運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-11-25 第15回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十一月八日       今村 忠助君    谷川  昇君       松本 瀧藏君    加藤 勘十君       田中 稔男君 が理事に当選した。     ――――――――――――― 昭和二十七年十一月二十五日(火曜日)     午後一時三十六分開議  出席委員    委員長 栗山長次郎君    理事 今村 忠助君 理事 谷川  昇君    理事 松本 瀧藏君 理事 加藤 勘十君       池田正之輔君    植原悦二郎君       大橋 武夫君    木村 武雄君       近藤 鶴代君    中山 マサ君       西村 茂生君    馬場 元治君       松田竹千代君    森下 國雄君       安東 義良君    楠山義太郎君       高岡 大輔君    並木 芳雄君       松岡 駒吉君    福田 昌子君       帆足  計君    黒田 寿男君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出参席政府委員         検     事         (刑事局長)  岡原 昌男君         外務政務次官  中村 幸八君  委員外出席者         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 十一月二十四日  委員石井光次郎君辞任につき、その補欠として  大橋武夫君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 十一月二十四日  日本国アメリカ合衆国との間の船舶貸借協定  の締結について承認を求めるの件(条約第一  号) の審査を本委員会に付託された。 同月十二日  武蔵野市に駐留軍宿舎建設反対に関する陳情書  (第  三号)  抑留胞引揚促進並びに戦犯者減刑釈放に  関する陳情書(  第二七号)  アツツ島戦没者遺骨遺留品調査並びに早期還  送に関する陳情書(第  五七号) 同月十四日  下関市に英国領事館再開に関する陳情書  (第一三一  号)  千島列島復帰に関する陳情書  (第一三二号)  歯舞諸島及び色丹島占領解除に関する陳情書  (第一三三号) 同月十九日  抑留胞引揚促進並びに戦犯者減刑釈放に  関する陳情書  (第二〇六号)  抑留同胞完全送還等に関する陳情書  (第二一三号)  鹿児島県大島郡南部二島復帰に関する陳情書  (第二  一四号) 同月二十一日  沼津海上演習場計画撤回に関する陳情書  (第三一八号)  同  (第三一九号)  九十九里浜における駐留軍射撃演習に関する  陳情書  (第三二〇号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  国政調査承認要求に関する件  日本国アメリカ合衆国との間の船舶貸借協定  の締結について承認を求めるの件(条約第一  号)  国際情勢等説明聴取に関する件     ―――――――――――――
  2. 栗山長次郎

    栗山委員長 ただいまから外務委員会を開会いたします  理事会での申合せにより、まず国政調査承認要求の件についてお諮りをいたします。本委員会といたしましては、今国会において衆議院規則第九十四条によりまして、国政調査承認要求書議長提出いたしたいと存じます。調査事項は、まず国際政治及び経済に関する事項、次に国際情勢に関する事項、第三には移民に関する事項といたしまして、調査目的は一、国際政治及び経済の現状並びに動向を調査し、わが国外交と国策の樹立に資する。二、国際情勢の推移を注視し、わが国政治及び経済に及ぼす影響等を検討する。三、わが国の人口問題にかんがみ、移民対策の確立に資する。なお調査の方法は、関係各方面から意見聴取をいたしましたり、資料提出要求したりいたすのでありますが、調査期間は本会期中としまして、ただいまの国政調査承認要求書議長提出いたしたいと存じますが、御異議はございませんか。
  3. 安東義良

    安東委員 ただいまの諸点はしごく同感でありますが、さらにもう一つつけ加えていただきたい。それは行政協定の実施に関する調査であります。
  4. 栗山長次郎

    栗山委員長 ただいま安東君から御提案がございましたが、相なるべくは一応理事会に移して、理事会で協議をいたした上にさせていただきますれば好都合に存じますが……。
  5. 安東義良

    安東委員 異議ありません。
  6. 栗山長次郎

    栗山委員長 それではさようにとりはからわさせていただきます。安東さんの御発言を除いては御異議がないようでございますので、右ようにとりはからわせていただきます。     ―――――――――――――
  7. 栗山長次郎

    栗山委員長 次に岡崎国務大臣及び中村政務次官から発言を求められておりますから、これを許します。岡崎国務大臣
  8. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私、今般二度目の外務大臣を承ることになりました。はなはだ任の重いことを痛感しておるのであります。そこでいろいろの政策につきましては、各党いろいろ御意見がありましようけれども国際問題につきましては、超党派といつては語弊がありましようけれども各党のじき得る限りの御協力をお願いいたしたいと思うのであります。これはひとり日本にとどまらず、各国でも行われておるところであります。そのためには、もちろんその基礎となる国際情勢なり、国際間のいろいろの資料等は、今後とも十分気をつけて御参考に差出しまして、その結果政府の方の足らざるところはもちろん御意見を寄せていただいて、その上で虚心坦懐にいろいろの問題を研究して、日本の行くべき道をきめて行きたいと考えるのでありまして、政府はもちろん十分の努力をいたしますが、今の国際関係日本立場等に顧みますと、外務委員会各位の任務もたいへん重いよう考えます。私としてはでき得る限り、必要の資料等を差上げて、御判断の材料にいたしたいと考えております。どうぞ今後とも従来以上の御協力にくださいまして、私個人というのとはなくして、日本の今後の国際関係を誤りなく導いて行かれるように御支援のほどを切にお願いいたします。
  9. 栗山長次郎

    栗山委員長 続いて中村外務次官発言を許します。
  10. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 私、このたび政務次官を拝命いたしました中村幸八でございます。まことに不敏かつ未熟者でありますが、委員各位の絶大なる御支援、御協力を得まして、大過なきを期したいと存じております。どうぞよろしくお願いいたします。     ―――――――――――――
  11. 栗山長次郎

    栗山委員長 次に日本国アメリカ合衆国との間の船貸借協定締結について承認を求めるの件、これを議題といたします。  政府側からの提案理由説明を求めます。岡崎外務大臣
  12. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいま議題となりました日本国アメリカ合衆国との間の船舶貸借協定締結につきまして、提案理由の御説明をいたします。  政府は本年四月アメリカ合衆国に対しまして、日本国沿岸警備に充てるために、合衆国船舶貸与方要請いたしたのであります。アメリカ合衆国側では、この要請に基きまして必要な立法措置を講じました。その結果東京外務省アメリカ大使館との間に協定締結に関する交渉がずつと進められて来たのでありますが、協定文についてようやく双方の意見の一致を見ましたので、本年の十一月十二日に東京で私とマーフイー。アメリカ大使との間に協定の署名を了したのであります。  この協定に基きましてわが国に引渡される合衆国船舶は、アメリカ合衆国国内法の定めるところによりまして、十八隻を越えないパトロール・フリゲート及び五十隻を越えない上陸支援艇ということになつております。この協定が効力を発生することとなりますと、ただちにこの協定附属書のAに掲げられております七隻のパトロール・フリゲートが引渡されるわけでありますが、残余の船舶につきましても、大体において明年五年ごろまでには、その引渡しを完了し得る予定であります。  ただいま御説明申しました通り船舶を借り入れることは、わが国沿岸警備に寄与することが多いと考えられましたのでこれを要請し、またここにこの協定締結したわけでありますので、これについて御承認を得たいと思うのであります。  何とぞ御審議の上、すみやかに承認せられんことを希望いたします。
  13. 栗山長次郎

    栗山委員長 本件に関する質疑は、審議の都合上、本日の後刻もしくは次会に譲ることといたします。     ―――――――――――――
  14. 栗山長次郎

    栗山委員長 さらに国際情勢等に関する説明聴取の件に移りますが、この件につきましては、別に外務当局から御説明がないようでありますので、ただちに質疑に移ります。後刻犬養法務大臣も御出席になりますので、当面の外交問題についての御質疑があれば好都合と存じます。通告の順序によりまして……。
  15. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 ちよつと議事進行について一言……。それはほかでもありませんが、あとから法務大臣が来て説明したり、またお伺いする場合に、吉田書簡というものが非常に大きな意義を持つて来ると思うのです。だからひとつ吉田書簡というものが何かプリントにでもなつてつたならば、委員に渡してもらいたい。
  16. 栗山長次郎

    栗山委員長 ただいま加藤勘十君から資料提出要請がありましたが、その通りにとりはからわせます。大橋武夫君。
  17. 大橋武夫

    大橋(武)委員 私は当面の外交諸問題につきまして質問を申し上げたいと存じますが、特に今日お尋ねいたしたいと存じます点は、ただいま問題と相なつております日本国国連軍との裁判管轄権に関する折衝の問題、またこれときわめて密接な関係にありますイギリス水兵の問題並びに濠州兵の問題、こうした問題につきまして順を追つてお尋ねをいたしたいと存ずるのでございます。、  イギリス水兵の問題は六月二十九日に発生いたしまして、検察庁におきましては七月二日にこれを起訴し、第一審の判決が八月の五日にあつたのでございますが、これに対しましては被告側から控訴をいたし、十一月五日に控訴判決があつた次第でございます。私どもはこの判決並びに判決後に行われました釈放措置によりまして、この数箇月間にわたつて問題となつておりましたイギリス水兵の問題というものは、すでにまつた解決をいたしたと、かよう考えているのでございますが、この点はいかがでごさいましようか。
  18. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいまの御質問でありますが、これは検事控訴等処置がありませんでございましたから、一応解決はいたしたわけでありますが、まあ執行猶予でありますから、その点はまだその期間は必ずしもまつたく何もなくなつたということには法律的にはならないと思いますが、まずこの際一応解決したと、こう考えております。  なお大橋君に申し上げますが、ただいま私よんどころない急用がありまして、ちよつと席をはずして参らなければならない事情があります。約三十分くらいのうちに用が済んで再びもどつて参りますが、もし私に関連する御質問でありましたならば、これから約三、四十分の間お待ちを願いたいと考えるのであります。委員長にもひとつお許しを得まして、これからちよつと行つて参りましてあとでゆつくり……。
  19. 栗山長次郎

    栗山委員長 岡崎外務大臣申出を了承いたします。
  20. 大橋武夫

    大橋(武)委員 岡崎外務大臣の不在中におきましては、外務政務次官あるいは外務省政府委員の方から適宜お答え願つてけつこうであります。外務省関係はその方からお答えを願います。なお時宜によりましては、法務省の関係につきましては法務大臣からお答えを願いたいと思います。  ただいま私はイギリス水兵事件解決したのではないかということを質問いたしたのでありますが、この解決したかどうかという点は、一つ外交上の問題として解決したかどうかということをお聞きいたしたかつたのであります。その点について外務当局はどういうふうにお考えになつておられましようか。
  21. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 外務当局といたしましては、一応ただいま大臣から説明がありましたように、解決したものと考えております。
  22. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そこで外務当局イギリス水兵事件解決したというふうに考えておられることが明らかとなつたのでありますが、これはいかなる意味解決したと考えられるかということを御説明いただきたいのでございます。すなわち、まず日本側はこの問題につきまして、裁判管轄権を主張しておられました。それがこの事件においては、日本側判決があり、そしてその判決従つて処理されたという意味で、日本側解決したと考えておられるのであるかどうか。またこの問題はイギリスとの間の問題でございますが、イギリス側はいかなる意味において、この問題を解決したと見ておられるか。あるいはイギリスのことは日本側としてはわからないと言われるかもしれませんが、おそらくこの問題については、イギリスは当初からすみやかなる身柄引渡しということを要求いたしておつたのでありまして、この問題が解決したとイギリス側考えるとしたならば、それは終局においてイギリス水兵身柄が引渡されたという結果に満足をして解決をした、こう考えておるのではないかと存ずるのでございます。この問題がイギリス側及び日本側から見まして、いかなる点において解決されたと認むべきであるか、この点についての外務当局の御意向を承らせていただきたいのであります。
  23. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 この問題について、イギリス側がどういうふうに考えておるかということについては、いまだ当局においては承知いたしておりません。
  24. 大橋武夫

    大橋(武)委員 日本側はいかなる意味において解決したと見ておられるのでありますか。
  25. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 先ほども申し上げましたように、外務当局といたしましては一応解決した、またこれが国内法の問題におきましては、法務大臣がおられますので、法務大臣の方からお聞きを願いたいと思います。
  26. 大橋武夫

    大橋(武)委員 同じことをたびたびお伺いして恐縮でございますが、日本側解決した、特に外務省として解決したと見られます理由は、当初この問題について、日本側はあくまでも裁判判管轄権を持つべきである、こういう主張をしておられたわけでありまして、それがこの問題を惹起した根本であつたかと思うのであります。それが解決したという考えを持つておられる理由といたしましては、おそらく日本側裁判が適法に判決せられた、そしてその判決に基いて終局的な措置がとられた、むろんこれは執行猶予裁判でありますから、執行猶予ということはありますが、身柄についても終局的な措置がとられた、この点で満足すべき結果を得たという意味ではないのでございましようか。
  27. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 私の申し上げましたことは、当面の問題としては、一応外交交渉身柄引渡しによつて解決したのでありますが、根本問題である裁判権の管轄問題については、これは今後の国連軍との協定の話合いできまるべき問題でありまして、この点は未解決になつておると考えております。
  28. 大橋武夫

    大橋(武)委員 しからば具体的な問題については、裁判権はいかに処置されて解決したのでありますか。その点についての外務当局の御判断を承りたいと思うのであります。
  29. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 イギリス側からは引渡してもらいたいという申入れがありまして、その意味において一応外交関係解決した、かよう考えております。
  30. 大橋武夫

    大橋(武)委員 私のこの問題について御質問申し上げております点は、このイギリス水兵の問題については、日本側裁判管轄権は当方としては確保できたつもりであるかどうか。むろん今後の多数の問題に適用すべき準則としての一般原則は、これが未解決になつておることは私もまた承知をいたしております。しかしこの一つイギリス水兵の問題について、日本側裁判管轄権は一体どうなつたと外務当局は認めておられるか、これをお伺いいたしたいと思うのであります。あるいは法務大臣から御返事いただいても、どなたでもけつこうでございます。
  31. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えを申し上げます。ある事件につきましては、わが方の裁判管轄権が保持せられたと考えておりますが、根本解決ということには私どもまだ考えておりません。根本解決と申しますのは、結局相手方をして裁判管轄権原則的に常時わが方にあると認めさせて、初めて解決するのでありますが、これは御承知通り折衝中でございまして、従つて根本的には解決していない、こういうふうに考えております。
  32. 大橋武夫

    大橋(武)委員 根本問題の未解決である点はその通りであると思います。そしてまたただいま法務大臣は、この問題については日本管轄権は一応維持せられた、こういうふうにお答えになつたのでありまして、私もそういうことであろうと存ずるわけでございます。ところで、この問題について日本側解決をしておると認める以上は、これについて将来イギリス要求を持ち出す、あるいはまたこれについて何らかの措置をとるということは予想されないと思うのであります。そしてそれは結局において、身柄引渡しという当初らのイギリス側要求が、最後的に満足せられたということによつて、そういうことになつたものと私は認めるものでありますがこの点につとてはいかにお考えでございましようか。
  33. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 イギリス側からどういう要求があるか、ちよつと予想はできないのじやないかと考えます。
  34. 大橋武夫

    大橋(武)委員 この問題はすでに解決をいたしておるのでありますから、イギリス側要求がないということを予想しておられるのであろうと思うのでありまして、今のお答えは少し違うのじやないかと思います。
  35. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 今の御質問趣旨を取違えましたが、向うから要求があるということは予想されない、こういうことでございます。
  36. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そこで予想されないという、その予想されない根拠は、終局的にイギリス要求であつたところの身柄引渡しという結果が実現をいたしておる、そのためにそういう予想を立てられれおるのではないかと存じますが、それはいかなる根拠でそうお考えになつておりますか、その点をお教え願いたいと思います。
  37. 大橋武夫

    大橋(武)委員 この問題はあとまわしにいたしまして、法務大臣にお伺いいたしたいと思いますが、私はこの問題については、おそらくはイギリス側も最終的結果によつてこの事件としては一応満足な状態にある。従つて将来この問題について、重ねて申出をする見込みは現在ないと思うのでありますが、こういう結果に至りました理由といたしましては、これはこの判決が幸にも勢行猶予判決であつたということが、ただ一つ理由考えられるのではないかと思うのであります。もしこれが実刑を科する判決でありましたならば、日本側裁判権を維持し、そうしてその適法なる判決を執行するということによつて、問題を一層紛糾せしめざるを得なかつたであろう、こう思うのでありますが、この執行猶予判決を得るにつきましては、強盗罪について執行猶予判決ということは、おそらくわが国判決例のうちにおきましても、きわめて異例なものであろうと思われるのであります。しかして執行猶予判決を得ましたところの第二審の最終公判におきましては、検事執行猶予を暗示するかのごとき論告をいたしておるのであります。ことに第二審公判において、いわゆる横田証言、すなわち裁判権はこうした事件については日本側にあるというふうに認むべきであるが、しかしながらこうした事件において実刑を科していないということが国際的に普通である、こういう証言横田証人がしておられる。この横田証言論告において援用すらしておられるのでありまして、これは明らかに検事論告自体において、執行猶予判決を希望しておられたということを物語るものと思うのでございます。かよう論告検事がせられました趣旨といたしましては、この問題については、日本側裁判権はあることはあるけれども、しかしこの裁判権を行使するにあたりましては、常に相手国との友好関係考慮して、そうして実刑を差控えることが適当であるというと考慮に基いた論告ではないか、こういうふうに認められるわけであります。この点についての法務大臣のお考えを承りたいと存じます。
  38. 犬養健

    犬養国務大臣 この事件は、私の就任前でありまして、あまり詳しく存じておりません。就任後報告を受けた程度でございますが、根本は今おつしやる通りであろうと思います。わが方に裁判管轄権を確保した上で、その余のことは、国際慣行と友好国との実際上の交わりということをあわせ考えまして、あの処置に出たものと思います。
  39. 大橋武夫

    大橋(武)委員 おそらくこの事件におきまする検事論告、またこれに対しますところの裁判所の裁判というものは、この事件について、いかにすれば具体的妥当な判決を得るかということに努力せられたものと思うのでございまして、強盗罪において執行猶予論告をせられるというその理由は、この国際的な一つ事件に対しまして判決具体的妥当性考える、どういうことが妥当であるか。その基礎といたしまして、国交上の考慮という動機が大きなモテイーフとなつてつたものと思われるわけでございます。しかしながら、これをさらに掘り下げて考えますと、これは一つの例でありますが、しかし、かよう事件においては、かりに日本側裁判権を持つといたしましても、その裁判権に基く判決というものが実刑を科するものであるということは、かえつて国交の上において好ましくない、こういうことを暗に当局も意識をせられて論告をせられ、また裁判官としては判決をしておられるわけでありまするから、従つてこの際における日本側裁判権というものは、純然たる国内事件に対する裁判権と違いまして、多少限られたものである。これはむろん法律的に限られておるとは言えないかもしれませんが、これを行使するにあたりましては、国交上の、国際上の考慮という点から、どうしても制肘を受けざるを得ないところの裁判管轄権であるということは認めざるを得ない。これは論告並びに判決等からもそういうふうな感じがいたすのでございます。この点についての法務大臣のお考えを承らしていただきたいのであります。
  40. 犬養健

    犬養国務大臣 ただいまの大橋さんの御見解は、私その通りだと存じます。もちろん御承知ように、今国際連合におきましても、また欧州連合軍におきましても、世界助け合いということから宗主権統帥権の一部まで制限を受けて、それを国権上けしからぬというようなことの議論だけでは済まない時代に入つておると思います。こういう世界の大勢から考えまして、裁判管轄権に一部の制約というのもおかしいでありますが、多少そこに変化があることは認めるのでありますが、ただその限られ方が問題でありまして、やはり法律というものは―これは大橋さんには釈迦に説法でございますが、結局国民感情からでき上つた形のものが法律でありまして、国民感情にあまり過度にさからつたものは、やはり死物になつて生きたものにならない、その限り方の限度で、私どもケース・バイ・ケースのときに苦心しておるのでございます。原則としては、おつしやる通りだと存じます。
  41. 大橋武夫

    大橋(武)委員 こうした問題が立て続けに起りまして、これにつきまして法務大臣の御苦心のあるところは、まことお察し申し上げる次第でございます。ところで、ただいまも質問に対してお答えいただきましたことく、こういう事件についての裁判管轄権の行使については、少くとも完全に無制限ではない、こうした考え方は、ひとり管轄権というような抽象的な問題ではなくて、この管轄権を具体的に実現すべきところの事件処理訴訟上の一切の手続全体を通じて、やはりそうした傾向を認めざるを得ないものと思うのであります。たとえば訴訟法の規定に従つて起訴するかどうか、また起訴前における身柄処理をどうするか、こういつた問題についても、やはりこれは管轄権が完全に無制限に行使されない以上、その程度に相応した限度というものを考えなければならぬと思うのでありますが、この点はおそらく御同感ではなかろうかと思うのであります。そしてこうした意味において、ただいま御配付いただきましたところの吉田書簡というものが出されたのではないか。すなわち吉田書簡趣旨は、以上述べたよう趣旨で理解すべきものではないかと考えますが、この点についてお考えを承りたいのであります。
  42. 犬養健

    犬養国務大臣 まつたく御意見通りでありまして、吉田書簡は、かりに国内の人を扱う場合は遠慮なくやつてしまうのに、事外国の軍人、軍属、ある場合にはその家族―家族については、私どもにも多少別の意見もございますけれども身柄の保障さえすればなるべく引渡すように努力せよ。そうしてその時間も限つてある。といいますのは、刑事訴訟の普通の道順でなくてよい、友好国との関係上それはよいのだ、こういう精神に基いていると思うのでございます。ただそのある条件というものをわれわれがどのくらいに要求すべきか。これはやはり裁判管轄権という根本問題の確保にも多少関係いたします。その条件には一つの要件が伴いますけれども原則としてはおつしやる通りに私ども考えております。
  43. 大橋武夫

    大橋(武)委員 吉田書簡というものをそうした趣旨で理解をしたいと思うのでございますが、この吉田書簡によりますと、四つの原則がうたつてあるのであります。第一は、軍隊の構成員、軍属、家族に対する裁判権は、国際法規、慣例に従つて行使される。それから第二は、駐留区域外において行われた犯罪について、国際法及び国際慣習の確立した準則について不明確な点がある場合においては、関係国との間の協議によつて事件ごとに決定をしよう、こういうことになつております。この第二にうたつてありますところの、国際法及び国際慣習の確立した準則について不明確の点があるというのは、どういう場合をさしておるのか、この点についての御解釈を承りたいのであります。
  44. 犬養健

    犬養国務大臣 詳しいことは、ここに専門家の政府委員がおりますから、説明いたさせますが、たとえばヨーロツパでは今各国の軍隊が非常に錯綜して駐留しておりまして、法というものは事実に基いてだんだん慣行で変化するものだと思うのでありますが、そう一々属人主義とか属地主義とかいつて議論していたのではめんどうなので、一切派遣国にまかせるというようなことを慣行として行い始めているようであります。しかしイギリス本国ではまたそれと違う場合があるというように、現に国連軍とわが当局との議論なども、そういうことに大分言及して議論が長引いているようなのでありますが、慣行と一概に申しましても、それぞれ違う慣行がいろいろ行われており、またある慣行から次の慣行に移行しつつあるような現象も生じておるが、そういう不明確な場合を予想しまして、これが書かれたものと解釈しております。
  45. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうしますと、駐留区域外において行われた犯罪事件、特に公務以外の場合における犯罪、そういうものについては、一般的に国際法及び国際慣習が確立していない、そうした準則が確立していないという考えのもとに、この文章が書かれたものと理解してよろしゆうございますか。
  46. 犬養健

    犬養国務大臣 さよう解釈しております。
  47. 大橋武夫

    大橋(武)委員 次に書簡の第三におきましては、これらの軍隊の構成員及び軍属並びに家族を逮捕した場合においては、次の四に掲げる場合を除いて相手軍当局原則として身柄を引渡す。それから第四におきましては、特別の重要な事由がある場合には、犯人を拘置しつつその処置について協議をする。そして四十八時間以内に協議決定がない場合においては、犯人を将来再渡しすることを条件として軍当局に引渡す。ういう原則がうたわれておるわけでございます。この第三項、第四項というものを読んでみますと、その趣旨というものは、第一項と照し合せてみまして、裁判権国際の法規、慣例に従つて罪をきめるが、それとは別個に身柄だけはなるべく引渡す。重要な事由のある場合においても四十八時間内に引渡すように努力をする。こういう趣旨を述べたものと思うのでございますが、この点はいかがでございますか。
  48. 犬養健

    犬養国務大臣 大体大橋さんの御質問通り趣旨でできておりますが、ただ私どもといたしましては、この第四の一番最後の行に何々を条件としてその所属国の軍当局に引渡すよう努力するということになつておりまして、努力をいたすのでありますが、こちらが努力をなすに値するような条件、保障が確実にこつちで認められませんと、この努力が片務的なものになりますので、この条件を相当重視しておるということを御了承願いたいと思います。
  49. 大橋武夫

    大橋(武)委員 よくわかりました。そこでこの書簡によりまして、これらの犯人に対します裁判及び執行は、国内法上の一般犯罪と異なる取扱いをするという趣旨は明らかでありますが、これは結局一言をもつていえば、裁判管轄権は認めるが、身柄の取扱いについては、特別の考慮を払いたいという趣旨であると思うのであります。そしてこの書簡を受けて出たものが、いわゆる刑政長官通達、清原通達というものであると考えられるのでありますが、その清原通達とただいまの書簡を比べてみますと、表面上におきましては多少文句の食い違いもあるようでありますが、まず第一に吉田書簡の第三項を受けましたところの清原通達の四項を見ますと、こういう犯人を引渡す場合においては、身柄出頭の確約を得なければならないとあります。この点は吉田書簡にはないところでありますが、しかしただいま法務大臣の御説明によりますと、こちらの努力をなすに値する条件を考えることは当然であるという意味において、かような事柄も一つの条件として付せられたものである。またその趣旨は私も了解できると思うのであります。また書簡は「原則として」ということを三項にいつておりますからして、こういう場合においてのみ原則が適用されるのである、そういう条件が満たされない場合には、この原則が適用されないのである、こういう説明もでき得るかと思うのでございます。  それから次に、書簡の第四項を受けたものは清原通達の第二項と第三項だと思うのでございますが、まず第二項におきましては、この吉田書簡の方は身柄の処分をも含めましてこの取扱いを拘束しながら協議をするということを規定し、協議が四十八時間内にできない場合においては再引渡しを条件として引渡すように努力するということになつておる。それで清原通達の二の方ではこれに反しまして、書き方としましては身柄を引渡すということよりも、むしろ一定の犯罪については身柄を確保することが原則であるというふうに逆の表現をいたしてあるわけであります。おそらくこうした表現によつて規定される事柄というものは、先ほど法務大臣のお述べになりましたところのこちらの努力というものには条件がある、その努力の条件が満たされない場合においては、努力の限界外であつて、努力する必要がないのだというお見込みで、こうした表現がとられておるものであろうと思うのでありまして、この点も一応それでいいと思います。  それから清原通達の第三項は、これはその努力の限界内にある場合を示されたものでありましよう。しかしながら一応表現は違つておるようでありますからして、多少疑問があるのでありますが、しかしいろいろ考えてみれば必ずしもこの限りにおいては齟齬をしたものではないということも言い得ると思うのであります。けれども明らかに趣旨が違つておるのではないかと思われます点は、吉田書簡においては軍人、軍属の家族につきましては、原則的に軍人、軍属と同様の取扱いをするということを通達しておる。しかるに清原通達におきましては、備考の二にこの問題を取上げておるのでありますが、その趣旨は「一般の在留外国人として取扱うべきものである。しこういうことでありますからして、これは明らかに食い違いがあると思われるのであります。私はこの食い違いは、書簡とこれを国内において実施する準則となつておる通達でございますからして、できるだけ調整をして同一原則をはつきりと示すような表現にして行くということが、適当だと思われるのでありますが、この点については政府側の御意見はどういうお考えでありましようか、これを伺いたいのであります。また軍人の場合におきましても、しいてりくつをつければ、前に申し上げましたように矛盾はないというりくつもつかないこともないのでありますが、ただ読んだ感じといたしましては、いかにも清原通達の表現と吉田書簡の表現というものは、違つた感じを読む人に与えるように思われるのでありまして、この点につきましても、やはりできれば、できるだけ表現を調整して、同じような感じを出させるということが好ましいのではないか、こう考えるわけでございます。そこでこの点について調整することが適当であるかどうか、その問題についての御意向を承らせていただきたいのであります。
  50. 犬養健

    犬養国務大臣 大橋さんのお読みになつた率直なお感じがどうも後者の方がどぎつい、そうして片つ方は円満な外交上の引渡しを主にしているに引きかえて、後者は身柄は確保しろというのが重点だという点のように思える。それはごもつともなのでありまして、御承知ように清原通達というものは、吉田書簡が外国に発せられました外交的な文書であるに引きかえまして、部内の内示なのでありまして、これが皆さんのお目に触れるようになるものとは当時予想しません。内輪にくろうとに通達する、こういうような精神のものでありまして、どうしてもそういうニユアンスが違つて来るかと申しますと、結局吉田書簡を、そう言つては非常に失礼でございますが、地方で勤務している世間のあまり広くない私の力の役人が読みますと、四十八時間たてば放してしまうのだ、ゴールはきまつているのだというようなことで、取調べなどに対してもいろいろ動揺してもいけませんので、これはこういう意味である、努力するというのはへ努力に値するような条件ができなければそれはすぐ釈放はできないのだ。あるいは「身柄を拘束する実質的な必要がないと認められるものについては、」というのも、ほんとうにすらすら白状しない犯人を四十八時間たつたならば渡すという意味でもないのだ。いろいろ吉田書簡の法の施行の第一線で毎日扱うについての心得を書いたものでありまして、間違いそうなものを重点で書きましたものでありますから、重点が双方違つているというようなことが、実際率直に申し上げた事情なのでありまして、これを世間に公表する文書に、他日そういう必要があるかないか存じませんけれども、万一する場合は、字句、ニユアンスなどについては十分考えたいと存じております。それから御指摘の点ですが、これはいかにも一見何か矛盾しておるように見えるのでありますが、それは御指摘の軍人、軍属の家族の点でございまして、吉田書簡では「並びに」という文句で、「及び」より少し弱いのでありますが、とにかく同列に扱つているごとき感じが出ております。どうも国際法に基いて私どもが部内で処理する場合は、家族というものは多少事情が違う、そういう意味でこういうふうに書きましたが、しかし実際の身柄の取扱いについては、他の場合で通牒でも口頭でも絶えず注意を与えているのであります。しかしこれは内部の内示の文書でありまして、今申し上げましたように、清原通達とういものを公表するような必要性を帯びた文書にいたす場合には、御注意の点は十分考慮したいと考えております。
  51. 大橋武夫

    大橋(武)委員 次に、最近発生いたしました濠州兵事件について承りたいと思うのであります。この濠州兵事件につきましては、すでに相手国官憲より身柄引渡しの請求が出て来ているようでございますが、政府のこれに対処する態度としては、どういうことをお考えになつておられますか、この点を承りたいのであります。
  52. 犬養健

    犬養国務大臣 御承知よう事件発生しまして四谷署に留置せられまして、相手岡から引渡してくれと言つて来たのでありますが、これは裁判管轄権があるから引渡してくれと言わずに、脱走した、先行的な犯罪があるから、それを洲べたいから引渡してくれというような、言葉は違つたかもしれませんが、そう言つてつたのであります。しかしこちらでは裁判管轄権があるという基礎のもとに、かつそう言つて来ましても、当時は事件の犯罪の真相を把握しておりませんので、そうこういたしますうちにだんだん時間がたちますし、また刑事訴訟などにイギリスあるいは濠州と日本との間に相違がありまして、犯人が必要以上にかたくなつてしまつている点などもありまして、なかなか言わない、一々通訳がつくというふうで、そのうち規定の時間が過ぎまして、本日午前九時四十五分勾留を請求したわけであります。今のところは真相がまだわかつておりませんし、陳述も十分でありませんし、かつ当然裁判権はこちらにあるという基礎のもとに取調べを行つている次第であります。なおまた御質問がありましたらさようなことをお答えいたしたいと思います。
  53. 大橋武夫

    大橋(武)委員 これはおそらく吉田書簡並びに清原通達を基礎として、政府としても処理されるおつもりではないかと思いますが、それはいかがでしようか。
  54. 犬養健

    犬養国務大臣 仰せの通りでございます。
  55. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると、吉田書簡におきましては、吉川書簡のどの項目によつて処理される見込みでありますか、また清原通達もいろいろ項目がございますが、どの項目によつて処理されることになるお見込みでございましようか、これは政府委員からお答えを願いたいと思います。
  56. 犬養健

    犬養国務大臣 吉田出簡は4というところでございます。「特別の重要な事由がある場合には、日本国当局は、犯人を拘置しつつ、前記の2のような協議を直ちに行う。このような協議により四十八時間以内に決定が行われない場合には、犯人を、将来日本国当局に引き渡すべきことを条件とし、その所属国の軍当局に引き渡すように努力する。」これが私ども処置している基礎になるわけであります。もう一つは清原通達でありますが、この吉田書簡の4の「特別重要な事由」というのは何かということになりますと、清原通達の第二のうちの(1)というところになるのでありまして、「殺人、放火、傷害致死、強盗又は強姦の罪にあたる事件」こういうふうに解釈いたしているのでございます。
  57. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そこで当局としては、身柄を確保しつつ、協議によつて犯人の引渡しに努力をされるという御方針であるということはわかつたわけでございます。そうなりますと、かつてイギリス水兵事件、これは起訴になつておるのでありますが、これと今回の事件ちが、いろいろそうでないという説明もされるかもしれませんが、結果的にはかなり取扱いとしては、違つた結果になるということが予想されるのではないかと存じますが、この点についてはいかにお考えになりましようか。
  58. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。申し上げましたように神戸事件は私の就任前で今度の事件ほど日々朝夕詳しく報告を受けておりませんので、あまり責任のある答弁はいたしかねるかと存じますが、どうも若干趣が違つておるように認定しております。
  59. 大橋武夫

    大橋(武)委員 ほとんど同じよう事件でありながら、この取扱いの結果が違つておる、そうすればどちらかの取扱いはこれはよかつた、これと違つておる取扱いは悪かつたということに考えなければならぬと思うのであります。あるいは一応の御説朗としては、事件そのものの内容に多少の違いがある、だから違つた結果が現われるのは当然だという説明も、一応はなさるかもしれませんし、また法務省の政府委員をなさつておいでになりますならば、そのくらいの説明ができないようでは勤まるはずはございません。しかしながら、おそらくこの問題については、結論的には結果として取扱いは両者大分趣が違つた結果になるということが、予想されるのじやないかと思うのであります。今この問題につきまして、私はどつちの結果がよかつたか、どつちの結果が悪かつたかということをお伺いしようとも存じませんし、またそれについての意見を申し上げようとも思わないのでありますが、たまたまただいま法務大臣お答えのうちにありました、前回の事件の場合においては、今回の事件と違つて、捜査の過程において刻々その情勢が明らかになるということができなかつたという点を言つておられました。この点は私は非常に重大な問題であると思うのでございます。すなわち、こういつた問題はむろん一つの刑事事件ではありますが、同時に国際的な問題であり、そういう意味におきまして、政府としても国民としても、重大な関心を持つ事件なのでございますから、これらの事件処理につきましては、確認された一定の手続の型というものがきまり、それによつて類型的に処理される場合はともかくとして、今日のよう事件ごとに処理して行こうというのが原則だという場合におきましては、この種の事件は捜査の個々の手続なり個々の段階ごとに絶えず中央に詳細に内容が報告せられ、中央においては法務省、外務省、その他閣議なり政府関係ある責任機関の十分緊密なる連絡のもとに、処理されて行くべき性質のものではなかろうか、こういうふうに考えるわけなのであります。従いまして、こうした事件を出先の検察当局において処理される場合においては、常に最高検の指揮を仰ぎ、最高検においては法務省を通じて法務大臣の指揮を仰ぐ、また法務大臣におかれましては必要の場合には外務大臣と協議する、あるいは閣議で相談される、そういう手続を経てこの問題を処理して行くようにいたして行きたいということが、現在の段階におきまして、無用なる国際紛争を避ける手段ではなかろうかと考えるわけでございます。こうした見地におきまして、今後この種の事件につきまして、ある種の確定した準則ができ上るまでの間、法務省としては出先機関でただちに起訴を行うというようなことなく、この起訴について行政的な統制を行うという方法が、必要であるというふうなお考えはございませんか、この点を承りたいのであります。
  60. 犬養健

    犬養国務大臣 まことにお考えごもつともでありまして、先ほど多少趣が違うと申しましたのも、御指摘の点でありまして、二度と繰返さずに済む日本語と英語の解釈の間違いなどがありまして、中央の知らないうちに地方でもつてとんだ行き違いが起つておる、今度は相手国もそれを非常に気をつけております。こちらも気をつけておりまして、そういう誤解がなく事柄が済んでおります点において、若干事情の違いがあると申し上げたのであります。しかしこういうことは二度と繰返してはなりませんし、ことに今仰せになりましたように、準則がまだきまらないうちは、一つ一つケースというものの扱い方が、後々これが準則をつくる素因になるのでございますから、十分気をつけておりまして、地方限りにおいて独断的なことが行われないように、就任後も特に厳重に通達しております。さよう御了承願いたいと思います。
  61. 大橋武夫

    大橋(武)委員 ほかの方がおありでございましたら、どうぞ……。
  62. 栗山長次郎

    栗山委員長 お諮りをいたしますが、岡崎外務大臣が間もなく出席する時間ではありますけれども審議の都合上、犬養法務大臣に対する質問をとりまとめて行いたいと存じますので、犬養法務大臣に対する御質問のあられます方は、すでに通告された順によつてこれを許します。並木君。
  63. 並木芳雄

    ○並木委員 ただいまの大橋委員となるべくダブらないよう質問したいと思います。案件は大体同じものでございます。さつき今度の英濠兵事件吉田書簡の第四によつて処理されているというお答えでございましたが、前の英水兵事件吉田書簡に当てはめれば、今日どの項で処理されたとお考えになりますか。
  64. 犬養健

    犬養国務大臣 それは私の就任前のことですからあまりこまかいことですから刑事局長からお答えいたさせます。
  65. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 ただいまお尋ねの点でございますが、やはり吉田書簡の第四項目によるわけでございます。
  66. 並木芳雄

    ○並木委員 四項目ならば、「前記の2のような協議を直ちに行う。」ということが書いてあるのですから、前記の二のような協議をただちに行つてつたならば、ああいう問題は起らなかつたと思うのですけれども、その協議をやつたのかどうか。
  67. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 あの事件が起きましたのが、たしか六月の二十九日だつたと思います。ただちに逮捕せられまして、現地の英国の憲兵みたいなものでございますが、それがそばにおりまして身柄引渡しについての要求をしたそうでありますが、日本側の官憲において先に逮捕しました関係上、そのまま警察においてこれを調べて検察庁に送つた。そして六月の三十日身柄が検察庁に来たはずでございます。当時検察庁といたしましては、この吉田書簡に基く清原通達の線も承知しておりましたので、一応その線で解決することになつたのでございますが、その当時神戸の領事館からその点について初めのうちは大したあいさつがない、それで身柄処置についての話はもう大体済んだものだろうというふうな了解のもとに、こちらの方に請訓をして参つたものでございます。こちらといたしましては、簡単な電報ではございましたが、事案きわめて明瞭である―それから大阪の高検からも似たような電報が参りました。最高検といたしましては、事案きわめて明瞭であり、かつこれが吉田書簡の第一項によりまして、公務執行外の、しかも施設外の犯罪である、国際公法上、憲法にいわゆる確立された国際法規に準拠してやつてよろしいものだ、さような解釈のもとに当時起訴についての事実上の指揮をしたわけでございます。それが七月の二日と思いますが、越えて七月の八日になりまして―たしか記憶に間違いなければ八日でございます、七月の八日になりまして神戸の領事から検察庁に対して、身柄引渡してくれという簡単な英文の文書が初めて来たわけでございます。その当時それからそうした事件発生の報告の来ました直後並びに起訴の前後に、外務省といろいろ打合せをいたしました結果、外務省としても英国の東京の大使館が何にも言つて来ない。それではこれは話は全部現地で済んだのだろうというようなことで、実は私どもといたしましては、全部現地で協議済み、かように了解してとりはからつてつたのでございます。しかるに今申し上げました通り、七月八日に至りまして、簡単ではございますが、水兵の身柄引渡し要求するの光栄を有すという非常に簡単な公文が参つたわけでございます。そこでこれは初めて協議の対象となる、吉田書簡の第四項に基きまして協議がそこから始まつたことになりますが、それからそれではというのでいろいろ身柄引渡しについて努力をいたした。そのような状況でございます。その後身柄裁判所の勾留に付せられております関係上、法律的には保釈の問題になるわけでございます。それでは保釈の条件といたしますとたとえば逃亡しないとか、保釈保証金を幾ら積むとかいうようなことに法律上はなるわけでございますが、何分にもあちら側が保釈というものを申請すること自体が、日本裁判権を認めたことになるのではないか、つまり保釈という書類を日本裁判所に出すということは、向うで裁判権日本にあるということを認めたという前提のもとに出したということになるのではないかという危惧のもとに、それすら手続をしない。こういうような非常に強硬な態度に出たわけでございます。すこぶる事が紛糾いたしまして、解決の運びに至らなかつたわけでございます。そのうち第一審判決がございまして、しかも執行猶予もつかずに実刑が言い渡されたというようなことで、そこから非常に事件が大きくなつた。かような事情でございます。その当初の事情が、今回の場合と相当違つている。かようなことでございます。
  68. 並木芳雄

    ○並木委員 「前記の2のような協議を直ちに行う。」という条項があるにもかかわらず、その協議をただちに行わなかつた責任というものは、日本政府側にあるのでなくして向う側にあるのだ、というように今の御答弁で聞きましたけれども、その通りですか。
  69. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 その点は、先ほどもちよつと申し上げました通り、おそらく過失は両方にあるのじやないかと私どもも率直に認めます。と申しますのは、現地からの電報が割合に簡単なものであり、そしてこれには了承という文字が使つてございます。現地において、これはあとでわかつたのでございますが、先ほど申し上げました通り、事前にこちらの警察官とあちら側の憲兵みたいなものとの間に交渉もございました関係上、さようないきさつを経た後に何らのことなく事態が経過いたしたわけでございますから、さような場合には一応話はついたものと現地の方で認定するのも、あながち無理からぬことであろう。但しそれを早合点したことについて過失があるといえば確かにございます。それから英国の領事館におきましても、そのまま事態を推移させまして中央にも報告しない、従つて英国の大使館もちつとも知つておらないという状況のもとに、七月の八日まで経過したわけでございまして、その点は率直に英両方の側に過失といえば過失みたいなものがあるのじやないか、かように存じております。
  70. 並木芳雄

    ○並木委員 私どもは率直に申しまして、この前の水兵事件の結果というものは、曲りなりにも了承できるのです。ですから今度の場合にもあの通りやれば問題ないと思う。ところが今度は早くも、場合によつては引渡すというようなことにすら伝えられている点が、どうもここのところ急転直下この前の取扱いから見て日本政府は軟化している、こう感ずる。先ほど私は法務委員会を傍聴いたしましたが、犬養大臣も努めて吉田書簡の線に沿つてという表現を用いておられるようでした。今度は吉田書簡の線に沿つてやるというふうに聞えるので、前のは明らかにその線に沿つておらなかつた。どちらかに間違いがある。私どもはこの吉田書簡を出すことそれ自体が一種の隷属外交であつて、それに満足行かない感じを持つておりますけれども、少くとも政府の部内においては、今度は吉田書簡の線に沿うように、間違いを起させないように、戦々きようようとしてやつておるというふうに私に感じた。さればこそ早くも、場合によつては、条件によつて引渡してもいいというようなことが出て来たのですけれども、実際法務大臣としては、この前の失敗に懲りて、今度は失敗をやらないように、早くから少し譲歩してやろう、こんな気持で今度の事件処理しておられるのかどうか、それを伺いたい。
  71. 犬養健

    犬養国務大臣 先ほど法務委員会を傍聴していただきましたのでありますならば、大体私の考え方を御了承と思いますが、吉田書簡の線に沿つて引渡すことに努力するという、この吉田書簡にわれわれはそむくわけに参りません。しかし引渡すには引渡すだけの相当な保証と条件が必要であります。その条件がなまなかであつても、吉田書簡に引渡すと書いてあるから、さつさと、戦々きようようとして引渡すという態度は断じてとつておりません。それはひとつ御了承願いたいと思います。
  72. 並木芳雄

    ○並木委員 ただいま私ちよつと触れましたが、吉田書簡の中で、つまり日本の検察当局では、刑政長官の名前でああいう通達が出るくらいはつきりしておつた。にもかかわら、ず吉田書簡が、しかもマーフイー大使あてにこういう書簡を出さなければならなかつた事情というものはどうなんですか。これは犬養法務大臣御存じであつたらお尋ねしたいと思いますが、あとから岡崎外務大臣にもお聞きしたいのです。なぜこういう書簡を出さなければならなかつたか。ことに政府の今までの当弁では、ちよつと苦しくなりますと、この書簡には必ずしも拘束されないのだというようなことがあつたとすら私は聞いておりますが、そういうような書簡を出さなければならない事情というものをお聞きしたいと思います。
  73. 犬養健

    犬養国務大臣 これは私、平議員のときでありまして、あまり詳しく存じません。従つて万一こういう重大なことで間違つたことを申すのもいけませんから、当時から御就任であつた外務大臣に答弁をしていただきたいと思います。
  74. 並木芳雄

    ○並木委員 吉田書簡によれば、裁判権日本にあるということを必ずしもはつきりうたつておらないのです。しかるに法務大臣岡崎外務大臣も、裁判権日本側にあるということを前提として論議を進めておるのですけれども、この点はこの書簡が非常にあいまいだと思います。先ほど大橋委員質問お答えなつたときも、この二項のところで、軍隊の駐留区域外において行われた犯罪事件については、国際法及び国際慣習が確立しておらないのかという質問に対して、大臣ははつきり、その通りはつきりしておらないのだ、こういうふうに答えられた。そうすると、それでは裁判管轄権がこういつた場合に、日本にあるのだということの根本もくつがえしてしまつたように感じたのですが、これは私の聞き違いであつたかどうか。要するに、私どもはこの吉田書簡というものは非常に弱い、裁判管轄権日本にあるのだということを一本うたつて、そうしてあとを進めておらないというところに遺憾の意を表するのでありますが、御所見を承りたいのであります。
  75. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。吉田書簡の「これらの軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族に対する裁判権は、国際法及び国際慣習の準則に従つて行使される。」国際法によりますと、外国の軍人、軍属といえども、施設以外、公務以外に犯した罪は当方において裁判管轄権がある。これを認めておるものでございます。
  76. 並木芳雄

    ○並木委員 それならばいいです。そこで英国の方はどうなのですか、先ほどの答弁ではどうもはつきりしなかつたのですが、私どもが知りたいのは、英国の方でも日本裁判管轄権があるという原則は、認めておるのですかどうか、それをはつきりお答え願いたいと思います。
  77. 犬養健

    犬養国務大臣 これが今行われております国際連合軍とわが当局との議論の最も重点になつておる点でございます。しかしその議論が解決がつかないから、わが方では裁判管轄権を当分遠慮しておこうというような態度はとつておりません。従つて今度の兵隊事件についても、裁判管轄権ありとの見解のもとにやつておるわけであります。
  78. 並木芳雄

    ○並木委員 ところで、それは国際連合軍に関する協定になるのですが、きようつたロンドンのUPの電報ですか、これにはこういうニユースがございます。英国の下院で、ナツテイング英外務次官が質問に答えた点が書いてある。その一つは、日本政府は、国連軍に米軍と同じ権利を与えよという国連軍側の要求について、再考する旨約束した。第二は、日本政府は、先週一旦右国連軍要求を拒否する旨の覚書を国連軍側に手交したが、その後これを撤回してわれわれの要求を再考する旨を約束した。こういう電報でありますが、実際に日本政府は、国連軍側の要求を拒否するような覚書を出しておるのかどうか。その覚書をまたあとから撤回しておるのかどうか。もしそうだとすれば、どういうわけでこういうことをしておるのか、その辺のことを……。
  79. 犬養健

    犬養国務大臣 私どもはそういうことを聞いておりません。これは外務大臣からお答えを願いたいと思います。
  80. 並木芳雄

    ○並木委員 それではあと外務大臣から……。
  81. 安東義良

    安東委員 ただいまの関連質問でありますが、この吉田書簡に対して、法務省としては、これを国際約束として取扱つておられますか、それともそういう意味合いでなく、内閣総理大臣の行政措置に対する方針を一方的に述べたものにすぎないというふうに考えておられますか、その点を明らかにしていた、たきたいと思います。
  82. 犬養健

    犬養国務大臣 この吉田書簡には、まだ返答というようなものは来ておりませんので、安東さんの言われましたような後者の部類、すなわち一方的な意思表示というふうに解釈いたしております。
  83. 大橋武夫

    大橋(武)委員 ちよつと今の並木君の御質問に対する法務大臣の答弁でありますが、私の伺いましたときのお答えと多少食い違いがあるのでございます。その点は吉田書簡の第一項及び第二項の問題でございますが、ただいまの法務大臣お答えは、第一項において、区域外において行われた犯罪に対しても、日本側国際の法規慣習に従つて裁判権ありということを一項において言つているつもりである、こういうふうにお述べになりました。私の質問に対するお答えといたしては、区域外における犯罪については第二項によるべきものである。それは国際の法規慣習が確立していないと認められるべきものであるから、従つて関係国の当局との御協議によつて事件ごとに決定すべきである、こういうふうにお答えなつた。私はそのお答えを了承いたしたわけであります。ところでほかの事柄に対するいろいろな御答えから推してみますと、前回のイギリスの水兵の問題についても、これはもともと関係国と協議すべき問題である。今回の濠州兵の問題については、もとよりこれは協議すべきものである、こう言つておられるのです。そうしますと、これは区域外において行われました犯罪でありますからして、一項ではなく二項によつて処理されるべきものだ、すなわち二項によつて協議をするのだ、こういうふうにお答えなつた。そのお答えの方が他のお答えとの関係上むしろ正しいのではないか、こういうふうに考えられるわけでございます。この点は先ほど刑事局長の御答弁のうちにも、前回は協議が済んだと言つておられました。協議というのは、一項には協議はございませんので、二項にのみ協議があるわけであります。従つてやはりこの問題については、政府としては、国際の法規慣習が確立していないという前提のもとに、協議を行わるべきものだというふうにお考えになつておるのじやないか、こうも考えられます。その点について明らかにいたしていただきたい。
  84. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。私の言葉が足りなかつたかもしれませんが、並木君の御質問は、吉田書簡というものは、わが方に裁判管轄権ありという根拠が示してない、こういうふうにお述べになりましたので、それは間接ながら国際法に基くというこのことの中に含んでおる、こういう意味で申し上げたのです。あるいは言葉が足りなかつたかと思います。
  85. 大橋武夫

    大橋(武)委員 わかりました。
  86. 栗山長次郎

    栗山委員長 参考に申し上げます。外務省の下田条約局長出席をいたしております。岡崎外務大臣がまだ御出席になりませんが、外務省関係の御質問もある程度までできるかと思います。
  87. 大橋武夫

    大橋(武)委員 外務省条約局長の御出席を得ましたので、お答えをいただきたいと思うのであります。  問題は、ただいま問題となつております裁判管轄権に関する国連協定の問題でございます。現在の国連協定に関連する折衝の中心となつおります問題は、日本側が北大西洋方式を主張し、国連側は日米行政協定同様の属人主義を主張しておるということに結局はなつておるのであります。しかしこの国連側の主張というものは、属人主義そのものを主張するというのではなくして、アメリカに対してと同様均等の待遇を与えてもらいたいということを主張しておる。その結果、現在日本側がアメリカに対して属人主義を認めておるので、それと均等の待遇を与えれば、現在の段階においては、国連軍に対しても属人主義を与えなければならない、そういうわけで、現在の段階においては、この国連側の均等待遇の要求に対して同意ができぬ、こういうことになるのではないかと思いますが、この点はいかがでございますか。
  88. 下田武三

    ○下田説明員 ただいまのお話は多少事実と相違するところがございます。大橋議員のただいまのお話によりますと、英連邦側は必ずしも属人主義を主張するわけではないが、米軍との均等待遇を主張する結果、米軍に属人主義が認められているから、その結果とし出て属人主義を要求することになると、そういうようにおとりになつおられるのじやないかと思いますが、事実は、英連邦側は、たとえば英本国におきましても、在英米軍に対して属人主義の裁判管轄権を認めておる。すなわち米人に対してイギリス本国におきましても専属的裁判権を認めておる。これは第二次大戦以来、一九四二年からそうことを認めておりますが、主要国間において実際に行われて参つた慣例となつておる。従つて日本においても、同じようなことを認めてもらいたいという属人主義の要求は、何も英米同待遇という主張と関係なしに主張しておるわけでございます。また均等待遇ということもその要求の裏づけとして言及しておるわけでございます。
  89. 大橋武夫

    大橋(武)委員 これは十一月十五日の各新聞に出ておるのでありますか、「外務省は十四日午後五時、国連軍協定中刑事裁判権に関し、九月十二日、日本政府国連軍側に提示したいわゆる日本側最終案及びこれに対し去る十二日マーフイー米大使から提示された覚書内容の要旨を発表した」、こうして発表全文が十一月十五日の新聞紙に掲げられておるのであります。この発表によりますと、国連軍の主張を十一月十二日に口頭で述べ、さらにその要旨を記述した大要左のごとき覚書がこちらに提出されている。その第一項には待遇の均等を得ようという点が書いてあるわけでありまして、この覚書の中には属人主義ということはどこにも書いてない、もつぱら待遇の均等ということをうたつてあるような次第でありますが、そうしますと、この覚書に記載された事柄以外になお国連側は、ただいまも申されましたような属人主義という固有の主張を強くしておられるというわけでございますか。
  90. 下田武三

    ○下田説明員 その通りでございます。
  91. 大橋武夫

    大橋(武)委員 この問題はそれでわかりましたが、外務当局のこの問題についてのお考え基礎を伺つてみたい、と思うのでありますが、北大西洋方式というものがアメリカにおいて実現されるということにかりになつた場合、その場合において、もちろん日本側としては同様の均衡の待遇を国連に与えることは、これはもともと外務省の主張が北大西洋方式によつて処置すべきであるというお考えでありますから、そういうことになると思いますが、そうするとイギリス側は、アメリカとの方式が北大西洋協定の方式に切りかわつた場合においても、属人主義でなければいやだという主張である、こう理解してよろしゆうございますか。
  92. 下田武三

    ○下田説明員 NATO協定関係国によつて批准されまして発効いたします場合には、日本とアメリカとの関係について申しますと、日米行政協定の第十七条第一項という規定がございますが、これはNATO協定が発効した際には、日米行政協定の刑事裁判管轄権に関する規定は、もし日本国がそうしろということを言うならば、NATO協定通りに直すという約束をあらかじめアメリカが与えておるわけであります。日英間につきましてはそういう約束は何もないのでございますが、しかしながらNATO協定が発効します場合には、当然英連邦諸国がこの協定をみずからも批准した後のことでございますから、当然一方はNATO協定を自国のために発効しておいて、他方日本に対してNATO協定と違う属人主義の主張を継続するということは、考えられない次第でございます。  それからなお念のため申し上げたいと存ずるのでありますが、英連邦側の属人主義の主張は、何も永久にそうしろというのではございませんで、NATO協定が発効して、各国がこの方式を採用するまでの暫定的のわずかの期間だけ、アメリカ並の待遇を与えてくれ、均等待遇と専属的裁判権を与えてくれ、そういう主張でございます。
  93. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうしますと、NATO協定の方式が日米間ばかりでなく、ある程度普遍的に行われるあかつきにおいては、英国はそれで満足をするということだと思います。そこで外務省のお見込みといたしましては、日米間のこの問題についての協定が、NATO方式に切りかえられる時期についてのお見込みを承りたいのであります。
  94. 下田武三

    ○下田説明員 その点は、日本側といたしまして非常に関心の深い問題でございすし、いろいろ先方にも打診して参つたのでありますが、アメリカ自身、大統領選挙までは全然見通しがつかぬと言つております。しかしながら、いろいろ新聞やアメリカ人の考え方から推測してみますと、アイゼンハウアー元帥はNATO協定ができましたときに、ヨーロツパの最高司令官として存在して、NATOの協力方式というものには最もみずから最も推進して来た人である。従いまして大統領になりましても、ヨーロツパのNATOの協力体制というものの推進には、力を入れるであろうということをアメリカ人も言つておりますし、また外務省調査いたしましたところによりますと、イギリスでもすでにNATO方式を批准した場合にも、国内法上のさしつかえの起らないための立法措置をやつておりますし、フランスはすでに批准しておりますし、カナダも批准を国会が承認したのでありますが、アメリカが批准書を寄託する前に、カナダの批准書を寄託することは差控える。アメリカの批准書寄託の時期を見ておるという態度に出ておりまして、一番問題の御本尊のアメリカが、どういうふうに今後進むかというところに、他の国の態度もかかつておるわけでございますが、アメリカにおきましてはNATO協定の批准法案は、すでに本年の六月に国会に提出されておりまして、前の会期で審議未了になつておるのでございますが、来年の一月下旬に再びセネトがこの審議をいたす予定になつておりますので、政府側の先ほど申しましたようなNATO方式の推進の意思と、国会で新たに構成メンバーになりますのは、民主党はこのNATO協定を調印しましたときの与党でございますし、当時反対党でありました共和党が今度は与党になつておりますわけでありますが、共和党のダレスでありますとか、タフトでありますとか、インターナシヨナリストと申しますか、国際協力に重きを置く有力分子も共和党におりますので、いつというようなことは申し上げられませんが、来年一月下旬からセネトの討議が始りますと、大体日米行政協定予想しております平和条約発効後一年後に、もしNATO協定がまだ発効してなければ、行政協定の刑事裁判管轄権に関する規定の再検討をするという規定もありますが、大体その行政協定が予定しております来年四月二十八日のころになつてみますれば、NATO協定がどうなるかという見通しがつくのではないかと思います。ただ目下のところ、いつという見通しまでは申し上げられません。
  95. 大橋武夫

    大橋(武)委員 お話を承りますと、外務当局としては、明春までにNATO協定が実行されるということについて、かなり期待を持つておられるように思われるのであります。もしその期待が相当根拠があるものであるといたしますならば、現在の国連協定折衝において問題となつております日本側と国連側との意見の対立というものが、この折衝の過程において最終的に一致しない場合があつたといたしましても、期待通りにNATO協定が発効するとすれば、その後の時期においては、双方の希望が一致をする可能性があるということについて、かなりお見込みもあられる、あるいは見込みというまで行かなくても、ある程度の期待を持つておられるというふうに理解してよろしゆうございましようか。
  96. 下田武三

    ○下田説明員 仰せの通りの見通しでけつこうだと存じます。
  97. 大橋武夫

    大橋(武)委員 現在外務当局が御努力中でありまして、現在進行中のこの折衝もきわめて友好裡に進んでおるというふうに聞いておるのでありますが、この交渉の結果でき上るところの協定というものが、こちらの希望通りにできるかどうか、それは話合いでありますから、今から予想はできませんでしようが、かりにこちらの希望通り協定ができなかつたという場合におきましては、さよう協定については、来年と予想されますNATO方式の一般的な発効という時期までの暫定的なものとしてのみ考えられる、そういうふうに外務当局としてもお考えになつておるのではないかと思われるのであります。おそらくこの点は理論上も先ほどの御説明からはそういう結論になると思いますが、この点についてはいかがでございますか。
  98. 下田武三

    ○下田説明員 実はただいまの日米行政協定の刑事裁判権に関する規定も、暫定的規定でございまして、調印の当初から一年後には再検討するということを規定しておりますし、またNATO協定が発効した際は、日本側がその方式を欲するならば、それの通りにするということを規定しておりますので、現在行われておる日米行政協定自体が暫定協定でございます。従いまして今回の交渉がまとまつてでき上りますものも、日米行政協定が暫定協定である意味よりも、もつと強く暫定的なものであるとお考えになることは正しいと存じます。
  99. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そこで伺いたい点は、政府としては、特に外務省としては、かような暫定方式としてさえも、NATO方式以外の方式は考えられないというような態度で、現在の交渉を進めておられるかどうか、おそらくそうした態度ではなく、独立国としての主権の根本が認められるならば、その運用については、できるだけ協力的な態度に出てもよろしいというような建前で、この交渉に臨んでおられるというふうに理解してよろしいかどうか。
  100. 下田武三

    ○下田説明員 仰せの通りでございます。現在までの交渉の段階におきましては、先ほどお読み上げになりました新聞記事に書いてございます、九月十二日のわが方最終案と申しますか、わが方の案より一歩も下つておりません。まだそれ以外の方式について、双方からも下るというようなことの動きは見えません。
  101. 大橋武夫

    大橋(武)委員 この国連協定というものは、平和条約第五条及び吉田・アチソン交換公文でもつてわが国が国連に対する一般的な協力というものを約束いたしております。この国連協力というものは、朝鮮において行動する国連軍日本国内における維持を許し、そしてこの種の国連の行動にできるだけの援助を与えるということが趣旨であつたと思うのでありますが、かように平和条約並びに吉田・アチソン交換公文によつて、独立国としての日本が約束いたしましたところの義務というものは、日本として当然守るべきものであることはもちろんでありまして、そしてこの義務の内容を具体的に協定ようというのが、ただいまの国連協定というふうに考えるべきものと思われるのであります。従つてこの協定を定める折衝にあたりまして、外務当局としてのとるべき態度は、平和条約第五条及び交換公文の趣旨従つて、これを実現するという精神で、政府が行動せられつつあると思つてよろしいと思いますが、この点はいかがでしよう
  102. 下田武三

    ○下田説明員 仰せの通りでございまして、ただいまやつております協定交渉は、平和条約第五条によりまして日本が負いました義務、なかんずく国連憲章第二条の義務外ございますが、国際連合の決定した行動に対して、日本はあらゆる援助を与え、その国際連合の行動に反対する側に、いかなる援助も与えないという義務を負つておりますごとと、もう一つは古田・アチソン交換公文によりまして、日本国内及びその近傍において、朝鮮で戦争をしておる国連軍の支持をなすことを認めるという原則的な誓約をいたしております。この原則約な誓約の細目をきめて参ろうというのが、ただいまやつております協定交渉であります。
  103. 大橋武夫

    大橋(武)委員 この講和条約の第五条、また吉田・アチソン交換公文の精神というものは、今日は自由主義諸国が共通の脅威に対しまして結束を固むべき時期である。国連協力というのは、こういう趣旨で理解すべきものと思われるのであります。そしてまた第二次世界大戦後の自由主義世界におきましては、それ以前の世界と違いまして、独立国相互の間に、軍隊が駐留し合うということが非常に多くなつて来ておるのではないか。これは世界におきまする平和の脅威というものが、それだけ増大をして来ておる。またそれに対する自由諸国の防衛体制というものが、従来の世界と根本的に違つた環境に置かれておるのであつて、もはや今日の世界においては、いかなる独立国といえども、独力で自国の安全を守り得る国はなくなつた。しかして世界平和に対する強大なる脅威というものが急激に襲つて来る。そのためには、戦争が起つた後に、他国が外国へ応援に行くというだけでは、時間的にも間に合わない場合があるので、従つて共同防衛のために、独立国相互間の軍隊の駐屯ということが、決して例外的な事柄ではないというような状態になつて来ておるのであつて、このために今日の自由諸国におきましては、外国軍隊の駐留する場合の裁判権の取扱いにつきましても、各種の条約ができつつあると思うのであります。これらの諸条約、これは内容によつていろいろ違つておりましようが、おそらく外務当局といたしましては、今日一番の問題でございますから、各国の実例を十分御研究になつておられることと存じますが、これらを見ました場合に、これらの条約の内容として規定される事柄が、どういう精神で規定されておるか、それは従来の、あるいは現行の裁判管轄権というものについての、一つ国際上の法規、慣例を具体的に確認し、これを相互間に適用しようというよう趣旨でできておるのであるか、あるいはそうでなくして、現在の国際上の法規、慣例というものと違つた、すなわち、これを制限したり、あるいは拡張したりするところの、一つ政治的なとりきめとして、そういう協定が行われる場合が多いか、どちらが多いか、この点についての外務当局のお見込みを承りたいと思うのであります。
  104. 下田武三

    ○下田説明員 国連側は、軍隊の裁判権に関する国際法の原則はかわりつつあると申しておりますが、私どもの建前といたしましては、国際法は日本側の主張する通りのものである。しかしながら先方の指摘しております、幾多の第二次大戦後の先例を見ますと、ただいまお話のような傾向がございまして、これは要するに、昔の軍隊というものはのんきなものでありまして、鉄砲をかついで歩いて戦争したのが大部分でございます。急を要しなかつたわけでございますが、第二次大戦以後の飛行機、戦車、装甲部隊のように、きようここにいるかと思うと、あしたはどこに行つてしまうかわからぬというような場合、どこか施設外で普通犯罪をしたからといつて、ここでだれがひつぱられた、あそこでだれがひつぱられたというようにひつぱられておつたのでは、とても近代戦の機動部隊はやりきれたものではない、たから戦時中には軍隊に専属的の裁判権を認めてくれ、また受入れ側としても、そんなにちよちよい動く迅速な戦争に従事しておる軍隊の者をつかまえてみたところで、かえつてめんどうくさい、しようがないという、まつたく便宜の問題だと思うのでありまして、治外法権を認めるとかなんとかいうことでなしに、駐留国側と派遣国側とのお互いの便宜で、どこに線を引くかということでありますが、その線の引き万が、多分に派遣国側に多く引かれつつあるというのが事実のように存じます。しかしながら、この第二次大戦以後の事実が、伝統的な国際法の原則をかえるに至つたかいなかという点になりますと、これは私どもような者が断定はいたしかねるのでございますが、わが方としましては、まだかえるに至つていないという立場を堅持して参りたいと思うのでございます。  もう一つ私の申しました考えの証拠となりますのは、なるほど戦争中機動戦でそういう必要が起つたかもしらぬが、今度の戦争後になつて欧米の主要国は一致してNATO方式、つまり従来の国際法に近い方式を採用しておる。それは何よりも従来の国際法が、第二次大戦の経験に基いて、根底から変化を受けたのではないという証拠ではないか、そういう見解も成り立つと存ずるのであります。
  105. 大橋武夫

    大橋(武)委員 ただいまのお答えによりましてよくわかりますことは、この問題の取扱いの態度、またこの問題の解決点のかぎとなるものは、現在の国際の法規、慣例がどうであるかという、そのことたけでは少くともない、それは一つ基礎になる。それからある政治的な考慮によつてそれが変形せしめられて、究極において一つ政治的とりきめとしてきめらるべきものである。そういうふうな性質のものであるということが明らかになつたと思うのでございます。かよう政治的なとりきめにおきまして考慮すべき事柄といたしましては、特に現在の国際情勢、なかんずく日本の場合におきまては、日本を取巻くところの国際情勢というものはどういう状態であるか、また日本が自由主義諸国の共同防衛体制の一環としていかなる地位を与えられ、いかなる責任を負担すべきであるかというような事柄、そしてまた特にこの問題につきましては、現在未解決にあるところの朝鮮事変というものが、日本の安全並びに平和にとつて、いかなる関係を持つか、こうしたことが、この政治的とりきめの内容を決定する政治考慮の重要な背景をなすべきものと思うのでございます。これらの事柄につきまして外務当局とされましては、いかなる認識のもとに折衝をなされておるか、この点を承りたい。つまりこの問題を処理するにあたつて、現在の日本国際的な地位、特に朝鮮事変と日本との関連、こういう問題について、どういう基本的な考え処理されようとしておられるかこれを伺いたいのであります。
  106. 下田武三

    ○下田説明員 私ども事務当局といたしましては、法律論といたしまして、今次の交渉におきまして、米軍は安全保障条約及び行政協定に基いて、日本の安全を守るために駐留している軍隊である、国連軍日本を守るために輪留している軍隊ではない、外国で戦争している軍隊が休養その他でときどき日本に帰るときの待遇をきめようとするものであるという法律的な見地から、非常にその点を指摘しているのでありますが、先方の言い分を簡単に御紹介いたしますと、これはまつた政治論でございます。一口に申しますと、おれたちは日本のために戦つているのだ、共産勢力はすでにスターリンの先代のレーニンのときから、日本を把握する者はアジアを支配するといつているように、日本が目的なんだ、朝鮮が目的ではないのだ、朝鮮は日本にとれば外ぼりの戦いではないか、なるほど内ぼりには今米軍が控えているが、その外ぼりで現に死につつあるのは国連軍なんだ、外ぼりの戦いに疲れて、ちよつと内ぼりの日本に来たときに、身柄を長く拘束されるというようなことは、むしろ内ぼりで安閑としている―安閑という言葉は語弊がございますが、現に戦争していない米軍よりも、そういう身柄の便宜措置は、必要性からいうと、むしろ国連軍の方に重く考えてくれたらいいじやないか。そういうまつた政治論で、内ぼり、外ぼりという比喩は先方は知りませんが、それと同じことを言つて政治論で私どもに食つてかかるわけでございます。この点、私ども事務当局は、政治的の見地からは処理できませんが、政府といたされまして、また国会の御審議にあたりまして、御考慮に値する一つの先方の言い分かと思いまして、御紹介する次第でございます。
  107. 大橋武夫

    大橋(武)委員 私はただいま条約局長から非常に意外なお言葉をいただいたような気持がいたすのであります。先ほどから申しますように、この国連協定というものは、国際法がいかなるものであるか、それを発見するという単なる法律学的の研究の問題にあらずして、現実の日本の安全、世界の平和ということに直接関係するところの、国連軍将兵の国内法上の地位をきめようというところの明らかに政治的な一つのとりきめなのであります。この点は先ほどから条約局長もお認めいただいたことではなかつたかと思います。そこで私はかよう政治的とりきめにおいては、いかなる政治的背景を念頭に置いているか、それが結局において問題を決定するかぎりでございますから、それについてのお考えをお漏らし願いたいと思つたのでありますが、ただいま局長の御答弁では、自分たちは法律的な意見は出しておる、しかしながら政治的な背景については何ら関知しないというようなお話を伺つておる。なるほど局長は公務員でいらつしやいますから、従いまして政治家ではないかもしれない。しかしながらその職務は外務省におきます局長として、政治的な外務大臣という一つの機関を補佐する、これが局長の御使命ではなかろうかと思うのであります。そのためには法律的な点だけについて補佐しろというような規定は外務省の設置法ふは書いてないだろうと思う。局長は条約締結については外務大臣を全般的に補佐する、すなわち法律的な点においてももとより、さらに進んでは政治的な背景等についても、調査研究をし、そうして上司のために助言をする、これが私は外務官僚の使命だと思つておるのであります。法律家という点だけについて補佐されるというのならば、私は局長はおやめになつて法律顧問にでもおなりになつた方がいいのではないか、こう思うのでございますが、これはおそらく大臣から御答弁願う方がいいということをおつしやりたいので、少く何か表現がまずかつたために、私にそういう誤解を与えたのではないかと思うのでございます。それでその点については大臣から承ることにいたしたいと思います。なお爾余の問題は概してそうした問題になりますので、大臣出席まで保留さしていただきます。
  108. 並木芳雄

    ○並木委員 局長、そこで国連との協定は、あくまで日本側裁判権があるということでがんばり通せますか。
  109. 下田武三

    ○下田説明員 日本側裁判権があるということでがんばり通すかという御質問でございますが、日本側にはむろん裁判権がございます。それから先方にも裁判権がございます。その二つの裁判権の行使の限界をどこで引くかということが目下問題であります。
  110. 並木芳雄

    ○並木委員 そこでちよつと杞憂になるのは、先ほど私が引用したきようのロンドンUP電報ですが、これは条約局長は知つておるはずです。英下院でナツナイング外務次官が議員の質問に答えている答弁、日本政府が国連側の要求について再考することを約束した―先週には拒否した覚書を渡したけれども、今度は再考することに約束正した、こういうのが現状ですか。
  111. 下田武三

    ○下田説明員 外務大臣出席のときにいずれ御答弁があろうかと思いますが、私はその席には同席しておりませんが、その報道は事実に非常に違つておりますということだけを申し上げます。
  112. 並木芳雄

    ○並木委員 次官はこのことについては何も知りませんか。
  113. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 関係しておりませんが、局長その他から報告を受けたところによると、大分内容が違つておるように思います。
  114. 並木芳雄

    ○並木委員 違つておるところだけでも、どういうところが違つておるか……
  115. 下田武三

    ○下田説明員 日本があたかも今までの態度からしりぞいて、再考したというような印象を与えておる点が、最も著しい違いだと思います。
  116. 並木芳雄

    ○並木委員 それでは、そういうことはないというわけですね。
  117. 下田武三

    ○下田説明員 双方事務レベルの議論は出尽くしておりますので、大臣と両国の大公使のあれになつたのでございますが、違つた角度からお互いにもつと考え直してみようということになつておると思います。日本例が一方的にしりぞくというようなことは全然ございません。
  118. 栗山長次郎

    栗山委員長 お諮りをいたしますが、わずかの時間でもどることを約束して出ました外務大臣がまだもどつて参りません。今調べてみますと、英濠両大使と会見中であるそうでありますが、秘書官をして確答を求めましたところ、四時までにはその会談を打切つてこちらに参るという返事が参りましたが、いかがいたしましよう。     〔「休憩」と呼ぶ者あり〕
  119. 栗山長次郎

    栗山委員長 それでは約十五分間休憩をいたします。     午後三時四十五分休憩      ――――◇―――――     午後四時十二分開議
  120. 栗山長次郎

    栗山委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  先ほど国政調査承認要求の件につきまして、安東委員から御発議になりましたことは、理事最で相談をいたしまして、調査要綱に追加したいとの申合せをいたしましたが、これを御承認くださることに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  121. 栗山長次郎

    栗山委員長 御異議がないものと認めまして、さようにとりはからいます。     ―――――――――――――
  122. 栗山長次郎

    栗山委員長 それから船舶貸借協定について、今日質疑応答を行うかもしれぬということを冒頭に申しましたけれども、時間の都合上これは次会に譲りまして、ただいまから休憩前に引続く質疑をいたすことにいたします。大橋武夫君。
  123. 大橋武夫

    大橋(武)委員 先ほど外務大臣の他出しておられます間に、条約局長からただいまお取扱いになつております国連協定について、お伺いをいたしたのでありますが、この性格についての御答弁といたしまして、これは協定を通して、駐留軍隊の構成員に対する裁判官轄権についての現行の国際法規、慣例を見出そうというための努力ではなくして、現在の日本に妥当することが適当か、こういう趣旨からした一つ政治的なとりきめであるという御答弁をいただいたわけでございます。この点はおそらく大臣も御同感のことと思うのであります。この政治的とりきめにおきまして考慮すべき事柄は、これは一つ政治的とりきめでありますから、その背後をなすところの政治的な背策すなわち今日の国際情勢、特に日本を取巻くところの国際情勢並びに自由主義諸国の共同防衛体制の一環としての日本の地位なり、あるいはまた現に行われております朝鮮事変に派遣された国連軍というものが問題の根本でありますから、こういう事変と日本とは現在いかなる国際的な関係のもとにあるか。こうした日本を取巻く国際情勢というものが、この政治的とりきめの重要なる問題を決定する一つのかぎとなるわけであります。この点についての御認識につきまして条約局長に伺いましたところ、朝鮮事変は外国に起つた外国のできごとである、こういうふうに法律的に観念しているのでございます。国連軍は、国連軍というものが日本を守るためにあそこで戦つているのだという一つ政治的な主張をしている。この法律的な解釈とこの事変に対する解釈との食い違いというようなものがあるということを言つておられました。この点につきましては、私はやはり日本としての朝鮮事変についての一つ政治的な解釈を持ち、それを基礎として折衝せらるべきものと思うのでありますが、これらの点についての外務大臣の御見解をお漏らしいただきたいと思うのであります。  なお時間の関係上、問題は一点ということになつておりますので、重ねて申し上げておきたいと思うのでございますが、私はこの政治的なとりきめというものは、今日の国際情勢基礎として、日本と国連側諸国との双方が互譲妥協の精神を発揮して、互いに相手の立場を尊重しつつ、お互いに平和を共同に守るものであるという相互意識に基いて交渉を進めますならば、これらの事柄についての見解は、相対立すべきものではなくして、いかなるとりきめをすることが、自由主義世界の共同の結束を固めるに、有益であるかという共通の問題を共同に協力して解決ようという努力と考えられる、またそういう態度で関係国はこの問題を扱つてくれることを希望し、日本側としてもそういう態度で進むべきものと思つているわけございます。すなわちこの折衝を通じて一つ協定が結ばれるにせよ、あるいは不幸にして結はれざるにせよ、日本及び国連の諸国間の協力関係というものを、より力強く生かすという精神に基いて、この折衝は運営されなければならない。また折衝の結果がいかなる結果となるにせよ、それによつて、より力強い協力への飛躍が結果としてつくり上げられることが、望ましいと思つておるわけでございます。おそらくこの点については、大臣も御同感願えることと思うわけでございます。  なおこれに関連いたしましてもう一つ伺いたい点は、この問題は元来国連関係諸国の軍隊の日本におきます構成員の不法行為の処置、特に刑事裁判権に関する不法行為に対する処置、この不法行為というものは人力をもつて予防できるものであります。自然現象ではないのでありまして、関係国の軍隊の指揮者の指導とその訓練によつて、ある程度までは予防できる。事件が最近のようにひんぴんと発生すればこそ、この問題が国内においても、非常に大きな問題となるわけでありますが、これが極力諸国の軍隊において自制され、この問題が実際においてほとんど起らないというようなところまで自制されましたならば、案外この問題も簡単に解決し得るということにもなるわけでありまして、この点については、私は関係諸国におかれまして、管轄権の問題について一定の主張をされると同時にみずからの側におかれまして、将来における不法行為の発生に対して、これを予防するような、十分誠意ある措置を講じていただくこと、並びにこれについてできるだけの補償をしていただくということも要求していいことではないかと思うわけであります。これらについての外務大臣のお考え並びに関係諸国の張をあわせてこの際お聞かせ願いたいと思うわけでございます。要するに、国連軍の諸国が朝鮮において行動をいたしておるということは、世界の平和を愛し、これを守るということでございますが、この点につきましては、われわれ日本国民もまた平和を愛することにおいて、これらの諸国民に劣るものではないのであります。けれどもその平和というものは、力によつて守られるのでありまして、少くとも今日の世界においては、力によつて守られるその国連の活動というものは、平和を愛するところの力の結集でありまして、これをわが国民としても、でき得る限り強化するために協力するということは、これは当然のことであろうと思うのであります。この国連協定につきましては、平和を愛するこの日本国民の熱意をさらに高める方向においてすべての折衝が行われることを、特に外務当局に希望をいたすわけでございます。事主権に関連する問題でございますので、国民の自尊心を刺激すること大でありまして、かような問題につきまして、外務大臣が非常にお骨折をなさつておることは、われわれの深く感謝をいたしておるところであります。願わくはただいま申し上げたよう趣旨で、すみやかなる妥結を得られんことを希望してやまない次第であります。
  124. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいまいろいろお示しがありまして、これは政治的とりきめという言葉は正確かどうかはわかりませんけれども、おつしやる意味は、私もその通りだと考えております。つまりこれは単に裁判権をこつちにやるとか、あつちにやるとかいうことでなくして、国連側からいえば、できるだけ朝鮮において能率の上るような仕組みにいたしたいというし、日本側としては、国民、全体の国連に対する協力ということが大きく盛り上るような形に持つて行きたい、こういう意味では、ただ裁判権をどうするということでなくして、その結果が国民の熱意が国連協力の方に向くように持つて行きたいという考えでやつておるわけであります。  そこで朝鮮事変につきましては、昨日も外交演説の中で申し述べました通り、これの成否は、日本の利害に直接かつ重大な影響を及ぼすのであります。かりにもしわれわれが協力を十分にしなかつたかゆえに、国連の仕事が失敗して、朝鮮が共産主義者の支配下に全部入つてしまつたというようなこがあつた場合には、もうわれわれとしては後悔しても間に合わないような、非常に険悪な事態が起るであろうと思いますので、できるだけこれには協力する、その意味裁判管轄権の問題も、できるだけ相手方の希果をいれるようにいたしたいと考えておるのであります。ただ国民全体の大きな協力を盛り上げるためには、正しいか正しくないかは別問題としまして、現にこういう裁判権を先方に渡すということについての反対がかなりありまして、この反対をないかしらにするわけには参らないのであります。これは国民の考えようでありまして、たとえばある国では、私の聞いた話では、外国の軍隊のメンバーがその国で何か罪を犯して、悪いことをした、そういうときにどうするかということを国民の多くの人の意見によると、自分の国で悪いことをした人間を自分の国の費用で裁判し、自分の国の費用で牢屋に入れることくらいばかばかしいことはないから、悪いことをした君の裁判は、その国の費用で裁判するがよろしいし、刑罰もその国の費用で行うがよろしい、ただそれを厳重に監督すればいいのだ、こういうよう考え方の国もあるそうであります。そういうよう考え方の国民が多いときには、またそれによつたやり方もありましようけれども、今の日本の国内の輿論と申しますか、たとえば新聞とか、あるいは国民の各方面の声というものは、必ずしもそんな、ふうにはなつておりませんので、それをしいてやりますと、国民全体の協力態勢というのが阻害されるおそれもありますので、その点を苦心しておるようなわけであります。いずれにしてもこ、れは程度の問題でありまして、外国に駐屯する軍隊というものは、ある程度の特権を認められておることは事実であります。ただその特権なるものがどの程度にまで行くか。ある程度までは必ず最小限度でもある。それはたとえば軍隊として行動する場合の裁判管轄権あるいはその兵舎内における事件に対する裁判管轄権というものはある。これはどの国際法を見しましても、必ずセンデイング・ステートの管轄権ということになつております。それだけの特権は最小限度認められておるわけであります。それ以上にどの程度認めるかという程度の問題になると思うのであります。その程度については国民一般の考え方、これは正しいか正しくないかは、議論は別としまして、国民一般の考え方、これが協力態勢をそこなわない程度のものでなければいけないと考えて、今話をいろいろいたしておるわけであります。そこで先方でも、何も絶対に自分の方に裁判管轄権をよこさなければいけないのだとは言つておらないのであります。つまりアメリカの軍隊と同程度の待遇を持たなければ、朝鮮戦線でアメリカの軍隊と一緒に戦つておるのだから、それがこつちに来ると差別待遇ということでは、士気に影響する。だからアメリカと同程度ならばよろしいのだという主張をいたしておるわけであります。ところがアメリカの軍隊につきましては、御承知よう行政協定によりまして、一年の間はとにかく試みといいますか、暫定的といいますか、今のよう裁判管轄権を認めておるのであります。但しこれは暫定的であるから、北大西洋条約の軍の地位に関する協定が批准されればそれにとつてかわる。批准されなくても一年たつたらさらに協議するということになつておりますが、従つておそくとも一年後には協議されるのでありますが、その間はアメリカの上院の批准関係もありまして、今急にこれをかえるということは国難であるという事情がだんだんはつきりして参つております。そのために行政協定の方は、今ただちに変更するということはできない。片一方の方は行政協万と同等の程度行政協定裁判管轄権が少ければ少くともよろしい、とにかく同程度のものをしてくれ、こういうことでありますので、調整がなかなか困難になつて来ております。しかし御説のように、この協定を結ぶゆえんのものは、国連との協力ということを推進するのが目的でありますから、いたずらに議論して、お互いの関係が悪くなるようなことは、一番大きな目的を損することになりますので、その点は十分注意しておりまして、昨日も演説で申しました通り意見は合わないけれども、話合いは友好裡に進められております。今後とも国連協力という態勢を双方でくずさないようなところで話を進めて行くことは、私もまつた同感であります。なお先方も今おつしやつたような自省といいますか、よく監督をし、間違つた行動をできるだけ少くするということについては、非常に意を用いておりまして、英濠軍の司令官のごときも非常に強い訓示、訓令を出しておりますのみならず、多少の間違いでありましても、かなり厳重な処罰をいたしております。そこでたとえば呉におきましては、一時ずいぶん問題になりましたけれども、最近の情勢は非常に改善して来ております。これも司令官なり将兵なりが非常に注意をして、自粛をしたからと思つております。こういうふうになつて行けば、自然に事実上こういう問題は取上げることが少くなりますので、解決は楽になると思いますが、不幸にしてまた東京でこういう事件が今起つておりますものですから、またむずかしくはなつておりますが、米駐留軍司令官はもちろんのこと、ブリテイツシユ・コンモンウエルスの司令官も自粛自省ということについては、非常に気を配つておるようであります。われわれも常にこの点は指摘しております。結局お説のように、友好裡に話がつく場合もあり、つかない場合もありましようが、いずれの場合でも、国連協力という国民の強い力を盛り上げるように、われわれも努力いたしますし、また先方にも、国民の協力に対する意欲をそこなわないような行動をしてもらうように、常に申しておりますが、先方はもう言われるまでもなく心得ておりまして、できるだけ努力をいたしておるようであります。ただいまはそういうよう考え方で進めております。
  125. 栗山長次郎

    栗山委員長 並木君。
  126. 並木芳雄

    ○並木委員 そこで大臣にお尋ねしますが、当面の英濠兵の問題で、大臣は先ほど中座をなされたのですが、どういうお話合いでありましたか、その点を御報告願いたいと思います。
  127. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは一々、今会つた人との間の話を、どんどんこの公開の席で申し上げることは、慣例にも反しまし、また礼儀でもないと思いますが、しかしさしつかえないところは、これはできるだけ申し上げるのが筋だと思いますから申し上げますが、きようは非常に細かいようなことはないのでありまして、濠州の大使は、自分が過去において、まだ短かいけれども非常に日濠間の友好関係の増進ということに努力して来た、またその現われもちよちよい見られるようである、ところが濠州の人たちは、日本人たちが、たとえば裁判管轄権について、すぐ不平等条約というような数十年前の、明治時代のあの奮闘ぶりを思い出すように、濠州の人たちは、濠州兵日本の牢屋に入れられたというと、すぐ数年前日本軍に抑留された濠州人は、今は濠州の町をそこら中歩いているのでありますが、その人たちが、すぐあの抑留されたときの待遇を思い出して、今事実非常に優遇されているにもかかわらず、すぐそういうことを思い出すものたから、非常に感情が変になつて来る。そこで濠州の方でも、できるだけ早く出してもらうように、いろいろの点で協力して今努力いたしておるので、自分としてはせつかく今よくなつて来て、これからほんとうにいい関係に入り、日本の大使も濠州に出かけるというときに、そしてまだ日濠間には、通商、漁業その他いろいろの問題があるこの際に、また濠州の陸軍長官が今見えておりますが、陸軍長官はマヌス島の抑留者の専管権を持つているような人でもあるが、いろいろの関係からいつて日本側にもそれはいろいろ理由はあろうけれども、濠州大使としては、せつかくいい関係がきざしているこの際に、手続その他のことで、一朝にしてこれがくずれるようなことはまことに忍びないので、何とかお互いによく考えて、できるだけ早く円満に解決したい、こういうようなお話がありまして、イギリスの方は、大使は今不在でありますが、ロバート公使が見えましてやはり日英間のいろいろの関係等を述べまして、この際こういう友好関係をそこなわないようにぜひいたしたいものである、こういう事件が起つたことについては、まことにこれは申訳ないけれども、起つた以上は、起つた事件を早く何とか双方の満足の行くよう解決したいから、日本側でもそういう高い見地からひとつものを見てやつてもらいたい、われわれ自分たちの方もできるだけそういう小さいことにはこだわらないつもりであるというよう趣旨のお話がありました。
  128. 並木芳雄

    ○並木委員 それに対して大臣から何か申し上げたのですか。
  129. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私も、大所高所から見た意見にはまつた同感でありますが、ただこれはまた実際の問題になりますと、いろいろ手続きその他事務的のこともありますので、これらの事務的のことで、ただそれが遅れるがためにいろいろ困難ができるようなことがないように、事務的なことは事務的なことで早く促進して、そして根本的に話合いがつけば、できるだけ早く解決したい、こう思つているわけであります。
  130. 並木芳雄

    ○並木委員 そこで二十五日のロンドンUPの電報でございますが、英国の下院でナツテイング英外務次官が議員の質問に答えて、日本政府国連軍に、米軍と同じ権利を与えよという国連側の要求について再考する旨約束した。日本政府は先週一旦右国連軍要求を拒否する旨の覚書を国連軍側に手交したが、その後これを撤回して、われわれの要求を再考する旨約束した、という報道があるのです。先ほど大橋委員質問に答えているときに、私聞いておりましたらあるいはこういうことも日本政府としてあつたのじやないかというような感じも受けたのです。この報道に対して、外務大臣としての所見を伺つておきたいと思います。
  131. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それは何か誤解であろうと思います。元来その前の会談におきましても、先方も口でいろいろ所見を述べたのでありまして、それをあとで要約したものを忘れない意味で書きものにして残して行つたわけであります。私の方も同様に品で述べて、あとでその述べた要旨を書きもので渡そうと思つておりましたが、その前に新聞で―は前のも覚書というふうに言つておりましたが、日本側で今度覚書を手交するというふうに新聞に盛んに出ておりました。ところが会見のときのあとで、私は覚書というものは、き、ようは出さなかつたという説明をしております。しかしあとで出すかもしれない、それは話の結果を書きつづつたものを、忘れないように向うに出すかもしれない、こう言つてつたのですが、それを何か誤解して、新聞で、初めに出すという予定であつたが出さなくなつた、こういうふうにとつて、そういう誤解をしたのじやないかと思いますが、覚書の問題はともかくとして、その内容につきましては、われわれは決してけんかをしているのではないので、友好的に話を進めるのですから、たとえば覚書につきましても、われわれが日本語で書いたものを、これを英文にして誤解のないように、わかるように出すのでありますから、英文等は十分推敲して、言葉の上で変な刺激をするような言葉は硬いませんけれども、主張についてはいまだ―先ほど大橋君にお答えしたようなわけで、国民の一般的な感情も考えなければなりませんから、われわれの意向はまだ残念ながらいれられるところまでは行かない、今のところまたこの先もどうも国連側の主張に賛成するのは困難じやないか、こう思つております。
  132. 栗山長次郎

    栗山委員長 安東義良君。
  133. 安東義良

    安東委員 外務大臣にお尋ねしたいのですが、国連軍の将兵の地位に関する国連側との協定交渉が、現在デツド・ロツクとなつている点は、要するに刑事裁判権だけの問題ですか。
  134. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まだ税等の取扱いについて、多少結論に至らないものがありますが、これはいずれにしましても大した問題じやありません。従つて刑事裁判権がほとんどすべてといつていいと思います。
  135. 安東義良

    安東委員 この商議において、わが方側の刑事裁判権に関する主張の具体的内容は、吉田書簡の線によつておるものでありますか、それとも別の線によつておるものでありますか。
  136. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 吉田書簡は、これは協定に至るまでの暫定的な日本側の取扱い基準とでも申すものでありまして、われわれの交渉しておりますときの主張は、主としてNATO協定と一般にいわれております北大西洋条約に基く軍隊の地位に関する協定、これはむろんまだ効力を発生しておりませんが、このNATOの協定に大体よつたものであります。
  137. 安東義良

    安東委員 それで安心するわけでありますが、この吉田書簡なるものは、先ほど犬養法務大臣にお伺いしたときには、これは総理の一方的な意思通告にすぎないという御見解のようで、国際約束ではないというふうに私は了解したのでありますが、この点について外務大臣も同意見でありますか。
  138. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その通りでありますが、ちよつと今のお話では何か国際約束でないから安心だというふうにとれますが、実はこの総理の手紙は先方でこれを承認し得ないというので、向うでアクノーレツジしておらないのであります。その点は第一、二項に書いてございます裁判管轄権につきましては、国際法及び国際慣例による、その国際法及び国際慣例によるという趣旨は、従来の国際慣例によれば、外国におる他国の軍隊の犯した犯罪については、その兵舎等の内部及び軍隊として行動したときだけはその国の方に裁判管轄権を与えるが、それ以外の個人として行動をしたような場合においては、すべて駐留国の方に裁判管轄権がある、こういうことをその内容としておるのであります。従つてそれに対してはそれはまだ承認できないのだというので、向うは返事も出さずに、もらいつぱなしにしておるようなわけであります。従つて、これはまだ一方的な取扱い基準というものになつておるわけでありまして、むしろ向うがそれじやあ困るというので、こちらだけの手紙になつておるわけであります。
  139. 安東義良

    安東委員 ではこの問題はそれだけにいたしまして、次に外務大臣に御質問いたしたいと思います。外務大臣は昨日の演説におきまして、自国安全の保障手段としては、集団安全保障体制が唯一の道であることを強調しておられたと思います。従つて国連及び自由主義国家との協力を前面に打出されるのは当然のことと思うのでありますが、一体国連加入について、外相はいかなる見通しを持つておられますか。
  140. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは私が御説明するまでもなく、加入については、憲章にその加入の規定があるわけでありまして、その憲章によれば、安全保障理事会の常任理事国を含む過半数の賛成があつて初めて総会にかけられるということになつております。従つてその中の一国でも拒否権を用いればできないわけであります。そこで今ではソ連の拒否権ということになつておりますから、ソ連が今後どういうふうになるかということが、この見通しの要するにもとになるわけであります。これは遺憾ながら、今のところは私からどうなるということを言い得るだけの材料も持つておりませんが、これは世界の輿論とか、あるいは国際の情勢等によつてかわる場合も多々あると思いますし、またソ連の前に提案したような、一括加入案というものもありますから、拒否権があるから絶対にもうこれから加入できないのだということも言い過ぎだと思います。そうかといつて、いつ加入できるかと言われると、これまた御返答に苦しむようなわけてあります。しかしできるだけ努力をいたしまして、未加入の諸国とも連繋をして、世界の輿論を動かすように努力して行きたい、こう考えます。
  141. 安東義良

    安東委員 ただいまお話の一括加入案でありますが、その内容にはソビニト側が希望してアメリカ側が希望しないものもあるわけでありまして、そこでアメリカ側が日本の加入を希望しても、これは交換条件的に取扱われる可能性がきわめて多い、しからばアメリカは日本を加入させるがために、そういう自分の好まない国の加入までも認めるだけの雅量を示すかどうか、その辺の見通しを承りたいと思うのであります。
  142. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは今のところまだ私にも正直のところ見通しは立ちません。しかし新しい大統領が就任され、新しい国務長官が就任されれば、おのずからそのアメリカ側の考えもわかつて来るたろうと思います。政府は来年の一月二十日ごろまでで、交替をされるわけでありますから、その後の模様を見てみないと、私にはただいまのところ申し上げられない、こう考えます。
  143. 安東義良

    安東委員 政府も今後この問題については、せつかく御努力をしていただきたいと思うのでありますが、決してこの問題は楽観を許さないと私は思います。従つて日本の安全を国連に託すという考え方のみ、われわれは行かないことは当然のことなのであります。しかも現下の国際情勢は、昨日外務大臣から指摘せられた通りであります。われわれはおつしやる通り、強い決意と勇気を持つてこの現状に対処しなければならぬのは言うまでもないことであります。しかるにこの集団安全保障体制を強化する問題でありますが、一体独立国家の自衛ということに対して、その国民が真に協力しないというようなことで、はたして集団安全保障体制が運用せられるか、この点について外務大臣の見解を聞きたいと思います。
  144. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいまのお言葉のうちで、国連軍に加入できなければ、国連の保護は得られないかというと、私は必ずしもそうじやないと思つておるのであります。それゆえに国連協力ということは、日本のために何もならないことを言つているわけじやないのでありまして、国連にできるだけ協力するということは、何かの場合には国連側でも、これに対応するだけの措置考えてもらえると確信いたしますから、やつておるわけであります。しかしそれとは別に集団安全保障ということになりますと、これはお互いの相互扶助でありますから、日本の場合のように憲法の規定が現在のようであつては、お互いに助け合う、しかもこれはお互いに武力をもつて助け合うという体制は、今のところは困難であろうと考えております。ただ、今お話のように、独立国として、自分の国を自分で守るという決心のないようなことであつてはならないのでありまして、この点につきしては、われわれもいろいろろ苦心をいたしておりますが、たとえば予備隊をああいう中途半端なものにしておいては、これは真の力も発揮できないし、また国民も国を守るという気持が薄くなるという御説もありますが、他方には今の程度の予備隊でも、憲法違反だという議論もあるのでありまして、政府としてもいろいろ各方面の意見を徴して、正しい方向に持つて行かなければならぬと思いますから、これはひとり自由党とか現内閣とかいう問題でありませんので、いろいろの方面の御意見を率直に述べていただいて、また政府考えと一致する場合には協力いたしていただいて正しい方向に行かなければならぬ、こういう考えでおります。
  145. 安東義良

    安東委員 政府の自衛力強化に関する現在の考え方が、はたして正しい方向であるかどうかにつきましては、私は深刻な疑問を持つておる一人であります。一体日米安全保障条約は、外務大臣の言われる集団安全保障体制の一体制と思われるのでありますが、いかがでありますか。
  146. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは御説の通り、集団安全保障の一つの形ではありますが、実は正直に申し上げますと、非常に変態的な形であります。というのは、日本があぶないときにはアメリカは守るといいますが、アメリカのあぶないときに日本は守るという規定がないのであります。残念ながら今の日本の状態がそういう規定をつくり得ないような形でありますから、これは非常に変形的なものであることは認めざるを得ません。従いまして、その中にも自衛力を漸増するということも書いてあるのでありますが、しかし現実は自分の国を当分で守る―これはどこの国だつて完全にはないとしましても、日本としてはほんとうにあの条約をつくつたときにはないのでありますから、そこでやむを得ずアメリカの軍隊の駐留を求めて、これによつて当分をしのぐということしかなかつたのであります。国情その他事情が許せば、できるだけ自分の国を自分で守るようにして、安全保障条約ようなものの世話にならない方がいいことは、これは間違いないと思います。でありますから、この点についてはまたいろいろ知恵を貸していただいて、できるだけそういう方向に早く行くよう考えたいとは思つております。
  147. 安東義良

    安東委員 外務大臣の率直な御返答を得まして、私も同感の意を表するのでありますが、いずれにしろ日米安全保障条約においては、日本は米国に自衛力の漸増を期待させておる。しかも米国軍の日本撤退ということも、日本の自衛力が強化せられない限りは、現実の問題とはならない建前であります。日本が完全な独立国として、隷属的な軍事体制を脱せんと欲するならば、現実的方法としては、将来自衛力を強化する以外ないのであります。しかるに政府は自衛力強化に対して、確固たる方針を持つていないように思われるのであります。現在政府の態度として伝えられるところは、昨日の総理の演説にあるごとく、国力の回復に伴つて自衛力の漸増をはかるべきことはもちろんであるが、現在の段階は、もつぱら物心両面における国力の充実に努力を傾くべき時期である、こう言われておるということは、結局国力が充実しない限りは、自衛力の漸増もやらないということに相なるのではなかろうかと思われるのでありますが、一体国力とは何ぞや、自衛力も国力の一つであります。精神力、経済力、軍事力、これら一切を合せて国力なるものをなして行く。現実の国際政治の面において、軍事というものが、いかなる意味合いを持つておるかということは、昨日外務大臣の演説中にもありましたように、今日の平和というものは自由諸国の防衛力の漸増が大いなる寄与をなしておるということを認めておられる。この観念から出発しても、日本自体が自衛力をでき得る限り漸増すべき立場にあることは、私は良識ある国民として当然に考えなければならぬことであろうと思うのであります。しかるに政府が確固たる方針を欠いておるがゆえに、いたずらに日本国民の間に国防に関する公正な考え方を失せわて、極端な議論が横行するようなことになつておる。これはまことに現下の国際情勢に対して憂うべきことと思うのでありますが、これに対する外務大臣の所見はいかがですか。
  148. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 言葉じりをとらえるようでありますが、総理の昨日の演説は、もし私の記憶が間違わなければ、自衛力について云々しておるのでなくて、いわゆる再軍備という点について云々されているのだと思います。そこで自衛力というものにつきましてもいろいろ議論がありまして、たとえば今の保安隊の持つておるものは自衛力の域を越えておる、戦力ではないかという議論もあるのでありまして、私どもはそうは絶対に考えておりませんが、そういう議論もずいぶん国会内でも行われておるのであります。そこで自衛力を漸増するということは、これは政府条約でさえすでに申しておるのでありますから、当然やりたいと考えておるところでありますけれども、これにはやはり国民のそういうふうになる気持も必要であれば、財政とか経済とか、その他の方のいわゆる国力の充実も必要なことはもちろんでありまして、政府の今までのやり方が、国民に十分その点を認識させるだけの努力をしなかつたと言われれば、まことに申訳ないのでありますが、自分の国を自分で守るべきものであるということについては、これは安東君と私はまつたく同じでありますし、政府も全体としてそう考えておることには間違いありません。ただそういうことを実際に今度具現するときの時期については、なかなか国力とのにらみ合せ、―国力の中には自衛力も入つておると言われますが、その他の部分とのにらみ合せ等も、これは考えざるを得ないものですから、お説のような批評も出て来るものと思いますが、この点についても安東君その他有力な方の意見は十分拝聴したいと思つております。
  149. 安東義良

    安東委員 これは外務大臣の御見解としてのみ承つておきたい。私はこの日米安全保障条約にいう自衛力の強化ということは、別の言葉でいえばいわゆるリアーマメントであると思うのですが、いかがですか。
  150. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それははつきりそういうことでなくて、これは憲法との関係もありますので、自衛力というと、再軍備ということもむろんその一つでありましようけれども、もう少し意味は広いと思います。たとえば今でも日本を侵略するものがあれば、やはりこれはわれわれ全部が自衛力を使つて防がなければならぬ、その力がただ弱いだけの話です。これをだんだん強くして行きたいという気持でおりますが、ただいま、先ほど委員長からも言われました船舶貸与協定ども、自衛力には役に立たぬかもしれませんけれども、しかし何かの場合にはあるいは役に立つかもしれないであろう、海上警備のために必要な力をできるだけふやそう、こういう趣旨でやつております。そうひとつ御了解願いたいと思います。
  151. 安東義良

    安東委員 時間をとつてはなは、だ恐縮でありますが、きのうの総理の演説中に領土問題がありました。南西諸島等について、相当はつきりした意図が出ておつてけつこうでありますが、千島に関しては歯舞、色丹だけを指摘しておつて、その他の地域については何も言つてない。これはどういうわけでありますか。
  152. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 千島につきましては、われわれは平和条約においてこれを日本の領土から除くということに、つまり千島に対する権利権原等を放棄するということが書いてありますので、私たちは千島については平和条約の条項を誠実に履行するという意味で問題にするつもりはないのであります。ただそれが千島とは何ぞやという定義の問題になれば、これはいろいろ意見があります。たとえば明治の初年に樺太と交換したときの千島も千島と称されております。これは北部の島々のみで、南の方の島は入つておりません。しかし歯舞、色丹は別でありますが、国後、択捉島、ああいうところも含めて千島と称しておる場合もあり、それから北の方の部分だけを千島と称しておる場合もあり、この千島の定義については、また将来議論の余地がかなりあると考えておりますが、どれが千島であるかということが決定すれば、その千島に対してはわれわれは権利権原を放棄する、こういうつもりでおります。
  153. 安東義良

    安東委員 しからば千島の解釈について、まだ政府ははつきりした見解を定められていない。従つてそこは弾力性があるものだというふうに私ども解釈いたしますが、しかし日本は平和条約によつて一応あそこの千島全体を放棄したようになつておるのです。しかし千島を放棄させられる根本理由は、はなはだわれわれとしては納得できない。アメリカの大西洋憲章に対する態度においても、イギリスの大西洋憲章に対する態度においても、日本が千島を侵略してとつたものでないことはよく知つておるはずであります。それをヤルタ秘密協定でああいう約束をしたからといつて日本から永久にこれを奪取してしまうということは、これは民主主義的な国家として最も恥ずべきことであろうと思うのであります。日本の民族領土を永久に捨てる気持はわれわれには毛頭ございません。この主張を今日においてソ連とやつたところで、これは話はつかぬところでありましようけれども、少くとも民主主義諸国に対しては日本の立場を明らかにして、日本は千島を永久に放棄するものではないということだけは、いずれかの機会においてはつきりしていただきたいと思つておるのであります。次に現在奄美大島の行政権の返還について、話合いがせられておるということでありますが、いかがでございましようか。
  154. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは行政権というような一般的な問題になりますと、すべてを洗いざらいに議論しなければなりませんし、なかなか時日も非常に要するので、かえつて住民の希望に合うような結果にならないかと思つております。そこで私どもはでき得る限りすみやかに、たとえば教育の方はどうするか、あるいは戸籍の方はどうする、あるいは郵便年金等の支払い、郵便貯金の問題をどうするとか、あるいは内地との渡航の関係はどうするとか、あるいは学校の教員の養成はどうするとか、給与はどうする、教科書はどうするというような個々の問題を、できるだけ早く解決できるものから解決して行つて、その結果を見ると、なるほど最後には事実上日本の行政権が行われるようになるというふうなところまで持つて行きたいと思いますけれども、今のところは、できるだけ焦眉の急のものからやつて行きたい、こう思つております。
  155. 安東義良

    安東委員 その場合の奄美大島の範囲でありますが、何か間違いかもしれませんが、奄美大島の範囲を北緯三十七度の線に限つておるとかいうことですが、そうすると沖永良部島、与論島というものが奄美大島の一部に入つて来ないというようなことを言う人もありました。こういうような漏れが出ないように十分お考え願いたいと思います。
  156. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは何か一部新聞にそういうことが伝えられて、与論島とか沖永良部島の人たちが非常に心配したということであります。さつそく鹿児島県知事が向うに行きましたときに、ごく最近でありますが、私から直接会つてそういうことはないのだということを伝えてもらいました。今はわかつていてくれると思います。これは何か誤報であつたのです。
  157. 栗山長次郎

    栗山委員長 松岡駒吉君。
  158. 松岡駒吉

    ○松岡(駒)委員 外務大臣の先ほどの、国連とは友好的にあくまで交渉を続けておるという報告に対しては、たいへんけつこうであると思うのでありますが、そうしてまた政治的に十分な考慮、朝鮮を守ることそれ自体が、日本に重大な影響があるということも、これまた私どもも十分承知しておるところであります。ただ大臣自身が言われた通り、国民全体の協力の態勢というものが盛り上つて来るどころではなくて、非協力という程度ではなくて、むしろ反国連的、反アメリカ的な感情、そういうことをそそるために、極右的な人々、あるいは極左的な人々に絶好の口実を与える、こういう点を強く考えないといけないのではないか。従つてさつき大臣の答弁のうち、アメリカの議会で、行政協定の改訂ということが行われるならば、批准しないことになるのではなかろうか、こういう話がありましたが、その属人主義によるところの裁判管轄権の問題を、根本的に改訂するということについての具体的な交渉をなさつたのであるか、ただ批准が困難になるであろうということは大臣の単なる観測であるか、この点をはつきりといたしたいと思います。
  159. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の言つたことが多少誤解されたかもしれませんが、われわれはいわゆるNATO協定趣旨によつて、今度の裁判管轄権をきめたいと思つておるわけであります。それをたびたび言ましたところが、国連側は、つまりアメリカと平等待遇ならいい、NATOでも―NATO自身がいい悪いは別として、何でもいいわけであります。ところが今の行政協定はそうなつておらぬから、行政協定を直して来れば、それでもよかろうじやないかというところまでおりて来たわけであります。ところが一方、アメリカの上院は、NATO協定に対して今までは反対をして批准をしなかつた。今度さらに来年の国会で新しいアメリカの議会でNATO協定の批准を求めようという努力をアメリカの政府がいたしておる。そのときに、上院の意向がはつきりしないうちに、日本との間にNATO協定をつくり上げてしまえば、この行政協定は御承知ように国会の批准を要しないのですから、つくり上げてしまえば、それで効力を生ずるわけであります。そうすると上院のNATO協定に対する意向がまだきまらないうちに、かりに行政協定をNATO協定ようにしてしまえば、上院の立場を無視して政府が行動をしたということになるので、NATO協定に対する批准がおそらく非常に困難になるのではないか、こういう意味であります。
  160. 松岡駒吉

    ○松岡(駒)委員 そもそもこういう問題の起るのは、はなはだ遺憾千万であります。先ほど来しばしば質疑応答が繰返されておるのであるが、結局そのもとをただせば、行政協定による主権の一部をみずから放棄した、こういうところに出発していることがきわめて明瞭になつたわけであります。というのは、さきに条約局長は、イギリスはアメリカ軍に対しても、いわゆる属人主義の裁判管轄権を認めているのであるから、決して均等の待遇ということを要求しているのではないなどと言つておりましたが、大臣は再びそうでない、やはりあくまで均等の待遇、アメリカに与えているところの待遇をなぜイギリスにも与えないか、ということをイギリスの国として主張することは、これは一応無理からぬところだと思う。私がイギリス人であつても、そう書いたいのであります。これはもつともなことだと思う。そういうことの出て来たもとは何かといえば、結局行政協定によつて国の主権の一部を放棄した。これを事実上アメリカ軍に委譲したような形になつて、私どもはこれは厳格にいうならば、憲法の精神に反するものである、憲法違反の疑いがある、かよう考えているほどの重要な問題であつて、これは国連軍協力する、あるいはアメリカの日本に対する安全保障ということに対して、できるだけの協力をするということは、たいへんけつこうなことであるが、主権の一部を放棄するというようなことまでもして、しかも総理のきわめてひとりよがりな秘密的な外交によつて、そういうことをやつたということが、今日を来した根本の要素ではないか、従つて済んでしまつたことを言うてもしかたがないが、なるほどただいまお聞きしたことによつて明瞭になりました。NATOのそれを批准しないという態度をとつている場合において、日本との間において、それと同質の行政協定をなすということは、非常に困難であろうという、アメリカの外交に対する思いやりもたいへんけつこうでありますが、私はこの問題の根本解決は、この際行政協定根本的に改訂する方法―これは決して単なる日本の国民の幼稚な感情というのではなくて、主権の一部までも放棄して協力するというような方法をとること自体、かえつて敗戦国日本の国民全体が、あるいはアメリカ軍と国連単との協力ということ、これに対して好意をもつてあらゆる便宜をはかるというよう根本的な大切な精神的基礎に、非常に悪影響をもたらすものであることを相手方に十分に考えさせて、そうして行政協定根本的に改訂するということのために御努力なさる意思があるやいなや、これを重ねてお尋ねします。
  161. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 行政協定につきましては、私どもはアメリカ軍がここにいて、万一の場合には、アメリカの子弟を犠牲にして日本のために働くということであり、ふだんでも多大の出費をしてここにきわめて大きな責任をとつておるのでありますから、できるだけアメリカの要望に沿つていてもらわなければ、平和条約ができても日本が国防については空白状態になるという心配がありましたので、行政協定をつくり上げたわけでありますが、しかしこれについても暫定的につくり上げたのであつて、NATO協定ができたらこれに置きかえる、またNATO協定が遅れるようであつたならば、一年後にはさらに裁判権の問題については、適当な処置をするために協議するということを協定の中にうたつて、こう協定を結んだようなわけでありますから、いろいろ各方面の御意見も伺いまして、おそくとも四月二十八日以後になりましたならば、話合いを始めたいと思つて、今いろいろ研究はいたしております。しかし協定の約束もありますから、これは四月二十八日以前にはこちらから言い出すべきものでなかろうと考えております。もう時間もそう大してないのでありますから、その間にできるだけ研究をしまして、適当なところにおちつくように努力をいたしたいと、こう思うております。
  162. 栗山長次郎

    栗山委員長 この際御了承を得ておきたいことがございます。理事会申合せによりまして、この委員会の定例日を毎週水曜日にしようではないか、一応さよう理事会では申合せをいたしておりますので御了承いただいておきたく存じます。  なお、次会は来る二十九日午前十時から開きます。が、その際は主として日米船舶貸借協定についての御審議を願いたい。むろん一般質問も時間の繰合せによつてできることと存じます。  本日はこれで散会をいたします。     午後五時二十分散会