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1952-12-11 第15回国会 衆議院 経済安定委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月十一日(木曜日)     午後一時四十一分開議  出席委員    委員長 遠藤 三郎君    理事 前田 正男君 理事 栗田 英男君    理事 吉川 兼光君 理事 下川儀太郎君       内田 常雄君    加藤 宗平君       小林 絹治君    佐藤洋之助君       福井  勇君    横川 重次君       秋田 大助君    志村 茂治君       八木 一男君    福田 赳夫君  出席国務大臣         建 設 大 臣 佐藤 榮作君  出席政府委員         総理府事務官         (経済審議庁計         画部長)    佐々木義武君         建 設 技 官         (河川局長)  米田 正文君  委員外出席者         通商産業事務官         (公益事業局技         術長)     吉岡 俊男君         建設事務官         (河川局次長) 伊藤 大三君         専  門  員 菅田清治郎君     ————————————— 十二月十日  委員福井勇辞任につき、その補欠として山口  喜久一郎君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員山口喜久一郎辞任につき、その補欠とし  て福井勇君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  電源開発に関する件     —————————————
  2. 遠藤三郎

    遠藤委員長 これより会議を開きます。  前会に引続き電源開発に関する件の調査を進めます。なお本日は佐藤建設大臣がお見えになつております。それでは質疑を継続いたします。下川君。
  3. 下川儀太郎

    下川委員 前回保留しておりました只見川水利権の問題に関しまして建設大臣に二、三質問いたしたいと思います。この前建設省事務当局に聞きますと、従来持つてつた只見川の水利権東京電燈となり、東京電力となり、それが東北電力変更されたについて大体四つ理由をあげております。第一は準備態勢が整つていること。それから第二には東北電力が好意的であつたという点。第三は地理的に見て旧東京電力の人々も東北電力におるから調査その他が非常によくなつておるという点。それから第四は下流東北電力既設発電所があるから、総合的に開発に非常に都合がよいというような点。この四つの点のうちで、下流既設発電所東北電力にあるから総合的に非常に開発がしよいということは納得が行くのでありますが、第一、第二、第三の点で、準備態勢が整つておる、この点について私は非常に疑問を持つているのですが、おそらくそのころは東京電力水利権があつたと思うのです。それにもかかわらず、どうして全然水利権を持つておらない東北電力準備態勢を整えたか。おそらくこれは運動すれば許可がなるとか、あるいはまた可能であるというようなそういう横合いからの一つの指示があつてそういう準備をなされたのではないか、こういうような疑問を持つておるのであります。徳義的に見ても、人が水利権を持つておるところを準備するという考え方が非常に間違つておるのではないか。それから第二点の東北電力は好意的であつた。これははなはだ解せないことで、いやしくも公共事業に対して好意的であつたという言葉が使われていることは、これは非常に感情的に動いておるということで、感情的に動いておるということは私は非常に政治的な含みがあると考えております。第三に技術面における問題が取上げられておりますが、これは今の技術を侮辱するものであつて東京電力あるいは中部電力といい、こういうところは早期になされているので、この三点が変更理由としては非常に曖昧模糊としておる。これを大臣はどのようにお考えになりますかお聞きしたい。
  4. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お答えいたします。ただいま下川さんが言われたような点が水利権変更いたしました理由になつております。しかして第一点の、いろいろ準備が進んでおるということは、これは用語が適切でないかもしれませんが、調査等がよほど進んでおるという意味でございます。水利権を持たない場所について自分で調査するということはけしからぬじやないか、他人の領地へ入るのじやないか、こういうようなお感じはあろうと思いますが、やはり河川開発にあたりましては、一地点において発電所を設けるについては、その川の全体と申しますか、すぐ建設する地点等について調査いたすことはこれはあり得ることだと思います。かよう意味を実は申しておるわけであります。  それから第二点の問題につきましても、ただいま御指摘になりましたような感がいたすかわかりませんが、これは現実の問題であります。現実地方において東北電力に対して非常に積極的な協力態勢をとつておるということが言い得るのであります。これは事実の問題であります。かよう考えますと、御指摘になりました点は、実情から見ますとやはり水利権変更の場合の大きな理由になるのじやないか。  第三点の問題については、これはいろいろな議論が成り立とうかと思いますが、ベターと申しますか便宜的な考え方ように思います。
  5. 下川儀太郎

    下川委員 これは閣議において天くだり的に決定されたことで、おそらくその反対の立場にある東京電力の方といたしましては、やはり反駁的ないろいろな面があると思います。  その次にお聞きしたいことは、河川法の第二十条は、公益上必要とあればこれを変更できるということになつておりますけれども、しかしあくまで民主的な社会においては、たといそういう法規があつたとしても、一応東京電力既得権になつている財産でありますから、この財産変更するについては相手方を納得せしめてからでなければならぬ。ところがこれは裁判中でありますから納得しておらない。納得しておらないそういうものをどういうわけで「法規に照して変更してしまつたか、こういう点をひとつお聞きしたい。
  6. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 その点につきましては、過日予算委員会におきましても御説明申し上げたのでございますが、御承知よう河川法二十条の規定によりますと、権限が相当広汎のものであるように読めるのでありますが、御指摘になりましたように、実際の行政措置といたしましては、この種の法規をいつも振りまわすべき筋のものでないことは御指摘通りであります。私どももさよう考えております。本件上田本名の両地点の問題につきましては、二月に申請をされまして、約半年の間関係者の間でまとまるということたして参つたわけでございます。話が利害関係者の間でまとまるということはこれは最も望ましいことでありますので、政府におきましてもさようなあつせんはいたしたのでございます。しかしこれを両当事者にまかしておきますと時期を失する、こういう感じがいにします。と申しますのは、電源不足の現状からかんがみ、同時にまたこの本名上田地点の冬季においての工事が思うように進まないというような点を考えますと、早期結論を出したいというのが実際のあり方であつたのであります。過去におきましても二十条を発動いたしてはおりませんが、水利権変更をいたした例があるのであります。さような場合におきましては、御指摘になりましたよう利害関係者相互間をあつせんいたしまして、そうして円満裡に話を解決しており、本筋から申せばさよう処置をとるべきである、またとるべきであつたろうと思います。ただ本件につきましてはただいまも申し上げましたように、時期的の関係等で七月の時期は結論を出すべき時期だ、かよう政府考えた次第でございます。
  7. 下川儀太郎

    下川委員 政府としてのお考えはわかりますが、しかし問題がやはり公益事業でございますから、その当時公益事業委員会というものが設置されてあつたはずでございます。従つてこれほどの重要問題ですから、公益事業委員会がたとい諮問機関であるにしろ、一応相談をなさつていろいろな問題の解決に当つたろうと思うのですが、その点はいかがですか。
  8. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 その当時の経過等につきましては河川局長より御説明申し上げます。
  9. 米田正文

    米田政府委員 ただいまのよう公共事業令によりますと、水利権申請建設大臣にあると同時に、公益事業委員会意見を聞くことになつております。その関係は県から同時に入手しております。そのときに公益事業委員会から建設省協議があることになつております。実はその間に協議が来なかつたので、建設省としてはそのまま認可をいたしたのが実情であります。
  10. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ちよつとただいまの補足をしておきたいと思いますが、公益事業委員会はその後解散するよう状態になつてつたのでございますが、これがあります間には建設省に対しまして意見の申達もないし、また建設省自身といたしましても、これらの処置については最終的な決定は差控えておつたろうと思います。その後御承知よう電源開発促進法ができまして、公共事業令に基く事業委員会権限が移るであろうと考えられる通産省の方からは、さしつかえなしという答申を得まして、その結果発令をいたしておるような次第でございます。
  11. 下川儀太郎

    下川委員 ごの公益事業委員会の問題は、これは公益事業委員会の方々にお聞きしなければわかりませんが、私の記憶ではおそらく許可された当時は存置されてあつたように記憶しております。従つてその間どのように諮問されたか、あるいはまたどんな意見があつたかということは次会に保留しておきます。そこで先般の予算委員会小笠原大臣が、現在裁判中になつている。しかし東京電力勝訴した場合は、そのまま東京電力に譲るよう条件になつておるということを言つておられますが、そうなると政府当局許可方針がはなはだずさんきわまるものでないかと思う。要するにどんな裁判を起されても勝ち得る見込みだという決定的な建前に立つて、いわゆる真実を追究しての結果においての結論許可にあたつて現われて来るのじやないかと思う。ところが係争中で、もし東京電力が勝つたならば、これを東京電力に送るというよう考えに立つて一つ一つ許可ということは、はなはだ無定見だと思う。従つてもし勝つた場合は一体政府はどういう責任を持つか、あるいはその無定見についてのお考えをひとつ伺いたいと思います。
  12. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 小笠原通産大臣答弁が問題になりましたが、私が当時聞きました際の小笠原通産大臣答弁の真意は、行政訴訟東京電力勝訴といいますな勝つた場合にはそれによつて処理しなければならない、こういう意味ではないかと思います。この許可自身条件付許可される筋のものではないのでございますし、私ども行政処分をいたします際には、これが行政訴訟になるものだというようなことは想定しないと申しますか、さようには考えないで、これは行政処分として適法なものであり、十分に効力を発生するものだ、かよう考え行政処分をいたすわけであります。しかしながらこの行政処分自身が、先ほどお尋ねにありましたように第二十条によつて発動しておる。その意味においてはいろいろの論議、意見が立ち得ることだと思います。かような場合においては、既権利者である東京電力権利擁護立場において行政訴訟による救済の道はもちろん開かれておるわけであります。この水利権変更することが、場合によりますと既得権者を侵害する、これはけしからぬじやないかというような御非難もありますけれども、この行政処分についての救済方法としては行政訴訟の道が開かれておるわけであります。そこで行政訴訟の結果、裁判によりまして判決が下りまして東京電力勝訴となりますれば、この公正なる判決の下つた裁判の結果に拘束を受けることは、これは当然のことだろうと思います。
  13. 下川儀太郎

    下川委員 この九日の予算委員会質疑応答新聞紙上に明確に載つておりますので、その新聞記事を今主体にして御質問申し上げたのであります。同時にこの問題はやはり非常に重要な問題でございまして、たとえば今の河川法の問題にしたところが、一応民間の財産でございますから、財産処分に関する問題がはたして河川法の問題だけで一方的に解決されていいか。一方的に許可されるものかどうか、これは非常に微妙な問題だと思います。この点についておそらく東京電力としても訴訟を起したのだろうと思いますが、その点に関連してやはり小笠原大臣先ほど私が申し上げた通りのことを言つたんだろうと思うのですが、今の河川法はそれほどの権限を持つておるものでございますか。
  14. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま私が申し上げました点は訂正を要するようでありますが、今事情を聞きますと、御承知よう水利権の問題は建設省で処理をいたしますが、発電事業許可処分通産省でいたすわけであります。通産省でいたします発電事業許可はこの水利権変更一つ条件になつておることだと思います。従いまして小笠原大臣が言われた通り行政訴訟の結果いかんによつては、発電事業許可自身変更を受ける、かよう条件付だそうでございます。これは実は私自身所管事項でないので、あるいは私の答弁が間違い、あるいはその間の実情を十分御説明いたさなかつたかと思いますので、あらためて御説明をし直しておきます。  そこで建設省といたしましては、水利権の取消しの問題が、建設省所管でありますが、その所管に関する所見は先ほど来申し上げた通りでございます。
  15. 下川儀太郎

    下川委員 この予算委員会小笠原大臣答弁のことについては、これは小笠原大臣にお聞きします。それともう一つは、この変更する理由の中で、たとえば最も大きな問題として取上げられることは、東京電力地域東北電力地域電力不足、このバランス等についての考慮が払われたかどうか、この点をひとつお聞きしたいのであります。
  16. 吉岡俊男

    吉岡説明員 お答え申し上げます。旧公共事業令によりまして発電所許可をいたす場合には、水利権があるかないかということは当然考えますが、その前は、水利権東京電力許可なつたものでございますから、この点は水利権がある場合としまして、その次に考えておりますのは、御指摘ありました電力需給のことでございます。これもこの公共事業令による許可をいたします場合には、十分考慮いたしまして、その当時東北電力の区域ももちろん不足いたしておるわけでございますが、いずれも不足いたしておりますので、この電源開発によつて、この不足を幾らかでも救済し得るという考えから許可いたしたわけでございます。
  17. 下川儀太郎

    下川委員 この問題は非常に大きな問題で、関東地方、いわゆる東京電力地域消費量というものは非常に大きなもので、しかも不足にあえいでいる。おそらく東北電力の比ではないと思いますが、そういう一つの政治的なバランスをとらなかつたら、これはもうなつていないと思う。これの配慮が全然ないように私は考えるのでございますが、こういう問題を抜きにした一つ水利権変更ということについては、考え方を—これも一方的な政府意見を聞いては納得行きませんので、私はこの只見川の問題は単に認可の問題だけではなしに、国民が非常に疑惑を持つている。しかも経済批判とか、経済往来とか、あるいは商業紙にもこれはもちろん掲載されている。従つてこういう疑惑を解くためには、やはり真相を明確にしなければならぬ。明々白々の一つ根拠に立つて変更ならば、私はさしつかえないと思います。従つてなるべく真実を追究して行く意味において、証人として東京電力代表、あるいは東北電力代表福島県知事、あるいは新潟県知事、あるいは当時の存置されていた公益事業委員会代表等々を証人にお招きして、つぶさに委員会においてその意見を聞きたいと思います。それを要望しまして、質問を打切ります。
  18. 遠藤三郎

    遠藤委員長 今の問題はあと協議したいと思います。栗田君。
  19. 栗田英男

    栗田委員 この水利権の問題に関しましては、九月の予算委員会において質問をいたしたのでありますが、時間の制限も受けておりましたので、もう少しお聞きしたいと思います。  そこで私は主としてこの閣議内容について御質問をいたしたいと思うのですが、まず第一に建設大臣に承りたいことは、この河川特別使用権というものは、私は経済価値を有する一つ財産権であると思つておるのでありますが、この見方に対して建設大臣同感であるかどうか、この点をひとつ御説明を願いたい。
  20. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 同感でございます。
  21. 栗田英男

    栗田委員 そういたしますると、建設大臣水利権は一種の財産権であるということを今認められたようでありまするが、それではこの財産権というものを認めながら、河川法の第二十条、すなわち行政処分によつて水利権変更するということは、憲法の二十九条に違反しやせぬかどうか、この点を建設大臣お尋ねをいたします。
  22. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 その点はせんだつても申し上げましたよう救済規定行政訴訟である、かよう考えております。
  23. 栗田英男

    栗田委員 それに関連してお尋ねをいたしたいのですが、この閣議内容にこういうことが書いてあるのですが、「既得水利権との補償問題に関する調整解決については処分後速かに処理せしむる」、こういうことが書いてございます。これはどういう法の根拠によつて補償問題に関する調整解決をするか。たとえばどういうことかというと、この補償問題をだれが一体払うのか、東北電力が払うのか、あるいは福島県知事が払うのか、建設省が払うのかこの法的根拠です。
  24. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど下川委員にもお答えいたしましたように、本来の関係から申しますれば、利害関係者相互間をあつせんをいたすのが普通の処置でございます。そういう際におきましては、ただいま指摘されましたよう補償の問題が、当然相互の間で起るのでございます。これは双方にまかしておけばけつこうなことで、双方で話がつかない場合におきまして、私ども仲介調停をいたすような場合もあり得るわけであります。
  25. 栗田英男

    栗田委員 そうすると、この補償措置というのは、法的な根拠はないわけですね。
  26. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 許可をいたします際に、両者でその問題について十分協議を遂げろということが、条件としていつもつけ加えられるわけでございます。
  27. 栗田英男

    栗田委員 そうすると、それは法律的な根拠でなくて、何というのか、政治的配慮のもとにそういうことをつけ加えるわけでございますか。
  28. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 行政処分をいたします際に、これだけのことは当然考えらるべき筋のものでございます。
  29. 栗田英男

    栗田委員 今の考え方に対して、私は非常に考え方をかえておるのですが、それはこの財産権であるということを建設大臣は認めておる。これを行政処分変更によつて取上げるのであれば、これに対して私は明確な法的な補償処置がなければならないと思うのであります。ところがそういう法的の処置のない、いわゆる河川法の第二十条によつてこれを取消すということは、河川法自体が私は違憲立法じやないか、こういうよう考えておるのですが、この点に対して建設大臣の御見解を承りたい。
  30. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御承知ように、一方では財産権を失いますが、一方では財産権を取得するわけでございます。その両者の間において相談をまとめるというのが法の建前だと思います。
  31. 栗田英男

    栗田委員 それではこのまとめるということが、両方非常に利害が相反しておりまするので、まとまらなかつた場合においては、建設大臣としてどのよう考え方を持つておるか。
  32. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 両者の間で普通に相談をいたしますると大体まず、曲りなりにも話はまとまるものでございます。ところが今回の問題のように、非常に双方意見が対立いたしますると、なかなかまとまらない。建設大臣自身処置等につきましても、批判の対象になる、そこで行政訴訟が提起される、かようになつて参るわけでございます。しかしながら行政訴訟判決がありましても、東京電力が勝ちました場合は、行政処分自身が無効になりますので、この種の許可処分効力を発生しないことになりますが、東京電力自身が敗訴になりました場合につきましても、今の補償の問題につきましては、双方で話合いをつけるだけの双方権利と義務は存しておるわけでございます。
  33. 栗田英男

    栗田委員 今の補償の問題で、福島県知事なり、あるいは建設大臣から早急にこれが協議をしろというような指令なり命令なり、そういうようなものを出したことがあるかどうか。
  34. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは知事をして両者の間をあつせんさしておりますから、しばしばその意味において督促もし、命令もいたしております。
  35. 栗田英男

    栗田委員 現在までその結果がどうなつておるか、きわめて簡単に経過をお知らせ願いたい。
  36. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま訴訟係属中でありますので、その協議には応ぜられないというのが東京電力の主張でございまして、ただいま停頓しております。
  37. 栗田英男

    栗田委員 この閣議理由書を見ますると、「このように他会社の水利権の現存する地点にその水利権調整を行わずして新出願者水利権の設定をすることは殆ど前例のない完く異例のことである」ということが書いてあるのですが、ほとんど前例のない、まつたく異例のことであるという理由でございますね。この理由は、さらにすぐうしろにあるただいま下川委員からも御指摘があつたのですが、「(一)早期開発上有利なること」それから以下二、三点あるのですが、これがまつたく異例処置をとるための重大なる理由であるかということを御質問いたしたい。今のこのことで間違いがないかどうか。
  38. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま読まれた通りでございます。
  39. 栗田英男

    栗田委員 この問題に対しましては、私は早期開発上有利なることということももちろんですが、それよりももつと大切なことは、先ほど下川委員から御質問があつたように、電力需給状態というものを無視しておる決定である、このように私は考えております。この考え方に対して建設大臣の御意向はどうですか。
  40. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私はこの処置は適切であつたと考えております。
  41. 栗田英男

    栗田委員 それではこの早期開発上有利なることということで、あと四点これにありますが、まずこの第一点から御質問をいたしたいと思います。「この地点直下流において現に柳津片門地点建設実施中である為準備態勢が容易である」ということを書いてあります。この早期開発上有利なることの第一点として、これは具体的にはたとえばどういうことでありますか。
  42. 米田正文

    米田政府委員 その点は下流で現在工事実施中でありますので、機械類も相当に転用のできるものがあり、人員もまた転用のできるものがあるという意味でございます。
  43. 栗田英男

    栗田委員 今の答弁は非常に乱暴な意見だと思います。なぜ乱暴な意見かというと、直下流でもつて請負つておるところの電力会社なり組が、そのやつておることが非常に便利だということになると、上流開発権というものはことごとく直下流でやつておるところの電力会社なり組がみんな上流工事をやるということになつてしまう。早期開発上有利であるということの第一の要点にそういう乱暴なことを載せておくことは、私ははなはだ心外である。その点に対して重ねてお願いします。
  44. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御承知よう只見川河川については、猪苗代水系というものは、九分割をいたしました際に、これを東京電力に残したことは御承知通りでございます。その猪苗代水系のその上の柳津片門等は、東北電力をして開発せしむるということになつておる。そこでこれに非常に近接している地点ということが一つのポイントだと思います。この近接しております上田本名という両地点でありますが、この下流発電所送電施設等にも容易に連接ができまするし、ただいま河川局長が申しましたよう理由とあわせて、これは便利だろうということでございます。しかし御指摘になりましたように、只見川発電というものは、本名上田、これの上流地点におきまして、未開発の水力は、非常に大きいものがあるわけであります。いわゆる本流案だとか分流案という大きな問題を残しておる、これも私ども承知いたしておるのであります。これらの問題を解決すると申しますか、その前提として、上田本名の両地点東北電力に許された、かようなものではないのでございます。いわゆる只見川の総合開発として考えられる本流案分流案、これらについては、何ら関係のないものであるということを、この機会にはつきり申し上げておきます。
  45. 栗田英男

    栗田委員 私はこの上田本名というものは、昨年の電気事業再編成の際に、電力需給の点等を十分考慮されて、これらの点があげて東京電力に帰属したのでありまして、これをわずか一年足らずのうちに東北電力に強権的に許可するということは、私は建設大臣のやり方はきわめて不見識だ、こういうふうに考えます。  それから第二点ですが、「東北電力株式会社の開発に対する地元の態度は特に好意的である」ということが、早期開発に有利なことの第二の理由になつております。これの具体的な例をひとつ聞かせてください。
  46. 伊藤六三

    ○伊藤説明員 この福島県におきまするところの県民の感情を、ただ事実として申し上げますれば、福島県におきましては、猪苗代湖の水系の関係考えあわせまして、この開発に対しまして、東京電力に対しましては極端にこれを排撃いたしておりましてそうして東北電力をもつて開発をするのでなければ、われわれとしてはこれに絶対反対だというような空気が非常に濃厚であつたのを、そこに書き出してあるのであります。
  47. 栗田英男

    栗田委員 私はただいまの考え方も非常に危険であると、かよう考えるのであります。なぜ今の考え方が危険であるかというと、未開発の電源地帯というものは、日本でいえば中部か東北しかないのです。そこでこういう未開発地点電源開発というものを、地元が好意的だから地元の会社にやらせる、主務官庁がそういう考えであるならば、電力の不均衡というものは、ますます是正されない。私はそういう考え方は根本的に誤まつておると思いますが、どうか。
  48. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御高説しごくごもつともの点もあるわけでございますが、白紙の上に発電所を設けるわけではございません現実の問題として当該事案を解決して参らなければならない。御承知ように、この水利権の問題、あるいはダムをつくれば埋没する人家がある、あるいは耕地の問題もあります。あるいは灌漑用水等の確保の問題もある、地元民の協力なくしてはこの種の事業はなかなかやれるものではないのであります。私が白紙の上に発電所を設けるのでないと申しますことはこの点であります。私どもは御意見も一面においてしごくごもつともなことだと思いまするが、地元民の協力を得るということは、この種の事業としては欠くべからざる要件ではないか、かよう考えております。
  49. 栗田英男

    栗田委員 そういたしますと、そのように地元民が好意的であるとするならば、上田本名補償というものはすでに済んでおるかどうか、この点についてお尋ねをいたしたい。
  50. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私は実情をまだつまびらかにいたしてはおりませんが、まだおそらく全部が終了したという状況ではないだろうと思います。
  51. 栗田英男

    栗田委員 私の知り得た範囲におきますると、上田本名の地元民は東北電力開発に対して先ほど非常に好意的であると言つておりましたけれども、これはそういうようには考えられないのであります。今日では上田本名の地元民は被害民組合を組織いたしまして、猛烈な反対をいたしておるのであります。しかもこの被害民組合の顧問弁護士はかつて最高裁判所の判事をいたしました長谷川太一郎氏が先頭になつて反対をいたしておるのであります。このよう調査いたしますると、必ずしも私は東北電力開発に対する地元の態度が好意的でない、まずかよう考えます。これはおのおのの考え方の差です。  今度は第三番目です。第三番目はこれに「工事電力需給が容易であること」と書いてございます。これを具体的にひとつ説明してください。どういうことです。
  52. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは引続いて下流でいろいろ工事は進めておりまするが、その電力確保と合わして一体としてなし得るということでございます。
  53. 栗田英男

    栗田委員 私はこの重大なる水利権決定理由の中に「工事電力需給が容易である」なんという、こういうことを建設省が書くなんということは、私はナンセンスだと思う。人に笑われる。なぜ笑われるかというと、工事電力需給が容易であるというけれども公共事業令によつて電気事業者というものは、何人に対しても電気を拒んではいけないというりつぱな法律がある。従つてどこの電力会社がやろうが、これは東北電力の配電区域なら当然工事電力というものは供給しなければならない。この点に対して御説明を願います。
  54. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お説のようなことはしごくごもつともだと思いますが、特に一、二、三の理由を掲げましたゆえんのものは、一に早期開発を必要とするということであります。もしも普通の状況のままに残しておきますならば工事電力の確保ができない、こういうものではない。しかしながら非常に早期間にこういうものの確保が容易にできるという点を特に取上げておるのでありまして、電源開発早期開発、時期的な要素を特に強く取上げている点に御留意を願いたいと思います。
  55. 栗田英男

    栗田委員 今盛んに建設大臣早期開発早期開発というのですが、あまり早期開発ということが口に出たようですから、私はこの点は予算委員会でも御質問をしたのですが、早期開発早期開発といつても、建設省の方針は一貫していないのです。なぜ建設省の方針が一貫していないかというと、福島県知事建設大臣及び公益事業委員会に稟伺したのが二月十三日で許可を八月四日まで引延ばしておいて、その間建設省は何もやつておらない。そうして早期開発早期開発ということ自体が私は非常におかしいと思う。これは建設大臣と私と考え方が違うからやむを得ない。  その次は第四点です。「只見川開発計画樹立並びに工事実施に必要な調査資料並びに只見川の実態に精通した技術陣容を有しておる」、この点を具体的に御説明願いたい。
  56. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは先ほど下川委員に御説明申し上げましたように、そのすぐ下流地点において電源開発をいたしております。電源開発をいたしますると、その流域等について調査はもちろん進んでおるわけであります。総体として考えないと電源開発は容易なものではないのであります。その意味合いにおいてその下流地点電源開発をやつておるということが、その四の理由にあげた実態でございます。
  57. 栗田英男

    栗田委員 私はこの工事実施に必要な資料というものは、これは国費を一億もかけてOCIで調査をいたしたものでありますから、どこにやらせるのにもこのOCIの資料があれば十分だと思う。少くとも私は東京電力東北電力技術陣容を比較して、はるかに東北電力の方が偉い技術者が多いという考え方も乱暴である。私はかよう考えます。建設大臣答弁には私は満足できない。  第二点「運営管理上有利であること」の中の第一点、「東北電力株式会社所有の下流既設発電所との一貫性を有し、綜合的な運営が可能である為、水資源活用上有利である」ということが第二の理由になつておりますが、これを具体的に御説明願います。
  58. 米田正文

    米田政府委員 その意味は、現在あります下流既設発電所と、今度開発しますものを結ぶことによつて、その一貫運営をスムーズにやろうという趣旨でございます。
  59. 栗田英男

    栗田委員 私は今の河川局長の御説明もまことに乱暴な意見だと思います。とてもこういう方に河川行政をまかしておくことはできない。そういう考え方を持つておると、下にダム式発電所を持つておるものは、みな一河川一統制の考え方ですか。
  60. 米田正文

    米田政府委員 この場合については、上田本名の場合についてのみ申し上げたい。
  61. 栗田英男

    栗田委員 そういうふうに上田本名のみに適用するなんという、そういう考え方が乱暴なんです。それが間違つておる。そうでしよう上田本名のみに適用するなんてそんなばかな話があるものではない。河川行政はあらゆる河川に適用しなければならぬ、そうでしよう。どうです、違いますか。  そこでこういうことも理由にならない。下流既設発電所との一貫性を有し、綜合的な運営ができるなんて、こんなことは一つもない。たとえばダム式発電所というものは、たいてい渇水時に使う。従つてピーク時に使う。上から水を流すと全部一齊に使う。それはどこの会社が使つていてもさしつかえない。また次の下流のものが水を流すと三時間くらいかかるのですが、上の水を流すと下の方にたまる。そういう運営管理上私はこういう配慮をする必要はないと、このよう考えますが、河川局長どうですか。
  62. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 たいへん失礼いたしました。別な事柄でちよつと打合せをしておりまして、私が説明しないで河川局長をして説明さして失礼しましたが、ただいまのお話の点、一貫して運営と申します点につきましては、私ども河川行政をやつております面から見ると、非常な重大な問題のよう考えておるのであります。最近この問題に関連する問題でありますので、一般河川行政のあり方をこの機会に説明をつけ加えておきたいと思いますのは、御承知ように治水対策といたしまして、最近は多目的ダムの建設ということを盛んにいたしております。これは洪水対策であると同時にその貯水が灌漑用水になり、あるいはまた発電の用水にもなる、かようなものでございますが、このダムをつくりまして、洪水対策の観点だけから見ましても、豪雨の際にこの水門を開いて水を落すということは、非常な技術を要する問題であります。場合によりましたら一箇所のダムだけではなしに、その次になお調整池をつくらないと、これはうまく行くものではないのであります。さらにまた灌漑用水にいたしましても、発電用水にいたしましても、時期的な問題ももちろんあるのでありまして、やはりこのダムあるいは河川、河水の統制ということについては、私どもは特別な意を用いているわけであります。従いまして、上流地点における発電所と、すぐそれに接続する地点発電所、これは双方において相当の利害の食い違いも、ときによりましたらあるわけであります。そういう場合に、別個の経営をされることは、実は私ども河川行政の面から見ますると、必ずしも賛成をしかねるのであります。その意味がただいま申し上げているような運営の一元化ということを実は申しておるわけであります。ただ只見川で問題になりますのは、ただいまの上田本名までの問題は一応かよう解決をいたしておりまするが、これ以上のこれの上流地点における開発が、この上田本名と同様の処置によつて開発を進められるかどうか、おそらくその点が一番の御懸念ではないかと思います。しかしこの上流地点開発等につきましては、電源開発促進法が公布され、効力を発生しております今日でありますので、上田本名地点についてとつた処置とは、おのずからかわるものがあるのではないか、かように私ども考えておるのであります。しかしいずれにいたしましても、これは審議会におきまして十分御検討賜わつて、その審議会の答申に基いて、政府処置するのでありますので、今回の処置とはおのずからかわつて行くのではないか、かよう考えております。
  63. 栗田英男

    栗田委員 私は今の御説明では必ずしもこの水利権変更した重大なる理由の中に、一貫性を有して綜合的な運営が便利であるからという理由のもとに、私はこの水利権変更するということは乱暴であるということであります。たとえば今のようにそれが便利であるというならば、これはたいへんであります。それからまた現に上と下の違う大きな発電所が日本全国で比較的たくさんあります。たとえばすぐ近くの信濃川の例を見ても、上流東京電力が十七万キロの発電所を持つておる。そのすぐ下は国鉄が十万キロの発電所を持つておる。それがどうかというと、国鉄と東京電力との密接なる連繋によつて、十分その円滑なるところの発電を期しておられるのです。これは要するに持つておるところの会社の協定いかんによつてどのようにでもできるのです。従つてこれを重大なる理由に入れるということも私は不満足です。  第二は、「送電設備は直下流迄来ておるのでこれに発表電力をのせることが容易であり、かつ送電ロスが軽少である」ということの御説明を願いたいと思います。
  64. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 前段は書いてある通りで、これは御了承いただけるのではないか。非常に近くまで送電線が来ている。だから新設送電線は短い区間でよいということであります。さらにロスが少いということも、区間が短かければロスは少いということであります。もしも東京電力がやるとすれば、猪苗代水系の送電線に送らざるを得ないのじやないか、そうするとこれは距離が長くなるのでロスが多くなるのではないか、こういう議論だと思います。
  65. 栗田英男

    栗田委員 送電線が直下流まで来ておつて便利だということは、私はこういうことをだれが書いたのか知りませんけれども、これは全然電気事情を知らない人が書いた作文です。なぜそうかというと、この送電線というものは近くまで来ておる。近くまで来ておれば、それは便利です。便利だけれども、その送電線というものは幾らまで乗せておるか、幾らまで乗さるかということが根本的な問題だ。非常にボルテージの小さいものがそこまで来ておつても、これは問題にならない。そこで私の調査したところを見ると、沼沢沼まで来ているところは、今のは六万ボルトです。大体、東北電力の管内の送電線はことごとく六万ボルト以下です。そうすると今の本名上田がこの六万ボルトの線に乗せられるかというと、実際に乗せられない。技術的にも乗せられない。そうなつて来ると、これはもちろん仙台、盛岡、平、新潟とほとんど送電線をかえなければならない。送電線だけではない。鉄塔からかえなければならない。この点に関してどのようなお考えを持つておられますか。
  66. 遠藤三郎

    遠藤委員長 栗田君、今の質問通産省所管でありますから……。
  67. 栗田英男

    栗田委員 それは通産省であるかもしれませんが、この建設省水利権変更命令の中にそういうことが書いてありましたので、私は疑問だから質疑を行つたわけです。
  68. 遠藤三郎

    遠藤委員長 栗田君、その点は通産の当局を呼んでまた聞くことにいたします。
  69. 栗田英男

    栗田委員 わかりました。  それからもう一つ、これもまた通産省だから知らないと言われればそれまでなんですが、こういうことがあります。これは参考のために聞いてもらいたいのは、昭和二十四年に政府より、東京電力は、将来只見川の電気を京浜地区に送るために超高電圧の送電線を準備しろという命令がありまして、二十七万五千ボルトの送電線を今群馬県の北部の湯宿まで延ばしております。この問題を、この送電線をきめるときに、顧慮したかどうか、この点についてひとつ伺いたい。
  70. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 どうも私の所管外でありますので、あるいはさらに通産大臣がお話をするかと思いますが、東京電力のその送電線の問題はもちろん考えられておることだと思います。しかし東京電力自身も各地において発電を計画いたしておるわけでありますので、上田本名東北電力開発にまかされたからと申しましても、その送電線が非常にむだになるとは言えないのではないか。これはしろうととしての考え方でありますので、あるいは当らないかわかりませんが、さよう考えております。
  71. 栗田英男

    栗田委員 そのほかいろいろ説明がついておりますが、これはただいま私が質問したのに尽きるのでありまして、もうあとの方はつけ足りですから聞く必要もないのです。そこで閣議の問題ですが、これは建設大臣認可すればいいので、閣議に諮る必要はないと私は思うのです。東京電力から東北電力許可決定するために、なぜ閣議に諮つたか。
  72. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 それは第一に読み上げられたよう異例に属する事項だ、かように解釈するからだと思います。
  73. 栗田英男

    栗田委員 この公共事業令によつて河川行政と電力行政を合致させるために、もちろん公益事業委員会相談をしなければならぬのですが、このときに建設大臣は、こういう処置をすることが当時の電力行政を担当しておつた公益事業委員会が賛成であると思つたか、反対であると思つたか、この点をひとつお聞きしたいと思います。
  74. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私も当時の閣議には列席した一員でございますが、当時さような点についてまで、私考えを及ぼしてはおりませんでした。
  75. 栗田英男

    栗田委員 私は大臣が—われわれでも、もう当時から公益事業委員会は反対であつたということは耳に入つてつたのです。従つて私は公益事業委員会も反対だということくらいは、閣議に列席した大臣諸公はことごとく知らないということはないと思うのです。これは遁辞も遁辞、まことにはなはだしいと私はかよう考えておる。そこで私は参考までに—ただいま下川君も参考人として呼ぶようにという発言をしたのですが、当時の公益事業委員長をしておつた松本烝治さんはこういうことを言つておる。「只見川水利権が、私が委員長を仰せつかつていた公益事業委員会に計られずに突如として所有者の東京電力から剥奪されて東北電力変更されたという事態には、私も痛く驚いたのである。水利権一つ財産権として河川法で認められて居り一他からの侵害から保護されているが、それにも拘らず利害関係者と何等の話合いもなく一方的に変更されるということは慣習上ないことで、福島県の処分理由が成りたたないように思う。公益委がまだ存在した七月二十五日に閣議で秘密に決められ、八月一日から委員会が廃止になるや、八月四日に処分が発表されるという有様で、空隙に乗じて何の相談もなく只見川水利権が玩具のように他人の手に渡つてしまつたということは、何としても明朗とはいえない。その取扱いは疑わしく、変更されたことは正しくないと考えている。政治上の陰謀があつたかどうか、そんなことは知らないが、如何にも乱暴な話である。」ということを松本烝治さんは「経済批判」に発表いたしております。これに関して建設大臣はどのような御所感ですか。
  76. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 時期的な問題につきましては、過日予算委員会におきましてお答えを申し上げた通りでございます。私どもはどこまでも電力不足しておる現状にかんがみまして早期開発をしたい「この観点に立ちまして、いろいろ関係の筋と十分折衝を続けたものでございます。私自身もこの六月時分でありましたか、この種の問題が起つておることは、民意も入れ、関係の人たちから陳情も聞き、同時にまたただいま申し上げるよう早期開発にぜひとも協力していただきたい、かよう意見を申し述べたものでございます。特に七月あるいは八月の初めにこの問題を許可発表いたしましたゆえんのものは、過日も申し上げましたように、冬季になりましての工事の進捗が困難だというような点をも考慮いたしまして、八月の初めに発表いたした次第であります。これを特別に政治的な陰謀がある、あるいは一部で流布されておるような不正があるかのような議論は、私どもは絶対賛成ができないのであります。どこまでも今日の電力不足に対応する処置として早期に電源を開発したい、そうしてその電源を開発するのには、比較的便利と申しますか、都合よく運ぶだろうと考えられる東北電力をしてこれを開発させるのが適切なり、かよう考えた次第であります。ただ遺憾ながら、その時期に法制の変更等を来し、さよう意味合いにおきまして、その時期をねらつてやつたんじやないかというような言われ方をいたしておりまするが、政府処置といたしましては、これはまことに遺憾しごくでありまして、どこまでもただいま申し上げるような基本的な早期開発の観点に立つて処置にほかならないのでございます。
  77. 栗田英男

    栗田委員 今の問題ですが、只見川のすぐ下流で、東川と合流して会津盆地で阿賀野川になりますが、その阿賀野川に揚川という東北が水利権を持つているところがあります。その水利権は、今度、早期開発上必要であるということでもつて水利権の延長をいたしました。このように、すぐ同じ水系に水利権を延長した、まだ未開発の大きな発電所建設できる場所があるにもかかわらず、上田本名を今の河川法によつて行政処分をしたというのはどういうわけか、この点を承りたいと思います。
  78. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 なぜすぐ下をやらないで、上をやつたのか、こういうお話だと思いますが、御承知ように、すぐ下と申すのは、猪苗代水系の一部だろうと思います。どうもあとの方の場所をよく知りませんが、早くやりましたゆえんは、柳津片門等と一体として開発することがよろしいという観点に立ちまして、上田本名をやらすことにいたしたのであります。
  79. 栗田英男

    栗田委員 今の建設大臣答弁は、まつたく的はずれですが、わからないから、繰返し聞いてもしようがない。  そこでその次は、この行政処分によつて水利権を取消すまで、二月の十三日から七月の二十五日まで、東京電力に対してどのような交渉をしたか、これをひとつお聞かせを願いたい。
  80. 伊藤六三

    ○伊藤説明員 この問題につきましては、事柄が大きいから、実は当時の野田建設大臣において、東京電力の方へ向うの関係者をお呼びになつて、お話になつたということを私は承知いたしております。
  81. 栗田英男

    栗田委員 どうも、今の説明では、私は満足をいたさないのであります。たとえば、こういう重大な処分をする場合においては、だれだれ大臣が直接関係者を、幾日にどこに呼んで、どのように話をした。ところが、先方はどのような結果であつた、私はこういうことを期待をしておるのでありますが、そういう答えは出ませんか。
  82. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 当時の実情は、実は大臣もかわつておりまするし、河川局長もかわつておるのでありまして、本日、それらの経過等についての実情をつまびらかにしておる者がこの席にいないので、もし必要でありますれば、他日調査の上、お答えを申し上げます。
  83. 栗田英男

    栗田委員 この点に関しましては、きわめて重大でありますので、他日調査をしてお知らせを願いたいと思います。そこでこの上田本名を含む只見川開発というものに、公益事業委員会は大体どのような指導方針をとつて来たかというと、これは東北電力東京電力が共同して新開発会社をつくつて、これが開発に当らしめるのだという基本方針はきまつてつたのであります。従つて、その点を建設大臣承知しておつたかどうか、これを承りたい。
  84. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 電源開発会社をして電源を開発せしむるという総体としての原則的な考え方は、もちろん私も了承しております。只見川水系におきましても、同様の考え方のあつたことも了承しておりますが、御承知よう電源開発会社は当時、これから発足しようというまだ準備のできておらない状態であります。そこで在来から、下流において発電事業をやつておりますものをして一貫してやらすということが一応考えられた、かように私は考えております。
  85. 栗田英男

    栗田委員 今の佐藤建設大臣の御説明は、電源開発会社の方針であつて電源開発促進法というものは七月三十一日に制定公布を見たので、電源開発促進法ができない前の只見川開発方針というものは、東北電力東京電力が共同して新会社をつくつて只見川開発をするという基本方針がきまつてつたのであります。これを建設大臣が了承しておつたかどうかということであります。
  86. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私はそれは存じません
  87. 栗田英男

    栗田委員 こういうことは最も重大なことであつて、こういうことこそ電力行政を担当する公益事業委員会と、これを許可する前に十分に話合いをしなければならなかつたと思います。私は建設省の重大なる失態であると、かよう考えております。  次は、早期開発ということを言つておりますが、この早期開発というのは全国的の趣旨のもとにやつたのかどうか、あるいは本名上田にのみ早期開発をやつたのか、この点を御説明願いたいと思います。
  88. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 基本的の方針としての早期開発は全国的の問題でございます。この方針を具体的に取上げて参ります場合に、上田本名がまず第一に俎上に上つたわけでございます。
  89. 栗田英男

    栗田委員 全国的に早期開発をやつたとするならば、この点について、全国的にどのような行政指導を行つたか。
  90. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御承知ように国会の審議等を経まして、電源開発促進法を制定し、その関係の法令を整備して参るということをやつておるわけでございます。
  91. 栗田英男

    栗田委員 このような重大な早期開発ならば、当然昭和二十七年度の計画の中に入つておらなければならないのであります。ところがどこを調べましても、本名上田開発は、昭和二十七年度の計画に入つていない。本名上田がそれほど必要なら、全国に優先して早期開発が必要だということを、なぜ二十七年度の計画に当初から入れておかなかつたか。
  92. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 発電計画推進の問題は、建設省よりも通産省の問題でありますから、通産省よりお答えをいたさせます。
  93. 栗田英男

    栗田委員 今までいろいろ御答弁を聞いたのでありますが、私の聞いた範囲内においては、電力の行政官庁である公益事業委員会と何らの相談もなくこのようなことをやつたというふうに私は聞くのであります。従つてこのように了承してさしつかえないかどうか。
  94. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 当時の実情は、先ほど申しますように、十分調査の上で正確にお答えをいたしたいと思いますが、私は、問題が異例の問題でありまするので、ことに重大な前例ともなる問題でありますだけに、建設当局といたしましては万善を尽しておると思います。つけ加えて申しますならば、利害関係者相互の間の協議を遂げるにつきましても、おそらく十分の手を尽しておると思いますし、同時にまた当時の公益事業委員会意見をも十分考慮しておるものだ、かように私は確信いたしております。
  95. 栗田英男

    栗田委員 建設大臣の御答弁は非常に確信をいたしておるということですが、今の実際的な答弁の問題、それから開発許可の経緯等を考えてみますると、ほとんど私は今の電力行政官庁とは相談がなく、一方的にこの水利権というものは建設省決定した、このように私には考えられる。そこで電源開発促進法についてきわめて簡単に私は御質問いたしたいのですが、電源開発促進法が出たのが七月三十一日であります。それで施行令が出たのは八月二十二日でございます。その間二十日ばかりしかないのであります。そこで私は当然法の精神から行きまするならば、この水利権許可も、それはもちろん建設大臣早期開発上必要だからといつて逃げるかもわかりませんが、なぜ私はもつと親切な—特に電源開発促進法というのは、審議の過程において幾多の波瀾を見て、自由党政府のおつくりになつた法律でございますから、私は当然電源開発調整審議会の議を経なければならないと思うのでございます。それが早期開発という言葉で逃げられては困るのですが、私はなぜこの電源開発調整審議会の議を経なかつたかということであります。
  96. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 ただいまの点につきましてお答え申し上げます。この前の予算委員会のときにお答え申し上げたのでございますが、電源開発調整審議会で決定する事項は何々かという問題に関することでありまして、促進法の第三条の初項にございますが、電源開発基本計画を立案し、これを審議会にかけてそうしてきめなければならぬというふうに書いてあります。従いまして、それでは基本計画とはどういう内容のものかという点が非常に重要な問題になるわけでございまするが、基本計画の内容規定に関しましては、政令でこれを定めておりまして、電源開発促進法施行令の二条にそれをきめてございます。施行令の第二条によりますると、基本計画の内容は、長期の電源開発の目標、それが一つです。二は当該会計年度における電源開発等に関する左の事項、イ、発電原動力の種別ごとの発電施設の最大出力、ロ、発電部門、送電、変電、配電部門及びその他の部門別の施設の設置及び改良並びに発電原動力の種別ごとの電源開発に要する資金の額、三といたしまして、電源開発株式会社が当該会計年度において着手する電源開発地点、規模及び方式、こういうふうになつておりまして、その基本計画として審議会で定める事項の中には、九電力あるいは公営あるいは自家発等で定めます地点の点は入つておりません。審議会の対象外になつております。もちろん今申しました三の電源開発株式会社が着手する地点に関しましては、地点のみならず規模様式までこれを定めますけれども、その他の電源開発担当者の地点等に関しましては、公表事項ではありまするけれども決定事項ではないのであります。ただこの基本計画に附帯いたしまして、その基本計画に添付事項といたしまして、言いかえますと、参考資料として各九電力のそれぞれの開発地点、それから公営の事業の開発地点等を公表いたしまして、その結果公表に対して意見のある者はこれを申し出ろというのが、電源開発促進法の第三条の第三項にありまして、それに基きまして、それぞれ意見の申出が出て来るわけであります。ただいまの上田本名の件に関しましても、東京電力の方から一応異議の意見は申し出てございますが、第一次の審査は主務官庁がまず審査いたしまして、爾後どうしても主務官庁で解決つかない場合には、この審議会にかける、こういうよう関係になつてございますので、第一の主務官庁でありまする通産省がこれの審議に当つておる次第でございます。そういう次第でございますから、電源開発促進法規定に基く調整審議会の決定事項かと申しますと、決定事項でないのでございますので、別途公表いたしましても、定めましても、これは促進法違反というふうには考えられないのじやないか、こういうふうに思います。
  97. 栗田英男

    栗田委員 そうするとあなたは、今の上田本名水利権許可するために、何も電源開発調整審議会に諮る必要はないということですか。
  98. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 そういう意味ではないのでありまして、水利権決定は、この法のできる前にと申しますか、施行になりました以後と申しますよりも、水利権の付与そのものと、この電源開発促進法の問題とは直接関係がないのでありまして、この調整審議会でここを開発すべしという担当者地点まできめたのでありますれば、それに附帯いたしまして、爾後行政処分というものはとられるのでありましようけれども、この審議会ではそういう担当者の地点とかいうところまで決定いたさないのでありますから、直接関係はないという解釈であります。
  99. 栗田英男

    栗田委員 最後に私はこの問題で非常に電気業者というものが—ひとり東京電力ばかりでなく、他の電力会社というものが非常に脅威を受けたと思うのであります。この点に関しまして、建設大臣はどのよう考え方を持つておるか、お聞かせを願いたいと思います。
  100. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この問題の処理が各方面に非常な反響を与えておることは、私どもも見のがせないと思つております。言いかえますならば、この水利権の取消しあるいはそれを付与する、こういう問題はまことに重大な影響を及ぼすものでありますだけに、一層慎重な処理をすることは当然のことだと思います。従前もかような点においては、十分考慮されたものだと私は確信をいたしておりまするが、ただいまの上田本名水利権の問題をめぐりまして、電力会社等に非常な不安を与えておる、かようなことがありまするならば、私どもは全力をあげてかような不安を一掃すべきことと思いまするし、また行政の処置にあたりまして、今後十分慎重な考慮を払つてしかも適切にして時機を失しないよう処置はぜひともいたすべきだと、かよう考えておる次第であります。
  101. 栗田英男

    栗田委員 最後に、これは予算委員会でも質問をいたしたのでありますが、今の政府委員答弁とからんで、きわめて重大なことでありまして、重ねてお尋ねをいたしたいのでございますが、ただいま新潟県からの分流案水利権許可申請建設大臣のお手元に出ておると思うのであります。それから東北電力の、さらに本名上田から上流の水利使用許可申請も、おのおの建設大臣に出ておると思います。これに対して建設大臣はどのよう考えを持つておるか、これはきわめて詳細にひとつお聞かせを願いたいと思います。
  102. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま只見川奥地の開発をめぐりまして、いろいろ申請が参つておる。それの処置をいかにするかというお話のようでございます。申すまでもなく、只見川はわが国未開発の水力資源といたしましては最も大きな価値を持つものであります。従いましてこれの扱い方いかんは、ただ単に福島県だとかあるいは新潟県だとかいうだけでなく、国内産業に及ぼす影響もまことに甚大なるものがあると考える次第であります。従いましてこれが扱い方につきましては、ただ単なる一地方の問題として処理する、こういうわけのものでなくて、やはり広域の地域の電源需用にこたえるという観点に立つて処理されることは当然だと思います。幸いにして電源開発促進法も公布されておりまするし、また関係の機関等もすでに発動いたしておるわけであります。従いましてただ単に一地方の問題のみにとらわれることなくもつと大局に立つて結論を出さなければならない問題であります。それでどういうよう結論が出ますか、これはただいま調査中であり、研究中でありますので、それをただいま申し上げるわけには参らないと思います。過日は予算委員会におきまして、非常に簡単に研究中でありますというお答えをいたしたわけであります。また塚田委員質問には、過去においての調査資料は一つの資料であるということを実は申し上げたわけでありますが、これは審議会自身が過去の幾多の調査資料をいかように取扱いますか、それによつて決定されるのではないかと思うのでありまして、あるいは審議会自身が新しい調査を必要とするか、あるいは過去の調査自身を審議会の意見の有力なる資料として取上げるか、ここらにも一つの問題があるんではないか、かよう考えるのでありまするが、今後この審議会の答申等をめぐりまして、ただいま申し上げるような高度の立場から結論を出すべきであろう、しかしそれにいたしましても、できるだけ早目に開発をしなければならないことは当然でありますので、慎重な審議の結果結論を出すといたしましても、できるだけ準備を十二分にいたしまして、その結論をできるだけ早期に出すようにいたしたいものだ、かよう考えておる次第でございます。
  103. 栗田英男

    栗田委員 私は今の建設大臣政府委員答弁で非常に不安を持つのであります。これはどういう不安かと申しますると、今只見川開発は、電源開発調整審議会において十分技術的経済的見地から検討を加えるというよう大臣答弁でありましたが、政府委員水利権の問題は、個々の水利権許可するためには電源開発調整審議会にかける必要はないのだという趣旨の御答弁があつたのであります。そこで東北電力に権謀術数の白洲会長がついておりますので本年九月に、東北電力は奥地の水利使用許可申請建設大臣の手元に出しておるのであります。そこで今のよう調整審議会の議を経ず、今政府委員説明によると、個々の水利権地点に関してはそういうことを抜きにして許可されるかもわからない、こういう点非常に不安がありますが、こういう点について重ねて御答弁をお願いしたい。
  104. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 先ほどの御説明をさらに敷衍して申し上げます。電源開発調整審議会ではつきり地点担当者まできめますのは、電源開発株式会社が開発ようとする地点に関してのみでございます。従いましてただいま建設大臣からお話がありましたように、今後只見川の中、上流地点を総合的に全体的にどう開発するかという問題に関しましては、ただいままでの審議会の審議では、たしか第三回の審議会だと思いましたが、一応只見川地点電力開発株式会社の調査地点というふうにきめまして、そして調査費その他も予算として見込みまして、その上開発会社でも調査を進め、同時に政府側におきましてはもちろんのこと、その他各電力会社あるいは福島、新潟の県当局からもお進めをいただきまして、目下その対策を研究中でございますので、この点に関しましては、はつきりと審議会できめるわけでございます。
  105. 栗田英男

    栗田委員 そういうことになりますと、電源開発調整審議会がやるところは地点に関して電源開発調整審議会がきめるということですか。
  106. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 もう一ぺん読み上げます。電源開発促進法施行令がございまして、第二条の第三項に「電源開発株式会社が当該会計年度において着手する電源開発地点、規模及び方式」に関しては、これは基本計画の中に入つておりますので、基本計画は審議会で決定すると、こういうことになつておりますので、その点は審議会で決定いたします。
  107. 栗田英男

    栗田委員 わかりました。そうするとこの只見川開発というものを電源開発株式会社がやらなかつたならば、審議会にかける必要はないことになりますね。
  108. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 ただいまのところでは、促進法の第十三条にも一応の例示でございますけれども電源開発株式会社がやるのにふさわしい地点じやなかろうかということも載つておりまするし、ただいま申しましたように、審議会といたしましては電源開発株式会社の方に調査地点として命じておりますので、調査の結果をもちまして電源開発株式会社がやるに適当な地点だというふうに、かりに政府の方で話がつきましたならば、電源開発調整審議会にかけましてやるかやらぬかをきめる、こういうことになると思います。
  109. 栗田英男

    栗田委員 私はそれで非常に不安を持つておるのであります。なぜ不安を持つておるかというと、今のよう電源開発促進法の十三条に、たとえば只見川開発というものは電源開発株式会社がやらなければならない、これは明文がなつておる。なつておるにもかかわらず—いや、その前に一つ聞くが、今の言われた上田本名をもう一回調整審議会にかけて、これを電源開発株式会社にやらせるという考え方がありますか。
  110. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは過日もお尋ねがありましたが、私ども建設省といたしましては、ただいまの状態変更する考え方は持つておりません。しかしながらただいま御指摘になりました審議会におきましていろいろ調査いたします場合に、こういう点にも触れることはあるだろうと思います。そういう場合にいかなる処置をとりますかは、ただいまからその対策を考えておる次第ではないのでございます。
  111. 栗田英男

    栗田委員 そういたしますると、電源開発株式会社が只見川を実際に開発するかどうかということは、ずつとこれから先になると思うのであります。従つて私は只見川開発電源開発株式会社がやる、やらないにかかわらず、今日東北電力から水利使用許可申請をいたしておるのでありますから、これを建設省電源開発調整審議会に諮らずに許可するということがあるかどうか。
  112. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来の御説明でだんだん御理解をいただいたように私も思うのでありますが、ただいま電源開発会社自身準備ができておらない、従つてこれが開発することは相当後になるだろう、こういう御指摘であります。こういう観点を私ども考えまして、上田本名早期開発したいというので東北電力にやらしたわけであります。しかし東北電力にやらしたからと申しましてこの状況を現在は変更する考え方は持つておりませんが、将来の調査の結果によりますれば、その結果が出た際に態度を決定したいということを実は申しているわけであります。そこで上流地点に対する開発申請東北電力から出ているかと申しますると、東北電力からは出ておらないと先ほど事務当局が申しております。従いまして今日お尋ねような問題はただいまのところでは生じておらないということははつきり申し上げておきます。
  113. 栗田英男

    栗田委員 わかりました。
  114. 前田正男

    ○前田(正)委員 この際私からひとつ聞きたいと思いまするのは、私たちの経済安定委員会は経済審議庁関係の事項について調査する委員会であります。従いましてもつぱら電源開発促進法の問題について、その観点からお話を進めて行きたいと思うのであります。  まずこの電源開発促進法というものはわれわれ国会の意思によつて、一応政府提案ではありますけれども可決されたのであります。そこでこの法文を読んでいただきますとおわかりの通り、円滑にすみやかに電源の開発をやるということが電源開発促進法の一番の大きな目的であると思うのであります。そこでまず第一にお尋ねしたいと思いますが、今回のようなこういう他人の持つておつた水利権をこちらに移すというようなことをおやりになつて—それが訴訟になるかどうかはおわかりにならないとしても、損害賠償の話はつかないというような問題が起ることは明瞭でありますから、お互いに損害賠償の話はついておらないとなれば、係争中の問題であるということであります。こういうやり方で、従来の河川法だけでやつて行くということで、はたしてすみやかに電源が開発されるというふうにお考えになつておられるかどうか、まずその点を。電源開発促進法にのつとつて電源開発特別会社というものにやらした方が、あるいはその特別会社が間に入るとか、百電源開発、審議会で審議して行く方が当然でないかとわれわれは思うのでございますが、この点についていかがお考えになつているか、ひとつ聞きたいと思います。
  115. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御指摘よう電源開発を早急にしたい、これは私ども政府の希望するところであり、同時に国民からも熱願されているところだと思います。そこで只見川水利権変更問題でいろいろ将来に対する御注意等も当委員会ではいただいたのでございまするが、各地の水利権既得権者あるいはまた今後開発させようというような場合に問題が起り得る場所があるかないかというような点については、ただいま二、三の点については将来また問題が起り得るのじやないか、かようなことで開発が遅れるようなことがあつてはまことに遺憾しごくだと思うのであります。従いましてさよう地点等につきましては、一層関係者の理解と協力を求める態度をぜひともとつて参りたい、かよう考えるわけでございます。おそらく今後、実情等についての御理解をいただきますならば、関係方面の協力を得ることも必ずしも困難ではないのではないか。私どもとしては最善を尽すべき問題のよう考えている次第でございます。
  116. 前田正男

    ○前田(正)委員 今の原則的なお話はわれわれも同感であります。ついてはこの本名上田開発地点でありますが、この開発地点先ほど来いろいろと質疑応答のありました通り、問題地点であり、係争中であります。こういうような係争を起すということは、結局水利権変更のために—すみやかに電源を開発するためにこういう特別の、異例の措置をとられたということでありますけれども、そういうことをおやりになつたために、はたしてすみやかに電源の開発はできつつあるかどうかということについてはどういうふうにお考えになつているか。
  117. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今日の状況におきましては、上田本名開発はすでに起工式も了し、着々進行していると、かよう考えておりますので、適切な措置がとられたものだというよう感じをいたしております。
  118. 前田正男

    ○前田(正)委員 それはなるほど東北電力としては準備を整えているかもわかりませんけれども、これは法律的に見ますならば、現在まだ係争中のものであり未決定のものでありましてそれがためにいかなる準備が行われておりましても、それがどういう決定を下されるかによつては、かえてて促進を阻害する結果になるだろう、こういうようなことも考えられるわけでありまして本来ならばこういうような係争の起る問題については—電源開発促進法というものは当時国会ではすでに審議を終了しておりまして成立しておつたわけであります。その審議過程について一言お話申し上げたいと思うのでありますが、審議過程におきまして、資料の配付を受けまたわれわれが説明を聞いております範囲においては、二十七年度の東北、東京電力のこの両電力会社においては、この地点開発する計画はなかつた、こういうように私は思いますが、いかがですか。
  119. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 国会で促進法を御審議いただく際に御説明申し上げました二十七年度分の開発地点並びに重要地点等に関しましては、あれが最後的に決定したものだというふうに御理解願えないのじやないかというよう考えます。そこで一応電源開発促進法にもありますように、電源開発株式会社の分は明確にきめますけれども、それ以外の地点に関しましては、こういう地点をやりたいという意味で公表いたしまして、その公表地区に対して異議のあるものは異議を申し出ろ、こういうふうになつておりますので、その後審議会が発足して以来各省から資料をさらにとりまして、九月現在の実情に照しまして二十七年度の各担当者の主張は一応こうだということで参考資料として交付した次第でございます。従いまして各地点のそれぞれの決定というものは各省でそれぞれ考えるわけでございますが、閣議通りまして最後のこれでというところまできまつておらなかつたというよう考えております。
  120. 前田正男

    ○前田(正)委員 まことにその通りでありまして、最後的な決定のものではありません。しかしながら国会においてこれを審議しますときには、御承知通り電源開発公社というものは只見川その他とはつきり明文に書いてありまして、電源開発公社は只見川開発地点をやるという意思を表示しておつた。また明文に書いておりますから、われわれはそういうことで法案を通しているわけです。当時の電源開発公社、将来の電源開発株式会社というものがおやりになります場合においては、二十七年度においては只見川について何らかの地点をやりたいという考え方があつた、こういうふうに私は説明を聞いているのでございますが、どういうふうにお考えになつているか。その点をお聞きしたい。
  121. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 この法の十三条にうたいました「只見川その他の河川等に係る大規模な又は実施の困難な電源開発地点というふうに掲げておりましたこの只見川というのは、参議院の最後の仕上げのときにもずいぶん問題になりまして、これが一つの例示なるやあるいは法として拘束を受けるものや、これをやらなければ電源開発株式会社というものは法に違反するのかという問題がずいぶんきわどい問題になりまして、夜おそくまでいろいろ御審議いただきましてきめたわけでございますが、そのときの記録では、これはあくまでも例示だ、しかしながら有力な候補地点だというふうに法制的には解釈すべきだと承知しておるのでございます。そこで法案をつくる際に、只見川という漠然たる規定というのも非常におかしいのでございまして、只見川のどこどこというふうに地点を明示してあれば非常に問題は明確なんでありますが、ただ只見川というふうに大きくうたつてあります関係上、只見川のどの地点開発会社でやるべきかという点が明確でなかつたのであります、従いまして閣議決定された決定事項に従いまして通産省といたしましても事業許可処置をとつたのではないかと思います。
  122. 前田正男

    ○前田(正)委員 これは二十七年度におきまして只見川地点をどうしても電源開発としてやりたいという御説明があつたように私は思うのであります。そこでさつきから問題になつているのですが、特殊会社というものはできたばかりで間がないから、すぐに本名上田地点をやつても、工事ができるかできないかという問題があるわけであります。御承知ように、すでに昭和二十七年度において、相当各地点について着工しておられる。また二十七年度着工するものとして、われわれは電源開発会社に予算を出しておるわけであります。従いまして電源開発特殊株式会社というものは二十七年度から工事が始められるくらいでなければならぬと思います。そこで特に上田本名の両地点の中で、電源開発会社が当然取上げていい地点があると私は思います。ことに電源開発促進法に基けば、円滑に、すみやかにやらなければならぬという建前から申しますと、特にこういう係争を起している問題についてやるために、電源開発特殊株式会社ができたのではないかと私は思いますが、この点についてどういうふうにお考えでありますか。
  123. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 先ほども申し上げましたように、只見川開発に関しましては、電源開発株式会社がいかなる方式で、いかなる地点開発すべきかという点に関しましては、今調査研究を進めている最中でございまして、可及的すみやかに政府、審議会等でも決定したいと思つておりますので、ただいまのところでは、どういう方式でどの地点までやるべきかというところまではきまつてございません。従いましてその前にいわゆる九電力会社の方でこれをやるという際には、それが閣議決定にもなり、事業許可等もありました際には、先ほど申し上げました通り、公聴の手続をとつて利害関係者意見を聞くという関係になつておりますから、只見川中、上流全般の計画がきまりました際には、あるいはその担当者との関連等も考慮いたしまして、今の問題にも触れることが審議の過程かとも思いますが、ただいまのところではそういう進捗状況でございます。
  124. 前田正男

    ○前田(正)委員 只見川と同じように前から問題になつておる天竜川の佐久間地点の問題については、この両電力会社が問題を起したから、電源開発株式会社が中に入つて問題を解決しておられる実例がちやんとある。こういうふうに水利権の問題で解決しないような問題は、すでに天竜川において電源開発審議会がそういうことをやつておられる。これは当然こういうふうに問題になることが明らかであつたものを、しかも電源開発株式会社は、その当時の国会の審議の途中において、只見川は初年度においてやりたい—東北電力東京電力は二十七年度にやろうという計画がない。そういう計画であつたものを、しかも円滑にすみやかに実施するという目的のものが、どうして東北電力に持つて行つたら早くできるのか、こういう理由が私たちとしてはどうしても了解できないのであります。私は電源開発促進法というものはそういう観点から、そういう係争問題が起つたら電源開発株式会社が取上げるべきであると思う。また只見川のごときは重要な問題であるから行われたと私は思いますが、その辺私たちとして了解ができないのですが、経済審議庁としてどういうよう処置をされたか、伺いたい。
  125. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 促進法の十三条の二項に、基本計画で電源開発株式会社が開発すべきだという地点を定むる際には、その地点に関し他の、電源開発会社以外の担当者で、そこは自分がやりたいのだというふうに、具体的な計画を付して主務官庁に申出ておつたものに対しては、先願優先の思想を織込みまして、その計画は内容が適当であるかどうか、その計画は実施の可能性はどうかという点をにらみまして、そうしてそれが適当なものであるならば、当然それは先願優先で先願者に渡すべきだというふうな規定になつてございます。そこで電源開発株式会社が天竜あるいは美幌等を定めたのは、先願になつてつたのでありますが、資金等の面からいろいろ検討した結果計画の実施が非常に困難じやなかろうかというふうに見られましたので、電源開発株式会社に佐久間あるいは美幌等をやらすように審議会では御決定なつたと記憶いたしております。  只見川上田本名の問題に関しましては、先ほど建設大臣からお話がありましたように、一応決定いたしまして、そうして審議会といたしましてはその地点を九電力がやることにいたしておりまして、東北電力がやるという地点になりましたので、それを公表いたしまして、それに対する意見関係者から聴取するという処置をとつたわけであります。
  126. 前田正男

    ○前田(正)委員 建設省決定によりますと、上流の今後の発電下流その他いろいろな発電関係で、なるべくその運営形態を統一した方がいいというようなことが、本流案決定一つ根拠になつておるように私は思うのであります。只見川というものは、私たちの考え方で行くと、今後電源開発株式会社が開発されて行くよう考えておるのでありますが、この建設省決定の際においては、電源開発株式会社というものはその考慮の外に置かれたのですか、どうですか、そういうものについては東北電力に渡すべきであるか、あるいは東京電力に渡すべきであるかというときに、電源開発株式会社というものを考慮外のものとしてお考えになつたのかどうか、その点ひとつお聞きしたい。
  127. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 当時の状況は先ほど来申し上げましたように、電源開発会社がまだ発足前の問題でございます。従いまして、将来発足されるであろうということを考慮してという筋のものではなくして、許可する状況のもとにおいて判断を下したものであります。先ほどもお話がありましたが、東京電力東北電力相互間に特殊な開発会社をつくるという約束があつたという問題につきましては、私自身はどの程度具体性があつたものか、またさような話合いがあつたということについても実は存じておらないわけであります。これは別の問題のよう考えております。
  128. 前田正男

    ○前田(正)委員 大臣のお言葉でありますけれども、これは私たちには国会の立場から一つ問題があると思います。それは当時は電源開発株式会社は、なるほど発足前であります。前でありますが、大臣も御承知通り電源開発株式会社をつくりますところの電源開発促進法は、すでに七月の三十一日に公布されておるのであります。従いまして閣議決定の七月二十五日前でありますから、すでに国会は通過しております。この電源開発株式会社というものは生まれておる。当然その当時の閣僚の方でお知りでない方はないと思つております。また電源開発株式会社に対しまして預金部資金その他から本年度二十七年度の金として百十億というものが出ている。こういうことも閣議で御承知だろうと思うのです。しかも国会ではこれだけ大きく問題になつ電源開発促進法のこの電源開発株式会社が発足前であるから、考慮外でいいということはどうもわれわれとしては了解できませんが、いかがでしようか。
  129. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 発足前だから考慮外でいいというのは、少し言い過ぎのように思います。先ほど来申しましたように、これから発足するといたしますと、諸準備等もするので時期が遅れる、かよう意味合いでございます。少し表現は訂正さしていただきます。
  130. 前田正男

    ○前田(正)委員 その時期が遅れるというところが私たちとしてははなはだおかしいと思うのです。この電源開発促進法というのは、すみやかに電源開を行うために設けた法律でありまして、この二月に申請をされて、七月の二十五日に閣議決定をされるまで持つておられた。そうしてすでに法律が通過しておる。そうしますと、これを八月の四日にやられるのか、この施行令ができました八月二十二日から発足して行くのか。あるいは現在すでに電源開発株式会社が二十七年度で着工しているところがありますが、それと現在、本名上田地点水利権変更されて着工されているかどうか、この点現実においてどちらが早く工事ができておるか、これはその当時の閣議では論議がなかつたかどうかひとつお聞かせください。
  131. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私さような点までは記憶しておりません
  132. 前田正男

    ○前田(正)委員 この問題は一番大きな問題であると私たちは思うのでありますが、われわれはせつかく国会でこういう法律までをつくりまして、しかも多額の予算を出して、今年度二十七年度には使い切れないかもしれないくらいの予算を電源開発株式会社の方にまわしております。すでに二十七年度は一部着工に及んでおる。こういうときに、こういう係争問題にわざわざ持ち込んで、電源開発が遅れるというようなことになることは、はなはだ遺憾に思いますが、それではその当時の閣議のことはおわかりにならないならば別として、現在大臣は二十七年度において電源開発株式会社でこの両地点をやらした方が早く着工できたか、あるいは東北電力の方が早くできたか、現在どういうふうにお考えになつておるか、ひとつお伺いしたい。
  133. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 現状は順調に進んでいる、かよう考えております。
  134. 前田正男

    ○前田(正)委員 現状ということは、現在すでに着工できておる、こういうお考えでございますか。
  135. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 過日起工式を行つたような次第でございます。
  136. 前田正男

    ○前田(正)委員 それは会社側の起工式でありますけれども、現在この問題は係争中でありまして、そういうふうなことが正式に行われているというべきでなく、まだ未決定の問題じやないかと私は思います。これはどういうふうに変更されるか、どういうふうになつて行くかということは、なるほど起工式は行われても、まだ係争中の問題であります。水利権がまだ東京電力にもどるかもしれない、こういう不安定な現状であります。ところが電源開発株式会社において、すでに二十七年度着工したものは、資金の裏づけもあつて着々として進まれておる。しかもわれわれが一番ふに落ちないと思いますのは、この国会の審議の途中において、二十七年度にこの地点開発ようという計画を東京電力もまた東北電力も両方とも持つていなかつた。しかも只見川の方の特殊会社においては、只見川開発地点をやりたかつた。この地点をやるかどうか、それは問題があると思いますが、とにかくやりたい、こういうことを述べておる。また国会においても只見川をやつたらどうか、こういうふうに述べておつた。しかも法文には書いてある。そして現在、片一方は何ら問題を起さずにどんどん政府資金の裏づけを受けて工事はやつて行ける。片一方は係争をしている、こういうようなことでは、私はすみやかに電源を開発するという電源開発促進法を制定いたしましたわれわれ国会の意思というものと政府処置というものとは、どうも食い違つておるように思うのでありますが、大臣はその辺に食い違いがないと、こういうふうに思つておりますか。
  137. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 係争中だから工事が進まないのかと申しますると、係争は行政処分につきましての係争でありまして、工事はただいま順調に進んでおるのであります。従いまして今係争中ではありますが、工事の進捗には支障を来しておらないということを申し上げ得るのであります。従いまして将来の問題に触れますが、この裁判決定いかんによりましては、工事の進捗のその状況のもとにおいて、清算するといいますか、処理を受けることに相なるのであります。これは別にむずかしい問題だとは私ども考えておりません。問題は具体的な工事にとりかかる、またそれを進めて行くことが順調に行くか行かないかというところにかかつておると思うのであります。従いまして現在の状況におきまして別に支障はないし、むしろ私どもは順調に工事が進んでおる、かよう考えておる次第であります。
  138. 前田正男

    ○前田(正)委員 まあこの問題については、こういういろいろと損害賠償の問題、あるいは利害係争中の問題であるとか、そういつた問題が起つても、とにかく工事は既定通り行われておればそれでいいのだ、こういうお考えようでありますけれども、私たちといたしましては、電源開発というものはもつと総合的に行わるべきものでありまして、上流只見川開発はだれがやるかという問題も考えなければならぬ。これは閣議決定のときにそういうことをお考えになつておる。その他これが電力緊急調整とかいろいろな問題もあるわけでありますから、少くとも私は前から問題になつておつた天竜の佐久間地点なんか、わざわざこれと同じようなときから問題になつておつたものを、電源開発まで延ばされて、第四回の審議会において決定して、その中間に入つて、円満に仕事を運んで行かれるようなことを現在やつておられる。そういうように私は今後こういう電源開発というのは、只見川というのは総合開発的な重大な、また日本におきまして一番大事な電力地点であるのでございますから、ただ一部の解釈、あるはいまた一部の考え方だけでもつて私はこれを進めて行くべきものではなくて、せつかく電力開発審議会というものがあるのですから、それにこの法律ができたわけでありますから、その法律を考えられて、しかも只見川ということが書いてあるわけですから、そこでみんなで相談されてなるほどこれは電源開発会社がやるべきところではない、民間の会社がやるべきものだというので、そこの地点をはずして、そしてそれが東京電力あるいは東北電力に移つたというなら、私はよくわかります。しかし電源開発株式会社というものができ得べくしておつて、しかも二十七年度の金を持つておるのに、一応そこに地点として考えらるべきであるということを私はもつと考慮されてから、それからあと電源開発株式会社でやるべきではないということに決定されたならばまた別問題でありますが、私たちはどうも国会のその当時の意思とは少し食い違つておるように思うのであります。その点はこの辺にしておきますけれども、さつきの大臣のお話の中で、通産省よりいろいろとこれをやつてもいいというお話があつたそうでありますが、それはいつごろおありになつたか、ひとつお聞きしたい。
  139. 吉岡俊男

    吉岡説明員 公益事業委員会がなくなりまして、八月一日に公益事業局がつくられたのでございますが、それから後でございまして、八月四日に通産省から建設大臣及び福島県知事あてに支障なしという返事を出しております。
  140. 前田正男

    ○前田(正)委員 八月四日ということは、閣議決定が七月二十五日ですと、閣議決定のときに通産省から何かあつたのですか。
  141. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 その当時は関係方面で意見を交換し、大体の方針をきめたように私は記憶いたしております。
  142. 前田正男

    ○前田(正)委員 どうもそこがちよつとおかしいように思いますが、あるいは一度通産省の人にお聞き願うことにいたしますが、そうするとこれはその当時の経済安定本部からは、何ら話を聞く必要はない、電源開発促進法が成立はしておりますけれども、聞く必要はないと思つて聞かなかつたかどうかということをお尋ねいたします。
  143. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 当時は主として電源の需給調整あるいは料金需給関係等が主でございまして、各地点に関する点までは入つてなかつたと記憶しております。
  144. 前田正男

    ○前田(正)委員 それはなるほど地点ではなくて、電源開発株式会社というものはこれから成立しようという、その主管事務を経済審議庁が握つておられるわけですから、これは電源開発株式会社でやる地点で必要ない、民間会社でやる地点である、こういうことに対する経済審議庁の意見を一応求めるまでに、すでに七月三十一日に公布されておるわけでありまして、当然これは今後電源開発株式会社が取上げる地点ではない、こういう点については意見の問合せがあつたわけですか、どうですか、その点聞かせていただけませんか。
  145. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 あるいは大臣、次官等上層部において御相談あつたかと思いますが、私はまだその当時ほかの仕事をしておりましたので聞いておりません
  146. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 その点は過日も予算委員会異例閣議だということを申されておりますが、普通ならば事務当局間で話を進めて参ります。しかしこの種の問題になりますと、間々あることでありますが、閣議におきまして方針を決定する場合もあるわけでございます。従いまして関係閣僚としては十分知つておることだと思います。
  147. 前田正男

    ○前田(正)委員 そうすると関係閣僚は知つておるということは、その責任を負うべき経済審議庁としては電源開発株式会社の開発地点として異議を申しはさむ必要はない、こういうことを了承したということになるわけですか。
  148. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは審議庁長官の意見を聞いていただきたいと思いますが、普通にはさよう考える筋でございます。
  149. 前田正男

    ○前田(正)委員 もう一つお聞きしたいと思うのですが、先ほど決定地点に、決定理由とされて地元の協力ということを盛んに言われておりました。まことにけつこうなことでありますが、この地元の協力というのは、単に今回の二開発地点だけについての御意見でありますか、今後すべての点についてそういうお考えを持つておるのか、ちよつと承りたいと思います。
  150. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お尋ねの御趣旨ちよつと私はき違えておるかわかりませんが、この種のダム建設等におきましては全国至るところにおいていろいろ計画は進められますが、何と申しましても地元民の協力が絶対に必要な条件よう考えます。しかしそれのみで決定するわけのものでもないことはこれまた御了承をたまわりたいと思うのであります。今回閣議決定理由になつておりますのは上田本名地点についての問題だけを書いておるわけでございます。
  151. 前田正男

    ○前田(正)委員 これは両地点異例の取扱いをされたというときの理由の、四大理由一つになつておるわけですが、相当大きな理由を占めておると思うのでありますが、この地元の協力ということはわれわれとしてまことにけつこうだと思うのでありますが、しかし地元の協力ということを今後こういうふうに大きく閣議決定のときに取上げて行かれるというようなことになりますならば、この地元の協力ということ、この場合においてはその四分の一の大きな理由になつておるのですが、今後開発地点にそういう問題が非常に大きく取扱われて行くということになりますと、これは政府処置において地元の協力を求められるよう補償問題がたくさんあるわけです。それは政府の出資によつてできる補償問題がたくさんある。そういうものに対しましては、大臣とされては—特に建設委員会においてやるべき仕事がたくさんあるわけでありますが、そういうようなことに対しては地元の協力を得るために建設大臣、ことに政府といたしましては特別の処置を今後考慮して行こうというお考えであるかどうか、ひとつ承りたい。
  152. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 上田本名地点開発について地元の協力があるということを申しておりますのは、これは地元の協力を得るために非常な日数を要するのが過去の例であります。しかしこの場合におきましては、すでに地元の協力態勢ができておるということは工事を進めるのに非常に早いのではないか、これは早期開発という意味において特に地元の協力という点をあそこに明記いたした次第であります。ただいま御指摘ような地元の協力を得るということ、これは抽象的に申せば必ず必要なことでありますし、しかし協力がないから当該地点発電の場所に選定できないかと申しますと、これは積極的に地元の協力を得るような各種の方途を講じなければならないのであります。従いましてどうもお尋ねの点はあそこに尽きました理由の地元協力云々が早期開発上の素地ができておるという意味合いにおいて地元の協力ということを申し上げておりますので、ややお尋ねの点と違つておりはしないか、私はかよう考えますので、この点二通りにわけてお話を申し上げます。
  153. 前田正男

    ○前田(正)委員 しかしながらすでに二十七年度に着工された、二十八年度度にやる、こういうわけであります。従いましてこれは当然早期開発の目的に入ると思うのでありますが、それではその地元の協力を得るに必要なところの補償問題については、具体的に二十七年度、二十八年度の開発地点となつているところを具体的に建設省としてとりきめを進められておるかどうか。あるいは建設省行政処分でできる地方も相当あると思うのでありますか、どことどこと地元の協力を得るために求められておるか。この点について大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  154. 米田正文

    米田政府委員 この点については、今日建設省といたしましても全国各地でやつておるダムがありますので、いずれも補償問題は重大問題でございまして、なかなか簡単に解決のできない状態でございます。よつてそれぞれの地点々々において、それぞれの特色を持つておりますけれども、それぞれについて現地で極力円満な解決をはかるように努力をいたしておりますので、完全に用地問題を解決して仕事をするというような場合は非常にまれでございまして、仕事と補償とを並行しながりやつておるような現状であります。
  155. 前田正男

    ○前田(正)委員 言いがかりをつけるようなつもりは全然ないのでありますりれども、とにかく建設大臣も地元の助力が必要であるということをお考えになつておられる。電源開発その他総合開発工事というものは急を要するもりであり、しかもまた現在政府が資金投じておられるところでございます。補助を出しておられるところであります。ところが、往々にしますと、建設行政の中で地方問題が非常に不熱心であるという、そういう面が非常に多いと思うのであります。その点ひとつ建設大臣もよくお考えくださいまして、地元の協力を得るような、補償問題について、これは電源開発に限らず、総合開発においても、あるいはまたすべての問題についてなるべく御留意願いたいということを申し述べまして、質問を終ります。
  156. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 たいへんけつこうな御注意でありますので、今後十分注意いたしたいと思つております。
  157. 遠藤三郎

  158. 福井勇

    福井(勇)委員 質問を取消します。
  159. 遠藤三郎

    遠藤委員長 他に質疑はございませんか。
  160. 志村茂治

    ○志村委員 ダムが建設されましてから、そのために水温が低下し、下流の水田はそのために被害が相当大きいということを方々から陳情されておるのでありますが、これにつきまして政府は従来どのような措置をとつておられましたか。それをお伺いしたいと思います。
  161. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま申されますように、ダムを建設するその取入れの方法いかんによりましては、たいへん水温が低下し、灌漑用水としてはこれは有害である、そのようなお話をしばしば聞くのでありまして、過去におきましても、場所によりまして、特別な装置をくふうしておるところも数箇所あるわけでございます。—しかしながら現在の状態におきましては、これについての対策はまことに不十分だと思います。ダム建設が治水の新しい方策として採用せられております際に、ただいま御指摘になりましたような事柄が将来起らないように、今後は農林当局の調査等をも十分尊重し、また相談すべきことは十分相談をいたしまして、万全を尽して参る考え方でおります。
  162. 志村茂治

    ○志村委員 聞くところによると、水温一度下るに従つて、大体一〇%の収穫減を来す、相当重大な問題であろうと思いますが、これにつきましては、損害賠償というようなことでは、個人的な解決はできても、日本の食糧の建前から見て重大問題だと思いますので、むしろ賠償などというよりも水温が下らないような、いろいろな措置を講じてもらいたい。これにつきましては政府では法律か何かしつかりした措置を講ぜられるお考えがおありかどうか。
  163. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 総体といたしましては、ダム建設に際しては補償、賠償等の義務を負わしておる例は幾つもあるのでございます。しかし稲作等のことを考えますると、ただ単に金銭的補償だけでは不十分だと思います。大体御承知だと思いますが、八月の初旬時分の水温としては二十五度が限界温度だということが申されておるのであります。かような点も十分調査ができておりますので、この限界温度の維持、確保等につきまして、将来万全を期して行く考え方で、いろいろ設計等をもいたしておるようなわけであります。しかしただいまの状況におきましては、まだ損害の具体的な資料等はなかなか困難ではないかと思いますので、特に水温が低くて、耕作に適しない、かような場所においては、特別なくふうをいたして行くより方法はないのであります。常識的に申しますならば、高いダムをつくりまして、そうして深いところの水をとりますと、それは非常に冷たいということになるわけでございます。従いまして、灌漑用水に水を配ります際には、ダムの上水をとるような式を考えて行きたい、あるいは中間において道、いわゆる水路式の場合におきましては隧道等を通しまして、非常に水温が低くなるというような場合におきましては、途中でこの水を一応せきとめて、暖めて行くような方法をも考えて行かなければならないのでございます。従いまして最近のダム建設一つの問題として、建設省におきましても積極的にこの問題を検討し、りつぱな研究に基いての設計を進めて参りたい、かよう考えておるのでありますが、まだ実際といたしましては、ただ単にその方向にあるという程度でありまして、現状ではまことに不十分ではないかと思います。二、三の地点、たとえば庄川水系であるとかあるいは北海道にもさような川があるやに聞くのでありますが、そういうような特殊な地点につきましては、後になりまして特別な施設を付加して行く、新しくつけ加えて行くというようなことが考えられておるような次第でございます。
  164. 志村茂治

    ○志村委員 今の段階では賠償くらいしか実行されていないというのでありますが、これは災害の評価も非常に困難なことでありますし、また相手が農家のことであつて、その損害賠償の請求も思うように行かないというよう状態でありますので、できればその水温を保つための装置をすることをダム建設者に命ずるような、しつかりした措置を講じてもらいたい。法律か何かよつてこれをきめてもらいたい、できれば単行法によつて出していただきたいということを私は考えておりますが、これはいかがですか。
  165. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 政府におきましても食糧増産に特に意を用いておりますこの際でありますし、また農村に対しましてもいわゆる弱い者いじめにならないような政治をぜひともいたしたいと、かよう考えておりますので、ただいまのようなことは、必要な場所におきましては条件として考えてしかるべきだと思つております。
  166. 遠藤三郎

    遠藤委員長 本日の質疑はこの程度にとどめ、次会は公報をもつてお知らせします。  なお先ほど下川委員の御要求として、本電源開発に関する調査の慎重を期するために、関係当事者の出席を求め、その意見を聴取せられたいとの御意見でありましたが、本問題につきましては、追つて理事会において協議をいたしたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十七分散会