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1953-03-11 第15回国会 衆議院 外務委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月十一日(水曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 栗山長次郎君    理事 池田正之輔君 理事 中山 マサ君    理事 戸叶 里子君 理事 帆足  計君       今村 忠助君    植原悦二郎君       大石 武一君    木村 武雄君       近藤 鶴代君    富田 健治君       馬場 元治君    前尾繁三郎君       松田竹千代君    森下 國雄君       安東 義良君    楠山義太郎君       高岡 大輔君    並木 芳雄君       島上善五郎君    福田 昌子君       黒田 寿男君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         検     事         (刑事局長)  岡原 昌男君         外務政務次官  中村 幸八君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (国際協力局         長)      伊関佑二郎君         労働政務次官  福田  一君         労働事務官         (大臣官房国際         労働課長)   橘 善四郎君         労働事務官         (労政局労働法         規課長)    大島  靖君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      亀井  光君  委員外出席者         外務事務官         (経済局次長) 小田部謙一君         法務事務官         (刑事局総務課         長)      津田  実君         通商産業事務官         (通商局市場第         三課長)    市橋 和雄君         労働事務官         (職業安定局庶         務課長)    村上 茂利君         参  考  人         (ブラジル東山         事業総支配人) 山本喜誉司君         参  考  人         (コチア産業組         合常務理事)  大平 清実君         参  考  人         (日伯協同社勤         務)      中川権三郎君         参  考  人         (食糧品業)  高橋 新一君         参  考  人         (理髪業)   井戸宗四郎君         参  考  人         (理髪業)   井戸 貞子君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 三月九日  委員近藤鶴代辞任につき、その補欠として安  藤正純君が議長指名委員に選任された。 同月十日  委員安藤正純君、松田竹千代君、高岡大輔君及  び松本瀧藏辞任につき、その補欠として近藤  鶴代君、石橋湛山君、白浜仁吉君及び岡田勢一  君が議長指名委員に選任された。 同月同日  委員近藤鶴代辞任につき、その補欠として岡  野清豪君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員石橋湛山君、岡野清豪君、白浜仁吉君、田  中稔男君、大橋武夫君及び西川貞一辞任につ  き、その補欠として松田竹千代君、近藤鶴代君、高岡大輔君、島上善五郎君、富田健治君及び大  石武一君が議長指名委員に選任された。 同日  理事谷川昇君及び田中稔男君の補欠として中山  マサ君及び帆足計君が理事に当選した。     ————————————— 三月五日  国際航空運送についてのある規則統一に関す  る条約批准について承認を求めるの件(条約  第八号) 同月九日  国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官  の職務等に関する法律案内閣提出第一五八  号) 同月十日  航空業務に関する日本国オランダ王国との間  の協定締結について承認を求めるの件(条約  第九号)  航空業務に関する日本国とデンマークとの間の  協定締結について承認を求めるの件(条約第  一〇号)  航空業務に関する日本国とノールウエーとの間  の協定締結について承認を求めるの件(条約  第一一号)  航空業務に関する日本国とスウエーデンとの間  の協定締結について承認を求めるの件(条約  第一二号) 同月六日  箕輪町及び相馬地内相馬ケ演習場の開放に  関する請願福田赳夫紹介)(第三四九七  号)  同(中曽根康弘紹介)(第三四九八号) 同月九日  領海侵犯事故漁船乗組員の返還に関する請願  (椎熊三郎紹介)(第三七七五号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  職業安定組織の構成に関する条約(第八十八  号)の批准について承認を求めるの件(条約第  五号)  工業及び商業における労働監督に関する条約(  第八十一号)の批准について承認を求めるの件  (条約第六号)  団結権及び団体交渉権についての原則の適用に  関する条約(第九十八号)の批准について承認  を求めるの件(条約第七号)  在外公館名称及び位置を定める法律等の一部  を改正する法律案内閣提出第九六号)  移民に関する件  国際情勢等に関する件  旅券法の一部を改正する法律案内閣提出第一  四五号)  国際航空運送についてのある規則統一に関す  る条約批准について承認を求めるの件(条約  第八号)     —————————————
  2. 栗山長次郎

    栗山委員長 ただいまから外務委員会を開きます。  本日は移民に関する件について、参考人方々から意見を聴取いたし、調査を進めたいと存じます。  本日御出席を願いました参考人山本喜誉司さん、大平清美さん、中山権さん、以上五名の方々であります。参考人からの御陳述はお手元に配付いたしました要項によつて、なるべく簡潔に実のあるお話を承りたいと思つております。この要項は必ずしも完全ではございません。  まず参考人の方に申し上げますが、このうち陳述なさることを御不便とお考えになる項目がございましたら、それは抜いていただいてけつこうでございます。それから参考人方々には、どうぞ楽なお気持ちで御意見の御開陳を願いたいのでございます。別にここは裁判所のようなかた苦しいところではございません。但し最高権威場所でございますから、皆さんの言論は十分に尊重いたします。それからお一人十五分ずつでもつて、この要項従つて切上げを願いたいのでございます。それでは大平清美さんからお願いいたします。
  3. 大平清実

    大平参考人 私はただいま御紹介にあずかりました大平清美であります。ブラジルサンパウロ市に本部を置くコチア産業組合常務理事として、十三箇年くらい所属をいたしておるものであります。  ブラジルと申しましても、非常に広い地域でありますし、ほんの部分的にしか知らない私たちが、御参考になるようなお話を申し上げることも困難かと思いますけれども、せつかくのお招きでありますから、自分の知つておる範囲内、そうして考えておることを率直に申し上げたいと思います。  まずお断り申し上げたいことは、今申し上げましたように、自分たちは非常に部分的のことしか知りません。そうしてまた百姓でありまして、こんな場所で申し上げるような専門的なことも存じませんし、かつまた非常に言葉がぞんざいでありますから、どうぞそういう点はお見のがしにあずかつて、もし参考になります点がありますれば、御参考としていただきたい。お耳ざわりの点はひとつお許しいたたきたいと存じます。  まずここに書かれておりまする事項につきまして、順次申し上げてみたいと思いますが、私は昭和九年三月に向うに参りまして、ことしの三月でちようど十九年になるわけであります。職業は、今申し上げましたように、自分コチア産業組合常務理事をしておりますが、家族たち農業を営んでおります。どうして渡伯したかということにつきましては、大体補助移民と同一でございまして、内地を食い詰めまして、狭い日本よりか広いブラジル行つてみよう、こういうような気持で参つたわけであります。私たち考えたことは、その後のブラジル事情からいつて、決してむだではなかつた、ことに現在の日本情勢からいつても、ブラジル移民ということは愼重に考えなければならぬのじやないか、こういうふうに考えます。  ブラジル移民現状でありますが、すでに御承知と思いますが、四十五年の移民の歴史を持ちまして、約十九万の人間が向うに渡つております。その二世、三世、一昨年四世が初めて生れまして、約二十万、ばかりの二世、三世、四世がおります。合せまして四十万の者がおるのではないか。これは正確な数字ではありません、推定でありますが、まずそのくらいのものがおるのではないか。そうしてそのうちの九〇%は農業を営んでおる。あとの一〇%が工業とか商業、あるいはその他のいろいろの職業についおるというふうに見るべきでないかと思います。そうして経済的にも戦後非常に充実し、向上して参りまして、ことに終戦後、今までの出かせぎ根性というようなものがなくなり、どうしても自分たちはここで子孫のために永住しなければならぬ。あの狭い日本帰つて、苦しいところへ自分たちが割込むというようなことはもつてのほかである。自分たち子孫のためにここに永住しなければならぬという気持が起つて土地を買う、あるいは住宅を建てる、また従つてその経営も非常に堅実になるというようになつて参りまして、そういう気持の転換と同時に、経済的な面も非常に充実、向上したということが言えると思います。  次に移民対策についての意見とありますが、私たち政府対策そのものを十分に存じませんので、どうこう申し上げることもおこがましいと思いますが……。
  4. 栗山長次郎

    栗山委員長 どうあつたらいいという御希望でいいのです。
  5. 大平清実

    大平参考人 ただこの一箇月半ぐらいの滞在期間内に感じました点から申し上げますと、昔の拓務省のようなものがあつて移民対策を総合的に統一するという必要があるのじやないか。外務省もやり農林省もやるというように、何かちりちりばらばらになつているのじやないかというふうに感じます。移民問題は、非常に国策の上からいつても重要であると思いますので、そこに総合統一が必要でないかというふうに考えます。それからブラジル事情について官民の理解が非常に薄いと考えます。私たちの地方では、向うにたくさん移民行つておりますが、帰つてみますと、その兄弟あるいは知人たち生活がどういう程度のものであるかということにつきましては、ほとんど知らない。日常生活状態すら知らないというのが普通であるように思います。こういうようなことでは、ブラジル移民あるいはその他の諸外国への移民というような問題が、国民の声として積極的にわくはずがないと思います。ただ食い詰め者が、どこか流れて行くところはないかというようなことで行くようでは、ほんとうの平和な進出はできないと思います。十分に外国事情も了解しまして、そうしてもつと真剣な、積極的な気持移民をするという必要があるのじやないかと思います。そういう意味におきまして、当局の方たちが諸外国の実情を調べる。またそういう現地の有力な人たち日本に呼んで意見を聞く。あるいは現地事情を知らしめることも必要でないかと思います。  第三の帰国理由というのは、私は一時の訪問でありまして、展墓のために帰りましたので、永住帰国ではありません。家族たちは、ブラジル事業をやつておりますので、すぐ帰る予定であります。これは私には適合しませんから飛ばします。  四の事項につきましては、ただいま申し上げましたように、まだ滞在期間も短かく、視察さしていただきました方面も非常に狭いので、はつきりした印象あるいは意見を申し上げるところまで行つておりません。  五の、日本国内でどういう教育をすれば移民に適合するかということでありますが、これは行つて働くところの職業に応じまして、必要なところの専門的な、少くとも常識を持つて行かなければならぬと思います。日本移民大半が、ただいま申し上げましたように、九〇%は農業者でありまして、農業の方には非常に日本人は、常識といいますか技術を持つております。従てブラジルにおきましても、農業移民としてはまず諸外国移民に比べて成功した方であります。そういうふうに外国へ渡る以上、自分の目的に必要なところの勉強をして行くことが必要でありますが、それと同時に、外国事情をよく知つて——たちもほとんど何も知らずに参りまして非常に戸惑いましたが、十分に外国事情を知つて行かなければならぬ。その国々によりまし風俗習慣いろいろ違いますので、そういうような点が非常に必要ではないかと考えます。  次の移民のあつせん機関に対する意見、これは先ほど申し上げましたように、どうしても総合統一する必要がありますし、また現地にそういうような移民会社をつくることも必要でないかと思います。   七の問題は、別にそういうような団体ブラジルでは見受けません。但し終戦後におきまする敗戦の認識の問題から、ブラジル官民日本人に対する気持をそこねたということは言えると思います。しかしそれは団体として取上げるほどの問題でないと存じます。  次に八の、日本移民と諸外国移民との比較でありますが、これは数字的なものでありましようか、あるいは質的なものでありましようか。
  6. 栗山長次郎

    栗山委員長 どちらがよく適合して、その土地におちついておるか、栄えておるかということでいいのです。
  7. 大平清実

    大平参考人 移民の数といたしましては、日本移民はあまり多い方ではありませんが、ただいま申し上げましたように、その九〇%は農業者として質実に仕事に携わつております。ことにブラジル農業は、どうしても土地を持つて堅実に経営して行くということでなければ、今までのような借地的あるいは投機的な経営法では、永続性がないということになつておりまして、日本人はどんどん土地を所有するような傾向になりつつあります。従つて日本移民は非常におちついて、そうして経済的にもまず中以上のゆとりのある生活をするようになつてつております。終戦欧州方面から戦災移民という名称でもつてイタリア、オランダあるいはドイツ方面から移民が参りましたけれども、どうしてもブラジルにおちつけない。ことに農業者としてはおもしろくないというようなことで、あまりおちつかない。すぐまた帰らなければいかぬというような事態が起つたことを聞いております。そういう点からいいましても、日本人は諸外国移民に比べて非常におちついた、ゆとりのある生活ができておるということが言えると思います。ただ例外として、リオ・グランデ・ド・スールいわゆる南大河州の方面で、ドイツ人が非常におちついた自給自足的な農業経営をやつておりますが、これは少数でありまして、全体から申し上げますと、日本移民は非常におちついた、そうして経済的にも中以上の生活ができておるということが申し上げられると思います。  日本政府と諸外国政府援助方法の差異、そういうことにつきまして私、諸外国移民がどういう方法で入つて来ておるか詳しいことを存じませんので、申し上げられませんが、終戦後の戦災移民というようなものは、ブラジル政府との了解のもとに相当援助を受けて入つておるようであります。  農業移民以外は不可能かという問題は、これは過去の考え方であつて、もう今日は農業移民だけではいけない。日本のいろいろの進んだ技術、こういうものを持ち込んで、向う工業なりあるいはそのほかの業務に従わしめるようにしなければならぬと思います。御承知のように各国とも自主経済をいたしております。輸入なんか統制をいたしておりまして、せつかく日本でできる品物をその国へは入れないというようなことは、これはどこも行つておりまして、今までのように自由に日本の製品を売り込むことも不可能かと思います。そういう意味におきまして、技術あるいは資本というようなものを入れる必要性があるのじやないかと思います。また現に工業商業そのほかあらゆる方面日本人も転業しつつありますので、非常に有望であると思います。これはブラジルのことをあまりあしざまに申し上げる意味ではありませんけれども、まだ工業なんかにおきましては非常に幼稚であります。各国技術資本が今盛んに投下、輸入せられつつありますような状態でありますから、日本としてもこの点考える必要があるのじやないかと思います。  次の、ブラジル国移民に対する待遇という問題でありますが、何だか漠然としておりますけれども、とにかく戦争中も、そうして戦後におきましても、日本人に対しましては官民ともに非常に好遇をしてくれます。それは要するに日本人大半農業移民であつて、最も大事な食糧を生産するものであるというような建前から、非常に好遇をせられましたが、しかし移民であるからといつて別に特別な待遇を受けるということはありません。特に植民会社のようなものをつくつて土地の払下げを受けるとか、あるいはそれに対します諸種の便宜を与えてもらうというようなことは、団体的でありますればできるかもしれませんが、個人的には別に特別な待遇を受けるということはないと思います。  十一、の問題は、私はあちらのことは全然存じませんので、ここで申し上げられませんが、戦争前にも南拓の方に大分移民を入れましたけれども、気候であるとか、あるいは衛生の設備であるとか娯楽の機関であるとか、いろいろの事情から、向うに残つておる者は非常に少いということから考えまして、今後のあちら方面移民に対しましては、そういう点をよほど強化する必要があるのでないかということは申し上げられると思います。  ブラジル移民生活状態は、先ほど、諸項目の中で申し上げておりますので、重ねて申し上げません。  十三、のブラジル邦人間の軋轢とその影響、これもちよつと申し上げましたが、とにかく意思の疎通しないことからいろいろの軋轢が起りましたことは、母国の方々に非常に申訳ないと思います。非常に残念に思いますが、何しろ地球の裏表であり、日本から申しますと一番遠いところである。ことに終戦後の連絡とか、いろいろの報道機関のなかつたことというようなことによりまして、終戦当時に信じましたことがなかなかぬぐい去ることができませんで、かような結果になつたわけであります。これが今後の移民の問題に多少影響を及ぼすのではないかというようなことは考えられると思います。非常に残念に思いますが、しかし何しろもう時間もたちましたし、ほとんど解消してしまつたといつてよいと思います。
  8. 栗山長次郎

    栗山委員長 どうも大平さん、ありがとうございました。次は中川さんにお願いいたします。
  9. 中川権三郎

    中川参考人 昭和四年に向う行つて、今年は二十四年目です。職業は前半は新聞社経営して、後半はサンパウロ教育事業をやりながら、養鶏とはらの栽培をやつておりました。家族関係でございますが、家族は五人です。
  10. 栗山長次郎

    栗山委員長 あちらでは皆さん御一緒だつたのですか。
  11. 中川権三郎

    中川参考人 はい。——渡伯の動機でありますが、それは元海外協会中央会というものがあつて、そこで移住者指導員を募集したことがあります。その指導員の募集に応じて、日本力行会教育を受けました後渡伯し、最初はアリアンサ移住地に入植して、村の新聞社を興したのであります。移民事情現状に対しては、先ほど大平さんからお話がありましたので、それ以上われわれとして申し上げる必要もないと思います。  移民対策ですが、これに対してはまだわれわれ六箇月くらい日本を見ただけで、何もわかりませんけれども……。
  12. 栗山長次郎

    栗山委員長 あちらからこらんになつておる御意見でよいのです。
  13. 中川権三郎

    中川参考人 ブラジル事情というものが、日本ではほんとうに知られてないのでないかという感をさせられた。われわれとしてはどうしてもこれは、大平さんからもお話があつたようですが、ほんとうに正しき意味ブラジル、正しき意味日本お互いに知る交流機関というか、政府のあつせんで一つ社会団体というものをつくつていただいて、やはり移民問題であるとか、貿易問題であるとか、文化の問題、あらゆるものを接続する一つ交流機関をつくつたらよいのではないか。こういう感じを与えられたのであります。たくさん日本にもそういう団体があるようでありますけれども、どうも頭でつかちで、実際の手足が足らないのではないかという感じを受けたのであります。というのは、ブラジル事情というものは、半年や一年くらい御旅行なさつてブラジル通だといわれても、われわれ、二、三十年も向うにおつた者から見ると、ちよつと物足らないものがある。それだから実際において向う相当生活をし、相当の経験を持つた人が、日本のそういう機関の中に入り、日本事情によく精通している者がブラジル支部なら支部機関の中に入つてお互いに交流して、全面的な一つの指導なりあつせんなりを、政府機関ではなくてやつて行きたい。そういうものができたならば、非常に助かるのじやないかという構想を持つて、ぼくらも今その一つの案を練りつつあるのです。まだ具体的に行つていませんから、どうなるかわかりませけれども、ブラジルとしては受入れ態勢はある程度成案を持つておるのです。  帰国した理由といいますと、これは実際ブラジルにおつて日本事情が全然わからないのです。結局われわれの意見だけでなく、われわれ取巻く周囲のものから見て、日本ほんとうに見なければわからない。それほど事椿がこんとんとしていたものであるから、とにかくできる範囲において帰つて、われわれが日本ほんとうの姿を見て、正しい見解に立つて、これからの生活構想をきめたいというように、いわゆるわれわれの関係者がそう言うものですから、それで帰つて来たのです。   それから飛ばして、農業移民ということが不可能か、移民が不可能かという問題に対してちよつとお話したいと思います。われわれは実際において、さつき大平さんがおつしやつたように、農業移民以外のあらゆる移民が入つてもらいたいと思うのです。ところがこれはわれわれの希望であつてブラジル自身がどんなお考えかということに対してはわからないから、これはひとつ外交交渉によつて農業移民以外のあらゆる層が入ることができたら非常にわれわれのためにもなるし、ブラジルのためにもなるのではないかと思う面がたくさんあるのです。ということは、われわれは一様にブラジル移民契約従つて耕地に入れられちやつて、何年か百姓をやつた。その中にはあらゆる職業があつたのですけれども、一様に百姓をやつちやつた。そうしてその中には相当技術者もあり、学識のある方もおつたのですが、あの、ブラジルの中で十年、二十年、三十年と百姓をやつている間に、みんなぼやけちやつて、いわゆる過去の知識を生かすころには時代も違つているというようなことになつちやつて、今一番痛感されていることは、知識貧困というか、技術貧困ということが、われわれの状態じやないかと思うのです。ということは畑もできた、作物もりつぱなものができた、しかしこれをとう処理して行くか、どう経営して行くかという問題に対しては、お互いに行き詰まつているのです。少くともわれわれはさつき大平さんがおつしやつたように、九割の農業者がおるのですが、その農業者の中に、農業形態に対して、はつきりした方針と、はつきりした態度を持つている者がどれくらいあるかという問題に対して、われわれ非常に不安なんです。だからこれもできるだけ農業技術者というものを呼び寄せたい。実際問題において今のわくからもつと向上されるような、いわゆる外交をやつていただいて、われわれの最も欠点とするところのこの経営面に対する技術を補つてもらいたいと思うのです。それから農業以外の職業に対しても、できるだけ——今では農業に限定しているようですが、農業機具とかその他の中小工業的なものを向うに持つて行く面がたくさんあるのではないかということを、こつちに帰つて来て痛感したのです。ただ問題はそこまで行くと、ブラジル自体の事情によるのであつて、われわれがそういう希望を持つて行つても、はたしてブラジル農業技術着を受入れるかどうか、それから中小工業のあれを受入れるかどうか、プラント輸出に対してどういうものがあるかということは、ブラジル自身のことであつて、われわれはぜひ入れてもらいたいのですけれども、はたしてそれを受入れるようなことができるかどうかということは、われわれわかりません。
  14. 栗山長次郎

    栗山委員長 農業以外の方面で成功していらつしやる実例がございますか。
  15. 中川権三郎

    中川参考人 ええ、たくさんあるのですけれども……。
  16. 栗山長次郎

    栗山委員長 たとえばどんな方面で……。
  17. 中川権三郎

    中川参考人 さあどんな……。
  18. 栗山長次郎

    栗山委員長 あとでけつこうですが、どなたかおつしやつてください。どうぞ先をお続けください。
  19. 中川権三郎

    中川参考人 ブラジル移民に対する待遇ということは、先ほどおつしやつた大平さんの言葉に尽きるのではないかと思います。  問題は、アマゾンの移民が第一回が行つておるようですがわれわれとしてはアマゾン移民も非常にけつこうだと思いますけれども、今のような状態で、四十万近くの移民がほとんどサンパウロに集中しているのですが、その移民の姿は、われわれの見解をもつてすれば、いわゆる農業経営技術面において相当行き詰まりを来しておる。それを充実助長してもらうような方策がでしされば、われわれの過去の基盤というものをもつと磐石の安きに置くことができるのじやないか。そういう意味において、われわれは農業技術移民をもう少し強化してもらえる方法が講ぜられれば非常に助かると思います。  もう一つは、戦争によつて日本が負けたんだということに対して、一世の一部の中では負けたということを承認しなかつた。そういうことで一世と二世の間に食い違いが相当できちやつた。食い違いということは、要するにこういうはつきりしたことも承認しないということに対して、親に対する不信任というものができちやつた。その不信任が親だけに終つておれば問題はないのですけれども、やはり親が教えておつた今までの日本と、日本の実体が違うのではないか。もつと日本というものは文化の低い、極端に言えばわれわれの国よりももつと低下した国じやないか、そういうふうな見方をする二世が相当あるのです。そういう二世を、われわれの指導力では説き伏せるだけの内容をあれを持つていないのです。だからぜひそういう技術面において、あるいは他の面において日本の青年層が向うの青年層とふつかつて、そうして日本というものの正体を彼らにも認識させる。同時にそれが一世の植えつけた基盤の充実にもなるじやないか。そういう意味においてもそういうことをやつてもらわなければいけないじやないか、こういうふうに考えるのであります。大体そういうことであります。
  20. 栗山長次郎

    栗山委員長 ありがとうございました。  それでは次に山本喜誉司さんにお願いいたします。
  21. 山本喜誉司

    ○山本参考人 皆様がどういうことをおつしやつたか、少々遅れたのでわかりませんので、重復するようなことがあつたらお許し願います。  私は元来が農業技術者でございます。それから少し離れて実業方面にも関しているので、自分自身一種の移民でございますが、やや毛色が違つておりますので、移民問題についてはまつたくのしろうとでございます。ですからあまり御参考にならぬと思いますが、十五分くらい申し上げてみます。  第二の移民対策についての意見、これはしろうと論でございますが、移民というものは相手の国があるので、いくらこつちで根本方針を立ててもそのまま向うには通用しない。向う事情を知らなくてこつちの根本方針を立てて、これを押しつけようとしたらえらいことが起る。その点を十分御承知願いたいと思うのであります。根本方針は結局あり得ない。向うの実情をよく知つてくださり、それに応じて態度方針をかえて行く。向うの実情に応じたような移民の送り方をしていただく。これが根本方針なのでありまして、決して日本だけで向うの実情をあまり御存じない方が方針を立てられて、それを押しつけるとえらいデイザスターが起る、こういうことを概観的に申し上げたいのです。   それからもう一つは、今拝見すると、日本移民と諸外国移民との比較というのが八にございますが、何しろよその国は移民を送るには相当よく調査してかかります。たとえばドイツが南三州にドイツの移民を送るについては厖大な調査ができております。日本にはかつてそんなものはないのです。二、三冊の薄つぺらなパンフレツトで何万かの人を送り出すのです。これは従来の日本外国で活動するということに非常に若かつた、経験がなかつた、昔はいたし方ない。しかしいつまでも旧態依然ではならないと思います。それでこの点につきましては、御関係の皆様に申し上げるのですが、せめてブラジル農業移民を送るならば、農業技術家を二人ぐらいはお置きになつて、これがいつもブラジル事情を観察しておる。こういうところへブラジル日本人を入れてあげるというのだつたら、さつそく予備知識を持つた、ブラジルの経験を持つた技師がそこへ行つて、よく調査してそこへ送り込むというだけの準備が必要だと思うのです。そういうことがなくて根本政策も何も立てられないと思う。この点非常に遺憾に思つています。特に日本貧困なのでございますから、たくさんのことはできませんが、二、三人の技術者向うへ置いていただく。これは今そちらでお話なつた在留邦人の農業指導という面とは違つたことで移民対策として私は申し上げておるのですが、これが必要なんじやないかと思います。  それから農業移民以外にこれは大いに必要なのですが、あそこに三十三、四万の日本人がおりまして、戦争で一応孤立してしまつた。しかし将来は日本の方としたならば、非常な注意を持つて見ていられるべきだと私は思うのです。ああいう出店は日本はほかには持つておらないのであります。今から出そうと思つても今日の日本ではできないことだと思います。それですからあそこをかわいがつていただく、こういう点で十年間道が絶えていたあとにいろいろ優秀な人を送り込んでいただきたい、こういう点を考えましても、もし無計画な移民をお送りになつて、そうして向うの国情を刺戟して移民の道が絶えるということになつたら、向うの三十万は孤立しまして、発展する機会を失うだろうと思うのです。あれこれと考えて、結局いろいろな人がうまく入れるように、しかもどつと入らないで細く長く向うを刺激しないで入れてくださる。こういうことになれば、従つて農業以外の技術者でもぽつぽつ入つて来るだろう思うのです。この間もブラジルの大使館へ行つて伺つたことですが、たとえば私が参りまして、こういう人を自分のところに連れて行きたいのだがいいか、許してくれるかと言つたら、あああなたが言うなら、あなたがまじめにこういう人を連れて行つて、これがブラジルのためになると確信なさるなら今でも許します。こういう態度なんです。ただ行きたいがためにいろいろなうそをついて申請する。これは発表願つては困るのでありますが、うそをついて申請する、そうするとあとのほんとうの人が困るというようなことが起つております。これは何か書かれるとブラジルの大使館が非常に困りますから御注意願います。私は非常に気持がよかつた。あなたがブラジルのためと思うなら連れていらつしやい、こういうふうな態度なのです。まつすぐに行けばなかなかいろいろなことができるということなんですが、決してほかの技術者が行くことがむずかしいことじやない、道はあるのだということを御承知ください。  そんなことでよろしゆうございますか。
  22. 栗山長次郎

    栗山委員長 どの項目でもお気づきになつた点がもしございましたら……。
  23. 山本喜誉司

    ○山本参考人 ざつと一通り述べたつもりです。
  24. 栗山長次郎

    栗山委員長 次に高橋新一さんにお願いいたします。
  25. 高橋新一

    ○高橋参考人 私は昭和六年移民として渡伯してちようど二十一年目に帰国したものであります。最初は鐘紡系の会社のアマゾン南米拓殖株式会社アカラ植民地、パラー洲のベレン市より三十キロばかりさかのぼつたところにある新しい植民地に入植したものであります。そこで六年間一生懸命やつたのですが、結局とても衛生状態が悪くて、それまでしつかり仕上げた土地を投げ出してサンパウロに下つたのです。あそこ百姓をやつて、いろいろな物産はできるので何も心配ないのですけれども、ただ衛生事情が悪いのでどうにもしようがないのであります。最近日本の国でもブラジルのアマゾン州にたくさんの移民を送るということですが、自分としてはあまり両手をあげて賛成するわけには行かぬのであります。ほんとうにマラリアの解決がつけばいざ知らず、そうでない以上はあそこに行つてもあまり有望であるとは考えられません。あそこの植民地が今でもまだありますけれども、ちようど植民地が始まつてから前後して私などが行つた当時、五百何十家族があそこの植民地に入植したのです。結局残つたのが三十五、六家族なのですが、少しでも旅費ができた人は早くサンパウロに下つてしまつて、その残りの三十何家族が今がんばつて、土台になつてそれまでぽつぽつつくつておつた黒コシヨウを一生懸命つくつて、それに成功して今や経済的にとてもよくなつておるそうですけれども、それでもやはり衛生事情があまりよくないので、少しもうかつたら何とかしてサンパウロウに帰りましようという気持の人がたくさんおるのだそうです。ほんとうにマラリアさえなかつたらあそこは極楽であります。自分たちはマラリアさえなかつたらもう一度行つてみたいという気持がします。結局ブラジル移民するといつても、第一の条件として、向うで一生懸命働いて、金がもうかつたら日本帰つて行こうというような気持移民したら、絶対にだめだということを自分は痛感しました。ほんとう向うに行かれるのでしたら、絶対に二度と故国の士は踏まぬということで、一生懸命やられる心の人は確かに成功するし、その人のためにもなると思います。私らもアマゾンで六年間暮して、あとサンパウロの奥地で四年、それから四年間はサンパウロの町で暮して来たのですが、結局通観して見ますに、元気なからだと意思の強固なしつかりした気持さえ持つて働けば、絶対に成功するということが申し述べられます。
  26. 栗山長次郎

    栗山委員長 では一つ伺います。アマゾン地帯の衛生条件が悪いということでおあげになつたマラリアですが、これは注射とか、それから生日清環境をきれいにするとかいうことによつて、マラリアにかかることを避ける方法は簡単ではないのですか。
  27. 高橋新一

    ○高橋参考人 私が行つた当時は、ちようど会社でも徹底的にマラリアの撲滅に乗り出して、日本から行かれたりつぱなお医者さんが二人もおりまして、強制服薬をやつたり、いろいろ注射もやつたのですが、結局年がら年中、次から次にとマラリアが起つて、とうにもこうにもしようがなかつた。そうして年中マラリアをやつていると、あまりの熱のために肝臓が溶け出して、それが小便になつて出るのだそうですが、血の小便をし出すと、たいてい二日か三日しか持たぬのです。
  28. 栗山長次郎

    栗山委員長 最近の状況をお聞きになりましたか。
  29. 高橋新一

    ○高橋参考人 聞きました。まだ少しあるそうです。
  30. 栗山長次郎

    栗山委員長 よほど減つたのですか。
  31. 高橋新一

    ○高橋参考人 よほど減つといつても、人間が少ければよほど減ります。
  32. 栗山長次郎

    栗山委員長 五百家族が三十数家族になればね。
  33. 高橋新一

    ○高橋参考人 そうです。それからその家族が少し分散したりしております。
  34. 栗山長次郎

    栗山委員長 ありがとうございました。またあとでお伺いいたします。次に井戸宗四郎さんにお伺いします。
  35. 井戸宗四郎

    井戸(宗)参考人 私、井戸でございます。私は大正十五年に渡伯して、まる二十五年ブラジルにおつたものでございます。それでおもにサンパウロ州のノロエステ線のアラサトウバにおいて理髪業をやつていたものであります。渡伯は単独で渡つたわけであります。渡伯の動機は、まあ一もうけして来ようと思つて出かけたのですが、なかなかもうからないというわけでありました。  ごく簡潔に申し上げますと、私は帰国した者でございますが、帰国した動機というのは、兄弟もみな日本にいますから、望郷の念やみがたく帰つて来たわけであります。帰つて来ると、日本はなかなか暮しにくいので、もう一回行きたいと思つているものでございます。  それから日本移民と諸外国移民の比較についてちよつと申し上げます。ブラジたはなかなかヨーロツパ移民が多いのであります。そのうち最も多いのはイタリア移民だと思います。そし て彼らと比較いたしますと、彼らはまず土地を買えば、家を建てるにもれんがづくりのなかなかおちついた家を建てる。日本人は出かせぎ根性で、掘立小屋の低んの雨露をしのぐだけのあばらやで、働け働け、働いてもうけて帰ろうという人が多いように思われます。そして成功を急ぐために、かえつて失敗するのではないかと思うのです。イタリア移民は家もなかなかりつぱにしておるし、彼らはその日の生活を楽しんでおるのであります。日本人は日曜と祭日もない、働け働けで成功を急いで、かえつて失敗するのではないかと思います。簡単ですが、以上でございます。
  36. 栗山長次郎

    栗山委員長 井戸さんは再渡航なさる御希望があるようですが、再渡航は簡単ですか。
  37. 井戸宗四郎

    井戸(宗)参考人 旅費の問題なんかも、自費で行けば簡単でしよう。
  38. 栗山長次郎

    栗山委員長 費用の点だけですか。
  39. 井戸宗四郎

    井戸(宗)参考人 ええ。
  40. 栗山長次郎

    栗山委員長 手続はわけはないのですか。
  41. 井戸宗四郎

    井戸(宗)参考人 向うに親戚がおつた場合には簡単に行くのです。
  42. 栗山長次郎

    栗山委員長 これから少し質問させていただきます。委員の方から出ます質問に、皆さんの中で質問に答えやすい方に御担当願いたいと思います。  今、松田委員から移民の国籍はどうなつておりますかというのが出ておりますが、どなたかひとつお答えくださいませんか。日本の国籍はそのままですか。市民権は簡単にとれますか。
  43. 大平清実

    大平参考人 市民権は、十年以上住居しますれば、不動産を持つている者であれば、とればとれます。
  44. 栗山長次郎

    栗山委員長 費用はどのくらいですか。
  45. 井戸宗四郎

    井戸(宗)参考人 費用は三万円くらい——まず日本金にしまして五万円まで行きません。
  46. 栗山長次郎

    栗山委員長 その費用というのは、料金を納めるのですか。
  47. 井戸宗四郎

    井戸(宗)参考人 ええ。
  48. 栗山長次郎

    栗山委員長 それから一世の方で帰化していらつしやる方が大勢おりしますか。
  49. 井戸宗四郎

    井戸(宗)参考人 相当ありますけれども、割合から言えば大したことはありません。
  50. 栗山長次郎

    栗山委員長 二世は当然ブラジル人でしようね。
  51. 井戸宗四郎

    井戸(宗)参考人 ブラジル人です
  52. 栗山長次郎

    栗山委員長 それから委員の方にお気づきの質問をしていただきます。なお井戸さんの御夫人の井戸貞子さんもいらつしやるので、御婦人の立場から御質問があれば、この方も参考人に追加いたしたいと思いますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 栗山長次郎

    栗山委員長 御異議なければ、さようにとりはからいます。どうぞ参考人の方に委員の方から御質、問なさつてください。
  54. 中山マサ

    中山(マ)委員 アマゾン地域にいらつしやいました高橋さんにお尋ねをいたしますが、日本と比較いたしまして、日常の温度などいかがなものでありましようか。たとえば南洋の方に行つた人もたくさんございますけれども、私の主人のおじもボルネオに長くおりまして、向うもあなた方がおつしやつたような苦しいマラリアのところでございますが、それに耐えて相当の人が戦争のときまで残なておりました。そこで向うと比べてどれくらいマラリアのパーセンテージがひどいのか、もしおわかりでしたらお尋ねいたしたいのであります。
  55. 高橋新一

    ○高橋参考人 私らがおつたのは南緯五、六度だから、ちようど赤道直下です。ですから夜と昼の長さがほんの五分くらいしか違わない。夜と昼の長さが大体同じなんです。そうして年がら年中暑くて、気候としては雨季と乾燥季がはつきりしております。そして乾燥季にはからからに乾燥して、雨季には年がら年中雨ですから、お米なんかとてもよくできます。日本人生活するには、食べる分にはさつぱり心配ないです。今のマラリアの状況ですが、どうにもこうにも手がつけられぬです。疱瘡に対する種痘のような徹底した薬ができて、マラリアの病気が解決されれば、確かにいいでしようけれども、いまだにそういう方法が見つからぬらしいので、やはり大事な人がぼこぼこなくなるんです。わしら去年初めて帰つて来たんですけれども、来る前にアマゾンの人たちと一緒に話したんですけれども、衛生状態は、やはり週期的に悪性のマラリアが起るわけです。今言つたように、疱瘡に対する種痘というような徹底した予防がなかつたら、行つてもむだじやないかと自分は思います。ほんとうに言うちや悪いが、わしら行くときは三十家族一緒に行つたんですけれども、ちようど三人の六十以上の年寄りがおつたですけれども、一年たたぬうちにあの世に行つたですからね。
  56. 栗山長次郎

    栗山委員長 御一緒の三十家族の方はその後はどうなつていますか。なくなられた方が多いですか。
  57. 高橋新一

    ○高橋参考人 それがおるんです。あそこに残つた家族は、たつた三家族です。わしらと一緒に行つた家族では、その人の主人は全部なくなりました。マラリアさえ解決されたら、ほんとうに、住むには確かにいいです、何しろそんなような状態で、ペレンの町も、相当の町ですけれども、絶対に人口がふえないそうですからね。それを見ると衛生事情がどれだけよくないかということがわかると思います。
  58. 中山マサ

    中山(マ)委員 土着の人の人口はどのくらいですか、あなた方がいらしていたアマゾン流域は。土着の南米の人は、平均何人くらいマラリアで死んで行きますか、もしおわかりでしたら……。
  59. 高橋新一

    ○高橋参考人 そういうことはわからぬですけれども、日本人に限らず、土着の人でもやつぱりちよちよこマラリアをやつて寝るわけです。そうして小さいうちから何回もマラリアをやつてるでしよう。だから自然的に、自然淘汰というか、ほんとうに強いやつばかり残つて生活しているらしいです。統計的なことはわからぬですけれども。わしら行つたのは、とても山奥でしたから、人口どのくらいということはわからぬですけれども、ほんとうに見渡す限り大森林のまん中に開いた耕地でしたから……。
  60. 中山マサ

    中山(マ)委員 ちよつと奥さまにお伺いいたしますが、女として、かの地での生活状態、また人種的偏見は南米に限つては絶対にないと聞いておりますが、その点。婦人として、生活日本より楽か、あるいは向うが苦しいか。衛生状態は別といたしまして、人種的偏見があるかないか。ないとは聞いておりますけれども。
  61. 井戸貞子

    井戸(貞)参考人 その点はないようですけれども、子供の教育というものがなつとらぬです、向うは。外人のまねばかりやつてます。けれども、今の日本状態とそうかわらぬのじやないでしようか。そう思いますがね。私たち二十年ばかりおつて、そう思います。
  62. 中山マサ

    中山(マ)委員 どういう点がかわらないでしようか。
  63. 井戸貞子

    井戸(貞)参考人 今はしゆうとめと嫁が仲悪いでしよう。その点はほとんどここと同じですね。だからみな別居して行きます。かわいそうなのは年寄りたちです。子供の教育のことは全然考えないようですね。ただ働く一方だけです。日本人は特に金を残して帰ろうという気がみんなに残つています。外人以上ですね、その点は。
  64. 中山マサ

    中山(マ)委員 そうすると、学校というものは全然ないのですか。
  65. 井戸貞子

    井戸(貞)参考人 それは、十三歳以上でなければ、政府で許可がおりぬです。大きくならなければ。小さいうもはブラジル語はどうしても四年受けたければならぬ。大きくなつてからは、日本教育はしにくいんじやないでしようか。その点ここと違いますからね。
  66. 中山マサ

    中山(マ)委員 それでは十三歳までは向う教育な受ける……。
  67. 井戸貞子

    井戸(貞)参考人 ええ、近ごろは。
  68. 中山マサ

    中山(マ)委員 何歳から。
  69. 井戸貞子

    井戸(貞)参考人 九歳です。必ず受けなければならぬということはないです。自由ですの。町の中流以上のは、かなりの程度までやつております。けれども教育してる間は日本語使つていますけれども、一歩出たら外国ですから、ブラジル語ばかりです。ですから日本教育にならぬのじやないかと思います。向うでは奥さんが悩んでいます。だから子供の教育をしに早く日本に帰ろうというのです。けれども、今の日本帰つて来ても、教育にならぬのじやないかと思います。私たちが子供のころと違つて……。
  70. 中山マサ

    中山(マ)委員 それで向うは義務教育という点は、今のお話ですと、あまり強要しないわけですね。
  71. 井戸貞子

    井戸(貞)参考人 ブラジルの方は四年まであります。
  72. 中山マサ

    中山(マ)委員 義務教育として……
  73. 井戸貞子

    井戸(貞)参考人 ええ。
  74. 中山マサ

    中山(マ)委員 義務教育として政府が強要しますか、日本人も。
  75. 井戸貞子

    井戸(貞)参考人 日本人はどうでようか——どうでしよう、中川さん——あるそうです。四年までは出るんです。
  76. 中山マサ

    中山(マ)委員 移民方々は出かせぎ根性ではいけない、ぜひ向うに溶け込んで行かなければいけないという点を推し進めて行つていただきたいと思います。それで初めに今の日本と同じだとおつしやいましたが、今の日本の民主主義は、私らに言わせれば放縦主義だと思つていますけれども、そういうことでどこにも悩みはあると思いますが、いよいよ絶対に帰りきりでお帰りになつたのですか、子供の教育のために。
  77. 井戸貞子

    井戸(貞)参考人 私たち子供はないんですの。年寄りがどうしても向うで死にたくないと言いますから、ついて帰つたんです。でも主人は後悔しています。また行きたい言うてね。
  78. 福田昌子

    福田(昌)委員 私ども大分前、ブラジルに臣道連盟というものがあつて日本の敗戦を承認しないということを伺つておりますが、今のお話でも、何かそういうことが起つてるような感じお話を伺いましたが、そういうグループがあるかどうか、どういう状態かということを伺いたいと思います。
  79. 大平清実

    大平参考人 お尋ねの臣道連盟は、このごろは大分変形いたしまして、前衛隊というようなものが新しく生れておりますが、ほとんど昔のようなことはありません。
  80. 山本喜誉司

    ○山本参考人 今の点は最近東大の助教授の泉さんが行つて現地でお調べになつておりますが、それは統計的なお調べで、すつかり統計ができなければはつきりしたことは言えないですが、先生がお歩きになつたところでは、負けた組が六割で、勝つた組が四割という数字がごく最近出ております。
  81. 福田昌子

    福田(昌)委員 今、前衛隊のお話つたのでございますが、そういう人たちは今どういう動きをしておられますか。日本戦争前と同じような形と考えておられるのですか。そして日本の将来というものをどういうふうに持つて行きたいという希望を持つておられますか。
  82. 大平清実

    大平参考人 この問題のためにブラジル邦人が非常に融和を欠いておりまして、あまりこういう問題を今から取上げて大きく申し上げたくないと思いますけども、せつかくのお尋ねでございますか申し上げます。もともと臣道連盟といいますのは、ほんとうに純真な愛国的な気持から、祖国の敗戦を信じたくないし、またかりに敗戦をしておるとしても、敗戦という言葉を口にしたくないというような、非常に純真な愛国的な気持から起つたものと、そうしてそういう人たちを私利のために、私欲のために利用しようというような人たちとの、二つの集まりであつたということが言えると思います。今日におきましては、そのほんとうに愛国的な純真な気持人たちは、もうたいがいは日本の実情を認識せられまして、いわゆる暴力的な行動をする、あるいはそういつた団体に加盟するというような者はごく少くなつたと思います。最近その前衛隊というものが臣道連盟から派生して来ましたのは、いわゆるその二つの動機に基く人たち団体のうちで一つの内輪割れといいますか、そういうようなものが起りつつありまして、それを暴力でもつて引きとめて行こうというような気持、そうしてまたそれがために一つ自分たち団体を守るために、名分を立てるがために、愛国的な名称をつけておるというようなものが多いのではないか、こういうふうに考えます。終戦当時に発生しましたところの臣道連盟のうちでは、もうほとんど投獄せられておるような人はないと思います。暴力をやつたがために投獄をせられ、獄につながれておる者はありますけれども、ほとんどありません。最近は、ただいま申し上げました前衛隊が相当多数投獄をせられております。私が十一月の終りに出る時分にも相当数投獄せられております。以上であります。
  83. 福田昌子

    福田(昌)委員 くどくお伺いして恐縮ですが、この臣道連盟が前衛隊になつて来て、前衛隊の人たちの暴力による犯罪行為というものは、たとえば具体的にお話いただきますと、どういう場合にどういう行動をとつて投獄せられる場合があるか、そういう具体的な例を聞かしていただきたい。日本からブラジルに行つた移民人たちの全般的な犯罪傾向、そういつたものを聞かしていただきたい。
  84. 大平清実

    大平参考人 私はまだそういう前衛隊の内容につきましてはよく存じません。私が立つ以前に相当多数の者が拘引をせられたという事態が新しく起りまして、非常に新聞なんかでも大きく報道はしておりましたけれども、しかしその内容についてはまだはつきりしたものがつかめておりません。いわゆる具体的な事実としては今申し上げましたように、内部の闘争というようなことによつて、一部の場所で暴力行為が行われたということを報道しておつただけで、内容は詳しく存じません。
  85. 福田昌子

    福田(昌)委員 先ほどいろいろ御意見を聞かしていただきました中で、日本移民は大体出かせぎで、もうけたら帰ろうとするが、やはり向うの土に骨を埋めるような気持で来てもらいたいというような御意向が大多数であつたと思います。そういう御意向からしますと、たとえば向う教育制度は日本人に適応していないので、日本教育したいという気持が多数の人にあるようでございますが、これは非常に齟齬した気持のように思います。日本人であることに誇りを持つということは必要だと思いますが、何かしら子供の教育のために日本帰つて来なければならないという気持相当の人が持つていることは、非常に矛盾した気持ではないか。これはよその国に行つてそこの土に骨を埋めるようなおちついた移民には、日本人の性格は向かないのじやないかという疑問を持つのです。向う教育の実態がどういうものかよくわかりませんので、大体子供の教育日本で受けさせたい、そして日本式の生活を楽しみたいという気持を、大多数の人が持つておられるというのでありますが、向う教育の仕方、家庭生活の慣習ということを奥様からお聞きしたいと思います。
  86. 井戸貞子

    井戸(貞)参考人 年寄りたちは元の封建的な精神が脱けぬのじやないでしようか。今の時代の人たちブラジル化して行くから、それと意見が合わぬのじやないか。私も嫁さんに行つたんですけれども、私たちは昔の嫁さんに行つた通りを習つておりますが、今のブラジルの二世は結婚にしても外人が多いので、昔の封建約な時代の人たち意見が合わぬのじやないかと思います。私はそう思います。家族制度というものが今の二世にはないわけです。結婚も個人主義といいますか……。
  87. 福田昌子

    福田(昌)委員 結婚すれば親子は別別に暮して行くというのが普通ですか。
  88. 井戸貞子

    井戸(貞)参考人 ええ、それはほんとうです。ですから親も金さえあれば金で暮して行けますが、金がなければ年寄りたちでも、日雇いか何かして暮している外人もありますから、今はそういうことはないのですけれども、年寄りたちとしては嘆いております。
  89. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほど一世と二世の方の間の食い違いの問題をおつしやいまして、二世の方々日本をあまりよく知られないので、どうしても日本の今のありのままの姿よりも、もう少し低いのではないかというような考え方を持つておるというお話でございました。そこで考えられますことは、二世の方が日本ほんとうにごらんになればよくわかるのでしようけれども、そういう機会がないとどうしてもそういう考え方を持たれる。そこでブラジル人たち日本に対してどの程度に想像しておられるか、伺いたい。それは終戦直後にアメリカのいなかへ行つたときに、日本というものを非常に低く見ていた傾向がございましたので、一体どの程度に日本を見ておられるかを伺いたい。
  90. 中川権三郎

    中川参考人 これは二世が日本帰つて来ても、時間的に、たとえば半年や三月で外観を見ても、日本が優秀だということはとてもわからぬじやないかと思います。たとえば住宅の問題にしても生活内容の問題にしても、向うの方がずつと高いとぼくは思うのです。だから問題、一つの伝統を通した、何というか、日本の底に流れる力というものを、二世の方に理解させるということは、相当困難じやないかと思うのです。それで征はたまたまそれに対して苦心して心を砕いたのですけれども、戦争の始まる前までは、日本はいわゆる世界の一等国だというようなぐあいに、絶対に不敗なんだ、そういう意味でこれはわれわれの経験の範囲ですが、そのわれわれの範囲は、そういう教育をやつた人が多いようです。ところが負けてしまつた。そうすると結局負けても負けた事実をそのまま承認してくれれば、その問題に対しての心配がなかつたのですが、まだ勝つているということを強調するために、一世と一世と思想的な食い違いがでまたのじやないか、その食い違いの中にはおやじはおやじの面子を保つために、今までもうそをついておつたというようなことを考えている二世があります。その食い違いが相当あるのじやないか。極端に言うならば、われわれ一世を信じなくなつた。四十年百姓をやつてつくり上げた財産も、イタリアとかドイツの移民に比べればまだ貧弱なものである。結局経済的な地盤が他国民と比較して幼稚なんです。そうすると精神面から見ても、それほどたよりにならぬというようなわけで、一世に対する不信任的態度がわれわれのつき合つている範囲内ではたくさんあるのです。それをどう整理して行くかということが、結局われわれ自身の力では——有力な人もあるのでしようけれども、とても不可能という限界に立つのです。これは何とかして日本からそういう日本の力というものを、ある程度まで反映できるような人が、われわれの仕事に協力していただけば、お互いの話でわかるのじやないか、若い者同士で話をしたり、仕事をやつたら、多少の疑問点の解消ができるのではないか、こうわれわれは考えております。
  91. 戸叶里子

    戸叶委員 二世と一世との方々の関係はわかりましたが、日本に来たことのないブラジル方々が、どの程度に日本考えておられるか。
  92. 山本喜誉司

    ○山本参考人 大体少しずつわかつて来るようですが、これはどこの国でも同じで、日本の方もブラジルを知らなくてとんでもない御想像をなさるように、向うでも一般の人はやはり日本に汽車があるのかという質問をする程度の方もあります。しかし何しろ日本人が多くなりましたから、やつて、いることが向うの役に非常に立つて参りました。しかし日本のことはどうもあまりよく知られていないと言つていいのではないでしようか。こちらでブラジルのことを知つていらつしやるとおつつかつつじやないのでしようか。しかしともかく日本なり東洋のことに非常に興味をお持ちになつて日本語を習いたいとか、あるいは日本語を習つている向うの学生がたくさんおります。それですからだんだんわかるようになると思います。しかし日本のことをよく書いた、ブラジルの旅行記がずいぶん出るのですが、あまり読書力はございませんから、一般にお読みにならぬというので、日本のことはあまりよく知られていないと申していいのではないでしようか。特殊の興味を持つている方がこれは深いとも行かないでしようが、日本に関する本が出れば買つて読むというこういう特殊な人もございます。われわれの接触する範囲では、たいへん注意して、何か日本というものはおもしろいとお思いになり、そんな本をごらんになることはありますが、もう少しよく知らせるように努めなければいけないといつた状態でございます。
  93. 松田竹千代

    ○松田(竹)委員 私は一つ伺いたいのですが、どなたからでもけつこうです。ブラジル日本移民相当歴史ができ、相当の数になつておる。ことにサンパウロでは三十数万人にもなつておる。人口の率からいつても、百人に三人までになつておるとこの表に出ておりますが、経済的力というか、生産力という面からすれば一割に達しておる。日本サンパウロ州だけにおける勢力は、生産力から見たら一割に匹敵する。そうしますと、サンパウロにおける相当日本のコロニーができるわけです。従つてその中にはいろいろの指導者もありましようし、指導的団体もできておるであろうと思うし、また特有の文化施設もいろいろとできておるだろうと思うのでありますが、主体は農業であるから、都会へ出て来る交通機関、鉄道とか道路とか、そういつたような公共施設、日本のコロニーを向上発展させるための公共事業、そういうものの促進発展のために、日本のコロニーとして政治的というと大きいかもしれぬが、ブラジル政府へ対して協力を求めるというような運動を、これまで相当つて来られたのでありますか、そういうことをやつた場合にブラジル政府の態度は、どんなあんばいであつたのでありますか、そういつたような面ついての御説明がどなたからかあれば、けつこうだと思います。
  94. 山本喜誉司

    ○山本参考人 戦争の前に日本人の三十万の人間が集まりまして、それでそのセンターがサンパウロにできると同時に、各地にもセンターができました、一つ日本人の文化社会というようなものがまさにでき上りかかつてつたのでございます。それでいろいろな活動が起つたのでありますが、ちようどその時分に、またブラジルが非常に国家主義になりまして、外国人の活動を非常に弾圧したのであります。外国団体の存在を許さないというところまで来たのであります。せつかく日本の社会が組み立てられたのだけれども、それが合法的に活動を開始するに至つて、これは日本人ばかりではないのでありますが、諸外国外国団体もみんな禁止してしまつたのであります。それで日本のやり方もたとえば教育なんかの問題は、文部省から人が行つたり何かしたようですが、向うが何か日本の出先みたいに扱いまして、そんなことが刺激したもとだと思います。ところが、戦争が起りまして、その間にまたせつかくできかかつておりました日本人の社会はまつたくこわされたのです。すべてが禁止されまして、ただいなかで農業活動をやつていらつしやる方だけが自由だつたのでありまして、われわれの町における商社の活動というものはまつたく弾圧されたのです。そのためにまた日本人の社会がすつかりこわれてしまつたのです。その上に戦争が済んでみたところが、臣道連盟の騒ぎがあるので、日本人はちつとも団結ができなかつた。ですから津本人が集まつてそういう日本人の社会をよくして行くというふうな活動は、まつたくとまつてしまつたのであります。一方ブラジルとしましては、その時分の国家主義の行き過ぎを目下盛んに是正しております。それで外国人の団体いろいろな形式で許すというふうになつております。しかし戦争の前に法律がございまして、それがまだ解けていないのであります。それで黙認でもありませんけれども、いろいろな法律を解釈のしようによつて相当日本人団体も許されるというふうないい方に向つております。ところが日本人の方の状態がさつぱりちりぢりばらばらなんです。それを何とかしてこれからうまくやつて行く、ブラジル側も多少緩和してくれているので、日本人の方も団結して向つて行くいうことになれば、今おつしやつたような方面も注意してさえやつて行けば、ブラジル人は青んで受入れてくれるだろうと思います。
  95. 今村忠助

    ○今村委員 私は昭和五、六年ごろブラジルを見たのでありますが、当時外国から合せて七、八万からのコロニーが入つてつたのであります。これらは主としてコーヒー園の除草、実取りの仕事をしておつたのでありますが、現在これにかわる移民とでもいうものはどこから入つているか。従来二、三年契約で入つたコロニーの仕事というようなものは以前通りで、やはり短かい期間の契約でやつているものかどうか。つまり簡単に言つて、コロニーの仕事の内容とか契約方式はどうなつておるか。  第二段には、日本人ブラジル土地を持つてつて日本に不在地主となつている人が相当あると思うのですが、これらの人々の土地戦争を通してどうなつておるか、返されたものかどうか。  第三番目に、再渡航をするのには費用の点のみだと言われましたが、これは呼び寄せ移民という形で新たに行く者とかわりがないのかどうか。かつて行つたことがあるからというので、特別な扱いを受けるのかどうか。この三つの点をはつきりさせていただきたいと思います。
  96. 大平清実

    大平参考人 ちよつと私の知つている範囲をお答えします。  コロニーの問題は、昔の補助移民の時代のように、労働賃金によつて日本人のコロニーというものはもうほとんどありません。大半日本人自分でコーヒー園を経営するようになりましたし、またそれのできない人たちも、いわゆるメーエロといいまして、歩合作というふうな形式でやつております。  その次に不在地主の問題は、資産の凍結を受けてから不在地主はその権利を没収せられているように記憶しておりますが、これは山本さんの方から御説明願いたいと思います。  それから呼び寄せ移民の問題は、数箇年前にブラジルにおつたからといいましても、呼び寄せの優先権はありません。いわゆる特別の権利はありませんので、新たに行く者と同じ方法でないといかぬ。従つて向うに近親者がおつて——いわゆる三親等の範囲内で呼び寄せができることになつております。金の問題だけではありません。  それからもう一つ技術移民は先ほど山本さんからもお話がありましたように、これは向うの引受人、但しこれはブラジルのためになる人であるというような引受人の信用によつて技術移民は単に農業移民だけでなく、呼び寄せができると思います。
  97. 山本喜誉司

    ○山本参考人 不在地主の土地の問題でありますが、実はこの問題は、戦争が済みますと同時に、私が四年間もつぱらこの問題に没頭したのでありまして、まだ外交機関もございませんし、われわれ民間の者が寄り集まりまして議会運動をやつたのであります。これはなかなか骨が折れました。こちらの議会もそのようでありますが、上院と下院の間をかけまわつて、とても骨を折つたのであります。しかもみな資産が凍結されておりますので、自由な軍資金がない。その間にブラジルの議員をとつつかまえて、日本人の資産を返せというのでありますから、非常に骨を折りました。しかしようやつとそれが成功しまして、日本人の資産の凍結は解除になつているのであります。但し初めは非常にひどかつたのでありまして、向うにいる日本人農業者でも、財産の七割はみな没収するというような案も出たのであります。それで一生懸命に私やつたのであります。その際ドイツとイタリアと切り離して取扱つてもらうということは、枢軸じやないかということで、非常にむずかしかつたのです。  これはちよつとおもしろいからお話しいたしますが、初めにその運動をいたしましたときには、日本とイタリアとドイツは三人組のどろぼうだつたろう。ドイツのやつは乱暴だから、寝室まで入り込んで来てあばれた。イタリアは少しおとなしいから応接間ぐらいでがたがたやつていた。日本人はずるいから、向うの角でおまわりが来ないかと見ていたんじやないか。三人組のどろぼうというようなことで、なかなか言うことを聞かなかつたが、それをああ言い、こう言いして、その当時の三国同盟とかなんとかいうこともいろいろ研究しまして、日本は違う、日本は何もしなかつたのだ。しかも戦争の間にはブラジルの生産方面にみなおとなしく寄与したのだということを納得してもらいまして、日本人向うで持つております資産はみな解除してもらいました。それからたとえばわれわれの会社も向うの会社でございますから、これも自由になり、一つつているのは不在地主の問題ですが、これは没収するとは言つておりません。ただ講和条約ができて、それから解放するというのですが、向うは講和条約ももうできましたし、議会で批准もできておるのですから、もう解放してもいいはずですが、ブラジル側にお金が少々ないことも原因をいたしまして——これはつまりこうなんです。戦争ブラジルが受けた損害は、ドイツ人から取上げるお金でたくさんだ、日本人からはとる必要がないのだというふうになつております。あと手続が残つておるだけであります。結局解放しますということを言つてもらえばいいのでありますが、それを目下君塚大使の手に渡しまして、一日も早くそうしてくれということついて、目下外交交渉をやつてもらつておるわけです。それから不在地主のあるものは売られてしまいました。売られましたが、その金はブラジル銀行に保管されておるわけです。売られない土地はそのままに残つていて、今これを売ることもできない、動かすこともできない、そのままにしておかなくちやならない。そして今度新しい法令が出ますと、返してくれるわけです。ですから、ここで新しい法令が出たら、日本のものは不在地主のものも全部返つて来る。それからこれは土地ばかりでなく、日本におつて向うの銀行へ預金をしておつた人がありますが、これもやがては返るはずであります。もう一押し政府に押していただいたら、そこまで行くと思います。見通しは明るいのであります。
  98. 今村忠助

    ○今村委員 先ほどちよつと加えて質問しておいたのですが、日本人が行かなくなつたあとの、先ほど言つた短期の契約移民というものは、現在どこからどのくらい毎年入つておりますか。イタリアとか、ドイツとか……。
  99. 栗山長次郎

    栗山委員長 そういう短期移民というのはなくなつたのですか、あるのですか。
  100. 山本喜誉司

    ○山本参考人 よその国からですか。
  101. 今村忠助

    ○今村委員 ええ。
  102. 山本喜誉司

    ○山本参考人 よその国からはイタリア人が非常に入つて参ります。
  103. 今村忠助

    ○今村委員 一年にどのくらい入つておりますか。
  104. 山本喜誉司

    ○山本参考人 そんな大したものではありません。戦後入つたのは全部で五千人くらいでありましようが、逆にイタリアへ帰つております。向うで労働契約をして来るのでありますが、コーヒー園に入れられますと、ブラジルの地主は昔ながらの観念を持つておりまして、半分奴隷みたいな考えで扱うので、それに憤慨しまして、何か暴動まで起して、この間から盛んに帰つて行きました。それはイタリアは戦後とても社会施設が発達したのでございまして、労働保障というような規則があるのでございます。ブラジルにもあるのですが、さつぱり行われておらないのです。いくら働いても、いつ何時首切られるかわからぬというふうな不安で、しかも待遇が悪いということで、続々と帰つて行くという変な現象を起しております。
  105. 今村忠助

    ○今村委員 そうすると、農場の労働力というものはどうやつてつているのですか。
  106. 山本喜誉司

    ○山本参考人 それは何とかやつて行けるのです。ことに労働力が足らない農場はがたがた農場が多いのです。よくやつている農場は、たいがい人が足りるという現状でございますがたがた農場はどうも労働者が入つて来ない。そんなのが呼び入れるのです。
  107. 今村忠助

    ○今村委員 もう一つ日本移民の九割までは農業だというけれども、私どもの行つたころはコーヒーが大部分でしたが、現在はどうですか。
  108. 山本喜誉司

    ○山本参考人 現在は綿が一番多うございます。
  109. 今村忠助

    ○今村委員 その割合は半数以上ですか。
  110. 山本喜誉司

    ○山本参考人 半数まで参らないでしよう。コーヒーの栽培は相当お金を持つた人です。綿の方は一年作ですから簡単で、借地でもやれます。ですから、もちろん大きくやつていらつしやる人もございますが、大体中くらいの資産を持つた人が綿をやる。コーヒーをやつていらつしやる方はりつぱな農場主です。
  111. 今村忠助

    ○今村委員 養蚕はどうですか。
  112. 山本喜誉司

    ○山本参考人 ブラジルが一生懸命保護政策をとつて、生糸を一切入れませんが、そんなに大きくはありません。特殊地域でやつております。これも保護政策がとれたらガタンと行く性質のものです。非常にあぶないんです。商人がおりまして、その保護政策をくぐつてときどき生糸を入れます。そうすると相場が下つてたいへんなことになる。あぶない状態にあります。
  113. 大平清実

    大平参考人 一九五〇年の移民の入国の数字がありますから、ちよつと申し上げます。これは国別も、また入国しました場所もわかつておりませんが、ブラジル全体で一九五〇年度に三万四千四百六十名入国した、こういうことになつております。
  114. 栗山長次郎

    栗山委員長 それではこれで質問を終ることといたします。  参考人方々には御多用中お越しくださいまして、たいへん有力な資料を御提供くださつて感謝いたします。これで皆さんからの公述会をとじますが、事務のものが御案内いたしますから、どうぞおくつろぎを願いとうございます。  これで休憩をいたしまして、午後は一時半から再開いたします。     午後零時十四分休憩      ————◇—————     午後一時五十一分開議
  115. 栗山長次郎

    栗山委員長 午前中に引続き会議を開きます。  前会から議題になつております労働関係三国際条約について質疑を続行いたします。並木芳雄君。
  116. 並木芳雄

    ○並木委員 外務省関係がまだ来ておりませんが、答えられるだけ答えていただきたいのです。私は主として今度の国会に上程されたスト制限法、例の炭業と電産の関係でありますが、これに今度の条約が抵触するおそれがないかという点と、駐留軍の労務者の地位が非常に不安定でございますが、これがこの条約に抵触して来るおそれがないか、こういう点について伺いたいのであります。  まず最初の炭業、電業のスト制限法がこの条約に抵触しないか、こういう点について当局の見解をお尋ねしておきたいのであります。
  117. 福田一

    福田政府委員 その問題につきましては、労働委員会におきましても御説明をいろいろ申し上げておるのでございますが、私たちといたしましては、そのようなことはない、かように考えておりますけれども、詳しくは今政府委員から御説明申し上げます。
  118. 大島靖

    ○大島政府委員 ただいまの御質問は、今回批准について御審議をお願い申し上げております団結権団体交渉権についての条約と、今回国会において御審議を願つております電気事業、石炭鉱業における争議行為の規制に関する法律と矛盾するところがないかというお尋ねでありますが、今回御審議を願つております法律案につきましては、御承知の通り、電気事業と石炭鉱業の両事業につきまして、昨年の経験にかんがみて、この両事業の争議権と公益との調和をはかる、こういう意味合いにおきまして、その争議行為の方法につきまして規制しよう、こういうふうに考え法律案でございます。今御審議を願つておりますこの条約につきましては、労働者の団結権ないし団体交渉権を保護しようという意味におきまして、いわゆる不当労働行為の問題とかなんとかいう問題について規定しておる条約なのであります。団体交渉につきましても、必要があれば国内事情に適合するように措置する、こういうふうな条約でありまして、この点、特にこの条約と今回の法律案が矛盾するということはないと私どもは考えております。
  119. 並木芳雄

    ○並木委員 条約には公共の福祉に反せざる限りというようなことはありますか。日本の憲法ではこれが用いられて、しばしば当局が奧の手として使う条項でございますが、条約にはいかがですか。
  120. 大島靖

    ○大島政府委員 今御審議を願つておりますこの条約につきましては、労働者の雇用の条件とか、あるいは正当なる労働組合の活動をなします上につきまして、事業者側等から不当な圧迫を受けることのないように、あるいは干渉を受けることがないように、十分な保護が与えられなくてはならない、こういう趣旨の条約でありまして、その点特に公共の福祉とか、そういう言葉は使つてないのであります。
  121. 並木芳雄

    ○並木委員 その点になりますと、やはり電気事業及び石炭事業におけるスト制限というのは、あるいはこの条約に抵触して来るのじやないかというおそれがあるわけです。  それともう一つの駐留米軍並びに国際連合軍に働いておる日本人労務者の地位が、非常に不確定かつ不安定である。一体これは公務員なのか、公務員でないのか、もし公務員であるとするならば、当然身分は保障されるし、労働三法は適用されるし、場合によつてはストライキもできるし、要するに団結権団体交渉権が認められておるわけであります。しかしながら、実際を見ますと、なかなかその保護は行われておらない。これは当局でよくわかつておるのではないかと思う。今後の対策をどうするか、この現状を放置しておけば、この条約に違反して来る事例がたくさん出て来ると思います。その点についてお尋ねしておきたいのであります。
  122. 大島靖

    ○大島政府委員 第一の問題につきましては、先ほども申し上げましたように、今回の条約におきましては、いわゆる不当労働行為その他の保護について規定いたしてあります。今回の法律案は、御承知であろうと思いますが、電気産業と石炭鉱業におきまする争議行為の方法について規制をしよう、すなわち簡単に申しますと、電気事業におきまして、電気の正常な供給をストツプする行為でありますとか、あるいは直接に障害を与えますような行為、こういうようなものは争議行為としても正当性を逸脱するものである。それから石炭鉱業におきましては、保安放棄のような争議行為は、これまた正当性を逸脱するものである。こういうことを明らかにしておるのでありまして、直接に団結権とか団体交渉権、そういうものに触れておるのじやなしに、争議行為の方法につきまして、正当ならざる範囲を明確にいたしておる。こういうふうな法律案なのであります。従つてこの法律案とこの条約とが矛盾抵触するということはないと考えるわけであります。  それから駐留軍労務者の関係につきましては、今並木さんお話のように、いろいろな問題があることも承知いたしております。言語の相違でありますとか、あるいは労務管理上の両国の相違でありますとか、そういうことに基因いたしまして、いろいろ問題があることも聞いておりますが、ただその点につきましては、できるだけ事前にそういうふうな防止の措置を講じて行きますと同時に、また労務者の問題につきましての両国の交渉を今やつておられるわけでありますが、そういうふうな事情の相違から来ます問題につきましては、できるだけ排除して行くような措置を今後におきましても講じたい、こういうふうに考えております。
  123. 栗山長次郎

    栗山委員長 黒田寿男君。
  124. 黒田寿男

    ○黒田委員 私もただいま並木君が御質問になりました駐留軍関係の労務者につきまして労働省、外務省の政府委員に御質問申し上げます。ただいま問題になつております三つの労働関係の条約のうち、私が今御質問いたしますのは、工業及び商業における労働監督に関する条約に関連してであります。先ほど並木君もちよつとお尋ねになりましたが、私どもいろいろ聞くところによりますと駐留軍の労務者あるいはPD工場の労働者、こういう労務者に対し、労働者としての基本的権利を確保するための監督制度が、はたして完全に行われておるかどうかということが、今非常に大きな問題となつております。具体的に申しますれば、あるいは不当解雇、賃金の不当な切下げ、厚生施設の欠如、極端な事例になると、奴隷労働の出現ということまでいわれております。私は、これを一つ一つの事例については申しませんが、抽象的に言つて、こういうわが国の労働法による労働者の基本権の保障を無視したような事実が至るところに現われております。そこで労働監督制度に関する条約批准承認しようというときにあたつて、私どもはこの問題について少し政府の御見解なり態度なりを聞いてみたいと思うのであります。  そこで私の質問の第一は、わが国の労務者については、行政協定第十二条の五によりまして、「賃金及び諸手当に関する条件のような雇用及び労働の条件、労働者の保護のための条件並びに労働関係に関する労働者の権利は、日本国の法令で定めるところによらなければならない。」ということになつておりまして、わが国の労働法の適用が、それらの労働者諸君に保障せられておる。しかるに実際は不当解雇が行われておる。どういう根拠に立つて不当解雇をやつておるか。これらを調べてみますと、昭和二十六年に、政府が米国との間に日米労務基本契約というものを結んでおりまして、その第七条によると、米国側の利益に反すると認める場合には、即時その職務を免ずる、その決定は最終的なものであるというような契約がなされておりまして、それは、軍令解雇、あるいは保安解雇といわれておるのでありますが、おそらくこういう契約に基いて、労働法に保障せられた基本権を無視したような不当解雇的なことが行われておるのではないかと私は思う。そこで政府は、労働法がありながら、一体どういう根拠に基いてこのような契約を結んだのであるか。日本政府としては、憲法があり、労働基準法があり、その他の労働法があり、しかして行政協定第十二条の五項もあるのでありますから、このような契約を、米国軍隊と結ぶということは、できないと私は思うのです。なぜ政府はこのような基本契約を締結なされたか、どういう根拠に基いてなされたか、それを第一に伺いたいと思います。
  125. 下田武三

    ○下田政府委員 私、直接その問題を所管しておりませんので、伊関国際協力局長が、ただいまその問題を日米合同委員会においてまさに折衝中であると聞いております。ただ私の存じておるところでは、日本側とアメリカ側との意見のわかれるところは、ただいま御指摘の日米行政協定第十二条のほかに、日米行政協定の第三条にこういう規定がございます。「合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定使用、運営、防衛又は管理のため必要な又は適当な権利、権力及び権能を有する。」という原則的規定がございます。すでに米国に施設または区域を貸しました場合に、これらを管理するため、何が必要であるか、何が適当であるかということの判断は、その施設なり区域なりを使用しておる軍側の軍事上の判断に基くものでなければ意味をなさない。従つてセキユリテイリーズンを主張しておるわけであります。セキユリテイというものは、その軍でなければ判断がつかない。だから完全に有害な人物を施設内で使うということは、軍の建前と両立しないというのが、アメリカ側の言い分であります。これに対しまして、セキユリテイ・リーズンはわかるが、しかしながらその理由も詳しく言わないで、かつてにどんどん首切られたのでは、日本の労働者は安心して進駐軍の労務に服し得ないというのが、日本側の主張でございます。そこで従来の、十分な理由の説明をせずして解雇するということを是正いたさせるべく、ただいま日米合同委員会で折衝中でございます。近い将来に解決がつくことと思います。
  126. 黒田寿男

    ○黒田委員 私が今お尋ねしましたのは、一体日本政府が、行政協定第十二条があるにかかわらず、先ほど申しましたような基本契約を、日本政府と米国軍隊との間に結んだのは、どういう根拠に基くかということであります。条約局長は、それは行政協定第三条によるのだ、こういう御答弁でありますか。
  127. 下田武三

    ○下田政府委員 私、直接契約の締結のときに参加しておりませんので、伊関局長を至急呼びまして、答弁させたいと思います。
  128. 黒田寿男

    ○黒田委員 お答えになれないということであれば、あとで他の方からお答え願つてもけつこうでありますが、私は、この点は条約局長で十分お答え願えると思いまして、局長のおいでになるのを待つて質問したのでありますが、かりにこの行政協定の第三条があるといたしましても、同時に第十二条があるのであります。労務管理をする場合は、やはり行政協定第十二条に基いてしなければならぬ、私どもは、そういうふうに考える。かりに行政協定第三条が、労務者に対する管理権を持つことを規定しているといたしましても、その管理の内容は第十二条五項によつて制約を受けるものである。私どもは当然そのように解釈しておつたのであります。従つて第三条があるから、第十二条を無視したような契約を締結していいというようには、私どもは、どうしても解釈することができない。
  129. 下田武三

    ○下田政府委員 伊関局長が参ります前に、私から一応御指摘の点をお答えいたしたいと思いますが、ただいま御指摘の労務基本契約は、占領中にできたもので、そのものの引継ぎで今日に至つておるわけであります。従いまして講和発効後の独立後の事態に照しましては、いろいろの観点から、日本側としては是正したいところがあるわけであります。それで目下合同委員会で是正の折衝をしておるわけであります。従いましてかりに講和発効後できたものといたしますと、日米行政協定との関係の問題を生じますが、占領時代の遺物であるという点におきまして、まともから安保条約あるいは行政協定の規定と照して判断することは、従来の行きがかりを無視することになるのではないか、そう存じます。
  130. 黒田寿男

    ○黒田委員 政府はあの基本契約は独立後であろうと、まだ生きて働いておるものと御解釈になつておるのでありましようか、そのことをちよつと伺いたい。
  131. 下田武三

    ○下田政府委員 合同委員会の交渉が妥結いたして新しいものができますまでは、やはり有効でございます。
  132. 黒田寿男

    ○黒田委員 そういたしますと、私が先ほど質問をいたしましたように、第十二条との抵触問題が依然として残るわけであります。条約局長に御質問いたしますが、同じ行政協定の中に第十二条と第三条というものがありますが、私が先ほど申しましたように、この第三条による管理は第十二条の制約を受けると解釈すべきではありませんでしようか。そうしないと矛盾したものが同じ協定の中に存在しておるということは、常識上からも論理上からも許されないことであります。第三条によつていわゆる労務基本契約のごときものが締結できるのならば、第十二条が設けられておることは意味がないと思います。やはり常識上からも論理上からも、第十二条に統一しなければならない、こう考えます。政府が基本契約を御締結になりました趣旨がどうしても私にはわからないのですが、これはしかし伊関局長がおいでになりますならばまた伊関局長にお尋ねしてもよろしいと思います。
  133. 下田武三

    ○下田政府委員 黒田さんは第三条の規定は第十二条の制約を受けるとおつしやいますが、逆に第十二条の規定は第三条の制約を受けるという考え方もございますので、相手が軍であるということを知りつつ雇われて行く以上は、軍の基本的な安全というものの要請は、前提としてわかつておるはずだという考え方が向うにあるわけであります。
  134. 黒田寿男

    ○黒田委員 それは軍に雇われておる労務者と一般工場に雇われておる労務者との間に、あまりにも基本権上の差等をつけたお考えであると思います。私どもは条約局長のようなお考えには賛成することはできません。軍に雇われておるからといつてある者は予告もなしに解雇される。これは労働者に対する基本権利の保障上から見てできないことである。相手は軍であるから何でもできるというように考えることは、これは私は非常に問題だと思います。どうも私は第三条に統一するというように考えられるという局長のお答えには賛成できません。私はどうしても第十二条に統一しなければならないと思います。念のために労働省の政府委員はどういうように御解釈になつておいでになるか、伺いたいと思います。
  135. 亀井光

    ○亀井政府委員 今のお話は、私は条約の解釈というよりも、労働保護という観点からいたしまして、占領下における不明朗な労働関係を、できるだけ明朗にするようにという趣旨からいたしまして、日米合同委員会の交渉に当られます外務省当局に対しましても、そういう趣旨のことを申し述べまして、その実現方につきまして御努力を願つておる次第であります。
  136. 黒田寿男

    ○黒田委員 ただいまの政府委員のお答えは、私の質問に対する答えになつていない。ただ努力するということだけをおつしやつておるが、私の質問いたしましたのはそうではなく、労働法の適用を受けるという行政協定の条文が存在するにもかかわらず、その存在を無視したような労働契約が結ばれて、そうしてそれによつて、わが国の労働法の見地から見れば、不当と見られるいろいろなことが行われておる。そこで労働省の方ではどちらが正当であるとお考えになるか、第十二条の規定をあくまでも生かして、日本の労務者とアメリカ軍との間の労務関係を規律すべきものであると、かようにお考えになるのか、それとも第三条があるから、その支配を受けるとお考えになるのか、私が先ほど質問いたしましたのは、そういう点についてであります。第三条に基いて、日本政府がアメリカ軍と契約を結ぶということは、行政協定第十二条のみならず、労働法を無視しさらに日本憲法を無視することになるのでありますから、アメリカはどうあろうとも、日本政府としては日本憲法があり、日本の労働法があり、行政協定第十二条がある限り、あのような基本契約は結んではならないわけであります。この点を無視しておるのは、不当じやないかということを私は質問しておるのであります。条約局長はむしろ第三条に統一されるというふうに考えるとおつしやるのですが、労働省のお考えとしてはどういうお考えでありましようか、私は第十二条の方に統一すべきものであると思いますが、御意見を伺いたいと思います。
  137. 亀井光

    ○亀井政府委員 第三条が第十二条に優先するか、あるいは第十二条が第三条に優先するかという解釈論はともかくといたしまして、実質的な労働条件が現実に守られて行くということを、われわれ労働省の立場としては、主張いたしておるわけであります。従いまして、そういう解釈は別にしましても、第十二条にきめられました条件が、現実の面において守られて行くというようなことについて、外務当局に対して主張いたしております。
  138. 黒田寿男

    ○黒田委員 それでは労働省の政府委員にお尋ねいたしますが、労働省はそういう立場に立つて日本の労務者の基本的権利を守らなければならぬものであるにもかかわらず、日本の労務者は基本契約のごときものによつて、不当馘首をされておるというような現状が、今われわれの前に展開されておるのであります。これに対して、はたして十分な監督をいたしておるものだと言い得られますか。この労働監督に関する条約の説明書の中に、労働省としては労働監督制度を十分に生かしておるというような御説明がありますが、私どもはこれはちよつと思い過ぎではないか、現実はそうなつていないと思う。これに対してどういうお考えを持つておいでになりますか。
  139. 亀井光

    ○亀井政府委員 お話の問題は、労使関係の問題でございまして、直接工業及び商業における労働監督に関する条約とは趣を異にいたします。いわゆるここに出ております労働監督の面からいたしますと、労働基準法で規定されております労働条件の確保に対しましては、われわれは監督官を督励いたしまして現在もやつておるわけでありまして、今後もそういう点については十分努力したいと考えております。今までいろいろ問題はございました。ございましたが、独立後におきましては、そういう問題もだんだんと減少して参つおります。われわれの監督に対しましても、忠実に違反事項を調査しておる実績を持つておるわけであります。われわれも今後もこういう点につきまして、なお努力して参る考えであります。
  140. 黒田寿男

    ○黒田委員 私はこの問題についてはこれ以上申し上げません。少し問題をかえてみたいと思います。  今わが国の労働者諸君が米国軍隊に雇われておる。その雇われ方に直接雇用と間接雇用があつて、ただいま私が問題といたしましたような問題は、みな間接雇用の場合についてなのです。間接雇用といいますと、雇い主は日本政府であります。そして管理者はアメリカの軍隊である。これは法律上は一体どういうことになるのでありましようか。日本の労働者を解雇する場合は、雇い主たる日本政府が解雇するのでなくて、かつてに管理者が解雇するというようなかつこうになつておるように思えるのですが、この点は形式上は日本政府が解雇しておるということになつているのでしようか。
  141. 亀井光

    ○亀井政府委員 現在におきましては、御説の通りに、雇用主は日本政府でございまして、あるいは労務管理の面におきまして多少使用者としての米軍の権利がございます。解雇そのものは雇用主としての責任の問題でございますので、特調が司令部、軍側と相談いたしまして、特調自体が解雇の手続をとるという現在の状態であります。
  142. 黒田寿男

    ○黒田委員 しかし労働者の側から見れば、一実際は特調が解雇したとは思つておりません。アメリカの軍隊が解雇したと思つております。そうすると、まつたく今の特調は雇い主でありながら他人の意思に左右せられていて、日本政府としては雇い主として労働者に対する労働法の遵守、労働権の確保について、雇い主としての権限を発揮しておいでにならぬように思います。そこでお尋ねしたいのは、こういう場合に、日本政府としましてアメリカ軍の意思に反して——こういつてちよつと語弊がありますが、まあ反対して、日本の労働法の趣旨に反するような解雇をやらせないというようなことは、全然なさつていないのであるか、駐留軍の言う通りに、形式上だけ雇い主としての権利を行使しておるというようなかつこうになつておるのでありましようか、この点は私ども非常に心細く感ずるのであります。
  143. 亀井光

    ○亀井政府委員 御質問の点は特調の具体的な問題になりますので、私から答弁を申し上げるのもいかがかと思いますが、従来占領下において結ばれました現在の労務雇用契約というものが、そういう点について非常に不明確である点が多かつた、従いまして独立後の今日におきまして、これを独立後の日本の実情に合うようにという趣旨で、目下日米合同委員会におきまして、この問題が討議されているような状況であります。われわれとしましては、そういう趣旨が明確にきめられますことを期待いたし、また外務省あたりにも、そういう趣旨のことを意見として申し述べております。
  144. 黒田寿男

    ○黒田委員 ただいまの雇い主、管理者及び労務者という関係について、さらに質問をしてみたいと思いますが、政府は日米労務基本契約のごときものに拘束せられて、米国軍隊の意思に基いて行動しておられるようでありますけれども、一体労働者として日本の労務者は政府と契約をしておるのであります。アメリカ軍隊というものは第三者であつて、雇い主が第三者とかつてに雇われている労働者のことについて契約を結び、第三者の意思に従つて行動しなければならぬということは、非常に不可解である。日本の労働者は日本政府とアメリカ軍隊との契約がどのような契約であろうとも、それには拘束されないという立場にある。政府はかつてに第三者たるアメリカ軍隊と契約を結ぶ。それも他人たる労働者に関する問題について契約を結ぶという関係になるのではなかろうかと思いますが、私は日本政府とアメリカ軍隊との関係の内容をよく知りませんから、こういう質問をするのですが、この点いかがでしよう。
  145. 亀井光

    ○亀井政府委員 日米間できめられました労務基本契約そのものによつて、労働者が拘束されるという結果になることは当然でございますが、その契約の内容自体は、日本政府と労働者の労働契約、これと同じ形になつて参るわけであります。従いまして労働者が日本政府に駐留軍労務者として雇用されます場合におきましては、そういう条件を了承しまして労働契約は締結されるわけであります。従いまして、本人がその労働契約を不満足であるとすれば、雇用関係は成立しないという問題になるのであります。雇用関係に入りました以上、そういう労働条件を了承して労働者になつたというように、法律的には解釈されると思います。
  146. 黒田寿男

    ○黒田委員 事情はよくわかりました。しかしそれは非常に悲しむべき事情だと考えます。そうしますと、日本政府とアメリカ軍隊との間に締結いたしました契約の内容は、そのまま労働者が雇われるときに、労働者と日本政府との間の雇用契約の内容になる、そういうようなことになつてつて、しかしてただいま申しましたように、日本の労働法による雇用条件の適用を受けないような内容の契約を、労働者が押しつけられるということになる。たとえば基本契約第七条のごときは、日本の労働法から見たときは、ああいう内容の契約は日本人同志であれば結ぶことができない、私どもそう考えます。労働者がああいう内容の契約を締結させられている、それは当時者が自由意思で承諾したといえばそれまででありますけれども、そういう場合に弱者を保護するのが労働法でありますから、労働法の趣旨にかなつていないような契約を政府がなさることは、断じて許されないことと思う。合同委員会においてこの問題を協議されるということでありますならば、日本の労働法が守られるような契約をしていただきたいと思います。  それから最後に一点だけ御質問を申し上げますが、直接に雇用されております労働者の例です。東京近辺ではあまり聞きませんが、その他の地方で外国軍隊との間に労務の直接雇用関係を持つている労働者があるかどうかということにつきまして、ちよつとお尋ねしておきたいと思います。
  147. 亀井光

    ○亀井政府委員 現在直接雇用になつておりますのは、昨年の平和条約発効のときに、従来の間接雇用から切りかえられました部面、すなわちPXとか、クラブあるいは個人の家庭に使用されておる者がそのときに切りかえられた。さらにまた呉地区の英濠軍に使用されております労働者につきましては、これは目下日本政府は交渉中ではございますけれども、日本政府としましては、間接雇用という線で交渉を続けておりますが、その交渉が妥結するまでは、直接雇用のような形になつておる次第であります。数は英濠軍関係が約五万近くでございます。それからそのほかのを入れまして、全部で大体六万人くらい直接雇用者がございます。
  148. 黒田寿男

    ○黒田委員 直接雇用されております労働者については、ただいま私が間接雇用について申しましたような、基本的権利を無視した事実が現われておるのでありましようか。これは私は事実をよく知りませんが、政府はそういう事例があつたということをお聞きになつておりますか、どうですか。
  149. 亀井光

    ○亀井政府委員 この直接雇用の労働者につきましては、これは全面的に国内労働法がそのまま適用されます。すなわち、日本の使用者が雇用するのと同じ形になるわけでございます。従いまして、昨年の独立後の切りかえ当初は、給与の体系がかわりますために、多少賃金の引下げとか、いろいろ問題はございました。しかし現在におきましては、まだ私の方にそれほど大きな問題として起つてはおりません。ただ呉地区の英濠軍関係労働者につきましては、間接雇用を主張しまする事柄から起ります摩擦が、多少ありましたことは私も承知しております。
  150. 黒田寿男

    ○黒田委員 外務省の方にお尋ねいたしますが英濠軍などと国連軍協定というものが今折衝中であると思いますが、そうすると、この協定の中で、英濠軍に雇われる日本の労務者の雇用条件に関する協定はどういうふうになつておりますか。すなわち、この英濠軍に雇われます場合、あるいは国連軍に雇われます場合、すなわちアメリカ軍隊以外の軍隊に雇われます場合の労働者の雇用条件について、日本の労働法による十分な保障がなされるようになつておりますか。もしお話願えますれば、交渉中ではございましようが、お話願いたいと思います。
  151. 下田武三

    ○下田政府委員 国連軍協定はまだきまつておりませんが、第一の直接雇用にするか、間接雇用にするかという点では、英連邦側は直接雇用の方を希望しているのであります。それは中間に労務管理の人間を置くと、その給料も払わなければいけない。そうすると、貧乏な英連邦側としては経費がたくさんいるという見地から、直接雇用をなるべく希望しておるようであります。ところが日本の労務者側は、直接雇用で軍人相手にらやれることはかなわぬ。なるべく間に緩衝地帯——日本政府機関が入つてもらいたいということであります。どういうことになりますか、まだちよつとはつきりきまつておりません。しかし私どもの希望としては、大体日米間の方式とあまりかわらないようにおちつけたいと思つております。  第二の、国連軍協定の中に、行政協定第十二条に類する労働者保護の規定を置く必要があるということでありますが、これは私ども認めておりまして、やはり同様の規定を置きたいと思います。
  152. 栗山長次郎

  153. 島上善五郎

    ○島上委員 私の質問は、ただいまのとは直接の関連がございません、政府が今度出された国際労働機構すなわちILOの条約批准に関連してでございますが、日本政府は、御承知のように国際労働機構には第一回以来加入して参りました。そしていわゆる八大産業国の一つとして常任理事国でありましたが、当時日本政府がこの条約批准に対して非常に不熱心であるという非難が高かつたのです。それはILOのたくさんの条約の中で、日本が今まで批准したのはわずか十四件で、順位からいうと、二十三位で、ブラジル、ビルマ、グアテマラというような国のグループに入つておる。こういう不名誉な状態であつたのです。このことは、毎年の総会で日本から行つた労働代表に非難されておりましたが、当時日本政府は少しも反省しなかつたのです。私は今戦争前の政府の責任をあえてどうこう言つてもしかたがないので、そのことは言おうとは思いませんが、再加入を許された今日、日本政府がどうもその熱意が足らないように思われる。単に国際的なおつき合い程度に考えておるのか、それともこの機構の討議に参加して真剣に日本の労働者の状態を、国際的な水準に引上げようというふうに考えておるかどうか、まずその基本的な点を政府にお伺いしたいと思います。
  154. 下田武三

    ○下田政府委員 外務省の方から先にお答えさせていただきますが、今度の三つの条約は、実は日本が再加盟を認められます前にできました条約でございまして、法律的にはこれに加入する義務はないのでありますけれども、日本が再加盟したあとに一回出た会議で採択された条約に参加しております。それに対する措置をとります前にその条約を取上げる方が順序だと思いまして、これを取上げたわけであります。  なおただいままでに本委員会の御審議を願つております条約は、ほとんどすべて平和条約関係の条約なのであります。マドリツド協定でありますとか、ジユネーヴ条約関係でございますとか、すべてこれ平和条約日本が加入する約束をさせられておる条約であります。それから航空協定にいたしましても、これは連合国側の要請があつて日本締結しなければいかぬという義務を負つておるから、締結しておるわけであります。こういうたくさんの条約を一ぺんに御審議願いまして政府当局といたしましてはまことに恐縮に思つているところであります。そこでそういう何らの義務なしにまつ先に取上げましたのがこの労働三条約でございます。その点政府の意のあるところをおくみとり願いたいと思います。
  155. 島上善五郎

    ○島上委員 昨年の第一三十五回、つまり日本が再加入を許された後の総会において、勧告及び条約が採択されております。私の承知しているところでは、この勧告及び条約は、一年以内に政府が国会に付議するという義務を負うているはずだと思うのですが、この点に対してはいかなる措置をおとりになる考えですか。
  156. 橘善四郎

    ○橘政府委員 お答え申し上げます。先ほど外務省の政府委員及び労働省の政府委員からお答えがあつたように、労働省といたしましては、特に長い間の空白時代もありまして、脱退後の条約等がどういうような環境において、どういうような目的において採択されたか、ということなどのはつきりした資料も、実はすみやかに手に入らず、なおまた研究調査をして行かなければならない必要もありまして、この三つの条約を今御審議をお願い申し上げておる次第でございます。そういうような関係もございまして、政府の方としては復帰後の条約等につきましては、なるべくすみやかに国会に御報告申し上げる手続をとるようにいたしておるのでございます。私どもの希望としては、ぜひとも来る国会に御報告しなければならない、またしようという努力を今いたしておる次第でござまいす。
  157. 島上善五郎

    ○島上委員 国際労働機構には各種の産業委員会があり、さらに専門委員会がたくさんございますが、この産業委員会並びに専門委員会への参加について、日本は今日までのところきわめて熱意がないように思われる。私どもから考えると、日本がきわめて消極的であるように感ぜられてしかたがない。現在産業委員会のどれとどれに入つてつて、どれに入つてない、専門委員会もどれに入つてどれに入つてない、そうしていかなる理由で入つていないかということをお伺いいたします。
  158. 橘善四郎

    ○橘政府委員 現在までにわが国が産業委員会の正式メンバーとして許されておりますものは、鉄鋼産業労働委員会と、金属労働委員会と、繊維産業労働委員会の三つでございます。残り五つの産業労働委員会があるのでございますが、これは私どもの知つておる範囲によりますと、百二十一回の理事会が今ジユネーヴで開かれておりまして、この理事会において、わが国が残る五つの産業委員会全部に入れるかいなやということがはつきりするのではないかと、御期待申し上げておる次第でございます。
  159. 島上善五郎

    ○島上委員 それでは日本は残る五つの委員会に入ることを希望し、そのような手続をとつておるかどうか。
  160. 橘善四郎

    ○橘政府委員 申し上げるまでもなく、政府といたしましては、八つの産業委員会のうち残つておる五つの分に対しましても、必ず加入できるように極力努力しておる次第でございます。特にジユネーヴの連絡常任代表を通じまして、最善の努力をいたしておる次第でございます。
  161. 島上善五郎

    ○島上委員 それから私どもの聞き及んでいるところによりますと、来年度に憲章を改正して、いわゆる八大産業国を十大産業国と改正しようという動きがあると聞いております。そうしてこの十大産業国という中には、ドイツと日本を含めるという含みがあるとも承つております。そして、ドイツでは熱心にこれに対して申入れと申しますか、運動いたしておるそうでありますが、日本ではそのような積極的な動きをしておられるかどうか、お伺いいたします。
  162. 橘善四郎

    ○橘政府委員 いまだ理事会の拡大計画につきましては、はつきりとわが国の方に伝わつて来ておらないのでございます。特に御指摘になりましたドイツまたは日本が、理事国として加入できるやいなやということにつきましても、今の段階では御想像にまかせる次第でございまして、はつきりとしたいわゆる明文はないのでございます。わが国といたしましては、この問題がILO自体において討議されるに先んじて、わが国もぜひとも理事国になれるように努力をいたしておる次第でございます。
  163. 島上善五郎

    ○島上委員 次に総会へ送る代表、顧問のことについてですが、正式に復帰しなかつた当時は、これはオブザーヴアーですから、いたし方ないといたしましても、正式に復帰いたしました以上は、出席する代表、顧問は、十分にその任務を果せるようにしてやらなければならぬと思うのです、すでに御承知のように、一つの議題について二名までの顧問を送れるということになつておる、日本人は言葉が不十分でありますので——まあ中には達者な人もおりますけれども、不十分な人が多いので、どうしても一議題に一人ずつ分科委員会に参加できるようにし、かつその一名について一名の通訳をつけるというふうにいたしませんと、十分とは言いがたいと思うのです。しかるに昨年も代表一人、顧問一人、今年もまた予算では代表一人、顧問一人しかとつていないそうですが、こういうことで、はたして代表団が満足に任務を果せるとお考えになつておりますかどうか。
  164. 橘善四郎

    ○橘政府委員 仰せの通りでございまして、政府といたしましては、できる限り必要なるところの代表団をそろえて出席するように、努力をいたしておるのでございます。幸いに今度の総会には、またその他の加入出席できるところの委員会等には、昨年よりも若干代表団が数が多くなるのではないかということが申し上げられるのでございます。
  165. 島上善五郎

    ○島上委員 まあ若干多くなるのではないかというようなあいまいなことでは、これははなはだ心細い次第であつて、私はぜひとも正式に再加入を認められて代表団を送るからには、その代表団が十分任務を果せるようにしてもらいたいものだと思います。そうしなければならぬと思います。それを強く要望いたしまして、次の質問をいたします。  今回出されました政府批准条約の中で、団結しかつ団体的に交渉する権利の原則の適用に関する条約というのがございますが、これは第三十一回総会で採択された条約の九十八号です。もちろん私どもこれも必要だと思いますが、その前年度三十一回の総会で採択された条約の八十七号、結社の自由及び団結権の擁護に関する条約というものがございます。これこそ私は今回出した団結しかつ団体的に交渉する権利の原則の適用に関する条約の前に出すべき基本的なあるいは前提的な条約であると解釈いたしますが、どうしてこの条約を今回出さなかつたのかということをお伺いいたします。
  166. 大島靖

    ○大島政府委員 今島上さんのお話の結社の自由及び団結権の擁護に関する条約につきましてはただいまその用語の点ないしは文章の点でさらに検討を進めております。今回批准を御審議願つておりますのは、この団結権が現実に干渉される、あるいは差別待遇を受けるということによつて阻害されるのを防止いたしますために、必要な措置がとられなくてはならないという意味団結権団体交渉権についての条約を、さしあたり批准をお願い申し上げておるのであります。結社の自由の問題につきましては、今申しましたように、用語、文章等につきまして検討を進めております。
  167. 島上善五郎

    ○島上委員 そういたしますと、この結社の自由及び団結権の擁護に関する条約については、なるべく早い機会に批准するように国会に出す御用意があるかどうか、またそういうお考えがあるかどうか。
  168. 大島靖

    ○大島政府委員 今申しましたように、用語、文章その他につきまして、検討を進めております。検討の結果によることと考えております。
  169. 島上善五郎

    ○島上委員 実は私作目労働委員会で質問いたしましたが、この結社の自由及び団結権の擁護に関する条約、これは用語及び解釈の検討を進めておるということでありますが、これによりますれば、労働者の団体は完全なる自由のもとに、彼らの結社及びその運営並びに活動方針、活動方法を定める権利を有する。公の機関はこの権利を制限し、またはこの権利の合法的行使を妨げるようないかなる干渉もしてはならぬ、こういう条項がございます。そこで私は今度、この委員会ではありませんが、労働委員会へ出された電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律は、この条項に抵触するのではないか。そして政府はそういう考慮から、故意にこの条約を今回出さなかつたのではないかと疑われるので、その質問をいたしましたが、はつきりした答弁がなかつたのです。ここではつきり答弁を願いたいのと、それからこれに関する質問をしました際に、斉藤次官は、条約八十七号については、まだ決定的な翻訳ができていない、こういう答弁でした。ところが労働大臣官房労働統計調査部の名によつて出された出版物がある。この中にこの条約の翻訳が載つておる。これは決定的な解釈がまだできないが、多分こうだろうという程度のことで、こういう印刷物を公にされたものかどうか、その点もお伺いいたします。
  170. 大島靖

    ○大島政府委員 今島上さんの御質問の、今回国会で御審議を願つております電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案、これが今の結社の自由、団結権条約に抵触するのではないか、あるいは抵触するおそれがあるから、故意にこの批准をしないのじやないかというお話につきましては、抵触する点はございません。それに抵触するから批准をお願いしなかつたというようなこともございません。  それから第二の点につきましては、一応の翻訳はもちろんいたしておりますが、先ほど申し上げましたように、その翻訳の用語の解釈ないしは文章の解釈で、さらに詳細検討を要するところがありますので、今検討中である、かように申し上げておるのであります。
  171. 島上善五郎

    ○島上委員 この条約の八十七号に抵触しないというような解釈については、私は若干別の考えを持つております。抵触する、こう解釈しておりますが、その議論はしばらくおくとしまして、この条約を早急に批准するような手続を進めていただきたい。  それから、そのほかに今日まですでにたくさんの条約が決定されておりまして、特に私どもは労働時間に関する条約、最低賃金に関する条約、賃金の保護に関する条約あるいは同一労働同一賃金に関する条約といつたようなものは、日本の労働状態現状にかんがみて、特に必要があると考えておりますが、こういうようなものを批准しようというお考えがあるかどうか。
  172. 亀井光

    ○亀井政府委員 ただいま御指摘の問題につきましては、目下詳細に検討を加えておりまして、できるだけ公式な解釈といいますか、字句その他の解釈がきまりましたならば、国会の御承認を得るようにいたしたいという努力を今いたしております。
  173. 島上善五郎

    ○島上委員 これで終りますが、おざなりの答弁で、私ははなはだ不満足です。再加入を許されたからには、戦争前のような、ああいうことでなしに、真剣にこの条約並びに勧告を検討して、日本の労働者の状態を改善するということに対して、もつと熱意を示してもらいたいものと思う。そうでなければ、今度国会に出された三つの条約批准も、まつたくのおざなりになつて、何の意味もないということになるおそれがあるので、そのことを強く希望して私の質問を終ります。
  174. 栗山長次郎

    栗山委員長 並木芳雄君。
  175. 並木芳雄

    ○並木委員 先ほど質問いたしました通り、私はこの条約はけつこうです。非常にけつこうなんですけれども、これに入ることによつて、現実がマツチしていなければ、条約違反になるおそがあるから聞いているわけです。そこで、伊関局長もおいでになりましたが、さつき駐留軍並びに国連軍の労務の契約について、黒田委員から質問があつて、そのとき条約局長は、行政協定の第三条と第十二条の関係を答弁したのであります。私どもは第三条の方は原則論で、第十二条の方はさらにそれを具体的に明確化したものである、こういう解釈から、当然労務については第十二条が優先して適用されるものである、こういう解釈をしております。亀井さんもその点については、労働省としては第十二条を遵守して行きたい、答弁は巧みでありましたけれども、それを分析すると、明らかに条約局長の意向と食い違つております。そこへ持つて来て、例の日米労務の基本契約といもうのは、占領中に結ばれておつて、それが今日まで生きて来ておる。こういうことなんです。ですから三つのものがこんがらがつてしまつて私としては非常に了解しにくいわけです。日米労務基本契約というものは、条約発効とともに当然効力を失うものと思うのですけれども、これはそうなつておらないのかどうか、いまだに生きているのかどうか。非常におかしいわけですが、その点いかがですか。
  176. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 基本契約は現在生きております。と申しますのは、これの改訂の交渉を発効以来ずつと続けておりまして、話合いがつきませんので、効力を逐次延長しております。しかし大体近く、ごく最近に話合いがつきそうなところに参りました。従来主として特別調達庁で山交渉いたしておりましたが、なかなからちが明きませんので、合同委員会の方で取上げまして、昨年末から交渉を始めました。ところがその間にぺース・アツプの問題をめぐりまして、ストライキも起きそうな形勢になりまして、賃金の問題の方が先決問題になりまして、やつとこの方がおちつきまして、また基本契約の問題にもどりまして、大体近く話がつきそうだというところに参つております。
  177. 並木芳雄

    ○並木委員 その現実の話合いの進行状態はけつこうです。しかし日米労務基本契約というものは、講和発効とともに効力を失うべきものじやなかつたのですか。占領中の諸法規というものは、特に何か立法措置をせざる限りは効力を失う、そういうふうに考えられるのですが、それがそのまま生きている根拠は何か、法的措置をしたかどうかということです。
  178. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 これは契約になつておりますから、法律のように効力を失うものと私は考えません。契約になつておりまして、期限がついております。それでその期限を更新したわけでございます。
  179. 並木芳雄

    ○並木委員 それが今いろいろのがんになつて来ておる。これは今局長の答弁では契約だからということですが、契約という名前がついていたか、協定という名前がついていたか、私存じませんけれども、それは一応占領中の契約だつたんでしよう。そうすると、効力を失うということにならないですか。その建前を、これは条約局長から専門的に伺つておきたい。
  180. 下田武三

    ○下田政府委員 契約は、講和が発効して独立しましても、効力に影響ございません。
  181. 並木芳雄

    ○並木委員 行政議定第十二条の五と第三条との関係、先ほど私が質問した点、伊関局長はどういうふうな解釈をもつて合同委員会で交渉をされておりますか、御答弁願います。
  182. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 第十二条は、この労務契約一般、労働問題一般について論じておるわけでございまして、この施設内における軍の権限ということに関しましては、第三条の方が優先すると私は考えております。
  183. 並木芳雄

    ○並木委員 どうも少しむずかしくなつてわかりにくいのですけれども、そうするとどういうことになるのですか。もう少し詳しく説明してもらわぬとちよつとわからない。
  184. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 第三条におきましては、施設の運営あるいは防衛または管理のために必要または適当な権利、権限及び権能を有する、こういう規定になつております。ですからいわゆる保安条項というものに基いて、保安上の理由で解雇いたします場合に、それが必要なまたは適当な行為であつたかどうかということは、これは問題になります。しかし必要かつ適当であれば解雇できるというふうに解釈します。保安条項の問題に限つてこの第三条というものが出て来るわけです。それで施設の管理運営あるいは防衛のために必要、そして適当であるかどうか。この判断は合同委員会あるいは両国政府の間ですべきものであります。しかしそうした必要または適当な権限は持つておるわけでございます。
  185. 並木芳雄

    ○並木委員 保安条項の問題になつて来ると、法律をつくる必要があるのじやないですか。法律にそういうことをはつきり定めて、それによつて労務者が縛られるというふうにして行かないと、建前がおかしいのじやないでしようか。
  186. 下田武三

    ○下田政府委員 つまり全般的に日本国民のすべてに関係のある事項でしたら、仰せの通り法律を必要とすると思いますが、軍に使われることを承知の上で、契約に基いて雇われて来るという場合には、特に法律をもちませんで行政協定の第三条の規定をそのまま適用してさしつかえないと思います。
  187. 並木芳雄

    ○並木委員 そこで問題が現実の問題になつて来ると思うのです。結局軍の方が強い、雇われる方が弱いという立場は、不当労働契約になつて行くと思いますが、この点は亀井さんなんかも繰返しそういう欠点を除いて行きたいと言つておりますから、ぜひ欠点を一日も早く除いて、対等の立場で雇用関係が成立するようにお願いしたいのです。  もう一点だけお尋ねしておきたいと思いますのは、間接雇用の場合、雇用主が日本政府である、こういう答弁でありましたけれども、雇用主が日本政府であつてもこれは公務員じやないのですか。
  188. 下田武三

    ○下田政府委員 現在は公務員になつていないのでありますが、実はすべての問題は、この軍に雇われる者の本質いかんということから来ると思うわけでございます。この三条約の中の一つにも公務員あるいは警察、軍隊を除くというような規定のある条約がございますが、やはり軍に雇われる者も——これが昔の日本軍でありましたならば、これは普通の労働法の適用がないわけでございますが、アメリカの軍でありますからそうばいかぬ、向うは軍の主張は主張するけれども、わが方としてはやはり労働者の保護を尊重する建前で行きたいというところに、すべての問題があるわけであります。しかしながら御質問のただいまどうなつているかというと、公務員には含めておりません。
  189. 栗山長次郎

    栗山委員長 並木君、よろしうございますか。——戸叶里子さん。
  190. 戸叶里子

    戸叶委員 すでに多くの委員から御質問がありましたので、私は重複を避けて二点だけ伺いたいと思います。  問題は、条約に加盟するからには、当然その条約に違反しないようにしなければならないと思いますが、職業安定組織の構成に関する条約に加盟することによつて、身体障害者及び年少者に特別な考慮を払うということが、七条、八条に書いてありますけれども、わが国におきましてはどういうような処置が具体的にとられて、そしてこの条約に違反しないような対策がしてあるかということが一点と、それからもう一点は、労働基準法で女子の坑内作業が禁止せられておりますが、現実の問題として、女子が坑内に入れないので、たくさんの婦人失業者を出している例があります。その一例をあげてみますと、大谷石材などにおきましては非常に大きな問題として、まだ三年くらい片づかない問題になつております。こういうようなものに対しましても、当然配置転換なり何なりで解決しなければならないのが、そのまま放置せられておりますけれども、そういう態度をもつてこの条約に加盟しても、一体条約違反にならないかどうかということを伺いたいと思います。
  191. 村上茂利

    ○村上説明員 ただいま身体障害者に関する御質問がございましたが、現行の職業安定法におきまして身体障害者に対する特別な処置といたしましては、職業指導の面におきまして特別な規定を設けております。また職業補導の面におきましても第二十六条の二の規定におきまして、特別な職業補導を行うような規定を設けてあるわけであります。なお行政指導の面におきましては、各安定所におきまして特に身体障害者の雇用促進に、特段の努力を払つて実施いたしております。御参考までに申し上げますと、身体障害者専門の補導所は現在全国に八箇所設けられておりまして、安定法に基きますところの補導の実施というようなことを行つております。
  192. 戸叶里子

    戸叶委員 その八箇所で全部収容されておりますでしようか。
  193. 村上茂利

    ○村上説明員 お答えいたします。実は身体障害者の中で、具体的な職業補導を要する人々がどれくらいいるかということが問題になるかと存じますが、現在安定所に参ります身体障害者のうち、相当部分を収容しておるわけでございます。収容施設といたしましては、定員は千名をちよつとオーバーして駆ります。ちよつと今正確な数字を忘れましたが、千五百名の収容能力を持つております。
  194. 亀井光

    ○亀井政府委員 第二番目の御質問でございますが、女子の坑内作業の禁止は女子の失業を招く。これに対する配置転換をどういうふうに考えておるか。特に大谷石の例をとつて御質問になりましたが、今当面問題になつておりますのは、大谷石の問題をただいまわれわれは取上げておるわけであります。労働基準法上当然女子の坑内労働は禁止されておりますので、これをいかに処理すべきか。禁止された後の問題が大きな問題になるわけでございまして、特に御承知のように石切場における作業は、夫婦共かせぎでようやくその日の生活をしのぐというような状態でございますので、その配置転換につきましては、地元の局長といたしましても十分注意を払いまして、現在やつております対策といたしましては、露天掘りの、すなわち坑外におきまする作業に配置転換をさせることを第一に考え、第二は地元の村で失業対策事業を興しまして、その事業にこれを吸収して行く。それから第三番目は、地元の公共職業安定所を通じまして、就職のあつせん——これは村外に出るわけで、特定の人に限られますが、そういうことをやつております。また組合みずから製粉会社を興しまして、そこにそういう女子の失業者と申しますか、坑内作業を禁止されました方々の就職の道を考えて行くというような、いろいろの対策を考えながら今進めておる次第でございまして、われわれもそういう方向にうまくこの問題が片づきますように、努力をいたしておる次第であります。
  195. 戸叶里子

    戸叶委員 今のお話の通りに行けばいいのですけれども、実際はこれが一つも実施されておらないのです。そして長いこと問題になつたまま放置して、こういう計画があるからというその名言でもつてこの条約に加盟するということは、私は条約違反になりはしないかと思うのですが、その点を伺います。
  196. 亀井光

    ○亀井政府委員 その問題は、条約とは直接関係はないとと私は考えるのでございます。また現実にすでに百二十名ほどの職場転換と申しますか、これは昨年以来実行されておる数字を私は聞いております。これも全体で四百五十人おるそうでございますが、全体がそういう方向に向きますように、努力をいたしたいと思います。
  197. 栗山長次郎

    栗山委員長 安東義良君。
  198. 安東義良

    ○安東委員 先ほど島上君の質問によつて政府の労働条約一般に対する大体の考え方はほぼ了解したのでありますが、一体戦後できた労働条約が三十六あるようです。このうちで、この三つの条約は別問題として、現在政府として批准をしようという意図のもとに研究しておられるものはどれとどれか、指摘していただきたい。
  199. 橘善四郎

    ○橘政府委員 政府といたしましては、脱退前並びに脱退後の分も含めまして、全面的に目下研究をしておるのでございまして、どの条約に限つて今後すみやかに批准手続をするというようなことは、いまだ具体化しておらないのであります。
  200. 安東義良

    ○安東委員 条約局長にお尋ねしたいのですが、戦前すなわち大東亜戦前の労働条約で、わが方が批准しておるのが十四あるようです。これは現在一般条約の法律解釈に従つて、やはり日本にとつて効力を存続しておるものというふうに解釈しておられますか。
  201. 下田武三

    ○下田政府委員 仰せの通り、日本にとつて依然効力を継続しておると解しております。
  202. 安東義良

    ○安東委員 戦時中は休止しておつたという解釈ですか。
  203. 下田武三

    ○下田政府委員 労働条約は脱退、廃棄の規定はございますが、廃棄の通告は十年ごとになし得ることになつておりまして、日本は労働機関からは脱退したことがございますが、批准した労働条約に対して廃棄の通告をいたしたことはございません。それからもう一つ理由は、平和条約の宣言におきまして、日本戦争勃発のときに入つておりました多数国間の国際条約の効力を、日本はそのまま承認するという宣言をいたしておりますので、その労働条約自体から来ます理由と、平和条約の宣言から参ります理由と、二つながらやはり効力がそのまま今日存続しておるという結論になる次第でございます。
  204. 安東義良

    ○安東委員 戦時中はどうなのですか。
  205. 下田武三

    ○下田政府委員 戦時中は、ものによつては効力を停止しておつたと見るべきものと、そうでないものとでございます。しかしながら戦時中は効力を停止しておつたと見る方が適当ではないかと存ずるのであります。と申しますのは、労働機関自体が実は日本脱退の翌年からずつと事業を中止しておりまして、七年間労働機関が眠つておつたわけです。それはやはり戦時中の特殊事情に基きました結果でありまして、戦時非常事態におきまして多少労働条約の規定を忠実に実行し得なかつたという事態が、日本のみならず、各国にもあつたのではないかと思います。従いまして戦時中日本が依然効力をもつて束縛されておつたのだという解釈をとりますときには、やはり支障を生ずるおそれがございますので、戦時中は効力を停止しておつたという解釈をとつた方が、日本の実情には適しておるのではないか、そう解釈しております。
  206. 安東義良

    ○安東委員 日本は一九五一年十一月二十六日からILOに加入したわけですが、一九五一年にできた九十九号から百三号に至る各種条約に対しては、署名しておるのですか、署名していないのですか。
  207. 下田武三

    ○下田政府委員 労働条約はまことに特殊な規定でございまして、会議で採択されまして、代表が署名しない慣習になつておりまして、事務総長が署名いたしまして、それぞれ加盟国及び国際連合に送付することにして、署名されないまことに変な条約なのでございます。
  208. 安東義良

    ○安東委員 その採択の際日本は賛成しておつたのですか、賛成しておらなかつたのですか。
  209. 下田武三

    ○下田政府委員 この条約全部に賛成しておりました。
  210. 安東義良

    ○安東委員 国際労働条約日本の国情とマツチしてこれを批准すべきであることは、私が申すまでもない。遅れてもいけないし、行き過ぎてもいけない、この点は今後の労働条約を処理する上において、きわめて肝要なことだと思います。日本の国内労働立法の状況を考えるならば、戦後各国に比較して著しく進歩したものであろうと私は思う。かえつて進歩し過ぎたがゆえに、日本の経済状況にマツチしないというような問題さえ生まれておる。ただ国際間のお義理だというような考え方だけで、またこれに批准さえすれば、それで国際的信用を増すものだというような、単純な観念論で考えないで、実質的に日本の経済を向上させ、労働者の立場を擁護するという行き方において、愼重に処理せられんことを希望いたします。
  211. 栗山長次郎

    栗山委員長 次は帆足福田御両氏からの関連質問でございますが、すでに島上さんが代表的な質問をなさいましたので、ひとつ簡単にお願いいたします。帆足計君。
  212. 帆足計

    帆足委員 簡単にと申されましたが、言うべきことはある程度申し上げなければなりません。今日議題になつておりますこの国際条約は、国連並びに国際労働機関として、人類進歩の成果であり、また社会進化の安全弁でもありますから、やはり先ほど戸叶委員が指摘されましたように、これを厳粛に守るという決意と意思と能力を持つて政府が今後の施策をお考えくださらなければならぬことは当然だと思いますが、そうすると、当然先ほど島上委員が指摘された進駐軍との労務協定と、ついては、再検討を要する問題が起つて来るのでございます。そこで先ほどのお答えでちよつと理解いたしがたい点をお尋ねいたします。軍隊並びに警察に適用する範囲は、国内の法令等においてきめるという除外例がございますが、進駐軍の労務雇用は、その中の軍隊の方にお考えでございましようか、それとは全然別個にお考えでございましようか。
  213. 下田武三

    ○下田政府委員 軍隊、警察等を除外しておりますのは、各国の国内法規でございまして、軍隊、警察等については、それぞれの所属国の国内法令で特別の定めがあるからこういう規定を設けたのであります。従いまして、外国の軍隊がおりましても、その外国の軍隊は国内法の適用を受けませんから、全然関係ない、そういう関係になると思います。
  214. 帆足計

    帆足委員 そこで進駐軍との労務契約につきましては、軍の利益に反する場合はということで、任免黜陟などについて相当の権限を持つておるようであります。これは政府としても最狭義に解釈すべきものと思いますが、先般同僚の福田委員から政府当局に御注意を促しました、立川軍事基地またはその他のところで行われております労務者の強制検診の問題につきましても、その後政府当局におきましては、たとえば婦人に対しての性病の検査のごときは、普通の画一的方法でやることは妥当を欠く、公序良俗に反するものである、厳重に戒心するという御答弁を得ましたにもかかわらず、この問題は依然として解決されておりません。私は人を介しまして実情を調べましたところ、たとえば立川におきまして、百名以上もメイドの人が従事いたしておりますが、最初は人目に比較的つきやすいところで強制検診がなされた。最近は密室の中に入りますけれども、男の山形某という外科のお医者様が一人で看護婦もつき添いせずに、ドアもかぎを締めてしまつて、娘たちの強制検診をいたしておるというような実情で、労働組合その他から反省を促しましても、一向受付けなさらぬという不幸な事態であるのであります。そこで、せめて私どもといたしましては、こういう問題につきましては、指定した町の婦人科医の方にこれをまかせるか、またはそれだけでは多少不十分であるならば、それと並行して、臨時に婦人科の婦人医を嘱託としてお雇いになつてそうして看護婦さんをちやんとつけて、または労働組合のないメイドさんたちであるならば、それと姉妹団体の進駐軍の労働組合の幹事の方もおられるのであるから、その方々意見も聞いて、納得ずくに、公正合理な方法を採用すべきだと思いますが、いかんせん基地内においては、不当なことでも処罰できず、また労働組合法もそのままの形では適用されていないというような現状でありますために、非常に困つておりまして、訴えて参つておるような状況でございます。従いまして、先般外務省当局のお答えもありましたが、東京都の外事課からこの問題について折衝いたしたのでありますが、なお公正合理な解決がいまだにできない状況であります。進駐軍といたしましては、身体検査をするという規則はありますが、局部検査につきましては強制しないというふうな内規もあるのでございまして、千名からの娘たち、しかも進駐軍に誘惑されまして性的の問題も多少ありますが、幸いにして、そのパーセンテージは少いということであります。そこで外務当局においてはそれをどうお考えになるか。そうして東京都の外事課の折衝だけで不十分であるならば、外務省から誠実に、敏速にこの問題の解決のためにひとつお骨折りを願いたい、こういうことであります。御答弁を願います。
  215. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 立川の問題につきまして私の耳に入りましたのは約十日ばかり前であります。その前に国会の議員の方のお耳に入つておつたようでありますが、私のところに労働組合が参りましたのは約十日前で、なぜもつと早く持つて来なかつたかと申しますと、ほかの大きな問題があるので遅れた、こう申しておりました。そこですぐ実情を調査いたしまして、二、三日あとの先週の合同委員会でこの問題を取上げまして、ともかく男の医者の検査はやめて、女医にかえるということについては米軍の方も同意しております。ただ全員について検査をする必要があるかどうか、どれくらい性病患者の数があるのかという点につきましては、至急米軍の方が調査いたしまして、明日の合同委員会でこの問題を取上げて解決したいと考えております。
  216. 帆足計

    帆足委員 ただいまの御答弁でやや満足をいたすものでありますが、いずれにいたしましても、進駐軍に勤めている娘たちは、三業組合に勤めているのでございませんから、その点はしかと御認識を持たれまして御解決にお骨折りを願いたいと思います。つきましては、昨日人を介しまして向うのボーク少佐並びに山形医師の見解も伺いましたが、ただいまのところは反省の色が見えないという実情でありますので、至急適切なる御措置をお願いいたします。
  217. 栗山長次郎

    栗山委員長 福田昌子君。
  218. 福田昌子

    福田(昌)委員 もう各委員からいろいろな質問をなさいましたから簡単にいたしたいと思います。今婦人労務者の検診の問題が出ておりましたが、大体こういつたメイドの検診をするということそれ自身が、私どもは駐留軍のお考え違いであろうと考えるのでございます。御承知のように、メイドさんであれ、PXに勤める女の人であれ、特に駐留軍の独身寮に勤めておられる女の人であれ、これは一つの明朗な勤務の形で勤めているのでありまして、何も肉体を売ることの副業を含んだ勤めの契約じやないと思うのです。よくアメリカの人たちで、日本の国は売春国であり、日本の女を見たら売春婦と思えというようなことを吐かれることも聞き及んでおりますし、新聞にもそういうことの記事が出ておりますが、これははなはだ日本の国を軽蔑した、また日本の女性を軽蔑した人権蹂躙的な言葉だろうと思います。そして駐留軍に勤めている売春行為を目的としておりません女子の労務者に対して、こういうような検診をするということは日本の女性に対する人権侵害だと思います。そういう意味におきまして、外務当局また労働省当局もこちらの強い態度をもつてお臨み願いたいと思います。今性病予防の方からある程度の検診が必要であるというようなお話でありましたが、性病予防の意味から、性病診断のために必要であれば、何も局部検診をする必要はないのであります。日米合同委員会におきましても、医者の一人でも入つておれば、そういうばかげた検診の方法を妥当とは認められないと思います。どうかそういう医療関係の面においては、現代医学というものを尊重した形において主張していただきたいと思います。私は日本女性の名において、こういう日本女性を侮辱するような検診方法は、断固として了承できないところであります。  これにつけ加えましてお願いしたいことは、今労働省の御答弁によりますと、十日前にお聞きになつているということでありまして、遅ればせながらお聞き及びになつたということに対して、私どもはありがたく感謝するのでございますが、私どもが外務当局にこのことを申し入れましたのは、すでに十日前になると思うのです。外務大臣自身が、このことは早急に駐留軍の方に申入れをして、即刻これをとりやめさせるというお話があつたにもかかわらず、今日現地の駐留軍労務者に対する今の山形医師その他の態度を見ましても、何ら駐留軍からのそういう伝達もないし、政府当局からの交渉があつたという空気がうかがえないのでございます。この点きわめて遺憾でございます。日本の労働省及び外務省というのは、日本人を守るためにあるということを強くお考え願いたいと思うのでございます。  長くなつて恐縮ですが、ついでに一言お尋ねいたしたいのは、駐留軍の労務者に関します日米労務基本契約でございます。この契約をお結びになられた当時は、占領治下でございましたから、日本の国内労働法に準拠した希望というものを徹底できなつかたのは当然でございますが、しかしそれにいたしましても、多くの国内労働法というものがあるにもかかわらず、こういつたばかげた契約を結ばれたということにおいて、私どもきわめて遺憾なのでございます。政府当局において、この基本契約をお結びになるときにどの程度の主張をなさつたか、これは昔の話ですが、一応お伺いしたいと思います。
  219. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 検診の件につきましては、国会で質問が出、同時に労務者の方からも申出がありまして、すぐ取上げたわけであります。そして必要があれば、婦人の医者にかえる、しかしそう急に婦人の医者が見つかるかということもありましようし、それから今後どういう方針でやるかということも検討しなければならぬし、何人婦人の医者がいるかという点もありますので、まだ現場には徹底して詰りませんが、政府として取上げております。  次に、この基本契約を締結いたしましたのは、私の方でございませんで……。
  220. 栗山長次郎

    栗山委員長 福田さん、この問題は行政協定の実施のところでまた取上げましよう。
  221. 福田昌子

    福田(昌)委員 それではそのときにお預けいたします。  いま一つ質問いたします。今の御答弁によりますと、いずれにしましても、日本のそういつた売春を目的としていない日本の婦人労務者に対して、方法さえ改めればそういう局部検診をすることを、政府は認めておるというように聞えるのですが、そうであるとすれば、まことに情ない日本政府だと思うのです。お考えを承りたいと思います。
  222. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 この検査は、メイドが売春をするからという検査ではございません。これは子供を扱う、それから食事をつくる、それでメイドが病気にかかつているために子供に害が及んだ実例がありましたために、ある主婦からの要請でもつて、こういう検査が始まつたというふうに聞いております。ですから問題は売春ではないわけでありまして、そういう観点から、どの程度の検査をするのが必要かどうかという点を今検討をしておるわけであります。ですから今後続けてやるかやらぬか、これは今後の検討の結果によるわけです。
  223. 福田昌子

    福田(昌)委員 ではこれからの検討でございますから、よろしくお願いしたいのですが、私として希望いたします。そういう性病予防の検診であれば、局却検診は絶対いりません。こういう点を医学的にお考えいただきまして人権蹂躙にならない検査方法を、私は日本政府として、日本政府の名において、威厳をもつて交渉していただきたい。このことを申し入れます。
  224. 栗山長次郎

  225. 松田竹千代

    ○松田(竹)委員 私はこの労働条約批准にあたつて政府にだめを押しておきたいと思いますことは、戸叶委員、安東委員その他から指摘せられ、またこの条約批准のスピードアツプを主張されたことがありますので、私はこれを一言申しておきたいと思います。  それは、日本は国際条約批准するにあたつての態度が、列国に比して愼重を欠くうらみがあると私は思う。批准をするということは、これは非常に重大なことである。かつて日本は九箇国条約や不戦条約などにも加盟しておつたために、不必要に侵略国の汚名を着なければならなくなつたと私は思う。日本は戦前に長い間、国際労働条約などについては、日本の特殊事情を訴えて保留を申し出たことがしばしばあつたのです。これは賢明な態度であつたと思う。戦後日本の産業界は、まだ平常に復したとは言えない。しかも各種の労働立法は、その態勢だけは割合に進んで参つた。しかるに日本の産業は依然としてその原料を特に外国に仰がなければならないという、この特殊事情はかわつておらない。しかのみならず、今日の段階においては、産業全般において高度の計画に基いて高度の合理化を実現するのでなければ、労働者の労働条件の改善ということはおぼつかない感じがするのであります。こういうときにあたつてわれわれは、いやしくも効力を発効せしめてこれを守つて行かなければならぬというときには、われわれはこれに対して非常な注意を払つて、国際労働条約はこれを批准して行かなければならぬと思う。ただ国際労働機関に参加したという、その面子の上からいたずらにそれを急ぎたくないと私は考える。実情に即して、一旦これを批准した以上は、これを厳に守つて行けるという確信がなければ、やるべきものでないと私は考える。いかなる労働法令でも、ほんとうに守り得ない原因が現実にたくさんあるではないか。かようなことを考えるために、日本のこれからの国政というものは、いやしくも国際条約については、愼重にこれを考えて行かなければならぬと考えるのであります。この点について私は、この条約批准することに異論はないのであるが、政府ははたして厳にこれを遵守して行けるという確信ありやいなや、この点だけ一点確かめておきたいと思います。
  226. 亀井光

    ○亀井政府委員 この三条約につきましては、先ほど来政府委員から御説明申し上げましたように、現在の国内法と比べてみまして、何ら矛盾、抵触するところはございません。そのまま踏襲いたしましてもさしつかえないとわれわれは考えております。
  227. 栗山長次郎

    栗山委員長 これにて三条約批准を求める件についての質問は終了いたします。  これより討論に入ります。討論は通告順によつてこれを許します。島上善五郎君。
  228. 島上善五郎

    ○島上委員 先ほど質問の際に申し上げておきましたので、そう多くは言う必要はございませんが、私どもこの三条約批准に対しては賛成するものであります。同時にただいま松田委員から御質問もありましたが、愼重であることはもとよりけつこうですけれども、これを批准いたしました以上は、的確に実行するという措置が、十分にとられなければならぬものだと考えます。労働監督にいたしましても、今日労働基準法という法律があつても、その実施が必ずしも的確に行われていない、あるいははなはだしく法を無視した状態が随所に見られるというようなことでございますから、この労働監督条約批准したからには、現在日本の国内法である日本の労働基準法の実施を、十分監督するという措置をもとられなければならぬと思います。  また団結権団体交渉権に関してでございますが、この条約批准はもとより非常にけつこうなことでありますが、こういうような条約批准しておきながら、この条約の条文に面接抵触しないという理由でもつて、片方では労働者の基本的な権利をはなはだしく制限する法律を出しておる。私どもは労働者が団結権を認められ、あるいは団体交渉権を認められるということは、その背後に団体行動権の自由が十分に保障されていなければ、その団体交渉権なり団結権なりは十分とは言えないと思います。そういう点において私どもは、今政府が出しておる電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律などは、条文に直接抵触しないかもしれませんけれども、この条約の精神には明らかに抵触するものがあると思う。そういうような点に対しても十分に政府の反省を促したい。この条文を見ますと、使用者団体もしくは使用者が労働組合をその支配下に置こうとしたり、労働組合団体の運営に関して干渉してはならぬ、つまり最近御用組合を大いに使用者が奨励して、使用者もしくは使用者団体の支配下に置こうという傾向が非常にありますが、そういうことも根絶されなければ、この条約批准しても意味がないと思う。そういうことを私ども十分にこの条約実施とともに厳重に監視して、使用者及び使用者団体がこの労働者団体をその支配下に置こう、あるいはその干渉のもとに置こうというような傾向を、根絶していただかなければならぬと思います。  また先ほど申し上げましたように、他にも重要な条約がたくさんあります。特に結社の自由及び団結権の擁護に関する条約は、私どもは今度出された条約の前提となるべき基本的なものだと思う。まだ条文の解釈について検討を加えているということでございますが、その作業をすみやかに進めて、そういう基本的な条約をすみやかに批准する手続をとつてほしいということ、さらに愼重を期するとともに、ILOの総会においてすでに条約あるいは勧告として決定された多くのものがございますので、これに対しても先ほど全面的に検討を進めているということでございましたが、全面的検討もけつこうですが、私どもは重要なものから重点的になるべくすみやかに批准するように、作業を進めていただきたいということを、強く要望せざるを得ないのであります。  このことを要望いたしまして、三つの条約批准に対して賛成するものであります。
  229. 栗山長次郎

    栗山委員長 これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。職業安定組織の構成に関する条約批准について承認を求めるの件、工業及び商業における労働監督に関する条約批准について承認を求めるの件、団結権及び団体交渉権についての原側の適用に関する条約批准について承認を求めるの件、以上の三件をいずれも承認すべきものと議決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  230. 栗山長次郎

    栗山委員長 御異議なしと認めます。よつてただいまの三件は承認すべきものと決定いたしました。     —————————————
  231. 栗山長次郎

    栗山委員長 次に、在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。本件につきましては質疑を終了いたしておりますので、ただちに討論に入ります。討論の通告がありますので、これを許します。戸叶里子君。
  232. 戸叶里子

    戸叶委員 日本が国際的に外交が復帰したということから見ましても、この法律案には当然賛意を表するものでありますが、ただここで考えられますことは、現在設けられております在外公館を見ましたときに、特に東南アジアの地域において働いている人たちの住宅の問題などが、まだまだ解決されておりません。たとえば大使とか公使等の方々の住宅なり、自動車の設備はよくても、その下の外務公務員の人たちのそうした生活問題が考えられておりませんので、公館を新しく設けるにしても、また今までの公館の整備という意味からいたしましても、外務当局でその点をよく御調査の上、十分に末端の外務公務員の方が働けるようにしていただきたいと思います。  それを同時に申し上げたいことは、その在外公館に勤める方々の心構えだと思います。どうもその心構えを見ましたときに、今までの外務官僚的な外交を推し進めて行こうというような空気が、至るところに見られます。この点を十分注意していただきませんと、そういう人たち現地に与える影響というものは、非常に大きいものでございますから、そうした心構えの点について、十分に気をつけていただきまして、親善外交がかえつて逆効果とならないように、御留意をいただくことをお願いいたしまして、賛成をしたいと思います。
  233. 栗山長次郎

    栗山委員長 福田昌子君。
  234. 福田昌子

    福田(昌)委員 私どもの党もこの法案には大賛成でございます。しかしながら、私どもが野放図にこれに賛成できない一つ理由は、私どもも、この在外公館の職員の方々に対しまして、できるだけの予算をさいて、働ける態勢にしてあげるということにおきましては、決してやぶさかでないのでございますが、ただ、働いておられる人たちのものの考え方、また日本外交の出先機関としての行動というようなことを考えまするときに、手放しで見ておるわけには行かないのでございます。外務当局のお方の考え方というものは、俗に、燈台もと暗し、医者の不養生というような言葉がありますが、まつたくその通りの感じがいたすのでございます。日本の重大な外交の客観的な見通しということが、きわめて不足しておるような感じがいたします。いたずらに友性的なエチケツトのみにこだわりまして、ダンスとか宴会等が多く、従来の日本の軟弱外交、また一面官僚外交そのままの線でありまして、この敗戦後の日本の再建、国際的な場裡において信用を博する、そういう意味においての外交政策というものに、きわめて欠けているということを感ずるのでございます。  またもう一つには、何と申しますか、人間的な、人道的なものの考え方という点においても、在外公館の方においては欠けている点があるのではないか。ヨーロツパに参りましても、日本人自身におきまして、日本在外公館は非常に不愉快だというようなことを言われているのであります。こういうようなことが伝わらないように御注意願いたい、こういうことをお願いいたしまして、この法案に賛成いたします。
  235. 栗山長次郎

    栗山委員長 これにて討論は終局いたしました。  在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案を採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  236. 栗山長次郎

    栗山委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。  なお本日採決いたしました各件についての報告書の作成は、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  237. 栗山長次郎

    栗山委員長 御異議なければさように決定いたします。     —————————————
  238. 栗山長次郎

    栗山委員長 次に旅券法の一部を改正する法律案、及び国際航空運送についてのある規則統一に関する条約批准について承認を求めるの件を日程に追加して一括議題といたします。政府側から逐次提案理由の説明を求めます。中村外務政務次官
  239. 中村幸八

    ○中村(幸)政府委員 旅券法の一部を改正する法律案の提案理由をまず御説明いたします。  すでに御承知の通り、旅券法昭和二十六年十一月二十八日公布され、同年十二月一日より施行し今日に至つたものであります、しかるに、旅券法実施後一箇年の経験にかんがみ、渡航先の追加等に関する手続上の規定が、義務規定であるかいなかにつき疑義を生ずるきらいがあり、かつこれに違反した者に対し適用すべき処罰規定がないので、違反行為を防止することが不可能であることが明らかとなりました。よつて当該条文が義務規定であることを明確にするとともに、この規定に違反した場合、その者に対する処罰規定を設ける必要が生じた次第であります。  また従来生命、身体及び財産の保護が得られないと認められる国に渡航しようとする者に対しては、第十九条の返納規定の趣旨にかんがみ、当然の措置として旅券の発給等の制限を行い得る性質のものでありますが、この解釈を妥当でない解釈であると誤解する向きもありますので、新たに第十三条に右趣旨の制限規定を設けることにいたした次第であります。  以上がこの法律案を提案いたします理由であります。何とぞ愼重御審議の上、御可決あらんことをお願いいたします。  次に国際航空運送についてのある規則統一に関する条約批准について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  国際航空運送についてのある規則統一に関する条約は、一九二九年十月十二日にワルソーで作成され、一九三三年二月十三日に効力を生じました。この条約は、国際航空運送の条件を、その運送のために使用する証券及び運送人の責任に関し、統一的に規制することにより、国際航空運送の円滑な発展を促進しようとするものであります。  わが国は、日本国との平和条約の署名に際し、サンフランシスコで行つた宣言において、同条約の最初の効力発生後一年以内にこの条約批准する意思を明らかにいたしました。戦後のわが国がいよいよ近く国際航空運送を開始しようとするときにあたり、この宣言において明らかにした意思を実行に移すことは、わが国自身の利益と合致するゆえんでもあります。よつて、この条約批准につき御承認を求める次第であります。  右の事情を了承せられ、御審議の上本件につき、すみやかに御承認あらんことを希望いたす次第であります。
  240. 栗山長次郎

    栗山委員長 この二件に関しましては質問を次会に行うことといたします。     —————————————
  241. 栗山長次郎

    栗山委員長 次に、国際情勢等に関する件について質疑を行うことといたしますが、外務大臣の出席まで、数分間休憩をいたします。     午後三時五十分休憩      ————◇—————     午後三時五十六分開議
  242. 栗山長次郎

    栗山委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  国際情勢等に関する質問を許します。植原悦二郎君。
  243. 植原悦二郎

    ○植原委員 これは外務省プロパーの質問であるかないか、はつきりいたしませんけれども、予算委員会等において、大蔵大臣や政府当局の答弁が、衆議院においても参議院においても、どうもはつきりいたさないのでありまして、外務大臣のはつきりとした所見をただしておくことがいいと思うのでお尋ねするのですが、ガリオア資金とイロア資金の問題です。片方は国家再建のための金ですから、これは返さなければならぬ。だけれども、ガリオアの方は、ガヴアメントのリリーフ、救済のものだから、私はアメリカ自身としては、アメリカの予算案も、返すとかとるとかいう形式に成り立つれおらぬと思う。それを日本では、これも借金だから返さなければならないというような答弁を予算委員などにされておりますが、いくら困つたつて、くれるといつたつて、やるといつたつて、もらうことはいやだから、いずれ返すといえば、それはそれでりくつは成り立つけれども、アメリカの方の出資の本旨からいえば、これは当然返さないと言つて行つた方が、将来のためによくはないか。また返さなくていいのじやないかと思いますが、アメリカの出資の種類、またアメリカの予算の立て方から言えば、これは日本がしいて返すと言わないでもいいことだと思いますが、外務大臣はこれをどうお考えになつておるか。
  244. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 アメリカ側のシステムは、そのときは予算の中から出して、それで一応収支が済んでしまうわけでありますが、同時に過去の例を見ますと、新しく予算といいますか、法律案といいますか、法案をつくりまして受入れることができ得ると了解しておりますし、またドイツ、イタリア等に関する例を見ますと、いろいろやり方があつて、予算で出し切りにして、別にそれの返還ということがなくても、返還を受ける道はあるように思われます。但し返還しなければならぬとか、返還はもういらぬものだとか、はつきりどちらかにきまつておらない部分はあるだろうと思います。
  245. 植原悦二郎

    ○植原委員 この問題は、私あまり議論したりいろいろしたくない。どうもそれを時の日本政府の都合によつて答弁しておるような情じがするので、アメリカの建前と日本の建前とそこに相当の食い違いがあると思うから、これはしいて私外務大臣と議論したり、かれこれ言うつもりはないのです。ただアメリカはたといガリオアでも、援助した金だから、将来それを政治的に幾らか使い得るものなら使おうという考えはありましよう、予算の建前から、返すといえば、とらないとは言わないでしようけれども、返さるべきものであるとの期待を持つて出しておる金でないことは、ここではつきり申し上げてさしつかえないと思います。ここであえて議論はいたしません。  それからもう一つ、これはお尋ねしておきたいと思つて、私が胸に浮んだことで、はつきりしておきたい非常に重大なことがあります。八日の晩かと思いますが、十時か十一時のラジオ、九日の朝のラジオだかと思いますそれによりますと、こういう放送がされたのであります。日本と通商航海条約の交渉、外資導入、その地のことは、日本の現在の政情においては進行できない、こういうことを公にされたということを、はつきりとラジオで放送いたしましたが、こういうことを外務当局として御承知か。もしそういうことが出たとするならば、その出たソースがどこか、お確かめになつたかどうか、これをお答えを願いたい。
  246. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私はうかつにしてそのラジオを聞きませんでしたし、またそういうことがあつたということも今初めて伺つたのすでが、もし事実とすればこれは外務省としても調べなければならないと思います。事実官辺筋の話にそんなことは一つもありません。全然そういうことはないと私ははつきり申し上げることができます。従いましてそのラジオはNHKであるか、あるいは東京であるか、調べなければなりませんが、調べました上で訂正を申し込みたいと思います。
  247. 植原悦二郎

    ○植原委員 私もすこぶる重大な放送だと思いました。それだからして外務省でお聞きになつたか。お聞きになつたのならば、一体それがどこから出てどういう筋で放送されたか。これはいずれにしても日本の現在の政局の状態からすれば、きわめて重大なることだと思います。  それとあわせてもう一つ放送されたことがあります。それは、日本政府は吉田総理の特使というので白洲君を通じてアメリカの政府へ、日本に対して現状において再軍備の問題あるいは憲法改正のことについては、何事も言うてもらいたくないということを申し込んだ。これもそのラジオと一緒のものでありますが、これはけさかきのうのニツポンタイムスにはつきり出ております。これは白洲君でなくて、多分白洲君が新木大使に言うたことでしよう。新木大使を通じて、日本は、再軍備と憲法改正の問題に対しては、アメリカ政府からは日本政府に対して何事をも言うてもらいたくない、こういう申込みをした。その申込みに対してアメリカは、それは日本政府として独自の立場においておやりになることで、こちらからかれこれ言うことではない、こういうことであるが、それとともにもう一つあわせて聞きましたことは、日本ではダレス氏が四月か五月日本を訪問するなどということを言うておるが、日本政府の再軍備、憲法改正の問題に対する態度がはつきりするまでは日本を訪問せぬ、従つて十月ごろになるだろうというようなことも、これは新聞に伝えられております。こういうことについて外務省はどうお考えになるか、これもひとつあわせて伺つておきたいと思います。
  248. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 白洲氏に対しては、行きますときに日本政府考え方は十分知らしてあります。新木大使にも常にこちらの国会の意向あるいはこれに対する政府の見解とかいうことは十分知らしております。しかしアメリカ政府に対して、どういうことをしてもらいたいとか、どういうことをしては困るとかいうことを申し入れてありません。但しわれわれが始終言いますことは国会においてとかくの議論がある、その一つは、アメリカの新聞等にしきりに一時日本の軍備というような問題が出て来た。いかにも何かアメリカ側が日本に対して干渉するとか、あるいは圧迫がましい態度に出るような印象を国民に与えるのはおもしろくない。国民が自分で判断して、政府自分で判断して、適当な措置を講ずるのが当然であるから、あまり新聞等に大きくいろいろなことが出ることは、決して好ましいことでないという意見をわれわれは述べておるのであります。しかしそれ以上のことは新木大使にも白洲特使にも別に申しておらないはずでありまして、また報告等にそういうことはありません。結局話はそれだけだろうと思いますが、それが何かあるいは間違つて伝えられたかもしれないと思います。  それからダレス国務長官は、私の了解するところでは非常に多忙であるよう思います。新聞等にもしばしば伝えられておりますが、前からわれわれも、そんな早くアメリカを出発してまた東洋に来るなんという、時間的余裕ができないであろうということを聞いております。その理由は、今おつしやつた理由でなくて、時間的余裕がない。従つてまだ、実際秋になつても来られるかどうか、そのときになつてみないとわからないのじやないかと考えております。
  249. 植原悦二郎

    ○植原委員 ダレスの問題は日本でよく宣伝されますが、日本に来ようとも来まいとも、これは向うのことで、ちつとも私は問題とすることではないと思う。ただ日本のどこから宣伝するかしれないけれども、あたかも四月ごろ来て、よほどこの政府に力になるとかこういうような印象でも与えるような、日本の新聞にときどき記事が出ますけれども、私はこれは問題にしない。これは向うのことでよろしいが、今の外務大臣の言葉じりはとらえません。きわめて重要なことだから議論はいたしませんが、白洲君を通じてアメリカから出るか、どこから出るか知らぬけれども、どうも再軍備の問題や、憲法の問題について新聞記事が出る、そういうことを言葉の言いようですけれども、なるたけしてもらつては困るということを申し込んだということも私はいいことだとは思いません。まあ新聞の始まりは、白洲君か吉田首相の個人的な特派大使というようなことも日本の新聞に出ましたけれども、それは向うはさように取扱つておらないでしようから、そういう資格で行かれたのでもないでしよう。これも一つの新聞の方便の宣伝だ、とその当時も解釈し、きようも私はそうであろうと思つております。それだからこのことはあまり問題にしたことはないのですけれども、白洲君が行つて新木大使に、再軍備や憲法の問題をアメリカの政府方面からいろいろ言われたり、放送されたりして困るというような、幾分暗示を与えたとしても、これは外交上うまい政策とは私思いません。なぜかなら、再軍備の問題や憲法改正の問題は、日本独自で決定すべきことで、何もアメリカの顔色を見たり、アメリカの意向を推察して、いたすべきことではないと思いますがゆえに、さようなことをかりに座談の間でも、白洲君が日本政府あるいは総理大臣の意向を伝えるために行つて、話をしたとすれば、これはあまりお上手ないい外交であるとも思わないし、日本に与える影響も決してよろしくないと思うさようなことが吉田内閣が一辺倒とか、日本外交がアメリカにのみ偏しているというような国民の誤解を招くことで、日本とすれば、今日外交上米国との親善関係を中心として世界約に臨まなければならないときでありますがゆえに、この両国の関係について、いささかたりとも世間に思わざる印象を与えたり、あるいは心にもないことを推測させるような記事を、新聞に出るようなことをすることも、私はいい外交だと思いませんから、これは非難する意味はでないので、ただ念のためにここで伺つておきたい、こういうことだから、より以上の議論をするつもりはありません。  もう一つ、この間も保安隊か何かの問題のときに、ちよつと触れておいたことでありますが今日労働の問題に対する三つの条約批准に対しての質疑応答を聞いておりますと、やはりアメリカの駐留軍の所における婦女子の問題に対しても、かなり微妙に国民の神経をいらだたせる。それでなくてもアメリカの軍隊に対して、日本の国民が敬意を失うではなかろうかというような事実の現われていることを承知いたしました。また地方において漁業や農業等の問題について、駐留地において地方民との感情のもつれのあることもしばしば耳にするところであります。また個人的な軍人の犯すあやまちにつきましても、どのくらい日米両国の国民の感情を害するかしれない。私はだれが何と言つても、日本の国家の再建をはかつて、自由国家として日本が自由国家群に入つて、国際場裡に活躍しようとするならば、日米の親善関係を基本とし、基礎としなければならぬと思いますがゆえに、さような小さなことでありましても、そのことが日栄両国民の感情を傷つけるようなことに対しては、私自身あるいは神経過敏過ぎるかもしれませんけれども、そういうことを少からず憂慮をいたしているものであります。従つて安全保障条約に基く駐留軍の駐留は、短かきほどよろしいのだ、いくら上手な外交をもつて日栄両国の親善をはかろうとしても、いかに文化財の交換をして両国民の理解を一層深めようとしても、一方において駐留軍からいろいろ来るところの災いが、これを相殺して行くおそれがあることを痛感するのであります。それゆえに私はできるだけ——幸い期限もないことであり、アメリカの希望といたしても、駐留軍は期限が短かいほどよろしい。リツジウエイ大将が日本を立ちますときにも、駐留軍は長く日本におつてはいけないという言葉を残して立たれたほどでありますから、日本外交方針としては、米国軍によつて日本が安全保障を得ているという状態を、きわめて短かい期間において切上げる方針をとることほど、日米関係を良好ならしめ、日本の世界における地歩を強固ならしむるゆえんだと思いますが、そういうお考を外務大臣はお持ちになりますかどうか、ひとつ伺つておきたいと思います。
  250. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれも駐留軍と国民との間に、多少でも摩擦が起るようなことは、これはもう十分に考えなければならぬと思います。小さなことばかりも言つていられないことと考えているわけであります。そこで理論的に申せば、もちろん植原委員のおつしやつた通りでありますが、それをさらに考えてみますと、結局日本が軍備をして国を守れるようにする。それ以外にはたとえば国連の措置であるとか、あるいは集団安全保障の措置であるとか、またもつと抽象的になれば、世界的に無責任な軍国主義がなくなつて、何も軍備がいらないという事態が来ればこれは別でありますが、そういうことはなかなか考えられませんから軍備をして駐留軍がいなくなるという結論になろうと思いますが、これは単に外交の方針だけできまるものではないのであります。政府全体として各般の問題を考えてきめる問題であります。そうなりますと、ただいまのところ政府考え方は御承知の通りであります。われわれも早く安全保障条約というような暫定措置でなくて、国が守られることを希望することは同じでありますが、実際の問題になりますと、ただいまのところ政府考え方は、総理なりその他の閣僚の申しておるような通りでありまして、今すぐ方針をかえるというところまでは来ておらないのであります。
  251. 植原悦二郎

    ○植原委員 ただいまのお尋ねは、ただちに再軍備問題、憲法改正の問題と関連することですから、それに対して外務大臣のお答えを得ようとは思いません。しかし国際関係を御管理なさる外務大臣として、どうお考えになるかということであります。吉田総理はしばしばさようなことはやらぬと言つてつつぱつて、がんこに来ているのだから、そのもとにさようなことができるとは思いませんけれども、日米両国の関係をよくして行かなければいけない。両国民の間にいろいろのことがありましようけれども、今日日本国民をしてアメリカ人に対する感情を痛めさせるものは駐留軍である。またある一部の人がアメリカ一辺倒の外交といつて、攻撃する的になるものも駐留軍である。そこで最近私は、沢田廉三君を国際連合に大使としておやりになることは、この政府の人事として上出来だと思つて喜んでおりますが、まことに適任者を適当なところにおやりにさる。そうすると、まだオブザーヴアーの資格があるわけでもなし、国際連合の加盟国でもないのに、急いでそういう人をおやりになるということも、結局日本はできるだけ早く国際連合に加盟した方がよろしいということであろうと思いますが、そういう方針で日本外交方針を導いて行かなければならない。もちろんソ連がヴイトーを持つておる限り、いつ加盟できるかわからないけれども、日本のゼスチユアとしては機会があればできるだけ早く国際連合の一員として、しかもそこのうちにおける自由国家と手を握つて日本の世界における地歩を築かなければならないということになろうと思います。そうしてその場合における今の駐留軍や海陸の保安隊の費用をもつて日本の独立国家としての軍隊をつくり、防備の体制をつくつても、ちつともさしつかえないと私は思う。また国をあげてどんな力を入れたつて、侵略的な日本の陸海空軍が太平洋において偉容を整えて他を威圧する、そういうような軍備が五十年や百年でできこない。日本が軍備を持とうとすれば、財政経済の許す範囲においてしか持てないのだから、早くそういうことをきめて、日本自体でやつたらよかろうということのアメリカ政府の意向は、ラジオで放送されている。放送されないでも、私はそれはアメリカの真意であると解釈しております。そういう立場からいつて、これは外務大臣としては、吉田内閣のもとにおいてそういうことをお言いになるとも思われないし、またそうしようとしてもできないけれども、日本の国民を少くもその方向に持つて行くだけの用意と政治をやるべきようにいたさなければならないことだと思います。私はこれ以上議論いたしませんから、どうぞよろしく。
  252. 栗山長次郎

    栗山委員長 安東義良君。
  253. 安東義良

    ○安東委員 外務大臣にお尋ねしたいのですが、最近の日英通商協定の交渉の経過を御報告願いたいと思います。
  254. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 日英間の支払協定お話だと思いますが、これはまだ交渉中でありまして、具体的に御説明をすることはちよつとはばかられますが、方針としましては、できるだけポンドをよけい使つて、スターリング地域から買う物をふやしまして、その半面スターリング地域に売る物もふやす。従つて全体のポンドの使用が通商上ふえることと、もう一つは、今まではポンドがたまつて困るというので、ある一定限度まで来ますと、それ以上はドルで決済をするというような考え方を持つておりましたが、それについても、ポンドは相当たまつても、この際は支障もなかろうし、またそれくらいでなければ、貿易量の増大ということは考えられませんので、その点についても、日本側としては十分な考慮を払つて、要するにスターリング地域との通商の量を、できるだけ増大しようということで先方と話をしておりますが、まだ先方の的確な意思の表示が出て参りませんので、話合いは今続行中でございます。
  255. 安東義良

    ○安東委員 交渉の具体内容的について立入ることは避けるといたしましても、今まで多少新聞紙上に伝わつておる限りにおいては、楽観的な感じを持つておるのですが、やはりそういう方向に行つておりますか。
  256. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 原則的には、スターリング地域との貿易量の増大ということについては、私は楽観できると思います。ただスターリング地域といいましても、イギリスのコントロールを受ける地域と、そうでなくて、独立した国であるけれども、決済はスターリングによつているという国とがございまして、そういう国々的ついては、イギリス側で個々に相談しますが、その国国がおのおのポンドの収支、ドルの収支ということについて、みな違つた事情にありますので、従つて日本の品物をたくさん一方が受入れれば、日本もその国からよけい買わねばなりません。ところが大体ポンド地域全体としてのよけい買つてよけい売るということと、個々の国に対して、ある国からはよけい物を買えるけれども売る物は少いとか、他の国においては、売る物は多いけれども買う物は少いということもあるので、その国々の間の決済が完全な英帝国であつてもむずかしいのであります。いわんや独立国がたくさんありますので、話合いに時間がとれるということはありますが、大勢においてはそつちの方へ向くものと私は今のところ信じております。
  257. 安東義良

    ○安東委員 それでは大体の時期はいつごろになりますか。これはきわめてむずかしいことではあろうと思いますが、予測を承れれば幸いだと思います。
  258. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはお話のように、予測はなかなかむずかしいのでございますが、われわれ期待しておるところでは、本月中くらいには、こまかい細目は別といたしまして、少くとも大きな筋は話合いができるものと期待しております。
  259. 安東義良

    ○安東委員 三月中旬ごろにインドネシアの方から経済的なミツシヨンが来て、これとインドネシアとの貿易について、全面的に話合いをするというようなお話があつたのでありますが、これは実現しそうでありますか。
  260. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 何か向うの都合で延びたようで、私も正確なことは知りませんが、今うしろでは五月ごろになりはせぬかと言つておりますが、三月には無理ではないかと思います。
  261. 安東義良

    ○安東委員 インドネシアの問題につきまして、この委員会においても日本との関係においては、ポンド勘定をある程度まで許すようにという意味で私ども主張したのでありますが、外務当局並びに通産当局及び大蔵当局においても、その線に従つて交渉をするということに話がまとまつて、具体的交渉に入つたという報告を受けたのであります。その後のいきさつについて、ここでひとつ御鮮明になられるように希望いたします。
  262. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 インドネシアとの間は、御承知のように最終的な決済はドルでやることになつております。ところがドルが少いというために、前に交渉のときもポンド決済を希望しておつたのであります。そこで全体的なものはまだ交渉しなければなりませんが、先般とりあえず一千万ドルの範囲で綿糸布であるとか、スフ鉄鋼の一次製品等を除いた商品の輸出、その他のものの輸出については、今のオープン・アカウントのわく外でポンド貨による輸出の決済をする方針で先方に話をいたしました。ところが先方の主管である貿易局長が海外に出ておりまして、まだはつきりした先方の態度がわかりません。わかりませんが、インドネシア側では、これは要するに日本の輸出だけに役立つのであるという意味から、あまりそれだけでは賛成しかねるというふうにも仄聞しておるのでありまするが、はつきりしたことはまだないのであります。要するにそんな空気も多少あるようだという状況であります。そこで貿易局長が不日帰つて来られるはずでありますので、その一千万ドルに相当する部分の輸出の問題も当然でありますが、その他についてもポンドをどの程度使用するかということについての話合いをするつもりでおります。今その帰国を待つておるような状況であります。
  263. 安東義良

    ○安東委員 ただいまのお話を伺いますと、オープン・アカウント以外において一千万ドルに相当するポンド勘定を認めさせようとする御交渉のようである。私はインドネシアの立場になつて考えてみれば、これは相当困難なことだろうと思う。日本が去年の八月の協定において、インドネシアに対して年間五千五百万ドルの輸出額を承認させておる。そのわく内の考慮だということになれば、話の持つて行きようもあると思うけれども、その額の外に立つてさらに千万ドル要求するということは、これは事実困難じやなかろうか、もし日本向うから輸入することができるならけつこうです。しかし日本の輸入額として想定せられておつたのは四千万ドルと聞いておりますが、それも半ばくらいしか輸入してないような状況だということも聞いておる。してみれば、さらにそれに附加して一千万ドルを認めさせようということはいささか無理のように私は思うのですが、この点について外務大臣の御見解を伺いたい。
  264. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 多少無理なところもあると思いますが、われわれの方としてはとりあえずの措置としてこれをやりまして、向う承知すればの話ですが、さらにもつと全面的に輸出輸入の増大をはかるようにいたしたいと考えておる次第であります。なおただいまの輸出入の状況等については、必ずしもおつしやつたようなものでなく、相当に運んでおるところもありますので、もしよろしければ経済局の方から御説明をいたさせます。
  265. 安東義良

    ○安東委員 もし昨年の協定が順調に運んでおるというならけつこうであります。この問題に関連して、インドネシアはわれわれの織物輸出地としてはもちろん大切なところであり、鉄鋼品の輸出地としてももちろん大切なところでありますが、同時に中小企業者の生産する雑貨あるいは陶磁器のごときものの今後の輸出に対する地位というものは、私は相当重要視しなければならぬと思うのです。と申しますことは御承知の通り、現在の中小企業者の輸出面における立場というものが、非常に困難になつております。大企業者の直面しておる困難とは、性質の異なつた形において非常に困つておる。ことにインドネシア方面に対する期待を持つていろいろな生産をやつて来た連中は、現在この問題が解決しないために非常に困つておるという陳情をわれわれはよく受けるのであります。こういう状態においては、外務省としても積極的にこの面に対する打開策を講ぜられることが、私は当然なことだと思う。その点について通商局の市場課長がおいでになつておりますからお伺いしたいのですが、インドネシアの市場の問題についてあなたの御見解を承りたい。
  266. 市橋和雄

    ○市橋説明員 インドネシア貿易、特に中小企業の貿易につきましては、通産省としても常に努力をしておりますし、御承知の通り、通商協定が昨年の八月できまして、日本へのインドネシア物品の輸入の促進という点において、日本側が大いに努力しなければ、日本側の輸出が進出しないという事実がございます。ただいま申し上げましたように、貿易協定上は輸出が五千五百万ドル、輸入が四千万ドルとなつておりまして、その差額がいわゆるスイツチ・トレード、三角貿易ということによつて相殺されるということになつたのでございます。それに輸入を増進することがすなわち輸出の増進になるという至上命令を与えられております関係上、インドネシアからの日本への輸出品、なかんずくゴム、ボーキサイト及びコプラ等につきましては、非常な努力を払つているのでございます。その輸入促進につきまして、日本側として手を打つている点をごく簡単に御説明申し上げますと、貿易促進ということがすなわちインドネシアからの輸入促進ということにかかつておりますから、そのために非常な努力を払いましてその具体的な方法としてまず第一番に、昨年通商協定ができますと同時に、この問題を取上げるために、関係各省の連絡会——別に官制上つくつたわけではございませんけれども、特に関係各省の間に密接な連絡をはかつて、インドネシアとの貿易を促進する、なかんずく輸入を増進するという方策をとるために、どういう具体的な処置をとるかということについて、連絡会をつくりました。そして特に外務省の方に音頭をとつていただきまして、関係各省の連絡会がほとんど毎週行われております。それから特に輸入促進につきましては日銀、大蔵省、その他の方面ともインドネシア通商協定運営委員会と称します連絡会を通じまして働きかけ、いわゆる別口外貨制度というものを採用いたしました。御承知の通りにインドネシアの主要製品、すなわち生ゴム、ラテツクス、すずというものはマレーの製品と競合いたしております。それで当時まで価格、品質その他においてマレーの製品と非常に競合して、インドネシアからのそれらの輸入は非常に劣つていたのでございます。それについて具体的に申し上げますと、取引の関係上シンガポール経由取引の方が非常に迅速に行われておりまして、インドネシアからの輸入についてはなかなか時間がかかる。その時間の関係上、貿易業者として金利その他の負担がよけいにかかるというようなことが欠点になつておりまして、その高い価格のものを特に買えということは非常に困難でございますが、インドネシアからのゴム、ラテツクス、すず等のマレーと競合する品目につきましては、特に安い金利をやつて便宜をはかるという方法をとりました。それからこの品目は大体コプラ、木材、ラワン材と申しますか、そういうものについても行われる。特にコプラにつきましては競争相手国としましてフイリツピンがございます。フイリピンは現在日本の入超国になつております関係上、このフイリピンのコプラ輸入を相当量インドネシアからの輸入に振りかえるという方法をとりまして、フイリピンのコプラに関するAA制度すなわち自動承認式の制度を停止しておりまして、インドネシアの方に集中的にコプラの買付をまわすという方法をとつております。それから昨年十一月、インドネシアの方に、日本からコプラの専門家からなるところのコプラ買付使節団と称するものを四名、特に通産省の嘱託という名義をとりまして派遣いたしました。その結果は、ただいままでのところ相当ヨーロツパ方面に向けられておりましたところのコプラが、ヨーロツパ方面に向けると同じ条件をもつて日本に来ることになつておりまして、現在のところ徐々にこのコプラ・ミツシヨンの視察及びインドネシア官民との協議の結果が現われていると思います。  それからさらに、これら外貨予算上の措置のほかに、スイツチ・トレードの実施等を着々進めております。先刻御説明申し上げましたように、千五百万ドルのわが方からの出超というものが協定上とられておりますが、この千五百万ドルをスイツチ・トレードというものを行いまして相殺するということになつておりまして、現在までのところキユーバからの粗糖五万トンにつきまして約六百四十万ドルのスイツチ・トレードが行われました。それからつさらにアメリカ産の主として牛皮につきまして約百十万ドルの輸出レートができまして、そのほか約十二万ドルのスイツチ・トレードが行われまして、現在までのところ約七百六十二万ドルのスイツチ・トレードが行われておるわけでございます。そうしてインドネシア側におきましても、日本への輸出を促進するため、いろいろなそちをとつてもらえないかということになりまして、先般コプラ買付使節団とほとんど同時に、わが方から民間の経済使節団が派遣されまして、通産省といたしましても、この民間使節団がもつぱらインドネシア側からの日本への輸入に対するいろいろな困難を除去するために、努力してくれるよう特に要請いたしまして、いろいろな便宜をおはかり申上げた次第でございます。そうして現在のところ、インドネシアの輸入促進という点におきまして、いろいろな施設が総合的に生れまして、よく行われておると私ども判断いたしております。実はこれはほんの試案でございますがインドネシアからの日本への輸入というものは、貿易協定は六月三十日に一応一年分を締め切ることとなつておりますが、それまで日本側の輸入促進政策によつて、どれくらい日本側の輸入が伸びているだろうかということを、一応六月ごろと仮定いたしまして想像した結果、大体日本側の輸入は協定の四千万ドルを上まわる——あまり上まわるということは申し上げられませんが、少くとも一千万ドル弱は上まわるのではないかという見通しがついております。従いまして日本からの輸出も、それに伴つて相当数上るのではないか、大体六千万ドル以上、六千五百万ドルくらい上るのではないかと予想されております。一方、私どもが、外務省を経由いたしましてインドネシアからとつております数字によりますと、インドネシア側としては、日本からの輸出を、月に五百万ドルにとどめているのではないかという情報もございますので、これへ六千万ドル以上輸出を促進するということは、今年度は困難ではないかと思われるわけでございます。
  267. 安東義良

    ○安東委員 そういう事情のもとにこの問題を考えてみますと、やはりオープン・アカウントの範囲内において、今の一千万ドルを買わせようということは、さしあたつてなかなかできない話だろうと私は思う。それならば、今の協定の五千五百万ドルのうちから、こちらの方にさくという考え方は起らぬものですか。経済局次長にお尋ねしたいのです。
  268. 小田部謙一

    ○小田部説明員 実は、五千五百万ドルと四千万ドルとの差の千五百万ドルに対しましては、協定締結の当時、これはスイツチ・トレードでやるということは、インドネシア側の希望もあつてつくつたわけであります。今大体その半額は現実においてスイツチ・トレードが行われておるわけです。その他の千五百万ドルの残りの八百万ドルに関してはスイツチ・トレードができる可能性があるわけです。今そのオファーがあるわけです。それをスターリングをとるとかとらぬとかいうより、むしろ現在の考え方は、昨年の考え方と違いまして、インドネシアにおいても、もちろんドルも不足しておるけれども、スターリングもあまりないのじやないか。これははつきり発表しておらぬからわかりませんが、日本でもドルとスターリングと両方とも稀少通貨となつておると同様に、インドネシアにおいても、スターリングはあまりないのではないか。要するに、これは物と物との交換をすることによつて拡大均衡をやつて行く、こういうアイデアじやないか、こう思われるのです。それですから、千五百万ドルの点に関しましては大体スイツチ・トレードで、しかもそれがインドネシア側の希望する形において行われる。今ただ、スイツチの手数料が幾らかということで問題がありますが、大体千五百万ドルに関しては、スターリングでとるというより、スイツチ・トレードでとる。物でもらう方がインドネシアの希望しておる形である。千五百万ドルについては、そう思つております。
  269. 安東義良

    ○安東委員 そうすると、結局、物と物との交換による拡大方式でやりたいということで、インドネシアは考えておるらしいということになるわけでありますが、それはそれでいい、一向さしつかえないと思う。要するに要点は、インドネシア方面に対して雑貨類あるいは陶磁器等の輸出をもつと振興することなのです。これが根本なのです。そこでこれについて業者の意見がうそであつたかどうか、そんなことは私はわかりませんが、過般市橋課長のところへ日本全国のある業者の代表が行つたところがインドネシアの貿易はだめだといわれたという印象を深めて帰つて来て、非常に失望落胆した。今までよくなるだろうという期待のもとに生産していたやつが、これによつてふいになつてしまつた、といつて顔を青くしておつた。そこで私は、この業者に対して、ひとつ外務省の方へ行つてよく聞いてみたらよかろうといつて、外務省の方へ差向けたのでありますが、業者それ自体は、われわれの官吏時代を思つても、官吏としてみれば一業者が倒れようが倒れまいが、そうピンと来ないけれども、やつておる当事者にとつては、一生懸命なのです。もがいておる。そこでほんとうにだめのものなら、だめと勇敢に言わなければならぬ。変な希望を与えちやいかぬ。これは政府当局の非常な責任であります。希望があるものならあるように、あらゆる努力をするという態度で行つてもらいたいと思うのです。もう官僚時代ではなくなつた。その点だけは、私は強くこの際申し上げておきたいと思う。これは私が外務省を愛するからであり、通産省を愛するからである。ほんとうにりつぱな官吏としてやつていただくために、たとい業者としてのその業務が、日本全体の貿易からいえばわずかなものであろうにしろ、やつておる当人や関係者は、数千人、数万人ある。そういう人の生命、繁栄にかかわることでありますから、その点については、ほんとうにあたたかい気持と同情心をもつて処理されるよう、くれそれもお願い申し上げておきます。
  270. 栗山長次郎

  271. 中山マサ

    中山(マ)委員 大阪の産業経済新聞は、外務省の伊関国際協力局長が、先月二十八日の一時から、大阪クラブで、日本は三十二万五千の保安隊の増員を米国に求められておる、ことしは四万だけ増員する相互援助条約や、地域防衛協定ができなければならぬと思う、それについては、米国が日本に、軍事物資に対しては経済援助をやるという趣旨の演説を、兵器工業のおもなる人人を集めて、二時間にわたつて、しておられるということが、大阪の新聞に出ておつたのでございますが、これはこの趣旨で御演説になつたのが事実でございましようか。もし事実であるといたしますならば、外務大臣の御了解のもとに、こういう趣旨の演説を、大阪の経済人、工業人になすつたのでございましようか。また外務大臣がこれを御了承になつた上でのお話であつたとするならば、こういうようなものが、目下外務省で、私どもが知らない間に用意されておるということになるのでございましようか。この点を外務大臣にお尋ねしたいと思います。
  272. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私も、その新聞記事については、本人の伊関局長に確かめましたが、実はさようなことはなかつたそうであります。ここに伊関局長がおりますから、本人から直接に……。
  273. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 私は大阪へ参りまして、約三十人くらいの特需関係の業者の代表と、三十分か一時間程度話をしました。新聞記者には全然会つておりません。そのときは、主として特需というものについて話したのでありますが、関連して再軍備について質問がございまして、いろいろと新聞には十八万とか、三十二万五千とかいうふうな数字が出ておるけれども、現在のところ、それは何ら根拠のない数字だ、何らそれを具体化する計画は、政府にはない、こういうことを申したのであります。次に四万と申しましたのは、これは質問がございまして、十八万という数字が出ておるので、もしこの次に日本政府が増員をきめたならば、それは七万の増員をして、十八万にしなければならぬのかということでありましたので、それは日本政府が自主的にきめるのであつて、三万であろうと、四万であろうと、五万であろうと、一向さしつかえない、こう申したのが、四万と言われたのであります。  それから協定と申しますのは、MSAの関係について説明いたしました。このMSAに基いて援助を受けるにはMAA、相互援助協定と申しますか、こういうものを結ばなければ援助を受けられない、こういう説明をしたのであります。すべて新聞等が数字だけをとりまして、そういう断片的なものを又聞きしまして、結論を書いたわけであります。
  274. 中山マサ

    中山(マ)委員 私も、その新聞を直接見たわけではございませんけれども、大阪の方から、こういうことを言うて参りまして、野党が攻撃しておる通りに、自由党は内々でこういうふうなものをつくつているのではないか、いわゆるヨーロツパにおける再軍備の準備と同じようなものを東洋の方でやるようにしているのではないか、事実ならば、憲法を改正するなり、はつきりと打出したらどうだというような攻撃の手紙を私の方によこすものがございますので、私はこの外務委員会において、あなた自身から正しいお話を聞いておきませんことには、そういうふうな手紙に答えるにいたしましても、私の憶測ではいけないと思いまして、私は直接あなたから承つておく必要があると感じましたので、この質問をさせていただいたわけであります。
  275. 栗山長次郎

  276. 帆足計

    帆足委員 政府がすでにお認めになつておる平和物資のわく内で、中国との貿易の隘路について四局長にお尋ねしたいと存じておりましたが、時間も移りましたので、それは土曜日のことにいたしまして、一、二点関連してお尋ねいたしたいと存じます。  第一は、先ほど植原委員からお尋ねになりました対日援助費のことでございますが、後ほどでもけつこうでございますから、対日援助費の、種類、内容、金額等の比較的正確な数字の一覧表をいただきたいと存じます。この考え方については、先ほど植原委員からも適切な御意見がありましたのを野党として拝聴いたしましたが、とにかくガリオアによる援助等に関しまする限りは、私どもの家庭におきましても、小さな子供に至るまで小さな手を合せて、アメリカのおじ様ありがとうと言つて、国民だれもこれはいただいたものと考えていたようなことでございます。従いまして今後の措置につきましては、日本国民の衷情も披瀝し、その通念に即して処理いたしていただかなければならぬと思うのでありますが、先般新聞で見ますと、その解決の一助として、再軍備関係の費用にそれを流用するならば、そういうことも認められようというような意味のことが、新聞に載つていたように思います。何かの誤伝と存じますが、そのようなことがありましたでしようか、外務大臣にお伺いいたしたいと思います。
  277. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そのようなことは全然ありません。またどの新聞でしたか、きようの新聞に、私がそういう種類の答弁をしたように書いてあるのもありますが、それは参議院の外務委員会だつたと思いますが、速記録に非常に明らかになつておると思います。そういうことはありません。
  278. 帆足計

    帆足委員 先ほどの数字は後ほど承ることといたしまして、第二に、一昨昨日の夕刊でございましたか、朝鮮戦争の終結の見通しにつきまして、総理が非常に懇切な御答弁をしておりました。私はそれを読みまして、非常な感銘を受けたのでありますが、この問題につきましては、むしろ外務委員会におきまして、直接総理から詳しく心境、また情報、御見解のほどを承らなければならぬほどの重要なニユースであると存じましたが、外務大臣におきましては、にご関連いたしまして、総理その他から情報なり御見解なり、さらにこれを敷衍されるという御意見をお持ちでございましようか。その点伺いたいと思います。
  279. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今おつしやるのは、総理が参議院の予算委員会で述べたことだろうと思いまするが、それは総理として、アメリカ政府も朝鮮事変についての解決促進は、非常に強く考えておるから、将来何らかそういう方向に向うのではないか、こういうことを言われたのであります。これは普通の考え方であり、われわれもそれは希望しておるところでありますが、いかなる方法により、いかなるときにそれができるかということについては、総理自身もわからない。しかし何らかそういうことが行われるように希望いたしておるのだという説明をされたのであります。政府なり外務省なりの考え方も、それ以上には出ておりません。
  280. 帆足計

    帆足委員 かかる重要問題につきましては、重ねて総理からも直接お伺いいたさなければなりませんので、参議院の予算委員会でも済みましたならば、そのような機会をつくつていただきたいと存じます。  さらにもう一つお尋ねいたしたいと存じますが、国民使節として引揚問題で仕事をいたして参りました三団体代表が昨夜無事に帰朝いたしましたが、私は羽田の空港に外務省から大臣か次官がお出迎えに出るのが、赤十字に対するエチケツトから申しましても至当だと思つておりましたが、一向お役所の方にお目にかかることができなかつたように思います。新聞によりますと、時日が切迫しておりますのに、乗船世話役のことでまだ意見の一致を見ていないということで、留守家族の方方は非常に心配いたしているのでございます。この問題につきまして公正合理な、だれが見ても、あの人ならばあつせん役として適当であろうというような人が人選されることを政府として希望し、また私ども市民もそれを希望しているということは当然のことでありますけれども、機械的にこの問題で行き詰まるというようなことは、まことに遺憾なことであると存じますが、先般引揚委員会におきましても、大部分の空気は、この問題に対して政府がスマートに善処していただきたい。ただ希望その他は率直に述べまして、また関係各方面からも同じような希望が出るでございましようから、そういうことで善処していただきたいという切なる希望の空気でございましたが、外務大臣はいかがお考えでございましようか。
  281. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 本件については、北京に行つた人たちの説明をよく聞く必要があるはずでございます。従つて外務省には、昨夜関係各省の者も、外務政務次官を筆頭として待機しており、外務省に一行がやつて来ますや、ただちにその点についていろいろ質問を行つて、どういう事情になつておるのか確かめたのでありますが、一行も非常に疲れていたし、夜おそくなつたために、全部の話はつかなかつた、つまり聞き取れなかつたようであります。本日引続きその話を十分に聞いて、その上で適当な方針をきめる、こういうことになつておるはずであります。
  282. 帆足計

    帆足委員 最後に、この問題につきましては、国民の輿論のほどもお取入れくださいまして、適切迅速に善処なさることを希望いたしますとともに、先般中国との貿易につきまして、外務大臣からるる御真意のほどをお話がありましたが、前半の御意見だけが新聞に出ましたために、各方面から誤解を受けまして、現内閣は平和物資、国連協力のわく内、ハリマン相互安全保障本部長官が論じている原則以上に、きびしく中国との貿易を全面的にとめようとする方向に、努力しているのではないかという誤解が重ねて生じて参りまして、各方面から抗議、問合せがあるような実情でありますので、重ねてお伺いいたしますが、国連協力のわく内における平和物資に関します限りは、逐次可能な範囲において拡大するように貿易振興の一環として御努力なさつているというふうに伺いましたが、今日依然として大体そのような御方針でございましようか、重ねて御答弁を承りたいと存じます。
  283. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはこの前の答弁が、私の言葉が足りないために、あるいは誤解があつたかもしれません。新聞等の記事も多少そういうふうに見えたので、あらためて訂正かたがた申しますが、私の申した趣旨は、各国の間で協定しておる範囲内の輸出についてはさしつかえないのである、ただその協定によらない密輸等が非常にあるので、そうするとせつかく日本が自制しており、あるいは他の国が自制しても、その効果が減殺されるから、そこでもつと強化して密輸等をしないようにする。そのかわり制限を解いた物資は、各国とも自由にする、こういう趣旨を言つたのでありますが、その強化するという方が、密輸ではなくして、一般に強化するというふうにとられたのではないかと思います。私の言葉が足らなかつたら、それは訂正いたしておきます。従いまして、ただいまのところ、普通の物資につきましては、政府としては何ら制限したり、あるいはじやまをしたりするようなことはないのみならず——これは銀行等の問題もありますけれども、なるべく普通の貿易と同じように、手伝えるところは手伝うつもりでおります。
  284. 帆足計

    帆足委員 ただいまの御答弁はきわめて明快でございまして、現在の政府のおできになる範囲内のことにせよ、私どもは多とするものであります。ただいまイギリス政府がアメリカと協議しております問題も、大体外務大臣の御答弁の趣旨のようなことで、協議が進んでおるように私も新聞で存じておりますが、実際問題といたしましては、非常な誤解がございまして、今日の外務大臣の御答弁が正確に新聞に伝わりますれば、業界としてはどれほど明るい気持になろうかと存じます。ただ業界としましては、アメリカ政府もこれを認め、日本政府が国連協力のわく内において、適切に比較勘案した結果御許可になりました物資に対してすら、これに手を出すならば、ブラツク・リストに載せられて、あるいは特需発注とか、あるいは金融、融資の面に非常な障害を来すという、民主国家らしからぬ不安におびえておるような風潮も一部にあるのでございます。しかるがゆえに、この問題につきましては、何とぞ外務大臣から、通産大臣のみならず、大蔵大臣、運輸大臣にも適切な御連絡を賜わりまして、アメリカが容認し、日本政府が愼重な考慮のもとに認めたものは、またヨーロツパの状況等も勘案してのことでございますから、貿易振興のわくに乗りまするように、一段とお骨折りを願いたいのでございまして、土曜日には各関係四局長の皆様に、それの具体的隘路なり、その他の技術的な点をお尋ねしたいと思いますが、それは技術的なものでございまして、外務委員会の本流といたしましては、何と申しましても、外務大臣がラシヨナリズムの、合理主義の観点から常に適切な措置をなさるということを、野党といたしましても、与党は与党なりに、合理的に適切にしていただくということを切願するわけでございますから、どうかそのように御措置を願いたいと存じますが、重ねてこの問題につきまして、誤解を一掃いたしますような御答弁をお願いしたいと存じます。
  285. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 政府としては、貿易についてはどこの国によらず、業者に対して差別待遇をいたすようなことはありません。従いましてその点は決して御心配には及ばないと思います。
  286. 栗山長次郎

    栗山委員長 並木芳雄君。
  287. 並木芳雄

    ○並木委員 岡崎外務大臣にまずソ連との国交回復の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。この問題は参議院では取上げられたようでありますが、衆議院ではまだでございますから、外務委員会としてぜひお聞きしておきたいと思います。それは今度マレンコフ首相になりまして、共産主義と資本主義とは協力できると言つております。またモロトフ外相の言葉にも、あらゆる外国との協力というような表現が用いられてあるのです。こういう点を考えますと、一方においてアメリカの議会では、例のアイゼンハウアー大統領の秘密協定破棄の決議が否決されたとも報ぜられており、しばらく形勢を観望してみたいという報道もあります。さればといつて、ダレス氏のごとく、押返し政策はやめないのだというようなことも報道されて、私たち国民としては、一体どういうことが本筋であるかという判断に迷うわけであります。そこで日本は独立した国であり、その独立した日本の外務大臣として、今度のマレンコフ首相になつて、ソ連と日本との間の二国間の平和条約を結ぶ可能性が増して来たと思われるか、つまり全面講和へ一歩近づいたと考えられますかどうか、そういう点について御所見をお伺いしてみたいと思うのであります。
  288. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ソ連という国は、なるほどスターリン首相が相当独裁的な権威を振つていたことでありましようけれども、しかし過去三十年来の強い組織の上に立つておる国でありまして、その一番高い地位にある人が病気でなくなつたということが、その組織の根底をこわすものではないし、またその考え方は、一つのイデオロギーのもとに立つたやり方でありまして、新しい人にかわつたからといつて、従来の考え方がかわるものとは私は考えません。現にマレンコフの、昨日でしたか一昨日でしたかの短かい演説も、それからいろいろの発表など見ましても、従来の方針をかえておるとは考えません。従いまして、事態は前とかわつていない。前の状況が全面講和に近いようにお考えになればそうなるし、そうでなければやはりそうでない。新しい事態というものは、今のところ何もない、将来長い間にいろいろのことで方針がかわることもあり得ましようけれども、ただいまのところはかわつていないと考えております。
  289. 並木芳雄

    ○並木委員 私たちといたしましては、こういう機会に両陣営の対立激化の緩和ということができますならば、仕合せだと思うのです。ですから、岡崎さんはどのようにお考えになつておるか、それをお尋ねしたわけです。この間スターリン首相がなくなつたときに、東京のソ連代表部から、スターリン首相の死去を外務省に知らせて来たということですが、その通りですか。外務省としてはそれを予期されたかどうか。もし予期してなかつたとすれば、こういうことはやはりソ連としては、何かをとらえて国交回復ということを考えておるのではないか。私の率直な感じですけれども、主義主張は違つても、とにかくスターリン首相の死に対しては、やはり私どもは人間として哀悼の意をささげていいと思うのです。ですから政府としても、何らかの形で弔意を表された方が、将来のためによかつたのじやないかと思う。またこれが人道主義に立脚するものではないかと思つたのですが、この点外務大臣はどのようにお考えになつておりますか。
  290. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ソ連としましては、日本とはともかくとして、東京にも国交を回復しておる国の大公使等もおるのであります。ソ連側としては、ここに建物があり、その中に、どういう資格と向う考えておるかは別としまして、人がおりますから、それらの国々に対して通知を出し、弔意を受けるという措置は何かとるであろうと思つておりました。それと同じような通知が日本の外務省にも届いておりましたが、これは国際の慣例からいつて、別に正式な通知でもないし、また単にほかの国に置いて来たものと同じようなものを置いて来たものでありますから、別段の措置はとりません。しかし私は新聞会見におきまして、あのなくなつたという報知のあつた日に、イデオロギーは違うけれども、ソ連の長い間の指導者であるスターリン首相がなくなつたということに対しては、ソ連の国民に対してはなはだお気の毒であるという趣旨の談話を発表いたしました。
  291. 並木芳雄

    ○並木委員 先ほど帆足委員も触れましたが中共引揚の問題であります。これなども二つの相反する見解が今行われております。一つは代表団の御苦労によつて、よくこそ話合いができて、無事に引揚げができるようになつたことはけつこうなことだ、こういう感じと、一方においては、これも中共として何らかの政治的含みがあるのではないか、こういうものに対しては十分警戒をすべきである、こういう私どもとしては非常に判断に苦しむ二つの意見が対立をしております。そこで外務大臣はこれをどういうふうにおとりになつておられるか、この機会に明らかにしていただきたいと思います。
  292. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私もそういう話は聞いております。こと参議院選挙を前にして、筋金入りの闘士を多数送り込んで、中共の実態はかくのごとくである、共産主義を行えばこういうふうに国がよくなるという宣伝をいたし、同時に参議院選挙を有利に導くためであるとか、あるいは一般の平和攻勢の一環として行われておるものであつて、将来に大きな含みがあるのだとか、いろいろの説があります。しかしそれは実際に引揚げを行つてみなければわからないことでありまして、そうかもしれぬし、そうでないかもしれません。そこでわれわれは、いろいろの臆測がありとしても、この際は人道的見地から引揚げを行うものである。これは引揚じやなく帰国ですか、わかりませんが、とにかく日本人日本に返すのだという額面通りに受取りまして、それに対するあらゆる措置をとつておりますが、将来向か妙な臆測めいたようなことがかりにあつたとしましても、それによつて日本の国が乱されるようなことのないだけの十分なる備えはあるつもりでありますから、たとい何かあつても、心配はいらない、こう私は確信をしております。
  293. 並木芳雄

    ○並木委員 きよう話を聞いてきめるということですが、それはもう話が始まつたのですか、これからですか。ただいまのお話によりますと、大体代表団がとりきめて来られたものを、日本政府としては、これを事後承認するというふうに今お聞きしたのですが、そういうふうに受取つてよろしゆうございますか。
  294. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 実は私は国会にずつとおりましたために、今どういうふうに行つておるかわかりませんが、けさ報告を受けましたところでは、昨晩十二時ごろまで話を聞いたけれども、一行が非常に疲れておるので、しまいまで説明を聞くことができなくて、きよう再びその続きをやろうということになつた、それを十分聞いてから最後的な決定をする、こういうことになつているという報告を受けました。もう時日も、実際船を出すためには人も出かけなければなりません。本日くらいまでにはすつかりきめて手はずをしなければならぬのですから、おそらくやつておるだろうと思います。
  295. 並木芳雄

    ○並木委員 私たちは無理に対立することは必要はない。しかしながら日本政府を無視したようなやり方に対しては、国民として十分警戒はして行かなければならないと思うのです。しかしお隣の中国の国民とは、仲たがいをする意思は毛頭ないということを、政府も念頭に置かれてこの問題は善処していただきたいと思います。  ところでINSの電報によりますと、この五月のメーデーに、中国総工会が日本の労組三団体にあてて、代表を送るように招請状を打電したということを報じております。その一つは、五月二日の北京における第七回の労働大会、それからその前に北京において挙行されるメーデー、またその式典が終つたあとは、中国に三週間滞在して参観して行つてくれ、こういうような招請の電報でありますが、政府としてはこれを許すような方針で臨まれるかどうか、この際お聞きしておきたいと思います。
  296. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それは私はまだ聞いておりませんし、実際にそういうことを申し出ておるということも聞いておりません。従つて現実にそういう申出が労働組合その他からあつた場合に、事実をよく調べて賛否を決するのが正当であろうと思います。従つて今どうということは申し上げたくないのでありますが、しかし中共地区等に対する旅行については、われわれは従来の方針をかえておりません。
  297. 並木芳雄

    ○並木委員 引揚代表団の帰つて来られた談話とか報道が、昨夜から今朝にかけて私どもの目や耳に入つたのですけれども、案外中共の状況というものはよかつたということを報じておるのです。こういう点については、やはりいろいろ政治間の問題もありましようけれども、政府としてももう少し広い気持で、何か機会があつたならば、こちらからも人を派遣して見聞を広める、こういうことについてはあまり色めがねを使わない方がいいのではないかと思いますが、ただいまの答弁ですと、従来の考え方をかえておらないということでありますけれども、それでははなはだ前途が暗いわけなんです。こういう点について、もう少し広い見地から対処して行くことができないものかどうか。またそれができないほど世界情勢が切迫しておるのかどうか。あるいは岡崎外務大臣として何らかのそういうような了解、とりきめというようなものを、自由主義陣営の国とやつておられるのかどうか、その辺のところをひとつ……。
  298. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 中共に対する旅券の問題等についてどの国とも約束もとりきめも何もありません。従いましてこれは日本政府としての考え方だけできまるわけであります。そこでわれわれもいろいろの報道を受けておりまして、何も今回帰つて来た人たちの報道が唯一の報道ではないのであります。いろいろ多少の事情は聞いております。しかし政府考え方は、決して思いつきなどでやつたのではなくして、長い間研究してその結論が出て来ておるのでありますから、代表団が帰つて来ての報告や談話等も、将来の一つ参考にはむろんいたしますけれども、それによつて卒然として今までの考えをかえるような気持もないし、またその必要もないと考えております。
  299. 栗山長次郎

    栗山委員長 並木さん、いま一人戸叶里子さんが発言の機会を待つておられますことをお含み願います。
  300. 並木芳雄

    ○並木委員 それでは例の大邦丸事件についてお尋ねをしておきたいと思います。あの事件以来大分日がたつたのですが、国連の方及び韓国政府の方、両方ともまだ日本政府から出した口上書に対する回答は来ておりませんかどうか。
  301. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 まだいずれからも来ておりませんが、国連側としては回答案について今案を練つておるということを間接に聞いております。
  302. 並木芳雄

    ○並木委員 私どもまだよく内容は知つておりませんが、今度の問題で日本の漁船を保護してくれ、こういう日本政府の要望に対する案を国連側が練つておるというふうに了解していいのですか。
  303. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 一部はもうすでに実行されたことでありますが、防衛水域で起つたことでありますから、船とその船員の帰還について国連側のあつせんを求めたわけであります。その方はすでに回答がある前に実現されたわけであります。しかし、防衛水域の中でこういう不祥事件が起つたことについては、国連側にも当然注意を喚起して、将来少くとも防衛水域でこういう事態が起らないように、国連側としても十分注意を払つてもらいたいというこを述べたのであります。この分にはまだ回答が来ておらないのであります。それが来るのではないかと考えております。
  304. 並木芳雄

    ○並木委員 韓国政府からの回答が遅れているのはどういうわけですか、見当がつきませんか。
  305. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それはわれわれの方には何もわかつておりません。おそらくいろいろ考えるところがあつたからと常識的に思つておるのですが、回答が来ないのですからわかりません。
  306. 並木芳雄

    ○並木委員 今度の問題はあまりに明瞭な問題で、政府も初めはずいぶん意気込んでいたわけです。国連側にも申入れをするし、韓国政府の方へも申入れをする、それがどうも何かここのところへ来てうやむやになつているのじやないか、腰砕けになつているのじやないかという感じもするのですが、何か本件について、たとえばアメリカ軍当局あるいはアメリカ大使館というようなところから、岡崎大臣の方へ話でもありませんでしたか。
  307. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれは決して今度の事件を意気込んでおるわけではないのでありまして、ただ人が一人死んだということは非常に重要なことでありますから、それに対しての必要な措置をただちにとつたわけであります。それだけのことであります。従つて初めから意気込んでおりもしないけれども、しかし一般の船が拿捕されたということよりは、もつと重要なことでありますから、それだけの考慮も払い、十分なる注意もいたしておる、またすぐに手配もいたしておるわけであります。その意味においては今も従来もかわつておりません。また先ほど並木君も自分の口からおつしやつたように、独立国でありますから、こういう問題について、よその国から言つて来ることもありませんが、言つて来ても別にどうということはありません。事実は何も言つて来ておりません。
  308. 並木芳雄

    ○並木委員 その点はよくわかるのですけれども、やはりだんだん長引いて来ると、何だかそこにわれわれとしては、政府は弱気になつたのではないかという感を抱くのです。向うから回答が来ないなら来ないで、なぜ早く回答しないのだという催促をすべきではないかと思うのですが、催促する意思がおありになるかどうか。
  309. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれとしては、この問題ははなはだ不祥な事件でありますから、この問題自体の解決もむろんいたさなければなりませんが、同時に将来こういうことの起らないように考えることがさらに重要であります。従いまして、そういう見地から口上書も出しますし、またその他の手段もとりましようけれども、その方法と申しますか、テクニツクの方はひとつ外務省の方におまかせを願いたい。われわれは結果が一番うまく行くように、できるだけのことをいたそうと考えております。
  310. 中山マサ

    中山(マ)委員 関連質問ですが、この前フリゲート艦、上陸用舟艇を借り入れたことは、漁船が拿捕されるとかいろいろ不詳事件が起るので、この長い海岸線を守るためであるというようなことがあつたと私は記憶いたしておりますが、そういうものは一体どこにどうなつてつて、こういう海岸線を守るというような警備にはついていないのでございましようか、そこまで取引が進んでいないのでございましようか。一体そういうものはどういうお役に立つているのか、一ぺんお尋ねしてみたいと思います。
  311. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 海上警備隊は、普通の海上の警察の手が及ばない場合に出て行つて、沿岸の治安の維持、密輸の取締りその他の仕事に当るのであります。これは公海と申しますか、沿岸から外に出て行動するのが本旨ではありません。要するに国内の治安維持の一つ方法一つの部面を受持つておるのであつて、それは陸上の保安隊がやつているのと、常識的には大体同様の趣旨であります。公海に出て行つたり、あるいは他国の海岸に近いところまで出て行つていろいろなことをするのは、これは決して本旨ではないのであります。ただいまのところ海上警備隊はその本務についておるのであります。
  312. 並木芳雄

    ○並木委員 先ほど大臣は、本件について国連側のあつせんというような答弁でございましたけれども、どういうふうにあつせんをしているかという内容はおわかりになりませんか。
  313. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 先ほど申しましたのは、その当時、第一、第二大邦丸というのが朝鮮側に拿捕されまして連れて行かれたわけであります。その船と船員をこちら側に返還するためのあつせんを求めたこれはあつせんで、すでに返還されておる、こういうことを申したのであります。
  314. 並木芳雄

    ○並木委員 そのあとの処置については、別に国連としては関与しておりませんか。それとも、つまり私が聞きたいのは、日本政府が李承晩ラインを認めておらない、こういう立場をとつておりますから、国連軍としてもその通りだというように、これをバツク・アツプしているかどうか、あるいは国連軍はやはり防衛水域を持つているから、日本政府はそういう主張をすることにも限度があるというふうに、逆に李承晩大統領をかばつているかどうか、そういうような点が私どもとしては知りたいのです。いかがでしよう。
  315. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 李承晩ラインにつきましては、国連側としてもあるいはアメリカ側としても、何ら言明をいたしておらないと了解しております。その二国間の問題については、できるだけ二国間で解決することを希望しておる。その中に立つてどちらの味方をするというようなことは考えておらないだろうと思います。
  316. 並木芳雄

    ○並木委員 もし今度の問題が日韓会談に移されるようなことがあつて日本政府が李承晩ラインというものについて話合いを始めるということになつて、少しでも譲るようなことがあれば、これはたいへんだと思うのです。ですから、日本政府としてあくまで李承晩ラインを認めないという方針だけは堅持して行くつもりであるかどうか、もしこれを認めるようなことがありますと、竹島の領有権の問題などもその中に入つて来ますから、たいへんな問題になるだろうと思います。この間うちから報ぜられておるように、大邦丸事件は日韓会談に持ち込まれるのではないかというようなことがもし実現しますと、そういう点において非常に日本が不利をこうむる場面がありますので、この際特にお尋ねをしておきたいと思います。
  317. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 李承晩ラインにつきましては、たびたび御説明しておるように、これを領海のように取扱つているのじやないのであります。従つて普通の船が通過する等について、何ら制限をいたしておらないのであります。ただ漁業の問題でそういうラインを先方は主張しておる。これは魚族の保護と朝鮮の水産業者の立ち行くようにという二つの点から言つておるので、その他の問題については何も言つておらないのであります。従つてかりに李承晩ラインという筋があつたとしても、領土の問題などにこれが影響するものではないのは当然であります。また先方もそういう考えはもちんろ持つておらないと考えます。しかし交渉に先だちましてこれはどうする、これはこういう方針である、あれはこういう方針である、また一切譲歩できないとか譲歩するとか、そういうことを言うべきものではないと私は考えておりますので、直接の御返答はいたしませんが、李承晩ラインの性質はそういうものと信じております。     —————————————
  318. 栗山長次郎

    栗山委員長 戸叶里子さんの御質問の前にお諮りをいたしたいことがあります。  理事谷川昇君が去る二月二十五日に、理事田中稔男君が去る二月二十八日に、それぞれ委員辞任せられておりますので、理事が二名欠員となつております。この際理事補欠選挙を行いたいと思いますが、これは先例によりまして委員長において指名するに御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  319. 栗山長次郎

    栗山委員長 御異議がなければさように決定いたしまして、中山マサ君、帆足計君をそれぞれ理事指名いたします。     —————————————
  320. 栗山長次郎

    栗山委員長 戸叶里子君。
  321. 戸叶里子

    戸叶委員 時間がありませんので、私は簡単にきようは一、二点だけ伺いたいと思いますが、それに先だちまして、委員長並びに政府にお願いしておきたいことは、沢田大使が国連の大使に任命されたということが新聞に出ておりました。国連対策というものは、日本外交政策の上におきまして、非常に重大な関係があることでありまして、しかも日本の加入が問題にされておりますときであり、その加入にあたつての態度やら、いろいろ日本の国民として聞いておかなければならないことがございます。しかも全権を委任されて行かれる大使の、その国連においてのいろいろな態度について伺つておきたいと思いますので、なるべく早い機会にこの委員会にいらしていただくことをお願いしていただきたいと思います。  次に先ほど並木委員からの発言がございまして、スターリン首相の死に対して岡崎外務大臣は、新聞発表では弔意を表しておいたというような御発言がございました。私あの新聞を見ましたときに、一国の元首が死んだ場合には、当然その国に対して弔意を表するところだけれども、ソ連との間はまだ正当な国交関係が開かれていないから、弔電を打つようなことはしないとおつしやつておられますけれども、私はこの考えは間違つているのじやないかと思うのです。それはすでにアメリカでも弔電を送つたといわれておりますし、そしてまた日本の当局としても、ただ国交が回復されておらないからという理由だけで、この弔意を表さないということは、国際儀礼を欠くものではないかと思いますが、この点に対する岡崎外相の御意見を承りたいと思います。
  322. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その前にちよつと政府意見を申し上げておきますが、大使等は在外使臣でありまして、外務省の命令、訓令に基いてすべての行動をするのであります。従いまして日本政府、その一部としての外務省の方針、政策等は、外務大臣以下外務省政府委員において国会では御答弁することにしてありますから、証人として喚問されるならばこれは別でありますが、沢田大使をかりにお呼びになつても、政府の政策は大使としては言えないし、また訓令がなければ——行動は訓令のない範囲でもできましようが、こういう委員会で正式に申し上げるようなことはできないと思いますので、その点は委員長においてお考えを願いたいと思います。  なおスターリン首相が大分問題になりますが、アメリカが弔電を出した、これはアメリカは国交を回復しておりまして、相互に大使を交換しておるのであります。国交の回復しないということは、もつともつといろいろの意味支障のあることが多いのでありますが、国際慣例としては弔電を打つというようなことは私は聞いておりません。打たないのが通例の慣例であると了解しております。
  323. 戸叶里子

    戸叶委員 最初の沢田大使の問題ですが、大使にここに来ていただいても政府の政策が言えないというようなお話でございましたが、それでは日本の国を代表して国連大使として行かれる場合に、当然政府の政策を持つて行かれると思いますが、その点はどうなんでしようか。
  324. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それは当然であります。しかしこの政策は外務大臣、政府委員が十分ここで御説明できるものであります。
  325. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは私は次の機会にぜひこの点を聞かせていただきたいと思います。それからもう一点の方ですけれども、国交が開かれていない国はそういう例がないと言われましたが、それではフイリピンとかインドネシアとか中共とかの国々に対しまして、今後においては弔慶の意を決して表わさないかどうかということを伺いたい。
  326. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 フイリピンやインドネシアは別であります。というのは条約はできておりませんが、フイリピンとの間には在外事務所を交換しております。インドネシアとの間には総領事を交換しております。従いましてその関係は別でありますが、中共においてはソ連と同様条約もなければ在外使臣のいかなる種類のものも交換していない、そういうことになります。
  327. 戸叶里子

    戸叶委員 日本を別にいたしまして、国際間の有力な国家間におきましてこういうような例があつたかどうかを伺いたい。
  328. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 たとえばソ連につきましては、ソビエト政府ができましても、たしかイギリスは——ちよつと記憶がはつきりしませんが、一九二四年までは承認をしていなかつたと思います。アメリカは一九三三年に承認したのじやないか。従つてその前はやはり元首の死というものが起れば、同様のことがあつたろうと思います。
  329. 戸叶里子

    戸叶委員 次の質問は時間がありませんので次の機会にまわしたいと思います。
  330. 栗山長次郎

    栗山委員長 先ほど御発言の沢田大使をここに呼びますことにつきましては、さらに研究をいたしまして適当な措置をとります。
  331. 戸叶里子

    戸叶委員 ちよつと協力局長に伺いたいことは、先ほども婦女子の検診問題が大分問題になりまして、ああいうことは日本女性としてほんとうに恥ずべきことだと思うのですが、もつと根本的な問題にさかのぼりまして、日米合同委員会で売春婦の問題がきつと取上げられていると思うのです。そのときに日本側あるいは向う側の態度が一番問題になると思うのですが、一体両者の間でどういう態度を持つて臨んでおられるか。たとえば売春婦を基地の中へみんな入れておくというような態度を持つていられるか、それとも基地の外に置いて、赤線区域をつくつておこうというようなお考えか、あるいはまたそれとも今のように放任しておいて、そして適当な家の部屋を高い部屋代を払つて借りて、そこの家の子供に悪影響を及ぼしてもしかたがないのではないかという黙認の形をとつて話合いを進めておられるか。一体どういうふうな態度を持つて話合いをしておられるか伺いたいと思います。
  332. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 アメリカ側は、売春婦を軍事施設の中に入れるという考えは持つておりません。施設の外におきまして現在のように至るところに売春婦が出て来るという状況は非常に困るわけでありまして、これはむしろ主として日本側の取締りにあるわけであります。もちろん先方も協力しなければなりませんが、日本側の取締りを強化しますれば、ある程度狭い区域で固めて行くことができるのではないか、大体今までいろいろ話しておりますが、まずすぐ一応の効果の上る方法としましては、やはり取締りを強化して狭い区域に固めて行くという方法しかないのじやないか。もつと長い目で見ますれば、またいろいろの教育の面とかいうことがあると思いますが、これは今委員会をつくりまして、鋭意研究いたしております。
  333. 戸叶里子

    戸叶委員 狭い区域に置くのが一番簡単だというお話ですけれども、そうすると日本の国内の売春婦の取締法とかち合つて来ると思うのです。そういう点はどういうふうに解決なさろうとなさるのですか。
  334. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 ですから、赤線区域はつくりませんけれども、現実の問題としては、そう広い範囲に出ないようにしたい。非常に不徹底な方法でありますが、今よりは多少弊害は少くなるのではないかと今のところは考えております。
  335. 栗山長次郎

    栗山委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後五時五十二分散会      ————◇—————