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1952-12-03 第15回国会 衆議院 水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月三日(水曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 福永 一臣君    理事 田口長治郎君 理事 松田 鐵藏君    理事 日野 吉夫君 理事 山中日露史君       宇都宮徳馬君   甲斐中文治郎君       川村善八郎君    濱地 文平君       志賀健次郎君    白浜 仁吉君       中村庸一郎君    杉山元治郎君       辻  文雄君    井手 以誠君       赤路 友藏君  出席政府委員         総理府事務官         (調達庁不動産         部長)     川田 三郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   谷川  宏君         農林事務官         (水産庁漁政部         長)      伊東 正義君         農 林 技 官         (水産庁漁政部         経理課長)   高橋 泰彦君         参  考  人         (千葉内湾漁         業協同組合連合         会長)     篠崎 長次君         参  考  人         (千葉富津漁         業協同組合長) 森 竹次郎君         参  考  人         (千葉大貫町         漁業協同組合         長)      山口卯之松君         参  考  人         (千葉富津町         下州漁業協同組         合長)     馬場 甚吾君         参  考  人         (東京羽田漁         業協同組合長) 伊東 久義君         参  考  人         (東京羽田漁         業協同組合員) 田中 宗正君         参  考  人         (神奈川茅ヶ         崎漁業協同組合         長)      宮川 勇吉君         専  門  員 杉浦 保吉君         専  門  員 徳久 三種君     ――――――――――――― 十二月一日  漁船損害補償法の一部改正に関する請願(加藤  常太郎君紹介)(第三二三号) の審査を本委員会に付託された。 同月二日  朝鮮水域における漁業保護対策早急樹立に関  する陳情書(第五  二五号)  漁業権免許料及び許可料に関する陳情書  (第五五九号)  佐世保湾内における漁業禁止による損害補償に  関する陳情書外二件  (第五六〇号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  漁業損害に関する件     ―――――――――――――
  2. 福永一臣

    福永委員長 これより会議を開きます。  漁業損害に関する件について調査を進めます。
  3. 中村庸一郎

    中村(庸)委員 私は去る二十九日の委員会におきまして、防潜網問題に関し緊急質問をいたしたのであります。本日正式に主題として本委員会に取上げられましたことは、本問題解決のために一段の前進をした感を深うするものであります。本日は参考人多数見えておりますから、この防潜網に関しまして、二万八千世帯にわたる漁民が年末に際してきわめて窮境に追い詰められておりますので、この救済に当りまして見舞金を至急出していただきたい。昨年度は六百万円支給されたのでありまするが、本年度におきましては、この実情をよく調査せられまして、相当額を支給賜わらんことを願つてやまぬのであります。またこの防潜網被害につきましては、法的の根拠が今日まで誤まれる見解のために立てられなかつたのであります。この法的根拠を与えられますることを二つの問題につきまして参考人も多数見えておられますることでもありまするから、よく事情を御聴取くださいまして、本委員会においてすみやかに解決審議を進められんことを希望いたす次第であります。
  4. 福永一臣

    福永委員長 この際お諮りいたします。駐留軍海上演習及び防潜網などの軍事施設による漁業損害はきわめて甚大であります。当委員会といたしましても前国会以来しばしば取上げて来た問題であります。また委員各位より強い御要望もありましたので、本日は本問題に直接利害関係を有する業者の方々よりその実情を承りたいと存じます。つきましては防潜網関係者として千葉内湾漁業協同組合連合会長篠崎長次君、千葉富津漁業協同組合長森竹次郎君、千葉大貫漁業協同組合長山口卯之松君、千葉富津町下漁業協同組合長馬場甚吾君東京羽田漁業協同組合長伊東久義君、同じく組合員田中宗正君、上陸演習関係者として神奈川茅ケ崎漁業協同組合長宮川勇吉君、九十九里浜海上演習関係者といたしましては、千葉県勝浦町豊浜漁業協同組合理事神定竹松君のおいでを願つておりますが、以上八名を参考人に選定するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 福永一臣

    福永委員長 御異議なしと認めそのように決定いたします。  なお議事の進め方につきましては防潜網関係より始めまして、九十九里浜関係を最後に全部の参考人の意見を聴取した後、委員政府委員及び参考人に対する質疑を許します。なお参考人の一名当りの発言時間は十分以内といたします。それでは篠崎長次君。
  6. 篠崎長次

    篠崎参考人 このたび私ども陳情いたしました東京湾口に張られました防潜網問題に関しまして、いささか申し上げまして皆様の御調査、御批判を願いたいと思うのであります。  終戦後私ども漁業者日本再建の一翼をになうべく、父祖伝承漁業すなわち蛋白給源でありまする漁獲の増産を目ざしまして、その責を果したいと存じたのであります。しかしながら御承知通りあの苛烈な戦争におきまして、漁場は非常に荒廃いたしておつたのであります。これは全国的でありまするが、特に東京港内首都東京を控えておりまするだけに、あの峻烈な空中戦あるいはいろいろの軍事施設のために、むしろ漁場は使えないのではなかろうかと懸念されるほどに荒廃いたしておつたのであります。しかし私どもは敢然とこれにいどんだのであります。心身ともに精魂を打込みましてまず漁場回復に、市町村は乏しいながらもわずかばかりの予算をさいてくれたこともございました。文字通りわれわれは身をもちまして、東京港の漁場整備回復に当つて参つたのであります。また漁具漁船、かようなものは御承知通り終戦後乏しい資材の中からなかなか得られない、非常な困難がありましたが、これもなんとか克服いたしまして、漁具漁船等を一応整えまして、さてこれから本格的な漁業にかかろうというやさきに、突如二十五年夏ごろから東京湾口にあやしい施設が始まつて参つたのであります。  しかしその施設が何ものであるか、いかなる意図のもとに行われんとするかは、もとより漁業者は関知するものでもなく、また理解力もなかつたのでありまするが、二十六年の一月に完成してみますると、これが防潜網だと称されたのであります。これはたいへんだ。魚道を断たれてしまつたのではせつかくこれからわれわれが千葉県、神奈川東京、一部二県にまたがりますこの東京湾内大小漁船七千百隻、二万八千の従業者漁業者に及ぼす影響はきわめて大きいので、そこで県庁等陳情いたしまして、何とかしてもらいたいという程度であつたのであります。しかし徴妙な国際関係のためというようなこともわれわれ考えまして、日本が独立さえしたならば、かようなものは即時撤去してくださるものというような淡い望みを抱きながら、一日も早く撤去してもらうことを望んで参りましたが、現在に至るまで撤去よりむしろ補強されまして、非常に強力な施設がなされておる状態であります。千葉富津岬から神奈川旗山崎にかけまして、十二マイルの間の防潜網は、おそらく水産委員皆様は専門の方々でございますのでおわかりでございましようが、ワイヤー・ロープ八寸目の網を海上から海底にかけて張りめぐらしますならば、いかなる小さい魚も中へは入つては来ない。すなわち回遊魚が一匹も中へは入らないというのが実態であります。この点について私ども水産庁はもちろん外務省あるいは大蔵省、特別調達庁等に、再三再四陳情をいたして参りましたが、いまだそのらちは明いてはおりません。また水産庁等も、魚にどれだけ被害があるかということがいまだ判明せぬ、その調査は続行中であるというような、きわめて漠とした御返事であります。外務省といたしますならば、国際関係の徴妙な今日において、はたして撤去できるかできないかは明言の限りでない。もし漁業に支障ありとするならば、それは当然何らかの形で補償をしなければならぬであろうという言葉はお聞きいたしておりますが、いまだ明確なる方法が示されておらないのははなはだ残念であります。そこで私どもは、今回国会陳情をいたしまして、国会委員会におきまして、十分なる御検討と御審議を願いたいと存じまして、今回の陳情と相なつたのであります。  私ども思いまするのに、天然の台風その他によりまして被害を受けましても、あるいは農村の被害、あるいは河川の決壊などいろいろな事態に対しましては、時の政府急速閣議を開いてまでも即時救済の手を差延べております。しかるにこの防潜網のごときは人為的、すなわち政府みずからが、あるいは連合軍かもしれませんが、いずれにいたしましても、政府責任において敷設いたしました。そのために魚道を完全に断たれまして、二方八千の漁業者生活は、破綻の寸前に追いやられております今日、いまだこれが補償をなされないということは、まことに私は現在の日本国のあり方として、了解しがたいと考えるものであります。もちろん昨年度は六組合に対して、六百万円かの見舞金はいただいたそうでありますが、しかしそれは富津から旗山崎にかけまして張られました防潜網、そのためにやむを得ずして東京湾外に出ようとしますならば、旗山崎神奈川沖きわにわずか五十メートルの口が明いております。そこをまわらなければ外へ出ることは漁船は許されないのであります。そういたしますると、三十分で外へ出られますし、また外から中へ入れますものが、四時間も五時間もかからなければならぬ。それだけ油代がよけいかかる。その油代見舞金だと称していただいたという話でありますが、これは一漁船あたりにすれば、ほんのわずかな金であります。生計のたしどころではない、船の油代にしかあたらない見舞金であります。再三陳情を繰返しておりますうちに、この防潜網は直接の被害ではない、安全保障条約に基く行政協定水面使用に関する法律、その他を解釈いたしましても、直接の被害でないから、補償対象にはならぬのだ、立法化されなければ補償対象にならぬということをわれわれはよく聞かされるのであります。しかし、しからば私たち千葉県には防潜網以外に、南部には聴音器軍事施設九十九里には実弾射撃、この九十九里実弾射撃等は、完全な直接被害でありますから補償対象にはなつておりますが、その補償金たるや一箇年に一千円足らず、いかなる角度で調達庁補償を決定されましたか、予算等立場も多少はございましようが、六箇年に六千円、一箇年間にいたしますならばわずか一千円、一箇年間一千円という補償金はあり得るでありましようか。いかに漁師でも、かすみを食つて生きているのではありません。いかなる最低の生活をいたしましても、一箇月に五千円や六千円は一世帯かかることは皆さんよく御存じのことであります。かりに何割かが補償対象になりましても、かような少額な補償では、私どもは受取れないのであります。それで防潜網はその補償にもならずとしますならば、かりに見舞金をちようだいする。外務省水産庁調達庁あたりも、とりあえず見舞金として支給しようということを親切におつしやつていただいておりますが、補償対象にはならぬ。対象になつてもその程度。それ以外の見舞金でありますならば、おそらく年間一世帯五百円か八百円の金、かりに一千円いただきましても、これが何の生活のたしになるでありましようか。私どもはかような施設を利用して、何か多額な補償を要求しようということをたくらんでいるのではありません。私はどちらへ行つても申し上げるのですが、補償金見舞金もいりません。どうか一日も早くこれは撤去していただきたい。そして漁業者本来の使命であります漁業をさせていただきたい。その漁業操業によつて、かつかつながらもわれわれは自分みずからの生活はみずから立てて行きます。決して政府にすがつて、その金で生活しようなどとは毛頭考えておりません。もしどうしても国際間の関係その他の問題で撤去でき得ないとするならば、金でなくこれらの漁民にむすび一つずつ与えてほしい。むすびだけでけつこうです。むすび一つぐらいは親心として、いな日本国政府として、まさか殺すわけには参りますまい。それをお与えくださるのが当然ではありますまいか。むすび一つでけつこうであります。それだけのものは与えていただきたい。操業皆無ではありません。内湾の例を申し上げますならば、のりもやり貝類もやり、いろいろな手によつて何とか補いをつけておりますが、大体六割の減収であります。漁種によりますと、壊滅に瀕したところもありますが、平均いたしますならば六割の減収であります。四割をもつて何とかおかゆなりとすするうといたしておりますが、どうかかような実態をまずお認め願いたいのであります。  聞くところによりますと、水産庁の一技官は、しからばその実態調査する、こういうふうに言われておりますが、一日も早くその実態を御調査願いまして、私どものこの苦しい立場を御了察願いたいと存じまして、以上陳情の趣旨を申し上げた次第であります。
  7. 福永一臣

    福永委員長 次は森竹次郎君。
  8. 森竹次郎

    森参考人 私も防潜網によつて被害をこうむります地元の一漁民であります。二十三年より二十七年度の漁獲を簡単に御報告申し上げて、御参考に資していただきたいと存じます。  二十三年よりの漁獲は、大貫青堀組合漁獲は九百万貫の漁獲があつたのであります。二十四年は八百八十五万貫、二十五年も同じであります。二十六年の一月三日より防潜網を敷設されましたが、二十六年度は二十五年度と比較しますと半減に満たない漁獲に衰えておるのであります。これは四百万貫であります。二十七年度は、三月の末日より、台風防潜網がこわれたために、回遊魚が多少南下したものと思われますが、五百五十万貫の漁獲があつたのであります。防潜網を敷設されておりまする漁場は、富津漁業協同組合政府からいただいておりまする共同漁業権内の一千五百メートルの所なのでございます。ここに防潜網が敷設されましたため、ただいま申し上げました通り漁獲が減少しまして、われわれ漁業組合漁民は、必死の苦しみをしておるのであります。国土防衛のために防潜網が撤去されないといつて、その損害をわれわれ地元漁民に負担させるというふうなことは、私は政府としてもあまりに無理と存じます。国土を守るためであつたならば、日本国民全体がその責任を負うべきだと私は考えておるのであります。われわれ富津組合漁民は六百ありまするが、六百の漁民のり資材を購入することもできず、組合金融機関より二百万円借入れまして、のり資金として貸し与えておるのであります。それでなければ、二十七年度はのりの生産ができない現状に陥つて来ておるのであります。それゆえこの点を先生方には御推量くだされまして、どうぞ一日も早く防潜網を撤去せられるようにお願いする次第でございます。  もう一つは、二十七年の一月に零細漁民の小さい船が通れるように、防潜網を一海堡から五十メートル口をあけていただきたいというふうな陳情書を八月十七日に外務省に出しました。これが特に外務省を通し、アメリカのワシントンにその陳情書が参つたものと見えまして、アメリカ極東軍司令官より、日本船舶航行は妨害するなと外務省に通報が来ておるようであります。しかし二十七年度も防潜網は口を開かず、旗山崎から富津、一海堡までの間はふさがれているような現状にあります。われわれのお願いするところは、極東軍司会官より五十メートルの口をあけるということが外務省を通して県の水産課に参りまして、その写しが富津組合に参つておりますゆえ、アメリカ極東軍の言いました通り、五十メートルあけていただきたいことをお願いする次第でございます。はなはだ簡単でありますが、以上であります。
  9. 福永一臣

  10. 山口卯之松

    山口参考人 私は千葉県の富津と隣しております大貫山口であります。ただいま二人の方から防潜網のことでいろいろお話がございましたが、私ども漁民が今一番因つていることは、防潜網が張られて漁場が使えなくなつたということが一つ航行を禁止されて三十分か四十分で行かれるところが二時間半も、三時間も、四時間もかかるという状態にあるということが一つであります。そしてただ網張つただけで、その一線だけが漁業を禁止されておるというふうに見られるようでございますが、実際はその一里ぐらい手前までしか網が使えない。それは下にいかりを入れてありまして、そのいかりに網がひつかかり、あるいは潮のために網が防潜網に寄せつけられるということで、一旦寄せつけられますと、もう網が全部とれなくなつてしまうわけでございます。従つてどもは、金によつて換算されるということでなくて、私ども漁場を返していただきたい。これをお願いする次第でございます。  そういうふうにいたしまして、北に防潜網を張られ、その南側に十七平方マイルに及ぶ投錨禁止区域というものが新たに今年の一月にできまして、実際は全然漁業ができない。全然という言葉は妥当ではないかもしれませんが流しづりの一本づりとか、水面を流す網はできますが、海底に着く漁業はできない。今年の三月でございましたが、私が自分の舟で網を張りましたところ、聴音機ひつかかつて、これが上つて来てしまつたのであります。そうしますと、保安庁の方にはすぐわかつたとみえまして、来いといつて呼びつけられました。そのときの説明では、海底に着く網は一切禁止してあるじやないか、なぜそういうことをやつたということでした。私どもいかりだけを入れるなという話は聞いておりましたが、操業は禁止されていなかつたという答えをしましたら、それは違う、海の底に着くやつはやつてはいけないんだというので、以来そこでは海底に着く漁業は一切やつておりません。そのため揚繰網、底びき網、たこつぼ、あるいはいかりばりの一本づりなわは一切できず、また一番困つているのは、四年目か五年目に一ぺん出るばか貝がその海底にたくさん発生したのでございますが、ばか貝をとるのには、いかりを入れて網をひつばらなくてはいけない。これもできないというところに、私どもの悩みがございます。いかりを入れるなという命令が出ている所へ、いかりを入れてとることはできない。投錨禁止とは、碇泊を一切禁じたんだ、こういうふうに申されますが、実は操業禁止というので、私どもは今、日常の生活に実際にこたえております。そしてこの投錨禁止ということにつきましては、お前たち操業はとめないからやれ、但し施設には被害を与えるな、こういうお話でございますが、浦賀水道の一番狭いところ、しかも浦賀水道から一堡塗にかけた線、これが私どもの今までの米びつでございました。そこで漁業ができないので、私どもには、講和ができても、平和どころか再びあらしが訪れて来ましてどこへ行つて今度は商売したらいいんだろうかというので、一昨日も私の組合で各業種別会議をしましたが、それは、その漁場を使わなければ食えない、商売があるのに、その商売ができない、どうしたらいいんだろうかと相談しましたが、相談しても相談だけで解散した、こういう実情にございます。この私ども漁場生活している組合が、千葉県だけで十八組合ございます。神奈川県が十組合漁船の総数は、千葉県側が二千六百九十四隻ございます。神奈川県が五百八十八隻。世帯数千葉県が二千六百世帯神奈川県が六百二十世帯漁業従事者は、千葉県が八千七百八十二名、神奈川県が千四十一名。家族は合計して三万八千七百四十二名ございます。その人たち漁場を取上げられて、次にどこで商売しようか、こういう状態でございます。私ども補償ということも一応は考えてみました。しかしその補償によつて食えるかといえば、昨年私どもに六百万円という補償がございましたが、それではいかに零細なわれわれ漁民でも生活はできない、だからこの補償ということは今何も考えていませんが、私ども漁場だけを返していただきたい。それからもう一つ、この防潜網の口をあけるということを森さんからもお話がございましたが、その補償がもし今すぐとれないというならば、せめて口だけでもあけてもらつて航行のできるように、と同時に、なるべくすみやかにこの施設をとつていただいて、われわれがが何とか漁業のできるように、いつときも早くやつていただきたい。私どもは現在何にも生活の基盤を持つていない漁民でございます。せんだつて税務署から来た。これは三年ばかり前からそういう傾向でありましたが、共産党の人たちの扇動によつて、税金を払う必要がないんだというようなことまで言われて、払わずにおいたところが、結局税務署から差押えされ、私どもどこへ行つて生活したらいいか、毎日苦しんでいる状態でございます。その点をよく御了承願いまして、一日も早く、われわれもせめて一人前に生きられるようにお願いする次第でございます。
  11. 福永一臣

  12. 馬場甚吾

    馬場参考人 このたび諸先生方のおとりはからいによりまして、われわれ漁民が、この席上で漁師としての話を聞いていただく機会を得まして、まことにありがたく感謝いたします。  諸先生方もさだめし御存じのことと思いますが、わが富津町は、終戦前までは陸軍軍部実弾試射場があつたのであります。その問われわれは、その制限区域を設けられましたために、その制限区域の中へ入りますと、日本軍部鉄砲たまの的になりまして、現在富津町の中にもその犠牲者が相当あり、またからだの中にいまだ鉄砲たまの入つている人もあるのであります。終戦になりまして、初めて民主主義国家なつたというやさき、再び防潜網並びに聴音機施設ができ上つたのであります。この防潜網並びに聴音機を敷設されました場所は、われわれ漁民の十一月から一月までの、東京湾内の唯一のせぐろいわしの漁場であります。このせぐろいわしの漁をいたしますわれわれ漁民が総出でとりますと、一日十万貫獲得はそれほどむずかしくない漁場であります。ところが、先ごろこの施設ができました。御承知通り防潜網一線は、図面から見ればただ一本の線であります。どころが、せぐろいわしをとるために揚繰網を張りました場合、少くとも網を張りましてから上げるまでの間には、四十五分ないしは五十分はかかるのであります。御承知通り、ここは非常に潮の早いところでありまして、網を張つて上げるまでの五十分の間には、舟は二海里半流れるのであります。従つて防潜網から二海里半離れたところでないと網が張れないのであります。従つて裏表から見ました場合、防潜網一線から、裏表総じまして、大体五海里は営業ができないのであります。聴音機もまたかくの通りであります。ここは聴音機がありませんでも、流れる距離を測定いたしまして網を張りました場合は、われわれの漁場はおそらく半分以下に減つているのであります。今まで十の漁場で十人で働いたものが、五の漁場で十人働く、これが現状であります。従つてわれわれは、経営者として、従業員といたしまして、これでは所詮十一月から一月までの間は御飯が食べられない、これが現状であります。従つて私は、やめたわけではありませんけれども、大勢の人にいてもらうのに困りますので、よんどころありませんで、二里ほど離れた澱粉工場に交渉いたしまして、十六、七人を使つてもらつております。朝の六時から出まして、夕方の七時に帰つて来ますが、男一人が百五十円であります。川崎製鉄におきまして、五、六人頼んでいただきました。しかし、とうてい全部をほかに就業させる道もないのであります。従つて税金その他は私が払うよりしかたがございません。私も農地改革のときに、二十三町ほど解放いたしました。残り財産はわずかであります。私一人といたしましても十二万円の滞納をいたしております。ようやくこの間税務署と役場の方に参りまして、今月一ぱいに必ず払うからということで、住宅一軒を売りに出しましたところが、八十になるおばあさんに泣かれましたので、よんどころなくやめまして、今度は地面を売つて解決をつけるために、農業委員の方に申し出しましたところ、農業委員の方で、幸い同情していただきまして、そういう事情ならば、なるべくいい方向で解決をつけましようということで、ようやくきまりまして、最近これは解決がつくと思います。私のところではかくの通りでありまするが、私の従業員ないしは、私の組合員は、今職を失つております。それを何とか私が全部の人たちを転業させてでも、来年の三月、また暖かくなりまして、魚が岸に来るまで、何とか方法をとりたいと存じております。昨年おとりはからいによりましてもらいました六百万は、私の組合としては十八万円いただきました。十八万円を四百二十八人でわけましたが、それでは税金にもなりません。皆様方が、この事情をお調べくだきるならば、何とかおわかりになることと存じますので、われわれ漁師の窮状をぜひともお救いくださいますよう、今日厚く御願い申し上げまして私の話を終りたいと思います。
  13. 福永一臣

    福永委員長 次は伊東久義君に説明を求めます。
  14. 伊東久義

    伊東参考人 先ほどからいろいろと各浦々の代表の方から、その漁場の悲痛なる御意見をつぶさに承りまして私も非常に感じておる次第でございます。防潜網というものがあるために、漁民がいかに苦しんでおるかという、その実情に対しては、ただいま皆さんが話されましたので、私は、ちよつとこまかい点のようでありまするが、その防潜網というものが、はたして内湾に回遊する魚族に被害があり得るやいなやということの見解に対しまして、一言賢明な皆様方の御批判を仰ぎたいと思うのであります。  ある官庁の権威ある一技官の説では、内湾に張つてある防潜網に対しては、回遊魚族は大した影響がないという見解をとつたのであります。この見解の実際の骨子とするところは、定置網の現場でとつたというのであります。定置網は皆さんも御存じのごとく、そでとからんだ魚が、これを伝わつたまま、わずか一メートルにも足りないような狭い入口から、場合によつては何千貫という漁獲を上げる、こういう例をとつて、魚というものは、網に当つたときに断じて恐怖がない。つまり、網という漁具に対しては、さらに魚というものは恐れないで、その網を伝わつて、わずかのところにも入るという原則をとつたのだと私は思います。かつまた、いろいろの魚が網にかかる。いわし網とか、このしろ網、さば網、さわら網、かに網、かれい網、ぼら網すべて、この魚類は網にぶつかつて、からだをくるまつてとられるものと、またからだを網糸にさし込んだまま抜けないでとられるのとあるが、すべての魚類は網というものを恐れないという説を、ある権威ある官庁の方が、朝日新聞紙上に載せたのであります。これは長年の間の私どもの専門的経験によりますと、私どもとは非常に見解を異にしておるのであります。定置網はちよつと見た場合には、あれはだれが見ても、そでに当つてすぐに——そでに当つたといつても、このそでの張り方が非常にむずかしいのです。私どもも、やはり、すだて網などの経験を知つておりますが、定置網といつても、かりに、この魚が、まず南から泳いで来る。その魚をまつ正面にそれにぶつけてしまつては、泳いで来た魚が一ぺんにぶつかつてしまうから、これを障害物か危険物と思つて、はねて行つてしまうのです。ですから、まつ正面に向わないで、魚が自然的に、このへりを伝わつて来るようにのみ込ませるのが一つの原則なんです。そこに一つの妙味があると同時に、またそういうようにしてやりながら、魚を寄せ込む一つの機能を有しているのです。非常に話が複雑しておりますが、こうなりますと、これでなかなか——漁場あるいは、その漁場の形態、並びにまた潮流の関係等で、張るにはやり方が非常にむずかしいのです。魚が網に当つたときに、恐怖感を与えないという原理は絶対にないのです。魚が泳いで来てまつ正面から網にぶつかつたならば、ぶつかつた瞬間に必ずそれてしまうのです。おだやかにぶつからなかつたならば必ずそれる。かに網にしても、すべて網は、自然の潮にもたれて、その網があるかないか全然わからないという装いをしているのですから、網にかかる。これが非常なる潮の速さのところでは、夜間その網が銀波の色をして、そして上に非常なる音響をたてていたならば、魚というものは、それを遠くから見て、すぐ障害物として、外にはね返つて、ほかに散乱するのは当然であります。それをある権威ある技官が、防潜網に魚が当つても、当つた魚がそり網を伝わつたまま、三千トン以上、あるいは何万トンという大きな、数千の船が朝な夕な出入するだけの大口があれば、回遊魚族であるならば、あの防潜網に伝わつて自由に出入ができる、こういう見解をとつたのであります。これははなはだ私どもしては疑義を抱かざるを得ないのです。陸上のものも同じです。今かりに農家の場合に、一匹の馬が何ものかに恐れて、あるあぜ道をあわてて飛んで来ると仮定します。そうした場合に、まあ六尺か八尺しかない道を大声をあげて、止まれとか何とか言つて両手を広げたら、その馬は必ずとまります。しかしながら無言のままでその六尺の道を、馬の前で手を広げたら、その馬はそれてしまう。それと私は同じだと思う。ところがあれだけの——東京湾の入口は日本の海峡の中では、鳴門海峡が一と言われ、東京湾の入口が二と言われている。東京湾は潮の速いのでは日本で一、二を争う所です。そういう所にあれだけの防潜網が張つてつて、夜間の場合には、夜光という虫によつて銀波の色をしている。そして上には直径六尺くらいのものがつつてつて、波とともに非常な音響をたてておる。そのそばに魚が行くか行かないかということは、私はどう考えてもわかると思う。それにもかかわらず官庁の人たちは、魚がこのへりを通つて行かれるという原則をとるわけです。これは私どもにははなはだ遺憾にたえないのであります。あれだけの大汽船や軍艦が出入りするだけの二百メートル以上の口があれば、そこを魚が出入りでき、そで網を伝わつて何千貫という漁獲が得られるというけれども、これは違います。なぜならば、あそこがあれだけしかないために、漁船によらず、すべて東京湾に出入りする船は、夜を待たず、昼を待たず数千に上る船が、けたたましい汽笛の音やエンジンの響きで、あそこを年中通つている。そういう所へ魚が行かれるかどうかということもお考え願いたいと思う。断じて行かれるものではありません。ねずみとりの入口にねこがちよいちよい顔を出したら、ねずみは絶対に入らないのと同じに、魚が恐怖感を持つていたならば、二百メートルしかない所を夜昼何千という船がけたたましい音をどこどこと立てておつて、しかも上では鎖が音を立てておる、また銀波を呈しておる、そういう所をどうして魚が出入りできるかということを私は言うのであります。そこらもひとつよくお考えを願いたいと思うのであります。  はなはだ簡単でございますが、私はこれをもつて終ります。
  15. 福永一臣

    福永委員長 次は田中宗正君。
  16. 田中宗正

    田中参考人 私は直接の漁業者でないのでございます。東京都内の北海区の方の漁業協同組合の顧問を五十年間やらせていただいております。そこで今回防潜網のために漁民がいかに難儀をして、どういう結果になつておるかということを一言諸先生に申し上げまして御同情願いたいと思うのでございます。  それはただいま伊東久義君からも申しました防潜網でございまするが、まずもつて水産関係の各官庁におきましては、内湾漁業というものはほとんど見捨てられておる。先生方のうちに遠洋漁業の権威者がおられるということを承つておりまするが、東京内湾漁業というものは、水産庁あたりから見るとほんの米粒くらいにしか考えておらない。なぜ考えておらないかと申しますと、魚族をふやすこと、あるおは漁場の問題について関心がない。ただ事が起ると、これを圧迫するような態度に出ておる。と申しまするのは、参議院の水産委員会に陳情に参りましたときに、東京都は参考人としてお呼出しがなかつたのでありますが、神奈川千葉のお方々陳情に対しまして、あつさり、防潜網には魚は驚かない、今伊東久義君の申されましたように、網を伝わつて中へ入るんだというお話でありまするが、これは私は技術家として認識がないということを断言できると思うのでございます。そこは今申しました鎖のがらがらいう音などがする。そういうような所には魚はやつて来ない。その証拠を上げろということになりまするならば、二十三年、四年ごろまでは、内湾のいわしは直接東京都民の口に入つてつた。それが防潜網を張られて以来、いわし、あじ、あるいはすずき、わらさ、さわら、このしろなどがわれわれ都民の口に入らない。これはみな防潜網のために阻害されまして入つて来ないというのが事実でございます。なお私ども内湾におりまして五十年漁業の経験を持ちますけれども、いまだにうなぎがどこで生れるか、あるいはぼらが一体どこで産卵するのかということの見当がついていません。漁民もぼらの子を知りません。うなぎの子も知りません。そのぼらの子は、私どもの知つている限りにおきまして長崎、鹿児島の桜島、あるいは台湾の方面には御承知通りからすみができておりますが、あれがぼらの子であります。しかし内湾にはぼらの子がないのです。そのことを水産庁あたりで聞きましても、うなぎが一体どこで繁殖し、ぼらがどこで産卵するかということの確たる証拠はないと思うのであります。と申しまするのは、発表していない。私が農林省の水産試験所あたりの意見を十年前に聞きましたときには、うなぎの産卵する土地がわからなかつた。そういう状態にあつて、大謀網と防潜網とが漁族とどういう関係にあるかということを御研究になつておらない。ただ机上論ばかりです。ですから、私ども防潜網を撤廃していただくか、さもなくば、どうしてもこれは防衛上いかぬということならば、漁族が内湾に入るような装置をしていただきたい。もしそれも不可能であるというならば、防潜網を張る前の漁獲高と、張られた後どれくらい漁獲高が少くなつたかということをひとつ御検討願いまして、善処していただきたいと思います。それから、実は私の方でも昨年あたりから非常に漁師が困難しております。私ども漁業組合は千百名の組合員がございまして、この組合員の家族を加えますると約七千人からございます。その人たちの職業がないというので、昨年の十一月に進駐軍の司令部、あるいはエア・ステーシヨン、MP、あらゆる官庁を通じまして、ようやく飛行場の周囲の掃除をお願いし、その掃除によつて約一年間、漁民は二百円なり五百円なりの鉄くずを拾いまして露命をつないで来たのでありますが、事ここに至りましては、もはやそういうものもありません。またほかの商売をやらせるにしても、かつばでございまして、何もできませんので、失業救済のほかはないのでございます。そういう状態でございますので、防潜網を撤去するか、あるいは魚を誘導して内湾に入れるか、もう一つはこれに対する救済の措置を本委員会において御検討願つて救済していただければ、たいへんに仕合せと存じましてお願いする次第であります。よろしくお願いいたします。
  17. 福永一臣

    福永委員長 次は陸上演習問題について宮川勇吉君の説明を伺います。
  18. 宮川勇吉

    宮川参考人 貴重な時間をさいていだだきまして、われわれ漁民の声を聞いていただくということに対しまして厚く御礼を申し上げます。  私は神奈川県茅ケ崎市の漁業協同組合長であります。全国相当数の駐留軍の演習区域がございますが、私どもの所の演習状況を申し上げまして、各先生方の御判断によりまして何とか善処していただきたいことをお願い申し上げるものであります。  当地茅ヶ崎は終戦前までは海軍の演習地になつてつたのでありますが、終戦後、進駐軍が毎日のようにその土地を利用し、海岸を利用し、海を利用して演習をやられたのであります。講和が発効された後はこの演習もなくなるだろうというふうに考えて漁民みんなが喜んでおつたのでありますが、今度ははからずも行政協定による演習地の指定を受けまして、三キロかそこらの間に第一オーボー、第二オーボー陸上演習地区と指定されたのであります。それもやむを得ないことでありますが、行政協定の付記でありますところの時間とか、通知とかいうものは、ほとんど空文にひとしいのであります。午前十時から午後四時までとなつておりますが、第一オーボーで演習のある場合には、第二オーボー地区では操業航行の自由を与える。反対に第二であつた場合には第一は支障がない。上陸演習のない場合には、第一、第二オーボー地区の漁業並びに航行は自由であるということになつておるのでありますが、それが一つも守られておらないのであります。そのためにかつて外務大臣の岡崎先生のところにも参りまして何とかしていただけないでしようかと、私、直接先生にお目にかかつて申し上げたのですが、それは行政協定できめられているんだからしかたがないじやないか。いや、私たちはそれをやめてくれとは決して申すのではありません。身の安全を保つて許された時間を、許された区域内でもつて漁業をさしていただきたい。こうお願いしたのでありますが、一言のもとに、それは行政協定できめられてあるんだから、しかし、漁民のために善処はする。こういうお話でございました。その後にキヤソプマギフ司令官並びにルブロー准将でありますか、その方々に直接お会いしたのであります。時間の差と演習は十五日前に通達をすると、はつきり書いてあるのでありますが、それが決して十五日前や十日前ではなく、二、三日前に来るのであります。しかも演習がない日に大演習をされる。十一月の七日のごときは、沖に大きな舟が三十数はい来て、一そうの船から上陸舟艇が二、三十そう出まして、海岸には戦車二百数十台が来て射撃をどんどんやります。射撃演習、上陸演習の場合には、こういうたまがぴよこぴよこと飛ぶのであります。われわれが張つておりましたところの定置の網にこのたま一つつたのであります。こういうふうで、身の安全はとうてい得られないのであります。これを言いまして、またわれわれ知識のない者には、東経何度、北緯何度といわれても、さらにわかりませんから、海上にその標識を立てていただきたい、こう申し出ると同時に、お願いする以上は、われわれの方でも標識を立てるからとお願いしたのでありますが、依然として標識は何ら立てられないのであります。ために東経あるいは北緯とか申しましても、海上では、さらにわからないのであります。それで再三シヤンクロ大佐、ルブロー准将にお願いいたしましたところが、予算がなくてとてもできないというお話でございました。予算によつて人命が左右されるというのでは、私たちはなはだ困ります。ぜひお願いいたしますと申しましたら、パトロール船をそこにすえるからというお話でございました。その後第一オーボーで——第一オーボーと申しますと、諸先生方御存じだと思いますが、直接射撃の所でございます。その射撃されるたまは、戦車砲でございまして、先が飛んでしまつてありませんがこれでございます。これがどんどんと撃ち込まれますので、先ほど申し上げた通り、第一オーボーでやるときには、第二オーボーはさしつかえないというお話でございますから、第ニオーボーで漁業をやつておりますと、警戒艇が参りまして、いかりをぽんとほうり込んでえらいスピードでもつて圏外にほうり出されてしまう。しかしながら行政協定にある通りの場所でやつておりますから、さしつかえないのでありますが、そういうふうにしてしまわれるのであります。  そういうような事情でございまして先生方御存じでもございましようが、私の方には江の島とつながる所に烏帽子岩というのがございます。それは漁民が沖から上つて来るときの唯一の目標なのであります。それがこのたまによつて形なきようにこわされております。その烏帽子岩の岩礁地帯を基地として、さざえとか、あわびとかいうものの養殖をするために、二百万円ばかり投じたのでありますが、現在はそこにとりに行くことができず、月に二十日以上も演習を実施されておるのであります。私が先生方にお願いしたいことは、演習をやめていただけば、これに越したことはありませんが、それはとうていできないことでありますから、何とかして安全なる操業をさしていただきたい。と同時に、二十五、六年にいただきました演習補償が二百二十万円ほどであります。これは漁民の稼働日数にもよりますが、二十五年、六年において一家庭に渡る金が、年間約三百円でございます。県庁へ二、三回陳情上しますと、弁当も食えないという状態でありますので、何とかして演習補償の増額をこいねがうと同時に、補償金交付手続を簡単にしていただきたい。今度はそれを調達局でお取扱いになるというお話でありますが、過年度において、手続をするのに、一人で約一寸ぐらいの厚さの書類を書かなければならない。漁師でありますから、書くとか読むとはなかなかできないのであります。それも組合でやつておりますが、この複雑をなるべくはずしていただきたい。はなはだ手前みそで恐れ入りますが、射撃演習をされるならば、目標を置いてするように駐留軍の方に現在お願いしておりますが、われわれの方ですと、俗に申しますごまめの歯ぎしりで、さらに受答えがないという状態なのであります。権威ある委員各位におかれまして、演習補償の増額——これは茅ケ崎ばかりでございません。演習によつて被害を受けておられる方は、全国にたくさんおありになると思います。防潜網もしかりでありますが、この演習について、ぜひとも身の安全を私たちにはからしていただきたいということをお願いいたしまして、先生方の御支持を仰ぎたいと思います。ありがとうございました。
  19. 福永一臣

    福永委員長 これにて現在出席されておりまする参考人の意見の開陳は一応終了いたしました。  この際お諮りいたしますが、九十九里浜関係の神定竹松君はまだお見えになりませんので、同君の参考人としての選定を取消すことにいたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 福永一臣

    福永委員長 御異議なしと認めます。よつてそのように決定いたします。  それでは、ただいまより政府並びに参考人に対する質疑をお許しいたします。なお現在出席の政府委員及び説明員は、水産庁より伊東漁政部長並びに高橋経理課長、大蔵省よりは谷川主計官調達庁よりは川田不動産部長であります。  それでは順次質疑を許します。松田鐵藏君。
  21. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 田中さんにお伺いいたします。あなたが非常に達識のあるお話をされましたので、まず魚を誘導する方法について、お考えがありましたならば承りたい。
  22. 田中宗正

    田中参考人 その方法につきましては、大謀網の誘導のような方法を、防潜網以外に、二百メートルあいておる口から外へ持つて行つて網を張つて、魚が来ても、誘導されるような方法で……。これはしろうとの考えでございますが、大謀網の例をとつて申し上げたのであります。それはまた当局の御研究の結果、いかようにでも、われわれは誘導していただけばけつこうだろうと考えておる次第であります。
  23. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 あとは申し上げません。馬場さんにお伺いしたいのですが、一日に十万貫も漁獲された日がある。しかしたとい来ないといえども漁民はそれのみを希望として操業されておる。幸いにして漁獲があればたいへんけつこうであるという勢いをもつて、すべての漁業に携わつておられるあなた方のお気持、またその操業に対しては、潮の関係によつて五海里の間のところに漁場がなければ、とうてい操業が可能でない。ために、たといそこに来たところで、十の能力を発揮できるのが五よりも発揮できないという状態にある。こうしたことは、漁民として一番の打撃であり、希望を失うことである。こういうふうな御趣旨でありましたですね。
  24. 馬場甚吾

    馬場参考人 さようであります。
  25. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 まことにお気の毒な議論と私は拝承をいたしました。ところで、この海図の面から言いまして、聴音機があるために禁止されている区域がありまするが、これ以外の漁場でやつていて、潮の流れでもつて、ここに入る場合もいけないということになりますか。
  26. 馬場甚吾

    馬場参考人 おしかりを受けますのは、聴音機の入つている場所だけであります。しかし網を揚げているうちに潮によりまして、聴音機のある場所まで行つてしまうのであります。従つて聴音機の入りません場所も、潮によつてやられないのであります。もし聴音機もしくは防潜網ひつかかりますと、われわれの資材は百万円や百五十万円のものは、すぐ飛んでしまうのであります。
  27. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 漁場が、かりにいいところがあつても、潮の流れというものを考慮してやらなければならないから、満足な漁獲はするわけに行かないというのですか。
  28. 馬場甚吾

    馬場参考人 さようでございます。
  29. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 それから森さんにお伺いしたいのですが、六組合で九百万貫から八百八十万貫もとれた。それが二十六年になつてから、四百万貫になり、五百五十万貫になつて半減しておる。これは何の漁獲でございますか。その点をひとつ……。
  30. 森竹次郎

    森参考人 回遊魚でありまして、いわし、あじ、さば、せいご、かます……。
  31. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 そういたしますと、あなたの漁場はどこでございますか。——ふたたびお伺いいたしまするが、四百万貫、五百万貫と半減された漁場はどちら側ですか。
  32. 森竹次郎

    森参考人 南と北側双方でございます。私ども組合漁民は、防潜網が張られておりまする北と南が漁場でありまするゆえに、北と南をかけての双方であるわけであります。
  33. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 南というのは防潜網の外でございますね。北というのは海岸寄りですね。
  34. 森竹次郎

    森参考人 さようであります。
  35. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 例年は、北の方はどのぐらいの漁獲があり、南の方はどのぐらいの漁獲があつたものですか、同じですか。
  36. 森竹次郎

    森参考人 大体、そこまで検討しておりませんですが、漁民の統計の総額を見まして申し上げた次第であります。
  37. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 そうしますと、専門的な議論から行くのですが、伊東さんのおつしやる問題は、参議院へ行つて御議論されると、衆議院の御議論は大分違うのです。田中さんの議論などは、われわれ問題にしておりません。むしろ私の言うたことは揶揄であります。ああいう議論は衆議院でしていただいては、何にもなりません。伊東さんの御議論はよくわかります。われわれの考え方から行けば、伊東さんの御議論のように、魚の習性をよく知つておりますから、防潜網によつて非常な影響があることはわかつておりますが、今の森さんの御議論から行くと、二十六、七年の漁獲というものは、防潜網があるがゆえに、こちら側の漁業は非常に優秀な漁業にならなければならないのですが、そういう例はありませんか。
  38. 森竹次郎

    森参考人 北側ですか。
  39. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 南側で、防潜網の外です。魚の密度が濃厚にならなければならないのです。
  40. 森竹次郎

    森参考人 魚は、季節をもつて回遊して来るのでありまして、はなのおろしの月には多少の漁獲があるのでありまするが、その後、南下して来る魚に対しましては、南側の地びきその他の回遊魚をとる漁業は、ほとんど漁獲がないのであります。
  41. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 そんなわけはない。ここに防潜網があつて伊東さんのおつしやるように、魚の習性からいつてどなたの役人がおつしやつたか知りませんけれども、網に魚は恐れないというようなことは愚問です。そんなばかげた話はありません。網に恐れるから魚がかかる。漁獲がされるのです。ごこに防潜網があれば、ここの漁場は密度が濃くならなければなるまい。ここの漁獲はこことの比が相当の漁獲がなければならないのです。馬場さんのようなお話であれば非常にわかるのです。ちよつと速記をとめて……。
  42. 福永一臣

    福永委員長 ちよつと速記をやめてください。     〔速記中止〕
  43. 福永一臣

    福永委員長 速記を始めてください。中村庸一郎君。
  44. 中村庸一郎

    中村(庸)委員 ただいま地元漁業組合より二つの意見が出たと思うのであります。防潜網を撤去してくれという意見が一つ、もう一つは、秘密協定でできておるものであつて、なかなかそういうことはできない。従つて漁業ができないのでまつたく困つておるから見舞金を出してくれ、この二つの意見が参考人から出た意見と私は要約して考える。そこで防潜網を撤去してくれという意見に対しましては、今日そんなのんきなことを言つておられぬのだ。先般十五名陳情に来られた際にはまつた生活が立たぬ、この暮れは越すことができない。従つて漁民防潜網を破壊してまでも出漁したいという意見の地元漁業組合より陳情を受けたのであります。皆さん方はこれを撤去するなんてそんなのんきなことを言つておられる状態であるのか、これをひとつはつきりしておきたいと思います。この撤去するという問題は、根本問題として漁場を皆さんの手に返すということはけつこうなことでありますが、今日の漁民現状としてそんななまぬるいことではないと承つておるのでありますが、どうでありましようか。
  45. 山口卯之松

    山口参考人 ただいま防潜網並びに聴音機を撤去していただきたいということを私はお願いしたのでありますが、昨年私ども防潜網の撤去をお願いしましたかたわら、私どもは通行ができるだけでもお願いしたい、こういうふうにお願いしましたが、台風でこわれるまでとうとうその口もあけてくださらないで、補償と称された金が六百万でございます。これは補償をしてくださいとお願いしたところで、これくらいのお金をいただいても私たち生活は成り立ちません。切るのでしたら簡単でございますから一番早い、明日にも漁場へ出られる。そういう意味で私は防潜網並びに聴音機を撤去していただきたい、こういうお願いでございます。それはのんきでなくて、苦しいから一時も早く出たい、こういう意味でございます。
  46. 赤路友藏

    赤路委員 ちよつとお尋ねいたします。法律二一三号が十三国会で制定されておるのですが、それに基く補償算定もちやんとできておるようでありますが、各演習場の補償についてどういう手段をとつておられるか、その点を伺いたい。現地の話を聞いてみますと、非常に窮迫しておるような状態でありますので、可急的すみやかにこれはなさなければならないものだと思いますが、その点をお尋ねしたい。  それからもう一点は防潜網関係で、防潜網関係は今までからの経緯を聞いてみますと、国内法を一応制定しないことにはこれに対する補償ができないのだ、こういうような話ですが、国内法制定がどの程度まで進捗しておるのか、その点をお尋ねしたい。  もう一つは先ほど宮川さんの話にあつたのですが、大体皆さんのお話の根本としては、演習場ももちろんやめてもらいたい、防潜網ももちろん撤廃してもらいたい。これは当然な要求だと私ども思う。しかし当面の問題といたしましては、何か安全に操業できるような処置を講じてほしい。むやみやたらに方向もきめないでぽんぽん撃つてもらつては困る。そういうようなことであつたと思う。そのために安全操業ができるような標識を立ててほしいという陳情をしたところが、それは予算がないからやれないのだ、こういうようなことを言われた。これはどうかわかりませんが、宮川さんの話であつたように思います。この安全操業のための標識等について、どういうふうなお考えを持つておるか、その三点をひとつお聞きしたい。
  47. 川田三郎

    ○川田政府委員 ただいまお尋ねの点について、前の二点だけが私どもの所管でございますので、お答えいたします。法律によりまして漁業の制限をいたします区域については、総理府から水産庁へ協議をいたしまして漁区の制限地区を告示によりまして明らかに定める、こういう態度をとつております。その制限地区において、漁業を営まれております方々には、まず漁業権者、入漁権者、及びその中で従来漁業を営んでおられます方々の、従来の制限をされなかつた時代の漁獲収入と、制限後の漁獲収入を比較いたしまして、これに補償をする。これは従来占領下においては、やはり補償という形でやつておりましたが、現在やつておりますその損害額の見方は、実際の収入、すなわち……。
  48. 赤路友藏

    赤路委員 私のお尋ねするのはその方法でなしに、現在漁業制限地域の補償をすべき調査を実際に行つておるかどうかという問題です。
  49. 川田三郎

    ○川田政府委員 調査行つておりますが、この補償のやり方をちよつと御説明を申し上げないと、その調査をしておるのかわかりませんので、その点を明らかにするために、迂遠でありますが、その補償の考え方を申し上げたのですが、それはそれといたしまして、その調査をやつておるということは、漁業は、その事業の性質から申しまして、御承知のように漁期がございます。従つて漁期が終つたときにその調査をする。今制限されつつ動いておるものを調査いたしましても、実際にはつかめないという次第でありまして、現在府県の水産担当部において調査をしておるということは、現在どういう状態で演習が行われておるかということを調査をしておる。それもいわゆる調査事務らしい調査でなく、状況を常につかみ、記録して行く、こういう段階でございます。その漁期が各漁区について終りました際に補償する。たとえばこんぶのように夏の間だけしか漁期がないものは、現に補償の書類も受付けまして何とかして年内に払えるものは払いたい、こういう態度をとつております。今日問題になつております東京湾、千葉神奈川県方面の漁場につきましては、どうしてもこの年度末までの状況を見まして、本年度の支払いをする、こういう以外には実際の結果をつかむ方法がないと存じます。  それから第二点につきまして申し上げます。国内法を制定しなければ、防潜網のような被害については補償ができない、こういう見解でございました。これは現在の漁業制限が出漁制限ということになつておりまして、防潜網によるのは出漁の制限はしておらない。しかし私どもそういう出漁の制限をしてないから、たとい漁獲が減るような影響があつても、そういうものは全然知らぬ、こういう態度はとりたくないと存じております。ただいかんせん、先ほど松田委員からもお話がございましたように、被害状況をつかむ、これはいわゆる官庁の調査でつかむという意味でなく、被害のあるものであるかないかということをはつきりさせまして、それからわれわれは補償をする。かりに私ども国内法を制定いたしましたあかつきには、一つの債務としてこれを確定しなければならぬ。その際に対象がはつきりしないものを国の債務とすることができるかどうか。これは非常に問題でございます。しかしこの問題をそれだからといつて、ただ荏苒と引延ばしておくということは私どももよろしくないと思いますので、一方において漁業権者の一連の経営に対して補償いたしております。いわゆ、る間接的なこういう被害に対しましても、何らか国として少しでも損害を緩和する方法をとらなければならぬと存じておりますが、その点につきましては、現在国内法を制定するかしないかということは、それこそこういう水産委員会において大いに審議していただきまして、その御意向等を政府が承つて進めたいと存じます。
  50. 伊東正義

    伊東説明員 今御質問がありました中で、茅ケ崎の方から話がありましたが、協定はできておるのだが、協定通り演習が行われぬ、安全操業ができぬというお話つたのであります。そのときに予算がないというお話が出たのでありますが、これは日本側でなくて、向うの当局にお話なつたときに、向うに予算がないという話だと思います。われわれの方としましても、実はオーボー・ワン、オーボー・ツーとか、上陸演習、これは行政協定に基きましてとりきめをしたのでありますが、その内容の実行につきましては、私どもの方といたしましても、今度の補正予算の際でしたか、若干県の方へもこういう関係の補助金も出すという措置を調達庁の方からしてもらうということも考えておりますし、とりきめ通りの演習が行われますように、向うにも厳重に話すつもりでございます。  それから国内法の問題でございますが、これは今調達庁の部長さんからお話がありました通りであります。これはこの前の国会におきまして法律を出しますときにも、水産委員会で非常に問題になりまして、間接被害という言葉は悪いのでありますが、要するに直接提供した区域以外の被害はどうするかということが問題になりまして、これにつきましては全部日本側で負担するということではなくて、一部は駐留軍にも負担をしてもらうのだ。それでそのとりきめを向うとやつて、その上で国内法を出して、それに基いてやるのだというような速記録も実は出ております。目下保安隊とか国警当局と法案の相談をしているのでありますが、まだいろいろ話合いのつかぬ点がありまして、御審議をお願いする段階には至つておらぬのでありますが、法案の準備は今いたしております。
  51. 赤路友藏

    赤路委員 ただいまの調達庁に対する御質問の中に防潜網関係でありますが、被害状況をにぎるという点について、松田さんからるる専門的なお話があつたのでありますが、この被害状況をにぎるということがまず第一点で、その上でこれらのことが当然考えられて行かなければならぬということがあつたと思います。被害状況をにぎる、そうするとこれは調達庁の方の関係ではなくなつて来ると思うのですが、被害状況をにぎるということは、当然水産庁の方で調査なされなければならないと思います。水産庁の方でこれらに対する被害実態というもの、——これはきようこのごろ起つた問題ではない。皆さんがたびたび上京されて陳情されておるのですから、当然これらこ対する調査が今日までになされていなければならぬと思いますが、その点はいかがでしよう。
  52. 伊東正義

    伊東説明員 被害の算定の問題でございますが、これは役所の機構の上から行きますと、私の方の仕事ではなく調達庁の仕事に今の法律ではなつております。しかし水産庁といたしましても、これは全然無関心だというわけの問題ではありませんので、一番関心のある役所でございますので、われわれの方といたしましても、被害調査調達庁のおやりになるほかに実はやつております。全国的なお話を申し上げますと、先ほど調達庁の方からいろいろ今やつておられることをお話になりましたが、私の方といたしましても、今年の四月中のまだ講和発効前の終戦処理費でまかなうべき分が一体どれくらいあるだろうか、それからその後九月までどれくらい被害があるかというようなことを県に照会いたしまして、今調査をやつております。大体水産庁としては従来も県を通して調査をやつておりますので、水産庁水産庁なりに、やはり目下被害調査をいたしております。まだ集計はしておりませんが、照会中でございます。それから防潜網の問題でございますが、これは実はいろいろ問題がございますので、私の方としましても、水産庁だけでなくて、これはいろいろな技術的な問題がございますので、大学とか、理研とかいろいろな関係者全部集りまして、被害調査委員会というような正式の名前ではございませんが、そういう関係者が集まりまして、現場に行きまして、大体どういう被害が直接関係があるだろうか、先ほどから御質問が出ておりますように、魚全体が減つてしまつて来ないのかどうかという問題も一つはあるのであります。そういう問題もありますので、いろいろな関係を含めまして今調査中でございます。どれくらいがこの防潜網被害になるかということを、大体そのときのねらいとしましては、十二月いつぱいまでにひとつその結論を出してもらおうではないかということで、技術者の方に今調査を依頼しておるわけでございます。先ほど参考人の方が、どこか権威ある技官が話したというお話があつたのでありますが、われわれとしましては、水産庁の公式な意見としてこれくらいの防潜網被害だということは、実はまだ発表いたしておりませんが、目下調査中でございます。
  53. 中村庸一郎

    中村(庸)委員 ただいまいろいろ御意見が出たのでありまするが、議事進行に関して申し上げたいのであります。防潜網聴音機の問題を先にまとめてもらいたいと考えます。従つて防潜網聴音機の問題につきまして、第一点に、防潜網聴音機は同じ地域に並べられておりまするので、不可分のものと私は考えるのであります。ただいまいろいろ御答弁もありましたが、間接被害という言葉をお使いになつていらつしやいますが、先ほど松田委員よりお話のありました防潜網の南においては、魚族の密度が増して来るだろうというお話、ごもつともだと思います。しかしながらこの南の方には防潜網聴音機というものがあつて、十七平方マイル投網禁止、投錨禁止、それから富津岬、旗山崎まで東西十二キロ、南北五キロばかり、この間投網、投錨ともにできません。すなわちこれは地域提供と考えるのであります。将来法的根拠を与えます上においてこれを間接被害とするか、あるいは地域提供を認めるかということで大いなる違いを生じて参るのであります。本問題に対して私はまつたく地域提供と考えるのであります。従つて本日は水産庁長官の御出席を要求しておいたが、見えませんので、はなはだ遺憾でありますが、漁政部長がおられますので、これはまつたく地域提供として本委員会で認めていただきたいと考えますが、いかがでございますか。
  54. 伊東正義

    伊東説明員 お答えいたします。今の点でございますが、御指摘になりましたように、防潜網の問題と、その前面の聴音機の問題があるのであります。それで間接被害という言葉は非常に言葉が悪いのでありますが、この前法律を出しますときに使いました意味は、直接提供しました区域の中の被害というのを直接被害という言葉を使つたのであります。たとえば防潜網の問題でありますと、ずつと帯状にあるのであります。ですから、その帯状の地域を提供地域としまして、東京湾の中では操業を制限する必要はないのであります。それで東京湾全部を地域として提供するということも考えられませんので、防潜網につきましては、防潜網を張つてある地域提供というふうに新しく考えたらいいでのではないか、それから聴音機のあります地域は防潜網被害とは事情が大分違いますから、あるいは考えようによつては、まだ話合いがつかぬのですが、その地域を提供区域と指定して、今おつしやいましたように、投錨を禁止されておりますので、ある程度漁業制限はしているのだということについて今の法律で外の方は補償してやつて行くということはできると思います。
  55. 中村庸一郎

    中村(庸)委員 ただいま従来のお考え方、また今後の考え方に対して一つの光明を見出したように考えるのであります。従つて防潜網の問題につきましては、地元漁民が非常に困窮に陥つて、まつたく暮れが越せないというのが事実であります。従つて陳情が非常に起つております。場合によつて防潜網を破壊しても出漁すると地元漁民はいきまいているような状態であります。去る十三国会におきましては本問題を取上げられまして、すみやかに法的根拠を与えるということについて、河野主計局長が二十七年五月三十一日の十三国会で答弁いたしております。その速記録を読んでみます。「できるだけ早い機会にこの関係の法律案を御提案申し上げて、御審議を仰ぎたいと考えております。もちろんこの損害につきましては、そうなりました場合におきましては、過去にさかのぼつて適用する、もしそれが可能でない場合においては、何らか見舞金を支給するとか、そういうことによつて事態を調整して参りたいと考えておる次第でございます。」かように河野政府委員は答えておられます。しかもこの権威ある水産常任委員会においてかように答弁しておられまするが、今年五月三十一日より今日に至るまで何らの対策も施されなかつたということは、本委員会をまつたく侮辱するものであると私は考えるのであります。この河野政府委員の言われた言葉によりまして、政府提案の法律ができて法的基礎を与えられるということが今日まで遅れておつたということは、まつたく遺憾千万であります。そのために今日の漁民の非常なる窮乏、また思想的にも非常なる悪化を来しておることはまつたく遺憾千万に考えるのであります。政府はすみやかに十三国会の河野政府委員お話のように進められるならばけつこうでありますが、もしこれができないとするならば、すみやかに議員立法の方法によつて法的根拠を与えられんことを、私は願つてやまぬのであります。しかしながらこの法的根拠を与えて補償するということになりますのには、この年内には間に合わぬと思うのであります。年内に、この差迫つた暮を越すために——昨年は見舞金として六百万円の金額が出たのでありますが、この額を、ただいま伊東漁政部長は県に依頼して損害を査定中であるというお言葉でありますが、査定中というのはまつたく手ぬるいので、すみやかにおきめいただいて、県の方と御相談せられまして、今日防衛費の特調の方の九十二億というわくがあるのでありますから、この九十二億の中から見舞金を出されると考えますので、大蔵省関係各庁とも御相談の上、この見舞金だけは年内に一日もすみやかにお出し願うことを願つてやまぬのであります。もし政府がこの法的根拠を立法化しない、遅れるというならば、議員立法による臨時措置法をつくられてはいかがかと考えますので、委員長にお願いしておきます。
  56. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 中村委員の御発言に対してはまつたく同感であります。私は政府に対して、被害の状況に対する私どもの意見を申し述べて、将来の参考に供してもらいたいと存ずるのであります。それはただいままで参考人からもいろいろ陳情があつた東京湾というものの性質であります。これは全国に同様な漁場がたくさんあつて、こうした問題が起きるのであります。その被害内容から行く東京湾の性質であります。要するに防潜網というものがあるために、それによつての潮流から来る魚道というものをどこでもよく調査しなければならぬ。しかしてその密度というものは先ほど懇談の中で話しておつた状態のものであります。しかしそこに大きな内湾があり、魚が魚道を通じてその内湾に入つて行つて、その中のプランクトンなりの棲息の状態からいつて、長い間その湾内に、棲息しておる。しかして外海に出る順序というものも一定の魚道を通じて出るものであります、これが魚の習性であります。ところが入つて行くときにおいては防潜網のためにそこでさえぎられて、ただちにそれが南側の方にまわつて行くために、南側は密度が相当濃くなつて、しこうして漁獲はあるけれども、それは短時日にすぎない。湾内に入つて遊泳する時間というものがないために、一時的な漁獲にすぎないと同時に、魚価は暴落して、漁民生活は非常な窮乏に陥るのであります。長い間内湾に入つて遊泳し、徐々に出ることによつてこの近海の魚価が維持されて、漁民生活は非常に楽になるものであります。そこを十分にお考え置きを願わなければ、この被害の状況というものはわかるものではないのであります。これが第一点。  第二点としましては、その年の魚族の回遊というものが大きな影響を来すものでありましよう。そこで、年によつてその魚族が来るか来ないかということが一つの課題になるものでありましよう。いわしでも、東京湾へ入る年と入らない年があります。しかしそれは回遊魚であります。一番危険なのはいわしの漁業でありますが、あと、さばやあじやさわらや、そういうものは毎年固定しただけの漁はあるものとわれわれは信じております。こういう点がこの問題の解決の重点となることだろうと思います。そこで今度はそこに住んでおる魚でありますが、これらは聴音機のためにその漁場は全然操業ができ得ない。ゆえにこれは完全なる間接ではなく直接の被害の所と見なければならないことであろうとわれわれは考えております。それからまぎ網によつて操業される場所においては、先ほど馬場さんのお話のように、その能力が三分の一か半分に減ぜられるということは、間接ではあるけれども直接のような原因になることであろうと考えられるのであります。これらの点を十分考慮して、水産庁は専門的に考えて行かなければならないものと考えておるのであります。それからわれわれは昨年の十三国会において議論して、それ以前にこの問題は小高委員が非常に熱心に論議されて、まずこの解決点は、転業しなければならないのではないかという議論まであつて千葉県における浅海漁業に対する政府の補助まで与えて、ちの漁場を開拓するようにやつたものであります。こうしたことも、転業し得べき場所があつたならばこれを十分考えて行かなければならないことであり、これが一番の大きなポイントであろうと考えるのであります。大蔵当局はややもすれば金を出さぬようなことばかり考えますが、こういう点に対しては大きな問題として大蔵省は十分考えなければならないのであります。当面の問題としましては、この十五国会は、御承知通り賃金ベースを上げるための臨時国会であります。組織的な勤労者には全部給与が上ることだろうと思います。これには野党諸君といえども反対はありますまい。むしろ修正までして多く上げようと努力されておるここであります。しかるに漁民のみは、今日の状況はどうであるか。組織がない。しかして訴えて行くところがない。ために何年間というものを、国の安全を保障するために安全保障条約によつて日本を守つておるのであるが、一部の漁民のみがその犠牲に供されておつて、年末を控えて今日われわれの委員会陳情に来なければならないということは正しい政治ではないと思う。この点に対しては、今日あたり大蔵大臣、農林大臣が出席してこの問題を解決すべきものである。全国民の犠牲になつて、今日一部の漁民がその損害自分が引受けて行かなければならないということは、私たちには何としても納得の行かないことであります。この点に対し当局は十分に考慮されて、しかして一日も早くこの問題を解決しなければならないであろうと思う。単なる見舞金で済むことではないと私は考ておるものであります。こういう点からする十分なる被害調査と、しかして漁民の幸福のために、いな漁民生活のために、政府はあらゆる努力をされんことを私は要望し、当委員会においても真剣にこれに取組まなければならないものであると考えます。この点に対する御答弁は今はできないことであろうと思いまするが、十分各省内において御協議あらんことを希望いたします。
  57. 福永一臣

    福永委員長 川村君。
  58. 川村善八郎

    ○川村(善)委員 本問題についてはすでに論議も尽されておることでありますが、先ほど中村委員から、この救済には議員立法によつてでも救済して行かなければならないと言われました。これはちようど私が委員長のときに起つた問題でありまして、私もその責任の一端を負つておるものでありますから、ぜひ解決しなければならない、かように考えております。ただこの場合立法いたしますにも、その補償をいたしますにも、一体防潜網によつていかなる損害をこうむつておるかということを十分きわめなければ、またその補償が過少なるがゆえに漁民を苦しめるということになりますので、各般の事情も十分きわめてみたいというところから、二、三参考人または政府当局に御質問を申し上げたいと思います。私たち防潜網の網目、ワイヤーの太さ、あるいは浮きの装置、いかりの装置等は大体聞いておりますので、一たび防潜網を敷かれた場合には、漁業に支障のあることはもう申すまでもありません。魚の回遊状態の変化ももちろんございます。防潜網を張られたために、その付近の操業が自由潤達にできないために十分な漁獲を上げ得ないということも、これは言をまたないところであります。先ほど伊東さんの御意見にありましたように、定置漁業を例にとりましても、われわれの方は二尺目を使つておりますが、その二尺目を垣網にしてあじ、さば、いわしを捕獲しておる。現に私はその漁業をやつておりますから、それでとつておる事実からいたしましても、防潜網を張られることが当然障害になることは事実であります。これを某官吏が支障がないのだというようなことを言うのは、漁業を知らない、魚の習性も知らないもので、私からすれば暴言もはなはだしいものだといわなければなりません。ただ私が水産庁当局にまずお伺いいたしたいことは、防潜網を張つておる東京湾の内部と外部がどのくらいの面積あるでか。もう少しわかりやすく言うと、防潜網を張られた内側、すなわち横浜、横須賀、あるいは東京を含んだ面積がどのくらいあるか。それから千葉県からずつと先の方の湾の入口までの面積がどのくらいあるか。この面積がどのくらいあるかということが第一点。それからその内と外——内というのは今言つたような東京方面の内と、それから入口の方の漁業とが、今までの漁獲高から比較してどのくらいの差があるか。これをわかりやすく言えば、張られない前に一〇〇あつたとすれば、張られてからは内がどのくらい漁獲が減つたか。それから外の方も漁獲が減つたかふえたか、この点。これは水産庁にお伺いいたします。  それから参考人山口さんにお伺いしたいことは、ちようど大貫町は、われわれから言うと防潜網の外の方になつておりますが、外になつておる方は、防潜網に魚がぶつかつて外の方にはね返されるから、松田君が言われるように、これは必ず魚の密度が濃くならなければならない。これはわれわれ専門的に見てかように考えております。ただ密度が濃くなつても、聴音機なんかの施設によつて漁業ができない場合もありましよう。それから防潜網も付近の潮流の関係、上潮、下潮の関係で、その付近に魚がいることがわかつてつて操業ができない場合もありましよう。これらについて、魚の密度が厚くなつておるけれども操業ができないために漁がないのか。防潜網が張られてからその付近に全然魚が来ないのか。これらをまず参考人並びに水産庁からお伺いいたします。
  59. 伊東正義

    伊東説明員 防潜網を張られました湾の面積でございますが、私数学的には何平方海里ということを今覚えておりませんが、大体概数的に見ますと、中が五分の四で、外が五分の一ぐらいであります。  漁獲高の問題でありますが、これは実はこの問題がありますので、試験場を中心にして各漁業協同組合等を全部厳密に調査をしております。われわれの方としましては、まだはつきりした数字は実は出しておらぬのでありますが、今大体関係県方面からの数字をとつたのを見ますと、大体八百万ぐらいあつたのが四、五百万程度に減つておるという数字が出ております。われわれの方としましては今この数字を厳密に当つております。
  60. 山口卯之松

    山口参考人 私のところは防潜網の外、聴音機の内に位しておる位置にございます。大体八月までは今年も昨年も非常に魚が見えました。それから秋のかたくちいわし、これは最近でもかなりな魚群がおりますが、湾内で育つた魚が出て来る九月以降、入つた魚が出て来ることがほとんど見受けられません。私に言わせれば、地びきも揚繰もそれがために外から入つて来るのだけを待つという状況でございます。それから今のかたくちいわしがかなり濃い魚群を持つて来ておりますが、上潮になつて来ると防潜網に吹きつけられるというので、あの付近に魚群を見てもとれません。聴音機のときも同じことが言えます。ちようどあそこに、ゴーストップが設けられておりまして、出船入船の合図をしておる関係上、出船のときには入船がちようど私どもの前で十ぱいも二十ぱいも待つときがございます。それらが潮に流されまして元の位置を保てないという関係で、かすかにほんのスローでもつてまわつています。そういう関係で何十ばいという船がおつて網も張れないし、つりもできない。それから最近保安庁の監視船が、あそこに前からおりましたけれども、つい四、五日前に起つた例でありますが、私どもの方の船がなわを張つていたのをごちやごちやに全部まるめて、これをアメリカみたいに捨ててしまわないでとつておいてくれましたが、せつかくかけた網もとられてしまう、こういうような状態であります。  それからもう一つ申し遅れましたが、それと同時に聴音機防潜網の間、それから聴音機の外でありますが、保安庁でもつて掃海作業をいたしております。これは磁気機雷と浮遊機雷の爆破が主眼だそうでありますが、水面下十メートルぐらいの位置をひつつております。それはいつでも天気さえよければ二はいずつ四はいの船でひつつておりますので、その間漁民は網を張つても、綱を延べても、一本づりでもみんな逃げ出すというような状態がずつと続いております。
  61. 川村善八郎

    ○川村委員 ただいまの山口君の御意見で、上り魚はとれるけれども下り魚はほとんどとれないということは明らかであります。いわんや防潜網の張られておる中に入つておる漁民は推して知るべしであります。でありますけれども今の伊東部長の御答弁から行きますと、魚はたくさん入つて来ておるけれども、とれなくなつたのか、その中でもさらに防潜網を張つておる中あるいは外でもその防潜網の付近はとれないのか、この点がはつきりしませんので、どうか水産庁においても、調達庁においても、一体東京湾に入ろうとして来る魚が多くなつておるのが少くなつておるのかということを至急に調査してもらわなければ、いわゆる補償という問題になると相当にめんどうな問題が起きますので、この点どうか早く調整を進めるように私から希望いたします。  要は先ほども中村委員が言われたように、またわれわれが第十三国会に取上げましたように、ぜひとも国内法を制定して国民の犠牲になつておりますところの一部の漁民救済してやらなければならないことは当然であります。従つて委員長におかれましても、その措置を講ずるように私からも特にお願い申上げておきます。政府当局のこれまでの答弁を聞いておりますと、安全保障条約の中に損害を、補償する規定があるが、そうでないものは見舞金でやるというような意向が非常に強いのでありますけれども見舞金などというものは程度が知れております。要はほんとうに国民の犠牲になつておる一部の漁民を救うとするならば、ただ単に損害補償というだけでなく、他に転換の道も講じなければなりませんし、さらに東京湾は相当浅海増殖もできるはずだと思いますので、浅海増殖の大幅な施設もし、救済の措置を講ずることも一方法であると考えておりますので、水産庁においても浅海増殖による予算措置もひとつ適当に考えなければならないのではないか。これを一口にまとめて申し上げますと、損害については一日も早く国内立法をして損害補償してやるということと、さらに漁業の転換等につきましては、水産庁でそれぞれ適切な措置を講じて、予算措置にこれを織り込むようにお願いいたしまして、私の質問を終りたいと思います。
  62. 甲斐中文治郎

    ○甲斐中委員 私はごく簡単に要点だけを申し上げます。今漁民諸君が非常に困つておられるということに対しまして、水産委員はほとんど全部非常な同情を持つておる。これに異議のある者は一人もありません。しかも困つている状況は相当深刻らしいのです。そのために立法的措置をして徹底的な救済を講ずるということは、短い期間には間に合わないと思います。それでだれもが一番困るのは、この年を越すことですから、年越しに間に合うような見舞金のようなことを応急措置として何とか心配して講じてやる。旅費で言えばまず概算を渡す、そしてあとから精算をする。精算をするのはつまり立法的処置によつて徹底的な救済策を講じる。これは来年にまわつてもよろしいです。年内に見舞金をやるという何か便法はないものか、そのことが私は必要ではないかと思います。またそれができねばならぬようにも考えます。なぜならば旧軍人の老齢者に対しましては、立法的措置をせずして見舞金を二千円ずつつやるということは、本国会できまるような状態ですから、それと同じような何かの方法がありそうなものである。これは私の希望ですが、これらの点に関しまして大蔵省関係の方の見解をひとつお伺いいたしたい。  それから年内に損害の算定ができる見込みがございますか、それを水産庁にお尋ねいたします。
  63. 谷川宏

    ○谷川説明員 ただいまの御質問でございますが、まず第一に概算払いの点でございます。このことにつきましては、その前提といたしまして、被害額がある程度わかつておりませんことには、概算のはじきようがないと思いますので、この点は水産庁の方の被害額がいつごろ出ますか、できるだけ年内に、払えるようにその調査の期間を四月まででございましたか、その程度で一応期間を打切りまして、資料が集まりましたならば、できるだけそうような措置ができますように研究してみたいと思います。  次に見舞金の点でございますが、この点につきましてもある程度被害状態がわかりませんと、どの程度見舞金を出してよろしいか、その算定に困難を来しますので、これも被害額の調査ができましたときにあわせて考えさせていただきたいと思います。
  64. 伊東正義

    伊東説明員 被害額の算定でございますが、先ほど私申し上げましたように、県には今年に入りまして四月までの講和条約の発効前と、それから九月までというふうに切りまして、それだけの被害はどのくらいあるかという照会を今やつております。これはたしか十二月十日までにもらうようにということで照会いたしております。防潜網の問題はこれは当然その際県から非常な被害が出て来ると思います。私の方といたしましても、先ほど申しましたように内部で委員会のようなものをつくつておるのでありますが、これとの結論を待つて、私の方といたしましても、できるだけ早い機会に見舞金を出すという努力はいたしております。これは十二月一ぱいにぴしやつと出るかということになりますと、今ここで必ずできますというお約束はいたしかねるのでありますが、なるべく早くやりたい。県からの報告は当然早く出て来ると思います。
  65. 中村庸一郎

    中村(庸)委員 ただいまいろいろ御意見が出たのでありますが、この防潜網は、御承知通り八寸目の網が張られております。これに海藻がついて一枚の板のようになつてしまう。先ほど松田委員の話されましたような魚族の回遊ということは、考えられない状態であります。かたがたこういう問題につきましては、先ほど申し上げましたように、地域提供ということになりますとはつきりして参るのでありますが、きようは長官が見えませんので、この問題を明らかにすることができないのは、まつたく遺憾に存じます。この防潜網並びに聴音機の問題につきまして起つておりまする問題は、漁民が非常にこれによつて困窮しておるということであります。この問題からして重大なる問題の起りました場合にどうするかということも考えられるのであります。こういうような問題を解決いたしまする場合には、まつたく政党政派を超越して、全員に立つていただかなければ、私はむずかしいものと考えます。昨年度におきましては、六百万円漁民見舞金が渡つておるというのでありますが、六百万円という算定の基礎はどこにあつたか。いろいろあると思いまするが、ここで政府委員の方方は御即答は無理と思いますので、本日申し上げました要点をよくお聞き取りくださいまして、すみやかに年内に二万八千世帯に対してこの見舞金相当額を支給されんことを希望いたします。第十三国会におきまする政府委員の御答弁は、国内法律をつくるというような御答弁になつておりまするが、これはなかなか速急には行かぬ問題であります。本日はこの問題は一応保留して、政府は今まで準備を進めておられることと思いますが、国内法の制定を急がれまして、根本的解決をされんことを希望して、本日の私の質問をこれで打切りたいと思います。
  66. 田口長治郎

    ○田口委員 この問題につきましては、われわれは第十三会国会から努力をしておるものでございます。漁業に関しまして、漁業権及び入漁権の関係は、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法、これで一応補償の道が講ぜられたのでございますが、漁業のうちで、許可漁業と自由漁業、この問題をいかにするかという問題につきましては、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約に基き駐留する合衆国軍隊に水面を使用させるための漁船操業制限等に関する法律、これで一応片づけたのでございます。これの審議中におきまして、結局この法律は、言葉はどうかと思いますが、これに関する補償の問題だということがはつきりいたしましたから、この法律案を通過させるひもつきあるいは条件といたしまして、先ほどから言う国内法をできるだけ早く政府で制定するということを条件にいたしたのでございます。そのときにいま一つ、法律の制定が遅れるが、前の損害をいかにするかという問題につきましても、私から特に河野主計局長に本委員会において質問しまして、それも遡及する、こういうことでこの許可漁業及び自由漁業に対する補償の法律を通過さしたような次第でございます。今まで承りますところによりますと、どうも水産委員会との約束に対して、政府がはたして最善の努力をしておられるかどうかということについて、多少の疑問がある次第でありますが、これは第十三国会のいきさつもありますし、また実際の漁業者立場を考えてみますと、一日も早く制定されますように調達庁、大蔵省、水産庁の三者に対して強く要望するものでございます。  なおこの防潜網関係につきましては、十三国会中にいろいろ研究した結果によりまして、佐世保湾あるいは大村湾にいたしましてもあるいは東京湾にいたしましても、被害の詳細なる数字的の問題は別といたしまして、相当深刻な声がはつきり出ておる。こういうような関係でございますから、いろいろ会計法その他むずかしい問題もありましようが、さしあたり困つている漁民立場を考えてみますと、やはり根本的な法律制定と別に、何か内渡金と申しますか、概算払いと申しますか。そういうような方法でこの際何とかしていただかなければ、漁民は納得しないし、また年を越されないというような実情にあると考えるのでございます。そういう点からいつて、何か概算払いのような方法を講じていただきたいのでございますが、いろいろな関係でどうしてもそれができない場合におきましては、水産庁でこの将来の補償金ということを見返りにいたしまして、農中その他から融資をするような処置をぜひひとつ研究していただきたいと考えるのでございます。  さらにもう一点は、この補償問題を年々繰返している。これはおそらく早いところでは二十一年ごろから継続をしておると思うのでございますが、これの根本的な解決につきましては、今まで通り補償金で出して、これを困つている漁業者にわけるのも一つの方法でございますけれども、むしろ積極的にある程度まとまつた金を国が貸して、転業あるいはその他の方法に対して抜本的の更生の道を講ずるというような行き方もあるのではないかと考えますから、この面のこともひとつ役所として真剣に考えていただきたい、こういうような希望を持つている次第でございます。補償金について、長崎県では、なるべく金をわけないでまとまつた金でやるような方法でこの金を使うのが至当ではないかというような指導をさせておるような次第でございます。それにいたしましても、年々の補償金だけでは全然問題は解決しませんから、四年分、五年分というようなまとまつた金で根本的な解決策を講ずるというような面も、ぜひひとつ考えていただきたいのでございます。  それから第三に、この補償金の問題については、法律的に何か調達庁が主になつて水産庁とは内輪では相談しておられるかもしれませんけれども、とにかく一応紹介するというような程度でございますと、調達庁としては漁業実態を握られることが非常に困難ではないかと考えますから、二十六年までやられましたように、水産庁調達庁とが、原案をつくられる場合においても、漁業の点の実態をつかんでおられるのはやはり水産庁と思いますから、法律はいかようになつておりましても、水産庁とよく御相談の上、この問題の処置に遺憾がないように、調達庁といたしましてもぜひ考えていただきたい、こういうことを考えておる次第でございます。今年になつて水産庁の方があまり責任を感じないといいますか何といいますか、仕事が調達庁に移つたというような感じがあるようでございますが、問題の性質から申しまして、水産庁調達庁が緊密な連絡をとつて、大蔵省とも相談されるということではほんとうの解決ができると思いますから、この点を大蔵省、調達庁水産庁に特にお願い申し上げておきます。別に答弁はいりません。
  67. 福永一臣

    福永委員長 本問題につきましては、損害補償見舞金の支給実現及びこれに関する議員立法の制定につきましては、漁港、漁船及び漁業災害補償に関する小委員会において、調査研究並びにその立案に当ることにいたしたいと思いますが、これに御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 福永一臣

    福永委員長 それではさようにとりはからいます。  本日はこの程度にとどめまして、次会の開会時日は公報をもつてお知らせいたします。  これにて散会いたします。     午後一時三分散会