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帆足委員 ただいま、引揚げ問題の円滑な進捗のためには、必要とあれば公正合理な観点から、民間代表の派遣をも考慮するという御答弁がありましたことを、私は多とするものでございます。また、その場合にはパスポートも出すという率直な御答弁に対しましては、深く満足するものでございます。また、パトロール船が例に出ましたのは、ほんの一つの過去の例であつたにすぎないというような御答弁がありましたことにつきましても、両国のためにたいへんにけつこうなこととして了承いたしました。
私は実は中国に数箇月前に参りまして、そうして五十日滞在いたしまして、つぶさに中国の事情も視察したのでございます。私どものように平均的教養を持
つております者が各地を見て参つたのでありますから、実は
政府当局に対しましても善意をも
つて申し上げたきことも多々あるのでございますが、引揚げ促進の円滑化を期するための特別
委員会も設置される由を承
つておりますので、その席において申し上げたいと存じます。しかしながら、一言申し上げておきましてこの問題の円滑な解決に資したいと存じますことは、中国は非常に長い間半植民地状況にありまして、今日やつと
独立しました。その過程において、
日本の軍閥との間に十箇年を越す長い戦争のあつた国でございますので、
日本の軍国主義の復活とか、またはあまりにも超国家主義的、反動的な政治の行き方に対しましては、神経過敏とい
つていいくらい過敏でありますことも、やはり了承せねばならぬことであろうと存じます。北京におきまして
日本再軍備の勢いが強く
なつたという放送がされましたときに、北京の女学生たちは北海公園に集まりまして、みなハンカチを目に当てて恐怖のために泣いたということを聞きまして、その写真も私は見まして胸を打たれる思いがしました。
日本はとにかくアジアにおいて大きな過誤と失策を犯しました。その後でありますから、イデオロギーのいかんを問わず、
世界の平和と国交回復のためには多少謙虚である必要がある。しかるに吉田総理は、公然と、敵国またはそれに類似のお言葉を
ちよい
ちよいお使いになる。まあ失言でありましようけれども、そういう点において、
政府当局としては、やはり国の平和のために多少謙虚な態度が必要であろうと存じます。今般こういうことでいろいろな事情が重なりまして
——政府の御努力もありましたでしようが、私どもが参りましたことも一つの貢献には
なつたと私ども
考えております。同時に、向うから帰る人の数もふえまして、何やかや積りまして一つの糸口を見出したわけでありますから、この糸口に対しましては慎重に取扱
つていただきたい。一党一派の
立場や過去のいきさつなどにとらわれずに、公正合理に、そうして長い間の伝統のある隣邦でありますから、お互いに平和で行こうという気持で解決していただきたいと思いますが、ただいまの次官の御回答に対しましては、私は深く感謝するものでございます。
ただ今後の重要なる問題は、在留同胞につきましての数字上の開きがあまりに大き過ぎる。三十六万という数学が実は誤
つて国民に強く印象されております。実際
政府当局が最近御発表になりました数字は、七万前後が当面の問題というところまで、問題が具体化いたしたのでありますが、
政府当局は六万と言い、また民間の引揚団体はそれを十万と言い、中国当局は三万前後と申しておるようなことであるが、その
日本側の数字の科学的基礎を私は検討さしていただきたい。一経済学者、統計学者としてもう少し検討さしていただきたい。あの混乱の中に起つた問題についての跡始末の数字でありますから、私は、いろいろと中に問題があろうかと存じております。そうして、よく科学的に検討したあと、なお中国の出します数字との間に食い違いがあれば、誠心誠意その食い違いの本質をきわめまして、解決に資することが重要なことであります。しかるにかかわらず、従来は、ややもすれば
二つの
世界の対立の抗争に、それが部分的に悪用されたようなけはいもあるのでございます。そういう印象を多くの人が与えれておるわけでありますが、引揚げ問題が今日のように具体的な問題になりました以上は、数字に対しましても、できれば学術会議の部会あたりで検討していただく、それができませんければ、近くできます国会の引揚
委員会等で、公正合理な
見地からやはりよく検討しまして、こういう点はあいまいな点である、こういう点は確実な点であると、確実な点と向うの発表と照し合せまして、なおあいまいな点については、両方の側において、どういうような行き違いができておるかということを、公正合理に検討するという態度がなければ、
最初から学問的基礎のない統計をぶつつけて、ことさらに事を刺激するというような態度で参りますれば、思いがけない不幸な結果をまたもたらすのではなかろうかと存じます。しかるがゆえに、
委員長を通じまして、再三数字並びに統計資料のつくり方についての資料を、私どもは要求しておるのでありますけれども、いまだにその資料をいただいておりませんので、ひとつ一日も早くこの資料をいただきたいと存じます。これについて次官から御答弁をいただきたいと存じます。