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山縣国務大臣 厚生行政全般にわた
つての広範な御質問でありまして、とうてい短時間ではお答えできないと思いますが、
要点だけをお答えいたしたいと思います。なおまた、ただいま御質問の三点はいずれも関連いたしておりますから、一括して御
答弁申し上げたいと思います。
昨年の新
内閣ができました際における総理の施政
方針演説によ
つては、新
内閣の厚生行政がわからぬというお話でありましたが、ただいま御
提案を申し上げておりまする
昭和二十八年度の
予算案によ
つて、大体現
内閣の企図いたしております厚生行政の全般について御了承を得られると思うのであります。これはたびたび本
会議あるいは
委員会等においても申し上げておりまするから、できるだけ重複を避けたいと思いまするが、厚生行政に対して憲法二十五条を引用されてのお話がありましたが、これは各国の例を見ましてもなかなかそう、厚生行政がこれでもう完全だということは、これは相対的なものであ
つて、言い切れぬのであります。
日本の二十五条と同じような憲法を各国も持
つておりますが、その各国の総
予算と厚生
予算との比較を見ましても、
日本はそう私は減
つてないと思う。ことに
日本の終戦後におきまする現在の国家財政の面から見ますれば、比較的に申して、私は憲法二十五条にそう反していると思わないのであります。ことに
予算委員会あるいは本
会議等において承
つておりますると、野党の諸君は、
昭和二十八年度の
予算の規模の厖大であるということを指摘されているのであります。でありますから、総
予算に対する厚生
予算の比率は、
昭和二十八年度におきましては、これはいろいろ算定の基礎が皆様によ
つて違うかもしれませんが、私のと
つております基礎によれば九・七%、昨年は八・四%でありますから、さような見地から申しましても、たとえばイタリアの例その他を引きましても、私はまずまず
日本としては新
内閣といたしましても相当の努力をいたして参
つていると思
つているのであります。もちろんこれで万全ではありませんから、たびたび私は本義において申し上げておりまする通りに、今後とも誠意をも
つて万全を期して行きたいという決意を持
つて厚生大臣を勤めているのであります。
新
内閣の厚生行政に対する
方針なり、あるいはどういうふうな規模においてやるか具体的にというお話でありまするが、一言にして言えば社会保障
制度審議会が答申いたしておりますあの線、あの線に沿
つて国家財政の見地から見ていろいろ政策を立てて参
つております。これはこの間たしか
予算委員会でも申し上げたと思いますから重複を避けたいと思いまするが、社会保障
制度審議会の言
つております基本的な線は四つ、いわゆる社会保険と国家扶助と公衆
衛生の面と社会福祉の面、この四つであります。社会保険におきましては、これは第二回の勧告におきましても、
日本の国家財政の貧困を認めているのでありまして、そのもとにおいて、まずも
つて国民健康保険に対する
給付の
国庫負担を二割やれということでありましたが、社会保険の面でまずやるのはこれであり、重点的に国家財政の見地からやれという答申でありますから、
昭和二十八年度
予算にお冒しては、これはいろいろ問題もございましたが、
給付に対する
国庫負担の
予算の一割五分を私どもといたしましては努力をいたしたつもりであります。そのほかに、たとえば他の社会保険の例におきましてもいろいろまだやりたいこともございますけれども、そうなかなか財政の
関係等においてできませんので、今後を期したい、これは絶えず申し上げておる通りであります。
第二の国家扶助の点におきましても、これも問題は
生活保護法の
関係であろうと思いますが、基準の問題がいつも問題になります。本年は八千円に上げて、生活、教育、住宅等を含めて千二百十二円ということになりますが、これに対してもいろいろ御批判もあろうと思います。現に文化費とかその他の点においてはまだ十分でないことは私も認めまするが、少くとも食生活においては、これは大体
昭和二十二年のあの
審議会の答申のカロリーだけは保持いたしておると思う。その他のたとえば三十才から四十才までの若い者についても軽労作の基準において大体二千二、三百のカロリーは保持いたす、これは軽労作でありますから、重労働をすればもつと上がる、そういうふうにして大体食生活においてはや
つておる。但し文化費においてはこれは不十分でありますから、今後とも努力をいたしたい。
それから公衆
衛生の面においては、これはただいま医療の問題についてお話がございましたが、
日本の医療体系を整備いたして、そしてや
つて行きたい。もちろんこれは相当の金がいることでありまするから、十分に参りませんが、たとえば結核対策にいたしましても、十九万床を目標としてや
つて行く、たとえばヘルス・センターの拡充にあたりましても、大体
審議会の答申の通りの十万単位はー昨年が大体十一万単位でございましたが、大体十万単位に近づきつつある。アフター・ケアーもわずか二箇所のテスト・ケースでございまするが、これも本年初めて頭を出した。それから予防対策、癩その他におきましても、本年度多少増額をいたして参る。不十分ではありますが、まずそういうふうな精進は続けておるのであります。
それから社会福祉の面におきましては、これは
皆さんの御努力によ
つて、これもあるいはまだ十分ではございませんけれども、母子対策に対しては一応頭を出して、そして軌道に乗りつつある。その他こまかいことは、時間がありませんから省略いたしますが、そういうふうな努力で、大体社会保障
審議会の答申にあります、また企図いたしておる社会保険、あるいは国家神助、あるいは公衆
衛生、あるいは社会福祉のこの四つの面に対しましては、少くとも精進は続けておるのであります。なお今後とも私は努力をいたしたいと
考えております。
なお社会保険の統合に対しましては、これもたびたび
予算委員会等において私が申し上げた通りでありまして、たとえば労働省
関係の労災あるいは
失業保険等を統合いたす、あるいは
厚生省所管の
健康保険、
厚生年金その他を統合いたす、これは私は理論としてまた目標としてはそうあるべきだと
考えております。またそれに対しての研究、努力は続けなくちやいかぬと思
つておりますが、これにはやはりいろいろ発展過程もありまするし、たとえば英国等の例によりましても努力して一九〇〇年にようやくそれをやり、フランスにおいても一九二八年のときに獲得した。しかもそれはりくつだけではいかぬ。歴史的な発展過程がありますから、今後とも目標は、ただいま申しましたように、統合すべきものは統合いたす、また被
保険者の立場から見ても、あるいは国家の立場から見ても、統合すべきものは統合し、整理すべきものは整理する、あるいはまた調整すべきものは調整する、この努力は続けまするが、これはいろいろまた技術的にも問題がありまするから、今後研究努力をいたしたい、かように
考えております。