○
窪谷政府委員 まず
警察予備隊の二十五年度の
決算の概要をごくかいつまんで申し上げたいと思いますが、
警察予備隊の二十五年度の
経費は
警察予備隊令の附則の第二項によりまして、
一般会計の国債費から二百億円を移用いたしまして、二十五年度の必要
経費といたしたわけであります。従いまして二十五年度には国会の
予算として成立をいたしたものはないのでございまして、
法律に
かわりますいわゆるポツダム政令によりまして、国債費から二百億円を移用いたした次第でございます。そのうち
支出をいたしました
金額が百三十二億円余、
警察予備隊令の附則第三項の規定によりまして、これは繰越しができるということにな
つておりますが、それに基きまして翌年度に繰越しました
金額が六十七億七千余万円でございました。不用になりました金が二千余万円でございました。創設の当初におきましては、経理その他の
機構が無整備のために、その業務の一部を
警察予備隊令に基きまして、
国家地方警察に委任をいたしたのであります。
国家地方警察におきましては、同年度十九億九千余万円を
支出いたしておる次第でございます。なお営繕の工事につきましては、小さな補修の工事を除きまして、ほとんどすべて建設省に
支出の委任をいたしたのであります。二十五年度に六億二千余万円を
支出いたしました。二十八億九千余万円を翌年度に繰越しをいたしておる次第であります。
次に
支出済みのおもなるものについて概要を申し上げますと、七万五千人の隊員の募集
経費が三億一千万円でございます。個人の被服及び装具が四十六億円、ベッドその他寝具類が十四億円、車両が十八億五千万円、通信機械が五億八千万円、衛生資材が一億三千万円、各種の机、いすその他を含めました需品類と工具類が約十七億円、合計百二億六千万円を
使用いたしたのであります。なお施設につきましては、七万五千人を非常に取急いで収容しなければなりませんでした
関係から、営舎の施設の獲得は最も急を要したのであります。非常に困難をきわめたのでありますが、一部は当時の進駐軍の好意によりまして、アメリカ軍が接収をいたしておりましたキャンプを利用いたしますとともに、他は国有財産でありました旧軍の施設でありますとか、あるいはまた若干民有の元の工場跡を応急に修理いたしまして利用いたしましたほか、さらに恒久の施設として四つの管区総監部をそれぞれ
東京の練馬、北海道の札幌、兵庫の伊丹、福岡県の福岡市に設置いたしました。また秋田、青森、函館に営舎を新設することといたしまして、その工事に着手いたしましたのであります。その金を四管区総監部に十六億九千万円、新設の三営舎に四億七千万円、既存の施設の応急修理費に十一億四千万円
使用いたしたのであります。以上のほか、隊員に対します給与でありますとか、あるいはまた現物で支給いたします食事の代金あるいは旅費、その他事務運営に必要な経営費で五十五億円を
使用いたしたのであります。
警察予備隊は、先ほど申し上げましたように、二十五年の八月十日の予備隊令の公布即日から隊員の募集を始めまして、公布をいたしました十数日の後、すなわち八月二十三日にはすでにもう隊員が集合いたすというふうな、非常に取急いだ募集をいたしたのであります。これの受入態勢には非常に苦労いたしたのでありまして、当時の
国家地方警察には多大の御援助と御協力とをいただきまして
警察予備隊の幹部が充実いたします間ま
つたくそれの御高配にあずか
つた次第であります。そういうふうに創設の当時、幹部の数は少い、しかも経験者も少いというふうな
状況でございまして、会計その他の経理につきましては、非常に困難な
事態に遭遇いたしたのであります。今回
会計検査院からも批難の指摘を受けておりまして、非常に恐縮に存じておる次第でありますが、当時の
一般的な
概況はそういう
状況でございます。
次に、各
事項につき一まして概略を御
説明いたしたいと思います。
事項の第七番目の問題でございますが、これは
警察予備隊創設の初期に、第二管区総監部を北海道の札幌に置いてお
つたのでありますが、第二管区総監部内に起
つた犯罪でありまして、
会計検査院が御
報告をされておる
通りでありまして、まことに私
どもも残念に思
つておる次第でございます。この
原因を
考えてみますと、当時創設早々の際におきまして、隊員の採用又びその採用した
人間をどの職につけるかということにつきまして、相当取急いで事を処理いたしましたために、本人の性格でありますとか、その他の調査が十分にできなか
つたということが一点であろうと思います。なお
内部統制の制度も、創立早々の際でございまして確立をしておらなか
つたということ、それから会計の知識経験を有します有能な幹部の数が非常に少か
つたために、十分部内において
審議を尽さないで業務を進めてお
つたということが
原因であ
つたと
考えられるのであります。当時一等警察士でありました斎藤某につきましては、
昭和二十六年六月二十三日に起訴がございまして、越えて二十七年三月
懲役二年六箇月の一審の
判決があ
つたのでありますが、本人はさらに現在控訴中の模様でございます。
警察予備隊におきましては、二十六年七月二十日付で本人を
懲戒免職にいたしたのであります。この本人を監督いたします監督上の
責任者でありました第二管区総監部の総監、それから同総監部の幕僚長に対しましては、戒告をいたしたのであります。なお直接の監督
責任者でございました同総監部の会計課長につきましては減俸—俸給の百分の十を一箇月減俸いたしたのでございますが、減俸の
懲戒処分をいたしたのでございます。なお
国損金が九十四万三千四百十円あるのでございますが、この回収につきましては、賠償請求の訴訟を提起いたしますとともに、できる限り回収の措置を講じておりますが、はなはだ残念ながらまだ回収することができないで今日に至
つておる
状況でございます。その後
警察予備隊におきましては、こういうふうな部内の
不正行為、不当な経理を
防止いたしますために、それぞれ各管区総管部の中に、事実上の問題といたしまして、監督要員を置いてしばらくそれでや
つて参
つたのでありますが、なかなかどうもうまく
仕事が運びません。それで当時は七万五千人でありますから、七万五千人の定員から、非常にきゆうくつな中を人員を引抜きまして、
内部監査の
機構をつく
つたのでございます。これは
全国を通じて
一つの隊でありますが、監査隊というものをつく
つたのであります。これは幕僚長に直属いたす機関——各管区総監部に駐在はいたしておりますけれ
ども、それは幕僚長の直属の機関として、管区総監の指揮命令を受けないで、独立の立場から
地方におきます会計その他いろいろな監査に当る組織をつく
つたのでありまして、その要員の訓練等にも特に意を用い、
中央に集めまして何回かの講習その他の訓練をいたしまして、現在配置について成績をあげているように
考えている次第であります。こういう
事件の絶無をできるだけ期して、
内部におきます監査もや
つて行く
考えでおる次第であります。
次は第八番の
事項でございます。スキー具の購入に当りまして不注意の結果出て参
つたものであります。その
一つは、税率がかわ
つておりますのにもかかわらず、それに気がつかないで、旧税率で
物品税を支払
つたという
事件でございます。これは、当時緊急に調達をいたしましたために、その税率の変更についての調査が不行届きでありまして、非常に恐縮な
事態が起
つたのでありますが、過払いになりました
物品税につきましては、それぞれ
昭和二十六年十一月の二十九日に、内外通商株式会社というのから十六万百二十八円それから二十七年の二月の二日に至りまして、株式会社
日本屋から七万五十六円、さらに二十七年の一月三十日に株式会社中島というところから七万五十六円というものを回収をいたしました。過払いになりました
物品税は、全部今日においては回収をいたしまして、処置を完了いたした次第でございます。
次にスキーのつえの購入でございますが、これはスキーの本体のもののほかに、スキーのつえを若干と申しますか、千五百組を購入をいたしたのでございますが、スキーのつえは、すでにスキーと同数だけ購入を実はいたしてお
つたのでございますけれ
ども、その後また千五百組を購入いたしたのでありますが、これは
使用者が初めてのものが多いために、相当破損が多いであろうということを予想をいたしまして、購入をいたしたのであります。これは単純にからだだけで乗つかるものではございませんで、背嚢でありますとか、その他の装具をつけてスキーをはいて訓練をいたしますために、スキーのつえの損傷が相当多かろうということから購入をいたしたのであります。なお
使用の実績等を検討いたしました上で購入をしてもさしつかえなか
つたことかと思うのであります。若干処置よろしきを得ないというふうに
考えておりますが、だんだん経験を積みまして、将来どの程度に準備をして行けばいいかということの
参考にいたしたいというふうに
考えておる次第でございます。
次に第九は、エチルアルコールを買
つた事件でございまして、これも
会計検査院で御
報告がありました
通りでありまして、当時緊急調達の必要がありましたのと、調達
機構が、先ほど申しましたように、まだ十分整備しておりませんために、業務に精通した幹部も少く、また非常にたくさんの
物品の購入に忙殺をされまして、十分な価格の検討が行えなか
つたということによるものだと
考える次第であります。その後の購入につきましては、いろいろ調査をいたしまして、価格を引下げて購入をいたしておりますことは、
検査院の
検査報告の
通りでございます。
それから、次の十番目の
事項でございますが、これは
昭和二十六年の一月二十五日に総隊総監部の被服係が中川メリヤス株式会社というものに対して、腕章の見本の作成を依頼をいたしたのであります。ところが業者におきましては、これを発注と勘違いをいたしまして、相当量の現品を作製をいたしまして、二月の十二日、十六日の両日に納入をいたしたものでございます。これにつきまして、
物品の検収係は、成規の手続による契約ではないために、当然その検収を拒否したのであります。現品を引取るように業者に命じたのであります。ところが二月の末ごろになりまして、営内の保安の任務に服します
警察予備隊員に、保安腕章を緊急に着用させて警戒を厳重にする必要のある
事態が起
つて参りましたので、たまたまさきに納めておりました中川メリヤスの腕章が転用できるという
状況になりまして、これを
使用することにいたしまして、三月の八日に契約を結び、翌九日現品の検収を実施したのであります。この保安腕章の現品は、理想的な規格から申しますと、若干適合はしない点があ
つたのでございますが、
使用にはさしつかえもございませんでしたし、また価格もほかの業者の見積りの価格をとりましたところ、こちらの方がより安いというふうなことと、
一般の市価に比べても大体いいところであろうというふうに
考えまして、購入をいたしたものでございます。右に申しましたように、緊急調達の必要からとは申しながら、成規の手続によらないで便宜的な措置によ
つて購入をいたしましたことは、適当な措置とは
考えられないのでありまして、将来は十分注意をいたして行きたいと
考えております。
それから次の十一の
事項は、くつの機械であります。くつの機械の一部であります縫付機と、それから本底回り仕上機というものを購入をいたした件でございますが、これはくつの製造並びに修理用として、底革打抜機等々とともに調達の計画を立てましたものの一部でございまして、
予算の
関係からとりあえず縫付機と仕上機だけを購入いたしたものでございます。
検査院が
検査をされました当時は、まだ利用の段階には至
つておらなか
つたのでございますが、その後要員の養成をいたしますとともに、宇治にございます補給廠の重要施設の
一つでありますくつの修理工場の設備として、現在は活用をいたしております。さような次第でございますので、御了承を賜わりたいと思います。
次の第十二番目は、庫移補償費の
事件でございます。これは第一管区総監部の建設に
関係をいたすものでございます。
警察予備隊ができました当時におきましては、とにかく既設の施設等を利用をして、さしあたり隊員を入れるということで参
つたのでございます。従
つて地方におきます指揮をいたします中心地となるべき管区総監部等も、まだ編成は十分にはできておらなか
つたという
状況でございますが、こういう
状況では相なりませんので、早急に管区総監部だけはしつかりしたものをつく
つて、指揮と統率とが乱れないようにという配慮から、各地に管区総監部を設置をいたしたのでございます。この第一管区総監部も、練馬に建設をいたしたのでございますが、練馬に決定をいたしますまでに、
東京都を中心にいたしまして、いろいろ候補地なり既設の施設なりを調査をいたしたのでございまして、その調査に相当の日数を要しまして、いよいよ練馬に位置をきめるということになりますまでに、相当の遅延をいたして参りましたために、その後の
仕事を非常に取急いで進める必要があ
つたのでございます。
土地そのものはこれは民有地でございまして。昔陸軍の倉庫地帯でございました。旧陸軍が
土地を借り上げまして、その上に国の
経費で倉庫を建設いたした地帯でございます。
土地につきましては、これを買収をいたしたのでございますが、上の
建物につきましては、国有財産でございます。ここに
関係をいたしております二つの倉庫会社が当時の管理の
責任者でございます
東京財務局から、一時
使用の承認を受けて倉庫業務を営んでお
つたものでございます。一時
使用ではございますが、当事者の
考えと申しますか、内約といたしましては、将来それが払下げができる
状況になりました場合には、払下げを受けるという黙契のもとに営業いたしてお
つた次第でございます。ところが管区総監部をここに建設をいたしますためには、その倉庫の立ちのきの必要があ
つたのでございます。当時倉庫業務を営んでおりましたものに対しまして、急遽その
建物を立ちのき、中にある品物をよそに移すようにという必要が出て参
つたのであります。
警察予備隊の必要から、業者としては必要のないにもかかわらず、出費をかけて荷物の搬出をしなければならないという
状況でございましたので、これの
経費を補償してやるということは、社会通念上やむを得ないというふうに
考えて、補償をいたしたしだいであります。ところがその後になりまして、
会計検査院の方で御調査になりましたところ、倉庫業者としては全然
経費を負担しておらない。その倉庫に荷物を寄託をいたしております者が、
自分の負担で荷物を運び出しておる。従
つて荷物の移転費を補償したのは、事実のないものについて補償をしたのではないかという御指摘であるわけでありますが、
警察予備隊といたしましては、
警察予備隊の必要によ
つて、倉庫の中にある荷物の搬出をしなければならぬということにな
つたのであります。業者としてはま
つたく予期せざる
事態でございまして、特別の
経費を要するのでありまして、この
経費を補償するのが適当であるというふうに判定をいたしたのでございます。なお倉庫業者が
経費を実は負担しないで、寄託者が
経費を負担して出したということでございますが、これは倉庫業者と荷物を寄託しております荷主との間の取引の問題でございまして、
警察予備隊としては、そこまでの民間の取引の内容にまで立入ることはできないのでございまして、やむを得ず倉庫業者との間に補償の契約を結び、現実に倉庫の中から荷物が搬出されたことを確認をいたしまして、その支払いをいたしたのでございます。それから先のことは
警察予備隊としては介入ができないというふうに
考えておる次第でございます。
警察予備隊としては、社会通念上当然の補償をしたものであるというふうに
考えておる次第でございます。大体概略の
説明をこれで終らせていただきたいと思います。