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萬屋参考人 ただいままでの各
参考人におかれましては、主として
地方財政の窮状についてるる御
説明がありましたので、私はこの点に触れることを避けまして、主として
給与の問題について申し述べたいと
考えております。
その前にお断りしておきたいことは、その
給与の
調査につきまして
自治庁等から詳細なる資料がわれわれの手に入
つておらないということであります。と申しますことは、
調査の
方法等につきましても、具体的なることが全く知らされていないということであります。従いまして、計数的な問題につきましては若干狂いが出て来るかとも思いますが、その点あらかじめ御了解願いたいというふうに
考えております。
まず最初に
国家公務員と
地方公務員との
給与を比較いたしまして、昨
年度におきましては四百六十二円、その後の
調査によりまして百十四円高いことが判明いたしたので、これを差引きまして三百四十八円高い、こういうふうに言われております。しかしながら、三百四十八円高いということは言われておりますが、しからばいわゆる全般の
給与の平均額にいくらであるかということについては何ら言われておりません。
まず
調査の
方法でありますが、
方法といたしまして、個人別の
給与の
実態調査表に記載されたところの各個人ごとの総勤続年数を、その種別に応じて定めた割合で換算をしたというふうにな
つておりまするが、まずこの個人別
給与実態調査でございます。この個人別
実態調査を全員について
行つたのか、あるいは標準抽出法によ
つて行つたのか、あるいは任意抽出法によ
つて行つたのかということが明瞭にな
つておりません。統計理論的に
考えてみまするならば、標準抽出法でやりまするならば、中堅あるいは階層のいいところと申しますのは、上級職員の極度な抽出過度という問題が生じて参りまして、
実態からきわめた遊離した
調査資料にな
つて来るということが明らかであります。また任意抽出法によりましても、大蔵省で昨年やりました
調査を、聞くところによると、
調査にあた
つて提出された資料の中から、さらに任意に抽出したというふうな由でありまするが、このような任意抽出
調査の
方法によ
つたものということになりますると、統計理論的には、資料はま
つたく偶然の事実を
基準として、取捨選択されたことであると同時に、その
数字がある
程度以上大なることが要求されるということにな
つて参りまして、任意抽出
調査方法によるということにつきましても、統計理論的には若干疑義があるのではないかというふうに
考えております。
その次に、総勤続年数をその種別に応じて、ある一定の換算率で換算をいたしまして、その者の勤続年数も出しているわけでありまするが、この勤続年数の換算
方法として
自治庁がいたしておるところのものは、まず官公庁の経歴期間は、その全期間を経験年数として、百分の百計上いたしております。これは当然のことでありますが、民間経歴期間につきましては、同種異種にかかわらず、その六割六分に
相当する期間を経験年数として通算すると言われております。実際には
地方におきましては、同種の民間経費の場合には八〇%ないし一〇〇%見られておりまするが、異種の場合にはわずかに二五%
程度しか見られていないということであります。
次に兵役期間の換算でありますが、在職中の兵役期間は全期間これを勤続年数、いわゆる経験年数として通算することにな
つております。在職中以外の兵役期間につきましてはこれが通算されていないか、またはごくわずかしか通算されていないというふうな
状態に相な
つております。この点につきましてもまず換算
基準からして問題があるのではないかというふうに
考えております。
それからさらにこの勤続年数の問題でありますが、まず
給与の題問をきめる場合に、学歴と勤続年数だけでや
つておるわけでありますが、この学歴につきましても、
国家公務員と
地方公務員の場合には非常に差がある。たとえて申すならば、都道
府県の場合には甲種中等学校の卒業に非常に重点が置かれておる、その割合が、
府県職員の場合ですと四三六・三というふうに相な
つております。ところが
国家公務員におきましては、この重点がさらに上に上
つておるというふうなこと、さらに勤続年数につきましては、
国家公務員に比較いたしまして、五年以上の勤続年数の者が
国家公務員よりも一五%多い。平均年数にいたしまして約二年長い。さらに勤続年数の五年から十九年までの者をと
つてみますならば、国の場合には三四・七%でありまするが、
地方の場合には五〇%というふうに相な
つております。
次に
給与の比較をいたすにあたりまして、
基準級号表というものをつく
つております。この
基準級号表の目的はなるほどわかるのでありますが、その作成の
方法であります。まず原理といたしまして、
昭和二十二年の九月三十日の凹凸調整特別昇給というところに根拠を置きまして、
基準級号表を作成いたしておるのでありまするが、この
昭和二十二年九月三十日の凹凸調整特別昇給というのが、理論的にはなるほど
自治庁でやられておるような
状態でありますが、
国家公務員の
実態は必ずしもこうでないということであります。と申しますのは、
人事院等におきましても、はるかにこの凹凸調整特別昇給というものが上まわ
つておるということを認めております。この誤ま
つた出発点から起算いたしまして、現在の
給与がかくあるのだと理論的に推定いたしておる。これによ
つて地方公務員の
給与が高いあるいは安いということは、ま
つたく根拠がないというふうにわれわれは
考えております。この
基準級号表によりまして、
国家公務員の
給与を比較いたしますならば、必ずや
国家公務員も高い
数字が出て来るというふうに確信いたしております。ちなみに
昭和二十四年を
基準といたしまして、現在の
給与が理論的に幾らになるかということを算出いたしますと、具体的な計数は持
つて来ておりませんが、
昭和二十四年と申しますのは、現在の
国家公務員の一般
給与に関する法律にありますところの昇給、昇格、あるいは格付
基準等によりまして算出いたしますと、現在の
地方公務員の
給与は、はるかに下まわ
つておるということが言えるというふうに
考えております。
次にその
基準級号表の作成にあたりまして、昇格のために必要な期間を九割五分ということ、いわゆる昇格をするために必要な期間の九割五分に
相当する期間を経過した者は、すべて昇格するということでこの表がこしらえられておりまするが、実際には九割五分の期間を経過したのみでは昇格ができないということであります。と申しますのは、われわれが今日、
地方公務員の
給与は非常に頭打ちが多いということを言
つておるのがこれであります。具体的に申し上げますならば、七級職から八級職に上るのには何箇年の期間を経過しなければならない。さらに八級職の定員に欠員がなければならないというふうな厳密な
規定があるために、必要な期間は経過いたしましても、そういうふうな制限のために、上位の級には上れない。上れなければ当然昇給もできないということになるわけであります。従いまして、この昇給をある
程度カバーするために
規定の期間の二倍ないし三倍を経過した場合に、初めて一号俸昇給できるというふうなかつこうにな
つておりまするので、この九割五分に
相当する期間ということで表がこしらえてあることにつきましても、非常に大きな問題を含んでおるのじやないかというふうに
考えております。さらにこの表につきましては、一般の職員のみについてでありまするが、しからば役付職員については、どのように
調査したのかということがま
つたく不明瞭であります。昨年の場合で申し上げますならば、
国家公務員の場合には部課長が三%である、係長が二四%である、係員が七三%であるということの
基準に基きまして、
地方公務員の場合もこのようなパーセントテージによ
つて計数が出されておるわけでありまするが、実際には
地方公務員の場合には、部課長は三%でありまするが、係長はわずかに三%しかいない、あとはみんな係員である。にもかかわらず、それを全部同じパーセントで引延ばしたというふうなことで、あのような
数字が出て来た、こういうところに大きな誤りがあるというふうに
考えております。さらにその出て参りましたとこの結果を、単なる算術平均によ
つてや
つておるというこであります。加重算術平均というふうなことでやるか、あるいは幾何平均というようなことでやるのであれば別でありますが、小学校の算術と同様な
方法によ
つて平均を出しておるということであります。この点にも大きな問題がある。先ほどから、るる申し上げておりますように、
地方公務員と
国家公務員とは勤続年数が違うということ、さらに学歴も違うということ、いま
一つフアクターを加えますれば、家族の構成が非常に違うというようなこと等から
考えまして、
地方公務員の
給与は決して高いものではないというふうに
考えております。
理論的に
考えました場合には、
地方公務員の
給与が
国家公務員の
給与より高いとか低いとかいう問題を論ずるのには、まず最低賃金制というものが
実施された後に初めて論ぜらるべきものである。現在の
地方公務員の
給与にしろ、
国家公務員の
給与にしろ、最低賃金制が
実施されていない、いなこの最低賃金よりも下まわ
つているという中において、高いか安いとかいう問題が論ぜられるものではないというふうに
考えております。さらに本俸のほかにいろいろ手当が出ております。これらを附加いたしますと、
地方公務員はさらに低いものにな
つている。具体的に申しますと、まず第一に
勤務地手当でありますが、国の場合には約二五%
予算に編成しておるというふうに聞いております。ところが実際においては、
地方公務員の場合は、
予算面でも
つてわずかに七%しか言上されていない、このようなところからいたしましても、他の手当を加えて参りますれば、非常にきつくな
つて来る。さらに業務
実態から
考えますれば、大きくわけて言う場合、
国家公務員は非現業である、
地方公務員は現業であるというように
考えております。と申しますのは、
地方公務員の場合は、直接住民に接触いたしまして、いわゆる
行政病人の処理であるとか、あるいは死体の処理であるとか、あるいは清掃
事業というふうな業務をや
つておるわけであります。
従つてこうい
つた面から
考えましても、当然
給与は高くあるべきであるというふうに、われわれは
考えおるのでありまするが、実際には高くないというふうに相な
つております。
次には、このような
調査に基きましてわれわれの
給与が三百四十七円高いということで、今回の
ベース・アツプにしましても
平衡交付金の算出にあたりまして、
財政的な
措置がなされておるわけであります。それによりますると、
地方公務員の
給与改善費といたしまして二百七十五億八千二百万円、
給与単価の調整に基くところの
給与費の増加が九億二千四百万円、この九億二千四百万円というのは、昨年の
調査と今年の
調査との誤差、いわゆる百十四円分がそこに
見積られております。これだけでも
つてわれわれの平均
給与を
国家公務員並に二〇%上げるというのでありまするが、その算出の根拠となりましたところの個人
当りの単価というものは、依然として三百四十八円を引かれたものを
基準単価としておるということであります。あらに
平衡交付金は、
地方に出る場合には一本の姿で出るということにな
つておりまするが、実際はこの内訳を見てみますと、国庫補助金の増加に伴う増加というふうな費目が計上されております。あるいは
行政整理方針の修正によるところの増加というふうなものが計上されておりまするので、
平衡交付金として二百億参りましても、全額を
給与費にまわすということはできないのであります。従いまして算出の根拠は二百七十五億と相な
つておりまするが、実際にはこれだけの金額が使えないのが
実態ではないかというふうに
考えております。
いま
一つ考えられる面は、ほかに
起債が百二十億ということにな
つておりまするから、従いまして、合計して三百二十億ということに相なるわけでありまするが、この
起債というのは
給与費には使えないのであります。使えないとすればどのような操作をするかということになりますならば、
自治庁の
見解といたしましては、既定
予算において使
つてお
つたところの
起債、これに見合うところの一般会計からの繰入分を、これを
起債でまかなうことにして、それを一般会計の方に繰りかえすということによ
つてそれを
給与費にまわす。このようなことになるわけであります。そのようなことをや
つて参りますならば、この算出の根拠とな
つておりまするところの中に入
つておる諸種の
事業等は当然とりやめるか、あるいは延期しなければならないという
実態にな
つて来るわけであります。またこの
事業延期あるいは
事業中止というふうなことをしないならば、
給与の
改正をするにあた
つて予算が足りないということにな
つて参ります。その
措置をどのようにするかということにつきましては、
自治庁の
見解といたしましては、新規採用のストツプ、あるいは老齢者のいわゆる整理、あるいは
行政事務の簡素化、俗に言われておりますところの
行政整理というものによ
つて経費を浮かして来る。さらには物件費の節約――事務費については約一〇%、物件費については五%
程度の節約を見込んでいるというふうに
考えておりますが、
地方におきましては、自主的な節約をや
つておりまして、その上にさらにこのような節約をやるということは、実際には不可能であるというふうに
考えます。従いまして、
地方公務員の
給与の改善をするにあた
つて、
国家公務員と同様な割合で二〇%
ベース改訂をするとすれば、この
予算ではとうてい足りないことは、はつきりしておるわけであります。
以上最初に申し上げましたように、具体的な資料が出ておりませんので、きわめて抽象的でありまするが、御
参考までに申し上げた次第であります。