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1953-02-02 第15回国会 衆議院 地方行政委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月二日(月曜日)     午前十一時十七分開議  出席委員    委員長 青柳 一郎君    理事 鈴木 直人君 理事 雪澤千代治君    理事 床次 徳二君 理事 門司  亮君       中井 一夫君    前尾繁三郎君       牧野 良三君    石坂  繁君       大石ヨシエ君    平岡忠次郎君       西村 力弥君    川村 継義君  出席政府委員         自治庁政務次官 鈴木 善幸君         自治庁次長   鈴木 俊一君         総理府事務官         (自治庁財政部         長)      武岡 憲一君  委員外出席者         総理府事務官         (南方連絡事務         局長)     石井 通則君         総理府事務官         (南方連絡事務         局第二課長)  吉田 嗣延君         専  門  員 有松  昇君         専  門  員 長橋 茂男君     ————————————— 本日の会議に付した事件  地方財政平衡交付金に関する件     —————————————
  2. 青柳一郎

    青柳委員長 これより会議を開きます。  地方財政に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。床次君。
  3. 床次徳二

    床次委員 私は地方財政、特に平衡交付金のうち、特別平衡交付金配付に関して、この機会皆さん方に特にお願いを申し上げまして、なお私の提案に対して各委員の御賛成を得、政府に対しまして、右に対する善処方を実はお願いいたしたいと思つておるのであります。今日日本の旧領土沖縄奄美大島あるいは北海道、千島等が問題となつておりまして、その復帰に対して国民がひとしく熱望しておりますことについては、皆様もよく御承知の通りだ思います。なかなかその実現を見ないというのが今の実情で、はなはだ遺憾に考えておるのであります。しからばその旧日本領土状態がどうなつておるかということに関しましては、大体御承知かとも思いまするが、従来これが日本領土でないということによつて、非常な精神的な苦痛をなめておられるわけであります。沖縄がおよそ六十万人、奄美大島が二十四万人ばかりの人口がありまするが、こういう方々が、日本領土から切り離されたということによつて、非常な苦痛を持つておられるのであります。日本が独立いたしましたにかかわらず、依然として、将来日本に帰属するかもしれぬ、日本主権が潜在的な立場にあつて残されておるのが今の実情であります。この点まことに同情にたえないのでありまするが、最近いろいろ実情を調べて参りますると、これらの地方は、単に日本領土から離されておるという精神的な苦痛ばかりでなく、最近の民生状態は、非常に悪くなつて来ておる。占領当時は進駐軍がいろいろな世話をして、民生上におきまして問題はなかつたと思うのでありますが、最近はいろいろな行政機構その他の変化によりまして、生活においても著しく苦しい状態でありまして、すなわちこれらの住民は二重な苦しみをなめておるわけであります。精神的な面、なお日常生活面において、非常な苦しみをなめておるのであります。なお他の領土につきまして申上げますると、小笠原、歯舞、色丹、千島等住民は、すでに引揚げ内地に来ておりまするから、これらの地方方々に対しまして、は特に問題はないのでありまするが、現地に現に日本人が住んでおる、しかもその日本人苦痛をなめておるという点につきましては、西南諸島奄美大島沖縄というものが非常に特別な立場にある。しかも人口が百万に近い人がおるということについて、特に皆さん方の御注目を仰ぎたいのであります。なかんずくその地方のうち私が問題といたしたいのは奄美大島であります。これは昔は鹿児島県の大島郡であつたわけであります。ところが今度の平和条約によりまして、沖縄とひとしくこれが日本領土を離れておりまして、今日は沖縄とともに一つ自治体をつくつております。アメリカ軍政部のものに琉球政府というものができておりまして、住民代表としましては、いわゆる立法機関を設けて、さらにその下に各地方市町村がありまして、自治行政行つておる状態なのであります。  簡単に事情を申し上げますると、沖縄自体各種建設工事がありますので、建設工事によつて相当の潤いを見ております。住民もそれによつて生活をしておりまするが、その建設工事恩典にあずからない地方におきましては、非常な生活疲弊を来しておるわけであります。日本との産業交通が昔のように参りません。しかもその税負担その他自主生活は、まことに目に余るものがあるのであります。皆様方は特に地方行政関係の深い方々でありますから、その点から申し上げますと、従来沖縄並び奄美大島地方自治体といたしましても特別の立場にありまして、戦前にありましては国庫負担によつてこれがまかなわれておつたのであります。しこうして占領行政中はアメリカの方におきまして、これに補助金を出して運営をしておる。ところが今日に至つてその様子を見ますると、アメリカからの財政的補助金歳出の一割以下であります。それをもつて地方自治を運営しておるのであります。わが日本は、特に西南地方の、私どもこの地方に近いところの区域を見て参りますと、ほとんど八割近くまでいわゆる平衡交付金その他の国庫の補助によつてまかなわれておることと比較しますと、非常な差であるということが、これによつておわかりだと思います。従つて多額税金負担住民はしております。しかもその生活は苦しいということは申すまでもないのであります。一昨年でありまするか、この大島区域の一部の島嶼が日本復帰して参りまして、今日鹿児島県のうちの三島村という一村をなしておるのであります。この一村の例を申しますと、人口が三千足らずの島でありまするが、この島が日本復帰して参りましたために、どういう財政上の影響があつたかと申しますると、これは自治庁行政課長が親しく行かれましたので、数字的のことはおわかりだと思うのでありまするが、従来村税として負担しておりましたものに対してアメリカ政府、いわゆる軍政部等補助金はきわめてわずかであつたものが、日本復帰しましたために、多額交付金をもらうということになつておるのであります。二十六年度におきましては特別交付金を六千万円受けておるのであります。前年の予算で見て参りましても、ほとんど問題にならなかつたものが、六千万円の特別交付金を得たということは、いかに内地の現在の交付金制度恩典を受けておるか。内地復帰することがただ単に精神的な利益ばかりでなしに、物質的にもいかに彼らの自治行政に大きな影響を与えておるかということは申すまでもない。しかもこの六千万円の交付金は、今日奄美大島中心地でありますところの名瀬人口は二万以上ありまするが、そこの歳出の数倍に当る数字であります。かような状態でありまして、今日現地住民疲弊状態は、あとで資料配付申し上げたいと思いますが、これによつておわかりかと思います。精神的に申しましても、また肉体的に申しましても、極度に疲弊しておりまして、なおこれが産業方面にも影響をいたしまして、米の品種もすつかり劣悪になつておりますし、また従来特産物でありました家畜等品種の更新が行われませんために、ますます劣等化しております。なお小学校の子供の知能の状態におきましても教育設備教員等の十分な施設が間に合いませんために、著しく低下しておるというような状態でありまして、私どもはこれに対してとうてい黙視するに忍びないような気がしておるのであります。幸い昨年の末、お手元にありまするが、奄美大島に関する決議が、皆様方の御賛成によりまして衆議院を通過することになつたのであります。この決議趣旨によりましてもおわかりかと思いますが、「旧日本領土復帰について、必要なるあらゆる措置を講ずるとともに、差し当り、鹿児島大島郡について特段の配意をなし、その住民が、産業交通教育民生遺家族援護恩給等生活の各般について、本土住民と同等の取扱を受けることを実現するための措置を速やかに講ずることを要望する。」という皆様御一致の決議ができ上つた次第であります。  従つて私は特にこの機会お願いいたしたいのは、この決議に基きました一つ方法といたしまして、今日地元民生において非常に困つていることを、特別交付金によつて援助、救済することができましたならば、何よりもよいと思つておるのであります。きわめて冷静な立場をもつて申しますならば、これらの地方主権日本にありましても、行政権アメリカが握つていて、アメリカ軍政部が指導しておりますから、当然この民生の安定はアメリカ政府責任である。われわれはあえて関知することはできないのではないかという考え方はありますが、御承知のようにこれらの地方は、われわれが常にその復帰を強く要望しておる地方でありまして、できるだけ早く日本領土にしたいとわれわれは念じておるところであります。従つてこの際アメリカに対して、よりよい行政要望することはもちろんでありまするが、アメリカ行政の及ばないところは、われわれがそれを補うことが、当然日本としての大きな責任であろうと思つているのでありまして、今日まで特別な法的措置を講ずる道がなかつたのでありますが、幸いにいたしまして、この決議によりまして、皆様の御趣旨が明確になりましたので、今後の運用におきましても、ぜひこれらの西南諸島に対して、特別な御配慮をいただきたいと思います。幸いにいたしまして奄美大島は旧鹿児島の一部分であつたわけでありまして、特に今日の行政上から見ましても、沖縄地方とは大分差があるのであります。特に内地と深い関係を持つておりますので、大島につきましては、復帰実現は比較的容易であるし、また実際上の各種取扱いをいたしますにつきましても、沖縄と別個の取扱いをいたしまして、一層優先的にこの処置を講ずることは、事務的に申しましても非常に容易な状態であるのであります。まずこの点から皆様の御援助を仰ぎたいと思つております。  お願いの点を要約いたしますと、特別交付金配付にあたりましては、その平衡交付金の一部を将来自分の県下に収めるところの鹿児島県に交付する、鹿児島県をして適当な機関を通じ、今後大島地方行政に必要な経費に充てしむるということを御配慮いただきましたならば、まことに幸いと存ずるのであります。なおこの点はでき得るならばあえて奄美大島に限らず、広く西南諸島沖縄方面に対しましてもその道を開かれたならば、一層私は目的を達し得るものと思うのであります。また将来の予算措置等によりましても、もつともつと予算をよけいとつていただいて、そういうことを実現することが望ましいと思うのであります。なお私は今の物質的面におきまして、特別交付金によりましてこれを見るということ以外に、当委員会関係ではありませんが、日本産業行政その他厚生行政等あらゆる面におきまして、今まで日本領土から除外されておりましたが、これに対しまして積極的に内地と同様に取扱う道を講ずることは当然必要となりつつあると思つているのであります。現在は総理庁南方連絡事総局を置かれまして、これらの地方内地復帰するまでの間、内地行政との連絡に当らしめておるのであります。今日は幸いに局長に来てもらつておりますから、かの地の事情につきましては、後刻御説明をお聞きいただきたいと思うのであります。正式の復帰までに当然われわれの責任として、これらの地方民生を見なければならぬ。少くとも行政面から見ましても、この必要があるのだということを痛感しておるので、特にお願いした次第であります。  なおこの機会皆様方にお諮りいたしたいのは、この西南諸島地方、特に奄美大島地方に対しましては、従来からその実情がいかようになつておるかということにつきましては、日本国民はまつたく知らなかつた言つてよい状態であります。われわれ国会の者といたしましては、すみやかに現地事情調査いたしまして、今後これらの諸地方日本復帰して参ります場合の処置を講じますと同時に、現在これらの地方が非常な不遇にあるということに対しまして、万全の措置をとり得るように措置を講じたい。このためには議員を派遣いたしまして、親しく現地事情調査研究いたされまして、今後の対策を練ることが何よりもよいことであると存じます。この議員派遣に関しまして、まず地方行政委員会中心といたしまして、またその他の関係委員会方々の御希望も強いことと思うのでありますが、こういうことに対しまして委員長の手を通じ、でき得る限りその機会実現できますように、御配慮お願いしたいと思うのであります。  以上私の要望を申し上げたのでありまするが、自治庁におかれましても、従来の取扱いから申しますと、この道は一応従来は考えたことがなかつたという御答弁であろうと思いますが、先ほど申し上げましたように、国会決議をもちまして、これらの地方に対しまして十分な措置を講じろということの決議が、すでに成立しておるのでありますから、この決議趣旨従つてでき得る限りの措置を、自治庁としても考慮されんことを特にお願いいたしまして、自治庁の御研究並びにしかるべくその措置をすみやかに実現されることを要望する次第であります。
  4. 鈴木善幸

    鈴木(善)政府委員 奄美大島におりますところの住民方々生活状態、また民生全般に関することにつきましては、政府といたしましても深く御同情いたしておるところであります。つきましてはただいまお話のような御趣旨に沿うべく、政府としてもあらゆる面で研究をいたしまして、御期待に沿うように善処いたしたいと存じます。
  5. 床次徳二

    床次委員 なおこの機会に、直接現地に行かれまして日本復帰した三島村の状態を調べました行政課長あるいは自治庁の方がおられましたら、多少向う地方自治状態、また財政状況はどれくらいであつたかということの御報告をいただきますれば幸いだと思います。なお全般的な問題に関しましては、南方連絡事務局長がおられますので、特に地方行政中心といたしました一般問題について、この機会に御説明をいただきたいと思う次第であります。
  6. 石井通則

    石井説明員 奄美大島住民に対しまして、いろいろ御同情ある御発言をいただきましたことは、その所管をしております南方連絡事務局長として厚く御礼申し上げます。向う実情ということでございますが、財政交付金に当るような政府補助金に関しましては、私どもも詳細な調査をやるところまでまだ至つておりません。従来の資料につきまして自治庁にも御相談しまして、従前どのくらいの補助行つてつたかということもお調べいただいております。  なお私どもがいろいろ向う陳情される方々、あるいは出張して聞きました実情によりますと、大体従来の各種補助金は、向う市町村負担の約七〇%ないし八〇%——こまかい数字として、ある資料には七四%と出ているものがありますが、約七〇%ないし八〇%の政府からの補助金が出ておつたということを聞いております。現在琉球政府アメリカ民政部がございますが、この方のガリオア資金がだんだん減つて参りまして、現在のところ市町村地元負担の約八%、先ほど床次委員からお話になりましたような大体一〇%以内というくらいの補助金アメリカ民政部、あるいは琉球政府を通じて市町村に流されているというのが、大体私どもの大ざつぱに把握いたしました向う市町村財政現状でございます。  なおそのほか詳しい一般的な事情をというお話でございますので、向う現地の概略を総括的に御説明申し上げたいと思います。琉球諸島奄美大島諸島をあわせまして昭和二十一年一月二十九日より日本行政から分離せられまして最近に至るまで日本政府向う住民、あるいは官公署その他の連絡が一切禁止されておりました。たとえば前に日本政府の職員でありました、いわゆる元の公務員に対する恩給、あるいは死亡資金退職資金というものが支給されておりませんし、また軍人遺家族等あるいはまた生活保護法そういうものの適用が一般的には向うに及んでいないという現状でありましたが、昨年の一月ごろそれらのものに関しまして、いわゆる個人的に権利があるという恩給、あるいは軍人遺家族援護金、こういうものの支払いはさしつかえないというような了解がとりつけられまして、その後あるいは渡航の事務、その他の懸案事項解決、あるいは貿易文化等の交流に関しまして、那覇あるいは名瀬南方連絡事務所と称せられる連絡機関を設けて、そういう事項解決に当つてよろしいという招請状が、アメリカ政府から日本政府に発せられましたので、昨年七月に南方連絡事務局が設けられて、それらの懸案事項並びに各省の所管されております各種事項連絡調整に当るということになつて、その後いろいろ現地と折衝をいたしておるのでございますが、おおむね沖繩の方におきましては、軍の土建工事等によりまして相当ドル賃金一般に流されておりますが、奄美大島にはそういうことがございませんので、だんだん奄美大島生活も苦しくなつて来ておるようであります。また沖縄におきましても、そういうものも大体今後そう長く続くということでもありませんし、また都会地の方はドル賃金が流れておりますが、農村方面にはまだなかなかそういう恩恵が与えられませんで、農村方面沖縄相当つておるようでありました。従いましていわゆるはつきりしておりまする恩給給与軍人遺家族援護金支払い、そのほか郵便貯金民間銀行その他の預貯金の支払いについて非常な要望があるのでありまして、これらの問題について私ども鋭意これが解決に当るべく努力いたしておるような状況でございます。向う産業関係につきましては、琉球及び奄美大島を合せまして黒糖あるいは大島つむぎ等特産物戦前におきましては相当多額に出ておりまして、それによつて潤つていたのでありますが、大島つむぎは現在のところ戦前の約八%程度に回復しておるのにすぎないというような状況でございます。また黒糖につきましてはかんしよの作付面積が大体全般につきまして見ますと、戦前の約六分の一程度に回復いたしております。大島側の方が約三分の一程度に回復しておるようでございまして、産業の復興ということも、まだまだやつと緒についたということで、今後相当何らかの方法を講じなければ困難でなかろうかという状況にあるわけであります。私ども貿易に関しましては昨年四月日琉貿易につきまして、大体向う貿易取扱い内地同様に取扱うというような方針のもとに協定を結び、その後実施の促進をいたしておりまして、昨年十月貿易協定実施されることに相なつたのであります。  また日琉間郵便為替が終戦後ずつととだえておりまして、たとえば学生生徒大島から、あるいは琉球から参りまして、その子供の学資を送るにしても非常に困難を感じておりましたし、またこちらからいろいろ必要な送金をするにしてもその道が、ございませんでしたが、昨年の暮れに日琉間郵便為替協定に関する覚書に関しまする調印がととのいまして、アメリカ民政部アブループもとりつけまして、本日からその実施を開始することになつたというようなことで、そういう問題はだんだん解決いたしております。  軍人遺家族援護の問題につきましても、厚生省にお願いしまして、その取扱い方法また支払い方法等研究いたしておりまして、近く関係各省集まりましてこの問題を解決するというような段取りに進んでおります。また恩給につきましても恩給局等とも打合せまして、目下鋭意研究いたしておるのでありまして、そのほかあらゆる面について、向う実情というものは同情すべき状態にありますので、できるだけ努力いたしまして、懸案事項解決したいということで、目下鋭意検討中でございます。  なお詳しく必要でございますれば、われわれ向うの方の実情に関して手に入る資料を整えまして、御要求に応じまして提出申し上げたいというように考えております。
  7. 床次徳二

    床次委員 先ほど私が御説明しましたときに数字一つ間違えましたが、昨年大島郡の三島村が日本復帰したために、六千万円の特別交付金をもらつたということを申し上げたのですが、これは一けた間違えまして六百万円の誤りであります。しからばその当時村の財政はどのくらいかと申しますと、村の財政規模は、大体決算によつて見ると五十万円、そのうちの三分の一が村税、その他が雑収入となつておる、こういうからくも生存しておるというだけの役場が、やはり日本復帰して参りまして、日本行政によつて普通に行われますならば、基準財政需要としまして六百万円程度補助金はもらえるのだということが明瞭になつておるのであります。従つてこれらの地方町村長その他自治に当つております者は、三島村の復帰を見まして以来、ことさら復帰を強く要望しておるのでありまして、何らかの形において内地からの補助あるいは交付金というものを強く要望しており、三島村の復帰をすぐ目の前に現われた事実として見せつけられておるということを、ひとつお含みおき願いたいと思います。  なおこの機会にお尋ねしたいのですが、地元では教育関係が非常に復旧しておらない。私の手元に参つておりますものによりますと、教育復旧程度最低基準一人当り〇・七坪という内地基準に対しまして、〇・三八坪程度しかまだ教育施設ができていない、しかも教科書等はまるでそろつていない。なお教育に関しては特に教育税というものによつて営んでおるということになつておりますが、教育税向う地方町村税と別個にとつておるのか、あるいは町村税としてやはり一般に入つておるのか、よくその点わからないのですが、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  8. 石井通則

    石井説明員 規定の上におきましては、学校教育に関することは、向うにも内地と同様に教育委員会がございまして、その教育委員会予算等を組みまして、それに関する必要な租税を市町村長に要求して、市町村からとつてもらう、こういう建前に規定はなつておるのでございます。しかしながら現地事情といたしまして、現在の市町村税負担というものが非常に高い状態にあります関係から、そのほかに別途に教育税というものを賦加して徴収するということは、現地住民負担に耐えないというような状況であるということを開いておるのであります。そういうことから教育委員会法に規定されておりますいわゆる教育に関する特別税教育税というものは、まだほとんど大部分が実施していない、こういうように現地から聞いておるのであります。
  9. 青柳一郎

    青柳委員長 なお先ほど床次委員から要望がありました請願書と、ことに大島現地事情調査のための議員派遣につきましては、委員長におまかせ願いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 青柳一郎

    青柳委員長 それではさよう決定いたしました。
  11. 牧野良三

    牧野委員 この問題については、もう少し実状をわれわれ委員会に詳細にお聞かせくださる機会をお与え願いたいと思うのでありますが、各派共同提案決議案、これに対する内閣総理大臣及び外務大臣がどういう取扱いをなすつておるか。私にはこういう問題が、決議案という形で国会を通過しているにかかわらず、本委員会が再びこういうことを論じているということはいかにもまだるつこい。もつと内閣といたしまして重大に扱つて、これを明らかにすべきじやないでしようか。従つて委員長及び私ども外務大臣なり総理大臣に会いまして、見通しをつけるということが必要なのじやないかと思います。何だか陳情に基いてここでそれの審議をするように——どうも各委員会を見ますと、陳情を取上げてはいろいろなことを論じ合つて、それが議会政治の弊害をなしている。これなんかは単純な陳情ではないのです。すでに国会で、各派共同提案によつて決議案が可決されている、その取扱い内閣はどうしているかということを国会自身、衆議院自身が聞かなければならぬ。従つてここではもつと具体的に、政府がどう見通しをつけているか、どんな力を加えたらよろしいか、各党各派からもつと有力に進めてみたいと思います。この点においては石井説明員にも御苦慮があると存じますが、もつと打明けたお話をいただいて、われわれの働くべき余地を与えていただきたい。単純な陳情ではない、もう切実な問題であるのみならず、事日米の関係に及ぼすところも相当重大である。この種の案件の発展いかんによつて、われわれの決心するところも重大でなければならない。こんなふうに私は考えるので、どうか委員長においてもこの問題はこの程度でなく、もつと重大に、国会全体の問題として大きくお取扱いを願いたいと思います。
  12. 青柳一郎

    青柳委員長 承知いたしました。実は本日この委員会を急速に開きましたゆえんは、奄美大島等に対して特別平衡交付金支給について考えがあるかどうかという点に重点を置いたわけです。御存じのように特別平衡交付金は近日中にきまるのでありますから、政府の腹を聞くのが主であります。いかにも牧野先生御発言の通り、この決議の結末につきましては、政府におきまして相当資料を整えて、現状並びに将来の見通しについて、機会を見まして述べてもらうということにいたしたいと存じております。
  13. 床次徳二

    床次委員 ただいま委員長からお話がありましたから、牧野委員も御了解をいただきたいと思いますが、これは決議をいたしましたけれども、その決議に対する措置が、まだ政府の方ではかばかしく行つていない。しかも今自治庁の方で扱つております特別平衡交付金の配分は、現在どんどん進んでおります。その配分をするときに、この決議のあつたことを承知してもらうし、どう取扱うかということを、自治当局がうつかりしていると実際の配分に漏れてしまうおそれがありますので、特に自治庁の認識を明らかにするとともに、配分に関して措置を講じてもらいたいということを、ひとつ皆さん方からの御援助を得まして、委員会としての決議に基く具体的な実施要綱を強調していただく。なおこの機会実情調査につきまして国会議員の派遣等も当然必要じやないか、その点につきまして皆様方にお諮りをお願いしたわけであります。どうぞひとつ…。
  14. 中井一夫

    ○中井委員 先ほど来床次委員から奄美大島の問題につきまして、だんだん事実の御陳述があり、またこれについて有力なる御要請がございましたことは、私は一々賛成であります。この際ぜひ有効適切な方途をおとり願いたいとお願いをいたす次第であります。  さらにただいま牧野委員からこの問題は単に一部局の問題に局限するのではなくして、すでに本院において決議案まで決定されているのだから、一つの政治的な問題として扱うべきだ、政府みずからこれに対する一つの所見をこの委員会において明らかにする必要があるということを言われたことにつきましても、私は双手をあげて賛成するものであります。委員長におかれましてはすみやかにその手続をとつていただきたいと思います。  つきましてはこの機会にその準備とでも申しますか、その用意のために二、三お伺いをいたしておきたいことがあります。この大島郡の郡民の復帰その他の問題につきましては、政府アメリカとの間に、先般来種々折衝があつたはずなんであります。その問題についての経過はどういうことになつているか。御承知の通りこれが三十八度線、八度半、九度、いろいろな決定によりましては、同じ日本人でありながら一部はアメリカの統治のうちに残されるという実に悲惨なる状態が起きているのであります。最近この大島郡の人々が、わが国の各地におきまして大会等を催して、親族友人まつたく血の出るような思いで全体復帰ということを叫んでおりますことは、石井局長もよく御承知だと思うのであります。その叫びたるやまことに悲痛なものがあります。私は実は自分個人の特殊の関係がありますので、これらの人々のためにいつも世話をいたしている。そういうためによくその実情承知いたしているのでありまして、今やその切実なる叫びは、まことに一日もこれを猶予することのできない実情にある。あるいはひいては意外なる政治的な問題にまで及ぶというおそれがあるのであります。従いましてこの際政府は真剣にかつもつと有効適切なる交渉をアメリカとの間になされ、一日も早くこれらの気の毒なるわれわれの同胞のために、この同胞が希望しているところを実現するようになさるべきものだと思うのであります。それがその後ずいぶん長い間になるにかかわらずはつきりしていないということは、政府の態度はむしろ緩慢ではないのか。私は深く遺憾に存ずる次第なのであります。もつとはつきり申しますと、今一般に伝えられているところでは、今日の政府のやり方ではいろいろな所が残る、特に奄美大島につきましては沖永良部島、与論島というようなものが残る、これではいかにしても親子兄弟互いに相わかれるというような状態になつてじつとしておれぬ、というのがこの島の人々の叫びであります。こういう問題につきまして、次にこの委員会におきましては外務大臣自身が出て来て、その経過を御説明になるが当然だと信ずるのであります。  なお先ほど石井局長から御説明がありましたからその点についてお尋ねをいたしますが、貿易については昨年の十月からこれを実施することができるようになつた、こうおつしやつたと思うのでありますが、事実内地と同様にできておりますか。従つて内地との商業取引については自由にやらされておるのがほんとうであるのかどうか。そうじやないのではありませんか。そういうことにおきめになつたというのならば、それ以後内地同様の取引になつてしかるべきだが、私の聞くところでは、そんなことになつていないのであります。きわめて不便を感じておる。それがために、問題としてはすでに密輸入、密輸出等の問題があつて、この大島に関する当面の取引について刑事事件が起つておることはたいへんなものです。これをひとつはつきりしていただきたい。  それから金を送ることなんですが、郵便為替の問題で御説明なつたようであります。本日からそれを実施するようになつたということでありますが、これもはたしてどうか。そういうとりきめができたとしても、事実上なかなかやれぬのではないか。この点をもつとはつきり御説明をいただきたい。  それから交通の問題であります。互いに行き来することくらいは許されていいのではないか。それが全然許されないから、これまたやかましい問題が起る、こういうことになつておる。この点ひとつ簡単に御説明を願つておきましよう。
  15. 石井通則

    石井説明員 先ほどお尋ねがございました外交上の折衝の過程に関しましては、南方連絡事務局の方に外交上の権限がございませんので、外務省から詳しくお聞きいただいた方が適切ではないかと思います。私どもの知つておりまする範囲では、外務省としまして、与論島、沖永良部島を分離して折衝することはないということを聞いております。また新聞その他で、いろいろ現地が心配いたしたことは私ども十分承知いたしておりますが、そのようなことは外務省でもなかつたということをはつきり申しておりまして、外務省としては復帰を交渉する場合は、与論、永良部を一体的に考えて行く、こういうような話を聞いております。おそらく外務大臣はいろいろ御苦心して折衝されておると思いますが、詳細はその方からお聞きいただきたいと思います。  なおそのほかの御質問のうち、貿易関係に関しまして、私の言葉が若干足らなかつたので、誤解があつたかと思いますが、それは昨年十月一日から効力を発し、実施いたしました日琉貿易の覚書は、建前として内地同様の建前でやつて行くという方針でとりきめられております。従つて従来いろいろ木材その他割当制等をやつておりましたものにつきまして、できるだけそういうものを撤廃して行くということにして、着々実施いたしておるのであります。  なお為替の問題でございますが、この問題も、建前といたしましては、もし琉球政府で承認しますれば、円建で行くことができるということは規定上なつておりますが、まだこの方のアメリカ側の承認がありませんので、現在ドル建になつておるわけであります。なお支払いに関しまして、一応協定の中には内地と同様後払い方式で決済ができるようになつておりますが、後払い方式に関しまして、現地でやや異論も出ておりまして、現実にはまだまだ内地と同様にというところまでは至つておりません。建前はそういう建前でとりきめてありますので、その方向に逐次解決して行くということにつきまして、内地並びに琉球側と一緒になつて努力いたしておるような状況であります。  それから次に郵便為替でございますが、これは昨年の末に調印ができまして、アメリカの民政官のアプループも得まして、その実施準備期間として約一箇月を保留いたしたのでありまして、本日二月一日からこれを実施するということになつたのであります。但しこの郵便為替も無制限に送れるというわけでございませんで、金額の制限といたしまして、一人一箇月三十ドルの範囲内ということになつておりますので、こちらから送る場合には約一万円見当向うに送れる。向うからは向うのB円で約三千円見当——こちらに着きますと一万円になりますが——これが送れることになるのであります。本日から実施に移しておるはずでございます。  それから渡航の問題でございますが、この問題につきましてはいろいろ渡航の許可が遅れておりまして、渡航せられる方に非常に不便を与えておりますことは、私ども非常に申訳ないと思つております。ただアメリカ現地管理当局といたしまして、現地に軍施設がありますので、いわゆる保障といいますか、機密保持といいますか、セキユリテイーの立場から個別審査をしなければならぬということになつており、それぞれの渡航申請者から都道府県を通じて、南方連絡事務局に申請が出ますものを、極東軍司令部に回付いたしまして、極東軍司令部から琉球アメリカの民政府の方に書類がまわつて向うからの許可が、また極東軍を通じて南方連絡事務局に入るわけであります。向う調査でいろいろ身元引受人の調査等につきましてひまがかかつておるのでありまして、この点何とか簡素化ができないかというようなことで、外務省を通じて折衝をいたしておりますが、まだ結果がわかりませんで、どういう程度まで簡素化ができるか、今のところまだはつきりいたしませんが、私ども立場としては、できるだけ簡素化するという方向で、アメリカ側と外務省を通じて折衝いたしておるのであります。従来よりもある程度の簡素化はできるのではなかろうかと思つておりますが、今のところ過程でございますので、何とも申し上げるところまで至つておりません。以上であります。
  16. 門司亮

    ○門司委員 床次さんの御提案といいますか、お話については、万一そういうことができ得るとするなら、今まで日本領土であつて、そして日本の民族が住み、同じような親子関係を持つておるものの一つ自治体の救済をすることは必要ではないか。今までの当局の御答弁を聞いておりますと、いずれもその問題に触れておりません。ただ鈴木政務次官から善処するというお答えがあつただけであります。そのほかの問題はすべて日本政府責任において、いわゆる戦争の跡始末というか、そういうことだけについての各個人的の問題、あるいは一つの島というか、外国との間の貿易その他の取引についての問題だけであつて床次さんのお話は、基本的に触れた、いわゆる行政責任がどこにあるかという問題が非常に大きい問題だと私は思う。この問題は単にこの委員会で答弁を求めるというようなことはむずかしいでありましようし、それから同時に、先ほど牧野先生からお話がありましたように、事は外国の領土、と申し上げることは少し行過ぎかもしれませんが、外国の行政下にある地方の公共団体に、外国から援助を与えるということは非常に大きな問題だと思う。そう簡単にこの問題は片づく問題ではないと思う。従つて何らかの便法があれば別でありますが、便法がない限りにおいては、やはりこの問題は真剣に外務省なり日本政府が取組んで行つて、そうして日本行政権の及ぶようなこと、いわゆる手取り早く言えば、復帰の問題が非常に大きな問題ではないかというように考えられるのでありまして、従つて外務省並びに政府の所信の見通しについて、私どもといたしましてははつきり聞きたいのであります。このことのためにわれわれはやつぱり努力すべきではないかということが考えられるわけであります。従つて先ほど牧野先生から御要求がありました通り、政府並びに外務省当局にひとつ出ていただきまして、そしてこれに対する十分な検討をして行かなければ、根本的な問題の解決はなかなかつかないと思う。従つて委員長におきましても、そういうようにおとりはからいを願いまして、この次の機会にでも、ひとつ外務省なり政府当局の責任のある方にお出かけを願つてそして衆議院の決議事項がどのように遂行されているかということの御説明を願いたいと思うのです。  この機会に私ちよつとお聞きしておきたいと思いますことは、自治庁で善処されるという答弁以上に、この問題はなかなか困難だと思いますが、しかし何らかの便法で、床次さんの御要求になりましたことの幾分でも実現の可能性のあるような方法がもしありとするなら、もう少しく詳しくひとつこの機会にお聞かせを願えば幸いだと思います。
  17. 鈴木善幸

    鈴木(善)政府委員 この問題につきましては、御承知の通り、平和条約によりまして北緯二十九度以南の諸島につきましては、米国を施政権者といたしますところの信託委任統治のもとに置かれているわけであります。従いまして一切の行政、司法、立法もアメリカの施政のもとにあるわけでございます。そこでこれに対しまして、日本政府が直接経済的その他の援助を与えるということは、これは困難な問題でございますが、先ほど床次委員からお話がございましたように、旧日本領土、われわれと同じ同胞が非常に困つておる実情につきましては、政府としても心から同情いたしておるわけでありますから、鹿児島県との連絡その他がございます際に、鹿児島県を通じてそういう連絡費その他に対して、自治庁行政の範囲で、いかようなことができるかということを、あらゆる角度から研究をいたしまして御趣旨に沿いたい、こう考えておる次第でございます。
  18. 川村継義

    ○川村(継)委員 私一つお尋ねしたいのですが、いろいろ牧野さんや門司さんあたりから出た見解と同じであるのでありまして、奄美大島の問題につきましては、これは鹿児島県の方々ばかりでなくて、日本全体の大きな関心でありますから自治庁にお聞きするのですが、きよう問題になつております奄美大島沖縄に対する交付金は、今まで出ているのですか。
  19. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 ただいまのお尋ねの点でございますが、政務次官からただいま申し上げましたように、アメリカが支配しております地方自治体に対しまして、日本政府がここに交付金を交付するというようなことは、現在の法制の建前としてはできないわけであります。ただ先ほど政務次官が申し上げました点は、たとえば鹿児島県が、従来鹿児島県の一部でありましたために、そことの連絡等において、特別の財政需要を鹿児島県に生ずるというような場合において、鹿児島県のさような一般の府県において見られないような特殊な財政事情について、鹿児島県に若干の点を考慮するということは、これは法制上可能であるのであります。ただ直接にさような地域に対する交付金を交付するとか、あるいは間接でございましても、さような地域に対するものを直接の目標にして交付するということについては、現行法制上相当研究しなければならない問題があるというふうに考える次第であります。
  20. 川村継義

    ○川村(継)委員 行政が全然別になつておりますので、多分そういうことになるだろうと思つておりましたが、さつき床次さんの御意見によりますと、特別平衡交付金の配分の、今そういう事務的なことが行われているから、この際奄美大島等に対して、特別平衡交付金を出してもらえるか。しかもそれを鹿児島県を通じて出せるようにしてもらいたいというような御意見があつたと思います。これはちよつと考えてみても、何かしら筋道の違つたやり方ではないかと思います。だからそういうような問題が出て来るのでありまして、奄美大島に対して特別平衡交付金を出すとかいうような問題でなくて、さつきからもいろいろ御意見がございましたように、政府として早く何か大きな手を打つて、外交的に解決して行かなければ、奄美大島あるいは琉球方々の御希望に沿うようなことはできぬのではないかと考えるわけなのです。そういう点をひとつ御考慮いただきたいとわれわれは思うわけであります。
  21. 床次徳二

    床次委員 ただいまの川村委員お話は、私の申し上げました趣旨を、途中からおいでになりましたから、誤解されたと思います。私は今日特別平衡交付金の配分について、特にこの機会に発言いたしましたのは、やはり必要な額を鹿児島に与えて、鹿児島県が旧県下の一郡でありましたところの奄美大島に対して、必要な施設をなす場合に、その必要な経費を、鹿児島として適当な方法をもつて出し得るように、これはやはり鹿児島県の必要な財政需要と見まして、特別平衡交付金鹿児島県に与うべきものである。今日それぞれ配分事務にかかつておりますので、その配分事務において当然それを考慮していただきたいということを、先ほど政府委員が答弁された筋道にのつとつて申し上げた次第であります。  特にこの機会において、さらにつけ加えて申し上げたいのでありますが、沖縄その他の問題につきましては、これは根本的な問題であります。ただ鹿児島県の一部であつた奄美大島につきましては、沖縄地方とは非常にかわつた状態でありまして、なお今後の復帰の見通し等についても格段の差がある。また現地住民生活状態から見ましても特別な差があるし、特に従来から申しまして、沖縄鹿児島とは県が違つてつた従つて交通、経済、文化、風習も全然違つてつたというような特殊事情を考えますと、鹿児島にそういう特別交付金を交付して、そして善処せしむることは、私は正当な理由があるのだということを申し上げたわけであります。しかし根本的に見まして、現在の状態日本責任かどうかということになりますと、これは当然アメリカ政府がやるべきものをやつていないので、われわれ日本政府としましては、アメリカ政府に現在の住民に対して必要な措置を講ずるように要求することは、私は十分根拠があると思う。日本政府は当然そういう措置をとつておられると思うのでありますが、遺憾ながら実現ができない間におきまして、しかも将来復帰が当然期待されておるし、われわれとしてできるだけ即時復帰というくらいな立場においてやつております以上は、そのめどがついておるならば、むしろわれわれといたしましては、必要な経費は負担して参つてもさしつかえないのではないか、当然特別平衡交付金の対象として考慮してもよかろうということを申し上げておるのであります。先ほど牧野先生からもお話がございましたが、外交上の問題におきまして、アメリカ現地住民に対して、特に大島に限らず、沖縄全般について措置をとるように要求することは、日本政府としての当然の責務であろうと考える。これはこの委員会において論ずることではなく、政府として当然やるべきことであると思うのであります。特別平衡交付金配付の問題が現実にあるのでありますから、これに関連して申し上げたのであります。どうかその点誤解のないようにしていただきたいと思います。
  22. 牧野良三

    牧野委員 お話の重点はよくわかりました。沖縄との関係は別だという床次委員のお説だが、小笠原との関係はどうであるか。ここでやはり奄美大島だけに特別の手当をするということに関して特別の理由があるということでないと問題にならないと思うのです。今ここにいただきました資料を見ますと相当重大ですね。過去の日本においてこうであつた。その後文化施設というものを新しい政府がどんどんやるようになつたにかかわらずアメリカは顧みない、だから日本が心配してやらなければならぬ、こうなりますと、私は第一自治庁が今の取扱いに困られやせぬかと思いますから申し述べるわけなのです。ここでは床次委員の御主張は正しいと思うが、しかし床次委員鹿児島県のことだけを言われているといつて、われわれはそれだけを取上げてはならない。これは決議案にある通りに、奄美大島沖縄、小笠原、この旧日本領土復帰についての問題であると同時に、アメリカがこういう弱体児を虐待するような態度をとつておることは、人道上からも、国際友義の関係からも無視することはできないのだから、ここで床次委員から問題の出た機会において、大きく取扱わなければ問題は解決せぬ。そしてそれを契機にして復帰の問題を一挙に解決するというところまで行くには、少し乳が少くて泣いておられるかもしれぬけれども子供は他の方法によつてかわいがつて、そして問題を根本的に解決するというところに委員会が進まなければならぬ。そうしないと、いたずらに自治庁を困らせ、そして南方連絡事務局を当惑させるだけで、問題の解決はできないと思うのです。そこでお伺いしたい。皮肉な意味でも何でもないのですが、奄美大島に対するものとして何千万円か何百万円かをこの際鹿児島県に融通するということにおいて問題が解決する、それだけでちよつと今息がつける、そうしてその法律上の取扱いはこうやつてくれればいいのだという便宜な方法があつて、それで一時のたいへんな急場を救つてやることができるのかどうか、それを委員長から床次委員にお尋ねくだすつて、内容を明確にしていただきたい。
  23. 床次徳二

    床次委員 ただいま牧野委員から御質問がありましたが、なぜほかと差をつけているかと申しますと、旧日本領土はいろいろありますけれども、従来の日本住民がそのまま住んでおりますのは奄美大島沖縄とだけであります。小笠原の従来の日本住民はほとんど内地引揚げておる。今日あそこに移住を許されておりますのは、いわゆる旧混血児といつておりますが、この人たちが残つておるだけで、きわめて少数であります。一般日本人はおらない、もちろん混血児も日本人ではありますが、従来行つてつたいわゆる内地の人は今はおらぬという状況であります。そうして旧日本領土の中において対象になつておるのは、沖縄奄美大島だけであります。しこうして現地実情を見て参りますと、今アメリカ行政におきましては、沖縄奄美大島を合せて琉球政府として統治しておるのでありますが、その内容を見ておりますと、沖縄の方におきましては、ある程度まで中央政府がありますのでよく手も届いておる。また地理的状態から申しましても、沖縄はあの一帯の中心であります関係上よく連絡がとれる。ところが奄美大島は距離的に見ましてむしろ従来は鹿児島に一切依存しておつたわけであります。それが今は沖縄奄美大島琉球政府として一つになつておりますので不自由が多い。経済、交通関係で従来東へ来ておつたのが、逆に西へ行つておるという形で、実際上非常に不便をしております。もちろん行政南方連絡事務局におきましては、奄美大島には別に出張所を置いている状態であります。この解決はむしろ鹿児島県に依存する方が多い。特に今日の復帰までの沿革を見て参りましても、沖縄奄美大島が同時に復帰ることをわれわれは予想できるが——もちろん趣旨においては全部が一日も早く復帰してもらいたいのでありますが、実情を見て参りますと、御承知の通り奄美大島には今日アメリカの軍事施設はほとんどなく、レーダー・ステーシヨンがあるくらいなものでありまして何ら施設はないのであります。沖縄には相当の軍事施設をやつておる状態であります。その点非常に差があるというところも見まして、今日の状況におきましては、奄美大島については、特殊事情が言えるのだということが考えられるのであります。従つて今回の決議におきましては、前段の二行におきまして、旧日本領土全般について強い要望をしておる。これは国会立場から申しますと、三回にわたつて意思表示をいたしておるのであります。しこうして後段の部分の「しかるところ、」云々は、奄美大島に対する特殊事情を認識いたしましたために、特に奄美大島につきましてはほかのところと異なつ取扱いをせざるを得ない、それほど切迫した事情だということが判明いたしたために、特にこういう決議なつたものと私は考えております。従つてこういう応急なことをやることは、はたしてためになるかならぬか。私は根本問題は当然もつと大きな立場に立つてつておられるし、また今の政府はやつておられるものと実は期待しておる。しかしこういう応急の問題につきましては、やはり今度のような機会でなければ解決する便法がない、特別平衡交付金の場合は、非常によい機会じやないかと思うのであります。これはきわめて一部分でありますが、しかしこれもやはりほつておくよりは早い。根本的には全部の領土が一日も早く帰つてもらいたい。これは国会でもしばしばすでに決議を了しております。私は総理初め外務大臣から十分誠意を尽しておられるような答弁を伺つておるのでありますが、事実上におきましては、まだはなはだ遺憾の意を表したい。ぜひ牧野委員のような立場において、さらに政府も反省されまして旧日本領土が一日も早く復帰されるように御尽力を願いたい。ぜひ努力すべきである。それに至る間はつなぎを考えざるを得ない。アメリカ政府にやらせるのもけつこうでありますが、これは日本政府としても黙視できないことであるということを申上げるのであります。
  24. 牧野良三

    牧野委員 いかがでございますか、速記をとめてちよつと懇談をいたそうじやありませんか。
  25. 青柳一郎

    青柳委員長 ちよつと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  26. 青柳一郎

    青柳委員長 それでは速記を始めてください。牧野委員
  27. 牧野良三

    牧野委員 ただいま委員会の質問応答で、政府の意見が那辺にあるかということは大体これを了承することができました。つきましては、この問題はこの委員会における行政取扱い上の問題として取上げることは不適当だと思います。事は重大なる外交上の問題でありまして、従つてここの席へ外務大臣の出席を求めて追究するというようなことも、私は目的を達するゆえんでないと思います。よつて委員会は、ここで委員長並びに委員より一、二名、委員長とともに外務省を通じてアメリカ行政当局べ厳重なる申入れをなして、奄美大島に関する資料教育及び経済に関する第一集によると、人類の平和生活における重要なる問題だと思う。当局者は何とこれを見るか。場合によつて国会は適当な決心をしなければならぬと思うという厳重なる申入れをしてくださいまして、その結果をここへもたらして、善後策を措置する。そういうことをやつておると特別平衡交付金に関する問題の決定の時期を失するという床次委員の憂慮があるかと存じまするが、速急これをやると同時に、政府はよろしくこのことを考慮に置いて、この問題が解決するまで特別平衡交付金取扱い決定の内部的な事務進行を一時やめていただきたい。これをこの委員会の申合せといたしたいと思います。委員各位の御賛成を願います。
  28. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 ただいま牧野委員から、この問題を外交的に見通しがつくまで、特別平衡交付金の決定を延ばしてほしい、こういう御要請がございましたが、この特別平衡交付金は法律によりまして、二月中に決定することに相なつておりますので、その範囲内におきまして政府としては善処したいと思います。
  29. 青柳一郎

    青柳委員長 ただいまの御発言大体において承知いたしました。地方行政委員会の関する範囲内において、理事会とも相談いたしまして善処いたします。ほかに御発言ございませんか。
  30. 西村力弥

    ○西村(力)委員 別の問題ですが、昨年の十二月二十四日本委員会において委員長の質問に対する本多国務大臣の答弁で、委員決議に基く公務員の年末手当のプラスの問題、いわゆる〇・二五箇月分の問題でございますが、この件についてはつきり政府の考えを本多国務大臣より代表して承りたいという質問に答えて、すなわち政府の代表として答弁した。そのことによつて地方公務員も国家公務員と同様になされるべきであるとわれわれは了承して、安堵したわけでありますが、現実に地方公務員に対する年末手当のプラスの問題は、ほとんどが施行になつていないという状況にある。府県知事も知事会、議において、十二月の二十日、ごろだと記憶しておりますが、全員これを出そうという申合せをしておる。そしてそれを自治庁に対していろいろ折衝をせられたということを聞いておるわけであります。ところがこの大臣の公式な答弁と齟齬する行きがかりがあつて、なかなかそう出し得ないという現状になつておる。このことは私どもとしてはまつたく遺憾なので、ございまして私たちのこの席上において公式に発言されたことが実施を見ていないというようなことは、私たちのこの委員会の権威にも関する問題ではないか、さように思われるのでございます。それで私はこの際お願い申し上げたいのは、この地方公務員に対する年末手当のプラスの問題は、どのような支給状況になつておるか、これをまずお聞きしたい。この件については明確なる資料を速急に出していただきたい。そうしてその資料に基き、後日地方行政委員会のある際において、いろいろ全員の論議に付していただきたい、かように思つておるものでございます。この点は委員長がわれわれ委員会の代表者として、本多国務大臣に質問せられ、その答弁を委員長初め委員全員が了承したという経過になつておりますので、何とぞこの点についてのおとりはからいをお願い申し上げたいと存じます。
  31. 青柳一郎

    青柳委員長 ただいまの問題につきましては、政府当局に対して資料の提出をお願いいたします。  他に御発言ございませんか。         ————— 御発言がないようであります。  本日はこれをもつて散会いたします。次会は追つて公報をもつてお知らせします。     午後零時四十五分散会