○
横田政府委員 この制度を今度
規定いたしました趣旨を簡単に申し上げたいと存じます。この制度は大体小売業者の正当な利潤を保障して、やろうということが主眼であります。なるほどそれに関連いたしまして、メーカーが自分の商品について持つ
一つの
立場を保護するという面も出て参りますが、主としてねらいは小さな小売業者の保護ということになるのでございます。これはすでにお聞き及びかと存ますじが、アメリカで非常に論議されて、結局において現在なお維持せられておる
一つの制度でありましてこれは小売業が非常に乱暴な売り方をいたしまして、ことに有名品をおとりに使い、これを非常に安く売ることによりまして、他の商品も非常に安いものであるかのごとき錯覚を
一般消費者に与えるという、いわゆるおとり販売というようなことが非常に行われることになるわけでございます。ことに大きなデパート等においてそういうことが行われますと、その定価によ
つて普通に売
つております小売業者に非常な影響を及ぼすものでございます。こうなりますと、その他の小売業者もできる限り安く、あるいはもう利潤を無視しましてもこれを売りに出す。こうなると、
一つの値下げ
競争というようなことになりまして、非常な混乱に陥るわけでございます。これはなるほど
消費者の
立場からいいますと、
一つの同じ種類の歯みがきなりあるいは化粧石けんなりその他の日用品について、ある店で定価以下に買えるということはある
意味においての利益ではございますが、そうなりますと、結局定価で売
つている店は何か非常に暴利をむさぼ
つておるような感を抱かせまして、これが
先ほど申しましたように、だんだん値下げ
競争ということに陥り、その結果、小売商も営利
事業としてや
つております以上は、そこに適正な利潤がなければならぬ、それをも割
つて無理をして売るという結果になります。一方メーカーの側から申しますと、そういうことになりますと、その商品はいかにも内容が粗悪なものであるというような印象を与えます。メーカーとしましては、その商品が有名品であればあるほど、その商品について自信を持ち、それにふさわしい定価をつけてこれを市場に出しておるわけでございますから、そういうあらぬ疑いのもとに、その商品の品質なり何なりについて、
一般の
消費者に疑惑を持たれるということは、非常に迷惑ではないか、こういうような
観点からいたしまして、メーカーが自信を持
つてつけました定価については、小売業者もこれを守
つて、お互いに無理な
競争をしないということが、この再販売価格維持の
契約を認めるおもな理由でございます。なおそうなれば、やたらに高い定価をつけてそれに縛られることは、
消費者の利益を害するのではないかということにもなりましようが、しかしここにはいろいろの要件がありまして、たとえばその
契約内容が
消費者の利益を害してはならぬ、あるいは同種の商品がほかにたくさんありまして、その間に有効な
競争が行われておるというような
前提のもとに、初めてこの再販売価格維持
契約を認めて参ろうというわけでございます。
従つて消費者の側からいいますれば、なるほど
一つの商品についてできるだけ安く買うということも
一つの利益ではございますが、他に有効な
競争がございますれば、当然もつと安い商品を買うことができるわけでございますから、この点は
消費者の利益に多少の
関係はございましても、やはり小売業の適正な
取引を
確保いたしますためには、大乗的な見地に立ちますと、ここに掲げてございますような特殊のものにつきましては、再販売価格を維持させることがむしろ妥当ではないかというふうに
考えるわけでございます。ただ今まで数回、この制度につきましてはいろいろ不都合ではないかというお尋ねをいただいております。その中に消費
組合やあるいは労働
組合の共済会その他におきまして、今まで定価よりも安く売
つておつたものが、今度この制度を開くがために、そういう道がとざされて、非常に不都合を生ずるのではないかという、まことにごもつともなお尋ねをたびたび受けておるわけでございますが、この点につきましては、私どもとしてはアメリカの制度のように、こういう特殊の商品については、メーカーなり卸売業者との間に特定の
契約をしないでも、当然に定価に縛られるという行き過ぎた制度は今度採用いたしませんで、メーカーとの間に再販売価格を維持するということを特に
契約したものだけについてこれを認めて参りたいというわけでございます。
従つて消費
組合等につきましては、メーカーとの間にまた別途の
契約を結べばもちろんそれが許されることになるわけでございますから、問題はメーカーがそういう
契約をするがしないかということにかかるわけでございます。メーカーとの間に適当な
契約を別途に結びますことによ
つて、そういう労働者やあるいは
消費者の団体に別な価格で卸すということが認められるというふうに
考えて——その点についてはあるいは
はつきりした
規定でも置けばよかつたのかもしれませんが、そういうふうこ
考えまして、一応この制度は小売業の正当な
取引をむしろ促進するという趣旨でも
つてこの
法案の中に入れた次第でございます。