○高岡
委員 私がインドに対して
賠償云々と言つたとかで、お前は思想的に混乱しておるとおつしやるのでありますが、私は話の途中から全体のことを言つたものだから、そういうふうにお考えにな
つたのでしよう。これはそれとしまして、インドのこの問題について、私が言おうとすることは、たとえて言いますならば、ベンガル州において最も力のあります財界人G・K・ビルラー氏であるとか、タタ製鉄所の首脳部、こういつたような人たちは国民
会議派とは今までいろいろと、いわゆるパトロンとでもいいましようか、政治的に
相当金を出した人でありまして、ネール氏とか、あるいは今日大統領にな
つておりますプラサド氏から話をすれば、話がよく通ずる人たちなのです。ではどつちを先に話をしたらいいかといえば、これはネールさんの方から話をして行く、ないしはプラサド大統領から話をして行くということが、私はインドに関する限りは、どうも本筋のような気がするのであります。それは大体
外務大臣も総領事
時代からインドを御存じなのですからおわかりだろうと思います。
その次にお聞きしたいことは、今
大臣の御答弁の中に、インドで
日本の農業技術者とでもいいましようか、そういつたようなものがいるような
お話が出たのでありますが、私も最近インドから、
日本から五千人ほど農民がほしいというようなことを言
つておるということを聞いたのであります。なぜそんな大勢の
日本人がほしいのかといいますと、インド人というものは、農業技術について講師を一人連れて行
つて講義をしたところでなかなかうまく行かない。だから
日本人をインドの広い所にぽつぽつと住まわせて、一年中いわゆる元日からとでも申しましようか、田に耕して、種をまいて、肥しをくれて、草取りをする、これを一年中やらしておけば、そのわきに住んでいるインドの農民がそれを見て覚える。いわゆる技術者の講習を聞いては、なかなかうまく行かないから、実際農業をやるところを見てひとつ
日本の農業を学ぼうという
考え方だと私は考えるのでございます。こう申しますと、さつきも
移民の問題で二千人、三千人という
移民がたいへんな
仕事のような
お話であ
つたのでありますし、また事実大きな問題でもりましようが、インドから今度五千人といいますと、これは
相当大きな問題であります。もちろん一ぺんに五千人が行けるわけではないでしようが。去年の十月の末ごろだと思うのでありますが、インドからフオード財団の金で
アメリカを一応見て来た帰りに
日本へ寄つた。インドの農業食糧省次官というのが団長で、そうして昔スバス・チヤンドラ・ボースさんの輩下とでも申しましようか、同志の一人であるロイ君が副団長で、一行三十人ぐらいの人が来ました。私のちようど郷里の新潟県に視察に来たものでありますから、私が案内といいましようか、県庁の人たちと一緒に案内をして、私は昔学校で習つたインド語を少し使つたものですから、非常に親しみを持
つて話をしたのであります。この人だちは
アメリカをずつと視察して来たけれども、われわれは何ら得るところがなかつた。ということは
アメリカにおける農業の改良ということは、いかに楽をして農業をしようかというぜいたくなのだ。ぜいたくから来た農業改良だ。しかし
日本の農業の改革というものは、生きて行くために、こんな小さい所でこれだけの大勢の人間が、一体どうやつたら食
つて行けるかという真剣な
気持で、土地改良からいろいろなものをや
つておるから、われわれは
日本の農業視察に来て得るところがあつた。われわれインドにおいてもぜいたくに土地改良をしようと言うのではなく、ほんとうに食えないので困るから、何とかして食糧増産をしなくてはいけないのだという真剣な
気持でわれわれは来たのだけれども、さつきも申し上げましたように、
アメリカではまつたくぜいたくを見て来たようなものであ
つて、
日本へ来て初めてわれわれは思うようなことを、われわれが学ぼうとすることを学び得たと言
つて喜んで帰つた。そしていろいろの話をされたのでありますけれども、さて案内をしました人たちは、インドのことがちつともおわかりにならない。だから農具を見せてくれとい
つて、ずつと農事試験場で農具を並べるけれども、向うはまたその農具を初めて見たので、この農具が一体どう使われるのかも知らないし、説明する方はインドにはたしてどういう農具が適当であるか、インドの農業というものは一体どういうものであるかということを知らないものだから、両方とも探り合いというか、はつきりした話合いができないというようなことで、ある
意味においてはどうも不得要領で、インドの諸君は帰られただろうと思うのであります。こうした実際の問題にな
つて来ますと、ただ農民をこちらから送りさえすればいいとか、ないしはどうこうというようなことをしたところで、これはなかなか容易なことではありません。と同時に今ネール氏が一番考えておりますことは、製鉄事業といつたことよりも、インドにおけるいわゆる灌漑工事の問題といいましようか、農業なのであります。農業問題を一番ネール氏は強く取上げているのでありまして、この問題を
外務省としては十分
検討しなければいけないと思うのです。
外務省としてはインドにいられます西山大使をして、これらの問題について十分御
研究あ
つてしかるべきだと考えるのであります。また
外務省は農業のことについては、これこそまつたくしろうとばかりでいらつしやいましようから、そういつたような場合には、
外務省としては一体どういう手をお打ちになるか、どうなさるのか、これは非常に心配でありますので、お聞きしたいと思うのであります。それは農林省に全部まかせるとおつしやるのか、どういうふうになさるのか、われわれは一人で何人役もできるのだが、
外務省としてはどうも一人で何人役もできないだろうと思います。どういう人とどういうところで話をして、どうやるというような具体的なことは、今御返事が願われないと思うのでありますけれども、大体の
外務大臣の構想を承りたいと思うのであります。いかにしてインドの農業に
日本が協力するかという問題について、
外務大臣の御構想を承りたいと思います。