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1952-12-17 第15回国会 衆議院 外務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月十七日(水曜日)     午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 栗山長次郎君    理事 池田正之輔君 理事 谷川  昇君    理事 松本 瀧藏君 理事 加藤 勘十君    理事 田中 稔男君       今村 忠助君    植原悦二郎君       木村 武雄君    近藤 鶴代君       中山 マサ君    西川 貞一君       馬場 元治君    松田竹千代君       森下 國雄君    山崎 岩男君       安東 義良君    楠山義太郎君       高岡 大輔君    並木 芳雄君       中村 高一君    松岡 駒吉君       福田 昌子君    帆足  計君       黒田 寿男君  出席政府委員         法制局次長   林  修三君         外務政務次官  中村 幸八君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         運輸事務官         (航空局長)  荒木茂久二君  委員外出席者         運輸事務官         (航空局総務課         長)      山崎  城君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 十二月十五日  委員中山マサ辞任につき、その補欠として山  村新治郎君が議長指名委員に選任された。 同月十六日  委員山村治郎辞任につき、その補欠として  中山マサ君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員大橋武夫辞任につき、その補欠として山  崎岩男君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 十二月十一日  海外抑留胞引揚促進等に関する請願平塚常  次郎君紹介)(第七一〇号)  同(岡本茂君外四名紹介)(第七一一号)  同(木村文男紹介)(第七一二号)  旧焼津飛行場の開放に関する請願西村直己君  紹介)(第七一五号) 同月十三日  姫子島周辺の駐留軍砲爆撃演習に伴う禁止区域  の解除等に関する請願西村茂生紹介)(第  八一〇号)  駐留軍徳山貯油所沿岸海面禁止区域解除等に  関する請願西村茂生紹介)(第八一一号) 同月十六日  沖繩奄美大島及び小笠原諸島の日本復帰促進  に関する請願池田正之輔君紹介)(第一〇三  八号)  駐留軍使用不動産返還に関する請願芳賀貢君  外一名紹介)(第一一六二号) の審査を本委員会に付託された。 同月十五日  海外抑留者引揚促進並びに留守家族援護の強  化に関する陳情書  (第七一六号)  操業漁船沖縄近海諸島寄港に関する陳情書  (第七一七  号)  韓国の海洋主権宣言線国連軍海上封鎖措置  に関する陳情書(  第七七三号) 同月十六日  諸国民平和大会出席者への旅券交付に関する陳  情書(第八三〇  号)  海外抑留者急速帰還及び戦争犠牲者等に対す  る援護に関する陳情書  (第八三一号)  海外抑留者引揚促進並びに留守家族援護の強  化に関する陳情書  (第八三二号)  引揚促進並びに戦犯者減刑等に関する陳情書  (第八三三号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日本国アメリカ合衆国との間の民間航空運送  協定締結について承認を求めるの件(条約第  二号)  在外公館名称及び位置を定める法律等の一部  を改正する法律案内閣提出第二号)(参議院  送付)     ―――――――――――――
  2. 栗山長次郎

    ○栗山委員長 ただいまから外務委員会を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の民間航空運送協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。本件に関する質疑を継続いたします。
  3. 並木芳雄

    並木委員 この民間航空運送協定ができ上りますと、両国国内航空はどうなりましようが。国際間の航空とともに、国内輸送できるかどうか、日本アメリカ行つてアメリカ国内輸送に従事することができるか、アメリカがこつちへ来て日本国内航空に従事することができるか、その点をまず伺いたい。
  4. 下田武三

    下田政府委員 御質問の点に関しましては、協定の第五条のBという規定がございますが、「各締約国は、他方の締約国航空機に対して、有償又は貸切でその領域内の別の地点に向けて運送される旅客貨物又は郵便物をその領域内において積み込む許可を与えない権利を有する。」つまり、日本飛行機アメリカ領域内で、アメリカ領域内の他の地点に向けて運ばれる旅客貨物郵便物等を積み込む許可を与えない権利を有するといいますことは、文理上は許可を与えないことができるということでありまして、もしできればそういうことができる建前になつておりますが、実際問題として、日米両国とも相手国航空機国内運送を許す意向はございませんので、実際問題としては行われないことになると思います。
  5. 並木芳雄

    並木委員 では連帯輸送の方はどうですか。
  6. 下田武三

    下田政府委員 第五条の規定は、いわゆる船の方で申しますと、カポタージユでございます。国内輸送だけを許可しない権利があるわけで、従いまして日本からずつと通して乗つているお客さんが、サンフランシスコからかりに、現在の線ではありませんが、ワシントンまで行くとしますと、日本から乗つて来たお客さんをサンフランシスコですべておろしてしまつて、もうサンフランシスコからワシントンまではアメリカ輸送だからといつて、全部おろしてしまうということは、必要ないわけです。連帯国際輸送で、東京ワシントン間の切符を持つておるお客さんは、おろさないでそのまま乗せることができるわけであります。ただ第五条の(B)に書いてありますことは、サンフランンスコで新たにワシントン行きのお客さんや荷物を積んではいけない、それだけのことであります。
  7. 並木芳雄

    並木委員 航空局長に、アメリカ中心とした日本国際航空のこれからの方針について伺いたいのでございます。今国際航空につき相当申請をしておる会社があると思います。アメリカの航路などに対しての申請状況はどうであるか、それに対して当局としてはできるだけ多くの会社許可する方針であるか、あるいはまた一社だけにするのか。私どもの考えとしては、こういう協定ができますれば、なるべく多くのものに許可を与えて、そうして日本航空が活発になることが望ましいのでありますけれども、そういう点、いかなる方針で臨んでおられるか、お伺いしたい。
  8. 荒木茂久二

    荒木政府委員 今国際線につきまして申請書三つ出て来ております。一つは、現在やつております日本航空株式会社でございます。一つは、大阪商船中心としまして、世界航空株式会社といいますか、そういう名称——アメリカのカリフォルニア・イースタンという、航空会社といいますか、飛行訓練学校で、終戦後マツツと申しておりますが、ミリタリー・エア・トランスポート・サービスというのがありますが、その下請をやつておる小さい会社でございます。それから飛行機乗員の協力を受けまして、なおその会社から四分の一の資本金出資を受けまして、開始しようとするものであります。先ほどの日本航空株式会社の分は、まだ南米との国と国との間の話合いができておりませんので、ひとまず南米までということで申請してございますが、今申し上げました分は南米まで申請いたしております。もう一つは、飯野海運株式会社が、現在羽田に飛んで来ておりますオランダのKLMと、トリツプ・チヤーターといつていいような内容の契約をするということで、羽田まで来ました飛行機飯野海運クルーつきでチャーターしまして、これをホノルルまで延ばして、ホノルルから東京へ帰つて来るこの飛行機は、またその後はそこでトリツプ・チャーターが切れて、オランダへ帰る。こういうもので、三つが今出ておるわけでございます。複数にして大いにやらすべしという御意見もございますが、ところが御存じのように、東京羽田に来ておる国際会社だけでも十一ございますし、世界各国至るところで猛烈なる競争を展開いたしておるわけでございます。アメリカ複数でやつておりますが、他のヨーロツパ諸国はたいてい一社でやつておるというような実情でございます。航空審議会答申では、国際線はさしあたり一社でもつて勢力を集中して、この激烈なる国際競争に耐え得るような態勢を立てるべきではないかというような答申をいただいております。いろいろ勘案いたしまして、目下いかにするかということを検討中でございます。
  9. 並木芳雄

    並木委員 滑走路の点でございますけれども、これなどもずいぶんこのごろは輻湊しておつて、一ぱいではないかと思います。新しい民間専門滑走路というものをやはりつくる必要が起つて来るのではないかと思いますが、その計画はありませんか。
  10. 荒木茂久二

    荒木政府委員 飛行場民間で設置するというような、そういつた熱が起りますれば、まことにうれしいことだと思うわけでございますが、実際は新たに飛行場を開設するといいますれば、たちまち既存の農地その他をつぶさなければならぬという状態でございまして、新たに大きい飛行場をつくるということは、遺憾ながら現在の実情では非常に困難でございますが、われわれといたしましてはそういつた計画が出て来ることを歓迎する次第であります。なお現在使つております飛行場で、発着の回数の多いものと申しますれば、羽田でございます。板付は別といたしまして、われわれの手に返つておる羽田でございますが、羽田の現在のキヤパシテイーから申しますと、なるほどラン・ウエイは少し短かい。それでもう少し延ばしたいと思いますが、現在のところすぐ滑走路を新設しなければならぬというほどの発着ではないと考えております。ただ東京付近小型機発着する飛行場がございませんので、何とかそれに適するような飛行場ができ得れば非常に仕合せということで、いろいろと考えておる次第であります。
  11. 並木芳雄

    並木委員 ただいま三つの大きな会社申請があるとのことでございますが、大体これは私も早く決定して早くその緒についてもらいたいと思うのですけれども、いつごろ最後の決定が行われますか。大体日本航空一本になる見通しが濃いのであるかどうか。
  12. 荒木茂久二

    荒木政府委員 私も一刻も早く国際航空をスタートしたいということは、並木委員とまつたく同様に感じておるわけであります。しからばいつごろまでに結論が得られるかという問題でございますが、これはできるだけ急いでおりまして、それは何月の何日までというふうに日を切つて今ここで申し上げるところまで来ておりません。  なお日本航空一本にまとまるかどうかという問題は、目下検討中でございまして、私からちよつと今申し上げにくい段階でございますので、御了承願いたいと思います。
  13. 並木芳雄

    並木委員 今まで外国から輸入された航空機の数量、種類、それはどうなつておりますか。それからなおいろいろ申請中のものがあると思います。この申請中のもの、それから今後それを許可する方針、そうしてこれに伴つて外貨割当ということが非常に重要だろうと思いますが、外貨割当は順調に行われておりますかどうか。そこでドルアメリカだけでなく、ポンドの英国などからも、アメリカ以外のところから外国航空機を輸入するように考えておられるかどうか、そういう点について……。
  14. 荒木茂久二

    荒木政府委員 ちようど今日現在の正確な数字はここに持つておりませんが、十一月一日現在で見ますと、単発機が十八機、双発機が二機、多発機というのは四発でございますが、四発が四機、ヘリコプターが二機、こういう数字に相なつております。その後私の記憶によりますと、ヘリコプターが三機追加になつております。なお既存ヘリコプター二機は障害を起しておるわけでございます。それから今年中に日航が申請いたしましたDC四がさらに二機追加される予定でございます。このドル外貨予算割当は、今までそう問題なく進行いたしております。なお外貨関係からポンド地域から大いに輸入しろというような意見があるわけでございますが、初期の段階でございますからそうやかましく言う必要もありませんが、あまりに機種が雑多になりますと、何と申しましても部品の互換性もございませんし、融通性もございませんので、あまり世界各国のいろいろな飛行機が見本のように入つて来るのもいかがかと考えておるわけで、将来の模様を見まして、そう機種が多くならないようにする方が将来のためによろしいのではないか、こういふうに考えております。     〔委員長退席谷川委員長代理着席〕 なお国内関係でいろいろな申請書が出ておる、それをどうするかというお尋ねのように今拝聴いたしましたが、航空機使用事業と申しまして、いろいろこのごろビラをまいたりなんかしておるような宣伝とか、写真測量とか、魚群探見というところまで近く行くと思いますが、そういつたいわゆる産業航空用事業をやる会社申請は十以上出ておりますが、これは飛行機も非常に安うございますし、目下のところ安全性の見地において支障のないものは、なるべく許可するという方針で、現在までに七社を許可しておる次第でございます。なおこの外貨の点につきましては、現在までの買付につきましては、比較的スムーズに行つておると申し上げてよろしいかと思います。
  15. 並木芳雄

    並木委員 もう一つお伺いしておきたいと思います。それはだんだん航空機が盛んになつて参りますと、国内航空だけならばいいですが、外国へ行く操縦士とか乗組員とかそういう者を養成して行く必要が出て参ると思います。とにかく言葉なんか違うところへ行くのですし、いろいろ戦前にはなかつたむずかしい状態が出て来ると思いますが、これに対応するためには、やはり政府としても民間航空乗組員養成所あるいは飛行機学校、こういうようなものを設置する必要が起つて来るのではないかと思います。そういう計画も万遺漏ないとは思いますが、どういうふうになつておりますか。     〔谷川委員長代理退席委員長着席
  16. 荒木茂久二

    荒木政府委員 まつたくわれわれもさように考えておりまして、戦前には非常にたくさんの優秀なパイロット、ナヴイゲーターその他の航空要員がおりましたものが、現在ではまだ日本航空の飛んでおる飛行機も、日本人の手でやれないという状態でございまして、これは一刻も早くこの状態から脱却したい。既存航空士を現在の定期飛行、その発達した技術に適応するように再訓練をいたしまして、一刻も早く飛ばしたいということに努力をいたしておる次第でございます。つきましては、再訓練学校といいますか、訓練所といいますか、そういつたものをぜひ来年度につくりたいということで、来年度の予算には要求をいたしておる次第でございます。ぜひ一刻も早く日本人日本の空を自由に飛びまわる態勢をつくりたいということは、私ども心から念願しておる次第でございます。
  17. 並木芳雄

    並木委員 その点まことにけつこうだと思います。もし来年度実現すれば場所はどの辺ですか、それから予算としてはどのくらい要求することになつていますか。
  18. 荒木茂久二

    荒木政府委員 場所につきましてはいろいろあるわけでございますが、何と申しましても既存のものを使わなければなりませんので、いろいろ検討いたしましたところ、焼津飛行場ですとビーコンもございますし、あそこがよいのではなかろうか、こういうふうに考えております。なお幾らの予算がいるかということでございますが、一応大蔵省に要求いたしておりますのは、飛行機その他いろいろなものを含めまして約九億円でございます。
  19. 安東義良

    安東委員 この協定は結局定期航空民間航空機に限るわけでありましようが、たとえば新聞社あたり等の持つておる飛行機で、今後対外訪問飛行なんということをやり得るわけです。そういうような場合には、この規定のうちでも相当適用し得る面があると思うのですが、この場合の手続はどういうふうになるのですか。
  20. 下田武三

    下田政府委員 この協定定期航空だけを規定しておるのでございまして、新聞社親善訪問のように臨時に外国に飛びたいという場合には、その都度関係国許可を求めまして、その許可を待つて初めて行い得ると考えます。
  21. 安東義良

    安東委員 この場合に、この規定であるいは課税あるいは課税免除その他の問題が当然に準用されてしかるべきわけですが、そういうようなことについては何ら話合いはなかつたのですか。
  22. 下田武三

    下田政府委員 そういう点は今度の協定締結交渉で別に両方とも取上げませんでした。その都度課税免除その他も交渉しなければならない問題かと思います。
  23. 中村高一

    中村(高)委員 民間航空機がこの条約に基いて運行されております場合に、事故が起る場合があると思うのでありますが、この事故に対してはどんなふうな解決をされるのか。御承知のように米軍飛行機方々に落ちまして、家を焼いたり、人間が死傷したりしている事例がたくさんあります。この損害賠償の問題について、いつも被害を受けました方は、アメリカ軍に対して手続がなかなかめんどうでありまして、思うように損害請求もできませんし、なかなか手取り早く損害補償が受けられないで困つておる事例がたくさんあるのであります。軍用機と違いまして、これは民間航空機でありますが、アメリカに属する民間航空機事故を起す場合もありましようし、また日本飛行機アメリカに参りまして事故を起す場合があると存じます。その起りました事故の処理はどういうような形で行われますか、その点をまず聞いておきたいと思います。
  24. 荒木茂久二

    荒木政府委員 これは国際民間航空条約日本が加入いたしますと、その第二十六条によりまして、「締約国航空機が他の締約国領域事故を起し、且つ、その事故死亡若しくは重傷を含むか、又は、航空機若しくは航空保安施設の重大な技術的欠陥を示す場合には、事故の起つた国は、自国の法律の許す限り国際民間航空機関の勧告する手続従つて事故の事情の調査を始める。右の航空機登録国には調査に臨む立会人を派遣する機会を与えなければならない。調査を行う国は、右の国に対して、その事項に関する報告及び所見を通報しなければならない。」こういうことになつておるわけでございまして、結局いわゆる飛行機に乗つておるお客さんの事故と、それが落ちたために地上の第三者に与えた影響というような問題が起り得ると考えますが、その問題につきましては、この航空条約に加入ができますれば、その線に沿つて行くことでございますし、なおそれに関連いたします他の条約もあることでございまして、日本がそれに入るということになりますと、その規定に従つて処理されることになるかと存ずるのでございます。  なお現在米軍飛行機日本国内に落ちたときの賠償等につきましては、実は私のところの関係でないので、詳細を存じませんので、お答え申し上げることができないわけであります。
  25. 中村高一

    中村(高)委員 米軍の方の飛行機事故につきまして、関連をいたしておりますから、この機会外務省の方から御答弁願つた方がいいと思います。軍の方の飛行機でありますならば、これは行政協定に基いて解決をされると思うのでありますが、大分この問題の解決が遅れて、民間側は迷惑をいたしておるのがたくさんあるのであります。それについては外務省の方ではどんなふうな御解釈でありますか、外務省の方からお答え願いたいと思います。
  26. 下田武三

    下田政府委員 行政協定の第十八条によりまして、米軍飛行機が墜落して、たとえば民家を焼いたとか、あるいは人間に傷害あるいは死亡のような事故を起したという場合の規定がございます。これは日本側で一応立てかえて払つて、そのつけをあと米国側にまわすということになつております。
  27. 中村高一

    中村(高)委員 そうすると、もしアメリカ飛行機が落ちて、これは上の方から落ちて来るのですから、こちらにはむろん過失はないのでありますが、これは日本政府で立てかえておいて、全額アメリカの負担になるのですか、それとも日本も何ぼか負担する、たとえば折半をするとか何とか、どういうことになるのですか。
  28. 下田武三

    下田政府委員 これも行政協定規定しまして、その損害を補填するために払いました賠償金額は、日米両国政府が合意する条件分担するということになつております。いかなる比率分担するかという点が、実はまだ両国間にきまつておらないのであります。これはアメリカ側日米半々分担すべきであるということを主張しております。日本側NATO協定にありますように、日本側は一でアメリカ側が三、三対一で先方が多く分担しろということを主張しておつたわけであります。そこで比率がきまりませんので、とりあえず行政協定をつくりますときには、両国政府が合意する条件分担するということにして、一応その問題を回避したわけであります。引続きこの問題は折衝しておるのでありますが、目下つております国連軍協定との関連におきまして、国連軍協定においては、わが方はNATOの方式、つまり三対一で、先方が三で日本は一しか分担しないということを主張しております。それで何とかしてアメリカ側をして、行政協定でも三対一の比率を認めさせようという努力をただいまいたしております。ただまだ問題は未解決でありまして、しかしその分担比率解決しないからといつてつておいては、実際に被害をこうむられた民間方々がお気の毒の次第でありまして、分担あとできめることとして、とりあえず日本側財政経費をもつて立てかえて払つておる次第であります。
  29. 中村高一

    中村(高)委員 どうも政府損害を受けた被害者との折衝の状況を聞いてみますと、いつも実害に対する外務省の方でくれる金額がまことに少いし、また支払いの手続がめんどうで、なかなか払われないのでたいへん迷惑をいたしておるようでありますから、その点については、ひとつ政府においても万全の方法をとつていただきたいという希望を、この機会に申し上げておきます。  なおただいまの民間航空の万一の場合に起きた事故についてでありますが、先ほどの御答弁にもあつたように、事故が起ると調査をするということは、国際条約の中にあるのです。双方から出て調査を行うような規定は確かにあるのですが、行政協定によりますと、損害賠償がちやんとできる。しかもこれは金額損害賠償ができる。そして日本政府を相手取つて民間人損害賠償請求をしてもよろしいということになつておるのであります。それは軍用機でありますから、そういう行政協定に基いて、はつきりと民事裁判権についての規定があるからいいのですが、この民間航空協定の中には、どこにもそういう場合の規定がないし、それからこの条約を見ましても、調査をするというようなことはあるのです。さらに進んで、それではどういう方法で、話合いがつかなかつた場合にはアメリカ会社を相手取つて訴訟を起すのか。それともこの行政協定みたいなものが準用にでもなつて、一時日本政府請求すればいいのか。そういうことがはつきりされないと、おそらくこれからもたくさん各国民間航空が参りまして、そうして相当事故の起ることも予想しなければなりませんので、そういう点について、国民に対する損害解決方法はつきりされなくては、民間にまた迷惑をかける場合も予想されますので、その点については、ただどうも国際条約事故調査をするという程度では満足できないのでありますが、もう少し何かはつきりしたものがこれからできるのか、今ある協定でも心配ないと言われるのか、この点をひとつ御説明願いたいと思います。
  30. 下田武三

    下田政府委員 ごもつともなお話でございますが、この協定は対象となつております企業が実は両方とも民間航空企業でございまして、行政協定のように軍用機、つまり国家の責任に属する問題と違いますので、この協定におきましては民間航空機事故に基く災害ということはこれは取上げないのであります。つまりそれは双方国内法の問題である。欧米等におきましては国内法におきまして航空災害補償法というような国内法措置がございます。民間航空輸送に従事する会社は、もし所属の飛行機事故が起つた場合のためにどういう保険をかけておかなければいかぬか、あるいはさらにその再保険の問題等も取上げまして、ある場合には国家が一部損害補償するような措置をとつておる国もあると思いますが、概してこれは国内法の問題であります。そうしてもし事故が起りましたときに、それではそういう場合どうするかといいますと、日本事故が起りますれば、当然日本の法令に従いまして、被害者は民事の責任を相手会社に提起して、国内法上の保護を求めることができる次第であります。そういうわけでございますから、この協定においては双方の国の民間航空会社が、どういう条件で乗り入れることができるかというような点のみを取上げた次第でありまして、具体的に航空機事故が起つた場合に損害をどうするかという点は、全部両国国内問題として、この協定の範囲外に置いておるわけであります。またこの協定のみならず、各国締結しております二国間の民間航空協定におきましても、そういうところまで規定しておる協定はございません。あげてこれ双方国内法上の問題として触れていない次第でございます。
  31. 中村高一

    中村(高)委員 そうすると、これは民間航空機であるから、一切は民間の普通の事故の処理と同じように扱えばいいのであつて、特にその点については規定しなくとも、一般の国内における事故の処理方法と同じ方法で処理される、こう解釈してよろしいですか。
  32. 下田武三

    下田政府委員 仰せの通りでございます。
  33. 中村高一

    中村(高)委員 この協定の第十五条に、この協定の解釈または適用に関して紛争の処理方法を定めている。紛争の処理というのは、何か仲裁で、仲裁裁判所を通じて処理されるというようなことが書いてあるのですが、これは両国航空上に関する紛争だけか、それとも何か事故なんかに関したものも、この紛争の処理の中に入るのでしようか
  34. 下田武三

    下田政府委員 第十五条の紛争の処理に関する規定は、この協定の解釈または適用に関連して起つた紛争のみの解決方法でございまして、航空事故等の紛争は、全然この協定関係がない次第でございます。
  35. 中村高一

    中村(高)委員 占領は終えましたけれども、とにかく行政協定でいろいろの軍事上の制約を日本は受けているのであります。この国際航空も結局安保条約なり、あるいは行政協定で定められた軍のいろいろの制約はまた受けるのだと思うのですが、その点については行政協定との間の関連はどういうふうになるのでありましようか。
  36. 下田武三

    下田政府委員 この協定に基く両国民間航空輸送と安保条約行政協定とは全然無関係であります、何らの影響も受けておりません。
  37. 安東義良

    安東委員 先ほどの並木君の御質問に対して、航空局長の方から御答弁がありまして、その中にただいま申請している飯野海運の方でKLMの飛行機東京からハワイまでチャーターで飛ばす、そういうような計画もあるというお話でしたが、そういうような場合にこの協定それ自身は、飛行機の実質的な所有あるいは実効的な支配がなくてもさしつかえないのか、その点の御解釈。第九条とも関連しますけれども、第九条を見ますと、航空企業といつている場合に飛行機を別にしてあり得ないので、むしろ飛行機の所有あるいはその実質的、実効的支配、それ自体が大きな要素になるというふうにも考えられる。してみればこれはチャーターを一応は原則的には認めてないのではないかという疑いも起るのですが、この辺の解釈をはつきりしておいていただきたい。
  38. 下田武三

    下田政府委員 第九条の「航空企業の実質的な所有及び実効的な支配」ということが書いてございますが、これはたとえて申しますと、今の飯野海運の問題で、飯野海運の株式を五一%以上もKLMが持つているとか、アメリカが持つているとかいうような場合、あるいはその重役その他のマネージメントを外国人が実際やつているというような場合の規定でございまして、飯野海運オランダ航空機をチャーターで借りる、借りた以上はその航空機をどう動かすかということは、借主の飯野海運が自由にきめられるわけでありますから、チャーターの場合に実効的支配が飯野海運にないというようにはとれないで、飯野海運がチャーターしましたKLMの飛行機を自由に使う場合には第九条の問題は起らない、さように解釈いたします。
  39. 安東義良

    安東委員 けつこうです。
  40. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は全般的に見まして、わが国と連合国との間の航空条約には、非常に不平等があると思います。それでお伺いしてみたいと思いますが、わが国は「一又は二以上の連合国の要請があつたときはすみやかに、当該連合国と交渉を開始するものとする。」とこういうように平和条約ではなつておりますが、そうしますと、もし連合国の要請がないときには、わが国の方から進んで連合国中の任意の国に対しまして、民間国際航空運送協定締結の交渉をすることができないというようになつておると思うのです。相手方が意思があれば航空協定締結の交渉を開始することができるけれども、わが方からはこの協定締結の交渉の申出をすることができないというようになつておるのであります。この不平等があると思うのでありますが、これはこちらから道を開く方法はないのでありましようか、どうでしようか。
  41. 下田武三

    下田政府委員 平和条約第十三条(a)の規定は、仰せの通り不平等な規定でございます。つまり向うが航空協定締結を提議したら日本はいやとは言えぬ、必ず交渉を開始しなければならぬ義務があるわけです。しかし、この規定はそれだけのことを規定したのでありまして、その反対に、日本側から航空協定締結を提議してはならぬということは書いておりません。従いまして、それは自由に残された分野の問題でありますから、わが方は、必要と認めましたら、どんどん航空協定締結を申し込んでいいわけであります。
  42. 黒田寿男

    ○黒田委員 その点ははつきりいたしました。その次にお尋ねしたいと思います。通商条約締結につきましては、待遇の許与につきまして相互主義がとられておると思います。平和条約においてそういうようになつておると思いますが、民間航空運送協約については、相互主義がとられていないように思うのですが、私はこの差がどうしてできたものか、それについて疑問を持つております。これをひとつ御説明願いたいと思います。
  43. 下田武三

    下田政府委員 まことにごもつともな点を御指摘くださいましたが、確かに通商航海条約についての平和条約第十二条の規定によりますと、相手国日本に与える限度で、最恵国待遇を与えればいいということになつております。ところが第十三条の(b)の方に参りますと、日本である一国が航空輸送について特権を与えられておると、他のすべての国も、少くもそれと同一の特権を享有するということだけ規定しておりまして、相互主義の条件で、日本側航空機が向うで受けるだけの特権を与えればいいというような対応した規定がないのは事実でございます。平和条約の折衝の際に——私、関係いたしておりませんが、第十二条の通商航海条約の問題になりますと、現実に日本のビジネスマンも行つております。また領事官その他も行つております。従つて、講和発効の当初からすぐ相互的に最恵国待遇を与えるという問題が発生いたします。しかしながら、平和条約締結されたときに、まだ日本民間航空外国にまで国際航空をやるというような問題が、現実の問題になつていなかつたからではないかというように推察いたします。それで御指摘のような不平等が起りますので、まさにその不平等を解決して相互主義に直すというのが、アメリカを初めといたしまして、今後一連の国々との間に民間協定締結して行こうという目的であります。この二国間の航空協定締結いたしますと、今まで一方的に日本が与えておつた利益を、相互主義で日本も同様に得るわけでありまして、御質問の点は、まさにこの協定の最も重要な意義の点に関連して来る次第であると存じます。
  44. 黒田寿男

    ○黒田委員 そういうわけで、とにかく条約面では不平等になつてつたと思います。そこで次にお尋ねしたいことがあります。アメリカはもとよりでありますが、イギリス、フランス、カナダ、オーストラリア、フイリピン等の航空会社に対しまして、わが国の領土内への乗入権を日本は認めておりす。わが国からのそれらの国に対する乗入権につきましては、これは、先ほどのお話によりますと、平和条約第十三条(a)は、わが国からの航空運送協定締結の交渉の開始を妨げるものではないという御解釈でありましたが、そういたしますれば、こちらから適当に乗入権の獲得について交渉をすれば、条約上は決してできないことにはなつていないという解釈になるのでありますか。
  45. 下田武三

    下田政府委員 仰せの通りでございます。
  46. 黒田寿男

    ○黒田委員 それからもう一つお尋ねしたい点がありますが、平和条約締結いたしましたときに宣言が発表せられております。宣言は二つありますが、その第一の宣言の3によりまして、わが国は、平和条約の最初の効力発生の後六箇月以内に、一九四四年十二月七日にシカゴで署名のために開放された国際民間航空条約への参加の承認申請し云々ということになつております。その他の協定についても規定をしてありますが、これは省略します。これはちよつとお聞きするだけでありますけれども、この平和条約の最初の効力発生後六箇月以内という期間はもう過ぎております。この条約への参加は、外務委員会ではまだ問題になつていないように思いますが、この条約への参加の承認申請だけはされているのでありましようか、もしされておるならば、外務当局としてはいつなさいましたか。
  47. 下田武三

    下田政府委員 この平和条約の宣言の規定に基きまして、わが国は申請規定通りに六箇月以内にすでにいたしておるわけであります。
  48. 黒田寿男

    ○黒田委員 申請に対する相手方からの意思表示はどうなつておりますか。
  49. 下田武三

    下田政府委員 実はこれが非常に困難な問題なのであります。と申しますのは、シカゴ条約の第九十三条だつたと思いますが、これに、旧枢軸国の日本やドイツ等の加盟についてむずかしい条件があるのであります。それは、日本なりドイツなりが第二次大戦中に戦争した国のうち一国でも反対があつたらこの加入はだめだ。たとい多数決で日本の加入が支持されても、日本が侵略した国の一箇国でも、日本の加盟にオブジエクシヨンを持ち出したらだめだという、日本にとつて不利な規定があるのであります。それで、実は結局国際民間航空機関の総会できまるわけでありますが、その前に国連総会でやはりこの問題を審議することになつておりまして、今回の国連総会で日本国際民間航空機関加入の問題が取上げられまして、幸いにフイリピン一国の棄権があつただけで、他の国はすべて賛成してくれました。それでおそらく民間航空機関の総会は来年の六月ごろに開かれるのではないかと思いますが、日本の加入の見通しは、私どもが当初予想しておりましたよりも、楽観的にこのごろ見通しておる次第でございます。
  50. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうしますと、正式にその条約の調印国となるまでは、平和条約第十三条の趣意で行く、こういうことになるわけですか、そういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  51. 下田武三

    下田政府委員 はあ。
  52. 黒田寿男

    ○黒田委員 最後にもう一点だけお尋ねします。先ほど申しましたイギリス、フランス、カナダ、オーストラリア、フイリピン等の領域に対するこちらからの乗入権の問題ですが、政府は今そういうことをお考えになつておりますかどうか。現在では向うから来ているだけで、こつちの飛行機は行つていない。これは日本の実力上の関係でそれだけの航路が開けるかどうか、いろいろな問題がありましよう。またいろいろな政治的な問題もあるかと思いますが、政府としましては、これらの国に対する日本民間航空の乗入権に関する問題に関して、積極的なお考えを持つておいでになりましようか。現在何か計画があるのでありましようか、お答え願いたいと思います。
  53. 下田武三

    下田政府委員 カナダ、イギリス、オランダ、フランス、ベルギー、スウエーデン、フインランド、デンマーク等一連の国々と、目下航空協定締結交渉をやつております。その締結交渉をやつておるということは、その協定の附表で定められます路線に、わが方からも乗り入れることができる権利を確保しようということを目的としているわけであります。従いまして協定ができますれば、わが方も先ほど申し上げました国々の領域に、民間航空を乗り入れて行くことができることになる次第でございます。
  54. 黒田寿男

    ○黒田委員 わかりました。これで質問を終ります。
  55. 栗山長次郎

    ○栗山委員長 あらためて逐条審議はいたしませんが、条文に関する御質疑がありましたら、お進めを願います。ほかに御質疑はありませんか。——それでは本件に関する質疑を終了することといたします。  お諮りいたします。本件は討論を省略して、ただちに採決いたしたいと存じますが、御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 栗山長次郎

    ○栗山委員長 御異議がなければ、さように決定いたします。  それでは採決をいたします。日本国アメリカ合衆国との間の民間航空運送協定締結について承認を求めるの件を承認すべきものと議決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  57. 栗山長次郎

    ○栗山委員長 起立総員。よつて本件は承認することに決定いたしました。  なお本件に関する委員会報告書の作成は、委員長に御一任を願いたいと思いますが御異議ありませんか。     〔「異議なしと呼ぶ者あり〕
  58. 栗山長次郎

    ○栗山委員長 御異議がなければさようとりはからいます。     —————————————
  59. 栗山長次郎

    ○栗山委員長 在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案を緊急に議題とさせていただきます。政府側から提案理由の説明を聴取いたします。中村外務政務次官
  60. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 それでは在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案の提案理由及びその内容を御説明いたします。  すでに第十三回国会において、在外公館名称及び位置を定める法律及び在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律が制定せられ、昭和二十七年度におきまして、大体において設置する見込みがあると考えられました在外公館に限つて法律として制定せられたのであります。その後、相手国との交渉により、七在外公館、すなわち在中華民国日本国大使館、在ジヤカルタ、在ラングーン、在ヘルシンキ、在ロンドン、在プレトリアの各日本国領事館及び在リマ日本国領事館を増置する必要が生じましたので、右の法律が制定せられましたときに説明申し上げました通り、国会閉会中または特に緊急を要する場合であれば、政令により在外公館を増置することができるように外務省設置法第三十四条第二項に規定してありますので、在外公館増置令をもつてこれら在外公館が増置せられました。これに伴い、これら在外公館に勤務する外務公務員に支給する在勤俸の支給額を定める必要が生じましたので、在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律第九条の規定に基き、在外公館の増置に伴う在勤俸の額の設定に関する政令が制定せられました。従つて右第九条の規定に基き、最近の国会たる本特別国会において、在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する必要があるわけであります。  政府としましては、在外公館の設置については、必要最小限度にとどめ、たとい名目上のものといえども、これを制限いたしております。たとえば同一国に大公使館が設置せられる場合は、領事事務に関しては、大公使館の中に領事部を設け、大公使館員をもつてこれを兼任せしめる方針であります。しかし相手国が、たとえば在ロンドン日本国大使館のように、大使館員をしてその肩書のもとに、領事事務を行うことに難色を示す場合は、法制上総領事館を設置しなければならぬ次第となるわけであります。  今次増置されました七在外公館について総括的に見ますと、このうち実質的に新設と見られるものは、在ヘルシンキ総領事館のみでありまして、在中華民国大使館は、外交関係の進展に伴い、既設の在外事務所を大使館に発展せしめたものであり、在ジャカルタ、在ラングーン、在プレトリアの三総領事館は、法律上すでに設置せられた大公使館を外交関係上、特に相手国国内政治的関係から総領事館として発足し、当面の領事事務を処理するとともに、将来の国交を促進せんとするものであり、また在リマ領事館も相手国の要求と領事事務処理の便宜のため、法制上設置するにとどまるものであります。またこれら在外公館に勤務する外務公務員に支給する在勤俸に関しましては、実質的に新設と見られる在ヘルシンキ総領事館については、既設在外公館分について算定したと同じ方法で算定いたし、それ以外の六在外公館については、在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律制定の際、すでに御審議いただいたものと同一内容のものであります。  以上が在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案を提案する理由及びその内容の説明であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いします。
  61. 栗山長次郎

    ○栗山委員長 これから質問を許します。
  62. 安東義良

    安東委員 日本とフィンランドとの最近の関係ちよつと説明してもらいたい。
  63. 下田武三

    下田政府委員 私の主管ではございませんが、承知しておりますところだけを申し上げます。日本といたしましては、ソ連並びに共産主義圏内にただいま在外公館を持ち得ないことはもちろんでございますが、外務省といたしましては、それらの地域に出先を持たないことから来る重大な欠陥がございます。それはそれらの鉄のカーテンの向うの情勢が非常にわからない。この外交政策立案上必要な情勢判断の場所を求める必要があるわけでございます。その見地からいたしまして、鉄のカーテンの外にある便利な地域すなわちユーゴスラビアでありますとかフインランドでありますとか、そういうところに在外公館を持ちたいという希望は前から持つておりました。しかしながら相手国との交渉を伴いませんことには設置するに至りませんので、本年の初めからこのフインランドにおける出先機関の設置の話合いをしておつたのでありますが、まだ先方も外交関係を開くというほどの意思を持つておりませんので、さしあたり総領事館を相互に設置して、通商その他の事務をつかさどらせるようにすることが適当である、という両国意見が一致いたしまして、このたびフィンランドに総領事館を置くということにいたしまして、すでに先方からは総領事も参つております。日本からは油橋総領事が任命せられて、すでに先方に着任しまして活動を開始しております。これによりまして、さきのユーゴスラビアの公使館の設置と相まちまして、鉄のカーテンのこちら側に、外務省としては重要な出先をさらにもう一つ持ち得ることになつた次第でありまして、外務省といたしましては、その点は非常に便利を感じつつあります。
  64. 安東義良

    安東委員 これはまことにけつこうなことで、ぜひやらなければならぬことでありましようが、もう一歩進めて、やはりあそこには公使館を設置するように、ことにフィンランドが総領事館をつくることについて異議もないし、また向うもすでによこしておるということは、ある程度の熱意を示しておることでありますから、なお努力して正常な外交関係を復活するようにやつていただきたいと思います。
  65. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 ちよつとお尋ねいたしたいのですけれども、大使館と公使館との設置の基準になりますのは、どういうものが基準になるのでございましようか。
  66. 下田武三

    下田政府委員 御承知のように、戦前日本が持つておりました大使館の数よりも、戦後日本が持つに至りました大使館の数の方が、ふしぎな現象でございますが、はるかに多いのであります。私昨年の初めにヨーロツパに参りまして、オランダに一年余り在勤いたしておりましたときに驚きましたことは、戦前は大使の数は非常に少かつたのでありますが、それが各国とも大使に格上げしております。これは各国とも自尊心もあると思いますが、たとえばオランダのような国について見ますと、オランダ戦前はどこの国とも大使を交換しておりませんでした。御承知のベルギーも第一次大戦まではどこの国とも大使を交換しておりませんでした。それが第一次大戦でベルギーが連合国側で非常に敢闘したというところから、ベルギーが大使を交換する国であるというように各国とも認めまして、ベルギーも大使を持つようになつた。それと同じ理由で、第二次大戦中オランダが女王様以下亡命して非常に苦心さんたんして、とにかく戦い抜いて、また女王様を迎えて再建に乗り出したという、非常にけなげなオランダの敢闘をアプリーシエートして、各国も大使を交換するようになつたのであります。そこで私在外事務所長としておりまして、外交再開後オランダに大使を置くべきか、公使を置くべきかという問題について、本省に意見を具申しなければならない地位に立ちまして、オランダ側は非常に日本から大使を迎えたがつてつたのであります。それはオランダの目から見まして、日本は何と申しましてもアジアのリーデーイング・パワーであるということが明らかでありますのと、もう一つ日本は旧オランダの植民地でありましたインドネシアに大使を置いておるではないか、今まで自分の国の植民地であつた国に大使を置いていながら、本国のおれの方に公使——事実当時日本の新聞報道で、オランダには公使が置かれるという情報が参りまして、非常にそのときオランダ政府国民が不愉快に思いまして、ぜひ日本からは大使を送つてくれという意思表示がございまして、それを取次いだような次第でございますが、そのような領土、人口から見ましても、率直にいえば小国であつた国が、第二次大戦後行つてみますとみな大使を交換しておる。何も日本の方から大使をたくさん出そうという希望に基いたものでなく、相手国側の事情から戦後大使館がふえた。でございますからお尋ねの大使館と公使館といかなる基準によるかという点になりますと、こういう基準でございますという一定の線を実はお示しいたしかねるのでありまして、それぞれ当該国が国際的にいかなる地位に目されておるか、また当該国と日本国とはどういう関係であるかということを、やはり個々の国について検討いたしまして、決定するよりほかない問題と存じます。
  67. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 そういたしますと、相手国日本に対する考え方、国際的な地位ということが基準になる、かように考えてよろしゆうございますか。そのような基準で考えて参りますと私ども日本の大使館及び公使館の一覧表を見せていただきますと、たとえばスカンジナヴイアの諸国でございますが、スカンジナヴイアの諸国のような長い間世界平和のために貢献し、しかも戦前、戦後を通じて日本に非常に不利な場合に、スウエーデンのごときは日本の利益代表として、非常に日本のために努力をしていただいた国でございますが、こういう国に相かわらず公使館というような、私たちが考えますと、大使館より低い地位に置いておるし、台湾には大使館を置くということは、日本外務省の考え方としては、きわめて矛盾しているような感じがするのでありますが、当局としてはいかにお考えでございますか。
  68. 下田武三

    下田政府委員 スウエーデンはアメリカとイギリスが大使を交換しておりますが、大部分の国とはいまだに公使でありますので、日本といたしましても、スウエーデンと今ただちに大使交換になるというには多少時期が早いように思います。また台湾の問題は、これは前国会でもいろいろ御議論がございましたが、わが方の考えといたしましては、今は台湾しか支配してないけれども、中華民国という考え方から申しますと、これは日本の隣邦で、歴史的にも非常な重要性を持つた国であるという見地から、戦前に大使を交換しておりましたと同様の見地から、やはりこれと大使を交換いたしまして、均衡を失するところがない、そういう考えに基いておるわけであります。
  69. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 御説明よくわかりましたが、私どもは多少意見を異にいたしておりまして、たとえばスウエーデンのような、そういつたスカンジナヴイアの国にこそ、日本が率先して大使館を置くべきであるということを私どもは考えております。また台湾にいたしますれば、これはまたまさに政府のお考えとあべこべでございまして、私どもは台湾のあの小さな島の蒋介石政権が、支那四億を代表する中華民国の政府とはどうしても考えられないのでございます。そういうことが将来起るかどうかもわからないような、きわめて可能性の少い推定のもとに、先んじて日本が大使館を置くということは、どう考えても私どもは賛成できない点でございます。外務省におかれましても、もう一応御反省をお願いいたしたい。  次にお尋ねいたしたいのは大使館とか公使館の仕事の内容、これはいかなる内容の仕事を取扱うのでございますか、その事務の内容をお伺いいたします。
  70. 下田武三

    下田政府委員 事務の内容は、大使館と公使館とでは全然差異がございません。ただ国際法上認められたランクの違いがあるだけでございまして、事務の内容は全然同一でございます。
  71. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 これも希望条件でございますが、日本の外交陣営というものは、私たち民間人から考えますと、戦前でさえも非常に軟弱外交で、お体裁外交だといわれておりましたが、現在はなおそれがひどいのではないかという感じがいたすのでございます。日本在外公館として、私どもがざつと考えましても、気持よく動いていただけるのは、ヨーロツパでは英国とスカンジナヴイアの公使館ぐらいではないかということを考えさせられるのでございまして、いたずらにスタイリストで、お体裁ぶつていて、お行儀ばかり知つてつて日本人の体面ということになりますと、きわめて卑屈であるという印象を、私どもは外交官から受取るのでございます。ことに外国へ参りますと、日本の大使館、公使館へ行つて、私たちは不愉快に思うことが非常に多い。むしろ外人にいろいろなお世話の御配慮を願つた方が、よつぽどさばきがよくて親切だという印象すら受けるのでございます。日本人でさえそうでございます。こういうような在外公館を置いておつて、しかもそういう陣容によつて日本の外交陣営を固められているということは、日本の外交政策として非常にマイナスだということを感ずるのであります。この点もどうか外務省としては、そういう人となりの問題もありましようが、人選においてもまた事務の取扱いにおいても、十分慎重な御配慮を願いたいということを、希望として申し上げておきます。
  72. 栗山長次郎

    ○栗山委員長 一応御質問が終つたようでありますが、ほかに御発言がございますれば、どうぞお願いいたします。
  73. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 私ども社会党左派として、政府原案に対しまして修正案を出します。修正案を私から朗読いたします。   在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案に対する修正案  存外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案の一部 を次のように修正する。  そういうわけで修正案を出すのでおりますが、その趣旨を弁明いたしたいと思います。中華民国と申しますのは、端的に申し上げますと、現在台湾にわずかに残存しておりますところの蒋介石政権のことをさすものだと思うのでございますが、われわれは隣邦中国というものを考えました場合には、こういう残存政権を相手として国交の回復をはかるということは、かえつて今後長きにわたる日本、中国の友好関係にかんがみて、非常に憂慮すべき事態を惹起すると思います。  御承知のごとく、現在中華人民共和国というのが建国いたしまして、すでに三年間以上を経過している。三年間の実績に徴しましても、この政府は中国四億七千五百万の国民に対しまして、確固たる支配権を打立てております。国民もこの新しい政府のもとにおいて、鋭意祖国の復興、さらにまた建設にいそしんでおるのであります。われわれは二千年来の日本と中国との友好関係の伝統にかんがみまして、また当面日本日本の経済の自立をはかるためには、どうしてもこの中国と全面的に貿易関係を打開しなければならない。こういう事情から考えましても、われわれとしては、中華民国を相手にし、その政府のあります台北に大使館を置き、一方には北京政府との間では何ら国交再開の努力をしない、こういうふうなことでは、とうてい日本としては将来アジアにおいて円満な善隣外交を進めて行くことができないと思うのであります。私どもはそういう根本的な立場から、台北に在中華民国日本国大使館を設置することに対しましては反対するのであります。これが私どもの修正案の趣旨であります。
  74. 栗山長次郎

    ○栗山委員長 ただいま田中稔男君から、本案につきまして修正案が提出されました。これについて御質疑があれば許します。
  75. 安東義良

    安東委員 ただいまの社会党左派の修正案の御趣旨は、一応拝聴いたしましたが、すでに中華民国との間に講和条約ができておる。そして外交機関を設置するのは当然のことなので、その場合に大使館を置くが、公使館を置くかという問題はあるでしようが、ここから全然抹殺してしまうということは意味がない。それと同時にやはり従来の伝統もありますから、台北に大使館を置くということはけつこうなことなのです。将来中共を承認したあかつきには、また考えられることでありますけれども目下の問題としてこれに反対すべき理由はないと思いますので、遺憾ながらこれには賛成しかねるのであります。
  76. 栗山長次郎

    ○栗山委員長 ただいま社会党左派から本件に対する修正案が出ましたが、これに対する政府側の見解を聴取いたします。中村外務政務次官
  77. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 社会党左派から、中華民国大使館を削除するような修正案が御提案になりました。本件に関しましては、すでに本年八月五日、中華民国と日本国との間におきまして、平和条約締結せられまして、すでに非常に緊密な間柄にあり、経済的にもあるいは地域的にも、きわめて密接な関係があるのでありまして、今後一層日本国といたしましては、中華民国と貿易その他の関係を推進して参らなければならないと考えるのであります。かような既成事実のもとにおきまして、突如として中華民国大使館を削除するという御提案に対しましては、政府といたしまして応ずることができないのであります。  以上簡単でありますが、政府意見を申し上げます。
  78. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの次官のお答えでは、どうも本質的な問題に触れておりませんので、これはやはり外務大臣がお見えになつたときでないと無理ではないでしようか。
  79. 栗山長次郎

    ○栗山委員長 それは一般質問のときに、念を入れておやり願うことにいたしまして、本案に関する質疑はこの程度といたします。     —————————————
  80. 栗山長次郎

    ○栗山委員長 次にもう一つ臨時に並木芳雄君の質問に対して、ちようど法制局次長が見えておりますから、宿題になつておる回答を願います。
  81. 並木芳雄

    並木委員 林さんはこの前おりませんでしたので、私の質問がよくわかつていないと困りますから簡単に申し上げますが、今全国駐留軍に勤めておる民間警備員、CPと申しますものが約三万名おります。その方々にはアメリカの命令と称して銃砲が持たされておるわけです。ところが、先般起つた事故のときに、はしなくも、日本人は銃砲刀剣類等所持取締令にひつかかつて持つことができないのではないか、それにも違反するのだという疑問がここに起つたわけです。それでどうしてもこの疑問を解決しておいていただかないと、三万人に上る多数の日本人が、去就に迷うという事態ができて参りましたので、はつきりひとつその点を説明しておいていただきたいと思います。
  82. 林修三

    ○林政府委員 お答え申し上げます。これは結局私どもの考えといたしましては、この行政協定の第三条をごらんになりますと、行政協定の第三条の1には、合衆国は施設及び区域内において、これを防衛する権利、権能、権限を有するということがございます。従いまして、合衆国側といたしましてはもちろん軍隊の駐在を認められております。その軍隊が武装しておることもこれは常識だと思うのでございますが、この合衆国側が日本の施設、区域内におきまして、自己の軍隊をもつてそれを防衛する。あるいは日本人の雇人を雇つた場合において、それに武器を持たせる、ここまでこの第三条の趣旨において認められた趣旨であろうと考えるわけです。当然合衆国側の定めるところによつてそういう防衛の措置をとるということを認めた趣旨だろうと思います。従いまして、銃砲刀剣類等所持取締令には、法令により職務として持つ場合には許すということになつておりまして、——法令という意味は非常に広い意味でございますが、法規上認められておればよろしいという意味でございますので、行政協定第三条から出て来るものとして、やはり正当に持つておるものと考えざるを得ないと存ずる次第であります。ただこの点につきましては、しからば行政協定に伴つていろいろ立法する際に、なぜ立法をしなかつたかという御疑問も起るかと存ずるのでありますが、これは事情を申し上げますと、武装ガードの問題につきましては、実は日米合同委員会におきましても、日本側も多少違つた意見を持つておりまして、今折衝中でございます。そういう関係もございますので、日本側が先に立法措置をとつてしまいますと、その点日本側として向う側の意見をコミツトしたということになります。さように考えまして、国内の立法措置は今とつておりません。しかしながら、ただいま申し上げましたように、銃砲刀剣類等所持取締令に関しましては、行政協定第三条に基いて解釈できる、かように考えております。法令により職務として持つている、こういう解釈に入ると考えております。
  83. 並木芳雄

    並木委員 持つていてもさしつかえないということですね。
  84. 林修三

    ○林政府委員 現状におきましてはさようでございます。
  85. 栗山長次郎

    ○栗山委員長 次会は明後金曜日午前十時から開くことといたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後零時四分散会