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1953-03-05 第15回国会 衆議院 建設委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月五日(木曜日)     午後一時五十三分開議  出席委員    委員長代理理事 中島 茂喜君    理事 高木 松吉君 理事 前田榮之助君    理事 志村 茂治君       淺利 三朗君    宇田  恒君       内海 安吉君    内藤  隆君       仲川房次郎君    小泉 純也君       舘林三喜男君    山下 榮二君       安平 鹿一君    荻野 豊平君  出席政府委員         建 設 技 官         (住宅局長)  師岡健四郎君  委員外出席者         参  考  人         (東京都市政調         査会理事)   幸島 礼吉君         参  考  人         (日経連福祉対         策委員長代理) 吉田 重明君         参  考  人         (日本労働組合         総同盟主事) 古賀  専君         参  考  人         (東京商工協         同組合連合会副         会長)     五藤 斎三君         参  考  人         (日本労働組合         総評議会福祉対         策部長)    参谷 新一君         建設事務官         (住宅局住宅経         済課長)    鮎川 幸雄君         専  門  員 西畑 正倫君     ――――――――――――― 三月二日  委員田中角榮君辞任につき、その補欠として増  田甲子七君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 三月三日  建設業法の一部を改正する法律案内閣提出第  一四七号) 二月二十八円  頓別市街地海岸防災施設確立に関する請願(玉  置信一紹介)(第三二〇二号)  地方費道網走浜頓別間道路側溝工事促進の請  願(玉置信一紹介)(第三二〇三号)  頓別川及び宇曽丹川治水工事促進請願玉置  信一紹介)(第三二〇四号)  仁達内二股上猿払間産業開発幹線道路開設の  請願玉置信一紹介)(第三二〇五号)  松本より糸魚川を経て富山に至る間の道路を国  道に編入請願植原悦二郎紹介)(第三二  〇七号)  県道輪島、岐阜間を国道編入請願内藤隆  君外三名紹介)(第二二〇八号)  県道岩間水戸線改修工事施行請願(加藤高藏  君紹介)(第三二〇九号) 三月二日  高速度自動車道路開設反対に関する請願門司  亮君紹介)(第三三三七号)  中之島橋永久橋架替え請願田中角榮君  紹介)(第三三七九号)  国道三号線中門司久留米間改修工事施行の請  願(木下重範紹介)(第三三八〇号)  第二阪神国道建設に関する請願山下榮二君紹  介)(第三三八一号)  愛知川ダム建設反対請願大石ヨシエ君紹  介)(第三三八二号)  県道高知森線改修工事費国庫補助に関する請願  (濱田幸雄君外一名紹介)(第三三八三号) の審査を本委員会に付託された。 同月三日  昭和二十八年度公共事業費増額に関する陳情書  (第一六九二  号)  大戸川砂防に関する陳情書  (第一六九三号)  産業労働者住宅資金融通法案に関する陳情書  (第一  六九四号)  砂利道及び橋りよう補修事業に関する陳情書  (第一六九六号)  六十里越街道国道指定に関する陳情書  (第一六九  七号)  道路整備費財源等に関する臨時措置法の実現  促進に関する陳情書  (第一六九八号)  駐留軍の事故による損害補償に関する陳情書  (第一六九九号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  産業労働者住宅資金融通法案内閣提出第五七  号)  勤労者住宅建設促進法案前田榮之助君外五十  九名提出)(衆法第三五号)     ―――――――――――――
  2. 中島茂喜

    中島委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、委員長が去る三日辞任されましたので、後任がきまりますまで、理事である私が委員長の職務を行います。  本日は産業労働者住宅資金融通法案及び勤労者住宅建設促進法案を一括して議題とし、産業労働者住宅に関して参考人より意見を聴取いたしたいと存じます。  この際お諮りいたしますが、本件につきまして吉田重明君及び古賀尊君を参考人としてさらに招致し、意見を聴取いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中島茂喜

    中島委員長代理 御異議なきものと認めさよう決します。  ついては本日御出席参考人東京市政調査会理事幸島礼吉君、日経連福祉対策委員長代理吉田重明君、東京商工協同組合連合会会長藤斎三君、日本労働組合同盟主事古賀専君日本労働組合評議会福祉対策部長参谷新一君の五君であります。  この際参考人諸君に一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多用中のところわざわざ本委員会のために御出席くださいましたことを厚く御礼を申し上げます。  現下住宅不足事情は、いまさらここで申し上げるまでもありません。この住宅問題の解決の一方法として産業労働者住宅建設への国の融資ということは、まことに時宜に適したものと思いますが、それだけに慎重なる立法措置が必要かと存じます。参考人各位の忌憚のない御意見を賜わることができますれば、本委員会といたしましてはまことに幸いと存じます。時間の関係もございますので、恐縮でございますが、お一人大体十五分ないし二十分程度で御意見開陳をお願いいたしたいと存じます。  それではこれより順次御意見の御開陳をお願いいたします。東京市政調査会理事幸島礼吉君にお願いいたします。
  4. 幸島礼吉

    幸島参考人 私は、まずもつて国会におきまして住宅問題がきわめて熱心にお取上げいただいておりますことに、敬意を表する次第であります。特にこのたび住宅対策を、産業労働者住宅対策あるいは勤労者住宅対策というきわめてはつきりした形でお取上げになりましたことは、当然のこととは申しながら、今後の住宅対策の進展に期待されるものがあるわけでございます。  申すまでもなく、住宅対策には、奇想天外の妙手はございません。どこまでも国民住宅問題の重要性に対する認識の深さと、当然それによりまして国民所得の幾ばくを住宅建設に投ずるかということに帰着するわけでございます。先ほど委員長からお話のございましたように、いまさら住宅難の問題をここで数字的に申し上げる必要はございませんが、この産業労働者住宅資金融通法案等につきましてこの法案そのものに触れます前に、現在まで行われました住宅対策の結果がどんなふうになつておるかということを、一応述べさせていただきたいと存じます。  戦後の住宅不足は四百万戸近くであつたということ、しかも昨年の四月に建設省の御当局が発表になりました推定の不足数は、なお三百十六万戸ということになつておりますが、その間に政府補助金あるいは融資というような形で投じました資金が、大ざつぱに申しまして九百八十億ほどになつております。すなわち公営住宅に百八十八億、これによりまして三十三万戸ほどの家が建つておる。住宅金融公庫を通しまして建てられた家が十五万戸ほどでございまして、四百九十億の資金が投じられております。それから国家公務員のためにいわゆる公務員宿舎というものが五十四億ほどの資金で約一万戸ほど建てられております。特殊のものといたしましては、例の復金融資によります重要産業労働者住宅建設が百五十三億の融資によつて七万二千戸ばかり建てられております。開拓入植者住宅のために七十一億円の金が投ぜられて、十三万五千戸、さらに引揚者のために四十二億の金が投ぜられまして、十二万戸ほど建てられております。先ほど申しました九百八十億で大体八十二万戸が建てられておるわけであります。このほか昨年から厚生省保険局のいわゆる厚生年金保険積立金関係融資として十億の金が融通されておると承知しておるわけでございます。その間に全然国の補助あるいは融資をまたないで、自力によつて建てられたものが二百五十万戸ほどに上つておりまして、全体の建設戸数三百三十万戸のうち七十六、七パーセントはまつたく自力で建てられておるという計算になるわけでございます。それで昭和二十年から昨年までの間に全部で三百三十万戸ほど建てられましたが、当然その間に毎年必要とされます家を三十万戸ずつといたしましても、やはり終戦直後の四百万戸の不足に加えて、年々の新規需要の三十万戸ずつと、それからその間に建ちました三百三十万戸を差引きましても、計算上はやはり三百二、三十万戸足りない。つまり昨年の四月建設省当局の発表されました三百十六万戸というものが、大体計算上合うのではないかと思うのであります。  依然としてそれだけの住宅不足が今の日本にあるわけでございまして、これに対してどういうような方法とつたら家が建つかということを考えますと、先ほども申し上げましたように、自力によつて建てられる七十六、七パーセントの一般住宅に期待することは、今後なかなかむずかしいのではないか。その証拠には、この自力によつて建てられました住宅は、昭和二十二年、二十三年、ころは五十万戸あるいは六十四、五万戸という大量の数に上つておりますが、二十四年から急激に減りまして、二十四年には三十二万戸、二十五年には二十五万戸、二十六年には十三万戸、二十七年には十七万戸弱というようなことになつておるわけでございます。つまり自分で家を建てられるような者は、とにかく無理をいたしましても家を建ててしまつて自力で建てられない者は、国の補助なり助成なりによります家に入れない限りは、過密住居というやむを得ない状態にされておるわけであります。御承知のように、昭和二十五年七月から家賃統制その他の統制が撤廃になりまして、一応形としては、高い家賃をとつて貸家が建つような形になつております。しかし家を借りる者の方にその高い家賃を支払う能力がなければ、家の供給というものは引合わないということで、当然建てられないことになるわけでございます。たまたま高い権利金をあらかじめとつて、それをもとにして家をつくつて貸すというようなことも行われてはおりますけれども、しかしそういうような家に入り得る者は、やはり限られた、相当程度収入のある岩ということになるわけでございます。昨年の貸家新設状況を推定いたしますと、大体三万四千四、五百戸であろうと思いますが、そのうち公営によつて建てられました住宅が二万五千戸ほどで、住宅公社あるいは協会等によつて建てられたいわゆる住宅金融公庫融資住宅が四千戸、そして民間貸家が大体五千五百戸ほどあろうかと思いますが、この民間貸家は、昨年の全体の建設戸数に比べましてせいぞれ二、三パーセント程度と推定されるわけでございます。  そこで、一般自力による住宅が今後それほどできないということになれば、公庫住宅というものはどうであるかと申しますと、これも昭和二十五年に三万戸、二十六年に六万五千戸、二十七年に大体五万五千戸ほど建つであろうと想像されまして、全部で十二万戸ほどになつているわけでございます。これも頭金を相当つていないと金が借りられないというようなこともございますし、やはり相当の資力のない者には、住宅金融公庫による住宅取得は縁遠いものだとも考えられるわけでございます。特に最近土地の値上りが非常にはなはだしいために、土地入手難から、これは又聞きでございますが、せつかく申込みに対する承認がございましても、四〇%程度の方はこれを放棄しているそうであります。最近は金融公庫の金を借りて自分の家を建てるというよりは、むしろ住宅金融公庫は賃貸の住宅を一括して建てるのでありまして、それの方へだんだんと重みがかかつて来ていると考えられるのであります。  このほか、先ほど申し上げました復金融資によりますもの—これはいわゆる炭鉱労務者住宅でありますが、今は全然こういう融資は行われておりません。それから入植者住宅とか、引揚者住宅とかいう特殊な住宅は、現在最も問題になつております都市住宅難を解決する方法ではないわけでございます。残されますところは、結局公営住宅ということになるわけでございまして、先ほども申し上げましたように、戦後三十三万戸ほど建つておりますが、最初の昭和二十年には八万一千戸、二十一年には四万八千戸、二十二年及び二十三年にはともに四万二千戸ほど建ち、二十五年には二万六千戸、二十六年には二万七千戸、二十七年には三万三千戸を予定されているわけでございます。しかしこの公営住宅の方も、昨年国会の御承認を得まして、いわゆる第一期三箇年計画ということで、二十七年度から二十九年度までに総計、木造、耐火合せまして—第一種、第二種を合せまして、十八万戸の建設が予定されたわけでございますが、二十七年度において六万戸の計画が初年度として決定いたしましたにもかかわらず、現実には国庫補助五十億で、半分以下の二万五千戸ほどが承認されただけでございます。十一月の補正予算建設省はさらに八十四億、三万五千戸を要求いたしましたけれども、大蔵省がこれを問題にいたしませんで、さらに二十四億、一万戸の計画に直しましても、遂に大蔵省はこれを認めなかつたということを聞いております。こういうようなわけで、せつかく三箇年計画公営住宅について立てておりますにもかかわらず、これがそれほど進まない。  また公営住宅は、御承知のように国の補助を得て地方公共団体が建てるわけでございますが、現在地方公共団体の財政難ということ、特に起債を大蔵省の方で強く縛られておりますために、地方公共団体公営住宅を建てる意欲はあつても、能力がないというような状態でございます。たとえば東京都について見ましても、二十五年度に四千戸の割当がありましたのを五百戸返上するとか、あるいは二十六年度に四千戸でございましたが、四百戸返上するというような、これはほかの地方にも見られる実情でございます。最も期待される公営住宅がそういうような状態でありますということ、その結果、このたびの産業労働者住宅資金融通法案というようなものが考えられたのではないかと想像をいたすのでございます。つまり国資金が比較的少いために、できるだけ民間資金を導入して、そしてこの両者を合せてできるだけたくさんの住宅建設して行こうという意図は、まことにけつこうなことではないかと想うのでございます。  ただ給与住宅には観念的に二いろのものがあつて、一つは労働者を集めるために、必要な山間僻地とか鉱山等でどうしても用意しなければならない、いわば産業設備と同様に考えられる産業施設としての住宅とも申すべきものと、それから福利厚生施設としての住宅とが考えられるのではないかと思うのでございまして、現在の都市における産業労働者がきわめて住宅に困窮いたしております実情にこたえる意味で、福利厚生施設としての住宅が特に重く考えられなければならないと存ずるのであります。この意味で提案されております産業労働者住宅資金融通法案の第四条に「この法律による資金融通は、一事業者に使用されている産業労働者住宅不足が甚しい場合において、当該産業労働者のために産業労働者住宅建設しようとする者で、住宅建設に必要な資金全額を調達することが困難であるものに対し、その住宅建設資金不足額を補足するためのものとして行わなければならない。」というふうに書いてございますが、この条文趣旨を厳格に解釈いたしまして、もし事業者側労務管理上どうしても必要な住宅は、できるだけ何らかの方法で別の資金使つて、いわゆる福利厚生施設としての住宅についてのみ、この資金を使うという形に持つてつていただきたいと考えるのございます。  そういう意味で、この法案にございます貸付限度条件をせいぜい緩和していただきたい。この条文住宅金融公庫貸付条件よりも、その意味で酷であると思うのでございます。ことに中小企業対象といたします場合には、できるだけこの条件を緩和していただきたいと思うのであります。また租税の減免措置とか、できることならば、ちようど企業合理化促進法において産業設備近代化に使いました資金については特別償却をするというような方法で、この産業労務者住宅についても特別の償却を認めるような方法がとられるならば、この法の趣旨は十分徹底するのではないかと考えるのでございます。  この際上程されております勤労者住宅建設促進法案においては、貸付対象労働組合とかあるいは公務員共済組合消費生活協同組合というようなものも考えておられるようでございますが、この法案において考えられておりますように、もしこれらの対象に対して全額を貸し付けるということであるならば、むしろ思い切つて住宅経営国営あるいはこれに準ずるような方法でやられることの方がよろしいのではないかと考えるのでございます。その理由には、先ほども申し上げましたように、現在土地取得ということは非常にむずかしい、こういうようなことを労働組合等が一々おやりになるということはたいへんなことではないか。また住宅建設経営ということは、非常に技術的にうるさい問題を含んでおりますので、そういうようなことを労働組合が一々おやりになるのは、たいへんではないかということも考えるわけでございますが、もつと本質的には、全額融資を受けまして、かりに住宅建設いたしたといたしましても、ある人の計算で、かりに十五坪の木造住宅を考える場合に、坪当り三万円といたしまして、土地を五十坪必要として単価を五千円と考えまして、償還期限を二十年、金利を五分と仮定いたしましても、借入金七十万円では毎年の元利金が概算五万五千円ということで、一箇月四千六百円以上になるであろうということでございます。先ほど計算で、二十年先にはごめいめいの労働者の方が自分の家になるという楽しみはありましても、しかし、はたしてこの四千六百円以上の負担がし切れるかどうかという問題がございますわけで、もし労働組合がこれを賃貸するとしても、その労働者が支払い得る家賃とするためには、その差額をどうしてカバーするかという問題が残るのではないかと思います。またかりに敷地三十坪で十坪の家を建てるといたしましても、借入金四十五万円、償還金が月に三千円になるそうでございます。このほかに固定資産税あるいは火災保険料等を加えますと、相当多額になつてはたしてこれを現在の賃金ベースによります労働者が負担し得るかどうかという問題がここに残るわけでございます。私はこういうような理由労働組合等がこの勤労者住宅建設促進法にございますような意味住宅経営に当るという建前は、一考を要するのではないかと考えるのでございますが、従来の公営住宅の実績を見ましても、過去における公営住宅利用者は、官公労働者が二十二パーセントないし二十七、八パーセント、民間労働者が五十五パーセントないし六十五パーセント、教員が七、八パーセントで、九十パーセントは実質的に労働者が借りておるわけでございまして、そのほか中小企業あるいは自由業その他の関係で、約十パーセント程度利用ということになつておるわけでございます。こんなことを考えますと、むしろ全額融資というような形で家を建てるとすれば、私はどこまでも国営あるいはこれに準ずるような形でやることがよろしい。あるいは相当補助をして公営住宅建設するのがよろしいのじやないかと考えるのでございまして、特に先ほど申し上げましたように、現在宅地を獲得するというような問題から申しましても、ぜひ強制収用のできますような形で、一団地住宅経営都市計画に即してやるというようなことを考えることが、現下住宅問題を解決する一番いい方法ではないかと愚考いたす次第でございます。もちろん、こういつたような全額国庫融資により得ないという事情が、この政府の案になつた、いわゆる勤労者住宅建設のための融資ということになつたのだと存じますが、しかし、この場合、わずか二十億で一年間に六千五百戸建てるというような程度の少額で、はたして住宅問題が解決されるかどうかということを心配するわけでございます。私は先般たまたま日本住宅協会の方で調査されました、二百人以上の従業員使つております、千二百三十の事業所回答を見ますと—現在まだこの調査は進行中でございますが、この千二百三十の事業所のうちで、住宅不足を訴えておるところが非常に多いのでありますが、その総体で申しますと……。
  5. 中島茂喜

    中島委員長代理 ちよつと幸島さんに御注意いたしますが、時間が大分経過いたしておりますので、要点だけ簡潔にお願いしたいと思います。
  6. 幸島礼吉

    幸島参考人 これはもし質問がありますれば、後ほど御報告いたしますが、とにかく非常に事業者側の方で住宅不足を訴えておる。特に住宅の困窮とか、あるいは現在ございます住宅を建てかえなければならないという必要から、住宅建設計画を持つておりながら、資金がないので建てられないというような状態にあるわけでございまして、こういうようなことを考えますと、わずか千二百三十の二百人以上の事業所を見ましても、非常に大きな数でございまして、これが二百人未満、あるいは二百人以上でも、回答のなかつたところを考えますと、相当な数だろうと存ずるわけでございます。この二十億程度の金では問題は解決されない、もつとこれを増額する必要があると考えるのでございます。  私は、最後に住宅対策について、現在の政策総合性が欠けておるのではないかということを、一言申させていただきたいと思います。先ほど申し上げましたように、現在公営住宅あるいは公庫住宅につきましては、建設省がこれを所管いたしております。公務員住宅については、大蔵省の所管となつております。入植者については農林省、引揚者については厚生省引揚援護庁がこれを所管しておりますが、先ほどちよつと触れましたように、昨年から厚生省保険局厚生年金保険積立金還元融資を始めたわけでございまして、これなどは私の聞いておりますところでは、まつたく住宅金融公庫と似たような建前でありながら、建設省の方に全然連絡がないかどうか存じませんが、ノー・タッチでこれを進められておるわけでございまして、大体似たようなものでありながら、貸付条件が非常に不統一であるという実情でございます。こうしたものを、何とか住宅対策総合性をあらしめ、さらにこれにほんとうの計画を与えて、たまたまここに提案されております右派社会党の案にも三箇年計画ということがございます、あるいは政府の案にも公営住宅三箇年計画がございますが、全体の住宅計画について何箇年計画かの総合計画をお立てになつて、建設行政あるいは資金、資材、都市計画、上水道その他の供給事業というようなものにも、りつぱな総合性を与えた政策を実施することを希望するわけであります。たまたま右派社会党の御提案になつております案の中にも、勤労者住宅建設審議会ということがございますが、この際むしろ住宅対策審議会の方を改組いたしまして、現在拝見いたしますと、学識経験者住宅供給あるいは建設金融等代表者は出ておりますが、さらに需要者代表として労働者代表を加えるというような方法で、国の総合性のある住宅計画に、官民一体なつてこの際りつぱな計画を進められることを希望いたすわけでございます。  たいへん長時間にわたりまして失礼いたしました。
  7. 中島茂喜

    中島委員長代理 この際参考人諸君にお願いいたしておきますが、時間が限られておりますので、両法案に直接関係のありますことを、端的に御意見の御開陳をお願いいたしたいと思います。  次は日経連福祉対策委員長代理吉田重明君にお願いいたします。
  8. 吉田重明

    吉田参考人 直接この法案関係のある問題だけに限つて、簡潔に申し上げさせていただきます。要旨はお手元に配付してあると思いますので、ひとつごらんを願いたいと思います。  私たちの基本的の態度は、やはり産業労務者住宅建設は、あくまでも産業の発展と振興の政策に寄与して、生産を向上させるという見地に立つて実施していただきたいということでございます。従いましてその貸付の対象は、産業の振興に直接の責任を負つておる会社を対象にしていただきたい。     〔中島委員長代理退席、高木(松)委員長代理着席〕 そうして一般勤労者の団体あるいは産業に直接関係のないものに対する貸付は、住宅金融公庫その他によつて御実施になつていただいて、市民住宅と産業住宅との間には、政策的に明確な一線を画していただきたいということでございます。従いまして、政府案の産業労働者住宅資金融通法案につきましては、原則として賛成申し上げたい。勤労者住宅建設促進法案に対しては、遺憾ながら御賛成申し上げかねるということでございます。  具体的な意見といたしましては、貸付限度が、先ほどもお話がございました通り、五割ではちよつと低過ぎる、ぜひ八割程度にまで引上げていただきたい。それから予算の二十億、これはさらに増額が望ましいが、それができなければ、計画戸数の六千五百戸は多少減つてもいいから、限度の五割を八割に引上げていただきたい。  貸付利率は、政府案は六分五厘となつているが、これは大体厚生年金の積立金の六百億になつておる還元融資趣旨が含まれておるように聞いております。そうするとやはり大蔵省資金運用部へ預け入れるときの利率が五分五厘ということになつておるようでございますから、貸付もぜひ五分五厘程度にしていただきたいということでございます。  それから三番目には、産業住宅建設は、国家の住宅政策の一部になるものであるから、固定資産税の免除、それから建設費に対する短期償却等の便宜な方法を講じていただきたいということでございます。  以上であります。
  9. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 参考人に対する質問はあとで総括的にお願いしたいと思います。  日本労働組合同盟主事古賀専君
  10. 古賀専

    古賀参考人 総同盟古賀でございます。  今回政府案並びに社会党案によりまして、産業労働者用の住宅建設法案が立法化され、同時にそれに伴いまして予算措置がとられることになりましたことは、非常におそきに失しているとは思いますけれども、まことに喜ばしいことだとわれわれ考えるわけであります。しかし、政府案について私どもが見まするときに、非常にこれが申訳的であるというふうに感ぜざるを得ないのであります。終戦以後今日までの住宅事情につきまして、さらにまたこれが解決の方策につきまして、年間どの程度住宅建設すればいいかという問題については、すでに先ほど幸島参考人から詳細に述べられておりますし、また各委員の方々も十分御承知なつておることだと思いますので、私は省略をいたします。  ただ問題は、この産業労働者に対する住宅建設が申訳的であると申し上げましたことは、御承知の通り現在われわれが東京の町を歩きましても、あるいは大阪の町を歩きましても、非常に多くの巨大なビルディングがどんどん建設されつつあります。これに対して一般住宅建設あるいは復興が遅れておることは、これまた周知の事実であります。さらにまた、同じ労働者でございますけれども、これを産業別的に見て参りますならば、炭鉱鉱山の労働者の場合には、昭和二十二年の一月から二年八箇月にわたつて相当数の住宅建設をせられております。これに対して政府が支出した金額は当時の金で百五十四億でございます。これを現在の時価に評価をいたしますならば、おそらくこれは三百億を越えることは、これまた当然われわれが納得し得るところのものでございます。さらにまた国家公務員につきましても、先ほど幸島参考人が指摘をいたしましたように五十四億という政府の支出がなされておるのであります。  ところで、一般産業労働者は、これら国家公務員や炭鉱労働者その他に対して非常に冷遇されて来たという印象を持たざるを得ないのでございます。もちろん日本の戦後の経済の再建のために、いわゆる傾斜生産方式がとられ、石炭その他が重点的に取上げられたことについては、われわれも了解をいたすところでございますけれども、しかし一般産業労働者も、これについて日本の経済の復興あるいは再建に協力をいたした点においては、何かわりがないと考えております。ところが、今日までこれがほとんど等閑に付せられて来ておつたという事実、それから今回ようやく政府案に盛られておりますところの内容、さらにそれに伴う予算措置を見ますときに、わずか二十億しかこれが組まれていないという点が、今申し上げましたような申訳的であるということの一つの理由でございます。  本年度の予算は現在すでに一兆億になんなんといたしておりますし、しかもそれは衆議院を通過をいたしております。そのあとでわれわれの意見を聞かれるということでは、私どもは率直に申し上げて、一体どこまでわれわれの意見を参考にしようとするお気持があるのかということを疑わざるを得ないのでございますけれども、予算案がすでに通過をいたしております以上、今後これについてどのように計画を拡充される見込みがあるのかどうかという点について、私どもは善処方を要望いたしたいと思うのであります。  わずか六千五百戸ほどの産業労働者用の住宅建設をせられましたところで、これが九牛の一毛にすぎないことは申し上げるまでもございません。もちろん現在いわゆる金融公庫公営住宅というものが、その五四%は一般労働者で借用せられておるという数学は出ております。しかし、ただ単に五四%という数字にわれわれが惑わされてはならぬと思うのでございまして、五四%が一体何千戸に相当一しておるか、その事実がどれだけ住宅緩和に寄与いたしておるかという点こそが問題になる、かように考えるわけでございます。そういう関係から私どもはこの政府案につきましては、ここへ別に社会党からも対案が出ております以上、残念ながら賛成しがたいのでございます。  すでに予算措置は決定を見ておりますけれども、できますならば社会党案に盛られております内容でこの立法措置がとられ、そうして日本住宅の払底状態を緩和いたしますために、この政府案にあります二十年ということではなくして、少くとも十箇年あるいはもつと短縮して、早くこれを緩和していただきたい。もしそれができなければ、日本の産業の復興とか、あるいは経済の再建ということも非常に困難だと考えるのでございます。  時間がございませんので、私はただ一つ事実を申し上げます。現在神戸の三菱造船所の工員で十数年勤務をいたしておる者が、いまだに戦時中と同じように家族を疎開させて、そうして自分だけはまだ会社の寮で雑居生活をいたしておるという実情でございます。いわゆる天下の三菱においても、そういう割に条件のいい労働者でさえ、現在そのような境遇に置かれておるのでありますから、それ以外の九〇%を占めます中小企業労働者状態というものは、この点から推しはかりますならば、いかにいまだに戦時中と大差のない生活をいたしておるかということは、十分御理解が願えると考える次第でございます。そういう点で社会党案の方が、政府案よりもはるかに急速に事態の改善を企図しておるという意味で、私どもはこの社会党案に賛成をいたしたいと考えております。  それからもう一つ、これはいろいろ申し上げたい点があるのでございますが、時間がないようで非常に残念でございますけれども、先ほど言われました労働組合が直接住宅建設にタッチすることについては、これは非常にうまくないのではないかというお話がございました。これは政府が全部国営住宅をただちに建ててくれるならば、労働組合がこのような主張をする必要はないと考えます。もつと積極的な政府建設計画ができますならば、われわれは何らみずからこういうことをしなくてもいいと思うのであります。しかし現状におきましては、そのような事態になつていないという面において、われわれみずからが若干は国家の政策に協力するという建前に立ちましても、こういうことをみずからの力でなさなければならないという状態に置かれている点を御考慮願いまして、貸付対象の面等については十分に御考慮を願いたいと思つておる次第でございます。  それから最後に一つ、この住宅金融公庫につきましては、御承知の通り非常に世評が芳ばしくございません。情実的ないろいろ選考が行われるというふうな風評も耳にいたしておりますけれども、さらにその手続が煩瑣であるという点については、これは申し上げるまでもないと思います。かような意味合いからも、運営委員会等につきましては、ぜひとも労働組合などを参加させるようにしていただきたい。それから住宅金融公庫だけを貸付の対象にせずに、あるいは取扱いの機関にせずに、労働金庫もひとつ活用していただければ非常にいいのではないかと考えております。労働金庫を通じてこの住宅建設資金融通をやれという点につきましては、ただいまここで資料としてちようだいをいたしましたいろいろな陳情書の中の日本商工会議所から出されております陳情書にも、労働金庫を活用すべきであるという趣旨が盛られてございます。この点においては労働者側と経営者側で大体意見が一致してれるというふうにも考えられますので、ひとつ労働金庫を活用してい、ただく、そのことがまた労働者が自主的に住宅建設する意欲を増加せしめることにもなりまするし、ひいては国家の政策に大きな寄与もいたすかと考えておる次第であります。  簡単雑駁でございましたけれども、以上で私の意見を終ります。
  11. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 東京商工協同組合連合会会長藤斎三君。
  12. 五藤斎三

    ○五藤参考人 私も率直率明に、きよう御審議の同じ目的の二つの法案に関しまして拝見をいたしまして法案の中から感じとりましたことを、申し述べたいと存じます。  まず最初に感じますことは、従来国の御方針として住宅金融公庫によつて一般大衆の住宅の緩和がはかられ、あるいは公営住宅建設促進によつてこれがなお拍車をかけられておる。その上になお労務者もしくは勤務者を対象としてこの促進法案が現われて、住宅緩和のために政府が努力をせられておるということに対しましては、皆様と同様に、非常に私どもも賛成を申し上げるものであります。ただ、先ほど幸島参考人からもおつしやいましたように、現在の住宅不足数が、総数において三百万戸を越えており、労務者用の住宅不足数だけをとりましても、百万戸を越えておる現状から考えまして、この案に盛られております資金量において僅々六千五百戸程度建設を見込んでおられますのは、あまりにも微温的に過ぎるという感じがいたすのであります。この点ただいまお立ちになりました古賀参考人の主張と私どもも同感であります。これは何とか国の御配慮によつて、多々ますます弁ずるように促進をしていただくように拡大強化をしていただく方法はないか、こういうことを考えるわけであります。  私は政府資金あるいは予算のことを詳細に存じ上げませんけれども、厚生年金保険及び失業保険の積立金が、資金運用部資金に合計七百億以上もあるということを聞くのであります。これらは一般勤務者及び事業者の中から掛金として積み立てられた資金でありますので、これは郵便貯金等の零細なる貯金とは違いまして、特定個人に払いもどしの必要のないものでありますが、現在非常に運用を十分にせられていない。こういう点から考えますならば、これらの資金が勤労者の住宅建設資金に大量にまわるということは、非常に望ましいことであり、また合理的ではなかろうかと感ずるものであります。これは資金運用部の資金運用操作のいかんによりましては、相当額の住宅促進法による資金に貸し出し投入をすることができないことはないのではないか。私はしろうとでわかりませんけれども、国家におかれましても十分御考慮を願いたいような気がいたします。  いま一つ私考えますのに、公営住宅におきましては、一般財政の支出におきまして建設費に対して五割の補助をおやりになつておる。今度の促進法案に盛られております金額も、これは二十億は一般財政支出であろうと存じ上げますが、そうでありますれば、これは公営住宅のように補助という形でおまわしなさることはできないのか先ほど申しましたが、厚生年金、失業年金等の積立の中から貸し出し投入をすることができるものがありとすれば、これは貸付金でけつこうであろうと思いますので、この二つの方法を併用いたしますことによつて、この法律がほんとうに役に立つようなふうの御利用ができないものであろうかと私は考えます。  今日、御承知の通り住宅金融公庫の貸し出しが、基準建設費がありまして、その八割ないし八割五分を貸し出されております実情を見てみますと、なかなかその基準建築費の範囲では建築ができない。実際は大体三割増しくらいの費用を要するのが実情であるペいだとか、みぞだとか下水だとか、あるいは井戸だとかいつたようなものの附帯設備を整えますならば、大体基準建築費の三割増しくらいになるのが実情であるように聞き及んでおるのであります。そういう現状から考えますと、この法案に盛られております十五坪の家を公庫の金で建てたといたしましても、頭金が二十万円くらいいるわけであります。この法案のA案によりますと五割しか貸出しをおやりにならぬようでありますので、これを借り受けて貸家を建てるといたしますれば、実際におきましては半分以上の金額、私は六割くらいの金額をその借り受けをした会社なり団体が自己負担をせなければいかぬ結果になるのではないかと用うのであります。これは、先ほどどなたかからも言われましたように、よしんば建設戸数は減りましても、公庫住宅同様に、私は八割の貸出しをなさることが必要ではないかと思います。そういたしませんと、これを借り出しました会社、団体において、非常に多額の資金をこれに投入せなければならぬということで、なかなか実を結ぶことが困難ではないか、こういうふうに考えるのであります。  いま一つは、住宅と申しますものは、建てた当時は非常にきれいでありますが、住んでおりますと年々老朽化しまして、その価を減殺いたしますことが加速度的に起つて参りますのに、依然としてかわらない賃貸料をとらなければ借入金の償還かできないということになりますると、だんだん年月がたつに従いまして、徴収が困難になるような事情が起るのではないかということを危惧いたすのであります。今から三十年も昔、やはり住宅組合法ができまして、政府あるいは地方公共団体から住宅建設資金を貸し出されまして、私どももその組合を組織いたしまして理事長になりまして、家を建てた経験がございますが、二十年の償還期限の中ほどになりますと、不払いが非常にふえまして困難を来したことを想起するのであります。これは後においては住宅組合と言わずに、不払い組合というような汚名をこうむつたようなことを思い起すのであります。こういうようなことから考えましても、このB案に盛られてれりますような、住宅組合や、あるいは勤労者の団体でこれをおやりになつてはたして有終の美をなし得ることが十分にできるかどうかということが、非常に危ぶまれる点があるのではないか。こういつたような観点から、やはりこれは企業者の責任においてやるA案の方が、この点はよろしいように私は考えるものであります。  なお事業者の数におきましては九〇%以上でありまするし、労務者の数におきましても五〇%を占めております中小企業者の状態は、個人経営が非常に多いのでありますが、これもB案によりますと、この貸出し対象として、事業者が個人経営の場合においては除かれておる。こういうことから考えますならば、やはり対象もA案の方がよろしいのではないか、このように考えるものであります。  それから労務者の住宅不足率が今日二四%であり、一般全部の住宅不足率が一九%であるということを承りますが、これが事実であるといたしまするならば、公庫、公営住宅施策はありまするけれども、やはりこの促進法はA案のように、ほんとうの労働者の方々のみを対象とすることが適当であるように私は存ずるのであります。  それから償還期間の問題でありますが、これも家賃をとつて貸す住宅といたしますならば、今日の経済段階におきましては、なるべく低家賃が望ましいのでありまして、そのためにはできるだけ償還期間の長期化が期待されるのであります。そういう点からは、少くも住宅金融公庫並に償還期間を延長計画せられておりますB案の方が、この償還期間の面では適当であると考えるのであります。  法案に盛られておりまする点に対して私の感じましたところは、以上の通りでありますが、住宅問題の真の解決は、こういう年間きわめて少数の住宅建設いたしまするような計画では、九牛の一毛にすぎないことは、もう皆様も御承知の通りであります。何と申しましても、一般経済政策の線に乗つて貸家の立つような施策がとられませんならば、日本住宅不足問題の解決は、百年河清をまつことになるのではないかと思います。そのためには、総合的な経済政策の上におけるインフレーションの最終的な収束が必要でありましようし、あるいは物価が戦前に比較いたしまして、現在非常にでこぼこがありまするのを、平準化するという施策も必要でありましよう。それから現在生活費の中に占めておりますエンゲル係数が、まだまだ非常に大きい。こういうことからも、住宅費の支出率を増大することは不可能でありますので、物価のでこぼこを平準化するとともに、勤労者の収入を増すことも期待しなければならぬと存じます。そういう観点から、総合的施策の上で、エンゲル係数等が戦前に復帰をいたしますようになりまするならば、住居費の支出率を今日よりも相当増大し得る可能性が出て来ると思うのでありまして、その他税制の改善によりまして、住宅の貸借ということが経済上成り立つような時期が招来せられるのではないかと思います。こういうようなことを、ぜひともこの建設委員会においても、一般経済の常道から御賢察になりまして、真の住宅問題の解決を同時に御配慮いただきたいと存じます。あるいは住宅債券を発行して、公営住宅の入居者に入居抽籤の資格を与えるために債券の購入を条件とするというような案も拝見いたしまするが、これなども一般住宅緩和の方策といたしまして、その資金を得る一つの方法ではなかろうかと存ずるのであります。  なお一般住宅問題と切り離しまして、労務者の住宅を考えます場合には、なるべく不燃性の住宅に重点を置いていただきたいと私どもは考えるのであります。住宅の滅失数は年間相当数に上つておるようでありますが、建てては焼け、建てては焼けいたしまして、いつまでたつても循環小数的に住宅の絶対不足量が滅らないというような現状にかんがみまして、非常に長い時間がかかりましても、不燃性住宅がだんだん建てられ、ことに国の配慮による資金によりまして、そういうものの建築が促進されまして、真に住宅緩和の線がそこから発生でき得るように期待を申し上げたいと存じます。  はなはだとりとめもないことでありましたが、以上申し述べまして公述を終ることにいたします。
  13. 高木松吉

  14. 参谷新一

    参谷参考人 基本的な考えといたしましては、先ほど幸島参考人から述べられた意見が、大体私どもの考えておる点である、こういうふうに思つていただいてけつこうだと思います。先ほど来、いろいろ具体的な問題につきまして、また具体的な数字をあげられましているく陳述され薫り事ので、私は問題を非常に狭く集約した観点から、今回出されました二法案に対して、御批判を申し上げたいと考えている次第でございます。  まず政府案の十三条におきまして「負担能力を考慮して適正に定めなければならない。」こういう条件が出されております。この点が、実はこの法案の中では十分具体的に明示されておらないので、他の関連法案から導き出されることだと考えますが、この適正な価格をどういつた方法で決定し、しかもなお決定したあとにおいて、ある一定の不足金が出た場合にはどういつた措置をするのか、その措置方法について、まことに不明確であると思います。この法案の中でそういつた不足額に対する補償の規定がございませんので、補償は少くとも事業者団体に転嫁されるものであるというふうに解釈いたすわけでございます。  この住宅費がどのような価格になるかということでございますが、まず私どもが今後建設しようと考えている住宅につきましては、大体第一種のこの規定によつてつくられた建築を一応想定するわけでございます。そういたしますと、この賃貸料は、昨年の決定によりますと二千二百四十一円、こういう価格が決定されております。私どもはその建設費を七十万円と想定いたしました。この償却を三十五年間とする。そういたしますと、一箇月当りの価格は千六百六十六円になると思います。なお三十五年の根拠につきましては、大体金庫法の二十一条で規定されておりますので、そういつたものを想定して三十五年といたしたわけであります。そういたしますと、この建設費に対する純建設費の価格は千六百六十六円でございますが、七十万円に対する金利を見なければならぬ。この金利はどのくらいになるかといいますと、単純計算をいたしまして、第一年目の金額は三千七百九十一円となり、最終の三十五年目には大体百円ちよつと切れるものと考えますが、そういつた金額になる。それを一次係数によつて算定いたしますと八十一万九千円、これが金利の総額でございます。それを一箇月に引き直しますと千九百五十円、こういう金額が出て来るわけでございます。なおこの両者を加えましたほかに、固定資産税とかあるいは大きな損壊を来した場合の損壊に対するいろいろな諸費がいるわけでございますが、そういうものを想定いたしますと、大体六千円見当になるのではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。  そういたしますと、現在の労働者の平均ベースというものは、労働省の二十七年十一月の統計によりますと、一万二千九百四十一円になつておりますが、この一万二千九百四十一円の中からこういつた高額の金額をまかなうことはとうていでき得ないことであるわけでございます。なおもう一つ考えねばならない点は、現在の賃貸の平均価格でございますが、七%—要するにエンゲル係数から踏みまして、住宅費をどの程度とるかということについていろいろ統計が出おりますが、一応総理庁の内閣統計局の表によりますと、大体七%程度が妥当じやないか、こういうふうに推定いたしますと、八百九十八円八十七銭、これは大体九百円と踏んでもいいのであります。九百円と踏みますと、相当な開きが出て来る、こういう点では、私どもは大体労働者としては七%程度の、もしこれが許されないとしても、一〇%程度、要するに公営住宅の費用程度の負担を負うべきものが限度である、こういうふうな見方をいたしておるわけでございます。  ところで問題は、労働者で出し得ないとすると、この法案から行きますと、事業者が負担せねばならない。事業者でこういつた。高額の金額を負担できる企業といいますと、相当大きな、相当利潤のある企業、こういうことになるのではないか。ところが現在の一番困つている—大きな企業であれば、かなり福祉関係の施策として、あるいは厚生関係の施策として、社宅というものによつて相当な処理がなされておりますし、事実戦時中にも見られましたように、相当厖大な住宅建設が敢行されております。そういたしますと、それ以下の労働者が現在一番困窮しておるのではないか、特に中小程度の企業者、零細企業に至つては極端な困窮の中に追い込められておる、こういうふうに考えるのが正しいのではないかと思います。こういつた考えに立脚いたしますと、中小企業は、現在の一般給与のベースに対する六割ないし七割の程度だと、われわれは一応いろいろな統計から推定いたしておるのでございますが、そういつた企業では、なかなか困難な経営を続けております。そういつた企業はこのような六千円から九百円を引いたところの大体五千円の負担をするということはとうていできないであろうし、なお公営住宅費といたしまして、先ほど申し上げましたこの二千二百四十一円を差引いたところの三千七百円程度の金額もとうてい負担し得ないのではないか、こういつた点から、私どもが一番切実に要求されておりますところの非常に多く存在しておるところの中小企業の産業労務者に対して、少くとも対象になり得ない。こういうことはどうしても現在福祉厚生というものが、少くとも平等な立場に立つて国民一般に普及せらるべきだ。企業の恩典をも受け得ないような労働者にこそ、重点的にそういつた措置、方法を講ずべきだ、こういうふうに考えるわけでございます。  大体この十三条から発足いたしまして、考え方としてそういつた影響を持つておるということと同時に、基本的には現在の社会党案によりましても、先ほどの推計いたしましたところの計算による価格は、大体該当すると思いますので、そういたしますと、やはり事業者の負担ということから考えまして、今言つたような論旨になる、こういうふうに考えるわけでございます。しかしながら社会党案によりますと、個定資産税によるところの免税措置がうたわれておりますので、この点はかなりな飛躍がございます。審議会制度によつて、現在までのいろいろな住宅制度に対するところのいろいろな結果について、多くの学識経験者あるいは面接それを貸与されるところの消費者の中から、そういつた意見を聞こうということは前進いたしておる、こういうふうに考えます。  いずれにいたしましても、両案とも私どもといたしましては、基本的に長期資金による方法とか、あるいは低利による貸付によつてこれをまかなつて行こう、こういつた措置では、住宅政策というような性格の問題は片づかないのではないか。特に今日いろいろな点で見られますように、米価におきましてもいろいろ、措置がされております。そういつた措置方法が必要ではないか。この住宅政策につきましても、すでに、先ほど申し遅れましたが、第一種、第二種に関しましては区分はございますが、半額ないし三分の二の国庫の補助がございます。こういつた補助をして行くという基本的な態度というものは、そういつた事実を認めておるのではないか、このように私どもは考えるわけでございます。そういつた点から、この点は国家の全額負担によるところの公営住宅をつくる、要するに産業住宅をつくるという建前に立つべきである。こうしなければ、とうてい現在困窮に陥つておるところの労働者をすべて平等に扱つて行くという建前にはなれなくて、特定の企業に、特定の条件で働いている人だけに与えられる住宅対策なつて行く、こういうふうな欠陥がこの法案の中に指摘されるのではなかろうか、こういうように考えるわけでございます。  なお、この法案を通じてもう一点考えられる点でございますが、これは現在働いている現役の労働者のみを対象にいたしておりますが、失業者というものは、そもそも資本主義社会内において必要的に生れるところの現象かと考えます。そういつた失業者は、失業したくて失業しているのでなく、働きたくてもいろいろな社会の現象によりまして、経済的あるいは政治的な変革とともに、失業者というものはいろいろ変動をきわめますが、これを皆無にするということはできない。少くとも社会の必然から生れるところの失業者に対しましても、当然こういつた住宅に対する対象とさるべきだ、こういうふうに考えます。  非常に簡単でございまして、非常にまわりくどくておわかりにくかつたかと思いますが、住宅建設促進法案とか、あるいは資金融通法案とかいうものでなしに、住宅法案として、国庫の全額負担によるところの住宅建設して行くんだという建前を、この産業労務者に対してもぜひとも生かしていただきたい。特に日本は、終戦後八年を経たといいましても、労使間におけるところの労働関係というものは、非常に複雑多岐な内容を持つております。中小企業になればなるほど、小さくなればなるほど、こういつたいろいろ複雑な内容が私たちに見受けられるのでございますので、そういつた点も十分御考慮願つて、そういつた措置方法をとつていただきたいというように考えるわけであります。  非常にずさんでございましたが、以上私の意見を申し上げます。
  15. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 以上をもちまして、参考人諸君の御意見の陳述は終りました。これより参考人に対する質疑に入りたいと存じます。淺利三朗君。
  16. 淺利三朗

    ○淺利委員 他の委員の方からいろいろ御質問があると思いますが、私住宅委員長をいたしておる関係上、その審議の責任上皆様方の御意見を承りたいということで、委員長に申し上げましたところ、われわれ小委員ばかりでなく、委員全体が聞きたいというので、今日この会を開いたわけであります。そういう関係上、多くの委員の方からの質問を願いたいと思いますけれども、ただ私が今伺つてはつきりしたがつた点について一、二伺つておきたいと思います。  古賀さんの御意見の中に、予算編成後においてこういう参考意見を聞くということは、前後転倒じやないかと、こういう御意見、これはごもつともでありますが、ただこの参考人の方方から意見を伺うことが、政府が本年度に二十億の予算措置をした、これを実施するためにここにこの立法が講ぜられた—予算の問題については、実は私は予算委員もいたしておりまして、さきに予算委員会において組合関係の方にも来ていただいて御意見を承つたのでありますが、その当時は、政府政策についてはいろいろ御意見がありましたけれども、住宅問題について、予算の面についての御意見は遂に承ることができなかつたのであります。そういう関係で、実は今回はこの立法措置について伺いたいのでありますが、先刻はただ社会党案はいいが、政府案はいかぬという抽象論だけでありましてどこに政府案の欠陥があるのか、社会党案の長所はどこにあるのか、はつきり伺いかねたのであります。ことに、先刻ほかの方から、労働組合対象として全額貸付をするならば、むしろ国家が建てて貸した方がいいのではないかという御意見、私はこれはごもつともだと思う。全額国庫が出すならば、国が建てて貸す方がいいと思いますが、ただここで問題になるのは、労働組合対象といたすことになれば、労働組合としては、どうして弔採算の上から相当家賃が高くなりはせぬかという点と、それから使用人の会社の方であれば、この借りた額を基礎として貸付の基準はきまるけれども、そう高くしないで会社自体においてもある程度の犠牲を忍んで安くするという程度のことはできるのではないか、そういうことについての実際上の措置の上においては、一体どつちが労働者諸君に有利になるだろうかという点について、現実の問題としてどういうふうにお考えなのか、その点をお伺いしたいと思います。
  17. 古賀専

    古賀参考人 社会党案と政府案の優劣について、非常に抽象的に申し上げたので、少し具体的に言えという御質問でございますが、この点は時間もなかつたことで、大体御了解願えると思います。  そこで問題は、どちらも勤労者の住宅建設しようとしておるということについては、大体かわりがないわけでございますから、そのような意味合いにおける一致点は、これまたあると考えております。ただ問題は、この住宅難の緩和に対する一つの熱意とでも申しますか、あるいは政治的な感覚とでも申しましようか、そういうものの差が若干現われておるものと私どもは考え、そういう意味合いにおいて、政府案よりも社会党案が—たとえば、政府案は二十年で現在の住宅難を緩和しようとしておるけれども、社会党案は一応十年という二分の一の年数でこれを実現しようとしておる。こういうところに、私どものように現実に住宅難で悩んでおります労働者が、やはり第一番に社会党案に飛びつく理由のあることも御納得いただける点だと考えております。  それから労働組合貸付対象に入れるということについて、しかも全額国庫で負担するならばということでございますが、これは私先ほども申し上げましたように、国家がこれらの住宅を一手に引受けてつくりまして、そうして憲法に明示せられておりますような、あるいはまた政府案の中に明示してございますように、健康にして文化的な生活を営むための方策を講じていただきますれば、労働組合がタッチする必要はさらさらないのでございます。労働組合は、本来事業活動をやりますけれども、そこまで範囲を広げることについては、機能の点において相当考慮しなければならない点があることを、われわれも承知いたしおるのであります。しかし、現実の住宅難をどうして解決するかという点については、だれもがこれについての手を差延べてくれなければ、やはりみずからやらなければならないという仕儀に相なつておる次第でございます。それからまた、先ほど来しばしば他の参考人の方々からも指摘されておりますように、中小企業が圧倒的に多いわけでございますが、この中小企業経営者の方々のいろいろな資産的な能力、あるいはその他の点の条件等から考えまして、労働組合—この場合に、私どもは単にある一事業所単位の労働組合のみを考慮の対象にしておりませんで、もつと地域的な労働組合、あるいは全国的な労働組合を考慮の対象に入れておるわけでございますが、そういうものが経営者と協力するということでなければ、事実上これらの解決はできないと考えておるわけであります。だから、現実的に説明しろと言われますならば、これはたとえば東京なり大阪なりの一労働組合が、その貸付対象になつて住宅建設をいたします場合には、当然経営者側との相談なしに事は行われない、やはり経営者側からも若干の便宜の供与はしていただかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。労働組合経営者の何らの援助も受けず、政府の援助も受けず、単独に労働組合だけでやるというような考え方に立つていないという点は、御了解を願つておかなければならぬと思うのであります。ただ事業者だけが対象にされますと、政府案のように、事実上中小企業事業者というものは、ある意味において労働組合と協力しなければならない面が多々ございますので、そういう意味で、せつかく政府の意図も、かえつて実現が不可能に近い状態になるのではないかというふうに考えておるわけでございます。今、貸付対象の点について御質問がございましたので、大体その点についての見解を申し上げました。  それからそのほか社会党案はどういう点がよいかという点につきましては、私ども昨日A案、B案というような資料をいただいております。これをずつと見ますと、今の貸付対象の問題、それから先ほど他の参考人からも申されましたように、償還期限の問題、あるいは利率の問題その他について、社会党案がはるかに事業者には有利にでき上つておると考えておる次第でございます。かような意味合いにおきまして、私どもは社会党案を支持いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  18. 淺利三朗

    ○淺利委員 今の労働組合対象とする場合、全額貸されば労働組合はいいのだけれども、もし一部貸付ということになれば、やはり労働組合としても相当の金を負担しなければならない。そうなつたら、これは理想としてはいいが、実行できないのではないか。むしろ、それならば、労働組合にも幾らか金があるのだから、そちらに建てさせたらどうか。しかし労働組合でやつた場合は、採算のとれる範囲で貸さなければならないが、使用者の場合は、自分の使用人のために、一面においては厚生施設なんですから、三千円で貸す、あるいは二千円で貸すというような手もあるじやないか。そういうことは、実際に実行された場合に一体どういうふうになるか。政府の方としては、事業者が建てた場合には、政府から借りたその採算そのままで貸さないで、なるべく安く貸すようなところに優先的にやれということで、政策的に考慮はできますけれども、労働組合の場合は、それができないのではないか。そういう点であなた方はどつちの方が一体労働表のために有利になるかという、実際論を実は承りたかつたのです。
  19. 古賀専

    古賀参考人 今浅利先生から御指摘の通り、実行面についてどうかという御疑念を若干お持ちになるのは当然かと思います。私どももそういうふうに実行する場合のいろいろな問題を、ここで詳細に具体的に申し上げることは少し困難かと思います。しかし、現在相当の規模の企業でございますならば、若干の福祉厚生施設として社宅を経営しておるわけでありますが、こういうものの処理については、組合側と協議の上でなされておるわけでございます。そういう面で、事業者と組合との関係においてそういう問題が取扱われます場合には、それぞれ若干の利害関係の対立というものはございますけれども、大体話合いのつく問題であると考えおります。今浅利先生がおつしやつたように、ただ採算その他の画で事業者だけにした方がいいのではないかということについては、基本的に、現実にそういう形でわれわれが行つておるという事実、もつと端的に申し上げますならば、組合員が家を建てます場合に、会社が金を貸し付けるということが行われている例もあるのでございます。そういう点等を考慮して参りますならば、今申し上げたようなことでございますが、ただ全然事業者だけを対象にされようというお考えについては、現在の憲法なり、あるいは労働組合法なりで労働組合自体が認められておるという事実、それから労働組合がほんとうに健全に発展をいたしますためには、こういう着実な事業に労働組合がタッチすることなしには、ほんとうの永続的な、健全な姿の労働組合というものはでき上らない、私どもはこういうふうに考えておりまして、生活協同組合その他事業活動の面に、実は非常に力を入れておるわけでございます。そういう点で、現在われわれがいろいろ経営者側との間にこういう問題の処理の上においては話合いが十分行われておるという事実を、ひとつ御認識願いたいと考えますことと、それから、やはりこういうものは、勤労者を対象にされたものでございますので、当然労働者の団体であります労働組合にはかるとか、あるいはそれを関与せしめるとか、あるいはそれを事業者と対等の立場において認めて行くとか、こういう形をお願いいたしたいものだと考えておるわけです。
  20. 淺利三朗

    ○淺利委員 もう一つ、参谷さんから伺いたいと思います。失業した場合のことも考慮するという御意見は、まことにごもつともで、一般公営住宅のうちのBの方は、そういう場合の人も対象なつておるのですが、会社であれば会社の社宅だから、社員の資格のある、またその事業に従事をしておる人が居住する、こういうことになつて、その事業に従事しなければそこと縁が切れる。労働組合の場合であつたならば、労働者でなくなつた場合、いわゆる失業をしたり転職した場合には、やはりその労働組合経営住宅から去ることになるのですか、そういう場合はどういうふうになるのでしようか。
  21. 参谷新一

    参谷参考人 その点会社の社宅に入つておる、あるいは先ほど言いました産業労務者の住宅としてできた家屋に、Aという会社に勤めながら入つておる、そういつた場合に、産業労務者でなくなつた、失業したというときにも、その住宅を追い出されない、こういうことを一応申し上げたわけでございます。従つて先ほど言いましたような、事業者によつてつくられた社宅というものを対象に置いたのではなしに、国家の全額負担によるところの住宅対象において申し上げた次第であります。
  22. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 私は吉田さんにお伺いしたいのでありますが、実は私が社会党案の提案者になつておりまして、社会党案についても多くの欠陥を持つておることは、みずから認めております。社会党自体の基本方針といたしましては、幸島さんから御指摘になつたように、住宅建設は急速にこれをやらなければならぬという建前に立ちまして、全面的に公営によつてこの住宅問題を解すべきであるという基本方針で、われわれは計画を進めておるわけでありまして、私の方の提案いたしました案が理想的であるとかなんとかいう考えは、毛頭持つておらぬのであります。ただ現実の資本主義制度の段階において公営住宅住宅金融公庫住宅、こういうものでやつておる際において、住宅を非常に熱望しておる一般の大部分の労働者にとつて、公平に国民全般をながめてみて、現在の政府がやつて参りました二つの政策では不十分である、もう少し労働者住宅建設を推進しなければならぬという建前に立つて、社会党案は提出いたしたのであります。それで、その案について非常に御反対のような御意見があつたわけでありますが、このことは議論すべきではないと思うので、議論にわたらないように、今吉田さんが述べられたことについての御質問を申し上げたいと思うのであります。  まず第一に、貸付対象となるべきものが、政府案のように事業者でなければならぬ、産業会社に向けられなければならぬのであつて労働組合等によるべきものでない、こういう御意見なのでありますが、労働者自身自主的にこの住宅を解決しようという問題は、保存、運営その他について、労働者みずからが、これは自分の家だ、自分が責任を持つた家だとして持つ場合と、これは会社がめんどうを見ておる家だ、いわば借家である、こういう場合とは、運営、保存その他の面において非常に違うと思う。これは人間性としてそうなつておると思うのであります。それで私は、事業者でなければならぬという考えをかえなければ、日本の今の産業が、ただ資本家だけの産業であるというような観点では、日本の経済を発展せしめることは困難だ、こういう建前事業者もなられなければならぬと思う。実際住宅の保存、運営等について、何がゆえに労働者自身に自主的な立場で解決をさせようという意欲を持たせてやることが産業のために悪いのか、むしろその方がいいのではないかと思いますが、こういう点の御見解を伺いたいと思います。
  23. 吉田重明

    吉田参考人 ただいまのお話ごもつともでございまして、私の方の会社でも、社宅の運営、管理は、労働組合と協力してやつておるわけでございますが、しかし、今度のような貸付対象と、それから償還の義務、そういうふうな問題に関します場合には、今幸島さんのお話もございましたが、社宅の絶対数が非常に足りない、また償還の勇、いろいろな面から考えまして、やはり責任を持つて—最後の責任の帰属は、現在の状態では事業主の経営者に転嫁されて来る場合が非常に多いように考えられるわけでございます。従いまして、管理運営という点については、その労働組合とよく協力してやつて行きたいと思いますが、貸付の償還の能力とかいろいろな面から考えまして、実際的な、具体的な事例を想像いたしまして、経営者を対象にしていただく方がいいのじやないか、こういうふうに考えるわけであります。
  24. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 入居者といろいろ御相談の上にやるということは、これは借家の場合においても、当然やつておるのでありますし、一般借家について弔言われるわけなんですが、私が申し上げるのは、たとえば現実にふすまがちよつといたんだ、これは会社のものだから会社の方に言つてやれ、こういうようなことになるのであつて、これが自分の家だということになれば、破損が大にならないうちに、修繕費がたくさんいるようにならないうちに、すぐ自分が手をつける。これは雨漏りの場合においても、あらゆる場合においてそういうことになろうと思います。そういう点から考えましても、労働弾みずからできれば、これに越したことはない、これに越したことはないということになれば、当然労働組合等のみずからの自主的な立場で、この問題を解決することが産業を発展させる。それをさせるために、古賀君もおつしやつたように、産業の発展だから、事業者も事業の発展に資するわけだから、事業者がそれに協力し、それに援助を与える、こういう立場をとられる方がむしろいいのではないか、こう思うわけですが、これはいろいろ議論になりますからこのくらいにいたしておきす。  その次にお尋ね申し上げたいのは、お説の貸付限度の問題であります。政府案は五割になつておる、それを八割まで引上げろ、こういう御意見であります。これは八割が九割、十割でも、多いに越したことはない。多いに越したことはないのですが、政府案のねらいというものは、民間資金を一種の誘導をいたしまして、そうして出資金をできるだけ増額して、有効にたくさん住宅を建てたいというところにねらいがある。従つてこれを八割にするということなら、政府案の意味がないことになる。八割にするほどなら、今の住宅金融公庫の処置をとつて、その中に貸付対象として会社、事業場というものが認められ、そうして住宅金融公庫法の一部を改正して、あるいはその施行細則を改正して、その中の何割は会社、事業場でなければならぬということをきめさえすれば、住宅金融公庫で十分なんです。むしろその方がほかの条件の上においても非常にいいわけなんで、別にこういう法律はいらないわけなんです。こういう法律政府が出すことは、そういうところにねらいがあるのではないです。八割も貸されぬから、あとの半額は事業者から引出す、すなわち二十億の国家資金を出しますと、二十億円の民間資金を引出して使おう、こういうところにねらいがあるのであります。それで八割を要求されること事態は、政府案についての反対の結果になるのではないかと思う。この点についての御意見はいかがですか。
  25. 吉田重明

    吉田参考人 私の方は実際的に八割がいいか五割がいいかという点につきましては、政府案の根本的なねらいと申しますか、それは五割にしたところにあるのだという今のお話でございますが、私の方はそこまでの、八割か五割かによつて政府案であるか、社会党案であるかというような、端的に割切つた考え方はしておりません。その他総合的に見まして、われわれとしては政府案で行つていいのではないか、しかし、これも全面的というわけではないので、いわゆる条件つきで、今のところを八割にしていただけたら、実際に建てる場合におきましても、負担能力——現在資本の蓄積というふうなことが盛んにいわれておりまして、生産方面にも相当資本を流して行かなければならぬ現状でございますので、八割くらいにしていただけたら、建設の面に便宜が多いのではないかということでございまして、その五割か八割かの問題は、そこまで突き詰めて考えておらないのでございます。
  26. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 もう一つお伺いしておきたいのは、日本事業者団体の大きい団体を代表されておる日経連として、貸付限度の問題で、二十億目というものが、政府案で参りますと、会社の手持ち資金がなければならぬということになる。これがはたして適当であるかどうか。今の経済界の現状からして、負担し得られる額であるかどうか。こういう点が、吉田さんに出てもらつて意見を聞くおもな理由なんであります。ただ問題は、この二十億円という額は、全般から見ますと、きわめて少い額です。少い額でありますけれども、今の日本中小企業の立場、今の労働者の大部分を占める立場で考えますと、大企業をやつて場おられる方々は、そう資本にも困らない経営状態のものもありますが、大部分は会社運営資金に困つておる現状でありまして、福利施設等にまわる金というものが、はたして中小企業にあるかどうかということになりますと、たびたび皆さんのお説にも出たように、非常に困難だ、こういう事情がうかがわれるのであります。ただ、こういうことにいたしますと、中小企業のうち、たとえば二百人前後の雇用者を持つておる事業場、あるいは五十人程度の事業場、あるいは三十人、—これは五人以上となつておりますが、五人や八人程度の事業場、こういうものを分類いたしますと、事業場が小さくなるほど、そういう資金が非常に困難じやないかと思う。そうすると、結果といたしまして、特殊な、いわば特需産業だとかなんとかいう、今の日本で特殊ないい立場に置かれておる産業は出せるけれども、その他の事業場は出せないのじやないかという感じがするので刈りますが、経尚書の立場で事情のおわかりになつておるあなたとして、これが一般中小企業の中で、公平に全般的によく行き渡るような状態に運営されるかどうか。そういう会社の経理の関係から、そういうことが考えられるかどうか。われわれはこの法案を審議する場合において、非常に片寄るのではないか、一般中小企業は結局、政府が金を貸してやるというようなことを言つても、それはただ口先ばかりであつて、事実上借りられるような状態にならない。これは住宅金融公庫の場合でも、われわれはそういうことを多く指摘したのですが、そういう結果になりはしないか。労働者、勤労者の住宅住宅ということで、看板だけ見せて、実際に福利にならぬ、こういうことになりますと、この法律の精神が死ぬのじやないか、こういう心配を持つておるのですが、実際今の日本経済の上から考えて、そういうことはどういう状態でございましようか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  27. 吉田重明

    吉田参考人 私の方は、二十億の限度については、もうすでに確定してしまつたものとして、引上げが望ましいがということを申し上げたのでございまして、先ほども五藤さんからお話がございましたように、厚生年金保険の積立金が六百億くらいに上つておると思うのであります。これは従業員と会社と折半負担で、年々かけておるものでありますが、あのフアンドをこの福祉方面に還元して使つていただきたい。この二十億では九牛の一毛だと思つておりますが、これはもうおきまりになつた額でありまして、これはどうにもしかたがありませんので、あきらめておるわけでありますが、実際問題として肥料関係だけでも四万戸ぐらい足らない、造船は材料は持つておりますが、やはり四、五万戸足らないようであります。ですから、不足の数のことを申し上げますと、これではほんとうにお話にならないのでございますが、何とかこれで一つの道をつけていただきまして、来年度はひとつこの額をさらに一層拡張していただくように、レールをつけていただくという意味において双手をあげて賛成するものであります。  その配分の方法でございますが、今の中小方面を対象にしまして六千五百戸をいかに公平にわけるかということであります、私たちはそういう具体的な知識はございませんが、やはりこれはぜひ公平に、情実的な配分だということであとで非難のないように、公正にわけていただきたいと思つておるわけであります。
  28. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 事業者というものは大体、これは日本ばかりではない、世界の経済原則ともいうべき一つの資本主義の発展段階におきしましては、前に五藤さんは、借家が経営可能な状態に置かれることを希望されたのであります。これは資本主義発展の段階が、世界各国でどういう事情であるかということになりますと、過去の日本の経済で考えることのできない状態に、だんだん世界経済というものは追い込まれておるのでありまして、家というものを自由主義で借家経営を中心とした戦前の状態に引きもどすということは、戦後幾年たつても、私はあともどりするものでないと考えておる。従つて、こういうものについては、最初申し上げましたように、国営の強化という点で問題を解決する以外にはないと思うのであります。それで、現在上程されておる法律案のように、国家が五割、事業者が五割負担して建てるということが、現在の経済状態に照してはたして適当であるかどうかということが、立方の立場にあるわれわれとして、日経連その他の事業者団体の人に聞きたい点なのであります。五割では今の経済上どうしてもいかぬ、こう断言されるのか、五割でもよいから、ないよりましだ、こういうことを言われるのかどうか。これを聞かしてもらわないと、われわれ立法者としては、政府原案に対するいろいろ審議の参考にならぬ点があるので、今の経済状態では、八割なら何とかくめんがつく、こういうようなことも聞くわけでありますが、その八割という限度の根拠はどういうところに置かれて八割と言われるのか。今の経済の事情、産業上の事情、事業家の資本運営の事情から、八割というものの根拠はどこに置いて御主張なさるのか。五割ではどうしてもいけないとおつしやるのか、この点を聞かしてもらいたいと思います。
  29. 吉田重明

    吉田参考人 その八割の根拠ですが、これは住宅金融公庫が大体八割くらいになつておるではありませんか。それですから、一応そういう点においては同じように八割程度にしていただきしたいというわけであります。これとても、会社の事業の運営資金繰りからぜひ八割なければならぬ、こういう決定的な根拠は私たちも見当らないのですが、住宅金融公庫が八割なら、一応そのくらいにしていただきたいということでございます。
  30. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 それでは八割といわれるのは、一種の腰だめ的なものであつて住宅金融公庫にあるからだ、こういうことに解釈してよろしいと思うのですが、住宅金融公庫の八割ということについては、前に申し上げましたように「もし住宅金融公庫の通りにやるならば、この法律というものは住宅金融公庫法の一部改正で補えば、別な単独立法はいらないという見解を私らは持つておるわけであります。  そこで、最後にお尋ね申し上げておきたいのは、これはちよつとしつこいようでありますが、今の一般事業家で十人、二十人、三十人くらいの雇用者を持つておる事業場の事業形態で、住宅の福利施設まで行うのに、半額まで出して行うことができる情勢でありますかどうか。二、三十人程度のごく限られた範囲の実情から、ひとつ判断をお聞かせを願いたいと思います。
  31. 吉田重明

    吉田参考人 私の方は五百人以上くらいの大手でございますので、東京都の商工協同組合とか、ああいうふうな中小の方の実情をよく御存じの五藤さんの方が、かえつて的確な事情を把握されておるのではなかろうかと思います。
  32. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 それならば私の方で労働組合の方から聴取してもよろしいです。
  33. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 よろしゆうございますか。
  34. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 いいです。
  35. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 宇田恒君。
  36. 宇田恒

    ○宇田(恒)委員 重複いたしますので、簡単に幸島さんと吉田さんと古賀さんに御質問申し上げます。  衣食住の問題が重大であることは、申し上げるまでもないのであります。本日御足労を願つて参考人として御質問申し上げるということも、これは住宅行政がいかに重大であるかということであります。従つて、この限られた問題で御質問申し上げるわけでありますし、また皆さん方の御意見を聞いたわけでありますので、勢い専門的になつておりまして、皆さん方の熱心な要望があり、また参考人としてのお言葉があるのは当然であります。  まず幸島さんにお伺いしたいのは、該博な建設行政について参考になる御意見を承つたのでありますが、その中で特にこの資金を借り入れて建築すると、毎月三千円くらいは償還しなければならぬ。これは現在のサラリー収入の立場からまことに過大な負担であるというお言葉であつて、当然であるとも考える。五割貸付の対象がそういうことになるわけでありますが、これは現在東京市政調査会の理事の方でありますので、特に専門的に東京都内の家賃といいますか、住宅関係については詳しいと思うのでありますが、長い間の御説明の中に、現在の実質的な家賃がどういうふうになつておるかということの説明がなかつたのであります。私はいろいろ東京都の住宅の問題で、直接に実質の家賃調査して見たことがあるのでありますが、最近における東京都の山手線を中心とし、あるいは中央線を中心とする相当便利な所の家賃は、畳六畳でガス、水道、若干の玄関がついた程度で、敷金がまず五万円ないし七万円で、家賃が三千円ないし四千円くらいであります。じめじめした古いモルタルがはげるようになつた安アパートでも、敷金が二、三万から、四、五万円、しかも家賃が六畳間三千円前後であります。そういうような現実の家賃を支払つておりますときに、この産業労働者住宅政府か考えまして、数十万円を貸す。そこで月額三千円の償還—これは家賃でなしに償還になりますが、その程度では何ら産業労働者のためにならない、実質的な効果かないというふうなお話がありましたが、東京都は一番家賃の高いところで、東京都だけの例ではいけないのでありますが、そこでそういう問題についてどういうふうに考えていらつしやるかということをお伺いいたしたい。  次の吉田さんに対する御質問は、浅利さん、あるいは前田さんたちの質問と重複いたしますが、重複を承知してさらに御質問申し上げようとするのであります。いわゆる産業労働者住宅資金融通法案については、原則的に御賛成をなさり、さらに二、三の修正意見を述べられたのは了承いたしておりますが、この勤労済住宅建設促進法案について御反対になつた。これについては、前山査員から意見も加えられて質問がありましたので、お気持はよくわかつておるのでありますが、まず第一に、勤労者を対象にしては、資金を貸し付けても、どうもこれがうまく結果が行かないんじやないかという御心配があることについて、まだ古出さんかお答えになりませんか、こういうふうなお考えかあつたんじやないかと考える。まあ限られた二十億という資金でありますので、いわゆる緊急対策的な考えから、たとえば産業住宅がないのだというので重点的にこれを利用しよう。そうすれば、まあ会社が資金があるからまず第一に便利じやないか。その次には参谷さんかおつしやいました通りに、失業者という問題が出たときに、いわゆる産業労働者が失業したときには、勢い会社が経営しておつた住宅にはおられない、外へ出て行くと、今度その産業に従事する労働者がそこに入つて来るというので、すなわち住宅を有効適切に使うために会社が融資対象になる方がいいんだというふうなお考えが、そこにひそんでおるんじやないかというふうに承るのでありますが、それについて、そうした問題についての勤労者住宅建設促進法案についての御反対の意思を、もう少し率直にお伺いいたしたいと考えるのであります。  それからもう一つ古賀さんにお伺いいたします。御熱心に勤労者住宅建設促進法案について御賛成のようでありまして、もちろん私は勤労者住宅といわんか、日本住宅問題がすみやかなる期間において解決することが望ましいことたと考えております。予算がもらえますならば、一箇年度においても、数年度においても、これを行うべきであると考えますが、総合的な予算のためにやむを得ないとされているのであります。そこでこの促進法案について御賛成であることはよくわかるのであります。これは私の県会の先輩であり、国会の先輩である前田委員から提出の問題であると同時に、私もそういう問題については、基本的に賛成であります。しかしながら、終戦後住宅問題について国が支出いたした数字は明らかでありますが、本年から初めて日本のほんとうの独立した自主的な予算が出たので、ここで初めてわれわれはほんとうの意味における日本の予算が確立すると思つております。敗戦以来今日まで八箇年になんなんといたします。その間においても、各党が占領治下と言いますけれども、政権を担当した歴史かあるのであります。その歴史を見ましても、なかなか一党だけでこの専門的な住宅問題を検討するほど大きな予算品が出ないということは、もつともであろうと思うのであります。そういう意味におきまして、社会党案がよいことはよいのでありますが、総合的な日本の予算を御検討くださつて、なお健全な住宅予算の捻出について参考になることがあれば承りたいと思うのであります。  それからもう一つ、これはあげ足とりのようでありますが、聞いておかなければならぬ問題があるのでありまして、肩の凝らない程度でお答えが願いたいのであります。それはお言葉の中に住宅公庫の資金の支出について、情実的な支出があるということを御指摘になつたのでありますが、これは何か具体的なことがあつたら承りたい。まずこの点をお伺いいたしたいと思います。
  37. 幸島礼吉

    幸島参考人 私は、ただいま先生から私に対してお尋ねのような趣旨で申し上げたつもりはございません。どこまでも次善の策として、先ほど先生方あるいは参考人の皆様から、金さえあれば国営住宅というようなことは賛成だということでございまして、私も金さえあればということではありますが、さらに先ほど先生から参谷参考人に健全な住宅建設予算の捻出方法があるかというお尋ねがございましたが、なお今後現状のもとでも、もう少し住宅建設に国の金を出していただきたいという気持を申し述べたのでございましてそれが今の段階でどうしてもその程度までしか出ないのならば、次善の災として政府御提案の産業労働者住宅資金融通法はけつこうであるということを私は申し上げたつもりでございます。東京における具体的な家賃の状況等については、むしろ先生から実際に御調査なつた数字をお示しになつたわけでございますが、そういうような実情であるからこそ、少しでも労働者側の負担の軽減されるような住宅供給は好ましいという意味で、私は今回の政府提出案のお考えが、むしろ金がないから半分を国か出し半分を事業者の負担でつくらせるのだというふうに理解をいたしましたし、また事業者の方が適当に計算をすれば当然出て来るでございましよう。住宅家賃のある部分を事業者側が負担して実際に計算して出て参りますよりかもつと安く従業者に供給するであろうということも、私は暗黙のうちにこの案の中に入つておるのではないかと思つておるのでございます。もしそういうような方法でもとらなければ、おそらく現在の賃金ベースによつては、労務者の負担に耐えないような形のものにならないとも限らないと思うわけでございまして、先生の私へのお尋ねと私の申し上げたこととは多少違うように思います。むしろ私はその意味でこの案に賛成をするということを申し上げたつもりでございます。
  38. 吉田重明

    吉田参考人 今のお話の通りでございまして、確かに会社の拙宅として失業した人、会社と縁の切れた人に出ていただいて、新しく会社の採用した人にその社宅を使つていただきまして、いわゆる生産力の向上といいますか、ほんとうに生産の第一線に寄与する人たちに有効に使つてもらうということは、もちろん重要なポイントでございます。しかし、そのほかに私の申し上げますのは、組合の中には非常にいろいろな生路の組合があるのでございまして、会社側と協力的な話のわかつた組合もありますし、多くの事業の中には、この家賃がまた賃上げの一つの理由という形になつて転嫁されるということも考えられるわけでございます。ですから、いろいろと雑多な組合の性格、単組の性格とういものによつて、これがどういうふうな形になつて事業主にはね返つて来るかということを、十分考えなければならない問題たと思うのであります。最後の帰結は、やはり事業者に最後の責任はかかつて来ることと思いますが、貸付の対象は、それならばやはり最初から経営者にあることがいいのじやないかということでございます。
  39. 古賀専

    古賀参考人 予算の二十億ということは、私どもが見まして過少だということで、その点を私指摘をいたしたわけです。二十八年度の予算全体の中で、それならばもつとこれが出るというようなことについて、具体的な意見があるかという御質問であつたと思うのでありますが、私考えますのに、今度の産業労働者用の住宅資金に与えた二十億という金額は、どういう面から見ても私どもは少いと思うのです。というのは、たとえば先ほど最初の意見を申し上げるときに申しましたけれども、炭住資金として百五十四億が出ました。これの利息が二十二億あつたはずです。これをたな上げするということさえ先般来新聞で問題にされておるわけです。現在石炭につきましては、各企業の内容はいろいろだと思います。しかし総体的には相当経営内容が好転をいたしておるということは、私どもの総同盟の中にも加盟組合がありますので、十分承知いたしております。そういう事業会社からは利子をとることをやめておいてこの方には二十億しかまわせないということでは、私どもが考えますときに、少し筋が合わないというような気もいたします。  もう一つは、昨年度の分だと思いますが、ここに資料を持つておりませんけれども、予算の不当支出、あるいは公務員の横領費消、こういつたものの総額が三十億に上つております。これらの点が政府によつて厳重に監督せられますならば、それたけのものは必ずしも産業労働者用の住宅資金にまわせとは申しませんけれども、そういう点においてもやはりこれを増額する道は残されておると考えてれるのでございます。もつと総体的に予算全体を検討いたしますならば、今申し上げたような意味におきまして、現在政府が方針とせられております政策の基本的なものをかえなくても、私は十分に運用の面でこれが倍額やあるいは三倍にするくらいのことは、容易であろうと考えておる次第でございまして、この点、先ほど意見を申し上げるときに申し落しましたけれども、これは政府の案が通るようなことになりますならば、補正予算でも組まれるということになりますれば、その際にぜひともそういう面において増額をしていただきたい、こういうように念願をいたしておる次第でございます。  それから第二点の住宅金融公庫の問題でございますが、私は住宅金融公庫については、その選考の上に情実関係があるという風聞を耳にいたしておる、こういうふうに申し上げました。これは別に逃げるわけでもございません、あつさり申し上げて大体そういうことを私どもは耳にいたしております。こういうことは人間が神性に帰らない限り、常にあるところの性質の問題たと考えます。住宅金融公庫だけに限らず、政府の各機関の中にも、あるいは民間の企業会社の中にも、そういうことはしばしばあることでございますので、そういう意味において、これは単に私だけの臆測でなくして、一応新聞紙上などてもやはり取上げられておる事実を私は申し上げる。そういうことを少しでもなくして行くという意味合いにおいて、もつと需要者の代表を入れていただけるならば、そういうことをより少くすることができるのではないか、こういうふうに申し上げたわけです。具体的に言えばといえば、若干ないこともございませんけれども、今申し上げたような意味で、これ以上は申し上げない方がいいだろうと思つております。
  40. 宇田恒

    ○宇田(恒)委員 再び幸島さんに一言お伺いしておきます。御意見によると三千円くらいの償還は現在の産業会社としても、労働者といたしましても、償還ができる程度の金額であるかどうかということについては、どういうふうにお考えになりますか。
  41. 幸島礼吉

    幸島参考人 これは私はできる者もあり、できない者もあると思うのでございまして、現在賃金の差が相当ございます。それから先ほど皆さんからお話のございましたように、中小企業等の場合において、はたして中小企業従業員にそれが負担できるかどうかというようなことも問題がございまして結局この法案がかりに実現いたしまして実施いたしました場合に、貸出しの対象がどういうふうなところなのか。先ほど前田先生からもお話がございまして中小企業の場合には、この資金を借りても家が建つかという問題もございましたが、具体的にはどのような対象に現実に貸付けされるかという問題にかかつて来ると存じます。大企業の場合には、もし給与が低ければ、先ほど吉田さんからもお話がございましたが、あるいは大企業がみずから若干を負担するというような方法を、従来給与住宅においてとられましたように行うだろうと私は想像いたすわけでありまして、皆さんからお話のございましたように、二十億でわずか六千五百戸というのは、ほんとうに焼け石に水という感じでございますが、その結果焼け石に水であつても、ないよりは非常にいいという意味で、私はこの案に賛成をするのであります。
  42. 宇田恒

    ○宇田(恒)委員 幸島さんのお答え、ちよつとはずれたのでございますが、この二十億の予算とか、あるいはその戸数とかいう数字的な問題ではなかつたのでありまして、要は貸付限度五割、あるいは償還の方法等の問題について、妥当であるかどうかということをお伺いしたのでありますが、大体いいのだろうという御意見のように承知いたしました。  その次にもう一言、特に勤労部長をなさつております吉田さんに、実際のお気持をお伺いいたしますが、前田委員意見の中に、やはり住宅自分の家という方が大切にするものだ、気持がいいのだという御意見がございました。ごもつともでありまして、われわれも原則的に同感なのであります。しかしながら、現在の限られた予算で、とりあえず住宅を間に合せて行こうとするためには、やはり会社が所有し、労働者がかわるがわる入るということも予想されるのでございます。古い観念から申しますと、一例をあげてわれわれのいなかの住宅、いわゆる宅地の問題で言いますと、おやじの代までは、どんなに高くても、自分の倉庫を建て家を建てるところの宅地は、自分が所有していなければならぬという考えを持つておつた。それは法律がそうさせたと思うのであります。ところが、最近におきましては、借地権にいたしましても、借家権にいたしましても確立いたしております。蛇足でありますが、現に私はいなかの倉庫の土地は、他の土地所有者のものを借りておる。適当な価格で売つてくれと言いましても、若干高いことを言うから買わぬ。法律がかわつた結果でありましようが、家は借りた方がいいんだという考え方にかわつて来たのであります。特に社会主義的な考えといいますか、そういう立場からお考えになる場合においては、家はだれのものであつても大切にして行かなければならぬ。みなこれはお互いに共用すべきものだという考え方で進まなければならぬと考えておるのでありますが、労働者住宅を提供した場合、労働者自分に所有権を与えなかつたら常にそまつにするものであるかどうか。あるいはこれが会社の住宅であつても、あるいはかりに公営住宅であつても、大切にするというお気持が労働者諸君にあるかどうかということを承りたいと思います。
  43. 吉田重明

    吉田参考人 考は鉱山でありますが、鉱山の社宅はほとんど会社の社宅でございまして、古い言葉でいう坑夫長屋でございますが、六畳、四畳半、三畳ぐらいの部屋でございます。これが自分の専有といいますか、自分の居住といいますか、そういうことになりますと、やはり非常にきれいにするのであります。朝早くから家内、子供が雨戸やなんかを掃除いたしますし、それはやはり労働に関係をしております担当者の指導、教育——教育というとおこがましゆうございますが、指導といいますか、そういうことによつて従業員の気持は、自分は会社から借りておる、他人のものだという以外に、自分が居住しているものだということによつて、保存は決して自分の家とかわらないくらいに丁重に扱います。それから、ただいま宅地の問題がございましたが、会社の家を建てるという場合には、やはり工場敷地なんか相当余裕をとつてございます。自分の敷地に家を建てるということは、相当計画的に組織的に建てることができますし、通勤の便その他からいいましても、非常に効率的な運営ができるだろうというふうに考えられるのであります。
  44. 宇田恒

    ○宇田(恒)委員 最後に古賀さんにもう一言。金融公庫の貸出しについて、その基準をきめる場合において、多少情実があろうというお話がありました。そういううわさもないことはないのでありますが、そういう問題がありますれば、これは日本の刑法で解決しますと同時に、国会におきましては行政監察委員会もあるわけであります。そこで、具体的なことはおつしやらないような口吻でありますが、具体的なことがあつたら、ただの一ぺんのことでもここで御説明願いたい。もしここで御説明ができしないようなことは、お互いにひざつき合せて御相談申し上げるような国会委員会においては、具体的でないことは、日本労働総同盟の名誉のためにお話にならぬ方がいいのではないかと考えるのでありますが、この点についてお答えを願います。
  45. 古賀専

    古賀参考人 私どもは政府におきましてもしばしば疑獄事件が起きたことを承知いたしております。またそのような風聞が新聞紙上をにぎわしておりまして、これは半ば常識として認められております。私どもがそういう一つの風潮、傾向についてこれを批判することは、やはり必要なことだと考えております。もちろん具体性のないことを揮造して申し上げることは、明らかに間違いでございまするし、また場所によつては誕告罪に問われるようなことも起きるかと存じますけれども、今申し上げたような住宅金融公庫の選考基準の上において情実があろうということについては、これは私は半ば常識化しておる問題だろうと思います。それを個々について言えということでございますれば、これはまたしかるべき場所でおつしやれば、私もまた具体的な事実を調査して申し上げることもできるかもしれません。しかし、われわれの立場から、そのような風潮あるいは傾向について警告的な意見を発するということについては、私は何らわが総同盟の権威を傷つけるものではないと考えております。
  46. 宇田恒

    ○宇田(恒)委員 いつまでお伺いしても結論がつかぬわけでありますが、願わくはそうした間違いがあつたら、具体的になるべく早い時期に御報告をお聞かせ願いたいと申し上げて、質問を打切ります。
  47. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 舘林三喜男君。
  48. 舘林三喜男

    ○舘林委員 前の質問者から十分御質問がありましたから、簡単に重複しないように御質問申し上げます。  第一は、お答えは吉田さん・五藤さん、どちらでもけつこうでありますが、結局政府案と社会党の案との一つの違いは、五割の補助するか十割の補助にするかという一点だろうと思います。その点につきまして、事業主の方では、あるいは給与のほかに交通費を補助るとか、いろいろそんなことが行われているようでありますが、住宅費についてどの程度補助が行われているか。もちろん、これは大企業等で、ことに日経連の吉田さんのようなところは、社宅を相当建設しておられると思いますが、しかしそれがすべての勤労者あるいは従業員に対して割振りが足りないという場合には、社宅に入つていない方々に対して、相当程度の、あるいは何割かの住宅費の補助をやつているところが、相当多いかどうか。またこれは五藤さんの方でありますが、中小企業におきましても、少くとも東京あたりではやはりそんな慣例があるかどうかということをまず第一点として伺いたいと思います。
  49. 吉田重明

    吉田参考人 炭鉱関係は、現場の者に社宅を貸しておりますが、これは電燈料とか畳修繕料を徴収する程度で、無料で貸しております。それから通勤者はその付近の半農半工のような連中が通勤して参りますが、社宅を貸与することによつて労働条件の差異がつく場合には、これは現物給与とみなされる関係もありますし、社宅を貸与するといなとにかかわらず条件は一つでございますので、通勤者には全然手当を支給しておりません。それから東京でございますが、これは会社が社宅を持ちまして、課税の対象にならないように、一応公定の家賃といいますか、有料の形で貸与しております。しかし、もちろん一般のものに比べれば相当低額な家賃であります。
  50. 五藤斎三

    ○五藤参考人 都下の中小企業の中における実態を、私のわかる範囲で申し上げます。概念的には、中小企業は、大企業に比べまして資金が非常にきゆうくつでありますので、住宅施策に対して労務者に特別の施策を施しておるというところは、比較的少かろうと存じます。ただ絶無でないことは、これまた事実でございます。私自身の状態を一例として申し上げますならば、東京世田谷にございます従業員わずか三十名内外の工場でございますが、三十名の中で五名は、工場の敷地内及び敷地外にございます所有の家屋に住ませておりまして、無料貸与をいたしております。私の方では、その他の従業員に対しては住宅費を支給はいたしておりませんが、住宅費を多少補給をしておりますような百人未満の企業も、ぼつぼつはあるという事実を存じておるのでございます。多年勤続ということによつて住宅を建てることを援助するというような規定を持つておる工場も、私どもの同じ区内にもございます。私の方といたしましても、現在収容しております五人の勤労者以外にも、それをなるべくならば均霑をさせたい、こういう気持は十分に持つておるのでございます。ただ御指摘のように、中小企業資金の面において十分でないことは事実でございまして、そういう観点からも、先ほど前田先生からいろいろ吉田さんに重ねてお尋ねのありました政府案の融資額の増額ということは、中小企業の中においてはぜひとも望まなければならぬ問題だと存ずるのであります。せめて八割ぐらいの貸与を許されますならば、中小企業の中でも健全経営をいたしておりますものは、順次労務者の住宅の解決に向つて努力を払うであろう、こういうことを申し上げておきたいと存じます。
  51. 舘林三喜男

    ○舘林委員 今のお話で大体わかりましたが、もしできましたら、日経連の方か、あるいは商工協同組合の方で、住宅補助につきましての資料等がありましたならば、あとで委員会に出していただけましたらありがたいと思つております。  それから、その次に古賀さんと参谷さんに、労働組合の問題につきましてお伺いいたしたいと思いますが、先ほど参谷さんでありましたか、労働組合が主体となつていわゆる社会党案のような事業を経営することが、組合の健全な恒久的な発展のために望ましいということをおつしやつたと思います。私も同感であります。ただ、その際、労働組合がそのような事業をやるということは、組合の機能—機能とおつしやいましたか、機能の点から、若干自分としては疑わしい点があるということを拝聴したような気がいたします。私たちもこの社会党案を審議するにあたりまして、一番根本的な理論的な問題として関心を注いでおるのは、まつたくその点であります。はたして労働組合が、労働組合法の二条でありますかに書いてあるような趣旨から申しまして、かような事業をやることが本質的な労働組合趣旨に合致しておるかどうか、これはいろいろ議論があるだろうと思います。そこで私がお伺いしたら、はたして従来労働組合が、かように長期の三十五年にわたるような事業を経営したかどうか。経営しておつたならば、たとえば組合自身がかような住宅建設して、組合員に貸しておるという事実があるかどうか、あるいはそれに似たような、組合内に住宅組合をつくつてやるとかいうような問題、あるい二十年、三十年にわたるような長期的な事業を相当つておられるかどうかということにつきまして、具体的に古賀さんからでもよし、あるいは参谷さんからでもよろしいですから、お伺いしたいと思います。と申しますのは、組合はもとより永続的であり、なお健全であるべきことはもちろんでありますけれども、実際労働組合実情を見ますと、組合員の加入、脱退ということは、まつたく自由であるべきでありますし、また労働組合自身が、いろいろ客観的な社会情勢の変化に応じてあるいは新しく結成され、あるいはこれがつぶれて行くということが、相当事例としてあるのでございます。また総同盟とかあるいは総評の一つの大きな政策から、いろいろ組合の機構についても、根本的な全国的指導というものがかえられることもあろうと思います。その場合に、はたして労働組合自身が主体になつて、政府に対して債務を負うような、しかも長期にわたる事業が経営できるか、はたしてそんなことが労働組合法第二条にふさわしいような事業であるかどうかということにつきまして、実は理論的な問題でありますが、お二人から率直にお聞きしたいとおもつております。
  52. 古賀専

    古賀参考人 労働組合が事業活動を行うということは、労働組合の組織なりあるいは機能という面から、理論的にどうかという御質問であつたと思います。御承知の通り、労働組合はもともと労働力を得るという建前で団結をいたしております。しかしわれわれのこのような運動は、労働力を得る場合における立場をできるだけよくするという考え方と同時に、もつと高い社会的なあるいは倫理性に立つておることも、これは申し上げるまでもありません。そういう観点から、また配給の面、われわれが物を買う面において団結しようとする考え方は、やはり世界的に認められておると思います。それが具体的には生活協同組合運動として、労働組合運動とうらはらの形で今日まで長い歴史を持つてつておると考えております。労働金庫もそのよう考えております。労働金庫もそのような意味の発展にほかならぬと考えております。  それからもう一つは、具体的には、それでは労働組合が事業を経営する能力があるかどうかという点についての御疑問があろうと思います。これも私ども率直に申し上げて、労働組合がいろいろ抽象的な議論をきめます場合に、確かに御疑問をお持ちになるような弱点があることも認めております。しかし、それながらも、事業の性質や規模によつては、労働組合がそれらの事業を十分に成功せしめて来ておる事例は、私が先ほど申し上げました生活協同組合運動の例においてはあるわけでございます。これは野田醤油の生活協同組合、あるいは日立造船の消費組合運動、あるいは神戸市などにおける生活協同組合運動というものは、すべて労働組合運動から派生して発達をいたして参つたところのものであります。住宅問題、ことに吉田参考人の方から言われました運営管理というような点、それから改造、修繕とかいう問題、あるいはその住宅を入つておる労働者が買いとるとかいう問題についても、しばしば組合と経営者の間に、そういうことの折衝等が行われて来ておるのであります。だから、私どもが産業労働者住宅建設対象になるという場合に、労働組合が直接それをやるか、それとも別個の住宅組合をつくるかという議論は残されておると考えるのであります。しかし、それらに対する能力という点については、私は大丈夫やり得るものと考えておるわけであります。御承知の通り、今日の労働組合の場合は、その会社の、たとえば職員級の人が非常にたくさん入つておられます。あるいは営業関係の人も入つておられます。資材関係の人も組合員としておるわけでございます。そういうわけで現在の労働組合の知識というものは、いろいろ御批判はおありでございましようけれども、かなり広い範囲にわたつての実際的な知識も持つておるということを、私は申し上げることができると考えておるわけでございます。  それから、この機会に私に言わせていただきたいのでありますが、一番懸念されておる点は、労働組合対象にした場合には貸付金を踏み倒すじやないかという点だと思います。それを経営者側に言わせれば、結局最後は経営者の責任としておおいかぶさつて来るじやないかという点を御心配なさつておるようです。しかし、このことにつきましては、労働者だけが政府の金を食いつぶしたり踏み倒したりするということは、労働組合の立場から申し上げて少し片手落ちじやないか、かように考えるのです。相当政府資金を食いつぶしたものがたくさんあるわけでございまして、むしろその方が額からいえば厖大です。先ほど宇田先生の御質問のときに私が申しましたように、炭住資金の二十二億の利子さえたな上げしようという議論が多いのですから、今度は二十億みな貸しても、このうち幾ら労働者が踏み倒すかということになれば、これはたかの知れた額ですから、この程度のことは国家として当然考慮に入れておられても、別段問題にされるほどのものじやない、かように考えております。こういう点で、労働組合についてもいろいろ御批判がおありだと思いますけれども、今申し上げたような意味合いにおいて、なるべく健全な形に、そうして社会的な一つの信頼感を得るようにしたいということで、われわれも努力はいたしておるわけでございますから、そういう意味合いにおきまして、どうぞ何分の御配慮を願いたいと考えておるわけです。
  53. 舘林三喜男

    ○舘林委員 古賀さんのお話によりますと、まるで組合が踏み倒してもいいということを前提として言つておられるのですが、そんな趣旨ではないだろうと思います。  率直にあと一つ御質問申し上げたいと思います。社会党案の十割です。かりに事業者が全然負担しないという抽象的な考え方として御質問申し上げますが、実際十割のものということになつて来ますと、鉄筋コンクリートの場合には月に五千五百円と、事務当局から説明しておりますし、木造の場合には十三坪で三千二百円、こんなものを組合自身が実際毎月々々支払つて行けるかどうか。あなたの言つたように、初めから踏み倒すのだということでは困りますけれども、組合の現在の財政状況からいつて、はたしてこれが可能であるかどうかということにつきまして、聞かしていただきたいと思います。
  54. 古賀専

    古賀参考人 私の申し上げたことを誤解されると困りますから、先に訂正をいたしておきます。われわれは国民の納入いたしました貴重な税金を踏み倒すという気は毛頭ございません。そういう懸念をされることに、若干片手落ちがおありじやないかということを指摘いたしましたが、またこれは率直に申し上げて、私は全然そういうものはないということは断言できないと思います。むしろ不可抗力として、当然また認めていただける性質のものは起きる場合があると思います。天災とか地変とか、そういう意味で、絶対ないというようなことをここでつつぱつてみたところで意味のないことだと考えておるわけでございます。私が申し上げておる趣旨は、決して踏み倒すということを前提にしての議論ではなくて、そのこと自体に議論されることが、少し片手落ちがあるのではないかということでありますから、その点を御了承願いたいと思います。  社会党案で十割ときまつた場合に、十割ということになつたら、それを払う能力があるかどうかという現在の財政状態の問題でございますけれども、これは率直に申し上げまして、先ほど吉田さんからも御指摘になつておりましたが、かりに二十億で六千五百戸を建てられる場合に、公平にやつていただきたいということで、他の参考人もいわれましたけれども、われわれもそれを希望いたしますけれども、結果的に見ますれば、組合の組織の実情からいたしましても、かなり大都会中心、それから大企業中心になるという事実は、これは私どもの希望のいかんにかかわらず、予測できる問題だと考えておるわけでございます。そのような大企業の労働組合の場合でございますれば、一事業場の大体数千人程度の組合でございましても、今日億近い金を持つているところもございます。もちろんこれがすべてではございませんが、そのような非常に多くの預金を持つているところがございます。御承知の通り、それは労働金庫などに現在集まつている金額をごらん願えば御想像つきます通りに、千葉にいたしましてもあるいは兵庫にいたしましても、預金がが一億を突破しておるという事例はたくさんあるわけでございまして、これは大体今申し上げた大企業の組合が中心に預金をいたしております。その組合の預金は、決して全部労働金庫に集中はいたしておりません。むしろこれは、組合側もいろいろ危険分散の意味から、一般の銀行にも—むしろその方に多額の預金をいたしておるというのが実情でございます。先ほど私がちよつと例を引きました神戸の三菱造船所におきましても、千代田銀行には定期として二千万円か三千万円は持つておるわけでございまして、そういう点でこれは総体的な議論と思いますけれども、われわれの側から言わせるならば、先ほどのお話とも関連をいたしまして決して無謀な—われわれはもともと政府融資を踏み倒すのだという考え方には毛頭立つておらぬわけでございますから、そういう点に立ちますならば、十分に資力等を考慮いたしまして、現実には計画を進めて参るということになります。また会社が全然これにタッチなしに、労働組合だけでやるということには実際上はならぬと考えますので、そういう点の御疑念は、私はあまりないのではないかというふうに考えておるわけでございます。いろいろ御質問がございますけれども、先ほどちよつと申し上げましたように、この問題につきまして意見を述べろということについて私どもが連絡を受けました場合、私の場合は特に別でございますが、昨日でございますけれども、そういう意味で十分に私どもの方ももつと資料を豊富にそろえて来て、また十分の時間をいただいていろいろ申し上げる機会がないので残念に思つております。これは別の機会でもつくつていただけば、またそういう点について十分御納得の行くような御説明もいたしたいと考えておる次第でございます。
  55. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 志村茂治君。
  56. 志村茂治

    ○志村委員 最初に吉田さんにお尋ねいたしますが、修正点の第一ですか、多少少くなつても貸付限度を上げてくれ、こういうようなお話でございます。これはもちろん政府も、資金貸付の範囲の第一の事業者で、その事業に使用する産業労働者に対し貸付ける、それから個々の目的としまして、つくりたいけれども、金がそれだけの準備がないところに貸したい。言いかえれば、中小企業の方によけい貸したいという趣旨を織り込んで、なるべく比率的によけい貸してくれという御意見だろうと私は推察いたします。もちろん資金は多々ますます弁ずるわけで、中小企業の方がそういう希望が特に痛切であるということでありますから、そういうことをお考えになつたんだろうと思いますが、今の住宅資金の絶対的に不足という状態におきましては、金融公庫を通じて貸付ける場合、本来臆病な資金は、同じような条件で貸付ける場合には、どうしても回収の確実な方面に資金が流れるということは当然だと考えるのです。その場合にはやはり大企業に資金が行く。結局結論としては、大企業によけいな資金が流れるという結果になりまして、あなたの希望される点とは、少し違う結果になるのではないかと思うのですが、その点をお伺いしたいと思います。  それから次に五藤さんにお尋ねしたいのですが、先ほど、ひもつき債券などもけつこうだというお話ですが、その社債を買う—経営者に債券を買わせて、そうしてその経営者の使つておる労働者住宅をつくつてやるんだというひもつきならば、これも一つの資金増資計画としてけつこうなんだ、こういうお話です。これも一応考えられますことは、社宅をつくる場合は、もちろん資金を出してもらうのですが、それがひもつきで相当金額の社債が募集できるお見込みがあるかどうか、これをひとつお尋ねしたい。  それからもう一つ古賀さんにお尋ねしたいのですが、一〇〇%政府が貸しつけるということになりますと、本来非常に少い、不足しておる住宅が一軒でもよけい建てたいのでずが、一〇〇%貸しつければ、結局半分しか住宅ができないということになると考えますが。この点いかがですか、お尋ねいたします。
  57. 吉田重明

    吉田参考人 ただいま御質問の件でございますが、もちろん大手の大きな会社に、資金の回収が確実という点から行くと、そういう姿になるのじやなかろうかと思うのでございますが、中小でも相当基礎のはつきりした、製品の回収なりいろいろな面から行きまして、資金繰りの点から言つて、六千五百戸が建ち上つて—ある程度減りまして、あるいはこれが五割になりましても、六千五百戸程度のものならば、中小にも相当償還能力のあるりつぱな借手があるのではないかと思うのでありまして、実際問題として大手がこの六千五百戸の均霑にあずかる機会はなかなか少いのじやないかと思うのでございます。結局自力で行くということが多いのじやなかろうかと思つております。
  58. 五藤斎三

    ○五藤参考人 私がひもつきの債券を買わせたらいいという説もあるということを申し上げましたが、これは今お尋ねがありましたように、この住宅建設促進法に盛られておるような資金にするということではなく、住宅問題解決の一般論といたしまして、公庫住宅の入居資格を得るような場合に、そういうふうな施策をいたしますならば、入居者の中からも若干の資金を集めることができるだろう、こういう意見をお取次ぎ申し上げたわけであります。ただ、今お尋ねのありましたような、この法案に盛られております住宅建設に対しましてこれの借受け事業者に債券を応募させたらどうか、こういうことももちろん考えられると思うのでありまして、その場合にそれができるかできぬかというお尋ねでございますが、私は相当できる見込みはある、こう申し上げたいと存じます。と申しますことは、一例を申し上げますならば、御承知の通り団結の力をもつて大企業に対抗いたしております小小企業の団体でありまする協同組合、その協同組合の組織、中小企業者の系統金融機関であります商工中金の出資金が、中企業以下の零細企業の団体から十億円以上の出資がせられております。そしてこれらの歩積みその他の預金といつたようなものは、さらにその数倍を算しておるのであります。もつとも御承知の通りこれは政府資金を主といたしまして、三百四十四億の貸出しを昨年度末においてやつておるのでありますが、そういつたふうに反対給付があるということによりまして、中小企業者もできるだけの積立てをやる、こういう事実はすでに現われておるのでありまして、住宅の解決に対しまして、こういう方法をとるならば資金が出るのだ、こういうことになりますならば、相当可能性はあると考えるのでございます。
  59. 古賀専

    古賀参考人 志村先生の御指摘の通りだと思います。そこで私どもとしましては、予算を増額して戸数をふやしていただきたいと考えておるわけであります。
  60. 高木松吉

    ○高木(松)委員長代理 他に御質疑がなければ、質疑はこれで終了いたします。  本日は参考人の方々には、長時間にわたり、きわめて御熱心に、かつ有益なる御意見をお述べくたさいましたことは、今後の法律案審査の上にきわめて参考になるものが多いのでございます。参考人の各位に厚くお礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時四十五分散会