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1953-02-20 第15回国会 衆議院 大蔵委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月二十日(金曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長代理理事 淺香 忠雄君    理事 川野 芳滿君 理事 内藤 友明君    理事 松尾トシ子君 理事 佐藤觀次郎君       上塚  司君    大泉 寛三君       大村 清一君    奧村又十郎君       島村 一郎君    中田 政美君       永山 忠則君    西村 茂生君       宮幡  靖君    三和 精一君       小川 半次君    笹山茂太郎君       平岡忠次郎君    坊  秀男君  出席政府委員         大蔵政務次官  愛知 揆一君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      白石 正雄君         大蔵事務官         (主税局長)  渡邊喜久造君         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君  委員外出席者         大蔵事務官         (主税局税制第         二課長)    鹽崎  潤君         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ————————————— 二月二十日  委員小山長規君及び西村直己君辞任につき、そ  の補欠として永山忠則君及び岡本茂君が議長の  指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四〇号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四一号)  富裕税法を廃止する法律案内閣提出第四二  号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四三号)  酒税法案内閣提出第四四号)  登録税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四七号)  揮発油税法の一部を改正する法律案内閣提出  第四八号)  酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律案(  内閣提出第五三号)  米国対日援助物資等処理特別会計法を廃止する  法律案内閣提出第六二号)  一般会計の歳出の財源に充てるための緊要物資  輸入基金からする一般会計への繰入金に関する  法律案内閣提出第六四号)      ————◇—————
  2. 淺香忠雄

    ○淺香委員長代理 これより会議を開きます。  前会に引続き、所得税法の一部を改正する法律案外七税関係法案一括議題として質疑を続行いたします。質疑通告順にこれを許します。宮幡靖君。
  3. 宮幡靖

    宮幡委員 かつてですが、私他の会合の関係でたくさんの時間がありません。そこでただいま直接議題にはなつておりませんが、すでに要綱等によつて必ず提案されることが予想されております証券取引税といいますか、証券譲渡税といいますか、それにつきましてきわめて短かい時間お尋ねをしてみたいと思うのです。  まずこの証券譲渡税というものでありますが、名前はちよつと今すぐ出て参りませんが、これに類似したような税制ができる。これはすでに要綱に示されております。これにつきましてどうも納得の行かないところがあるのであります。日本租税的な方向に統一されておる。さもなければただいまここで申します所得税中心主義といいますか、直接税に重きを置きまして、そして間接税がこれを補充するというような役割を一応考えておる。シヤウプ勧告などによりまして、日本の基本的な税の体系というものはおそらくくずされておることでありましよう。しかし独立いたしました以上、いよいよもつて税の基本的体系というものを打出して行かなければならぬ。そういう場合におきまして、かような証券譲渡税などというものは、一体これは証券譲渡に対しまする流通税であるか、あるいは証券譲渡の差益に対します所得税的課税であるか、まずこの問題がわれわれにはよくわからぬのであります。この点をどういうふうに大蔵当局はお考えになりますか。
  4. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 租税体系をどんなふうに考えておるか、これは非常にいろいろ議論のあるところであります。もちろん全体的な体系といたしましては、所得税中心とした租税体系であつて間接税でこれを補完し、流通税で補完する、この考え方は一応過去においてもやつて参りましたし、今後においても続くものと思つております。ただその場合におきまして、間接税について、特に消費税のようなものにはどれだけのウエートを持たして行くかということにつきましては、いろいろ議論のあるところであり、われわれも検討しているところでございます。税の本来の性格から言いますと、やはり所得税を最も中心に大きく考えまして、そして間接税で補完して行くという体系がいいように思いますが、ただ現在の日本国民経済状況、あるいは所得分布状況というものを見て参りますと、非常に小さな所得の数が多いというような関係にあります。従いまして所得税中心に大部分の租税收入をまかなおうということにしますと、いわゆる基礎控除、あるいは扶養控除のような額もそう上げることもできませんし、従いまして所得税による納税人員というものが非常にふえまして、その間摩擦も大きく出ますし、徴税費関係から見ましても、税務官吏がたくさんいる。従いまして、やはりどうしても、所得税というものはある所得階層以上の人に所得税で納めていただき、同時にその他の階層の人には、もちろん全面的ではありますが、やはり間接税を納めていただく、こういうような体系考えて行くべきではないか。同時に間接税の中につきましても、もつと間接税ウエートを大きく持たしたらいいじやないかという御議論と、直接税をもつと大きくして行つたらいいじやないかという御議論とがあるわけでございます。現状におきましては、大分間接税の方のウエートが大きくなつて来ておりますが、これは所得税に対するいろいろな課税上のトラブルも多いものですから、やはり減税対象を主として所得税に置く。今度の税制改正におきましても、減税対象所得税に置くということが一つ目的であり、同時に国民経済の回復に伴いまして、間接税、特に消費税課税されている物品の生産、消費が最近増大して来たということが一つの原因だろうと思います。従いまして、今年度におきましては、昨年度に比べましても、直接税のウエートに比べて間接税ウエートが相当大きくなつているという姿になつております。その場合におきまして、今御指摘になりました有価証券取引税——とわれわれは一応呼んでおりますが、このような流通税をどういうふうに考えて行くかという問題が出て来るわけであります。流通税系統といたしましては、現在はあまり大きなものはございません。たとえば登録税でありますとか、印紙税でありますとか。従つてまた考え得る流通税も、たとえば一般的な売上税流通税系統に入れるか消費税系統に入れるか、これはいろいろ考え方があろうと思いますが、そうしたものが顔を出す時代はともかくといたしまして、それ以外の場合におきまして、流通税に大きな財源を求めることは考え得られないと思つております。従いまして全体の体系といたしましてはやはりウエートの点についてはいろいろ議論がありますが、所得税中心とした直接税を枢軸にしまして間接税で補完して行く。それも消費税を主として流通税で補完して行くというふうな体系にやはり租税体系としては考えて行くべきじやないか。今度考えられております取引税につきましても、その意味におきまして、こういうような税金は、補完税としての存在は意味があると思いますが、こういうものに大きな財源を期待することは、これをも含めまして、むしろ流通税について大きな財源を期待することは、売上税の問題が論議される場合は別といたしましてそれ以外はあまり期待することはできないのじないかと考えております。
  5. 宮幡靖

    宮幡委員 主税当局のお考えとしましては、われわれの考えと大同小異と申しますか、あえて現下情勢に照して間違いがあるとは思つておりません。しかしながら、別に古いことを取上げて皮肉を並べようというわけではありませんが、どうも今度の証券取引税と銘打たれますものと、廃されましたいわゆる有価証券譲渡所得税というものが置きかえられて、まつたく同一的な性質を持つておるものとしか考えられない。これはりくつをつけてこれからだんだん質疑を重ねて行くと、あるいは明確になるのかもしれませんが、しかし一応の観念としては、どうもこれを置きかえたような感じがある。この譲渡所得税というものをとるようにいたしましたのは、株式市場が開設されるに至りまして、終戦後廃止されておりました臨時租税増徴法一環として考えられて参つたところの有価証券移転税が、また変形して現われたものである。これらの関係を途中を抜いて判断いたしますと、今度の証券取引税なるものはいわゆる有価証券移転税の復活である、こういう一応の理論が出て来るわけであります。そうしてこの臨時租税増徴法一環として、たしか昭和十二年ごろ、予想されます国費増大にこたえるために、それぞれの租税を増徴して行こう、その一つとして流通税的な有価証券移転税というものが考えられた。その含みは、当時の国会の記録を調べてみましても、将来は取引税と称するがごとき流通税を創設して国費の膨脹を負担して行くのである、こういう趣旨が明らかになつておるのであります。従いましてこれらの税は、戦争中には、その税率の点から考えてみて、あまり増徴されていません。あるいは絶対に増徴されなかつたといつてもよいくらいであります。わずかにこの税が増徴されましたのは、終戦後に至りまして、時のインフレに対処いたしまする税施策一環としてのみ取上げられて参つたのであります。そういうことで、取引所のないときにおきましてかような施策をいたしましたことが、現在のように市場も活発に回復した際においては、大衆の直接投資あるいは資本蓄積牽制策となり、いずれもごらんの通り産業資本というものは、銀行オーバーローンあるいは自己資本以外の外部資本に依存しまして、何と申しますかオーバー・ボローイングと申しますか、これらの状態を続けておりまして、今後自己資本蓄積増大ということは必須であります。もちろんこれは増資の方法にもよらなければならないし、各般の施策もありましようが、おおむね銀行オーバーローンというようなものは順次解消はされているようでありますが、これらの問題を片つける抜本策、いわゆる財政金融安定施策としては、まずこの外部依存率の多い点を是正して行かなければなりません。そいう意味において、ますます資本蓄積を誘引することと、大衆の直接投資を助長するということが必須であります。ところがどうも今度の要綱や閣議あるいは次官会議等の決定の外部に漏れて参りましたところを見ますと、これらの方針にもとつておるように思う。大体多額の税収を得るのが目的でないと言われておりますが、証券譲渡所得税をとりましたときの税収を見ると、御承知のように昭和二十五年は一億三千万円であり、二十六年は推定でありますが、二億八千万円くらいになるであろう。その上に平田前主税局長は、二十六年度の推定はどんなふうになるかと聞いたらば、大体三億くらいであろうと当委員会においてはつきりと説明しておられる。これと比べますと、今度の税収見込みは約十倍、こういうものをこれからとらなければならないような事情にかわつたとは思えない。かりに二十七年の予想でいたしますと、株式売買数は六十五億株、一株平均が百九十五円くらいでありますが、この売買全額が一兆二千七百五十二億円、譲渡所得税としてとるならば、三%としましても三億八千二百万円くらい、この程度で十分ではないかとわれわれはながめていた。しかるにこれにも十倍するような税収を得なければならないとすると、ただいま主税局長の説明されました日本現下情勢に即するような税の考え方と若干矛盾があるように思いますが、この点はどうお考えでありましようか。
  6. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 現在譲渡所得に対する課税が必ずしも十分に税収を上げていないということにつきましては、少くとも過去二十六年度くらいまではお話通りつたろうと思います。ところがこの譲渡所得課税というものは、シヤウプ税制からいうと、一つの大きな支柱になつているわけなんです。その意味においてはかなり大きな問題なんですが、これがなぜ実効を上げないかという点につきましては、いろいろ問題があるわけでございます。と申しますのは、たとえば一応有価証券取引をしておる業者の方に資料の提供を求めているわけでございますが、これが、実際あまり小さな株の動きまで求めるということは、業者の方も事務的にもまた不可能なわけでございますので、そこで現在では、千株以上の動きについて資料を求めているわけなんです。ところが千株ということになりますと、見ておりますと、その資料が千株であるということに基きまして、実際売買する方も千株をちよつと切つたところでもつて何回も取引するというようなことが行われておるようなのでございます。税務当局がこれについて立ち入つた調査をして行けば、相当税収も上るのじやないかとも考えられないでもありませんが、しかしそれをあまりつつ込んでやることにつきましては、おそらく有価証券取引の上におきまして、相当大きな摩擦、支障もできるのじやないかという点も考えられまして、そこに必ずしも行き届いた調査が行きかねておる。しかも一面考えますと、何と申しましても、現在の事業において資本を順次ふやして行くということは、宮幡委員のおつしやるようにぜひ必要な施策でございますので、従いましてそういつた意味におきまして、この機会において、今後有価証券所得は、理論的には相当正しい理論ではありますが、実行の上におきまして非常に摩擦が多いという点を加味しまして、この際やめようというのが、有価証券に対する所得税をやめようという主たる理由であります。それで業者お話としては、ああいう所得税をとるよりも、むしろフラツトでもつて一律に課税した方が業者の方の手数もかからぬし、また税収もむしろ上るでしようという議論も当時あつたのですが、必ずしもそういうふうな意味をそのままとつて、見返りにこの税を起したという意味のものとは私は思つておりません。しかしちようど過去におきましては、戦争のための財源として有価証券移転税ができた。これは当時割合低い税率でございましたが、その後、終戦後においては業者の売買する分が千分の二ですか、それからしろうとの買つた場合には千分の四、それも取引所を通した場合の話で、そうでない場合は千分の八というような税率が盛られていたわけですが、その後におきまして所得税中心としたシヤウプ勧告が出た機会に、こうした税金は、税収もそれほど多くないからというのでやめられたのじやないかと思つております。しかし譲渡所得に対する課税をやめるという機会におきまして、やはり何らかのかつこうにおいて有価証券に対する少くとも流通税的な課税はして行つた方がいいじやないか。必ずしも見合いとは思つておりませんが、一応この機会にこういう税金を起したらいいじやないかというところから、今度有価証券取引税を起したわけでありまして結局その場合におきまして、われわれが一番配慮を払いましたのは、有価証券取引税の創設によりまして、株式市場取引が阻害されるというような問題になれば、これは相当考えなければならぬというので、ずいぶん研究してみましたが、現在は、たとえば株の値段が二百円の場合におきまして、手数料を百分の二の四円とつております。今度われわれが考えております税率は、大体その一割、従いまして二百円の株券でありますと、千分の二の四十銭というくらいの税率考えているわけでございます。この程度税率であれば、手数料から見て一割程度のものでございまして、これによつて株式取引が阻害されるという心配は毛頭あるまい、同時に譲渡所得につきまして、課税実績というものは、御承知のように必ずしも大きく上つておりません。しかしそれだけに十分申告していない人にはずいぶんの不安があるようでございます。そうした意味のものが一応法律的になくなつてしまうということになれば、株式取引につきましては、相当の刺戟になるということも事実じやないかというふうに思います。かれこれ勘案し、さらに国の財政の需要の状況まで考えまして、この程度税収はあげたい、同時にそれによつて有価証券市場流通を阻害することはあるまいということを大体の目安としまして、現在立案しておる次第でございます。
  7. 宮幡靖

    宮幡委員 これは、その程度のものなら別に大衆投資意欲を阻害したり、あるいは資本蓄積の形成を妨げるというようなことはあるまいという御判断、そうでなければこの法律ができないわけでありますから、ごもつともだと思う。けれども、考え方によりますと、まつたく逆であります。今予想しておるような税率とつたといたしますと、自然増収というものが多数に出て来る、こういうことに推定されます。ところが不幸にいたしまして、この国会予算委員会等におきましては、あるいはとれないじやないかという心配が起きております。これも実にふかしぎな話で、われわれの方から考えればかような税率を適用しますと、どうも自然増収、またまた自由党内閣は、率は下げたというが、実際において税をたくさんとるではないかというような、当てはまらない非難を受けなければならないような要素を含んでおる、こう思うのであります。予算委員会においては、これで税収が全うできるかという声があると聞いております。その真意は私よくわかつておるのでありますが、一体税をこの程度とつたという場合において、一切の弊害がないのだというお説を私はまつこうから信じますと、その裏においては、残念ながら脱税ということが伴つておる。従つて脱税しないで正常にとつたといたしますと、これはもつととれる税である。でありますから、税率を軽減いたしまして、しかして完全に徴税するという方向に進むべきであります。予算委員の各位がどういうお考えでそういうことを説明せられておるか。あらかじめ脱税されるであろうから、税収は減る、だから脱税されないようにやれ、こういう警告的な言葉であるか、それとも腹からほんとうにとれないであろうと考えておるか、それは私にはよくわかりませんが、いずれにしましても、これが害にならない税であるといたしますならば、これは明らかに脱税というものが伴つておると私どもは認めなければならぬ。現に譲渡所得税につきましてもそうであります。これは予算額にも達しておりません。あえて国税庁あるいは出先の税務官吏徴税技術に欠陥があつたということを指摘するのではありませんけれども、とにかくとれていない。害にならないということならば、私はその裏に脱税というものが伴つておるとさえ認められるのであります。どうしてもやはりこの際税率というものは、でき得る限り軽減いたしまして、一つも漏れなくこれを把握いたしまして、徴税を全うしてこそよいのではなかろうか、たまたま今主税局長手数料の問題に触れられましたが、かような税につきましては、これは手数料と見合つて考えてもらいたい。大蔵省も、株式取引手数料というものに対する引下げを勧告する用意があるようなことを言つてみたりしているが、少しもやつていません。税はかような手数料の中に吸収せられまして、そうして手数料とともに、納税義務者がいずれになるかは事実上別といたしまして、その中に納まる程度のものでなければなりません。すでに手数料が高過ぎるという議論があつたならば、手数料の値下げを勧告し、そしてその中において、今度新たにできる取引税なるものの負担は、決して従来の手数料負担でなくて、できたならば手数料の中に加えても、若干低い投資家負担となるということが私は正常なものであろうと思う。その点はあえて主税局長さんに伺いませんが、ちようど銀行局長さんが見えておりますので、その点についてのお考えを伺いたいのであります。
  8. 河野通一

    河野(通)政府委員 有価証券の問題につきましては、実は私直接所管をしておりませんが、金融全般関係があるという観点から、現在の有価証券に関するいろいろな手数料は、もう少し下げていただかなければならぬという考え方を持つております。この問題につきまして、ただいまのお話のように、今般の税を含めて全体の投資家負担を下げるというところまで行くのがいいか悪いか、この点は具体的にはなかなか申し上げかねると思いますが、投資家負担をできるだけ下げる方向へ持つて行くが望ましいということだけは申し上げ得ると思います。
  9. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 私の方に関連する御質問もあつたようでございますから、その分についてだけお答えいたします。有価証券取引をできるだけ阻害しないように努力するということは、われわれも考えております。譲渡所得に対する所得税課税がありました昨年の時代を見てみましても、暮れにおいては相当取引も多かつたということは事実でございますし、今度はこちらの方がなくなるわけですから、われわれは移転税をその見合いとしてつくつたとはあえて思つておりませんが、この程度移転税によつて有価証券流通が阻害されるというふうには考えておりません。  なお歳入の見積りの点でございますが、これはいずれ法案が出ましてからとつくり御審議にあずかりたいと思つておりますけれども、われわれといたしましては、大体十、十一、十二の三箇月の実績が一年間続くというふうな点で見積りを持つておりますし、また店頭売買などにつきましても、相当検討を加えた上での見積りをつくつておりますので、これが特に脱税を予想した見積りだとは思つておりませんし、またこの程度税率において課税がなされる場合に、そうすき好んで、危険を冒してまで脱税するということがあるともわれわれは思つておりません。われわれは誠実な業者が誠実に申告をしてくださることを期待すると同時に、大体その場合において見積り得べきものを見積つているわけでございます。ただ有価証券の市況というものは、御承知のように非常に動くものでございます。昨年の間を見てみましても、年初と年末におきましては相当大きな開きがございます。本年に入りましても、年の初めは非常に大きく取引がなされておりましたが、最近におきましては大分それも減つて来ているといつたような事態でございまして、なかなか見通しのむずかしい問題でございますが、大体先ほど申しましたように昨年における十、十一、十二の三箇月の実績を四倍したものを一年の数字として基礎にとつておりますれば、それが特に過小な見積りだとも思つておりませんし、そうひどく過大な見積りだとも思つておりません。大体われわれは、現在見通し得る限りにおきましては、この辺が最も正確な数字じやないだろうかと考えているわけでありまして、ここにかたい見通しをして、そう自然増収が期待できるというふうには、われわれは考えておりません。
  10. 宮幡靖

    宮幡委員 脱税なくとれるというお見込み、けつこうであります。弘はそれを信じ、かつそうなつていただきたいと思う。しかしながらもしそうだとするならば、これは喜ぶべきことかあるいは残念がることか、言葉使いわけはわかりませんが、それは予算よりも多くとれます。これはどういう御計算をなさつているか知りませんが、漏れなく脱税なくとれたとすれば、予算より多いことは明らかです。これから推して参りますと、税率は高過ぎるという議論が出て来るわけであります。なおまた法律案が出てから詳しく議論をしようということであります。それに従つて行いますが、この委員会も山積する法律案を持つております。そして法律案が出て来て、きわめて短かい審議でもつて通さなければならないような実情に追い込まれるかもしれません。野党の方のお考えは別でありますが、与党としましては一応これに同調ぜざるを得ないような態勢になつておる。それでありますから、われわれは事前においても十分研究し、あるいはこういうものに対して修正等を加える危険をなくしまして御提案を願うということがよりよいことだと考える。そしてそういうことを考えて申し上げる。ここに銀行局長がおられますが、政府案を伺いますと、貸付信託などの受益証券については、一年間無税だと言つておる。一体こういう必要がありますか。必要ありとするならばその理由を伺いたい。並びに証券投資信託の譲渡については、二年間を限つて万分の八とすることになつておりますが、こういうことも一体必要でありましようか。その内容についてわれわれの納得の行くような御説明をいただきたい。
  11. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 有価証券取引税につきましては、本日の閣議に提案せられてございますから、もし閣議で決定を見ますれば、印刷ができ次第提案できる運びになると思つております。なお今われわれが考えておりますような現実なら、きつと自然増収が出るという御意見でございますが、これは私の方も皆さん方もいろいろ数字をお示し合い願いませんと、ただ言葉の上でわれわれの方はこの程度だということで、いささか言葉だけの争いになりますから、われわれもあえて申しませんが、われわれの方では決してそう故意の過小見積りはしていないということを申し上げておきます。  それから貸付信託の問題とか、あと投資信託の問題でありますが、これにつきましては、大体公社債も一応有価証券でございますので、それに課税するような建前に持つて行こうということで立案をしております。ただしかし現在御承知のように、国債市場が立つておりません関係もございますのでやはり国債市場が立つまでの間は、これに対する課税をさしとめておいた方がいいのではないか、こういう意見が、証券の方をやつておりますわれわれの関係者の方から出ておりますし、われわれの方もその点は考えられますので、当分の間その規定は適用しない、同じような意味におきまして、貸付信託の証券につきましても、性格が社債の性格と非常に似ておりますので、これに対する課税も当分差控えた方がよかろうというようなことで、今御指摘になつたような意味の提案をしております。これはいずれ法案が出た上で御審議を願いたいと思つております。  それから証券信託の場合でございますが、これにつきましては、証券信託は現在いわば一種の過渡的な将来の発展の過程にあるのだから、従つて証券信託の中で、証券信託を受けた受託者のなす証券の売買につきましては、将来証券信託を伸ばして行く上において、税率を少し安くしてくれたらどうかというような御意見もありまして、われわれといたしましても、一応それもごもつともな御意見のように思いますので、これについては考えたいと思つております。  いずれそれらの点は、今申しましたように、本日閣議が決定になりますればすぐに提案の運びになりますから、提案になりました上で、とくと御審議を願いたいと思つております。
  12. 宮幡靖

    宮幡委員 きようはまだ提案されていないという逃口がありますので、政府委員の方も御答弁が非常に楽のようでありますが、それもそう簡単にお考えいただいてははなはだ迷惑であります。個人宮幡が迷惑するのではなくて国民が迷惑するのであります。もつと率直、果敢に御説明願つた方がよい今日閣議が通れば、いずれ明日あたりは出て来るのでありまして、ものの言いまわしによりますと、少々うるさくお尋ねをしなければならない事態になるかもしれません。もうほとんど確定的でございましよう。しかし、この税率は何といつても不合理だ。そういう意味において、われわれは提案された法律案を十分検討さしていただく、こういうことに今日はお願いいたしておきます。ことにこういう取引税をかけますのに、売手の負担がよいのか買手の負担がよいのかというような問題につきましても、まだまだ根本的に議論の余地がある。その上にもう一つ考えなければならないことは、流通税としての性格を持つておる一つ租税体系の中に入るというお話もあるのでありますが、売買価格に対する課税なんというものは不適正だ、むしろ額面で一枚幾ら、こういうふうな方法をとつて行きまして、先ほど私の心配しておつた脱税等がないように、税の負担の不均衡を生じないような徴税方法をとつていただきたい。こういう問題もひとつあわせて考えていただきたい。御提案になるものはすぐれたものが出て来ると私は期待しておりますが、おそらく、遠慮なく申せば木端微塵に破砕しなければならない性質の法律案ではないか。今日は私自分の方の総務会に行かなければならないので質問の時間がありませんし、また肩のこつた質問をしようとは思つておりませんが、たまたま予算委員会の方では税収減となるであろうというような意見が出ておる。どなたがおつしやつたとは申しませんけれども、これではちよつと法律案の通過があぶなくなつて参ります。われわれの方は高いからもう少し軽減すべきだ、一方はとれなくなりそうだからもう少し上げたらどうだ、この二つの線が交わつて来ますと、これはちよつとうるさい問題になると思います。そこで、でき得べくんばわれわれの真の意のあるところを御了解願いまして、閣議等で間違つた決定がないようにしてもらいたい。これは本日の議題外ではありますが、税に関する一般事項として、事前に若干お尋ねしたわけであります。提案になつてからということでありますから、それを百パーセント尊重いたしまして、本日はやめておきます。そういう趣旨でお尋ねをしたのでありますから、その点お含みの上、閣議で間違つておることがあつたら今直しても遅くはないのであります。国会において修正される方が名誉であるか、今のうちに直した方がよいかということは、ぜひ御賢明に御判断をいただくことにいたしまして、今日の私の質問はこれで終ります。     —————————————
  13. 淺香忠雄

    ○淺香委員長代理 次に、一昨十八日本委員会に付託されました米国対日援助物資等処理特別会計法を廃止する法律案及び一般会計の歳出の財源に充てるための緊要物資輸入基金からする一般会計への繰入金に関する法律案の両案を一括議題として、政府当局より提案趣旨の説明を聴取いたします。愛知大蔵政務次官
  14. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 ただいま提案になりました一般会計の歳出の財源に充てるための緊要物資輸入基金からする一般会計への繰入金に関する法律案及び米国対日援助物資等処理特別会計法を廃止する法律案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。  まず一般会計の歳出の財源に充てるための緊要物資輸入基金からする一般会計への繰入金に関する法律案につきまして御説明申し上げます。  緊要物資輸入基金特別会計におきましては、一般会計から繰入れられた二十五億円の緊要物資輸入基金をもつて、国際的とりきめによつて日本国に割当てられた稀少物資等の取得及び売払いを行つて来たのでありますが、その運用の実情に顧み、昭和二十八年度におきましては、一般会計財源に充てるため、基金から十五億円を一般会計へ繰入れることとしようとするものであります。  なお、将来情勢が変化いたしまして、政府輸入にまたなければならない事態が増大いたしました場合の基金運用に支障なからしめるため、一時借入金をなし得る制度をあわせて設けようとするものであります。  第二に、米国対日援助物資等処理特別会計法を廃止する法律案につきまして御説明申し上げます。  この特別会計は、昭和二十五年に米国対日援助物資等の取得及び処分等に関する政府の経理を明確にするために設置せられたのでありますが、その後昭和二十六年七月一日以降米国の対日援助は打切られ、また、同年九月一日以後は軍払下げ物資の払下げも打切りとなつたことに伴いまして、昭和二十七年度におきましては、未収金の回収、残存物資の処分等の清算事務の段階に入りまして、おおむねその目的も達成することができましたので、同年度限り特別会計を廃止いたしまして、その資産及び負債を一般会計に引継ぐこととするために、必要な措置を規定しようとするものでございます。  以上がこの二法律案の提案の理由でございます。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。     —————————————
  15. 淺香忠雄

    ○淺香委員長代理 次に、先ほどに引続き所得税法の一部を改正する法律案外七税関係法案一括議題として質疑を続行いたします。佐藤觀次郎君。
  16. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 酒の税金の問題でありますが、税金の中でも酒の税金は非常に高い。これを引下げることについてはけつこうでありますが、政府はこの引下げによつて、それだけ増石する関係上、当然米をたくさんつぶさねばならぬように思います。現在高いビルマ米を買つて、腐つておるとか、非常に非難がありますが、そういうような点から、食糧政策の問題について意見が出ておるわけであります。一体政府はどの程度の米をつぶすことによつてこれをやつて行かれるか、この点について、その方針をひとつ愛知政務次官に御説明願いたいと思います。
  17. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 ただいま佐藤委員の御質疑の点は、食糧政策全般の問題で、農林大臣あるいは農林当局からお答えした方が、正確かと思いますが、いかがなものでございましようか。
  18. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 食糧政策の問題もありますけれども、先回の大蔵大臣の説明のときに、大体今まで通り税収を得たいという立場から、大蔵当局は今度米二十万石の増石を予定されておるということを聞いておりますので、その点について、大蔵省の立場から御意見を聞きたいということであります。
  19. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 造石のための米の割当その他をどの程度にするかということは、税収入をどの程度にしたいということからだけできまるべき問題ではございません。従来の企業整備から起つております問題に対処する、また清酒の需要量に対する供給の量、あるいは密造防止対策、いろいろの点から考えまして、従来よりは逐次造石を多くすること、あるいは米の増配をすることが適当であろうという考えのもとにやる、税金は第二次的な問題として出て来るように考えております。しかしそれなら大蔵省としてどうかとおつしやられれば、われわれとしては、ある程度に達するまでは、現在よりももう少し造石が多くなるようにしてもらいたいという気持は持つているわけであります。
  20. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 たびたび問題になるのでございますが、密造酒の問題で先回も質問いたしたわけでございますが、業者の中では、今度はしようちゆうも、合成、清酒も下つた、そのために密造酒が相当減るだろうということは予想されておるわけであります。けれども、これは政府の統計と民間の統計とは違いますが、相当の量がやはり密造酒でつくられているということは、これはだれも否定できないわけであります。それは、一つには大蔵当局の取締りの方が手ぬるい。こういうことをやつてつたのではどんなに下げても絶対に密造酒は減りつこないだろうというような意見があるわけであります。従つて、今持つている大蔵省の監督権をかえつて警察に移したらどうかというような意見が出ているわけであります。そういう点について主税局長から、この密造酒の征伐のためにどれだけの確信があるかということについて承りたい。
  21. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 その点につきましては、前回の委員会でもいろいろ御論議があり、私もお答えをしたのでありますが、その答えといささか重複するかもしれませんが、御質問でございますのでお答えをさしていただきたいと思います。  私は、やはり密造酒をなくして行くためには、二つの政策が相並行して行かなければならぬのじやないかと思います。一つは酒の税率財政の許す限りにおきましてできるだけ低くなりまして、従つて正規の酒の値段が安くなつて行くという方向がなければならぬのじやないか。もう一つは、やはり今御指摘になりました密造酒の取締りが有効適切に行われること。この二つがあわせて行われて、初めて密造酒が漸次なくなつて行くことができるんじやないか、かように考えているわけでございます。結局密造酒というものは、御承知のように、正規の酒であれば当然納むべき酒の税金を納めないで消費されるというところに、密造酒の生きて行く余地があるわけでございますので、従いまして、その税金がだんだん減つて参りますならば、あえて密造酒にまつ必要はない。品質の点などから申しましても、コストの点から申しましても、正規につくつた酒の方がいい酒であり、同時に大量にも生産されますから、コストも安いわけであります。ただ税金がかかりますので、市場へ出る場合におきまして、正規の酒の方が高くなるというわけのものでございますので、この税金が安くなれば酒の値段も下る。そうすれば密造酒というものはなくなつて行く。しかしその点につきましては、片方の財政需要からいたしまして、今度のように相当大きく消費の量がふえることを期待いたしましても、一応の限度があるわけでございます。従いまして、片方でもつて密造対策というものを有効適切に行うということがやはりありませんと、なかなかなくなるものじやない。その点につきましては、予算の方にも相当の額を国税庁の方に密造対策の費用として計上してございますので、これをできるだけむだなく有効適切に使いまして、そうして効果を最大限に上げるということは、国税庁の方としてもぜひやらなければならぬ問題じやないかというふうに思つております。  なおそれと付随いたしましては、一方において二十度しようちゆうというものも、密造酒の特にはげしい地帯におきましてこれを出すことが相当の効果がありはせぬかというので、これも酒税法の中に一応特別措置法の改正案として入れてございますが、これは税率からいたしますと、普通のしようちゆうをただ薄めた場合の税率よりもある程度安い税率にしてございますので、この二十度しようちゆうというものも、その対象を見てこれを出して行くということにすれば、一つの効果として上つて行くのじやないか。こういうような手をいろいろあわせ用いることによりまして、何とかして密造酒というものをなくして行きたい。ただ密造酒の歴史というものも、御承知のようにずいぶん長い歴史を持つておりますので、これもそう早急にすぐこの場でもつて、ここ一年なら一年の間に全部なくなるということを期待することは無理じやないかと思つております。しかし今度のように価格が下り、片方で取締りが行われるといえば、相当格段の効果は期待できるのじやないか、かように考えております。
  22. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 そうすると結局主税局長考えでは、これだけのしようちゆうの値下げをすれば、このままの監督で、それ以上の強圧なことはせぬでも、密造酒の方の弊害は取除かれるだろうという予想をされるわけでございますか。
  23. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 しようちゆうの値下げだけでというふうな考え方ではございません。清酒をも込めまして、酒類全体の値段が下つて行くということと、片方で相当取締りを有効にやる、この二つが合さることによりまして、密造がなくなることについては相当格段の効果が上つて来るのじやないか、かように考えているわけでございます。
  24. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 ちよつと委員長に御相談申し上げたいと思うのでありますが、この酒税関係法案は、実は三月一日から実施される予定だとしばしば政府は言明しておられるのでありますが、そうしますと、衆議院におきましては、午前委員会で上げて、午後の本会議に緊急上程するという手もありますけれども、今日は大体そういうことをやらない方針を運営委員会でとつているそうでありますので、そうしますと、かりに明日この法律案委員会で通しましても、来週の火曜日の二十四日が本会議でありますから、二十四日でなければ通らない。そうしますと、あと四日間しかない。ところが参議院の様子をいろいろ聞いてみますと、なかなか四日間では審議はむずかしいということを申す者もおるのでありまして、そうなりますと、業界がかなり混乱するのではないかと予想されますので、私の立場からこういうことを申すのははなはだいかがかと思うのでありますけれども、何とかこれは議事の促進方を委員長において適当に御配慮願いたいと思うのであります。もしできますならば、今日の午後でも懇談会の形式をおとりになられまして、政府の皆さんにお出まし願い、腹を割つてとついろいろと御相談をして、その結果また党に持ち帰りまして、それぞれ相談する次第のこともあると思うのでありまして、できるだけ今日中に、あすの委員会でこれが通過できますように、討論採決ができますようにいたしたいと思うのでありますが、委員長におかれまして適当に御配慮いただきたいと思うのであります。それとも政府は、三月一日より遅れてもさしつかえないというお言葉なら、これから十分に審議したいと思いますが、この点委員長においてしかるべくお願いいします。
  25. 川野芳滿

    ○川野委員 ただいまの内藤君の発言はごもつともな発言と思います。そこで、実は委員長がおいでになるならばただちに御返事ができましようが、委員長が関係方面に打合せ申でございますので、理事といたしましては、ごもつともな御意見として実は拝承いたしたわけであります。できるだけ内藤君の希望されるように、午後は懇談会の形式で議をまとめたい、こういうふうに考えておりますが、とりあえず内藤君の御要望は、委員長が参られましたならばお伝え願いたいと思います。
  26. 淺香忠雄

    ○淺香委員長代理 了承いたしました。委員長がもう間もなく帰ることと思いますので、帰りましてよく相談をいたしまして、御趣旨に沿うようにいたしたいと考えます。松尾トシ子君。
  27. 松尾トシ子

    ○松尾委員 税の問題は予算と不可分の関係にございますから、それぞれの租税について御質問する前に、今度の予算編成の経緯について少しお尋ねしたいと思います。  大蔵省原案が大幅に修正されまして、自由党の公約、主張が財政面に盛られたことは、政党政治である以上はまことに正しいし、好ましいと思うのです。ところが一般の批判は、自由党の修正予算よりもむしろ大蔵省原案の方に、現下日本の経済諸情勢においては賛成する向きが多いように私は伺つております。そこで、愛知大蔵政務次官は自由党の御選出でありますから、その政策の樹立態度と、財政案を決定した経緯において、はたしてほんとうに国民の経済的立場から研究と熱意を払われたかどうかということをお尋ねします。  これをもう少し掘り下げて御説明いたしますと、財政の規模が相当膨脹して、その財源の一部を過去の政府蓄積の解放に求めたり、あるいは一部を公債にたよるということにきめられたわけですが、一般にはこれがどうもインフレの要因を強く考えさせまして、取返しのつかぬことになりはしないか、こういう心配があるわけです。もちろん愛知さんは、そんな心配は御無用だとおつしやいましようが、世界的に見ても、経済情勢は調整の過程にあるので、ひとり日本がはなやかな予算を組むよりも、むしろオーソドツクスの方式を採用した方が好ましいと思われるからだろうと思われます。それに、財政面から支払い超過が千五百億あるということになりますと、通貨の増発の懸念は十分にございます。ところが大衆はもつと減税を要求しているので、インフレを絶対避けなければなりません。インフレを防ぐには、日銀貸出しが相当引締められたり、あるいは放出資金を時期的に操作することは当然でしようけれども、下手をするとかえつて産業の発展を妨げるということになりはしないでしようか。政府としては放出資金を吸収する一連の強い政策、あるいは構想を示さなければならないにもかかわらず、何らございません。私はこの際にあたつて、国民の貯蓄増強策というようなものができるかできないかにかかつているのではないかと思うのですが、この点についてちよつと愛知さんの御説明を願いたいと思います。
  28. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 ただいまたいへん広汎な範囲にわたりまして御意見を承つたのでありますが、順次お答えをいたしたいと思います。  まず第一は、予算の編成についての経過のお尋ねでございましたが、これはひとつできるだけ詳細にお答えいたしたいと思います。すでに小川委員のお尋ねが先般ございましたときにも申し上げたのでありますが、今度の二十八年度の予算の編成ということは、申すまでもございませんが、独立国の第一年度の予算の編成でございます。それからただいま御指摘もございました通りに、これは独立第一年であると同時に、われわれ日本人の手で確立しなければならない、ほんとうの政党政治のもとにおいてつくられる予算案である。また、従来のいわゆるドツジ・ラインと申ますか、占領下にありました当時のいろいろの財政方策については、おそらく、私の考えるところでは大多数の国民的の期待において、これの修正を要望するという気持がほうはいとしてあつたと思うのであります。私どもといたしましては、そういつたような背景のもとにおきまして、政党内閣としてのりつぱな予算をつくりたいとかねがね念願いたしておりました。それで昨年の十二月の末になりまして、まず自由党が二十八年度の予算編成の根本方針というものを党議できめました。政府におきましては、その党議できまりました与党の予算編成方針を、その線に沿うて尊重してつくり上げたものが、現在提案されておる予算案でございます。ところが今のお尋ねの中にございましたのは、昨年末に大蔵省が原案をつくつた、その原案が自由党の手によつてめちやめちやになつたというような趣旨の御発言があつたかと思うのでありますが、そうではないのでありまして、私どもは今申しましたような基本的な、客観的な情勢や雰囲気の中において、よいものを民主的につくり上げたいという気持から、従来のように、いわゆる大蔵省という役所の手によつてつくり上げたものが、動きがつかない、閣議に一旦提出されたならばこれは不退転のものだ、と当時のお濠端を肯景にしたそういうやり方というものはこの際根本的にかえなければならないという考え方から、大蔵省の原案として閣議に出しましたものは、いわゆる不退転のものではなくて、一応とりまとめたところの原案であつて、これを党議の対象にし、そうして各閣僚からも活発な意見を聞き、また党からのいろいろな希望に対してもこれをよく聞いて、そうしてよりよきものにするという努力が払われたのでありまして、むしろ従来に比べれば、その編成の過程はまつたく理想的な形態に近づいたものと思うのであります。  それから内容的に申しますならば、先ほど申しましたそもそもの自由党としての考え方の大綱は、一般会計で言うならば、九千三百億円程度の歳入歳出が適当であろうということでございます。また産業投資関係は三千二百五十五億円程度が適当であろう、こういうことでございます。これは統計的に申しますならば、この両者と現在提出されております予算案とはほとんどまつたく合致するものであります。最初の考え方通り、好んでインフレ的な予算をつくるとか、好んで財政規模を膨脹させようというようなことは断じて考えておらないところであることは御承知通りでございます。  さらに、その次に申し上げたいのは、先ほど松尾さんもおつしやいましたが、現在世界的に景気が調整の過程に入つておる。これはとりもなおさず、もつと平たくいえば、その世界経済の中における日本経済の見通しとしては、いわゆる不況がおそれられる状態になつておるのだと私は思うのであります。こういう経済情勢見通しのもとにおいては、私は財政理論としても支払い超過の予算がつくられることがむしろ望ましいのであつて、もしこういう客観的な情勢のもとにおいていわゆるデフレ的な、縮小的な予算を編成するということは、ますます日本の経済の深刻さを強めることである。むしろ私どもは、いわゆるパブリツク・エクスペンデイチユアというものをこの際大きくするということこそ、現在の財政方針としてとるべき措置であろうというふうに信じておるのでございます。従つてまた支払い超過が、ただいま御指摘のように大体千百億ないし千五百億円のその間において行われるだろうとは思いますが、これはとりもなおさず金融の緩和になつてオーバーローンの解消にもなる。またそのうちの相当の部分は——今回予算で出しますところの広義の公債は合計して五百二十億円でありますが、この五百二十億円の公債は、十分民間資金によつて消化ができるということにもなりますし、この予算案からインフレが起るということは、私は断じてないものと信ずるのみならず、こういう予算案でなければ、今見通されておるような日本経済の前途に対しては、むしろ好ましくないことになるので、それを是正しようとしておるという点が特色であると思うのであります。私どもは、ただこれもお話がございましたが、公債を出すというふうなことについては、心理的に相当の影響のある点は否定ができないと思います。一たび公債を出せば、その限度がいくらでもふえるおそれがあるというその点を懸念いたしまするならば、今後においては非常にこの点は警戒しなければなりません。しかしさりとて私はこの予算のこの程度のものであれば、今るる申し上げましたように、絶対にインフレになるものではございませんので、その間のわれわれの考え方というものを、できるだけ国民の大衆層に理解をしていただいて、インフレ懸念というものが理論的な根拠なしに、ただ心理的懸念が起るようなことを防ぐことが絶対に必要であり、また実行できる限りにおいて、私は国民の貯蓄性向というものを高めることは必要でもあるし、できることであるというふうに考えておるわけでございます。ただいま広い範囲に御質問がございましたが、大体全体に対してお答え申し上げたつもりでございます。なお足りませんければお答えをいたしたいと思います。
  29. 松尾トシ子

    ○松尾委員 大きな財源が放出されまして、そして必ずしつかりした構想をもつて貯蓄ができるという確信がない限りは、インフレが起らないということは断言できないと思います。しかも今日の日本の輸出産業の面を見ますと、どうもコスト高で売れないというジリ貧になるという事情をかかえておりながら、私はこの輸出を盛んにするためにも、愛知さんのような総花的な説明や、あるいは予算の組み方ではちよつと危ぶまれるのではないかという考えを持つておるわけなんです。しかも世界的に調整期に入つているのに、日本はよほどしつかりして、中小企業者の倒産とか、あるいは失業問題を起さないようにしながら、コストの引下げを行つて輸出増強をはからねばならないという事態にあるのですから、これはなかなかむずかしいことだろうと思うのです。しかしここで論じ合いましても、いわゆる見解の相違でございますから、その結果が現われて参りましたときに、ひとつ愛知さんと議論をし合おうと思います。  次にお尋ねしたいのは税法でございますが、現下の国際事情にかんがみまして、ことしでさえもこうなのですから、来年はもつといろいろな事情から予算の膨脹がなされるのではないかという傾向を非常に含んでおります。その上並々の手段ではインフレを防止することができないだろう、この心配の上に立ちますと、ことしが独立最初の、しかも減税としては最後になるのではないかというふうに考えまして、この改正税法をながめてみると、納税者にとつては納得のできない点があまりにも大き過ぎる感がいたすのであります。一千九億円の減税をすると申しましても、直税はなるほど少々低くなりましたが、地方税の方を見ると、税法上でもかなりというか、少々本年度より上昇の勘定になるとさえいわれておるので、むしろ納税者側から申しますと、減税をされたといわれていながら、昨年とちつともかわらないというところにあるのではないですか。しかも日本の場合には、低額所得者が七〇%も占めているとかいわれておりますので、あまりにも低額所得者、下の方に税金をかけ過ぎているという観が深いのです。御説明のときには、必ず諸外国の例を引き合いにお出しになりますが、日本の場合にはエンゲル係数が五十何パーセントかを占めているので、外国と比較をされたのではまことに困るわけなんです。私は基礎控除の引上げ、あるいは扶養控除の引上げを行いまして、月収二万円、年収二十四万円までは無税を主張するものであります。去る十二月、前の主税局長の平田さんとも、婦人から見た生活の手帳をお話ししまして、いろいろ問答したのですが、結果はちつともよくなつていないのであります。今日渡邊さんにおかわりになりましたから、もう一度この点をお尋ねしたいわけなのです。いろいろ申し上げても何ですが、私はまじめに働く官吏や、まじめに手を黒くして台所をやつておる婦人や、中小企業者の代表として、卑近な例を一つ申し上げれば、もし局長さんがまじめに働く官吏に、失礼ですが、あなたのお召しになつておるお洋服は、いつごろおつくりになりましたかとお尋ねになれば、たいがい独身のときとか、あるいは十年前とかいつて、その耐用年数をはるかに越えて、利子がつくくらいです。私はこれをごらんになる局長はもつと減税をしてあげなければ人間らしい生活ができないのじやないか、後輩のために大いにがんばつていただかなければならないと思うのですが、この点ひとつお答えを願います。
  30. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 私も率直に申しまして、現在の税金が高いと思わないかといわれますと、確かに高いと思いますと言わざるを得ません。それは渡邊自身が月給袋をもらつてみまして結局勘定してみますのは、中へ幾ら入つているかということだけであります。ただしかし、月給袋の上に書いてある数字を見ますと、こんなにくれておるのかというふうなことを感ずるわけなんですが、中に入つている中身は、まあその半分より多少は多いのですが、一口に言えば、半分に近いような数字しか入つておらぬわけでありまして、確かに高いと思います。従いまして、税金だけの面から考えて参りますと、もつと減税したいという気持はわれわれも十分持つております。ただそれだけに、今度は歳出の面との見合いの問題が、実は非常にむずかしくなつて来るわけでありまして、また同時にそういう気持があればこそ、一面におきましては三百億の減税国債を出しながら、なおこれだけの減税を一方においてするという、いわば国債を出す時期に減税とは何ぞやといつたような議論もないではありませんが、何と申しましても高いという点が、一面において三百億の国債を出しながらも、減税して行くという一見矛盾したように見えながら、なおかつそうした政策をとることが一番いいのだという結論になるわけだと思つております。ただしかし、そういう事態にありますだけに、やはりおのずから減税をなし得る程度の問題につきましては、一応の限度があるわけてありまして、今度一応一千億の減税というのは、そこから生れて来るわけだと思つております。ただその場合におきまして、一体どこを中心減税をやつて行くかということになりますと、何と申しましても、現在の所得税が重いといつたようなところからいたしまして、基礎控除の引上げ、あるいは扶養控除の引上げ、あるいは下の方の税率の引下げ、そうした主として小額所得者の負担が軽くなるような点に重点を置いてやはり減税をやつて行くべきではないか、かように考えまして立案してあるわけであります。さらに先日坊委員からもお話があつたように、中間のところの税金がまだ非常に高いのじやないか、これも確かにそう思います。できれば、この辺なども調整して参りたいのでありますが、おのずから減税をなし得る財源の方に限度がございます。その限度の範囲内において、現在最も減税を必要としておられる層を中心として減税案を立てた次第であります。現下情勢から言いますと、提案しました案が政府としては最上のものだ、かように考えておる次第であります。
  31. 松尾トシ子

    ○松尾委員 私は政治や法律というものは、そんな不便なものではないと思うのですけれども、このごろの政府は、先に法律をつくつて、生活をその中にはめようとしておるから無理があるのですから、生活の上に立つて予算を立て、また法律もつくることがほんとうの政治ではないか、こういうふうに考えておるわけであります。今の話では、しかたがないとおつしやいますが、近い将来に、これをもつと減税して行くことを御研究して努力していただきたい。もし自由党が財政面から云云という非難がありましたら、特に大蔵省は計数的に明るいのですから、これを大いに納得させて、もつと軽減をしていただきたいと思うのであります。  次にお尋ねしたいのは、有価証券譲渡所得税を廃しまして、取引税を課すようになつておりますが、これは先ほど詳しい御説明がありましたから、あまり申し上げてもどうかと思いますけれども、いわゆる累進課税を廃して、比例課税にしたわけですが、この一貫した精神が、便宜主義が理想主義を駆逐してしまつて、私たちは賛成できないわけなんです。しかもこれらの便法は相続税や贈与に利出されやすいというふうに考えられます。もしこうしたことが頻繁に贈与やあるいは相続税に利用されましたときは、大きな脱税、あるいは物を持てる者は非常に得をするという形になりますけれども、こうした点をどういうふうに押えていらつしやるか。
  32. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 譲渡所得に対する所得税の廃止につきましては、理論が便宜に負けた、一応ものの言い方としてだろうと思いますが、やはり理論だけで全体を押し通して行くということが、実際の政治としてはたしていいものかどうか。むしろ現実の事実というものにつきまして、やはり具体的な事実に沿つたところを離れた理論というものには、どこか理論の上に欠陥があるものではないだろうか。こんなようなことも反省されるわけでございまして、そうした実際の事実を離れた理論というのは、いわば空理空論のような非難も受け得るわけでございますので、われわれの方としましては、一面においては、地面に足をつけながら、同時に理論理論としてこれを通すといつた意味の、そこの調和点を一応求めて行くということに努力が続けられて行くべきじやないか、かように考えております。  なお相続税その他について、その辺に懸念があるのではないかというお話につきましては、一応われわれとしましてもごもつともなお考え方だと思つております。これは相続のようなものになりますと、件数も割合に少くなつて参りますし、おのずから対象も縮約されますので、従いまして調査の場合におきましても、相当の手が尽せるというような意味におきまして、所得税の場合とか、あるいは富裕税の場合とかとは相当事情が異なつたものがあるというふうにわれわれは考えております。
  33. 松尾トシ子

    ○松尾委員 何かだんだん物持ちが得をして、物を持たない者がもつと貧乏になるようにかわつて行くような気がして心配であります。それと同じように、もう一つ申し上げたいのは、今度の改正法の中に山林所得と不動産譲渡所得の一時的所得についての税の軽減を行つておりますけれども、私はこんなことは必要ないと思つております。農地が解放されて農村の民主化が推し進められておるやさきに、農村の富裕階級が持つておるものは山林ばかりだ。この山林がだんだん大きくなつて収益を上げ、むしろ解放した農地を買いもどすような時期が来ないとも限らないと思います。この間公聴会のときにある人がやつて来まして、山林は苗を植えてから五十年もたたなければ商売にならないから非常に利潤が薄い、こういうことを非常に苦言を呈しておりました。しかしながら農地も解放されたのですから、この山林も解放して、そんなにもうからないものだつたら、国が買い上げて国営にした方が山林計画としてはもつと完璧なものができるのではないかと考えているわけです。今非常に財政がいるからというようなこともおありでしようが、農地を買い上げたときと同じように、十五箇年証券ぐらいを渡しておけば、これは決してそう財源のいるものではないと思つております。山林の所有者が申しますように、そんなにもうからないものではないと思つております。こういう軽減をはかる必要はないじやないかと考えておりますけれども、どうでございますか。
  34. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 山林所得につきましては、やはり山林所得としましてのいろいろな特異性は認めなければならないのではないかと思つております。従いまして一番問題になりますのは、山林の所得が、とにかく長年かかつて生れた所得であり、従つてこれもいろいろな形態がございますから、一概には申し上げられないのでありますが、何年かに一度生れて来る所得だという性格があることはいなめない事実だと思つておるのであります。従いましてそうした一時の所得に対しまして、普通の毎年繰返されるような所得についてと同じように、累進税率を適用して行くということについては無理があるという考え方が当然あるわけでございます。要するに、ある年だけとたんに一百万円なり五百万円の所得がある。翌年になればそれが五十万円、三十万円になり、二十万円に減つて行く。こういつたようなときに、その一時に大きく出た所得に対しまして、毎年五百万円なら五百万円の所得が生れると同じような意味税率を適用するということには無理があるだろうというように考えられるわけでございます。従いまして、こういう所得につきましては、少くともこれが五年なら五年の間に分散されて生れた場合と同じ程度負担に持つて行くような考え方がもとになりまして考えられるのが、たとえば今度提案されております五分五葉の考え方でありまして、現行法におきましても、これと同じような考え方のもとに、変動所得という制度でもつて実はやつておるわけなんでございます。この変動所得には変動所得なりに、理論的には非常にすぐれたところがあるのでございますが、何と申しましてもその計算なり手続なりが非常に複雑でありまして、税を専門に扱つておりますわれわれの方の執行機関自身が、実は手をやいているような状態なのでございます。まして納税義務者の方におかれましては、これによつて非常な手続的に迷惑といいますか、大きな負担になつておる。従いまして、それを簡素化した姿に持つて行こうというところに、今度の五分三乗の考え方基礎がございます。それによりまして、現在の変動所得の持つております理論的な精密さが失われまして、ある程度の粗雑さが出て来ることは、これはやむを得ないところだと思つておりますが、理論を精密にすればするほど、手続の方ではめんどうになつて来る、計算がめんどうになつて来る。計算を簡略化しようと思いますと、おのずからある程度の大数的な扱いにならざるを得ない。そこに一応立法の上におきましても行政の上におきましても、一つの調整といいますか、調和点を求めなければならぬというわけのものではないかというふうに思つております。従いまして今度の改正案は、原則としましては変動所得考え方をそう大きくかえているものとは思つておりません。ただ変動所得における理論の精密さはこれは失われていると思いますが、そのかわり手続の上においての簡素化ができている。従つて手続の上の簡素化をやはりこの際としてとるために、ある程度の精緻な理論的積立ては失われるのもやむを得ないじやないか、かように考えている次第であります。
  35. 松尾トシ子

    ○松尾委員 時間がありませんから簡略にもう一、二点お伺いしたいと思います。今度輸出契約取消準備金制度というのが認められるそうでありますが、その輸出取引高の千分の五ぐらいを認められましても、現行の様子ではとてもこれに当てはまるものはないと思うのです。一旦輸出をしてキヤンセルを食つた場合でも、それが正当のキヤンセルでなく、外国の市場が狂つて来るとか、あるいはその品物を注文をしたけれども売れなくなつたようなものは、むしろキヤンセルをして、いわゆる弁償金を払つた方がいいというので、全体の契約高の十数倍ぐらいとるような悪い商社も外国にはあるそうです。こういうような実情になつている今日でございますから、私は二月の十二日くらいに通産省がその意図を御発表になつたように、むしろ輸出の振興をはかるため税制上の優遇措置の一環として、輸出振興積立金というような、ああいつたようなものにかえた方がいいのじやないかと思いますけれども、大蔵省の方の御見解はどうですか。
  36. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 今話題として御提起になりましたいわゆるキヤンセル準備金の問題は、これは租税措置法の方に規定するつもりで、本日閣議の決定を見ましたので、近く提案された中で詳しくごらん願いたいと思いますが、こういう考え方になつております貿易業をやつていらつしやる方、これは一部内国商業と兼業している方も入りますし、製造業を兼業している方も、直輸出の場合におきましては入れて考えて行きたいと思つておりますが、そういう方々は、その期における輸出契約高の千分の五、またはその期における貿易にかかる分の所得額の百分の三十五、いずれか少い方の額を積み立てて行つていただく。これは五箇年間と一応限度を限つて案を立てております。総積立額は——今の千分の五というのは年でございまして、半期の場合においては千分の二・五になります。事業年度計算で千分の五です。総積立額としましては千分の十を限度とし、もつともそれが積立金、資本金を合せた額を越えないということを一応の限度としております。従来の事例を見て参りますと、確かにキヤンセルのために相当損を出している場合があります。損を出していれば、もちろん従来は会社の損金に計上されている、今度の場合においても、積立金からまず優先的にその損を補填していただきますが、積立金をもつて補填し切れない場合の分につきましては、やはり損が生じた期の損にして行く、かように考えております。それで一時ちようど朝鮮ブームの発生した後に、ずつと国際市場が鎮静期に落ちたというときにおきまして、かなり綿花の値段などが下りました関係もあろうと思いますが、そんな関係を扱つている商社におきましては、相当額の損失を出したこともありますが、最近におきましては、少しおちついて参りましたので、大分この辺の額の損は、最近出る分は減つて来ているように見ております。大体今のような状態でございますれば、今申した程度のキヤンセル準備金で、この際としてはよいのじやないだろうかと考えております。なお同時にお話のありました通産省の——これもどこまで通産省が省議できめたのかどうか、その辺までよく存じませんが、一応われわれの方へ持つて来た案が一つあります。それは、貿易商社については輸出額契約高の千分の一を積み立てておきまして、それから十年間に償却して行くといいますか、益金に繰りもとして行くという案でございます。これがおそらく松尾委員の今おつしやつた案じやないかと思います。それはいわば税金の納付の延期といいますか、延納の政策になるわけでございますが、貿易商社につきまして、何らかのかつこうで、とにかく税金を安くしてやりさえすればいいのだという意味とすれば、延納でも一応意味がありますから、理由はないとも言い切れないと思います。しかし税制全般から見て参りますと、やはり何らかの理由があり、何らかの目的がなければ、いたずらに軽減、あるいは延納にしても同じことですが、すべきではないのじやないか、貿易なら貿易にそうした姿をとつた場合、それじやほかの産業はどうするといつたような問題がすぐ出て来るわけでありまして、この点については、よほどわれわれの方としては慎重に考えて行くべきじやないか、ただキヤンセル準備金の問題につきましては、たとえば貸倒れ準備金のような一つの制度がございますから、こういうものといわば性質的にかなり類似した点もございます。これは問題としては今度の措置法に規定して行つてよろしい、同時に今の利益金の百分の三十五までそこに入つてしまいますから、あとの問題はもう少し時間をかしていただいてとつくり検討した上でないと、われわれとしては立法の案に移せない、かように考えておるわけであります。
  37. 松尾トシ子

    ○松尾委員 もう一つお尋ねしたいのは、慢性的な輸出不振から合併を余儀なくしなくてはならないきざしがありますけれども、合併は不振で赤字が多い、しかもその赤字は金融機関から借りておるということになると、たな上げをして済ますわけに行かぬので、どうしても合併後にそれを支払うことになります。それが贈与にひつかかつたり、あるいはそれによつて多額な税金を課せられるということになりますので、合併以前の借入金を新会社の負債と認めてやり、ある期間中免税してやらないと、なかなか輸出振興とか産業の発展とかということにならぬと思います。もう一つは、いろいろこういうふうに法人税の中で緩和されておりますけれども、中小企業はどういう点とどういうふうな方法をやつたらこの利益恩典に浴することができるか、この二点をちよつとお伺いいたします。
  38. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員  今の合併会社のいわゆる繰越欠損を——被合併法人のですが、それを合併法人の方へ引継がせたらいいじやないか、引継がせなければだめじやないかというふうな問題でございますが、これはそれ自体としましては、相当検討していい問題だと思つております。ただこれを下手にこのまま認めて参りますと、今度は損失のたくさんある会社をいわば買つて来て、それを合併する場合と、それが一緒になつてしまいまして、繰越し欠損を持つておる会社が一つのアセツトにもなるようなかつこうになるわけでございまして、従いまして税法の一つのループ・ホールになるおそれもあるわけでございます。といつて正確に認めてやるということも必要ないじやないかと思われるような場合もないじやございませんが、この点については、今一言いましたようにループ・ホールになるおそれが多分にございますので、われわれの方としても相当慎重に検討して行く必要があろうと考えております。  それから中小法人の問題でございますが、いろいろ考えておりますが、一つの問題としましては、青色申告の制度というのがまだなかなか複雑になつておりまして、これを利用したいという希望の人が、その制度の複雑のゆえに利用できない。利用さえすれば相当税法上の軽減が受けられる場合が、そのゆえにできないという事実が一つございます。たとえば今度の青色申告の専従者控除の問題などがそうなのですが、そこで青色申告の手続をもつと簡略化しようということにつきまして現在国税庁とわれわれの方で検討を続けております。それから中小企業庁と企業組合の問題などで話し合いましたときに、企業組合のあの規定は中小企業庁としてはやむを得ない、しかしやはり中小企業のための措置としていろいろ考えてほしいという中の一つは現在退職積立金の制度がございますが、これは労働基準監督署にその退職積立金の規則を届け出なければならぬといつたようなことになつておりまして、雇用員の数が十人以上の場合に限定されているわけでございます。従つて十人に足りない場合におきましては、届け出たいにも届け出られない。従つて規定の適用が受けられないという欠陥があるのでございます。私はそういう欠陥があるとは知らなかつたのでありますが、そういう話を聞きますとあります。もつと何らかのかつこうによりまして、やはりこういうことは、中小企業の十人以下の雇用員の場合におきましても利用できるような道を開いて行きたい、こういうような点も実は考えておりまして、いろいろこまかい点苦労しておりますが、決して中小企業を圧迫するというような気持でやつておるわけではございませんで、私どもといたしましては、むしろそれを中心にして何らかの措置を講じて行きたいと考えておるわけであります。
  39. 松尾トシ子

    ○松尾委員 まだ質問がありますけれども、あしたに譲りまして、お次が控えているそうでありますから、この程度にいたします。
  40. 淺香忠雄

    ○淺香委員長代理 永山忠則君。
  41. 永山忠則

    永山委員 酒税法案租税特別措置法の一部改正に関しまして、質問をいたします。第二十五条によります特殊用途の酒類が、いわゆる配給酒を一年限りとか、さらに指定販売業制度が一年限りで廃止されるようになつておるのであります。そのことは、結局農村及び地方の中小企業者である生産者をもつてできております協同組合を中心とする指定販売業者が存立の意義を失い、さらに資金の融通性を失つて来まして、協同組合の資金面の操作が非常に困難になるというような観点等よりいたしまして、酒税の完納の点から、また今年度相当増石となりますその完全消化の面、また中小企業者の維持、育成の面、また企業整備の面、ダンピング防止の面から見ましても、さらにまた密造対策の点から見ましても、一年限りに限定されるということは非常に不安が多いと感じられるのであります。少くとも現在の加算税的な税金がなくなつて、相当大幅な減税ができるようになるまで、そうしてその税金を安くすることによつて密造対策が完備できるようになるまで、当分存置するのが、至当でないかという観点において質問をいたしたいと思うのであります。  現在のこの法案が出る前に多少漏れたかと思いますが、一年限りで指定販売業者はなくなるということがいわれ、私は広島でありますが、広島国税局に甲機関の出張所が乙免許の申請を始めました。また協同組合の者は非常に焦慮の念にかられている。すなわち金融面その他において協同組合のような小さいメーカーは非常に不安を持ち、また大都市にある株式会社の甲機関の下部組織が乙機関の免許申請をいたすようになつている。渡邊局長が東京国税局におられましたときにもその申請を出して、それの処置をおやりになつたと思いますが、現在の広島の国税局長はこれに対しては手をつけられない。局長限りの局権限になつておるが、どうすることもできない。しばらく見送るのだという態勢をとつておるのであります。どういうわけかというと、甲機関の下部組織はこの一年間で生命がなくなりますから、将来乙機関に対抗する上において、少くとも本年一年の間早く乙機関になつて、強いメーカーとも結び、自分の地歩を確立して行きたいと考えておる者が続出して、各所に許可の申請が出ておりますが、これら協同組合の弱小者の不安、あるいは都市の甲機関の下部組織の不安が現在起きているというように認識されておりますか、そういうことはないとお考えになつておりますか。
  42. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 甲の卸機関と乙の卸機関との間にかねてからいろいろの問題があることはよく存じております。甲機関のような業態は、配給酒があつてそれから自由販売酒が出た、その前に公団があつたわけでありますが、それが漸次現在のような姿に移つてつたわけであります。その過渡期において公団を廃止する場合に、まだ配給酒が若干残つておりましたために、公団にかわるような何らかの姿のものを残しておかなければならぬといつたようなところから、現在の指定販売業者の制度、いわゆる甲の組織ができたわけであります。見て参りますと、甲機関の方の販売所の指定を受けてその荷さばきをやつている人の中では、結局甲機関の手足となつているために、甲機関からもらう手数料が乙機関の場合に自分が卸マージンとして受取るものより少いといつたようなことの理由ではないかと思いますが、現在の姿においてなおかつ何とか独立して乙機関になりたいというように希望し動いている事例が間々あるようでありました。私も今御指摘のように、東京の局長をしていた時分にそれを一つ見たことがありますが、結局組合の方とも円満な話合いがついたために、われわれの方としても、そこに甲機関の方の指定販売所としての存在がそこでなくなるなら、乙卸としての免許をやることもさしつかえないだろうということで、ちようど私がかわる直前でございましたが、一つ免許したことを記憶しております。従いまして、そこにいろいろ問題があることはあるのですが、何と申しましても、そうした公団廃止後における一つの過渡的な期間においてできた甲乙の姿なのでございますから、乙の方の機関の人たちに言わせるならば、何である特殊な機関の方だけが甲の存在を認められるのかというふうに、相当強い反撃の声が出ているわけであります。配給酒のあつた時代におきましては、甲機関としての必要は非常にあつたのですが、最近多分にかわつて来ておりますために、乙機関の人たちの方からは相当の反撃があります。それで一応甲乙の機関をどういうふうに扱つて行くかということについて、われわれの方ではずつと検討を続けて来たのですが、全部の卸の業者に、たとえば加算税の延納を認めるということはもちろんできないわけでございます。従いまして全体としましては、税率が下つて加算税、基本税を大体一本にしてよかろうという現在におきましては、甲乙といつた区分は漸次撤廃されて行くべきものではないか、かように考えているわけであります。しかし一時にそれをやりますと相当の混乱も起きますので、とにかくこの一年間においてそれを順次整理して行きたいというのが、われわれの考え方でございます。現在の協同組合の姿などの中にはいろいろの形態がございまして、一概に私は言い得ないと思いますが、中にはいわばトンネル口銭だけをもらつているようなかつこうのものもございます。それから本来の考え方と多少違つた向きに進展しているのだと思いますが、この加算税の延納分を税金に納めるかわりに、金融に相当使つている。結局普通の形態においては納期がきめてあるのですから、普通の場合には金融にまわせないわけですが、過去一、二年は清酒の方が売れ行きがよかつたものですから、おそらく割合に短期に金を回収できたゆえだと思つておりますが、それを金融に使つていたというような姿がありましてあるいはそういう面におきましては、今度の指定業者の廃止ということによつて相当の影響があるのじやないか、あり得るとは思つています。しかし、もともとそういう人たちのために金融をつけるという意味においてこの制度はできているわけではないのですし、そういうような点に使われること自身が決して好ましいわけのものでもないのですから、やはりこの機会としましては、一時にやることはもちろん避けなければなりません、ある程度の猶予期間は置くべきだと思いますが、しかし順次これは、大体一年くらいの期間を置いて廃止して行くのが適当であろうと考えております。
  43. 永山忠則

    永山委員 一年という期間に限定されることから起きます現象は、甲機関の中では、出張所が乙機関の申請をどんどんいたしております。これに対する取扱いは当局はどうされる考えであるか。すなわちどんどん出張所の許可をすれば、甲機関の本体がつぶれて来る状態になります。他の乙機関との均衡上の問題もできて来るのでありますが、遺憾ながら一年ということを限定されますれば、自己の営業上の地位を確立するという意味において、出張所は乙機関の申請をどんどんいたして甲機関の混乱が来る情勢に立ち至ろうといたしておるのでありますが、申請がある場合において、政府は今局長権限にいたしておりますが、その局長もこれには悩んでおるのでありますから、それに対する指導方針、すなわち一年間に限定したのだから、乙機関を出張所が申請すれば、どんどん許可してしまう。現在の出張所は、すべて乙機関の申請があればやつてもいいのだというような方針で御許可になつてこの一年間の整理期間をやつて行かれるつもりかということを聞きたい。
  44. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 甲種の許可は一応国税庁の方でやつておりますので、私は国税庁の意見を代弁するようなことはできませんが、少くとも私としては、こういうふうにやつて行くべきではないかということは考えております。まず今度指定業者としての指定はなくなりましても、現在の協同組合が卸の免許を受けておる業者であるということについては、何ら関係はないわけであります。従いまして協同組合自身が卸業者であり、同時に協同組合の持つている各所の配給所が卸の免許を受けているということ自体には、一向かわりがないわけでございますから、従いまして、税金の従来の加算税分の延納といつたような意味のことはなくなりますが、卸免許自体としては、全然かわりがないということがまず第一に言えると思います。従つて従来の協同組合が持つていた卸の免許につきましては、全然影響がないということが申し上げられると思います。ただ従来の協同組合の配給所を経営している人たちは、これは協同組合との関係におきましては、一種の請負契約のような関係で、手数料をもらつて配給の仕事を行つている、こういう人があるわけです。そういう人たちは、自分で商売をすれば相当商売のおもしろみがあるわけですが、配給所であれば、結局配給手数料だけしかもらえない。そのかわり協同組合なり、甲機関でも同じですが、その配給所であれば、金融的にはバツクがあるわけでして、その方の利点はもちろんあるわけです。それだからこそ手数料主義といつたようなことがある。それにもかかわらず、乙機関とし独立したいという希望を持つている人は相当あるようでございます。従いまして、これを乙機関にどういうふうに免許して行くかということにつきましては、私はその間に摩察が起きないよう、相当慎重な措置が必要じやないかと考えております。一つの面としましては、たとえば現在ある配給所の中には、配給酒時代の配給所でございますから、実際の仕事としてはほとんどやつていないといつたようなところもありますし、あるいはきわめて小さな仕事しかやつていないという点もあると恩つております。それで協同組合がやつている場合におきましては、別にしてもちつともさしつかえないといいますか、それでもある程度整理が必要だと思つていますが、しいて積極的の理由としては、それほど強いものではありません。これが乙機関になりますと、中正機関の配給所であれば、おのずから営業の分野が地域的にきまつていますから、そこに激烈な競争はありませんでも、乙機関になれは、どこへでも行つて商売ができるといつた関係もありまして、そんな意味で、乙機関として許す場合におきましては、まずもつてそうしたもののある程度の整理統合といつたことも必要な場合もあるのじやないだろうかということも、一つ考えられると思います。それから乙機関として、従来の配給所をやつていた人が甲機関から離れる場合におきまして、相互の間に相当の貸付金、売掛金の関係とか、いろいろな金融的なからみ合いもございます。これを無視してすぐ独立させるといつた場合に、その回収問題がどうなるかという問題もございます。従つて、何と申しましても独立する場合におきましては、原則として協同組合の方と独立しようとする人の間に円満な話合いがつくということが第一に必要なものじやないか、かように考えております。協同組合の方と乙機関の方との間で円満な話合いがつかないのに、今までやつていたその配給所の人に乙の免許をするということは、これはいろいろな意味において弊害があり、同時に税の方におきましても、協同組合が当然支払うべき税金が払えなくなるという事態に陥るおそれもあるのでありますから、これについては政府としては深甚な関心を持たざるを得ない。従つて大体の原則としましては、現在の配給所の方の人と、協同組合の方の人との間に円満に話合いがついて独立するというような場合には、これについての免許は、政府としても積極的に考えているわけであります。そうでない場合におきましては、やはり話合いのつくのを待つて免許をやるべきではないか、かように考えております。
  45. 永山忠則

    永山委員 ただいまの御説でも、非常に困難だ、要するに話合いがつかなければ許可は困難だということですが、本質的に下部組織は乙機関になりたい。それをならせれば協同組合自体はつぶれる、あるいは協同組合でない甲機関も、下部組織の独立によつて本体をなくして行くというような混乱状態が今まさに現われつつあるのでありまして、この混乱を避けるためには、一年限りと限定されることは残酷でありますから、ここに政府が酒類業組合等に関する法律もお出しになつておるのでありますから、それらの酒類業者が合法的にがつちりでき上りまして、そうしてそれらと相共に企業の整理、統合、あるいは種々の点において話合いがついて、十分態勢を整えるまで当分、少くとも二年ぐらいは余裕期間がなければ、その困難を避けるわけには行き得ないと私は考えるのであります。特に重大なる問題は、今日協同組合がいかなる地位におるか。われわれはこの協同組合を維持、育成する、ことに中小企業者、農村における中小企業者を維持、育成して行くという方途が、政府にこの場合になければいけない。ということは、政府は相当増石をなさる、その増石をされて完全消化をし、しかもその税金を完納せしめるという意味におきましては、中小企業の生産者というものを維持、育成してそうして販売の面の確立をはかつて税を完納するというように積極的な維持、育成案がなければならぬと思う。けれどもこの結果に至りまして、基本税、加算税が一本にされまして、そうして加算税の金融操作の唯一の協同組合の紐帯、これがすなわち税金は使うということによつて——金融操作だけではない、銀行の信頼なんです。この銀行に裏づけを得ましてようやく協同組合は生きておる。この中心がなくなつたときにおいては、協同組合を支離滅裂にする以外にはない。この意味において、下部組織のものがだめだということであきらめて、乙免許をどんどん申請しようといたしておる。われわれの政治は、どうしても中小企業者を維持育成しようとすることを多少でも弱めるようなことを、この場合やるべきではないのでありますです。ことに今日、一面においてはカルテル的な性格が出て来ておるような状態でありますし、この点については、私は当局が一年限りというような考え方で進まれることは非常に危険であるということを、時間的な関係もありますが、特に一例を引いて申し上げたい。従来協同組合がダンピングに対していかなる役割を果して努力して来たか。しようちゆうの例を申しますれば、しようちゆうが値引きをいたしまして、ダンピングをいたした、その際において政府はこれに対して、値引きまかりならぬということになつたのであります。値引きがまかりならぬということになりますれば、大メーカーはどんどん進出いたしますけれども、地方の弱小企業者はこれに対抗することができない。大都市に出て来て売る場合においては弱小メーカーは銘柄が悪いからして売れない。従つて値引きをしたり、いろいろな取引条件を、合法的に当局をごまかしながらでもようやく生きて来た。その時に協同組合があつたらばこそ、販売網が組織されて、そして中小企業者の販売組織を確立して、ようやく中小企業者は協同組合のおかげで伸びて来た。もしその当時において協同組合というものがなかつたならば、おそらく大メーカーに圧迫されたでしよう。政府の方は、値引きは許さないということによつてだれを得させたかといえば、結局大メーカー、銘柄のいいものだけがどんどん伸びて来るという結果になつた。その際自然放任であるならば、地方の中小企業の生産者はつぶれる。協同組合はこれを防止する大きなる役割をなしておるのであります。この協同組合の維持育成に対してでなしに、むしろ弱めるというような考え方で進んでおるのでありますが、私は協同組合というものは、どこまでも維持育成をしなければならない。大メーカーに対してようやく自己を守つておる、そして販売網を確立いたして、酒税の完納をいたし、消化も完全消化に向つておる。どうしてもメーカーのいい酒だけがどしどし売れるのです。それをようやく地方の酒を消化しているということは、協同組合の役割であると思う。政府はこの案は協同組合を弱体化するものではないというお考えであるか。さらに協同組合の維持育成、いわゆる中小企業生産者の維持育成に対してはいかなる方途をお持ちになつておるか、聞きたいのであります。
  46. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員  永山先生のお話を聞いていると、いかにもわれわれが協同組合について云々というふうに聞えますが、実態は相当違つたものであると私は思つております。たとえば現在ある協同組合の相当の数は、酒類の製造業者が協同組合をつくつて、そして実際の販売は配給所の人たちに請負わせてそしてトンネル口銭をとつている形態が相当あるのです。これを普通協同組合というような名前で、それで協同組合、協同組合とおつしやつて従つてそういうトンネル口銭をとるような組合がなければいけないというようなことになつて行くような結果をもたらしている。それは私はおもしろくない。従つてそのような組合は、甲指定を受けているという関係においてのフエーヴアというものはなくていいのではないか、ないしは漸次なくして行くべきではないかという考え方なのです。それは協同組合という名前であるがゆえに、そういう姿でもつてそのままあるがいいというふうなお話なつ来ますと、われわれがいかにも協同組合を敵視しているように見えるのですが、結局メーカーが協同組合をつくつて、配給所で配給をやらせている。人に請負わせて、トンネル口銭をとつている者が相当ある、そういうような姿が私は本来の姿ではないと思うのです。そこにいろいろな問題があり、さらにまた現在の指定業者に対する普通の卸業者の非難があるわけです。     〔淺香委員長代理退席、川野委員長代理着席〕  私は本来の姿の協同組合なら、何もこれを敵視するつもりなど毛頭ないのです。ただ、要するにメーカーがトンネル口銭をとつているというような姿が、はたしていいだろうか。この点については、私はその名前が協同組合なるがゆえに、トンネル口銭をとつている姿がいいというふうなかつこうとは思つておりません。従つて、それはそうしたメーカーの人たちがいろいろ施設をつくる、あるいは原料購入等について協同組合をつくる。これはその面から必要だと思いますが、いわばトンネル口銭をとるためだけに存在するような協同組合が、はたして本来の趣旨の協同組合であろうか、こういう点も実は考えるわけであります。しかし、それは全部が全部というふうなわけども思つておりませんが、しかし相当多くの組合にそういう事実が厳然としてあるのです。従つて私は、そういうことができなければ協同組合というものは存在しないのだ、あるいは成立できないのだというふうな考え方がはたしていいのか悪いのか、私としてはそういつたようなものは漸次整理されて行くこともやむを得ないのじやないか、かように考えております。
  47. 永山忠則

    永山委員 局長に、中小企業メーカーがつくつておる協同組合のあり方の位置を指摘して、そういう協同組合はなくなつてもやむを得ないのだというような考え方がありますから、やはりこういう第二十五条のような問題になつて来るのでありまして、そういう組合を維持育成するのだ、そうして大メーカーに対処して中小メーカーがともに手をつないで生きて行くという方途に向つて、特に維持育成するということをお考えにならないか。維持育成という方途は少しもなく、トンネル口銭をとつているような協同組合があるのだから、つぶれてもしようがないのじやないかといつたような、きわめて観念論的な考え方で行つたならばわが自由党は実際迷惑しごくで、わが自由党の政策は、結局自由経済ではありますが、そのために弱小企業者が振り落されないように、これを保護育成することに非常なる力を入れて、中小企業育成問題には、自由経済なるがゆえに特に力を入れねばならぬということを考えておるのでありまして、わが自由党の基本方針からもこれは逸脱している感があるのであります。えてして大蔵省の案というものは、わが自由党の政策よりは資本主義的な行き方をされて、弱小企業者を圧迫するという案が各所に盛られておるのでありましていわゆる大蔵省の性格そのものがここに出ておるのであります。私は多くを申しませんが、結局今度出ようとしておる保険協同組合法案に対する問題にしても、大蔵省の頭が協同組合の共済事業を押えようというような考え方になつておる、あるいは中小企業金融公庫の問題にいたしましても、いわゆる協同組合の方の金融を圧迫して、協同組合金融というものに対する育成強化という面が出ていない、あるいは企業協同組合に対するところの課税の問題、あらゆる問題が、企業協同組合あるいは協同組合の維持育成というものを考えぬのみならず、むしろ圧迫しようという方向にすべての性格が出ようとするその片鱗の一つとして見られる。われわれはどうしても協同組合に維持育成ということを考えねばならぬのでありますが、私はみずから協同組合を経営いたしておるものでありますから、トンネル口銭という問題に対しては、即ちトンネル日銭が協同組合の組合費である、協同組合は何も組合員から募金をとらず、あるいは組合費をとらずに存立することはできるものではありません。だからして協同組合がどうしてもここに、トンネル口銭といえばトンネル口銭でありますけれども、一つの組合費であり、さらに事業費の一部を組合へ納めておるのでありまして、そういうような部分的な偏狭なものをとつて、協同組合はつぶれてもしかたがないのだというふうな考え方で行くということは非常なる危険を伴うものでありまして、酒造関係を取締られており、さらに指導されておる当局としましては、しようちゆうの値引き等の問題から、いかに協同組合が弱小メーカーを擁護しながら、しかも販売網を農村津々浦々に至るまで確立をいたして、そうして銘柄の悪い酒でもよくこれを販売いたして酒税の完納に努力をして来たかということは、これは何といつてもお認めにならねばならぬのであると同時に、協同組合を維持育成するという方面に対して特に留意されなければならぬ、協同組合が実際生きるという今の生き方はいろいろありましようけれども、一番大きなウエートをなすものは金融面なのです。金融ということに対するバツクを失つたならばおそらく協同組合は成り立ちますまい、解散する以外にない。乙機関は一応の資産があり、力のあるものが許可をされて、そうして許可の当時から甲機関とは別個の性格で、今日数年間にわたつて伸びて来たのでありますから、乙機関との均衡上、あるいは乙機関の反対運動等が今日これらの問題の一部にあるべきはずはないし、またそんな問題に対してこだわる必要もないのでありますから、この場合当局は協同組合の維持育成ではない、むしろつぶれることに役立つようなこの行き方に対して、厳に考え直してもらわなければいかぬ。何といつても協同組合が加算税の扱いをいたしておるということによつて、そこに金融の一切のウエートがかかつておるのであります。将来政府はこの協同組合の維持育成に対して、この加算税の優位的地位がなくなつた場合において、これに対してどういうような方途で金融等のめんどうをみる考えであるか、自然にまかす以外にないというお考えであるかということをお聞きしたい。
  48. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 企業組合の問題においてももちろん同じでありますが、協同組合が協同組合として本来の姿において発展して行くことは希望こそすれ、決してこれを阻止するつもりは毛頭ございません。ただ今お話になつている協同組合の関係におきましては、いわば政府の公団廃止後における酒類行政の過渡的な措置によつて、そうした一時的な反射的便法によつて金融等に利益を得ていたということはあると思いますが、これは金融の利益を得させるためにああした措置を講じたわけではないのであります。従いまして、大きな線としましては、この際基本税、加算税は一本にして、指定業者をやめて行くということは私も一応やりたいと思つておりますけれども、同時に今までのそうした反射的利益において得た便益がなくなつた場合の後の協同組合をどういうふうにして行くかという問題については、当然別個に考えらるべき問題だと考えております。御承知のように中小企業の金融につきましては、これは私ども直接の所管ではございませんが、いろいろな手だてをとつておりますし、大体製造業者の方に対しましては、仕込み資金のような問題にしましても、役所の方でも相当ごあつせん申し上げております。私の知つている限りにおきましては、私がおりました管内などは比較的順調に資金の融通もできておりましたし、それからあと、おけの問題などが大分残るのですが、これにつきましては商工中金などで大分金を出すかつこうになつておるといつたような関係からいたしまして、中小の酒造業者の方に対しましても、かなりいろいろな便益は役所の方としても積極的にやつておるわけでございます。従いまして、今までのこの制度によつて得た便益がなくなる場合においては、当然それにかわるべきといいますか、それとかわつた手でもつて中小の製造業者の方が生きて行けるような方途も十分講じて行くべきではないか、かように考えております。さような意味におきまして、この制度がなくなつて、すぐに中小製造業者の方が困られるというような姿には持つて行くべきではないし、また持つて行くつもりもございません。この点については別途考えて行きたい。なお協同組合の制度として生かして行くというのが一つの方途だろうと思いますが、この点いろいろな具体的な事例につきましては今ここで申し上げることができませんが、できるだけこれを生かして行くことについては、金融的な面におきましても、われわれは努力して参りたい、かように考えております。
  49. 永山忠則

    永山委員 わが自由党としましては、中小企業対策の一番大きな性格をなすものは中小企業協同組合の維持育成である。この組合主義を推し進めることによつて初めて今日の自由経済の盲点を打破することができるというのが、私らが特に主張いたすところの点でございまして、かりそめにもこれが弱体化するだろうというようなことが片鱗でもうかがわれるべきものに対しては応ずることはできぬのでありまして、積極的にこれが維持育成に対するところの政府の方途が見出し得ない限りにおいては、遺憾ながら私はただいまの言には承服でき得ない。特に一年間に限らねばならないという絶対理由がどこにあるかということをお聞きしなければならぬのであります。
  50. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 一年間に限りましたのは、結局基本税、加算税の制度をやめる。この点についてはかねがね、るる申し上げておりますが、大体加算税の制度は自由販売酒ができた時期において生れたいわば変態的なものである。それで現在のような配給酒がなくなつて、いわゆる自由販売酒というものがほとんど大部分であるというようなときにおきましては、こういう変態的な姿というものはもう漸次なくなるべきではないか。しかもこの税率が高い時代であればまた別に考えようがあろうと思いますが、大分税率が低くなりまして、しようちゆうなどになりますと、もし軽減額が全部加算税の方にまわるとすれば、もう加算税というものはほとんどなくなつてしまうといつたような姿にさえなるわけでありますので、従つてこの際としては一本にしたい。一本にすればおのずから指定販売業者の制度というものはなくなるわけでございます。しかし現在御指摘のように協同組合というものがありますし、また甲の卸売機関というものもありますし、そう法律によつて一挙に、きよう法律が公布され、きようからそういう業者がなくなるということになりますれば、おのずから経済的な混乱もあるわけでありますので、これはやはり一年程度の期間を置くべきであると同時に、一年程度の期間を置けばおのずからその間に徐々に対策が講じられ得まして、円滑に制度の移行ができるのではないか。こういうふうな考え方から一年の期間を置いたわけであります。
  51. 永山忠則

    永山委員 配給制度、すなわち特殊用途酒類関係は、これも一年で打切るということ、すなわち本年一年限りにこれを廃するという考え方はどういう点にあるのです。
  52. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 率直に申し上げまして、指定販売業者の制度と配給酒制度につきましては、私は必ずしも両者がうらはらをなさなければならぬものとは思つておりません。従いまして指定販売業者の制度が一年で終る場合においても、配給酒の制度は必要があらば延びることもあつてもいいのじやないか、あり得るのじやないかというふうには考えております。ただ配給酒の制度をどういうふうに考えて行くべきかということにつきましては、何と申しましても、今度税率の引下げ等で酒類行政については相当大きな変革がこの時期にあるわけであります。片方においては酒の値段が安くなる。しかし生産が相当大きくふえる。そういつた意味において大きな変革があるわけでございます。従いましてこの配給酒の制度をそのままの姿で存続さすべきか、あるいは何らか違つた形で存続さすべきかということは、この一年における酒類業界の推移、あるいは消費状況の推移というものを十分見た上でもつて腹をきめるべき問題ではないか。そういうふうに思つております。従いましてとりあえず一年の年限は置いておきますが、配給酒の制度につきましては、情勢によつてさらにこれの延長について御審議願う必要が生じて来るかもしれぬと、かように考えておりまして、指定販売業者の制度とこの制度と必ずしも同じに、切り離せないものだとは私は考えておりません。ただしかし、今申しましたように一応今年という年が、少くとも酒類の業界にとりましても酒類行政にとりましても、大分かわつた様相の出て来る期間でございますので、とにかく一年間様子を見るために、配給酒の制度については一年。それでもう一ぺんその期限の切れる時期において再検討してみたい。こういう意味におきまして一年の期間に限つてみたわけであります。
  53. 永山忠則

    永山委員 そうすると、この一年に限るということに法律はなつているが、場合によれば一年が延びてもいいということは、どこでこの法律では解釈できるか。
  54. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 それは一年やつてみまして、もし必要があれば、さらにこれが延長について国会に御提案申し上げまして御審議を仰ぎたい、かようなつもりであります。
  55. 永山忠則

    永山委員 もし必要ならばこれを延ばすことを得ということでなければ法律的に処置できないのに、ただ局長が今答弁をされたからということでは、われわれどうもならぬと思います。この法律案は一年で切ると書いてあるので、一年やつてみたが、都合が悪ければまた一年延ばす、そのときはまた法律を出すというような案文にはこれがなつていないのでありまして、どこまでも法律的に一年で打切る、もし必要あらば一年延ばすことを得ということがあれば別ですけれども、その点はどうなんですか。
  56. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 延ばすことを得というような意味のことまで法律にはつきり規定してしまえば、全部あらためて国会の御審議を得る必要はないわけですが、とにかく一応一年ということにしておきまして、われわれは一年たつたあとで、配給酒の制度としてそのまま存続すべきか、あるいは別の対策として考えて行くべきかというような問題があるわけでありますので、従つて法律の上から言えば一年で切れる。しかしその後どうするかという問題につきましては、やはりいろいろ検討してみた結果、あるいはこの制度を続ける方がいいという結論が出れば、あらためて国会の御審議を得る、あるいはこの制度をなくしてもよりよい別の手でもつて行けるということになれば、一年でおしまいにしてよいという意味で、とにかく一年間に切つて審議つている、かようなつもりであります。
  57. 永山忠則

    永山委員 ただいまの御説を聞きましても、一年では無理だということがはつきりわかるのでありますが、一年でいいんだ、もうあとは絶対行かないのだという信念ならまだこれも読めるのであります。無理だという気持が非常に多分にあることはわれわれはもう了承できる。何といつても密造対策から見ましても、今日のこの税率、この酒の値段でどうしても密造対策なんかできるものじやない。これは、配給制度は漸次非常にウエートが軽くなつたようにおつしやるけれども、農村の生産奨励その他密造対策から見てむしろうんと配給制を確立しなければならぬ。こういうように増石をなさる場合において完全消費の面から見ましても、ことに合成酒、しようちゆう関係から見ましても、税率がうんと下つて、今日の加算税というものもみななくなつてしまうというのですが、この加算税が税としてなくなつてしまうことよりも、さらに低い税まで持つて行くときにおいて初めて密造対策にもなるし、配給制度がなくなつていいのでありまして、来年度は税金をうんと下げる、密造対策になるように下げるというような見通しなんかつくものではない。でありますから、私は当局がここ一年に限るということは観念にとらわれているので、決して実情に沿うてない。ことに加算税の問題は過渡的、一時的、反射的の利益なんだというような考え方が間違つているのである。あれほど高い税率をメーカーあるいは販売業者が国家に完納するのだ。その場合に、金融機関というものは今でもそうでありますが、オーバーローンでとても出してくれないのです。そういう関係において、金融の操作面において絶対の地位を持つて生れておるものでありまして、金融情勢が今よくなつたというような考え方で、この加算税の金融的地位をもう剥奪していいのだという考え方はまさに逆であります。禁輸関係は日々ますます困難になつて来ておりまして、ことに酒類等の販売業者に対する金融などは、銀行関係ではなかなか困難である。ただここに加算税の性格を持つた有利な地位があればこそ、金融というようなものが浮き上つて来ているのでありまして、この甲機関に対する、過渡的、一時的、反射的のものだ、公団から移行するためにやむを得ずつくつた崎型児だというような観念は、今局長がおつしやる観念でありまして、当時の観念は、これによつて税金を完納さしてあの高い税率税金をいかによく完全徴収して行くかということから来ましたところの、絶対の要素から生れたものであるということを頭にお置きになりまして、ことに密造対策と酒の完全消化の面、あるいは酒税の完納の面、弱小メーカーの維持育成の面、ダンピング防止の面、ことに企業整備は必然的に起る問題であります。ここにおきまして酒類業組合等に関する法律案の通過と相まちまして、これらの業界と相まつて、ほんとうの整理をするのに一年くらいなんということは、これが官僚の持つておるところの観念であつて、われわれも事業に従事いたしましたけれども、石の上にも三年です。二年や三年の基礎がなければ、この新たに生れるところの酒類業組合も基礎ができるものではない。少くとも二、三年の余裕を持たなければ、とうてい政府のお考えになるような、ダンピングを防止しながら、弱小メーカーを有利に企業合同せしめて、企業の合理化をはかりつつ酒税の完納をいたし酒の消化の完全をやろうということには至らぬと考えておるのでありますが、いくら言つても並行線になるようだし、私は大専門家の加藤高藏君が病気で寝ておるようでありますから、以上当局の意をただした次第であります。
  58. 川野芳滿

    ○川野委員長代理 委員長代理からこの際発言を申し上げまして、大蔵当局の蒙を開きたいと存じます。ただいま永山委員の発言に対する主税局長の答弁を聞いておりますると、現在の協同組合はあたかもメーカーの団体である、あるいはトンネル口銭の団体である、こういうような言葉をお使いになつたようでありますが、事実を知らざるもはなはだしいと言わざるを得ないのであります。すなわち現在のメーカーというものは、生産者、卸業者、小売業者三位一体となつて組織しておりまするところの協同組合であるということをまず御認識願いたいと存じます。  さらにマージンの問題であります。なるほど一部にはトンネル口銭と思わしきものをとつておる組合もあるかとも考えますが、大多数の組合は、そういうことはみじんもないということを、これまたよく御了承いただきたいと存じます。そういうような形から協同組合を圧迫すればいろいろな問題が出て来る。現に先般生活協同組合において、保険事業をやつておりますこの事業に対してまで押えんとする法案大蔵当局は出されんとした。ゆえにどうかもう少し協同組合に対する大蔵当局の認識をかえていただきたい。局長がそういうような考えを持つておいでになりますと、この甲機関、乙機関廃止にあたりましては、あなたの前衛部隊であります税務署長あたりは、この協同組合の改組にあたつては会社組織につくらせる、こういうような方向に動くことは火を見るより明らかでございます。よくこの点をひとつ御了承いただいて、事実を知らないような発言をせられないように願いたいと存じます。
  59. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 一言釈明させていただきます。私の言葉の上に多少言い過ぎの点があつたとしますれば取消させていただきます。ただ一部にそういう組合があるということは、ただいまのお言葉の上にもあるようでございましたので、私が申しましたのは、その一部の組合のことなので、それが多少全般的な組合のように聞えるような発言をしたとすれば、それは取消させていただきます。
  60. 川野芳滿

    ○川野委員長代理 午前中はこの程度にいたしまして、午後二時から再開することにいたします。     午後一時十五分休憩      ————◇—————     〔休憩後は開会に至らなかつた