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1952-12-03 第15回国会 衆議院 経済安定委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月三日(水曜日)     午前十時十九分開議  出席委員    委員長 遠藤 三郎君    理事 前田 正男君 理事 栗田 英男君    理事 吉川 兼光君       内田 常雄君    小川 平二君       佐藤洋之助君    綱島 正興君       横川 重次君    三浦 一雄君       河上丈太郎君    志村 茂治君       八木 一男君  出席国務大臣        国 務 大 臣 小笠原九郎君  出席政府委員         総理府事務官         (経済審議庁総         務部長)    西原 直廉君         総理府事務官         (経済審議庁調         整部長)    岩武 照彦君         総理府事務官         (経済審議庁計         画部長)    佐々木義武君         総理府事務官         (経済審議庁調         査部長)    須賀 賢二君  委員外出席者         専  門  員 円地与四松君         専  門  員 菅田清治郎君     ――――――――――――― 十二月二日  国土総合開発推進に関する陳情書  (第六〇〇  号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日本経済基本的政策に関する説明聴取     ―――――――――――――
  2. 遠藤三郎

    遠藤委員長 これより会議を開きます。  前会に引続き、日本経済基本的政策に関する説明を聴取いたします。経済審議庁長官小笠原九郎君。
  3. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私が小笠原でございますが、ただいま委員長のお話がありました経済政策基本方針について申し述べます。  わが国経済現状問題点となる点を申し上げたいと存じます。最初に国際収支の問題であります。わが国国際収支状況は、朝鮮動乱以後急速に改善され、現在の保有外貨ドル換算十億ドル余に達しております。しかしながら、輸出の面においては、国際的なドル不足に基く輸入制限輸出競争の激化によつて繊維製品中心として輸出減少傾向にあります。これにかわつて将来東南アジア地域開発工業化計画の進行に伴う機械等重化学工業品輸出増加が期待されますが、機械及びその基礎をなす石炭鉄鋼その他重化学工業品においては、価格が国際的にかなり割高であることであります。他方食糧並びに鉄鉱石、粘結炭綿花等重要原材料相当部分輸入に依存し、これは人口増加等の原因で、現状のままでは将来食糧等はますます輸入増加が予想されるとともに、現在これらの輸入物資の多くはドル地域に仰いでおり、このため本年度貿易は対ドル地域約六億ドルの輸入超過が見込まれております。現在貿易面の赤字は七億ドル余に上る特需その他の特別な収入によつてカバーし、国際収支じりは黒字となつておりますが、これらの収入は臨時特別のものと考えられるので、長期的に見れば正常貿易伸張外航船腹増強による貿易外収入増加等によつて国際収支拡大的均衡をはかる必要があると存じます。  次に産業鉱工業生産は終戦後急速に回復し、本年度戦前水準の一三五・九%に達する見込みであるが、輸出不振等影響をこうむり、国内消費需要は比較的好調であるにかかわらず、電源開発産業合理化等特定部面を除く一般産業投資退潮傾向等によつて、最近に至り全般的に見て停滞傾向が強いのであります。しかしわが国産業基礎は脆弱であり、資本蓄積貧困であるとともに、特に重工業部門においては設備老朽化がはなはだしいのであります。従つて将来正常貿易伸張し、経済規模拡大するためには、基幹産業充実をはかるとともに、資本蓄積促進産業合理化徹底が必要でございます。一方農林水産業生産においては、本年の気象条件の良好であつたことにより、農業生産指数戦前水準を突破し、全体として戦前水準の一〇六・六%に達する見込であります。しかしながら、食糧需給の面においては、主食の相当部分輸入、なかんずくドル地域よりの輸入に仰がざるを得ない現状であり、ドル収入増加をはかることの困難なわが国においては、将来の人口増加等を考えれば、輸入地域転換とともに、食糧増産による国内自給度向上をはかることが絶対必要となるのであります。  次に、物価について申し上げますと、朝鮮動乱影響により高騰したわが国物価は、輸出の不振、産業活動停滞等により、最近は上下の変動は僅少であり、二十五年六月基準卸売物価指数はここ数箇月一五一ないし二を前後している状況であります。しかしながら、わが国物価は、資本蓄積貧困原材料輸入依存等経済の弱点により、国際物価の動向に影響されることが強く、些少の刺激によつて変動を招来しがちである点は特に注意しなければならないと存じます。また消費財はともかく、重化学工業品中心とする生産財価格については、国際水準に比し割高であります。従つて企業合理化徹底して、コスト引下げの根本的な方策を講ずることが必要でありますが、産業活動停滞が問題とされるときにあたり、過度の濫売的傾向により、価格の不健全な低下を来さしめることは、結局において企業弱体化を招来することになつて、永続的な国際競争力確保とはならないことに注意しなければならないと存じます。  次に、国民生活について申し上げますと、本年度国民所得は、生産賃金上昇等によつて年度より約一割増加し、五兆三千二百六十億円程度と推定され、都市農村を通ずる生活水準戦前水準の九三ないし九四%程度に達する見込みであります。しかしながら、生産指数等に比較して、一般的な生活水準がなお戦前に達しないこととともに、国民生活の内容については、当面衣食の一応の充足に対して住宅不足がはなはだしく、絶対的不足戸数が百万戸を越えている点が問題でありまして、独立に伴う自衛力充実については、財政規模、特に租税負担と関連して、国民所得及び国民生活との調整が問題であり、今後の経済発展国民生活向上等財政支出増加が必要とされるときにあたり、経済力現状、一人当り実質的国民所得国際比較等から考えれば、自衛力漸増のための支出国民所得に対する割合は、支千度は三・四%でありますが、これは一応現在程度にとどめ、経済力充実と相まつて漸次拡充をはかつて行くべきであろうと存じます。  次に政策の基調について申し上げますと、目標は、貿易拡大的均衡中心とする経済規模拡大により、経済力を強化して国民生活向上及び雇用増大をはかり、あわせて自衛力漸増を期する必要ありと考えます。次に、基本方針、右の目標は、国際的視野のもとに、諸般の施策を総合的にこれを推進しなければ達成し得ないのでありますが、わが国経済が一応の回復段階に達した今日、その安定を推進し、経済発展目標に到達するためには、長期的観点のもとに、日本経済に内包する問題点に対処し、すみやかにこれが解決策推進に着手する必要があります。右の構想に基く今後の経済政策基本方針は次の通りであります。  一、東南アジア等との国際的経済提携を強化し、同地域食糧その他の資源開発工業化計画に積極的に協力し、食糧鉄鉱石及び塩等重要輸入物資相当部分ドル地域から東南アジア転換するとともに、同地域への機械等重化学工業品輸出増大を期する。  二、正常貿易拡大に資するため、輸出の重点は漸次機械等重化学工業品に移らざるを得ないが、重化学工業品においてはその価格の国際的割高の現状にかんがみ、企業合理化促進し、国際競争力を培養する必要があると存じます。また著しく入超となつているドル地域に対しては、輸入転換節約等と並行して生糸その他の輸出を増進し、漸次その収支改善する必要があるのであります。  三、貿易外収支改善をはかるため、輸出入貨物相当部分自国船により積取ることを目標として、相当外航船腹増強する必要があるのであります。  四、将来の貿易規模拡大の要請に応じ、産業基礎を強化し、産業構造を高度化するため、電源開発促進鉄鋼石炭等重要基礎産業における合理化徹底を期する。すなわち、まず重化学工業基礎を強化するため、エネルギー源電力ベースヘの移行を積極的に推進し、将来の産業規模に応ずる低廉な電力供給増加目標として、長期計画により電源開発推進することが最も重要であると存じます。  次に、石炭について、強粘結炭輸入地域を極力インドその他の非ドル地域転換し、国鉄電化促進により、消費節減を期するとともに、出炭量増加をはかつて、将来の需要に応ずる石炭確保を期する。次いで国際的に著しく割高な石炭価格については、堅坑開発中心とする炭鉱の合理化計画推進いたしまして、生産コスト引下げをはかる考えであります。  次に基礎的な資材である鉄鋼については、その原料の相当部分を主としてドル地域からの輸入に仰がざるを得ない現状にかんがみまして、東南アジア開発に協力して輸入転換をはかるとともに、外航船腹増強を通じて海上運賃外貨払い節約促進し、著しく老朽化した生産設備近代化をはかる等、合理化計画促進して割高な価格引下げを行うことにするのであります。  中小企業等については、経済規模発展に対応するよう設備能率化企業系列整備等の手段により、その安定を期するとともに、中小企業金融円滑化をはかることにする。  五、人口増加に対応して、現状のままでは食糧綿花羊毛等輸入増大が予想されますので、国内における食糧増産合成繊維産業の育成による綿花羊毛等輸入節減を通じて、国際収支改善に努めるとともに、国内自給度向上を期したいと思います。  六、長期にわたる経済拡大的循環による国民総生産の増加を通じて、国民生活向上を期するが、当面、低額所得者中心とする国民負担軽減のための減税財政資金による住宅増築等によりまして、国民生活水準実質的上昇をはかりたいと存じます。  七、雇用機会減少については、当面社会保障制度活用によるほか、電源開発推進公共事業拡充等を通じて、その影響を吸収するよう努めるとともに、根本的には経済規模拡大を通じて、雇用問題の解決をはかりたいと思います。  八、自衛力増強については、国民生活を圧迫せぬよう、総合国力伸張に応じて、国民所得増加均衡をとりつつ、漸進的に行う方針であります。  九、経済基盤の強化をはかつて行きますためには、今後多大の資金を必要といたしますが、資本蓄積貧困わが国においては、減税等による資本蓄積促進により、民間資金を強化するとともに、物価への影響を十分考慮しつつ、蓄積政府資金活用等財政を通ずる投融資の積極化をはかる必要があると存じます。
  4. 遠藤三郎

    遠藤委員長 これにて説明は終りました。引続き質疑に入るのでありますが、本日は大臣の都合によりましてその質疑は後日にあらためてこれを行うことといたします。  次会は公報をもつてお知らせすることにいたし、本日はこれをもつて散会いたします。     午前十時三十四分散会