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1952-12-06 第15回国会 衆議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月六日(土曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 栗山長次郎君    理事 谷川  昇君 理事 松本 瀧藏君    理事 加藤 勘十君       今村 忠助君    植原悦二郎君       大橋 武夫君    木村 武雄君       近藤 鶴代君    中山 マサ君       馬場 元治君    松田竹千代君       森下 國雄君    安東 義良君       楠山義太郎君    高岡 大輔君       並木 芳雄君    中村 高一君       帆足  計君    黒田 寿男君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         保安政務次官  岡田 五郎君         保安庁次長   増原 惠吉君         外務政務次官  中村 幸八君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         海上保安庁長官 柳澤 米吉君  委員外出席者         農林事務官         (水産庁生産部         長)      永野 正二君         海上保安官         (警備救難部         長)      松野 清秀君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 十二月三日  在外公館名称及び位置を定める法律等の一部  を改正する法律案内閣提出第二号)(参議院  送付) 同月四日  日本国アメリカ合衆国との間の民間航空運送  協定締結について承認を求めるの件(条約第  二号) 同日  海外抑留胞引揚促進等に関する請願櫻内義  雄君紹介)(第四二六号)  同(關谷勝利紹介)(第四四九号)  同(水谷長三郎紹介)(第四九九号)  武蔵野市に駐留軍宿舎設置反対に関する請願(  中村高一君外三名紹介)(第四四七号)  同(中村高一君外四名紹介)(第四九一号)  遠江地区駐留軍試射場設置反対に関する請願  (高見三郎君外六名紹介)(第四四八号) の審査を本委員会に付託された。 同日  日米行政協定に基く特権撤廃陳情書  (第六一  九号)  金沢市近郊の軍事施設設置反対に関する陳情書  (第六二〇号)  海外抑留同胞救出国民運動本部機構強化並びに  経費負担に関する陳情書  (第六二一号)  抑留同胞完全送還等に関する陳情書  (第六二二号)  同  (第六二三号)  クラーク・ライン内日本漁船操業制限緩和の  陳情書(第六  二四号)  済州島近海の漁船に対する韓国艦船による不法  発砲並びにだ捕に関する陳情書外一件  (第六二五号)  奄美大島及び沖縄諸島日本復帰に関する陳情  書(第六二六号)  鹿児島県大島行政権回復に関する陳情書  (第六二七号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日本国アメリカ合衆国との間の船舶貸借協定  の締結について承認を求めるの件(条約第一  号)  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 栗山長次郎

    栗山委員長 ただいまから外務委員会を開きます。  日本国アメリカ合象国との間の船舶貸借協定締結について承認を求めるの件、及び国際情勢等に関する件について、質疑を続行いたします。並木芳雄君。
  3. 並木芳雄

    並木委員 増原次長お尋ねをいたします。ただいままでの論点は、主としてこれが軍艦なりや船舶なりや、あるいは戦力なりや武力なりやというような点に集中されまして、私どもも先日現地に参りまして実物を見て来たようなわけでございますが、私は少し観点をかえて、こういうものが必要であるかどうか、その点についてお尋ねをしたいのです。つまり私どもとしては海上警備が手薄であるということは、もう方々で聞いておりますし、沿岸警備人命救助の点から、治安のために強化されることはけつこうだと思うのです。抽象的にはそう感じますが、具体的に沿岸警備状況はどうなつておるか。ときどき新聞などで報道されるところによると、日本漁船が拿捕されたり、不法監禁されたり、また正当の理由なくして入国したり、出国したりする、密出入国の問題もございましよう。われわれとしては、いろいろ捨てておけない重要問題があるわけでありますから、その点についてまず被害状況、そうしてこれに対する対策はどうであるか、実際に力が及ばないというような点、それからもし今度フリゲート艦上陸支援艇などによつて充実して参りますれば、こういうものを防止できるわけでありますが、これがなかつたために推されるところの実害、こういうようなものについて詳細に承りたいと思います。
  4. 増原惠吉

    増原政府委員 御承知通り警備隊任務は、全面的に沿岸警備責任を持つてということではありますで、ちようど保安隊国警自治警等の警察に対しまして、実質的には補完的な作用を持つておるのと似たような関係で、海上保安庁の持つ海上警備力のいわば補完作用というふうなことであります。従いまして沿岸警備現実第一線を受持つてつておりますのは、海上保安庁任務であります。現在までにもし警備隊があれば、この出動等を求めなければならぬという事態があつたか、これは現在までのところは、まだ出動を要請するような事態があつたようには聞いておりません。もとよりこれは将来の事態に備えるためのものとして、海上保安庁時代警備隊をつくり、これを保安庁に統合いたしたわけであります。これはやはり原則といたしましては、海上保安庁第一線あるいは原則的な海上警備任務を補充するものでありますから、そうした事態が今までに起きておるということではないわけであります。将来にそういう事態の起り得ることを想定して備えをして行く、こういう意味であります。
  5. 並木芳雄

    並木委員 そうしますと、政府としては将来起り得る事態としてどういうものを想定しているか。事態を想定するというのはちよつと変かもしれませんが、朝鮮の水域の問題やら、あるいは北方における海岸差迫つた状況とか、重要な問題があると思うのです。この前次長に私が質問をしたときに、今度のフリゲート艦などの配置について、第一船隊群と第二船隊群に重点を置いて配備する予定だという答弁がありましたが、大体どういう起り得る事態を想定して配備をするか、具体的に土地の名前などもあげていただいて答弁願います。
  6. 増原惠吉

    増原政府委員 具体的に起り得る事態はどういうふうなものであるかというお問いでありますが、警備隊任務は、国内治安という範疇にある沿岸警備でありまして、外からの侵略に一時的にこれを備えるということが目的ではないわけであります。従いまして北方あるいは西方等の状態に特に備えるという意味合いを持つて、現在編成装備をしておるというわけではございません。せんだつても申し上げましたように、一応予想されますものは、御想像のすぐつきますように、集団的な密入国であるとか、あるいは海賊行為であるとか、海難救助、あるいは漁船保護等で、第一次的な海上保安庁の力を補完する、必要がある場合に出て行くということが、警備隊任務に相なつておるわけであります。
  7. 並木芳雄

    並木委員 第一船隊群、第二船隊群に所属するフリゲート艦などは、常時はどこに碇泊しておく予定でありますか。
  8. 増原惠吉

    増原政府委員 せんだつて申し上げましたように、これはその計画をもつて目下案を練りつつある、まだ確定というところではないと申し上げましたが、大体こうした船隊群は一応の予定としては、現在は基地横須賀舞鶴の二箇所を持つておるのみであります。こうしたところを一応基地として配船をするより方法はないと思います。しかしこの点は、前の御質問にもお答えをしましたが、保安庁当局としては、来年度においては基地を増加したい意向を持つておるのであります。これはまだ関係各省との話合いが済んだわけではありませんので、基地が増加になりますならば、この船隊配置もまたおのずから変つて来る、現在のところは横須賀と、舞鶴基地とするほか方法はないということであります。
  9. 並木芳雄

    並木委員 そういう実態的の検討を進めて参りますと、やはり私どもとしては警備のためにできるだけ拡充して行く。そして憲法に抵触しない範囲でやつて行きたいと考えるのは当然だと思うのです。そこで、ちよつと他の委員会で問題になつたのですけれども、千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際条約との関係について、外務委員としてお尋ねをしておきたいと思います。私どもは、海上警備に当る船舶というものは、国際航路に従事するものではございませんので、ただいま申し上げました人命の安全のための条約というものの適用を受けないと考えておつたわけなのです。しかしながらこの人命の安全のための国際条約を見ますと、なるほどこの間疑問の出たような点もなきにしもあらずであります。これに対して長官はすぐお答えができなかつたらしいのですけれども長官がそこまで準備されておらなかつたとも思います。あるいは条約局の方の方もいなかつたと思いますが、すぐ答弁ができなかつたために、よけいそういう国民の間に疑惑を持たしたかもしれません。そういうことだだと私どもは遺憾に思うわけであります。実態を調べてこういうものが必要であるという建前から申しますと、もしそれに対して不都合な法律があるならば、それはわれわれ国会議員でございますから改正をしてもよろしい。またそれを阻害するような条約があればその条約に参加しないとか、条約の条項を訂正してもらうとかいうこともあり得るので、私ども直接その論議を聞いたわけでありませんので、私の感想が間違つているかもしれませんけれども、私ども外務委員会としての立場から、この際ああいう問題はないのじやないかということの答弁をいただきたい。  それから、従つて海上保安庁法における船舶安全法を除外したということも、これまたあたりまえではないかとも思いますが、ああいう疑問が出て参りましたので、この際ひとつ参考までに聞いておきたい。
  10. 木村篤太郎

    木村国務大臣 今並木委員より御丁寧な御質問かつ何と申しましようか御疑念のお言葉を承りました。予算委員会におきまして実は条約条文も何も持つていなかつたものですから、慎重を期するために答弁を留保したわけであります。御承知通り人命安全に関する国際条約は申すまでもなく「国際航海に従事する船舶」と書いてある。従いまして本件で問題になつております米国から値り受けます船舶は、国際航海に従事するものではないのでありますから、この条約適用は受けないとわれわれは考えている次第であります。
  11. 並木芳雄

    並木委員 条約局長が見えてから、今の大臣答弁専門的立場から敷衍して、この際われわれの疑点を一掃しておいてもらいたいと思います。
  12. 下田武三

    下田政府委員 並木委員の御質問は先日の予算総会におきます中曽根さんの御質問の一部かと思いますが、その第一点は、海上における人命の安全のための国際条約保安庁法の中で適用を除外していることは条約違反ではないか、そういう御趣旨だと存じます。この海上における人命の安全のための国際条約は、前の国会で御承認を得まして日本が加入した条約でございますが、その第一規則の冒頭にこの「規則は、国際航海に従事する船舶についてのみ適用する。」という規定がございまするこの「国際航海」というのはどういうことかという定義もこの規則に載つておりますが「国際航海」とは、この条約適用される一国から国外の港に至る航海又はその逆の航海をいう。つまり国家間の港の間を往復するのが国際航海である。そういう国際航海に従事する船舶にのみ適用するということを規定しております。従いまして、ただいま木村長官からおつしやいましたように、日本沿岸において海上警備に当る船舶は、国際航海に従事するものでないことは明らかでありますから、保安庁法におきまして海上警備隊船舶を、この条約適用から除外しましたことは、何な条約に違反しない次第であると考えます。また、たまにたとえば、これは本来の任務ではないと存じますが、引揚げ等の必要から臨時にある国の港に邦人引揚げに行くという場合に、国際航海に類似の航海をするではないかという御不審も出ると思うのでありますがそういう場合におきましても、同じ規則の第四規則におきまして、「通常は国際航海に従事しない船舶例外的状況において一の国際航海を行うことが必要であるものについては、規則のいずれの要件も免除することができる。」という規定がございます。従いまして、たとい海上警備隊  の船が臨時に外国の港に航海するような場合でも、なおかつ条約違反を構成しない次第でございます。
  13. 並木芳雄

    並木委員 よくわかりました。
  14. 栗山長次郎

    栗山委員長 この際御報告をいたします。本委員会総理大臣出席要求をされた方がありましたので、一昨木曜日の理事会においてこれを協議いたしました。理事会においても総理大臣出席を要求することになり、交渉いたしましたところ、本日の土曜日に出られるかもしれぬということでありましたが、それから後に来週にしてほしいという申出がありましたので、来週総理大臣のこの委員会に対する出席を期待いたしております。各派質問の時間の割当をいたしておりますが、各派理事の方から御聴取を願います。  さらに帆足計君から、前委員会における帆足君の発言中、取消したい事項があるからということで取消し申込みがあります。取消しだけをこの際帆足君に許します。
  15. 帆足計

    帆足委員 前委員会におきまして、中国、ソ連の事情に触れました際に、「新聞というのは、うそが五〇%、ほんとうが五〇というのが相場でございます」という発言をいたしましたが、この言葉は私の意を尽しておらず、不適当な言葉でございますので、次のごとく御訂正を願いたいと存じます。と申しますのは、「鉄のカーテンのかなたの情報に関しましては、新聞というものはうそが五〇%、ほんとうが五〇%というのが今日の実情のようでございます。」こういうふうに——一般的に新聞または特に正確な情報に努められております新聞記者諸君の御努力に対しましては、私は敬意を表しますが、ただ今日の交通不可能な実情のもとにおきましては、鉄のカーテンのかなたの情報に関しましては、私はきわめて不正確であると存じておりますので、先般の発言もそういう環境のもとにおける発言でございましたので、さよう訂正さしていただきます。
  16. 栗山長次郎

    栗山委員長 並木芳雄君にいま一問お許しいたします。
  17. 並木芳雄

    並木委員 木村大臣に申し上げます。ただいまの答弁で私了解いたしました。ただこういうような質問が出たときに、たまたまそこに条文がなかつたということで大臣答弁できなかつたということは、やはり大臣の構えにすきがあつたと思うのです。剣道の名人といわれる大臣にして、やはりそのために混乱を起した責任というものがあるのでございますから、こういう重要な案件を取扱うにつきましては、ひとつほかの省とも十分お打合せをしておいていただきたいのです。どうも聞くところによると、船舶という名称があるにかかわらず、海運関係、つまり運輸省の方などには何も御相談なんかがなかつたらしいので、あるいはそういう方面からも火の手が上つたのではないかと思います。本件について十分関係省とお打合せなつたかどうか、今後十分注意していただくようにお願いして私の質問を打切ります。
  18. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいまの並木委員の御注意、ありがたく拝聴いたしました。
  19. 栗山長次郎

  20. 大橋武夫

    大橋(武)委員 この船舶協定を議題といたしまして、当委員会におきまして、借入いたします船舶が、憲法上の戦力または武力の一部をなすものであるかどうか、従つてこれらの船舶軍艦認むべきものか、あるいは軍艦にあらざる船舶であるかどうか、こういう点につきまして質疑応答があつた次第でございます。しかしながらこの質疑応答を通じまして、これについての政府の見解というものが、必ずしも委員会を納得させるという程度に至つておらないのではないか、ある程度明確を欠いている点があるのではないか、かように存ぜられる次第でございます。しかしながらこの問題を明らかにいたしますことは、この協定を審議するにあたりまして、外務委員会といたしましては、最も重要なる任務であると存ずるのでございます。何となれば、戦力の一部であるということになりますと、これは明らかに憲法違反の疑いがあるわけでございますから、かような事項を包含いたします協定に対しましては、与党といえどもこれに同意を与えることはできないからでございます。従つて、私はまずこの点につきまして、二、三の質問を申し上げたいと存ずるのでございます。  今般値り受けますフリゲート艦並びに上陸用舟艇等につきまして、これが軍艦ではないということについての理由を、あらためて、保安片長官から伺いたいと存じます。
  21. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいまの御質問に対してお答えいたします。まず軍艦とは何ぞやということは、軍艦はまず戦争に用うるものである、これが大前提でございます。戦争目的とした船であります。しこうして一面において、軍艦主権範囲においてそれを侵されない、いわゆる不可侵権を持つておるのでございます。治外法権乗組員は持つております。乗員はいわゆる軍人、すなわち戦争目的とした人間がこれに乗り組んでこれを操縦することになるのであります。これを標章すべき一国の軍艦旗を掲げております。これらの点から見て、普通の商船あるいは船舶とは大きな差異があるのであります。それで本件協定目的になつております船舶は、まず戦争目的とするものでない、明らかに沿岸警備に従事するということ、この点において大きな差異があるのであります。また乗組員も、警備員がこれに乗つておる、日本軍艦旗も掲げません。従いまして軍艦の有する治外法権あるいは不可侵権というようなものは持つていないのであります。
  22. 大橋武夫

    大橋(武)委員 ただいまの保安庁長官お答えを拝聴いたしますと、そのお答えといたしましては、第一に、戦争に用いるものが軍艦である。それから続いて、軍艦旗を掲げる、治外法権を持つ、あるいは主権に属する、こういうふうなものをあげておられますが、このうち一番大切な点は、長官もただいま大前提と言われました戦争に用いるもの、これが最も大切な点ではないかと思います。あとはこれから参りまするところの属性である。軍艦旗を掲げるというのは、軍艦なるがゆえに軍艦旗を掲げるのであつて軍艦旗を掲げるから軍艦になるのではない。また治外法権も、治外法権があるから軍艦になるのではなくて、軍艦なるがゆえに治外法権がある。これは軍艦属性であると思うのであります。従つてこのお答え自体の中で、軍艦要件と申しますか、最も根本的な性質としては、戦争に用いるものというのが最も根本的な性質であり、あとはこれに従属した性質をつけ加えられたのだと思うのでございます。そこで、この戦争に用いるものというお言葉をさらに分析してみますと、これは戦争に使用する船舶という意味でございますから、船舶はいろいろの用に使用され得る。しかしながら、そのうち特に戦争目的に使用される船舶軍艦である、こういう御趣旨を述べておるのではないかと思いますが、この点をあらためて伺いたいと思います。
  23. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。第一に、主観的に、これは戦争国家が用いないということ、従いまして、その装備その他の点において戦争をするだけの能力はないと思います。
  24. 大橋武夫

    大橋(武)委員 フリゲート艦戦争をする能力があるかないかということは、フリゲート艦軍艦であるかどうかということとは別なことであると思います。現にフリゲート艦戦争に使用しようという国もあるわけでございます。フリゲート艦はひとり日本においてこれを借り受けておるばかりでなく、シャムにおきましても、また韓においてもこれを借り受けております。これらの両国におきましては、海軍用の艦艇としてこれを借り受けておるのでございますから、客観的な性質といたしまして、フリゲート艦戦争目的に使用され得るものではないということは言い得ないのでありまして、現実に今日、シャムにおきましても朝鮮におきましても、軍艦として借り受けておるという事実が、このフリゲート艦戦争に使用され得る、またそういう能力を持つておるということを物語つておると思うのでございます。ただこれが、日本が借り受ける場合においては、これを戦争目的に使用しないという意図のもとに借りるのであつて、この場合にこのフリゲート艦は、日本政府に関する限り戦争目的に使用されない、すなわち、その使用目的戦争にない、この点だけが言い得るのでありまして、従つてこれは、戦争目的に使用され得る力がないと見ることは、多少言い過ぎの論ではないかと思います。この点をあらためて伺いたいと思います。
  25. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私の申し上げたのは、日本はこの船を、大橋君の申されるように、断じて、戦争のために使用する目的をもつて借り受けたのではない、この大前提のもとに、私は議論したのであります。ある国においてこれを戦争目的にあるいは利用するかもしれない。しかしわれわれ日本といたしましては、こういう船を持つたからといつて戦争に使用するのではなしに、また事実近代の戦争において、かような船は主として戦争に役立つものでない、私はこう見ておるのであります。
  26. 大橋武夫

    大橋(武)委員 前段については私も同感でございますが、後段の点につきましては、現にシャム政府、あるいは韓国政府においてこれを軍艦として使用し、訓練しつつあるのでございますから、この点についての長官の御説明は、私はそのままお受取りいたすわけには行かないのであります。しかしながらこの船は、日本政府戦争目的に使用する意思はない、従つて軍艦として使用する意思はないということは、ただいまのお答えで明瞭になつたと思いますが、その戦争目的に使用するものでないということは、これを使用するところの警備隊というものの本来の性質目的というものから、当然にそういうふうに理解され得るものと思うのでございますが、この点についてあらためて警備隊目的性格というものを、はつきりさせていただきたいと思います。
  27. 木村篤太郎

    木村国務大臣 警備隊性格は、保安庁法によつてきわめて明瞭に、海岸警備に当るということであるのであります。少しもこれは戦争を意図するように訓練されたものではないのであります。
  28. 大橋武夫

    大橋(武)委員 従つて警備隊はさような本来の目的でございますから、この警備隊において使用する船舶が、戦争目的のための船であるということはあり得ない。従つてこれが戦力の一部を構成するということは、警備隊の本来の性格から見てあり得ない、こういうふうに理解することが至当であると存じます。この点についてのお考えを承りたいと思います。
  29. 木村篤太郎

    木村国務大臣 まさにその通りであります。
  30. 大橋武夫

    大橋(武)委員 従いまして、このフリゲート艦というものは、警備隊がこれを使用するから軍艦でないのでありまして、シャム海軍あるいは韓国海軍がこれを使用すれば、軍艦といわなければならぬと思うのでございます。従つてこれが軍艦とならざる理由は、警備隊の本来の目的から来ておるのであつて船舶の構造上から来ておるものではないと、こういうふうに認むべきと思いますが、その点はいかがでございますか。
  31. 木村篤太郎

    木村国務大臣 まさにその通りであります。大前提がそれであります。
  32. 大橋武夫

    大橋(武)委員 その点はよくわかりました。  次にこの船舶につきましては、ただいま御提案になつております協定が成立をいたしておるのでございますが、陸上の部隊すなわち保安隊において、米軍より借り受けております兵器につきましては、いかなる法律関係のもとに使用されつつあるか、これについての米軍との協定というものはいかに相なつておるか、この機会にあわせて伺いたいのであります。
  33. 増原惠吉

    増原政府委員 警備隊の使用します船舶につきましては、ただいま御審議の条約締結したいという考えでございますが、保安隊の使用します兵器につきましては、現在までのところ、在日米軍の好意に基きまして、その兵器を使用させてもらつて訓練を行つておる。この保管等の責任は原則として米軍の将校、これは現在は、顧問という形で保安隊にいろいろ助言を与えておる将校、この人が管理の責任を持つという形に相なつておるのであります。従いまして現在までのところ、まだ正式に貸与その他のとりきめをつくつてございません。つきましてはこの問題についても管理上の手続の問題を主といたしまして、一応在日米軍から保安庁が一括して借り受けて、これはまあ使用貸借というようなことになりましようが、借り受けるという形をとりまして、爾後の保管の責任は、一応保安庁がそれぞれの職任に従つてこれを負うという形のものにしたいと考えまして、話合いを在日米軍当局といたしておりますが、まだ話合いの決定というところまで至つておらない状況であります。
  34. 大橋武夫

    大橋(武)委員 ただいま米軍と話合いをせられておりますその話合いの結果ができ上りました場合は、それは条約あるいは協定というような形になるものでありますか、その点を伺いたいのであります。
  35. 増原惠吉

    増原政府委員 条約あるいは通常の意味で使われます協定というふうなものには、大体いたさないで、保安庁と在日米軍当局との間のとりきめというふうな形になるものと考えます。
  36. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それがこの船舶協定と違つた行政上のとりきめになるという、その理由はいかなる点でございますか。
  37. 増原惠吉

    増原政府委員 陸の兵器等の措受けにつきましては、事実上の使用をするという形のとりきめをつくりたいと思いまして、これに対して損害賠償等の責任をとりきめにおいてはもちろん負わない、規定をしない、そうした財政負担的のものを規定の中には設けない、この船舶条約におきましては、返還をします際に、原状において返還をするというようなものでございますが、そういう種類のものがない、事実上無償で使用をするというふうな内容を持つものというところに一つの相違があり、他の考え方の面からしますと、米国においてもこれを向うのアクトに基いて、日本に貸すという手続をとることを適当と認めていないようでありまして、そうした点からも、大体機関同士のとりきめというふうなことにいたしたいという意味の推移であります。
  38. 大橋武夫

    大橋(武)委員 ただいまのお答えによりますと、先方が条約のような、あるいは協定のような形によつて、これを日本側に使用さすことを希望していないといなことが第一、第二はこの値受けによつて日本政府として将来財政上の負担を負うおそれがないから、従つて条約協定という形で国会承認を得ておく必要はない、こういう御趣旨であつたと存ずるのでございますが、将来財政的負担を負うおそれがない場合においては、そういうとりきめについて国会承認を受けなくてもよろしいと言い得るかどうか、これが憲法上の解釈であるかどうか、この点につきましては、なお政府としてもその協定のでき上るまでの間、十分に御研究おきを願つておきたいと存じます。私どもとしましては、ただいまこれについて、どうこうという結論を下す段階には至つておりません。この点はひとに御研究を願つておきたいと存じます。少くとも、使用貸借でありましても返還義務というものがあるわけでございますから、かような義務があります以上は、財的負担がまつたくないと言い得るかどうか、それらの点につきましても御考慮の上、この点は御研究をいただきたいと存じます。  それからただいま保安隊が事実上使用をいたしております武器の種額、数量等について伺いたいと思うのでございます。これはもし公開の席において御答弁のできない事柄でございましたら、後刻委員長におかれまして、適当な御措置を願いたいと存じます。しかしながらこの武器というものは、地上部隊といたしましては、今日の世界的な水準から見まして、相当程度の高度なものであろうと存ずるのでありますが、これらの相当高度の武装をいたしましても、これが戦力をなさないという理由は、先ほどのフリゲート艦において述べたると同様に、これらの武器の使用目的というものが、保安隊という戦争目的とせざる施設のためのものである、従つてかような、外国の軍隊が戦力として保持すると同じ兵器をわが国の保安隊が保有いたしましても、これが戦力の一部をなさない。こう解すべきものと存じますが、この点はいかがでございましようか。
  39. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいま大橋委員から保安隊の持つておる装備は、相当高度なものと仰せになりました。私は相当高度のものではないと認めておるのであります。保安隊の行動目的に必要な程度、私はこう考えております。この内容を示せということでありますが、これは米軍から特に借り入れて、米軍の了解も得なければなりませんし、これは秘密会で申し上げたい、こう考えております。
  40. 大橋武夫

    大橋(武)委員 高度か高度でないか、これは私の質問において大した問題ではございません。しかしこれは現に米国の軍隊が現在使用しつつある兵器であります。また朝鮮等におきましては各国の軍隊が使用しつつある兵器であります。またヨーロツパにおいては、米軍がヨーロツパ各国の軍隊に貸與しつつある兵器、従つてこれは他国においては十分に戦力の一部として観念されておる兵器でありますが、これが特にわが国において借り受けられたる場合に戦力とならざる理由は、すなわち保安隊というものの性格から参つておる、こういうふうに考えるのでありますが、この点について御答弁をいただきたいと思います。
  41. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私の申し上げたのは、これはもとより保安隊、すなわち日本の平和と秩序を維持するための目的をもつて使用するものであります。その点におきまして、これはいわゆる軍事目的をごうも有しないということは事実であります。また武器は歌洲においても、あるいは朝鮮戦線においても用いられておる同種のものが——そればもとよりそうでありましよう。どんな武器でも戦線に用いられるのでありますから、この武器も当然戦争のために用いられることは明らかであります。しかし私の申し上げたのは、目的からもそうであるが、また実質的、客観的に見ても、これだけのものをもつてただちに戦争をなし得るという程度のものでないということをここで私は申し上げたい。
  42. 大橋武夫

    大橋(武)委員 ただいまの御答弁の御趣旨は大体明らかであります。おそらく長官お答えになりました御趣旨は、これらの武器というものは第一に保安隊目的性格から見て戦力になるものではない。これが第一でありましよう。そうして次に長官のつけ加えておつしやりたかつた点は、保安隊目的性格に必要以上の武器は現に保安隊においては持つておらない、こういうことをおつしやりたかつたのではないかと思います。そういう意味において理解をいたしたいと思うのであります。従いましてこの答えをさらに分析いたしてみますと、第一段に言われました保安隊目的から見て、保安隊の保有する武器は、戦力とはならない、戦争目的に使用するものではないからして、使用目的から見て戦力とはならない。こういうお答えであろうと思うのでございます。第二段の点は、保安隊そのものが戦争目的の部隊でないからして、戦争目的に必要なような、それほどの大規模なる武器は必要がないということを言われたのであろうと思うのでありまして、これは目的から見て必要であるかどうかということによつて保安隊の使用する武器が決定されるということを意味するのだと思うのであります。従つてある種類の武器があるかないかということによつて保安隊が軍隊になるかあるいは国内の自衛力になるかというのではなくして、保安隊が国内自衛のためのものでありますから、その限度においてどの程度の武器を備えるべきものであるかということがきめられて来るものだと思うのでございます。従つて長官は、かつて原爆、あるいはジエツト機がなければ軍隊でない。こういうようなお答えをなすつたように伝えられております。私はそのお答えは承つておりませんが、しかしかりに、この言葉をどうこうというのではなく、この言い方をまねてただいまの長官のお述べになつ趣旨をはつきり申し上げますならば、保安隊というものは原爆やジエツト機がないから軍隊でないというのではなくして、保安隊は軍隊ではないから、原爆、ジエツト機を備える必要はないのだ、こういうのが言い方としては正しい。すなわち軍隊でないのは、保安隊自体の目的性格から来ておるのである、こう理解すべきものであると考える次第でございます。この点につきましてお答えを願いたいと思います。
  43. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ジエツト機や原爆を持たないから軍隊でないということを私は申した覚えはないのであります。これはまつたく誤解であります。近代戦争においてはジエツト機や原爆を持つておる、これを使用せんとする国さえあるのだ、そういう軍際から見れば、日本のかつての警察予備隊が持つておる装備というものは、これはもう九牛の一毛にも当らぬのだ、こんなものをなぜいわゆる戦争目的に用いるものと言えるか、この点から見てはつきり戦力でないということが言えるのではないかということを私は申し上げたのであります。さような意味において今大橋委員の仰せになりましたように、元来が、保安隊日本の平和と秩序を維持するため、この目的のために設置されております。この目的に必要な程度の装備を持つておるわけでありますが、それ以上のものは持つていませんから、従つて軍事目的もなし、また実質的から見ても、これは戦力にならないものであるということを申し上げたのであります。
  44. 大橋武夫

    大橋(武)委員 ただいまの前半の御答弁で明らかになりました点は、戦力になるか、ならないかということは、結局戦争のために使用するものであるかどうかということが眼目である。従つてどの程度になれば戦力になるか、ならないかというような事柄は、正しくこの問題に取組むという行き方ではないのであつて保安隊なり警備隊なりというものが軍際でないところのその目的性格からいたしまして、現在の段階においては、この程度以上の兵器の必要はない、こういうふうに考えるべきであつて、兵器の程度によつて、軍隊と軍隊でないものを区別すべきでなくして、目的から見て、現在の段階から見た必要性というものによつて、兵器の程度が規定される、こういうふうに理解をいたすべきものではないかと考えるわけでありますが、この点を明確にいたしまして、私の質問を終ります。
  45. 栗山長次郎

    栗山委員長 お諮りをいたします。ただいまの大橋委員の要求に対し、木村国務大臣から回答のありましたように、装備の数量につきましては、秘密会ならば発表できるということでありますが、本委員会の散会直前に秘密会を開きますことに御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 栗山長次郎

    栗山委員長 御異議なしと認めて、さようにとりはからいます。
  47. 安東義良

    ○安東委員 関連して。先ほどの保安庁次長の御答弁のうちに、陸上の装備に関しては、保管の責任米軍の将校にある、そうしてこれは現在顧問の形においてそれがやつておるというお話でありましたが、これははなはだ遺憾なことでありまして、こういう状態が続くならば、世上に流布せられるような、保安隊はアメリカの傭兵だというような意見が起つて来るのも、あながち間違いではないではないかという疑問を起させるものがあるのであります。この点ににつきまして、保安庁として一括して借り受ける形において、保管の責任保安庁がとるようにするように今話合いをしておるというお話でありましたが、これはまことにけつこう、ぜひやらなければならぬことであろうと私は思う。しかしながらこれに関連いたしまして、この協定は行政上のとりきめにして国会承認を求める意図はない。その理由として、アメリカの方のアクトにそういうものがないから、ちよつと出来ないのだということが一つと、財政上の負担を伴わないものであるからやる必要はない、こういうお話でありましたが、これはまことに奇怪な言葉であろうと私は思う。これはいやしくも国際的な約定であることは間違いない。一行政官庁がかつてにそれをやるよな筋合いのものではない。と申しますことは、過般保安庁長官に御質問いたしましたが、現在保安隊が重装備をやりつつあるという、そこです。この重装備は一体戦力にならぬのかとお尋ねしたところが、いや、それは戦力にはならない、重装備の程度によつて違うのだというお話でありまして、ここに程度を持ち出されたのであります。してみれば、それが戦力となるか、ならぬかということは、装備の程度による。少くともそれは政府の御見解であります。してみれば、これはその内容いかんによつて憲法に違反するかどうかという問題が起つて来る。そ判断は一体だれがするのか。これは国会がするのがあたりまえだ。さらにまたこの保安隊目的、これはまさに国内における秩序維持、自衛の目的を持つておることは明白でありますが、しかしその目的に逸脱しておるか、逸脱していないかという判定は、これは国会責任をもつてやるべきものであろうと思う。してみれば、その内容がいかなるものかわからないまま、かつてに行政官庁だけでやつてしまという考え方で進まれるということは、私はどうも納得ができないのであります。この点はさらに長官の御答弁を求めます。
  48. 木村篤太郎

    木村国務大臣 安東委員の仰せになつたこと、私はまことにごもつともだと存じます。私の考えといたしましては、いつまでもアメリカから武器は借りたくありません。ぜひとも日本国日本国として、この保安隊に必要な装備をさせるということは当然なことであります。ところが遺憾ながら今実質において銃もつくれないのです。機関銃もつくれないのです。財政的の方面も大きく原因しておりますが、事実においてできません。やむを得ず米軍との間にこういうとりきめをして借りておりますが、私はまことに遺憾と思います。一日も早く国会においてそういう点についての御鞭撻を願いたい、私はそう考えます。これは私の率直な意見であります。こういうようにいつまでも借りているから、米軍の傭兵であるとかなんとか言われるのであります。これは安東委員の仰せになつたことに全幅の賛意を表します。私は各位にその点特に御留意をお願いしたいと思います。そこでこのとりきめの問題につきましても、私も何とかしていろいろな方法があるのではないかと考えておるのであります。今次長の言われたのは便宜上の問題であります。これもさらに私はよく検討いたしまして、十分の処置をとつて皆さんにおはかりいたしたいと考えております。
  49. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 大体主要な点は安東委員からお聞きになりましたが、もう一つそれに関連して、いずれ逐条審議に入り、もしくは入る前に、第六条の点についてお尋ねしたいという予定ではおりましてけれども、今たまたまその意見が出ましたから、関連質問としてお尋ねするのですが、今次長お答えによりますと、陸上の保安隊の兵器の貸借については、かつて保安庁で一括して貸借の協定を結ぼう、しかもそれは国会承認を要しないつもりだというのは、ちようど行政協定国会承認なしで、事実上の条約を、まつた国民意思を無視してやつた前の吉田内閣の方針をそのまま踏襲されるものとして、私どもははなはだ遺憾に思いまして、そういうことについては反対でありますが、それとはしばらく別にして、今本協定国会承認を求めるために国会に提出されたのは、損害賠償等の財政上の負担を伴うから国会承認を求めるのだ、こういうことを言われたのですけれども、そうしますと、第六条の損害賠償の規定は非常に抽象的なものであるから、われわれはこれは必ずしもそのまま法律的にすぐ財政法に違反するとは思わないが、少くともその精神においては財政法の精神に反する。財政法は具体的に金額の明示等があつて国家が財政上の負担をする場合の承認事項になつて、おりますから、これは抽象的な問題であるけれども、あらかじめ将来財政上の負担をしなければならぬ、こういうことが予想されるとすれば、当然これは財政法の上からも検討してみなければならぬと思うのですが、この点についてはどういうようにお考えになつておりますか。
  50. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私からお答え申し上げます。ただいま御指摘の第六条は仰せの通りでございますけれども、財政法上の建前から申しますと、必ずしもそれが具体的に確定いたしておりませんでも、国庫債務負担行為ということに当りますので、この措置をとつたわけでございます。
  51. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 この第六条の解釈は、一応こういう協定上の文書はでき上つておるが、事実上は先般来しばしば長官も言われる通り、非常に古い老朽船で、ある人はこれを原始的な船だ、こう言つてつたくらいですから、当然これは将来自然消滅になつてしまうものである。従つてその財政上の負担は負わないのが建前だ、こういうように法の精神の解釈をしていいと思うのですが、あくまでもその形式上のこういう規定従つて将来損害賠償の負担をする予定ですかどうですか。
  52. 木村篤太郎

    木村国務大臣 この第六条に「船舶が滅失したか、又は本条に従つて全損であると宣言された場合には、船舶借受者は、そのため、各損失に対して公正且つ妥当な賠償であると船舶借受者及び船舶所有者が合意した額及び条件で、船舶所有者に補償することに同意する。こう書いてある。そこで今加藤さんの仰せのように、これは滅失した場合にどうなるか。このときに、今ただちにこれは問題になるのでありますが、どちらの過失でもない不可抗力の場合、これが一番問題であろうと思う。それは当然この船について来た一つの事故とわれわれは考えております。それでこの条文が大いに生きて来るのでありまして、アメリカ側においては、そういう場合にはノミナルの、ほんの形式的の何でいいではないかという考えは持つておるようでありますが、実質的にはそんな場合には、ほとんど賠償の問題は起らぬのではないか。かりに起りましても、ここにあげてありますように、公正妥当な額であつて、しかもその条件も双方合意でやるということになつておりますから、具体的の場合においては今申し上げましたように、ほとんど問題にならないのではないかと私は考えております。
  53. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 その点はそうだと思うのです。ただ第六条については原型で返す——いろいろそういう点はまだ聞かなければならないと思いますが、今、私の関連質問として聞いているのは、増原さんが、損害賠償が予想されるからこれは国会に出したけれども、陸上の保安隊の兵器の貸借は、別に損害賠償の問題が起らぬから国会にはかけないのだ、こういうことを言われた。これは重大な発言だと思う。今、安東さんが言われたように、ただ単に損害賠償云々という形式上の問題でなくて、借り受けた兵器が、実際において軍事力としてどの程度のものであるか。それをただ単に小さいからかまわない、大きいから問題になるというのではなくて、われわれは小さい大きいにかかわらず、実質上それが軍事力であるかどうか、こういうことをきめなければならぬ。それはやはりさつき安東さんが言われるように、当然国会が最後の決定をすべきだ。それをかつてに一行政官庁が外国とそういう兵器の貸借を取引することはけしからぬ。そういうことをどう思われるか。
  54. 増原惠吉

    増原政府委員 私がさつき申し上げたことは、少し言葉が足りなかつたかもしれませんが、財政負担がないから、いわゆるとりきめでやろう。条約の方は財政負担があるから条約なつたという言い方をしたわけではないのであります。もう一ぺん言い直しをしますと、陸の方の、一応今行政機関の方のとりきめで行こうという形で話合いをしておるのは、一つには財政負担がないという問題もあり、また他の面から考えると、相手側もこれをアクトをつくつてやるというふうな形を希望しないで、行政機関同士のとりきめでやりたいという意向もあるので、そうしたことを考え合せて行こう。その反対解釈としての財政負担がないからだというふうに申し上げた趣旨ではございません。その点は御了承を願います。
  55. 栗山長次郎

    栗山委員長 委員長から一言お尋ねをいたします。保安隊による米国の装備借用は、行政協定範囲内のものでありますかどうか、その点をお尋ねいたします。
  56. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 政治的の考慮というものを全然はずしまして、純粋の法律だけの立場からのことを、お気に沿わないかもしれませんが、一応申し上げます。法律一点張りで申しますと、安東委員あたりは十分御承知と思いますけれども、事柄自体は調達行為でございます。従いまして相手方が国であろうと、あるいは商社であろうと、その調達行為である点においては、実質は同じことだと考えております。従いまして、その関連においては、一般調達行為と同様に、私的契約の性質を持つものであろうと思つております。たとえば、アメリカに日本の大使館を置きます場合に、その大使館の敷地として、アメリカの国有地を無償で借りるという場合があるわけであります。小さい問題としては同種のものがたくさんあると存じますが、そういう場合においては一々条約の形式をとることなしに、私的の借入れ契約いわゆる調達契約の形でくるのが建前になつております。事柄はさようなことであろうと思います。ただその場合に、財政法上国会の御承認を得なければならないような事柄がその中に入つて参りますと、これはそうはいかない。従つてその場合に、そのことだけを取出して国会に御承認を得ますか、あるいは条約の形を借りて国会の御承認を得ますか、これは両方やり方があるわけであります。純粋の法律論からいたしますとさようなものであつてあとは政治論の問題になるわけだろうと思います。政治論については私は申し述べるつもりはございませんけれども国会の国政調査権というような行政的監視権の御発動というものは常にあるわけでございますから、政治論の方もその方の活用等において十分目的は達し得ると思いますけれども、そのあとの方は別といたしまして、純粋の法律論だけを一応申し上げれば、さようなことになると思います。
  57. 栗山長次郎

    栗山委員長 松本瀧藏君。
  58. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 先般留保しておりました点を二、三簡単に質問したいと思います。  第一点は、これは決してあげ足とりの質問ではないのでありますが、長官が閣議に行かれる前に、しきりにヴエツセルという言葉を使われましたので、後ほど増原次長にこの問題をお尋ねいたしました。それでやはりはつきりしなかつたのでありますが、ヴエッセルであるから船舶であるということであつたのでありますが、再質問のときにウオー・ヴエツセル、マーチヤント・ジエツセルとがある。従つて船舶はマーチヤント・ヴエツセルではないかと質問したのでありますが、この間参りまして見まして、確かにこれはウオー・ヴエツセルであるが、使用目的によつて違うという法理論が成立しますので、私はこれはさておきます。しかしアームド・ヴエツセルであることに違いないと思います。アームド・ヴエツセルはやはり船舶でありますか。
  59. 木村篤太郎

    木村国務大臣 松本さんの言われる通りであります。ヴエツセルのうちには、マーチヤント・ヴエツセルもウオー・ヴエツセルもあると考えております。
  60. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 今、決してあげ足をとつているのではないですが、アームド・ヴエツセルもやはり船舶なのでしようか。大砲その他積んでおりましたので、確かにこれはアームド・ヴエツセルと思いますが……。
  61. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ヴエツセルという概念は広いものであつて、双方入ると私は考えております。
  62. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 そうしますと、いろいろと長官国民に対して与えられた印象では、日本船舶の中には、軍艦もやはりそのカテゴリーの中に入るわけですか。
  63. 木村篤太郎

    木村国務大臣 日本語に訳すと、船舶軍艦とに観念が違うのではないかと考えております。アメリカのヴエツセルのうちには、今言うアームド・ヴエツセルもマーチヤント・ヴエツセルもあるようであります。日本で船というと、普通の観念では軍艦ちよつと違うのではないか、私はこう考えております。しかし法律的その他のことについて、これをどう定義するか、私はちよつと不明であります。私の考えでは、日本人が普通に船舶という場合と軍艦という場合とは、おのずから概念が違うのではないかと考えております。
  64. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 決して私は中学校の討論みたいなことをやろうとは思わないのですが、研究がお足りにならなかつたのかどうかわかりませんが、ヴエツセルという意味についてちよつとぼかしておられたので、これでは国民にとつて非常に不明瞭な点があろうと思いますので、やはりはりきりされた方がいいと思うのです。  第二の点は、この間長官に私質問いたしましたときに、高射砲とか戦車は、国会承認を得ることなくして借り受けている。しかるにどうしてフリゲートだけは国会承認を得なければいけないのかという問いに対しまして、長官は現地の軍から借りたのでないからという答弁をされました。この間見学に参りましたときに、意外なことで——不勉強であつたので私知らなかつたのですが、日本の水域に五十艘、ちやんとつないである。しかもこれは数年前から横須賀にあるということを聞かされたのであります。これはおそらく不用意にそう言われたのだろうと思いますが、もしそうであつたならば、ひとつ御訂正並びに説明をしていただきたいと思います。
  65. 木村篤太郎

    木村国務大臣 この五十隻がLSですね。五十隻つないであるというのば……。
  66. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 私横須賀で聞きましたことは、相当権威ある筋から聞きました。名前はちよつと申し上げるわけには行きませんけれども、権威ある筋から聞きました。
  67. 木村篤太郎

    木村国務大臣 小さい方ですね。
  68. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 何か知りませんが、全部こちらに来ているのですかと聞きましたら、来ておる。暴風等によつて破損されるといけないから、早く日本で引取つていただきたいという説明であつたのですが、間違いでありましたでしようか。
  69. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私はあのときに参りませんでしたが、五十隻つないであることは私は見ました。LSの小さい方は前からつないであるようであります。まだ日本で使用もできませんから、アメリカの方でそれはつないであるようであります。
  70. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 すでに現地の、日本の水域にある船なのです。ですからこの前長官が高射砲とかあるいは戦車は現地の軍から譲り受けているから、これは国会にかける必要はない、しかし片方はまだ日本に来てないからという意味答弁をされたと思うのですが……。
  71. 木村篤太郎

    木村国務大臣 それでは私は取消します。あの五十隻は前からつないであることは事実であります。
  72. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 それでもう一点だけ、この問題に関してちよつとはつきりしておきたいと思うのですが、先ほど安東さんからも、加藤さんからも質問がありまして、ただこれは財政の問題に関連するから、国会にはかるということを言つておられましたが、私どもの聞き及ぶところによりますと、高射砲、戦車その他の武器に関しましては、あの古い型のフリゲート、LSですか、支援艇あたりよりも、量においても性能においても、もつと高慶のものがたくさん借り受けられている。そこで片方を国会にかけ、量においても、もつと高度のものを国会にかけないというのは、どうもやはり国民が納得しないと思うのです。本質的にもつと大きな点があるのではないかと思うのですが、もう一度この点に関してわかるように御説明願いたいと思います。
  73. 増原惠吉

    増原政府委員 交渉の経過を先ほど申し上げましたが、事実はそういうふうなことで今少しずつ進みつつありますが、先ほど長官からそのことについてさらに研究し適当に考えるというお答えを申し上げたわけであります。現在までは事実上の使用というような形で各種使つておることは事実であります。そして今のところこれは貸方の方の希望、やり方等も参酌をしまして、先ほど申し上げたようなことを一応考えて話合いを進めているという事実を申し上げたわけであります。
  74. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 先ほどの増原次長の説明のときに、向うに監督権があつて、使用だという言葉を使つておられましたが、事実上においては貸与だと思うのです。従つてこの点は将来紛糾する可能性がありますから、政府におきましてはよくひとつ御研究なさつて、納得行くような御答弁を願いたいと思います。  最後に先般フリゲート、支援艇を見まして、確かに軍艦としては、これはすでに時代遅れのものである、大して優秀なものではないと思いました。しかしこれはコースト・ガード、いわゆる海岸警備としては相当有能な船として用いられるというふうに考えたわけです。こういつた船を必要とするような事態が、確かにあるのではないかということを一応考えるのであります。従つて海岸警備に際しまして、今日まで行われた不法行為、たとえば密航であるとか、密輸入、あるいは漁船に対する不当拿捕、さらに国籍不明の船等が出没しておるということをちよちよ新聞あたりで見るのでありますが、これにつきまして、ひとつ詳細にわたつて御説明願いたいと思います。
  75. 増原惠吉

    増原政府委員 ただいまの御質問は、所管として、海上保安庁の方で資料をよく持つておりますので、後刻書面なり何なりでお答えをするようにさしていただいたらと考えます。
  76. 栗山長次郎

    栗山委員長 どなたかお見えになりませんか。
  77. 松野清秀

    ○松野説明員 まず密航、密貿易について申しますと、海上保安庁で今年の一月から八月末までに検挙しましたものは、これは大体不法入国と密輸入に関連は持つておりますが、不法入国及び密輸入の検挙しました総件数は六十一件であります。このうち発港地別に見ますと、朝鮮が四十三件、沖繩が十二件、中共が二件、その他四件、またこちらに入つて来ております地域は、この六十一件のうちで四十九件が九州方面、それから二件が山口県、六件が阪神地区、四件が京浜地区、こういうことになつております。  また不法出国及び密輸出について申し上げますと、今年の八月末までの統計によりますと、これは海上保安庁だけでございますが、百九十九件、これもやはり地域別に見ますと、出た地域は大部分がやはり九州地区である。それから目的地もこれは沖縄が一番多くて百十三件、それから次いで朝鮮でありまして五十七件、その他台湾、中共、こういうことになつております。但しこれは先ほど申し上げたように海上保安庁で検挙をいたしたものだけでありまして、その他国警なりあるいは税関において多数検挙されておりますので、実際の数はもつと非常に多い、まあこういうことであります。  なお国籍不明の船の出没状況というお話でありましたが、この点につきましては、事情ははつきりいたしませんが、最近では北海道の北西海岸沖にどうも国籍不明の船がおる、そして陸地と発光信号で連絡をとつておるというような情報が、たしか十月であつたかと思いますが、二件ございました。ですから海上保安庁としましては、その都度巡視船をすぐ出動させまして調査はいたしましたが、確実な根拠は一度もつかんでおりません。しかしさらにさかのぼつて同じような事件が数度ございました。これは全部北海道方面でありますが、今申し上げたように、海上保安庁の巡視船ですぐ出動して調査はしておりますが、遺憾ながらこういうものが出没しておるという確実な根拠はまだつかんでおりません。
  78. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 漁船の拿捕の問題はどうでございますか。
  79. 松野清秀

    ○松野説明員 漁船の拿捕は占領下当時から非常に多かつたのですが、一応経過を申し上げますと、海上保安庁は講和発効前におきましては、巡視船は、御承知だと思いますが、基地から大体百マイルということで行動を制限されておつたのです。ですから特に遭難船があるというような場合には百マイル圏を突破してむろん出ておりましたが、常時の哨戒は基地を中心として百マイルということでありまして、占領下当時は公海においての漁船の直接の保護には当つていなかつたというのが実情であります。しかしむろん講和発効後におきましては、海上保安庁といたしましても、海上における人命財産の保護という立場から、当然漁船の保護ということは考えなければならぬということで、外務省、水産庁、私どもの方ですでに三月ごろから講和発効後における対策につきましても、いろいろ協議をして参りまして、具体的な方法を考えておつたのでありますが、御承知のようにソ連にしましても、韓国にしましても、中共関係におきましても、正常な国交が回復していないというような関係もありまして、いろいろむずかしい事情が介在しておりましたために、結論が出るのが若干遅れまして、五月二十三日の閣議におきまして、一応海上保安庁と水産庁とが協力して最善の措置をとれ、こういうことになりまして、爾来海上保安庁としましても水産庁と協力して、この公海における漁船の操業秩序の維持という面に携わつてつておる次第でありまして、現在海上保安庁といたしましては、北方水域に常時二隻出しております。それから朝鮮方面水域では常時一隻が出ております。それから東支那海には常時二隻、こういうことで水産庁の監視船と協力して漁船の保護に当つておる次第であります。そこで講和発効後発生しました拿捕事件で拿捕された実績を申し上げますと、北海道方面におきましては四十三隻、朝鮮方面で四隻、東支那海方面では十六隻、但しこれは十一月三十日までの実績でありまして、いずれも実際に捕獲されて相手国へひつぱつて行かれた船の隻数であります。
  80. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 最後に一点御質問したいのは、アメリカのコースト・ガードよりか、確かに今度のネーヴアル・パトロール・タイプの哨戒艇、海岸警備に使用する船舶は優秀だと思うのですが、これによつてただいま説明のありましたような、大半の不当の行為を取締まることができましようか、どうでしようか。
  81. 木村篤太郎

    木村国務大臣 なかなか私は容易ではないと考えております。これだけでもつてはたして——やつてみなければわかりませんが、まあさしあたりはいいのではないか。何分にも海岸線が御承知通り八千海里もあります。しかも裏日本の方はどうなつておりますか、今九州方面、北道方面を言われたのですが、山口方面の方もなかなか密輸入が多いのであります。かたがた、これで六十八隻ということになります。この数ではたして足りるかどうかということも私は疑問だと考えております。さしあたりこれでやつて行くという程度であります。
  82. 栗山長次郎

    栗山委員長 植原委員からアイゼンハウアーの朝鮮訪問に関し緊急質問の申し入があります。これを許します。植原悦二郎君。
  83. 植原悦二郎

    ○植原委員 私の質問は、どうかみんな誤解のないように、そうして日本朝鮮との関係をなるべく親善に導くように、日米間にも誤解のないように、日韓両国の間にもなるべく誤解のないように、それらを解いておきたいと思うための質問でありますから、そのことを御承知を願いたいのであります。アイゼンハウアーが選挙中に、自分が当選すれば朝鮮を訪聞して、そうして朝鮮問題を解決する一つの方法にしたいものだ、私は選挙中としては、ずいぶん大胆な声明だと思います。その声明のためにアイゼンハウアーは当選して、この二日に朝鮮を訪問することになつた。アイゼンハウアーのこの選挙中の言葉から、またアイゼンハウアーとトルーマンとの朝鮮問題に対する取扱いが違うだろうというような、いろいろの推測等が行われまして、共和党は何いたせ、なるべく今のアメリカの軍備を節約する、従つて極東においてもでき得る限りは、アメリカすなわち国連の軍隊を少くして、朝鮮の軍隊や、できるかできないかわからないが、できれば日本のものもあるいは台湾のものも、使用したいというような印象を与えたおそれがあると思います。そのために日本の警察予備隊、今の保安隊朝鮮に送り出しはせぬかというような質問もこの国会においてあつた。それは要請されてもできない、してならないこと、これははつきりしておると思います。これはどうあつてもその点は明瞭にしなければいけない。たとい要請されても、現在の憲法のもとで送れないし、日本にはそういう軍備というものはないのだから、これは絶対に出せない、また出してはならぬものであるにもかかわらず、これは外務大臣承知でしようけれども、数日前に李承晩は何を申したかといえば、もしアメリカの政策によつて日本の軍隊が朝鮮に今の状態において派遣されるようなことがあれば、むしろ日本の軍隊は朝鮮の助けになるよりは、あるいは韓国の軍隊は日本の軍隊を敵として戦うかもしれぬから、そんなものは来てもらつては困る、こういうようなことをはつきりと李承晩は声明をしておりますが、これはおそろしく李承晩が日本に対して誤解しておる。こういうことの誤解を考えますときに、私は、どうか今の外務当局において、できるだけ朝鮮との条約を早く結ぶように、いくら手間がかかつても、しなければならぬのじやないか。なぜかならば、日韓両国の官憲間において何らの折衝がない、また民間においても、戦争当時の誤解が存在しておつた、そのままに放任されておる。この間、両国民の感情がかなり疎隔しておる。独立日本が一たび韓国条約締結しようとしたけれども、これは非常にむずかしい複雑なる事情があるために中断された。中断されて、今日までおる。そういうようなことが誤解に誤解を生んでいる。これは李承晩が何と言つても日韓両国より接近しておる国はないのだから、どういう立場にあろうとも、この両国民の感情、関係をよく導くことが、日本の極東における最も重要なる政策の一つと私は思うております。こういう点から考ええましても、李承晩の声明のように、もしアメリカが日本の軍隊を朝鮮に派遣するようなことがあつても、韓国はこれを受け入れないばかりかでなく、あるいは、むしろこれを敵として戦わなければならないというようなことが、たとい、どういう形で現われるにしても、これは、非常に喜ばしくないことだと思います。こういうことのないように、いくらこつちで条約をやつたつて、向うでかつてなことを言えばしかたがないといえば、そういうりくつもありますけれども、それはりくつで、どつちにしても、独立日本が一たび韓国条約を結ぼうとして、そうして途中で行き詰まつたからして、そのまますつぽかしてある。これはいくら失敗しても、次から次へと最善の努力をして、日韓両国の関係をよくするように努めなければならないと思う。これらに対して怠慢とは申しませんが、お忙しくてこういう方面に十分心わたりの行かなんでおることが、あるいはそういう結果になりはせぬか、こういうふうにも考えます。またこれは新聞でかつてにしたといえば、かつてにしたのでありまようが、最初から今度の旅行においてアイゼンハウアーは日本に立ち寄らない。私は、どんなに懇請しても、立ち寄るべきでないと思うし、またアイゼンハウアーが朝鮮に行く使命からいつても、日本に立ち寄るというようなことは、今日のアイゼンハウアーとしてあり得ざることで、どの方面から見ても、外交関係、日米関係、アイゼンハウアーの地位を考えれば、絶対にそういうことはあり得ないことであると思う。それを日本新聞に大きく二回も三回も、アイゼンハウアーが日本に立ち寄れば、総理はそれと会見するだろうと出たのですが、こういうことは、いつも国民を惑わすと思うのです。しかるに、そういうておりながら、今度はアイゼンハウアーは李承晩と立ちがけの最後の瞬間まで握手したり、まことに接返して打解けておる話の状態が写真に出る、新聞に出る、こういうことを見ますときに、大多数の国民は、なぜ日本の状態がこういうふうに置かれるかという考えを私は持つと思う。お役人はどうだか知らないけれども、毎日々々国民に接触しておる代議士の頭にはすぐ浮ぶ。純対にアイゼンハウアーは日本に立ち寄るというようなことはないというふうに出ておればよろしいのに、あたかも政府の方から出ておる情報のごとくに、アイクが寄れば、総理は喜んでこれに会う。それは当然でしようけれども、これは全然り得ざることです。どんなことがあつても、外交上から考えれば、アメリカの今までの大統領がまだ大統領にならない間に、外国に行つて、外国の戦況を見るなどということも前代未聞のことであると思います。こういうことは歴史を知り、外交を知る者なら、あり得ざることだ、あり得ざることが、あるがごとくに新聞に出て、一方は二日もいて、二回も会つて話をする。立ちがけには、いいかつこうでシエーク・ハンドをしておる写真が新聞に出る。一方は取残された感じになるということは、いい感じを与えないと思う。情報機関をつくろうということをしばしば言われておるが、それに反対するとか賛成するとかいう意味で言うわけではないけれども情報機関をつくつて、世界中の短波をとつて日本国民を指導しなければならないという考えを持つておる場合において、アイクが立ち寄れば、総理が会う用意があるというようなことは、政府で出したのではない、新聞がかつてに書いたといえば、それもそうなるかもしらないけれども、やはり火のないところに煙は立たないということと同じで、そういうふうな、国民ほんとうに外交的に日米、日韓の関係において正しくリードして行こうという心の配り方において、どうも足りないのではないかというふうにも考えられますが、日韓両国の関係は現在においても、将来においてもきわめて大切である。この両国民が打解ける立場を外交上どうしてもつくらなければならない。また今日において日本の外交上、日米両国の関係が、私は日本の外交のすべての基点であると思う。そういう立場からいえば、ただ文書や外交上のことでなく、日米両国民の感情に響くことに対しては、最善の注意を払わなければならないと思いますがゆえに、どうかこういう点に非常に深甚な注意、慎重なやり方をしていただきたいと思うて、あえてこの問題を取上げてお尋ねするわけであります。
  84. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ただいまのお話まことにその通りであります。お答えいたしますが、韓国との交渉につきましては、本年の五月に一応中絶したわけでありますが、その後も数回にわたつてこの会談を再開しようと思いまして努力をいたしました。たしか四回やつたと思います。一度は総選挙の最中でありましたが、私は東京にもどりまして、韓国の代表者と話をいたしましたこともあります。しかし相手方の空気がなかなかそういうふうになりませんで、いまだにこういうような無条約関係になつておりますが、これは私が外交演説で申しましたように、早く平常関係に入る必要はもちろんであるのであります。そのために、さらに具体的な提案をいたそうと思つて、今いろいろ考えておりますが、多少国内的な手続もいりまして、外務省だけでというわけに参りません。大蔵省に関係がある部分もあり、あるいは郵政省に関係のある部分もあり、あるいは農林省に関係のある部分もあるというので、今話合いをさらにいたしておりまして、できるだけ早くもう一ぺん話を始めたい、こう思つてつております。  さらに今のアイゼンハウアー元帥のお話でありますが、これは言訳のように聞えて恐縮でありますが、私も質問を受けた際は、新聞等にはアイゼンハウアー元帥に日本に寄らないであろうということは何べんも申しました。しかしながら、これは先方の考え方もありますので、絶対に寄らないと断言する材料もありません。しかしまず寄らないであろうということは繰返し申しおつたのであります。いろいろほかの方にも、私でなく、仮定の質問をして、たとえば寄つた場合には総理は会うであろうかというようなことを聞れると、寄つて総理に会おうといえば、それは会うであろうという返事をやつた場合もあるかと思いますが、これは私でないのでわかりません。しかしお説のように、その経緯はどうあろうとも、国民に与える感じも考えて、十分初めから注意をしなければならないという点は、まことにその通りだと思いますので、今後も十分気をつけるようにいたすつもりであります。
  85. 植原悦二郎

    ○植原委員 もう一言申し上げます。私はもし外交上の折衝をするとすれば、日韓両国の関係を整調するということほど複雑な、むずかしいことはないと思います。フィリピンやインドネシアの賠償問題より何より複雑で、長く日本の領土下におつたし、その間に経済上の利害関係やいろいろ国民の感情もあるし、これほどむずかしいことはないと思う。しかし李承晩はなかなか政治的の発言や政治的の宣伝をする人でありますけれども、これもいくらか欧米の空気を吸い、教育も受けた人間ですから、上手にものを持つて行けば、割合話がしやすいのではないかというように考えますが、ただ外交上のチャンネルばかりでなく、一衣帯水の朝鮮だから、またその国民の間には言語もほとんど今日においては共通になつてもおるしするから、もう少し御努力なさつたらどうかという頭もあるのです。それからどういう情報を外務省ではおとりになつたかしらないが、トルーマンの方面から出て来るどんな情報でも、またアイゼンハウアーの陣営から出て来る情報でも、今度はどんなことがあつたつて日本に立寄らないであろう。行くことも絶体秘密だ、朝鮮のみに限定される、こう言うておつたから、私は国民感情を考えるならば、新聞記者にアイゼンハウアーが寄つたらどうするかということを聞かれたら、そんなことは絶対にないと思う、あるいはあつたときのことだ。こう言う方が国民をミスリードせぬと思うのです。これは考え方だからしかたがないが。私は国民をミスリードせぬには、いくらか国民に、アメリカ人に受けないような印象を与えた方がいいという考えで考えるよりは、絶対にそういうことはあり得ないと思うと言つた方が、私は国民を指導する上においてはいいかと思いますが、これは意見の違いだから、ただ申し上げておきます。
  86. 栗山長次郎

    栗山委員長 ただいまから秘密会を開きます。  委員以外の方及び先ほどの問題に関係のない方は、御退場を願います。  なおこの秘密会は速記をつけませんから、さように御承知を願います。      ————◇—————     〔午後零時六分秘密会に入る〕     〔午後零時三十二分秘密会を終る〕      ————◇—————
  87. 栗山長次郎

    栗山委員長 これで秘密会を終りました。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時三十三分散会