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瀧本政府委員 人事院月報の二十九号には、
勤務地手当につきましては、本年五月六日、
参議院が行いました
修正議決というものがございますので、それの趣旨を参酌して、別途
改訂につきまして
勧告を行うということを書いておるのであります。従来
人事院は、
勤務地手当の
支給区分を考えます際に、どういう
方針でや
つたかということを一応簡単に御
説明申し上げまして、今回の
作業と、どこが違
つておるかということを申し上げたいと思います。
人事院におきましては、
総理府の
統計局の方にお願いいたしまして、
総理府統計局で
CPSというものをや
つておられるのでありますが、これは常態といたしましては、
全国の二十八
都市を中心にいたしまして、三十八
都市について
CPSというものをや
つておられるわけであります。その際に出ました
CPSの各
都市の結果から
東京を一〇〇といたしまして、それぞれ
地域的な
指数というものをつく
つておるわけでございます。
人事院は
全国二十八
都市だけではこれははなはだ不足でございますから、それと同様の
方法によりまして、約三百市町ぐらいをとりまして、
CPSをや
つたのであります。そういう
調査を前後三回にわた
つてや
つております。そういうものを
特別CPSと呼んでおりますが、各
府県におおむね
四つ、五つという
程度の
都市があるわけでございます。われわれはこれをかぎになる
都市——
キー・シテイいうような名前で呼んでおるのでありますが、
東京を一〇〇といたしました
キー・シテイが、各
府県に
四つ、五つあるわけであります。一方におきましては、
府県庁の方にお願いいたしまして、
生計費あるいは
消費水準というような面から見ました
都市あるいは
町村の
順位表を、
人事院の方へ
提出していただくということをいたしてお
つたのであります。この
キー・シテイというものは、連続した
都市でなしに、いろいろな形態から見まして、飛び飛びに
なつているような
都市を考えております。
最初の構想では、この
キー・シテイで
府県から出ました
順位表をはさみまして、そしてこの
キーシティの場合には、
指数がはつきり押えられるわけでありますから、この
CPSの結果から得ました
地域差指数の、どういう
指数以上は五
級地にする、四
級地にするというかつきりした
基準があるわけであります。それではさんできめて行くというような
方法を、一応
算定方法としてと
つたわけでございます。ところが御承知のように、この
勤務地手当というものは、
人事院が
給与実施の業務を引受けます前から、大蔵省において、新
給与実施本部でこの問題を取扱われてお
つたわけであります。その当時は、新
給与実施本部長の
通牒程度で
地域が
指定されておりました。それが十一次、十二次、十三次、十四次
指定というような言葉で呼ばれておりますが、そういう
通牒で
指定されてお
つたのであります。このときには、私はその当時の
状況を考えまして、まことにやむを得なか
つたのであろうとは思うのですが、そういう
CPSというようなものがあるわけではございませんし、また
府県から
順位表というようなものをとるわけでもないのでありますから、いろいろな
事情を勘案されて決められたのであろうとは思うのでありますけれ
ども、かつきりした
標準がないというようなことで、
人事院方式による
地域給のきめ方でこれをながめて見ますと、どうも少し順序の不同なものがあるのではなかろうか。一度これを御破算にいたしまして、新しい
人事院の
考え方によりまして、
級地を設定いたしたいというふうに
思つてお
つたのであります。ところが
級地問題は
実績といものがあるわけでございますし、また一方におきまして、こういう上げ下げをするというようなことになりますれば、これは
ベースアップの
機会をとらえてやるよりしようがないじやないかというようなことがございまして、
ベースアップの
機会にやりたいと
思つてお
つたのであります。ところが
ベースアップは、必ずしも
人事院が希望いたしますように実現しないというようなことがございまして、従来の
実績を払拭するということが、事実上困難であ
つたというようなことがございます。従いまして、従来の
実績で高か
つたものは、これはなおその
実績をそのままにいたしまして、従来の評価が低か
つたものだけを上げるというような
方法でや
つて来てお
つたわけであります。そういうことに
なつておりますから、
地域給設定につきまして、
人事院は独自の
一つのものの
考え方を持
つてお
つたわけでありますけれ
ども、その結果として現われて参りますところは、それは半分しか現われて来ない。従来の
実績が
残つておるというようなことで、若干この
地域給につきまして割切れない問題がずつと
残つてお
つたわけであります。そういうことが何回かの
地域給の
給地の
改訂を必要とした、大きな
事情であろうというふうに
思つております。たまたま
前回人事院が
級地の
改訂につきまして
勧告をいたしました。ところが
参議院におきまして、ただいま
人事院月報に書いてあることを読み上げた通りに、
修正議決されたわけであります。これは衆議院の方におきまして、これを採用されるに至りませんで、
人事院勧告を
政府原案として
提出されたのでありますが、その
地域区分が実施されたということに
前回はなりました。ただ懸案として
残つております点は、
参議院の
修正議決ということをしんしやくして、もう一度出直しをするということが宿題として残されたわけでございます。そういうような
状況になりますと、
参議院の
修正案というものも、これは相当尊重しなければならぬということになりますが、
参議院の
修正案そのものが、必ずしも
一つの
方針に基いて考えられておるということにはどうしてもならないのであります。われわれは
参議院の
修正案なるものが、無意識的にしろどういうことが
基準に
なつて、そういう
修正案ができたのであろうかということを、いろいろ分析して研究してみたのでありますが、これは必ずしも
人事院が従来考えておりました、
CPSから求めております
地域差指数というようなものだけが、根本に
なつていないということがわか
つたわけであります。その点いろいろ研究いたしました結果、おおむねこういう点を研究したならば、
参議院案というものが解釈がつくのではなかろうか。もちろん
参議院案は非常に短かい期間に
委員が努力されましてつくられたものでありますから、部分的には
均衡のとれたことに
なつてるところもありますけれ
ども、
全国的見ますと、なかなか
均衡がとれておると考えがたい点があるのであります。そしてまた
均衡のとれている部分だけについて見ても、やはりこういうことが
一つの原則になるのではなかろうか、と申します点は、その
土地土地における
所得の
状況でございますね。こういうものがまわりまわ
つてその
土地々々の
消費水準を決定するということになるので、そういう面が強調されておる。
従つてたとえば
個々の
都市につきましてそういうことが一々やり得ないまでも、
府県別あるいは
地域別でもよろしゆうございます、ある一定の
地域をまとめて考えました際に、そういう
地域における
分配所得と申しますか、
県別にいえば
分配県民所得でございます。そういうものが一体どう
なつておるかというようなことを
調べ、またその
土地々々における一般的な
民間の
給与水準がどう
なつておるか。これは労働省において毎月
勤労統計というものがございますが、この
全国的な毎月
勤労統計に対しまして、
府県別毎月
勤労統計というものがありまして、それで結果が出ているわけでございます。もつともこの
府県別毎月
勤労統計は、その
調査要綱が
府県によりましてまちまちに
なつております。従いまして
調査範囲も違いますし、
事業場の
規模も違うというようなことで、画一的に出ております
数字をそのまま比較するということは困難な点があります。しかしながら参考のためには十分使い得ますので、そういうものを見て行く。またある
都市におきまする
金融機関の数でありますとか、あるいはその
土地にあります
企業を
規模別に見ますと、大体において
規模の大きい
企業が
給与水準が高く
なつているというようなこともございますので、ある
程度大きな
事業場を
規模別に見まして、どういう地区にはどういう
事業場があるというようなことも見る。それからまた農業とか林業でありますが、こういうものがその
土地々々においてどういう
事情でウエートを占めておるか。これはむしろ逆の
要素になろうかと思うのでありますが、そういうものも見て行く。それからまた鉄道がありますところにおきましては、各駅におきまして
広告を掲載いたします場合の
料金が違うのであります。これは駅の
昇降客数ということが大きな
要素に
なつておると思うのであります。要するにその
土地々々における
消費水準というようなものに応じまして、その
料金か違うということが大まかには言えるのではなかろうか。これが
等級別にわかれております、こういうものも見て行く。すなわち
府県別の
県民分配所得というようなもので、
府県間の権衡をとる。さらにそれを補正いたしますのに
勤労所得というようなものも加味して、その間の
関係を
調べて参る。それから
個々の
都市について申しますならば、
先ほどから申し上げておりますように、
企業の数でありますとか、
金融機関の数でありますとか、あるいは駅の
広告料金の掲載の
順位でありますとか、こういうものを見ることによりまして
全国的にバランスをとり、また
府県内の見方をして行くというようなこともあわせていたしたのであります。しかし
CPSの
数字も利用し得る限りは利用したということになります。しかし
人事院がもはや数回にわたりまして
地域給の
改正を、
CPSによる
地域差指数でやるということになりました結果、この
数字は一概にそれだけにたよることがむずかしいような結果も若干現われておるのでありまして、それも考慮いたしまして、それだけにたよるということは必ずしもいたさなか
つたわけであります。そういうふうにして
人事院は考えたのでありますが、
府県内における
順位を考える際にあたりましては、これは県の方から
府県内における
消費水準あるいは
生活程度というようなものから、市
町村に
順位をつけてもらいまして、
提出をしていただいておるのであります。これはずつと前からや
つておることと同様でございます。この
府県から出て参ります
順位表をどこで切
つて行くかということを、ただいま申しましたような
作業によりましてや
つて行くというような
方法によりまして、たとえば
級地の
引上げでございますとか、あるいは新たに
一級地に繰入れられますものの
範囲でありますとか、こういうものをきめていただくという
作業をやりまして、今回の
作業をいたしておる次第でございます。