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1953-02-10 第15回国会 衆議院 地方行政委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月十日(火曜日)     午後二時四分開議  出席委員    委員長 青柳 一郎君    理事 鈴木 直人君 理事 雪澤千代治君    理事 床次 徳二君 理事 門司  亮君    理事 横路 節雄君       阿部 千一君    加藤 精三君       黒金 泰美君    佐藤善一郎君       牧野 良三君    中野 四郎君       森田重次郎君    平岡忠次郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 本多 市郎君  出席政府委員         総理府事務官         (自治庁行政部         長)      小林与三次君         総理府事務官         (自治庁財政部         長)      武岡 憲一君  委員外出席者         専  門  員 有松  昇君         専  門  員 長橋 茂男君     ――――――――――――― 二月二日  炭労ストに伴う歳入欠陥に対する財源措置に関  する請願綱島正興紹介)(第一四六〇号)  緊急調整発動炭労ストに伴う歳入欠陥に対す  る財源措置に関する請願綱島正興紹介)(  第一四六一号)  地方税法の一部改正に関する請願粟山博君紹  介)(第一四七三号)  同(正木清紹介)(第一五〇二号)  同(大橋武夫紹介)(第一五一八号)  寒川町公金使途不明事件審理促進に関する請  願(岩本信行紹介)(第一五一六号)  クリーニング業者に対する事業税軽減請願(  赤松勇紹介)(第一五一七号)  駐留軍所在地地方自治体警察に対する国庫補  助に関する請願平野力三紹介)(第一五五  九号) 同月七日  地方税法の一部改正に関する請願熊谷憲一君  紹介)(第一五九三号) の審査を本委員会に付託された。 同月二日  平衡交付金増額並びに地方債わく拡大に関  する陳情書(第九  二〇号)  農業協同組合に対する附加価値税全廃に関する  陳情書外六件  (第九二一号)  遺失物法の一部改正に関する陳情書  (第九二二  号) 同月六日  地方制度改革に関する陳情書  (第一〇一〇号)  地方自治擁護に関する陳情書  (第一〇二号)  平衡交付金増額に関する陳情書  (第一〇十二号)  改正事業税反対に関する陳情書  (第一〇十三号)  農業協同組合に対する附加価値税全廃に関する  陳情書  (第一〇一四号)  公職選挙法改正に関する陳情書  (第一〇一五号)  消防組織法第二十五条に基く国庫補助に関する  立法措置陳情書  (第一〇十六号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員及び小委員長選任に関する件  地方財政に関する件     ―――――――――――――
  2. 青柳一郎

    青柳委員長 これより会議を開きます。  まず小委員会の設置についてお諮りいたします。すなわち地方行政委員会におきましては、過去の国会において、今まで数度にわたり、地方財源の確保のためにドツグ・レース法案の起草に努力したことがございますが、種種の都合により法律制定にまで至らず、今日に至つております。しこうして最近六大都市側におきまして、その実現の要望もございますので、本委員会におきましては、一応小委員会を設置いたしまして、研究調査を進めることといたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 青柳一郎

    青柳委員長 御異議なしと認め、競犬に関する小委員会を設置することに決しました。  つきましては、その小委員及び小委員長選任につきましては、委員長より指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 青柳一郎

    青柳委員長 御異議なしと認め、委員長より指名することといたします。       鈴木 直人君    雪澤千代治君       加藤 精三君    黒金 泰美君       佐藤善一郎君    中井 一夫君       床次 徳二君    森田重次郎君       門司  亮君    横路 節雄君       川村 継義君  なお小委員長には中井一夫君を指名いたします。     —————————————
  5. 青柳一郎

    青柳委員長 次に地方財政に関する件について調査を進めます。本日は主として義務教育費国庫負担に関する問題について調査を進めることといたしたいと思います。まず自治庁より意見を聴取いたしたいと存じます。
  6. 武岡憲一

    武岡政府委員 義務教育費全額国庫負担制度を実施いたしたいということで、政府におきましては、今回予算案を提出いたしておるのでございまするが、それによりますと、義務教育費全額国庫負担制度を実施いたしますのに要する国庫負担金といたしまして、九百二十億円を計上いたしておるのでございます。それに伴いまして、地方財政に対する関係といたしましては、平衡交付金算定におきまして、従来全額地方負担におきまして支出をいたしておりました義務教育に関しまする経費のうち、給与費並びに教材費の一部につきまして、国庫がこれを負担するということに相なります関係上、これに要します基準財政需要額が控除せられますので、平衡交付金総額もまたおのずから減つて参るのでございます。そういう計算からいたしまして、この制度が実施せられるといたしますれば、大体二十八年度平衡交付金総額は八百億円程度あれば間に合うという計算が出ることになるのでございます。いずれこれらの算定の詳細につきましては、地方財政計画に関しまする資料を提出いたしまして、その資料に基きまして、詳細な御説明を申し上げたいと存じます。
  7. 青柳一郎

    青柳委員長 御質問がありますか。門司君。
  8. 門司亮

    門司委員 これは私の記憶が違つておるのかもしれませんが、当初政府考えておりました地方財政平衡交付金は、ことしは千七百五十億というような数字を私拝見したことがあるのですが、この数字を両方合せますと、これは千七百二十億にしかならぬのであります。この千七百五十億という数字は、私は一応新聞か何かで拝見したことがあるのですが、それは誤りであつたかどうかということです。
  9. 武岡憲一

    武岡政府委員 これは明年度地方財政計画に関する資料をまだ提出いたしませんために、そういう誤りがあつたかと思いまするが、予定されている総額は千七百二十億円でございます。そのうち、ただいま申しましたように、もし義務教育に関する全額国庫負担制度が実施せられるといたしますると、その中から義務教育費国庫負担金として控除せられまするものが九百二十億円、従つて残る八百億円が平衡交付金、こういうことになるわけでございます。
  10. 門司亮

    門司委員 総額はまあそれで一応おいて、これの多い少いは別にいたします。この九百二十億円の内訳ですが、これは非常に大きな問題がありまして、今までの財政需要額との関連から来る地方負担関係がかなり重大なものが私は出て来ると思います。それは政府が言う全額国庫負担というのは、どういうものであるかということの詳細な御説明をひとつ私はこの機会に願つておきたいと思います。そういうことを申し上げますのは、この費用だけでは、私は地方要望いたしておりまするような全額国庫負担にはならないと思う。地方要望いたしておりまする全額国庫負担というのは、やはり教材費それから児童に対するたとえば給食費のごときもおそらく考えておるのではないかと考えまするが、校舎その他に対しましても、一切の義務教育費自体全額国庫負担されるならば、これは長い間地方自治団体要望しておつた一つのことであると考えておりますが、今度の法案は必ずしもそうではない。従つて地方の都道府県あるいは市町村に至るまで、今まで全額国庫負担を主張して来ておつたものすら、それに対して反対をしているというこの事実は、この予算がいかに地方の従来からの要望にこたえ得ないものであるかということを、はつきり裏書きしていると私は思う。従つてこの九百二十億円の内容の概略だけでよろしゆうございますが、この際一応御説明が願えればけつこうだと思います。
  11. 武岡憲一

    武岡政府委員 義務教育費国庫負担金として九百二十億円と算定いたしましたのは、これはいずれ大蔵省あるいは文部省から御説明を申し上げるのが筋かと思いますが、私の存じておりますところで申し上げますと、その内容義務教育学校職員給与費並びに教材費であります。給与費関係が九百一億、教材費が十九億という算定になつておるのでございます。もちろん給与費の九百一億と申しますのは、全国の一切の義務教育学校に勤務いたしております教員給与に要する総額ではございませんので、本年度に限りまして、その全体に要します給与費のうち、平衡交付金方式によりまして算定をいたしました基準財政需要額並びに基準財政収入額見込額によりまして、いわゆる収入額の方が需要額をオーバーいたします超過団体につきましては、その団体に要します義務教育職員給与総額を交付いたしませんで、その超過額を控除して交付する。こういう方式をとることになつておるのでございます。従いまして九百一億円と申し上げましたのは、これが全国義務教育費のために必要な給与総額ではないというふうに御了承願いたいのであります。それから教材費につきましては、従来から地方財政計画の中で見ております教材費のうちから、やはり同じような考え方で、超過団体に交付せらるべきものを差引いた額、そういう計算でもつて出してあるのであります。
  12. 門司亮

    門司委員 そうしますと今度の全額国庫負担というのはただ政府が従来地方に出しておりました平衡交付金の額とほとんど同じものであつて名前だけが国庫負担なつたというように解釈しても、ちつともさしつかえないようになるわけですが、名前だけがかわつたということを解釈してさしつかえあるかないか。私がさつきから申し上げておりますように、国庫負担とはほんとうの名だけである、当然これは地方財政の中から負担するものであると申し上げても、ちつともさしつかえないものであると思います。その上にもう一ついけないと考えておりますのは、全額国庫負担でありますならば、地方財政建前から、もし自治庁が真剣にお考えになるとするならば、さつきお話のような基準財政需要額より基準財政収入額の方が多いというような、いわゆる平衡交付金交付額が従来少なかつた、あるいは従来これをしなかつたという地方においても、やはり当然国庫負担としてこれを計算に入れて、そして中央からこれの支出をいたさせて、さらにその上で地方平衡交付金考えられてしかるべきだと私は考えております。自治庁としてはそういうことをやるべきである。そうしなければ名前だけの国庫負担になる。地方財政には何らの関係も持たない。それどころか地方においては、かえつてこういうものができることによつて、いろいろな支障を来して来る。いろいろな支障を来して来ると申し上げますのは、教育行政というものを今政府考えておるようにすると、たとえば教員国家公務員とすれば、文部大臣任免権を持つということになる。ざらに文部大臣地瓦自治体の長にこれを委任することができるというようなことで、教育行政自体がばらばらになつてしまう。そうして教員任免権すら二箇所にもあり三箇所にもあるようなことになつて教育行政混乱に導く一つの大きな原因を投げかけておるものと思います。従つてそういう行政的の面も考え合せてみますと、自治庁といたしましては今の御説明のようなごまかし国庫負担であつてはならないと考えます。文部省自治庁との間で今までいろいろ折衝があつたと思いまするが、幸い文部省の諸君もおられないようでありまするから、自治庁としての建前からこの案に対してどういう構想を持たれることがよかつたのか。また自治庁としては一体こういうごまかしの案に納得されておるのかどうか。その辺ひとつ本多国務大臣の心境、と言うと少し言い過ぎるかもしれませんが、今までの折衝の経過を御報告願えればけつこうだと思います。
  13. 本多市郎

    本多国務大臣 門司委員の言われまするところは、まことにごもつともであると思うのでありますが、今回義務教育費全額国庫負担制度をとろうといたします目的は、義務教育に対する国家責任を明確にするということと、さらに義務教育水準維持、将来の水準向上ということを目標といたしておるのでございます。この大きな目的のためにこの制度を打立てたいと考えておるのでありますが、財政上の都合がありまして、暫定措置としてさいぜんからお話のありましたような方法によらざるを得ないのでございまして、将来は中央地方財政調整をいたしまして、門司委員が言われました通り富裕団体であるなしにかかわらず、一貫して全額国庫から交付するという制度に到達するという目標を持つておるのでございます。この制度の眼目は、さいぜん申し上げました大目的によることでございますので、まずこの制度を確立するということにいたした次第でございます。
  14. 門司亮

    門司委員 私の言葉が少し足りなかつたと思いますが、今の御答弁は単に財政的の見地からだけお考えのようでありまするが、私がもう一応この機会に聞いておきたいと思いますことは、さつき申し上げましたように、教育行政というものは、財政的に見ましても、実質的に見ましても、地方行政の中では、きわめて大きなウエートを占めております。これが国の画一された一つ教育方針になつて行くことについては、過去の日本教育行政のことを考え合せて参りましても、私どもといたしましてはこの際十分審議をいたし、さらにこれに検討を加えるであろうということは申し上げるまでもないのでありますが、教育行政の面から見て、端的に私がこの機会にもう一応聞いておきたいと思いますのは、さつき申し上げましたように、地方自治体は今日まで自分のところの重要な行政として、しかも教員任免その他につきましても、自治体責任を持つて教育行政に当つて来ておるが、その責任を持つてつて参つておりますものの中から、こういう制度を設けて——考えられておる案を見てみますと、最も重要な教員任免権の問題のごとき、これが一応は国に所属して文部大臣が握るとはつきり書いてある。そうしてなおそれを融和することのために、地方自治体の長にこの一部を委任することができるというように、われわれは承つているのでありますが、そうなつて参りますと、最後の大元締は文部大臣が持つてつて、それから府県の教育委員会が持ち、あるいは市町村教育委員会がそれを握るということになつて参りますから、これは大体三元化された行政が行われるようになりはしないかと私は考える。これはいたずらに教育行政混乱に導くもとであつて教育自体の今日までのあり方を考えて参りますと、これを国家が掌握して、小学校先生の一人々々までに対しても、文部大臣任免権を持つというような超国家集権的の行き方は、今の日本制度あるいは将来の日本教育行政の上においては、必ずしもいい結果をもたらすものではないと思う。主管大臣としての本多さんは、教育行政をそういう形で国家に集約することが、地方行政の上にいいとお考えになつているのか、従来の制度がやはり地方自治行政の上には妥当であるとお考えになつておるのか、その辺の考え方をこの機会に承つておきたいと思います。
  15. 本多市郎

    本多国務大臣 これは多少政治的な見方も伴うことと存じますが、義務教育水準維持向上、またその義務教・育に対する国家責任を明確化するという点からいたしまして、ただいま申し上げました通り国家公務員にすることはその趣旨に沿うことと存じております。但しその実際の行政運営にあたりましては、お話にもありました通り教育委員会も存置されることでありまするし、さらにまたその学校施設等維持につきましては、市町村がこれに当つて行くのでございますから、そうした方面の意向が反映いたしまして、民主的に、しかも国家的見地からこれの行政運営されて行く。文部大臣が一応任免権を持つとはいいながら、その任免権市町村教育委員会に委任され、その市町村教育委員会が、従来連絡が不便で困つていた市町村長とも協議して行うということになりますと、地元の総合的な行政運営は、かえつて今までよりも円滑に行くのではないかと考えております。
  16. 門司亮

    門司委員 大臣のお考えはただ行政事務上の問題では、これは見解相違でありますから、ある程度そういうことが言えるかもしれませんけれども、しかし行政自体から考えて参りますと、民主行政をしなければならないといつておりますときに、小学校先生が全部官吏になるというこの観念がいいか悪いかということであります。国家権力によつて日本治安維持しようとしております警察官にいたしましても、自治警察制度がやはり中心となつて日本警察行政が行われていることは御存じ通りであります。この時期に、ことに住民に最も、親しみのあるものでなければならない教育の衝に当る者が官吏であるという観念を持たせることは、私は教育上には非常に大きな影響があると思う。給与の問題、財政の問題を離れて、教育自体のことを考えて参りますと、先ほどから申し上げておりますように、先生官吏であるというような考え方のもとに教育行政が行われて来ることになつて参りますと、日本民主主義はゆゆしい問題にぶつかりはしないか。私どもからいたしますならば、やはり教育民主化こそが、日本民主化中心にならなければならない。その時代に先生の身分が官吏であるというようなことになつて参りますと、観念の上から申しましても、感情の上から申しましても、私は融和はとれないと思う。町村に行くと、先生住民との親しみというものは、駐在所のおまわりさんとの親しみとは違うと思う。自治警察にいたしましても、今日の警察官はややともいたしますると官僚風を吹かして、昔の権力警察のようなことになりがちになつておる。これにさらに小学校先生までも官吏であるというようなことになつて参りますと、住民との間の親しみがなくなつて来る。住民との間の親しみがなくなつて参りますならば、教育は必ず破壊されるものである。ことに小学校教育自身はきわめて重要な問題であつて、そうして今までの日本の画一的の忠孝を主題とした——文部大臣に言わせると、教育勅語はきわめてりつぱなものである勅語という言葉が悪いんだというようなことを言われたように私どもは聞いておるのでありますが、そのよしあしは別にいたしまして、教育自体はどこまでも民主教育でなければならない。ことに民主国家としての将来の日本教育方針は、よき市民になることが私は一つの大きな条件だと思う。国家の一員であることには間違いはございませんが、しかしそれと同時にさらに人間的にも教養あるよき市民になるところの一つ郷土教育というものが非常に重要だと思う。こういう際に先生官吏であるというようなことでは、ほんとう民主教育は行い得ない。民主教育が行い得なければ、地方民主化はほど遠いことになる。これは教育建前の上から見て、さらに地方自治体自治行政の上において、最も重大な問題だと考えております。大臣のお考えは、それでも官吏にして、そうして官治行政を徹底させる方がいいというお考えであるかどうか、この点をもう一ぺんお伺いしておきたいと思います。
  17. 本多市郎

    本多国務大臣 これはもう繰返してお答えするほかはないのでございまして、義務教育に対する国家責任を明確にするという趣旨から、義務教育の教職員国家公務員にすることは適当なことであると考えております。但しその実際の運用の面において民主的に行われるという制度が伴つておりまするので、決して御心配のような教育中央集権等になる心配はないものと考えております。
  18. 門司亮

    門司委員 そういう御答弁だといつまでも押問答をしなければならぬので、これは見解相違になると思いますが、国家教育上の責任所在がどこにあるかということを言われておりますが、もちろん教育行政に対します国の責任がないとは私は申し上げません。警察にいたしましても、憲法の中にはちやんと内閣治安責任を負うことをはつきり書いてある。内閣治安責任を負うべきであるということははつきりしておるが、しかしそれの行政運営の面においては、やはりできるだけこれを民主的警察にするということが、国家責任の上においても大事なんだから、従つて今日警察制度自治警察ができておる、そうして国の責任において治安維持するための一つ制度だとされておる。国が教育をしなければならない義務があるから、この際その責任所在を明確にするために、先生国家公務員にすることがいいというお考えは、これはきわめて表面上の一つ理論であつて、実際的の物の考え方から来た理論ではないと私は考える。おそらく自治庁長官としてお考えになつておることは私はそうではないと思うが、閣議できまつて法律が出て来るから、大臣としてはそういうふうにお考えになつておるかもしれませんが、しかしわれわれから考えて参りますと、国の正しい行政を行い、正しい教育を徹底させようとするならば、これはやはり正しい意味の民主教育の行われる制度を設けることが国の責任だと思う。学校先生だけを国家公務員にして、それで教育責任国家にあるのだから、国家責任を全部負うといいましても、その教育の結果自体国家のために悪ければ私は決してこれはいい制度ではないと考える。もちろん国の責任であります以上は、国が当然そういうことを考えておいでになると思いますが、この点は今の政府のお考えと、われわれの考えとの非常に違う点であると私は考えておりますが、それならばもう一応お聞きしておきたいと思いますことは、財政的の処置であるというお考えのもとにごしらえられた法律であつて従つて全額国庫負担も十分ではないという一応の御答弁はありましたが、国の責任に帰属することが正しいと考えられるから、国家公務員にしなければならないという大臣考え方がここに強く出て来ております以上は、少くとも暫定的の財政処置ということだけでは私は済まされないと思う、これは非常に大きな片手落ちであります。一方の権力だけは自分たちが握り、財政的のものはそつちで当分の間幾分かは負担しなさいという、これでは教育行政はびつこのものができてやりにくいと思う。国がそれだけ強い信念のもとに教育行政を行おうとするならば、国が財政的に十分な施設をすべきであり、負担をすべきであつて地方には負担をかけないで行くべきである。それを地方には非常に大きな負担をかけている。地方の今日の教育行政は、御存じのように、PTAの費用あるいは給食費というようなもの、あるいは教材費学校校舎建築費その他を考え合せてみますと、地方住民負担というものは非常に大きな数字になつて、この九百二十億円の何倍かの数字になると思う。これらのものを一切国がめんどうをみて、そうしてその上で、国に教育責任があるから国家公務員にするというのなら、いろいろな行政的の面は別にいたしまして、まだ話のつじつまだけは合うように考えられる。しかしこれを十分あてがわないでおいて、とるものだけはおれの方でとるが、負担はそつちでしろということでは、こういうことを申し上げますと、はなはだ失礼でございますが、私は自治庁長官のお考えとしては、いかがかと存ずるのであります。  最後に私は繰返して質問いたしたいと思いますが、それなら一体いつになつたら、全額国庫負担するようなお考えをお持ちになるのか、それの見通し等がございますれば、きようこの機会にお聞きしておきたいと思います。
  19. 本多市郎

    本多国務大臣 教育制度につきましては、その主管大臣である文部大臣等から、また他の機会に補足してもらうことにいたしたいと存じます。さらに地方財政の立場から自治庁担当のものとして、これに対してどう考えたかという点でございますが、この点は全額国庫負担費用を、団体財政状況のいかんにかかわらず、全額交付するという制度に到達いたしますまでの暫定措置として、結局富裕団体に一部交付あるいは不交付という措置でやつて行くほかはないということになつておるのでございますが、私どもといたしましては、これが文部省から義務教育費国庫負担として交付される金額、それと自治庁から交付いたしまする普通の平衡交付金と、これを一緒にいたしますと、平衡交付金一本で交付したときと大体においてかわりないように交付されることと存じておりますから、財政の面からは、特にこの制度のために地方団体に圧迫を加えることはないという見地から、さいぜんから申し上げておりまする大目的に賛成をいたした次第でございます。それではいつの時期に、その団体の区別なく全額義務教育費給食費が交付されることになるかという御質問でございますが、これには国と地方を通じての、相当大幅な財政調整が必要でございます。そこでそれらの財政調整をやるにつきましては、地方税制等にも根本的な改革が必要になつて参りますので、門司さんも参加しておられまする地方制度調査会等の審議をまちまして、その上で中央地方財政調整をやつて、そうしてその国庫負担の財源の充実をはかる、こういうふうにして行きたいと存じます。ただいまのところ、ただちにそれをやろうといたしますと、非常な予算が必要になつて来るし、一面また富裕団体には、余剰財源がますます偏在して行くということになりますので、現在のところでは、暫定措置といたしまして、以上申し上げたような措置をとつて行くほかはないと思います。御了承願います。
  20. 門司亮

    門司委員 私は実はきようそこまで触れないつもりでおりましたが、私が非常に遺憾と考えておるところに大臣の方から触れましたので、ちよつと申し上、げておきたいと思います。大臣は今の言葉の中に——これはきようだけではありません、従来私の質問に対して、しばしばそういう御答弁があつたのでありますが、なるほど今私自身地方制度調査会の委員であり、それらの所管の問題について委員会で審議が進められておることは御存じ通りであります。しかりといたしますならば、こういう地方行政に対して最も重大な問題——私は警察制度の問題よりも、この制度の方が重大だと考えておる。この重大な問題に対して地方制度調査会は、その意見がまとまるまで、この法案の提出を見合わしてもらいたいという決議を内閣に出しておるはずであります。それを私はここで本多さんに申し上げるのではなくて、文部大臣に申し上げるはずでありましたが、今案は本多さんの方からそういう言葉が出ましたから申し上げるのであります。従つてもし大臣の方で、ほんとうに真剣にお考えになつておるといたしますならば、当然地方制度調査会の答申があるまで、この問題を伏せておいて、そうして地方制度調査会において、しかるべき案がまとまつたときに、さらにそれを国会で検討して、あるいは各政党もこれを検討いたしまして、万全を期して教育行政というものは行うべきものである。これは何も急に出さなければならないという問題ではなかつた考える。従つてもし今のようにこれは地方制度調査会において根本的に考えられる問題であつて、これは暫定的な処置だということになつて参りますと、地方自治団体主管大臣としてのお考えといたしましては、はなはだ私どもには遺憾な言葉ではありまするが、十分の考慮が払われていないお言葉ではないかと考える。もしこういう問題が、今開いております地方制度調査会において、これと逆な結果が出て参りました場合においては、地方財政上におきましても、行政上におきましても、非常に大きな混乱が起ると考える。地方制度調査会の意見が取入れられるということを前提といたしますと、そういうことが起る。従つて、もしそれがいれられないという場合になつて参りますと、この地方制度調査会というものは、できておるだけであつて、衆知を集めたものが行政の上にちつとも反映して来ない。それでは地方制度調査会の権威というものが、ある程度失われることになりはせぬかと考える。この面は政治的に考えて参りましても、非常に重要な問題でありますので、もし大臣が、地方制度調査会において結論の出るときには、この教育費の全額国庫負担等に対しても、また考えるというようなお考えがあるといたしますならば、私は自治庁長官としては、いたずらに地方教育行政混乱を導くような方針はお避けになつて、この際全額国庫負担というこの法案は、自治庁長官としてはお取上げにならない方が、地方自治団体に対しては、親切な行き方ではないかというように考えておりますが、長官の御意見をこの際伺つておきたいと思います。
  21. 本多市郎

    本多国務大臣 これはさいぜんから申し上げております、今回の義務教育費全額国庫負担制度の精神に基きまして、どうしてもこの際この制度を改革することが必要であるという立場に立つて、これを実施することにいたしたからでございます。地方制度調査会と政府との関係は、もちろん相互に拘束されるものとは存じておりません。政府もまた、地方制度調査会の審議をわずらわしておりますけれども、当面どうしても処理して行かなければならないという問題は、処理して行かなければ、かえつて行政の渋滞を来すのではないかと思います。従つて政府責任において措置いたしましたその上に立つて、さらに地方制度調査会が高所から総合的な答申をしてくださることは、けつこうなことでありまして、その御答申を見た上で、さらに政府は検討する考えでございます。
  22. 門司亮

    門司委員 大臣のせつかくの御答弁でございますが、私から考えて参りますると、地方制度調査会の任期は大体一年に限定してあるようであります。そうしてでき得れば、大体七月か八月ころまでに、一応の結論を得たいというようなことも、必ずしも要望とは申し上げませんが、話の中には出ておるような次第でありまして、委員会といたしましても、できるだけ早くやはり調査を進めて行きたい、そうして結論を得たいという考え方を持つておりますのは、こうした問題が幾つも出て来るからであります。ことに教育の問題は、先ほどからくどくと申し上げておりますような、いろいろな日本民主行政の上に支障を来す、はつきり言うならば民主行政に逆行したような、こういう行き方をされるということは、何も緊急やむを得ざる措置ではないと考える。ここで半年や一年ぐらいお待ちになつてもいいと思う。だから地方制度調査会は地方制度調査会で進めてもらえばいいのである、割切つた物の考え方から言えば、その通りであります。地方制度調査会は何も政府行政に対して拘束するわけでもございません。またわれわれも拘束しようと考えておりません。従つて政府が自由におやりになることはけつこうでありますし、その通りでありますが、しかしお互いの政治上の責任の上から考えてみますと、こういう制度がしかれ、そうしてそれが朝令暮改といいますか、妙な形で行われて参りますと、これは役人はそれで済みます。役人は法令をかえることは、大して困難じやございませんし、それで済むかもしれませんが、その法令のかわることによつて影響を受ける立場に立つておりまする地方自治体の長、あるいは地方住民というものは、非常に迷惑するのであります。国民が迷惑するのであります。役人の単なる悪趣味というと少し言い過ぎまするが、そういうものの考え方法律がむやみにかわり、制度がむやみにかえられて、ただ暫定的に一応こういうことをためしてみるというような不見識なことであつてはならぬと思う。少くとも一応施行された法律は、相当長い間そのことが行政の上に運営されるような制度が私は必要ではないかと考える。ことに占領治下におけるような、向うさんの思いつきの案でなくして、独立後における日本教育行政をどうするかということなどにつきましては、やはりこの際じつくりと政府考えて、万遺漏のない教育行政考えて行くことが私は正しいと考える。従つて今日こういうものが突如として出て来て、しかもそれが非常に緊急を要するのだという、その緊急性が私はわからぬのであります。どこに一体緊急性があるのか。もう一年このままの姿を通して行つてどこが一体悪いかということである。ことに義務教育国庫負担の問題は、先だつての国会を通つて、まだその法律が施行を見ておりません。一つの成案を得て、教員の実際の給料の半額というものは国庫から負担されるという法律がちやんとできておる。その法律を一ぺんも施行しないで、暫定的の法律にかえようとするのである。こういうことは地方財政に対してきわめて大きな迷惑である。ことに地方におきましては、今予算の編成期である。予算の編成期にあたりまして、こういう予算にきわめて大きな影響を持つような法案を突如として出されるということは、私は地方自治体に対しては、きわめて迷惑であろうと考える。同時に、この問題を出さなければならない緊急性が、私どもにはわからぬのでありまするが、大臣は一体——文部大臣じやありませんから、そう強く責めるわけではございませんが、閣僚の一人として、ことに自治庁長官として、どうしても万やむを得ぬ処置であるという、この緊急性が一体どこにあるかということを、納得の行くだけの御答弁を私はこの機会に願いたいと思います。
  23. 本多市郎

    本多国務大臣 これは何回お答えしても同じことでございますけれども、やはり政府といたしましては、義務教育に対する国家責任、さらにその水準維持というような見地から、どうしても本年度から実施することが適当であるという考えに出ておるものでございます。
  24. 門司亮

    門司委員 もう一つ聞いておきますが、それなら、さつき私が申し上げました現行のまだ施行されておりません半額国庫負担のあの法律をこしらえられて、一体あの法律をいけない法律だというようなお考え大臣にございますか。
  25. 本多市郎

    本多国務大臣 もちろん国会で成立いたしました法律でございますから、これは尊重しなければならぬものでございますけれども、さらに一歩を進めて、全額国庫負担制度を確立することが適当である、こういう結論に到達いたした次第でございます。     —————————————
  26. 青柳一郎

    青柳委員長 この際私から一応御報告いたすことがございます。それは先回の委員会におきまして取上げられました奄美大島に関する財政の問題であります。委員会の申合せによりまして、一昨八日私は中井委員横路委員門司委員並びに床次委員と一緒に外務大臣と面談いたしました。その結果は、いろいろ申し上げたいこともありますが、結論的に申し上げますと、この際奄美大島に対して現在の日本政府から各種の財政的な考慮と申しますか、閣議決定によつて、直接奄美大島に対して必要な財源を与えるようにすべきであると自分考える。この問題については外務大臣として自治庁長官とも話合いの上で、閣議決定については尽力をする。こういう返答であります。以上一応御報告申し上げておきます。
  27. 床次徳二

    床次委員 ただいま委員長から御報告がありましたが、奄美大島並びに西南諸島等の旧日本領土の復帰に対する外務大臣の方針というものは、ただいま委員長お話になりましたので具体的には申し上げませんが、大体過般委員会において要望されました方針に沿つておると思います。自治庁長官といたしましても、閣議においてすでにお聞きになつたか、あるいはお聞きになることと思うのであります。その外務大臣答弁せられました方針には御賛成いただけるものと思うのでありますが、ぜひ御尽力を願いたいと思います。この機会に所信を伺いたいと思います。
  28. 本多市郎

    本多国務大臣 実はまだ承つておりませんけれども、そういう案件が上りましたならば善処いたしたいと存じます。     —————————————
  29. 床次徳二

    床次委員 先ほど義務教育に関して門司委員からお話がありましたが、あと数点一般問題につきまして、お尋ねいたしたいと思います。今回の政府義務教育費国庫負担法によりまして、これが地方財政にいかなる影響を及ぼすかということについてお尋ねいたしたいと思います。  従来から地方財政につきましては、まつたく窮迫をきわめておるというのが、各関係地方団体の強い要望であります。当委員会におきましても、平衡交付金増額を要するということを、強く要望されておつたのであります。今回二十八年度予算におきましては、千七百二十億円の平衡交付金が計上せられておるのでありまして、そのうちから義務教育費として分割せられた形になつておりますが、はたして今回政府が獲得いたしましたところの平衡交付金によつて地方の予定されましたところの歳出に間に合うかどうか。地方財政はただでさえ平衡交付金の不足を嘆じておつたのでありますが、二十八年度も私は財源の不足になるのではないかと思うのでありますが、この点に対する大臣の御意見を伺いたいと思います。
  30. 本多市郎

    本多国務大臣 私がさいぜんも御答弁申し上げました通り、千七百二十億円という来年度平衡交付金の中から九百二十億円を義務教育費国庫負担金の方へ分離いたしたのでございますが、その分離の仕方は、基準財政需要額を基礎といたしまして、そうして義務教育費富裕団体には一部あるいは全部交付されないその金額を控除したものでございます。従つて今回の国庫負担制度によつて交付される金額と残りの平衡交付金の中から交付される金額とを合計いたしますと、各地方団体においてもちようど同じ程度におちつくことと考えておりますから、特にこの制度のために地方団体財政的に圧迫を受けるということはないと考えております。ただ文部省がただいま検討中であります十九億円の教材費のわけ方が、もし全部の市町村に行くということになりますと、その面で富裕団体に行くだけ、富裕ならざる団体の交付金に影響を及ぼすという点でございますけれども、これは大なる金額でもございませんので、大目的のためにやむを得ないことではないかと今考えておるところでございます。
  31. 床次徳二

    床次委員 大臣答弁は、形式的にはまつたくその通りだと思いますが、しかし従来から基準財政額の考え方に対しましては、相当問題があつたと思うのであります。特に来年度財政計画がどの程度になるかということは、まだ具体的のものを拝見しておりませんので困難でありますが、相当政府のお見込みが少な過ぎる。従来から見ましても毎年度五、六百億ないし千億くらいの財政規模に対する観察に差があつたような気がするのでありますが、今年の財政需要額におきましても、実情とはかなり差があるのではないか。すなわち、それだけ財政需要額において公正に評価しておられるその中から、ただいまの教育に関する基準財政需要額が引抜かれますと、残りました地方財政が圧迫を受けるのは当然でありますが、この点に関しまして、政府財政計画の樹立にあたつて大体支障ないというお考えでやつておられますが、相当これは支障があるという意見が外部からあるのでありまして、そのために質問したわけでありますが、政府の予定されました財政計画において十分間に合うというお考えであるかどうか、承りたいと思います。
  32. 本多市郎

    本多国務大臣 私がお答えいたしておりますのは、義務教育費国庫負担制度を設けて、平衡交付金から分離したがために特に財政的な圧迫を受けることはないと申し上げたのでございまして、すなわち一本建で平衡交付金を配分した場合と実質的にかわらないであろうこう申し上げたのでございます。しかし、従来とも地方財政が逼迫しておりまして、実際運営の面においては相当の困難性がございますので、そうした面から来る事情は従前の通りだろうと思います。
  33. 床次徳二

    床次委員 ただいまお言葉はありましたが、実際上の運営の面において相当困難があると言われますが、これは基準財政需要額算定、あるいは基準財政需要額収入額算定において相当差がありますために、実際の運営において困難があるのじやないかと思うのでありますが、この点見解相違かもしれませんが、私、大臣の御答弁にははなはだ満足できないのであります。政府がお考えになつておりまするところの財政計画そのものが、実際と合つておれば、そんなに地方の実情において苦しむことはないのじやないかと思う。ところが政府算定が実情とあまり差があるために、論理的に正確にわけたわけでありましようが、義務教育費国庫負担法として九百二十億円とりますと、残りが少くなつて平衡交付金が非常に少くなるということが言えるのじやないか。事実上の地方財政の運用の規模が小さくなつただけよけい苦しくなるのじやないかということを、私どもは恐れておるのであります。その点の実際と理論との間の矛盾をどういうふうにして解決しておられるか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  34. 本多市郎

    本多国務大臣 義務教育費給与費は、都は不交付団体でございますけれども、道府県には参りますし、その他の平衡交付金も道府県さらに市町村にも参ります。従つてそれを合計したものが、一本で計算したときと同じように行くといたしますと、その面から来る財政的な無理というものは、あまり考えられないのでございます。私さいぜん地方団体財政の困難性というものは、やはり続くものであると申し上げたのでありますが、この財政の困難性は国家財政の困難性から平衡交付金というものが潤沢に交付されないという、いわゆる床次さんの言われる基準財政需要額算定が辛過ぎるのじやないかという面も確かにあろうと思います。しかしこれは国家財政との困難性のわかち合いでございまして、これを潤沢にするという財政事情でありますならば、やはりだんだん潤沢にして行くことが望ましいと思います。しかし地方財政の困難性は、他面その地方団体自体の自、自主運営いかんによつて生ずるのでございまして、今日戦災都市等も多く、復興を急いでおりまする関係から、どうしても事業量、財政規模というものは膨脹しがちでございます。そうした面からも来るのでございます。また精神的にも、あるいはもう少しく地方住民に自治精神の確立というようなことも伴つて、初めて健全化して行くのではないかと考えられます。さいぜん申し上げました通りに、この困難性は地方団体のみのものでなく、国の財政の困難から来る、平衡交付金を潤沢ならしめ得ないという事情と、ただいま申し上げました自主運営の点から、財政規模がどうしても膨脹しがちであるという両面から来るものと思つております。
  35. 床次徳二

    床次委員 ただいまいろいろ御算がありましたが、国家財政はいかに苦しくありましても、国家が自主的に財政規模をきめ得るのですけれども地方財政にありましては、その自主性がすこぶる失われておるのが現状だと思います。政府において地方財政計画を大体こしらえまして、そのわくの中でもつて平衡交付金、あるいは補助金、あるいは税収等を予想しておられるのであります。この点の自主性というものは、実は地方にはないといつていいと思います。逆に申しまするならば、今日の国家財政の窮迫を地方財政にしわ寄せしているというのが現状じやないか。この点におきまして私は地方財政の自主性をできるだけ大臣に守つていただきたいと思つておるのでありますが、どうも地方財政の自主性というものは侵されがちだ。特に今度の義務教育費国庫負担、これは暫定法ではありまするが、この措置によりまして、むしろさらに自主性の失われ方が多くなるのじやないかということを懸念しておるのでありまして、先ほどの御答弁は一応の御答弁でありまするが、実は地方財政の自主性に対する認識において、相当私と異なるものがあるような気がするのであります。  なおこの機会に重ねてお伺いいたしたいのは、今度の地方財政計画——いずれ詳細は後刻承ることと思いますが、新財源としまして地方がどの程度まで税の増収をしなければならないかという点であります。私は地方財政が膨脹し、さらにこれが税法において増税という形になつて地方財政に影響が及んでおるのではないかということを考えておるものであります。御承知の通り国税におきましては相当の減税が行われるということがうたわれております。その半面におきまして地方財政におきましては増税を来しておるという現象があると思うのであります。この点はひとつはたして地方財政が重くなつたかどうか、増税をしなければならない状態であるのか、あるいは増税しなくとも地方財政規模がそのまま維持できるものであるかどうか、この際明らかにしていただきたいと思います。
  36. 本多市郎

    本多国務大臣 地方財政の自主性についてでございますが、御承知の通り財政計画も政府が立てますけれども、これは財政計画を立てるについて補填する金額の計画等のために立てるのでありまして、平衡交付金は自主財源として交付されるのでありますから、その平衡交付金を一般歳入として繰入れた自治体がいかなる規模において自己の財政を切盛りするかということはまつたく自由でございます。しかし制限税率あるいは起債のわく等の制約を受けることはもちろんでございますが、それだけの制約はありましても、財政を健全化するという努力を続けましたならば、その内容は相当の開きを生ずるものだという、それだけの余地は十分あるものだと考えております。なお本年地方税の増収になる分につきましては大体百五十億円くらいだと存じますが、これは部長から御説明申し上げます。
  37. 武岡憲一

    武岡政府委員 二十八年度地方財政計画につきましては、追つて詳細なる御説明を申し上げるつもりでございますが、一応予定いたしておりますところでは、二十八年度地方税の収入額は三千八十六億五千六百万円、すなわち前年度に比べまして百五十一億九千六百万円程度の増収を期待いたしておるのであります。
  38. 床次徳二

    床次委員 ただいま地方税の増収と言われましたが、これが課率を上げました場合増します収入、これは前年度より増率して徴収を予想しておるか、あるいは伺いますと、住民税等においては所得額を課税標準にすると相当の内容的変更によりまして、技術上の増収を期待しておられる、あるいは固定資産税の評価におきまして評価額を相当移動しておられる。評価額を高く評価しておられます。それによつて増収を期待しておるものも相当あるように思うのであります。かかる意味の増収等がどれくらいになつておるか承りたいと思います。収入の増加による増収でありますれば、これは納税者に対する負担にはなりませんが、課税標準の評価の変更あるいは制限範囲内におきます課税の増率等が当然予想されておるものとすれば、納税者にとりましてはこれは増税と思われるのでありますが、かかる種類のものがどれくらいあるか、ちよつと伺いたいのであります。
  39. 本多市郎

    本多国務大臣 ただいま御質問の中に、すでに明示になつたところに触れるのでございますが、今度増収になりますものはもちろん所得税の増加、課税標準の増加に伴うものが主でございます。今回少しく税制に調整を加えたいと考えておりますものは、所得税法の改正に伴つて基礎控除の引上げ、あるいは繰越欠損金の遡及算入期間と申しましようか、それの期間を長くする等によつて、この面は税法上は減税の措置になるわけでございます。  さらにただいまお話のありました所得税は増徴になりはしないかというお話でございましたが、これはすでに税法上所得税額を課税標準とするものと、所得額を課税標準とするものと、さらに所得額から税額を控除した残りの所得額を課税標準とするもの、この三つが税法上定められて、地方団体はそれを選択適用することができることになつております。この面について実は少しく改正をしたいと考えております。それは総所得額を課税標準とする場合、制限税率が高くなつておりますために、増収をはかろうという場合には、この所得額を課税標準として用いるという算定方式が多くとられておるのでございます。しかるにこの所得額を課税標準として算定する場合には、税額から所得額を逆算すると、いろいろと事務的に煩瑣な計算をしなければならぬのでございますが、これをもし税額を課税標準として課するということにいたしますと、同じ目的が達せられるわけでありますから、所得税額を課税標準とする場合の標準税率の一八%は、そのまま基準の財政収入額、徴収額の算定の標準税率として残しておきまして、総所得額を課税標準としてとる場合も、制限税率を同じ程度にまで上げて弾力を持たしたらいかがかと考えております。  そのほかは低額で課税されている税率を引上げたいと考えております。これは自動車税、入場税等のようなものでありまして、もう現に課税標準を決定いたしましてから、相当年月がたつておりますために、今日の経済事情の推移から考えまして、税と税との間の負担の均衡化の見地から、これは自然上げることが適当であるというようなものを、自然増収と合せて、ただいま申し上げたような金額に達するのでございます。
  40. 床次徳二

    床次委員 税の問題はいずれさらに具体的の問題の機会に詳細に承ることにいたしまして、もう一点義務教育に対して承りたいのでありますが、自治庁長官としての立場からお答えをいただきたいと思います。  義務教育に関する事務は、地方の自治を行うという立場においてこれを処理する方が、地方自治上適切なんじやないかという考え方を持つておるのでありますが、これに対していかなるお考えであるか承りたいのであります。先ほどの御答弁によりますと、国家責任を明らかにし、教育水準を上げるためには国庫負担法を実施する方がよろしいという御意見になつておるのでありますが、逆に考えまして地方自治という問題を進展するためには、地方にできるだけ主体を置いて義務教育を行う方が民主的でもあるし、地方自治全般から見ましてもいい影響を与えるのではないかという考え方もあると思いますが、この考え方に対する大臣の御意見を伺いたいと思います。
  41. 本多市郎

    本多国務大臣 まことに一面の理由としてごもつともであると思うのでございますが、義務教育に対する国家責任を明確にするという点からこれを国家公務員にいたしまして、しかも地元と密接な連絡のつく民主的な運営をして行くということにいたしましたならば、これはその教育の効果も上り、地方自治の精神も取入れられて行くものと考えております。
  42. 青柳一郎

  43. 横路節雄

    横路委員 私は大臣にお尋ねしたいのですが、この四月一日から施行される予定になつておりました義務教育費国庫負担法で半額負担のものを、ただいま提案されようとしておる全額国庫負担法になぜ急いでしなければならなかつたか、その理由については、先ほど門司委員の質問に対して大臣から答弁がありましたが、どう考えても大臣は本心は納得していないのではないかと思います。もしも納得しておるのであれば、もう少しわれわれに了解できるような説明のしかたをしてもらいたい。たとえばこれは義務教育に関する水準を高めるのだと言う。しかし実際には水準を高めない。なぜ高めないかということについては、私はあとで大臣にその点を指摘したいと思うが、実際には高めない。かえつて義務教育水準は当分の間は逆に財政上の問題から低下して来る。その点は明らかである。だからこのいわゆる義務教育費全額国庫負担の問題がかかつたときに、大臣自治庁長官として、新聞の報ずるところによれば非常に反対しておる。また閣議終了後においても、それぞれの新聞記者団との会見においても同様の談話を発表しておる。従つて私は大臣から、この義務教育費全額国庫負担法については、どうも自治庁長官としては了解できなかつたんだけれども政府決定でやむを得ない、こう言うのならばこれはやむを得ないわけですが、その点ほんとう自治庁長官として、先ほどお話義務教育水準を高めるのだという点を、御自身で納得しておるのであるならば、重ねてひとつ私たちによくわかるように説明をしていただきたい。
  44. 本多市郎

    本多国務大臣 これは教育制度の専門的な御質問にわたることになりますので、他の機会に所管大臣から答弁をしてもらうことにいたしたいと存じます。私がこれに賛成いたしましたのは、さいぜんから申し上げました通り、大局的に政治的に判断いたしまして、これに賛成することが適当であると考えて賛成いたしたような次第であります。
  45. 横路節雄

    横路委員 私は義務教育そのものについて所管大臣からの答弁を、あとで文部大臣からさせるということについては異議ございませんが、しかしやはり自治庁長官として教育財政について今まで担当されておつたのですから、私はその財政的な面からこれに対する大臣見解を明らかにしていただきたいと思うのであります。  まず第一番目に、先ほどお話がございましたが、この義務教育費全額国庫負担法によつて、この一年間は東京、大阪、神奈川、静岡、愛知、京都、兵庫、福岡については、この義務教育費全額国庫負担法は適用しない。そうすると今これを除いた県については、いわゆる義務教育費国庫負担法によつてやるということになりました場合に、たとえば昨年の十二月の国会において、この委員会において非常に問題になりました、いわゆる小学校、中学校教員の平均俸給が、自治庁においては、文部省においても、大蔵省からそれぞれさしずをされて折衝した結果、三百四十九円は高い、こういうので、大臣御承知のように元の給与ペースから三百四十九円引いたものに対して二〇%増加の新給与ペースをとつたのであります。かようにして平衡交付金をそれぞれ算定をして都道府県に渡したわけであります。しかし御承知のように全国知事会においては、この委員会において参考人として呼んだ場合にも明確に、全国知事会としてはかかる決定には服することができないから、たとい地方財政が苦しくても、三百四十九円については減額をしないでそのまま支給する。なお予算委員会等におきましても、本多国務大臣は、地方財政のわくの中で、それぞれ今の三百四十九円の問題については、あえて減額しなくてもいい、地方財政のわくの中でやることについては政府は関与しないと言つている。従つて三百四十九円問題の一例をとりましても、すでに都道府県の教職員はそれだけ支給されている。それが政府建前からすれば、国立学校の教職員になるわけですから、従つて国立学校職員に今まで適用していた給与法をそれぞれ適用することになると、実際には義務教育費全額国庫負担法によつて、現実に教員給与水準は相当低下することは明らかなんです。しかし、自治庁長官としては、従前に支給されていた三百四十九円問題並びにそれぞれの都道府県の教職員が、それぞれの地位との関連において今までとつていた給与ベースについては、義務教育費全額国庫負担法の中においては絶対に減額しないでそのまま支給するのか、その点を明らかにしていただきたい。私は明らかに減額になると思う。減額になるから大臣がどう答弁されても、やはり義務教育についての水準は低くなつて来る。こういうように私は考えているのですが、その点ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  46. 本多市郎

    本多国務大臣 従前も義務教育職員給与は府県負担でございます。今回の措置も府県負担でございまして、交付する金額が同じ水準計算されておることは、平衡交付金一つにして扱う場合と同じでございますから、その点かわりないと考えております。
  47. 横路節雄

    横路委員 そうすると今の大臣答弁では、今までと同じ水準で支給しているということですが、そう上ますと、実際には今まで大臣も御承知のように、都道府県においては、都道府県の財政のわくの中であげて支給しております。これは去年から問題になりました三百四十九円問題を見てもそうなんです。これを国から支給する場合には、明らかにその分だけを減らして支給するわけです。大臣の先ほどの答弁で、国家責任を負うのですから、国家が初めから減らしてやるのですから、減らしたものを基礎にして、それぞれ個人の教職員に俸給が支給されることは当然ではありませんか。そうしますと、今の大臣答弁の中に従前通りで、何もかわりがないということについて、大臣は何か感違いをなさつているのではないでしようか。
  48. 本多市郎

    本多国務大臣 実は、その負担制度法律がまだ成案を得ておりませんので、よくわからない点もあるのでありますけれども、ねらいは平衡交付金で行く場合も、文部省からの交付金で行く場合もやはり府県に行くのであつて、その負担は府県でございますから、その事情にかわりないと私は概念的に考えているわけであります。
  49. 横路節雄

    横路委員 大臣は今のお話の中で、平衡交付金算定した場合と同じ形で、府県にやるということであります。から、従前と何もかわりがないとおつしやいますが、そういうことであれば従前の平衡交付金制度でやつて、どうして悪いのでしようか。大臣は先ほどの答弁では、義務教育については、国家責任を持つてやるという。そうすれば、明らかに平衡交付金と同じ算定方式をとつても、責任はあくまでも国なんです。もう都道府県知事には責任はない。そうすると大臣も御承知のように、去年この委員会で十数回にわたつてつた主たる問題は、今の三百四十九円の問題については、明らかに国では減らしてやるけれども地方財政のわくの中においては何ら政府は関与しない、関与しないというか、高く支給してやるということであつた。ところが今回は国が平衡交付金と同じ算定でやるということは、三百四十九円を減らしてやる、今までの国立学校の教職員、たとえば学芸大学の付属小中学校の教職員と同じにしてやる、このことは明らかに今日支給されておる小学校、中学校教員の俸給の水準が下るということなんです。これがもしもほんとうに下らないというのであつたならば、下らないという理由を明確に説明していただきたい。
  50. 本多市郎

    本多国務大臣 平衡交付金算定については、何回も横路さんとも議論をしたことでありますから、十分御承知の上でお聞きになつておるのではないかと存じます。義務教育教員給料は、府県負担でございます。そこへ文部省から定員定額の金額を交付しますと、それによつて府県が処理するのでございますから、上げろとも下げろとも国家からさしずはできませんけれども平衡交付金の場合と同じであると考えております。
  51. 横路節雄

    横路委員 給与について、その支給の責任者が都道府県知事であるということになりますと、地方における教職員は、今までそれぞれの都道府県知事との間において、平衡交付金で支給されておるものよりは上まわつておるもので支給されておる。これは大臣の御承知の通り。もしも義務教育費全額国庫負担建前から行つて平衡交付金のほかに、今までそれぞれ地方財政のわくの中で上まわつて支給されておるこの分も全部国が負担をするのであるならば、大臣お話通り義務教育費国庫負担になるけれども、実際にはこれだけ支給されておるのですから、平衡交付金算定と同じにこういう低い水準で、もちろん国のきめた給与水準には違いないけれども、こういう支給の仕方をしておいて、その幅については都道府県の負担でやれと大臣はおつしやるわけですか、その点をひとつ明らかにしていただきたい。
  52. 本多市郎

    本多国務大臣 この点もすでに明らかなところと存じますが、実額を政府が交付するということならば、今の問題の解決ができると存じますけれども、定員定額ということになると、実額との開きについては、やはりその負担責任者である府県において、適当に処理しなければならないことになると考えております。
  53. 横路節雄

    横路委員 そうすると名前義務教育費全額国庫負担法であるけれども、実際には、実質的に足りないから、足りない部分はひとつ地方財政で見てくれ、こういうわけですね。この点は非常に大事なんですから、ひとつ明らかにしておいていただきたい。
  54. 本多市郎

    本多国務大臣 これは実額交付となつておらないのでございますから、ただいま御指摘のような場合が生ずることは、やむを得ないと考えております。
  55. 横路節雄

    横路委員 これは昨年十二月の国会でも問題になつたのですが、今年の四月一日から施行することになつております義務教育費国庫負担法の第二条には、御承知のように実際の支出額の二分の一をやるということがございます。そうすると名前だけは義務教育費全額国庫負担法でいかにも前進したように思われるけれども、その内容は、義務教育費国庫負担法の第二条に実際の支出額の二分の一をやると明文化されておるものに比べれば退歩したということにならないでございましようか。
  56. 本多市郎

    本多国務大臣 一面お話のような解釈もできると存じます。実額の半額というのが、今度は定員定額の全額ということになりますから、またこの全額という面においてはその額をもつて退歩、進歩というならば進歩じやないかと存じます。いずれにいたしましても、財政事情のための二十八年度暫定措置でございまして、最近の機会においてこの財源調整を行いまして、実額ということはまだむずかしいと思います。けれども、定員定額が全部の府県に定員定額通り交付されるというところまでは到達する目標を持つておるわけでございます。
  57. 横路節雄

    横路委員 私もきようは大臣と別に義務教育制度そのものについていろいろ質問したり、お答え願いたいとは思わないのですが、ただ財政的な問題については、やはり今までのところからいつても、大臣責任の所管であると思いますので、なお重ねてお尋ねしたいのであります。  そうすると、今のお話で定員定額で支給なさるということになりますと、小学校、中学校給与費についての定員定額というものは、たしか昭和二十四年度に一ぺんこれを実施したことがあるわけでございます。昭和二十四年度に定員定額を一応実施しまして、非常に不評判を買いまして、二十五年以降については必ずしも定員定額ではなかつたと思うのです。そこで今大臣お話のように、定員定額ということになり、定員定額でもつて、国が算定をして都道府県にやる。支払いの責任者は大臣お話によると都道府県知事で、実際には都道府県における教職員はその定員定額で配分された給与額よりは多く上まわつておる。そうするとどういうことになるかというと、私は二つのことが起きると思う。一つは高給者はやめてもらいたいという首切りがこの定員制によつて行われるということと、もう一つは、定額によつて配付された金額と、実際には高まつた金額との差額はより人員を落して、現在の郡道府県においては教員給与水準を保たなければならぬから、やはりどうしても首切りをして、現在の給与水準維持しなければならぬ、この二つのことが私は出て来ると思うのでございますが、大臣は定員定額によつて、現在の都道府県において維持されている教職員の数並びに教職員給与水準については何ら変更がないとお考えになられますか。私は定員定額によつて明らかに首切りというものが行われて来ると思いますが、この点についてはどうでございましようか。
  58. 本多市郎

    本多国務大臣 ただいま御指摘のような定員において食い違い、実額と給与額との間において食い違うというような事情は、平衡交付金制度基準財政需要額算定いたしましても同じ事情にあるのでございますから、首切りとか、引下げとかいうようなことは、この際特に生じて来るとは存じておりません。
  59. 横路節雄

    横路委員 そうすると大臣は、結局義務教育費全額国庫負担法によつて定員定額でやつても、その算定の基礎になるのは平衡交付金算定してやつたものと同じだ、そういうことになると、一体この義務教育費全額国庫負担法というものを、一体どういうわけで出そうとしておるのでしようか。先ほど大臣答弁の仕方を聞いてみても、一面から見れば進歩だとも言い、一面から見ればお前の言うように退歩だとも考えられるということから見ると、どうも大臣は所管の自治庁長官としては了解をしていないのではないかというふうに考えるのです。この点は財政一般の問題でございますから、やはりこの際大臣としても、あれだけ閣議の中で自分の所信を述べられ、外部の記者団にも発表しているわけでありまして、今日私その記事を持つて来ませんでしたが、この点大臣は閣議の決定もありましようけれども、この義務教育費国庫負担法によつてどういう欠陥が出るかということについては、やはり今日本委員会において大臣から話をされてもいいのではないか、お話できるものであればひとつお話をしていただきたい。どうしてもだめだというならば、やむを得ません。その点どういうものでしようか。
  60. 本多市郎

    本多国務大臣 大なる欠陥があれば、これは私として賛成するはずはないのでありまして、今回の制度は賛成をいたしたものであります。そのことが地方財政に非常な圧迫を加えるというような事情がありますと、これは賛成ができないのでございますが、その面においても大なる支障がございませんので、賛成をしているわけであります。
  61. 横路節雄

    横路委員 一月十六日のたしか閣議終了後に、大臣は記者団との会見において、自分義務教育費全額国庫負担法については反対をして参つたけれども、しかしこの点については最終的にやむを得ないので、政府としては日本職員組合のいわゆる組織運動の弾圧というか、これを押えることについては一応成功したものと思う。こういうような談話を発表になつておりまして、自治庁長官としては、まことにおりつぱな談話であつたというように考えているわけなんです。そこで大臣にお尋ねいたしたい点は、私としては義務教育費国庫負担法のねらいは、いわゆる国が義務教育費についてこれを維持するとか、水準を高めるとかいうことは、これはまさに羊頭を掲げて狗肉を売るという言葉がありますが、これはもう大臣が腹の中でお考えになつているように、義務教育費全額国庫負担法というものは、決して義務教育水準を高めるものではなく、教職員の身分を拘束する上から行けば、まことに好都合なものであると考えて、最後大臣自治庁長官としてこの点を了承せられたのだと思う。たしか最初に大臣国家公務員であるということについては、地方自治の侵害であるというように言われていて、最後に身分については市町村教育委員会市町村長との間で、この任免についてそれぞれ協議をしてやるようにということになつたので、自分としては了承せざるを得なかつたというように、私はその談話についてはいまだに記憶しているのですが、国家公務員になつて、一番末端のそれぞれ地方の教職員任免する場合に、やはり市町村教育委員会市町村長とが協議の上で、これを任免するようになつているのかどうか、問題をかえて身分についてお尋ねをいたしたいのですが、今私がお話したようになつているのでしようか、それとも全然別の形になつているのでしようか、その点お尋ねいたします。
  62. 本多市郎

    本多国務大臣 市町村教育委員会任免権の委任を受けて、その市町村教育委員会市町村長と協議して行うという措置を講ずることになつております。
  63. 横路節雄

    横路委員 これも大臣の所信をお尋ねしたいのですが、もしも政府国家公務員にするように提案なさるのであれば、これは筋を通して市町村教育委員会は廃止すべきものであると考えます。教職員国家公務員という身分にするのであれば、市町村教育委員会は全部廃止すべきものである。もしも市町村教育委員会を存置して、市町村教育委員会に教職員任免権を持たせるものであれば、これは教職員の身分については地方公務員であることが正しい。どちらかでなければ私は筋は通らぬと思う。なるほど国家公務員にしておいて、末端は市町村教育委員会市町村長との協議において任免することについては、上からと下からとで、両方で教職員を縛りつけて、いろいろな運動を押えるのには都合がいいかもしれない。しかし国の建前としては、どちらかに筋を通すべきでないかと思う。この点について、どうでしようか、私はどうも政府のやり方は了解できない。だから市町村教育委員会任免権を持たすのであるならば、地方公務員にすべきである、国家公務員にするのであるならば、市町村教育委員会は廃止すべきである、どちらかに筋を通さなければならん。この義務教育費国庫負担法というものによる教職員の身分に関する政府のやり方ははなはだ解せないのです。また自治庁の立場から行けば、地方公務員にして、市町村教育委員会を存置して、市町村教育委員会任免権を持たすべきである。自治庁としてはそのように主張すべきものであると考えるのですが、この点はどうですか。
  64. 本多市郎

    本多国務大臣 さいぜんから申し上げておる趣旨従つて国家公務員にすることが適当であると思います。国家公務員ということに教職員の性格がかわります関係から、この任免についても、委任された任免権市町村長と協議して行うということによつて市町村内の総合的行政というものが円滑に行く。調和がとれていてまことに適当ではあるまいかと考えております。
  65. 横路節雄

    横路委員 ただいま本多国務大臣予算委員会に出席を要求されているというお話でございますが、私どもといたしましては、大臣の先ほどの御答弁の中で了解できない点が多々あるわけです。義務教育費全額国庫負担法に伴うところの定員定額、それが、実際の支給は暫定的に都道府県知事にやらせる、しかし従前のものについては平衡交付金同様であるからかわりがないだろうというようなことは、地方の教職員地方教育の実体から行けば——そういう御答弁はお急ぎの上でお答えになられたのかもしれませんが、しかし予算委員会へ出席であるそうですから、私は次の委員会において、さらに大臣から御答弁を願いたいと思いますし、なお本問題に関しては、やはりどうしてもここに文部大臣の出席をいただいて、文部大臣地方自治庁長官の両方から、それぞれの立場でひとつ御答弁をいただいて——これに対して文部省並びに自治庁見解の上に立つて、ことに問題のある財政的の問題については、両方から明らかにしていただきたいと思いますので、質問を保留して次の機会に譲り、なお文部大臣の出席も、ぜひ次には願いたいと思います。
  66. 青柳一郎

    青柳委員長 本日は他に御発言もないようでございますので、この程度で散会いたします。次会は明後十二日午前十時といたします。     午後三時三十四分散会