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塩見政府委員 鯨油の問題につきましては、ただいま
田口委員からお話のありました通りでございます。大体戦時中に日本の油脂が非常に不足したときに、当時ございましたところの約七万数千トン、これは日本の油脂年間総需要量の約半分にあた
つております。それを当時の公定価格で全部
政府が買い上げまして、それを戦時中の油脂の国内需要、民需の方に充てて来たわけでございます。また終戦後やはり同様に、その日本の油脂の不足というふうな現状からして、南氷洋あるいは内地の沿岸で生産されますところの鯨油を公定価格でずつと買い上げて来て、二年ほど前までは内地の需要をつないで来たわけでございます。その間外国との競争等の
関係を見ますと、非常に捕鯨業者に対しては負担をかけた。すなわち外国では戦後において相当
漁船等の償却も進んでおりますし、その他い、ろいろ有利な点を持
つたわけでございますけれども、統制を続けてお
つたために、日本の捕鯨業者の方は償却が進んでおらぬ、こういう状態なのであります。また戦時中に持
つておりましたところの船は、大半海軍の方に徴用を受けまして撃沈され、その当時
補償は
政府でも
つてやることにな
つておりましたのが、終戦直後の司令部からの命令で
補償ができなくな
つたというふうな
関係で、損はそのままにな
つておりまして、それを全部金を借りてや
つて行く、こういうふうな形態にな
つておりましたがために、外国に対する競争力においては非常に不利な状態にな
つてお
つたわけでございます。それが大体二年数箇月前に油糧公団がなくなり、油脂の統制がなくなると同時に、その当時の情勢からして外国の油脂
資源が相当安く入
つて来ますし、ことに本年あたりは相当な差があるというふうな
関係で、資本の償却もできておりませんし、前の撃沈された船も借金してや
つておるというふうなこともございまして、捕鯨の方は国際競争力において不十分な点がたくさんございます。また金利においても、日本の産業界全体が苦しんでおるところでございますが、金利が非常に高い。おそらく今
田口委員のおつしや
つた金利は、向うの金利は普通金利であ
つて、これは特別な政策金利ではないのでありますけれども、日本の普通金利に比べますと非常に安いというふうな
関係、それから
保険料の方においても、外国との対比をしてみますと、日本の
保険料は非常に高い、そういうふうな
関係から採算
関係を見ますと、償却、金利、
保険料等は相当な
部分を占めておりまして、
あとの労賃であるとか、
経営能力であるとか各種の点下日本の捕鯨は、十分有利な力強いものを持
つておるのでございますが、非常に大きな
部分の償却、金利、
保険料というふうな点について外国と競争ができないような状態にな
つてお
つて、その三つのものが生産費のうちのほとんど半分くらいを占めておるという状態でございます。その半分のものが外国と比べますと非常に高いという
関係から、非常に不利な状態にあるというのが現状でございます。
もう一つ捕鯨について申しますと、ことに南氷洋捕鯨は、その年の夏ごろから準備しまして資金を借り入れて、十一月ないし十二月に南氷洋に出かけまして、と
つたものが日本に四月に入る、四月に入
つたものは、翌年の三月までの年間需要に充てるものを日本に残して
あと輸出しなければならないという状態にあるわけでございまして、一ぺんにどつと持
つて来る
関係から、非常に値がたたかれやすいという点と、また借金して出漁しておるわけですから、四月に持
つて来たものが売れない間は借金が返せない。しかも出漁の方はそれが売り切れる前に出漁しなければならないためにまた資金がいるというので、どうしても企業の性質上二重の借金という形にな
つて参るわけです。この額が非常に厖大で、昨年は当初三十億、あ
とつなぎ資金等で数億を借りましたけれども、ことしは倹約をしまして二十五億、こういうような厖大な資金になりますので、前年の借金も返さないままでまた次の出漁の資金を借りて行かなければならない。それがまた二重の借金にな
つて、滞貨融資という性質に見られがちでありますのと、銀行もそういう点を非常に懸念して引締めて参りますし、また額も大きいものですから、四十数行の協調融資にな
つており、その間の
意見が合致しませんと融資ができないということにな
つております。これは前年もそうでございますが、今年もさようでございます。大体金融
関係者の方は、そういう性質のものは、普通の金融ではとうていまかなえない、金融ベースに乗らないというような
意見でございます。これは日銀はもちろんでございますが、その他の銀行
関係あるいは
銀行局、あるいはその前に安本のあ
つた当時の財政金融局等の
意見でも、これは普通の金融ではとうていまかない得ないという状態にな
つております。そこで
水産庁といたしましては、この夏にそういうような
関係者の方と協議しました結果、金融はむずかしいというような結論が出ましたので、これは
政府でも
つて臨時的に買い上げて、金融の方を安定させてつけるというほかに
方法がないのではないかというようなことから、
臨時的に食糧管理特別会計において買上げて、金融の方をつけて、この企業の安定を期そうという方針をきめて、大蔵省と折衝したわけでございまする大蔵省の方といたしましては、油糧公団の廃止をやり、その他竹馬の足を全部切
つて行
つた関係からして、急速にそういうようなものをまた元にもどすというふうな形には持
つて行きにくいという、主としてこれは主計局、大蔵大臣等の
意見でございますが、そういう点で、その問題がうまく進んでおらないわけであります。
また買いたたきの点については、御存じの通り、世界的な油脂の大資本であるユニ・レバーが市場を大体統制しておりまして、そういう金融がつかないというような意味の足元を見るような態度で買いたたいて参る、ことに四月にと
つて来た直後においては、国際相場は必ずたたかれるというような状態でありまして、国際収支を
考える上からい
つても、非常に日本としては不利な状態にあるわけであります。それに対する
政府の買上げについては、今までそういうような意味で、
臨時的に食管で買い上げるという線でいろいろ検討してお
つたわけでございますが、これはある程度恒久的な線としても検討して参らなければならぬのではないかと
考えて、今買上げの
方法その他について検討中でございます。これの一番の難点としては、大蔵省の方において反対が強いということでありまして、なかなか進捗しおらないわけでございます。大体そういう状態にあるわけであります。