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岡崎国務大臣 ただいまいろいろお示しがありまして、これは
政治的とりきめという言葉は正確かどうかはわかりませんけれ
ども、おつしやる
意味は、私もその
通りだと
考えております。つまりこれは単に
裁判権をこつちにやるとか、あつちにやるとかいうことでなくして、国連側からいえば、できるだけ朝鮮において能率の上る
ような仕組みにいたしたいというし、
日本側としては、国民、全体の国連に対する
協力ということが大きく盛り上る
ような形に持
つて行きたい、こういう
意味では、ただ
裁判権をどうするということでなくして、その結果が国民の熱意が国連
協力の方に向く
ように持
つて行きたいという
考えでや
つておるわけであります。
そこで朝鮮事変につきましては、昨日も
外交演説の中で申し述べました
通り、これの成否は、
日本の利害に直接かつ重大な影響を及ぼすのであります。かりにもしわれわれが
協力を十分にしなか
つたかゆえに、国連の仕事が失敗して、朝鮮が共産主義者の支配下に全部入
つてしま
つたという
ようなこがあ
つた場合には、もうわれわれとしては後悔しても間に合わない
ような、非常に険悪な事態が起るであろうと思いますので、できるだけこれには
協力する、その
意味で
裁判管轄権の問題も、できるだけ相手方の希果をいれる
ようにいたしたいと
考えておるのであります。ただ国民全体の大きな
協力を盛り上げるためには、正しいか正しくないかは別問題としまして、現にこういう
裁判権を先方に渡すということについての反対がかなりありまして、この反対をないかしらにするわけには参らないのであります。これは国民の
考えようでありまして、たとえばある国では、私の聞いた話では、外国の軍隊のメンバーがその国で何か罪を犯して、悪いことをした、そういうときにどうするかということを国民の多くの人の
意見によると、自分の国で悪いことをした人間を自分の国の費用で
裁判し、自分の国の費用で牢屋に入れることくらいばかばかしいことはないから、悪いことをした君の
裁判は、その国の費用で
裁判するがよろしいし、刑罰もその国の費用で行うがよろしい、ただそれを厳重に監督すればいいのだ、こういう
ような
考え方の国もあるそうであります。そういう
ような
考え方の国民が多いときには、またそれによ
つたやり方もありまし
ようけれ
ども、今の
日本の国内の輿論と申しますか、たとえば新聞とか、あるいは国民の各方面の声というものは、必ずしもそんな、ふうにはな
つておりませんので、それをしいてやりますと、国民全体の
協力態勢というのが阻害されるおそれもありますので、その点を苦心しておる
ようなわけであります。いずれにしてもこ、れは
程度の問題でありまして、外国に駐屯する軍隊というものは、ある
程度の特権を認められておることは事実であります。ただその特権なるものがどの
程度にまで行くか。ある
程度までは必ず最小
限度でもある。それはたとえば軍隊として行動する場合の
裁判管轄権あるいはその兵舎内における
事件に対する
裁判管轄権というものはある。これはどの
国際法を見しましても、必ずセンデイング・ステートの
管轄権ということにな
つております。それだけの特権は最小
限度認められておるわけであります。それ以上にどの
程度認めるかという
程度の問題になると思うのであります。その
程度については国民一般の
考え方、これは正しいか正しくないかは、議論は別としまして、国民一般の
考え方、これが
協力態勢をそこなわない
程度のものでなければいけないと
考えて、今話をいろいろいたしておるわけであります。そこで先方でも、何も絶対に自分の方に
裁判管轄権をよこさなければいけないのだとは言
つておらないのであります。つまりアメリカの軍隊と同
程度の待遇を持たなければ、朝鮮戦線でアメリカの軍隊と一緒に戦
つておるのだから、それがこつちに来ると差別待遇ということでは、士気に影響する。だからアメリカと同
程度ならばよろしいのだという主張をいたしておるわけであります。ところがアメリカの軍隊につきましては、御
承知の
ように
行政協定によりまして、一年の間はとにかく試みといいますか、暫定的といいますか、今の
ような
裁判管轄権を認めておるのであります。但しこれは暫定的であるから、北大西洋
条約の軍の地位に関する
協定が批准されればそれにと
つてかわる。批准されなくても一年た
つたらさらに協議するということにな
つておりますが、
従つておそくとも一年後には協議されるのでありますが、その間はアメリカの上院の批准
関係もありまして、今急にこれをかえるということは国難であるという事情がだんだんはつきりして参
つております。そのために
行政協定の方は、今ただちに変更するということはできない。片一方の方は行政協万と同等の
程度、
行政協定の
裁判管轄権が少ければ少くともよろしい、とにかく同
程度のものをしてくれ、こういうことでありますので、調整がなかなか困難にな
つて来ております。しかし御説の
ように、この
協定を結ぶゆえんのものは、国連との
協力ということを推進するのが目的でありますから、いたずらに議論して、お互いの
関係が悪くなる
ようなことは、一番大きな目的を損することになりますので、その点は十分注意しておりまして、昨日も演説で申しました
通り、
意見は合わないけれ
ども、話合いは友好裡に進められております。今後とも国連
協力という態勢を双方でくずさない
ようなところで話を進めて行くことは、私もま
つたく
同感であります。なお先方も今おつしや
つたような自省といいますか、よく監督をし、間違
つた行動をできるだけ少くするということについては、非常に意を用いておりまして、英濠軍の司令官のごときも非常に強い訓示、訓令を出しておりますのみならず、多少の間違いでありましても、かなり厳重な処罰をいたしております。そこでたとえば呉におきましては、一時ずいぶん問題になりましたけれ
ども、最近の情勢は非常に改善して来ております。これも司令官なり将兵なりが非常に注意をして、自粛をしたからと思
つております。こういうふうにな
つて行けば、自然に事実上こういう問題は取上げることが少くなりますので、
解決は楽になると思いますが、不幸にしてまた
東京でこういう
事件が今起
つておりますものですから、またむずかしくはな
つておりますが、米
駐留軍司令官はもちろんのこと、ブリテイツシユ・コンモンウエルスの司令官も自粛自省ということについては、非常に気を配
つておる
ようであります。われわれも常にこの点は指摘しております。結局お説の
ように、友好裡に話がつく場合もあり、つかない場合もありまし
ようが、いずれの場合でも、国連
協力という国民の強い力を盛り上げる
ように、われわれも努力いたしますし、また先方にも、国民の
協力に対する意欲をそこなわない
ような行動をしてもらう
ように、常に申しておりますが、先方はもう言われるまでもなく心得ておりまして、できるだけ努力をいたしておる
ようであります。ただいまはそういう
ような
考え方で進めております。