○
高田説明員 それでは、この
国立病院の
移譲問題の今までの
経過等について
説明をしたらという
お話もありましたので、一応申し上げまして、足りないところその他数字上のことにつきましては、また
機会を与えられますれば、そのとき申し上げることにいたしまして、
考え方の
根本だけをあらまし申し上げさしていただきたいと思います。
御
承知のように
国立病院は、旧
陸海軍病院を、
終戦後の
昭和二十年十二月に
厚生省が引受けまして、これを
国立病院として
経営をして今日に至
つておる次第でございます。従いましてそういう
経過でございますので、その当時から、終局において
国立病院をこのままずつとや
つて行くか、どうするかということについては、御推察の
通りにいろいろ
議論があ
つた次第ございます。その当時から国として、
病院の
計画、
病院の
体系をどうするかということについては、
厚生省といたしましてもいろいろ意をいたしてお
つたことでございますし、また
世上におきましても、いろいろ
議論の出てう
つたことでもございますので、
医療制度審議会その他各種の
委員会をこしらえまして、その都度
学識経験の
方々の御
意見を拝聴いたして参
つたのでございますが、こまかいことは省略いたしまして、結局、
根本の
考え方として、公の
病院というのは、やはり県が
中心の
経営主体になることが、
経営上最も適当である。
考え方においては、そういうのが大体今までこういう
機会においての一致した
見解のように、われわれとしては
承知いたしておるのでございます。従いまして国としましては、その上に立
つて、どうしても国でなければならない部面を担当する。すなわち端的に申し上げれば、数
府県にまたが
つて県立病院その他
一般の
病院を指導すると申しますか、あるいはまた医者の再教育をすると申しますか、そういういわば
病院の
病院というような、何がしかの
病院でありますとか、あるいは温泉、
整形外科というような特殊な目的を持
つたものに限定をしてやるのが、国としていいいのではないか。もう一度申し上げますと、公の
病院というものは、やはり
県立が
中心で行くべきである。
国立というのは、さらにその上に立
つてそれを指導するような、もう
一段高次の
病院ということを
考えるべきじやないか。こういうことが大体一致した
見解であ
つたと、われわれは
承知したしております。従いまして
厚生省といたしましても、大体将来の
病院のあり方としましては、こういうことの方がいいんじやないかというふうに
考えてお
つた次第でございます。もちろんこれは公の
病院について申し上げたことでございまして、そのほかに私立あるいは
法人立の
病院が
整備されなければならないことは言うまでもないことでございますが、公の
病院については、そういうような
考え方をと
つてお
つたのでございます。従いまして
国立病院につきましても、そうい
つた根本的な
考え方、構想に照して、これをいつかは引直すべきであるというような
考え方がありましたし、
国会におきましても、この
国立病院は早く
地方に
移譲しなければならないという、むしろそうい
つた意見がたびたび出たのでございますが、その都度、
当局といたしましては、行く行くはそういうふうにいたしたい、しかし今はその時期ではない。そういうような
考え方で通して
参つた次第でございます。と申しますのは、
終戦後におきましては、御
承知の
通りに、旧
軍人でありますとか、引揚者でありますとか、そうい
つた特殊の
治療対象の人がたくさん
国立病院に入
つておりましたし、その
意味においては、いわゆる
一般病院とは
違つた形を多少持
つておりましたし、なお
運営面におきましても、その当時の社会的な、あるいは経済的な、あるいは政治的な背景にからみまして、相当不安定な要素もございましたし、またそうい
つたような
事情から、経済的にも
相当難渋をいたした時代もございますし、さしあた
つて、いわゆる
一般病院としてや
つて行くについては、
外来患者が来る
設備もしなければならない、あるいは今までなか
つた産婦人科とか、眼科とか、そうい
つた方面の
整備とい
つたような、とにかく
軍病院から
一般病院への引直しということもしなければならない。そういうような、いわゆる
最小限度の
整備もしなければならない事態でございましたので、とりあえず国としてこれをや
つて行く。しかし行く行くはこれやはり
地方に
移管すべきじやないか、そういうような
考え方がずつと支配的で今日まで
参つたと、私はさように
承知いたしておる次第でございます。それらの
患者の
内容につきましても、漸次交代をいたしまして、
一般病院的な
患者の様相を呈して来ましたし、またその他のいろいろな動揺した一時の空気も、だんだん平和におちついて参りましたし、また収支のバランスの上からい
つても、もちろんこれは所によ
つて違いますけれども、漸次
平衡状態にな
つて参りましたし、
かたがた地方におきましては、最近は、県の
病院をつくりたい、あるいは市町村の
病院をつくりたいという希望が、年年非常に熾烈でございまして、これがために起債の
要求に来られるものが、二十六年度においては、私
たちの方に世話をしてくれと来られた分だけでも五十億近くありますし、二十七年度におきましては、九十億を越すような
状況であ
つたのでございます。さような
状況でありまして、
地方において公の
病院を
整備したいという
熱意は、非常に高ま
つて来つつあるのであります。所によりましては、この
国立病院と同じ区域にさらに県の
病院が設けられるというような所もなきにしもあらずであります。あるいはまた地域の
違つた所に設けられる分も、もちろん多いと思いますが、いずれにしましても、
地方側としては、
県立なり、
市町村立なりとい
つた公の
病院を
整備をしたい、あるいは
国民健康保険等にももちろん
補助の申請がたくさん参
つておるような
状況でございます。そういうように、
病院を
整備したいという
熱意、すなわちある
意味においては、
社会保障に対する
熱意が非常に高ま
つて来ておることは、十分看取される次第でございます。そうい
つた点を彼此勘案いしまして、二十七年度におきましては、この
国立病院の
移譲に着手するという段取りにな
つたのでございます。
その
計画の大要は、現在
国立病院の
施設が九十九あるのでございますが、そのうちの二十四
施設は国に残存せしめ、十五
施設は
結核療養所に転換し、六十
施設を
地方に
移譲をする。一応そういう
計画のもとに、二十七年度
予算の
編成が行われた次第でございます。これはもちろん
世上往々いわれておりますように、いわゆるたたき売りという
考え方ではなしに、
秋どもとしましては、どこまでも国、
地方を通じた全体としての
病院の
体系を
整備する第一歩というふうにも
考えております。従いまして、
移譲いたします
病院は、やはり
地方の
病院として十分その機能を果し、できればさらに生成発展することを期待いたしておる
関係もございまして、これが譲渡の
価額等についても、相当
考慮をするし、あるいは
整備についても気を
配つてお
つたのでございます。そういう
関係で、これは
法律を要するというので、
法律案として提出をされたのでございます。
その
内容は、御
承知と思いますが、
土地建物等のいわゆる
国有財産につきましては、
時価の七
割引、すなわち三割。それから
医療器械器具等のいわゆる
設備、
器具器械につきましては、
時価の五
割引。それからその他の紙とかあるいは筆、墨とい
つたような
消耗品につきましては、
時価そのまま。それから
未収金債権、これは
保険等の
関係から取立てが一、二箇月あるいは三、四箇月ずれる
関係もありましていわゆるこげつきという
意味でなしに、
一般的なランニングの
未収金債権があるわけでございますが、これにつきましては三分の一以内を差引いた価額でやる。そうい
つたように、譲渡の面におきましても、価額の面においても、十分
考慮する。さらにこれが支払いの方法等につきましても、交付公債によ
つてやりまして、そして十五年年賦というような長期の償還期限にして、この
移譲を容易ならしめるというふうに
考えますと同時に、もちろんこの
移譲につきましては、建物その他について
整備を要することが多々あるのでございますが、これを、たとえば今まで木造であ
つたのを鉄筋に建て直すとか、あるいはすつかりやり直すということであれば、これは多額の経費を要しますし、いわばきりのない話でありますが、さしあた
つて国立病院として、もうちよつとここを何とかしたいというような面については、大体それによ
つてまかなえるという見当のもとに、六億四千万円の
整備のための
補助金を計上いたしまして、これを
移譲に伴
つてつけてあげるというふうに
考えてお
つたのでございます。六億四千万円と申しますと、この点は、非常に少い、もつとたくさんの経費をかけた上で譲渡すべきじやないかというふうな
議論が、非常に強か
つたのでございますけれども、この点は、過去における
国立病院の
整備に費しました費用に比較してみますと、四、五年分に相当する額であります。そういうふうに、過去の実績に比べて、必ずしもそう少いとは言えない額にな
つておるのでございますが、それをつけて
整備をしていただく、そういうような
考え方のもとに、この
移譲をする。もちろん
移譲に対しましては、強制的に押しつけるということでは、将来の運営その他に支障を来すことは言うまでもございませんので、どこまでも
地方とよく話合いをして、協議のととの
つたところに譲渡をするということでございまして、今、
永山一先生から
お話がありましたように、無理やりに押しつけるということはもちろん
考えていないのでございます。協議の上でこれを譲り渡すという方途にいたしてお
つたのであります。従いまして、この問題については、今後も、今申し上げたような線に沿
つて促進をして参りたいと思います。なお思し足りない点がございましたならば、あらためてまた
説明をさしていただきたいと思います。