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植原委員 私のすべての演説は、あえて
外務大臣と論議するつもりはないのですけれ
ども、
国連に加盟するときには、お説の
通り軍備はなくてもよろしいでしよう。だけれ
ども、
日本の
国民がそれほどの卑下した
立場に
国際上立つのでありましようか。アジア諸国の間における
日本の地位を
考えます場合に、
日本が
軍備なしに
国際連合に加盟しても、その後
国際連合の要請するところの、また将来要請せらるべき、期待のあるようなものを用意しないで行くというようなことは、これはできないことである。そういうことにひつかかる理由は、先刻来私が始終申す、今の
フリゲートが
軍備か
軍備でないかという問題で、
憲法の問題を引きずられて、
政府がいじめられるところにあると思うのですが、今の
保安庁長官の御
答弁を伺
つてお
つても、
はつきりしたような、
はつきりしないのです。
ポリス・
パワーと
ミリタリー・
パワーを
はつきり区別するのは、
装備の問題ではなく
目的の問題だ。軍艦でも、病人を乗せて運んでいるから病院船だ、軍艦ではない。使用の
目的によ
つて軍隊か
軍隊でないかがきまるのだから、それを
政府で
はつきりして、どんなに
フリゲートをたくさん持
つたつて、
保安隊をたくさん持
つたつて、現在の
日本としては、それは
沿岸の警邏防衛である。そうして
国内における安寧
秩序のための
警察力であると、これを
はつきりする。また
自衛力の問題だ
つてそうです。
自衛力の問題だ
つて、
憲法第九条は積極的な
意味を規定してあるのです。どんな人間だ
つて、自分で守ること、
自衛権のない者はない。たとい独立国でなくても
自衛権のないものはないのだから、そのときにできておるところの
警察力でも思わざる
侵略にあう場合には、これに対して
自衛力を発揮するのは当然だ。その
見解がどうも
政府の
答弁を聞いてお
つても
はつきりしないから、しどろもどろのようにな
つて、
質問に
質問の矢を継がせるような状態になると思う。自衛ということは
はつきり消極的なもの、
憲法第九条に規定してあるのは積極的な、
国際の
紛議を解決するために、
武力あるいは
戦力を用いることは相ならないという規定で、ある
意味からいえば、
侵略を
意味すると
もとれるほどのものである。その区別、
憲法第九条で
はつきり規定しておるのをのみ込んで、そうして
ポリス・
パワーと
ミリタリー・
パワーと区別すれば、私は問題は非常にシンプルで行くのではないかというふうに
考えます。そういう点から
考えれば、私は今、
日本では
憲法に禁ぜられた
軍備を持つことはできないが、現在の
保安隊の程度でも、これを
国連のオブリゲーシヨンを満すためにするならばそれでよろしいと思う。何も
日本に原子爆弾をつくらなければ、大きな軍艦をつくらなければ——そんなもの
はつくりたくてもできやしない。ですから
はつきりそういう
意味に
考えて、私は何としても
日本が独立国として、東洋におけるアジア民族の一番の安定勢力たる
日本であるということを自覚して、
日本の
国民を指導して行こうとすれば、今日はできないけれ
ども、
憲法を改正して、
日本の国力に応じただけの
軍備を持つべきである、こういう
立場をと
つて国民を指導することがよろしいと私は思う。こういうことです。それで、そうでないとおつしやれば、何もそれ以上の意見を言う必要はない。それが責任ある政治家であると思う。
次に私がお尋ねしたいことは、
外務大臣の御
答弁を聞いても、
日本はアジア諸国と最も緊密なる関係、親善関係を持続するのみならず、これを強化して行かなければならない。この政策は、
日本にと
つて根本的な重要な政策であると思います。過去においては残念ながら
日本が独立を保たなか
つたから、独立国でなか
つたから、これらに対してあらゆることをすることはできなか
つたでしよう。しかし独立国と
なつた以上は、私
はつとめて——どうもそこが今の
政府と私
どもの
考えと違うところであるのですが、アジアの諸国が
日本にと
つてきわめて重大なものであり、その親善関係を強化することが必要であるとするならば、私は役人ではいけないと思う。民主
国家として役人の使節を使うなんというようなことは、決して民主
国家に対して信頼を得るゆえんでないと思う。今の衆議院
議員は外交のことに精通しないからとおつしやるかもしれぬが、精通しなければ精通するように
国民を指導しなければならぬ。できるだけこれをアジア諸国に派遣して、そうしてひざを交えてその
国民と相語るようにする手段でもおとられに
なつたかといえば、そういうことをしておられない。それだからして、ただ
政府が声明することは、から念仏ではないかという感じしか持たない。これに対して
外務大臣はこうおつしやるでしよう。そう思うたからして最近フイリピンと至急に賠償問題を解決する用意をして、使節まで派遣するつもりだという、これもなさ
つたことたいへんけつこうだ。遅ればせながらなさ
つたこと、どろぼうを見てなわをなうようなやり方だけれ
ども、これはまあしてけつこうだと思いますが、そればかりではない。これらの点についても一体どういうことをお
考えにな
つておるか。私は親善関係を保つとか、あるいは親善を強化するということは、口頭禅ではいけないと思います。実際に手をつけなければならない。そういうことを
考えても、すぐ問題が起るのは中共などの問題ですが、これは講和
条約を
締結する際に、ダレス・吉田内閣における話合いによ
つて、支那と今日貿易することもできないでしよう。貿易した
つてたくさんの収得があるわけではない。
国民が言うほど、これによ
つて日本の通商貿易が振興するわけでもありますまい。けれ
どもこれらの問題に対しても、私はずいぶん策があると思う、方法があると思う。蒋介石と争
つて戦争しておるときでも、支那という国は物資を送
つたりいろいろすることができるのだから、やはり支那は全部が共産主義のものではないから、支那の民間とも何とか連絡をと
つて、両者が将来できれば支那の共産主義をひつくり返して自由
国家にするくらいの、
日本が東洋十億の民族の指導者として、そのくらいの覇気と計画を立ててもいいではないですか。それは台湾の問題に対しても
考えなければならぬ。
さらにもう
一つ私は
考えなければならないことは、後にまたお尋ねしますけれ
ども、朝鮮の問題も重大な問題だが、今仏領インドシナにおける問題、ヴェトナムにおける問題、ホー・チミンの
侵略の問題、ラオス島における問題、私はある
意味からいえば、ここの一角が共産軍のためにくずされるようなことがありましたならば、
日本の通商貿易のために、
日本の食糧問題のために、私はタイもビルマも、その波及するところは甚大だと思います。今日のフランスの防衛力をも
つてこれを満足するわけにも行かない、これらに対して何か
はつきりとした手を打
つておになるか、打とうとなさるのか、これらに対してもま
つたく手が明いておると思います。アジア十億の民族は、
日本を指導者として望んでおります。
日本はこれをどう導くかということが、
日本の将来の運命の決するところだと思う。どうかそういう点について、
はつきりと物を見て、そうしてアジアの民族に対する計画を立てていただきたい。なお
日本の人口問題あるいは通商貿易の問題、
日本の工業に対して、原料資材を集める点からいうならば、東南アジアはきわめて重大なるところである。
外務大臣御承知でしようが、今年の春早々トルーマンは東南アジアの開発に対しては、
アメリカは相当の資金を投じてもよろしいということを再三再四声明しておる。これが
アメリカの政策だと思う。そのために
外務大臣はフイリピンとの賠償問題を早く片づけるようにするために、今せつかく努力中だとおつしやるかもしれないけれ
ども、そのほかに何の手を打たれたのでありましようか。緒方君が総理
大臣のプライベートな使節か何か知らないけれ
ども、出かけて、このときにもフイリピンには行かない、楽なインドやパキスタンに行
つただけのことである。
日本の相当な代議士、あるいは相当な民間人がフイリピンに行き、あるいはインドネシアに行く——もうすでに貿易があるのですから、そこに行く。こういうことを計画すれば、
向うはあえて拒まないと私は思う。どうしても国と国との理解を深めるには、民間人と民間人とが、ほんとうに接触することがよろしいことであると思うが、これらに対して今日まで何らの手を打たれておらない。こういうことをどうお
考えなさるか。私は人口問題のためにも、原料資材獲得の上からも、
日本の食糧問題を解決する上においても、東南アジアの開発はきわめて重大であると思う。それを思うときに、私が非常な不安と心配にかられるのは今仏印やヴエトナムにおけるホー・チミンの活動その他のことであります。これらに対して
外務大臣はどういうふうに見ていられるか、これらに対してどういう処置をなされようとするか、私はそういうことを伺いたいのであります。