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1953-03-04 第15回国会 衆議院 外務委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月四日(水曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 栗山長次郎君    理事 池田正之輔君 理事 松本 瀧藏君    理事 戸叶 里子君       植原悦二郎君    木村 武雄君       近藤 鶴代君    安東 義良君       楠山義太郎君    高岡 大輔君       帆足  計君    福田 昌子君       黒田 寿男君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         外務政務次官  中村 幸八君         外務事務官         (大臣官房長) 大江  晃君         外務事務官         (大臣官房審議         室勤務)    中村  茂君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (国際協力局         長)      伊關佑二郎君         労働事務官         (大臣官房国際         労働課長)   橘 善四朗君         労働事務官         (労政局労働法         規課長)   大島   靖君         労働事務官         (労働基準局         長)      龜井  光君  委員外出席者         外務事務官         (経済局第四課         長)      北原 秀雄君         通商産業事務官         (通商局市場第         一課長)    佐藤 崎人君         海上保安官         (警備救難部         長)      松野 清秀君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 三月三日  委員生田和平君及び谷川昇君辞任につき、その  補欠として大橋武夫君及び前尾繁三郎君が議長  の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 三月三日  旅券法の一部を改正する法律案内閣提出第一  四五号) の審査を本委員会に付託された。 同月同日  アツツ島戦没者遺骨遺留品調査並びに早期還  送に関する陳情書  (第一六二四号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  職業安定組織の構成に関する条約(第八十八  号)の批准について承認を求めるの件(条約第  五号)  工業及び商業における労働監督に関する条約(  第八十一号)の批准について承認を求めるの件  (条約第六号)  団結権及び団体交渉権についての原則の適用に  関する条約(第九十八号)の批准について承認  を求めるの件(条約第七号)  在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部  を改正する法律案内閣提出第九六号)  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 栗山長次郎

    栗山委員長 ただいまから外務委員会を開きます。  占領中米軍使つてつた施設件数面積、そういうものと、独立後の駐留軍として米軍使つておる同様の件について、往々独立後の方がかえつてよけいにそういうものを使つておるのではないかという風説がありますので、外務当局調査を依頼してありましたところ、資料が出て参りました。これを委員各位に御配付いたしますが、委員各位の御了承を得たいことは、これを同時に新聞等外部にも発表してさしつかえないかどうかということであります。  御了承をいただけますか。——御異議ありませんければ、さようにとりはからいます。  ただいま配付をいたしました資料につき伊関国際協力局長から説明を求めます。
  3. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 ただいまお配りいたしました書類につきまして御説明申し上げます。従来はいつも件数につきまして御説明をいたしておりましたが、今回は面積はつきりここに出したのであります。これは昨年の一月一日と、それから第二表が講和発効の際四月二十九日、それから本年の一月末、こういうふうに三つの表にできております。それでどういうふうにかわつておるかということはこの三つでもつてわかるわけでございまして、なぜ昨年の一月一日をとりましたかと申しますと、大体昨年の一月一日から戦争終結の準備が始まりまして、そのころから施設返還が始まつておりますので、そこを起点にいたしたのであります。件数で申しますと、当時一千二百十二件ありましたものが、ただいまは七百三十三件というふうに減つております。この七百三十三件のうちで一時使用と無期限使用が半々ぐらいになつております。そのほかに個人住宅が一番最後に書いてございますが、これは昨年一月に二千くらいございましたものが、ただいまは四百三十くらいになつておりまして、これは三月末日、二、三の例外を残しまして、全部解除になるわけでございます。  それから最後の第三表をごらん願います。ここにAが兵舎、Bが集団住宅C飛行場というふうになつております。これを御説明申し上げますと、兵舎と申しますのは兵舎並びに事務所等も含まれておるわけでございます。それで昨年一月の五百七十九から二百二十、これが非常に減つておりますのは、各地に小さい事務所等がありましたのが、ずつと大きい兵舎にまとまつたわけでございまして、これが非常に数が減つております。兵舎だけでなくて事務所を含んでおるということを申し上げておきます。  それから飛行場が四十四ございますが、大体どこにどういうものがあるかということを申し上げますと、北海道で千歳の飛行場が一番大きいのであります。それから八雲というところに補助飛行場がございます。稚内に小さな滑走路がございます。それから最近できました計根別、美幌という飛行場がございます。東北に参りますと三沢に一番大きな飛行場がございます。仙台に霞目飛行場矢目飛行場、これは小さい飛行場であります。新潟にかなりりつぱな飛行場がございます。関東に参りまして立川、横田、入間川、この三つ関東で大きな飛行場であります。そのほかに補助飛行場といたしまして、白井、太田あるいは木更津がございます。それから厚木の飛行場、これは海軍使つております。それから浜松にも補助飛行場がございます。中部に参りますと、名古屋の北に小牧飛行場、近畿では伊丹飛行場がおもなものでありまして、あとは阪神とか甲子園とかいうところに補助飛行場がございます。それから中国では美保に一つ、岩国の飛行場、山口の防府に補助飛行場がございます。九州では板付、雁、芦屋、九会この四つが大きな飛行場でありまして補助飛行場といたしましては大分、曽根あるいは宮崎、これだけございます。飛行場面積を申しますと、三沢飛行場というのは非常に大きくて一千三百坪くらいございます。  それから港湾施設が現在三十となつておりますが、これは無期限のものが十五件、一時使用のものが十五件、半たになつております。この中でおもなものは横浜北埠頭がございます。それから神戸の第六突堤、こういうものが無期限使用の一番おもなものであります。その他は小さいものでありまして、大湊に一つございます。それから横須賀の隣の九里浜に小さなのが二つ、横須賀海軍施設のそばに一つございます。それから呉のはしけのとまるところがあります。あるいは江田島に一つ、博多に救難艇用のもの一つ門司港の一部、佐世保の港が無期限使用なつております。一時使用といたしましては東京港のさん橋あるいは横浜の一番いいさん橋、あるいは横須賀にも一時使用三つございます。それから神戸では第五埠頭をまだ一部使つております。それから神戸の高浜さん橋、これは倉庫の方を使つております。それから若松の港の一部あるいは門司の税関の建物の一部を使つております。  演習場は非常に面積が広くなつております。全体の面積土地につきましては約十万町歩ございますが、そのうちのほとんど三分の二は演習場なつておりまして、これは占領当時から見ましても、ひとつも減つておりません。ほとんど変化がない状況であります。演習場のおもなものを申し上げますと、北海道にありますのが一万五千町歩、富士のすそ野が三万二千町歩くらいになつております。そのほか青森県の関根の演習場、あるいは宮城県の王城寺の演習場がおもなものでございます。アメリカで申しますと、大体一個師団の演習場は四万町歩くらいのものを向うでは使つております。  その他工場、倉庫医療施設通信施設——通信施設は、この数では減つておりますけれども、小さなものが入りまして、むしろ最近新たに提供いたしておりますのは、ほとんど通信施設でありまして、これは逐次充実されて行くという傾向にあります。その他の施設と申しますのは、モーター・プールあるいは石炭の置場だとか消防施設、そういうものであります。  それから約五百件ほどのものが返還なつておるわけでありますが、返還になりましたおもなものを申し上げますと、関東では第一相互ビル、帝国ホテル、丸の内ホテル内外ビル、銀座の松屋、白木屋、東京会館如水会館服部ビル野村ビル日本青年会館島津ビル、住友、偕行社、中央市場等東京ではこうしたものがおもなものでありまして、京都、大阪は二、三の例外を除きまして、ほとんど全部返還なつております。神戸がまだ多少残つておりますが、この方も大体この秋ぐらいには全部目鼻がつくと思つております。一番遅れておりますのが横浜地区でありまして、これは一応来年度にずれるのではないかと見られております。  大体以上でございます。
  4. 栗山長次郎

    栗山委員長 関連して御質問がございますればこれを許します。
  5. 安東義良

    安東委員 演習場着弾地域約一七%というのは、どういうわけですか。
  6. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 着弾地域は出入りを非常に厳重にいたしております。と申しますのは、演習場は耕地は割にございませんが、山林や原野でございます。しかし一部耕しておる所もありまして、演習場演習しておらないときは自由に入つて耕す、あるいは演習場の中に人家もございます。しかし着弾地域の中には、あるいは不発弾等もあつて非常に危険でありますので、非常に制限して入れるようにいたしておる。ですから一週間に一ぺんとか限りまして、その中に入る。これはたき木をとるとかいうときでありますが、普通の演習場は、使つておらぬときは自由に入れる。あるいは人家のある所もあります。着弾地域の方はあぶないので制限が強いわけでございます。
  7. 安東義良

    安東委員 つまり演習の際に砲撃等を受ける危険のある地域という意味でありますか。そうすると平素は開放しておるけれども、演習をやつておるときには入れないという意味なのでありますか。
  8. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 着弾地域と申しますのは、現実に弾丸を撃つておる所であります。実弾射撃をやつておる所であります。ですから非常にあぶない。それから弾丸を撃つておらぬときでも不発弾等がありますので、入れるときは一週間に一度とか制限しまして、そして不発弾がどこにあるかということを、はつきり不発弾のある場所にマークしまして、それでなければ入れないという所です。
  9. 安東義良

    安東委員 その地域に住んでおる人間は何人ほどですか。
  10. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 着弾地域にはだれも住んでおりません。
  11. 戸叶里子

    ○戸叶委員 本年度に何か計画されている施設がありましたら、お聞きいたしたいと思います。
  12. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 ただいま問題になつております新しい施設としましては、空軍が東京名古屋の市内におるのでありますが、これが東京立川周辺に移ります。それから名古屋名古屋郊外の守山という所と小牧飛行場、この二箇所にわかれて全部名古屋の市外に行くことになつております。これがおもなものでなかろうかと思います。そのほか今後とも新しく出て来ることが予想されますのは通信施設であります。
  13. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そういうふうな施設を設けようとする場合に、日本先方との交渉をするでしようけれども、大体今までの例から見まして、期間はどれくらいとられておりましようか。
  14. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 先方からこういう所がほしいという要求が参りますと、その必要性等、十分に説明を聞きまして、そうして関係各省並びに関係の府県あるいは町村等に、その書類を持つて相談するわけであります。それでまず早い場合は一月もいたしますと、大体異議がないという返事が参ります。それからおそいものになりますと、これは半年もかかつておるものがございます。たとえば小牧飛行場の一部拡張という問題は、昨年の夏ぐらいから始まつておりまして、まだ解決しておらぬというふうなものもございます。
  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員 あちらこちらで施設を設ける場合に、いろいろ反対の声も起きております。そこでお伺いしたいのは今までの例から見まして、施設を設けられた場合に、大体向う意向が通つておるのではないかと思いますが、その点これらの施設向う意向がどの程度つておるか、お教え願いたい。
  16. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 昨年七月二十九日から今までの間に増加いたしましたのは四十八件ございます。四十八件は先方要求でもつて提出したということになるのでありまして、これはむしろ主として通信施設等でございます。今問題になつております新しいものと申しますのは、通信施設とか、先般問題になりました石川県の内灘の試射場——弾丸の試験をする所、こういうような所が新しいものでありますが、そのほかは大体都心から郊外に移転いたしますので、その移転先というふうなものが問題になります。現在郊外にありますものを一部拡張する、あるいは郊外に新しい所を見つけまして移転するという、むしろ移転先でありまして、新たにふえておりますものは北海道飛行場とか、あるいは石川県の試射場、そのほかは主として非常に辺鄙な所にあります通信施設であります。
  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ここにきめられております施設の中で、日本の方でそこは地元の方から反対の声があつたにもかかわらず、きめられたという所がどのくらいあるでしよう。
  18. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 大体どこでも初めから賛成という所はほとんどないというのが、最近の状況でありまして、持つて来てほしいというような所もたまにはありますが、それはむしろこつちの予定のない所で、大体初めは全部が応対であります。しかし、いろいろ話をしておりますうちには最後に納得する。そこで時間がかかつておるわけでありまして、もちろん強制的に土地を収用するという法律も、行政協定に関連いたしましてできておりますが、その法律を発動いたしましたことは一ぺんもございません。ですから反対がありましても、最後には納得してもらつておるという状態であります。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 反対であつても、大体しまいに納得したというお言葉でありましたけれども、どうも納得させられたというふうなケースが多いのではないか思います。今でもいろいろ問題になつておる所がありますけれども、私今ここに資料を持つて参りませんので、次の機会に質問をさせていただきたいと思います。
  20. 安東義良

    安東委員 飛行場についてですが、保安隊が将来飛行機を配属せられた場合に共用することがありますか。
  21. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 演習場とか飛行場は、できるだけ共用したいという考えでおるわけであります。実際問題といたしまして、向う使用いたしております頻繁性と申しますか、そういうものによりまして、必ずしも全部共同使用ができるかどうかということは、疑問だと思つておるのであります。しかし小牧にいたしましても伊丹にいたしましても、これらは民間飛行が共用いたしております。あるいは北海道の千歳、こらは民間の方でも使つております。ですから保安隊が使いたければ、大体原則としては共同使用ということになつておりますが、今のところは保安隊の方もそれほどの要求もありませんので、浜松の方を保安隊がもつぱら使つております。これはまだ今のところは米軍のものになつておりますが、近く解除いたしまして保安隊の方のものにしようと思つております。
  22. 栗山長次郎

    栗山委員長 次に前会の質問で答弁のなかつたものにつき、再び質問することをお許しいたします。戸叶君よりパキスタンの綿についての質問ですが、通産省の説明員も見えております。
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 二月二十六日の新聞に、パキスタンから通商使節が来て、日本との貿易協定が締結されるというようなことが書いてございましたが、このことが事実であるかどうかを、伺つてみたいと思います。
  24. 北原秀雄

    北原説明員 本月の五日、つまり明日午後到着の予定でございます。
  25. 戸叶里子

    ○戸叶委員 その目的は貿易協定の締結でございますか。
  26. 北原秀雄

    北原説明員 さようでございます。
  27. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この協定を締結するために、今までいつごろから努力せられておられたでしようか。
  28. 北原秀雄

    北原説明員 パキスタンとの貿易協定は、昨年度の分につきまして、昨年一月から現地——カラチ交渉中でありましたが、遂に協定が成立いたしません。協定と申しますのは、つまり本年度はお互いに幾らの貿易をいたすかという点についてのことなのでございますが、遂に昨年度貿易協定の内容をなします物資交換の表につきまして、合意のなきまま一年貿易を行つたわけであります。本年度はぜひとも貿易協定表をつくる、われわれトレードプランと俗に申しておりますが、つくるために昨年の秋から先方と話合いを始めました。しかるにパキスタンも、まつたく世界経済情勢貿易情勢がかわつて参りまして、非常に困難な立場にありましたので、対日交渉方針をなかなかパキスタン政府の方で決し得ないという状況でございました。最後には十二月に、おそらく東京でやれるだろうという返事をもらつておりましたが、遂に来朝も実現せず、やつと今回できるということになりました。
  29. 戸叶里子

    ○戸叶委員 合意のなきままというのを、もう少し詳しく説明していただきたいのです。
  30. 北原秀雄

    北原説明員 パキスタン日本との間には、一九五〇年の九月に、東京に率いて司令部パキスタン政府との間につくりました貿易協定がございました。それにのつとつてつておるわけでございます。但し一年間ごとに大体この程度のものを売り買いしようという表をつくるのが慣例になつておりますが、その点についてのみ合意がなかつたわけでございます。
  31. 戸叶里子

    ○戸叶委員 その問題で、私が現地で聞いたところによりますと、日本政府パキスタンから綿花をある一定の量だけを買うという契約をして、そして日本の方から綿製品パキスタンへ売つた。ところが日本の方の政府がその約束を果さないで、綿花約束しただけ買わなくて、日本の方から綿製品を出した。そこで在外公館の方なども非常にばつの悪い思いをしたということも聞かされましたし、またパキスタンの方からも、約束を履行してもらわないと困るではないかということを、私は非公式に聞いたのでございますけれども、そういう事実を御存じかどうか。
  32. 北原秀雄

    北原説明員 御質問の点につきましては、昨年度の一月に、現地先方トレードプラン交渉を始めました際に、最初にわが方の交渉のための原案といたしましこ、パキスタン綿を大体六十万俵、一俵の俵建パキスタン建俵ございます。四百ポンドのパキスタン俵建で六十万俵ばかり買おう。それに見合う日本輸出の商品の内訳をきめようというラインで話し出しました。しかしこれは単に交渉の過程において六十万俵という数が、日本側の案として提出されたのみでございまして、その後双方何回も交渉いたしましたが、遂にトレードプラン全体として合意が成立いたしませんでした。その意味日本政府といたしましては、決して六十万俵買うという約束はいたしていなかつたわけでございます。他方パキスタン綿輸入につきましては、でき得る限り促進をするために、輸入方式も全然自由な、いわゆる自動承認制ということによつて、あらゆる輸入促進を行いました。それから春以降におきましては、輸入促進のために、ポンドの外貨貸付というふうな制度も行いました。貸付の金利も一般ドルからの輸入よりはぐつと下げまして、あらゆる手を打ちまして、結局六十万俵買うという約束はなかつたのでございますが、パキスタンの要望にも沿い、でき得る限り買うという努力はいたしました。しかし何分にもこれは政府が買うということではございませんので、業者がパキスタン綿を買うということが利益である場合に買う、つまり自由貿易商業採算の上に立ちました輸入方式をとつておりますので、パキスタン綿が不幸にして、米綿に比べまして非常に割高でございました。そこでなかなか輸入が遅々としてはかどらないというような情勢にあつたわけであります。  それからもう一つ申し上げたい点は、パキスタンの税制上、関税に非常に大きく財政収入をたよつております。そこで昨年度の春ごろから世界綿花相場がぐつと下りました際に、パキスタンのみはどうしても財政上の必要から、輸出税というものを下げなかつたわけでございます。そこでわが方としても、パキスタンとの貿易促進の上からは、重々輸入促進をしなければならぬと思いつつも、遂に実績がなかなか上りませんでした。そのため秋に至りましてパキスタン綿輸入組合というものをつくりまして、これは独禁法の関係でいろいろ問題もございましたが、一応の例外措置として公取の承認を得た上つくつて、それでパ綿輸入促進をはかつたわけであります。しかし最後まで非常に割高でございましたので、大きな数は成立いたしません。昨年一月から十二月までの実際の船積み実績を申し上げますと、四十一万五千俵でございます。それからその際の決済、つまり金払つてもまだ船で荷物の着かないものも入れますと、大体五十四、五万俵になる。ですから最初日本側としましては、六十万俵買うという案を提出いたしましたが、大体契約ベースで申しますれば、そのくらいの実績まで何とかこぎつけたのではないかと思います。
  33. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日本側契約したのではないといい、向う政府契約したのだというふうな、そういう観点の上に立つていたところに、食い違いがあつたのではないかと思います。そういう点を今後においてはつきりして行く必要があると思います。その点気をつけていただきたいのですが、今度の協定パキスタン綿を大体どのくらい買おうとされておるか。そしてその計画通りするとするならば、今まで入つていた米綿の方に影響があると思いますけれども、米綿の方をやめてパキスタン綿を全面的に買おうとしておられるかどうか、その点を伺いたい。
  34. 北原秀雄

    北原説明員 御趣旨の点は、今般の交渉におきましては重々考えてやりたいと存じておりますが、今度の交渉におきまして、どの程度パキスタン綿を買うかという点でございますが、これは実は交渉上のタクテイツクの問題もございますし、ただいまここで一応の数を出しましても、またすぐそれが市況に響くという点もございますので、はつきりした数を申し上げることはごかんべん願いたいのでございますが、昨年度大体六十万俵買うということで交渉を始めました。その後パキスタン側といたしましては、綿は豊作でございます。おそらく全部の生産量は百九十万俵ぐらいでございます。そのうち国内消費が、大体目下のところ三、四十万俵、あと何とかこれを輸出して、パキスタン国際収支を保とうというのが、パキスタン側の建前でございます。他方綿世界的にマーケツトは軟調でございますので、おそらくパキスタン側は、大きな数を日本側に買つてもらいたいという希望で参ると思います。そういう意味で、あるいは昨年度の数よりも上まわるようなことになるかとも思われます。他方米綿をこの際切りまして、パキスタン綿を買うという点ございますが、御存じのようにパキスタン綿は割合に維繊が短こうございまして、太い糸をひくために使つております。他方輸出用の特に高級な繊維をつくりますのは、米綿にたよる点が多いのでございます。これをいろいろ混綿いたしまして、あらゆる市場に適合するように生産いたしておりますが、そういう混綿技術上からも、米綿の方を非常に切りまして、パキスタン綿に依存するということも、技術的に不可能という点が一つございます。それから他方米綿の方は、すでにことしは一応百五万俵という数でスタートいたしておりますが、ほとんど外貨割当も了しておりまして、大体ほとんどの数を買いつけつつあると思います。今さらこれを撤回いたしまして、パキスタンの方に移るということも不可能かと思います。しかし十万ないし十五万というふうなわずかなマージンはまだございますので、その範囲内での輸出市場確保のためのパキスタン綿促進ということは可能と考えております。
  35. 戸叶里子

    ○戸叶委員 値段は大分違うでしようか。
  36. 北原秀雄

    北原説明員 値段はパキスタンでも輸出値を下げまして米綿と対々になつております。これは品質を考慮いたしましてもそうであります。
  37. 戸叶里子

    ○戸叶委員 パキスタンが、日本の商社の出ている数からいうならばニユーヨークに次ぐと言われておりますけれども、アジアの貿易の中でパキスタンをどの程度に重要視されていられるか。もつと具体的に言うならば、アジア諸国との貿易で一九五〇年に輸出では四六%、輸入では三二%まで回復したと聞いておりますけれども、この中でパキスタンとの貿易をどの程度のパーセンテージまで重きを置いていられるか伺いたい。
  38. 北原秀雄

    北原説明員 パキスタンは従来も日本としましては、繊維品の輸出市場として大きく考えております。昨年度におきましては、たとえば輸出九億ヤードのうち、二億数千ヤードのものがパキスタンに出ている状態であります。しかしパキスタンはだんだん繊維工業の——日本から機械を輸出しまして、繊維製品の自立化をはかつております。こういう意味パキスタン市場の性質としては、今後おそらく二、三年の間にパキスタンの繊維は、ほとんど自立という状態になると思います。そういう意味で今後は鉄鋼製品、機械、つまりパキスタンの開発という点について、日本が大きく貢献して行くという点で考えたいと思います。貿易量の金額につきましては、あるいは減ることがあるかもしれません。そういう意味からしての重要性はますます存在すると思います。
  39. 戸叶里子

    ○戸叶委員 遊休施設などを持つて来ますと、相当効果を上げられると思うのですけれども、そういうような計画はお持ちになつていらつしやらないでしようか。
  40. 北原秀雄

    北原説明員 遊休施設と申しましてもちよつとあれでございますが、パキスタン側日本に対しては非常に好意的でございまして、パキスタンの開発事業について日本からたくさん技師も送つておりますし、それからあらゆる開発施設の購入にあたりましても、非常に日本に対して好意的にやつてくれております。御質問の遊休施設ということは、現在の私どもの関知しております範囲ではないようでございます。
  41. 戸叶里子

    ○戸叶委員 パキスタンで六箇年の計画経済を立てて、そして農耕地拡大のためにダムの建設は望ましいけれども、費用がかかるので、一応井戸を掘つて沃野をつくるというようなことに計画しているようでありますけれども、これに対して日本の技術がそういう点で発達していると思いますので、この点でこの六箇年計画と結んで、何か技術援助の計画をとつて行くべきだと思いますけれども、そういう点についてのお考えがあるかどうかということを伺いたい。
  42. 北原秀雄

    北原説明員 技術援助につきましては、先方から適当なる報酬を得て行うつまり施設輸出とか、あるいは技術者が要員として雇われて行くという点については、目下大いにすでにやつております。御質問のそれ以上に日本からの出資とか、あるいは同じ施設輸出につきましても、非常な長期間の繰延べ払いを相手に認めて行う、そういう点につきましては投資自体につきましては、日本の賠償との関係日本の資本の余裕とか、いろいろな点でなかなかまだ困難であると思います。しかし現在すでに合弁の形で、先方に種々の工業を興すというのはたくさん話が進んでおります。しばらく期間はかかると思いますが、例のIMFの日本の預託分でございますが、これが円クレジツトがそのうちこういう国によつて大いに使用される、その場合はひもつきで日本から輸出の可能性が出て来るというように考えております。  それから繰延べ払いの点でありますが、これは本国会にかかつております輸出入銀行法の改正、これがもしできますれば非常にこの点促進されると考えております。
  43. 栗山長次郎

    栗山委員長 ちよつと御相談でございますが、外務大臣は参議院の予算委員会に出席しているのを二十分ぼど都合してもらつたのであります。特に外務大臣に質問したいという委員があられると思いますが、それにしばらく時間を充てたいと思います。
  44. 帆足計

    ○帆足委員 外務大臣に御質問したいのですが——
  45. 栗山長次郎

    栗山委員長 全部で二十分ですから簡潔に願います。
  46. 帆足計

    ○帆足委員 中華人民共和国に対しまして、目下アメリカが封鎖の計画を立てているということが新聞に出ておりましたが、英国その他の反対によりまして、アメリカ政府自身はまあ目下考慮中ということで、ほとんど撤回したように聞いております。二月十八日に台湾政府の方でこの沿岸封鎖にひとしいことをする。その理由は自分らとしてはこれは内戦と認めるからということを申しておりますが、事実問題といたしまして、台湾政権に対しては承認している国もあるし、承認していない国もある。中華人民共和国に対しても承認している国もあるし、承認していない国もある現状でございますので、単なる内戦と見ることはできませんが、今日中国との貿易については、国連協力の線のわく内においては、政府も特定の平和物資に限つて貿易を許し、またアメリカもそれを承認し、外務大臣も政府の認めた範囲内においては、貿易振興の一環として、これを助成しているという御答弁でありましたが、台湾政権のこの封鎖に対してどういう手段、どういう措置をお考えになつておられるか、またどういうふうにこの問題を解釈しておられるか、お尋ねしたいのであります。
  47. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 中共政権と台湾の国民政府とが、お互いに中国全般に対する主張をし合つていることは、御承知の通りであります。従つて台湾の国民政府においては、自分の領土である大陸の港のあるものを封鎖したり、あるものを出入を禁止したりすることは、主権の当然の発動であるという見解をとつて、これは封鎖とはいわず、クロージヤ——閉鎖といつておるようであります。これは今二月というようなことを言われましたが、何も二月に始まつたわけでなく、ずつと前から言われているので、それがどの程度強化されるかは今後の問題であり、従つてこれが貿易にどの程度影響があるかは、これまた将来の問題であります。われわれとしては各国が足並をそろえてやる範囲の貿易は、無理にこれを阻止する必要はないと考えております。各国の足並がどの程度にそろうかということと、実際上貿易の振興にどの程度支障があるかということがわかるまでは、あるいは支障がなければ別にさしつかえないわけでありますが、いずれにしても今後の問題で、事態を見てからでないとこちらの考えもはつきりさせることができないと考えております。
  48. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの御答弁はやや満足し得る点もあるのですけれども、しかしいつも外務大臣はよその国の状況がこうならば、ただそれに順応するというような御答弁をされるだけであつて日本と中国との関係は平和を維持する上においても、また貿易の面におきましても、イギリス以上の密接な関係にあることは御承知の通りでありまして、英国の外務省がアジアの平和の維持とアジア貿易の振興についてあれほど努力しておりますときに、日本独立国でありますから、国連協力の範囲内において合理主義の観点から、この程度のことは、われわれとしては希望するくらいのことは、常に表明されるような態度をおとりになるべき時期でないかと思うのですが、いつでも——例の満州爆撃のときでも、外務大臣は積極的な御意見はなくて、慎重に考慮中とか、他国の問題に対しては批判を控えたいとか、仮定の問題には答えられないとおつしやる。ところが各国の外務大臣は、仮定の問題に対しても断々固として答えておりまするし、また他国の外交の行き方に対しても、礼儀正しい範囲内においては、その合理的意図を明らかにして、国民に対して安心を与え、また向うべき道筋は明瞭にしておる。しかるに外務大臣は一度もそういうことを明確にされたことはない。従来の占領下においてならいたし方ありませんけれども、今後は積極的に外務大臣の意向を私どもは伺いたいのでありますから、外務大臣はそれをどう考えて、主体的にどういうふうに処理されようとしておるか、そうしてそれが国民の意思に反することならばやめて行かなければなりませんし、国民の意思に沿うことであるならば、保守党の内閣の言われることであろうと国民はこれを支持する。これが私は道筋であろうと思のうであります。従いましてもう少し積極的な外務大臣の御意見を伺いたいと思います。
  49. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはいろいろと見方もありましようが、私のこの問題についての意見は、すでに何べんも繰返しておるのでありまして、貿易も大事であろうが、今度の朝鮮事変というものだけを考えると、これはイギリスよりもどこよりも日本が一番近いので、この事変の早期終息を願う心は、おそらくほかのどこの国よりもずつと日本は大きい。従つて私は前に申したように、でき得るならば、中共に対する貿易はできるだけ押えた方がよろしい、こう根本的には考えておるのでありまして、もうすでにはつきり申し上げておるわけであります。(帆足委員「平和物資もですか」と呼ぶ)何ものによらず中共の戦力を増強するようなものは、これは押えた方がよろしいと考えておるけれども、この物資の戦力の増強というのは、このごろようにいわゆる総力戦のような様相を帯びて来ると、非常に広範囲のものが入つて来るわけであります。しかしながらただほかの国はかつてにやる、日本だけが押えるというのも、これは実際の効果がないことについて、日本が特に努力をするということになるから、そこで列国と足並をそろえて、私の希望では強い方に足並をひつぱつて行こう、これは前から申しておることでありまして、私の態度はお忘れになつたかもしれませんが、決してあいまいではないのであります。そこで列国の足並をそろえる、こういうことにいたしておる。その足並のそろう範囲においては日本も同様にやる。従つて列国と同様の立場でやる。これは決して追従でもなければ方針がないわけでもない。そういうつもりで初めからやつておるわけであります。
  50. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの外務大臣の御答弁は、私は驚くべきことを承つたと思うのです。従来国連協力のわく内においての貿易であるならば、貿易振興の一環とされるというので、先般は与党野党の別なく、外務大臣の御答弁に非常に満足したのでありますが、ただいま本音を伺つてみますと、総力戦の時代であるから、平和物資の補給までを、できるならば一番きつい線に世界を合せよう。世界貿易の縮小の先頭を切りたいと考えておられる。こういうお話でしたが、先日外務省当局から出ました、アメリカのハリマン長官の報告を見ましても、世の中というものは機械的にできておるものでなくて、西ヨーロツパ諸国、日本も同様でありますが、高度に工業が発達した国で、極力厳重に全面的に禁止をするなどということは、相手も傷つけるけれども、みずからも傷つくことによつて自衛力を弱めるものである。従つて機械的に画一的に全面的封鎖をするというようなことは、合理主義の観点からいうならば、自由態勢を弱める一面もあるので、それらの要求は選択的輸出制限でなくてはならぬ。選択的とはすなわち相手に対する直接の軍需品はとめるけれども、同時にみずからに対する打撃との関係も考えて、平和産業に関する限りはある程度弾力性を持たせる、この意見ならば私は非常に論理の筋道が通つておると思うのです。外務大臣としては、英国がとにかく今日のバランスにおいて、平和政策と封鎖とを適当に調整して、今のハリマン長官の言われた合理的選択制限という面で世界の国交を調整しようとするときに、日本は万里の海を隔てた英国よりも、もつと問題をきつく考えて、でき得べくんば中国の全面封鎖を腹の底では考えておるというようなことは、あなたを選挙したところの選挙民の意思にも、日本国民の意思にも、与党、野党を問うことなく、大多数の合理主義的にものを考える人の意思に少し反して、行き過ぎておるのではなかろうかと思いますが、そういうような考え方はぜひ取消していただきたいと思います。
  51. 安東義良

    安東委員 私は本日岡崎外交の重要なる一面を伺つて、はなはだ遺憾ながらこの点については、私はただいまの帆足君の言葉とある意味において共通点があるのであります。外務大臣においてとくと考えていただきたいと思うのであります。ただいまの言を伺うと、要するに中共地区に対しては、理想的にいえば全面的に貿易をやらない方がいいという結論になるだろう。できるだけやらせない方向に持つてつて列国の足並をそろえて行きたい、こういうお話としか私は承ることができなかつたのであります。この行き方ボはたして日本の立場において、大局的に見ていいのか悪いのか、こたは非常に議論のあるところであろうと思うのであります。われわれが将来の中共ということを考える場合に、なるほど朝鮮事変はあるに違いない。そうして中共の国民は、いわゆる自由諸国軍から得る物質において生活が改善せられ、あるいは安定して行くということは、なるほどいわゆる総力を強めて、戦士を増大させる結果を招くかもしれない。しかしながら忘れてならないことは、かくして中国の全国民をますますソ連陣営に追いやつてしまうということを、政治的結果として認めざるを得ないだろう、われわれは単に中共に対して輸出するばかりではありません。輸出の反面には輸入があります。そうして日本がその輸入によつて日本の経済力を充実させることができるならば、これはとりもなおさず、同じ筆法をもつてすれば、日本の総力を充実し、日本の広い意味における戦力を増強することになる。日本の戦力というと語弊があるかもしれませんが、それは自由国家群の戦力を増強することれもなつて来る。そうすればそこにプラスもあればマイナスもある。しかもその間にプラスの方が多くなるかもしれない。消極的態度で、どこまでも飢えさせる、スターヴエーシヨン政策をとつて行くことが、われわれの立場においてはたして賢明であるかどうか、これはもう一度政治的に大きく反省しなければならぬ問題であろうと思うのであります。私は本日ただいまの御説明伺つて実に遺憾の思うのでありますが、この点について外務大臣の御答弁を願います。
  52. 栗山長次郎

    栗山委員長 外務大臣との質疑応答は、これに対する外務大臣の答弁をもつて一応とどめておきます。問題が残れば、次会外務大臣御出席のときにお願いいたします。
  53. 戸叶里子

    ○戸叶委員 関連して。私は今の御答弁を聞いておりまして思い出したのですが、ちようどセイロンにおりましたときに、セイロンの食糧事情が非常に悪くて、そしてアメリカやイギリスヘドルの借款に行つたところがそれを断られた。そこで中共から、セイロンからゴムを買つてやる、そのかわりに米を輸入してくれということを申されました。そのときにセイロンの閣議が非常にもめて、幾晩も閣議を開いた結果、八対七で結局中共との協定を結ぶということが決定したということがございました。それは昨年の十月ですが、そのときにイデオロギーと経済との問題は別であるという結論に達してこの協定を結んだのですが、外務大臣はイデオロギーと経済とは別であるという観点をお持ちになつておられるかどうか、それに関連してお伺いいたしたいと思います。
  54. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 今安東君からも指摘されましたが、帆足君に対する外務大臣の答弁は非常に重大なことであります。これについて時間もないようだから多くは論じません。ただ一点足並をそろえる、これが私はポイントではないかと思う。そこで外務大臣が言うまでもなく、総力戦であるからできれば中共側の戦力を弱めるという考え方は、一応納得できる。そういう意味においてこれを抑制する、そういう意味において足並をそろえるということはわかるのですが、足並をそろえるということについて、独立国である、しかも最も関連性の強い日本が足並をそろえるためにどういう具体的な努力をなされたか、まずこれを承りたい。
  55. 栗山長次郎

    栗山委員長 ただいまの御質問を総括してお答え願います。
  56. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私の説明が十分でなかつたかもしれませんけれども、両方とも皆さんの議論も、片方に非常に極端な方の例をとつて言われておると思います。つまり、たとえば国連でもつて中共に対する輸出禁止の措置を勧告しておる。これは戦力を増強しないためにという意味であります。そこでそれを議論をして行けば、総力戦であるからあれも入る、これも入るという議論もありましよう。ありましようけれども、それは全部のものが入るならば輸出制限ではないのでありまして、輸出禁止であります。ところが国連の勧告も、制限をする、つまり全部の物資が戦力増強に役立つと必ずしも思つていないわけで、そこにどの程度のものが戦力増強に役立つか、どの程度のものは役立たぬかということは、質の問題もあり、量の問題もある。この程度ならいいが、これ以上になればあぶないというような明確なものはなくても、量においてもある程度の問題が出て来るわけです。そこで私は何も全面的に禁止しろというのではなくて、むしろよその国が戦力増強に役立つようなものを輸出しており、あるいは密輸のようなことが行われておることもあり得ると考えますから、そこで足並をそろえなければならぬ。そしてたとえば日本の犠牲においてのみよその国だけが貿易をやるということも、これも問題であるからして、とにかく列国と平等の立場において制限すべきものはする、輸出貿易すべきものはする、こういうことでありますけれども、これをむやみに緩和することばかり考えていると、日本としては目の前に朝鮮事変があるのですからして、これを早く終結させるための方法としてとられておる措置を、内からこわすようなことは考えなければならぬ、こう考えておるのであります。そこでそれを帆足君なども極端に議論して、総力戦だから何もかも全部輸出を禁止しはければならぬと言われますけれども……(帆足委員「そんなことは絶対に言わない」と呼ぶ)それは元来あなた方と根本的には考え方が違うかもしれぬ。違うかもしれぬから、最後に行けば意見の相違になるかもしれませんが、現にわれわれの方でも相談して、先般も九十何品目というものを制限解除した事実が、私の考えを雄弁に物語つておると思うのであります。  なお安東君の御質問も、今私の申したことで御返事なつておると思いますが、これはすべて大部分は常識の問題でありまして、現に実際政府がやつておることは、禁止の方向に向つておるか、緩和の方向に向つておるか、これをごらんくださればおのずから明らかだろうと思います。  なお戸叶さんにちよつとお答えします。今セイロンの例を引かれましたけれども、私はセイロンの例とかあるいはさつき帆足君が引かれましたアメリカの人の話とか、これはみなその国その国の事情で異なるのであります。その間の事情はよく研究すべきでありますが、よその国の人がこう言つたからすぐそれをまねしろというのもおかしな話です。日本としては日本の立場から考えることが至当だと思つております。  なお池田君のお話でありますが、これはパリにおきまして、こういう問題についての国際的な会議がありまして、これで始終ほとんど常設的にずつと検討を加えております。この検討を加えた結果において制限を緩和すべきものはするということになるのでありまして、日本側でもこれに対しては十分な人を出しておりまして、常に各国と話合いをいたしております。その結果が先般の緩和になつたようなわけであります。
  57. 栗山長次郎

    栗山委員長 御意見はたくさんあると思いますが、議事の進行上、そしてまた外務大臣は向うへ出席しなければなりませんから、次に移らしていただきます。  パキスタンの問題について戸叶里子君にいま一問お許しいたします。
  58. 戸叶里子

    ○戸叶委員 先ほど政府委員の御説明にもありましたように、パキスタン側日本の方との考え方が非常に違つていて、そしてパキスタン側約束したというのにこつちが約束しない、そういう混乱が起きた一つの理由としてあげられることは、パキスタン側には非常にたくさんの日本の商社の人たちがおります。ところがその商社の人たちの間にちつとも統制がとれておりません。お互いに持つて行つた品物を売るために、値段をたたき合つているような形で、かえつてその隙に乗じてイタリアとかドイツとかが、貿易面での効果を上げているような状態があるのですけれども、そういうことに対して、今まで通り自由貿易を許しておかれる方針であるかどうか、そういう問題をどうやつて解決されようとするか、その根本的な考え方を伺いたいと思います。
  59. 北原秀雄

    北原説明員 ただいまの御質問にございましたパキスタンにおける在外商社の駐在員があまりに多いという点はわれわれもよく存じております。またそれに関連しまして、現地でいろいろな誤解を受けないでもないというふうなことも考え得るのでございますが、この点に関しましては、今国会に提出を予定されております輸出取引法の改正による輸出組合の運営及びその活動の範囲の拡張ということで対処できるものと考えております。
  60. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それはある程度何か統制するようなものなのですか。
  61. 北原秀雄

    北原説明員 これは市場別に、必要ある場合には輸出価格を統一して行うということができるのであります。     —————————————
  62. 栗山長次郎

    栗山委員長 次に在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑を許します。
  63. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日本の外交が平常にもどつて来て、それに伴つて在外公館が設けられて行くということは、たいへんいいことなんですけれども、それと同時に考えられなければならないことは、欧米と違つた、たとえばアジア諸国において在外公館をつくる場合に、住宅の問題などが少しも解決されておらないと思うのです。大使とか総領事という人のためには恵まれた家がありましても、一般の館員のためにそういう住宅がつくられておりませんので、権利金が非常に高くてうちが借りられない。その結果役所に行つても思うように働けないというような弊害を私は各地で見て来たのですが、今度この公館を設けるにあたつて、その面までも御親切に考えてあるのかどうかということが第一点。  それからもう一点は、そこへ行く在外公館に勤める人たちの考え方が大事だと思うのです。インドで驚きましたことは、ある在外公館へ参りましたときに、自分のところで使つているインド人に対しては、ミスターをつけてはいけないというようなことを言つてインド人を使つている。それに対して非常な不満の声が高いということを聞きました。そういうような在外公館は、たいてい日本人の間にも評判が非常に悪いですし、それからまた現地の人たちの間にも非常に評判が悪いのです。そういうことを考えてみましたときに、その各地へ行つて勤めてもらう人に対する根本的な考え方というものをよほど統一せられまして、過去のような帝国主義的外交を行おうとすると、日本が誤解される結果になると思いますので、その点と、在外公館へ派遣なさる人たちを、外務省が選択する場合の基準を、どういうところに置かれているかということと、二点伺いたいと思います。
  64. 大江晃

    ○大江政府委員 最初の御質問の東南アジアの地域に関する在外公館の人たちの住宅問題、あるいは事務所の問題につきましては、われわれといたしましても、現状がはなはだ不満足であるという点は十分考えておるのでございます。何分開設一年にもなりませんので、漸次改善をいたしたいと思つておりますが、国家財政の観点その他から、一度になかなか参らない次第でございまして、来年度におきましては、まず第一に一番条件の悪いと思われますインドのニユーデリーに公館と事務所をつくることになりまして、来年度の予算において認められました次第でございます。これはもう準備をいたしておりまして、年度がかわりましたら、さつそく着手いたしたい。それから次に条件の悪いインドネシアにつきましても、予算の関係でただちに公館あるいは事務所の建設をいたすというわけには参りませんが、他に便法を考えまして、一時金を借りて公館をつくるという準備をいたしておりまして、これもほぼめどがついておる次第でございまして、おそらくことしのうちには大体実現できると考えております。一般の館員の宿舎につきましても、他の地域、あるいは他国の外交官のそれと比べまして、はなはだおそまつでございますので、これもできる限りの施設、たとえば冷房の施設とか、そういう点につきましては、本年度からできるものをどんどん実施して、実際の執務の能率が上るようにやつて行きたい、こう考えております。  それから第二点の御質問の、東南アジアに参つております在外公館の職員の現地の人々に対する心構え、あるいは執務一般に対する心構えがあまりおもしろくない。従つてこういう方面に対してどういう基準をもつてつておるかというお話でありますが、これに対しましては、もちろん外務省といたしましては、東南アジアの今後の国交あるいは経済関係を重視いたしまして、できるだけ有能な人物を送るという方針でやつておりますし、また現地におきましても、現地人との交際あるいは接触等において、十分に気をつけるという意味におきまして、派遣いたします人選も心がけておるわけでございまして、特にどうという基準はないわけでございますが、人選におきましては慎重を期してやつておる次第でございます。
  65. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ただいまの二番目の方の質問に対するお答えは、そのまま私は受取れないことがたくさんあるわけなんです。現地の方からのいろいろ「なことを聞きましても、非常に官僚的で、勤めていらつしやる方々の間にちつとも統一がとれておらない、親切でないというような声や、あるいはまたインドなりあるいはほかの国の人たちを、後進国という態度をもつてつているような傾向が、非常に見えるということを聞きましたので、そういう点について十分お気をつけ願いたいと思います。
  66. 帆足計

    ○帆足委員 在外公館が逐次海外に設定されまして、貿易国、海の国としての日本の国交調整に役に立つということは、まことに御同慶の至りでございます。この在外公館の一覧表を見るにつけまして、日本がいかに世界の国であり、海の国であり、貿易の国であるかということを、ひとしお痛感する次第でございます。ところでせつかくこういうふうにできて参りましても、問題は二つございまして、一つは交戦国または無条約国と称するものがまだたくさんございます。たとえばコロンビア、チエコスロヴアキア、エクアドル、ギリシヤ、グアテマラ、ハイテイ、ホンデユラス、イラン、イラク、レバノン、ルクセンブルグ、パナマ、フイリピン共和国、サツデイ、アラビア、ソビエト社会主義共和国連邦、インドネシア、中華人民共和国、これらの国々は法律上戦争状態にある国、すなわち交戦国という不幸な状況にございますし、またその他無条約国といたしましては、韓国、リビア、ヨルダン等が残つていることは御承知の通りでございます。従いまして、第一にお尋ねしたいことは、これらの公館のまだ置けないところ、すなわち交戦状況また無条約状況なつている国、たとえばギリシヤ、グアテマラ、イラン、イラク、そういうような国々に対して、どういうふうに国交を回復して行く準備をなさつているか、まず第一にはそれをお尋ねいたしたい。
  67. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 現在わが国の国交回復状況につきまして、まず御説明申し上げますと、二月二十日現在でありますが、国交関係にある国が四十七箇国ございます。この中でサンフランシスコ平和条約批准書寄託国が三十二ございます。それから個別的な平和条約を締結した国が二つございます。交換公文によつて外交関係を再開し、または新しく外交関係を開いた国は十一ございます。それから従来中立関係にあつたのでありますが、独立後も引続き公使を交換している国が二つございます。これらが、大体現在国交関係にある国四十七箇国の内訳でございます。  次にただいま御質問なつた点でありますが、国交未回復または従来とも国交のなかつた国が三十六箇国あるのでございまして、そのうちでも、国交が未回復でありましても領事を交換している国が二つあります。それから先方から領事を当方に派遣している国が三つ、それから本邦から領事を派遣している国が一つ、本邦の方から在外事務所を設置している国が一つ、それから先方が代表部を設置している国が二つ、以上九箇国は国交回復に準ずる国と申してもよろしいかと思うのであります。そのほかに中立国が六つ、戦争状態にある国が十一、新政府——新たにできました国が二つ、そのほか八つ、こういうような状態でありまして、現在国交を回復しております四十七箇国、また準国交を回復しておるところの国以外の中立国あるいは戦争状態にある国、新政府、その他、これらの国々とは今後どういうふうにして行くか、こういうお尋ねのようであります。戦争状態にある国と申しましても、平和条約締結しないためにいまだ戦争状態にある国のうちでも、ソ連あるいは中共等のごとく、日本と相いれない立場にある国、これにつきましては早急に国交を回復する気持を持つておらないわけでありますが、そういう国でなくて、たまたまいまだ何かの理由によりまして、平和条約も締給されないというような国につきましては、今後極力国交の回復に努める所存でございます。
  68. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの国交未回復の国につきまして、三十六箇国というお話がありましたが、国交未回復の中の範疇は何と何にわかれるわけですか、もう一度ちよつと……。
  69. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 国交未回復あるいは国交がなかつた三十六箇国の内訳ですが、領事を交換している国、それから先方から当方に領事を派遣している国、それから当方から先方に領事を派遣している国、それから当方から先方に在外事務所を設置している国、それから先方から当方に代表部を設置している、それらが国交回復に準ずる国と見てよろしいと思います。そのほかに中立国、または戦争状態にある国、新教府その他、こういうように便宜わけてよろしいと思います。
  70. 帆足計

    ○帆足委員 先ほどのお答えの中でソ連、中国に対しては国交を回復する意思がないということを言われましたが、これまた先ほどの岡崎外務大臣の発言と同じように私は重大なことだと思います。この二つの国に対しまして国交の調整がきわめて困難であるということならば、われわれも了解するのでありますが、しかし国交を調整し、回復する意思がないということは驚くべきことであつて、現に次官あたりがもう金科玉条とされておる国際連合にソ連は加入しており、そうしてあなた方が金科玉条とされておるアメリカは、ソ連を承認し、モスクワに大使館を置いて国交調整に努めておる。そうしてまた大英帝国は南朝鮮で戦いながらも、一面中国をすら承認して、北京には代理の非公式の形でありますけれども、厖大なる在外公館が存在しておる。そうしてそれが好ましくあるにせよ好ましくないにせよ、事実としてそういう大きな力を持つておる国があるのに対しては調査を怠らず、自分の国を安泰ならしめるために合理的な立場から国交調整に努めておる。しかるに日本だけがただひとり世界でつんぼさじきに置かれておつて、もう私どもがああいう単純な旅行をして参りましても——今は世界はたつた三日でまわることができて、明治御一新のころの佐渡島の大きさになつているのに、わずかソ連、中共をちよつとばかり散歩して参ると、もう大歓迎をされて、未知の国から帰つたガリヴアーのような取扱いを受けておる。こういうばかなことが起つたということは、そもそも外務省当局が幕末のちよんまげ同様のお考えに支配されておるからで、私はまことに遺憾なことだと思うのでございます。ソ連、中国に対して国交の調整は非常に困難であるが、合理的な方法があれば調整に努力するというお答えならば、保守政党として一つの筋道は通るのでありますが、ソ連、中国に対しては、もう考えるすらいとわしい、考えないということは自由でありますけれども、存在するものは認めないで政策を立てることはできないと思います。その存在が好ましいものであるにしろそうでないにしろ、存在するものは存在するものとしてその法則を見、力を見、諸関係を観察して、日本のために国交調整を行うことが必要なことであつて、現にアメリカもやり英国もやつているのに、日本だけがそれを考えようともしないというのは、驚くべき御答弁だと思うのでございます。従いましていずれわれわれは、そういうようなやり方は是正していただかなければならないし、また是正せしめるでありましようけれども、もう一度外務次官からひとつお答えを願いたいと思います。
  71. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 この問題につきましては、帆足委員と私との間に再々議論を闘わせた問題でありますが、重ねて申上げますれば、私どもといたしましても、永久にソ連あるいは中共と国交を回復しないと申しておるわけではないのであります。現在の段階におきましてソ連はわが国を仮想敵国扱いにしている。これは事実でありまして中ソ同盟によつて明瞭であります。こういう国々と今の段階におきまして国交を回復することはできない。但し将来におきまして、ソ連側が翻意し誠意を示して、平和条約の線に沿うてわが国との国交調整を望むならば、わが国としても必ずしもこれに応じないとは申しておらないのであります。
  72. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまのお答えはまことに不満でありまして、それでは一体何のために外交があるのかわからないことになりますが、重ねてお尋ねしたいのであります。  最近ソビエトの日本に駐在しております公館と申しますか、その人たちの一部に強制帰国を命じたといわれております。私はあと在留している人たちに滞留してもらつておれば、日本のためにもまた何かの話合いの機会をとらえられることにもなると思う。十名か二、三十名の人がおられたところで別に狸穴の空気が減るわけでもないし、島国としてももう少し気宇を調達にしてほしい。多少異国の人がおられることは——かりにわれわれがキリスト教徒であるとすると、回教徒の人がおられることは、また回教徒の人と話し得るよすがともなるというくらいの大きな気持でおつてしかるべきである。新聞記者なども向うには世界各国の人がおりますが、日本からも派遣し、かの地からも派遣するというくらいのことは、世界のすべての国が行つていることであるのに、日本と李承晩の国だけがつんぼさじきに置かれている。これについてどういうふうなお考でありましようか。ソ連または中国との交渉の手がかりというものは、全部なくしてしまうことを一体御希望なさつておりましようか、それとも今国交調整は困難であるけれども、将来開き得る道もあればその道に向つて努力されるというのか。アメリカはちやんとそういうことを努力しております。現に休戦協定のために非常な努力をしている。国際連合においてはソ連と毎日論議を闘わせている。しかるに日本はただ問答無用であつて、そうしてカーテンの……。
  73. 栗山長次郎

    栗山委員長 御論旨は同じようでありますから、簡潔に願います。
  74. 帆足計

    ○帆足委員 少し内容を説明しておかないと、外務省の人は……。
  75. 栗山長次郎

    栗山委員長 数回拝聴しておりますから……。
  76. 帆足計

    ○帆足委員 委員長は頭脳明晰ですけれども、外務省の人は私どもを満足させない。われわれは国民を代表して話をしておるので、政府の答弁の聞き出し係というわけではない。先ほど委員長が非常に適切なことを言われたと私は思うのですが、議員の抱負経綸、また国民にかわつて言うべきことを十分に言うのが、いわゆる質問であるという御注意をいただいて、私は非常に感激しておるのです。従いましてそれに値するぐらいの御答弁をひとついただきたいと思います。
  77. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 ソ連の駐日代表部員に強制退去を命じたということでありますが、そういう事実はありません。ソ連の在日代表部なるものは、平和条約の発効とともに対日理事会が解消した結果、その存在の法的根拠を消滅したのであります。従いましてわが方といたしましては、ソ連の在日代表部なるものを認めておりませんが、これを無理やりに退去させようという考えを持つておるわけではないのであります。ただ最近帰国したものもございますが、これは多分在留資格の問題で、旧代表部の部員でなかつた者が帰つたかと思いますが、これは別の問題と考えております。
  78. 帆足計

    ○帆足委員 今の連中は黙認しておくという意味ですか。
  79. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 黙誠と言えば黙認ということになります。
  80. 栗山長次郎

    栗山委員長 本案については次会に討論、採決を行うことといたします。     —————————————
  81. 栗山長次郎

    栗山委員長 次に職業安定組織の構成に関する条約批准について承認を求めるの件、工業及び商業における労働監督に関する条約批准について承認を求めるの件、団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約批准について承認を求めるの件、以上三件を一括議題といたします。  これより質疑を許します。
  82. 安東義良

    安東委員 条約局長にお尋ねしたいのですが、終戦後今日までILOでつくつた条約名を御説明していただきたい。
  83. 下田武三

    ○下田政府委員 ILOの現在までに採択しました条約が百三ございます。勧告が九十五ございます。実は終戦後の数をただいま持つておりませんが、次の機会に御答弁いたしたいと思います。
  84. 戸叶里子

    ○戸叶委員 その条約で、日本側がまだ批准していない、サボタージユしているものがありはしないかどうか、お伺いいたします。
  85. 下田武三

    ○下田政府委員 日本は戦前におきまして労働条約としては十四種の条約批准しております。それから日本がILOに再加盟を許されましてからの条約は、これは日本の再加盟後最初に出ました条約につきましては、憲章によりまして一年半の期間——おそくとも一年半までに採否を決定するということになつております。しかしながらま落その期間は参つておらないのであります。今回御審議を願います三条約は、日本が再加盟を許される前にILOで成立しました条約であります。
  86. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、一年半の期間のうちにすればいいということで、一年半以上たつたものがないというわけなんですね。  もう一つ伺いたいのですが、日本の労働法ではたしか満十八才以上でなければ、坑内作業が許されないと思うのですが、ILOでは技能養成という意味だけで、十六才以上ならば坑内作業が許されるということになつていると思います。その辺も日本の労働法を改正しなければ、矛盾するのではないかと思いますけれども、その点どうなつているでしようか。
  87. 龜井光

    龜井政府委員 従来坑内労働につきまして、国際条約では十五才未満の者の禁止があつたのであります。労働基準法におきましては、その線を越えまして従来十八才未満の者を禁止しておる。ところが十六才以上十八才未満の年少者につきましても、技能者養成のためであれば、これを坑内において使用することを年齢制限を緩して、十六才にするという条約案が去年の総会で採決されました。従いまして、労働基準法の関係におきましては、昨年の九月一日から施行されております改正の労働基準法におきまして、従来の十八才未満の者の入坑禁止につきまして、国際条約と合せまして、技能者養成のためであるならば、十六才以上十八才未満の年少者でも、これを入坑することを認めるというふうに、改正になつておるのであります。
  88. 下田武三

    ○下田政府委員 先ほどの安東委員の御質問にお答えいたします。御承知のように、日本は一九三三年に国際連盟を脱退いたしましたあとのILOの関係はしばらく継続しておりましたが、一九三八年昭和十三年にILOを脱退いたしまして、その脱退後日本が留守であつた間にできました条約が三十三ございます。それから日本が再加盟いたしましてから後に採択されましたものが三つございます。勧告につきましては、日本が留守中に採択されました勧告が二十六ございます。日本が再加盟後採択されました勧告が三つございます。
  89. 安東義良

    安東委員 今でなくてもいいのですが、その名称をひとつ伺いたいと思います。
  90. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は次会にもう少し長い時間をいただいて質問してみたいと思います。今日はちよつと簡単にお尋ねしたいと思います。  この条約における労働者というものの中に、どういう人々が入るかという問題に関してであります。第五条に「この条約に規定する保障と軍隊及び警察に適用する範囲は、国内の法令で定める。」こういうようになつておりまして、軍隊及び警察に適用する範囲について、国内法令の規定がものを言うことになつておりますが、保安隊はどのようになるのでございましうか、ちよつとその点を伺いたいと思います。
  91. 大島靖

    ○大島政府委員 この条約の第五条におきまして、「この条約に規定する保障を軍隊及び警察に適用する範囲は、国内の法令で定める。」軍隊はもちろんございませんので、警察に関しましては公務員法等で規定してあります。なお第六条におきまして、この条約は、公務員の地位を取扱うものではなく、またその権利身分について影響を与えるものではない、こういうことになつております。従つて保安隊はこの条約関係には入らないわけであります。
  92. 黒田寿男

    ○黒田委員 それは「保安隊は公務員であるからという理由ですね。
  93. 大島靖

    ○大島政府委員 さようでございます。
  94. 黒田寿男

    ○黒田委員 その点はわかりました。  それからこれは少し抽象的になりますので、次会に具体的にお話申し上げなければはつきりしないと思いますけれども、政府の御説明によりますと、本条約に規定する条件は、わが国の国内法においてすでに十分満たされておるから、本条約批准にあたつて新たな国内立法措置を必要としないこういうようになつておりますが、「体基準をどこに置くかということが私どもにわかりません。日本の現在の労働立法が、はたしてこの条約の規定しておりますような条件を完全に満たしておるかどうか、また満たすような状態において実効的に適用されておるかということになつて参りますと、政府のおつしやいますように、そう簡単に新たな国内立法措置を必要としないというように結論づけることができるかどうか、この点になつて来ると、私どもには疑問がある。日本の国内立法がこれを満たしていないということになれば、新たな立法措置を講ずる義務を生ずることになる。それではどういう点がまだ不備かということは、次会にもう少し具体的に時間をかけて申し上げてみたいと思います。この条約によつて義務を負担することになる、国内法としての拘束力を発するというように解釈しなければならないと思います。原則的にはそうなると思うのです。これを念のためにお聞きしたい。
  95. 下田武三

    ○下田政府委員 労働条約に限らず、一般に条約批准し、または条約に加入する場合に、その条約の中で国内立法措置を必要とする規定がございます場合には、当然日本が加入または批准によつてその義務を引受けるわけでございます。しかしながら、今回の三条約におきましては、いずれも相当の加入国の立法義務を定めておりますが、その一々の事項につきまして、労働省におかれまして現行国内法体制と厳密な比較検討をなさいました結果、わが現行労働法制は、十分にこれらの三条約要求するところを満たしておるという結論に到達されまして、従いまして、この三条約批准に伴いまして、新たに国内立法措置をする必要はないという結論に到達いたしておるのでございます。
  96. 黒田寿男

    ○黒田委員 それは法律を新たにつくる必要はないという意味でもちろん募りましようが、法律を改正する必要もないというようにもお考えになつておるのですか。
  97. 下田武三

    ○下田政府委員 御承知のように、占領中総司令部の労働関係当局の非常な理想主義的な幾多の指針がございまして、占領中にが労働法制は長足の進歩と申しますか、改革を遂げておりますので、今日世界におきまして、日本は相かわらず労働者を虐待して低賃金の工業をやつておるというような誤解がございますが、実際はあにはからんや非常に進歩しておるのであります。従いまして、今回の条約批准によりまして新立法はおろか、改正する必要もないという結論に達しております。
  98. 黒田寿男

    ○黒田委員 たとえば解雇の問題を取上げてみますと、組合活動に非常に熱心であるというような理由で解雇せられるというようなことが事実上行われております。そういう問題について、労働法の保護が十分でない。それからたとえば第四条の団体交渉の点で「自主的交渉のための手続の充分な発達及び利用を奨励し、」というように書いてありますが、たとえば、昨年末行われましたような労働争議を見ましても、労働組合側が自主的に団体交渉をやろうと思つても、使用者側が受付けない、こういうことに対して法的な処置が何も定められておりません。拒絶せられれば拒絶せられたままでいたずらに日時が経過して、争議が長引くというようなことになつております。そういうように考えて参りますと、はたしてわが国の現行立法が、私どもの目から見て、ことに労働者の目から見て、完全に団結権及び団体交渉権を保障されておるかどうかという点につきましては、いろいろ問題があると思います。これはなお次会にいろいろ具体的にお話申上げてみたいと思いますが、改正も必要としないというようにまで、日本の労働立法が完全なものだというようにおつしやると、ちよつと私は問題があると思います。そこまでのことは言えないのじやないかと思います。いろいろ不備な点がある意いますが、もう一度お聞きしておきます。
  99. 大島靖

    ○大島政府委員 お答え申し上げます。ただいまの、労働者が正当なる組合活動をいたしましたことによりまして、不利益な取扱いを受けることに対する保護につきましては、第一条に規定されておるわけであります。この関係の国内法といたしましては、御承知の通り、労働組合法におきまして、不当労働行為の規定といたしまして、第七条第一号において詳細規定されておるのであります。もしそういう事態が起りますれば、労働委員会におきましてこの不利益な取扱いが排除される、こういう仕組みになつております。なお自主的な団体交渉の手続等の促進につきましても、労働組合法第六条とか第七条におきまして規定いたしておるのであります。もともと労使間の団体交渉というものが本来自主的に行われますためには、やはり相当の年月なり慣行の確立をまつことが必要だろうと思うのであります。そういう点で、まだ十分健全な自主的な団体交渉が全般的に行われますにつきましては、なお努力を重ねて行かなければならない。これは労使双方におきましても、また政府におきましても、その努力を続けて行かねばならないと思うわけなのでありますが、大体今お尋ねの諸点につきましては、私どもは労働組合法におきまして十分なる法的な措置も講ぜられ、なおこれに関しまして労使双方、あるいは政府関係におきましても十分な努力を続けて参つておる、かように考えておるわけであります。  なお改正の点につきましては、この条約批准をお願いしておる政府といたしましては、この条約に反しますような改正は、決していたすつもりはない、かように考えておるのであります。
  100. 栗山長次郎

    栗山委員長 黒田君、時間がありませんから次会にお願いします。  ただいまの三条約に関する残余の質問は次会に譲り、また議事の進行のぐあいによつて、次会には討論採決も行うことといたします。     —————————————
  101. 栗山長次郎

    栗山委員長 お諮りをいたします。本委員会におきまして移民問題に関する調査のため、帰国した移民を招致して現地状況等を聴取することに決定いたしておりますが、ただいまその人選も大体終りましたので、来る三月十一日水曜日の本委員会にそれらの人々を招致いたしたいと存じます。以下にその人名を申し上げます。高橋新一野君、中川権三郎君、井戸宋四郎君、山本喜誉司君、大平清貫君、以上五名の方を参考人として招致いたしたいと存じますが、御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  102. 栗山長次郎

    栗山委員長 御異議がありませんければ、さように決定、とりはからいをいたします。     —————————————
  103. 栗山長次郎

    栗山委員長 いま一つつけ加えたいことがございます。安東君より御質問を願います。
  104. 安東義良

    安東委員 先日、小樽の海上保安庁というか何というか、その方で根室地区において四百七十機の国籍不明、おそらくはソ連機であろうというものを認めたということがはたして事実であるかどうか、その調査を頼んだのですが、それについてお話を願いたいと思います。
  105. 松野清秀

    ○松野説明員 ただいま御質問の点に関しましては、小樽の第一管区海上保安本部に照会したのに対しまして、同本部から回答が参りましたところによりますと、先月の下旬に同本部の一職員が公務で上京いたしました折、たまたま新聞記者に面接いたしまして、根室方面で昭和二十六、七年の二箇年間に、飛行機またはその爆音らしいものを認めたのは四百数十機という情報である、但しこれらはいずれも機体をも認識できないほど高度なものであるために、国籍はもちろん、たとえば領空の外か内かというようなことも判別することは不可能である、こういうことを語つたということでありまして、ただいまお話のありましたソ連機らしいというようなことは申していない、こういうことでありますのでその点御了承を願いたいと思います。  なおこの四百数十機という数字につきましても、これは信頼性が薄いものと考えますので、そういう数字をあげたことにつきましてもどうかと考えます。この点はまことに申訳ないと存じます。
  106. 栗山長次郎

    栗山委員長 それではこれで散会いたします。     午後零時二十三分散会