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黒田委員 私も
船舶滅失及び全損の場合における
わが国の責任ということにつきまして、もう少しお尋ねしてみたいと思います。
船舶の滅失する場合に私は二
通りあると思います。第一は
わが国の責任によ
つて船舶が滅失したような場合、それから先ほどから問題にな
つておりますような不可抗力によ
つて船舶が滅失した場合、この二つの場合があると思います。そうして
日本に責任がある場合は第六条の
規定で私は異議はない。しかしながら
わが国に責任のない場合までも、なおかつ第六条によ
つて賠償の義務があるということにな
つて参りますと、それは私は問題だと
考えます。これは
わが国の
法律の
考えから行けば
——私は英米法はよく知りませんから、別の主義の適用があるのかもしれません。しかし少くともわれわれ
日本人が
わが国で適用されておる
法律の観念からいたしますと、
船舶が
日本の責任に帰すべからざる理由によりまして、滅失または毀損いたしましたようなときに、その滅失または毀損につきましての負担は合衆国に帰するので、
日本がその賠償の責任をになわなくてもいいのだ、これが私は
日本の
法律の主義だと思います。私
どもはそういうように
考えておりますから、
日本に責任がある場合は別といたしまして、たとえば外務大臣がおつしやいましたような、暴風雨によ
つて船が沈んでしま
つた場合、あるいは不正な攻撃によりまして船が沈んでしま
つた場合、これは私は
日本に責任がない場合だと思います。こういう場合には
日本は損害賠償の責任はない。船を返す責任がないだけでなくて、返せないことによ
つて生ずる損害を賠償する必要もないのだ。こういうときにおける損失の負担は合衆国側だ、こう
解釈するのが、私はわれわれ
日本の法制における危険負担の主義から
考えられるところであると思います。そこでそういう私
どもの
法律観念から行くとこの第六条がどうも理解できない、こう私
どもは
考えておるのであります。たとえばこういうことに
なつたらどうかと私は思うのです。あらしで船が滅失いたしました場合には、
日本に損害賠償の責任があるかどうかという問題が起るだけであ
つて、私
どもの
法律観念から行けば、そういう不可抗力による滅失の場合には
日本は責任がないのだ、こう言えます。それからいま
一つの場合、たとえば
わが国に対し不正なる攻撃を与えまして、この
船舶が滅失いたしましたような場合には、私は二重の
関係が起ると思います。それは
わが国と不正な攻撃をしたものとの
関係が第一であります。それから第二は
わが国と
船舶所有者である
アメリカとの
関係、私はこういう二重の
関係が起ると思うのでありますが、不正な攻撃者に対する
わが国との
関係におきましては、当然
わが国は損害賠償の請求ができる。
わが国がそういうときに賠償請求をするのだ、先ほど
増原次長もこう申されましたが、少くとも私はそれは当然にできると思います。そのときにもし不可抗力による、あるいは
わが国が責任のない場合における滅失についても、なお責任があるという
解釈から行けば、そういう第三者から不正の行為に対する損害賠償金を
日本が受取りました場合に、
アメリカに対してどの
程度でありますか、とにかく賠償として
日本が渡さなければならぬという義務が生ずる。不可抗力あるいは
わが国の責任に基かない場合には、
日本は滅失に対し損害を賠償する責任がないという見地から行きますならば、不正攻撃者から
わが国が受けた損害の賠償金を
日本がと
つて、それを
日本が領得しておけばよい、
アメリカに渡す必要はないと思う。こういうような差が私は生じて来ると思うのであります。そこで私は
日本が責任を負わない、
日本の責任でない場合、あるいは不可抗力によりまして
船舶が滅失いたしましたような場合には、今申しますように損害賠償の責任はないのだという主義を貫いていただかなければ、われわれ
日本の立場は損せられると思いますし、私はこれが公平な立場であると
考えます。しかるに第六条には
船舶が滅失したということだけ書いてありまして、その滅失の原因が
日本に責任がある場合といなと、私はひつくるめたものであるように
考えられると思うのであります。これでは
日本に不利益ではな
いか。なぜひつくるめたと
解釈するかと申しますと、この第六条の五行目に「
いかなる原因によるものであるかを問わず、
船舶借受者が全損として取り扱うことを適当と
認める損害を受けた場合には、」云々というようなことがありまして、どうも私は不可抗力の場合、あるいは
わが国に責任のない場合にも、なおかつ
船舶の滅失による責任を
わが国は負う、こういうことにな
つておると思います。こういう方針には私
どもは不服であります。そういう場合でも
日本は損害の賠償をなすべきであるというふうにお
考えにな
つておいでになるのでしようか、どうですか、これをちよつとお聞きしておきたいと思います。