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1952-12-15 第15回国会 衆議院 厚生委員会 第5号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
二十七年十二月十五日(月曜日) 午後一時五十七分
開議
出席委員
委員長
平野
三郎
君
理事
大石
武一
君
理事
野澤
清人
君
理事
堤 ツルヨ君
理事
長谷川
保君 新井 京太君 勝俣 稔君 永山 忠則君 日高 忠男君 吉江 勝保君 亘 四郎君 佐藤 芳男君
高橋
禎一
君
島上善五郎
君 柳田 秀一君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 山縣 勝見君
出席政府委員
厚生事務官
(
児童局長
)
高田
正己君
委員外
の
出席者
厚生事務官
(
児童局企画課
長) 内藤 誠夫君 専 門 員 川井
章知
君 専 門 員
引地亮太郎
君 専 門 員 山本 正世君
—————————————
十二月十日
委員鈴木義男
君
辞任
につき、その
補欠
として淺
沼稻次郎
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 同月十一日
委員淺沼稻次郎
君
辞任
につき、その
補欠
として
鈴木義男
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。
—————————————
十二月十二日
保健婦助産婦看護婦法
の一部を改正する
法律案
(
内閣提出
第六号)(
参議院送付
)
あん摩師
、
はり師
、きゆう師及び
柔道整復師法
及び
診療エックス線技師法
の一部を改正する法
律案
(
内閣提出
第七号)(
参議院送付
) 同月十五日
母子福祉資金
の
貸付等
に関する
法律案
(
青柳一
郎君外二十五名
提出
、
衆法
第二二号) 同月十日 未
復員者給与法
の
適用患者
に
生活扶助料支給
に 関する
請願
(
山下春江
君
紹介
)(第五四〇号) 未
帰還抑留者
及び
留守家族救護法制定
に関する
請願
(加藤高藏君外二名
紹介
)(第五四一号) 同(
塚原俊郎
君
紹介
)(第五四二号) 同(
古井喜實
君
紹介
)(第五七五号) 同(
白浜仁吉
君
紹介
)(第五七六号) 同(成・
田知巳
君
紹介
)(第五七七号)
元満洲開拓犠牲者遺族等
の
援護
に関する
請願外
二件(
松岡俊三
君外七名
紹介
)(第五七九号) 同(
今村忠助
君外三十六名
紹介
)(第五九八 号) 同月十一日
戦没者遺家族年金弔慰金支給促進
に関する
請願
(
山口シヅエ
君外五名
紹介
)(第六六四号) 未
帰還抑留者
及び
留守家族救護法制定
に関する
請願
(
山下春江
君
紹介
)(第六六五号) 同(
大石武一
君
紹介
)(第七三七号) 同(
中助松
君外五名
紹介
)(第七三八号)
国立千葉療養所看護婦宿舎建設
に関する
請願
(
臼井莊一君紹介
)(第七三五号)
国立高田病院
の
施設整備
に関する
請願
(塚田十
一郎
君
紹介
)(第七三六号)
清掃施設整備
に対する
財源措置
に関する
請願
(
山下春江
君
紹介
)(第七四〇号) 同月十三日
部落問題対策特別委員会設置等
に関する
請願
(
水谷長三郎
君
紹介
)(第八一五号)
国民健康保険再建普及
に関する
請願
(
金子與重
郎君
紹介
)(第八五二号) 未
帰還抑留者
及び
留守家族救護法制定
に関する
請願
(
山手滿男
君
紹介
)(第八八九号) 同(
三池信
君
紹介
)(第九〇六号)
日雇労務者
の
健康保険法制定
に関する
請願
(平
野三郎
君
紹介
)(第八九〇号)
癩予防法
の一部
改正等
に関する
請願
(
小林絹治
君
紹介
)(第九〇七号) の
審査
を本
委員会
に付託された。
—————————————
本日の
会議
に付した事件
母子福祉資金
の
貸付等
に関する
法律
案(
青柳一郎
君外二十五名
提出
、衆 法第二三号)
—————————————
平野三郎
1
○
平野委員長
これより
会議
を開きます。 まず先刻当
委員会
に付託になりました
母子福祉資金
の
貸付等
に関する
法律案
を議題とし、
審査
に入ります。まず
提案者
を代表して
野澤清人
君より趣旨の説明をお聞きしたいと存じます。
野澤清人
君。
野澤清人
2
○
野澤委員
ただいま
提案
になりました
母子福祉資金
の
貸付等
に関する
法律案
につきまして、
提案
の
理由
を御説明申し上げます。 御承知のように、
配偶者
のない
女子
、なかんずく
子供
をかかえた
母親
が独力で
生活
して参りますには、経済的にも
精神
的にも、幾多の困難が伴いがちであることは申すまでもないのでございます。これらの
母子世帯
にあたたかい
保護
の手を
差延
べることは、その
母親
の
自立
の上からも、またその
家庭
に育てられている
児童
の
福祉
の上からも緊急な問題でございまして、国や
地方公共団体
はその
責任
上一日もゆるがせにすることのできない事項であると存ずる次第であります。 しかるに、これらの
母子世帯
に対する従来の
施策
といたしましては、
戦前
は、
母子保護法
によ
つて
十三歳
未満
の子を有する
母子世帯
に対する
生活費
の
支給等
の
保護
がなされて来たのでありますが、
昭和
二十二年
生活保護法
の
制定
に伴い、
母子保護法
も同法に引継がれて、
国民
平等の原則のもとに、
母子
に対する
福祉
の諸
施策等
もまた主として、この
生活保護法
の見地に基いて行われることとなり、その及ばざる部分は
児童福祉法
による
母子寮
、
保育所等
の活用、軍人、軍属の
遺家族
である
母子
に対する
戦傷病者戦残者遺家族等援護法
による
措置
、その他税制上の
配慮等
々によ
つて
わずかに糊塗されておる
実情
なのであります。第二次大戦に直接、間接に起因して激増した
母子世帯
は、戦後の特異な
社会経済事情
に影響されて、一般的にその
生活
はますます困難をきわめておるのでありますが、せつかく独立独歩の
生活意欲
に燃えながらも、
事業
の開始、
児童
の
就学等
について
資金融通
の道がないため、
生活内容
の改善、向上をはかるに由なく、やがては
生活保護
の
該当者
に転落の一歩手前と申すような不安な境遇にさらされている者はすこぶる多い
実情
で、ございまして、最近の
調査
によりましても母が生計の中心とな
つて
いる
母子世帯
のうち、
生活保護法
による
保護
を受けているものは全体の二八%を占め、その他の
世帯
につきましても、
生活
に
余裕
ありと認められるものは総数のわずかに四%にすぎず、その他はすべて
生活
に
余裕
がないとか、あるいは辛うじて
生活
しているといつた窮状を訴えているのでございます。これらの
母子世帯
に対し、国と
地方公共団体
との
責任
において、
生業資金
、
修学資金
その他の必要な
資金
をきわめて低利に、その
実情
に則して貸し付けること等の
施策
によ
つて
、
母子世帯
の
経済的自立
の
助成
と
生活意欲
の
助長
をはかり、
母子
の
福祉
の増進を期することはまさに喫緊の要務と申さねばなりません。 ここにかんがみ第十三
国会
において本
委員会
は特に小
委員会
を設け、
母子世帯
の
保護施策
について
慎重審議
の末、
母子世帯
に対する
福祉資金
の
貸付法案
を作成いたしたのであります。本
国会
に入りまして再び
母子福祉
に関する小
委員会
を
設置
し、前回の
法案
を
原案
として約十日間にわたり連日熱心な討議が行われたのでありますが、その結果ただいまお
手元
に配付いたしましたような
法律案
の成案を得まして、ここに各位の御
審議
を煩わすことと
なつ
た次第でございます。以上が本
法律案提出
の
理由
でございます。 次にこの
法律案
の
大要
につきまして御説明申し上げます。 第一に
対象
の点でありますが、この
法律
による
援護
を受ける
対象
は、
配偶者
と死別した
女子
で現に婚姻をしていない者及びこれに準ずる
事情
にある
女子
であ
つて
、しかも現に二十歳
未満
の
児童
を扶養している者であります。 第二に
資金貸付制度
の
内容
につきまして申し上げますれば、次の七種類の
資金
をそれぞれ
一定
の限度をも
つて
貸し付けようとするものであります。すなわち
事情
を開始するに必要な
生業資金
の
貸付
は五万円以内、
就職
に際し必要な
支度資金
の
貸付
は一万五千円以内、
事業
を開始するために
知識技能
を習得するのに必要な
技能習得資金
の
貸付
は
月額
千五百円以内、右の
技能習得資金
の
貸付
を受けている
期間
中の
生活
を維持するのに必要な
生活資金
の
貸付
は、その
期間
中本人につき
月額
千円以内及びその
児童
一人につき
月額
五百円以内、
事業
を継続するのに必要な
事業継続資金
の
貸付
は一回につき三万円以内といたし、また
児童
を
就学
させるのに必要な
修学資金
の
貸付
は
高等学校月額
五百円以内、大学または
医師実地修練月額
二千円以内、
児童
が
事業
を開始するために
知識技能
を習得させるのに必要な
修業資金
の
貸付
は
月額
千五百円以内といたしておるのであります。これらの
貸付金
は、それぞれ
一定
の
据置期間
中は無
利子
とし、その後は年三分の利息を附し、所定の
期間
内に
貸付金
の償還をさせることにいたしておるのであります。 第三に、
貸付業務
の
実施機関
は
都道府県知事
とし、
都道府県
が
貸付金
の
貸付
を行うについては、
特別会計
を設けることといたしておるのでありますが、これら
貸付金
に対する
財源措置
としては、国は、
都道府県
がこの
特別会計
に繰入れる
金額
と同額の
金額
を、無
利子
で、
都道府県
に貸し付けることといたしたのであります。 第四に、
都道府県
に
母子相談員
を置くことといたしたのでありますが、
貸付金制度
の利用その他
母子世帯
に派出するもろもろの問題について
身上相談
に応じ、その
精神的支柱
とな
つて
その
自立
に必要な
指導等
に当らせることといたそうとするものであります。国は、この
母子相談員
に要する経費の二分の一を負担することにいたしております。 第五に、
母子世帯
の
職場開拓
を促進いたすこととし、国、
地方公共団体
の設けた
公共的施設
の
管理者
に対しては、
母子世帯
からの申請があつた場合、その更生の場として
物品販売
のための売店または
理容所
、
美容所等
の提供に
努力
させるようにいたしておるのであります。また
日本専売公社
に対しては、これらの
母子世帯
を
製造たばこ
の
小売人
に指定するについて、特に
努力
するように規定を設けておる次第であります。 以上がこの
法律案
の
大要
でありますが、何とぞ慎重御
審議
の上、すみやかに御可決あらんことを切望する次第であります。
平野三郎
3
○
平野委員長
次に
本案
についての
政府
に対する御
発言等
があれば許可いたします。御
発言
はありませんか。
——別
に御
発言
もないようでありますから、
本案
の質疑は終了いたしたものと認めます。 次に
本案
の
討論
に入ります。通告によりまして
高橋禎一
君。
高橋禎一
4
○
高橋
(禎)
委員
私は改進党を代表して、簡単に本
法案
に
賛成
の
意見
を述べたいと思います。
昭和
二十五年の
国勢調査
によりますと、夫と死離別した
婦人
の数は約五百万人で、その中十八歳
未満
の子をかかえている者が約百八十万人と推定され、また
最年長子
が十八歳
未満
の
母子世帯
の数は、
昭和
二十四年に
厚生省児童局
が
行つた調査
によりますと、六十一万二百八
世帯
で、現在ではその数が約八十万
世帯
といわれているのであります。これら多数のか弱き
女性
が、おおむね
子供
をかかえ
精神
的にも経済的にも重荷を
背負つて生活
のため苦闘を続けているありさまは、まことに見るに忍びざるものがあるのであります。
国民協同
を
理念
とする
日本国
において、これにあたたかい救いの手を
差延
へないでこのまま放置することは、断じて許さるべきではありません。
福祉国家
を
理念
とする
日本国
の
協同体制
の根本は、
夫婦
の
協同生活
であり、
夫婦
は互いに助け合わなければならぬ。
夫婦
互に助け合うことを要請しつつ、そしてそれを期待しつつ、そこに
国民
の
幸福追求
の道が開かれて行くものとするのであります。
夫婦
が物的に心的に互いに協同するの
生活
を完うするところに、
人生
の幸福があるのであります。もし不幸にして
人生
の中道においてその
協同者
を失いたるときは、その者に対し
公共団体
ないしは
国家
がかわ
つて
協同者
として物質的に
精神
的に扶助して行かなければならず、そのことが
政治
的に当然のこととされているのであります。これが
日本国
の
協同体制
でありまして、これが
現実政治
の上に顕現されるところに
福祉国家
たるゆえんがあり、ここに
政治
の
崇高性
があるのであります。またかくてこそ愛情の
政治
である
民主政治
が確立されるのであります。
従つて
われわれが今問題としております夫たる
協同者
を失い、かつ
子供
をかかえ
生活
に苦しみ、前途に不安を持ち、暗澹たる日を送
つて
いる多数の人達に対し、
経済的自立
の
助成
と
生活意欲
の
助長
をはかり、その
福祉
を増進することは、けだし当然のことというべきでありまして本
法案
の、ごとき
法律
を
制定
することは、まさに時宜を得たるものであります。もとより
母子福祉
の道は本
法案
のごときをも
つて
足れりとするものではありません。むしろこれはその第一歩であります。われわれはこの法を
出発点
として、
母子福祉法
を
国家
の理想に向
つて
発展せしめなければならないのであります。本法は実に完全なる
母子福祉法
をつくるための橋頭堡であります。
母子福祉法
は単に
母子
のためのみのものでなく、妻子を持つ夫にも後顧の憂いなからしめ、安心して死ねる、いわば
男子
のための
法律
である
といつて
もあえて過言ではないのであります。今や
日本
においては
厚生行政
の
拡充強化
が強く要望されているのであります。
政府
においても十分このことを理解し、本
法案
の持つ
精神
に徹し、
母子福祉
のための
政府
の
実現
に邁進されたいのであります。 私はかかる見解のもとに、本
法案
が
法律
として誕生することを喜び、その発展を念じつつ、本
法案
に
賛成
するものであります。
—————————————
〔
参照
〕
堤ツルヨ
5
○堤(ツ)
委員
ただいま上程されました
母子福祉資金
の
貸付等
に関する
法律案
につき、
日本社会党
を代表いたしまして、心からなる
賛成
の意を表しますとともに、完全な
母子福祉政策
が近く
実現
すべきであることを確認いたしたいと存じます。すなわち従来、私どもが考えて参りました母と子の
福祉行政
は、単なる経済問題にとどまらず、
物心両面
にわたる
保護助長
でなければなりません。しかるに、やつと本日
提案
の運びになりました本
法案
は、種々の
事情
にはばまれ、その題名の示す
通り資金
の
貸付等
に限られたものでありまして、
母子福祉行政
の一部分にすぎません。父なき十八歳
未満
の
児童
を抱いて
生活
している
未亡人母子世帯
は、
昭和
二十五年の
国勢調査
によれば約百八十万
世帯
とな
つて
おります。特にこの中でも
最年長子
が十八歳
未満
の
母子世帯
は六十二万
世帯
近くで、これらの気の毒な母と子の
生活
の実態は、
議員諸公
がすでに御存じの
通り
でございます。
男子
でも
生活
困難な
敗戦下
の
社会情勢
の中で、
生活能力
を持たぬ夫を
失つた婦人
が、年少の
児童
を道連れに
母子心中
をして、国や
社会
に死の抗議をしました例は枚挙にいとまがございません。血を売
つて子供
を食べさせて来た実例も非常に多く、私
たち
の
手元
に
請願
や陳情が山積して参りました。
料理屋
、旅館、バーなどに
働らく女性
の八〇%までが、幼な子をかかえた
戦争未亡人
であるといわれておりますのを見ても、いかに
特殊技能
なく、その
生活
に困り抜いているかがわかるのであります。私は、歴代の
厚生大臣
や
政府
にこれら
母子世帯
に対する
施策
を難詰して反省と
善処
を求めて参りましたが、
生活保護法
、
児童福祉法
でも
つて
こと足れりとし、
財政
の許さぬを
方弁
として今日まで見て見ぬ振りをして参
つて
おりました。 御存知の
通り
、今日でこそ
男女同権
といわれ、
政治
への参加を許されました
日本
の女も、か
つて
古い
政治
の下でいかなる扱いを受けて参つたかは、いまさら申すまでもありません。
社会人
の一人として公平な権利を与えられて参りませんでしたから、その生涯の
生活根拠
は親であり、夫であり、老後は
子供
に依存して参
つたの
でございます。自分の力で夫なき後も、二人三人の
子供
をかかえて
社会
を泳ぎ切る
未亡人
はほとんどございません。これは封建的な
日本
の
社会
や
政治
が、女をかく育て、
生活能力
なきものにして
しまつたの
でありました。
戦前
までは結束の力さえも知らなかつた
婦人
が、戦後苦しい
生活
に直面し、大同団結して、国や
社会
におのが立場を披瀝して、その要求を叫ぼうと、
全国未亡人協議会
などをも組織して、
子供たち
をみずからの力で守らうと立ち上つたことは、
女性
の大きな進歩で、
生活力
を持たぬ
未亡人
ばかりをつくつた過去の
日本
の
政治
の償いとして、母と子を法で守れの声が、
母子福祉法実現
を望み、その運動は過去七箇年続けられて参りました。
国会
でもこの声を代弁して、再三決議し、
政府
に
善処方
を要求して参りました。年々行われる
婦人週間
、母の日などの
世論調査
は、必ず
母子世帯
を救うべきであると強く叫ばれ、また
全国的未亡人大会
や
社会福祉大会
、
児童福祉大会
、
民生委員大会
などでも、必ず
母子福祉法実現方
を決議して参りました。しかるに与論を無視して
法的保護
がなされなかつたことは、
政治
の貧困以外の何ものでもありません。 辛うじて
生活保護法
の
対象
として
保護
を受けている
世帯
は十七万三千
世帯
であり、さらに何とか
保護
を受けたいと頼み出ても、どうしても
予算
がないから
保護
できぬと、
地方
の窓口で断られている
母子世帯
が三十五万
世帯
くらいあると私は記憶しております。またどうにか一人立ちして働らいて、
子供
を食わせている母の
職業収入
は、本年九月
厚生省
の二万一千七百二十六
世帯
につき
調査
したところによれば、
月額
五千円以下のものが一万五千六百
世帯
で、その四分の三を占めており、
最低賃金
八千円確立が叫ばれております。今日いかにみじめな
生活
をしているか、年末
労働攻勢
をやる人々にさえも、はるか及ばないものなることを知らねばなりません。要
保護
を願い出ても聞き入れられない三十五万
世帯
と、要
保護
すれすれの
ボーダライン家庭等
を合せて五十万
母子家庭
の問題は、現行の
生活保護法
、
児童福祉法
ではどうしても解決できなかつた。これは
憲法
の
基本的人権
にももとるゆゆしき、
政治
問題であります。真剣な検討を加えて、
社会保障
の建前に立ち、当然母と子を
物心両面
にわたり、国の義務として守らねばなりません。
先進国
の
社会保障制度
のそれを見ても明らかなことく、父なき母と子の
世帯
は、
寡婦年金
、
遺児手当
、
母子相談施設
の
設置
または
職業補遺斡旋
、免税、
住宅施策
など、あらゆるものを統合した
福祉行政
が、
母子不可分
を
理念
として単独立法されるか、または
社会保障制度
の中に
実現
されなければなりません。他国の例を待つまでもなく、
日本政府
みずからが
設置
してその
答申
を遵守しなければならないはずの
わが国社会保障制度審議会
は、その
答申案
の中に
寡婦年金制度
として、無
醵出年金
をすでに四年前に勧告しているのであります。
吉田内閣
はこれを馬耳東風と聞き流し、怠慢もはなはだしい
無為無策
を続けて参
つたの
であります。
文化国家
のバロメーターともいうべき
社会保障制度そのもの
を手がけず、同時に
母子世帯
をも捨てて省みなか
つたの
であります。 ようやくにして本日
議員提案
となりました本
法案
は、母と子をせめて
一つ
の屋根の下に同居せしめ、
資金
の
貸付等
を行うことにより、その
経済的自立
の
助成
と
生活援助
をはかり、あわせて
児童
の
福祉
を増進しようというのであります。父なき
子供
の
基本的人権
を守るためには、その子を母の膝元から離してはなりません。父なき母と子の
家庭
は、国が父とな
つて
母と子を守るのでなければならぬというのが、わが党の主張であります。やむを得ずわが子を親戚や知人に預けて、母はその子を
手元
から離し、遠く別れて
子供
の
養育費
をかせぎ、その仕送りをしているというのが
未亡人母子
の
実情
でありまして泣きの涙のこの
人たち
の状態を見るとき、
児童憲章
も空文と言えましよう。幾分でも、この矛盾を解消するために、
生業資金
または
就職
に必要な
支度資金
、
技能修得資金
、また
技能修得
中の
生活資金
、さらに
事業経済資金
、加「えて
児童
の
就学
、
修業資金等
の
貸付
が、不満足ながらも
実現
しますことは、
全国
百八十万の
未亡人母子
への大きな福音であります。但しその
財源
が僅少で、
全額国庫
で賄い得ず、国と
都道府県
が折半しなければならなかつたことは残念であります。 こいねがわくは、地元の衆望によ
つて
選ばれた各
都道府県
の
民選知事
が、本
法案
の意とするところを了とせられ、
全国都道府県一つ
も漏れるごとなく
実施
されるよう、切に望んでやみません。特に
厚生大臣
に強く要望いたしたいのは、
貸付資金
のせめて五十億円確保であります。
厚生省
が目下二十八年度
予算
の中で、大蔵省へ要求している額はわずか九億円余りと聞いておりますが、それではとうてい殺到する
申込み
にこたえて
母子
を
保護助長
することはできません。いたずらに
経済理論
に走り、
資本主義
を固執する
吉田内閣
の欠陥は、万人認めるところの
民主不安定政策
であります。思想問題も、
青少年犯罪防止
も、
社会
の
秩序維持
も、
警察強化
によるピストルの威圧で解決するものではありません。
人間性
に立脚した愛の
政治
が忘れられてはなりません。幸い五人や十人死んでも云々の池田元
通産大臣
も今はなく、
政策
の
方向転換
も期待される
折柄
、全生命を打ち込んで
貸付資金
の五十億獲得に成功していただきたい。 最後に、
次期国会
には、必ずや
全国
的な
母子福祉法
の
立法化
、あるいは
社会保障制度
の
実現
によ
つて
、父なき不幸な
子供
があたたかい
政治
の中で育てられますよう、全
議員
の御
協力
を
願つて
、
全国
百八十万
未亡人母子世帯
の代弁といたします。
長谷川保
6
○
長谷川
(保)
委員
ただいま上程せられました
母子福祉資金貸付等
に関する
法律案
について、私は
日本社会党
を代表して
賛成
せんとするものであります。 一般に一家の
支柱
たる
男子
を
失つた家庭
が、
物心とも
に困難な
生活
をされることは申すまでもありませんが、ことに長期にわたる
戦争
と、戦後の混乱窮乏せる
社会
において、これら
母子世帯
の渡世の困難は筆舌に尽せぬものがあります。このゆえに戦後の
保護的法律
や
施設
が急速に整備せられ、これら
母子家庭
のために多くの
努力
をして参
つたの
ではありますが、今日なおあの不徹底な
生活保護法
による金被
保護世帯
の二分の一以上が
母子家庭
である実状を思うとき、新
憲法
の
精神
を
実現
するためには、いま一段の
努力
を傾倒すべきことは当然であります。 私はこの際、二、三の点についてわが党の
意見
を率直に申し述べてみたいと存じます。すなわち、第一にこの
母子福祉資金貸付等
に関する
法案
は、一今日の
政治
、
財政事情
ともにらみ合せて作成せられたものであり、将来必ず完成せらるべき
母子福祉法
の
橋頭塗
として
制定
せらるべきものと考えるのでありまして、
同僚議員諸君
並びに
政府当局
の御
協力
を得て、あとう限りすみやかに
寡婦年金
及び
遺児年金
、
婦人団体法
、その他あらゆる
母子福祉
に関する完全なる
母子福祉法
を
制定
せんことを望むものであります。第二に、この
法律
によ
つて
貸し出される
金額
は、初年・度大体十八億円と考えられますが、今日この
種資金
の需要を満たすためには、この約五倍、約百億円を必要とす、べく、これを将来に必ず
実現
せられるよう期待するものであります。第三に、本
法案
中
保証人
、
貸付条件等
の条項は必ずしも満足のものではありません。この
種法文
は
行政
の末端におきましては、とかく血も涙もない官僚の
形式主義
によ
つて法律
の
精神
が死んでしまうものでありましてこの点
母子相談員
の適否は、この
法律
の生死を決するかなめと申すべく、法の
実施
にあたり
行政当局
の十分の御
配慮
を願うものであります。 完全なる
母子福祉法
の近き将来における
制定
を強く期待しつつ、本
法案
に
賛成
するものであります。
—————————————
平野三郎
7
○
平野委員長
以上で
討論
は終了したこととし、なお、
討論
の申出がありましたが本
会議
との関係上、時間に
余裕
がありませんので、後刻書面で
提出願い参照
とし
会議録
に掲載いたしますから御諒承願います。これより
母子福祉資金
の
貸付等
に関する
法律案
の採決に入ります。
本案
を
原案
の
通り
可決するに御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
平野三郎
8
○
平野委員長
御
異議
なしと認めまして、
本案
は
原案
の
通り
可決いたしました。 なお
本案
に関する
委員会報告書
の作成に関しましては、
委員長
に御一任願いたいと思いますが、そのように決するに御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
平野三郎
9
○
平野委員長
御
異議
なしと認め、そのように決しました。 本日はこれをも
つて
散会いたします。
次会
は公報をも
つて
御通知いたします。 午後二時十三分散会