運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-03-06 第15回国会 衆議院 大蔵委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月六日(金曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 奧村又十郎君    理事 淺香 忠雄君 理事 川野 芳滿君    理事 内藤 友明君 理事 松尾トシ子君    理事 佐藤觀次郎君       上塚  司君    大泉 寛三君       小山 長規君    塚田十一郎君       中田 政美君    西村 直己君       宮幡  靖君    小川 半次君       加藤 高藏君    笹山茂太郎君       中崎  敏君    吉田  正君       小川 豊明君    久保田鶴松君       坊  秀男君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君  出席政府委員         大蔵政務次官  愛知 揆一君         大蔵事務官         (主税局長)  渡辺喜久造君         大蔵事務官         (主税局税制第         二課長)    塩崎  潤君         国税庁長官   平田敬一郎君         大蔵事務官         (国税庁次長) 原  純夫君         中小企業庁長官 岡田 秀男君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    石井由太郎君  委員外出席者         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ————————————— 三月六日  委員和精一君辞任につき、その補欠として塚  田十一郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四〇号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四一号)  富裕税法を廃止する法律案内閣提出第四二  号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四三号)  登録税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四七号)  揮発油税法の一部を改正する法律案内閣提出  第四八号)  国税徴収法の一部を改正する法律案内閣提出  第九〇号)  納税貯蓄組合法の一部を改正する法律案内閣  提出第九四号)  関税定率法等の一部を改正する等の法律案(内  閣提出第一〇一号)  砂糖消費税法の一部を改正する法律案内閣提  出第一〇二号)  物品税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一〇三号)  有価証券取引税法案内閣提出第一〇四号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第一〇五号)     —————————————
  2. 淺香忠雄

    ○淺香委員長代理 これより会議を開きます。  本日の日程に掲げました税関係十三法案を一括議題として、前会に引続き質疑を続行いたします。質疑は通告順によつてこれを許します。佐藤觀次郎君。
  3. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 岡田長官にひとつお尋ねいたします。実は先日企業組合の問題について参考人を呼びましたところが、中小企業庁がいろいろ中小企業のために骨を折つておられるのはわかつておりますが、どうも結局企業組合とか、あるいは協同組合というものを生みつぱなしで、それに対する誠意がないために、いろいろ取締り上、あるいは税金をとる立場上困つておるような事件が出て来たわけです。たとえば某組合のごときは、全国的な組織にしておつて、収拾がつかぬというようなことで、今度の所得税法の一部改正法律案なつたという主税局説明がありますが何か中小企業庁の方で、もう少し企業組合とか協同組合に対してある制限を加えてやる意思があるかどうか、まずお尋ねしたいと思います。
  4. 岡田秀男

    岡田(秀)政府委員 中小企業等協同組合法ができまして今日までに四年有余の期間がたつたのでありまして、その間協同組合といたしましては約二万八千以上のものができております。そのうち企業組合の数が大本一万二百見当に相なつておるのであります。予想外発展を来しておるのでございます。ただこの中小企業等協同組合法建前からいたしますれば、組合自由設立主義をとつておりまして、一定の書類をつくりまして県庁ないし中小企業庁へ持つて参りますれば、それが法令に違反しておらぬ限りにおきましては、認証ということによりまして自由に設立されることができることになつております。ただそうなつておりますだけに、われわれといたしましては、設立されました組合中小企業等協同組合法で期待いたしておりますようなりつぱな協同組合発達し、真に組合員のためになる組合発達していただくことが念願でございますので、この法律ができまして以来、私どもといたしましては、地方庁に対していろいろと企業組合指導上の方針を授けまして、そして指導して参つておるのであります。企業組合につきましては、特に組合をつくつておられる方々が自分の固有の事業を廃しまして、組合事業の中におのれを没入してしまうという建前がとられなければ、企業組合目的を達成し得ないのであります。特にこの点を強調いたしましてわれわれといたしましては指導に当つておるわけでございます。しかしながらこの企業組合のうち総合的な組合、何と申しますか、いろいろな事業をやつております組合につきまして、とかく税の関係等におきまして物議をかもす例が多いのでございます。そこでわれわれといたしましては、企業組合実地診断を各業種ごとにすでに六十種類ほどの企業組合についてやつております以外に、特に総合企業組合につきましてモデル診断を実施いたしておるのであります。大阪と京都につきましては、二組合について実地診断をやつたのであります。われわれといたしましては、府県庁業種別にやりました実地診断のこの六十数組合経験並びにこの総合企業組合についてモデル的にやりました二つの組合診断の結果、これらのものを考え合せまして、かつはまた現在問題になつておりますところの所得税法改正趣旨等も考慮いたしまして、企業組合指導上さらに新しき基準考えてみたいと思つておるのであります。なお指導基準のみはどうしてもうまく行かぬということがございますれば、現に私どもといたしましては、独禁法改正独禁法が緩和されるという状態に対処いたしまして、中小企業等協同組合法そのものにつきましてもひとつ根本的に検討すべき時期ではなかろうか。たとえば協同組合になりますのには、今三百人等規模制限等もありますが、これを従来通り維持する必要があるのかないのか等、協同組合そのものの根本につきましても考えねばならぬ時期に来ておると思うのであります。これら中小企業等協同組合法一般研究題目の中の一つといたしまして、この企業組合の問題も取上げまして、要すれば法制改正の際に必要な点を織り込むということも考え得られるのではなかろうか、これはまだ今後の問題でございますが、考えておるのでございます。
  5. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 実はせつかく企業庁が今まで中小企業のためにお骨折りになりまして、今言われましたような企業組合全国で一万二百の多数に上りまして、私たちは少くとも今の中小企業というものは大資本を擁していないし、社会的信用がないから、やはり協同組合かあるいは企業組合というような、そういうような組合組織を通じて自己を擁護する以外には方法はないと、こういうふうに考えているわけであります。しかし世の中のことはりくつ通りには行きませんけれどもせつかく今日ようやく企業組合が三、四年にして相当発達をした、中には国税庁あるいは主税局長が言われるように、われわれもその点の不備なものは問題にしておりませんが、中には悪意でなくてうまく芽を出したというものを、今度六十七条の税法改正によりますと、芽をつまれてしまうような危険があるわけであります。そういう点について、これを生んでもらつた企業庁長官が一体どういうふうなお考えを持つておられるのか。実は先日、きようは国税庁長官もまだ来ておりませんが、国税庁長官主税局長中小企業庁長官と三人が協議の上でこの六十七条の第二項のこのきつい法律をつくつたような説明がございましたが、どういう意味においてこれを中小企業庁長官は御理解なつたかということをひとつ御説明願いたいと思う。
  6. 岡田秀男

    岡田(秀)政府委員 今回の所得税改正によりまして、六十七条の二という規定が新設されることに相なるのでございます。私どもといたしましても、この規定を拝見いたしますると、一見企業組合等に対しまして相当の圧力が加わるやに感じられるのであります。この規定運用につきまして、私どもといたしましては重大なる関心を持たざるを得ないと存ずるのであります。そのために私どもといたしましては、主税局長並び国税庁長官とこの条文の運用について御相談をいたしたのであります。いろいろお話合いをいたしてみますると、私ども企業組合指導があるいは不完全なためか、その点は汗顔の至りにたえないのであります。税の立場からごらんになりまして、従来非常にむだな努力、むだな摩擦、非常な事故が若干の部面に起きているという事態詳細説明をしていただいたのでありまして、その点につきましては、われわれも今後企業組合指導を強化いたしますとともに、先ほど申し上げましたようなふうに、一層の企業組合指導強化をいたすつもりでございますが、一面税の関係者が非常な苦労をされているという点からも、これまた無視し得ないように存じたのであります。また一方におきまして、さように税の関係で苦労されている面があるといたしましても、企業組合必ずしも全部が悪いわけじやない、むしろ事故の起きる方が少いであろうと思うのであります。そこで私といたしましては、この規定運用によつて企業組合が不当の圧迫をこうむつては相ならぬという建前から、主税局長並び国税庁長官の方と相談いたしました結果、お二人ともこの私どもの申しまする趣旨を十分御了解願いまして、たとえばすでにこの今回の改正をする前において、税務当局企業組合実態を見て税法上正しきものと認定いたしたものは今度の推定規定をかけないのだ、またそれ以外の組合でありましても、そして推定さるべき事実があつたといたしましても、実態企業組合として真に活動しておるのであれば、この推定規定によつてすぐやるというようなことはしない、またこの趣旨末端によく徹底いたしますように通牒等を出すということをいたすわけでありまするが、その通牒内容につきましては、中小企業庁意見をとくと取入れてやる。従つてその中小企業庁が従来の企業組合を育成して行くという建前に決して違反しないようにする。そのかわり中小企業庁としては、企業組合の今後の健全なる発達、あるべき企業組合への指導ということに対していま一段の努力をしてくれ、こういうことでありました。両者おのおの立場を了解して、二の規定運用して行こうということに話合いができたのであります。私どもといたしましては、大蔵省が企業組合立場を十分理解して運用してくれるという誠意に対しまして、これを一応信頼いたしますとともに、よき意味における監視者として、もしこの規定運用上都合の悪いような点がありますれば、それに基きまして大蔵当局の方へ運用改善方を申し入れることにいたすならば、両々相まつて、そう不都合な事態は起きないものと確信をいたしておるのであります。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 中小企業庁中小企業の援助についての努力はわかりますが、ただ一点、たとえば企業組合の問題にいたしましても、地域的に整備ができてないために、非常に厖大なものが全国的にまたがつておるから、国税庁主税局の方からの取締りが非常に困る。たとえば本店が福岡にあつて支店のようなものが東京にあるというようなわけで非常に困つておる。そういう立場から、こういう企業組合のようなルーズな法律では困るというような意見がいろいろ出るわけでございます。そういう点について、今の法律だけでは不備じやないかというような結論に達しまして、実は先週同僚の吉田委員から、とくと企業庁長官に聞いてみる必要があるということで実は今日出席願つたわけですが、そういう点について、主税局あるいは国税庁からの企業組合に対するいろいろな——われわれからすると弾圧だと思つておるが、そういう口実を与えないような何らかの方法企業庁の方から改正をするような考えがあるかどうか。また、現在はそういうような全国的にまたがるような協同組合組織にするということは、これは国税庁側にもいろいろな口実を与えるという点において、われわれも納得が行かない点があるが、そういう点について岡田長官はどういうような考えを持つておられるか、一応承りたい。     〔淺香委員長代理退席委員長着席
  8. 岡田秀男

    岡田(秀)政府委員 私どもといたしましても、企業組合が非常にむやみに厖大組織発展することは期待しておらぬのでありまして、従来から企業組合指導方針をいろいろ出しておりますものにもそういうことを書いておるのでありまするが、御指摘のように、現在の法文におきましては、それを積極的に押えるということが困難な状態に相なつておるのであります。先ほど申し上げましたように、私どもといたしましては、独禁法改正の後の事態等十分検討を加え、また企業組合実地診断をやりました経験を考慮いたしまして、新しき指導基準をつくりますとともに、中小企業等協同組合法全体の検討をやるべき時期に来ておると存じますので、企業組合につきましても同様検討を加えまして、改正を要することがございますれば、その際に織り入れて考慮いたしたい、かように考えておる次第ではございます。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 中小企業庁長官にもう一つお尋ねしたいのですが、もし私たちが今度の税制改正の六十七条の二項と二をこのままかりに生かすとするならば、おそらくせつかく現在五千五、六百認められておる企業組合は、当然いろいろな事情によつて倒れて行くだろうと思います。それはどういうわけかといいますと、これはいつもわれわれは議論するのでありますが、たとえば渡辺主税局長、あるいは国税庁長官原次長などというような、こういう中央におられる人はわれわれの考え理解もしてくれていますし、法律のほんとうの真意を知つておられまするけれども、現在の末端税務署官吏は、終戦の直後よりは大分よくなつて参りましたけれども、現在のような若い未熟な高等学校大学を出たくらいの者では、この社会の複雑な事情を知ることはできない。そういう立場から、まず上司の方から税金をとれと言われれば、当然そこに無理なことを言い出す。従つて企業組合のような問題でも、そういう社会発展のために、中小企業の、どうしてもこの法以外には生きて行かれないというこういう大きな法律があるにかかわらず、税務署末端の人はそういうことに理解なく、ただ税金をとればよいという立場で、今まで相当いろいろ不当な弾圧のあつたことは、私たちも現実に知つているわけであります。そういうような立場上から、もしこの六十七条をこのまま生かしておくならば、おそらく気違いに刃物を持たしたと同じようなもので、相当まじめにやる中小企業者とか、あるいは法人とか、特に企業組合が一番ひどい迷惑を受けると私は考えるわけですが、そういうような不測なことはありはしないか、これは中小企業庁長官にもう一度お尋ねしたいと思います。
  10. 岡田秀男

    岡田(秀)政府委員 私もその点につきましては非常に心配でございまするので、主税局長並び国税庁長官にとくと御協議いたした点でございます。その場合、この主税局国税庁の両首脳部におかれましては、末端自分らの考えている趣旨を徹底さすについては最善の努力を払う。なお、その徹底さす方法について、内容についてはお前の考えるところはもう十分取入れて万全を期してやるというお話でございましたので、私は、このお二人の首脳部のお考えに信頼を置いているわけであります。もし、なおかつそういう何か行き過ぎのような事態があるといたしますれば、私どもといたしましては、その都度両首脳部に、こういう事態があるから、この点については改善をしてほしいというように持つて行きますれば、両々相まちまして、濫用に基く混乱ということは起きずに済むものと確信をいたしておるのであります。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それでは主税局長にちよつとお尋ねしますが、私たちが一番おそれているのは、かりにこういう法律をつくると、末端税務署員によつてまじめな中小企業者が非常に迷惑を受けるということ、こういう考えを持つておりますが、一体今の末端税務署員に対する指導をどんなようにやつおられるか、われわれが納得が行くようにやつてもらつておるかどうかということについて、主税局長から——国税庁長官が見えましたから、いずれからでもけつこうでありますから、ひとつ皆さんに御説明を願いたい。
  12. 平田敬一郎

    平田政府委員 企業組合に関連しました所得税法改正規定の問題かと、遅れて参りまして拝承するのでありますが、この点につきましては、たびたび申し上げましたように、末端における運用については特に万全の注意をするように、私どもとしましてもあらゆる方法を通じまして趣旨の徹底をはかりたいと思います。なかんずく、先日も申し上げましたように、この規定によりまして、個別的に法人実態をさらに備えていないということを決定いたしまする際におきましては、地方の局長に禀議させまして、その上で措置するということもいたしたいと考えておる次第でございます。もちろんその前におきましても、事実の調査なり、あるいは取扱い等につきましては、十分に慎重な態度をもちまして、趣旨に違反することがないように監督を加えて行きたいと思つている次第でございます。
  13. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 あとで来られたからわからないのでしようが、私の言うのはそういう問題ではなくて、平田さんは長い間主税局長をやつておられまして、今度は国税庁長官の方にお移りになりました方ですが、われわれが一番おそれているのは、この法律そのものよりも、実はこれを実行する刀というか、ナイフを振り上げるところの税務署署員教養、あるいは常識、そういう問題についてどのような方法でやつておられるか。最近税務署に参りましても、前よりも大分よくなりましたことはわれわれも認めますけれども、少くとも平田さんが大学を出られたころの税務署署員と現在の署員を比べれば、まだまだ程度が低いとわれわれは考えます。そういう点について国税庁はどのような指導をしておられるか。そういう点に自信を持つてやつにおられるかどうかということについて、ひとつ御説明を願いたいと思います。
  14. 平田敬一郎

    平田政府委員 私も、御指摘を受けるまでもなく、税務行政で一番大事なのは、直接納税者と接触します第一線の役人の能力を高め、常識を養わしめ、人格と品性を高からしめることで、これが一番税務行政をよくするための根幹じやないかと実は考えておる次第でございます。いかにしてそういう目的をより早く達成することができるか。これにつきましては、あらゆる方策を考えて行きたいと存じておる次第でございます。佐藤さんも御承知通り講習所等もずつと昔はございませんでしたが、現在は全国で八箇所くらい講習所を設けております。新しく税務官庁に入つて来る者の大体半分くらいは、現在のところ一応講習所に入れました者を採用するというようなことにいたしております。そういたしまして、これは相当厳重な試験もやりますので、最近の成績から見ますと、相当素質のいい者が集まつて来ているようでございます。九州のある講習所のごときは、二十人に一人という競争率を示したこともあるくらいで、非常に素質のいい者が最近集まつて来ております。まず講習所施設を全面的に活用して、いい官吏が入るようにいたしまして、そこで十分な訓練を与え、そのほかに、講習といたしましては通信教育をやつておりまして、現在約三万人くらいの者に対しまして通信教育を施しております。ただこの教育が、もう少し職場実態と結びつきまして徹底した効果をあげるように、その点の訓練をする。今まで若干不十分な点があつたようでございますので、今後は特にそういう趣旨で、よく職場管理者に注意いたしまして、効果をあげるようにして参りたい。それから現在すでに相当の年輩に達しておる者につきましても、講習所施設を利用いたしまして、短期の講習を盛んにやつております。また中央におきましては高等科というものを設けまして、毎年二百名ずつでございますが、これも試験制度によりまして、そこに入れて十分訓練をする、こういうことを一方においては実行しておる次第でございます。これは何と申しましても、本人がよく勉強をし、職場の中で管理者がよく指導いたしまして、早くりつぱな税務職員にするということが大事なことであると考えます。そういう趣旨のことも頻繁に注意し、訓達いたしまして目的を達成するようにいたしたい。佐藤さんも御承知でございますが、戦時中いい税務官吏がいろいろな関係大分抜けまして、しかも戦後におきましては、事務量厖大にふえましたために、急激に人を入れざるを得なくなつた。しかもそれがインフレの最中でございましたために、給料が低く、なかなかいい人が集まらない。経験も少く、素質も必ずしもよくない者が集まりましたし、しかも税金は非常に高いものを徴収せざるを得ないようなはめになり、混乱に陥りましたことは御承知通りでございます。その後は御指摘のように、若干ずつよくなつていると実は私も思つております。先日税務署をまわつて申告指導の実際を見て来ましたが、年齢の大体二十四、五歳ぐらいの人が、遺憾ながら中心にならざるを得ない。それにいたしましては、割合によく勉強をして、懇切に納税者に話してやつておるようでございます。ただ年齢から行きましても、あるいは能力常識等から行きましても、もう少し上の方の人が納税者と接触することが一審大事なことだと考えますので、今後におきましては、公務員の試験制度等との関係もよく考えて、第一線の実際において納税者と接触して指導をする税務官吏素質向上に、あらゆる知恵をしぼつてみたいと考えておりますので、その点御了承を願いたいと思う次第でございます。
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 税務署署員が年の若いということと、現在税務署署員の待遇の悪いということは、われわれ十分これを認めますので、一方だけ責めるというわけに行きませんけれども、ただ問題は、六十七条というような法律がかりにできるということになりますと、実際に扱う場合、こういうような末端の人の間にこういう問題が非常に起きる。ところが世の中は非常に複雑でございまして、今平田さんが言われましたように、二十人に一人の合格率つて、これは高等学校学生とか、あるいは大学学生ならば、それから教養を受けて行けばいいのですけれども、こういう年の若い人たちが複雑な実社会に出て、わずかに二年か三年で民衆と直接事を折衝すると、往々間違いが多いので、全国的に非常に税金がえらいということと同時に、末端税務官吏が不親切だということで現在信用を落しておるということはいなめない事実でございます。われわれは、そういう立場から税務署員常識向上を求めるのでありますが、現在厖大税務署員がおります関係から、それが一朝一夕に改善されるとは思つておりませんけれども、そういう情勢のもとにおいて、主税局長なり課長くらいならば理解できるけれども末端の者には理解しにくいような税法六十七条の二項、六十七条の二のようなものをつくると、それは非常に大きな危険になる。しかも芽を出し始めた中小企業企業組合というものは、それでおじやんになつてしまうような危険を感ずるわけでございます。そういう点から、もし悪いものならば、ほかの方法でもう少し取締りをすればいいじやないか。これは先ほど岡田長官から説明がありましたが、せつかく中小企業庁が育成して来て、その指導が足りなかつた点はわれわれ認めますけれども、少くとも日本のような遅れておる国におきまして、とにかく協同組合あるいは企業組合によつてようやく日本の中小企業者がかすかな光を持つて来た今日、一部の悪い企業組合があるということで、突如としてこういうきつい法律をつくるということは、われわれどうしても納得ができないのでございます。そういう点について、企業長官渡辺主税局長、あるいは国税庁長官の三者の話はいろいろありましようけれども、現実に扱うのはこういう理解のある人がこの法律を扱うわけではございません。これは何といたしましても末端の係長以下の人との関連が出て参ります。これはどういうことでそういうことになるかといいますと、税務署署員が、今度の改正法ができたから企業組合は絶対だめだ、少し悪いことをすればすぐつぶされるということを言つておどしたりすかしたりするということを、今日までのわれわれの経験で知つております。そういう恐ろしい宝刀になるということをわれわれは憂えるわけでございます。そういう点から将来——二、三箇年のうちならばまだ考える余地がありますけれども、現在のようにようやくつぼみが出て来たときにこういうような法律を出すということは、われわれとして納得ができないわけでございます。そういう点について、平田国税庁長官はどういうふうにお考えになるか。ぼくらが納得の行くように御説明を願いたいと思います。
  16. 平田敬一郎

    平田政府委員 この法律運用につきましては、もちろん最初から私どもも十分注意するつもりでいたしておるわけでございますが、さらに国会における論議の状況等も十分末端まで徹底するような措置を、まず第一にとりたいと考えております。それから運用につきましての基本的な方針等については、すべて中小企業庁とよく協議の上で地方に流すという措置もとりたい。それから先ほど申し上げましたように、具体的にこれを適用します場合におきましては、地方の国税局に上申させた上できめるということにいたしますれば、佐藤さんの御心配のような点はよほど解消するのではないかと私は考えます。そこでは特によく趣旨を徹底させまして、取扱いに注意をするようにいたしますれば、無理な行き過ぎにならないことになり得ると私は考えますので、そういう措置もとりたいと考えております。それから具体的なことにつきましては、私ども中小企業庁主税局との間に相談済みでございますが、現在すでにできておつて法人として認めているものにつきましては、この規定ができたことによつて何ら影響をさせないという考えでおります。もちろん根本は、今後のものについても、企業の実態にかんがみまして、本来あるべき望ましいものを阻害するようには運用しない。これも中小企業庁との間に申し合せておるのでございますが、そういう趣旨で、これの具体的ないろいろなケースを扱います場合におきまして、慎重に十分注意いたしまして、御趣旨に沿うよな運用になるようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  17. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 いろいろ取締りのことについては、国税庁長官意見はわかりますが、われわれから考えますと、結局大きな会社、大法人、資本の強いものには制限を加えずに、どうも資本のない、しかも同僚の結束によつて団結してやつて行かなければ生きて行かれぬような中小企業者だけに、ちよつと背伸びして来るとつぶすというような思想があるのじやないか。少くとも大きなやつには——今度法人税法改正もございまして、社用族というものをなくするような御趣旨もございますが、少ともわれわれ考えますと、一番零細な——現在税金の高いのはどこでも高いのですが、特に中小商工業者の税金が非常に重い、重過ぎるということは、これは否定できない事実でございます。そういう立場から、一つは自分の資本金がないということと、税金が高いということで、少くとも合同し連合してある金融の面をつけると同時に、法人なつ税法の保護を受けるというような尊い気持で生れて来た。こういうような組合が結局こういう法律——一応平田さんは、今までのものは認める、それについてはこういうことにするとは言われますけれども、少くともそういうことを取締る以上は、もう少し違つた法則でこれらは取締れるんじやないか。こういう赤子を踏みにじるような、抹殺するような法律にしなくてもいいのではないか。われわれも先日参考人を呼びましたときに、ある一部の企業組合の人の中に、全国的な組織で、これでは国税庁もにつちもさつちもならぬような例を私は聞きました。こういうことについて、われわれも大蔵委員の一人でありまして、国税庁立場理解できます。けれども、こういうものは一部の例外でございまして、こういうものを取締るには取締る方法が別途にあると思います。せつかく日本で五千六百から認められて、今日ようやく芽を吹き出して、少くとも企業の合理化に進んでおるこういう組合が、おそらくこの法律ができれば抹殺されるという危険をわれわれは感ずるわけでございます。こういう点について、国税庁税金をとるのが本職でございますから、中小企業がどうなろうともこうなろうともいいと思われるかもしれませんけれども、何か中小企業を救う道を考えてやる親心があるかどうか。この点をもう一点お尋ねして、同僚議員にかわりたいと思います。
  18. 平田敬一郎

    平田政府委員 重ねて申し上げます。が、今までできておりまして、すでに法人として認めているものには、この規定ができたことによりまして何らの影響はない。これはもう中小企業庁との間にも協議をいたしまして、確実に守るつもりでございます。それから佐藤さんからいろいろお話がございましたが、私は率直に申し上げまして、企業組合としてのほんとの実体を備えている場合におきましては、そういう組織をつくることによりまして、結果において税金が軽くなるということになつても、私はこれはとがむべきことでもなんでもないと考えております。ただまつたく実体を備えずして、税金を軽くすることだけで法人ができておる。これは何としても課税の公平の見地から、それまでほつたらかすわけには行かない。これはほかの納税者との負担の均衡その他からいたしましても、営業者間の負担の均衡からいたしましても、あるいは勤労者との負担のバランスから行きましても、これは放任するのは適当でない。そういうものにつきましては、必要な規定を設けてもらいまして。ほんとうの公平な課税ができるようにいたしていただきたい、これは私どもの希望でございます。それから税全体としまして、中小企業の税が非常に重い、あるいは農民の税が重い、あるいは勤労所得者の税が重い、こういう問題はまだたくさんあるかと思います。これはやはり全体としまして、公正な税負担はどうすればいいか減税するにいたしましても、どこに優先して減税するか、重いならば、さらに財政政策と並行しまして、軽くする道があるかどうか、そういう点をよく考えた上で、やはり公平に税制で堂々とやつていただきたいのでございまして、税が重いから簡単に税を軽くするためだけの何か特別なからくりを認める、こういう考え方は、私どもいかなる点から行きましても、どうも認めがたいと思うのでございます。その辺のところをよく御賢察願いまして、適当な御結論を出していただきたいと実は考えておる次第でございます。
  19. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一点お尋ねしますが、推定というものがありますが、この推定が非常にむずかしいのでございまして、平田さんあるいは渡辺さんに推定してもらうのならばいいのでございますが、全国で五千、六千あるものを推定するわけには行かない。そのものさしが末端に行くときに、間違つた推定が行われる。これは全国のいろいろな例で、国税庁長官がこういう場合、こういう場合ということで、きちんとした法律があれば別でございますが、少くとも推定というのはその人の判断でございまして、その判断をする人が正しい理解を持つておる人ならばけつこうでございますけれども、少くとも今の税務署の大体の人の考え方では、国民のこういう複雑な事情のあるのをよく理解をして、今の局長や国税庁長官のようにはやつてくれぬ。こういう点に非常に大きな危惧があるのでございまして、まだそれまでに税務署の現在の情勢は至つていないと考えられるために、こういう法律をつくられると危険がある。こういう意味でございますので、そういう点について、こういうことでやれるという確信があるかどうかということをもう一点お尋ねして、かわります。
  20. 渡辺喜久造

    ○渡辺(喜)政府委員 私から便宜お答えさしていただきたいと思います。推定というのは、結局法律的に言いますと、組合の方から一応、これはただ形だけの組合でないのだ、実体があるのだということをお示し願う、そうすればそれで済むのだという規定であると思つております。結局ずつと国税庁の仕事を見て参りましても、正直に言いまして、自分のことですと割合にはつきりすぐに表へ出せますが、人のことを外から、こうじやないか、ああじやないかというふうに調べて行くというところに非常に困難があるわけでございまして、従いまして、企業組合の実体を備えていれば、実体を備えていることを表へ出していただくというところに推定の規定意味があるのじやないかというふうに思つております。その場合に心配されますのは、ある一定の事案を出された場合に、いろいろこの事実じやだめなんだというふうな無理な判断がなされますと、そこにいろいろ御心配のような問題が出て来るのじやないかというふうに思つております。しかしその点につきましては、今国税庁長官も御答弁申し上げましたように、国税局におきましてその場合に責任を持つてその判断を下すということになつておりますから、国税庁長官自分で判断を下すのとは違いますが、国税局長におきましては、相当の人が一応国税局長になつておりますから、そう非常識なことも行われないと思いますし、また末端の若い税務官吏の判断がそのまますぐに一応の推定の事実となつて出て来るというふうなことにはしないように、国税庁としては責任を持つて処置するということに御答弁申し上げているようなわけでありますので、私といたしましては、そう納税者に御迷惑をかけるような無理な結果がそこに出て来ることはなくて済むのではないか、かように思つております。
  21. 吉田正

    吉田(正)委員 関連して。中小企業庁長官にお伺いしたいのですが、ただいま佐藤君の言われたように、出先の税務署官吏の無理解といいますか、まだそういう点が非常に残つておりますので、六十七条の二項と二をやることによりまして中小企業組合発展上重大な支障を来すように私ども考える、非常に心配しているわけであります。それにつきまして、この問題についてこの六十七条の二項と二をつくる場合に、大蔵省の方とそれから長官の万と十分な完全な了解のもとにこれはでき上つたかどうかということをお伺いしたい。
  22. 岡田秀男

    岡田(秀)政府委員 税の関係の法案を立案されますのは大蔵当局で、それぞれ徴税の実際の経験等に徴されまして立案されるわけであります。立案されました結果、私どもの方へ御相談がございましたので、私どもといたしましても、皆さん方と同様の心配をいたしたのであります。そこで立案者の意見をとくと拝聴いたしましたところ、立案者におかれましても、文面上の表現から見ますれば相当きついようには見受けられますけれども、その運用において、先ほど来るる御説明がありましたような方針でおやりになる、しかもそのおやりになる上において、中小企業庁考えております意向は十分取入れてやつて行くということをはつきりと私どもにお約束くださいましたので、私ども国税庁長官ないし主税局長の誠心誠意をもつて運用されますることに敬意を表しそれに安心を抱いて一緒にこの法文の運用に当つて行こう、こう考えておるわけであります。
  23. 吉田正

    吉田(正)委員 企業協同組合の調査にあたりまして、六十七条の二項と二を適用して、そうして結局これはどうも不適当であると否認した場合に、つまりこれを適用して、これは企業組合の体をなしていないということで大蔵省で否認した場合におきまして、中小企業庁はどういう態度をとりますか。
  24. 岡田秀男

    岡田(秀)政府委員 企業組合として登録してあるものがあつた、それが税法上の観点から法人格を否認されました、こういう場合がありましても、その企業組合が否認されるべき理由が堂堂とあつた場合には、これはやむを得ないと思います。
  25. 吉田正

    吉田(正)委員 やむを得ないということで黙つているのですか。認可を取消しするのですか。
  26. 岡田秀男

    岡田(秀)政府委員 現在の中小企業等協同組合法によりましては、企業組合は認可によつてできるのではありませんで、認証と申しますのは、設立するときに定款その他書いて参りました事柄が法律に抵触しておらぬということを消極的に認めるだけでございまして、認可によつてできておるのではございませんから、税法上の扱いとして法人格を否定されましても、認可を取消すという問題は伴わないのでございます。
  27. 吉田正

    吉田(正)委員 そうしますと、結局こういう法律が出ざるを得ないということは、中小企業庁指導奨励がうまく行つていないということになるだろうと思います。つまり指導奨励をよくやつていますと、六十七条の二項と二をつくらなくても、企業協同組合ということになりますれば、大蔵省は楽に認定してやつて行ける。しかるにその内部まで立ち入つてつて行かなければならぬということになつて来ますと、結局中小企業庁というのは、企業協同組合について一体何をやつているか、どういう指導をしているかということになる。そういうでたらめな企業協同組合ができたのに、政府の方では何もできない、届出をしたものをただ見ておればよいのだ、そうしてそれが否認されたらそのままでけつこうだ、わしは知らぬということでは、何のためにこういうものをつくつたのかわけがわからない。こういうことに対するあなたの考え方を聞きたい。
  28. 岡田秀男

    岡田(秀)政府委員 最初に申し上げましたように、現在の法律建前といたしましては、企業組合自由設立主義に相なつておりますので、行政運用上そのできました組合法律で期待しておりますような企業組合、つまり正しいと申しますか、あるべき企業組合発展していただくことを念願いたす上から、いろいろと企業組合指導基準等をつくりまして、府県庁に流して、府県庁第一線の係官がこの企業組合の幹部の方と接触してこれを御指導申し上げるなり、あるいは企業組合の幹部の方の講習会を開きまして、その企業組合のあり方をひとつ研究して参りますなり、あるいは協同組合診断をやりまして、その中にはもとより企業組合も入つているわけでありますが、企業組合はかくあるべきものであるというふうな御指導もいたしまするし、また先ほど申しましたように、一番問題になつておりますところの総合企業組合につきましても、大阪と京都で抜取り的な診断をやり、今結果を整理中でございますが、それができますれば、さらにそれによつて企業組合指導方針を立てる。また今回の税法改正が実現いたしますれば、この税法改正案中に織り込みましたような意味における企業組合指導基準というようなものもつくりまして、企業組合があるべき姿に発展してもらうように御指導申し上げているわけであります。しかしそれは今も申しましたように、法律の立て方が自由設立主義ということに相なつておりますので、強制的なことがなかなかできない建前に相なつているわけであります。私どもといたしましては、独禁法の緩和ということから、中小企業等協同組合法そのものを何らかの形で改正すべき時期に来ているのではないかということが考えられますので、企業組合につきましても、同様のぐあいに研究の対象に上しまして、法制上改正すべき点があるかないかいろいろな点を研究いたしました上で、もし改正すべきものと相なりますれば、組合法上における所要の改正をするということに相なるかと思うのでありますが、現在のところにおきましては、極力行政上の指導によりまして、企業組合の正しき発展をこいねがつているわけであります。
  29. 吉田正

    吉田(正)委員 農業協同組合につきましては、こういう問題はあまり起きないだろうと思います。それは指導監督がよろしきを得ているからだと思う。大蔵省としても、こういうものに対する徴税については、あまりこういうものを出しても出さなくても心配なしにやつて行けるというような状態に来ておる。それはつまり農林省の監督がよろしきを得ておると言えます。また歴史の結果とも言えます。中小企業庁としましては、この中小企業発展のためには、協同組合発展ということが絶対の使命でありまして、これにうんと力を入れるべきだと思うのです。しかるにそれに対して指導を怠つておるのか、または一生懸命にやつてつてもできないのかどうか知りませんけれども、どうもそういうことに対しましてはつきりした指導方針がないのじやないか。つまり、たとえば認可であろうと許可であろうと、または届出であろうと、いやしくも法律上こういうものできめた以上、中小企業庁の重大使命であるこれを発展させない限りは、日本の中小企業者というものは成り立たない、そういう観念に立ちますと、もつと積極的に指導すべきである。そうしてその指導の結果として、六十七条の二項と二を適用するという場合に、適用されたつて心配ないというかつこうになれば、これは中小企業庁としましては、当然大蔵省と協議しましてよろしいということになれば、今発展途上にあつて、強力なる指導をしなければならぬという前提に立つて、しかも六十七条の二項と二というようなだんびらを——気違いに刃物を持たせるようなことをやるということに対して黙つておる中小企業庁の態度というものは、私は全国中小企業者のために惜しむものだと思うのです。はつきりした御答弁をお願いしたい。
  30. 岡田秀男

    岡田(秀)政府委員 農業協同組合は、信用業務をいたしておりまする関係から、検査、監督ができるような仕組みになつておるのであります。それでもなお農業協同組合の再建整備の過程において、いろいろと問題を起した農業協同組合もあるやに存ずるのでございまして、それによりましてずいぶん多額の国庫の金が費されておるというふうに考えておるのであります。これは人のことをかれこれ申すわけではありませんが、私の方は信用事務をいたしておりません関係上、内部に入つて検査をやるという仕組みに相なつておらぬのであります。従つて行政指導によりまして、企業組合はかくあるべきものだということを組合の幹部の方その他に浸透させまして、そうしてみずからの努力によつて企業組合をあるべきところまで持つてつてもらうということを組合の幹部なり、組合の方なりに笛たいこで宣伝し、御指導申し上げるということ以上にはできないのでございます。その点御了承をお願いしたいのであります。
  31. 淺香忠雄

    ○淺香委員 関連して……。岡田長官に伺いたいのですが、今同僚議員からの質問に対して、その指導方針はわかりますけれども、各府県へ資料を流して、府県においてはその府県における業者を呼んで、これが指導に当らしめておるという話があつたのですが、これは間違いないのですか。  それともう一つは、府県の何課がそういう指導に当つておられるか。
  32. 岡田秀男

    岡田(秀)政府委員 お答えいたします。中小企業行政の組み方は、中小企業庁は大体中央におきまする企画官庁が本体でございます。それによりまして、中小企業の行政方針をどういうところへ持つて行くかというふうなことを相当こまかいところまで方針を立てまして、これを府県庁に流します。府県庁におきましては——この課の名前はところによつて違うようでありますが、商工課でありますとか、中小企業課でありますとか、おおむね商工部、経済部の中に担当の課があるのでございますが、そこが中小企業行政の末端第一線となりまして、それぞれの施策の徹底を期しておるというのが実情でございます。
  33. 淺香忠雄

    ○淺香委員 今のお話では企画宣伝の方針中央できめて、その方針だけを各府県の方に流す。それから後は向うへまかしておられるようなかつこうの答弁でありましたが、これでは中小企業庁が生れましたところの趣旨に大きに反するのではないかと思うのであります。今度の問題なんか、こういうように非常に大きい問題になりましたが、あなた方の答弁を聞いておりますと、これは私ども与党の議員といえども何だか無用の長物のようなかつこうに思うのですが、こういつたものを解決して行くには今後どうすべきか、またどういうあり方で進むべきかということをいま少しく積極的に——この問題がこれだけ大きくなつて参りましたので、あなた方もいろいろ内部で計画なり御相談なりされていると思うのですが、もう少し突き進んだお話を伺えないものでしようか。
  34. 岡田秀男

    岡田(秀)政府委員 荒筋を申し上げまして、言葉足らずであつたかと思うのでありますが、中小企業庁といたしましては、もとより自分自身で宣伝もいたします。中小企業関係の予算の折衝でありまするとか、その予算にからみますところの運用の宣伝でありますとか、いろいろやるわけでございますが、直接中小企業者の方に接触する機会はどちらかといえば府県庁の方が多いのであります。そこで府県庁の役人に、中小企業行政に関心と熱意を持たしめるように講習会をやりますとか、大体の仕組みとしますれば、先ほど申しましたように、第一線において中小企業者に接触して仕事をする面は府県庁にやらせまして、これを督励、監督する私どもの方といたしましては、たとえば企業診断にいたしましても、業種別に一体どういうふうに企業診断をしてまわつたらいいのかという方針を立てまして、あるいはまた企業組合関係におきましても、企業組合指導方針であるとか、時々の事態に応じます企業組合指導方法を立案いたしまして、これを府県庁なりあるいは企業組合の団体なりその他各方面にこれを流しまして、企業組合のよき発展に資するように努力するというふうなことが私どもの仕事でございます。どちらかといえば中央で企画立案をいたしまして、実施の面は私どもの出先であります地方の通商産業局ないし府県庁というのが第一線の実施機関という建前なつているのでございます。
  35. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 中崎敏君。
  36. 中崎敏

    ○中崎委員 最初委員長に申入れしたいのであります。この大蔵委員会においては、税金問題を中心にして多数の法案が出ているのであります。ことに予算に関連した重要な法案でありますので、われわれも熱心に慎重審議しているのであります。しかしここに見のがすことのできないのは、国会の解散ということがしきりに問題になつておる。しかも緒方官房長官は、しばしば不信任案が通れば解散をするのだということをはつきり言うておるのを新聞等において見ているのですが、われわれとしては解散されるかされぬかというふうなことは重要な問題であり、われわれ議案に対する態度についても、どういうふうな態度をもつて臨むべきかという腹構えをつくつて行かなければならぬ。また審議の過程においても、どういうふうにするかということもあわせて考えて行かなければならぬ。従つてこれはきわめて重要な問題だから、緒方官房長官なり、吉田総理大臣なりに直接ここへ出て来てもらつて、その所見をただしておきたいと思う。それで委員長の側において、すみやかに委員会に出席してもらうことをひとつ要求しておきます。  もう一つには、こうした重要な法案について大蔵大臣がほとんど出て来ていない。非常に重要な税金に関する問題を、予算審議の過程において重要な予算総会に出て行かなければならぬと思つて、われわれも目をつぶつておつたところが、参議院においても予算審議中であるが、しかしこちらへ出て来る時間は十分ゆとりがあると思う。それにかかわらずほとんどこの委員会にも出て来ていない。もつとも自分の重要な所管の委員会に対しそういう態度は好ましくない。そこでこれからの税金の問題等についての審議には必ず大蔵大臣に出席してもらうことを要求しておきます。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 ただいまの中崎君の御発言については、前段の法案取扱いについての政府の考え方については、御趣旨通りとりはからいたいと思います。後段の大蔵大臣の出席については、御承知通りただいま参議院で予算を審議中でありますので、私としては、委員諸君からあらかじめ御要求があれば、いつでも大蔵大臣を出席させます。(発言する者あり)ところが今まで大蔵大臣を名ざしての御要求はあまりなかつたのであります。(「出て来るのがあたりまえだ、そんなことはいかぬよ」と呼び、その他発言する者あり)御承知通り参議院の予算委員会に出席しておりますので、御要求があれば必ず大蔵大臣を出席させますから、御了承願いたいと思います。
  38. 中崎敏

    ○中崎委員 たとえば参議院の委員会に午前中出て、それからこつちに出て来るというなら認めますが、一日中ぶつ通しに参議院ばかり出ているものでなし、それほど衆議院を軽んずる理由はない。ことに税金の問題は予算の中心を占める一番大きな問題だ。それにほとんど出席しないこと自体、私は大蔵大臣の熱意を疑わざるを得ない。だからいずれにしても、とにかくこつちが要求しなくても出るべきであるから、こういう事情で支障があつてきようは来られないという態度において委員長のとりはからいを願いたい、こういう要望であります。
  39. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 御趣旨よくわかりました。よろしく善処いたしたいと思います。
  40. 淺香忠雄

    ○淺香委員 今の中崎委員の御要求、当然なことでありますが、しかし委員長はそれをお引受されるようなお話でありました。今参議院で予算をやつておりまして、しかも中崎君の言われるには総理も出てもらいたい、官房長官も出てもらいたいというのです。これは言うまでもなく税法案も重要な問題でありますが、参議院で予算を審議中でありますので、議員の要求通りそう簡単に出られるかどうか、野党の方もよく御承知のはずであります。(「そんならきようは定足数がないから審議をやめろ」と呼び、その他発言する者あり)大蔵大臣の要求を今までしておられなかつたのでありますから、税法案はここまで進んでおりますので、野党諸君の要求に対して御希望に沿うように委員長としておとりはからいせられることはけつこうでありますが、総理や官房長官の出席をあまり委員長としてその通りに答えられることは、あとでかえつて紛糾の種をまくかと思いますので、その点はひとつよく委員長におかれて考慮されることを与党側の委員として希望いたします。
  41. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 われわれは少くとも毎委員会に出席しているが、野党の方が多い。与党はたつた三人だ。こういう不誠意なことをやつてつても、税金の問題は重要だと思つて毎日野党は出席している。定数などというやぼなことも言わずにやつているのでありまして、参議院の予算委員会があるから大蔵大臣がこの委員会に出れぬというのはりくつにならない。黙つてつても当然大蔵大臣は出て来ると思つておりましたところが、出て来ない。国民の血税をしぼる、この税金の所管をする大蔵大臣が要求しなければ出て来ぬということは、大臣自体が現実を知らぬということだとわれわれは思います。少くとも三十八件からの法律があるので、委員長も万難を排して大臣の出席をとりはからつていただきたいと思います。そうでなければ、われわれは定数をやかましく言います。
  42. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 ただいまの御三君の御意見は、委員長もまことに同感であります。当委員会において御要求があり、また委員長において必要と認めます場合には、総理大臣であろうと官房長官であろうと大蔵大臣であろうと出席を要求し、また出席させるのが委員長の責任と存じますから、そのようにとりはからいたいと思います。なお委員長としてお願い申し上げたいのは、政府委員といわず、必要とお認めになつた場合にはあらかじめ委員諸君から御要求の御通告をいただくようにお願い申し上げておきます。
  43. 中崎敏

    ○中崎委員 まず第一に中小企業庁長官に私意見を申し述べてみたいと思うのであります。前の蜷川長官のときは非常に熱意を持つて中小企業に対し努力して来られた。その熱意があり余つて中小企業に対してきわめて冷たい大資本擁護の態度を持つている自由党内閣のきげんにあるいは合わなかつたかもしれませんが、遂に強制的に罷免されたことは、天下周知の事実であります。ところで国民は冷静に判断しておりますので、現在においては京都府知事に当選している。大衆というものはその目が肥えていることをここにはつきり立証していると私は思う。岡田長官に対しても、いやしくもその任は中小企業擁護の重要な立場にあるのだから、やはり熱意をもつてこれに対してもらいたいことを希望として申し上げ、以下質疑を続けてみたいと思うのであります。  長官中小企業等の協同組合に対する法律なりあるいは現在の制度については、独禁法改正ともにらみ合せて改正の必要を認めているという御意見でありますが、まず第一にその内容について私考えてみますと、当面の税法改正の問題にからんでおりますが、これは中小企業関係の諸法をかえて、大蔵省税金関係法律のせわにならぬでも、りつぱな組織として行けるような態勢をつくり上げる必要があると思う。そこで現在の制度をこのままにしておいて、そうして別にそれを弾圧し取締るような、せつかくの制度がありながら実際においてはこれがうやむやになつてものにならぬような、そういうようなものを側面からやられるようなことではなしに、自分自身の力によつて独自にそういう制度をつくり上げることが必要ではないか。そのためには、一面現行法のもとにおいて指導して行くということも第一に必要なんでありますが、これが一ぺんにはなかなかむずかしいという点もわれわれ認めます。今日まで努力が足りなかつたのも、長官みずから認めている。私もその点は認めながら、さらに今後の努力が必要であるが、なかなかこれは簡単に行かない。そこでむしろこうした基本的な中小企業等の法律をかえて、たとえば認可制度で行く、そして実際に企業組合の実体を備える性格になつて行くような、そういう体系までのものをまず中小企業庁において責任をもつてやる、そういうような裏づけとなる制度をつくつて行くことが一つの考え方であると私は思う。それからまたその監督の面においても、認可をして企業組合ができたけれども、はたして運用がうまく行つておるかどうかということについてはある程度のやはり監督も必要になる場面も考え得る。だからそうしたような面において組合法律改正する用意を持つておるかどうか、これが一つ。そうしてもしそういう方向で行くというふうな考えであるならば、今提案されておるこの税法案の実施を、その見通しがつくまで延期する、あるいはそれまで法案を一切撤回する、こういうような方向に行くべきものと考えておりますが、これについて一体どういうふうにお考えなつておるか、お聞きしたいのです。
  44. 岡田秀男

    岡田(秀)政府委員 お答えいたします。実は独禁法改正の問題もございまするし、また例の特定中小企業の安定法に基きます調整組合という組合がございますし、中小企業協同組合に関連いたします問題が多々ございますので、これを研究いたしたいのでありますが、この法律はいわゆる中小企業問題の根幹をなしておる法律でございますし、その法制というものが軽々に論じ得られないのでございます。従いまして、かような経済情勢の変化に対応いたしまして、この法制はいかにあるべきかということを根本的に検討を加えて、もし改正するのでありますれば十分満足の行く改正をいたしたい、かように考えておるのでありまして、その一環といたしまして、企業組合のあり方についても改正を要すべきものがありますればその中に織り込んで行きたい、かように考えておるのであります。今回の税制の問題は、徴税当局が実際の事務処理に当られまして、当面しておられます事態を克服するための事務的、技術的な方法から生れ出たものと考えられますので、私ども組合法を根本的に改正して行こうという考え方とは、また別途に取扱われてもやむを得ないのじやないか、かように考えるのであります。
  45. 中崎敏

    ○中崎委員 中小企業者の場合には特にそうでありますが、重い税金に耐えかね、そしてそれが中小企業組合ができる大きな理由になつておると思う。そのほか理由があるでしようが、何といつても一番大きな理由はそこにある。そしてこの法の保護によつてそういう組合もつくつて、そして企業の合理化もし、そして大きな資本にも対抗して行こうという考え方が並行的に行われておる。そうしてでき上つた法律趣旨を今度別の税法をつくつて没却する、そういうふうなものになることは、この中小企業等協同組合法趣旨じやない。それでありますから、もし税法によつてそういうものがやむを得ないというようなことになるならば、むしろこの法律の根本の企業組合法律をかえて、それでこれに対処して行くことは当然の問題だと思う。その実態は京都、大阪で取調べて、その結果をまつて何とか考えようというようなことでなしに、当面した税金の問題ですでに圧迫を受けてどうにもならないような状態に追い込まれようとしておるその場合に、自分の方ではこういうような方向で行くのだという一つの法案なり、あるいは対策がなければならぬ。ただ大蔵省から押されるままに、御無理ごもつともですというような立場は決して私は好ましくないと思う。そこで税金のこういう問題の前に、むしろあなたの方から、まず自分たちとしてはその問題を責任を持つて善処するから、これを少し猶予してくれぬかというようなことを言われて当然なことだと思う。そのことについてあなたの方から責任のある言葉を私どもは聞きたいわけなんです。
  46. 岡田秀男

    岡田(秀)政府委員 お答え申し上げます。今度の税法改正がどういう影響を企業組合等に及ぼすかという問題につきましては、いろいろ議論のあるところであろうと思いますが、先ほど国税庁長官も、本来あるべき姿における企業組合がある、そうしてりつぱに活動しておる、その結果税の面において軽減された、こういう場合には、それは税務当局としても当然のこととして文句のつけようがないんだというふうに申されておるのでありまして、企業組合発達をこれによつて妨害しようとかいうふうな筋合いでないということにつきましては、私どもも、主税当局、国税当局とよく話合いをいたしました上において確信をいたしておるのであります。現に最近私どもの方から国税局、主税局の方に、いろいろと中小企業関係の税の改善と申しますか、軽減申しますか、いろいろな案を持ち出しまして折衝いたしておる過程におきましても、ずいぶんいれられて来ておるのでありまして、主税局は、中小企業の問題について非常に関心を持ち、御理解をいただいておるというふうに考えるのであります。たとえば、現在出ております法案の中におきましても、基礎控除の問題とか、あるいは専従者の年齢の引下げの問題でありますとか、あるいは医療費の控除の問題とか、いろいろ出ておりますし、また法案そのものにはないのでありますけれども、たとえば青色申告書の簡素化の問題とか、あるいは退職積立金を、九人以下の企業体においてもうまく活用できるような仕組みを考えるとか、いろいろ考えていただいておるのでありまして、私どもといたしましては、両々相まつて、税の面からも中小企業者がその他の方々より決して不当の扱いを受けることのないように、今までもいたしておりますし、今後も努力して参りたいのであります。  それから私どもの方で、企業組合あるいはその他の組合取締りといいますか、監督を引受けるごとにしたらどうかというお話であります。この点は、先ほど来るる申し上げておりまするように、現在のところ、組合というものは自由設立主義に相なつておりまして、私どもの手駒といたしましては、一つ一つの組合につきまして内部に立ち入つて監督指導する仕組みを持つておらぬのであります。組合というものはどういうふうにあるべきか、またどういうふうな方向に組合の幹部の人は努めていただくべきかということを宣伝啓蒙をいたしておるのでありまして今組合の一つ一つの中まで入りまして、これを監督指導して行くということにつきましては、ただちに責任を持てと言われましても、今の態勢ではいかんともなしがたいのであります。私が法律改正云々を申しましたのは、冒頭に申しましたように、中小企業者の根幹である組合法は、やはり時代の進展とともに動いて行かねばなりませんけれども、十分の検討を加えてやらなければならぬ、その検討を加えるべき時期が来ているんじやないかと思いますので、これより慎重に研究を加えて行きたい、さような意味でございます。
  47. 中崎敏

    ○中崎委員 岡田長官の今の答弁は、何だか私の質問とはちよつとそれております。というのは、法律改正による企業組合の認可制度によつて、はたして企業組合の実体を備えて行く傾向を持つておるものになるのか、あるいはただ単に形だけの組合になるというような場合には、これをチエツクするような方法を講じて、そうして名実ともに大蔵省のお世話にならぬでもりつぱに法律の線に沿うて一人前に認められるような組合ができるような制度を初めからつくつて行くようにしたらどうか。     〔委員長退席、淺香委員長代理着席〕 そうしてまた監督についても、せつかくできたのはできたが、違う方向に行つてしまつた、こういうことになつてはいかぬので、そういう実体を備えるような組合指導して行く、監督権を持つというふうな方向に組合法を改正して行くというふうな考え方を持つておられるか、あるいはそういうことを今日まで考えられたことがあるどうか、そこらのことを聞きたいというのであります。  もう一つには、私が申しますのは、何も大蔵省の方で、国税庁の方で企業組合をつぶそうと初めから考えてやられておるとは決して申しませんけれども、やはり税金をとらなければならぬ。そういうふうな考え方から、こうした法律で別個のいわゆる特例法に該当するようなところまでつくつて、そうして税金をとられるという場合においては、現に今まで認められておる組合は今後とも認めて行くというのであります。これにも相当の例外があるようです。それも心配なんですが、しかしそれはそれとして、現にできている組合でも否認して行くためにつくられておる法律案である。そういうふうなものは、当然形式的にはできておる組合が、税法関係においては一面否認されるような形で、いわゆる個人そのものに課税しようというのでありますから、そういう形になる。そうして今後ともこういうようなものがなかなか起つて来ないということにもなつて来るのでありまして、せつかくたくさんつくろうとして、いわゆる自由な認証制度、簡単なる認証制度によつてつくろうというその趣旨さえも没却して行くということにもなるおそれもあるのであります。そういう間接的な結果として、この組合というものが著しく不振になり、しまいには壊滅するところまで行くのではないかと心配をして、われわれはここに聞いておるのであります。そういうふうに、初めから大蔵省の方でこれをつぶそうとしてやつておられるとはだれも考えておらない。結果においてそういうことになるからということでわれわれは心配しておる。そういうことも、そうでないとあなたは保証できるか、そういう点、その二つの点についてお尋ねします。
  48. 岡田秀男

    岡田(秀)政府委員 中小企業関係組合に関しまして、認可主義をとるのが是なりや否なりや、また設立当時認可主義をとつたといたしましても、その後の過程において組合がどういうふうになつて行くかということを微に入り細をうがつて中まで入つて調べ、かつ監督するような仕組みをつくることが、はたしてその中小企業関係組合にとつて適切なものであるかどうかということ自体非常に疑問があろうと思うのであります。従いまして私どもといたしましては、そういう御意見もあるということで、協同組合改正の研究の場合におきましては、十分そういう点も各方面の意向を参酌しながら研究して参りたいとは思うのでありまするが、そのこと自体がかなり私はむずかしい問題じやなかろうかと考えておるのであります。一方におきまして、今度の税制関係の法文が施行されますと、企業組合等が非常な打撃を受けて不振になつて来るのじやないかという御懸念でございまするが、私どもは、その点同様に懸念をいたしまして、大蔵省当局と種々その運用等について話し合いました結果、先般来大蔵当局から御説明申し上げましたようなはつきりした運用方法についての方針を聴取いたしまして、私どもも相ともにその中へ入つて意見を申し上げるという建前で行きますれば、この法の運用によつて事態の紛糾を来すようことはないと確信をいたしておるのであります。なお、先ほど来大蔵当局から言われましたように、地方の国税局長が最後の決をとられるということでありますれば、われわれの系統の方の地方機関からも意見を申し上げられる機会がまたあろうかとも思うのでありまして、それらの点もあわせて考えますれば、事態の紛糾を特に来すようなことは万なかろうかと考えております。
  49. 中崎敏

    ○中崎委員 岡田長官はきわめて認識不足と思います。こういう法律ができて、実態を大蔵省の方に握られて、そうしてあなたの方で、いくら遠ぼえしても、それがあなたの考えておられるような、そうなまやさしいものでないということは中小企業者の全員が知つております。それでありますから、あなたの方がきわめて無責任な甘い考え方を持つておられることによつてこういうものができるとするならば、あなたとしてはその職についてもう少し真剣に考えてもらいたいというその心構えを私が言つたのです。きわめて甘いです。実態を御承知になりません。そこで徴税のことだとか課税のことについては、あとよく国税庁の方なりにお聞きしたいと思いますから、そこでお聞きになつておればよくわかると思うのであります。もう少し勉強なすつた方が私はいいと思います。     〔淺香委員長代理退席委員長着席〕  そこで今度は角度を少しかえますが、国税庁主税局とあなたの方と三者の話合いがあるわけです。その申合せというか、協定というか知りませんが、その内容についての書類を大蔵委員会に御提出を希望しておきます。これは主税局の方からでもけつこうです。どちらからでも、政府の側からすみやかに御提出を願います。  それから今度は中小法人に関する問題でありますが、中小法人に関しましても、その実体が個人的企業の実体を持つておるというふうな場合に、どういう取扱いになるのか。この法案が通過した場合において、一体中小法人についてはどういう影響があるのかということについて御説明を願いたいと思うのでありますが、こうした法案が今回用意されるに至つた動機といいますか、そういうことについては、末端においていろいろ問題があつた思うのです。それでその場合の例を例示してもらつて、それについて今日までどういう扱いをして来たか、たとえばこういうものは依然として政府の方では否認して、個人的なものとかわりがないというので、個人として税をおかけになつておるのかどうか、どういう扱いをされたかということについて何らかの例解あるでしようから、その説明国税庁の方からお示し願いたいと思います。
  50. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 前段の御質問についての話合いを、簡単なら読み上げていただきたいと思います。
  51. 渡辺喜久造

    ○渡辺(喜)政府委員 今印刷したものを取りにやりましたから、あとで御配付は申し上げますが、簡単に一応要旨だけでもこの機会に申し上げておいた方がいいと思いますから、それを申し上げます。    改正所得税法第六十七条の二の    規定運用に関する覚書   昭和二十八年一月三十日閣議決  定された所得税法の一部を改正する  法律案により、あらたに設けられる  所得税法第六十七条の二の規定は、  法人全般について定められているも  のであるが、企業組合に対する同条  の規定の適用については、この規定  が本来健全な企業組合発達を阻害  するが如き意図を何等有していない  こと及び企業組合に対する従前の課  税の経緯にかんがみ、税務当局はそ  の運用に慎重を期し、特に次に掲げ  る点に配意することとするととも  に、中小企業庁においても法人たる  実を具える企業組合の育成に一段の  意を用いるものとする。  一、改正所得税施行前において、税   務当局が調査の結果、すでに課税   上法人として取り扱うことを相当   と認めた組合については、この規   定を援用して組合員所得税を課   することは、これを行わないもの   とする。  二、一以外の組合について、この規   定による推定の要件たる事実があ   る場合においても、企業組合に属   する常業所から生ずる収益の帰属   につき企業組合が単なる名義人で   はなく、企業組合が当該収益を実   質上も享受していると認められる   ときは、当該収益については、企   業組合に対して法人税を課するも   のとし、当該営業所の所長、主任   等に対しこの規定を援用して所得   税の更生決定を行うことは、これ   をなさないものとする。  三、国税庁においては、この規定の   趣旨及び運用方針について税務   機構の末端にまで十分徹底させる   よう配意するとともに、この規定   の運用について重要と認められる   通達を発する場合には、事前に中   小企業庁に連絡するものとする。  四、中小企業庁においても、法人た   るの実を具備しないでその形を利   用して不当に所得税の軽減を図る   組合の発生の防止等、本来の企業   組合の育成指導に格段の意を払う   とともに、指導事務に関し重要と   認められる通達を発する場合に   は、事前に国税庁に連絡するもの   とする。  これを一応国税庁長官中小企業庁長官と私が署名捺印しまして覚書を交換いたしました。かように考えております。いずれこのものは今とりに行つておりますから、先ほど申しましたようにすぐにお配りできると思います。
  52. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 次に、中崎委員の後段の御質問に対する御答弁について、国税庁直税部長原純夫君。
  53. 原純夫

    ○原政府委員 お答えいたします。おそらく一時間以上かかりますので、最初概略を申し上げまして、それからこまかいことに入つて参りたいと思います。  まず概略を申し上げます前に……。
  54. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 委員長から申し上げますが、先般御説明がありましたが、そのときは速記抜きの御説明もあつたから、そのおつもりでもう一度御説明を願います。
  55. 原純夫

    ○原政府委員 それではそういうつもりで申し上げます。まず先ほど来お話を伺つておりまして企業組合というものにつきましての実態のお考えということについてまず一言申し上げまして、困難がそこに胚胎するという根本を第一段に申し上げたいと思います。  企業組合と申しますのは、複数の個人企業者が法人になる。しかも通常の協同組合でありますと、個人企業の個人性というのを確保しながら、設備を共同に買つて使うとか、あるいは仕入れの場合に共同に仕入れをするとか、販売の場合に共同に販売をするとかいうような、企業活動の一部について共同の利益をあげるというものでございます。ところが企業組合になりますと、個人性を没却して全部法人なつてしまう。個人企業はなくなる。従いまして個人企業主でありました人は、企業組合組合員でありますが、同時に使用人になり、経済的な関係におきましては、組合員としては利益の分配を受けるなら受ける、使用人としては給料をもらうということに相なります。率直に申しまして、これはどなたがお考えになりましても非常にむずかしいことであろうというふうに考えます。端的に申しますれば、非常にむずかしいというふうに考えるのであります。それがまず第一段で、税務が難渋いたしますのも、この企業組合実態がそういうことであるということにありますので、それをさらにはつきり証明させ——証明といいますか、フツト・ライトを浴びせるために申しますと、そういう実態は、常識的に九割九分個人であると思われるものが企業組合という法人格を持つておる、法人のからをかぶつておるといいますと少し失礼な言い分になるかもしれませんが、法人格を持つておる。実態法律上の形とが非常に離れやすいものなのであります。これがわれわれの税務与えられた企業組合実態なのであります。  そこで第二段に参りまして、これに対処しながらわれわれの態度の根本を申し上げたいと思います。これは先ほど国税庁長官から申し上げましたように、税は適正で公平でなければならない、と申しますことは、事実実態従つて課税しなければならないということでございます。実態企業組合でありましても、その個人々々が取引をしておるという場合においては、これは個人が取引をし、個人が収益を得、個人が所得をあげておる。従つてこれは個人として課税しなければならない。そうしなければ、先ほど長官からも申しました通り、課税の適正と申しますか、公平と申しましようか、これは遂に保ちがたいという考えで、その原則をもつて事に臨んでおるわけであります。この原則を若干具体化いたしまして、個人と判定するについての象徴を九項目にわたつてあげましたものが、世上よくいわれております昭和二十五年の暮れに出しました九原則という通達でございます。  そこでこの第一段と第二段とをからめ合せまして問題が起つておるわけでございます。法人の看板を持ちながら個人が取引をしているという場合をわれわれが判定いたしますことは非常に困難であるということは、これは御了解いただけるのではないかと思います。一応法人として登記をしておりますので、一応だれでも法人と思うのでありますけれども、実際はただいま申し上げました通り、個人である場合が非常に多い。本質的に多いのであると私は判断いたしますが、そういうものが個人であるということを判定いたしますために、九項目ありますうち割合に見やすくわかりますのは、看板が前の看板であるということは個人くさいぞということでありまして、爾余の分は、たとえば取引、仕入れが個人名義でなされておるとか、あるいは預金が個人名義でなされておるとか、あるいは自家用として消費した商品の値段を組合に対して借りに立てる、消費する個人は法人とは別なのだという考え方で行きますれば借りに立てなければいけない、そういうことをやつているかどうかというような、いわば法律行為といいますか、法律上の形式がどうなつているかということを中心にして他の項目ができております。そういう点は非常に判定がむずかしい。と申しますのは、第一に先ほども主税局長からお話のありました通り自分のことは自分に帳簿があれば、持ち出してそれで証明できる。われわれはかなりの場合にそういう資料をお出し願えないということがございます。それから実際問題といたしましては、そういう法律的な形態は、率直に申してつくることもできるのであります。本来この企業組合というものは、法人と個人とのいわば中間地帯の、課税上でも非常にむずかしい範域の問題なのであります。そうして後刻申し上げますように、この企業組合形態を使われますもののうちに、かなり政治的な角度からこれを利用されておるという向きも相当ございます。そういうような向きが法律的な形式を整える、率直に申して、つくろうというような点について非常にくふうをされます。そうされますと、ますますこの判定が困難になるわけでございます。またこの判定の仕事は、なおよくお考えいただきますればすぐわかりますように、そういう判定をすることは、法人が取引をしているか、個人が取引をしているかという判定だけであつて、その判定が終つたあとに、さらに所得は幾らかということは、通常通り手間がかかるのであります。従いましてこの判定の仕事は、他のそういう問題のない法人、個人の場合と比べまして、全然追加的な仕事になるわけであります。従いまして、これが非常にめんどうな仕事であつて、かつ量が多いということになりますと、そのために、たとえば税務官吏の手が半分とられてしまうということになりまして、ほかの人の調査のためのサービスが半分になつてしまうというようなことに相なるわけであります。そんなようなわけで、まず第一段に、企業組合は本来個人である可能性が非常に強いものだ、にもかかわらず法人という形式を持つておる、われわれは実態従つて課税しなければ課税の適正公平は期せられない、従つて判定作業というものをやらざるを得ない、その判定作業は今申し上げたような理由で非常にめんどうである。めんどうというのは、労をいとうという意味ではいけないのでありますけれども、率直に考えてこの三つを並べていただきますと、いかに非能率な行政になるかという結論が出て参ると思います。つまり第一段の、企業組合組合員の個人性はなかなか払拭し得ないということ、これは常識的にどなたに聞いてもそうだと言つていただけると思うのであります。そうしますと、まず法律問題は別にして考えまして、常識的な判断ということになりますれば、まず企業組合全体として、これは個人であるといつても、全体が法人であるといつた場合よりも間違う率は絶対に少いと私は思います。従つて、一切の法律を抜きにして、常識をもつて判定せいということであるなら、これはまず企業組合は個人であるという推定をするということも、これは常識として決して妥当を欠くものでない、妥当であろうと私は思います。そういう事態についてわれわれが要求されておりますことは、法人格という法律的な形式をとつておりますために、非常にむずかしい判定作業をやつて、そうして個人であるということを言わなければならない立場にあるのであります。これは常識的に考えて、そういう判定作業をわれわれに押しつけられるということは、どうも片手落ちではないかということが御判断の結論になつて来ていただきたいと、私はやつておりましてそういうふうに感じます。かつてか知りませんが感ずるのであります。そこで、そういう法律をはずした常識的な判断でそうであるということに御同意願いまするならば、かつ、これから申し上げますように、企業組合の判定、さらにそれから続きますもろもろの混乱のために税務行政が非常に能率を阻害されておるということがおわかり願えますならば、今回お願いいたしております改正条文の、推定をするという規定が六十七条の二に盛つてありますが、ああいうような点の常識的な妥当性というものを御納得いただけるのではないかというふうに思うのであります。つまり申しますれば、常識的に言つて個人であるいうことは、まずほとんど大部分の人がそうだと言えるほどはつきりしていることであり、それから税務が一々非常にめんどうな——しかも相手方が悪意があれば、税務の手をもうどうにもならないほどつくることもできるわけであります。そういうようなことを振りわけして進まなければならぬというような、困難な、非常に不利なハンデイキヤツプを税務行政にお与えになるということははずしていただきたいということなのであります。それで、くどいようでありますが、これは推定であるから非常にかつて規定だというふうにお考えになるかしれませんが、私はその前に、本来常識的に見て個人である場合が多かろうとだれでも思えるようなものであつたならば、その法人であるということだけで、あと個人であるはずだと思つているものを個人であるという証明をするのに非常に一方が苦労するというのは、これは挙証の責任が不当に片寄つている、企業組合というものの法人性のゆえに挙証責任が非常に片寄つているというふうに思えるのであります。この辺を皆さんに痛切に訴えたいのであります。  なおその論理に裏打ちします現実の困難を申し上げます前に、ここでちよつとはさんでおきたいと思いますのは、私がただいま申し上げておりますことは、端的に申しますると、徹底して申しますればどうも企業組合という法律形態が望ましくないというようなことにもなつて来るかということになりまして、あるいは非常にお気持にまつ正面からぶつかるのじやないかとおそれるのでありますが、この点につきましては、もちろん私もなお根本的に問題はあると思つております。しかし一方において、たとえば企業組合になりましたために信用がつき、金融力がつくというような点が長所にあてられておるのであります。われわれも、中小企業の窮状を何らかの方法で打開するといういろいろな努力に対して、できる限りの声援を送るということは当然いたすべきことでありますので、ただいまのわれわれの気持は、中小企業等協同組合法による企業組合形式を、ただいままで申し上げました論理によつてつぶせというまでの結論は持つておりません。むしろそれでも金融力がつく、世間の信用もつくというようなことがあるならば、そういう点は大いに御協力して伸びていただくというようなつもりで、従いまして、今まで実際にこの企業組合の判定をいたします場合においても、通達に必ずその旨をうたいまして、中小企業がすこやかに伸びて行くことを阻害してはならぬというふうにきつく申してありますので、そういう態度でおるということを間にはさんで申し上げたいと思います。  そこで、ただいままでのところは、企業組合に関する税務行政のいろいろな手間というものが相当たいへんなんだが、それは常識的に考えて、やはり整理していただいた方がよろしい手間であるということを申し上げたわけでありますが、それではどんな手間がかかつているかということを申し上げたいと思います。概して申しまして、先ほど申しましたように、通常の個人でありますと、毎年九月以降くらいに実際にお店に参つて実額調査をやるのですが、これも相当手間がかかります。やはりきちんと調べますには、一軒にまる一日ぐらいではちよつと完全とは行きかねる。しかし非常に納税者も多いし、日数も少いので、大体その程度でやつておりますけれども法人の場合でも同業で——法人は大きいのがありますから、大きいのは一週間、一月とかかりますけれども、一生懸命調査をする。われわれは、やはり税務行政の本道は調査をしつかりするということであると思います。所得税法人税でありますれば、所得調査をしつかりするという点で、皆さんからも常々、たとえば申告所得税あたりの課税がどうもおかしいのではないかと御批判を受けるのでありますが、調査をしつかりやるという点を中心にしまして、これに一番重点を注ぐというのが、われわれとして、皆さんのおつくりになりました法律を施行する上の一番大事な点だと思つているのであります。ところがただいま申しましたように、企業組合の場合になりますと、調査をする前に、一体法人として課税していいのか個人なのかということを調べなければいかぬということになるわけであります。しかもそれが、今申したように非常に困難であるというとどういうことになりますかというと、企業組合が多くなりますれば、それだけ法人、個人の判定をするという仕事が余分に加わります。これは非常な手数でありまして、たとえば三十人の企業組合について、これが法人として取引しているか、個人かということを判定しようという段になりますと、一軒行つて、その家が個人の名前で預金しておつたとか、仕入れをしておつただけで、三十人の組合員を全部個人だといつたら、これは不穏当である。やはり相当数を調べなければならない。われわれはそういう場合には大体十人くらいは調べて、その十人の大部分が個人的な取引だということになれば、個人と判定してよかろうというようなことをやつております。私どもの持つております最近の計数では、企業組合全国で八千五百、組合員が八万八千ということになつておりますが、これにつきましてかりに三割調査するといたしますれば、二万六、七千の組合員について、そういうことを調べなければいけないということになります。しかもその調べで、ただいま申しましたように、看板が原商店となつているか、企業組合なつているかは、見ればすぐわかることでございますけれども、あとの八項目は法律的な形式と関連するものでありますので、非常にむずかしい資料を出していただかなければそれまでである。いただきましても——こういうことを申しては失礼ですが、一旦つくられますと、それを破つて参るのが非常にむずかしいということになりますので、どの程度の手間がかかるかは場合によつて大分違いますが、やはり一人に一日くらいの手間はどうしてもかかるであろうと見ております。そういたしますと、企業組合の場合は、その三割の人間について、一日分だけ余分にかかることになる。ところが一般はどうかといいますと、一番大事な実額調査が、戦後大分税務署に人を増していただきましたけれども、なお御存じの通りできません。仕事も多いというので、遺憾ながら申告所得税におきましては、総納税者——これは農業者を除いた営業関係でございますが、やりたくて仕方がない実額調査が、その二割くらいしかできないのであります。ところが企業組合の場合におきましては、今申し上げましたようなわけで、まず三割ぐらいの人を調べなければ、お宅は個人だと言うのはちよつと失礼であるというのでやりますと、それが一人一日かかる。実額調査も一日くらいだとなりますと、企業組合関係の人は、判定の仕事をしただけで割当の日数を超過してしまうわけなんでございます。もう実額調査の日がない。それをやろうとすれば、ほかのそういう問題のない人たちの実額調査をあきらめて、それにかからなければいかぬことになるわけでございます。そんなわけで、ごらんいただいてもわかりますように、ちつとやそつとの手間がよけいいるという問題だけではありません。それだけでも手間がよけいかかるのに、その上に持つて行きまして、企業組合は先ほど申しました通り法人、個人の中間的な、いわば昼と夜のたそがれどきみたいなところの問題であります。率直に申して共産党的な指導が入つている組合が若干ございます。そういうような組合あたりになりますと、だれが考えても、企業を大政奉還して法人なつてしまうことは、今の段階ではとてもありそうもないという感じがするのだけれども法律的な形態は、伝票なり何なりをしかるべくつくることによりまして作為することができる。そういうことは、そういうような色彩の組合においては非常に研究が進んでおります。そういうものにぶつかりますと、われわれの判定作業というのは非常な困難に出つくわす。困難だからといつて、フアツシヨ的にばしやつときめるのはいかぬのでありますけれども、まず最初に申しました通り常識的に考えて、個人的なものでしかあり得ない場合がほぼ全部であろうと言うことが私は許されると思うのであります。そういうことがありますものですから、やりながら手間のかかる感じが非常に強いのです。そこで率直に言つて、なぜこんなに手間をかけなければならないのだろうかと思うわけです。税務行政は戦後非常に乱れたが、それがだんだん立ち直つて来て、調査も少しはよくなつたという声も聞くのでありますけれども、そういう際に率直に申して、こういう非常に不当な手間をかけさせられることについては、もうじりじりといたします。これがなければ税務の調査も非常によく進むと思いますし、全般の税務行政もよくなると思うのでありますが、そういう意味で非常にあせつております。手間がかかるということを概略的に申し上げますと、そういうことであります。  さらに具体的に少し申し上げて参りたいと思います。全国八万八千人の組合員について、ただいま申し上げたことはずつと該当して行くわけでございますが、その中で特に政治的な色彩が強いものは、名状すべからざる困難をなめておる。その特に顕著な例を申し上げて参りたいと思います。これは一部のものであるとごらんになる向きもありますけれども、ただいま申し上げましたように、判定調査というものの全部について言えますが、その中で特に政治的な腰構えを持つた一部のものが特にめんどうが倍加するといいますか、何十倍の手間がかかるという例を申し上げるわけであります。一番顕著な例で申しますと、これは皆様もお聞きになつておられると思いますが、九州の共栄企業組合の例であります。これは福岡市に本部を持ちまして、現在三千人近くの事業所でございます。これは共産党系統の方の御指導のもとにあるもので、二十四年の暮れだつたと思いますが、早くからできております。これは非常に特異な形態で、八百屋さんでも菓子屋さんでもお医者さんでも、およそおらゆる業種を含んでおる。しかもそれが福岡なら福岡で固まいつているならまだ扱いようがあるかもしれないのでありますが、九州全域に及んでおる。それぞれのところではぱらぱらですが、全体になると今申したように二千何百名になるわけであります。それがだんだん伸びまして、山口県にも入つて来る、広島県にも事業所ができる、その後東京にもできるというようなことであります。そういう事業の種類の違う企業組合の場合に、個人性を没入して法人なつてしまうことは一層困難であり、おそらく常識的には考えられないものの最たるものであります。それがさらに地域的に非常に分散しておる。なかなか法人経営なんかできるはずがないじやないかという感じのものなのであります。そういうのができまして、最初にぶつかりましたのは二十五年度分の所得税をかけるかかけないかという問題で、二十六年の春、ただいま申しました判定をやれというさしずをいたしたわけであります。ところが何さま全部と組合員についてその判定の仕事がございますので、それをやつていると調査の日がなくなるというようなこともございますして、各局とも非常に難渋いたしまして、大阪国税局のごときは、そのために判定調査は四月過ぎて——年度過ぎてからやろうというようなことにしたところもございますが九州におきましてもあまりにこれが大きい、そして三割を調べると全域にわたつて手配をして調べなければならぬというようなこともございまして、これはあとまわしになつた。そういうような調子で、だんだんあとまわしになつて参つております。これは組合側では、調べてくれ調べてくれと言うのだけれども、調べないというので先日御批判がありましたが、われわれも調べなければいかぬと思つたのが遅れて済まないのでありますが、同時に途中調べようとしたことは何度もあるのであります。ところが実際問題としては、事業所に調べに参りますと、調べさせないということがあつたのであります。うちは事業所なんだから本部へ行つてくれ、全部伝票は本部にあるから本部に行つてくれ。お宅だけの、事業所だけの勘定を教えてくれと言つても相手にしない。そういつた政治的な何でありますから、ある事業所に行きますとすぐ連絡をとつて、その町にある他の事業所、あるいは組合の幹部級の人たちが寄つて来る。実際問題として押されて調べがつかないというようなことが非常に多くありまして、いろいろそんなような関係で遅れて参りました。そのうちにだんだん組合員が多くなりまして——その間これはうわさでありますから何でありますが、やはり税金相当題目にされたようであります。私自身もうわさを聞いたり、見たりいたしましたが、共栄企業組合のパンフレツトを見ましても、これで一万五千人の組合員を獲得するのだというような計画を呼号しておやりになつておる。その間税務は、多くなればなるほど、三割は何百人となりますから、しかも調べさしてくれないとなりますと、尋常一様の手段では行かないということにもなります。そんなようなことで遅れ遅れいたして参りましたが、第一線の署長も、こういうような組合をそのまま置いておいて課税の態様がはつきりしないということでは、税務行政に責任が持てませんという声がもう各地からあがつて参りました。遂に昨年の十一月十八日でございましたが、これについての調査をいたしました。この際は税務職員千人、それに査察事件として、脱税の疑いということで令状をもらつてありましたので、査察官も百名ぐらい各地から動員してやりました。しかもそれが一日で済むような事柄でなくて、千人が全部五日はかかつております。そのほか、そのうちの相当数は、事後この調査を補完いたしますために、ずつと専従者を置いてかかるというような状態であります。
  56. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 あとなるべく簡潔に願います。
  57. 原純夫

    ○原政府委員 ちようど十一月十八日というのは、実は実額調査が済みまして、一番最盛期なのであります。ねこの手も借りたいところなのです。調査はしたい、しかしそういうときだというので非常に悩んだのであります。けれども、これをしつかり始末せぬことにはやはり税務の適正、公平課税という筋が通らぬというので、涙を振つて、他を犠牲にしていたしたわけであります。いたしました結果は、本年の二月三日に至りまして、諸般の事実からこれは個人として取引しておるという判定をいたしまして、通知をして、個人として課税をするということを進めております。なお刑事事犯に当るものも若干あるやの話で、本件には検察当局も一緒になられまして調べを進めておられます。この方は、まだ検察当局の調べが進行中の状況であります。この間、そういう組合でありますので、非常に調査が難渋をいたしております。いろいろカルテを持つて行つたとかいうような御非難があり、そういう際でありますから間違いがなかつたとは言えませんで、間違いがあつたとしたらまことに遺憾なことでありますが、われわれといたしましては、そういう相手であるから十分慎重にということで、先日参考人の陳述にありました事柄は別途聞いておりますが、必ずしもこちらばかりの責任ではない。それからカルテ等のことも、古い時期のカルテであつてすぐの仕事にはさしつかえないとか、またすぐ返したというようなことを持つておりますけれども、一々は冗長になりますから申し上げません。最も端的にわれわれが困りました例を申し上げますれば、その調べをいたしましたあとは、福岡、熊本とも国税局、税務署には、幹部あるいは組合員がよく押しかけられて面会を申し込まれる。もちろんお会いするのはいいのですけれども、熊本のごときは、ちようど前々日でありますか、阿蘇山で共産党の大会をやられました。その幹部が帰られまして、われわれが調べに出ました午後、幹部が各組合員のところに散られまして、そうしていわば対税務署陣頭指揮をやられた。国税庁あたりから参りました者の報告によりますと、あるところではそういう人が集まりまして、こちらの調査官を腕でスクラムを組んで中にとじ込めてしまう。しかたがないからこちらの人がまた署から応援を求めて、こつちもスクラムを組んでつつ込んでそれを奪還しないとあぶなくてしようがないというようなことを言うて、こういうことを申し上げるのはまことに陰鬱な話でありますけれども、そんなような調査でしかあり得なかつたというような状態で、これが共栄企業組合についての概略であります。なおただいま、全体で百人ぐらいこの関係に専従者と申しますかを置きまして、調査の補完というようなものをいたさせております。
  58. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 あとはまた質問に応じてお答えを願います。
  59. 原純夫

    ○原政府委員 どういたしましようか、あと大阪……。
  60. 中崎敏

    ○中崎委員 結局認められた組合のほかに、実際企業組合の形をしておるが認められないものがたくさんあるはずなのです。それについて、大よそどの程度これは個人としてかけておるか、その程度でいいです。
  61. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 この御答弁は、午後継続しますから、午後御答弁を願うことにしたらいかがですか。
  62. 中崎敏

    ○中崎委員 それでけつこうです。
  63. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 では午前中はこの程度にとどめ、午後は二時から再開いたします。     午後零時四十九分休憩      ————◇—————     午後二時三十一分開議
  64. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  午前中に引続き、本日の日程の税関係十三法案を一括議題として、質疑を続行いたします。官房長官が御出席になりましたので、この際中崎委員の御質疑を許します。中崎君。
  65. 中崎敏

    ○中崎委員 緒方官房長官はしばしば、不信任案が通過すれば国会を解散するということを述べておられるのを新聞で見受けるのであります。それについての官房長官の心境をひとつお聞きしておきたい。
  66. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えをいたしますが、新聞にときどき今おつしやつたような話が出ておりますのは、私の方から積極的に申した場合は一度もないのでありまして、記者会見が私の仕事の一つとなつておつて、記者の諸君からしばしば、不信任案が通つた場合にはどうするかという質問を受けまするので、その仮定の問題について、憲法上の解釈と申しますか、理論的な話をしておるのが新聞に現われておるのであります。政府といたしましては、予算と同時にそれに関連するすべての法案の一日も早く国会を通過することをもつぱら希望しておる次第でございます。
  67. 中崎敏

    ○中崎委員 官房長官自身から積極的に、国会を解散するというふうな意見を言われておるとも思われぬのでありますが、いずれにしても新聞の方から、どういうふうになるのかということの意見を聞かれて、追い詰められたといいますか、根掘り葉掘り聞かれて、結局長官としては、総辞職を選ぶよりも解散によるのだというふうな意思表示をされておると感じられるのであります。ことに官房長官は新聞人でもありますし、そうした関係においては、取扱いについても至つてくろうとでありますから、そこらの点は非常に引きまわしもうまいものと思いますが、いずれにしても、一回ならず二回ならず、再三このことが新聞に出ておるところから見ましても、官房長官としてそういうふうに受取れるような意思表示をされたということは認め得るのでありますが、その点もう一度あらためてお聞かせ願いたいと思います。
  68. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 同じような質問を記者会見の場合にたびたび繰返して受けるのでございますが、そのとき私が答えておりまするのは、大体憲法六十九条の線に沿うて、いわばその六十九条の解釈を申しておるような次第なのであります。と申しまするのは、不信任案が衆議院を通過した場合に、憲法では、十日以内に解散しなければ、内閣が引下るべきだということが書いてありまして、これは内閣の進退について規定されておるのだと思います。従いまして不信任案が衆議院を通過いたした場合は、まず解散すべきかどうかということを考え、客観情勢がこれを許さなければ、政府はすなおに引下るべきだという、ただ仮設の解釈をしておるだけであります。今政府が何を考えているということは、政府の立場として言うておるつもりはないのであります。
  69. 中崎敏

    ○中崎委員 この点はきわめて重要な問題でありまして、ことに新聞が一斉に、不信任案が通れば政府の方は解散するということを緒方長官が言つておられるというふうに書いてあるのです。国民もそういうふうなことを事実であると信じ、われわれもまたそういうふうに信じてといいますか、それは事実であろうというような印象を深く持つておるのでありますが、もし今長官が言われるように、単に憲法六十九条の解釈で、総辞職をするか解散をするかということは、それはもうはつきりどつちかを選かぶということになるのでありますが、その際において、総辞職をしないで、解散をするのだというふうに国民が受取れるようなふうの新聞記事が一斉に出ておるというふうなことを見ても、どうしても官房長官の側において、そういうふうに受取れるような意思表示をされたとしか見るほかはないのでありますが、この点についてもう一度お聞かせ願いたい。
  70. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 政府といたしましては、そういう解散をするぞという予感を与える意味で申したことは一度もないのでありまして、実際の見通しから言いますと、不信任案がはたして提出されるかどうか、これはまだ全然未定の問題だろうと思いますが、提出されましても、それが通過するかどうかも未定の問題であるし、通過した場合に、先ほど申し上げたような政府の態度の決定を要請されるというふうに考えておるので、今のところはまつたく仮説の上に理論的の話をしておるだけで、それを一歩も出ていないつもりでございます。
  71. 中崎敏

    ○中崎委員 この問題はむずかしい問題でありまして、政府の立場を代表した官房長官意見としてである場合、あるいは官房長官が個人としての意見である場合とあると思うのであります。その新聞の発表がどちらの立場においてやられたかということは、これは判断の問題でありますが、いずれにしても不信任案が通過した——こういうふうなことはまた将来の問題で、御説の通りでありますが、ただ仮設の問題として、通過したような場合にどうするかという意見を聞かれたときに、それは個人であるか、政府の立場を代表としての意見であるか知りませんが、緒方さんとしては、それは解散で行くんだと言われたというふうに強く解釈をするのでありますが、その点もう一度御説明願いたいと思います。
  72. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 それは私は、憲法の六十九条が、不信任案が衆議院を通過した場合には、まず解散し得るかどうかということを考え、次いで客観情勢がそれを許さないと政府で判断した場合には、政府は総辞職すべきであるということで、これは理論的にそういう順序が現わされておると私は解釈いたしておるのであります。
  73. 中崎敏

    ○中崎委員 そうしますと、新聞に書いておるあの記事は、あれほど進んだものではない、言いかえれば一方的に不信任案が通れば解散をするという考え方を、少くとも緒方官房長官の側においてお持ちになつていないと解釈していいのかどうか、これをひとつ。
  74. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 それは仮設の前提に対して言つておるのでありまするから、今政府としては、その不信任案なるものが提出もされておりませんし、通過してもおりませんし、今のところはそういう考えを持つておりません。
  75. 中崎敏

    ○中崎委員 これは繰返してこれ以上は申しませんが、いずれにしても国会を解散するかせぬかという問題はきわめて重大なのであります。それはただ単に国会議員にだけ影響するというふうな問題でなしに、国をあげて、まず政府の側においても、あらゆる官庁の役人はしりがおちつかないで仕事がなかなか思い切つてやりかねる、こういうふうな問題もあります。それによつてこの国会の山がきまるのでありましようけれども、選挙については、また選挙管理委員会などにおいても、選挙に対する心構え等も必要であるし、いずれにしても国をあげての重大関心事であります。そうしたような問題が少くとも解散をされるのだという印象を持たれるような態度においてされるということは、緒方長官説明いかんにかかわらず、私は非常に遺憾だと思うのであります。そこでさらにお聞きしたいのでありますが、昨年の十月にようやく選挙があつて、それでここに内閣もでき、国会も運営されておるのであります。ところでその間において自由党なりあるいはその上に立つておる内閣の上には、内部事情等によつて幾多困難な問題があるのでありますが、しかし野党の側において、さらに国民自体の側において、そうした選挙後における新しい事態というものは何ら発生していないと私は見ておるのであります。現に絶対多数を持つておる自由党が完全に党内が一致結束して行かれるならば、内閣も安泰としてその政治もやつて行けるだろうし、党もまたきわめて円満裡にやつて行けるはずのものが、いわゆる党内の事情によつて、しかもその上に乗つかつておる内閣というものがなかなか進行しづらくなつたという事態によつて衆議院を解散するというふうなことは、いわゆる政治道徳、常識等においてきわめて不自然であると私は考えるのであります。それは片山内閣の当時において、党内のいわゆる左右の争いの結果、予算の審議の過程において一部の反対によつて予算案が否決された、そこで当時の片山総理大臣は、これは自分の不徳のいたすところであるということで、みずから政治責任を感じて潔く内閣を投げ出したという先例もある。私はこれは政治の常道においてとるべき当然な態度だと思う。そういうふうなことがちようどこの内閣においてもあり得る。過般の場合においても、また池田君の通産大臣の不信任案通過の場合においても同じようなことである。もし今後不信任案が出されて、そうしてこれが不幸にして——不幸にしてといいますか、これが通過したというふうなときにおいては、私は片山内閣の当時と同じような現象だと思う。それをすでにその事前に、内閣の不信任案が通れば解散一本で行くのだというふうなことが言われておるということになるならば、私は緒方官房長官のいわゆる新しい感覚のもとに政治をやつておるその政治家としての心構えというものに疑いを持たざるを得ない。そこでやはり先ほど言つたように、解散するかせぬかということは重大な問題であり、しかもわれわれ独自な立場において不信任案を出すか出さぬかということを決定する上において、何らか他の力によつて圧迫を受けるがごとき印象を持たせるということは、民主政治の上においてもきわめて遺憾だと私は思うのであります。そこで緒方官房長官——仮定の問題にはもちろん責任を持つた回答もできぬでしようし、内閣としても閣議において方針を決定されておることでもないと思うのでありますが、今私の申し上げたような趣旨従つて、そうして解散一点ばりで行くのだというふうな考え方は毛頭持つていない、ただその事態に処してどうするかということはそのときに考えるのだというふうに解釈していいのかどうかということを、はつきりお答え願いたいと思うのであります。
  76. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 今の政局をどう判断するかということは、これは申し上ぐべき場所でもないと思いまするし、場合でもないと思いますから申し上げません。私が不必要に解散論を振りまくじやないかという御意味のようでありますが、記者会見におきましてそういう仮定の質問を受けた場合には、ここで今申し上げたようなことを理論として言わざるを得ない、これを新聞にどう発表されるかということは、新聞社の判断にまかさざるを得ないのであります。それで、不信任案が通れば何でもかんでも解散するかということは、そのときの客観情勢なんかもありますので、その場合にならなければ判断できないことと思いまするが、ただ私は、昨日参議院の予算委員会でも質問がありましたから答えたのでありますが、こういうことだけは申し上げ得るのではないかと思うのです。と申しますのは、今の内閣がどうであるかということではないので、一つの理論としてお聞きを願いたのでありますけれども、従来日本では、一つの軍というような特別な政治勢力があつて、それがいつでも内閣を崩壊させ得た、そういうことが多年行われておりました結果、内閣の進退というものが非常に軽く考えられておる傾向がある。私は政府の進退というものは、いかなる場合にも国民の審判の結果をまつてきめるべきものであると考えておるのであります。もちろん政府の総理大臣、あるいはおもな閣僚の幾人かの中に非常に大きな刑事問題を引起した、あるいは道徳的に政府が国民の代表といわれるに恥ずるような問題があつた場合は別でありますが、そうでない場合、政治問題につきましては、たとえば不信任案が出た、そしてそれが通過したという場合には、やはり政府がただ自分で情勢を判断せず、政府の態度が正しかつたか、不信任案に盛られた意味が正しかつたかということは国民の審判にまつのが常道である、かように私は考えております。
  77. 中崎敏

    ○中崎委員 私はそうした公式論を聞いておるのではないのであります。そうすれば年がら年中解散しておればいい。しかしそうは行かないのでありまして、そういうことはあり得ない。実際において四箇年間の任期がある。そうしてその間にほんとうにやむを得ない事情、たとえば今回この内閣の不信任案がかりに通過するという事態がどこから起るか、絶対多数を持つていて、自由党が健在であればそういう事態は起り得ない。不信任案が通過しようはずがない。現に四十人も数が違うのにどうして不信任案が通過するか、これは一にかかつて国民の期待を裏切つて自由党の内部の結束が乱れたり、党内の派閥抗争のために、いわゆる人事のために終始しておる。これは政治の常識において最も悲しむべきことであり、当然責任を負うべきことだ。それ以外に不信任案が通過する理由がどこにあるか。いつでも国会が開かれるたびごとに不信任案が提案されており、いつでも否決されておる。これがすなわち国民の健全なる判断とも言える。不信任案が通過するという事態は、すでに国民から離れ、いたずらに数だけ備えておるかもしれないけれども、実質的には国民を欺瞞しておるという結果になる。国民の判断から言えば、不信任案が通過するということは国民の意思が国会に反映したと見るよりほかにない。そういう意味において不信任案が通るということは、当然内閣の責任並びに多数党の自由党の責任であるということがこの際考えられるわけだから、そう不用意に解散一本で行くのだという印象を持つたり、あるいは公式論でそういう場合には国民の意思——意思を問うていけないというわけではありませんが、少くとも緒方さんの政治常識の上に立つて、国民に対する責任のある立場において、一体どういう判断をされるかということを聞きたい。客観条件といつても、私は今言つたように自由党の内部条件以外に何もないと思う。われわれはそういうことを予想して、不信任案が通過した場合にはどうかということを聞いておるのでありますが、その仮定は別としていずれにしても、緒方さんの考え方というものは、不信任案が通つた場合には解散一点ばりで行くという考え方は持つていないのだ、どこまでもそれはそのときの政治情勢によつて、その際に判断するのだと解釈してよいかどうかということをお聞きしたいのであります。
  78. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 大体そうでございますが、ただ憲法六十九条にはつきり書いてあります。不信任案が通つた場合には、十日以内に解散をしなければ政府は総辞職する、ですから解散するかしないかということを考えるのが先である、不信任案が通らなければ解散はない、少くとも今のところ私の考えとしては起らないと思います。しかし不信任案が通つた場合には、これは解散しようかどうかと考えて一向さしつかえない、それができないということになれば、不信任案が通れば必ず政府がやめるのだということになれば、憲法第六十九条は意味をなさないと思います。
  79. 中崎敏

    ○中崎委員 ちよつと官房長官は聞き違えておられるわけです。私はどういう場合においても解散をしてはいかぬということは、一つも言つておりません。ただ不信任案が通つた場合に、解散をするか総辞職するかということは、当然政府側において判断をして、その際に決定することであるのだが、その際において、ただ一方的に解散だけをやるのだというふうな印象を今国民が受けるような言明なり考え方なりを、依然として持つておられるというのか。それではなしに、元に返つて、憲法の精神に従つて、解散をするのかあるいは総辞職するかということは、そのときの判断においてするというふうに訂正をなさるというのか。少くとも新聞の記事に出たようなああいうものでないということを、ひとつはつきりしてもらいたいということを言うのであります。
  80. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 新聞記者が質問しないようにしていただかないと、しようがないのであります。質問されると、ああいうふうにお答えするよりしかたがないのであります。
  81. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 関連して緒方官房長官に質問したいと思いますが、実は官房長官は、われわれの先輩として非常に尊敬しておりますし、それからその言論についても、相当尊重したいと思つておりますが、実は委員長にも聞いていただくとわかりますが、実際自由党の内部分裂のために、大蔵委員会の定数は、われわれ野党からいいますならば成立しない場合が多い。もしわれわれ野党が寛大でなかつたならば、おそらくこういうような委員会は開かれないで法案が上らないわけです。一体いつあなた方は自由党のごたごたを片づける自信があるか、これを一つ……。われわれが重要な法案を今盛んに検討しておりましても、われわれ野党の方から定数をいえば、これは毎日委員会は成立しない。これは委員長に聞いてもらつてもわかりますが、そういうような事情にあるので、緒方官房長官は総理大臣にかわつて、一体どういうふうな見通しがあるかということを御説明願いいた。
  82. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えいたしますが、私はなるべく早くごたごたが片づくことを希望しておりますけれども、それ以上党内のことをここでお答えするだけの用意を持つておりません。
  83. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 しかしそうなれば、政府は、これは予算に関係する重要な税金法律案がたくさんあるのですが、そういう問題を積極的に片づける意思があるかどうか。われわれは、きようも手前中に中崎委員から大蔵大臣の出席を求めたのでありますが、どうもこの半年間の議会において、ほとんど大臣は出席しておらぬ。それから同時にわれわれ大蔵委員会の審議を無視して、ややもすれば党内の内紛ばかりやつておるというようなそしりを、どうしても受けなければならぬという実態であると考えるわけであります。そういう点で、一体政府は参議院でいつごろまでに予算を上げる自信があるか、この点を一点お伺いしたいと思います。
  84. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 参議院の予算は、三月三十一日までに上る期待を持つております。
  85. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 先ほど中崎委員からも質問がありましたが、私たちが非常に憂えておりますのは、せつかく自由党が二百四十二名の絶対多数をとつておりながら、この半年の間における池田失言問題、吉田首相の失言問題その他と関連して、実に幾多の問題が党内の内紛から派生しているということは事実であります。こういう点に対して、新聞記者が聞くからやむを得ず答えたと言われますけれども、少くとも緒方官房長官は、新聞社の出身として、長く朝日新聞の主筆をやつておられた人でもあるので、言論のことについても十分に注意されると思うのであります。しかしながらわれわれの納得の行かないのは、自分たちの内紛がうまく行かないと、解散するということでおどかすということは、政治道徳上非常に片手落ちではないか。われわれから言わしめるならば、少くとも政府自身、与党自身の反省すべき問題があるのではないか、こういうように思つておりますが、はたして副総理のお考え方はどういうお考えであるか、ひとつお伺いしたいと思まいす。
  86. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 与党全部を代表して言うことはできませんが、私としては非常に反省をいたしております。
  87. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 お忙しいのにわざわざお出ましいただきまして、まことに申訳ございません。実はわざわざお出ましいただいたゆえんのものは、この大蔵委員会に今四十三の法律案がかかつておるのでありまして、たいへんな大仕事であります。私どもは連日一生懸命にやつておるのでありますが、さつき中崎君の方からお話がありましたように、政府は解散だ解散だと言うておる。解散なら、いつそのことこの審議もいいかげんにやめればいいじやないかというふうなことで、一応内閣としての御意見を承ることと、それからもう一つは、今佐藤君がいろいろお尋ねしましたように、正直に申しますとまことに皆さんのお出が悪い。これは私どもがいろいろと配慮いたしまして、この間の酒の税金でも、さあやろうじやないかというので、ようやく三月一日にすべり込んで、ああいうふうになつたのでありますが、今日どつちが与党だか野党だか実はわからぬのです。しかしこれは大蔵委員会初めからの伝統でありますが、まあけんかはどこかでやつておれ、われわれはまじめに国政のことを心配しようじやないか、学芸会は学芸会でやつておれ、われわれはその柄じやないのだ、こういうようなことで一生懸命実はやつておるのであります。そこで緒方先生は、官房長官というお役目でもありますので、どうかひとつ早く、これは希望でありますが、あなたの党のごたごたを納めていただいて、一日も早くこの四十三の法律案を参議院に送り込むように、この上とも御配慮いただきたいと思うのであります。  それから一つお尋ねいたしたいのは、先ほど中崎君から六十九条のことについてお尋ねがありまして、長官は、いやそれは六十九条の解釈を申したのだ、まずそれは解散、客観情勢によつては総辞職だ、こうおつしやつたのでありますが、そこで私、これは思いつきのことでよくわからぬのでありますから、先輩の緒方先生にお尋ねするのでありますが、その客観的情勢というのは、具体的にどういうことでありますか、これをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  88. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 そういう実際問題に触れたことは、ここで申し上げない方がいいと思いますので、御遠慮します。     〔「それは無理だよ」と呼ぶ者あり〕
  89. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 無理かしらぬけれども、それなら初めからお断りなさらぬ方がいいのでありまして、やはり客観的情勢という言葉をお使いになつた以上は、それは仮定でもいいのでありますが、それはこういうことなんだぞ、こう言われませんとこれははつきりいたしません。もしそういうことでお逃げになるならば、われわれはもうきようこの四十三の法律案は審議いたしません、自由党の皆さんだけお集まりいただきたい。
  90. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 そこまで実際の客観的情勢を検討しておりませんから、そのときにならないとわかりませんが、まあ政府が気力を失い腰を抜かしたときです。(笑声)
  91. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 午前中中崎委員から、緒方副総理の出席を求められると同時に、大蔵大臣の出席を求められておりましたが、その後どういう経過になつておりますか。きよう出られなければ、明日出られるかということについて、ひとつ委員長から報告をしていただきたいと思います。
  92. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 大蔵大臣は、ただいま参議院の予算委員会の審議に出席しております。大蔵大臣にかわつて今政務次官が出席しております。なお大蔵大臣の方は、参議院の方の答弁の済み次第にこちらへ出席するようにはからいたいと思います。
  93. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 次に、本委員会の所管にかかる付託法律案に関しまして、愛知大蔵政務次官より発言を求められておりますので、この際これを許します。
  94. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 ただいまも御指摘がございましたように、当委員会には非常に多くの件数の法律案の御審議を願つておりまして、非常に恐縮に存じておるのでありますが、今日の段階におきまして、大蔵省側といたしましてお願いをいたしたいことを暫時お聞きとり願いたいと思います。  お手元に「大蔵省関係提出法律案調」というものを御配付申し上げることにいたしておりますが、この書類はきわめて非公式なものでございまして、先ほどもお話がございましたように、当大蔵委員会の前々からの伝統的な雰囲気の中におきまして、形式ばらない資料をざつくばらんに差上げたわけでございます。  さてこの差上げました表でごらんおきを願いたいのでありますが、大体(1)から(4)まで四つに分類してございます。先ほどから解散論議等がいろいろございましたが、私どもといたしましては、予算案が成立をするということをもちろん前提にいたしました。まずその四つの分類のうちの第一は、その予算が通るということを前提にいたしまして、そのうらはらをなします関係上、もしこれらの法律案が審議未了になりますと非常に困るというものを、ここに取上げたわけでございます。  そのうちでさらにAといいますのは、すでに提出いたしまして御審議を願つておるものであり、それから三枚目にございますが、Bといたしまして、すでに御協力によりまして成立の済んだもの、こう二つに分類をいたしておるわけでございまして、この分類に属するもののうちでは、いまだ提出しておらぬものは一件もございません。  Aの国会に提出済みのもので申し上げますと、各件名を朗読することを省略いたしますが、大体ここでごらんのように、すべて予算案とまつたく表裏一体をなすものでございます。特に御承知のように20の所得税法の一部改正案以下の税法関係の中では、この際成立をいたしませんと、過去にさかのぼりまして実際上増税になるというようなものが多いのでございますので、この分に関しましては、予算案の成立とうらはらではございますが、予算案が万々一通らなかつたという場合におきましても、この所得税法の一部改正法律案その他はぜひとも御審議を結了していただきたいと考える次第でございます。  それから次に(2)のこれに準ずるものとございますのは、予算の執行上相当の支障を来すおそれがあるというものでございまして、この中もやはりA、Bと二つにわけてございますが、Aの方はすでに提出をいたしましたものでございます。その中で大蔵省設置法の一部改正案は内閣委員会にかかつておりますが、これはすでに委員会で議了されたわけであります。  それからBに、閣議決定済みで国会未提出のものというのがございますが、これはいまだ国会に提出できませんでしたことはまことに申訳がないのでありますが、この印刷局特別会計法等の一部改正法律案は専売公社等の法律改正と相照応するものでありまして、退職手当、年末給与等を出しやすくしようというような性質のものでございまして、これは今日中にでも国会に提出の手はずができるはずであります。  それから第三の、成立を希望するものと申しまするのは、予算との関係はあまりございません。しかしこの際といたしましては、すでに提出済みのものは提案の理由で御説明いたしましたように、できれば政府側としては御審議を完了していただきたいと考えるわけでございまして、その中では、閣議決定済みで国会未提出のものが二件ございます。証券投資信託法の一部を改正する法律案、証券取引法の一部を改正する法律案でございますが、これは比較的事務的なものだと考えておる次第でございます。  それからCにございますように、閣議で決定されておらないものがございます。これは信用保証協会法案で、これは実は関係の各省が多いことと、地方公共団体等の関係がございます点で、調整にひまどりましたので、この点遺憾に存じておる次第でございます。  それから(4)の、これに準ずるものといいまするのは、なるべく成立させていただきたいというものでございますが、この中には冒頭に申し上げましたように、大蔵省の内部として事務的にこういうものをやりたいと考えておるものも入つております。特に申し上げておきたいと思いまするのは、そのうちのCで、閣議でもいまだ決定を見ないものでございまして、そのうちの1、2につきましては、大蔵省としてはこの際見送ろう、提出をせずにしまおうと考えておるものもございまするので、そういつたような点もここに入れましたことは、先ほど申し上げましたように、きわめて非公式な、内輪のわれわれのメモをもここに差出しまして、御参考に供したような次第でございます。  以上がただいまお配りいたしました書類についての説明でございますが、何とぞ予算執行上特に関係の深いものにつきましては、できるだけ御審議を御促進願いたいということを衷心からお願い申し上げる次第でございます。
  95. 中崎敏

    ○中崎委員 政府の答弁の続きを簡単にやつてもらいたい。
  96. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 午前中の中崎委員の御質疑に対する政府の答弁の続きを簡単に願いたいと存じます。
  97. 原純夫

    ○原政府委員 たいへん時間をとりまして申訳ございません。なるべく簡単に申し上げます。  午前中申し上げましたこと、つまり企業組合というものは、本来個人の企業が個人性を没却して、法人なつてしまうというものであるけれども、それは常識的に考えて、九割九分むずかしいという実態のものである。しかしながら企業組合という法人格を持つている。それから税務は事柄の実態従つて課税しないならば、課税の適正公平を害する。従つて企業組合が実質的に個人で取引をしているという場合には、そういうものとして課税しなければならない。ところが一応法人格を持つておるために、その挙証ということを税務が負わされている。その意味で、挙証責任論として不当なハンデイキヤツプであるということ。そうしてその挙証の事務が非常に手間取るということを筋として申し上げまして、実例として、第一に九州の共栄企業組合の例をまず申し上げたわけであります。  なお実例を二つ三つ追加して申し上げさせていただきまして、そのあとでこれらのうち仮装行為と見られますもの、ないし不当な事態がいろいろ起きておりますので、これらを簡単にまとめて申し上げたいと思います。  実例の第二は、企業組合の一番中心的な地域であります大阪国税局管内のことについて申し上げたいと思うのであります。大阪管内は企業組合が一番発達をしておるところであります。もちろん健全な企業組合もたくさんあるのでありまして、大部分は是認いたしておりますが、その中で、午前中に申しました共栄企業組合ほど極端でありませんが、あれに準ずるような形で指導され、また活動されておる組合がいろいろございます。かようなわけで、けさほど申し上げましたように、二十五年分の判定につきましては、二十六年の春とても一般の仕事を害さずにはできないというので延ばして年度を越してからやりました。そのために二十六年度の仕事が大分阻害されたということがございますが、その上に判定をいたしました結果、個人の課税をするという御通知をしてやりましたものについて、相当数が再調査請求、さらに審査、訴訟という段階まで進んでおります。これがたとえば所得の額の大小というようなことで、こちらが間違つておる、あるいは疑問が大きいということですとまことに重大しごくの問題であるのでありますが、けさほど申し上げましたように、法人と個人との中間的な線を縫つていろいろくふうをされるというような組合におきましては、訴訟の段階まで進みましても、いろいろ組合が仮装的な帳簿のつけ方、あるいは法律関係の構成をされる、それを破つてみるというような形の訴訟になるわけであります。これは冒頭に申し上げました常識的な判断として、個人であると判定するのが九割九分正しいというようなことから考えると、非常にむだなことをやつているのじやないかとつくづく考えるわけであります。ただいまそういう形、そういう意味で訴訟になつておりますのは八組合組合員数二百六十九名ございます。裁判所もそういう中間的な地帯の問題でありますために、非常にむずかしいような感じを受けておられるようであります。これはただいま訴訟手続進行中のものであります。  それからその次の例は、広島管内においてでありますが、その一つは松江地区におきまする企業組合の状況であります。これは早くからできまして、各業種ごと組合であつたのでありますが、これがやはりけさほど申しました政治的な角度の非常に強いものでありまして、調査について参りましてもなかなか調査ができない。つまり人を動員してこれを拒否されるという結果、これも二十六年五月でございますが、国税犯則取締法上の強制調査権を発動いたしまして調査いたしましたが、この際はそういう意味組合員を集めて妨害されるという件が非常に多くて、判定、調査その他の際の妨害二十三件に及んでおります。妨害に加わられた者は約二百人に及んでおります。そのうち特に悪質なもの八件につきましては、公務執行妨害違反として告訴いたしておるというような状況でございます。ところが、そういう政治的な強い角度をさらにはつきり証明することになると思うのでありますが、この地区の組合は、そうやつて個人として課税するという通知を受けたのでありますが、それに対して訴訟まで持ち込まれまして、訴訟中であるからというので納税を拒否される。さらにそれでは株式会社をつくろうというので、大和株式会社というものを元の企業組合員を組合されましてつくられた。そうして企業組合という形態ではありませんが、株式会社の形態で同様な企図を貫こうとしおられる。だんだん税務も、そういうのに一々挙証責任をとらされますると、どろ沼にすつかりはまつて行くというような情勢になつて来ておるわけであります。それと、広島管内におきまして……。
  98. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 そういう例示は資料で出していただきます。質疑によつてお答えを願います。
  99. 原純夫

    ○原政府委員 それでは最後につけ加えますが、企業組合にそうやつて個人課税するということを通知いたしますと、株式会社になつたり有限会社になつたりというような形で、同様なことをやられる例がかなり全国的に出て参つております。そのような事態で、事柄は企業組合だけの問題にとどまらず、法案にお願いしてあります通り法人一般に及んでおるということを最後に申し上げたいと思います。  そこで、これらを概括する意味——顕著なる障害、公務執行妨害等のことはただいま申し上げる間に申し上げたので、いかなる仮装と申しますか、法律的なからくりをやつているか、その例を二、三申し上げまして私の御説明を終りたいと思います。法人、個人の中間的な地帯にあつてあらゆるくふうをこらされるというのが実情なのでありますが、たとえて申しますと、企業組合ができて組合に加入するという場合には、事業組合がやる、従つて商品も債権債務も全部引継ぐ、現金も引継ぐということでなければいけないわけなのであります。それから組合から脱退される際には、その事業所にある商品、現金、債権債務というものはすつかり清算して、組合との間にけりをつけなければいけないわけなのであります。ところが率直に申しまして冒頭申しましたごとく、法人のからをかぶつておるけれども、個人であるという実態がどうしてもぬぐいされないはずのものでありますので、こういう際の実態は、一応法人なつた、従つて法人の資産とするという形を何らかのかつこうでふむが、それは一応形をつくるだけだというような事例が多いというよりは、ほとんどそういうことであります。たとえばたなおろし資産等を組合のものにするという場合には、一応それが幾らという評価をして、組合に現金出資をしたような形をとる、組合が現金出資を受けた現金を即座に組合員に運転資金として交付する、そうしてその運転資金でたなおろし資産を買つたというような構成をとられておるのですが、実際には現金は入つておらぬというような形をとる。それから現金あたりにしましても、組合に持つてつて納めるというようなことはせずに、そのまま借入れだということで整理をしている。脱退の際には、今申し上げましたように、そのときのたなおろしが幾ら、債権債務が幾らというようなことを整理しなければいけないのですが、大体におきまして、脱退の際もそのまま脱退して、そのときにあつたものは個人のものであるということにしてしまつて、別段の整理を行わないというのがほとんど例外なく全部の場合であります。  第二に給料の支払い、これは企業組合はすつかり法人なつてしまつて、あとは組合員は給料の支払いを受ける、もちろん出資に対する割もどしは別でありますが、給料の支払いは大部分の所得源になるわけでありますが、その際個人性を没却して、単なる企業所得者として給料をもらうというような実態になるかならぬかというあたりが、ここに一番はつきり出るわけでありますが、この給料の支払いに非常に事務の輻湊が多いのであります。たとえば組合の方でだれ某に渡すという小切手を切ります。その小切手は持参人払いで、どこの口座でも振り込めるものでありますから、すぐ右から左に組合の口座に振り込んで、それを元にもどしてしまう。組合員は毎日売つた売上げの中から生計費を支弁して行くというようなことが行われる。これらはまだ右から左に組合が小切手を切つて入れるという単純なおかしい例でありますが、もつと複雑なものになりますと、甲という人と乙という人と二人の組合員考えます。甲の人は入る前に月々五万円の所得があつた、乙の人は月々一万円しかなかつたというような場合に、やはり個人性が没却し得ないということは、甲の人にはやはり入つても五万円の所得があるようにしようということになるのであります。そうしますと、それを五万円出したのではこれは個人じやないかと言われますので、甲の人には、たとえば二万円なら二万円という小切手を切るわけでありますが、残りの三万円につきましては、乙の人は一万円しかないから、これにはもう一万円やつたことにしてもいいというので、乙の人あての一万円の小切手を切りまして、この一万円の小切手を甲の人に渡すのです。甲の人はそれを持つてつて自分のところに振り込む。これは小切手は持参人払いですから、一向さしつかえなくそれができる。従いまして、甲の人はそれで三万円になりますが、なお足らぬから、丙、丁というようなところからその名前の小切手をもらつて振り込むというのは、これは事実においてあるのであります。そういう仮装の例はその他いろいろあるのでありますが、あまり申し上げませんで、そういうような非常にばかげたことが行われておるということを申し上げまして、簡単にということですからとじたいと思うのでありますが、これらの場合に、これを探さなければ個人判定ができないという挙証責任のわれわれにかかつておる重さ、これは非常に不合理なものでありまして、今のような場合は、それを探しますのが非常にむずかしいのであります。われわれは非常な苦労をして——ここにも書類を持つて来ておりますが、一件書類が非常にたくさんになるというような状態で苦労しておりますので、ぜひこの改正規定は、その趣旨通りますようにお願いいたしたい。  最後に申し上げますが、私、腹の底をかなりすぱつと申し上げてしまつたようなきらいがあるのでありますが、しかし一方で、中小企業企業組合という形態によつて共同の実をあげ、金融的な面においては少くともプラスが出るというような意味で伸ばしたいという企業庁の御方針に対しては、十分われわれ在来から御協力しております。われわれの通達は、必ず冒頭にそういう趣旨のことをうたつておりまするし、今後その関係改正規定ができます場合でも、厳重にそういうふうにいたすということは、けさ以来いろいろ御問答のありました通りであります。なお、今まであります企業組合にいたしましても、その大部分について是認をいたしております。先日公聴会において参考人から発言がありましたのは、企業組合が、三分の一にも五分の一にも減つており、ほとんど大部分が否認であるというふうな発言でありましたが、事実はそうでない、反対でありまして、二十六年分の課税についての判定——二十七年分の課税は、今確定申告期でありますから、まだ判定いたしておりませんが、二十六年分の数字を申し上げますと、組合数八千七百、組合員数九万三千、このうち是認いたしましたものが組合数六千二百、組合員数六万五千で、それぞれ七割三分、七割の割合であります。なお爾余のものは全部否認したというのではなくて、今までるる申し上げましたような困難のために、書類が片づかずに未決になつているものが相当ございます。その数が約六%ございますので、否認いたしましたものは割合にして組合数で二一%、組合員数で二〇%というようなことになつておりまして、企業組合が健全な意味で伸びて参るということには、われわれも全幅の御協力を惜しまない態度であるということを最後に申し上げまして、私の御説明を終りたいと思います。
  100. 中崎敏

    ○中崎委員 いろいろ御説明がありまして、国税庁としては非常に苦心をしておられる面もあるということを認めるのでありますが、実際上の問題といたしまして、ことに九州の共栄企業のごとく、程度を越えた悪質とでも考えられるようなものにつきましての措置等は、これは国税犯則取締法などにも照して行かれるでしようが、実際においてこういう企業組合というものはいつでもつくれる。現実にはまたそういうものが存在している。そうしてその組合を査定する場合においては、どうしてもこれは十分の調査をされる必要がある。そこで、その組合が今のように相当非協力的であるというような場合には苦心をされる。いずれにしても調べなければならぬ。しかもこれが場合によれば全部にわたつて調べなければならぬ場合も起つて来ると思う。ところが今度は、そういうような組合をつくらない場合には、個人としての営業になります。そうすると、調べる数からいえば、先ほどのあなたの説明によれば大体三割程度一応調査すると言われたのだが、これは組合でない個々の場合においては、三十名ならば三十名全部調べなければならぬ。それだけの手数はやはりいるのだから、組合の数は少いかもしれないけれども、結局それに配属されるところの人というものは、やはりある程度個人と同じような感覚で行けば、——三十名の者が一つの組合であるならば、ただ組合一つなるがゆえに配属される人は少いが、これがばらばらに三十名もおる場合には、やはり一人では追つつかないというようなことにもなるのだから、ただ単なる一単位だというように考えて、構成員の数ということをあまり考えないで行かれるということはどうかと思う。それからもう一つは、今問題があつたから、今度はこれを否認されても、推定されて個々にやられる場合においては、組合の中における個々の企業体を今度は個々にやはり調べて行かなければならぬ。そういう手数から見れば、あまりどつちがどつちとも言えないのではないか。ただ集団的であるためには、一つの強い力が抬頭して来るということは言えるのでありますけれども組合の形体を持つておれば、やはり一つの組織体だからその困難も伴う。しかもそれが、あなたの方では実質的に組合の性格を持つていないという場合には否認されて、個々に現実にはかけて来ておられるのだから、そういう面から見れば、ただ推定して立証責任を相手に押しつけるというだけの違いであつて、実際には税金をかけることは重大問題だから、個々にわたつて慎重にやらなければならぬという点については何らかわりはないのではないか。根本的にいえば、そういう非合法的というか、非協力的な悪質の企業組合をどうして締め出すような方法をするかということは、むしろ企業庁の側において根本的に検討されなければならぬ問題であつて、むしろ税法上こういう立証責任とか、あるいはその結果から、必然的に個人の所得とみなすというような、結果的な問題だけを安易に考えておられるということは何ら問題の解決にならないのではないか、こういうふうに私は考えるが、その点どうでしよう。
  101. 平田敬一郎

    平田政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、先ほどから例をあげて説明いたしておりまするように、非常な問題が起きておりまして、これを適正に片づけるのに非常な手数だけではない、非常な紛争まで巻き起しておるような状態でございます。こういう規定を設けますと、その際における解決がよほど早いのではないかということがまず第一に考えられます。それからこういう規定を設けますと、勢い基準等につきましても、さらに一層私どもはつきりいたしたいと思いまして、今後つくつていただきます場合におきましては、なるべくその基準に適合するものをつくつてもらうことにいたしまして、適合しないものにつきましては、おのずから業界の方におきましても、とてもだめだという見通しが早くつきまして、やめるのはやめる。これに反しまして、あくまでも企業組合としての実態を備える資格のあるようなものにつきましては、逆に安心してできる、こういうことになるかと思いますが、そういう点につきましても、先ほど中小企業庁と申合せをいたしております事項の中にも入れておりますが、私ども中小企業庁にもお願いいたしまして、ほんとうに健全な、妥当な組合のあるべき姿をはつきり描いてもらいまして、なるべくその方向に持つて行く。そういう方向に行きますると、課税の面におきましても、おのずからトラブルが少くなつて来るし、それからほんとうにまじめないい企業組合は逆に伸びて来る。それで非常にあいまいな、不完全な組合があるために、かえつておもしろくないというような事態は、むしろ改善されるのではないか。むしろ気持といたしましては、そのような結果になりますように、こういう規定運用して行きたい。従いまして運用につきましては、中小企業庁とも緊密な連絡をとりまして、実行に移して参りたいと思つているのでございます。大体課税の方針につきまして、あまり各省と打合せてやるというようなことは、本来から行きますと筋が少し違いますので、あまりやつていないのでございますが、この問題は特に今御指摘のような問題があることを考慮いたしまして、中小企業庁との間におきましても、厳重な申合せをいたしまして、実は運用に注意して行こうということでございますので、その点はあまり御心配はいらないのではないか。結果におきましては、むしろ望ましい結果が生れ得るのではないか。私どもの気持といたしましては、そういう結果に持つて行きたいということで運用したいと思つておる次第でございますので、御了承願いたいと思います。
  102. 久保田鶴松

    ○久保田委員 ちよつと関連して……。先ほど原さんの御意見を聞いておりますと、これは国税庁方面も非常にお気の毒だと思う。私はその意味において、幸い岡田さんがいらつしやいますから、岡田さんにお伺いしたいのですが、これは組合法の法の不備の結果がこういうことになつている。問題は私はそこにあると思う。この問題の解決は、企業庁長官岡田さん自身がなされなければならぬ。この組合法の法の欠陥を、税の面において解決しようとするところに無理がある。そうお思いになりませんか。私はこの問題を岡田さんが解決されることによつて解決されると思うのです。それはどうお考えなつておりますか、お伺いしたい。
  103. 岡田秀男

    岡田(秀)政府委員 今朝来申し上げておりますように、中小企業行政の根幹の法律として、中小企業等協同組合法というものがありまして、その中に企業組合が入つております。経済情勢の変化が独立後相当強く現われて来ておりますので、これに適合せしめますように、その基本法の改正も慎重に考えて行かなければならぬ時期が来ておる、こう考えておりますので、今日ここで論議されておりますような問題も、その改正の際には十分考えて、あわせて研究して行きたい、かように考えておるのであります。
  104. 久保田鶴松

    ○久保田委員 そこで私はもう一つお伺いしたいのですが、共栄企業組合の話がありました。この共栄企業組合等の問題につきましても、非常によろしくない組合があるというような原さんの御意見でございましたが、私は岡田さんが、これはよくないというふうにお考えなつた場合に、この組合法の改正をなさいますことによつて、これはみな解散させることができる。その解散はそのときどきによつて解散させて行くことができるようになつて来るのでありまして、それをなさない場合においては、今度は大きな問題が次に起きて来るのであります。その大きな問題と申しますのは、登録いたしまして法人として認められたが、一年後において税務署がこれを認めなかつたというような場合、これはたいへんなことになるのであります。ですから私は、一年後において、この問題で法人として認めるとか認めないとかいうことの問題の起きない先に、岡田さんどうですか、あなたは元気を出しで、この法の改正をぜひやることに腹をおきめになりませんでしようか。そうするとここで論議する必要はない、国税庁の人も御苦労をなさらぬでもいい、また成績のよくない企業組合等もなくなつてしまつて、解散してしまうことになる。ことにまじめな企業組合というものは迷惑をしない。あわてて企業組合企業組合と申されますけれども、これは企業組合でなくて、いわゆる株式会社、あるいは合名会社、有限会社、協同組合——自由党の人たちの中にも相当この企業組合関係しておられる。私は大阪ですが、大阪の八尾においても、自由党の幹事をしておられる林さんという人が、中河内企業組合理事長で、これは中河内においては一番大きな企業組合です。だからそういう意味岡田さん、思い切つて返答してもらいたい、どうなんです。
  105. 岡田秀男

    岡田(秀)政府委員 現在の法律建前におきましては、組合にいたしましても株式会社にいたしましても、許可制になつておらないのであります。株式会社も許可制にするというようなところまで進むことが妥当かどうか、あるいは法人の中味を許可制にいたしまして、その後の法人の変化を追いかけて行きますための検査と申しますか、監督と申しますか、さようなところまで政府が立ち入ることがよろしいかよろしくないか、相当慎重に検討を加えねばならぬ問題だと思いますので、今軽々にお答えいたしかねると思います。
  106. 久保田鶴松

    ○久保田委員 愛知さん、あなたにちよつと私は伺いたいのです。この間の三日でしたか、共立講堂において全国の企業者が集まられまして、大会を持たれた。このときにあなたに祝辞を述べに来てもらいたいということを組合の幹部の方々がお願いに行つた。ところがそのときあなたのおつしやつたのには、これは改進党さんと社会党さんにお願いしなさい、これはきまつておるのだよ、こういうようにあなたは話された。きまつおるなら、われわれこの問題、この法案を審議するのに考えなければならぬ、きまつておりますのか、どうなんです。われわれはここで慎重に審議いたしました結果、決定するのです。それを政府がもうきまつておる。改進党さんと社会党さん、さんという言葉をおつけになつたそうでありますが、改進党さんと社会党さんにお願いしなさい、こういうことをあなたはおつしやつたということですが、どういう考えでおつしやつたか。
  107. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 いわゆる日中連の全国大会が開催されたことは、私も承知いたしております。それから、それに先だつて二、三の代表の方々が大蔵大臣の出席を求めるということで、私に伝達を依頼に来られたということも事実でございます。それからその大会の宣言、決議案というものも、その際に拝見いたしました。これは企業組合ということが表面にはつきりうたつてあつたかどうかは私は記憶がございませんが、その中に羅列してありました数項目は、いずれも現在政府として提案いたしておりますところの法律案、あるいはその他のものに対する絶対反対という言葉が書いてあるのでありますから、私は政府案として提出をした者の立場として、私が出席をしても、これはつるし上げを受けるだけであつて、現在国会でいろいろたくさんの法律案を持つておりますので、その審議に忙しいから、私自身としては出席はできかねますという趣旨のことをお答えしたことは、記憶いたしております。
  108. 久保田鶴松

    ○久保田委員 愛知さん、あなたそうおつしやいますが、この間の大会には各党が祝辞を述べに行かれたのです。社会党も改進党も、それから自由党からは宇都宮徳馬さんという人が、自由党もこの案には絶対反対ですと、大きな声でおつしやつた。そういうようなことをおつしやつたのに、今のあなたの考え方は、それは間違つておりはせぬかと私は思いますが、そこはどうなんですか。
  109. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 私の尊敬する久保田さんから、こういう議場外の私話に類することを問題にされることは、私としては非常に遺憾に思うのでありますが、しかし私の記憶をたどつて、今お答えした通りであります。もしこれらの法律案にどうしても修正を加えなければならぬということであれば、私の信ずるところによれば、これは政府側から自分が出しておいて、しかもその修正に賛成をするということは、私は当然できないと思うのであります。これは立場をかえてお考えになれば、おのずから明瞭だと思います。
  110. 久保田鶴松

    ○久保田委員 愛知さんはそうおつしやいますが……。
  111. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 久保田さん、関連ですからお許ししたのですが、どうも関連をはずれておるように思います。
  112. 久保田鶴松

    ○久保田委員 いや関連して聞いているんですよ。
  113. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 それではもう一ぺんだけ許します。
  114. 久保田鶴松

    ○久保田委員 愛知さんはそうおつしやいますが、これはこの法案を審議する上において関連している。企業組合の問題、協同組合の問題、あるいは同族会社の問題、そして全国の企業者が集まつて大会を持たれたときの問題と関連して、自由党代表とされて宇都宮徳馬さんもこうおつしやつた。それに対するあなたの考え方が的はずれであつたということで、私はこの法案を審議する上において、あんたの考えはどうか、こうただしておるのです。私は、私があなたに尋ねていることが間違つているとは決して思うていない。あなたはそうおつしやいますが、いろいろ私は尋ねたいことがありますが、今中崎さんの質問に対する関連質問をしたのでありますから、またあとでいろいろお伺いすることにいたします。
  115. 中崎敏

    ○中崎委員 それでは本筋に返りまして……。
  116. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 中崎参員にお尋ねしますが、もう質疑はお済みになつたんじやなかつたのですか。
  117. 中崎敏

    ○中崎委員 関連質問で横へ持つて行かれてしまつたんですよ。
  118. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 ああそうですか。それではどうぞ。
  119. 中崎敏

    ○中崎委員 そこで終戦直後から、ことに農業課税等に対しまして、一部の人の使族だと思うのでありますが、相当はげしい税金闘争といいますか、不協力といいますか知りませんが、そういう形が全国至るところに起つておる。それがだんだんと例の反税運動に対する取締り等の法規なんかもできて来たりして、あるいは世の中も漸次おちついて来たのかもしれませんし、農業課税が適正になつたという点もあるでありましようが、いずれにしても今日においては、ほとんど心配するほどの段階でない農業課税にもなつて来ておると思うのであります。そこでこの企業組合も、終戦後ああして法律ができてでき上つたようなものの、きわめて過渡期間におけるところの一面においては誤つた指導、また本人たちも、何だか税金がまるつきりなくなるような気持でやつたかとも思いますが、そうした過渡的の制度であるがために、まだこれが十分に徹底してないという点もあると思うのです。そこで、ごく極端に行き過ぎたようなものは、例の反税闘争に対する規定は明らかにこれに当てはまるので、それによつて十分にお取締りをされて、そうしてまだこれから育つべきものであり、あるいはまた不十分であるが、これからの指導いかんによつてはうまく行くというものも相当ありますので、もう少し長い目で見てやるという一つの考え方が持てないものかということを、ひとつお聞きしてみたいのであります。
  120. 平田敬一郎

    平田政府委員 農業課税が一時問題になりまして、最近は大分かわつて来ているというお話でございますが、それにつきまして、反税的な闘争がなるほどその部面につきましては大分なくなりまして、最近はよほどよくなりつつあるということも、私ども承知いたしております。でございますが、この企業組合に関連した悪質のもの——これはいい組合を対象にしているわけではございません。悪質のものというのは、そういう経験を経て、非常な知能をしぼつて、さらにしぼつた上で法律をたくみに利用いたしまして、さらに一層深刻な闘争をする、こういう段階にその問題が来ているのではないか。そこでそれに対しましては、やはりそれに対処する法律的な規定を整備していただきまして、適切な結果を得るようにしていただきたい。運用趣旨につきましては、たびたび繰返して申し上げておりまするようなことは、これは私ども十二分に注意するつもりでおりますので、どうぞその辺よろしくお願いいたしたいと思う次第でございます。
  121. 中崎敏

    ○中崎委員 まだこれに関連する問題がたくさんあるのであります。そのほか税全般について、あるいは物品税とか法人税とか、あるいは法律運用面にも相当聞かなければならぬ問題がたくさんあるのでありますが、きようは時間の都合もあつて、後日に質問を留保して、これで一応やめておきます。
  122. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 坊秀男君。
  123. 坊秀男

    ○坊委員 私は、予算の方もすでに本院を通過して参議院に送られておるというようなことから考えまして、私も先般本委員会において、税制改正に伴う財政なり金融の根本問題に触れて質問いたしまして、時間がかかつたために留保した問題が大分あるのでございますが、今日はそういうことを質問申し上げるのも適当でないと思いますで、きわめて技術的な問題について二、三点お伺いしたいと思います。  実は昨日法人税の交際費の問題について資料が配付せられて、すぐまた回収されたのでございますが、この法人税の交際費を記入する標準といたしまして、この資料によれば、まず業種別、それから資本金の高、この業種と資本金とを縦と横にからませて、売上高に対して何割ということを一応の交際費の限度としておるようでございまして、そういう方針で行かれるつもりでございますか、主税局長にお伺いいたします。
  124. 渡辺喜久造

    ○渡辺(喜)政府委員 その点につきましては、実は一応主税局の試案というものを、資料ということでなくつくつてみたのでありますが、大蔵省の中で多少まだ論議がございますので、本日中ぐらいにその論議をまとめまして、一応資料として提出いたしたい、かように考えております。大体の考え方といたしましては、やはり業種を考えまして、特殊な業種についてはやはりある程度高い交際費が使われておるということは、一つの実績にもございますので、これをそのまま一応考慮に入れまして、特殊な業種についての異なつた割合をつくるということは、必要じやないかということは考えております。それからやはりその場合において基準になるものは、取引金高をとるのが一番いいのじやないかということを今結論として得ております。資本金額とか利益金額とか、こういうようなものを一応のものさしの基準にとつてみたのでございますが、これでは非常に荒らげておりまして、ものさしとしてとても使いようがないというので、やはり取引額をとるのが一番いいのじやないか。それからもう一つの考え方としては、資本をとるのもよいかと思いますが、もしそうすると、大きな会社と小さな会社の場合におきましては、小さな会社の方が大きな会社よりも、少くとも取引金額を基準にとりますと、それに対して高い率の交際費を必要とするという実情があるようでございまして、これは、その事実は事実としてやはり認めて行くべきじやないか、かように考えております。
  125. 坊秀男

    ○坊委員 ただいまの主税局長の御答弁によりまして、大体お考えの骨組みがわかつたのでございますが、まだこまかいところが決定していないようでございます。賢明なる主税局長におかれては、おそらく万遺漏なきものをおつくりになるだろうと思いますが、ただいまの局長の言われました点からだけでは非常に遺憾な点が多いだろう。たとえば同一の業種におきましても、事業を創業するというような場合における交際費というものは、この事業がすでに軌道に乗つて進んでおるという場合とは、これは相当違うだろう。また一般の経済情勢の波に翻弄せられまして、ある特定の事業がある時期において非常な不況に陥るといつた場合に、私はこういつた場合にこそ交際費というものがその事業にとつては非常に重要なものである、従つて多くの交際費を必要とする。この交際費を否認せられるということは、この事業にとりましては、これはまつたく致命的のものであると思います。政府が交際費に対して一線を画するということは、とりもなおさず資本の蓄積の一助たらしめるものだろうと思うのですが、こういうことでこの交際費の限度の算定の仕方を誤るならば、私は事業が非常に不振に陥つて来ると思う。かえつてこれらの事業を不振に陥らしめることによつて、資本の蓄積どころじやない、むしろ逆行して行くような結果を生ずる。そこでこの限度をきめるにあたりましては、もつと慎重にいろんな点から観察していただきたい。かように思つておるのでございますが、この点をひとつお答え願いたい。
  126. 渡辺喜久造

    ○渡辺(喜)政府委員 限度の決定につきましては、いろいろな角度から慎重を期さなければならないということにつきましては、われわれも全然同じような考え方を持つております。企業を開設する場合と、すでに軌道へ乗つた企業との間では相当違うじやないだろうか、これもそういう傾向があることを私も思います。それで資本の大きなものと小さなものといいますか、そういうようなところにそういう姿が、全部が全部とは思いませんが、相当現われて来ることも答え得るのじやないか。従いまして、資本の小さなものについての率は大きくする必要があろう、これは先ほどお話したところに入つているだろうと思います。  それから率のきめ方でございますが、これはここまでは使つていいという考え方ではなくて、これ以上使うと損金に算入されませんといつた意味です。従いまして、たとえば平均的な数字が出ました場合におきましては、その平均的な数字をそのままとるという場合におきましては、理論的には半分ぐらいがそれに引つかかるわけでございますから、それに対しまして相当のやはりアローアンスを見まして、そうして企業としまして、むしろ相当特に大きく使うものの場合においてだけ、その率をはみ出すことがあるべしといつたような感覚でもつて率をきめて行くという考え方をとつて行きたい、かように考えております。
  127. 坊秀男

    ○坊委員 資本の大小によつて、小さい資本についてはいわゆる優遇するというようなことによつて、創業時代の交際費というようなものを緩和するということがやや加味できるのじやないかというような局長の御答弁の趣旨かのように今承つたのでございますが、私はどうもそういうことでは緩和できない、創業のときもまたしかりでございますが、あるいは事業を拡張して行くといつたような場合にも当るかと思います。小さい資本を優遇しているからということではちよつと解決がつく問題ではないと思います。その点をお伺いしたいと思います。
  128. 渡辺喜久造

    ○渡辺(喜)政府委員 お話のように、創業のときという場合におきましては、そう一ぺんに最初から大きな資本で始めるわけでもあるまいということを、もし申すことが許されるとすれば、資本の小さなものについてある程度優遇するというものと、創業のときの交際費のいる場合の分とがある程度一致し得るのではないかという意味で先ほどのことを申し上げた次第でございます。交際費のいる、いらないの問題につきましては、やはり新しい事業をしようとかなんとかしますと、おのずからそこに違いが出て来るのではないかというふうに思います。ただ広告宣伝費のようなもの、これがおそらくもつと一番大きく響く問題だと思いますが、この点につきましては、もちろん交際費とは全然別途に考えておりますので、ある程度ゆとりのある率をつくるということによりまして、その間に大体入り込み得るようなところに率を引いてみたい、かように考えております。
  129. 坊秀男

    ○坊委員 局長が今後この案を固めて行くに際しまして、資本と業種ということを大筋としてきめて行かれるのでありましようが、特例として——ここで私はこの特例をはつきり申し上げませんが、但し必要と認める場合にはどうこうというようなことをおきめになる意思はありませんか。
  130. 渡辺喜久造

    ○渡辺(喜)政府委員 現在すぐこういう場合の特例を認めようという考え方は、実は成案としては持つておりません。ただ何かとても無理な場合という事例が出て参りましたときにおきまして、その場合にも絶対に特例は認めないのだというほどの固い気持も実は持つておりません。何かそういつたような事態で、どうしても特例を認めなければならぬという事態が出ますれば、これは考えてみたい、かように思つております。
  131. 坊秀男

    ○坊委員 ただいまの御答弁によりまして、やや弾力を持たせるというようなお話でございますので、私はこの問題はこれで打切ります。  それに引続きまして、実は今ちようど申告所得税の申告のまつ最中になつておるのでございますが、形の上ではなるほど申告納税になつておるけれども税務署では全然これは申告納税にあらずして、お前の今年の所得税は幾らだというふうに、いわゆる指導と申しますか、そういうようなことで申告納税の実が上つていない、実は自分はこれこれの申告税を税務署から申し渡されたというケースが非常に多いものでございますから、実は私はきのうある都内の税務署へ行つて聞いて来たのでございますが、この都内の税務署におきましては、申告納税者の数が七千、その七千の中で実際収支の帳面をつけておるのは三百五十人、ちようど五%に当ります。それから収入金だけを帳面につけて——これも損金を含んだ全部の収入金でございますが、これだけを帳面につけておるのが千五十人ある。そこで千五十人と三百五十人がどうにかこうにか帳面らしき帳面があるらしい。あとはまるきり帳面もなければ何もない。こういうような者に対しては、申告しろといつたところで無理だから、やむを得ず税務署において指導という形で、お前の方は幾らというふうにやつておるのだという話を聞きまして、私はなるほどと思いました。そこで、申告納税の建前をとつておるのに申告じやないじやないかという非難は当らぬものと思いまして、これではやむを得ないということを私は考えたのでございます。この税務署は、七千人の中でわずかに千五百人やそこいらがどうにかこうにか帳面を持つておるというような状態なんですが、大体において日本の各税務署における数字はこれくらいのものなんですか、ひとつお伺いしたい。
  132. 平田敬一郎

    平田政府委員 こまかい数字は、必要でございますれば後ほど取調べて申し上げますが、大体の傾向から申しますと、営業者のうち、今青色申告しておりますのが約一割でございます。青色申告をしておられる方は、まだ不完全な方もおありですが、大体においてとにかく記帳しておられる。そのほかに、今坊さんがお話のように、青色申告に関係なく記帳しておられる方と、記帳の程度が売上げか仕入れかどちらかだけしか記帳していないという方は、ある程度いられるかと思いますが、どちらかと申しますと、現状では実に記帳している方が少い。これはもう事実でございまして、そこに実は私ども所得税行政の一番の難点と申しますか、苦心と申しますか、そういうことを感じておるわけでございます。今後どういうふうに持つて行くか、私どもいろいろ考えておるのでございますが、お尋ねが大体の状況ということでございますので、それだけをまずお答え申し上げておきます。
  133. 坊秀男

    ○坊委員 ただいまの平田長官の御答弁によりますれば、申告納税をどうして行くかということについて非常に悩んでおられるというお話でございますが、実際その客観的情勢が、七千人の中でわずかに千人余りの者が帳面をつけており、その他の者については申告させるのもしようがない、そこで実質的には賦課課税といつたようなことが行われておるということは、私は日本において申告納税制度をとつたのは、ちようどアメリカのキヤデラツクのいい自動車を持つて来ていなかのたんぼ道を走らしておるのと同じじやないかと思う。こういうことで、とても申告納税によつて公正にしてかつたくさんの税金を今後とつて行くということはむずかしいのじやないかと私は考えるのでございますが、この申告納税制度について、根本的に改善して行くという法制があれば非常にけつこうでございまして、局長や長官から承りたいのでございますが、もしそれがなかなかできないということならば、根本的にこの制度を改めなければならないのじやないか、かように私は思うのでございますが、いかがですか。
  134. 平田敬一郎

    平田政府委員 営業者を中心にしまする記帳の状況が今申し上げたような状況でございますので、いずれにいたしましても、この所得税がなかなかむずかしいものになつておる。課税方式はどちらかと申しますと、その次の問題だと実は考えております。賦課課税いたすにいたしましても、とにかく政府におきまして、何らかの基準で調べまして、それで査定するということになるわけでございます。また申告納税の場合におきましても、結局申告してもらいまして、政府の調査と合わぬ場合には、政府で指導したりして決定する、こういう建前なつておるわけでございます。問題は、いずれにしましても、納税者の所得の実態がどうすればわかるようになるかということで、それがないとなかなか簡単なことではない。そこで私どもとしましては、やはり基本的には青色申告の制度をできるだけ伸ばすようにしたい。これは、私は率直に申し上げまして、そう短年月の間にうまく行くとは思つておりません。アメリカの例等にしましても、最初は税法で記帳義務を命じまして、記帳しておらなかつた者に対しては、認定決定をした場合に、今度は証拠を提出する義務を相手に与えようというような規定を設けまして、だんだん育てて来ておるような状況でありまして、それにいたしましても相当な年月を要して、今日ほとんど営業者はつけておるというような状況でありますので、いわんやわが国の場合におきましては、相当な時間がかかると思います。しかし、私も先般大分現場をまわつてみたのでありますが、記帳は慣習上、最初つけ出しますと、案外営業者の方はだんだんつけるというような方向に行き得るのではないか。ただいかにも最初からむずかしい記帳様式を強制いたしますために、初めのうちはなかなかとりつかないのですが、一旦とつついてもらいますれば、案外これは普及するという方向に行き得るのではないかと思います。そこで青色申告につきましても、記載方法はこの際思い切つてひとつ徹底的に簡素化してみたい。それで先般申し上げましたように、複式簿記——完全な複式簿記ではないのでありますが、現在では複式簿記に近い線を基準にいたしておるのでありますが、これを小売業、農業等につきましてはむしろ単式簿記まで入れまして、記載事項をできるだけ簡単にいたしまして、ともかく記帳の習慣をつけてもらう。そうしますと、おのずから納税者はやはり完全なものを求めて行く、今までの実績からいつて大体そういうことになるということを多くの人から承つておりますので、そのようなことになりますれば非常によいのじやないか。これはひとり課税の見地からだけではないので、よい方向じやないか。金融の面からいたしましても、経営の合理化の面から行きましても、いずれにしろ帳面なくして商売をやるということは、実際から考えましてほんとうの商売ができ得るかどうか問題なくらいでありますので、方向がよい方向に行くのだつたら、課税の方面におきましても、そういう方向に行くように援助し指導して行きますれば、ある程度の年月を経れば相当なところまで行き得るのではないか。それまではやむを得ませんので、いろいろな外形的な事実を調べてみます。帳面がなくても全然調べができないというわけのものでもないことは御承知通りでありまして、完全な調べはできませんでも、外形的な事実、あるいは売上げにいたしましても、短期間の売上げを推定で調べるということは、これまた比較的容易でありますし、財産の増減、生活費の状況その他いろいろな間接的な事実を調べまして、それで適正な所得を推定して調べる、こういうようなやり方をやつております。この調べ方にもなかなか技術がいりまして、やはり相当うまく行きつつある。実はわれわれの部内にも、納税者は記帳はしておらなくとも自分の所得はわかるだろうという説と、記帳しておらなかつたらてんでわからないだろうというような説と二説あるくらいのなかなかややこしい問題でございますが、納税者は正確な記帳をしておらなくとも大体のところはわかる。従いまして過渡期におきましては、そういう面からできるだけ正しい申告をしてもらう。また役所におきましても、そういうような事実をよく調べまして、それによりまして御趣旨通り申告指導というようなものをいたしておる次第でございますが、理想から申しますと、申告期限前の申告指導は漸次少くいたしまして、具体的な申告指導をしなくとも、相当な申告が出まして、あとで税務署が調べまして正しいところに持つて行く、こういう方向にある程度の年月をかけまして持つて行つたらどうか。これは私はまだここしばらくやつてみた上で、坊さんのような課税方式等についての反省もしてみたらどうか。今のところはやはり申告納税制度をどうすれば完全なものにし得るか、そういう方向に漸次改善してみたいと思つておるのであります。
  135. 坊秀男

    ○坊委員 平田長官の御答弁では、当分この制度でもつてつてみてというお話でございますが、そういうことから行きますと、どうしても私は、長官も言われた通り、この申告ということの手続をもつと簡単にこれをやるということと、それから申告をすることによつて非常に経済的に得をするというようなことに持つて行かなければ、とても今の状態では、私はこの申告制度が改善されないと思います。単に事業者の申告納税のみにあらずして、私どもがやはり確定申告といつたようなものをやらなければならない、ちようど今やらなければならないときになつて来ておるのですが、大蔵委員をやつておる私自身が確定申告をまともにできませんのでありまして、会社の会計に頼んでやつてもらうというような状態であります。これはどろぼうならどろぼう自身が、つかまえてもらうなわをなわされてもやむを得ないと思うのでありますが、善意なる納税者自分の税をとつてもらう。つまりお金をとられるということに、これだけ手続が煩雑で、そうして時間がかかり、頭がかかるというようなことでは、こういう申告納税制度だととてもうまく行かぬ。現在行われておりますることはもう申告納税の域を脱してしまつておる。申告納税なら、坊秀男なら坊秀男が一金何万何千円、右昭和二十八年分の所得税について申告いたしますというぐらいのことが、これが申告納税であつて、今の申告納税は自分でそろばんをはじいて、三日も四日もかかつて自分の納税の算出を義務づけられておるというようなことでは、私は申告というものはうまく行くまいと思う。いわんや常業者は、私どもよりは税に対する知識も記帳の知識もないものでございますから、こういう人々が自分税金をとられるために計理士をやとつて書いてもらうというようなことでは、これはお話にならぬと思うのでありますが、納税者は善意なんですから、この善意の納税者に煩雑な手数をかけないように、ひとつこの申告納税制度を改善していただきたいと希望する次第でございます。
  136. 平田敬一郎

    平田政府委員 坊さんのお話になつた御趣旨はよくわかるのでございますが、こういうことをよく御判断願いたいと思います。今所得税納税者は約一千万人ございますが、そのうちの約七百万人は源泉所得税納税者でございます。この源泉所得税納税者はほとんど年末調整で片づいておりまして、申告の煩を避けることになつております。但し高額の勤労所得者は別であります。  それかれ農業者の場合と営業者の場合におきましては、所得が幾らかを見るのはむずかしい。これさえはつきりわかつてもらえますれば、あとは割合に簡単であります。おそらく少しなれて参りますれば、少くとも中学校くらいで計算し得るようになるのではないかと思います。先般聞きますと、アメリカの中学程度で、仮設例に基きまして何か所得税の計算をやらしておるらしいのですが、所得さえわかりますれば、大部分の農業所得者と営業者につきましては、税金の算出は比較的簡単でございます。それにしても実際問題といたしましては、なれるまでにはなかなかたいへんでございますので、営業者につきましては、お話のように税務署に来ていただきまして、所得について話がつきますと、あとは税務署税金を計算いたしまして、署名、捺印して申告をしてもらう。農業者の場合におきましては、町村役場あるいは税務署が出張いたしまして、そこでできない方には税額を計算してやる、こういうことをいたしておりますので、それほどの問題はない。ただ坊さんのお話のように、相当の所得者で、いろいろな所得のある人、これはいかにいたしましても源泉だけではどうも公平な課税ができない。そうしますと、やはり申告していただきまして、計算しなければならない。その際俸給があり、配当があり、預金利子があり、不動産の貸屋が一軒あつて家賃があり、原稿料がありという場合におきましては、これまた幾ら出すか、そういう収入があつたか、これを計算するのもなかなかやつかいだということですが、これがわかつておられますれば、あとは一、二度少しやつていただきますと、税金の計算はそれほどむずかしくなく出て来る。大体におきまして、申告書と注意書を読んでいただけばできるのではないかと思う。この方々の場合においても、一体幾ら自分が配当を受けているか、幾ら原稿料があるか、幾ら預金利子があるか、これを調べるのになかなか手がかかる。これは、おそらく本人よりも税務署がこまかいものまで調べることになると、もつと手がかかるようになつて来るのではないかと思います。そういう方々の場合は、どうしてもある程度やつかいなことは避けがたい。それにしてもなるべく税法も簡単にし、申告書の様式も簡単にして、書きやすくすることについてくふうはいたしたいと思いますが、どうしても避けがたいので、どうしても多額の所得のある方は、たいていの人が専門家に御依頼願つてもいたし方ないのではないかと思う。営業者の場合でも、相当以上の営業者の場合においては、アメリカ等の例を見ましても、大体まじめな専門家に頼んで若干の手数料を払つてつてもらつておられるようでありますが、これもやはりある程度いたし方ないのではないかというふうに考えている次第でございます。御趣旨のようにできるだけ税法様式等も簡単にいたしまして、お手数をかけないようにするのが本筋だと思いますが、そこに先般も議論がありましたように、おのずから限界がありまして税が重くなり過ぎますと、勢いこまかいことが問題になつて、それがむずかしくなる。そうすると、実情に合わないで無理な税だということになるし、複雑になるので、その点につきましても御了承願いたいと思つている次第でございます。御趣旨の点はもつともでございまして、できるだけのことはいたしたいと思いますが、同時に限界があるということを御了承願いたいと思う次第でございます。
  137. 坊秀男

    ○坊委員 いろいろ税につきましてむずかしい点が出て来ますことは、これ一に税金が重過ぎるということであつて、ほかに大きな理由がないということは明瞭な事実でございます。私はこの減税につきましては意見を持つておりますが、これはもう根本に触れる問題でございますから、きようの私の質問はこれで打切ります。
  138. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 大泉寛三君。
  139. 大泉寛三

    ○大泉委員 きのうも時間がなくなつたが、きようも時間がなくなつたので簡単に申し上げます。  査察行政のことについてきのうちよつと伺いましたが、この査察活動の最もはなやかであつた占領直後においては、これは何といつても占領政策の一環として、またドツジ公使の九原則が非常にものをいつてああいう一つの旋風を起したのであると思いますが、今日の情勢で占領政策を是正するというならば、一番先にああいう政策をやめてもらいたいと私は思うのだけれども、しかしやめろと言つたつて、今脱税問題やいろいろな問題を起しておるときに、やめろということもなかなかはつきり言えない。これに対して新しい日本の税制の行き方として、やはり査察行政という行き方をかえなくちやならない。これに対してどういう行き方でやつて行かれるか、ひとつ目標を伺つておきたい。
  140. 平田敬一郎

    平田政府委員 査察行政につきましては、初期におきましては、ことに条件自体も悪かつたのに加わりまして、大分問題を起したような行き方にやらざるを得なかつたような事情がございましたが、その後大泉委員もおそらく御承知のように、だんだん実は改善をいたしておりまして、最近におきましては、基本的な方針としましては、私ども事前調査と申しますか、準備調査に非常に大きな力をさきまして、幾つかのケースを準備調査をして調べましたうちで、これはひどいというものにつきまして査察をする。それでそういう的をはずさないようにやろう、これを第一番に注意したいということでやつております。  それからもう一つは、とかくやり始めますと、とことんまで行く。一つ調べ出しますと関係のところまで行くという、どうもあらゆる場合におきましてそういうことになりがちでございますので、やはりある程度の目的を達した場合におきましては、それで事件のけりをつける。そうしまして必要な処分をしまして完結をする。あまり長くやつておりますと、つい営業にも妨害になるというような点もございますので、できる限りそのようなことがないようにしまして、かつ査察行政の目的を達するようにいたしたい。この二つの点を注意していたしますならば、査察行政というものは、やはり健全な申告納税並びに健全な直接税の納税思想を確保すると申しましようか、保障するものとしてどうしても必要ではないか。そういうことになるのがほんとうに進歩した税制でございまして、この保障がなくしては、やはり納税者は結局いいかげんにやるということになるので、今後の税務行政におきましても、やはり今申し上げました意味におきまして、査察行政は相当重要なものではないか。しかしやり方につきましては、先ほど申し上げました点を十分慎重に考えまして、あくまでもほんとうの目的を達成するように努めて行きたいと同時に、その限界を越えないように注意して行きたい、こういうように考えております。
  141. 大泉寛三

    ○大泉委員 査察の必要の端緒をつかむには、税務官吏の調査に基いて、これはひどい、これはどうもたいへん脱税がありそうだというようなものに対して手をかけるのですか。それともまたいつかお話のあつた、つまり通報機関というか、密告機関、いわゆる脱税の密告をした者に対しては五十万円をくれるとかいうような、ああいういわゆる摘発隊のようなものを使つて、その報告によつてやるのですか、どういうのですか。
  142. 平田敬一郎

    平田政府委員 これは一口にはなかなか言いがたいと思いますが、準備調査に際しましては、やはり第三者の通報があつた場合におきましては、それも一つの資料になる。しかしそれがあつたらすぐやるということは、これはもういたさないのです。そういう資料がありました場合におきまして、はたして事実であるかどうかを、現実に強制的に調査する前にいろいろな角度から調べる。もちろん税務の内部におきましても、いろいろな面から普通の調査をいたしておりまするので、そういう調査の際に、どうも怪しいと申しますか、非常に大きな詐欺か、脱税があつたというようものがあると認められる場合におきましては、そういう点からも候補者を選び出す、その他いろいろの関係のところに聞き方と申しますか、調べている間にいろいろな方法があると思います。そういう方法をとりまして、幾つかの候補者を選び出しまして、その中から、先ほど申しましたように、これはほんとうにひどいだろうと認められるものを選びまして着手する、こういう方向に最近は大分つておりますが、今後はなおそういう方向に行きまして、ほんとうにひどいものを査察するというふうにいたしたいと思つております。
  143. 大泉寛三

    ○大泉委員 これは何ですか、金額の大きいところを多くねらうのですか、あるいはまた金額は小さくとも手段の悪質な、不正なところをねらうのですか、そのねらいはどつちですか。
  144. 平田敬一郎

    平田政府委員 これもなかなか機械的には申し上げにくいかと思いますが、もちろん悪質であり、かつ額が多い方をどつちかと申しますと先に調査する。しかし額が小さくても、悪質の程度が非常にはげしい場合におきましては、やはり必要な処分をいたしませんと、同種の納税者に悪影響がありますので、それも調べないというわけに行かないのでございますが、どつちかと申しますと、やはり同じ程度の悪質でございますれば、大きな方から先に査察する、こういうことに相なるかと存じます。
  145. 大泉寛三

    ○大泉委員 性質が悪ければ、小さなものであつてもやはり社会的に影響が大きいのであるから、金額ばかりねらうということは税務行政からいつてどうかと思うのですが、しかし税を多くとるという目的からいうと、大きなものをねらつた方が、やはり税金の額が大きくなりますからけつこうでありますが、やはり不正なものもあつてはならないから、こういう点は両面において行かなければならぬかと思うのであります。そこで一つ具体的に聞いてみたいのですが、ある破産に瀕しておる小さな業者が、非常に過重な税のためになお一層困つておる。よく調査したところが、大きな金を高利貸しから借りておる。それがいわゆる行き詰まりの原因であるが、税務署から差押えされて競売に付されるというようなどたんばになつた。いよいよ困つて来たときに、実はもうけたのでもなんでもない、持つて来たのでもない、高利貸しから借りたのだが、その借主は絶対秘密をもつて借りた。しかも自分の友人だから言えない、これを発表するわけには行かぬ。つぶれても死んでも言えぬというようなことを言つておる人がありますが、どうも自分もそうまで苦しいときに借りたのだから、口外すべきではでないけれども、どうも困つたものだ、何とかならないかと相談を持ちかけられたことがありますが、そういう事実があるのです。その場合ほんとうのことを言つて、そこに税金をかけられたらたいへんだから黙つておるわけですが、そういうところは聞いて聞きつぱなしにして、累をそこに及ぼさないようにして行く方法はないものですか。これは実に困難な、具体的な話なんだけれども
  146. 平田敬一郎

    平田政府委員 なかなか実際上のデリケートの問題の例かと思いますが、調査したものが事実につきまして、具体的な何と申しますか、心証を得るだけの御主張がありました場合におきましては、つまり認めるということはあつてもいいと私は思うのでございます。ただなかなか今お話のような場合になりますと、はたして事実であるかどうかの判断がなかなかむずかしいことがございます。そういう場合におきましては、そういう資料の提供がないと勢い認めるわけには行かぬというような場合もあろうと思いますが、その辺実際の調査の上においてなかなかむずかしい問題でございまして、私ここで一概にはつきりと解決できるようなことを申し上げるようなケースではどうもなかろうかと思うのであります。なおそういつた非常にめんどうな問題の場合におきましても、何でもかんでも追究するというようなことにつきましても、あのずから常識的な限界がございますので、そういう点も時と場合によりまして判断してよろしくやるのがよい税務行政ではないかと思いますが、これはなかなか実際はむずかしいと思います。そういう際どうしてもむずかしいような場合におきましては、正規な法律的な処置のほかに、苦情相談所というようなところもございますので、いろいろな面で納税者といたしましてもできるだけの手を尽されたらよいかと思います。全体として申しますと、どうも今の社会にはお話のような点が少し多過ぎるのではないかと思います。そういうことが多かつたのでは結局社会も明朗にならないし、税も明朗にならないし、結局全体が不明朗になつておもしろい結果にならぬと考えますので、あまり実情に堕したやり方をやつてもどうかと思いますし、その辺はいろいろ健全な常識を働かせまして、適切にやつて行くということにいたさざるを得ないことを御了承願います。
  147. 大泉寛三

    ○大泉委員 実際そういうことが今の業界にはよくあるのであります。しかし今はやみの物件の横行も少くなつたから、その点は少くなつたのですが、大体やみで売つた買つたというようなことは明確にできない。出せないばかりに税金に計算せられてしまうというようなことがある。そこで私は注文申し上げるのだが、今のやみ金利のような場合も、同じようにもし税務署長の裁量では追いつかないときには、局長のところまで持ち込まれるような件であつたならば、局長の税政策上の政治的な裁量で解決できる。また国税長官まで行つた場合には、やはりそういうことは業者を殺すというような建前でなく、あくまでも業者を生かす、これを根本に解決してもらいたいと思います。かように私は注文しておきます。それはもう種々雑多な、だれでも訴えられることはみなそういうのつぴきならぬ問題が多い。けれども私らは自分も商売しておるから、なるべくそういうことはさしさわらないやはり何といつても弁理士、税理士というような専門家に一切を譲つておりますが、往往にしてこういうことを訴えられる場合が多いのでありますので、かように注文申し上げておきます。質問ではありません。
  148. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 淺香君。
  149. 淺香忠雄

    ○淺香委員 国税庁長官に伺いたいのですが、今大泉委員の質問に対するお答えのうちに準備調査という言葉を使われましたが、これはかつての権衡調査のような意味のことをおさしになるのですか。
  150. 平田敬一郎

    平田政府委員 もちろんそういうこともございますが、それよりももう少し具体的に、はたして脱税の事実がありやいなやということにつきましてのいろいろの資料を集めまして調べるので、単に権衡調査だけではありません。いろいろな、さつき申しましたように過去の実績から申しましてはたしてどうか。あるいは取引先との関係においていろいろな問題が出て来る場合もございますが、そういう事実、それから同業者の間のいろいろな批評、それらをとくと注意しております間にいろいろ事実が出て来るかと思いますが、そういう資料を集めまして、着手する前に十分な調べをして、それによつて現実に行政調査に着手する。こういう意味で申し上げたのであります。
  151. 淺香忠雄

    ○淺香委員 それでしたら話の趣旨がわかりましたが、ただ権衡調査が過去において非常に紛糾を来しました原因になりました。というのは、御承知通り業界を調べるのには帳面、帳簿というものを重点に置かずして、どれだけ売り上げてどれだけの人数おつて、どれだけの店舗であればこれだけの税率が出るのだ。そうして出ました基準でずつと流して、帳簿等を重点的に見なかつたという時代が二、三年続きまして、国会でも非常に問題になりましたことは御承知通りであります。その点今後において御注意をいただきたいということを申し上げます。  なおこの査察ということに関連いたしまして、質問というよりか、御注意を申し上げたい一点があるのでありますが、こういう事実があるのであります。私は御承知のように大阪の選挙区でありますが、二、三日前に大阪から突如十時ごろにある人が見えまして、会つてみますと、いわゆる脱税の事実もあるのでありましよう隠匿等について税務署から摘発を受けた。私に陳情いたしております人は、肩をふるわして非道な調査の仕方を訴えられておるわけであります。もともとこの一人の言うことに私どもは耳を傾けるものでありませんけれども、どうも聞く様子ではひどい。そうこうしております間に大阪の方からさらに電話がありまして、参りました本人は頭がちよつと変になりかけておるような点があるので、注意してくれということでありました。それでおかしなことがあつてはいかぬと思いまして、ただちに奧村委員長に電話で一日おひまをいただくことの御了解をいただくと同時に、議長のお許しを得まして帰郷いたしました。そうして某税務署に参りましていろいろ調査をいたしました。ところがその調査に当られました方は——これは私が現実に二度目の調査ぶりを見たのであります。というのは、夕方にさらにその人の事務所に来ているということを耳にいたしましたものですからただちにかけつけまして、私はバツジをはずし、ぽいとこの問題を起しておる者の応接間に入つたのであります。ところがふと見てみますと、調べておる三人はオーバーを着したなりでいずれも足をひざの上に上げ、机の上を見てみますと紅茶が三つ出ておるのですが、手をつけておらぬ。そうして言うておることは実際検事以上でございます。それで私はあまりのことにたまりかねまして、大体調べも終つたので、私はこういうものである。私は決して諸君らの調査を押えに来たのでもなければ、妨害するものでもない。諸君らは諸君らとしての職務の上から十分に調査されることはいいけれども、しかしながら先ほどから私が見ておると検事以上ではないか。そういうものをだれがさしずされたのかと言うて、詰問的な質問をいたしたのであります。そこで当人と弟が調べられておるのでありますが、弟に話をするさえ御本人が、そうでございましたな、何々でございましたなというように、まるで目上の人に話をするような話しぶりなのです。この一事をながめましても、いかに本人に悪い心理的な影響を与えているかということはおわかりになると思います。そうしていわくには、来ておらぬと、逃げたのであろう、あるいは隠れたのであろう、また時によつてはその書類で卓をたたいて、そうして自分は、私にもそう言つていましたが、大きい脱税をきようまで五回あげた、きようで六回目だ、これは出せば何ぼでも出るんだが、あしたの朝までに三、四、五、六にわたるところのどれだけ税を出したかという数字を明らかにせいと言つておるのです。時間は八時でありました。本人は数日来疲れ切つておると思うのであります。八時からあしたの朝その三人が来るまでに三、四、五、六の四年間にわたるところの資料を出せるはずがございません。従つて私は、あなた方それはむちやだ、なるほどあなた方の要求に対しては当人は出さなければならぬけれども、この通り疲れているじやないか、言葉もこの態度もなつとらぬじやないか、おかしなことがありはせぬかと家族の者が心配しているのだ、よつてあしたの朝までにこれだけ疲労したものがあなた方の言う書類が出せるかということは常識考えてもわかる。そこであなた方は検事以上の取調べをしている、苛酷でないかということを注意をしているのだ。こういうようなことを申したのでありますが、今度の企業組合に関しましても、与野党通じていろいろ質問しております要点は、長官なり主税局長さんなりの御意思は私どもよくわかるのであります。しかしながら末端へ行きました場合に、はたしてあなた方のそのお気持がそのまま反映しているかといえば、さにあらずして、手近にこういう例があるわけでありまして、その点を同僚議員が非常に案ぜられるのでありまして、まあこれとあれとは別の問題にいたしましても、そういつた点に対して今後長官として、こういうその衝に当られる部下の方に対してどういう心構えでどういう指導をして行かれるか、いま一度お伺いしておきたいと思います。
  152. 平田敬一郎

    平田政府委員 ただいまのお話、前後のいきさつがどうなつておるのか、その辺が問題と思いますが、お話の通りといたしますれば、確かに行き過ぎと申しますか、そういうものに該当するのではないかと思いますが、せつかくよい資料になりますので、後ほど承りまして、さらにその事件につきましても善処させ、あるいはそういうものについては今後ないように、注意の実例といたしまして周知方をはかりたいと思いますので、後ほどさらにお聞かせ願いたいと思う次第でございます。全般といたしましては、今申し上げましたように、査察行政は何しろ相当むずかしい行政でございまして、一止踏みはずせば、下手をするとお話のように人権蹂躪みたいな問題にまで発展しかねない危険性をはらんでおる。かといいまして、また納税者の方にもいろいろありまして、ある程度勇気を振つてやるように仕向けませんと、これまた何にもできなくなつ目的を達しがたい、その辺のところの運用を実に私ども幹部といたしましては苦心をいたしておるところでございます。私どもよく、やるときにはやはり的をはずさないようにやつて、やり口はできるだけ無理を重ねないで目的を達成するようにという趣旨で動かすように言つておりますが、実際問題としましては、人間のやることでございますので、なかなかむずかしいところがございます。でございますが、私どもやり方等につきましてもできるだけの指導を加え、また実例等もございますれば、そういうものにつきましてもどんどん周知方をはかりまして、そういうことのないように持つて行きたいと考えておる次第でおります。今のお話は非常にいい例として承りまして——いい例というのは、悪い例だと思いますが、後ほどさらに承りまして、調べた上で必要な措置をとつて行こうと思います。
  153. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 久保田鶴松君。
  154. 久保田鶴松

    ○久保田委員 いろいろ質問したいのですが、三人しか委員の方がおられず、これでは質問にもならないですから、あすに保留します。
  155. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 では本日はこれをもつて散会します。明日は午前十時より開会いたします。     午後四時四十六分散会