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1952-12-24 第15回国会 衆議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月二十四日(水曜日)     午後一時三十五分開議  出席委員    委員長 栗山長次郎君    理事 池田正之輔君 理事 谷川  昇君    理事 松本 瀧藏君 理事 加藤 勘十君    理事 田中 稔男君       今村 忠助君    植原悦二郎君       木村 武雄君    近藤 鶴代君       中山 マサ君    森下 國雄君       安東 義良君    楠山義太郎君       高岡 大輔君    並木 芳雄君       中村 高一君    福田 昌子君       黒田 寿男君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     齋藤  昇君         検     事         (刑事局長)  岡原 昌男君         外務政務次官  中村 幸八君         外務事務官         (経済局長)  黄田多喜夫君         外務事務官         (国際協力局         長)      伊関佑二郎君         文部事務官         (調査局長)  久保田藤麿君  委員外出席者         通商産業事務官         (通商局次長) 松尾泰一郎君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 十二月二十二日  委員近藤鶴代辞任につき、その補欠として小  澤佐車喜君が議長指名委員に選任された。 同日  委員小澤佐重喜辞任につき、その補欠として  近藤鶴代君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員大橋武夫辞任につき、その補欠として三  木武吉君が議長指名委員に選任された。 同月二十四日  委員三木武吉辞任につき、その補欠として大  橋武夫君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  国際情勢等に関する件  日米行政協定実施状況に関する件     —————————————
  2. 栗山長次郎

    栗山委員長 ただいまから外務委員会を開きます。  本日は国際情勢等に関する件並びに日米行政協定実施状況に関する件について質疑を行うことといたします。両件に関する質疑を許します。並木芳雄君。
  3. 並木芳雄

    並木委員 伊関局長駐留軍労務者の地位について確かめておきたいと思うのです。なかなか複雑で私どもによくわからないのですけれども、この前の前の国会以来今日まで、日本人駐留軍要員に対する取扱いについて、はつきりした点が出て来たのですかどうか。たとえば直接雇用にするとか、あるいは間接雇用か、あるいは一部直接雇用であつて一部は間接雇用なのか、そういうような点がはつきりしていない一つです。それから第二の点では、駐留軍要員に例の労働三法を適用するというふうに聞いておつたのですけれども、これは実際にはどういうふうになつておりますか。それからもう一つ給与の点はどうなつておりますか。たとえばこの前退職手当として現金でなくお墨付が与えられたはずでございます。これなどは至急現金化してくれないかという声が非常に多いのですけれども、この支給の状況などについて御説明願いたいと思います。
  4. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 お答えいたします。労務者につきましては、米国国連軍と二つにわかれます。米軍の場合は間接雇用になつております。但し米軍の場合でも、ごく一部の家族住宅等に働いておるメード、こういうものは直接でございますが、これは数にして非常にわずかでありまして、大部分は間接雇用であります。それから国連軍の場合は、現状は直接雇用であります。これを間接にしてほしいという要望はございます。ただこれは、国連軍協定がまだできておりませんので最終的にはきまつておりません。  それから労働三法は、別に協定するものを除きこれを適用するというふうに行政協定の第十二条でなつております。ただ、現実のこれが適用状況等につきましては、これはむしろ、労働省とか特別調達庁の方が主管でありましてよく知つておると思います。私はちよつと詳しいことを存じません。  それから給与につきしてはこれは従来とも国家公務員と同じものをもらつて来たわけであります。ただ、国家公務員よりもベースにおいて十何パーセントよくなつているそうでありますが、その、国家公務員よりも少しいいベースで、国家公務員と同様にべース・アツプ等が行われる、あるいは年末手当等も与えられる。英濠軍に働いております者がストライキをやつておりましたが、たしか本日でしたか昨日でしたか解決いたしました。それは公務員同様の二〇%のべース・アツプ、それから一箇月のボーナス。米軍につきましては、目下交渉中でありまして、米軍労務者の約十九万、そのうちの六万くらいを代表いたしますところの組合——ちよつと名前は忘れましたが、その組合は、中労委の裁定にかかる二三%のベース・アツプを要求しておりますが、米軍の方はあくまで国家公務員並と、こう申しておりまして、はつきりきまつておりません。  それから退職金につきましは、これは調達庁の問題でございます。給与日本側でまず払いまして、それから米軍がそれを払いもどすという形になつておりますが、その運用の資金に一部使つておるのではないかと思いますが、これは調達庁の問題であります。
  5. 栗山長次郎

    栗山委員長 審議の都合上法務大臣に対する質問をまとめたいと思います。御協力を願います。法務大臣質問を申し込んでおられます予定者は、並木芳雄君と田中稔男君であります。並木君、どうぞ法務大臣への質問を願います。
  6. 並木芳雄

    並木委員 法務大臣お尋ねをしたいと思います。それは、先般来鹿地亘氏の問題が取上げられております。それに対してできるだけの報告をこの外務委員会においてもしていただきたいと思います。今日までの経過でございます。それとともに私ちよつと疑問に思いましたのは、独立してから後の不法監禁のことが主として取上げられておるようでございますが、鹿地氏がつかまつたと申しますか、あの事件が起つたのは十一月だと報ぜられております。そういたしますと、十一月のころは、もうすでにアメリカの方で裁判をせず、日本人犯罪容疑者日本の方に引渡して、日本裁判管轄権に服しておつたように私は了解しております。従つてアメリカのやることですから、すぐそういう場合に日本の方に引渡すべさものであつたと思います。しかるに渡さずにそのまま向うにとめ置かれたということは、私は何か特別の理由があるのでないか、たとえばアメリカ軍に対して何らかのサービスをするために向うでこれを利用した、もつと平易な言葉で言うと、何らかの形で一種雇用関係にあつたのではないか、鹿地氏があれほど言うような大げさなものではなく、実は占領中における一つサービス提供として向うではこれを雇つておいたのではないか、これは直接の表示であろうと間接表示であろうと、意識的であろうと無意識的であろうと、そういうものではないかというふうな単なる感じが私はいたすのです。従つてこの際まず占領中における十一月の問題、それと、今日までの経過というものを御説明願いたい。
  7. 犬養健

    犬養国務大臣 まず最初に具体的な問題についてお答えいたしたいと思います。講和発効後は御承知のように、いかなる理由があつて外国側でとめ置いておる日本人があれば、当然こちらに通告し、また引渡さなければならぬわけです。また占領目的違反で刑の執行をしておる者でも、こちらに引続ぎ、こちらではあらためて再起訴という手続をとらなければなりません。いずれにしても講和発効日本人をとめ置いて黙つていたということは、原則として不法行為である、こういうふうに考えておるわけであります。ただ御承知のように、あちらでは日本人が危険を感じてとめ置いてくれという事情にあつたというふうに言つておるように聞いております。それにしても、本人がそういう希望でこちらにいるということを通告しないということは原則として不法である、こういうように感じております。清和発効後にいかなる理由があつても、外国側において日本人をとめ置いておるということに対して、こちらに通告がないことは不法である、こう考えております。並木さんの御指摘の昨年十一月は、これにまだ講和発効以前でございますから、アメリカの方でとめ置くことはできると私は考えております。しかるにこれが行われなかつたことは、日本にも何か通知しないでいるということの原因をあなたもごそんたくになりまして、一種雇用関係にあつたのではないか、こういう御質問でありますが、これは鹿地氏当人はそういう関係にないと言つております。ただ御承知のように、これはだんだん一般状況報告に踏み入つて行くわけでございますが、三橋正雄というものが鹿地氏の事件の直後身辺の危険を感じて自首して来た、なぜ身辺の危険を感じたかということを問いただしておりますうちに、こちらの警察といたしましては、鹿地亘氏が米国側に出した告白書というものを参考として読む必要が生じたわけであります。そこで何か事情があつたのではないか、こういう一つの臆測が当然生れて来ておるわけでありますが、今のところ雇用関係にあつたということを断言するのは、人権擁護立場からも早計ではないか、私どもの方で今まで調査いたしましたところによると、鹿地氏その他の話だけを取上げますと、一応不法監禁疑いもあるわけであります。これに対して不法監禁でないならば、どういう事情でどういう理由に基いているかということを、外務省を通じて問い合しているわけでございます。従つて雇用関係にあつたということをお答え申すことは早計であり、ある意味で一人の個人人権にさわるものだと、こう考えております。
  8. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、占領中では理由のいかんを問わず、向うでとめ置くということはできるというように御解釈されていますか。たしか犯人といえども、昨年の十一月ごろは、もう原則として日本裁判に服するのだというとりきめになつたと思うのでございますがいかがですか。
  9. 犬養健

    犬養国務大臣 私はそう考えておりませんが、これは後ほど政府委員専門家が来ますから、問いただしまして、あらためてお答えいたします。
  10. 並木芳雄

    並木委員 もしそうなつていたとすれば、日本側にすぐ引渡さなかつたということは、それだけでやはり不法拘留のおそれが出て参ると見てよろしゆうございますか。
  11. 犬養健

    犬養国務大臣 これは仮定の上にお立ちになるので、ちよつとお答えにしにくいのでありますが、万一状況並木さんの言われる通りの根拠に立つておりましたならば不法行為であります。
  12. 並木芳雄

    並木委員 これが不法監禁だとなりますと、今後こういうことがもし重ねて起るようなことがありますと、日本人のわれわれにとつては非常に脅威になるわけでございます。法務大臣としては、何らかの形でこれを積極的に防止すべく腹案を持たれておると思いますが、どういうふうにしてこれからこれを二度と起らないようにやつて行きたいとお考えになりますか。
  13. 犬養健

    犬養国務大臣 その考え方立場に立ちまして、アメリカ側が一応、中間的だと思うのでありますが、あちらにとめ置いていたのは、本人意思もまじつているというような話が外務省まであつたそうでありますが、私どもといたしましては、それに対して不法監禁のような印象を与えているが、それはどういうことなんだということを今問い合せております。と申しますのは、やたら日本人がつかまつたり監禁されたりしては、たまつたものではございませんから、これは日本国民自由国家群の中に入つてほんとう自由国家群の一員としてのアメリカ国民に親しみを持たせるためにも、こういうことは公明正大でなければ、ほんとう国民国民とが仲よくなれないと思いますので、その点は私どもは冷静にかつ公正に、態度をとつて行きたいと思つております。
  14. 並木芳雄

    並木委員 その点はぜひひとつ公正に、かつ強くやつていただきたいと思います。ほかの方の質問もあると思いますから、私は簡単に一言だけにしておきます。実はこのことについて、最近話題から遠ざかつておりましたところの、例の共産党の幹部捜査でございますが、こういうことがあると、ひよつとすると、アメリカの方で連れて行つているのではないかというような声が出るわけです。これは現実として出て来るわけです。私ども一向にその後の捜査状況というものに触れておりませんが、この際重要な問題でございますから、お尋ねしておきたいと思いますが、その捜査はその後どういうふうになつておりますか。国外に脱出したというような疑い、あるいは形跡などもあるのかどうか。それからまた、東京にある駐日ソ連代表部の中にいるのではないかというような疑いも出て参るのですが、その方面についての捜査をしたことがあるかどうか。また今後それをなさる意思があるかどうか。そういうような点について向いたい。
  15. 犬養健

    犬養国務大臣 八幹部の問題は、まことにお尋ねを受けると恐縮でございます。私役所へ入りまして、やつぱり並木君と同様に、一体どうしてつかまらないのか、大分質問もし、分析もしてみたわけでございます。これは率直に申し上げた方が委員会を尊敬することになると思うのでありますが、数年間の空白がありまして、もつと鍛練を要する点もあります。今そういう組織強化、それから個人々々の能力の同上ということに非常に力を入れております。もう一つは、ごく卑近なことになりますが、経費がいかにも足りません。あんな経費ではどんな有能な人が来てもつかまりません。一例を申し上げますと、非常に経費がありませんから、二百円持つて捜査をする者が出て行く。かりに追跡をすると、タクシーのメーターが二百円になつたら、降りて電車に乗つて追いかけるというような経費しかないのであります。これは経費だけで問題が未解決になつていると申しては不遜になります。もちろん空白が数年間あつたための素質の低下ということもありますが、素質が向上しても、今のような経費では、私はとうていだめだということを考えておりまして、これは予算の計上の場合に強く主張しているわけでございます。それから海外へ出ているのではないか、そういう話もひんぴんと聞き、投書もありますが、どうも確固たるものをまだつかんでおりません。それからソ連大使館にいるというようなことも、今のところは考えておりません。純法律的にいえば、ソ連代表部というものは何ら外交上の特権がないのでありますけれども、しかし並木さんなどがかねがねお考え通り日本はやはり世界の二大陣営の中へ立ちまして、できるだけ戦争を刺激するお先棒にならずに、平和を保つ有力な発言者になりたい、こういう考えからいいまして、軽々にソ連大使館に対して捜査の手を延べるということは、そういう意味から慎んでいるわけでございます。
  16. 並木芳雄

    並木委員 組織強化個人々々の能率を上げること、それから経費が少くなつているから、これを多くすること、いずれも大事な点だと思います。そこでこれをもう少し具体的に、ではどういうふうにしてやつて行くか、この三つの項目についてお答え願いたいと思います。
  17. 犬養健

    犬養国務大臣 これは非常にこまかくなりますと、政府委員の方が適任かと思いますけれども、たとえば従来予算をお願いする場合に、報償費というのがありまして、この報償費というのは、いろいろな情報をもらう人に礼をしたり、旅費を与えたり、滞在費を与えたりしておるのでありますが、こういうことは率直に申し上げると、まあ大体人に感じのいい費用ではない。とかく削られがちでございます。今度の補正予算では久しぶりに相当働けるものをいただいたのでありますが、本予算でどうなるか、できるだけこれは御同情をもつて協力願いたいと思つております。つまり数年の空白があつたあとで、内偵費といえばスパイを使う費用だろうというふうに思われますし、大蔵省から見ても、はつきりした明瞭な経費というのと少し違いますから、とかく削られがちなのです。山をかけているのではないか、そんなにいらないのではないかというふうになりがちなのでありまして、一般国民も、ぜひそれは予算に計上してくれという、国民感情が盛り上つて行く種類のものと、ちよつと違うのでありまして、率直に言えば、やや感じの悪い費用ということで、削られがちだつたのであります。ただいまのような御質問がありますのは、非常にありがたい。できるだけこういう経費をふやして行きたいと思います。もつとこまかいことになりますと、ここに政府委員がおりますから、それから答弁をいたさせます。
  18. 栗山長次郎

    栗山委員長 並木さん、御協力願います。法務大臣は所管の法務委員会の方から出席を要求されまして、あと数分間しかここにおることができません。田中稔男君。
  19. 田中稔男

    田中(稔)委員 私は鹿地事件については外務大臣質問したかつたのでありますが、ただ一点だけ法務大臣お尋ねいたします。これは新聞に載つておりましたが、鹿地君がいわゆるゾルゲ事件関係をしておつたというようなことがありました。これは新聞の記事でありますから、信用するに足りないかもしれませんが、この点につきましてお答え願いたいと思います。
  20. 犬養健

    犬養国務大臣 私も新聞で読んだだけであります。その後鹿地氏がゾルゲ事件関係をしていたという話は役所の公式な報告としてはございません。またどうもそうでないだろうという感じをもつて読んでおるものが多いのでございます。今申し上げ得るのはその程度でございます。
  21. 栗山長次郎

    栗山委員長 よろしゆうございますか。……黒田寿男君。
  22. 黒田寿男

    黒田委員 これは法務大臣お尋ねするのが適当かどうかわかりませんが、ただこの事件人権擁護問題としての進行の状態についてお尋ねするのであります。どうも私は人権擁護問題としては、鹿地問題の捜査が少しも進んでいないように思います。そこでお尋ねしたいと思いますが、一体鹿地君のいわゆる不法逮捕監禁事件について関係を持つたと称せられます米国人は、行政協定による合衆国軍隊構成員ないし軍属であるかどうかということが、私どもよくわからないのであります。新聞の伝えるところによりますと、CIA支部といいますか、何かそういう部局があつて、それの構成員だ、こういうようになつておる。そこでもしCIA支部と申しますか、とにかく外国における一つ派遣機構構成員であるといたしますならば、それは行政協定における合衆国軍隊構成員になるかどうか、もう少しこれを具体的に申しますれば、鹿地君の事件について関係のあつたアメリカ人が、もしCIAの部員である場合には、よし米国軍人でありましようとも、駐留軍軍人資格仕事をしておるものではないのではないか、こういう疑問が生ずるわけでございます。もしそうであるならば、すなわち軍人としてでなく文官として仕事をしておるということになつて来れば、何もアメリカ大使館などと交渉する必要はなく、直接にお調べなつたらよろしいでなはいか。何ゆえに大使館を通じて、いろいろと事件の真相を向かう側から聞こうとするのか、直接に鹿地君と関係のあつた人から聞けばよろしいのではないか、またそれを聞く方法は日本刑事訴訟法で可能なのではないか、こういうように思え何かもどかしいような気がするのであります。その点のところが政府は相手方をどういうようなり資格を持つておるものとお認めになつておりますか、その点ちよつと法務大臣としての御見解を承つてみたいと思います。
  23. 犬養健

    犬養国務大臣 黒田さんにお答えを申し上げます。鹿地事件についてよく名前の出て来る米国人軍人軍属であるかどうかという問題については今問い合せているのであります。その問合せはやはりあなたの御心配のようなことがあるといけませんので、外務省にお願いして問い合せているわけであります。  第二の御質問は、なるほど刑事特別法の第十四条ですかにありますように、それはこつちから調べに行くことができるのであります。ところが第十八条の第三項かですぐにまた入れ違いに向うへ引渡すような条項になつておりますので、そこの実益が非常に少ない。一方においてアメリカが相当誠意をもつて調べ中である、こういうことを言つて来ておりますので、実益のない法律上の権利を振りまわして捜査に行くよりも、しばらくあちら側の誠意のある回答を待ち、これと折衝する方が友好国として妥当ではないか、こういう考え方でございます。権利がないというような考え方でなく、その方が妥当である。刑事特別法でそういう権利を認められておるけれども、その方が事実上今のところ妥当ではないか、こういうふうに考えております。
  24. 黒田寿男

    黒田委員 時間がございませんからいま一度だけお尋ねいたします。私が今お尋ねしましたうちで、第二の問題として法務大臣お答えになりましたのは、ちよつと私の質問の趣旨を取違えておいでになるのであります。第一に私がお尋ねしたのはその点はわかつたのであります、アメリカ政府問合せをしておるのは事件の内容について問い合せておるというよりも、鹿地君の事件関係のあつた米国人が、はたして行政協定における駐留軍軍人ないし軍属であるかどうか、こういう点についての問合せをされておるのだというお答えでありました。私はそのことならば、それは日本でわからなければ、当然そういう問合せ政府がなさらなければならぬと思います。ただ事件問合せをするというのは私はおかしいと思います。前提条件資格についての問合せだと思います。私がお尋ねしました点については、今わかりましたが、まだ資格について間合せ中であるから今すぐにはどうともできない、こうおつしやるのであるから、それでは早く回答を得るように取運んでいただきたいと申し上げるよりほかありません。  私が第二の問題としてお尋ねいたしましたのは、文官の場合であれば、刑事特別法の問題でなくて、日本刑事訴訟法によつて直接に調べればよいではないか、何もアメリカ大使館を通じて、向うの弁解を聞くというようなことは必要ではない、こう申し上げた。しかし文官資格であるか、軍人資格であるかということは、まだわからないとおつしやれば、私はそれ以上は質問いたしません。すみやかにその回答得られて、万一駐留軍軍隊という資格仕事をしている者ではないということがわかれば、私は何もアメリカ大使館などに調査を頼むことなく、直接に法務大臣の御指揮によつて不法監禁問題として取調べていただきたい、こう申し上げたいのであります。私はきようはそれだけで終ります。
  25. 犬養健

    犬養国務大臣 よくわかりました。そのお尋ね前提になる文官だとか軍人軍属でないという認定がまだついておりません。それで問い合せているわけであります。問い合せておりますのは、その点と不法監禁であるかないか、一応こちら側の証人その他に聞くと不法監禁疑いがあるが、それについてはそちら側の事情はどうか、それと軍人軍属であるかどうか、どういうところに属しているか、こういうことであります。
  26. 栗山長次郎

  27. 中山マサ

    中山(マ)委員 鹿地事件に関連いたしまして、三橋という電波法にかかるとか、あるいはスパイであるとかいう問題が出て参つております。いろいろ新聞などによつてのみ得ている私の情報でございますが、もしこれがスパイ行為であるといたしますれば、これに対するところの三橋あるいは鹿地さんもそれに入つておるかもしれませんが、これに対する罰則はどういうもので、国内法でお罰しになるのでございましようか。私いろいろ見ておりますと、この二人だけの問題でなくして、何か背後関係があるのではなかろうか、そういう疑いが非常に私には濃厚になつて来ております。もしそういうふうに背後に何らかの団体があるといたしますれば、これはいわゆる破壊活動防止法外患罪に何か関連があるものではなかろうか、ずつとその線が私には引いて行くように思うのでございますが、その背後関係について、法務大臣としてお考えなつたことがあるのでしようか、またその団体についてお調べをお始めになつたことがあるでしようか。これに対するいわゆる罰則なり破壊活動防止法にかかるかどうかという点を伺つておきたいと思います。
  28. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えを申し上げます。あらゆる種類の国際的な背景というものも一応考慮に入れて取調べをしております。問題はそれではどういう刑罰にかかるか、今のところ電波法違反でございます。問題は暗号なるものを内容を知つてつていたかどうか、知らないけれども、とにかくずつと連続的に頼まれて自分の読めない暗号を打つていたかどうか、暗号は不幸にしてまだ私どもには解読できません。お尋ねの問題のように発展するかいなかは、その電波で送つていた通信の内容いかんにかかわるわけであります。
  29. 中山マサ

    中山(マ)委員 もしその内容を知つてつてつて、そこに皆後に何らかの団体がある、先ほどおつしやいましたように、その行方のわかつていないところのあるグループの人たちと、もし結託をしてこういう行為が行われておつたとすれば、それは破壊活動防止法外患罪にかかるものではないかと私は考えるのでございますが、いかがでございましようか。
  30. 犬養健

    犬養国務大臣 これは仮定の上のお答えになりますけれども、内容がもしわかりまして、その内容の深さによつてはお話のようなところに発展する可能性はございます。しかし今のところはまだそこまでわかつておりません。
  31. 栗山長次郎

  32. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 さつきの法務大臣のお話を聞いていると、鹿地君を講和条約発効後にアメリカ軍がこれを無通告で押えておつたということは不法である。この点ははつきりしているのだけれども、これは文句なしに不法であるということを前提として処理すべき問題ではないか。どうもあつたそうだとか、あいまいな態度をとつておられることは、私にははなはだ解せない。なぜかというと、並木君からも指摘されたように、私は事件の内容は知りませんが、これは国民が非常に大きな疑惑と不安を持つておる、その際にしかも今の文官であるか、軍属であるかという問題も問合せ中であるということであります。友好国としてそういうことを問い合せたりするのもけつこうだと思いますが、おのずからものにはタイムリーがある。しかもこの事件が起つてから何箇月である、荏苒としてもう三週間も四週間もたつておる。それでもなおかつさようなことを言われて、政府が何もしていないということになつて来ると、国民の受ける国民感情というものは、あたかも日本政府というものはアメリカの出先機関みたいな感じを受ける。このことは、今後の日本国民精神の上に重大なる影響を及ぼす、あるいはこれは日米関係の上に非常に悪い結果をもたらす。だから、これは当然不法であるということを前提としてかかつてかまわぬ問題ではないか。不法を君らはなぜ犯した、弁解の理由があるなら言つてみろといつて、大上段に振りかぶつていい問題ではないか。それをはれものにさわるように、軍人であるか文官であるか問い合わせなければわからぬと言つておるが、これは出先機関に行つて調べればすぐわかるはずである。これをまだ問合せ中であるというようななまぬるいことでは、国民はますます政府に対する不信と不安を持つだけである。この点についてもう少し明確にお答えを願いたい。
  33. 犬養健

    犬養国務大臣 私は池田さんと気持は同じでございます。日本アメリカの出先機関のように見えるようでは、これは自由国家群の問のほんとうの友好にならないと思つております。私ども考えているところによりますと、だそうだと申し上げたわけではないのでありまして、講和発効後どんな理由があつても、一人の日本人をとめ置いて、そうして通告がないということは不法だと私は考えております。その意味で、あちらに注意を喚起しておるわけであります。また弁解の事情があれば聴取をするということになつておるのでございます。第一の軍人軍属かどうかという問題は、あちらの部属や何かが非常にこまかく微妙なところがありますので、一応これは問い合すのが順序ではないか、こういうことで外務省を通じてお願いをしておるわけでございます。もう一つ先ほど申しましたように、向うでは鹿地氏が身辺の危険を感じて自発的にいさせてくれというような説明をしているようでありますが、これに対しても私どもは折返し、こちら側で得た感じでは不法監禁疑いがあるので、これに対する説明がもらいたい、こういうふうになつております。その返事はまだ来ておらないのでございます。仰せのように、だらだらと延びているということではまずいと思いますので、できるだけ早くはつきりさせたいと思つております。今まで延びたことに対しては申訳ないと思つております。
  34. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 今の問題はこれ以上追究しません。さつき問題が出ましたので、ついでですからお伺いしますが、今の日本警察——これは外務委員会で取上げることは妥当でないと思いますが警察素質の問題、あるいは経費の問題、特に経費の問題を取上げて主張されたようでありますが、現在の日本の治安機構が不完全であるということは明瞭であります。従つてこれに対しても、私は新法務大臣の抱負を聞きたかつたのですが、これはきようはやめます。ただここで一言言つておきたいことは、素質も悪い、経費も足りないことはわかつておる。しかし、だからといつて、実はここには国警長官もおられますが、日本警察が、これはまだ新発足して日がないからかもしれませんが、非常に警察官として脆弱といいますか、粗悪といいますか、未完成といいますか、そういつたような表現ができると思う。そのやさきに起つた問題がこの間の選挙である。この間の選挙の跡を見ると、選挙干渉という言葉はどうか知りませんが、全国の警察官が非常に選挙に関心を持ち、政治に関心を持つて、今までに日本警察で見られなかつたような行動を地方の警察官がとつておる。このことは今後の警察官のあり方という本質的な問題に触れると思つて私は言うのですが、ということは、つまり人間が多くて余つておるものだから、目ぼしいやつのところには尾行をつけてやつた、そのこと自体は私はそれほど大きい問題とは考えないのですが、それはひいて日本警察官が政治に干渉を持つたということ、これは重大な問題だと思う。日本の特高警察というものは、民衆なり議会においても非常な指弾の的となつておる、しかし、これは一面から言うと、少しごつちやにされて誤つた見解のもとに、そういつた特高警察を指弾されておる向きもあるのではないかということを私は指摘したい。あなたはどこまで御存じか知らないが、日本の特高警察が最初できたときは、日本警察というものは思想警察と政治警察と二本建になつてつた。その当時は純粋の特高警察というものは思想警察であり、これは今日でも世界各国にある例であるが、きわめてすつきりしたものであつた。ところが途中からたしか後藤内務大臣の時代でしたか、途中から政治警察と思想警察を一本にした。政治警察を廃して、高等警察を廃して特高に入れてしまつて、特高が今までの組織をもつて政治警察を握つた。その結果、その後フアッシヨが台頭して、フアツシヨの連中と結び、軍と結び、これに悪用された。これが今日指弾されておる日本の特高警察である。ところがこのことについては、関心を持つておる人は少いようですけれども、今度の選挙の跡を見ると、全国の警察官がこの選挙に非常に関心をもつて、一方においては司法フアッシヨだとか、警察フアツシヨだとかいわれておりますが、そのことよりもむしろ警察官がそういう政治警察に関心をもつてつたというこの事実は、今後の日本警察のあり方について悪い意味の重大なる一つのエポツクをつくつたのではないかと私は思うので、これに対して一体今後どういうふうな方向で持つて行こうとするのか、法務大臣の御見解を承りたい。
  35. 犬養健

    犬養国務大臣 今度の総選挙の際の警察官の行動について、参議院、衆議院の法務委員会あるいは地方行政委員会でいろいろ御質問がありましたが、池田さんのように、遠いところまでおもんぱかつての御質疑は初めてであり、私は敬意を表したいと思います。私としましては選挙というのは今度限りでありませんし、じき参議院の選挙があり、できるだけ具体的なことを伺いまして、そうしてその一々について分析をして、一種の白書のようなものをつくつて部内に配付をしたいと思つております。なぜそうしたいかと申しますと、抽象的に申しても、年の若い警官を使うし、ことに地方で警官の職を奉じておる人はそう世間も広くないのであります。抽象的な議論を実際の個々の場合に当てはめて考えるという能力のない人も相当におります。事前運動はこうやつたら行き過ぎである、あるいは手錠をはめたということがほんとうなら、それは行き過ぎであるというようなことをいろいろ列記して行きたいと思います。しかし池田さんの言われる問題は、もつと根本的な重大な問題でございますから、これは序論といいますか、そういうところに、十分研究をして加えて、今のところは小さい粒のようなものだつたのがだんだん雪だるまになつて、いつの間にか思想警察になつて行くというようなことがあつてはたいへんでありますから、池田さんの御指摘になるような遠いおもんばかりの問題も取上げてみたいと思つております。これはぜひ実行したいと思つておりますことをお約束いたしておきます。
  36. 栗山長次郎

    栗山委員長 犬養法務大臣に対する御質問はいま一人一点に限りたいと思います。中村高一君。
  37. 中村高一

    中村(高)委員 法務大臣は御用があるそうですから、この機会にお尋ねをしておきたいと思いますが、昨日、御承知のように会期が三月三十一日まで延長になりました。そこで新聞などは一斉に、選挙違反の大物がのがれるために、こういう不都合なことをやつたのではないかという意味の批評を載せております。社会党でもたしかそれと同じような意味の声明も出しておるのでありますが、われわれはもしそういうことでこれが防波堤になるということでありますならば、国民に与える影響というものは非常に大きいと思うのであります。この外務委員会でも、御承知通りに岡崎外務大臣は、選挙違反の問題ではしよつちゆう聞かれておる責任者でありまして、この新聞に出ておりますこと、あるいは世間の疑惑を一掃させるということは、政府の責任だと思います。ここで防波堤が築かれましたが、もしどうしても大物でも調べなければならぬという必要のあります者に対しては、国会の承認を求めて来られるのか、あるいは三月三十一日で終了するのを待たれるのか、あるいは待てばそのうちに時効になつてしまうのかもしれないというのでありますが、その辺に対しまして、犬養法務大臣の御所見を承りたいと存ずるのであります。
  38. 犬養健

    犬養国務大臣 会期が延びたから、選挙違反の方は、その会期が延びたということで万事よろしくやれというような話は、一つもしておりません。検察当局として一番神経をとがらせておりますのは、御指摘の時効の問題でございます。しかし時効に何となしにだんだんかかつてしまうというようなことに対しては、そうでないような処置を十分とつております。これは責任をもつて申し上げると存じます。また何か御疑問がございましたら、御質問を願いたいと思います。
  39. 中村高一

    中村(高)委員 そうすると、一番問題になるのは時効だというのでありますが、その間に処置をとるということだとすれば、私が今お尋ねたように、国会の承認を求めて逮捕して調べ直しをするのか、あるいは現在までの程度で、あるいはその他の傍証によつて起訴しておく、こういうようなことなのか、その辺の決意をお聞きしたいのであります。
  40. 犬養健

    犬養国務大臣 私が報告を受けております範囲におきましては、大部分は傍証が相当固まりつつあるものが多いようであります。選挙違反というのは、本人がそうやつたのだというケースはきわめてまれなのでありまして、御承知通り、大体傍証で固めて行くわけであります。その場合、検察当局の取調べに一番さしさわりになりますのは、時効なのであります。そのために万全の処置を今とつております。それから御承知のように、逃亡者は半年で時効にかかるのではなく、一年でございますから、これはまだ前途遼遠でありまして、その点はこの前によそで御質問がありましたが、その点も、逃亡者に対しましては、ここに国警長官もおりますが、相当熱心にされております。
  41. 中村高一

    中村(高)委員 先ほど大臣からお答えになりましたように、参議院の選挙も近いのでありますから、下つぱだけが検挙されて、裁判をされて、かんじんの者はのがれるというような取締り方針は行われないように、ぜひ厳正な法の取締りをしていただきたいと希望を申し上げておきます。
  42. 栗山長次郎

    栗山委員長 法務大臣に申します。法務委員会の方から出席をしばしば督促されております。本委員会法務委員会に譲歩いたします。  ただいま御出席政府委員は、岡原刑事局長、齋藤国家地方警察本部長官、それに黄田外務省経済局長、伊関国際協力局長、松尾通商局次長等でありますが、外務大臣出席も近いと思いますので、質疑をお進めになる方はお進めください。順序は安東義良君であります。
  43. 安東義良

    ○安東委員 外務大臣が来られるまで、とりあえず黄田経済局長お尋ねいたします。  日米通商条約も近く妥結に至るという話も聞いておりますが、現在の状況を話していただきたいと思います。    〔委員長退席、池田(正)委員長代理着席〕
  44. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 日米通商航海条約の案は昨年来東京で米国側と交渉いたしております。いまだ交渉中でございますので、内容を詳細にわたつて申し上げることを差控えたいのでございますけれども、おもな内容といたしましては、入国、居住、身体財産の保護、それから出訴権、財産権の取得、処分、事業活動、課税、為替管理、関税及び貿易、船舶の出入、大体そういうことを内容といたしております。
  45. 安東義良

    ○安東委員 どうして日米通商航海条約が今日まで妥結に至らなかつたか、その理由を説明していただきたい。
  46. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 古い通商航海条約は廃棄されましたので、平和条約第七条によりまして、戦前の条約の存続あるいは復活の措置をとる場合を除いては、そういうものに関しおのおの相手国に聞いてからやるというふうになつております。それでアメリカにそういうことを申し入れまして交渉が昨年から行われておるのでございます。古い通商航海条約と違いまして、新しい事態、たとえば社会保障とか、あるいはヴオリユームがかわりましたような場合にも、過去のことを考慮に入れようとか、そういう新しい問題も案に盛られているのであります。それから最近起りました問題としては、各国も為替の制限をいたしておりますので、この為替の制限というものに関して、どのくらいまでは認めるかということですが、理想といたしましてはこれは自由であるのが理想でございますけれども、世界共通の悩みは、外国為替がお互いに少いというのが、今の普通の国の状態でございまして、それがアメリカにはありませんけれども日本にはそれが非常にあるというので、そういう点を一体どういうふうにしたらいいかというような問題が、これは国内的にも相当な重要問題でありますので、そういう点を慎重に考慮しなければならないというようなことで、少し時間をとつているのでございます。
  47. 安東義良

    ○安東委員 そうすると、その困難性は日本側にあるのか、アメリカ側にあるのか、どつちですか。
  48. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 交渉の途中におきまして、われわれから申しましたことが向うでも即座にはのめない。本国政府にリフアレンスいたしまして、向うで相談するということも理由でございますが、日本側といたしましては、先ほど申しました為替の制限とか、そういうことが相当大きな問題になつておりますので、そつちの方がどつちかと申しますと、よけい原因になつていると思います。
  49. 安東義良

    ○安東委員 最恵国待遇の問題で、何か難関があるようなふうにも伝えられておりましたが、その点はどうなのですか。
  50. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 最恵国の問題といたしまして、為替の制限に関連いたしまして、最恵国の待遇がどうかというふうなことは、ただいまのところそれがネックになつているということはございません。
  51. 安東義良

    ○安東委員 アメリカの最近の通商政策から考えてみて、今度の日米通商条約を通じて何らか変化はありませんか。
  52. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 ございません。
  53. 並木芳雄

    並木委員 さつき犬養法務大臣お尋ねしたうちで残つているのがありますから、刑事局長お尋ねしておきたいと思います。それは鹿地氏の事件が起つた昨年十一月のころは、犯罪容疑者に対しては、日本側裁判管職権を委譲して、アメリカ日本に引渡しておつたように私は了解しているのですけれども、実際はどういうふうになつておりましたか、お尋ねしたい。
  54. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 法律上の建前は、政令三百二十四号というのが渉外関係の刑事事件の取扱いに関しましてありまして、これによりますと、あちら側にも裁判権がある、それからこちら側にも裁判権がある、両建になつております。犯罪の種類にもよりますけれども、本件のごときはおそらくその当時両方に裁判権があつた事案ではないかと存ぜられます。
  55. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、もし犯罪の容疑があつたとすれば、講和条約成立までの向うでの引きとどめということは、これは合法的になるわけですか。
  56. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 結局さようなことに相なるわけでございます。
  57. 並木芳雄

    並木委員 もう一つ刑事局長お尋ねいたします。これも犬養さんに聞こうと思つてつたのですが、時間がありませんでしたから局長にお尋ねいたします。それは例の英濠兵事件の軍事裁判のことでございます。この前、条約局長が約二週間くらいしたら、つまり今月の今ごろになるのですが、そうしたら裁判が行われるようになるであろうと答えていましたが、その後質問の機会もございませんでした。もうあれも目鼻がついたと思いますけれども、いつどこでどういうふうに行われますか、それからだれを派遣するか、ということをお聞かせ願いたい。
  58. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 その件につきまして、ごく最近外務省を通じて連絡がございましたが、それによりますと、英濠兵の裁判は東京のエビス・キヤンプ内において来月の五日から始まるということでございます。若干遅延いたしましたのは、事案が必ずしも簡単ではなく、取調べ等に長くかかりましたのと、ちようど年末年始にかけてあまりにあわたしく裁判するのもいかがであろうかということだろうと存じます。なお裁判が始まりますと連日開延いたしまして、おそらく相当期間かかるだろうという見通しでございまして、目下わが方からは外務、検察並びに法務等の担当官が、それぞれこれに立ち会うことに内交渉を進めております。
  59. 並木芳雄

    並木委員 よくわかりました。その立ち会う場合の資格についても、この前ちよつと問答が行われたのですけれども、その後はつきりしましたか。
  60. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 先般法律的に御場返事申し上げました通り、その資格といいますのは、別に法廷の構成員とかいうような、しかつめらしいものではないのでございまして、原文にはオブザーヴアーと書いてございますが、要するにその裁判が公正に行われることをこちらで見ているという趣旨に解しております。
  61. 並木芳雄

    並木委員 それですと、要するにそこで立ち会つてつたからどうとかこうとかいう因縁は、あとからつけられないはずだと思います。従つてなるべく大勢立ち会うことができるようにしておいた方がいいのではないかと思う。その点が一つと、それからそうだといたしますれば、当然日本としては、向う裁判の結果いかんにかかわらず、もう一度英濠兵を呼んで、これは起訴するとかなんとかいう態度の権利を留保してありますから、それをやつて行くものと思つてさしつかえありませんか。またそうすべきであると私ども考えておりますから聞くのです。
  62. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 立会人が参りまして、別に裁判を構成するわけでもなし、従いまして後日因縁をつけられるという筋合いは全然ございません。従いまして、裁判権がこちら側にも一部競合して存するという点の法律見解は、何らかわつていないのでございます。なおなるべくたくさん行つた方がいいだろうという仰せ、ごもつともでございまして、あの覚書には一名ということになつておりますけれども、事実上今申したように数名行けることになつております。ただなるべくたくさんと申しましても、もともと軍事裁判は非公開の建前がとられておりますので、そうぞろぞろと行くわけにも行かぬのではないだろうかと考えております。  それから最後の点、つまりまた起訴するかどうかという点は、先ほどの理論的にこちらに裁判権が競合して存在するというところから、おのずから結論が出て参るのでございまして、この点は、たしかほかの委員会でも問題になりました際に申し上げました通り、刑法第五条におきましてかような場合の調整の規定がございます。従いまして向う側の裁判が非常に重くて、これに二重に刊を科することが刑の権衡上妥当ならざる場合には、やはりその刑の執行を終るまで見ているというようなのが刑法に盛られた精神であり、この精神はまたあらゆる国の刑法典に盛られてございますので、もしも向うの刑が軽いという場合には、あらためて考えなければなりませんけれども、こちらの裁判所で当然科するであろう程度の刑が科せられてあつた場合には、それはそれで納得すべきである、かような見解でございます。
  63. 並木芳雄

    並木委員 局長はやや予防線を張りながら答えていると思う。向うの刑が軽いとか重いとかいうことは、こつちの刑が確定しなければ比較できないわけです。ですから向うで科せられた刑が、その事件についてこちらで科し得る最高の刑を越える場合には、あるいは今の局長の策弁は正しい場合もあり得ると思うのです。しかしそれは裁判をやつてみて判決を下してみなければ比較ができないのであつて、そこのころを軽くごまかして、結局日本としてはもう一度それを呼び寄せないという魂胆ではないか、こう思うのです。ですからあちらが済んだら、とにもかくにも呼んで、こちらの裁判を進行して行くべきものだと思うのです。そうして裁判の判決が出た結果、両方を併合するかあるいは一方だけにするかということは、別の問題にしたらどうかと思うのですが、所見をお伺いいたします。
  64. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 ある一つ事件が起きました場合に、これに対して懲役何年を科するかということは、相当困難な問題でありまして、極端な例を申し上げますと、検察庁がたとえば十年を求刑したところが、裁判所は三年を言い渡した、それで検察官から不服を申し立てて、また十年だといつて主張してておつたのが、控訴審では七年になつたというふうな、これは一例でございますが、こういうふうな例もあるくらいでございまして、ある一つ事件にどの程度の刑を科するかというのは、それぞれの裁判所なり検察官の見方によつて、大分違うところがあるのでございます。    〔池田(正)委員長代理退席、委員長着席〕 しかしながら、われわれ専門家と申しますと、ちよつと語弊がございますが、絶えずこのような事件を取扱つている者からいたしますと、大体あの程度の事件には、大体この程度の刑があるだろうというふうな予想がつくものでございます。いわんやそれにはいわゆる法定刑というわくがございまして、強盗でありますと五年以上の刑、酌量減刑いたしましても二年半以上の刑に処さなければならない、これに反する場合にはもちろんこれは問題になりませんけれども、さてその上の五年、七年、八年あるいは十年と、そのいずれが適当かということになりますと、これは見る人によつて、相当違うと思います。そこでわれわれとしては、原告官の検察庁といたしましては、おそらくその外国裁判の結果を見て、それが自分たちの判断と著しく相違しないということであれば、これに対して二重に起訴いたしましても、刑法第五条をごらんになるとわかります通り、刑の免除等の問題になつて参りまして、結局手続いたしましても、刑は実際には科さないというふうなことになる場合もあるわけでございます。従いまして、その具体的な事案の結果を見てから判断するということが、最も妥当であろうというところが、われわれの見解でございます。
  65. 並木芳雄

    並木委員 これは前例になりますので、非常に大事ですからお聞きするのですが、今度の向う裁判というのは、日本裁判をしようとする事犯をそつくりそのまま同じものではなくて、別の犯罪があるから引渡せということで出て来たのではないですか、まつたく同じなのですか、それとも余罪があるからその部門について向うが先に裁判をする、こういうことでのみ私どもは了解しておつたのですが、今の答弁ですと、結局全然同じものについて向う裁判を先にやつてしまうというふうに受取れますが、その点はどうですか。
  66. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 引渡しの際に、向うでも脱走の罪があるというふうなことがありまして、その説明からただいま御理解になつたような御質問が出たのだろうと存じますが、一旦向う側に事件が移りますと、一応その脱走事件ともう一つ本人がやつた強盗の事件というのは、併合して審理されることになろうかと存じます。この際には、濠洲あるいは英国の実際の法典がどうなつているか、私まだ詳しくは存じませんけれども米国流の法廷でございますと、おのおのの犯罪事実翼につきまして、それぞれの刑が言い渡されるということになろうかと存じますので、従いまして、強盗についてはどれくらいの言い渡しがあるかということは、おのずから出て来るのではなかろうか、かように存じます。
  67. 並木芳雄

    並木委員 どうもそうなると、結果はまずいのではないかと思うのです。結局日本でもう一度呼んで裁判をするということは、これは観念的にはあり得るかもしれませんが、実際としてはほとんどないのではないかということを心配いたします。ことに今の御答弁ですと、結局これは一事不再理という原則にかかつて来るのではないかと思います。裁判所において一事不再理という原則が行われておるかどうか、国際間においてこの点は全然心配ありませんか。
  68. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 いわゆる一事不再理というのは、裁判権が同じである地域内における犯罪事実が、一度罰されたら二度と罰されないという原則でございます。裁判権を違えた地域におけるそれぞれの裁判権の行使については触れないことに学説上明らかになつております。それを明文上規定してございますのが刑法の、第五条がはつきりいたしますが、そのほか第三条第四条等をごらんになりますと、外国でやつた場合のさらに二重処罰の規定がございますので、明らかであろうと存じます。
  69. 並木芳雄

    並木委員 では最後に、とにかくこの問題は、向うの判決いかんにかかわらず、刑の量が重いとか軽いとかの比較によつて、こちらの主観を動かされずに、向うが済んだらすぐ呼んでやるという原則を打立てていただきたい。その方向に向つて努力すると言つていただきたい、またそれを約束すると言つていただきたいのです。
  70. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 先ほども申し上げました通り裁判権が競合して存在するということについて、われわれは理論上ちつとも疑いをさしはさんでおりませんけれども、実際に向うの言い渡した刑が相当重かつた場合におきましては、刑法第五条の精神から申しましても、これを再起訴することが妥当ならざる場合があるのでございますが、これは要するに一つの犯罪について、いくら国際法上一事不再理の原則がないと申しましても、刑法第五条に盛られた精神、つまり向うで相当の刑を受けられたならば、こちらではその刑の執行は免除するとか減刑するというふうな精神は、やはり尊重すべきことであろうと存じますので、向うで非常に軽い場合には、大いにお約束をいたしまして、こちらでまた起訴するということを申してもけつこうでございますが、向うの刑が妥当である場合にも、なおかつもう一度起訴せいということをおつしやられますと、ちよつとわれわれの従来の取扱いと違つて参りますので、その辺はごかんべん願いたいと存ずるのでございます。
  71. 中村高一

    中村(高)委員 伊関局長お尋ねいたします。最近米軍の兵舎が東京都下の立川の近くの大和村という所にで出るそうで、政府ではその計画を着々進めておるというので、また住民が反対運動を起しておるのでありますが、れは一体都内におる兵隊が移転して来るのか、新たにアメリカから来る兵隊が入る兵舎でありますか。それから何人ぐらい収容するのか、その点をひとつ伺いたい。
  72. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 私、その資料を持つて参りませんので、はつきりした数字はちよつと、数字が違うかもしれまんが、私の記憶では千四、五百名入るのではないかと思いました。それか兵隊の種類は両方あると思います。一つは現在都内におります空軍の独身将校等の宿舎になり、一つは本国から来た兵隊等が一時おつて、そうしてまた朝鮮に行くとか、あるいは国内で配属されて行く場合まずここに受入れて、そこから逐次ほかへ配属さすというようなものになるのではないかと考えます。
  73. 中村高一

    中村(高)委員 これは全部独身兵ですか。
  74. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 独身将校と独身の丘隊であります。
  75. 中村高一

    中村(高)委員 並木君に対する答弁によると、十月ごろに政府では決定表したというのですが、この決定は、政府だけの決定か、あるいは日米合同委員会の決定という意味なのか、それがよくわかりませんから、その点と、土地五万坪を買収済みだというように見える公文書でありますが、はたしての五万坪は買収済みであるかどうか、もう一つは住民の了解についてどんな方法がとられて来たか、お尋ねいたします。
  76. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 私この問題を直接やつておりませんので、もし違つておりましたならば後ほど訂正いたします。が、土地を提供することにつきましては、すでに閣議決定があつたと了解いたしております。閣議決定を経まして、通常の手続では合同委員会の決定になる。それから土地の買収につきましては、これはたしか西武電車が持つておる土地ではないかと思いますが、それでその土地を売るということについては、会社との間に話がついておつたのでありますが、値段の問題につきまして、まだ最終的な決定に至つていない、こういうふうに聞いております。それから地元につきましては、いつごろから話を始めましたかは私はよく存じませんが、最近は地元の村長さんと私どもの方の係官の間でいろいろと打合せをいたしております。
  77. 楠山義太郎

    ○楠山委員 今の事柄に関連してでありますが、和歌山県の大島村といいますとよく御存じだろうと思うが、あそこに今度二百人ばかりのアメリカ人が電探基地を設けて、村民がこぞつてこれは一人残らず反対しておる。ここは料亭も一つもないのであります。従つて武蔵野地方はどうか知りませんが、ごく一部にはアメリカ人誘致歓迎の論者があるそうですが、この村では村民全部が反対しております。あそこは桃源境のようなところで、戸締りもしないでやつておる所であります。しかしいろいろの点で、経済的にあるいは耕地の点で問題が起つておるのでありますが、最も関心を集めているのは風紀上の問題であります。あんな小さな島に二百人も飛び込んで来た日にはどんなことになるかと、大騒ぎをいたしております。これは村民こぞつて反対してもなおかつ動かせないものであるかどうかという点について、詳しく御説明願いたいと思います。
  78. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 その村からは、約一週間くらい前でありましたか、関係者がお見えになりまして、私も詳しくお話を伺いましたけれども、非常に人口が少いところへ二百名も兵隊が入るというので、非常に心配しておられます。なるほどその通りだろうと思います。まだそれは最終決定に至つておりませんので、もう一度空軍とよく相談いたしまして、どうしても地形上そうした通信施設をあそこに置かなければならぬものか、あるいはあの島でなくて、和歌山県の方にどこか山を探してそういうものを置けるのではないか。もちろん通信の電波を出しますために、海の方に向けます場合、遮蔽物のない、何もさえぎらないような電波を出したい、これはよくわかるのでありますが、ああいう島でなくて、何かはかにも場所があるのではないか。もちろんこれには交通関係ということもございますけれども、そういう点をもう一応よく相談いたしまして、ぜひあそこでなければならぬということになりましたならば、またいろいろと対案考えなければならぬと思います。たとえば兵隊の外出を禁止する、そして全部一週間に一度か二度は串本の方かどこかに連れて行くというような方法もあるかもしれませんが、まず第一に、技術的に見まして、ぜひあそこでなければならぬのかどうかという点を今交渉さしております。
  79. 楠山義太郎

    ○楠山委員 もしぜひ置かなければならぬということになると、これは日本側ではどうにもならぬかということが一つと、それから万一ぜひ置かなければならぬということになつた場合、兵隊をそういうコンセントレーシヨン・キヤンプのように、どこかにとじ込めて、外出不可能ならしめるようなことができ得るものかどうか、そういう点についてもお答え願いたいと思います。
  80. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 軍事的に見て、どうしてもあそこでなければならぬと向うが申しました場合には、日本側はこれを拒否し得ないかどうかという御質問かと思いますが、これは日本側の自由意思で合意の上でものがきまるのでありまして、日本政府があくまで現地の実情から、いかに軍事的に必要であつても、国防上の欠陥が生じても、この土地は困るというふうに政府がお考えになれば、これは断ることができます。(「政府がお考えになるといつて、あなたは政府の方じやないかと呼ぶ者あり)これは閣議という意味であります。そこまで持つて参ります。ですから、そういう問題になりますと、結局石川県の内灘のような場合に、一応閣議にお諮りするということになつておりますから、その決定に待つことになります。また兵隊を監禁するというふうなわけではございませんで、事実上外出させないということは、話合いによつてできるだろうと思つております。
  81. 並木芳雄

    並木委員 関連して。これは実はわれわれ日米安全保障条約に賛成しているから立場は非常に苦しいのです。あれに賛成しておきながら、一々こういう問題が出て来るので、われわれの立場は苦しいので、伊関さんに一番しつかりしてもらわなければならぬ。ところが今のお話では、政府がお考えになればというような、まるであなたは政府の人間ではないように聞える。この前も私は聞いたのです。合同委員会の大将は伊関局長だ。これはいわば岡崎外務大臣か、またはそれ以上の権限と力を持つているにですから、あなたがしつかりすれば、今のような質問が出て来てもはつきり答えられるわけです。顧みて他を言うようなことおつしやらずに、私が見て、これはいけないと思えばあくまでがんばつて断る、それだけの権限が私にはあるとおつしやつていいのですけれども、何ですか、そういうところが物足らないから、いろいろの苦情が出て来るのであります。先ほど中村さんの質問にもありました北多摩郡の大和の問題も、千五百人くらいの独身者が入つて来ると、それだけで大きな村が一つできるようなキヤンプなのですから、それについて局長は、私は直接やつていませんというような答弁だつたけれども、これはずいぶん違うのではないかと思います。あなたは来月三日に外国へ行くというから、その方で忙しいかもしれませんけれども、こういう問題は、要するに国民に非常な義務を課し、場合によつては財産を制限するのですから、憲法にも関係のあるような大問題です。ぜひ局長にしつかりしていただきたい。立川の問題などもそうです。基地から出るガソリンで井戸の水が濁つてしまつて非常な損害を与えた。これなども、地元からずいぶん陳情が来ているのですけれども、バケツの値段が一つ幾らかそれを計算して、原価計算をしろとか、その半額を補償するということを言つて来ている。ずいぶん不見識だと思う。そういう方針で一貫しているならいいけれども、内灘では、つるだかかめだかしらないけれども、何とかいう大臣が行つて、二、三日の間にものすごい補償料がきまつた。その一方立川のようなところでは、バケツの値段を計算して、これを半額だけ損害賠償しろというように、ずいぶん違いがあると思う。そういう違いにどんどんくさびを入れて、がんばつてもらわなければ困ると思う。この際お伺いしておきますが、立川などの補償は、どうして少なくて、遅れているのか。それに反して内灘の場合には何か特殊な事情があつたとかいうが、どういう特殊事情であそこだけ巨額の補償金を出すようになつたのか。それからもう一つ、今朝私も新聞を見て驚いたのですが、立川では緑川というところでガソリンが流れ出て、その川の水に火がついて火事が起つたという事件があるのであります。そういうものに対しても、政府としてはどういうふうにこれから対処して行くか。それから同時に委員長にお願いしますが、近く立川基地視察に行くことになつておりますが、ぜひ委員の皆さんにもこういうところをよく見ていただくように、あらかじめお諮りしていただきたいと思います。
  82. 栗山長次郎

    栗山委員長 後ほどお諮りいたします。
  83. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 まず立川の問題からお答えいたしますが、立川の問題は二つありまして、立川の飛行場内から油が流れ出すという問題につきましては、外務省の所管といたしましては、これが飛行場から出ておるかどうかというところを調査する、そこまでが外務省の所管であります。私の方は飛行場から油が出たのだというところまでをはつきりいたしまして、そこから先になりますと、今度は立川の市が東京都の方に手続いたしまして、そうして調達庁に参りまして、そこから補償を受けるということになるわけでありまして、遅れております事情は、調達庁か大蔵省になりますか、あるいは東京都になりますか、ともかく外務省の所管からはそこで離れております。  その次に立川の川の問題でありますが、その川に油が流れておる、もう一つは雨が降つた場合に川が氾濫する問題、これは約一週間ほど前に立川の関係者がお見えになりまして話をお聞きしました。そこでこれは外務省と建設省、大蔵省おそく三者の問題と存じますので、ただちに両方の省と連絡いたしました。結局問題は、こういう場合は、道路を盛んに米軍が使うために道路がいたむという場合に道路を直すと同じような考え方でありまして、安全保障諸費の中から経費は出るわけでありますが、ただその全部を国費でまかなうか、ある部分は市の方でまかなうべきではないか、この辺の比率等につきまして、考究すべき点があろうと考えております。  内灘につきましては、これは非常に広汎な土地を、しかも政府の必要から早急の間にぜひ使用したいと思いまして、村全体が非常に反対いたしておりますのを無理に納得させた、そういうあれがございまして、そこである意味で慰謝料、見舞金というようなものを出したわけでありますが、もちろんこの見舞金がどういうふうに使われますか、それは具体的に申しすすれば、今まで戸締りをしておらなかつたところに戸締りをしなければならぬとか、あるいはたまの振動でもつてガラスがこわれるとかいうふうなこともございまして、大体これは適当な額であろうというものを算定いたしたわけであります。
  84. 楠山義太郎

    ○楠山委員 また続けて質問したいと思います。並木さんが横合いから入りましたが、大島村のことであります。あれはもし向う側の要求を入れるような場合に、どのくらいの人数が来るものであるか、それからいつごろから駐留開始になるものか、その点お聞きしたいのであります。ただついでに申し上げますが、大島村では非常な反対論でありまして、この間も日米人相携えて視察に来たそうでありますが、とうとう上陸を不可能ならしめた。場合によるとどういう事件が起らないとも限らぬような険悪な空気もあり、相当殺気立つているようでありますが、これは日米合同委員会ですか、そういうことを決定することのできる権限をお持ちになつておる会合において、そういう点も十分御考慮の上できつく御反対願いたいと思います。質問は今の二つであります。
  85. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 人数は大体二百名前後と聞いております。それから時期につきましては、そこを提供すると決定しましたならば、すぐ施設を始めると思いますが、それがきまりませんと時期はわかりせん。
  86. 並木芳雄

    並木委員 留学生のことで一点伺つておきたいのです。来年度における海外への留学生、それから海外から日本への留学生、それについての計画、それをこの際伺つておきたいと思います。
  87. 久保田藤麿

    ○久保田政府委員 日本から外に出します関係のものは、本年度あたり特別かわつた計画を持つておりませんで、大体向う経費である程度の人間をフランスとドイツと今のところインドでありますが、あちらから招聘してくれておる者、それに対する答えを出して行こうという考え方であります。こちらが呼びたいといつたようなものは、少くも今のフランス、ドイツ、インドといつたようなところに対しては、向う側がそういう意味で受入れてくれますものにこたえる意味合いのものをこちらとしては呼びたい。そのほかのアメリカ、東南アジアといつたようなところからも、できるだけ向うが呼んでくれると同じような条件で、こちら側もそれにこたえるというつもりで、アメリカ、フランス、インド、イギリス、ドイツ、東南アジア、こんなところを、大体総数のわくで、二十三人ほどのものを受入れたいと思つております。
  88. 高岡大輔

    ○高岡委員 関連してちよつとお伺いしたいのですが、インドに、これはナーグプールかラクノーか、ちよつと私記憶が確かでないのでありますが、そこの大学で日本語講座というものが開かれたのであります。それでおそらく外務省では御存じだろうと思うのでありますが、これには瀧照道君が師として行つておられるわけであります。と、ころがその期限が来てしまつて帰らなければならないということで、瀧君は近々帰るとかいうことなのでありますが、さて向うへ行くにしても旅費が足りないとか滞在費が足りないとかいつて、結局経費の問題なのであります。そこで私はせつかくインドが日本語講座を大学で設けておるにもかかわらず、わずかばかりの経費でそれが継続できないということは、はなはだ遺憾だと思うのです。その後の経過を知りたい、その後どうなつておりますか。
  89. 久保田藤麿

    ○久保田政府委員 御指摘のごときお話は私どもも聞いております。そのかわりに行つていただく人を今一生懸命物色しております。経費の問題につきましては、御指摘の通り向うが受入れてくれます金の高が小さいだけに、非常に無理があるようでありまして、できるだけのお手伝いはさせていただこうと思つております。
  90. 高岡大輔

    ○高岡委員 そのお手伝いということは、外務省が金を出すという意味なのですか、それともあなた方のお声がかりで、どこかの民間団体から金を出させようと、こうおつしやるのですか、とにかく大学での月給とでもいいましようか、非常に少いので、話を聞くと二万ルーピでありますが、そういうようなわずかな金ではとうてい行けないというような様子でありますが、その点について十分御配慮を願いたいと思います。人選に困つておるとおつしやるけれども、人は幾らでもあります。ほんとうに本腰をお入れになるようだつたら、私からも推薦します。それほどむずかしいことはないと思いますが、せつかく日本語講座が開かれておるのですから、これが継続できますように御配慮を願いたいと思いますが、これはお願いでございます。
  91. 安東義良

    ○安東委員 久保田局長にちようとお尋ねしたいのでありますが、最近民間の会議が海外で相当開かれております。ことに学術会議のようなものが開かれております。これに対しては戦前には文部省なりあるいは外務省なりから補助があつた。このごろはそういうような補助金の制度がなくなつたように見えますが、今後こういう民間の学術会議等においては、できる限り日本を知らしめるという意味において、また日本の学術水準が必ずしも世界に劣つていないということをよく示すために、また同時に日本自身を刺激するために、努めてこういう会議には有能な学者とか、りつぱな技術者を出席させる必要がある。これにつきましては、私は文化交流という見地のみならず、外交の見地から見ても相当に真剣に政府も援助しなければならない、こういうふうに考えておりますが、文部省当局ではどういうふうにお考えになつておりますか。
  92. 久保田藤麿

    ○久保田政府委員 安東さん御指摘の点、私どももまつたく同感に存じております。昨年来留学生をある程度送る計画を実施いたしておりますますので、科学研究費のわくを増大しましてそうしたわくの金で、それ自体は科学研究費でありますが、そういう性格のものをできるだけ多くして、送り出したいと思つております。
  93. 栗山長次郎

    栗山委員長 ちよつと速記をとめて一ください。   (速記中止)
  94. 栗山長次郎

    栗山委員長 速記を始めて。
  95. 並木芳雄

    並木委員 黄田局長に中共貿易についてお尋ねをしておきたいと思います。十三国会において前に質問しておいたその後の状況について、たとえばバトル法との関係、それから日本はだんだんと禁止品目を緩和して行きたいということでありましたけれども、品目拡大の措置はどういうふうにとられたか、具体的に伺いたい。
  96. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 この六月か七月でございましたか、紡織機、毛糸製品、染料、紙という四品目に関しましては、禁輸を解除したことは御承知通りだろうと存じます。その後も、よその国並にでこぼこを調節いたしまして、禁輸の品目をできるだけ拡大したいという希望でやつているのでございますが、ただいまのところ、どういう品目がそういうふうになつたかというと、新たに加わつたものは、ただいま申し上げました四品目以外にはございません。大きなカテゴリーがございまして、そのうちの、こういうものはだめだ、こういうものははずそうではないかというふうなことに関しましては、ただいま相談中でございます。大きなカテゴリーの中にあります細分類のものでございまして、たとえばハクソー——のこぎりの類でありますが、こういう種類のものはよいことにしようではないかというふうなことに関して交渉しておりますけれども、きまつたものは先ほど申し上げました四品目以外にはまだございません。
  97. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、この前解散になつた八月から今日までの間に、品目は何にも追加されなかつたというわけですか。
  98. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 そうでございます。
  99. 並木芳雄

    並木委員 それではあのころ政府が言つたことと大分違つて来るわけです。何かこの間、アメリカの方から日本政府に対して、中共貿易について申入れでもあつたのですか。
  100. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 昨年の八月ぐらいからただいままで、アメリカの方から中共貿易に関して申入れがあつたということはございません。
  101. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、政府としては自分の考えに基いて、中共貿易を何とかしてやつて行きたいと思つておるでしようが、その対策として具体的にこれからどういうことをしようと考えておられますか。
  102. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 ただいまのところ、中共貿易に関しまして世界中で一番厳格なる統制をいたしおりますのは、アメリカとカナダでございます。これはもう何にも出さない、何にもとらない。たとえば豚毛のようなものはペイントのブラシに非常に需要が多いのでありますが、それすらも中共からは買わない。何にも買わない、何にも出さないという一番厳格なる統制をしているのでありまして、これが一番厳格な例でございます。ヨーロツパ各国がどういうことをやつておりますか、これは割にまちまちな統制をいたしておりまして、日本は中間に位しているというのが現状なのでございます。それで片方におきましては、朝鮮戦争が始まりましたが、これが非常に大きな戦争でございまして、その敵と申しますか、北鮮側には中共が兵隊を出しているという関係がございますので、戦略的な物は出したくない。これは国連協力の当然の帰結だろうと私は考えるのでございますが、そういう線がございます。片方の考慮といたしましては、中共との貿易によつて通商を拡大したいという希望がございますので、その間の調整をどうするかということに関して、腐心をしておるというわけでございます。従いまして、一番厳格な線とゆるい線との間に、戦略的であるということをどういう線に引こうかということが問題なのであります。それをそういう二つの考慮から、適当といいますか、最もいいぐあいに調節しようという努力をしている、こういうわけでございます。
  103. 並木芳雄

    並木委員 アメリカにはさらにバト、法を強めて、中共貿易を制限して行こうという傾向があるのか、あるいはこれをゆるめて行つて、国際情勢に対処して行こうという傾向があるのか、どつちの傾向がうかがわれますか。
  104. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 先ほど申し上げましたように、アメリカ自身あるいはカナダもそうでございますけれども、中共あるいはソ連圏とは一切貿易をしないということになつておりますので、それをゆるめるというようなことは、私は毛頭考えていないと考えます。それからバトル法というのは、これはそういうものはやらないということを規定しておりますけれども、自分自身もその線を越えては一切やらないということにいたしておりますから、それ以上厳格にやりようがない。それからアメリカ考えといたしましては、おそらく他国がそれに載つている品目を出したならば、一切の援助を与えないということでございますけれども、その線は、アメリカといたしましては、なるべく厳格にシリアスにいたしたいという考え方であろうと存じます。
  105. 並木芳雄

    並木委員 もう一点お尋ねしておきます。今度の中共からの引揚げの情報でございますが、これは通商の方から考えた場合に、中共貿易の一つの糸口になるとお考えになりますかどうか。今までほとんどとりつく島のなかつたお隣の中共との貿易の糸口が、これによつて何らか打開されるのではないかということが考えられますが、たとえば今度インドを通じて中共と交渉をするような道が開かれたこと、あるいはまた赤十字の方の代表が中共に行くべき旅券を申請しているというふうなこと、さらに政府としても、今度は引揚げのためならば、政府代表を送るというようなことになつているそうですが、その通りであるかどうか。それならばまことに私けつこうではないかと思うのです。ぜひ政府の役人が行くように、その道が開かれて参りますならばいいと思いますが、その点実際そうなつているかどうか。そうするとこれが糸口となつて中共貿易にどのような影響を及ぼすと考えられるか。
  106. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 中共との貿易は、わが方では紡織機とか染料、そういうものは向うで引合いが非常に多かつたのであります。解除いたすまでは、そういうものは解除によりまして伸びるだろうということを期待していたのでありますけれども、最近の数字は、それを解除いたしました以前に比べても、非常に少くなつているのであります。たしかことしの六月くらいまでに二十七万ドルくらい出ております。その後はゼロであります。と申しますのは、これは向う側にもドルがない、それからバーターによらざるを得ない、しかもその場合に銀行をどうするか、それからどつちから先に出すかということが常に障害となりまして、先ほど申し上げましたように、わが方における品目の拡大にもかかわらず、一向見るべき成果がないのでございます。と申しますことは、原因がまつたく商業的な原困に基いているということをさすのだろうと思うのであります。今度引揚げが実現するということになつても、原因が純粋に商業的なものであります以上、これが動機となつて貿易に影響するということは、私は考えられないのではないかと思つております。
  107. 安東義良

    ○安東委員 今のは輸出面ですが、輸入面について、もう少しこちら側が骨を折つたらやる方法はないかという感じもするのですが、どううですか。
  108. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 私の方でほしいものは、何と申しましても鉄鉱石と石炭、それに大豆というふうなものが第一次の順位を持つのであります。ところが向う側におきまして範疇が三つばかりにわかれております。石炭を出す場合には何を持つて来い、鉄鉱石を出す場合には何を持つて来いというふうな相当きつい区分があるのでございます。そこでそれらの品物を持つて来る場合には、たとえば向うは鉄を持つて来いというふうなことを申します。その点でどうしても鉄を出すわけに行かない。そこに非常に大きなネックがございますので、今のところ大豆なり鉄鉱石なりというものが見合いの輸出品において頭打ちということでございますので、その障害が除かれない限り、輸入物資に関しても大した期待を持ち得ないのではないかと思います。
  109. 安東義良

    ○安東委員 今の引きかえの区分の問題ですが、いわゆる中日貿易を研究している人の話を聞くというと、それは融通性のあるものである、必ずしもそういうふうに厳格にやるものではないのだというようなことを言つて、可能性があるように話しておられた方もあるのですが、それはどうですか。
  110. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 公然たる交渉ができませんので、はつきりこうだということはむろん申し上げる立場にないのでございますけれども、非常に融通ができるように向うもかえたということは私も伺つております。現に石炭を出してそのかわりに紡織機みたいなものを持つて行こう——紡織機ならば出せるのでありますが、それを持つて行こうという話も、一部あつたというふうなことは私も聞いておりますけれども、まだそれが実現した例はございません。それができるかできないかは、おそらくもう少し時を待つてみなければ、わからないのではないかと思います。
  111. 安東義良

    ○安東委員 問題はそこなので、できる可能性があるということなら、必ずしも政府は先頭に立つ必要はないかもしれないけれども、あらゆる方法を通じて打開をして行くということを考える必要が私はあると思う。何もそうびくつく必要はない。この範囲内で要するにバトル法の精神をわれわれがくんでやる。あるいはアメリカ側と話があるその範囲内においては融通無硬にやるくらいの気持で、もつと積極的な意図をもつてつてもらわぬと非常に困ると思う。今の国民的要求は、何と申しましても、でき得る限り中日貿易をやつて行きたいという気持なのですから、政府もあまりびくびくしないで、できる限りの努力をするという方向に持つてつていただきたいと思います。
  112. 田中稔男

    田中(稔)委員 外務大臣に御質問したかつたのでありますが、外務大臣がお見えになりませんから、政務次官にかわつて御返答願いたいと思います。いわゆる中共地区からの邦人引揚げの朗報が伝わりますと、これは非常に国民的な関心を集めているのであります。政府もただちにこの問題に対処されまして、インド政府を通じて間接に表明された北京政府のこの問題に対する意向を打診するとか、あるいはまたそこにあつせんの労をとつてもらいたいとかいうことを、インド政府に申し入れられたということです。この政府の態度は私は国民に対して、特にまた中共地区からの引揚げを待つている相当数の国民に対して、きわめて親切な態度だと喜んでおります。そういうことから考えますと、政府はこのたよりをまじめなものとしてお考えになつていると私考えるのでありますが、どうでございましよう。
  113. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 お説のごとく、中共に抑留されている同胞の引揚げの問題については、国民的にも非常な重大関心事でございまして、政府といたしましても、今お話のあつたように、あるいはインド政府を通じ、あるいはまた日本赤十字を通じまして、その他引揚援護庁とも連絡をとり、あらゆる手段方法を通じまして、一刻も早く、また一人でも多く引揚げができますように、努力いたしているような次第であります。
  114. 田中稔男

    田中(稔)委員 しかるに現在台湾におります芳沢大使が、この報道が伝わりました直後において、こういう朗報を、これは中共政府の宣伝であるとかあるいは謀略であるとか、言葉はそのままでありませんけれども、そういうふうな批評をされたのでありますが、それは政府が現在非常に真剣にこの問題に対処されている態度とは違うのであります。芳沢大使の群動をどうお考えになりますか。
  115. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 私まだ芳沢大使がいかなることを申しましたか、聞いておりません。あるいは個人的なごく一つの私見として、そういうようなことも推測できるのではないかというようなことを話されたかもわかりませんが、それは私全然聞いておりません。
  116. 田中稔男

    田中(稔)委員 いやしくも一国を代表して外国に行つておられる芳沢大使としてそういう言動があつたとすれば、非常に不穏当だと思いますから、これはよく調べていただいて、もしそういう事実がありましたならば、政府としてもひとつよろしく御処置願いたいと思います。これは私の希望であります。  さらにお尋ねいたしたいのは、インド政府を介していろいろおやりになつた交渉の経過といいますか、それをおさしつかえなければ、できるだけ親切に御説明いただきたい。
  117. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 北京放送がありました一日、さつそく外務省といたしましては、インド大使館、また在印の西山大使を通じまして、インド政府にこの問題の解決をはかつていただくように懇請いたしたのであります。インド大使は一応快諾をせられておりました。私ども非常に喜んだのでありますが、その後インド政府といたしましては、何かすぐにも中共側と折衝するのに、どういう理由かわかりませんが、いささか躊躇しておるような向きも感ぜられたのでありまして、今日までわが方といたしましても再々お願いしたのでありますが、回答がございません。そこへ持つて来て、今度の再度の北京放送がありまして、外務省といたしましても、さつそく西山大使に再度、極力この問題の解決にインド政府を煩わすように訓令を発したような次第であります。
  118. 田中稔男

    田中(稔)委員 ごく最近に、御承知のごとく日本の赤十字社と日中友好協会と日本平和連絡委員会に対しまして、五名の代表者と二名の工作員を人選して送るようにという具体的な提案があつたのでありますが、政府といたしましては、もしできることなら政府代表を中国に送つて、ひとつ積極的にこの問題の処理に当りたいというお考えはありませんか、その点お聞きします。
  119. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 この点につきましては、昨日も岡崎外務大臣が引揚特別委員会におきまして御説明申し上げたのでありますが、できればこの問題は政府の代表を派遣いたしたい、かように考えております。それは配船問題あるいはまた経費の問題その他で、国費をもつて支弁しなければならない性質の問題も多々あるのでありまして、なおこれは国家的にも非常に重要な問題でありますので、でき得べくんば政府の代表を派遣したい、かように考えておるわけであります。
  120. 田中稔男

    田中(稔)委員 それで、政府の代表を送りたいという熱烈な御希望が政府にあることがわかりましたが、そのことを実現するために、具体的に一体どういう方法をお講じになろうとしておるか、またインド政府を介してお話になるのですか、それとも北京政府に直接交渉でもなさるのか、そのお考えをお聞きしたい。
  121. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 その点につきましては、先ほど申し上げましたインド政府を通じまして、折衝していただくようにいたしておるのであります。
  122. 田中稔男

    田中(稔)委員 さつき申し上げました三つの民間団体でありますが、この民間団体の代表者は、きよう午後赤十字社で集まつて。いろいろ相談をしておるようでございます。昨日の引揚特別委員会つたと思いますが、岡崎外務大臣の御答弁において、日本赤十字社はこれはけつこうであるけれども、日中友好協会と連絡委員会ですか、この二つの団体は、共産系あるいはその同調者の団体である、そうしてまた引揚げの仕事に何ら実績も持たない団体であるからこれは好ましくない、こういうふうなお言葉があつたように聞いておりますが、この点についてもう一度お考えをお聞きしたい。
  123. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 先ほど申し上げましたように、でき得べくんば政府代表を派遣したい、そうしてその際におきまして民間団体の御協力をできる限りお願いをする、こういう方針であります。今お話の中日友好協会また日本平和連絡委員会、こういう団体につきましては、いま少し問題が具体化してからお答えいたした方がいいのではないかと考えます。
  124. 田中稔男

    田中(稔)委員 問題はすでにもう具体化しておつて、きようすでに三団体が人選その他について協議をしておるというような段階に来ておるのであります。この日本平和連絡委員会は私は存じませんが、中日友好協会という団体は、私も若干関係があつてよく知つておりまして、委員各位にもひとつ御参考にと思つて、その協会の印刷物をお配りしておりますが、これをごらんになりましても、この団体は超党派的な性格を持つて、何も政治団体でなく、日本と中国の国と国、政権と政権とでなく、日本国民と中国国民との友好を回復するために、民間の運動としてやつておる団体であることは明瞭であります。さらにまた家族だよりなども四号も出しておりますし、それから中国に今残留しておる同胞ともいろいろな通信連絡のあつせんをしており、また残留している同胞からの送金の代理事務もやつておるというようなわけで、現在まで中国からの引揚者の問題につきましては、実績があるのであります。こういう団体について、岡崎外務大臣が昨日、これは何ら引揚げに関係のない団体だというふうにおつしやつたとすれば、私は非常にこの団体を誤解し、むしろこの団体を誹誇するものだと思うのですが、外務政務次官はどうお考えになりますか。
  125. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 お話の点は承つておきます。
  126. 田中稔男

    田中(稔)委員 その点は私不満足であります。何かひとつご意見なりお考えを承りたいと思います。私としては、これは誹謗だと思うのですが、外務政務次官がこれに対して御答弁がないとすれば、しかたがないといたしまして、さらに質問いたしたとい思います。これは私の希望にもなるのでありますが、向うからはこの三団体を指定して来ておるのです、これは相手あつてのことでありますから、日本政府の指定する団体のみ認めるということになりました場合に、相手国の政府としまして、それでは困るというような話になりました場合には、一体引揚げ問題については、日本政府はもう手を引くようなお考えなのかどうか、これは相手あつてのことでありますから、非常に重要であります。
  127. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 わが方といたしましては、先ほど申し上げるように、できれば政府代表を派遣したい、こうのであります。中共側がどういう考えを持つておられるか、その点明瞭でありません。従いまして、外務省といたしましては、インド政府を通じましてて、中共の意向を確かめ、また一方昨日も外務省情報文化局長談を発表いたしまして、中共側の反響がいかなるものであるかということも、実は情報文化局長談をもつてうかがつておるような次第であります。
  128. 田中稔男

    田中(稔)委員 質問はこのくらいで打切りますが、これは国民の要望でありますから、あまり政治的な立場に拘泥なさらないで、ひとつ円満な話合いで一日も早く代表を向うへ送つて、そうして引揚げ問題の実質的な解決を、一日も早く促進するように、さらに御努力願いたいと思うのであります。なお最後にお尋ねしたいのは、日本の方からは盛んに残留同胞を返せと言う。ところが御承知のごとく、戦時中日本に中国人の捕虜だとかなんとかたくさん連れて来て、そうして炭鉱その他で、非常に悪い条件のもとに使役した。そうして、そのために多数の犠牲者が出たことは、御承知通りであります。これは一昨年の国会でありますが、ここにおられます同僚の並木君あたりも、その事件一つであります花岡事件というようなものについて、いろいろ委員会で御質問があつたようであります。この花岡事件のほかにもいろいろありましたが、花岡事件の内容をごく簡単に申し上げますと、これは終戦間近の一九四五一年の七月、秋田県北秋田郡花岡町において、中国人の捕虜と労働者が、日本の軍国主義者及びその手先たちの手によつて、虐待または虐殺され、一挙にして四百十六名の死亡者を出した事件であります。その当時の責任者は一九四八年三月一日に、軍事裁判で一応処罰されましたが、しかし、ほんとうの責任者は、その追究を免れておるのであります。この事件の解決は、実はまだほんとうについていないのでありまして、その虐殺された多数の中国人の骨が、その後長く現場に放置されておつた。これを華僑の諸君や、今申しました日本中国友好協会の関係者がいろいろ奔走いたしまして、骨を拾つて、残つた骨は一定の場所に葬つて、そこで慰霊祭もやつたのでありますが、慰霊祭をやりましたその骨が、まだこれを中国に送還するに至つておらないのであります。現在浅草の慶寺に安置されておる。このことにつきましては、日本政府にいろいろ申しましても、てんとしてこれについて何らの同情ある態度を示さない。また日本に参つておりますところの国民政府の代表団も、このことにつきまして、あまり触れるのを好まないという状態であります。こういうふうにして、まだ多数の事件がありまして、それぞれそういう慰められない霊が、国に帰れないで迷つておるのであります。われわれはこの際、日本が中国に対しまして非常に罪悪的な侵略戦争をしましたこの事実に対して、深刻な反省を表わすために、また残留同胞を返してくれということを強く要望しますならば、ここにおいてわれわれは、こういう中国人に関する悉惨な事件の跡始末をする責任があるのではないか。このことにつきまして外務政務次官は、あるいは御存じないかもしれませんけれども、私はこの際引揚げ問題を促進するために、一言この問題に触れまして、日本と中国との国民的な感情をやはり融和するということが必要だと思いますので、所見を伺つておきたいと思います。
  129. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 いわゆる花岡事件なるものの詳細は私存じませんが、お話のごとくでありますならば、まことにお気の毒なことでありまして、遺骨がまだ浅草に安置してある、こういうことでありますならば、日本といたしまして、抑留せられております数万の同胞を、一日も早くこれを返していただきたい、こういうことを要望いたします半面におきましては、やはり中国のそういう犠牲者の遺骨につきましても、わが方といたしましては、でき得る限り、手厚いことをしてあげなければならないと考えておる次第であります。
  130. 高岡大輔

    ○高岡委員 私は政府当局にお伺いする前に、一言これは委員長に申し上げておきたいのでありますが、過般の本会議において、同じ外務委員である大橋委員が、これも同じ外務委員である中村委員に対しての言葉であります。私も大橋委員が指摘されたような同じ追放者であります。追放者が何かそういうことを話をすると、なまいきなような出過ぎたとでもいうか、そういつたような言葉使いでこれを扱われたのでありますが、はなはだ私は遺憾であります。大橋さんの経歴そのものは、私はよく存じませんけれども、想像するに、官吏でおありだつたと思う。官吏であれば戦時中は確かに戦争に協力された方である。終戦後大臣にまでなられた方だから、相当優秀でゑつて、むしろ人一倍戦争に協力された方だと思う。ただその当時位が下で追放にならなかつたというだけなのであつて、追放者の中村がいまさらそんなことを言う資森があるかというようなことをおつしやることは、はなはだ私は遺憾に思うので、きようは本人がいらつしやらないし、いずれ速記録を見て、ひとつこの問題は提起したいと思います。  私は今政務次官にお尋ねいたしたいのでありますが、これは政務次官でなく外務大臣の代理としてひとつお聞き取りを願いたい。それはさつきちよつとお言葉のうちにありましたが、インド大使の西山さんの話が出ました。これは話はまるで違うのでありますが、西山さんはインドにある日本人の在外資産の一部を日印の文化促進のために、友好促進のために、これを使いたいというような御意向があり、それには今インドで総理大臣をしておりますネール氏が、そういつたような意向を持つておられるというようなことを聞いておるのでありますが、これはまことにけつこうなことだと私は思います。ぜひそういうような取運びがで当るものであれば、そうした御処置といいますか、そうした方針をとつていただきたいと思うのであります。そもそも吉田総理大臣も、外務大臣も、口を開けば東亜の善隣友好であるとか、いろいろのことをおつしやるけれども、一体口だけでおつしやつたところで、何もなさらなければそれは結局ゼロはゼロなのであります。そこで一体、どういう形で善隣友好をやるかという問題であります。しかるに私は久しぶりに議会へ出て参りましので、この数箇月の間というものは、まつたくの陣がさの端つばで、俗に言うつんぼさじきにおつたものですから、よくわかりませんが、予算書その他を見ておりますと、まことに外務省予算というものが、驚くべきほど少いのであります。しかもそのうちのそういつた面に対する経費がまことに微々たるもので、私からいえばなきにひとしいような数字であります。こんなことで一体これが外務省だということが言えるか言えるかというような感じが私はする。そもそも昔は海外に対する貿易でありますとか、その他一切のものは悪いことだが、うしろに星かないしはいかりが光つてつた。またこの光の前にちらついておつたのが、外務省の今までの行き方だつた。これがいけないのだ。今度はそうした星やいかりではなくて、外務省が一番のバツクボーンとなつての海外のいわゆる発展といいましようか、そうしたことをやらなくちやいけない。その方々が口では善隣友好をおつしやるが、から手でこれをやろうという。平和というものはそう安くあがなわれるものではないのです。ある意味においては、私は人間の血を計算に入れない限りにおいては、戦争よりもむしろ平和を維持する方が金がかかると思うのです。ただ平和は人間の血を使わない。われわれは戦争を非常に忌避したりするのでありますけれども、金の面からいえば、戦争と同じほどの金を使わなければならぬことであります。過般来フリゲートをどうこうというようなことでしたが、あれを維持するにも相当金がかかりましようけれども、フリゲート一つで沿岸警備はできないのです。すなわち外務省のそうした善隣友好の手段といいますか、いろいろのことをやつて行くところに、初めて日本の沿岸警備ができ、日本が守られるのであつて、ただその方はアメリカから借りて来たからそれでいい、片一方はどうせ外務大臣が言えば、ないしは総理大臣が本会議で言えば、外国新聞記者がこれを外国へ報道するだろう、そうすれば向うでもこつちの気心がわかるだろうといつたような、そんな安つぽい考えで、私は善隣友好はできないと思う。かつて日本は第一次欧洲大戦直後、海外貿易の乱脈になつたときは、何とかこれを調整しなければならないというので、全世界に、たしか十八箇所と思うのでありますが、一番大きな機構が商品館、その次の機構が貿易あつせん所ないしは商品陳列館、そういつたようなものを各国のあちこちに置きまして、そうして日本の海外貿易の調整をやり、日本の経済の発展を計画したことがあります。それと同時に、その当時は相当民間団体というものはそれぞれできておつて、両国間の親善に寄与して参つたのであります。その当時貿易の方は当時の商工省がやつておりましたし、それから文化団体の方は外務省が相当力を入れておつたのでありますが、さてこのごろの外務省を見ますと、一向どうもやつていらつしやらない。なるほど今までは占領治下であつたから、外務省としてはそういう手が打てなかつたかもしれませんが、独立した今日においては、外務省本然の姿に返つていただきたい。むしろわれわれが平関家をこれから打つて出ようというときに、かつての軍部のあつた当時の外務省の力より以上の力がここに発揮されませんければ、海外との平和提携というものができない、善隣友好はできない、こう考えるのです。それにこのごろよく世間の人から向米一辺倒と言われる吉田外交なるものは、事実において東南アジア諸国にそうした手を打たないから言われるのであつて、いかにアメリカにわれわれが親しみを持つておりましても、東南アジア諸国、すなわち東亜全体に向つて、より以上大きな手を打つておれば、向米一辺倒ではない、これは比重の問題なのである。そこで世間の人が言うように、向米一辺倒ということがよいか悪いか、これはおのおのその主観によつて違いましようから、あえて申し上げませんが、一方において総理大臣は、確かに本会議でも予算委員会でも、また外務大臣も同じように、東南アジアの善隣友好ということを言つておられる。それからもう一つは、東南アジアの経済開発ということをまた言つておられるのでありますが、これもこの前も私はこの委員会で申し上げたように、この言葉が非常に悪い。これは先様から言わせると、日本の経済侵略、経済進出という言葉に受取れる、こういう問題から見ましても、現地にいわゆる文化センターとでもいいましようか、そうした民間団体がありますと、それがいろいろの情報を集め、いろいろ先様の希望を開いて、そうしてそのところでじつと経過を見て、大使館といいましようか、大使がじつとその民間の進み方を見ておつて、悪いものはこれは断ればよい。よいものはこれを取上げて、両国間のいわゆる国交問題にする。最初から大将と大将がぶつかつたのでは取引になりませんから、一応地ならしとでもいいましようか、それを民間団体にやらせる、こういうものを海外にどんどん置きませんと、今後の日本の善隣友好というものはできないと私は考える。この点を十分ひとつお考えになりますと同時に、昭和二十八年度の予算には、日本が真に平和をこいねがうものならば、この経費は惜しみなく、ひとつ大蔵大臣に迫つていただきたい。もしもこれがおできにならないくらいならば、私は外務大臣の不信任案を出すかもしれません。これはあえて脅迫ではありません。これは本気になつて私は外務大臣にこの問題を建言しなければならぬ。この意味におきまして、外務省の今後のいわゆる善隣友好の手段というものは、どういう形でお進めになるのか、私が今申し上げましたような形でお進めになるのか、その辺を一応お聞きしまして、その上でまた重ねて質問させていただきます。
  131. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 まことにけつこうな御意見でありまして、まつたく私ども同感でございます。わが国はお説のように、向米一辺倒ですべての政策を実行いたしておるというわけではないのでありまして、アジアに位する一国といたしまして、アジアの諸国と相提携し、お互いに採上長補短、善隣友好の政策を進めて参りたい、かように考えておるのであります。このためにはお話のように、ただ経済開発ということだけではなく、またそれも非常に大事な問題でありますが、その前にいろいろ相互の問の文化の交流というようなことも非常に大切でありまして、インドにおける在外資産をもつて日印の文化協会に寄付するというようなお話も、事情が許しますれば、ぜひともそうありたいものだと考えておるのであります。なお民間団体をもつて相互の善隣友好関係を推進して行つたらどうか、こういう御意見でありますが、この点につきましても同感でありまして、民間外交ということは今後非常に大事な問題であろうと考えております。またいろいろ文化の面におきまして、相互に提携して参る、こういう問題につきましては、今日におきましても、インドネシアその他から相当数の留学生も参つておるのでありますして、これは国際学友会をしていろいろの御便宜も供与いたしておりまして、来年度におきましては一層多くの留生生も参る予定になつております。そのための経費等も、来年度の予算で計上要求をいたしておるような次第であます。今日まで日本占領下にありまして、自主的な外交というものはなかつたのであります。従つて予算等も非常に貧弱になつていましたが、今後は日本としてまつたく独立国の外交、すなわち自主的外交を強力に進めて参らなければならないのであります。従つて予算等につきましても、でき得る限り努力いたしまして、目下大蔵省と折衝中であります。
  132. 栗山長次郎

    栗山委員長 高岡君、どうですか、もうやめたら。
  133. 高岡大輔

    ○高岡委員 ただいま委員長からの御注意がありましたから、一言だけ申し上げて、私の質問を打切りたいと思います。それはかつて日支事変当時でありましたが、蒋介石のもとから一人の学者が、インドにおけるタゴールのサンチニケタンの林間大学に行つております。この方が支那から見た東洋史を説明しながら、学生諸君と接しておつた。ただその一つのことが、いかにインドが当時支那に同情を持つたかということは、これはよく御存じのことだと思います。それが日本の方はどうかというと、なくなられましたけれども、ヨネ野口とタゴールとのけんかになつた。そういうことを考えてみましても、私はお互いに平和に手を握ろうとするには、あらゆる面の考え方と行動を起さなければならない、かように考えるのでありまして、ぜひそういう方面の経費は、来る昭和二十八年度の予算に強力にひとつ要求していただきたいと思います。
  134. 栗山長次郎

    栗山委員長 先刻の御慰談を参酌し、次会は公報をもつてお知らせすることにいたしまして、本日はこれで散会をいたします。    午後四叶十六分散会