○愛知
政府委員 ただいまたいへん広汎な範囲にわたりまして御意見を承
つたのでありますが、順次お答えをいたしたいと思います。
まず第一は、
予算の編成についての経過のお尋ねでございましたが、これはひ
とつできるだけ詳細にお答えいたしたいと思います。すでに小川
委員のお尋ねが先般ございましたときにも申し上げたのでありますが、今度の二十八年度の
予算の編成ということは、申すまでもございませんが、独立国の第一年度の
予算の編成でございます。それからただいま御指摘もございました
通りに、これは独立第一年であると同時に、われわれ
日本人の手で確立しなければならない、ほんとうの政党政治のもとにおいてつくられる
予算案である。また、従来のいわゆるドツジ・ラインと申ますか、占領下にありました当時のいろいろの
財政方策については、おそらく、私の
考えるところでは大多数の国民的の期待において、これの修正を要望するという気持がほうはいとしてあ
つたと思うのであります。私どもといたしましては、そうい
つたような背景のもとにおきまして、政党内閣としてのりつぱな
予算をつくりたいとかねがね念願いたしておりました。それで昨年の十二月の末になりまして、まず自由党が二十八年度の
予算編成の根本方針というものを党議できめました。政府におきましては、その党議できまりました与党の
予算編成方針を、その線に沿うて尊重してつくり上げたものが、現在提案されておる
予算案でございます。ところが今のお尋ねの中にございましたのは、昨年末に大蔵省が原案をつく
つた、その原案が自由党の手によ
つてめちやめちやに
なつたというような趣旨の御発言があ
つたかと思うのでありますが、そうではないのでありまして、私どもは今申しましたような基本的な、客観的な
情勢や雰囲気の中において、よいものを民主的につくり上げたいという気持から、従来のように、いわゆる大蔵省という役所の手によ
つてつくり上げたものが、
動きがつかない、閣議に一旦提出されたならばこれは不退転のものだ、と当時のお濠端を肯景にしたそういうやり方というものはこの際根本的にかえなければならないという
考え方から、大蔵省の原案として閣議に出しましたものは、いわゆる不退転のものではなくて、一応とりまとめたところの原案であ
つて、これを党議の
対象にし、そうして各閣僚からも活発な意見を聞き、また党からのいろいろな希望に対してもこれをよく聞いて、そうしてよりよきものにするという努力が払われたのでありまして、むしろ従来に比べれば、その編成の過程はま
つたく理想的な形態に近づいたものと思うのであります。
それから内容的に申しますならば、先ほど申しましたそもそもの自由党としての
考え方の大綱は、
一般会計で言うならば、九千三百億円
程度の歳入歳出が適当であろうということでございます。また産業
投資関係は三千二百五十五億円
程度が適当であろう、こういうことでございます。これは統計的に申しますならば、この両者と現在提出されております
予算案とはほとんどま
つたく合致するものであります。最初の
考え方の
通り、好んでインフレ的な
予算をつくるとか、好んで
財政規模を膨脹させようというようなことは断じて
考えておらないところであることは御
承知の
通りでございます。
さらに、その次に申し上げたいのは、先ほど松尾さんもおつしやいましたが、現在世界的に景気が調整の過程に入
つておる。これはとりもなおさず、もつと平たくいえば、その世界経済の中における
日本経済の
見通しとしては、いわゆる不況がおそれられる状態にな
つておるのだと私は思うのであります。こういう経済
情勢の
見通しのもとにおいては、私は
財政理論としても支払い超過の
予算がつくられることがむしろ望ましいのであ
つて、もしこういう客観的な
情勢のもとにおいていわゆるデフレ的な、縮小的な
予算を編成するということは、ますます
日本の経済の深刻さを強めることである。むしろ私どもは、いわゆるパブリツク・エクスペンデイチユアというものをこの際大きくするということこそ、現在の
財政方針としてとるべき措置であろうというふうに信じておるのでございます。
従つてまた支払い超過が、ただいま御指摘のように大体千百億ないし千五百億円のその間において行われるだろうとは思いますが、これはとりもなおさず金融の緩和にな
つて、
オーバー・
ローンの解消にもなる。またそのうちの相当の部分は——今回
予算で出しますところの広義の公債は合計して五百二十億円でありますが、この五百二十億円の公債は、十分民間資金によ
つて消化ができるということにもなりますし、この
予算案からインフレが起るということは、私は断じてないものと信ずるのみならず、こういう
予算案でなければ、今見通されておるような
日本経済の前途に対しては、むしろ好ましくないことになるので、それを是正しようとしておるという点が特色であると思うのであります。私どもは、ただこれも
お話がございましたが、公債を出すというふうなことについては、心理的に相当の影響のある点は否定ができないと思います。一たび公債を出せば、その限度がいくらでもふえるおそれがあるというその点を懸念いたしまするならば、今後においては非常にこの点は警戒しなければなりません。しかしさりとて私はこの
予算のこの
程度のものであれば、今るる申し上げましたように、絶対にインフレになるものではございませんので、その間のわれわれの
考え方というものを、できるだけ国民の
大衆層に理解をしていただいて、インフレ懸念というものが
理論的な根拠なしに、ただ心理的懸念が起るようなことを防ぐことが絶対に必要であり、また実行できる限りにおいて、私は国民の貯蓄性向というものを高めることは必要でもあるし、できることであるというふうに
考えておるわけでございます。ただいま広い範囲に御質問がございましたが、大体全体に対してお答え申し上げたつもりでございます。なお足りませんければお答えをいたしたいと思います。