
、
警察
の
民主化
の基本原理、
民主国家
建設の基本原理というものが阻害されるものでないことはもちろんでございます。その線はどこまでも維持をせられて行かなければならぬものであります。してみれば今回の
警察法
の
改正
が、今申しましたような
欠陥
に目をつけて、その
改正
に向
つて
おることには敬意を払うのでございますが、その
改正
というものは、
民主警察制度
の基本理念をくずすものではないといたしますならば、その
改正
は
民主警察制度
の上に立
つて
考えますときは、最小限度の
改正
でなければならぬ、最小限度の
要求
でなければならぬということを私は申し上げたいのであります。はたして今回の
警察法
の
改正
が、そうした最小限度の
要求
を満たしておるものであるかどうか。最小限度以上の
要求
をいれて、
民主化
警察
に逆行するような
警察法
の
改正
であるといたしますれば、私
たち
国会
といたしましては、この点は、ぜひとも是正してもらわなければならぬというふうに思うのであります。従いまして、私はまず第一に今回の
改正
が今申し上げましたように、最小限度の
要求
によ
つて
つくられておる
改正案
であるかどうか、それとも
民主化
に逆行するような線があるのではないかという点について、
責任
大臣から御答弁を承りたいと思うのであります。
犬養健
7
○
犬養国務大臣
お答えを申し上げます。
田嶋
委員
の御指摘の点でございますが、私ども今度の
改正案
を事前審議を内閣でいたしました折に一番考えましたのは、時の
政府
のあごでも
つて
自由に全
警察
を政治的に動かせるというようなことにな
つて
はいけない、たいへんなことである。同時に先ほど御指摘になりましたが、
国会
に対して
責任
の所在をもう少しはつきりしなければならないのではないか。現在の
国家公安委員会
というものは、なるほど
政府
が全
警察
をあごで使えない抑制
機関
としてなかなか
美点
があるのでありまして、
国家公安委員会
はロボットだとか何とかいう人がありますが、私はその抑制の作用というものは、相当大きく評価している一人でございます。昨年のメーデーその他の大
事件
のあとで、問題に
なつ
たことは御承知の
通り
でありますが、だれが
責任
を負うか、
国家
公安委員
長が負うといえば負うのでありますが、これは時の
政府
の一員ではない。それでは
警察長官
を
任命
するのに、
同意
を与えた限りにおいては、
内閣総理大臣
に
責任
があるのでありますが、一地方の
事件
とか、東京における
事件
であ
つて
も、
国家
的大破綻を来した
事件
でないのに、総理大臣に一々
責任
を負えというのは、どうも話が大げさ過ぎる。それでは担当大臣はどうか、現在私が勤めております地位でありますか、これは相当大臣とい
つて
も、総理大臣の代行として、はつきりした根拠を持
つて
担当しているのではないのでありまして、予算をお願いしたり、その他のことを引受けている大臣というのでありまして、
責任
の
明確化
という
精神
から言うと、まことに中途はんぱなものでございます。そこで今後来るべき事態には——よく申し上げますことですが、同時多発的な不祥
事件
が破壊活動の面から起り得る場合に、
責任
を
国会
に持つということをはつきりしようではないかというのが、今回御審議を願
つて
おります
改正案
の重点の一つであります。
国務大臣
をも
つて
警察長官
に充てるという考え方でございます。これは無条件で容認しますと、とんだ
警察
国家
になりますので、
中央
から地方に命令できる
範囲
を、
警察法
の第六条第二項に限定いたしたわけでございます。もつとも
地方行政委員会
のいろいろの
委員
の方の御
質疑
によりまして、これがまだどうにもはつきりしないで、無限大に広がるおそれがあるという御
意見
もあります。その御心配は一応ごもつともでございますから、
政府
としましては、それらの御心配を尊重いたしまして第六条第二項の
中央
警察庁
が地方に指揮命令できる
事項
は、できるだけ詳しく明確に御
説明
いたしまして、議事録に残して、みずから地方に指揮命令できる幅を縛られたい、こういう考えを持
つて
おるのでございます。 次に御指摘になりました
治安
の
確保
の面でございますが、私どもの
説明
の不十分もあろうかと思いますが、ときどき誤解がございます。私どもは今の
自治体警察
が決してだらしがないとか、ためだ、そういうことばかりを言
つて
いるのではないのでありまして、
自治体警察
もなかなかよく努めるが、いかんせん
警察
という仕事の性質上、命令が二本建にな
つて
いては、なかなかとつさの場合の大
事件
の
処理
ができないことにたびたび申し上げるように、日本人はいろいろ
美点
がございますが、命令が二つのところから出て、しかも似たような仕事をする場合が一番うまく行かない。幾多の
美点
があるにかかわらず、これが一番日本人に向かないやり方である。これは私の信念でありまして、その民族の本性に向かない点は改めなければならぬのじやないかということで、今度
組織
の一本化をはか
つたの
であります。しかし
国家
警察
一本に、はか
つて
はこれまたたいへんでございますので、先ほど申し上げましたように、従来の国警は、
国家的性格
が強過ぎて自治体の
美点
がやや乏しい。
自治体警察
は完全な自治に過ぎて
国家的性格
がやや乏しい。これを全部白紙に返しまして、府県
警察
という
精神
を盛
つたの
でございますが、府県
警察
はどういう
警察
かというと、自治体たる府県の
機関
でありまして、
知事
が道府県の
議会
に諮
つて
任命
した道府県
公安委員会
の管理のもとに、
警察長
が入
つて
しまうわけであります。御承知のように、大体地方の強盗
事件
、殺人
事件
あるいはその他の軽犯罪、交通事故なんというものは、これは何も
国家
がさんずしないでいいのでありまして、できるだけ地方のいわゆるおまわりさんにまかせて、そしてやさしい親切な
警察
の手でや
つて
もらう、それだけでいいじやないかという御議論があるのでありますが、そこが私どもと御
意見
の違いでありまして、そういう自治
警察
だけでは割切れない
事件
が発生し得る、これは世界情勢のしからしむるところでありまして、破壊活動に対して対処しなければならない。それはどうしても
国家
という高い、広い見地から、Aの県に起つた
事件
がBに移りやすい、あるいはCが同時に起る危険があるという場合に、一歩広い目から指揮命令できるだけの余地をつく
つて
おかなければ、今後の
警察
としては、うまく行かないのじやないか、この点が非常に御議論の的にな
つて
おるのでありまして、それは
国家的性格
が強過ぎるという御議論と、私どものように、これは最小限度やむを得ないという議論が、
地方行政委員会
の御議論の重点にな
つて
おりますので、十分御批判を仰ぎたいと思います。
田嶋好文
8
○
田嶋法務委員長
ただいまの大臣の御
説明
によりまして意のあるところをくみとることができましたし、私
たち
の考えておりますことと、大臣の考えております点が、まつたく趣旨において一致をいたしておりますことを喜ぶものであります。しかしそれだからとい
つて
、
法案
の
内容
自体をつまびらかにいたしますときに、大臣の御答弁の御趣旨によ
つて
つくられたといたしますれば、大いに矛盾を感ずるような点が多々あるのでありまして、私はただいまその
内容
について大臣に
質疑
を重ねて参りたいと思います。もしもその趣旨を貫くために、この
内容
におきましていささかでもその趣旨に反する点がありましたならば、
民主警察
を養成し、
民主国家
をつく
つて
行かなければならぬという国民的念願から、修正の点を特に
地方行政委員会
においてもお考えくださいますようお願いをいたしておきます。
警察法
の第一条は、まことにごもつともな御趣旨でございまして、私
たち
の考えておりますことを
規定
いたしておるようであります。特に「公共の安全と秩序と保持するため、
民主的理念
を基調とする
効率
的な
警察
」これは忘れてはならないことでございまして、これをうた
つて
いただいておることに、満腔の
同意
を表するものでありますが、私は、この第二条と第六条の関係が第一条の趣旨にかなうかどうかという
意味
におきまして、
質問
を申し上げてみたいと思います。第二条には、
警察
の
責務
ということが
規定
されておるのでございまして、これは当然な
規定
だと考えるのであります。ところが第六条に参りますと、「
警察庁
は、国の
治安確保
の責に任じ、及び
警察行政
における
調整
を図ることを
任務
とする。」こういうことが書かれております。第二条は、
警察
の
職務
として書かれておるのでありますが、この
職務
の中には、
治安確保
の
責務
ということは何らうた
つて
おりません。にかかわらず、第六条にも
つて
行きまして、特に「国の
治安確保
の責に任じ」ということをうた
つたの
はいかなる
理由
によるものでしようか。これも第二条の
責務
にうたうべきものを第六条に持
つて
行
つたの
ではないか。ここらあたりに臭い点があるんじやないかというような疑いをはさまれる文字でございまして、私はあえてこれを意地悪く解釈するものではないのでありますが、今度の
警察法
の
改正
が誤解を生んでおる点は、ここらにもあるんではないかと考えるのでありますが、この御
説明
を願いたいと思うのであります。
齋藤昇
9
○
齋藤
(昇)
政府委員
かわ
つて
お答えを申し上げます、 第六条で「
治安確保
」と申しておりますのは、
警察
の行います第二条の個個の
事項
のうちで、国の
治安確保
という観点についてのみ
責任
を持つというような趣旨で立案をいたしたのでありまして、第二条には、生命、身体、
財産
の保護でありますとか、犯罪の予防、鎮圧、捜査、あるいは第五号に、その他「公共の安全と秩序の保持」というのがございますが、これは個々の
警察
の行う
事項
の作用を書いたのでございまするが、この個々の
警察
の作用を行いまする場合に、国の
治安
が非常に乱れるという場合に、
警察庁長官
といたしましては、府県
警察
に対して指揮監督をする。いわゆる第二条の各項目についてすべて
責任
を持つのではなくて、第二条の事柄は、
警察万般
がやるわけでありますけれども、しかし普通の状態においては
都道府県警察
を指揮監督はしないんだ、しかし
治安確保
という見地からのみ指揮監督をする、かように
制限
をいたしたつもりであるのでありまして、第二条の範疇を離れて、あるいはこれとは別個にさような
権限
を第六条に書いたのでは毛頭ございませんので御了承願いたいと思います。
田嶋好文
10
○
田嶋法務委員長
趣旨はわかりましたが、日本の国の
治安確保
には、ここにできます
警察庁
以外に保安庁がございます。検察庁もあるのであります。
従つて
国の
治安確保
の
責め
は
警察庁
だけが負うべきものではございません。してみると、特に「国の
治安確保
の責に任じ、」というのは、あなたの御
説明
の
通り
にいたしましても、何だか
警察庁
だけが国の
治安
の
確保
の
責め
に任ずる、ほかはどうでもよろしいのだということにな
つて
は、事はたいへんでございます。そうして私がさきにお尋ねをしましたように、
職務
の点からいたしましても、これまたどうも誤解を招く文字でございまして、この文字をここに用いるのは不必要じやないか、それを用いなくても
目的
は達するのではないか、こういうふうに考えておりますので、後刻この点を御検討をいただきたいと思うのであります。 次に第六条の二項の一でございますが、「左に掲げる事案で国の
治安
に係るものについての
警察運営
に関すること。」と書いてあります。この
警察運営
という言葉がわからないのでございますが、今まで
警察法
を見てみまして、今までの
警察法
には
警察運営
という言葉は一つも使われていない。これは今度の
警察法
改正
にあた
つて
初めて用いられた文字のように考えられるのでありまして、初めて用いられる文字であれば、なおさらここでやはり疑問を解消しておかなくちやならぬと思うのでございますが、一体この
警察運営
というのはどういう
意味
でございましようか、これをひとつ承りたいと思います。
齋藤昇
11
○
齋藤
(昇)
政府委員
これは
現行法
にも使
つて
おりまするように、
警察
の作用を、いわゆる行政面の管理と
運営
面の管理、かように大体二つにわけておるのでありまして、ここに使
つて
おりまする
運営
は、いわゆる
警察
の
運営
、普通の人事とかあるいは予算とか、また
一般
の
警察行政
というのではなくて、
警察
自身のオペレーシヨンという趣旨でございます。
田嶋好文
12
○
田嶋法務委員長
そうすると
警察運営
の中には、
犯罪捜査
とか
犯罪捜査
に関する指揮とかいうものは含まれないのですか、含まれるのでございますか。
齋藤昇
13
○
齋藤
(昇)
政府委員
犯罪捜査
それ自身はこれに含んでおります。
運営
はその趣旨でございます。
田嶋好文
14
○
田嶋法務委員長
そういたしますとここに非常に問題になるのでございますが、
犯罪捜査
が
警察運営
の中に含まれるといたしますと、第六条の「国の
治安確保
の責」ということが問題にな
つて
参ります。
国家
治安確保
の
責め
に任じて
警察
の
運営
をやるのでございますから、その
国家
治安確保
のための
犯罪捜査
までも
警察庁
がやる、その指揮までもやるということになりますと、これは地方
警察
の末端に至るまで、いかなる犯罪でも
国家
治安
に関係があるとすれば、その中に含まれるわけでありまして、すべての犯罪がやはり
警察庁
に包含される、そして
自治体警察
というものは名のみであ
つて
、実際は
国家
が全部や
つて
しまうのだというような非難がおのずから生れるおそれがあるのであります。私はこれはゆゆしき問題だと思うのでございますが、この点に対するお考えはいかようにな
つて
おりますか。
齋藤昇
15
○
齋藤
(昇)
政府委員
それでありまするから、特にこの
警察運営
につきましては、第一号のイからハまでの三項目に
限つて
、しかもそれが国の
治安
に直接関係を持つというものでなければ、
運営
についての指揮監督はしない、かようにいたしておるのであります。 なおおそらく御
質問
があると存じまするが、先ほど大臣が
提案理由
の御
説明
の中にも申されました
通り
、捜査につきましても個々の犯罪の指揮は含まない、かように解釈をいたしておるのでございます。
田嶋好文
16
○
田嶋法務委員長
それはまたあとで
質問
いたしますが、そうするとここにまた問題が起きて来るのであります。第二項の五に、「
警察職員
の勤務及び活動の基準に関するごと」。という
規定
があります。この活動の基準は
犯罪捜査
に対する基準等も定めるのでございますか、定めないのでございますか。
齋藤昇
17
○
齋藤
(昇)
政府委員
準則的な基準はこれによ
つて
定めることができると考えております。
田嶋好文
18
○
田嶋法務委員長
犯罪捜査
に対する基準を定めるといたしますと、やはり私は、この「
警察運営
」ということと、「国の
治安確保
の責に任じ、」ということを相当深く考えてもらいませんと、ここに一つの心配が起
つて
来ると思うのであります。今回の
警察法
は、大臣が答弁されましたように、最小限度の
国家
の
要求
に応じてつくられるものであり、それは
国家
治安確保
の最小限度の
要求
に応ずるものであ
つて
、自治体の自治の
精神
をこわすものでないといたしますれば、この点に対しては相当御考慮を賜わりませんと、趣旨はそうでありましても、結果においてはやはり自治の
精神
をこわすことになり、末端
警察
までも
警察庁
が干渉を与える結果になるおそれが多分に含まれておると思うのであります。この点はもうこれ以上お聞きいたしませんが、ぜひともそうした逆行の線が生れないように、
改正
の必要があるといたしますれば、お考えおきを願いたいと思うのであります。 第五の
犯罪捜査
に対する基準をきめてもいいということになりますと、
刑事訴訟法
第百九十三条の第一項との関係はどういうように御
調整
になるお考えでありますか、この点を承
つて
おきたいと思います。
齋藤昇
19
○
齋藤
(昇)
政府委員
刑事訴訟法
と
警察
との関係は、これは
両者
競合いたしますというか、そういうところは、
警察
と検察との関係は、別に
法律
で定めるとありますので、
刑事訴訟法
が優先して
適用
される、かように考えております。
田嶋好文
20
○
田嶋法務委員長
犯罪捜査
と申しましても、
犯罪捜査
をしてそれで終るわけではないのでありまして、結局は裁判をしてもらうためということが前提にならなければならないと思うのであります。してみると、私はその裁判の前提になる公訴ということが、検察庁の手によ
つて
行われるといたしますれば、この活動の基準の中に、
犯罪捜査
に関する基準の
規定
をするといたしますと、これはよほど
意見
の
調整
の必要があるのではないか、こういうように考えますが、いかなる
意見
の御
調整
をここでお考えにな
つて
おられましようか、その点を伺
つて
おきます。
齋藤昇
21
○
齋藤
(昇)
政府委員
お説のように、犯罪の捜査は公訴の提起、維持と密接に関係がありますから、いわゆる
刑事訴訟法
の百九十三条の
一般
的指示というものと、密接に
連絡
がなければならぬと思います。ただいまも申しましたように、百九十三条の
一般
的指示がありますならばその方が優先をいたすのであります。しかしながら
一般
的指示がありませんでも、われわれ
警察活動
としてやります
犯罪捜査
の基準を定めます場合にも、公訴の維持に支障があ
つて
は、もちろんいけないと存じますので、本法においても
警察庁長官
と検事総長は緊密な
連絡
をとらなければならないと雑則に
規定
いたしております。さような際には事前に十分お打合せができるものと考えております。もちろん
犯罪捜査
の捜査活動の基準につきましては、公訴の維持に直接関係のないものも相当多いと思います。捜査が能率的であり、またこれは人権擁護の見地に
従つて
行わなければなりませんので、公訴の維持に関係がありませんでも、
警察
自身の見地から捜査の適正ということが必要といたされるのであります。従いまして
刑事訴訟法
の百九十三条の
一般
的指示と関係のないものは、独立してこちらで基準が定められる、かように考えるのであります。しかし前に申しました
通り
公訴の維持との関係上雑則で
規定
をいたしておりますが、第六十八条の第二項にも「
長官
は、検事総長と常に緊密な
連絡
を保つ」ということを
規定
をいたしましたのも、かような場合を考慮いたした
規定
であります。
田嶋好文
22
○
田嶋法務委員長
御趣旨は大分わかりますが、今度
刑事訴訟法
の
改正
の中に、この
規定
に関連したと思われるような
改正案
が盛られております。それは、逮捕状を出す場合に検察官の
同意
を要するという
規定
が盛られておる。本日の合同
審査
委員会
でもそれが問題になると思うのでありますが、
犯罪捜査
に関する基準が、この活動基準の中で定められるといたしますならば、やはり
刑事訴訟法
の百九十三条と同じような趣旨を
規定
されておりますこの
規定
との間には、ぜひとも
意見
が
調整
せられて後でなければならぬ、こう考えますときに、この
規定
がある以上は、
刑事訴訟法
の逮捕状に対する検察官の
警察官
に対する
同意
の
規定
、これは当然必要にな
つて
来るのじやないか、こういうことにおいてこれが
調整
されるのじやないかとも考えておるのでありますが、この点はいかようにお考えにな
つて
いられましようか。
齋藤昇
23
○
齋藤
(昇)
政府委員
先ほども申しますように、
刑事訴訟法
の百九十三条の「
一般
的指示」というものは、これは捜査について優先をするものと考えておりまするから、
従つて
百九十三条によりまして今度の
改正
による指示がなされるという場合には、
警察法
で定めました基準よりも
刑事訴訟法
で定めた指示の方が優先をするということになるのでありまするが、しかし公訴維持の面から見て必要であるということと、犯罪の捜査それ自身の能率を上げること、あるいは
警察
の人権擁護という見地等とも、やはり
調整
をされなければなりませんから、
刑事訴訟法
百九十三条の指示が出される場合におきましても、やはり
警察
との間に緊密な
連絡
を行
つて
、しかる後において出されるものと了解をいたしておるのであります。こちらが基準を定めまする際にも、向うと十分な緊密を保つ、この関係は、私は、
両者
どちらも緊密にし合わなければいけない問題だと考えておるのであります。
田嶋好文
24
○
田嶋法務委員長
この点に対して私はどうもまだ納得することができないのですが、これは必ず、
警察活動
、捜査に関する基準活動と
刑事訴訟法
の百九十三条とはかち合うことになると思うのです。してみれば、この関係の
調整
ということは、絶対必要にな
つて
参ると思うのでございますから、この点も、私はこれ以上申し上げませんが、研究の余地がある問題として、ぜひ御研究願いたいと思うのであります。承るところによりますと、閣議の了解
事項
として、第六条の
権限
には、
犯罪捜査
の具体的な指揮は含まないことにするというような了解
事項
があるとか申しますが、この点は、
犬養
大臣、いかがにな
つて
おるのでございましようか。
犬養健
25
○
犬養国務大臣
個々の
犯罪捜査
は含まないという了解をいたしております。
田嶋好文
26
○
田嶋法務委員長
閣議の了解
事項
があれば、それで両方がかち合うといたしましても、うまく
調整
できるかもしれませんが、閣議の了解
事項
だけで——まあ内閣がかわるかもしれませんし、今日解散になるかもわからないというこんな現状でございますので、それを一体どこまで信用していいかということになると、私
たち
は不安にな
つて
参るのでありまして、その点は閣議の了解
事項
だけで行くのかどうか。それとも明確な
規定
を必要とするのではないかということも考えられますので、しいてこれ以上申し上げませんが、これは必ずかち合う問題でございますから、私はこの点の
改正
については十分の御注意を御考慮を願いたいと思うのであります。 次はやはり同じ
犯罪捜査
関係になりますが、第十二条の
規定
であります。第十二条によりますと、
刑事
部所管
事務
として、
警察庁
の中に
刑事
部というものを設けることにな
つて
おるようでございますが、一体この
警察庁
というのは、直接犯罪の捜査、犯罪の指揮—まあ指揮は別として、捜査をやるものでございますか、やらないものでございますか。
齋藤昇
27
○
齋藤
(昇)
政府委員
これは犯罪の直接の捜査はいたしません。現在の
国家地方警察本
部におきましても、
刑事
部というのがあるのでございまするが、もちろん現在においては
権限
がありませんからやらないのは当然であります。現在の
国家公安委員会
の
事務
局におきましても、
刑事
部というのがありまして、
刑事
に関する
一般
行政管理に関するような事柄をや
つて
おるのであります。これもそれと同様でございます。
田嶋好文
28
○
田嶋法務委員長
そこが私は大切なところだと思うのでございますが、私は、今度の
警察法
の
改正
に対して、これは私の考え間違いじやないと思うのですが、与党といえども野党といえども、ある程度の
改正
ということは結局認めているのじやないか、必要だということを認めているのじやないか。それをあえて野党が特に反対の
意見
を述べるというのは、やはり
政府
にも多少
責任
があるのじやないかと思うのです。と申しますのは、今の
刑事
部の問題ですが、
警察庁
というものは、直接犯罪の捜査をしたり、犯罪の指揮をしたりするようなこと——指揮は別として、捜査をすることがないのにかかわらず、やはり、
警察庁
をつく
つて
国家
警察
にして、末端
警察
まで監督して、犯罪の捜査まで指揮命令してやる、これが非常に世間では不安の原因にな
つて
おりますし、それがやはり反対論の宣伝の一つの材料にな
つて
おることは認めざるを得ないと思うのです。
刑事
部なんていうことになりますと、
刑事
部というものは犯罪を捜査するところなんです。犯罪を捜査しないのにかかわらず、わざわざ国民を刺激するような
刑事
部というような言葉を使
つて
、しないのにするような形を、ここに整えるということ自体が私はおかしいじやないかと思う。むしろ、ほんとうにしないならば、やはり文字、言葉というものをかえて、そうしないんだ、そんな心配はないんだということを、国民に徹底させた方が、私は、やはり立法の趣旨であり、国民の望むところではないかと思うのであります。
刑事
部という言葉は、そうした
犯罪捜査
をするのでないといたしますならば、いかにも刺激する言葉であり、適切でないと思うのでありますが、この点どうお考えになりますか。
齋藤昇
29
○
齋藤
(昇)
政府委員
これは御
意見
の次第もございますが、ただいまも申し上げますように、現行の
警察法
では、
国家公安委員会
は行政管理のみを行うとな
つて
おりますが、その
事務
部局におきましてさえも、
現行法
で
刑事
部という部を認めておるのであります。また法務省におかれても、
刑事
局というのがあるわけであります。法務省の
刑事
局も、あそこで犯罪の捜査も指揮もいたされませんで、ただ
刑事
に関する
一般
事務
をお扱いになる。さようでございますから、この
法律
において初めて
刑事
部という部を設けるならば格別、
従前
からあるものを、そのまま引継いでいるので、他の
犯罪捜査
をしない法務省においても、
刑事
局という言葉を使われておるというのでありますから、この点は御理解が願えるのじやないかと考えておるのであります。
田嶋好文
30
○
田嶋法務委員長
従来あるからこれを踏襲するということだけでは、国民の誤解を解いたり、立法の趣旨には沿わないのであります。従来あつたものがまずいといたしますれば、かえ
つて
いいものであるといたしますれば、従来あつたからということで、固執しないで、誤解を解くために、ぜひともこの点は御研究願いたい。私どもは従来のもので満足いたしておりません。これは適当でないと考えております。ぜひとも御研究を願
つて
改正
すべき点は、言葉の上のことでございますから、御
改正
を願い、ほんとうに誤解のないように、国民に知らしていただきたいと思うのであります。 次は、第十八条に移ります。第十八条には、
地方警備局
が
規定
されておるのでありますが、
地方警備局
というのは、大分
内容
もかわ
つて
参つたようでありますが、一体これは従来の管区と、どのような差があるのでございましようか、この点を具体的に御
説明
願います。
齋藤昇
31
○
齋藤
(昇)
政府委員
性格
から申くますと、従来の管区は、
本部
のや
つて
おります事柄を、さらに各管区にわかれた
区域
においてやるというので、その職能はほとんど
本部
にある職能を小さくしたものであ
つたの
であります。
従つて
その中には、
一般
の人事に関する監督も、あるいは予算、会計、
国家地方警察
の府県の予算、会計、そういうものも扱
つて
お
つたの
でございますが、このたびは行政簡素化の趣旨も考えまして、そういつたいわゆる中間的な役割というものを、管区から全部はずしてしまいまして、どうしても数府県統轄して行わなければならないという業務だけに限
つたの
であります。従いまして部局といたしましても、ただいまは
総務部
、警務部、
警備
部、
刑事
部、
通信
部の五部があ
つたの
でありますが、そのうち警務部と
刑事
部、この二部をなくして三部といたし、もつぱら
警備
関係すなわち
警察庁長官
が
運営
について指揮監督をいたします
国家
的な
事件
で、国の
治安
に直接関係があるという
事件
、あとは
一般
の
連絡
と
通信
及び従来の
管区学校
は、教養上もまた
警備
的観点からも必要でありますから、これを附置するというにとどめたのであります。
田嶋好文
32
○
田嶋法務委員長
よく御趣旨はわかるのであります。今お言葉の中に、やはり
連絡
というようなことがありました。
警察庁
のつかさどる犯罪に対しては、指揮監督ができるというようなことでございますが、
連絡
ということになりますと、やはりこれは上下の関係になりますので、これを利用することによ
つて
、
犯罪捜査
の指揮監督というようなことも、実際上は行われるおそれがあるのではないか。
齋藤昇
33
○
齋藤
(昇)
政府委員
中央
におきましては、
一般
犯罪の指揮監督はいたしませんから、当然ないと考えます。また行えば違法になります。
田嶋好文
34
○
田嶋法務委員長
犯罪捜査
の指揮監督をすれば違法になる、そうするとその違法は、何によ
つて
是正されるのでありますか。
齋藤昇
35
○
齋藤
(昇)
政府委員
これは
一般
の
権限
のないことをやつたということでありますから、場合によれば
職権
の濫用ということにもなりましようから、政治的に
国会
その他でも糾弾されると考えます。
田嶋好文
36
○
田嶋法務委員長
次に
地方警備局
の所在地でございますが、この表を見ますと、仙台、東京、大阪、広島、福岡とな
つて
おりまして、先ほど
齋藤
長官
のお答えになりましたように、検察
事務
と
警察事務
は密接なる関係を保
つて
行かなければならぬ、そのためには六十八条に
規定
まで設けてその趣旨を示しておるということでございましたが、そうするとこの表から見ると、その趣旨に沿わないようなことになるような心配が生れます。と申しますのは、名古屋には検察庁がございます。
長官
を置いて——四国にも高松に検察庁がございます。北海道は特別の
警察
が設けられるようでございますから、これは別といたしまして、名古屋に管区を置かない、高松に管区を置かないということになると、あすこの
調整
というものは、非常にむずかしくな
つて
来る、一つの管区で二つの高等検察庁の
長官
との間に話合いを進めなければいかぬということで、非常に
事務
的に複雑になるし、この法の制定の趣旨にも沿わないような考えが起るのでございますが、この点はどういうように
調整
されますか。
齋藤昇
37
○
齋藤
(昇)
政府委員
これは打明けて申しますと、
現行法
のつくられます際にも、やはり
田嶋
委員
のただいまお述べになりました
通り
の
理由
によりまして、名古屋及び四国にぜひほしいという
意見
であ
つたの
でありますが、当時の関係筋としましては、それは許されなかつたという経過があるのであります。今日は自由でありますから、必要に応じてさようなことが十分できるわけでありますので、われわれ
事務
当局といたしましては要望はいたしておるのでありますが、しかし何分、二つの管区を設けるということは、相当国費も要することでありますので、今後適当な機会を見て、さように実現をお願いをいたしたいと考えております。この際は、とりあえず行政簡素化の際でもありますし、現状を踏襲いたしまして、適当な機会にかような御
意見
に沿うようにいたしたいと、われわれは考えておる次第であります。
田嶋好文
38
○
田嶋法務委員長
適当な機会といいますと、なかなかそれは適当な機会をつかめるものではないのでありまして、その必要性を認めておりますなれば、予算の点も大したこともないようでございますから、最も必要な
機関
ということを認める以上は、ぜひこういう
制度
を、今日この場合において設立されんことを希望いたしておきます。 次は三十二条に移ります。
都道府県
の
公安委員会
でございますが、従来の
都道府県
の
公安委員会
というものは、御承知でもございましようが、実は名
目的
なものであつたようにわれわれは考えております。
警察
の管理等につきましても、実際は、
都道府県
の
公安委員会
が法規の上では持
つて
おりながら、事実は
警察長
に一任したというような形でございまして、
公安委員会
というものは、ほんとうに名
目的
なものであ
つたの
であります。この名
目的
な
公安委員会
を、今回の
改正
によ
つて
、一体どのように防止して行く対策をお考えでございましようか。これが従来
通り
の名
目的
なものであるといたしますと、今回の
改正
の趣旨とはまつたく違つたものが出て参ります。
警察長
は大臣がこれを
任命
する。そうして
警視
までは
国家公務員
にする、しかも
公安委員会
は従来
通り
警察長
に一任して進むということになると、
自治体警察
を認めた趣旨は何ら盛られてないことになるので、非難されておるような
国家
警察
一本というような形が生れて来るのであります。この点私は非常に重大なことだと思いますが、防止策はいかようにお考えにな
つて
おりますか。法規の上にどういうように現われておりますか。
犬養健
39
○
犬養国務大臣
この点は特に重要な点でございますから、私からお答えをし、足らざるところは
政府委員
からお答えをさせます。まつたくお話の
通り
でありまして、県の
公安委員会
が
警察
に対して煙い後見役になりませんことには、非常にあぶない
組織
になります。ただそう言
つて
も言葉の上だけになりますので、御承知と存じますが、今回は府県の
公安委員会
は
運営
全般を扱いまして、しかもふだん
警察長
並びに
警察官
の点数をつけて、
考課
表をつくりまして、
中央
に具申する、
罷免
と
懲戒
の
勧告権
を与える。これは有名無実にしないで、まかり間違つたら、
罷免
、
懲戒
の恥をかくという運用を、輿論にもよ
つて
ぜひ高めたい、こういうことを衷心から考えております。従来私も伺
つて
おります。
公安委員会
というものは、まるでロボツトだ、ときどきあとで検査のようなことをするというようなお話を伺いますが、今度の
法律
改正
によ
つて
、道府県の
公安委員会
は、まことに煙い
監視
役であり、監督役であることになりますよう、
政府
は衷心から希望している次第でございます。
田嶋好文
40
○
田嶋法務委員長
大臣の御答弁、了承するにやぶさかではございません、それであ
つて
ほしいのでございます。ところが従来名
目的
なものであることが、当然認められておつたものが、単に点数とかなんとかいうことで、督励しなければならぬことになりますと、なかなか名目を実質にかえることはむずかしいと私
たち
は考えざるを得ないのでございます。またそういう心配のもとに、無理にこの
法案
をつく
つて
参りましても、その
運営
上もいかがかと思うのでございます。むしろこの際一歩しりぞきまして、
公安委員会
というような従来名
目的
であつたものに多くを期待せずに、やはり
民主警察
の線を通しながら、国の
治安
を守り、りつぱな
制度
をつくるというお考えに到達してもらいますことが、私
たち
はやはり望ましい線じやないかと思う。その線から考えますと、やはり
警察長
の
任免
を
国家
が握る、それから
警視
以上の者を
国家公務員
にするというようなことではなくして、期待できないものは期待できないとして、将来のことにお考えを願いまして、今回の場合はやはり
警察長
は
都道府県公安委員会
の線にまかせる、そして議論のある
警視
以上の
国家公務員
は、やはり
地方公務員
の線に入れるというようなすつきりした線をつく
つて
、自治体の
精神
を十分生かして、なおこの法の
精神
も生かすということにした方が、この
法案
構成
の上において望ましいのじやないかという考えを持つのでございます。しかしこれはあえて大臣の答弁を求めるものではないのでございますが、どうかこれらの点におきまして十分な御考慮を賜わりまして、間違いのない
警察制度
がつくられますことを、ひとえに私はお願いをいたしておく次第でございます
犬養健
41
○
犬養国務大臣
別に答弁はいらぬというお話でございますが、これは大事なところでございますので、意のあるところを申し上げたいと存じます。
公安委員会
については、たいへんあつさりおあきらめくださ
つたの
でありますが、私どもとしましては、あくまでも名実ともに煙たい
監視
役であり、いつ何どきでもふらちがあつたら、
罷免懲戒
の勧告をされるという、苦い人だという作用を、ぜひとも実現さしていただきたいと思うのであります。やはり大きな
組織
になりますと、煙い抑制の方法がありませんと、われわれは欠点の多い人間てございますから——そういうものがあると、みずから慎むという作用が起りますので、私は
田嶋
委員
の御好意あるいろいろなお話でございましたが、どうもこれは執着するのでありまして、
公安委員会
は最大の煙い作用を発動してもらいたいという念願を持
つて
おるのであります。 それからもう一つ、
警察長
のことで
任命
の方法でございますが、これは
地方行政委員会
でも、非常に議論のあつたことでありまして、おそらく議論の最大の重点の一つだと思うのであります。なぜ
中央
の方から
任命
をするようにしたかという
政府
の意のあるところを、御
説明
申し上げたいと思うのであります。ただいま申し上げましたように、どうも同時多発的な破壊活動があり得る、こういう認定を持
つて
おりまして、たとえば、いろいろな県から文書を手に入れてみますと、電源のダムであるとか、工場であるとか、極端な場合は
警察署
まで目標にされておるようなことが看取されます。また米軍の兵力、保安隊の兵力、
警察
の力というものを目標にして、それに対抗できるような破壊活動の分子の人数までも、相対的な表にしておるものもあるのでありまして、そういう大がかりな数県にわたる破壊活動の可能性というものを認識いたしまして、なるべく府県の人に
警察長
を選ばせる方が、われらの
警察
ということにな
つて
よいのでありまするが、そうしますと、人材を選ぶ眼界が狭くなるので、
任命
はそういう広い
立場
から
任命
しよう。しかし
中央
でも誤りがあるといけないから、それは
罷免
の
勧告権
でも
つて
、たいへん府県になじまないふらちな者が
警察長
として行つた場合には、府県の意思によ
つて
やめさせてもらう、
罷免
してそれをこちらが受ける、そういう一つの抑制法を選んだわけであります。これはひとつ十分御審議を願いたいと存じます。
田嶋好文
42
○
田嶋法務委員長
今の御答弁がありましたので、もう一度申し上げなければならぬことになりました。同時多発的な犯罪があるので、その必要性が特に叫ばれ、今回のこうした
改正
に
なつ
たということでございますが、この趣旨は私もよくわかりますが、同時多発性の犯罪等の必要性から、
警視総監
、
警察本部長
の
任免
を
国家
が握るということは、これは世の中の、
国家
警察
をつくり、
民主化
警察
を否定するという非難に対して答えるには、どうも薄弱にな
つて
来るのじやないか。その点を通すためには、まだ他に方法もございましよう。
任免
権を握らなくとも、簡単に
罷免
権を持たせればいいと思う。要するにそうした犯罪に対して、それらの人が従わないときには、
罷免
するという消極的な
立場
で行
つて
、十分
目的
が達せられるのであります。
任免
するということになりますと、どうしても
任免
によ
つて
すべて統括する。そして指揮命令を握
つて
しまうという点が強く出るのであります。結局世の中の人の非難が正当化されるようなことにな
つて
参りますので、大臣の御答弁の趣旨からいたしますれば、
任免
権よりも、むしろ
罷免
権の方にかえた方が、より効果的じやないか、私はこう考えるのであります。これは私の
意見
として御参考に願いますれば、まことにありがたいと思います。
従つて
私はその
意味
から行きまして、
都道府県
の
警察
の中で、
国家公務員
と
地方公務員
をわけた線がどうもすつきりしない。これに対して国民が納得しない点があり、誤解を受ける点があると思う。特に今日の日本の状況としては、政治的にも経済的にも、すべての点においてこんとんたるときであるし、やはりそうしたときにおける政治というものは、ある程度すつきりした線を出しませんと、国民の誤解を招きまして、くだらぬところでくだらぬ宣伝に乗
つて
、国の政治が誤解されて曲
つて
しまうということを非常に心配するのであります。たとえばすつきりしない線があるために、共産党あたりがこの
警察法
の
改正
に対して非難を浴びせる、そうしてその非難が何だか
国家
警察
をつくるようなことに——私はあえて社会党の左派とは申しませんが、共産党あたりが大いに騒いで、そうしてすつきりした必要性がある
警察
までも否定されて、国民がその宣伝に乗
つて
誤解を生んで、くだらぬところで政治がじやまされ、くだらぬところで日本の産業経済がこわれて行くということをおそれるものでありまして、やはりこうした重大な立法につきましては、すつきりした線をつくることが必要であるし、また国民も
要求
をしておる点ではないかと思います。 これらの点を要望いたしまして、私の
質問
を終ります。
青柳一郎
43
○
青柳委員長
休憩いたします。午後は二時より再開いたします。 午後零時五十二分休憩 ————◇————— 〔休憩後は開会に至らなかつた〕