○齋藤
参考人 第一に、二十五年度の静岡県の
地方財政平衡交付金の
決定に対します
錯誤について御
説明を申し上げたいと思います。
静岡県の
昭和二十五年度の
地方財政平衡交付金の額の算定の基礎となりました、基礎数の
錯誤につきましては、基準
財政需要額において五百四十五万四千円の過大の算定があり、基準
財政収入額において一千百十万六千円の過小算定があつたのであります。
平衡交付金法第十九条によりまして、
昭和二十六年度の
平衡交付金決定の際に、それぞれ需要額または収入額に増減を行いまして、合計千六百五十六万円の減額をいたしたのであります。
この
錯誤はどうして生じたかという理由でありますが、
昭和二十五年度の
平衡交付金の算定につきましては、
平衡交付金制度がこの年に初めて創設されたのでありまして、第一年度でもあり、事務担当に従事した職員の事務のふなれなため、きわめて複雑精緻な
計算過程におきまして犯した
計算上の
錯誤であつたのであります。すなわち静岡県の
財政基準需要額の五百四十五万円の
錯誤は、補正計数の
計算上の誤りであつたのでございます。なお基準
財政収入額の千百十万六千円の
錯誤につきましては、法人の事業税の算出
方法でありまする
昭和二十四年度分法人税の課税の基礎と
なつた所得額の統計数値の誤りと、遊興飲食税におきまして、法人飲食店の許可数において、台帳と異な
つておる報告をいたした結果でありまして、その訂正が行われて事業税において七千六十六万九千円の過小算定、遊興飲食税におきまして六千五十万四千円の過大の算定がありました。あるいはまた入場税におきまする調定実績の確定に伴う九十四万一千円の過小算定がありました。合せて差引一千百十万六千円という過小算定をする結果と
なつたのであります。この
錯誤は二十六年度の十一月
地方財政委員会より、
会計検査院の
実地検査の結果として千七百七十七万七千円の
錯誤があつたのでありますが、具体的な計数をとりまとめて
意見を申し出るようにという通牒があつたので、県におきまして慎重に再
調査の結果、終局的にただいま申し上げました千六百五十六万円の減額が翌二十六年度において行われたのであります。これはまつたく計数技術的な誤りであつたことを申し上げておきます。
なおこれに関連いたしまして、
平衡交付金のことにつきまして一言附加させていただきたいと存じます。大局的な見方におきまする
平衡交付金あるいは
地方財政につきまする
実情は、
茨城県知事から申し上げたのでありますが、私は少しく
平衡交付金の内容にわた
つてお聞き取りを願いたいと思うのであります。それは本制度の是非と税制全体の問題でありますが、これはしばらく
あとにまわしまして、
平衡交付金が現実の
地方財政をまかなう上において、客観的なものではあるけれ
ども、きわめて合理的ではないという点を申し上げたいと存じます。それは
茨城県知事からも申し上げたのでありますが、
平衡交付金の算定の総額というものが、国の
財政の
予算措置に合せてきめられるようなきらいがある。基準
財政需要額においても、そうした傾向があるというようにわれわれは
感じているのであります。それは基準
財政収入額においては過大に見積られる、一面また基準
財政需要額は、最小限度の義務的な
経費に充てる程度に算定せられているということであります。従いまして今後
平衡交付金の
予算の
決定にあたりましては、
平衡交付金法第三条にうた
つてありまする
通り、合理的に
決定していただきたい、かように存ずるものであります。
これを内容について少しく申し上げますならば、特に本静岡県の
財政状況等を申し上げながら、
改善すべき点について申し上げまするならば、静岡県におきまする
平衡交付金は、
昭和二十五年度におきましては、ほぼ県税と同額である歳入全体の二六考を占めているのでありますが、二十六年度におきましては、府県税の伸びが比較的よかつたために、全体の一九%を占めているのであります。従いまして現在の経済
事情をも
つていたしますれば、おおむね県歳入の二割は
平衡交付金によ
つてまかな
つて行くという
状況にあるのであります。府県全体をながめまして、県税の方が
平衡交付金よりも多いという府県は十指を数える程度にとどま
つているのであります。
平衡交付金がほとんど府県税の数倍である、ないしは
平衡交付金の方が県税総額よりもはるかに多いという府県が三十府県以上に上
つておる。
茨城県知事の申し上げました
通り、まつたく
地方財政は国に依存しているという形をと
つている。静岡県のごとく府県税の方が交付金に対して優位の
状況にある、こうした県におきましては基準
財政需要額が内容的に充実して
計算されておりませんと、
税金が
財政需要額に充当されるという建前をと
つている
平衡交付金制度のもとにおきましては、県民、住民の希望する高度の質のよい行政というものはできないというように
考えられるのであります。過去の
平衡交付金制度の実績を見ましても、
平衡交付金は、土木行政とかあるいは産業行政等につきましては、きわめて消極的な
態度をと
つている。言葉をかえて申し上げますれば、行政の質の面に対する考慮がほとんど払われておらぬ。従いまして税源のある県もやがて税源を失
つて行くというような
状況になるのではないか、かように
考えるのであります。
基準
財政需要額の算定の基礎となりまする二、三の例を申し上げますと、土木費の道路費等を取上げましても、基準
財政需要額の交付の額を
決算する基礎は、二十六年度におきましては、静岡県において六千二百二十万円あればいいという算定であります。二十七年度におきましても、六千五百万円程度、かように
決定されているのでありますが、事実は静岡県におきましては道路に二億四千万円の
経費を使
つている。二十七年度におきましても二億九千万円を要しているのでありまして、交付金の需要額を一億八千万あるいは二億一千万円とはるかに多額に県は支出をいたしている。土木費全体にいたしましても県がこれに附加して事業をいたします部分が四億七千万円にも達している。かような
状況にあるのでありまして、これを結論しますれば、
平衡交付金に算定されました需要額は土木費におきましては、二十六年度においても四二%しか見積りされておらぬ。教育費にいたしましても、交付金の需要額の
決定は七千二百万円、二十七年度においては七千七百万円に算定されいるのでありますが、県が一般財源から支出いたしております教育費につきましても、人件費を除いて二億三千万円これに附加して
経費を計上している。かような
状況であります。
もつと極端な例を申し上げますれば、産業経済費等につきましては端的に私は交付金の盲点が現われているのじやないか。それは
昭和二十六年度に静岡県に基準
財政需要額として
決定された額が二百万円、二十七年度に三百七十九万円、特に産業の商工行政に基準
財政需要額が
決定されているのでありますが、県におきましては二十六年度におきましても九千二百万円これに附加している。あるいは二十七年度におきましても九千九百万円これに附加している。かように交付金の
財政需要は各県の実支出に対しまして、その税収の十分の七をはるかに上まわ
つているのであります。これは交付金法の精神から見ますれば、当然国が交付金として見るべきものであるにもかかわらず、交付金総額を一方的妊
決定するために、やむを得ず過小算定をして行かなければならぬ、こういうふうな私は現象にな
つていると
考えるのであります。交付金におきましては、投資的事業はその耐用年数等を
考えて起債を予想しているのでありますが、その起債もまた一方的な国の
財政需要によ
つて決定される。
従つてきわめて制限されている府県におきましては、公共事業さえすれば他には県担当の仕事というものは一切しなくてもよいというような建前に、極端に申せばな
つている現象であります。これは何と言いましても
是正しなければならない大きな交付金制度の誤りであり、これに関連いたしまして、根本的には税制そのものの再検討をこの際必要とするのではないか、かように
考えております。
地方財政の不足はただいま申し上げた
通りでありまして、本年度はきわめて深刻である。静岡県におきましては、二十五年、二十六年は比較的経済界の好況に恵まれまして安定した
財政をたど
つて参つたのであります。私は
全国の府県中においても静岡県は二十五年度、二十六年度は比較的安定した
財政であつたと
考えるのでありますが、二十七年度はまつたく危機に逢着してしまつた、かように
考えております。交付金制度そのものは大きな利点を持つものでありますが、ぜひとも
地方財源を付与するという税の建前をここに打ち立てていただきたい。しかしながら極端に
地方の財源を付与するという行き方は、府県間の財源の不均衡を来すおそれもあるのでありまして、税政の改革と並行して
地方財源付与の均衡化をはかるためにごの制度が補完的に必要ではないかというふうに
考えております。
なお国庫
補助金その他の制度もこれに関連する制度でありますが、私
ども地方財政を管理いたしまする立場からいたしますれば、
補助金制度というものは原則的には廃止していいのじやないか。しかし国家的な必要により、国家的な見地で奨励すべき事業に対しては、臨時的な国庫
補助金という制度は残しても、全体としてはむしろ
地方に財源を持たせるという
やり方をや
つて行かなければならぬ。道路につきましても、一時間通行量三千台を数える道路と、百台、二百台の道路を同様に論じられたり、また産業行政におきましても、私
ども静岡県におきましては先ほど申し上げました
通り、商工業
関係者一人当り四十円という見当であります。これをも
つて府県の商工行政に何の施策ができるか、かように
考えておるのであります。
簡単でありまするが、
錯誤と
平衡交付金制度に対しまする一応の私の見解を申し上げた次第でございます。