運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-12-15 第15回国会 衆議院 厚生委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月十五日(月曜日)     午後一時五十七分開議  出席委員    委員長 平野 三郎君    理事 大石 武一君 理事 野澤 清人君    理事 堤 ツルヨ君 理事 長谷川 保君       新井 京太君    勝俣  稔君       永山 忠則君    日高 忠男君       吉江 勝保君    亘  四郎君       佐藤 芳男君    高橋 禎一君       島上善五郎君    柳田 秀一君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 山縣 勝見君  出席政府委員         厚生事務官         (児童局長)  高田 正己君  委員外出席者         厚生事務官         (児童局企画課         長)      内藤 誠夫君         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君         専  門  員 山本 正世君     ————————————— 十二月十日  委員鈴木義男辞任につき、その補欠として淺  沼稻次郎君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員淺沼稻次郎辞任につき、その補欠として  鈴木義男君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 十二月十二日  保健婦助産婦看護婦法の一部を改正する法律案  (内閣提出第六号)(参議院送付)  あん摩師はり師、きゆう師及び柔道整復師法  及び診療エックス線技師法の一部を改正する法  律案内閣提出第七号)(参議院送付) 同月十五日  母子福祉資金貸付等に関する法律案青柳一  郎君外二十五名提出衆法第二二号) 同月十日  未復員者給与法適用患者生活扶助料支給に  関する請願山下春江紹介)(第五四〇号)  未帰還抑留者及び留守家族救護法制定に関する  請願(加藤高藏君外二名紹介)(第五四一号)  同(塚原俊郎紹介)(第五四二号)  同(古井喜實紹介)(第五七五号)  同(白浜仁吉紹介)(第五七六号)  同(成・田知巳紹介)(第五七七号)  元満洲開拓犠牲者遺族等援護に関する請願外  二件(松岡俊三君外七名紹介)(第五七九号)  同(今村忠助君外三十六名紹介)(第五九八  号) 同月十一日  戦没者遺家族年金弔慰金支給促進に関する請願  (山口シヅエ君外五名紹介)(第六六四号)  未帰還抑留者及び留守家族救護法制定に関する  請願山下春江紹介)(第六六五号)  同(大石武一紹介)(第七三七号)  同(中助松君外五名紹介)(第七三八号)  国立千葉療養所看護婦宿舎建設に関する請願(  臼井莊一君紹介)(第七三五号)  国立高田病院施設整備に関する請願(塚田十  一郎紹介)(第七三六号)  清掃施設整備に対する財源措置に関する請願(  山下春江紹介)(第七四〇号) 同月十三日  部落問題対策特別委員会設置等に関する請願(  水谷長三郎紹介)(第八一五号)  国民健康保険再建普及に関する請願金子與重  郎君紹介)(第八五二号)  未帰還抑留者及び留守家族救護法制定に関する  請願山手滿男紹介)(第八八九号)  同(三池信紹介)(第九〇六号)  日雇労務者健康保険法制定に関する請願(平  野三郎紹介)(第八九〇号)  癩予防法の一部改正等に関する請願小林絹治  君紹介)(第九〇七号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  母子福祉資金貸付等に関する法律  案(青柳一郎君外二十五名提出、衆  法第二三号)     —————————————
  2. 平野三郎

    平野委員長 これより会議を開きます。  まず先刻当委員会に付託になりました母子福祉資金貸付等に関する法律案を議題とし、審査に入ります。まず提案者を代表して野澤清人君より趣旨の説明をお聞きしたいと存じます。野澤清人君。
  3. 野澤清人

    野澤委員 ただいま提案になりました母子福祉資金貸付等に関する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  御承知のように、配偶者のない女子、なかんずく子供をかかえた母親が独力で生活して参りますには、経済的にも精神的にも、幾多の困難が伴いがちであることは申すまでもないのでございます。これらの母子世帯にあたたかい保護の手を差延べることは、その母親自立の上からも、またその家庭に育てられている児童福祉の上からも緊急な問題でございまして、国や地方公共団体はその責任上一日もゆるがせにすることのできない事項であると存ずる次第であります。  しかるに、これらの母子世帯に対する従来の施策といたしましては、戦前は、母子保護法によつて十三歳未満の子を有する母子世帯に対する生活費支給等保護がなされて来たのでありますが、昭和二十二年生活保護法制定に伴い、母子保護法も同法に引継がれて、国民平等の原則のもとに、母子に対する福祉の諸施策等もまた主として、この生活保護法の見地に基いて行われることとなり、その及ばざる部分は児童福祉法による母子寮保育所等の活用、軍人、軍属の遺家族である母子に対する戦傷病者戦残者遺家族等援護法による措置、その他税制上の配慮等々によつてわずかに糊塗されておる実情なのであります。第二次大戦に直接、間接に起因して激増した母子世帯は、戦後の特異な社会経済事情に影響されて、一般的にその生活はますます困難をきわめておるのでありますが、せつかく独立独歩の生活意欲に燃えながらも、事業の開始、児童就学等について資金融通の道がないため、生活内容の改善、向上をはかるに由なく、やがては生活保護該当者に転落の一歩手前と申すような不安な境遇にさらされている者はすこぶる多い実情で、ございまして、最近の調査によりましても母が生計の中心となつている母子世帯のうち、生活保護法による保護を受けているものは全体の二八%を占め、その他の世帯につきましても、生活余裕ありと認められるものは総数のわずかに四%にすぎず、その他はすべて生活余裕がないとか、あるいは辛うじて生活しているといつた窮状を訴えているのでございます。これらの母子世帯に対し、国と地方公共団体との責任において、生業資金修学資金その他の必要な資金をきわめて低利に、その実情に則して貸し付けること等の施策によつて母子世帯経済的自立助成生活意欲助長をはかり、母子福祉の増進を期することはまさに喫緊の要務と申さねばなりません。  ここにかんがみ第十三国会において本委員会は特に小委員会を設け、母子世帯保護施策について慎重審議の末、母子世帯に対する福祉資金貸付法案を作成いたしたのであります。本国会に入りまして再び母子福祉に関する小委員会設置し、前回の法案原案として約十日間にわたり連日熱心な討議が行われたのでありますが、その結果ただいまお手元に配付いたしましたような法律案の成案を得まして、ここに各位の御審議を煩わすこととなつた次第でございます。以上が本法律案提出理由でございます。  次にこの法律案大要につきまして御説明申し上げます。  第一に対象の点でありますが、この法律による援護を受ける対象は、配偶者と死別した女子で現に婚姻をしていない者及びこれに準ずる事情にある女子であつて、しかも現に二十歳未満児童を扶養している者であります。  第二に資金貸付制度内容につきまして申し上げますれば、次の七種類の資金をそれぞれ一定の限度をもつて貸し付けようとするものであります。すなわち事情を開始するに必要な生業資金貸付は五万円以内、就職に際し必要な支度資金貸付は一万五千円以内、事業を開始するために知識技能を習得するのに必要な技能習得資金貸付月額千五百円以内、右の技能習得資金貸付を受けている期間中の生活を維持するのに必要な生活資金貸付は、その期間中本人につき月額千円以内及びその児童一人につき月額五百円以内、事業を継続するのに必要な事業継続資金貸付は一回につき三万円以内といたし、また児童就学させるのに必要な修学資金貸付高等学校月額五百円以内、大学または医師実地修練月額二千円以内、児童事業を開始するために知識技能を習得させるのに必要な修業資金貸付月額千五百円以内といたしておるのであります。これらの貸付金は、それぞれ一定据置期間中は無利子とし、その後は年三分の利息を附し、所定の期間内に貸付金の償還をさせることにいたしておるのであります。  第三に、貸付業務実施機関都道府県知事とし、都道府県貸付金貸付を行うについては、特別会計を設けることといたしておるのでありますが、これら貸付金に対する財源措置としては、国は、都道府県がこの特別会計に繰入れる金額と同額の金額を、無利子で、都道府県に貸し付けることといたしたのであります。  第四に、都道府県母子相談員を置くことといたしたのでありますが、貸付金制度の利用その他母子世帯に派出するもろもろの問題について身上相談に応じ、その精神的支柱となつてその自立に必要な指導等に当らせることといたそうとするものであります。国は、この母子相談員に要する経費の二分の一を負担することにいたしております。  第五に、母子世帯職場開拓を促進いたすこととし、国、地方公共団体の設けた公共的施設管理者に対しては、母子世帯からの申請があつた場合、その更生の場として物品販売のための売店または理容所美容所等の提供に努力させるようにいたしておるのであります。また日本専売公社に対しては、これらの母子世帯製造たばこ小売人に指定するについて、特に努力するように規定を設けておる次第であります。  以上がこの法律案大要でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを切望する次第であります。
  4. 平野三郎

    平野委員長 次に本案についての政府に対する御発言等があれば許可いたします。御発言はありませんか。——別に御発言もないようでありますから、本案の質疑は終了いたしたものと認めます。  次に本案討論に入ります。通告によりまして高橋禎一君。
  5. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 私は改進党を代表して、簡単に本法案賛成意見を述べたいと思います。  昭和二十五年の国勢調査によりますと、夫と死離別した婦人の数は約五百万人で、その中十八歳未満の子をかかえている者が約百八十万人と推定され、また最年長子が十八歳未満母子世帯の数は、昭和二十四年に厚生省児童局行つた調査によりますと、六十一万二百八世帯で、現在ではその数が約八十万世帯といわれているのであります。これら多数のか弱き女性が、おおむね子供をかかえ精神的にも経済的にも重荷を背負つて生活のため苦闘を続けているありさまは、まことに見るに忍びざるものがあるのであります。  国民協同理念とする日本国において、これにあたたかい救いの手を差延へないでこのまま放置することは、断じて許さるべきではありません。福祉国家理念とする日本国協同体制の根本は、夫婦協同生活であり、夫婦は互いに助け合わなければならぬ。夫婦互に助け合うことを要請しつつ、そしてそれを期待しつつ、そこに国民幸福追求の道が開かれて行くものとするのであります。夫婦が物的に心的に互いに協同するの生活を完うするところに、人生の幸福があるのであります。もし不幸にして人生の中道においてその協同者を失いたるときは、その者に対し公共団体ないしは国家がかわつて協同者として物質的に精神的に扶助して行かなければならず、そのことが政治的に当然のこととされているのであります。これが日本国協同体制でありまして、これが現実政治の上に顕現されるところに福祉国家たるゆえんがあり、ここに政治崇高性があるのであります。またかくてこそ愛情の政治である民主政治が確立されるのであります。従つてわれわれが今問題としております夫たる協同者を失い、かつ子供をかかえ生活に苦しみ、前途に不安を持ち、暗澹たる日を送つている多数の人達に対し、経済的自立助成生活意欲助長をはかり、その福祉を増進することは、けだし当然のことというべきでありまして本法案の、ごとき法律制定することは、まさに時宜を得たるものであります。もとより母子福祉の道は本法案のごときをもつて足れりとするものではありません。むしろこれはその第一歩であります。われわれはこの法を出発点として、母子福祉法国家の理想に向つて発展せしめなければならないのであります。本法は実に完全なる母子福祉法をつくるための橋頭堡であります。母子福祉法は単に母子のためのみのものでなく、妻子を持つ夫にも後顧の憂いなからしめ、安心して死ねる、いわば男子のための法律であるといつてもあえて過言ではないのであります。今や日本においては厚生行政拡充強化が強く要望されているのであります。政府においても十分このことを理解し、本法案の持つ精神に徹し、母子福祉のための政府実現に邁進されたいのであります。  私はかかる見解のもとに、本法案法律として誕生することを喜び、その発展を念じつつ、本法案賛成するものであります。     —————————————     〔参照
  6. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 ただいま上程されました母子福祉資金貸付等に関する法律案につき、日本社会党を代表いたしまして、心からなる賛成の意を表しますとともに、完全な母子福祉政策が近く実現すべきであることを確認いたしたいと存じます。すなわち従来、私どもが考えて参りました母と子の福祉行政は、単なる経済問題にとどまらず、物心両面にわたる保護助長でなければなりません。しかるに、やつと本日提案の運びになりました本法案は、種々の事情にはばまれ、その題名の示す通り資金貸付等に限られたものでありまして、母子福祉行政の一部分にすぎません。父なき十八歳未満児童を抱いて生活している未亡人母子世帯は、昭和二十五年の国勢調査によれば約百八十万世帯となつております。特にこの中でも最年長子が十八歳未満母子世帯は六十二万世帯近くで、これらの気の毒な母と子の生活の実態は、議員諸公がすでに御存じの通りでございます。男子でも生活困難な敗戦下社会情勢の中で、生活能力を持たぬ夫を失つた婦人が、年少の児童を道連れに母子心中をして、国や社会に死の抗議をしました例は枚挙にいとまがございません。血を売つて子供を食べさせて来た実例も非常に多く、私たち手元請願や陳情が山積して参りました。料理屋、旅館、バーなどに働らく女性の八〇%までが、幼な子をかかえた戦争未亡人であるといわれておりますのを見ても、いかに特殊技能なく、その生活に困り抜いているかがわかるのであります。私は、歴代の厚生大臣政府にこれら母子世帯に対する施策を難詰して反省と善処を求めて参りましたが、生活保護法児童福祉法でもつてこと足れりとし、財政の許さぬを方弁として今日まで見て見ぬ振りをして参つておりました。  御存知の通り、今日でこそ男女同権といわれ、政治への参加を許されました日本の女も、かつて古い政治の下でいかなる扱いを受けて参つたかは、いまさら申すまでもありません。社会人の一人として公平な権利を与えられて参りませんでしたから、その生涯の生活根拠は親であり、夫であり、老後は子供に依存して参つたのでございます。自分の力で夫なき後も、二人三人の子供をかかえて社会を泳ぎ切る未亡人はほとんどございません。これは封建的な日本社会政治が、女をかく育て、生活能力なきものにしてしまつたのでありました。  戦前までは結束の力さえも知らなかつた婦人が、戦後苦しい生活に直面し、大同団結して、国や社会におのが立場を披瀝して、その要求を叫ぼうと、全国未亡人協議会などをも組織して、子供たちをみずからの力で守らうと立ち上つたことは、女性の大きな進歩で、生活力を持たぬ未亡人ばかりをつくつた過去の日本政治の償いとして、母と子を法で守れの声が、母子福祉法実現を望み、その運動は過去七箇年続けられて参りました。国会でもこの声を代弁して、再三決議し、政府善処方を要求して参りました。年々行われる婦人週間、母の日などの世論調査は、必ず母子世帯を救うべきであると強く叫ばれ、また全国的未亡人大会社会福祉大会児童福祉大会民生委員大会などでも、必ず母子福祉法実現方を決議して参りました。しかるに与論を無視して法的保護がなされなかつたことは、政治の貧困以外の何ものでもありません。  辛うじて生活保護法対象として保護を受けている世帯は十七万三千世帯であり、さらに何とか保護を受けたいと頼み出ても、どうしても予算がないから保護できぬと、地方の窓口で断られている母子世帯が三十五万世帯くらいあると私は記憶しております。またどうにか一人立ちして働らいて、子供を食わせている母の職業収入は、本年九月厚生省の二万一千七百二十六世帯につき調査したところによれば、月額五千円以下のものが一万五千六百世帯で、その四分の三を占めており、最低賃金八千円確立が叫ばれております。今日いかにみじめな生活をしているか、年末労働攻勢をやる人々にさえも、はるか及ばないものなることを知らねばなりません。要保護を願い出ても聞き入れられない三十五万世帯と、要保護すれすれのボーダライン家庭等を合せて五十万母子家庭の問題は、現行の生活保護法児童福祉法ではどうしても解決できなかつた。これは憲法基本的人権にももとるゆゆしき、政治問題であります。真剣な検討を加えて、社会保障の建前に立ち、当然母と子を物心両面にわたり、国の義務として守らねばなりません。  先進国社会保障制度のそれを見ても明らかなことく、父なき母と子の世帯は、寡婦年金遺児手当母子相談施設設置または職業補遺斡旋、免税、住宅施策など、あらゆるものを統合した福祉行政が、母子不可分理念として単独立法されるか、または社会保障制度の中に実現されなければなりません。他国の例を待つまでもなく、日本政府みずからが設置してその答申を遵守しなければならないはずのわが国社会保障制度審議会は、その答申案の中に寡婦年金制度として、無醵出年金をすでに四年前に勧告しているのであります。吉田内閣はこれを馬耳東風と聞き流し、怠慢もはなはだしい無為無策を続けて参つたのであります。文化国家のバロメーターともいうべき社会保障制度そのものを手がけず、同時に母子世帯をも捨てて省みなかつたのであります。  ようやくにして本日議員提案となりました本法案は、母と子をせめて一つの屋根の下に同居せしめ、資金貸付等を行うことにより、その経済的自立助成生活援助をはかり、あわせて児童福祉を増進しようというのであります。父なき子供基本的人権を守るためには、その子を母の膝元から離してはなりません。父なき母と子の家庭は、国が父となつて母と子を守るのでなければならぬというのが、わが党の主張であります。やむを得ずわが子を親戚や知人に預けて、母はその子を手元から離し、遠く別れて子供養育費をかせぎ、その仕送りをしているというのが未亡人母子実情でありまして泣きの涙のこの人たちの状態を見るとき、児童憲章も空文と言えましよう。幾分でも、この矛盾を解消するために、生業資金または就職に必要な支度資金技能修得資金、また技能修得中の生活資金、さらに事業経済資金、加「えて児童就学修業資金等貸付が、不満足ながらも実現しますことは、全国百八十万の未亡人母子への大きな福音であります。但しその財源が僅少で、全額国庫で賄い得ず、国と都道府県が折半しなければならなかつたことは残念であります。  こいねがわくは、地元の衆望によつて選ばれた各都道府県民選知事が、本法案の意とするところを了とせられ、全国都道府県一つも漏れるごとなく実施されるよう、切に望んでやみません。特に厚生大臣に強く要望いたしたいのは、貸付資金のせめて五十億円確保であります。厚生省が目下二十八年度予算の中で、大蔵省へ要求している額はわずか九億円余りと聞いておりますが、それではとうてい殺到する申込みにこたえて母子保護助長することはできません。いたずらに経済理論に走り、資本主義を固執する吉田内閣の欠陥は、万人認めるところの民主不安定政策であります。思想問題も、青少年犯罪防止も、社会秩序維持も、警察強化によるピストルの威圧で解決するものではありません。人間性に立脚した愛の政治が忘れられてはなりません。幸い五人や十人死んでも云々の池田元通産大臣も今はなく、政策方向転換も期待される折柄、全生命を打ち込んで貸付資金の五十億獲得に成功していただきたい。  最後に、次期国会には、必ずや全国的な母子福祉法立法化、あるいは社会保障制度実現によつて、父なき不幸な子供があたたかい政治の中で育てられますよう、全議員の御協力願つて全国百八十万未亡人母子世帯の代弁といたします。
  7. 長谷川保

    長谷川(保)委員 ただいま上程せられました母子福祉資金貸付等に関する法律案について、私は日本社会党を代表して賛成せんとするものであります。  一般に一家の支柱たる男子失つた家庭が、物心ともに困難な生活をされることは申すまでもありませんが、ことに長期にわたる戦争と、戦後の混乱窮乏せる社会において、これら母子世帯の渡世の困難は筆舌に尽せぬものがあります。このゆえに戦後の保護的法律施設が急速に整備せられ、これら母子家庭のために多くの努力をして参つたのではありますが、今日なおあの不徹底な生活保護法による金被保護世帯の二分の一以上が母子家庭である実状を思うとき、新憲法精神実現するためには、いま一段の努力を傾倒すべきことは当然であります。  私はこの際、二、三の点についてわが党の意見を率直に申し述べてみたいと存じます。すなわち、第一にこの母子福祉資金貸付等に関する法案は、一今日の政治財政事情ともにらみ合せて作成せられたものであり、将来必ず完成せらるべき母子福祉法橋頭塗として制定せらるべきものと考えるのでありまして、同僚議員諸君並びに政府当局の御協力を得て、あとう限りすみやかに寡婦年金及び遺児年金婦人団体法、その他あらゆる母子福祉に関する完全なる母子福祉法制定せんことを望むものであります。第二に、この法律によつて貸し出される金額は、初年・度大体十八億円と考えられますが、今日この種資金の需要を満たすためには、この約五倍、約百億円を必要とす、べく、これを将来に必ず実現せられるよう期待するものであります。第三に、本法案保証人貸付条件等の条項は必ずしも満足のものではありません。この種法文行政の末端におきましては、とかく血も涙もない官僚の形式主義によつて法律精神が死んでしまうものでありましてこの点母子相談員の適否は、この法律の生死を決するかなめと申すべく、法の実施にあたり行政当局の十分の御配慮を願うものであります。  完全なる母子福祉法の近き将来における制定を強く期待しつつ、本法案賛成するものであります。     —————————————
  8. 平野三郎

    平野委員長 以上で討論は終了したこととし、なお、討論の申出がありましたが本会議との関係上、時間に余裕がありませんので、後刻書面で提出願い参照とし会議録に掲載いたしますから御諒承願います。これより母子福祉資金貸付等に関する法律案の採決に入ります。本案原案通り可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 平野三郎

    平野委員長 御異議なしと認めまして、本案原案通り可決いたしました。  なお本案に関する委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、そのように決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 平野三郎

    平野委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  本日はこれをもつて散会いたします。次会は公報をもつて御通知いたします。     午後二時十三分散会