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1952-12-08 第15回国会 衆議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月八日(月曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 栗山長次郎君    理事 池田正之輔君 理事 谷川  昇君    理事 松本 瀧藏君 理事 加藤 勘十君    理事 田中 稔男君       今村 忠助君    植原悦二郎君       大橋 武夫君    近藤 鶴代君       中山 マサ君    西川 貞一君       馬場 元治君    松田竹千代君       森下 國雄君    安東 義良君       楠山義太郎君    高岡 大輔君       並木 芳雄君    中村 高一君       松岡 駒吉君    帆足  計君       黒田 寿男君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         法制局次長   林  修三君         法制局参事官         (第一部長)  高辻 正己君         保安庁次長   増原 恵吉君         保安庁長官官房         長       上村健太郎君         外務政務次官  中村 幸八君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         外務事務官         (条約局第一課         長)      高橋  覚君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 本日の会議に付した事件  日本国アメリカ合衆国との間の船舶貸借協定  の締結について承認を求めるの件(条約第一  号)     —————————————
  2. 栗山長次郎

    栗山委員長 ただいまから外務委員会を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の船舶貸借協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  最初に黒田寿男君に質問を許します。続いて帆足計君の順位をもつて質問を続行いたします。これは本協定に関する御質問限定を願います。黒田寿男君。
  3. 黒田寿男

    黒田委員 私はフリゲート軍艦であるかどうかという問題につきまして、念のためにもう一度確かめておきたいと思うことがあります。わが国政府合衆国政府との間の船舶貸与協定規定に従いましてわが国政府に引渡されますパトロール・フリゲートを、私ども軍艦であると見ております根拠は、その船舶構造造材並びにその有する装備の点にあるので、この点からフリゲート軍艦である、こういうふうに私ども主張しておるのであります。その意味では政府もそれが軍艦であることはもとよりお認めになることであろうと考えます。先般来、軍艦ではないという御主張がありましたが、それは行政的に見た場合、あるいは国際上その他法律上から軍艦定義する場合の、その軍艦ではない、こう言うておられるにすぎないと思います。たとえばわが国海軍がありました当時に、帝国軍艦外務令というものがありましたけれども、この法律によりまして、行政的に軍艦範囲を定めた場合には、「本令において軍艦と称するのは、海軍旗章令によつて旗章を掲げる艦艇を言う、」こういうふうになつておるのでありまして、行政的に軍鑑範囲を定めるような場合には、現在わが国には海軍はないのでありますから、従つてパトロールフリゲート軍艦とは言えない、こういわれておるにすぎないと私は思うのであります。またたとえば軍艦とはどういうものであるかという定義を、国際法の学者の述べたものがまれにありますが、それを見ると、軍艦というのは、「軍用の目的で、特定の公務員がこれに搭乗し、元首の統帥権のもとに行動する海軍将校これを指揮し、国家主権の機関として、その直接の管理及び監督のもとに置かれ、乗員海軍軍紀のもとに立ち、かつ外部に特殊徽章を有し、軍艦たる特有の旗流掲ぐるところ国家公船である、」こう言うております。これは一つ定義の例でありますが、こういう法律上の軍艦定義やまた行政上の取扱いにおいては、わが国に来た場合のフリゲート軍艦でないというだけで、構造並びにその有する装備の点からいえば、疑いもなく私ども軍艦であると考えるのでありますが、念のために政府の御意見をお尋ねしてみたいと思います。私はそういう考えで間違いないと思いますが、どうですか。
  4. 木村篤太郎

    木村国務大臣 軍艦というのは、今黒田君から申されました通り、いわゆる一定の国際上の定義があると私は考えております。要するに軍事上の目的使用するものであつて、その装備なり乗組員なりがすべて一つ目的に集中されておるのであります。今問題になつております船は、かつてアメリカにおいてさような目的使つてつたことはあるのでありますが、御承知の通り日本が借り受けました以上は、そういう目的に全然使用いたしません。またこれに棄組の乗員もすべていわゆるシビリアンでありまして、軍人ではないのであります。この見地から考えまして、本件の船舶軍艦でないと私ども考えております。
  5. 栗山長次郎

    栗山委員長 木村長官予算委員会出席のため退席をいたします。
  6. 黒田寿男

    黒田委員 その程度主張はたびたび承つたのでありますが、私がきよう特に質問いたしましたのは、そういう点でなくて、たとえば商船あるいは貨物船フリゲートがどう違うかというような構造あるいは装備の上から見て、私どもはこれを軍艦と称している、これは私は認めざるを得ない事実であろうと思います。このことを政府はお認めにならぬということでありますが、さらに一応私は御意見を承りたい。
  7. 増原恵吉

    増原政府委員 黒田委員の御質問、ただいま長官からお答えをいたしました通りでございます。今度借ります船舶、たとえばフリゲートがどういう装備を持つておりますかは、この間も説明いたしましたし、ごらんも願つたところでありまして、小口径の砲なり機関銃なり、そういうものを備えておりますことは間違いございません。そうしてこれが米国におきまして、いわゆる軍艦として使われておつたということも、また間違いがないようでございます。だから武装をしておる船舶であるということは間違い、ございませんが、武装しておる船舶すなわち軍艦ということではございませんで、武装しておるかどうかと言われるならば、武装しておるということは認めますが、軍艦でないことは今までるる申し上げた通りでございます。軍艦とは考えておりません。
  8. 黒田寿男

    黒田委員 それで政府の御趣旨はよくわかりました。軍艦であるかないかということは、ただ言葉の上の問題で、要するに私ども武装しておる船のことを軍艦というのですが、それが法律上、海軍のないわが国で、軍艦という名前が適当でないというならば、名前はどうでもよろしい。要するに行政軍艦ではないという御主張は、あるいは一個の主張として一応通るかもわかりませんが、構造上、装備武装しておる船すなわち軍艦考えますので、この点を明らかにしておけばいいのでありまして、要するに武装した船ということは明らかであります。  第二点といたしまして、このフリゲート艦警備隊においてこれを改造しないで、貸与を受けたときと同様の状態使用する、こういうように先日増原次長が私の質問に対して答弁されましたし、また私どもが先日横須賀において視察したところから申しましても、それは改造できるようなものではないと私どもは見たのであります。そこで警備隊フリゲート艦を、構造及び装備上の武装船舶のままで使用するということになると思うのです。海上警備隊はこれを海上警備目的使用するというのでありますけれども、これが武装船のままで使用されるということになつて参りますと、戦争目的のために使用しようと思えば、何らの改造を要せずして、そつくりそのままただちに使用することができるという、そういう構造を持つた一極の船舶であり、力である。言いかえればフリゲート艦は、元来は戦争をなす力を供給するものでありますけれども日本に来て、わが警備隊のもとで使用せられる場合は、それをただちに戦争をなす力を供給するものとは言えない、政府はそうおつしやつておられるだけで、戦争をなす力を供給する可能性を有するものであるという点については、これは疑いないところと思います。政府の御主張のように一歩譲つて考えてみても、少くとも私が今申しましたように、戦争をなす力を供給する可能性を有するものとしてそのままこれを保有しておいでになる、こういうことが言えると思いますが、この点はいかがでありましようか。
  9. 増原恵吉

    増原政府委員 借り受けます船舶は、大体においていわゆる基本的な部分と申しますかは改造をいたさないつもりであります。先般もお答えをしましたように、居住区部分と申しますか、そういうところには多少の改造を行う部分があると考えますが、主たる部分については大体改造は行わないでそのまま使う。ですからごらんになりましたような状態のものとして海上警備使用をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  10. 黒田寿男

    黒田委員 もう一点お尋ねしますが、私はフリゲート艦保有することは、保安庁法第六十八条及び憲法違反になると考えるのであります。保安庁法のもとではフリゲート艦使用することはできない、そういうことになつておる、こう私は考えます。この点について質問をしてみたいと思います。保安庁法第六十八条によりますと——これは保安隊のことは省略いたしますが、「警備隊はその任務遂行に必要な武器保有することができる。」こういうふうになつておるのであります。このことは、反面から申しますならば、その任務遂行に必要であるという範囲を越えた武器保有は禁じられておる、そういうように解釈しなければならないと思います。そう解釈しなければ、「その任務遂行に必要な」という限定を特に保安庁法において置きました、意味がないからでありますし、また憲法第九条の規定から申しましても、このような限定以上の実力を持つ武器を用いるということは、これは禁じられておると私ども考えるからであります。そこで本来が戦争用である武力を持つて、そうしてその性能に従う訓練をすれば、その制度の名称とか法令で定めてある任務が何でありましようとも、その制度は実質的には軍事的制度にならざるを得ないのであります。そういうことをおそれて、憲法戦力を持つことを禁止しておるのだと考える。本来の戦争目的にただちに用いられるような武器を用いてはならぬというように禁じてある趣旨は、そこにあると思うのであります。そうしますと、警備隊海上における警備救難任務遂行するに必要な武器保有することはできますけれども、その任務遂行に必要な範囲を越えて、本来が戦争をなす力を供給する武装艦、そういう性能を持つておる船舶保有することは禁じられておると私は解釈しなければならないと思います。制度任務戦争目的でなくて治安目的でさえあるならば、どのような武器を用いてもさしつかえないという考え方は、危険であるばかりでなく、非常に間違つておると私は考えます。フリゲートは先ほどから申しますように、構造及び装備の点から申しまして、名前軍艦と言おうと言うまいと、要するに武装艦であります。われわれの常識から軍艦と称せられる武装船であります。その武装船は本来戦争をなす力を供給するものでありまして、単なる海上警備及び救難に用いられる以上の性能を持つた武力でありますから、私は海上警備及び救難任務とする範囲限定されておる海上警備隊が、その任務遂行に必要であるという範囲を越えた性能を持つところの武装船を持つ、すなわちわれわれのいう軍艦を持つ、すなわちフリゲートを持つということは、保安庁法第六十八条に違反する、従つて憲法違反する、私はこう考えるのであります。私はこれが憲法戦力を禁じた本来の精神に基く解釈であると思います。このフリゲートを持つということ、すなわち本来の武装船を持つということは、警備隊任務遂行に必要な武器保有すること以上の武器を持つものであるから、私は保安庁法第六十八条に違反しておる、こう考えますが、この点いかがでしようか。
  11. 増原恵吉

    増原政府委員 政府といたしましては、米国側に申入れをしまして、このフリゲートを借りますような考えをいたしました際に、第六十八条の「必要な武器」という程度のものであると考えて、これを借りる話合いを始めたわけでございます。この条約を御審議願いますのも、第六十八条に違反するものでない、「必要な武器」という解釈のもとにこれを借りるというつもりでございます。
  12. 黒田寿男

    黒田委員 大きい作用は小さい作用を含むことになるのでありますから、むろん武装船を借りて、それが海上警備及び救難任務遂行に当り得るということは、これはあたりまえであります。けれども私の問題としておりますことは、そういう小さい任務しかない海上警備隊使用する武器として、本来がそれよりも大きな任務遂行するに足る性能を持つておる武器を借りて、それを保有するということは、第六十八条に違反しておる、こう言うのであります。フリゲート海上警備及び海難の救助の用をなすに足る船舶であるということは、これは言うまでもないことであります。ただそれならば、その海上救難及び警備をなすに必要な範囲武器を用いればよろしい、それ以上の、戦争に用いられるような性能を持つた武器を持つということは、第六十八条の違反になる、しかしてフリゲートはまさにそれに当るのだ、私の見方はこうであります。ただいまの増原次長お答えは、私の質問に対するお答えになつていないと思うのでありますが、要するに第六十八条において保有を許された武器範囲フリゲートという船舶は越えておる。従つてそういうものを持つことは第六十八条によつて禁止せられておるのだと思うがどうか、こういうのが私の質問の要旨であります。それに対してお答えを願いたいと思います。
  13. 増原恵吉

    増原政府委員 政府といたしましてはフリゲートを借りますこと、すなわちフリゲートに備えつけられております武器は、警備隊任務遂行に必要な武器という範囲のものであるというふうに解釈をいたしておる次第であります。
  14. 黒田寿男

    黒田委員 どうもお答えが、私の出しました質問に対して的をはずれておると思いますが、そうすれば、こういうふうにお聞きしてみたらどうかと思うのです。警備隊保安庁法によつて定められております任務でありますところの海上における警備救難という事務と、われわれが常識戦争に関する仕事と考えておりますものとは、はつきり違うものではございますまいか。こんなことは質問するのがやぼで、子供でもそういうことは知つております。そのように任務が違うとすれば、フリゲートは元来が戦争目的に使う武器である。海上保安庁はそういうものを持つべきではなくて、海上における警備救難事務を行うことを任務とするに必要な範囲武器を持てばよく、またそうした武器だけしか持つことができない、私どもはこういうように解釈しておる。そうでなくて、先ほど申しましたように、制度目的さえ海上警備であり救難であるならば、武器の方はどんな武器でも用いていいということになると、憲法第九条の違反になるのです。そういう武器を用いて訓練しておれば、それは必ず保安隊的なものではなくて軍隊的なものになるのです。おのずから帰結するところはそうであります。そこで私は特に第六十八条に「その任務遂行に必要な」という限定を、保安庁が持ち得る武器について与えたのだろうと思います。そうでなければ、「保安隊及び警備隊武器保有することができる。」こうきめたらよろしい。それを特に「その任務遂行に必要な」という限定を与えたのは、憲法との関係もありまして、本来が戦争目的に用いられるような武器を使うことは相ならぬのだ、保有してはならぬのだという趣旨が含まれておるのだと思うのであります。これを私は今問題にしておるのであります。要するに、フリゲート警備隊任務遂行に必要だと称して、そういう目的でこれを使うことはできるでしようが、私が尋ねておりますのは、警備隊の本来の任務遂行に必要である以上の性質を持つている武器フリゲートはあるのではないか、こう思いますので、この点をはつきりお答えいただければそれでよろしい。あとは議論になると思います。私の言うようになつて来れば、フリゲート保有は第六十八条違反になると思います。従つてまた憲法違反にもなるし、こういう協定を結ぶことは法律並びに憲法違反になる、こう私は考えます。この点を簡単に……。
  15. 増原恵吉

    増原政府委員 繰返して申し上げたところに尽きるわけでございますが、保安隊警備隊任務はいまさら申し上げるまでもなく、第四条に、わが国の平和と秩序を維持し、人命財産を保護する、警備隊はこの任務海上において果すわけであります。その任務遂行に必要な限度でありまして、どういう武器でも持てるものでないことはお説の通りでございます。この任務遂行のための必要な程度政府は認定いたしまして、フリゲートを借りるようにいたした、こういうわけであります。
  16. 黒田寿男

    黒田委員 私は時間がないという御注意を受けましたから、新しい質問はもういたしませんが、ただいま増原次長の御答弁によりますと、どんな武器でも持つてもいいという意味ではない、こうおつしやつた。私はこれが非常に意味があると思います。私どももそういうように解釈しておる。しかしてこのフリゲートは本来の警備隊任務に必要な、そして許されている以上のものであるという結論に達するのであります。ただこの点につきましての増原次長との質疑応答は、時間上の御注意を受けましたから今日はやめますが、もし機会がありましたら木村長官になお伺いたいと思います。なお警備隊保安隊につきまして根本的に伺いたい点がありますけれども、時間の関係上今日はできないようでありますから、今日はこの程度で終了いたします。
  17. 栗山長次郎

    栗山委員長 黒田委員の御譲歩により、次の質問帆足計君になります。帆足計君。
  18. 帆足計

    帆足委員 木村長官がおられないので次長からでもけつこうですが、前回の委員会におきまして秘密会にいたしましたが、そのとき私はなぜ秘密会にしたかということを伺いました。それについての私の判断はまだ控えておきますが、先般承りましたような、ああいう武器秘密になさるというのは、アメリカからの指示だということでありましたが、ああいう数字を伺いまして、その数字を私ども評論家として発表いたすというようなことは、これはどの程度禁止せられておるものですか、そのお考えを承りたいと思います。
  19. 増原恵吉

    増原政府委員 秘密会にして申し上げました趣旨は、長官から申し上げた通りでありますが、これを御発表なつた場合にどうなるかということにつきましては、現在日本法律としては、いわゆる日本政府の持つているいろいろな機密保持法律はございませんから、そうした意味違反にはなるまいか考えます。ただ刑事特別法米軍機密保持についての条項に当てはまる場合があり得るかとも考えますが、その点について今明確にはお答えをいたしかねます。
  20. 帆足計

    帆足委員 今日一国の裁判権の所在ですらが論議の中心になつておるときでありますから、言論に関係がありますものは非常にこういうことを心配するのでありまして、ましてやこの武器アメリカが独自におやりになるのではなくて、日本政府国内防衛のために貸してくれたという意味種類武器でありますが、それをこつそり借りまして、国民には一体バズーカ砲を何門借りておるか、戦車を何台借りておるかも全部秘密にされておる。そして国民の知らない間に、足のはえたかえるが国内治安の名目のもとに使われるということになりましたのでは、私は民主政治趣旨に反すると思うのです。それでアメリカが貸してくれるときでも、国内治安用として使う以上は、それはある程度まではすべての議員にも、また国民にも、この程度のことはわからしてさしつかえないということであつてしかるべきであると思います。秘密という条件でお借りになつて、そしてあのくらいの数字をすら秘密会を開いて新聞記者諸君の耳にも入れることができないというのは、私は筋が少しはずれておりはしないかという疑問を持つのでありますが、いかがお考えでありましようか。
  21. 増原恵吉

    増原政府委員 これは現在のところ、繰返して申し上げますように、事実上の使用承認せられておるという形で使つておる状態であります。米軍の方の希望といいますか、要請といいますか、そういうものも、われわれの方としては、さしつかえない限度においては、これをいれることが適当であろうというふうなつもりでおるわけでございます。
  22. 帆足計

    帆足委員 ただいまの武力アメリカ軍事上の機密でありますならば、ある程度の、一つの理由があるのでありますけれども日本国内治安を守るために、保安隊に使わしておるのでありますから、使わした瞬間から、それはアメリカの国防の一環という意味ではなくして、日本保安隊自身の必要に使うものでありますから、性格のかわつたものになると思うのです。従いまして、それをわれわれが借りましたときには、どういうものを借りたか、こういう微妙な国内国際情勢でありますから、国民がそれを知つておく必要がある。いやしくもよそ様からこういう重大なるものを借りまして、そして国民はその内容をまつたく知らないということは、私は不当であると思いますが、その点どのようにお考えでしようか。
  23. 増原恵吉

    増原政府委員 大体どういうふうな種類武器を借りておるかということは、現在すでに新聞等でも書かれておるわけでございまして、一般的な国民判断支障があるというほどではないと私ども考えております。ことに詳細に国政を審議していただく各位の前には、これをお示しをするということでありますので、そういう考え方でも支障はないものであろうというふうに考えておるわけであります。
  24. 帆足計

    帆足委員 私はそれが日本政府独自の考えから、治安維持のために、ピストルの数を、ある程度こまかくまでは一般に発表しない、そして議員だけに発表するというのであれば、一応の筋道は通ると思いますけれどもアメリカ軍がそれを貸しますときに、それを発表してはならぬということになりますと、一体アメリカの方では、これを国内治安維持のためではなくして、アメリカ防衛一環に使う、すなわち再軍備の線に使つておるという解釈にならざるを得ないことが、私は不当であろう、こう思うのでありますが、いかがお考えですか。
  25. 増原恵吉

    増原政府委員 現在この武器はもちろんまだ米国のものでありまして、われわれはこれの使用承認されておるという形でありまして、この武器の数等の発表の仕方についての、米軍希望というものをいれるということは、私どもとしては、相互の関係を円滑にする上において適当であろうということでありまして、向うの方から秘密にすることを命令されたとかなんとかいう、かどの立つたものでは、ございません。そういうことの希望に基いて、われわれもそのとりはからいをしておる、こういうことであります。
  26. 帆足計

    帆足委員 それでありますならば、その数字秘密にするということのよしあしを私は論じておるのではありません、場合によつては、ある程度まではそれも必要かと存じますけれども、しかしその数字がかなりに漏れたといたしましても、それが軍の機密——国内にはそういうものはございませんから、ひつかからないにしろ、アメリカ側の何らかの法律にひつかかるかもしれぬというならば、非常に危険きわまりないことでございまして、ひとつ本日はこれ以上お尋ねいたしませんが、アメリカ側の方にそういうような規定があるかどうか、念のためお調べおきをお願いしたいということをお願いいたします。  さらに先般長官が、今度借り入れます艦船を使いますのに、海上海賊行為がありましたときは発動するというお話がございましたが、その海賊行為というものが、単なる個人で密入国するとか、または海上のどろぼうがあばれたという場合ならば、当然了解できるのでありますけれども、今日の、たとえば朝鮮との問題とか、新中国との問題とか、またソビエトとの関係等の漁船問題の衝突などにおきまして、こういうような借り入れた艦船の力が発動するのであるかどうか、どういうふうにお考えでありましようか。その海賊行為ということの意味を、もう少しお伺いしたいと思います。と申しますのは、今日のような敗戦の日本におきましては、やはり平和外交が先行すべきでありまして、武力はこれを補うもの、少くとも再軍備論者の立場からいたしましても、すべでこの程度には考えねばなりません。ましてや日本憲法のもとにおきましては、平和外交によつて万事を解決するというかたい決意と努力でもつて、全力を注がねばならぬときに、海賊行為というような、きわめて常識的な言葉をもつて武力の発動、またはそれに類似したことが軽卒に行われるということは、まことに憂慮にたえぬことであります。従いまして、この海賊行為という意味をどのようにお考えになつておられるか、詳細に承りたいと思います。
  27. 増原恵吉

    増原政府委員 海賊行為が行われる場合を一々具体的に申し上げることも困難かと思いますが、いわゆる国籍不明の船舶が、不法なる行為を行うという場合を、広く考えておるわけでございます。しかし警備隊の船がいわゆる実力行使をやりますのは、原則としては正当防衛あるいは緊急避難等に該当をします場合に限定をせられるというように、一応は考えられるのでありまして、特別に具体的場合を推定して、全部を網羅的に考え尽すというわけには参りませんが、正当防衛、急迫不正の侵害に対するという場合と、緊急避難等の場合が一応考えられる状態でございまして、いわゆる海賊船がおれば、いきなりぶつぱなすというような趣旨の説明を、長官も申したわけではございません。
  28. 帆足計

    帆足委員 それでは沿岸警備ということでありますが、艦船の活動の範囲は、しからば沿岸に限定されるのですか。たとえば領海とか領海から何マイルの範囲内とか、それともあるいは公海の奥まで出かけて行きますか。よく紛争の起ります場所まで出て参るという趣旨でありますか。
  29. 増原恵吉

    増原政府委員 警備隊船舶の動きます範囲は、単に領海内のみではございません。しかしその目的はいわゆる沿岸における海上警備でありますので、一般に公海を目標として軍艦が行うような海上警備を行うものではございませんし、その権限を持つものでもございませんので、領海に膚接した沿岸というような所が、沿岸警備範囲になるのであります。一般に公海全体を目標としてやるものではございません。
  30. 帆足計

    帆足委員 それではただいま紛争が起つております中国または朝鮮またはカムチャツカ等の場所における漁船の警備に当られるお考えでしようか。
  31. 増原恵吉

    増原政府委員 漁船の保護を通常の状態において考えます場合には、第一次的には海上保安庁船舶任務になります。警備隊任務は、海上保安庁の漁船保護と海上警備の補完的な作用というふうに原則的には考えておるわけでありまして、海上保安庁船舶をもつてする漁船保護を、さらにいろいろな意味において補完する必要がある場合には、警備隊の船がもちろん出て行くこともあり得る、こういうふうに御了解を願いたいと思います。
  32. 帆足計

    帆足委員 そうであるとしますならば、沿岸警備という意味は相当広義に解釈されまして、単に狭い意味の領海を守るというのではなくて、他国の領海に近い部分までは、結局直接間接に出動なさるというようなお考えでございますか。
  33. 増原恵吉

    増原政府委員 他国の領海まで行くというふうには、先ほど決して申し上げたのではないのであります。こちらの領海だけではない、公海の方にも出て行きますが、それはわが国の領海付近でありまして、厳格に海岸線から何海里というふうには定めがたいと思いますが、いわゆる沿岸という考えで参つておりますので、わが国の領海付近の公海ということで、他国の領海——一応公海を通り過して、他国の領海まで行くというふうな考え方は持つておりません。
  34. 帆足計

    帆足委員 私が知りたいのは、たとえば今度の漁船の問題などで、外交交渉をいたします前に直接実力の発動があるというような事態になることは、今日の日本の置かれた情勢からして、私は軽卒であると判断して心配しておるのでございます。従いまして、ただいま正当防衛と申しましたけれども、正当防衛という言葉ほどあいまいな言葉はないのでございます。また国籍不明の船と申しましたが、海上におきまして、あれは国籍が不明であつたといえばそれまででございますし、従いまして、政府当局としてこの発動の範囲を具体的にどの程度考えておられるか。たとえば朝鮮で漁船問題で衝突が起つて、こちらが先方が不当であると認めた場合は、それに対して実力行使をされるようなこともお考えになつておられるのかどうか。これはすべての国民が心配しておる問題でありますから、それをお尋ねしたいのです。
  35. 増原恵吉

    増原政府委員 いわゆる海賊船と申しましても、警備隊の船は軍艦ではございませんで、公船範囲に属するものでありますから、海賊の嫌疑によつてこれを措置するということは、警備隊の船にはございません。国籍不明の船が現実に不法行為を行つておるという場合でないと、権限行使をすることができぬわけでありますから、何か嫌疑によつて警備隊の船が行動して、それが紛争のもとになるというふうな式のやり方はいたさない。権限もなく、いたさないつもりであります。
  36. 帆足計

    帆足委員 私が申し上げますのは、たとえば中共との漁船の問題の紛争は、御承知の通りでありますが、相互の間に正常なる外交交渉がなされておりませんし、私ども日本政府としても、平和外交への努力がまだ著しく不足しておると思うのでございます。そういうような事態のもとにおいて、両方の誤解や、それからああいう海上のようなあいまいな場所でありますし、それから魚をとるというはげしい仕事でありますから、相互の行き違いから衝突が起るその衝突に相互に実力を行使し合うということになりますことを、今日の事態では私は憂慮にたえぬと思つておるわけであります。先方では、たとえば日本の漁船に無線電信があるとか、または天気予報を電報で打つたとかいうようなことで、あるいは諜報機関として誤認するというような問題も起つたかのようなことも聞いて、おるのでございます。今日のそういう種々な誤解またはその他の外交上の円滑でないことから起りましたところの不幸な事件に対しまして、こちらは正当な行動をとつておるのに、向うが不当な態度をしかけた、たとえば停船を命じたり、または拿捕を命じたりということに対して実力行使をするというようなことまでの権能を、今般のこの問題は含んでおるかどうかということをお尋ねしたいのでございます。
  37. 増原恵吉

    増原政府委員 論点がはつきりして参りましたが、さように向うの方で停船を命じたり、拿捕を命じたりするというふうな場合は、おおむね先方としても国際法規に基いてやることでありましようし、わが方としては、これに対抗する実力行使の方法はないわけでありまして、これは国際法従つて行かなければなりませんから、そういう場合に警備隊の船が実力を行使するというようなことはございません。
  38. 帆足計

    帆足委員 さらにお尋ねしたいことがありますが、外務大臣がお席におられないので——外務大臣に二点だけお尋ねしたいのでございますが……。
  39. 栗山長次郎

    栗山委員長 とりはからいましよう。
  40. 帆足計

    帆足委員 それでは外務大臣がおいでになりましてから、お尋ねすることをお許し願います。
  41. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 さつき帆足委員から武器の問題に関して質問がありました。それについて二、三点ばかりお聞きしたいのですが、陸上の武器を今使用しておる、借りておる、この根本的の問題ですが、その法律的根拠はどこにあるかということをちよつとお伺いしておきたいのです。これは非常に今問題になつておるのです。国民もはつきりしておりませんので、その根拠をひとつ御説明願いたいと思います。
  42. 増原恵吉

    増原政府委員 これは先ほど来申し上げておりますように、まだはつきり借りたという形はとつておりません。事実上、向うの好意によつてこれを使用しておるというわけであります。しかしこの持つておることの根源としては、これを一応借りたと見るという広い意味考え方も成り立たぬことはないかと思いますが、そういう意味において、借りたといたしまして必要な装備その他を調達することができるという保安庁法規定に基いて、保安庁がこれを調達する、爾後正式に借りるという形をとりたいと思つて今話合いをしておりますが、そういうふうなとりきめになりますれば、これはもう明瞭に借りることになりますが、その根拠は、必要な装備保安庁としては調達することができるという、その調達行為の一つの形というふうに考えております。
  43. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 そうしますと、高射砲とか戦車も、必要と認めた場合には、調達する行為でこれを処理できるということになりましようか。国会の承認も何もなくて、かつてにできるということになるのでしようか。
  44. 増原恵吉

    増原政府委員 これは先ほども論点になりましたが、第六十八条で「保安隊及び警備隊は、その任務遂行に必要な武器保有することができる。」その任務遂行に必要であるということで借りるわけであります。法律論としましては任務に必要なものであればよろしい。しかしそこが政治的に論議になるようなものにつきましては、適当に国会にお諮りをするなり、御承認を願うなりすべきものが出て来ると考えるわけであります。
  45. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 最後にもう一点だけ。そうしますと、目下米軍の監督下に置かれて使用という形になつておるので、ちよつとぼけておるのですが、正式の貸与の交渉をしておられるというお話ですが、もしこれが正式の貸与が成立いたしましたときは、一応国会に諮つて承認を求める意思がおありなのでしようか、どうですか。
  46. 増原恵吉

    増原政府委員 これは先般長官からお答え申し上げましたが、その点よく研究をして、善処するというように長官から申し上げたいと思います。
  47. 高岡大輔

    ○高岡委員 関連して……。この前のことについてちよつとお尋ねしたいのです。それは陸上保安隊武器が、先ほど種類がどうとかというようなことが質問されておりましたが、この前のお話では、現地調達で行くというお話がありましたが、現地調達という権限は一体だれが持つのですか。といいますことは、アメリカ日本に進駐しておる軍隊から日本保安隊が借りておつて、そしてその保管は顧問とかそういつたような形の、アメリカ軍人によつて保管の責任がある。こういうのでありますけれども、これが軽々に調達という形で行きますと、たとえていえば、上陸用舟艇も前から日本にあるのだから、これも現地調達だということも言えるだろうと思います。いわゆる現地調達というその権限はだれが持つておるのか、どういう法的根拠によつてそういうことになつておるのでしようか、その点をひとつ……。
  48. 増原恵吉

    増原政府委員 調達につきましては、私は先般政府側の答弁というのを明確に記憶しておりませんが、現地調達でありましても、またはアメリカにあるものを借りるにしましても、調達自体には大なる差異はないかと思います。船舶を借りますのと、今保安隊武器を借りておりますのと事情の違いますのは、一つは、米国側において船舶についてはアクトをつくつて、正式な形で貸借をしよう、それで条約をつくろうということになつたのであり、そのことは、船舶米国にありましようと、米国が持つて来て、日本の領海内に置いておきましようと、私は大なる差異はないのではないかと思います。やはり問題は、これがいわゆる保安隊警備隊任務達成に必要な武器というところの認定の問題ではないかと思うのでありまして、現地調達というものが、日本の領海内に物があるか、あるいは領海外で米国にあるかによつては、私は事態に根本的な差異はないのではないかと思います。向う様の方で貸してくれる貸し方には、いろいろ大きい違いがあるかと思います。
  49. 高岡大輔

    ○高岡委員 陸上保安隊の、今駐留軍から借りておりますその借り方は、法的にはどういう根拠によるかということであります。
  50. 増原恵吉

    増原政府委員 これは、法律的には先ほど申し上げましたように、保安隊警備隊が必要な装備を調達する権限を、法律で与えられておりますが、装備品の調達、これは買う場合もありますし、借りる場合もあるという法的根拠は、そこにあるわけでございます。
  51. 高岡大輔

    ○高岡委員 それは行政協定範囲内ということになるのでありますか、その点をひとつ伺いたい。
  52. 増原恵吉

    増原政府委員 ただいま保安隊が借りておりますのは、これは根拠規定としては保安庁法でございます。
  53. 中村高一

    中村(高)委員 関連して……。今御質問になつております、一昨日秘密会発表になりました保安隊武器の問題でありますが、われわれが聞きましても、大して秘密のようなものだとも思えないのでありますが、ああいう程度のものを、政府秘密だと言つて発表しないことが、かえつてこれが保安隊の持つておりますところのものが、戦力だというような非常な疑問を一般の国民に投げ与えておりますことは、これは大きいと思います。政府はこれが戦力でないと言うのでありますならば、あの程度のものは発表することの方がいいのではないか。これを発表できないとするのは、今お答えでは明確でありませんでしたが、アメリカの所有の武器であるからというような意味のことも言われたのでありますが、アメリカ側希望でこれは秘密にしたがいいというのか、それとも国内治安を維持する上に、ああいうものはあまり発表しない方がいいのだという御見解でしようか、その点をひとつお聞きしたい。
  54. 増原恵吉

    増原政府委員 何と申しますか、保安隊並びに警備隊は、軍隊ではございませんが、一つの実力を持つている部隊であることは間違いないのでございます。そういう意味では、装備などを一から十まで公表することは、してはたらぬかどうかという問題ではありませんが、適当かどうかという問題では、一々公表してしまわない方が適当であろうという考え方も、一面にはもちろんございます。所有者である米軍の、そういう希望というものも一部にはありますが、しかしこれを絶対に発表してはならぬかどうかと言われますと、なかなかむずかしいところでございまして、これは御趣旨のあるところをなおよくわれわれの方でも研究させていただきたいと考えます。
  55. 中村高一

    中村(高)委員 われわれは、保安隊が持つておりますものが、戦力であるからというので反対いたしておるのでありますが、政府においては、これは戦力でないということを言うておるのでありますから、その意味においても、政府部内において、今後さしつかえないものについては、できるだけこれを発表するという方針でひとつ協議をいたしてもらつて、そしてすみやかに、さしつかえないものについては順次発表するという方針の方がよろしいと思いますが、お考えを願いたいと思います。
  56. 増原恵吉

    増原政府委員 御意見十分拝承いたしておきます。
  57. 栗山長次郎

    栗山委員長 お諮りをいたします。保安隊装備につきましては、一般質問範囲内において、しかるべき機会に続行することを御了承願いたいと存じます。  いま一つ御報告を申したく思いますのは、先般軍備を持つていない国を列記するように、外務当局に要請をいたしておきましたが、こういう回答が参つております。軍隊なしと認められる諸国、アイスランド、パナマ、モナコ、アンドラ、これはスペインとフランスの間にあるそうです。リヒテンシユタイン、これはオーストリアとスイスの間にあるそうです。等の諸国が軍隊のない国と認められる国の例として報告になつております。  これから、理事会の申合せによりまして、本件に関する逐条審議を行うことといたします。まず前文について質疑を許します。御質疑のある方は御発言を願います。
  58. 並木芳雄

    ○並木委員 船舶という称号についてお尋ねをしておきたいと思います。  この間から海上警備隊で使う船舶が、千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際条約の適用を受けるのではないかという議論がありますけれども、これは一昨日適用を受けないという政府の答弁でございました。しかしここにただ船舶と書いてあるから、そういう疑問が起るのであろうと思います。この船舶を、海上警備隊用として使うとかなんとか、そこに形容の言葉をつけて限定すればいいと思うのですけれども、その意思があるかどうか。  それからただいまあげました海上における人命の安全のための国際条約の本文でございます。本文にどうも国際航路に従事する船舶についてのみ適用するという条項がないものでございますから、この間から問題になります免除規定あるいは例外規定、これに今度借りて来る船舶が該当しない、従つて条約違反ではないかという議論が出て来る。ところがこれをよく読んで行けば、規則の方の第一章、Aの部の第一規則の適用のところに(a)として「別段の明文規定がない限り、規則は、国際航海に従事する船舶についてのみ適用する。」とある。こういうことが条約の本文の方にうたつてあれば、今度のような誤解は起きなかつたと思うのです。そこで私はこの際政府に確かめておきたいのですけれども、規則というものの中に書いてあるこの規則そのものが、非常にこの条約においては重要であつて、これを採用することがこの条約のとりきめの趣旨なのだというような点において、つまり規則の中にある国際航海に従事する船舶についてのみ適用するということは、これは大原則である。条約の本文にはなくても、大原則であるということが言い切れると思うのですけれども、その点をはつきりお確かめをしておきたいと思います。
  59. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 ただいま船舶については、海上警備用とはつきり書くべきではないか、こういうお問いのようであります。御承知のように、吉田前外務大臣から、リッジウエイ司令官にあてての貸与の要請の書簡にも、はつきりうたつてありますように、この船舶は、わが国の九千マイルにわたる沿岸警備用として使いたい、こういうことをはつきり申しております。従いましてこの協定には沿岸警備用というようなことまでうたわなくても明瞭ではないか、かように考えております。  なお後段の、国際条約解釈の問題については、説明員から御説明申し上げます。
  60. 高橋覚

    ○高橋説明員 ただいま海上における人命の安全のための国際条約の規則と条約自身との関係を御質問になりましたが、条約自身の第一条の(a)というところに、「締約政府は、この条約及びこの条約の不可分の一部をなすと認められる附属規則の規定を実施することを約束する。この条約の引用は、同時に附属規則の田用をも含むものとする。」こう書いてございまして、海上の人命の安全のための一般規則というものを一体として、この規則を各国がそれぞれ実施するということを約束しているわけであります。この条約自体は、この規則の適用についてのいろいろの規定をなしているわけでありますから、規則は条約と一体である、不可分の一部をなすと認められる、こういうふうに説明されると思います。
  61. 並木芳雄

    ○並木委員 これは問題になつておりますから、私くどいようですが確かめておきたいと思いますが、一昨日答弁にありました、国際航海に従事する船舶についてのみ適用するということは、この条約の大原則であるということははつきり言えるわけですね。
  62. 高橋覚

    ○高橋説明員 仰せの通りでございます。
  63. 並木芳雄

    ○並木委員 ですからやはり私は、条約の案文をつくつたのは外務当局でしようが、手落ちがあると思うのです。そういうふうに海上沿岸警備のための船舶貸借に関する協定というふうに、目的をはつきりそこへ限定しておけば、今度のような問題は起らなかつたと思うのです。ですからなぜ何でもないことを省いたか。そういうところからつまらない疑惑が出て来るのですから、なぜわざわざ省いたのですか。今からでもおそくはございません。その文字を入れる意思を持つべきだと思うのです。その点いかがですか。
  64. 高橋覚

    ○高橋説明員 この問題については、先般外務大臣からも御答弁があつたと存じますが、アメリカとの協定に、何に借りるということを書きますと、アメリカに対しての約束になり、それ以外に使えない。たとえば輸送のために臨時に使うような場合に、縛られてしまうということは、かえつて不利なのではないかという御答弁があつたと記憶しております。借りた以上は何にでも使えるということは、これはアメリカに対するそういう義務を負わないという余地が残つているわけでありますが、もちろん目的といたしましては、わが方の外務大臣からリッジウエイ司令官に出しました手紙の内容にありますように、海上警備のため及び海難の救助に使うということでございます。
  65. 並木芳雄

    ○並木委員 その点はわからないわけではありません。しかしそれは日本政府アメリカとの間の話合いであつて、われわれは国会議員という立場からこの条約を審議しているのですが、それはどこにも出て来ないのです。沿岸防備のために使うということが出て来ない。これだけ見れば主管は運輸省ではないか船舶を借りて来るなら、運輸大臣が主管してしかるべきではないか。しかるに木村保安庁長官が、のこのこ出て来てわれわれの質問に答えている。そこだけでもおかしいので、そういうことから予算委員会の方でも、私は皆さんがつつ込まれているのだと思います。ことに借りて来た船をこちらでなるべく広範囲に使う余裕を残しておきたいなんということは、政府は善意であつても、これはまた他の外国に及ぼす影響というものは非常に微妙です。そんなことからまた日本が、何か国会の前に説明のできないような、陰でこそこそやつているのではないかという疑惑も持たれるわけです。どうですかその点。向うのアクトにもはつきり使用目的が書いてあるのでしよう。
  66. 高橋覚

    ○高橋説明員 この協定は、先ほど説明申しました、吉田前外務大臣からリッジウエイ司令官あての書簡、それに基きまして、先方がアクトをつくりまして、双方の範囲内で現実に船舶を貸借するためにつくられた協定でございますので、当然その双方の書簡及び先方のアクトに掲げられてある以外の目的のために使われることは、あり得ないと存ずる次第であります。
  67. 安東義良

    ○安東委員 関連して……。私は二つだけ伺いますが、今の高橋課長の御説明のうちに、外務大臣が輸送なんかに使うような場合もあり得るので、はつきり限定しない方が有利だつたというような答弁をしたというようなお話でした。これは議事録を調べた上で私はもう一ぺん問題を明らかにしたいと思うのですが、それだと、沿岸警備以外の目的がまだ含まれているのだというような印象を持たせる。その点についてもう一度はつきりお伺いします。
  68. 高橋覚

    ○高橋説明員 私の記憶によりますれば、先般当委員会におきまして岡崎外務大臣は、たとえば引揚げなんかの場合にも使える余地を残すということを述べられたと記憶しております。
  69. 安東義良

    ○安東委員 先ほど並木委員からお尋ねがあつた点なのでありますが、船舶といつている問題からして、海上安全条約との関係が少しおかしくなりはせぬか。海上安全条約の第一規則によつて、これは国際船舶にのみ適用ある規則であるから、それでいわゆるフリゲート以下の船舶は適用がないのだ、こういう原則がきまつておるのだ、その原則に立つておるのじやないかということを聞いておつた。それに対して明白な御回答があつたような、ないような、すこぶるあいまいでありましたが、私はさらにその点をもつとはつきりしたいと思う。その点は、御承知の通り第五章に「航海の安全」ということがある。そごには「第一章第三規則の規定にかかわらず」、すなわち規則の適用を受けない除外船舶名前が書いてある。その規定にかかわらず、「別段の明文規定がない限り、この章は、軍艦以外のあらゆる航海に従事するすべての船舶に適用する。」ということがある。そうすれば、フリゲート型は、この点から言うならば軍艦以外の船舶であつて、この第五章の航海の安全に対する規定の適用があるという解釈が起つて来る。これはどう考えられるか。
  70. 高橋覚

    ○高橋説明員 先ほど申しました通り、規則の第一章のAの第一規則の「適用」これが大原則であります。そういたしまして、この第三規則にも、ただいま仰せになりました適用除外の「別段の明文規定がない限り、規則は、次のものに適用しない。」軍鑑及び軍隊輸送船、総トン数五百トン未満の貨物船と書いてございます。しかし次の第四規則にまた「免除」というのがございまして、「通常は国際航海に従事しない船舶で例外的状況において一の国際航海を行うことが必要であるものについては、規則のいずれの要件も免除することができる。」通常国際航海に従事する船舶にのみ適用するというのが大前提でありますから、たとえばそういうような船舶が、それ以外の場合例外的に従事するというような場合でも、規則のいずれの要件をも免除し得るということになつておるわけであります。
  71. 安東義良

    ○安東委員 それでは実は答弁になつていない。私の聞いておるのは、航海の安全という第五章です。第五竜に航海の安全ということがある。その初めの方に、「第一章第三規則の規定にかかわらず、別段の明文規定がない限り、この章は、軍鑑以外のあらゆる航海に従事するすべての船舶に適用する。」ということが書いてある。そうすれば、今のフリゲート型はいわゆる船舶だというならば、この規定の適用を受けるのではないかという疑いを起す人がある。これを政府としてはどういうふうに考えるか、それをはつきりしたいと思う。今のお答えのようなことを聞いているのではないのです。
  72. 高橋覚

    ○高橋説明員 ただいまの第五章の「航海の安全」これは第一規則の方に「別段の明文規定がない限り、規則は、国際航海に従事する船舶にのみ適用する。」これが明文規定と存じます。
  73. 安東義良

    ○安東委員 そういう解釈も私は成り立ち得ると思う。だから必ずしも第五竜がそのままフリゲート型にも適用せられるものとは私も思わない。その解釈自体を私は全然間違つているとは思わない。だからその点はそれでいいとして、しからば船舶安全法とどういう関係にあるか、この航海の安全ということについて、船舶安全法はどういうふうにこれを取扱つているかということをまず御説明願いたい。
  74. 高橋覚

    ○高橋説明員 船舶安全法は、海上における人命の安全のための国際条約に基きまして制定した法律でございます。わが国はこの条約に加入した結果といたしまして、この条約規定違反した国内法を設けましたときに、この条約の義務に違反するわけであります。
  75. 安東義良

    ○安東委員 そうだと、保安庁法においてはこの船舶安全法は適用を除外しておるというふうに私は見ますが、この海上安全条約加入の際に日本政府が国会に提出した説門書をごらんください。こう書いてある。第五章の航海の安全、この章は国際航海に限らず、すべての船舶に適用されるのであるが、軍艦に対してだけは適用が除外されていると書いてある。これはどういうことですか。
  76. 高橋覚

    ○高橋説明員 ただいま説明書が手元にございませんので、いずれこの点は研究してお答えいたします。
  77. 安東義良

    ○安東委員 説明書はここにありますから、ごらんに入れます。
  78. 増原恵吉

    増原政府委員 これは補足的に申し上げるのですが、第五章の航海安全の規則は、やはりこれは条約にあります登録された船という制限はもちろんございましようが、条約にある、軍艦以外の船には適用されるというふうに解釈されるのではあるまいか。しかしその場合に私の方の警備隊の今度の船との関係はどうなるか。私どもの船といえども国際条約に従うことは第一前提でございまして、私どもの方で船舶安全法を第八十七条で適用除外をいたしましたのは、御承知のように、安全法には、航海安全のみならず、この条約にありますようないろいろな構造その他のことがみな載つておる。構造その他につきましては、私どもの船はいわゆる国際航海に従事しない、あるいは客船でないとか、新船でないとか、いろいろな理由によつて条約適用外になつておるのがほとんど全部でありますので、われわれとしては安全法は一応除外をいたしますが、条約趣旨にのつとつて、航海安全についてのものはこれを遵守する措置をとるというようにいたして参りたいと思います。
  79. 安東義良

    ○安東委員 遵守する措置をとるということは当然のことでありますが、その措置はどういうものをとられましたか、承りたいと思います。
  80. 増原恵吉

    増原政府委員 これは実はまだ措置は完結をいたしておりません。まだ動いておらぬものでございますから、これから適当な政令なり訓令等で、政府の船でありますので、そういう措置をとつたらいいのではあるまいかと思います。
  81. 安東義良

    ○安東委員 その点については私も同感であります。当然そうやらなければならない。やらなければ国際条約違反という問題が起つて来る。ことに先ほど指摘いたしました政府の説明と明らかに矛盾するようなことになつてしまう。この点は私は不注意な点が少くとも政府の方にあつたのではないかということは言えると思うのでございますが、しかしひとりこのフリゲートだけの問題ではない。現在海上警備隊に船がある。その船もやはりそれに従わなければならぬわけですが、今までそういう政令なしにどうしてやつて来たか、その点が残ると思うのです。
  82. 増原恵吉

    増原政府委員 現在までやつて来ております警備隊のは、例の掃海艇というものでございます。これは条約に要求しておりますような要件は全部満たしたままの形で現にやつておるわけでございます。
  83. 安東義良

    ○安東委員 満たした要件でやつておるということは、内部訓令とか何かで十分徹底しておるわけですか。こういうふうに除外した以上は、そのときに当然海上安全条約規定を遵守するべきいろいろな具体的な指令がなければならぬはずですが、そういう指令は出ておるのですか。
  84. 増原恵吉

    増原政府委員 保安庁に属しますいろいろの規程、訓令等はございます。
  85. 安東義良

    ○安東委員 保安庁関係の法令集というのがここにあるのですが、これにはそういうものは載つておらぬようですが、これよりもつと詳しい具体的なものが、海上安全条約趣旨従つて出ておるというわけですか。
  86. 増原恵吉

    増原政府委員 海上保安についての詳しい訓令は実はまだ用意はできておりませんで、はつきりした形のものとしてはこれから補完をしなければなりません。
  87. 高岡大輔

    ○高岡委員 ただいま安東委員からいろいろと質問があつたのでありますが、今問題になつておりますフリゲート並びに上陸支援艇は、千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際条約の第三規則の適用除外の中に入るとお考えになるのでしようか。
  88. 高橋覚

    ○高橋説明員 先ほどから申しておりますように、この第三規則の適用除外には入りません。
  89. 増原恵吉

    増原政府委員 第三規則では、御承知のように、総トン数五百トン未満の貨物船というのがございます。これに該当して除外される分がございます。
  90. 高岡大輔

    ○高岡委員 そうしまずと、五百トン以下のはいいとして、五百トン以上の——現在フリゲートは千トン以上でありますから、当然この除外には入らないと思います。そうしますと、客船か、貨物船か、ないしは軍艦ということになるのでありますが、フリゲート船は一体そのうちの何に該当するのですか。
  91. 増原恵吉

    増原政府委員 その点は便宜私からお答えいたしますが、それは第一規則によりまして「明文規定がない限り、規則は、国際航海に従事する船舶についてのみ適用する。」これで大体において五章以外ははずされておる。五百トン未満の貨物船というのは二重に受けておるわけでありまして、たとい国際航海に従事しても、五百トン未満の貨物船であれば適用除外になる、これは二重の除外であると解釈いたします。
  92. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 先ほど並木さんの質問に高橋条約課長がお答えになりましたときに、目的を明示して沿岸警備船舶ということにしたらどうかという質問に対して、そういうように限定してしまうと、借りてから使用限定されて不都合だから、そういうことは困る。それから次の答えには、たとえば借りた後に、警備ということ以上に輸送等にも用いるという、使用範囲を広めた御答弁があつたのでありますが、その船を借りる目的は、一九五二年四月二十四日の外務大臣吉田茂氏からリッジウエイ大将にあてた手紙が基礎になつたことは争われないと思う。この手紙によりますと、日本政府はこれこれのたくさんの小さい船を持つているが、これでは九千マイルに及ぶ日本の長い海岸線を有効に警備することができない。だから、これを警備することのためには不十分であるから、日本国政府は最小限度それに合うような船としてフリゲート艦を借りたい、こういう手紙が出ておつて、これによつて、船を借りようとする目的警備にあることは争われないと思う。その警備ということをはつきり協定目的に表わすということは少しもさしつかえないことだと思うのですが、今高橋課長が答えられたように、たとえば輸送に用いるということになりますと、元来船そのものが武装した船なのですから、たとえば戦争目的にも使用するということになつてしまう。そうすると当然憲法第九条に抵触して来ることになるわけであります。この点に関して、はつきりした御答弁を願いたいと思うのです。
  93. 高橋覚

    ○高橋説明員 たとえばほかの目的、引揚げのための輸送等に用いることは何らこの協定にも違反しませんし、日本法律でこれを禁止しているものでないと思う。しかし仰せのように戦争に用いるということになれば、これは明らかに憲法違反するわけであります。
  94. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 どうもその点が明確でないのですよ。元来借りるときには警備目的として借りると言つておきながら、今度こつちへ来てからいろいろなものに使う——もちろん輸送に使うことが法律に禁止されているわけではないから使うけれども、元来この船は輸送等を目的として借りたものでないことは明白なのです。ただたまたまどういう機会に——あの小さな船で一体何人が輸送できて、どれだけの貨物の輸送ができるのか。こういうかうになれば輸送船でないこともこれまた明白なのです。たとえば輸送船の警備に当てる、こういうことならまた話が別ですけれども、この船そのものを輸送目的使用するというようなことは、法律に禁止してないからといつて実際においては不可能なことだ。たとえば、私はそんなことは言いたくないのですけれども、そういうことを言われるということは、ことさらにこの船の性質、それから借入れの目的をぼやかして、借りた以上は何に使つてもかまわぬ、こういう例としてたまたま輸送ということをあげられたのだろうと思う。そうすると、これを審議する上においてそういうお答えを聞いた以上は、また別な目的として武器を不当に使用するというようなことも当然疑惑が起つて来るのですね。だから私は初めから協定をするに至つたすなわち吉田書簡の精神に基いて、警備艦なら警備艦として使用するのだと使用目的を明示されることはちつともさしつかえない。その上でその警備がはたして妥当であるか、憲法に抵触するものであるかということは第二の議論として生れて来ると思うのです。どうお考えでしようか。
  95. 下田武三

    ○下田政府委員 あとから上りまして今までの御審議の経過をよく存じませんが、協定の中に何の目的をもつてこれらの船舶を借りるという点を明記しないのが、不当ではないかという御意見のように拝聴をいたします。
  96. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 いや、そうじやないのですよ。ちよつとあなたはお留守だつたからおわかりになられませんが、並木君からこういう質問をされたのです。もうすでに今までの論議の過程から見て、これは武装した船であるということには間違いないのだし、使用目的もおのずから限定されているから、ただ単に船舶という名前ではなくて、沿岸警備船舶、こういうようにされたらどうか。こういう質問をされたことに対して高橋課長は、そういうようにきめてしまうと、今度借りた後に使用限定されてしまつて困るからそれはいけない。それから第二段の質問で、たとえば輸送に使うというような場合があるから、そういうことを限定することはいけない。こういう御答弁だつたのです。だから、そういうように言われるならば、借りた以上は何に使つてもかまわぬ、ざつくばらんに言えばそういうことになつてしまうのですね。何に使つてもかまわぬということになれば、輸送にも使おうし、あるいは交戦のためにも——とにかく武装を持つているのだから、実際問題として戦争ということにならぬまでも、紛争の道具に使われるということもあり得るわけです。だから、そういうあいまいな、使用目的限定することは困る、あいまいにしておく方がいいという考えからそういうお答えをなさるならば、われわれはそういうあいまいな御答弁で審議を進めて行くことができないではないか、今こういう関連質問をしているわけなのです。
  97. 下田武三

    ○下田政府委員 わかりました。その点に関しましては岡崎外務大臣から一度御答弁があつたと存じますが、たとえて申しますと、さしあたり中共からの引揚げというような問題が、現実の問題になつて来つつあるようでございますが、その場合に何万という人を急速に一日も早く引揚げるというような場合、日本の手持ちの船では急速に行うことができないというような場合に、この船舶を臨時に流用するというような必要も起らないとも限らないと思います。それでございますから借りる方といたしましては、船舶のまくら言葉として借手の方の自由を拘束するような形容詞はつけない方がむしろ借方としては有利ではないか、そういうように考えております。なお御懸念の戦争等に使う危険があるではないかということでございます、これは保安庁はもちろん政府機関といたしまして、憲法初めあらゆる法律の権限内で与えられた事項にしか使用し得ないわけでございます。その点は御懸念ないと思います。
  98. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 局長がよく課長さんの答えられたことをカバーされて、何とかしてこれを合理化しようと苦心されることはよくわかるのですけれども、そんなものじやない。いやしくも条約局長の立場においてこの協定の精神を論議する場合に、使用目的をそんな今中共から引揚げの問題、そんなことを外務大臣は一ぺんも答弁しておりませんよ、ここでは。ただあなたの思いつきで課長の答弁をカバーされるという事柄は、私はきわめて情味の厚い言葉だとは思うのですけれども、それではならぬと思うのです。もつと率直に、思いつきでなくして、ほんとうにごの協定をどうすれば実際に目的にかなうようにすることができるか、こういう立場から答弁してもらわなければならぬと思うのです。そういう点からいつて、なるほど戦争目的には憲法規定しているから使用できない。こんなことはあたりまえ。あたりまえのことであるが、おつしやるように輸送船にも使う。大体こんなものは輸送には使えません。中共から何万という在留同胞が引揚げる場合に、いかに緊急を要するからといつて、一体何人輸送ができますか。そんなものは輸送船でないことは明白なのです。それならば他の商船を至急徴用して使つてもいいわけです。日本にはいくらでも徴用する汽船がある。百人や二百人を定員とする小さなこんな武装船を使う必要はない。それはあなたの思いつきにすぎない。そういうことはあなたの不親切だと思う。この委員会の審議の過程でそういうお答えでわれわれが満足すると思つたらとんでもない。もつと率直に答えてもらいたい。
  99. 下田武三

    ○下田政府委員 外務大臣も引揚げの問題に言及されて、そういうために使うことがあるかもしれないということを、本委員会の席上でおつしやいましたことを私承知しております。なお交渉の途中で、そういう船舶にまくら言葉をつけるということは、双方の当事者は全然頭に載せず、(「なぜないのか、気がつきそうなものだ。」と呼ぶ者あり)それはなぜかと申しますと、本委員会に配付いたしました吉田書簡の四月の手紙で、明らかに、九千マイルに上る長い日本の海岸線を守るために、船舶を貸してくれということを申しましたので、こちらの目的は向うによくわかつております。しかしながら向うもだからといつて船舶にまくら言葉をつけようというようなことも言い出しませんし、わが方もそういうことを考えたことはございません。先ほど申しましたように、その点はむしろ日本側の借手側の自由に融通のきくように規定しておいた方が、日本側としては有利だ、そういうことを交渉当事者が信じて疑わなかつた結果、このようになつたわけであります。
  100. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 もう一問だけ。今条約局長お答えは、実際そういつては悪いけれども、まつたくその場のがれの詭弁ですよ。日本においてなぜこれが問題になるかというと、そういう武装をした船が問題なのですよ。船の実体の問題なのですね。だからして、少しでもそういうことに疑惑を生ぜしめないようにすることが、法の精神でなければならぬし、協定の精神でなければならぬと思うのです。私どもがこれを問題にするのは、実際に装備をしておる船の実体を問題にして、これが、どういうことに使われるかということが非常に疑問になるのです。その使い方のいかんによつては、ただちに憲法に抵触するわけなのです。そういうことを今究明して論議をしておるときに、使用目的をあいまいにしておいた方が、借りる方では有利だというような答弁は、実際——それならば輸送船にも使うだろうし、これはこの間も保安庁長官も答えられたが、海上強盗、海賊というようなものに対しては、使用することがあると言つたけれども、その海賊といつたつて、一体向うが先にやつて来たのか、こつちから先に行つたか、国際紛議をみずからつくろうとするためにやろうとしたのか、そういうことがわからなくなつてしまう。海上においてやられるから、そういうことはどうかわからない。ほんとうに悪意のある第三者があつて、もし日本をして国際紛争の渦中に入らしめようとするならば、その船を使わせようとしないとも限らない。今までの戦争にしたつて、どういうところから起きたか、柳条溝の問題にしても蘆溝橋の問題にしても、そういうことから起つて来ておる。だから私は問題を明白にしておく必要があると思う。
  101. 帆足計

    帆足委員 関連して。ただいまの問題について一緒にお答え願いたいのですが、今引揚げ問題が出ましたが、引揚げ問題にアメリカ軍艦を使うというような政治的感覚で、これがうまく行くとお考えでしようか。私は岡崎さんの政治的感覚を疑う。今アメリカと中国は不幸な状況にある。日本がその間にはさまつて何とか円滑に引揚げ問題をやらなければいかぬというときに、軍艦を持つて行ごうというようなことは、一体どういう感覚か。礼儀としてもあまりに非常識きわまるものであり、これは外務大臣としての資格がないと言われてもしかたがない問題ではないかと思いますけれども、外務当局はもつと慎重になつていただきたいと思います。
  102. 栗山長次郎

    栗山委員長 まとめて御答弁願いますよ。
  103. 黒田寿男

    黒田委員 私はこの条約の問題について、その使用目的が定められてないということと、それから賃料の定めがないということが、この貸借協定の特徴になつているというように見ておるのでありますが、賃料の問題はあとにいたしまして、使用目的という点について、皆さんのお話になりましたあとに、少し残されておると思われる点について、質問してみたいと思います。  この協定船舶貸借協定ということになつておりますが、貸借協定の中には、御承知のように、賃貸借と使用貸借とがあるわけです。これは賃料の定めがないのですから、やはり私ども法律使用貸借と見るべきであると思いますが、どうでありましようか、これが一点。  そこで問題が起るのですが、使用貸借であるということになれば、借主は契約またはその目的物の性質によつて定まつた用法に従つてそのものを使用するというのが、普通だと考えます。しかるにこの契約には、使用目的の定めがないのであります。そうすると貸借の目的物の性質によつて定まつた用法に従つて使用をなすという面が残つて来る。そうすると、貸借の目的物は実に武装船である、われわれの言う軍艦であります。その目的物、すなわち軍艦の性質によつて定まる使用ということに、使用貸借であるとするならば、なる。だからその危険を除こうと思えば、どうしても契約において目的物の用法を定めておかなければならない。そうでなければ今のような問題が起ると思うのです。だから私はこの使用貸借をしたことの一番危険な点が、使用貸借にしてありながら、使用目的を定めていないところにあると思う。使用貸借は貸借の目的物の性質に従つて使用しなければならぬというのが普通でありましよう。そこで非常に危険な問題が起つて来る。問題は軍艦目的物たるところにあります。だから私はどうしても使用目的を書いておかなければ、使用貸借の性質上、武装船として用いられるという余地が残ると居います  それからもう一つ日本の方では海上警備のために使うのだと自分ひとりでそう思つておるとしましても、貸す方のアメリカではそういうふうに限定せられたものと思つておるのかどうか。この条約の内容のように、何も使用目的限定されていないでも、アメリカがそう理解しておるかどうか。こつちだけが一方的にどう考えておりましても、契約には相手方があるのですから、その相手方かどう考えておるか、アメリカがはつきりそういうふうに考えておるか、そこに問題がある。その三つの点を私は質問しておきます。
  104. 並木芳雄

    ○並木委員 私は、あるいは助け船を出すようになるかもしれませんけれども、私ども質問に対して、政府がそこにいかにも何か意味ありげに答弁しているから、よけい疑惑が深まつて来るのだと思う。ですから私はあつさりと行きますけれども、私ども希望がそこにあるとするならば、この用語についてはあらためて先方に申し入れて、まくら言葉をつけてもよろしゆうざいます、国会議員の皆さんの御希であれば、できますということが言えるかどうか。それからただいま黒田さんの引用されました使用目的は、先方のアクトにはちやんと書いてあるようです。吉田さんとの往復文書を見るとあるようであります。アメリカ法律になつておるにかかわらず、日本国内法には、外国から借りて来た船舶は、その所管をどこどこでやつて、どこどこに使うというようなことはないように思います。もしあるならば教えていただきたいと思いますが、ないからこそ、今度初めてのケースであり、条約にあつさりとうたつておいた方がいいのじやないか、こういう質問が出て来るわけであります。その二つを伺つておきたい。
  105. 安東義良

    ○安東委員 今の並木君の提案といいますか質問に関連しますが、私は必ずしも条約それ自体に修正してまくら言葉をつけなくとも、さらに交換公文あたりでその点を明らかにする方法もあり得ると思うので、あわせて御答弁願いたいと思います。
  106. 西川貞一

    ○西川委員 私はこの点は他の面において非常に重大だと思うのであります。保安隊任務といたしまして、たとえば警察予備隊のごときでも、先年——私は山口県の者ですが、山口県の暴風の被害の際に、その地方の治安を維持し、また難民の救護をするために、警察予備隊が出動をしたのでありまして、そのために、当時非常に人心が不安になつたのが安定をいたしまして、また復旧のために非常に効果を上げたのであります。ところが、そういうことは日本にはしばしば起る。大震災の被害等の非常に多い日本。私は大正十二年の関東大震災のことを記憶いたしておるのでありますが、当時鉄道交通等全部不通になりまして東京はまつたく孤立の状態なつた。しかしながら、これに救援物資を送るために、ただちに船舶を振り向けようといたしましても、政府がただちに自由に使える船舶を持つていないために、非常に不便であつた。私は当時下関から漁業に出るところのトロール船を特に東京湾に回航いたしまして、それに乗り組んで救援に来たこともある。そういうようなことは日本においては何時起るかもわからないのであるが、私はこの船の沿岸警備目的以外の使用として、たとえば引揚者を送還するというようなことにお使いになるというような場合は、この船の性能からいつてあまり適当でないと思うけれども、しかし非常な災害等の場合に、人心が非常に不安に陥つており、またそれがためにその地方の治安も乱れようとしておるような場合には、かかる船舶が出動いたしまして、応急救護の品物を送ると同時に、また人心安定のために活動することは、これは当然非常に必要であると思うが、そういうようなことは、政府はお考えになつておられないか。つまりわが国といたしましては、これは借りる方であるから、そこに限定した義務を負わないことは、国家の利益である。しかし戦争に使うとか、使わないとかいうようなことは、憲法によるところの大前提として、そういうことはできないことになつておる。またこの条約はそういうふうに使うという規定をしたならば、それは日本憲法の性質といたしまして、憲法以上の条約締結成立いたしました以上は、その条約を守る義務が日本には起るのでありましようけれども、何もそういう積極的な条項を定めるのでないのであるから、そういうような場合を考慮して行かなくてはならぬ。そういうような場合と申しますのは、非常な災害をある地方において受けて、そこで交通等が杜絶して孤立状態に陥つた場合、しかも人心不安が非常にはなはだしいような場合、そういうような場合には、かかる船舶が非常な力を発揮する、また使用の必要があるということをお考えになつておらないか。そういう点についての御意見を承りたいと思います。
  107. 松田竹千代

    ○松田(竹)委員 もう一つ黒田君の質問に関連して……。黒田君の御質問に、これは使用貸借かということがあつたのですが、私はそうだろうと思うのです。明らかに賃貸でないのだ。賃貸契約でないということになると、私は条文を持つておりませんが、六条か何かで、五箇年の期限ということになつておる。そうしてもし日本が五箇年の後に、これを必要ないから返す、向うも受取る、そのときには、たしか契約のときの状態のままで返す。これがもし賃借であるならば、料金を払つておるのだから多少の自然消耗に対しては、これは見る必要もないかもしれませんけれども、無賃で、単なる使用料を払わない契約であるのでありますから、そのときに借りたときの原状のまま返すということは、ちよつとわれわれしろうとにはあり得ないと思うのであるが、そのとき、はたして借りたときの原状であるかどうかということをだれがきめるのであるか。私は普通の賃料を払つて借りている場合ならば、自然の償却というようなこともその賃料に入つておるからよろしいけれども、そうでない、しかも借りたときの原状において返すということは、どうもはなはだむずかしいことだと思うのだが、それらのことに対しては、但書はできておらなければならぬはずと思いますが、そんなことはさしつかえないのであるか、ちよつと伺いたい。
  108. 栗山長次郎

    栗山委員長 松田さんの御質問は、その条項が後に参りますから、そのときに明細に答えさせます。従つて以上加藤、帆足黒田、並木、安東、西川、六委員の質問に対して一応まとめてお答えを願います。
  109. 下田武三

    ○下田政府委員 御質問の中には、保安庁の方からお答えを願つた方がよい事実問題もございますと思いますが、外務省関係の点をお答えいたしたいと思います。  およそ外国から、船舶に限らず、物を借りようという交渉をいたします場合に、わが方として注意すべきは、先ほど黒田委員のおつしやいましたように、貸主から困る注文をつけられないということだろうと思うのであります。この場合で申しますと、アメリカ側からはこの船はこういうことに使えよという注文をつけられない、またアメリカならアメリカの政策的考慮から、どういうふうにやれという注文をつけられないことが、一番必要ではないかと思います。また借り受ける方の立場からいいますと、目的限定されないことが、一番有利ではないかと思います。その両者の立場から考えますと、本協定のように、目的に関してまくら言葉をつけられないということが一番安全であり、かつわが方にとつて有利ではないか、そういうように存じております。使用目的に関しましては、それが外交交渉で一番必要なことだと存じます。  なお安東さんからのお話で、使用目的を明瞭にするために、必ずしも条約の修正によらなくてもよいから、何かはつきりする交換公文でも、そういう措置をとつたらどうかというお話でございましたが、並木さんのおつしやるように今せつかく調印しましたものを修正の交渉をし直すということは、政府側としては極力避けたいと存じます。それから交換公文の点も、話しようによつてはできるかと思いますが、先方はおそらくその点は、もう当初の吉田書簡で、はつきりしておるではないかということを申すのではないかと思います。  また帆足さんは、引揚げのために武装した船を持つて行くことは、常識はずれの措置であると申されます。しかしながら、私もそれを仮定の場合として申しておるのでありますが、何もこの船自体に乗せませんでも、まだ機雷等が流れておる際に、船団を組んで帰るという場合には護衛も必要でありましようし、必ずしもこの船が引揚げに全然無関係だというようにお考えくださらない方がいいのではないかと思います。  なお先ほどから加藤さんがたびたび御質問になりました船舶戦力に利用されることの危険、それにつきましては、先ほども申しましたように、憲法の大前提に国家全体が当然縛られておるわけでありますが、この船を使用いたします当事者である保安庁法にも、目的をきわめて技術的な目的限定いたしております。それから元来この船舶を借りるということの内容は、法律的に見ますと、先ほどお話のありましたように、使用貸借でございますが、その本質はまつたく調達行為にほかならないわけであります。海上保安庁はその所掌事務遂行に必要な装備船舶等を借りることができるという規定によりまして、保安庁当然の権限に基く調達行為であります。ただ法律的には調達行為でございますが、アメリカ側に対する原状返還でございますとか、いろいろな義務を負担しておりますので、これを特に国家間の条約の形式で締結いたした次第でございます。しかしながら条約でとりきめたからといつて、何らこの行為自体の性質に政治的なプラス・アルフアーがつくわけでも何でもないわけでありまして、その点は戦力問題に関連して、いろいろな御懸念はごもつともとは存じますが、この船舶貸借行為自体はきわめて簡単でかつ明白なものでありまして、その点は実際にこの船舶をお使いになつて所掌事務を推進して行かれます保安庁におかれまして、絶対間違いのないようにお使いになることと、私ども交渉に当りました者としてかたく信じて疑わない次第であります。
  110. 増原恵吉

    増原政府委員 災害等の場合に、災害救援の意味でこの船を使うことがあるかという御質問がございましたが、保安隊警備隊ともに災害の場合に適切な救援その他の措置をとりますることは、やはりこれは私ども任務と心得ておりますので、災害の場合に借りました船を使う、その場合にはあるいは救援物資を積んで行く、あるいは災害にかかつた人を臨時に移動するというふうな場合にも、これは災害救援のものとして私どもは必要があらばこの船は使うようにいたしたいと考えます。
  111. 栗山長次郎

    栗山委員長 お諮りいたします。ただいま議題になつております日米船舶貸借協定に関連して、先般来しばしば保安隊装備に関し、法的根拠、実地の状況、数量等が問題となつております。これに関し、理事各位に稟議をいたしましたところ、保安隊装備及び訓練等を実地に視察する要ありということでありまして、この件は対外関係を含んでおりますので、本委員会により視察を実施することが適当と存じます。御異議がなければさようにはからいます。
  112. 並木芳雄

    ○並木委員 御異議がないどころじやございません、大賛成ですが、この前われわれは練馬へ行つたのです、ところがあそこでは実際に練習をしているところが見られません。ですからぜひひとつ今度は猛烈な練習をやつているところを見たいのです。そういうふうにひとつおとりはからいを願いたい。
  113. 黒田寿男

    黒田委員 私もそのことをお願いしたいと思つていたのであります。視察するそのことには大賛成でありますけれども、練馬くらいのものを見せていただいたのでは、私どもはどうも保安隊の全部を見たような気がいたしませんから、ほんとうに問題になるようなところが見られるような保安隊のキヤンプといいますか、それをひとつ選んでぜひお願いしたい。
  114. 栗山長次郎

    栗山委員長 その交渉を政府当局にいたしますため、また政府委員の予算委員会等における都合がありますので、三時まで休憩をさしていただきます。三時から再開をいたします。  それではこれで休憩いたします。     午後零時三十三分休憩      ————◇—————     午後三時十一分開議
  115. 栗山長次郎

    栗山委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  船舶貸借協定の逐条審議をしておりましたのでその続きであります。
  116. 並木芳雄

    ○並木委員 午前の会議のときに条約局長がおらなかつたので、課長の方へ質問して答弁を得た点についてお尋ねをいたしたいと思います。それは、予算委員会の方で答えた点と私たちがここで聞いた点と違つているようですから、どつちが正しいのだか、はつきりしてもらわなければなりませんので伺います。  第一に、規則の第一にあります国際航海の条項、これは規則の中に入つているけれども、千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際条約全体を支配するところの大原則であり、大前提であるということには間違いありませんか。
  117. 下田武三

    ○下田政府委員 御指摘の規則第一章一般規定と申しますところは、大原則と申しますか、一般的な問題を集めて規定をしている意味で、原則規定と申してさしつかえないと思います。
  118. 並木芳雄

    ○並木委員 そうすると、やはりこの条約全体は原則としては国際航海に従事する船舶に適用するのであるということになりますか。
  119. 下田武三

    ○下田政府委員 第一規則に「別段の明文規定がない限り、規則は、国際航海に従事する船舶についてのみ適用する。」、問題は別段の明文規定がどこにあるかという点で、個々の規定を当つてみまして、はたしてその個々の規定国際航海に従事する船舶にのみ適用があるのか、あるいはそれ以外の船舶にも適用があるのかという点を解釈して行くほかないと思います。
  120. 並木芳雄

    ○並木委員 そうすると、第五章の航海の安全に関するところがまた問題になつて来ると思うのですがね。ただいまの局長の説明によつて、別段の規定の中へこの第五章が含まれて来るのではないか。そこのところが答弁としては食い違つているようなのです。この航海の安全に関する条項は、第一規則適用のところで「第一章第三規則の規定にかかわらず、別段の明文規定がない限り、この章は、軍艦以外のあらゆる航海に従事するすべての船舶に適用する。」とありますが、これはただいま局長の言ういわゆる別段の規定に相当するものではないかと思われるのです。もしそうだとすれば、午前中の答弁と違つて来るように思うのですが、その点いかがですか。
  121. 下田武三

    ○下田政府委員 その点に関しまして、午前中私がおりませんためにかわりのものが答弁いたしましたが、午前中の答弁を訂正させていただきたいと存じます。つまり御指摘の第五章の冒頭の規則、ここにも「別段の明文規定がない限り、」とございますし、また一番初めの一般規定でも「別段の明文規定がない限り、」と、両方にそういう断り文句がありますために、非常に解釈がややこしくなるわけでございますが、条理解釈から申しますと、第五章の方では「軍艦以外のあらゆる航海に従事するすべての船舶」と特にそう書いております点から見ますと、この規定はまさに冒頭でいいます「別段の明文規定がない限り、」のその「別段の明文規定」に該当するものであり、従つて第五章の航海の安全に関する規則は軍艦のみならず、あらゆる航海に従事する船舶に適用がある、そう解釈するのが当然であると存じますので、その趣旨に午前の答弁を訂正さしていただきます。
  122. 並木芳雄

    ○並木委員 あとまだ安東さんからこれに関して質問があるようですから、私のだけはとりあえずこれに限定しておきますが、そういうふうに率直に取消されましたからいいのですけれども、大事な外務委員会における質問に対する答弁で、私どもは慎重に、しかもどつちかといえば、政府を助けてやるような気持で質問しているのに、そういう軽率な答弁では、ほんとうに困ると思う。その点は十分ひとつ注意していただきたいと思う。  そこでそういたしますと、今度借りて来る船舶に第五章の航海の安全の条項が適用することになります。そうなるとこの条約に基いてどういうことをやらなければならぬかという問題が出て来ると思います。そういう手配をしなければならなくなりまするか、その点。
  123. 下田武三

    ○下田政府委員 第五章の航海の安全に関します規定は、大体前の船舶構造その他の点と違いまして、人為的に航海の安全をはかるいろいろの措置を規定しております。流氷が流れて来た場合にどうするかとか、SOSが聞えて来た場合にはどうするとか、こういう事柄は国際航海でなくても領水内におきましても当然とるべき措置でございますので、保安庁におかれましても、船舶がどこにあるとを問わず当然とるべき措置で、これは条約規定通りに実施なさる御意向と承つております。
  124. 並木芳雄

    ○並木委員 それには条約にあります通り法律の制定が必要ではないかという点はいかがでしようか。それからそれについて保安庁法船舶安全法を除外した点は、これはやはり間違いになるのではないかというような点についての、明快なる答弁をこの際お願いしておきたいと思います。
  125. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私からお答え申し上げます。御承知の通り条約というものが結ばれますれば、それは当然に国を拘束し、あるいは国民をも拘束するものであるというのが一つの原理でございまして、条約国内に適用するがために、必ず法律が必要かどうかというと、決してそうではない。また実例もたくさんあるわけでございます。この場合におきましては、この保安庁法において国内法の適用を除外はいたしております。しかしながら条約の適用の除外はもちろんやつておりません。従いまして国内法が除外されましたその空白地帯には何が来るかというと、当然に条約がそこへかぶつて来るという建前になりますので、この関係におきましても、保安庁はあるいは警備隊はこの海上航海の安全ですか、この限りにおきましては、条約趣旨にのつとつてこれを遵守しつつ行動するということに当然なる建前でございます。
  126. 安東義良

    ○安東委員 実はその問題について御質問したいと思つてつたのです。保安庁法において船舶安全法を除外した。船舶安全法はこの安全条約の内容をとつたものである。この点は間違いないと思うのです。しからばそれを除外したから、それで国際条約がその空間を満たすのだという御議論は、ちよつと日本条約法律との解釈論からいえば、きようが初耳のように感ずる。いつの間に日本政府はそういうような解釈をとつたのか、新しい憲法ができたからそうなつたのかもしれませんが、その辺のところを御説明願いたいと思います。
  127. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 国内法たる船舶安全法というものは、この条約である海上人命の安全に関する条約よりも、上まわつた制限をしておるということを御了解願つておきたいと思います。従いまして、条約に該当する部分及び条約では要求されておらない沿岸航海の部分までも含めて、自主的に立法ができておる、そういう法律だということをまず前提に申し上げておきましてそれでお尋ねの点に入るわけでございますけれども、これは安東委員御承知と思いますけれども、先ほど触れました国際条約に入るという場合に、その条約を実施するために必ず法律を必要とするのかどうか、こういう議論が根本にあるわけでございます。政府考え方は、場合によつて条約を実行するために国内法をつくる、あるいは条約通りでない新たなる国内的な創意をも加えた国内立法をする、これも一つの例でございましよう。また一方においてはそういう国内法的な措置をとらないで、条約そのものが国内法的の力を持つて適用になるということで、それと並行して国内立法をとつておらない例も——御承知の通りに第一次欧州大戦の際の対独平和条約の執行関係についても同じようなことがありましたが、大正十二年の軍縮条約の執行関係でも、実は国内法はつくらないで条約そのものは遵守されて来たのであります。新憲法におきましても、平和条約の附属議定書、そういう例はたくさんあるわけでありまして、国内法ができないか条約の執行が国内でできないということは絶対に言えない。今までのいわゆる憲法上の習律と申しますか、そういう点からそういうことになると思いますので、今の保安庁法国内法だけを排除したからといつて条約までも排除したことになるかどうかというと、決してさようなことはございません。条約で適用さるべきものは依然として適用される、こう考えます。
  128. 安東義良

    ○安東委員 ただいまの御説明では、前からもそういう例があるのだからというようなことでありますが、国民の権利義務に直接関係のないような場合に、条約をそういうふうに取扱つたことはありましようが、国民の権利義務に関係するようなことは、やはり法令によつてこれをやつておるのが、今までの慣例だつたろうと思うのです。ことに海上安全条約の第一条の(b)に「締約政府は、人命の安全の見地から船舶がその目的とする用途に適合することを確保するように、この条約を充分且つ完全に実施するのに必要なすべての法律、政令、命令及び規則を公布し並びにその他のすべての措置を執ることを約束する。」とはつきり書いてあります。これは明らかに、この海上安全条約がそのまま法令のない場合に適用があるのだというりくつを排除しておる、矛盾して来ます。これをどういうふうに考えますか。
  129. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 そのお尋ねは一応ごもつともだと思いますが、ただいまお読み上げになりましたように、「法律、政令、命令及び規則を公布し並びにその他のすべての措置を執ることを約束する。」とございます。でありますから、その国その国の国内法体系におきまして、あるいは法律を要しない事項としている国もあるかもしれません。その場合にわざわざ法律をつくれということをここで命じているわけではありませんので、事柄の性質に応じて、国内法律体系に応じて適当な措置をとれということを言つているわけであります。そこで最初にお触れになりましたように、国民の権利義務云々というお言葉がありました。実は国民の権利義務に触れる条約にさえも、例の軍縮条約の際には、一般の工場における軍艦の製造を制限したものでございます。その場合に国内法を出しておりません。もつとも数年たちまして、それが励行を確保するためということで罰則が出たことは御承知の通りであります。これはそこまでは至らぬのでありまして、政府機関たる保安庁が十分励行すれば励行し得る事柄が全部である。ことに今の危険の通報のごときは保安庁警備隊の当然の職権でありますから問題はございません。そういうふうに申し上げた次第であります。
  130. 安東義良

    ○安東委員 先ほど保安庁次長にお尋ねしたわけですが、結局保安庁としてもこれについてはつきりした措置をとる、はつきりした措置をとる以外は、あるいは命令なり規則なりをはつきりつくるというふうに先ほどおつしやたように思つたのですが、私はそれが妥当であろうと思う。こう明文がある以上やはりこれに従つて措置をとるということが、この条約を正しく解釈して行くことであつて、ただいまのような例外的な行き方をもつて日本の一般的な建前とし、かつまたこの条約にわざわざそういう明文があるにかかわらずそれをやらないということは、これは何といつても今までの日本政府の手落ちであつた、こう私は考えざるを得ない。その点についてなおもう一度御返答を願いたいと思います。
  131. 増原恵吉

    増原政府委員 保安庁におきまして、先ほど安東委員の御質問お答えしましたように、必要なものについては訓令等をもちまして補完をすることにいたさなければなるまいというふうに考えております。
  132. 中村高一

    中村(高)委員 今の問題ですけれども、そうすると、船舶安全法を適用すると何か支障の起る場合でも具体的にありますか。
  133. 増原恵吉

    増原政府委員 先ほどからの御論議で、委員の方から御指摘がありましたように、安全法においては、この条約にあります事項を大体において網羅し、また条約以上にこまかくといいますか、いろいろ規定をしているわけであります。それで保安庁の船に適用になりますのは、大体条約部分でいいますと第五章のもので、第五章の中でも、条文を読んでみますと、これは国際航海に従事するものに適用するというふうな、保安庁のものには適用ないものも一、二あるというようなことで、安全法の大部分保安庁のものには適用がないわけでございます。そういう意味でこれは適用を除外いたしたわけでございます。
  134. 並木芳雄

    ○並木委員 前文について別の質問をいたします。附属書Aのところでございますが、これには現在七つしかあがつておりません。何ゆえここに七つだけあげておるのか、あとの十一隻についてはどうか。それから上陸支援艇についてはどうか、その点です。
  135. 増原恵吉

    増原政府委員 これは貸してくれます際には、返しますときに大体原状において返すというふうなこととも照合して、向う側でも十分整備をしてりつぱに使えるようにして貸してくれるという趣旨で、だんだんこちら持つて来てから整備をしてくれているわけであります。この整備が終りまして条約承認をされれば、すぐ引渡し得るという形のものを、第一に掲げました。爾後整備ができて渡せるようになりますれば、この表を追加して行く、準備が整つたものという、かうに御解釈をいただきたいと思います。
  136. 並木芳雄

    ○並木委員 あとの部分の準備できる予定の日取をお示し願います。
  137. 増原恵吉

    増原政府委員 何隻いつまでというのは、今ちよつと準備がないのでございますが、大体五月末ごろまでに、六十八隻のものが、逐次準備が完了をして行くというふうに相なつております。
  138. 並木芳雄

    ○並木委員 ただいま次長の答弁では、これから引渡されるというふうにお聞きいたしました。これの日本文では引渡されると書いてあるのですが、英文の方ではトランスフアードというふうに書いてあるのです。普通われわれが読んで行くと、引渡されたところの船舶というふうに解釈すべきではないかと思います。これは英文の解釈になつて恐縮ですが、なぜ聞くかというと、もし引渡されているものならば、これらの保管の責任はどつちにあるか、この間に事故が起つた場合の修繕の費用なんかは、どうなるのかというような責任の問題も起りますから、これは参考までにお尋ねしておきます。
  139. 増原恵吉

    増原政府委員 現在のところ引渡しは受けておりません。従いまして、管理責任、現在における損害等は、日本政府側の責任にはなつておりません。
  140. 並木芳雄

    ○並木委員 条約局長いかがですか。英文の方ではトランスフアードとなつておるのですが、先方では引渡されたところのという意味で、そういうふうに書いているのではないですか。
  141. 下田武三

    ○下田政府委員 トランスフアードという過去分詞の英語を用いておりますが、仰せのような過去の事態を現わす場合もありますし、また現在、未来の場合にも、トランスフアードという過去分詞を用いることもありますので、トランスフアードと書いてあるからといつて、必ずしもすでに引渡しを終つたというふうにおとりにならないよう願います。
  142. 黒田寿男

    黒田委員 私の質問も並木君の質問と関連してであります。私が御質問申し上げたいと思います点は、この船舶貸借協定において、貸借契約の目的物となりますものは、第一には、附属書Aに表示されてある船舶でありますが、さらに将来両国政府の合意によりまして、この協定に添付される別の表に掲げる船舶も、この貸借協定目的物になる、こういうようになつておりますが、将来合意により付表に掲げられる船舶というものは、付属書Aとして添付されております表に掲げられております船舶と同一の船種のものに限られるか、それとも船種の異なつ船舶をも含むことができるかという点を、念のためにお尋ねしておきたいと思います。
  143. 増原恵吉

    増原政府委員 これはさきの当委員会における御質問に、外務大臣からお答えになりましたように、この条約で予定をいたしておりますのは、先方のアクトにもありますことで、PFが十八と、上陸支援艇が五十、合せて六十八、その限度でございまして、第一附属書Aには、PFだけが載つておりますが、これに上陸支援艇が爾後は入る予定でございますが、いずれにしましても、PFが十八と、上陸支援艇五十を越えては、この条約では全然意図をしておらない、そのように御了解願いたいと思います。
  144. 黒田寿男

    黒田委員 私もそういうことだとは思つておりましたけれども、念のためにお聞きしたのであります。そうすると、将来単に附属書を交換するというような、両国政府行政手続だけで追加されるものは、先方のアクトに書いてある以外にないというのですね。  次に岡崎外務大臣にお伺いしたいと思いますが、この船舶貸借協定は無償であるのですが、この無償ということの政治的な意味を私ども考えさせられます。普通に私どもが動産や不動産を借り受けます場合に、有償であるよりも無償である方が利益だということは、これは言うまでもないことでありますけれども、そういうような動産や不動産と違つて、この協定に現わされておりますような船舶を外国から借ります場合に、無償で借り受けるということには、私は単なるわが国の経済上の利益ということ以外に、何か政治的なものがあるのではないかという気がするのであります。これは私どもの思い過しかもしれませんが、政治的な意味を伺わせていただきたいと思います。
  145. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは非常に単純なことでありまして、特に政治的の含みというようなものは全然ありません。無償で貸すということになつておりますから、無償の方がけつこうだと思つて、無償で借りるだけであります。もつとも先方の都合からいいますれば、日米安全保障条約に基いて、日本国内の沿岸の警備も、日本がやらなければ、先方の責任である。従つてかりに船を無償で貸しても、沿岸警備の責任だけは日本側で、この範囲では十分とは行かぬにしても、かなりの程度までやれるということになれば、それだけ向うの肩の荷が軽くなるというような考え方もあるかもしれないと思つております。
  146. 黒田寿男

    黒田委員 一応私もそういうことを考えてみたのですが、やはりこの貸借には、今外務大臣が仰せになりましたように、アメリカ海軍がやらなければならないような性質の仕事を、日本にやらせるというような意味も含まうておると私は思つております。そこに無償にした意味があるのではなかろうかというようなことを考えておりましたので、実はお尋ねしてみたのであります。やはりそうであつたといたしますと、無償ということには、単にわが国が経済的に有償よりも利益であるということだけではなくて、アメリカの極東海軍との間に何らかのつながりができるのだ、こういうように私どもは見るのです。先ほど私は何か政治的意味があるのではなかろうかということを申し上げたのですが、右のようなことも私ども考えておりました点の一つであります。やはり私ども考えたようなことであつたのですが、私どもは無償ということに、そういう意味があると解釈しております。単に日本の経済的利益ということだけで単純に考えてしまうことはできない。これは私どもの見方でありますが、私どもは、無償ということにはそういう政治的意味があるのだ、軍事意味があるのだという解釈をしておるのであります。  それからもう一つは、やはり無償で借り受けるということになると、有償である場合よりも、どうしても船舶所有者側の意思が政治的にも強く動いて平るのではなかろうかと私は思うのです。よく日本保安隊海上警備隊が雇い兵的制度だといわれますが、やはりそういう疑問を国民に与える一つの根拠は、無償で借りておるということにあると思う。こちらがちやんと賃料を出して、正式に借り受けております場合と、無償で、何かそこに恩恵的な借方をしておるということには、私は非常に大きな政治的意義の差があると思います。よく雇い兵制度ではないかといわれる根拠が、やはり無償で借りろということの中にあると思う。しかしこれは議論になりますから、私どもはそう思うということだけを申し上げておきまして、有償、無償問題に関する私の質問はこれで終ります。
  147. 中村高一

    中村(高)委員 有償無償ということを、黒田君は無償だと断定しておりますけれども、一体この協定のどこに無償だということがありますか。
  148. 下田武三

    ○下田政府委員 この協定の中には、無償とするということは全然書いてございません。しかしながら有償とする規定もないので、ございまして、当然代償をとるということが書いてない以上は、無償であると解釈できますし、また当事者間の交渉中の意図は、明白に何らの代償をとることはないということに一致しておりまして、その間何ら疑いがないのでございます。
  149. 中村高一

    中村(高)委員 規定にないのでありますから、請求し得る場合もあると思うのですが、そこは話合いの上でやるというのか、あるいはなぜそれならばそういう有償であるか無償であるかというような重要な点については規定しておかないで、たとえば損害賠償のことなどについては、あとの条文に出て来ますけれども、全損だとか滅失だとかいう場合には、みんな補償をしろということが明確に書いてあるのに、この重要な有償であるか無償であるかということについては、なぜそれを規定の上に置いてはいけないのですか。無償という文字を入れることは、何か外交上さしつかえがあつて入れないのかどうですか、ということです。話合いで無償だというならば、なぜ置かないのか。
  150. 下田武三

    ○下田政府委員 先方も無償だということを規定することを主張しませんし、わが方もまたわかつておりますので、あえてその点を規定してくれということを申しませんので、その点は全然協定に触れないことにいたしたのであります。
  151. 中村高一

    中村(高)委員 何かそれは結局先ほど黒田君も言われましたけれども、無償ということはどうもアメリカ側に利用されるような意味が、言外に含まれておるように思われるのでありまして、いやしくも日本が独立をいたしておるのにかかわらず、しかも日本の国では再軍備の問題が非常に国民的な議論になうておるのにもかかわらず、何ゆえにそういうような恩恵的な、属国的な、何か陸上における保安隊武器もただで何も書かずに貸してくれる、それからこの船舶もただで貸してやるというのか、こういうことは日本の国が単に得だからというような意味ではなくして、もう少し何かアメリカ側の意図があるのではないかということを疑わしめるのであります。そういう点については誤解を受けると思うのでありますけれども政府ではその点について、協定の場合にそういうことが議論に上つておらなかつたかどうか。
  152. 下田武三

    ○下田政府委員 この協定の交渉をいたしておりました過程におきまして、船舶を無償で貸すからどういう対価を要求するというような、代償ないしは対価めいたような話は、全然アメリカ側はいたしておりません。その点は明瞭に申し上げられます。
  153. 帆足計

    帆足委員 ただいまの有償、無償の問題ですが、午前中の会議のときにも、保安隊の方の秘密会のときにも、あれは無償だということを伺いました。ところがあの場合でも、たとえばバズーカ砲にしろ、鉄砲にしろ、なくなりましたようなときは返すということはないのですか、それと比較して考慮したいのですが……。
  154. 増原恵吉

    増原政府委員 現在保安隊の借ります分は、まだはつきりしたとりきめの最後の案文まで到達しておりませんが、これはやはり借りて使います分は無償である。しかしこの場合も、向う側もそういうふうなきめ方の一つのあれがありますか、無償とするとはつきり書くような話合いには今のところなつておりません。有償とすると書かない、従つて無償であるというふうなことで参つておるわけであります。
  155. 帆足計

    帆足委員 再軍備というような論議になりますと、これは大きな見解の相違ということになるわけですけれども国内治安維持に必要な各種の用具に対しまして、漫然と外国からこれを借りる、特に保安隊の方の用具は国会の承認も得ずに借りるし、それからこちらの方の分も無償で借りるということは、独立国としてふさわしからぬことであつて国内治安維持に必要な程度のものであるならば、国内の要費を節約してでも、自分の金で、そういう用具は購入すべきものと思いますが、それについていかがお考えですか。  それからもう一つあわせて、午前中お尋ねしました点で、外務大臣もお見えでありますから、重ねて明確にしていただきたいことは、海賊行為等について、沿岸警備のためにお使いになるというふうに午前中は承りました。そういう私の海賊行為的なものでなくて、背後に政治的な関係のある、すなわち隣邦諸国との間で、朝鮮にしましても、中国その他にいたしましても、政治的交渉の円滑を欠いておりますために懸案の問題がありまして、そして公の問題として公海で両方が衝突するというような場合にも、これが使われるのかどうかということについては、私どもは午前中としては、そういうような政治的な衝突の際に使うのでなくして、沿岸防備に限る、私的ギヤング、私的海賊行為また国籍不明の私的なものに限ると承りましたが、はつきりそういうように理解していいのか、それとも私のただいまのような理解でなくて、もつと広くお使いになるつもりか、その点明確にお尋ねしたい。
  156. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 自分の国のことだから、自分の費用でやるべきだということは、原則的にいえばその通りだと思います。従つてたとえば大きくいえば、日米安全保障条約ども日本にとつては決してこれはよい条約ではない、やむを得ずやつているのである、こうも言えると思います。また今の船舶につきましても、借賃を払わなければ卑屈である、払えばいいのだ、これもまだ先の方の使用のことになりまして、ほんとうをいえば、借賃を払つてアメリカの船を借りて来るというのでなくして日本の造船所で日本の必要とする船をつくるのがこれが本来の筋だと思うのであります。しかしながらこの交渉しております当時などは、日本の造船所ではそのほかの船の建造に非常に忙しかつた関係もありますし、これを持ち込むということは、非常に造船計画に対する支障にもなるわけでありまして、そのためにアメリカ側から借りたのであります。借りるということになりますれば、私は借賃を払つても払わなくても、帆足委員なり中村委員なりのおつしやるような議論はやはり大なり小なり適用されることになるのではないかと思います。そこで残念ながらわれわれの方に全体軍隊がないから安全保障条約を結んだのであり、また船が足りないから船を借りたいというわけでありますので、その際はむしろ無償であるならば無償であつてもいいのではないか。そこまで肩を怒らして、おれの方は金を払つて借りるのだと、がんばることも必要はないのではないかと思つておるようなわけであります。  なお帆足委員の御質問の点は、われわれはこの船が、そんな国際紛争を解決する手段として使われるほどの、偉大なる船とは考えておりませんけれども、しかしこの船であつても、そういう意味で使うということは、保安庁でも考えておらないと思いますし、われわれもその意図はないのであります。ただ今言われました海賊行為だけに限定するかというと、そうではなくして、保安庁の仕事としては警邏も必要でありましようし、万一の場合には、海難の救済というような場合にも出て行くかもわからぬのでありまして、平和的な仕事にはもちろん使うわけであります。
  157. 帆足計

    帆足委員 そうしますと、従来の中国沿岸の漁業船の衝突または朝鮮の漁業船拿捕、ああいうような場合に実力発動にこの船が使われると見てよいでしようか、そういうことは絶対にない、外交交渉で行つて、実力行為にはそこまでは使わないと理解してよいでしようか、一つの例でありますけれども、お伺いいたします。
  158. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そういう種類の実力行為というようなことは考えておりません。
  159. 栗山長次郎

    栗山委員長 前文に関する質疑が残つておりましたならば、後刻適宜取上げることにいたしまして、第一条及び第二条について質疑を進めることにいたします。
  160. 並木芳雄

    ○並木委員 期間を五年と限つておりますけれども、なるべく早くこれは日本の船にかえて行きたいということは、木村長官からも答弁がございました。これは大体今借りておるフリゲート艦並びに上陸支援艇は、日本でつくるとすれば一隻それぞれ幾らくらいかかりますか。それから先ほどの大臣の御答弁では、日米安全保障条約に基いて、アメリカ海軍が受持つべき警備というものにかわるべき役目もするのだということでございましたが、私はその趣旨はけつこうだと思うのです。これはなるべく早く日本警備ができるように持つて行くことがよいと思うのです。それで今日本でこれに相当する警備力というものが、具体的に数字やその他に現わせばどの程度のものか。それとあわせてアメリカ海軍がどのくらいの力でもつて警備されておるのか、それがわかりますと、だんだん日本海上警備力というものも強化されて行くと思うのです。その場合に、ここに期間は五年間とありましても、なるべく早くかわるようにして行く、そのためには当然今の六十八隻では足りないだろうと思う。この間も増原次長から二百四十隻くらいの必要性があると言うのですから、これをだんだんふやして行くかどうか。借りて来るにしても、日本でつくるにしても、ふやして行くかどうか、ふやして行く場合も相当の金もかかるでしようが、これはひとつ今の大臣の答弁にもあるのですから、安全保障費あるいは例の防衛分担金、その方の費用をこつちへまわして行くというような計画を政府は持つておると思うのです。その予算の関係、そういう点についてお尋ねいたします。
  161. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 ちよつと参考までにお聞きしたいのですが、例の予算委員会で問題になりました法案ですが、これは講和条約発効後一年以内にこれに加盟するということにたしか会議であつたと思いますが、その意思表示はすでにしてあるのですか、どうですか。
  162. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 海上における人命の安全のための国際条約というのはそれだつたと思います。しこうしてすでに十一月の十九日にその意思表示をしてあります。もう官報に出ております。
  163. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 先ほど私が申しましたのは、アメリカ側でそう考えておるかもしれない、こういうことを申したのであります。日本側としては沿岸の警備、警邏というようなものは、これは日本でやるべきものだと考えておるのでありまして、日本の自分の責任でやるべきものであるが、足りないから船を借りて来た、こういうことであるが、アメリカ側の方では、あるいは議会等の説明には、日本がやらなければ自分の方でやらなければならぬのだから、船を貸して自分の方の手を省く、こういうような考え方も行われるかもしれぬということを申し上げたのでありまして、こちらでそういうふうに考えておるというのではないので、こちらはぜひ日本でやるべきものであると考えて、いろいろ計画を進めておつたわけであります。  それからほかの点は保安庁次長から申し上げますが、この費用は一体どのくらい金がかかるのかということにつきましては、これはよく私どもにわかりませんが、聞くところによりますと、これだけの船をつくるのには、今の物価からいえば、八千万ドル余りというのではないかと思います。従つてそれを日本金に直しますと、相当の費用がかかるであろうと考えます。
  164. 増原恵吉

    増原政府委員 ただいま外務大臣から申されましたように、日本側で船をつくつて自分の船で警備に当るということは、ことに保安庁のわれわれ当局としては、非常に望ましいことであります。申すまでもないことでありますが、ただ現在予算をどれほど使つて、どういう建造計画を持つておるかと言われますと、まだこれは具体的な建造計画を立てるには至つておりません。大体大ざつぱに申しまして、米国の沿岸警備に当つておる船、あるいは昔日本海軍が沿岸警備というものを平時においてやる責任をやはり持つておりました、そういうものを考え合せて、一つ数字を出しますと、二百トン以上の船で大体二百四十隻くらいという一つの目安にすぎません。しかしこれを今どういうふうにその目標に向つて建造して行くか、あるいはあとどういうふうに借りる目安を立てるか、これはまだ研究中でございまして、申し上げる程度には固まつておらないわけでございます。
  165. 並木芳雄

    ○並木委員 船舶についてはアメリカがアクトを出して、陸上の方の保安隊の借りておる装備に対しては、アクトを出さないという大事な理由が何かそこにあるのでしようか、どうでしようか。どなたでもけつこうです。
  166. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは私のしろうと考えですが、保安隊の方はこまかいものはたくさん数があつて、それが非常に時々かわつたりなんかするのではないかと思います。船の方ははつきりしたものが出て来ますから、そういうものについてアクトを出しやすいという点があるかもしれません。しかし今のところ保安隊の方もいろいろ話をして、どういうことにするか相談をしておるようでありまして、あるいは将来またかわつた措置がとられるかもしれませんが、今はいわば暫定的な措置でやつておるということではないかと思います。
  167. 並木芳雄

    ○並木委員 すると、将来アメリカからまた続けて借りるような場合には、先方としては必ずアクトをつくつて、そしてあらためてその船についてまた日本に貸すのだという国会の承認を得てやるものと理解してよろしゆうございますか。
  168. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 この船につきましては、先ほどから申しますように、この協定によつては、先の六十八隻でありますか、フリゲートを十八とランディング・シップ五十、この範囲内であります。それだけ借りるかどうかは、先方との話合いもありますし、わかりませんが、それ以上にはならないということははつきりしております。その範囲内で借りることの御承認を願つておるわけであります。従つて将来それ以外の船を借りる場合には、別の協定をつくらなければ借りられないわけであります。
  169. 並木芳雄

    ○並木委員 向うも別のアクトを出すのですか。
  170. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 向うが別のアクトル出すかどうかは、それは向うの都合ですから、わかりません。たとえば大統領の権限にまかされた場合も将来あるかもしれませんが、要するに日本としては、それに予想せられてある船以外のものを借りる場合には、また別な協定を必要とする、こう考えております。
  171. 安東義良

    ○安東委員 先の並木君の質問に関連いたしまして、外務大臣も今後の保安隊のいろいろな装備についても、借りる場合には単純な調達契約というようなものでなくて、やはり国際約束の一つとして考慮する意図もあるように伺われたのですが、まだ研究中だという話です。この点はこちらとしては非常に重大な問題であつて、今までの占領下において特殊な便法としてやつておる間はまだがまんもできる。しかし今度は独立したのです。ところで保安隊武器だんだん重装備を持とうとしておる。そうしてそれに必要な武器を向うから貸してくれるという場合に、国民はいつの間にやら軍隊ができ上つてしまつたのではないかという不安を持つ者が少くないと思う。従つてこれは単純な、いわゆる財政負担を伴うから国会へ持つて来るの、持つて来ないのという問題ではなくて、憲法に触れるかどうか、あるいは保安隊目的に合致するかどうかという根本問題に触れる問題であつて、言いかえれば日本の安全自体に関係する問題なのです。生命財産にこれは直接関係はないかもしれないけれども、やり方いかんによつては、これは当然関係して来るにきまつている。であるから、いわゆる財政上の負担どころの問題ではない、もつと根本的な大きな問題を含んでいる。それでありますから、こういう問題は、やはり国際約束としてはつきり国会の承認を得るという方式をもつて進めるように十分の御努力を願いたい。これは先ほど来ときどき御説明がありましたが、外務大臣はおられなかつたと思うけれども、単純な一つの調弁、調達行為にすぎないのであつて従つて保安庁アメリカ側と話をしてやればいいという行き方は、われわれとしては黙つておれぬと思う。この点についてなおもう一度外務大臣の明確な所信と御見解を承りたいと思います。
  172. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私も安東君のお考えはよくわかります。ただいまのところは、これは先方の都合もあるわけでありまして現状のようなことがいたしてありますが、先ほども申し上げたかもしれませんが、大体どういう種類武器を借りておるかということは、新聞等にも説明をいたしておりますし、また正確な数等につきましては、秘密会ではありますが、委員各位に御説明をしたような次第で、隠す意思はないのであります。そこでそれをどういうふうにして国民の十分な納得を得、また国会の了解を得てやるべきであるかということについては、御趣旨もまことにごもつともでありますから、その筋で研究も進め、先方とも話合いをいたしてみようと考えます。
  173. 並木芳雄

    ○並木委員 さつきの私の質問に対して、現在の海上警備の状況——何隻あつて、どういう方面とか、それをこの前もちよつと私質問したのですけれども、もう少し詳しく、具体的に海上警備としての日本の現有勢力を説明してほしいと思います。
  174. 増原恵吉

    増原政府委員 こまかい資料を今持ち合せませんが、海上保安庁の方で巡視船として九十三隻持つておりまして、このうち二百トン以上といいますと、六十隻でございます。これが海上保安庁の方で海上警備その他の任務に当つておるわけであります。警備隊の方では、今度条約の御承認を得れば、順次六十八隻までPFとLSSLを借りまして、海上保安庁の補完的な作用を原則として、警備に当る、こういうことに相なります。
  175. 栗山長次郎

    栗山委員長 逐条審議は第一条及び第二条に進んでおることを御了承の上御質問願います。
  176. 黒田寿男

    黒田委員 第一条のこの船舶の貸借期間の問題でありますが、これを五年と定めたことにつきまして、何か根拠があるのでありましようか。ただ漠然と期間をきめたのでございますか。五年くらいたてば、やがてわが国でも同種の任務を果し得る船舶を、建造し得るという見込みがあるから一応五年くらいにしておけばいい。これも一つの目安だろうと思いますが、たとえばそういう目安でもあるのかどうか。それともまたほかに何か他の目安があるのかどうか。ただ漠然と五年ときめたのか。先ほどから申しますように、無償でこのようなものを外国から借りると、どうしても貸主と借主との間に一つの政治的な特殊な関係を生ずるのでありますし、われわれはこのような関係がどれくらいの間続くかということは、単に物を何年借りるという意味だけでなくて、政治的に非常に深い意味をそこからくみとらなければならぬと思う。そこで特に五年という期間についてお尋ねしたいのであります。
  177. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 五年と申しますのは、今までアメリカはほかにも船を貸しておりましたが、大体常識的に五年くらいというのが普通の考え方のようであります。しかし元来船の寿命というのは十年ないし十二年くらいと普通いわれておりますので、まず五年借りてみて、まだ使えるようなら、また日本側でその準備がなければ、引続き借りる場合もありましようけれども、一応目安を五年くらいに置いておいて、もし、その船が使えなくなるような場合もありましようし、あるいは非常に新しい形の船でなければ都合が悪いというようなこともあり得るかもしれませんので、いろいろのことを考えて、五年という程度を切つたのであります。五年より短かいと、またすぐ返さなければならぬということでも困りますので、非常に常識的な五年でございます。
  178. 黒田寿男

    黒田委員 これは簡単な質問ございますが、第二条の各船舶を引渡す時及び場所についての見込みであります。私はむしろ場所の方に重きを置いてお尋ねしてみたいと思います。これは将来のことでありまして、今わが国の領海の中に来ておりませんところの船舶についてお尋ねするのであります。わが国の港まで合衆国が船を持つて来て引渡すことになるのでありましようか。それとも現在横須賀に繋留されておりますもの以外は、日本近海には一隻もないと思うのでありますが、合衆国のどこかの港あたりででも引渡しを受けることになるのでありますか。これは第三条と関係がありますので、この見込みをちよつと聞かせていただきたいと思います。
  179. 増原恵吉

    増原政府委員 ただいままでの話合いでは、引渡しを受けますのは、わが国の港において、それも大体横須賀あたりという話合いになつておりまして、向うで引渡しをしてもらつて、こちらへ持つて来るということにはならない大体の話合いであります。
  180. 安東義良

    ○安東委員 これはさまつなことでちよつと恐縮ですが、第二条の原文にアウトフイツテイング、エクウイツプメントというのがありますが、これは一体何のことですか。
  181. 増原恵吉

    増原政府委員 今御質問の二つを合せて、犠装品ということです。
  182. 安東義良

    ○安東委員 いわゆる、船につけたいろいろなものですか。
  183. 増原恵吉

    増原政府委員 そうです。
  184. 安東義良

    ○安東委員 そうすると翻訳がまずいと思いますが、ここにはアゥトフイツテイング、エクウイツプメント、アプライアンセスとありますが、第七条の方では、アプラィアンセスを訳さないでふつとばしてありますが……。
  185. 増原恵吉

    増原政府委員 アプライアンセスは、器具と訳してあります。
  186. 安東義良

    ○安東委員 そうすると、艤装品と器具というのはどう違うのですか。
  187. 下田武三

    ○下田政府委員 文字だけの解釈ですが、艤装品とは、船体に固定されて機能を発揮するもので、工事を加えなければ簡単に移動することはできないものである。たとえて申しますと、砲、方位盤、昭明装置等である。器具とは、船舶の運航に必要な備品であつて、そのもの単独で用をなし、どの船舶にも移動使用することができるものをいう。たとえて申しますと、経線儀、時計、寒暖計、携帯めがね等である、そういうようにわけております。
  188. 安東義良

    ○安東委員 そうすると、今のアウトフイツテイング、エクウイツプメントというのは、これは要するに文字の遊戯であつて、できるだけ包括的に言おうという意味ですね。
  189. 下田武三

    ○下田政府委員 それをひつくるめて、艤装品と包括的にいつております。
  190. 栗山長次郎

    栗山委員長 第一条、第二条の質問中、まだ残つておるものがありますれば適宜取上げることとして、第三条、第四条の逐条審議に進みます。
  191. 並木芳雄

    ○並木委員 第三条に船の状態のことがありますが、引揚げにこの船を使つたような場合、相当内部を改造したりなんかするだろうと思います。先般来外務大臣は、これを引揚げなどに使いたいという御意見を漏らしておりましたけれども、さしあたり中共からの引揚げの話なども出ておりますが、これがもし国会の承認を得て引渡されれば、すぐこれを使う御意思があるかどうか。それから内部の構造なんかどういうふうにいたしますか。改造して使うのか、そのままやるのか、そういう点について……。
  192. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私が前に言いましたのは、あれはただ例として、向うでどういう目的使つているものでも、こちらでは別の用途に使えるのだという例をあげたばかりであります。これはごらんになつて御承知のように、ある程度武器を持つている船でありまして、こんなのを引揚げに持つて行くのは穏やかでありませんから、こういう船を今度の引揚げに使う意思はごうもありません。
  193. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 第三条の、「船舶借受者は、当時のその船舶状態いかんを問わず、」こういうことになつておりますから、どういう状態にあつたかということは、常識的にはわかりますけれども、専門的にそういう装備やあるいは機械のことについての深い知識を持つている人が見て、その場合に、船舶所有者は、前記の引渡しの際の船舶状態に関しては、明らかに示されたものとそれから黙示、ある意味からいえば、ひそかに、わからないような部分に隠されたものと、どういう状態であるとを問わず、その責任の保証を与えない、こういうことになつておりますが、こんなことはまあ万々あるまいと思いますけれども、重要な機関部等に故障があつて、もしそれがうつかり引渡しのときにしておつて、それから事故を発生して災害が起つたというような場合においても、船舶所有者の方は責任を負わない。それからもう一つは、船舶所有者は、船舶の借受者に対して、船舶の物理的状態から生ずるいかなる事項についても責任を有しない。ちようど今申しましたように、かりに機関部に大きな故障があつて、それが動き出したらすぐに故障を起して、重大な災害を生じたというような物理的な変化から起つたことについても、責任を持たない。こういうことになつておりますが、なるほど文章から見れば、十分慎重に検討して引渡しを受ければ、何でもないようなものでありますけれども、特にこういう場合において、この規定を設けたということは、そういうことを予想し得る場合があるから、こういう規定が設けられたのではないか、もし予想し得られなければ、特にこういうような規定を設けなくてもいいのではないかと思われるが、どうですか。
  194. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはお話のように、疑いの起るようにもちよつととれますけれども、この物理的の、たとえば帆柱が折れかかつたとか、ボイラーをたき過ぎて故障が起つたというようなことも、これは想像し得るのであります。想像し得るのでありますが、しかし受取つたときに良好な状況で、通常の常識なら、そんなことはないと思うものであるならば、われわれは受取つてけつこうだ、こう考えておるのであります。そこでそれではどういうふうにしてちやんとした状況で渡すかということになりますが、これはアメリカ側日本に引渡す前に修理いたします。その予算として二千百三十万ドルばかり計上しております。日本金に直すと約七十六億余りでありますが、これだけの金を使いまして船の修理を完全にいたしまして、もう普通の船として動き得るのでありますが、それを特に念を入れて修理をいたして、その二千百万ドル余りというものは先方で支出をして、そうしてちやんとした良好の状態においてこちらに引渡すということになつおりますから、われわれとしてはそれまでにしたものは、もう常識的に見て普通の心配のない船である、こう考えておるわけであります。
  195. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 そういうことが説明されて初めてこの条約の条文がわかるわけであつて、この条文だけからは何もそういうことはわからないのですね。だから少くとも提案理由の説明の中には、そういう条文について納得し得られるような交渉の過程における事情を明らかに示して出してほしい。そうすればむだな時間を審議に費さなくても済むわけです。これはあとの第六条に関連して来ると思いますから、第六条に関連しての質問を私は保留しておきます。
  196. 黒田寿男

    黒田委員 第四条の但書のうちに「船舶に対する権原は、それによつて影響されることはない。」こう書いてあります。その権原というのは、たとえば所有権のようなものがまず言われているのだろうと考えますが、たとえばこういう場合にはどうなるのでありましようか。第三者が不正な侵害行為をこの船舶に加えまして損害が発生いたしましたような場合には、所有者としてのアメリカ政府に対し、損害賠償の責任が発生するのでありましようか。それとも借りております日本に対し、損害賠償の義務が発生することになるのでありましようか。これはどういうことになるのでありましようか。それが権原という問題に関連しますからちよつとお聞きしておきたい。
  197. 増原恵吉

    増原政府委員 便宜私の方から御説明いたします。船舶に対する権原というのはこれは大体所有権だというふうに解釈をしていただいてさしつかえないと思います。これは警備隊が船を借り受けましたならば日本の国旗を掲げるようになりますが、しかしその所有権が移転をするわけではないという意味で、大体所有権というふうにここは解釈をしていただいていいわけでありますこの船がわれわれが借り受けて警備隊の船として運航しております場合に、何か漁船その他に損害を与えたというふうな場合には、日本政府保安庁が責任を負うべきでありまして、米国政府は責任を負わない。これは第五条にそういうふうな規定も置いてあるわけであります。
  198. 黒田寿男

    黒田委員 後半のところは私の質問をおとり違えになつたのだろうと思います。私が質問しましたのは、船舶保安庁の旗を掲げておるときに、それが他人に損害を与えた場合における損害賠償の義務というのではなくて、この船に日本保安庁の旗を掲げて行動しておりますときに、第三者がこの船に対し不法な侵害を加えましたときに、日本側に賠償の請求権があるのか、それとも船舶の所有者がアメリカでありますから、その所有権の侵害ということに基いて、それに基く損害賠償の請求権ということになつてアメリカ側にその不正なる侵害者が損害賠償をする義務があるのか、こう質問をしたのであります。
  199. 増原恵吉

    増原政府委員 どうもとり違えてお答えをして恐縮でございます。そういう場合には、借受者すなわち日本政府がその請求を引受けるというふうになつておりますので、日本政府が請求するということに相なります。
  200. 栗山長次郎

    栗山委員長 逐条審議を第五条、第六条に進めることにいたします。
  201. 安東義良

    ○安東委員 この規定のうちには、不可抗力による滅失に対しては何ら規定がないのでありますが、これに対してはどういうふうに取扱うつもりでありますか。
  202. 下田武三

    ○下田政府委員 不可抗力による滅失の場合がはつきり書いてございませんが、すべての滅失及び全損の場合には、第六条の規定従つて日米双方が協議いたしまして、公正かつ妥当な賠償であると双方が認めた額及び条件で補償することになつております。
  203. 安東義良

    ○安東委員 そうすると、やはり補償するという原則ですか。
  204. 下田武三

    ○下田政府委員 さようでございます。
  205. 安東義良

    ○安東委員 この点はどうも私も十分納得できないのであります。一般のチャーターの契約であるならば、おそらくは不可抗力の場合においては、免責の措置というものがあるに違いないと思いますが、これは特に船舶の場合はやはりチャーターの一種の形式である以上は、その問題に当然言及して、アメリカ側と話合いになつておるに違いないだろうと思います。その結果がやはり賠償が原則である、しかも双方が話し合つて適当と認める額を賠償するなどということは、非常にこちらが妥協的に出たというか、ちよつとおかしいのですが、それについての疑点をひとつ説明していただきたいと思います。
  206. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そういう点もいろいろ話をしたのでありますが、しかしこれはあまりこちらから、こういうことをここではつきり申し上げるのもどうかと思いますが、いろいろな場合がありましようけれども、いずれにしても両国政府でもつて合意をした条件に基いて補償するわけであります。その合意がゼロとなる場合も当然予想されるのであります。また非常な名目的な補償ということもあり得るのであります。不可抗力の場合はもちろん一般の習慣に基いて普通の補償というようなことはないはずであると思います。またそういう程度の話合いもいたしておるのであります。
  207. 安東義良

    ○安東委員 それでややわかりましたが、いわゆる不可抗力というのではなく、先ほどちよつと話がありました第三者が不法な攻撃を加えたり何かして、ぶくぶくと行く——というようなこともないとは思いますが、そういう場合も不可抗力と同様に取扱うものであるかどうか、政府の見解をひとつ……。
  208. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 不可抗力というのは、われわれ普通に考えておりますのは、台風とかなんとかいうような場合のことであります。これは元来沿岸警備用でありますから、海賊行為のようなことで攻撃される場合もあり得ると思いますけれども、沿岸で警備しておる範囲におきましては、そういうような普通の今支那海等で、あるといわれておるような種類の海賊等の船の持つておる武器で、これが沈められるというようなことはちよつとないのではないかと思つておりますが、万一そういう場合があつたと仮定して考えますと、この場合はやはりその事情にもよりましようけれども、相当に考慮されるわけにはなると思います。具体的にどういう動機で、どういうふうなことであつたか。そういう場合が起つたときの状況によつてこれはかわる場合もある、不必要に出て来たというようなことがあるかもしれない、あるいは全然気がつかないときに、うしろから撃たれるというようなこともあるかもしれない。そういうような事情にもよることと思いますが、もちろんこの規定はいろいろ事態を考えて無理のないようにしようということになつております。
  209. 高岡大輔

    ○高岡委員 今のその場合でありますが、逆もどりするわけでなく私お聞きするのでありますが、私は外国が、日本フリゲートをもつてする巡邏を不法とみなす場合が起るのではないか。そういうことがあり得るような気もしますことは、千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際条約、これの第五章に書いてある第一規則にもありますれども、そもそもこの条約日本は加盟しておるのでありますか、その点ちよつとお聞きしたい。
  210. 下田武三

    ○下田政府委員 この条約はさきの国会で御承認を得まして、すでに日本は加入いたして、日本の加入の効力も十一月のたしか十九日だと思いますが、発生しております。
  211. 高岡大輔

    ○高岡委員 そうしますと、この第五章の第一規則適用というのによつて、それと保安庁の規則とに多少の誤差があるような、まだその点政府の説明がはつきりしていないのでありますが、そういつたようなことで向うが日本フリゲートを撃滅するといいますか、撃ち沈めるようなことがあり得るような気がするのですけれども、ないのですか。
  212. 増原恵吉

    増原政府委員 便宜私から申し上げます。この第五章の航海の安全という規定は、もとより保安庁はこれに準じてやるわけでございます。この内容からいいましても、これで何か不用意に出撃をして行くということがありましても、それが大砲を撃たれて沈められるということには、第五章をごらんになるとなるまいかと思います。
  213. 高岡大輔

    ○高岡委員 私の言うのは少し乱暴な言い方かもしれませんけれども、とにかくこつちはちやんと規則とでもいいますか、それによつて巡邏をしているのだけれども、先方ではそうとらない場合がある。たとえていいますと、日本の漁船が相当深く入つて行くというような場合に、これはやはり援護するというような意味で出て行つた場合に、たびたびこの委員会で話の出ましたように、なるほど日本の目の丸の旗、これには自国の旗と書いてありますから、日の丸の旗でありましようが、その日の丸の旗を掲げておつて、形を見れば軍艦であるのに、軍艦旗でなく目の丸だといつたようなことで、そういう面から向うが無謀にもとでも言いましようか、無法にもこちらのフリゲートにぶつかつて来るというようなことはあり得ないのでありますか。そういうことをこの場合懸念してといいますか、想定して滅失という言葉を使われたのですか。この船はよほどでないと沈みもしませんし、そうこわれるとは思いませんが、ここには相当ひどい文句が書いてある。
  214. 増原恵吉

    増原政府委員 今の御質問趣旨は、海上における人命の安全に関することは別のことで御質問のように思いますが、警備隊の船が出て行つて実力を進んで行使するということはない建前で、ございまして、ただいままでにいろいろ御質問お答えしましたように、正当防衛とか緊急避難とかいうことに該当することに区切られた場合に、そういうことがあるというのでございます。今の御質問のようなことで起るとはわれわれには考えられませんが、しかしごの滅失と書いてありますのは、本条約にはあらゆる万一の場合も想定をして、こういう言葉が使つてあるものというふうに考えております。
  215. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 先ほどの第三条との関連でありますが、第六条に五箇年間の期限が満了したときには、滅失しない限り船舶所有者が指定する時と場所において、実質的に借り受けたときと同じ状態で返さなければならない。ただそれに括弧して、正常または正当な減耗となつておりますが、一体これはだれがこういうように判定するのですか。
  216. 下田武三

    ○下田政府委員 双方が立ち会つて認定すべき問題と考えます。
  217. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 そうすると、この協定が結ばれた当時は、先ほど御説明のありましたように、アメリカが七十六億円というような巨額の自分の費用を投じて、悪いところを一切修繕して貸してくれた、何にも政治的のものはない、むしろ好意的だと見てよろしいと思うのです。ところが国際関係というものは絶えずいろいろな関係で変化したりする。そうして、今度返すときに国際関係の変化に伴つて、この両者の意見が合わないような場合になつたら一体どうなるか。
  218. 下田武三

    ○下田政府委員 第三条と第六条を見比べますと、加藤委員のおつしやいますように、第三条では水くさいと思われるような規定があります。そのかわり、第六条では今度は返す段になると、これまた厳格な規定が置かれております。私ども交渉の際にそのところを何とか直してくれということを言つたのでありますが、先方は、上院を通りました、アメリカ大統領にこの船舶日本に貸していいというそのアクトに、引渡しの前に、日本政府協定締結するという条件が入つておりまして、この協定アメリカ側としても、普通の船舶のチャーターの場合のように法律問題が起らないように、きちんと厳格な規定をどうしてもつくつておかなければ困るのだということを再三申しまして、非常に水くさいような条項が残つたのでございます。しかしながら、交渉の最中に先方が申しますことは、先ほど外務大臣がおつしやいましたように、引渡しの際はどんな状態でも文句を言わぬというような規定もございますが、その実は厖大なる経費を使つてよくして日本に渡すということを事実やつておるのでございます。それから返還の際も、先ほど安東さんの御質問にもありましたように、不可抗力による滅失の場合、これなんかも日本側として心配する必要はないのだということを、交渉の裏では始終言つておるのであります。でございますから、協定の面は多少水くさい印象を受けるのでありますが、実際問題といたしましては、引渡しの際にも、また返還の際にも何ら困難な問題発生は私ども予想いたしておりません。
  219. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 だからこそわれわれは非常に心配するのです。こういう貸借の協定を結ぶときは、非常に両国の関係が好意的で、非常に親しい間柄であるから、何の心配もなく、こういう協定が結ばれるけれども、この内容が国際関係でかわつたような場合に意地悪く出ようと思えば、この条文からいつて、いくらでも意地悪く出られるわけです。そういう政治的な考慮が条文に表わされておらなければならぬと思う。今おつしやつたような交渉経過に現われた両者の意見が条文の上に率直にそのまま現われておれば、そういう危惧は何にもないわけですが、事実交渉過程に両者の意思として表明されたものと、この条文に現われたものとは違つておる。こういう違いが、やがて政治的な変化等によつて両国間の関係に少しでも水くさいものが起つて来ると、これが厳重に解釈される。そういうことは当然考え得られることなのです。だから協定締結の交渉過程における事実を事実として条文に表わされるようにされなければならぬはずであつた。私どもはそう信じますが、これについてはどうお考えでしようか。
  220. 下田武三

    ○下田政府委員 ごもつともなお説でございますが、私どもの修正と申しますか、立場が全然いれられなかつたわけではございませんで、たとえば御指摘の条項に、実質的に同一の状態——サブスタンシヤリーという字を入れてくれましたのも、私どもの要求の結果でございまいして、全然同じ状態ということは不可能な場合も起り得る。それでサブスタンシヤリーに同一ということでゆとりをとつております。それからまた滅失及び全損の場合でも、双方で公正妥当な賠償であると「合意した額及び条件」というように、万一加藤さんの御予想なさいますような情勢の変化が起りましても、何とかゆとりをつける道だけは最小限度講じたつもりでおります。
  221. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 その点は私ちつとも納得できませんけれども、末段の今おつしやつたような、船舶所有者に補償するという場合において、借受者と所有者とが「合意した額及び条件で」ということになつておるわけでありますが、今申しますような、両者の間にもし万一政治的な若干の変化が生じた場合に、これが両者の合意を必要とするのですが、合意ができなかつた場合には、損害賠償を負担しなければいいといつて、ほつたらかしにすればいいわけでありますが、こういう小さな事柄によつて両国の国交に重大な障害を生ずる場合がないとも言えない。そういう場合もわれわれとしては当然考慮されるわけです。従つてこういう場合に、額及び条件が一致しなければ、そのままこれは放棄する——第三条の精神から行けば、放棄していいわけです。そうでないと私がさつき質問しました条項と同じように、この損害賠償の合意の決定の場合においても同様の事態が起つて来る。これについてはどうお考えですか。
  222. 下田武三

    ○下田政府委員 放棄の問題とは関係がないと存ずるのでございますが……。
  223. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 法律の条文を、今は非常に親しい日本を何とかして助けてやろうという——あなた方の言葉を全面的に信用して、決して向うは政治的な意図はないものとして、善意に解釈する。ところがそういう政治情勢の変化によつて、この条文を厳重に狭義の解釈をすることになるわけです。そうすると、同じ条文でも好意的に善意的に解釈する場合と、悪意をもつて狭義に解釈する場合とは、結果において非常に違つて来る。こういうことは当然考えられるわけですが、そういうことを予想されたのかどうか。
  224. 下田武三

    ○下田政府委員 そのような日米間の関係の事態の変化というようなことは、全然予想いたしておりません。ただ協定の立案、折衝者としての立場から考えると、たといそういう事態が予想されないにいたしましたところで、なおかつ多少わが方のゆとりを残しておくということは、交渉者の立場として当然な次第でございますので、先ほど申しましたようなゆとりを入れてもらうことに先方を納得、承諾さしたわけであります。
  225. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 将来の政治的両国関係の変化が、全然考慮の中に入れられなかつたということは、私はこの協定締結の当事者としては慎重を欠いたと思うのです。御承知の通りきのうの味方はきようの敵であり、きのうの敵はきようの味方である。あれほど親しい英米の間においてすら、問題によつてはいろいろ利害の衝突なり感情の衝突なりを生ずることがある。日本はこの間までは占領下にあつたから、占領政策のもとに押しつけられておつたから、具体的なものは現われて来なかつたにしても、今後独立国として立つ以上は、やはり個々の部面においては利害の衝突なり、あるいは意見の食い違いなりが起つて来ることは当然予想できると思うのです。そういうことを予想されて、条約なり協定なりの締結に当られなければならぬと思うのです。それを全然考慮しなかつたというようなことは私は軽率だと思う。これは意見にわたりますから別にしまして、とにかくも私どもはそういう点において、この条文に遺憾の意を表して、私の質問はこれで終つておきます。
  226. 黒田寿男

    黒田委員 私も船舶滅失及び全損の場合におけるわが国の責任ということにつきまして、もう少しお尋ねしてみたいと思います。  船舶の滅失する場合に私は二通りあると思います。第一はわが国の責任によつて船舶が滅失したような場合、それから先ほどから問題になつておりますような不可抗力によつて船舶が滅失した場合、この二つの場合があると思います。そうして日本に責任がある場合は第六条の規定で私は異議はない。しかしながらわが国に責任のない場合までも、なおかつ第六条によつて賠償の義務があるということになつて参りますと、それは私は問題だと考えます。これはわが国法律考えから行けば——私は英米法はよく知りませんから、別の主義の適用があるのかもしれません。しかし少くともわれわれ日本人がわが国で適用されておる法律の観念からいたしますと、船舶日本の責任に帰すべからざる理由によりまして、滅失または毀損いたしましたようなときに、その滅失または毀損につきましての負担は合衆国に帰するので、日本がその賠償の責任をになわなくてもいいのだ、これが私は日本法律の主義だと思います。私どもはそういうように考えておりますから、日本に責任がある場合は別といたしまして、たとえば外務大臣がおつしやいましたような、暴風雨によつて船が沈んでしまつた場合、あるいは不正な攻撃によりまして船が沈んでしまつた場合、これは私は日本に責任がない場合だと思います。こういう場合には日本は損害賠償の責任はない。船を返す責任がないだけでなくて、返せないことによつて生ずる損害を賠償する必要もないのだ。こういうときにおける損失の負担は合衆国側だ、こう解釈するのが、私はわれわれ日本の法制における危険負担の主義から考えられるところであると思います。そこでそういう私ども法律観念から行くとこの第六条がどうも理解できない、こう私ども考えておるのであります。たとえばこういうことになつたらどうかと私は思うのです。あらしで船が滅失いたしました場合には、日本に損害賠償の責任があるかどうかという問題が起るだけであつて、私ども法律観念から行けば、そういう不可抗力による滅失の場合には日本は責任がないのだ、こう言えます。それからいま一つの場合、たとえばわが国に対し不正なる攻撃を与えまして、この船舶が滅失いたしましたような場合には、私は二重の関係が起ると思います。それはわが国と不正な攻撃をしたものとの関係が第一であります。それから第二はわが国船舶所有者であるアメリカとの関係、私はこういう二重の関係が起ると思うのでありますが、不正な攻撃者に対するわが国との関係におきましては、当然わが国は損害賠償の請求ができる。わが国がそういうときに賠償請求をするのだ、先ほど増原次長もこう申されましたが、少くとも私はそれは当然にできると思います。そのときにもし不可抗力による、あるいはわが国が責任のない場合における滅失についても、なお責任があるという解釈から行けば、そういう第三者から不正の行為に対する損害賠償金を日本が受取りました場合に、アメリカに対してどの程度でありますか、とにかく賠償として日本が渡さなければならぬという義務が生ずる。不可抗力あるいはわが国の責任に基かない場合には、日本は滅失に対し損害を賠償する責任がないという見地から行きますならば、不正攻撃者からわが国が受けた損害の賠償金を日本がとつて、それを日本が領得しておけばよい、アメリカに渡す必要はないと思う。こういうような差が私は生じて来ると思うのであります。そこで私は日本が責任を負わない、日本の責任でない場合、あるいは不可抗力によりまして船舶が滅失いたしましたような場合には、今申しますように損害賠償の責任はないのだという主義を貫いていただかなければ、われわれ日本の立場は損せられると思いますし、私はこれが公平な立場であると考えます。しかるに第六条には船舶が滅失したということだけ書いてありまして、その滅失の原因が日本に責任がある場合といなと、私はひつくるめたものであるように考えられると思うのであります。これでは日本に不利益ではないか。なぜひつくるめたと解釈するかと申しますと、この第六条の五行目に「いかなる原因によるものであるかを問わず、船舶借受者が全損として取り扱うことを適当と認める損害を受けた場合には、」云々というようなことがありまして、どうも私は不可抗力の場合、あるいはわが国に責任のない場合にも、なおかつ船舶の滅失による責任をわが国は負う、こういうことになつておると思います。こういう方針には私どもは不服であります。そういう場合でも日本は損害の賠償をなすべきであるというふうにお考えになつておいでになるのでしようか、どうですか、これをちよつとお聞きしておきたいと思います。
  227. 下田武三

    ○下田政府委員 不可抗力の場合の損害賠償責任の免除——確かに国内法上におきましては、そういう観念も成り立つと思うのでありますが、国家間の協定におきまして必ずしもそういう理論を押し通せないと存ずるのであります。なるほど先ほど外務大臣がおつしやいましたように、台風で船がひつくり返つて沈没したとか、あるいは日本海で、いまだに機雷が流れておりますが、それにひつかかつて沈んだ、これは不可抗力ではあります。しかしながら貸した方のアメリカ側から見ますれば、日本近海の台風だとか、日本近海の機雷にかかつた事象は、これは貸さなかつたら起らなかつた事象なのであります。でありますから、不可抗力の場合は日本側には責任はないのだという規定を提起して向うにのますということは、あまりに虫のいいことではないかと存じます。またお話の純粋の不可抗力ではなくて、第三者が介在した場合の滅失、東京湾口でイギリスの汽船と衝突して、こちらの船が小さいから沈んでしまつたというような場合には、これは日本側から英国側に、もし先方に責任があるのでございましたら、先方に損害賠償を請求しまして、そのイギリス側から受取つた損害賠償の金を、船舶の所有者であるアメリカ側に対して返済すればいい、そういうように考えます。
  228. 黒田寿男

    黒田委員 私はこれについてはもう議論はいたしません。その場合にアメリカに返せばいいという御議論ですが、私ども考えから行けば、返さなくてもいいということになる。日本に責任のない損害でありますから、日本日本としての損害賠償を受けてもそれを何もアメリカに渡す必要はない、私はそういうふうに法律の上で考えられると思うのです。そこが問題であると思う。
  229. 栗山長次郎

    栗山委員長 黒田君に申し上げますが、見解の相違でありますから、討論のときにお願いいたします。
  230. 田中稔男

    ○田中(稔)委員  「いかなる原因によるものであるかを問わず、」となつておりますが、滅失とか損傷とかいう事故が起る原因といたしまして、自然的原因と社会的原因とあります。そのいろいろな事例が質疑応答に大分出ております。私ここでまとめて少し御説明願いたいと思いますが、こういう自然的な原因による事故、社会的原因による事故、社会的原因によるものにはこれは政治的原因による事故を含むのでありますが、この協定関係された方々には、どういうふうにその原因をお考えになつているか、それをまとめてここで御説明を伺えればけつこうだと思います。
  231. 下田武三

    ○下田政府委員 いかなる原因によるものであるかを問わず、全損として取扱う場合には、あらかじめ日本側だけで独断でやらないで協議するということにいたしました理由は、全損というのは滅失の場合とは多少違います。たとえば船が行方不明になつてしまつたというような場合、また船舶が火を起しまして、これは日本側に責任のあることでございますが、失火のために非常に大きな損害を起しまして、これを修理するには莫大な費用がかかる。それに値しないというような場合、またあらしのために暗礁に乗り上げまして横つ腹に大きな穴をあけて、これを修理するためには莫大な費用がかかつて引合わない、そういうような日本側の責任による場合でも、また日本側の責任によらない場合でも、これをトータルロスと認める場合には、日本側でかつて認めないで、先方と協議して了解の上でそういう協議をしよう、こういう趣旨がその規定趣旨でございます。
  232. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 いろいろ自然的な原因による事故が考えられますが、それは私はあまり今ここで深く御質疑いたしません。社会的といいますか、政治的といいますか、一方北の方において、千島方面、それから東支那海において中国方面、これが警備活動しておりましたときに、あるいは相手国の誤解であるか相互の誤解であるか、何らかの衝突が起る。そういうふうな原因で事故が起るというような場合は、これはお考えになつていないのでございますか。さつきの外務大臣のお話では、そういうことはなかろうというようなお話でありますが、念のためにひとつ外務大臣にお伺いしたい。
  233. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは沿岸の警備、警邏ということを目的としておりますから、まあ非常に特殊の場合どうか知りませんが、普通われわれの常識考ええてそういうことはないと思つております。但し千島の方面になりますとこれは非常にむずかしいので、根室のところなどは非常に狭いものですから、事故が起らぬとも限らぬわけであります。その辺は警備隊の方で十分事故の起らないように注意はもちろんすると考えております。
  234. 栗山長次郎

    栗山委員長 逐条審議を第七条、第八条に進めることといたします。
  235. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 第七条に「前記のぎ装品に関する秘密保持のための取扱区分は、アメリカ合衆国政府の標準慣行に従つて行われるものとする。」こう書いてありますが、アメリカ合衆国政府いかなる機関の国際慣行に従うのですか。
  236. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 この今度借りる船については、それほどむずかしいことはないと思いますけれどもアメリカの法令によりますと、秘密保持の段階がありまして、特シークレットというのもあります。シークレットというのもあります。あるいはコンフイデンシヤルとか、いろいろ区別があるのであります。その区別によつてたとえば特シークレットのものならば、これはどういう種類の人には知らしてもいいが、これらの者にはいかぬとか、あるいはシークレットならこの程度の者には知らしていいという区分があるわけであります。ただいまの借り受ける船についてはそれほどえらいむずかしいことがたくさんあるとは思いませんけれども、しかしいずれにしてもアメリカ側としては機密保持ということを考えますので、その取扱い区分でやつてくれ、こういう趣旨であります。従つてこれらの借り受けるものにつきましても、艤装品その他につきましてはコンフイデンシヤルであるとか、これはそうではないとかいう種類のものがありますから、その点は先方から借りるのでありますから、先方の必要の範囲のそういう機密保持はいたそう、こういう意味であります。
  237. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 どうも私の質問しました点と遣うのですが、「アメリカ合衆国政府の標準慣行」こうなつておりますが、そのアメリカ合衆国政府のどういう機関の標準慣行かということです。
  238. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それは先ほど申しました通り法律があるのであります。
  239. 並木芳雄

    ○並木委員 今の何人にも漏らしてはならないという、これは禁止規定ですけれども、これに抵触したときには罰則はどういうのでしようか。どうもこれで見ると、この間見学してそれを人に話したのも触れるようでありまして、神経衰弱になるような条文ですね。こんなのない方がいいと思いますけれども、さつきの保安隊の場合にも同じ問題が起ると思う。
  240. 増原恵吉

    増原政府委員 これを借り受けましていわゆる秘密保持しますのは、保安庁職員である主として警備隊員でありますが、保安庁法秘密をそれぞれ区分に応じて漏らしてはならない、漏らした場合にはどういう処罰を受けるというふうな規定があるわけでございます。
  241. 並木芳雄

    ○並木委員 こういう問題はやはり程度問題になると思うのですけれども保安庁法に罰則規定がある、この間の見学のような場合にはあれは何の委託を受けたのですか。われわれは国政調査の権限に基いてやつたのですけれども。はつきりしておいてください。いろいろ問題が起るといけない。
  242. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それはおそらく主として図面とか仕様書とかいう問題でありますが、そのうちで保安庁の職員として将来これを借り受けた場合に、漏らすべからざるようなものは多分お見せしてないのだろうと思いますから、御安心ください。
  243. 並木芳雄

    ○並木委員 それではこの間の見学の目的は何も達せられないことになりますが、はつきりだれが認識してもこれは漏らしてはいけないのだとかいう標識とか注意があつて、それを犯した場合に初めて法に触れるのだという対策をとつてもらわなければ困ると思う。漠然とこういう規定によつてやられると、例の破防法と同じような疑惑が出て来るから私は聞いているのですけれども、その点いかがですか。
  244. 増原恵吉

    増原政府委員 これは職員に対するものでございまして保安庁法によつて職員が秘、極秘、部外秘とそれぞれの扱いを受けるものについてその取扱いをすべきことを命ぜられ、これに反した者が処置を受ける、部外の者についてはただいまのところその規定の適用はありません。
  245. 並木芳雄

    ○並木委員 それでわれわれがそれをいくら漏らしても、全然抵触しないということがはつきりしたわけです。  それから用語の点ですけれども、翻訳の文字のことをとやかくいつては専門家に言うのですから失礼だと思いますが、「交換用部品」というのはどういうことですか。それから今の「秘密保持のための取扱区分」とついうのも、これはやはり専門語になりますか、セキュリテイ・クラシフイケーシヨンというのを訳した場合に、「秘密保持のための取扱区分」——専門語ならしかたないが、そうでないと、普通の日本語として「秘密保持のための取扱区分」という場合に、これがすぐセキュリテイ・クラシフイケーシヨンを意味するかどうか、「交換用部品」とかそういう訳語について十分注意してやつておられるかどうか。
  246. 下田武三

    ○下田政府委員 「秘密保持のための取扱区分」という言葉は、官庁等でも「取扱区分」ということを言つておりますので、別に日本語としてそう目新しい表現ではないと思います。「交換用部品」これももうくつついてとりかえられないものでない、いくらでもとりかえられる部分——これは占有放棄の規定がございますが、これもそう特異な日本語ではないと存じますが、いかがですか。
  247. 黒田寿男

    黒田委員 私の質問も先ほど並木君の触れられました秘密保持の行為をいたしました場合に処罰を受ける者の範囲についてでありますが、増原次長のようににおつしやいますれば、それも一つ解釈だとは思いますけれども、元来この協定保安庁の職員に対し適用されるというふうに限定されておるものではございません。われわれ日本国民全部がこの条約がひとたび承認を得て効力を発生しました以上は、これを尊重しなければならぬ義務を生ずるのであります。これはわが国憲法が、条約対するわれわれ国民の責任をそう規定しております。でありますから私は保安庁職員以外の者でも、わが国民として第七条の秘密事項についてこれを他に漏らす者は、やはりこの禁止を受けている者の範囲に入るのだ、こう解釈すべきだと私は思うのであります。それで私どもはこれを問題にしておるのであります。保安庁の職員だけが、職務上得た秘密を漏らしてはいけないということだけでありますならば、これは私どもには問題はないのです。けれども禁止のことは、保安庁法に書いてあるのではなく、条約に書いてあるのでありますから、どうも私ども増原次長のような解釈はできない。私ども一般国民として第七条の秘密事項を漏らした場合には、処罰を受けるかどうか、罰則は書いてありませんけれども、とにかくそういうことを漏らしてはいけないという禁止を受ける対象に私ども日本人全部がなるのではないか、こう思うのですが、その点もう一度政府の御意見を伺いたいと思います。
  248. 増原恵吉

    増原政府委員 仰せの通り、これを漏らしてはならないという者は、これの御承認を受けて条約として発効いたしますと、国民全体の義務であると思います。ただ現在のところは、機密保持のための有効な手段として、保安庁の職員に罰則をもつて禁止するならば目的を達するであろうという意味で、罰則があるのは保安庁の者である。これを漏らしてはならないという義務は、条約が発効すれば国民全体にあるものと解釈いたします。
  249. 黒田寿男

    黒田委員 そうしますと、結局この条約に基いて保安庁の職員以外の者に秘密漏洩の処罰の法律を設けない限りは、保安庁職員以外の者はこの禁止に反しても、何ら処罰を受けないのだ、こういう解釈でよろしいのですか、そうだと解釈しますと、秘密を漏らしてはならないと書いてあることからは、道徳上の責任を生ずるにすぎないので、法律上の責任は保安庁職員以外には生じない、こう解釈するよりしかたがないのですが、それでよろしゆうございますか。
  250. 増原恵吉

    増原政府委員 ただいまのところ、さように了解をしてこの条約の話合いを続けて来たわけであります。もし将来さようなことでは機密が保持できないというふうなことが万一起りますならば、一般国民に対して処罰をするというようなことはもとより法律を要しますので、国会で御審議を願わなければならない、政府が黙つてやるようなことはございません。
  251. 栗山長次郎

    栗山委員長 附属書A及びBを残しまして逐条審議はこの程度にとどめて散会をいたしたいと思います。  なお理事会の申合せによつて総理大臣の出席を要求しておりますので、その要求が満たされました場合には、水曜日の午後討論採決に入りますことも御了承おきを願いたいと思います。  本日はこれで散会いたします。     午後五時十四分散会