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1952-12-23 第15回国会 衆議院 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月二十日佐藤洋之助君が委員長 に当選した。     ————————————— 昭和二十七年十二月二十三日(火曜日)     午前十一時七分開議  出席委員    委員長 佐藤洋之助君       逢澤  寛君    飯塚 定輔君       池田  清君    玉置 信一君       中山 マサ君    森下 國雄君       亘  四郎君    石坂  繁君       臼井 莊一君    武部 英治君       平川 篤雄君    松野 孝一君       田原 春次君    堤 ツルヨ君       田中 稔男君    柳田 秀一君       大橋 忠一君   出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         厚 生 大 臣 山縣 勝見君   出席政府委員         引揚援護庁長官 木村忠二郎君   委員外出席者         外務事務官         (アジア局第五         課長)     鈴木  孝君     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事互選  海外胞引揚に関する件  遺家族援護に関する件  遺骨引取に関する件     —————————————
  2. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  まず初めに、理事互選を行います。理事人数及びその選任の方法についてお諮りいたします。
  3. 逢澤寛

    逢澤委員 この際動議を提出いたします。理事互選は、投票を用いず、その数を五名とし、委員長において指名せられんことを望みます。
  4. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 ただいまの逢澤君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。それでは   飯塚 定輔君  森下 國雄君   平川 篤雄君  受田 新吉君   帆足  計君以上五名を理事に指名いたします。     —————————————
  6. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 本日は海外胞引揚に関する件及び遺族援護に関する件について議事を進めます。  まず、海外胞引揚げに関する件については、最近中共よりの北京放送等により、問題の早急なる打開も考えられるのでありまして、この際、政府当局より、この問題について現況を説明願いたいと思うのであります。岡崎外務大臣
  7. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 中共放送のことは、もう御説明するまでもなく、おわかりのことでありますが、まず政府としては、この報道が単に中共当局新聞社との会話のような形で放送されて来ておりまして、正確な、責任ある当局日本に対する意思表示とただちにとれない節もありますので、念のため確かめる措置を講じて来ております。それには、たとえばインド政府に依頼して直接中共政府に確かめる方法のほかに、日本赤十字から国際赤十字を通じて中共側状況を確かめるとか、あるいは引揚者の団体から直接に電報を打つて先方意向を確かめるとか、いろいろの措置をとつて来ておりますが、その正確な結果は、まだ御報告できる段階にまで至つておりません。一方、われわれの方では、いつ引揚げが実施されても困らないようにと思いまして、爾来ずつと準備を進めて来ておりまして、船の手当、食糧の手当、あるいは日本に上陸した場合の種々の被服その他の手当、こういうものの用意をいたしております。また宿舎の設備も考えつつありますが、これも人数がどの程度になるかによつて違いますので、さしあたり従来の経験に徴して、一つの船で渡れる人の数は大体見当がつきますので、この程度ならという一応の目途をつけて準備をいたしております。本朝の北京放送によりますと、先方の中国の赤十字社でありますから、直接に日本赤十字社とか、その他の団体に対して電報を打つた。その電報の趣旨は、いろいろの団体合わせて五名ほどの代表と、それの付添いといいますか、工作員というような者二人くらいよこすことについての電報を打つたという放送を聞きましたが、この電報がまだ来ていないようにも思われますので、今確かめ中でありまして、要するに、できるだけ早く引揚げが行われるように、今いろいろの措置をとりつつあるところであります。
  8. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 この際外務大臣に対し御質問があるようですから、これを順次許します。中山マサ君。
  9. 中山マサ

    中山(マ)委員 インドからの報告は、この問題についてもすでにございましたか。
  10. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 中間的の報告はありましたけれども、まだ結果を的確に報告いたして来ておりません。
  11. 中山マサ

    中山(マ)委員 この関係につきましては、向うからわが政府に対しての動きございましようか、それとも、ある新聞では赤十字社赤十字社に対して交渉をする、こういう記事も読んでおりますが、どちらが確かな筋でございましようか。
  12. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれの方は、インド政府に依頼しております。どういう手段が一番良好であるかはインド政府にまかしており、こちらの依頼しておるのはインド政府でありますか、ら、返事インド政府から来るわけであります。
  13. 中山マサ

    中山(マ)委員 この問題については、私の質問はこれで終りますが、あと戦犯者の問題で援護庁質問いたします。     〔大橋(忠)委員委員長」と発言を  求む〕
  14. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 先に玉置君から質疑がありますから、大橋君の質疑あとにお願いしたいと思います。玉置信一君。
  15. 玉置信一

    玉置委員 ただいま岡崎外務大臣からの御説明によりますと、わが日本赤十字社あるいは引揚げ団体その他に、中共政府からの呼びかけがあるやにお聞きいたしたのでありますが、きようの北京放送は別といたしまして、もし政府でなくて、そうした団体に直接呼びかけがあつた場合、その団体中共に乗り込んで行つて、実情を見、引揚げに対する交渉等をするごとに対して、政府はどういうような態度をとられるか、政府としての御方針をこの機会に承つておきます。
  16. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは、実は変則でございまして、政府の者が行つて国民全体の利害を考えていろいろ話合いを進めるのが当然であります。また引揚げ費用政府で負担するのでありますから、その責任者として、政府代表が行くのが当然であります。そこでわれわれは、まず政府代表を派遣したいと考えております。  しかし、これを非常に固執しまして、そのために引揚けが遅れたり、あるいはうまく行かないということがあつては、はなはだ本意でありませんから、原則はそうでありますが、交渉の結果、どうもそれではうまく行かないという場合には、この際原則の問題はしばらく不問にして、引揚げの時期その他実際の措置にかなうような方法をとりたいと考えております。しかし、それにしましても、引揚げの問題でありますれば、引揚げ関係団体代表を出すのが当然であつて、それに直接関係のない団体代表者は、政府としては好ましくないと考えております。また、そういう代表者を出すことになり、政府代表者は行かないということになつた仮定しました場合でも、その代表者は、政府の委任を受けて、政府要請する事項を引受けてくれる者でなければならないのでありまして、かつて自分意向だけでいろいろのとりきめをするというのでは困る。実際の費用は、国民の税金から支出する政府の負担でありますから、国民に対する責任上も、政府としては、代表として行く人は十分政府意向を体し、その要請を引受けて、責任を持つて国全体あるいは国民全体の利益を考えて処置してくれるという保証がなければ困ると考えております。  具体的の事項は、今朝そういう放送が入つたばかりでありますから、今後十分確かめて措置したいと思つておりますが、いずれにしても、第一には、ほかの人も行くにしても、少くとも政府代表が行くべきが当然であると考えております。
  17. 玉置信一

    玉置委員 大臣お話は、私どももそういうようにほぼ了解いたしておりますが、お話のついでに、もう一点お伺いしてみたいと思います。これは実は、今日この席で申し上げることは少し早いので、懇談会でひとつ御相談を願つてから質疑したいと思つてつたのですが、しかし大臣の御答弁も相当つつ込んで詳しくお話くださいましたので、この機会にお尋ねをするのです。  それは、国民代表として、国会が独自の立場——これもすぐ中共へただちに乗り込んでということは、今のわが国中共との関係において、かなり困難であることは私も了解いたしておりますけれども、あるいはインド当局との関連において、香港から中共現地の模様を聴取する、そうして引揚げ促進に寄与するということも、これは国会としてあながち悪いとも私は思わないのですが、そうした行動、手続等に対して、政府としてはどういうようなお考えを持つておりますか、この際参考までにお聞きをいたしておきたいと思います。
  18. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これもまだ、先方との話合いはつきりしないと、一体どこへ行つて話をつけるのか、またどういうことを先方は特に希望するかということもわかりませんから、ちよつと仮定お話になりますけれども原則的には、これは行政府仕事であつて、立法府の仕事でないのですから、政府の者が行くべきが筋道だと考えます。やはり国会といえども、あるいはほかの引揚げ民間団体といえども行政府という意味とは違いますので、原則的にはそうと思いまするけれども、現にジユネーヴの国際連合引揚げ特別委員会には、国会からも議員が特に出席されまして、非常に効果をあげておられます。それで、国会議員が行かれるということは、いろいろの意味で、他の一般の人が行くのとは違つて先方も重く取扱つてくれましようし、また国会議員たるような人が行かれることは、いろいろの意味で、大局を見て処置されまするから、効果は非常にあると考えております。  そこで、政府代表が行く行かないはしばらく別としまして、——行くことをわれわれは希望しておりまするけれども国会代表——国会代表というよりも、むしろ国会議員たる人で、特にこういう問題に精通しておられる方が、向うに一人でも二人でも行かれるということは、益にこそなれ害にはちつともならないと考えております。でありますから、引揚げ団体代表者が行かれるような場合があつたとき、もし国会の方の議事等のさしつかえもなく、また先方も受け入れるということであれば、それは非常にけつこうだと考えております。  しかし、これは仮定の問題でありまして、詳細がわかつてからでないと、まだ的確なことは申し上げられない。原則的に申し上げます。
  19. 玉置信一

    玉置委員 この北京放送について、国連引揚げ特別委あたりから、日本政府に対して何らかの連絡等はないものでございましようか。その点、もしおわかりでしたら、お聞かせ願いたいと思います。
  20. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 こちらからは、こういう事情につきましては先方報告はいたしております。しかし国連引揚げ特別委員会も、真接に中共なりソ連なりと話し合つているべき筋のものではなくて、それらの委員会に加わつている各国の代表者が、それぞれ自分の便宜な方法先方意向を確かめたり、あるいは国際赤十字を通じて向う赤十字から意向を確かめておるようであります。特別委員会委員は、この事情は知つておると思いますが、まだそちらの方から正確な報告とか報道は入手いたしておりません。
  21. 玉置信一

    玉置委員 ソ連代表部というものですか、これが、平和条約発効後の今日、あそこへ旗を立てておるのは、私どもはなはだ不合理のように思います。しかし相手が依然として国旗を掲げて、代表部のごとく存在いたしておるのですが、この事実から見まして、中共関係について何らか今まで交渉等がありましたかどうか。お聞きするところによりますと、すでに日本政府から立ちのきを要求したように伺つておりますが、こうしたことも、私ども国会特別委員会として、将来引揚げ促進の問題を扱う上においても、どうもあそこに旗があがつている以上は、まつたく無視はできない立場にもあるように考えられますので、この間の事情を、お話できますれば、承つておきたいと思います。
  22. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは、しばしば申すことでありますが、ソ連との間に外交関係を設定してはならないというりくつはないのであります。民主主義国家といえどもアメリカもイギリスも、その他の国も、ソ連とは外交関係を設定しておるのでありまして、日本外交関係を設定してはいかぬというりくつはどこにもないのであります。ただ現実の問題としましては、たとえば何十万という抑留者をかかえておつて、これは国際法からいいましても、どういう人聞がその間に死んだとか、どういう人間がおるのだということを日本政府に通報するのが当然でありまして、全然黙つているという法はないわけであります。こちらから何べん言つても、先方ではただ戦犯関係の者が千人余りおるということを言うだけで、国際法からいいましても、はなはだおかしなことだと考える。その他、中ソ同盟条約を結んで、日本仮想敵国のような扱いをいたしておる。あるいは北海道附近の漁夫、漁船を拂留したり、いろいろなことをされておりますので、われわれとしては、むしろ、いわば無言の抗議といいますか、そういうようなことを改めてくれなければ正常な外交関係を設定することはできないというつもりで、こちらでは別段の措置をとつておりません。従いまして、ソ連は法律上わが国とは無条約国であります。無条約国民日本におりまする場合には、その人の必要度に応じて、居留を認める場合もあり、認めない場合もあり得る。そこで、今お話ソ連代表部員と称する人々の中で、ある数の人に対しては——これはまあ代表部の真接の所属員ではないと思いまするが、たとえばタス通信員であるとかいうような種類の人が多いようでありますが、これは居住願を出して来ましたけれども日本政府としては、居住権を認める理由なしとしまして、これには居住の証書は発行しておらない。従つて、一定の期間がたてば日本を退去するというのが自然の結果になると思います。そういう状況でありまするけれどもソ連の元の大使館建物の中には、ある数の人がまだ残つておると思います。また今おつしやつたような旗も立つておりまするけれども、何も不必要にいろいろなことを荒立てて、両方の感情を害するようなことをする必要もありませんから、こういう点については、代表部の人がソ連の元の大使館建物に残つていようとも、あるいは旗が立つていようとも、とりあえずは別段の措置はいたさない。それによつて不必要な刺激を与えて、また引揚げ問題等がこじれて来るようなこともどうかと考えますので、必要な場合には、これはいたし方ありませんけれども、そうでなければ、まあ大目に見ておくと言つては語弊がありますが、特に追究せずにおいておく、こういう措置をとつております。
  23. 平川篤雄

    平川委員 外務大臣にお伺いをいたします。戦争中にわが国抑留せられた外人の捕虜に対して、いろいろな処置上、いわゆる捕虜虐待というような問題で、ずいぶんたくさんの者が戦犯として処分をせられておるのでありますが、逆に、戦争中に日本陸海軍将兵その他の関係者が、向う抑留せられまして、非常な虐待を受けておる。ところが中には、戦争後のああした情勢でございましたので、不当に事実が曲げられて、抑留中に殺されたり、あるいは傷ついたりいたしましても、それはいわゆる戦死であるとか戦傷であるとかいうような扱いを受けないで、従つて遺族も何ら援護の恩典に浴せないという事実が多々あろうと思うのであります。そういう場合に、独立後の日本は、そうしたものを国内的に処理することはもちろんでありますが、国際的に何ら主張する力がないものであるかどうか、そういうことについて外務大臣の御見解を承りたい。
  24. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは正しくないことでありまして、日本も、終戦後は違いますが、従来ならば、たとえば捕虜を国内に置いておけば、捕虜情報局というようなものを置いて、そうしてそれに関する情報関係国に与えるとか、あるいは関係国代表者捕虜収容所を見せるとか、あるいは赤十字その他を通じての救恤品捕虜に与えるとか、いろいろ国際法なり、国際慣例なりによつてなすべきことがたくさんあるわけであります。ところが、今までのところ、少くともソ連中共側からは、そういうようなことを全然いたして来ておりません。これにつきましては、従来から関係国を通じましていろいろ要請をし、かりに死んだとしてもしかたがないから、死んだ人の氏名を知らしてくれ、生存者氏名を知らしてくれ、状況をよこしてくれ、墓がどこにあるか知らしてくれと、いろいろの要請を出しておるのでありますが、これに対しては全然返事がないという状況であります。はなはだ正しくないことだと考えておりますが、国と国との間には、その上に立つ国際連合のような組織がありましても、主権を全然無視して行動するというようなことはいたしておりませんから、ある国が不条理なことをやつても、それを無理やりに条理に従わせるという力もないわけであります。従つて抗議をし、記録に残して、将来にまつより方法がないわけであります。これは、たとえば歯舞、色丹というような、北海道の根室の向うの島が日本の領土だということは、もう明らかな事実であり、だれも疑うところはなくても、ソ連軍がそこを占拠しておれば、この事実は、向うが不条理に占拠しているものを追い出さない限りは、どうすることもできないというのと、事情は違いますけれどもりくつは似たようなことになるわけであります。われわれも、それが一つの大きな原因で、こういうことをされておつたのでは、国交回復などということは日本政府としては考え得ないというくらいに強く思つておるわけであります。  これに対する遺家族扶助料その他の問題も、ここに厚生大臣もおられますが、厚生大臣もいろいろ考えていただいておるのですが、困つたことには、一体その人が死んでおるのか生きておるのか、またどういう事情のもとに暮しておるのかというようなことが一切わからないものでありますから、こちらでもなかなか的確な処置方法がつかない。その点でも困り抜いておるわけであります。
  25. 平川篤雄

    平川委員 具体的にお話を申し上げたいと思います。ただいまの基本的な問題と、もちろん関連がないことはないのでありますが、一層具体的な問題がここに一つございますので、それをお話をいたしまして、その他の関連のあるような事件というものがもし他にもあれば、概括的に、外務大臣としてどのような態度をとるかということを、お示しを願いたいと思うのであります。  この問題は、実は私、厚生省と内閣恩給局三年越しいろいろ話をしておる問題なのでありますが、今もつてこれが解決がつかないのであります。どういう事件かと申しますと、これは一例で、たくさんそんなことがあるのじやないかと思いますが、昭和十七年の十月十日に、第八艦隊がガダルカナル島の飛行場夜間砲撃の命を受けまして、ガダルカナル島へ向つて進んだ。ところが、米軍がそれを知りまして、遜撃をいたしました。そして遂に戦いに敗れた。その際に、呉鎮関係であつた一等巡洋艦の古鷹が航行不能に陥つて、とうとう自沈を決意いたしました。艦長待避命令を出して、全員海上に待避したのであります。その際、艦長上級士官その他の一部の者は、日本駆逐艦に救助せられて引揚げたのでありますが、他の多くの将兵海上に置き去られてしまつた。三日の間、あるいは疲れ果てて死ぬる者が出たり、あるいは発狂する者が出たりいたしまして、三日の後、数ははつきりわからないのでありますが、大体百名ばかりがアメリカの海軍に救助せられて、ニューカレドニアに送られた。そのニューカレドニアに後送せられました者は、一部はアメリカに行きまして、他の者は、ガダルカナル島の一般捕虜、これは陸海軍の工員もまじつてつたのでありますが、そういう者とともにニュージーランドに送られて、ニュージーランドではフェザーストンという収容所へ収容せられまして、ニュージーランド陸軍監視下に置かれたようであります。約八、九百名ばかりおつたのであります。そのときの捕虜待遇は、きわめて良好とは言えないかもしれませんが、まあよかつたのでありますが、ただここで問題が起りましたのは、この千名足らずの者がいろいろ使役を命ぜられた。最初の間は、三分の一とか四分の一とかいうような数を中から出して来たのでありますが、しかし当時は、まだ昭和十八年のことでありますから、捕虜になりました軍人は、生きて国に帰ることはできない、むしろ殺してもらつた方がいいというような心境でありましたのに、これは外務大臣もよく御承知のように、外国では、捕虜になつておるということは最高の名誉であり、それに、使役に出て日当をもらつて、帰るときには何がしかの金を持つておるということは、むしろお前たちの得ではないかというわけで、この二つの考え方が衝突をいたしまして、ちようど飛行場か何かの建設のために、相当数従業員の出動を命令をして来たのでありますが、それを聞かない。いろいろいざこざがあつたのであります。遂にそれが爆発をいたしまして、昭和十八年の二月二十五日のことでありますが、全員広場に集合せしめられまして、その場で代表を出して、ニュージーランドのその収容所を預かつております当局折衝が始まつたのですけれども、どうしても聞かない。みなすわり込んだまま、聞かなかつた。ところが向うが申しますのには、ニュージーランド陸軍の名誉にかけて貴様たちを働かせるというので、遂に発砲した。そのために、そこに集まつて広場にすわり込んでおりました者が四十七名ばかり死にまして、そして負傷者が多数出たのであります。この事件は、向う新聞によりますと、いわゆる脱柵逃亡を試みたので、それを撃ち殺したのであるということになつてつたそうであります。私にこの情報を入れました者は、昭和二十一年の二月に復員をいたしました。この人は片手をとられてしまつたのでありますが、内地ではそれらの死亡者を変死として扱い、それから負傷者は非公務であるとして扱つた従つてこれが恩給法にもかかりませず、また今度の軍人援護にもかからないでいるわけであります。  この事件は明らかに向うの間違いであつた、非常な罪悪であつたと思われますことは、これも場合によつてはお調べを願いたいのでありますが、スイス人であつて、ニユージランドに派遣をせられておりました万国赤十字社ボツサードという博士がこの収容所を訪れていろいろこの事件を調査したということであります。そのことから、あとは非常に待遇がよくなりまして、まつた戦争中におそらく日本国民のだれもが味わつたこともないような待遇を得るようになつた。たとえば、ニュージーランド祭日、休日というものは全部休ませる、その上に日本にも祭日があろう、それを申し出ろ、その日を休ましてやろうという程度にまで、非常な好意を持つた待遇をしたそうでありますが、何にいたしましても、最後にはそういうふうな処置を受けておるのであります。  これは、すわり込んでおつた者を撃つたのでありますから、脱柵逃亡でないことは事実なんです。この事件は、復員をいたしました安達少尉口述書というものが政府にあると私は考えておりますけれども、私の非常に不満足に思いましたことは、過去三年この折衝をいたしますのに、恩給局の方におきましても、あるいは復員局の方におきましても、ないしは引揚援護庁の方に行きましても、この事件を何らお知りにならない。知つておる人も一部あるのでありましようけれども、とにかくこれほどの大きな国際的な問題を一向御存じないようなありさまなのであります。そして言われることは、何しろ占領下でございますから、独立後はこれはひとつ何とかいたしますという話であつたわけであります。もうすでに独立第二年を迎えんといたしております。このような事件がほかにもあると私は考えます。一体外務大臣としては、この問題について、どういうふうな御見解をお持ちになり、これが事実であるとすれば、将来どういう処置をおとりになろうとするか、あるいは厚生大臣としては、国内的にこの問題をどういうふうに解決をしようとせられるか、私はお伺いをいたしたいのであります。
  26. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれとしては、そういう事件を持ち出されて来れば、これを正確に取調べまして、真相をまずはつきりさせる、その真相によりまして、適当な措置をとる以外にないのであります。実は、私自身は、今聞いたばかりで、知らないのであります。十分取調べる措置は、まずとらなければならぬと考えております。結果によりましては、どういう処置を講ずるか、これは、その真相がわかつてから、はつきりいたしたいと思います。真相がはつきりしないうちに、ここで、こういう場合にはこうするとか、ああいう場合にはこうするとか言いましても、かえつて妙な誤解を与えることになると思います。真相を取調べることをまず先にいたしたいと思います。
  27. 平川篤雄

    平川委員 仮定の問題でありますが、もしこれが事実といたしますならば、このために死にました者、傷つきました者は、ニュージーランド政府に対しまして損害賠償の要求をすることが可能でございますか、どうですか。
  28. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは、どうも仮定の問題で、友邦国に対して仮定の問題で言うのは、はなはだどうかと思いますので、差控えたいと思いますが、一般原則論から言えば、そういうことは可能であります。
  29. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 ただいまのお話でございまするが、これは一応援護法の対象としての戦死あるいはその他に該当いたしません。しかし事情事情でありますから、なお検討いたしたいと思います。
  30. 平川篤雄

    平川委員 これは私、厚生大臣お話を申し上げるのでありますが、厚生省が援護法を適用せられる場合には、十分お調ベになり、御研究になつておるのでありましようが、結局は、内閣の恩給局扶助料なり、あるいは恩給なりに該当するようなものでなければできないのである、援護庁としては恩給局の査定をそのまま機械的に適用をしておるという状態であるということを私はしばしば当事者から聞かされておるのであります。ところが、恩給局の方に参りますと、今度はそうは言わない。どこに持つて行つていいやらわからない状態で、長い間これは続きました。問題はどこにあるかというと、この問題が非公務であるということにある、あるいは変死であるということになつておりますためにいけない、こういうことであります。しかし、これはもう政治的に解決するよりほかはないだろうと思うのでありますが、この問題について、はたして純粋に非公務だと言い切れるかどうか、厚生大臣の御見解を承りたいのであります。
  31. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 この援護法の建前から申しましても、やはり恩給との関連が非常に深いのであります。あるいは語弊があるかもしれませんが、恩給にかわつてという趣旨もございまするし、従つて厚生省といたしましては、従来恩給局の方の査定を基本にいたしてやつてつておるのであります。変死にあらずして戦死に準ずるものとして、あるいは戦死として援護の対象にいたすかということに対しまして、ただいまの法律、あるいはただいまの解釈では、事情が今仰せの通りでありますけれども、いたしがたいと思う。なおこれは、戦犯者の遺族の方々との関係もありまして、今後研究すべき、検討すべき対象にはなろうと思いますけれども、ただいまのところは、はなはだ遺憾でありますけれども、従来の方針をとつてつております。但し、今後は、なお恩給法関係もありまするし、また戦犯者の遺族に対する関係もございますから、検討いたしたいと考えております。
  32. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 皆様に申し上げますが、外務大臣は他に都合もありまするので、特に外務大臣に対する質疑をお願いしたいと思います。
  33. 平川篤雄

    平川委員 ただいま申し上げました問題について、事情を調べると外務大臣はおつしやつたのでありますが、これは、復員をした人たちからの報告が、もうすでに政府に出ておるはずと私は考えますので、ただちにお調べになることができると思います。年の瀬を控えて、困つておる者はたくさんおるのでありますから、至急に希望を持つた正月を迎えさせたいという気持があります。つきましては、次回の委員会に、それをお調べになつて、それによつてある種の見解をお漏らし願えれば、私はたいへん幸いだと思います。その際にまた、政府に参つております口述書政府の御見解について、お伺いすることがあろうと思います。特に外務大臣としてお調べを願いたいと私が思いますことは、どういうことになつておるか知りませんが、ニュージーランド政府、あるいはこれの直接の責任者であるか、間接の責任者であるか、アメリカの海軍の方から、これはどういう処置であつたかということについての御報告がありませば、お示しを願いたいし、また向うの、それについての結論のつけ方というものを御調査を願いたいのです。これは時間がかかるかもしれませんから、後でよろしゆうございますが、外務大臣責任においてお願いしたいと思います。  厚生大臣は、ただいま戦犯との関係とおつしやいましたが、これは戦争犯罪人ではございません。一般捕虜なんです。ただ戦時中、抑留中にそういう事件によつてゆえなく殺傷せられた。戦犯であるとすれば、むしろ向う戦犯である。これは、いわゆる戦犯の遺族等の関係は違うと思いますが、その点はどうでございますか。
  34. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 ただいま私が申し上げましたのは、戦犯の遺族等に対して国家が援護の手を差延べるについての軽重を申し上げたのではありませんで、たとえば戦犯の遺族の方々は非常にお困りになつておるのであります。そういう方々に対しても実は援護の手が差延べられておりません。ですから、そういうこととも関連して、今後考慮すべき点を検討しておる、こういうのでありまして、戦犯との軽重を申し上げておるのではありません。
  35. 平川篤雄

    平川委員 今のことは、ただいま援護の手が差延べられておる戦死者の遺族、あるいは傷痍者の皆さんとの関係でお考えになるわけに行きませんか。ただいま漏れておる戦犯の遺族の方の関連となぜ一緒にお考えになるのか。ケースといたしましては、むしろ一般の戦死者の遺族や、あるいは傷痍軍人の諸君と、より似ておると思うのです。そちらの方の関連で早急に解決するということをなぜお考えにならないか。そこが私は納得ができない。
  36. 柳田秀一

    ○柳田委員 ただいまの御質問は、もつともな御質問でありますが、本日は、けさも北京放送があつたような関係でありますので、外務大臣は他にも御用があつてお急ぎのようでありますから、特に引揚げの問題に関しまして外務大臣質問を要約いたしまして、ただいまの御質問は、外務大臣が御退席後、厚生大臣からゆつくり御答弁を願うようにしたらいかがですか。まだ外務大臣質問される方がたくさんあると思いますから……。
  37. 平川篤雄

    平川委員 ほかに議事もございますし、外務大臣に対する質疑があるそうでありますから、私は、本日はこれで、問題を提起したということで打切りたいと思います。厚生大臣からは、次会にはつきりした責任ある御答弁をお願いいたしたいと思います。
  38. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 中共からの引揚げのことは、われわれ知つた人もおりまして、個人的にも非常に関心を持つておるものでありますが、これは、政府があまり真正面に出ると、向うはいやがつて、そうして引揚げ促進がむずかしくなるのではないかと私は思う。向う赤十字社交渉がしたいということを言つておれば、こちらの赤十字社あたりから積極的に働きかけさせて、そして政府はあまり表面へ出ずして、赤十字社その他の、双方にアクセプタブルな団体もしくは個人を使つて連絡をとつてやるというような方向に進まれた方が、引揚げ促進するゆえんじやないかというふうに思うのでありますが、この点について外務大臣の御所見はいかがでありますか。
  39. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは、先ほどお答えしましたようなわけでありますが、実は、政府政府インドを通じて話を進めております。同時に、それでは時間がかかる場合もあると予想しましたから、あの放送のありました日に、ただちに赤十字にも話をし、赤十字は直接に先方赤十字に連絡をとる、あるいは引揚げ団体引揚げ団体で直接に電報を打つて連絡をとるということでありまして、今のところは、政府代表は困るという意思表示もないのであります。従つて、こちらからそういう想像をして引下るという理由まではないと思いますが、今申した通り、政府代表というものを固執するがゆえに引揚げ促進がうまくできないという場合には、他の方法によるべきものであろう、原則を多少まげても、引揚げ促進になるような方法を講ずるのが適当であろうと思いまして、その程度の考えは持つております。
  40. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 香港には中共側代表がいると思うのですが、非公式あるいは公式に、今申しましたような日本団体責任者をやつて、そういうものと接触をして促進をするというような方法は考えられないでしようか。この点をお尋ねします。
  41. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それも一つ方法だと私ども考えております。ただ、その香港にいる人が、そういう権限を与えられているかどうか、それはまだ確かめておりません。いずれにしましても、もし今日の放送が事実であるとすれば、一体どこへ行つて話をするのか、どういう人間が先方の希望する者であるかということがはつきりいたしますれば、あるいは、こちらの代表というのは、直接北京へ行かないで、香港へ行つて話をするかもしれません。なるべくこの点は先方の考えに合うような方法で行きたいと思つております。
  42. 石坂繁

    ○石坂委員 外務大臣お急ぎのようでありますから、二、三の点を伺いたい。  中共抑留者に対しましては、今までの質疑応答によつて大体承知いたしましたが、ソ連抑留者の現在のこちらの推定の人員、及びその人たちがどういう状況に置かれているか、及びその引揚げに関する見通しが、ただいまのところどういうふうになつているか、どういう方法を講じておられるか、この点について伺いたい。
  43. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ソ連側の方におる人につきましては、これは算術的に引算をしてみるよりほかしかたがないのでありまして、今ここに数字を持つておりませんけれども、われわれの知る範囲では、七万数千名というものがまだ生きている人であろう、——ちよつと数字が違うかもしれませんが、そのうちの約六万弱というものは中共側にいる人であろう、こう考えております。それを引いたものがシベリア地区にいるものであろうと思うのでありますが、そのほかに、はつきりわからない数字もあるのでありまして、なくなつたか、あるいは生きているか、それとも行方不明でどこに入つているか、わからない数字も出て来ている。これらのことにつきましては、今も申しました通り、独立前から、いろいろの方法で、いろいろの筋を通じまして、たとえばローマ法王庁を通ずるとか、あるいは国際赤十字を通ずるとか、あるいはモスコー等に代表を送つている国を通じて、いろいろの手を使つて調べたり、あるいは先方意向を確かめんとして努力いたしましたが、全然応答が今のところないのでありまして、どうもいたし方がない状況であります。そこで、先年国際連合に話をいたしまして、特別委員会を設置してもらつて、世界の輿論を結集して、それの力をもつてもう一ぺん当つてみようというので、今やつているわけであります。しかし、これに対しても応答がないのであります。先方では、戦争犯罪者としての千数百名はいる、それ以外は一人もいない、こういうようなことであります。私は、それは信じられませんが、あるいは想像すれば、そのほかにおる人は、強制的にか合意であるかは別として、ソ連の国籍を取得してしまつて、もう日本人じやないというりくつになつておるのじやないかとすら想像されるのであります。抑留された人の国籍が今どうなつておるかは別として、もつとたくさんソ適地区におらなければならぬりくつだ、こう思つて先方の言う数字はどうも信じられないが、今申した通りの方法でやつてつて効果は今のところあがつておりませんけれども、これは忍耐強く世界的な輿論を結集して、またドイツの捕虜もかなり向うにおるようでありますし、イタリアの者も一部分おるのじやないかと思われる節もありますので、これらの関係国とも歩調を合せまして、さらにいろいろ手を尽してみる以外に今のところ方法はないと考えております。
  44. 石坂繁

    ○石坂委員 家族の者がたいへんに心配いたしておりますことは外務大臣も御承知の通りでありますが、ただいまのお話は、いつ引揚げて来られるやら見当がつかない、こういうことでありますか。
  45. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほどの数字がちよつと間違いましたので、訂正します。生存者と思われる者は八万ちよつとであります。そのうちの五万九千、六万弱というものが中共地区で、シベリアその他ソ連領が一万七千くらいであります。南樺太、千島におる人が二千数百、北鮮に三千余り、こんなふうに考えております。  今御質問の点は、まことに残念でありまして、私どもも非常に痛憤を感ぜざるを得ないのでありますけれども、今のところどうにも方法がない。すみやかにソ連の方で良識をとりもどして、今までの面子にこだわらずに、これこれの者がおるということでも言つてくれる以外に方法がないのであります。これについては、さしあたり、どうしても世界的な輿論を結集して、国際連合等で大いにやつてソ連代表もどうも説明に困るというような状況にしなければできない、こう考えております。はなはだ残念でありますが、今のところ見当のつかないような状況であります。
  46. 石坂繁

    ○石坂委員 この上とも、せつかく御努力をお願いいたします。  なお、戦犯の釈放の問題につきましては、これはもう少し外務大臣が時間をお持ち合せのときに伺いたいと思いますが、これに関連いたしまして一点だけ伺いたい。  比島及び濠州におる戦犯者待遇が非常によろしくない。先日私が巣鴨に参りましたときに、あそこにおる戦犯の人たちが口をそろえて心配いたしておりまするのは、マヌス及びモンテンルパにおる同胞の人たちの食糧その他の給与状態についてであります。はたして健康を保つて帰郷することができるであろうか、こういうふうに、自分の身の上のことを忘れ、濠州及び比島の人たちのことを心配いたしておるのであります。いわゆる差入れ等によりまして、この人たちの給与をよくする必要があろうと存じておりますが、差入れの金品、食糧等をこちらの方から送つておられるのか、あるいは家族等からそれを送る道が開けておりますかどうか、それを伺いたい。
  47. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 マヌス島の方の問題につきましては、約数週間前の話でありますが、あの方面を管理しております濠州の閣僚で、マクマホンという方が見えましたので、私も会つて、いろいろと話をいたしました。待遇の問題につきましては、これは十分ではないけれども政府でもつて給与は保障する建前になつておりますので、差入れの全然ない場合を比べますと、フイリピンよりはかなりいい待遇のようであります。フイリピンの方は、どういう事情であるかははつきり知りませんが、差入れが本体のようであります。従つて、差入れをしなければ思うようなことができないわけでございます。そこで、いろいろ差入れの道を考えておりまして、かなりの方法がとれて来ております。これは、どういう筋からどういうふうにしてということは、ちよつとお許しを願いたいのでありますが、現実には、最近も、月にして十六、七万円のものを毎月ふやしておる。その前にすでにそれくらいのものが毎月行くような手はずをとつておりますので、それに加えて、約倍にいたしております。これで大体普通の栄養がとれる程度の可能性はあるということになりまして、そのふやした方を今月から実行中だと考えております。なお、一昨日アジア局長がマニラに参りましたので、これにも、見舞としましてある程度の金と、お正月も近づいておりますから、その方面の品も持たしてやつて、実際に行つてさらに実情を調べて報告するということでありますから、それによつて、もつとはつきりわかると思いますが、今のところ、月に三十万余りの差入れがありますれば、十分とは行きませんけれども、大体のところ、前に心配していたようなほどではないようになるであろうと考えます。
  48. 石坂繁

    ○石坂委員 たしか、フイリピンの監獄制度は、食糧は家族持ちとかいうことを伺つておるのでありますが、家族から差入れる道がありますか、ありませんでしようか。
  49. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その方もあり得ると考えておりますが、ただ、家族といえども決してゆたかな生活をいたしておりません。従つて、その方々にさせるということは、かなり酷でありますので、家族の名前をもちまして、いろいろほかの方からの資金を入手しまして、毎月定額を送る、それも相当の額になる程度のものを送る、こういうことになつております。
  50. 石坂繁

    ○石坂委員 最後に、もう一つ。これは、この席上で伺いますことは、あるいはどうかと思いますけれども、B、C級の戦犯で、刑死いたした人の遺骨でございます。実は私、具体的に一人気の毒な人を知つております。年とつたお母さんが、私は金も何にもいりません。ただ遺骨を下げていただきたい、実はこういうことで、私はこの間、各関係官庁をそこここ聞いてまわつたのでありますが、どうにも要領を得ないのであります。もしこの席でおさしつかえがあればよろしいのですけれども、何とかそれを返してもらうことができるかどうか、その辺の事情はつきりいたしまして、帰つてその老母を慰めてやりたいという気持ちで一ぱいでございます。その点についてちよつと伺いたい。
  51. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは、私の方でも、すでに二、三の国と話しをいたしまして、今のところあまりむずかしいようではないのであります。ただ、こういうものは時間がかかまして、また遺骨と申しましても、お墓の関係で、掘り出してやるということが、なかなかむずかしい点もあります。私どもは、向うにお墓があつてもいいから、一部の遺骨なり遺髪なり遺品なりを家族に送れるような措置を講じてもらいたい、こう思つておりまして、時間がかかりましようけれども、それはやるつもりであります。もつとも全部の国と話をしたわけじやありませんけれども、今まで当りました一、二つ国の様子では、そうむずかしくはないのでります。あと費用の問題になるのではないかと思います。但し、それは非公式な下話でありまするから、時間はどうしてもかかるだろう。しかし、やれることはやれると思います。
  52. 中山マサ

    中山(マ)委員 中共からの引揚げの問題でございますが、今の二万人を帰すという集団引揚げがあれば、まことにけつこうで、その中であるいは解決がつく問題かもしれませんが、私は最近大阪の方からいただきました手紙に、これは、主人は職業軍人でありますが、その妻が、もう五年も六年もなるのにまだ帰らない。その妻の方から、日本から旅費を送つて来れば、向う政府に辞職の要請をしたら帰られる。こういうことを言つて来たのでございますが、草葉政務次官のときに、船賃は政府で持つというようなお話がございました。その船場まで、たとえば香港とか上海とか、そういうところまで出て来られましたならば、イギリすの船か何かで帰つて来た人も多うございますが、しかし港まで出る旅費をどうして届けるかということが最近の問題ではなかろうかと思つております。このごろ国会におきましては、緒方官房長官から情報機関を設置するというような問題も出て参りまして、今度の中共意向放送によつて発表されて、今取上げられているのでございますが、情報機関を設けないでも、外務省の中に対外的の情報を傍受する方法があるというお話も、外務委員会で聞かせていただいたのでございますが、外務省の情報機関からラジオ放送中共向けに出していただけるものかどうか。帰りたいけれども、それを向う政府に言い出すと、あるいは痛めつけられるのではなかろうかということを怒れて、帰還の情報について知り得ないで悩んでいる人が相当あることを、私はいろいろの陳情の手紙によつて知るのでございますが、そういうことが外務省においてできるものかどうかが一点でございます。  その次に、韓国におります韓国籍を持つている日本婦人の問題でございます。これらの婦人で引揚げの希望を持つている人たちに対しては、どういう処置をとつていらつしやるか。これは日本の手が届かないという立場をとつていらつしやるのか、その点お伺いいたします。
  53. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 外務省としては、別にそういう放送機関を持つておりませんけれども放送する方法はございます。また必要に応じてはいたしておるのであります。たとえば、ブラジルで日本の移民が二派にわかれて、勝つたとか負けたとか議論を盛んにやつてつたときなど、手紙も出しましたが、放送でも、日本の実情はこうだということをブラジル向けにやつたことがございます。今度の場合も、必要に応じましてはやられると考えております。  それから、今お話中共地区内の旅費でありますが、これは、いろいろ話がありまして、よくわからないのであります。ある方面では、引揚げの希望を述べて、許可があれば、港まで送つてくれると聞いておりますし、またある方法では、旅費がなければ、許可があつても、金がないから自然帰れないというふうにも聞いておりまして、場所によつてまちまちなのではないかと思います。そこで、ただいま香港の総領事に訓令を出して、その方面の研究をさせておりますが、旅費だけの問題で引揚げができないという人があるならば、これは考えようというつもりでおります。  韓国の問題につきましては、これはなかなかむずかしいのでありまして、多くの場合には結婚した婦人が多いのであります。あるいはその子供もありしよう。普通でありましたならば、結婚をした以上は、日本の国籍を失つて韓国の籍をとるのが普通でありますが、この場合は、終戦までは、どちらも日本人であつたため、国籍を喪失するとか取得するとかいうことがなかつた。また同時に、日本人と思つたから結婚したのであつて、夫の国籍が違つてしまうのだつたらいやだという人もあるかもしれない。いろいろ複雑しておりまして、なかなか決定的にこうだと言うわけには行きませんけれども、韓国側でもつて異存がなくして、本人が希望すれば、今日本の国籍を持つておろうと韓国籍であろうと、日本人の血統の人は帰国をさせることにいたしております。
  54. 中山マサ

    中山(マ)委員 それでは、その子供はどうなるのでございましようか。子供はやはり母親につく傾向があるのでございまするが、その母親だけでなく、子供もお受入れになりますか。また、なるとすれば、何歳までお受入れになる態勢ができておるのでしようか。
  55. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 未成年の場合は、親の合意による以外に方法はありません。合意ができますれば、母親が連れて帰りたいという子供は帰国させております。無理やりにひつぱつて来るということ事実上できません。それから、成年になりますと、これは独立したと考えますので、ちよつと別の問題になりますが、これも日本人の血統で、帰国したいということになれば、できるだけ便宜をはかるということにいたしております。
  56. 田原春次

    ○田原委員 私は、中共地区からの引揚げ問題と、それから、それ以外の土地を含めての遭骨引取り問題についての経過等を聞きたいと思います。  先ほどの大臣の御答弁の中に、けさの北京放送でこれこれの団体代表機関として認めるということがあつたということを聞いたわけでありますが、御承知のように、国内におきましては、大体四つの引揚げ関係団体がありまして、いろいろ準備あるいは遺家族との連絡等もいたしておるのであります。第一は、在外同胞帰還促進全国協議会、——全協というのがありまして、終戦後から非常に活動しております。第二は、海外抑留同胞救出国民運動総本部という団体があります。これまた熱心に連絡等もやつておるわけであります。第三は、議会の中は終戦直後つくりましたもので、現在の名称は同胞救援議員連盟という名前でありますが、これは終戦直後から、これらの救出運動の先頭を切つておりまして、現職議員を中心につくつております。引揚船の問題、それから帰国後上陸地における費用の問題、その他いろいろのことを議会に取上げます。それから、もう一つは、戦争中は敵国在留同胞対策委員会という名前でありまして、交換船のこととか、それから、こちら側におきまするアメリカ側の捕虜に対して物資が届きました場合、これを配給したり、また外地における——インド、濠州等も入りますが、抑留邦人に対する慰問品発送等もやつた団体で、現在は在外同胞対策委員会という名称にかわつておるのであります。気のついたところ、この四つがありまして、いずれも特に政府から補助をもらつているわけではなく、議員連盟は議員費用でやる。その他の団体も、寄付、会費等でやつておりますので、政府団体というような気がねをする必要はない。そこで、これからの折衝でありますが、どちらにいたしましても、早く、また多量に帰つてもらわなければいけません。出迎え団体の問題で長引くことはよろしくありませんので、一応何かのルートを通じて交渉をやる。もしくは出迎船にこれらの団体代表を乗せまして——向うへ上陸可能であるかどうか、奥地へ行けるかどうかは第二といたしまして、少くともこれらの団体は国内の遺家族に対して連絡がありますから、これらにやらせたらいいと思いますが、これは外交でなく、国内の団体をどの程度に選ぶかというこちら側のことであり、それが向うでどの程度承認するか、——これらの団団体が入らなければいかぬと言うのではないのでありますが、どの団体が参加できるか、これに対する外相の見解はどんなものですか、承つておきたい。
  57. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これらの団体、ことに初めにお述べになつたような団体は、ただいま非常に努力しておられるのでありますから、われわれも、もし団体代表者が行くとすれば、そういう団体代表者を出したいと考えております。しかし、これは先方の受入れがどうかという問題になつて来るので、いやがるものを無理にがんばつて、そのために引揚げが遅れるということも考えものであります。きようの北京放送によりますと、そういう団体の名前がなくして、まるで別の団体の名前があるようでありますので、実は私、先ほども申したのでありますが、従来引揚げに努力しておる、引揚げを目的とした団体代表を出したいものだ、こう強く考えておるのであります。しかしこれは、まだ折衝してみなければ、政府代表が行くのは当然であるとしても、そのために引揚げが遅れるようなら、政府代表を出さないでもがまんしなければなるまいとさえ思つておるのですが、他の代表についても、一番適当なのはこれこれだということは、われわれはよくわかつておりますけれども先方でどういうことになりますか、できるだけ今おあげになつたような、実際に引揚げに努力している団体代表を出すように、極力努力するつもりでおります。
  58. 田原春次

    ○田原委員 先ほど他の委員からの御質問に対するお答えを聞いておりまして、たとえば、出迎え等に対して議員を、派遣したらどうかということに対する答も聞いたのでありますが、あらためてもう一度お尋ねしておきたいのであります。たとえば同胞救援議員連盟は、超党派的に、各党から比例的に役員を出しておりますから、出迎えの中にこれも加えて、少くとも各党一名ずつは立ち会うようにやつたらどうか。また引揚者の中には看護婦その他築庭婦人などが残つておりますから、おそらく婦人がおると思います。そこで、出迎者の中に、これらの団体の婦人の役職員であるとか、そうでなかつたならば、同胞救援議員連盟の婦人議員等にやはり御足労を願つて、出迎えに万般の遺漏なきようにすることが、引続き残留者の引揚げ促進する交渉等についてもよくはないかと思いますが、そういう人達については、婦人等も考慮する気持があるかどうか、お聞きしたい。
  59. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 議員お話は、先ほどもお答えしましたように、行ければ一番いいと思いますけれども、これを相手次第でありますから、今各党代表を一人ずつ出すとか、あるいは婦人を加えるとかというようなことは、少し早過ぎるのであつて、またこれは主として引揚げに対するいろいろの手続の交渉でありまして、出迎えという意味ではないと思うのであります。先方言つておることも、出迎えというのではなくて、どのくらいの船をいつどこへ持つて来て、幾人それに乗せるとか、あるいは持つて行く品物はどういうものか、あるいはその費用はどうするか、いろいろそういう手続上の問題を交渉する役目と考えておるので、純粋の出迎えの意味では、船着場へ行かれることになるのではないかと思います。従いまして、そういう話合いをするのには、そう大勢の人が行く必要もないし、また先方のラジオの様子では、あまりたくさんを期待していないようでありますが、これはどうなりますか、さらにもう少し実情を確かめてみないと、はつきりしたことは申し上げられないと思います。
  60. 田原春次

    ○田原委員 出迎えだけでなくて、手続の面においても、こういう団体代表やら議会の政党代表が入ることが望ましいのでありますが、これはこの程度にしておきましよう。  次は遺骨の問題であります。御承知のように、海外戦没者は総数百二十三万幾千になつておりまして、これに対しては、宗教団体日本赤十字社その他海外関係団体、議会の衆参両院の厚生委員長、全国の市町村長会長等が入りまして、海外戦没者慰霊委員会というものができておることは、新聞で承知しておりますが、その後の記事を見ますと、遺骨引取りについて、外交折衝の済んだところから漸次引取船を出し、また現地において慰霊をするということで、新聞によると、第一は南太平洋の近いところ、テニアン、グアム等の島のようであります。しかるところ、せつかく今度生存者の受取りが中共からできるというのでありますが、満州、支那等を通じまして、過去十数年の間に非常に多数の戦没者があるのであります。明瞭に氏名がわかつて、引取りが可能であるものもあり、そうでないものもあると思いますけれども、内地の遺家族の気持からいたしますれば、一人でも多くそういう遺骨の引取りを願いたい。そこで、生存者引揚げ関連いたしまして、遺骨の引取りの交渉をし、あるいは、可能ならば宗教代表というものが参りまして、現地で慰霊祭をやる、そうして丁寧にお迎えをするというようなことがほしいと思います。この点につきましては、中共地区の問題と、それから西ニユーギニアとピアク島との間には十二万四千体の遺骨が放置されたままになつておるので、まことに関係者は傷心、その極にあるわけであります。なおまたビルマにも、陸海軍合せて十六万一千の戦死者の遺骨が放置されております。御承知のように、日本はまだインドネシア共和国とも批准が済んでおりませんし、ニユーギニア自体は、オランダとインドネシアとの間のいさかいの土地のようでありますが、さような政治、外交上の問題は全然こちらは関係のないことでありますので、グアム、テニアンまでアメリカ側の好意で行けますれば、さらにこの両方の国に、赤十字社なり、あるいはアメリカを経由してもよろしゆうございますから、話をしていただいて、一日もすみやかにニユーギニアとピアク島、可能ならばその周辺の島々の遺骨引取りだけの短期間の船の派遣方を交渉願いたい。それからビルマにおいては、これまた講和条約にも参加しておりませんが、日本側の総領事館も開かれておるようでありますし、すでに数社の商人数名も行つておるようでありますから、奥地の、引取り可能な地方にだけ、ごく短期間、慰霊並びに引取りの一行を出せるような交渉を願いたい。少くともこれらの努力をずつと続けてもらうことは、遣家族にとりましても非常に希望が持てることであり、先ほど申しました米国占領地区の南太平洋の島だけはすでに例が開かれて、明年早々出られるようでありますので、他の国国に対しても、この問題だけならば、私は固苦しい外交問題ではなくて話ができるのではないかという気もする。これに対して、外務省ではどの程度おわかりになつているか、また努力されておるか、また今後やられるのか、これもひとつつておきたいと思います。
  61. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 満州その他の中共地区における遺骨の問題は、今はちよつと私は差控えたいと思つているのです。今の生存者引揚げができたあとにしないと、一緒にするとかえつてごちやごちやになるかと思いますので、少しこれは時間を置きたいと思つております。ニューギニア方面につきましては、すでにオランダに対して話をいたしまして、ただいま話合い中であります。ビルマ方面は、ラングーンの総領事に調査を命じておりまして、一部調査をして、報告もありますが、奥地は今そう自由に行かれない事情にあります。近所の方面は割合によく手入れがしてあつて、思つたよりもちやんとしておるという報告でありますが、奥地の方の点はまだわかりません。しかしこれは総領事に調査を命じておりますから、だんだんわかるでありましよう。自分で行かないにしても、報告をしてもらうなり、あるいはだれかに行つてもらうという方法もありますから、そのうちわかるだろうと思います。こういうわけで、今度引取りに行く以外の土地につきましても、たとえば先ほどのお話のニユージーランド等にもありますし、濠州にも一部あるのでありますが、こういうようなところとも、それぞれ話を進めております。
  62. 田原春次

    ○田原委員 中共地区は、なるほど生存者引揚げを急ぐ意味において、同時にやることのために生存者の帰還が遅れてはいけませんから、その意味はわかりますが、しかしながら、遺骨はやはり放置いたしますとだんだん識別も困難になり、またそつとそのまま放置してくれるといいけれども、その地方に飛行場ができるとか、いろいろなことで、早く行けばまだ多数の遺骨が迎えられるのが、そうならなくなりますから、少くとも可能ならば、事務的折衝手続等話合いの際に、一応申し出ておいてもらつて、そうして時期等については、なるべくすみやかにやつていただきたい。それから、その他の北方におけるキスカ、アツツ等にもございましようし、今度の戦争の跡始末といたしまして、異境万里の地において戦死されました多数の遺骨を迎えるという腹で、順次ひとつ可能なる範囲で促進してもらうことを希望いたしまして、私の質問を終ります。
  63. 柳田秀一

    ○柳田委員 外務大臣にお尋ねしますが、先ほど、先般の新華社放送についてお話があつたと思うのでありますが、責任ある当局日本に対する正式な通告が受取れない、そこで政府インドを通じ、あるいは日赤を通じ、あるいは引揚者団体を通じて確かめさせておるというお話でありますが、今の日本政府は中国を好ましき国とお考えになつておらないのと同様に、中国としても日本を好ましき国と考えておらないだろうと思う。それならば、外務大臣は、大臣がお考えになつておるような、日本流の考え方からするところの責任ある当局の正式な通知が中国政府からあるとお考えになつておりますか、そういうものはないと考えておられるか、それを承りたい。
  64. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 多分ないだろうと思いますが、なくても、実際に引揚げができるような措置ができさえすればさしつかえないと私は考えております。
  65. 柳田秀一

    ○柳田委員 ただいまの外務大臣の御答弁で、たいへん満足いたします。それならば、先ほど、日赤を通じ、インドを通じ、引揚者の団体を通じて確かめさせておるとおつしやいましたが、その確めさせておるその後の経過によつて、さらに新華社放送以上におわかりになりましたか、それを承りたい。
  66. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今までのところは、まだわからないのであります。ただ、今朝直接日赤その他の団体電報を打つたという放送がありましたから、その電報を見れば、あるいは多少発展があるかもしれません。インドの方からは、正確なことは何も言つて来ておりません。
  67. 柳田秀一

    ○柳田委員 それならば、まず最初に外務大臣にお伺いしたいのですが、政府にはおそらく正式な通知はなかろうということならば、それぞれ日赤なり、あるいはインド政府、あるいは引揚者団体に、中国から何らかの連絡があつたときをもつて日本政府としても引揚げをやられるかどうか。政府が直接にそれを先頭に立つておやりになるのではなくても、引揚げの受入れをおやりになるならば、その引揚げ受入れの行動を開始される時期は、どういうときをもつて目安とされますか、承りたい。
  68. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは交渉だけにつきましては、今のところは電報の往復程度でありますから、大した費用もかかりません。ですから、どんどん進みますが、いつを引揚げ開始の時期ときめるということは、どういう点であるかわかりませんが、ただ実際上、かりに人を出す、あるいは船を出す、ことに船を出すということになりますれば、相当の金が必要と思います。それで政府としては、出してみれば何とかなるというようなことで出すのも、なかなかむずかしいのであります。これは国費を使うものでありますから、その前に何らかの方法政府の者が代表して行かれれば、これに越したことはない。しからざれば、半官半民とでもいうような団体が行けるか、あるいは政府が十分信頼して交渉を託するに足ると思われる団体代表者が行くようになりますれば、それでもつて具体的な話がきまると予想しております。そういたしましたら、船を出す用意はその間にいたして、ただちにきまつたように船を出したい、こういう段取りを考えております。
  69. 柳田秀一

    ○柳田委員 先般の新華社放送によりましても、たとえば新聞記者の質問に、中国の、あれは紅十字というのですか、とにかくそれと日本赤十字話合いしたらよかろうということを向うは返答しています。そこで、引揚者を受入れるところの行動ではなしに、準備行動としても、ともかくそういうふうに向う言つておるのでございまして、こちらはもつと積極的に、早く外務省の方でパスポートをお出しになるなり何なり、その予備調査なり準備行動にすぐ手を打たれるお考えはありますかどうか。とにかく現在引揚げを待つております留守家族といたしましては、りくつの問題、面子の問題、そういうことではなく、一日も早くわれわれの待つておるふるさとに帰つてくれることを遺族は心待ちに希望しておるのでありますから、そういう遺族の心を心とせられて、外務省とせられても、さつそくにそういう行動を開始されるようにお手配されていますかどうか、これに対して伺いたいと思います。
  70. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 旅券その他の手続の問題で、一日でも引揚げ措置が遅れるようなことは決してございません。必ず間に合うようにいたします。即日にでも旅券が出せるような努力をいたします。その方面は御心配ないわけでございます。ですから、代表が行くということがきまりますれば、即刻にも海外に行くことの準備はできると考えております。
  71. 柳田秀一

    ○柳田委員 私がお尋ねしておるのは、第一船のときに行くというのではなしに、すでにもうそういうような放送があるならば、今からでも政府が指導されて、あるいはごあつせんされて、全般的なとりきめなり、あるいは調査なり準備に当らせるべきではないかということです。とにかく、先ほどのモンテンルパにいたしましても、マヌスにいたしましても、そういう方面は、政府は非常に御熱意があるようでありますし、現在アジア局長も行つておる。そういうふうに、政府の役人であろうが、あるいは民間の者であろうが、とにかくすぐ人を派遣されて、それを調査するということは、今後第一船を出すときに非常に役に立つ。政府に御熱意があるならば、今からでも行動を開始されていいんじやなかろうかと思うのですが、その御意思があるかどうかをお聞きしておるのです。
  72. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは、先ほども申しましたように、この前に一番初めの放送がありましたときに、赤十字あるいは全協等においても、即日北京あてに電報を打つて赤十字代表を出す用意がある、全協も代表を出す用意があるというので、そういう処置をとつておられます。ただ、これに対する返事がないものですから、あるいはインドを通じて聞いてみたり、あるいは香港方面からそういう点についていろいろ情報をとつたりしておつたのであります。きよう放送がありましたから、これで返事が来るのだろうと思つておりまして、そういうわけで、決して怠つておるわけではない。先方返事が来ないのに、あまりどやどや行くのも、これも非常に感情の問題もありますから、うつかりして変なふうになると困ると思つて、今まで待つてつたのであります。
  73. 柳田秀一

    ○柳田委員 よくわかりまするが、向うは、そうして二回にわたつて放送しておるのでありますから、そういうような政府の御懸念もよくわかりますけれども、とにかく留守家族の気持をくむならば、当つて砕けろで、政府が直接行かれると、向うはあるいは御機嫌が悪いかもしれませんが、とにかく向うが希望しておるような団体ならば、早く政府の方でパスポートを出されて、向う行つて、これこれの者が来ました、さつそく開始しましようということで、おのずとドアは開かれるのではないか。とにかく、ドアはたたいて開くのでありますから、とびらをたたく人間をすぐ派遣するということが実情に即したことだろうと思うのですが、いかがですか。
  74. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういうお考えもむろんあると思いますが、われわれの方としましては、とにかくインドにもすぐに頼んで事情を調べてもらう、——それは、私どもの考えでは、原則的には政府代表が行く、そして関係団体代表が一緒に行く、こういうのが一番望ましいのでありますから、そのつもりで話をいたしておりますので、そういう点も考えて、たといすぐにやつてみるといいましても、これは先方の了解がなければ、なかなか北京まで行かれるものではないのでありますから、私の方から言えば、話がついて、だれかが行くということが決定しますれば、すぐに旅券を出すような準備をいたしておるような次第であります。
  75. 柳田秀一

    ○柳田委員 一応これで私は外務大臣に対する質問を打切りまして、なお、引揚げ受入れに対する厚生大臣の御見解をただしたいのでありますが、ほかの委員の方々で外務大臣に御質問があろうと思いますから、どうぞ。
  76. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 厚生大臣は一時から参議院の予算の方に出かけますから、この際厚生大臣に対する御質問を願いたいと思つております。
  77. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 外務大臣も帰られるでしようから、ちよつと関連して……。  いろいろと各委員から御質問なり御希望があつたようでございますが、私のところに、昨日、中共抑留されている私のおいから手紙が参りましたが、その他にも数通参つております。それによると、この第十五特別国会放送どもすつかり向うに入るそうであります。池田通産相不信任の状況ども、社会党の活躍をはつきりと聞かしてもらつたというようなことが書いてございました。それから、国会海外胞引揚特別委員会委員をしておるおばさんに参考のために書いておくというので、いろいろ書いて参つております。私は、なるべく言わないでおこうと思つて、今まで黙つてつたのでありますが、どうも話が片寄るようでありますので、委員の方々にも御参考に働いていただき、また外務大臣にもひとつぜひ頭に入れておいていただきたいと思いますのは、私は、先般の北京放送であるとか、けさの放送を決してどうのこうのと言うのじやございませんけれども、しかし、はたして中共におる抑留されておる人たちとほんとうの連絡があつて、しかもそれに密着したものであるかどうかということには疑問が持たれる節がある。それで、無事に給料をもらつて働いておる抑留者の一人でございますが、自分が帰れるというおはちはいつまわつて来るだろう、いつかは帰れるだろうという希望を持つて正月を迎えたい、しかし当局自体は帰してくれそうにないということがはつきり書いてある。また日本政府がどうしてもう少し積極的に中共政府交渉をしてくれないのだろうかということのみを友だちと毎日職場で語り合つているということが書かれておるのでございます。でありますから、私は単なる放送にとらわれることなく、また現在の吉田内閣の外交政策に災いされることなく抑留者引揚げがなされなければならないと思うのでございまして、この点私は、どうも個人の名前をあげて失礼でございますけれども、左派の帆足代議士あたりのお言葉は、私のところに参つておる抑留者の手紙と照し合せますれば、ふに落ちない点が非常に多うございます。従つて、この北京放送にいたしましても、私などは簡単に信ずることができないような心持になつております。ですから、ひとつこの辺をよく日本政府ではお考えになつて、いかに高給をもらつていても、いかに優遇されておつても、年は幾つでございましても、また家内があろうとなかろうと、子供があろうとなかろうと、すべての抑留者は帰りたいということを叫んでおる。帆足さんがおつしやつたように、そう帰りたがつておらない、ときどき旅行にでも日本に帰るというようなことにしてやればいいじやないかというようなことは、全然抑留者は考えておらないということを切々とつつておる。これはおそらく、私たち抑留者の一人であつたとしても、そうだろうと思うのでございます。ただ頼むは、国会委員会国民を代弁して私たちを帰してくださることと、それから政府にこいねがわくは、積極的な手を打つていただきたいということを切に願うというような手紙が書いてあるのでございます。どうか、こういうことを頭の中にお入れになつて外務大臣は、私がアメリカ一辺倒の外交政策をお持ちになつておるということをいつかも申し上げましたら、御憤激なさいましたけれども、しかし何だか、はれものにさわるような気持で、中共ソ連地区に対しましては、政府はおつくうがつていらつしやつて、できることもなさらないでいらつしやるようなところもある。またけさの放送にいたしましても、これは反対の側からではございますけれども、片寄つたところがあるということを考えますときに、どうか政府が中道を歩んで、ひとつ抑留者引揚げに力をいたされたいということを私は切望するものであります。従つて、さしさわりのある政府の要人であるとか、また感情的にすでに過去の経歴などでどうしてもうまく話が行かないというような調査団の代表を送ることはいかがかと思いますけれども、妥当な人物を見つけて、今のうちに交渉をして、引揚げを完了してしまうというところの余地は残されてあるように思いますから、どうぞひとつ国会議員の方々も、最良の道を政府が選び出すべく韃撻なさつて、この委員会の成果をあげていただきたい。帰りたくないという抑留者はないということを私ははつきり申し上げておきたい。どうぞ外務大臣もそのおつもりでよろしく。
  78. 臼井莊一

    ○臼井委員 外務大臣に簡単に一言お伺いしたいのですが、濠州のマヌス島及びフイリピンのモンテンルパに多数の戦犯者がおるようですが、それは大体内地に送還というか、移替といいますか、そういうことができる見込みはどの程度でございましようか。その経過を簡単にお伺いしたいのです。
  79. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはなかなかむずかしいのでありまして、まだ感情が必ずしも非常によくなつておらぬものですから、たとえば、だれかが、国会であれはもう帰れるだろうというようなことを言いますと、すぐそれが新聞に伝えられまして、とんでもない話だというような批評が出るのであります。でありますから、こういう点は言葉を非常に慎まなければならぬと思いますが、私は希望がないなんということは決してないと思います。ただ多少の時間はかかる。しかし、今も賠償の話をいたしておりますし、条約の批准の話もだんだんできて来ております。濠州にも大使がただちに赴任することになつております。こういう点で、話はだんだん進むことと考えております。
  80. 臼井莊一

    ○臼井委員 まだ今のところではまことに心細いお話のように聞えるのですが、この間も濠州の大使館戦犯釈放及び送還のことで陳情に行きましたが、そのときに来ていた母親が、自分の長男で、非常に優秀で、外務省にいたこともある、それがあちらへ移送になつている。それで、お父さんの方は気が狂つたのか何か、ふいと家出をしてしまつて、いまだに死骸もわからぬというようなふうで、次男にやつと嫁をもらつたが、自分もいづらい。そのせがれが早く帰つて来るのが楽しみだということで、そのときにも、せめて内地に来ていれば面会にも行かれるということで、非常に切々として訴えられたのですが、これは、国民感情という点は確かにあると思うのですが、何とかできるだけすみやかに帰れるように、当局においても一層御努力を願いたいし、またマヌス島の方は、そのお方のお話でも、非常に文通がうまく行かない、手紙をやつても半年くらいかかる、こういうようなふうで、非常に困るというようなことを言つておりますから、一段と御努力を願いたいと思います。特にお願いいたしておきます。
  81. 柳田秀一

    ○柳田委員 先般の新華社放送以来、外務委員会でも明らかになりましたことは、政府引揚げ受入れに対する船の用意、あるいは宿舎の用意等は万端の準備を整えておるというお話でありますから、厚生大臣にお尋ねするのですが、それならば、引揚げの受入れ基地はどこにされますか。
  82. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 外務省の方でいろいろ御折衝になつて引揚げが確定いたしますれば、ただいま引揚げに対する受入れの態勢は、御承知の舞鶴の引揚援護局に一時的の設備を持つております。大体二千五百人ないし三千人収容し、一箇月の収容能力は一万人と考えております。なおそれに対して、たとえば中共から引揚げて参りますれば船舶でありますが、御承知の高砂丸を今待機させております。高砂丸は、これは積み方もありましようけれども、大体二千五百人ないし三千人は一時に乗船可能と考えております。なお引揚げて参つて、施設に収容した場合の適当な援護物資等も今準備いたしております。なおまた、帰つて来られて定着するまでの間の輸送、あるいはその間のいろいろな処置に対しましては、予算も大体本年度五千百万円ほどございます。これも御承知だと思うのですが、中共から個々的にお帰りになることを希望された方約七百何十名あつたと思いますが、そのうち八十五、六名は、旅費がないのでいろいろお困りになつておる。それに対して、その予算の中から旅費をお出しして帰つていただいておる。そういうふうな関係で、集団的な引揚げが本年度少かつた関係で、五千百万円のうち大体一千万円弱使つておりまして、そのあとつております。もしもこれで足りませんときは、適当な財政措置を講じて、引揚げに対する万全の措置を講じたいと思つております。
  83. 柳田秀一

    ○柳田委員 よくわかりました。大体従来ナホトカから舞鶴へ帰りました場合に、おおよそ一日に二千人ないし三千人でありました。援護局に五棟ありまして、大体一棟が約二千名くらい入つたんじやないかと思つております。あるいは少し間違いがあるかもしれませんが、それを現在保安隊が使つておりますので、現在の舞鶴引揚げ基地の収容能力はどれくらいあるか、——向うの発表いたしております三万人を逐次収容するとなると、ある程度集団的に引揚げを受入れなければならない。その際に、現在の引揚げ基地として、先般ナホトカから帰つて参りましたように、一日か二日間の間に五千人も帰つて来ると、すぐ一万人になると思いますが、それでも引揚げの受入れは十分であるとお考えになりますかどうか。
  84. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 お説の通り、ただいま保安隊等が一時的に入つております。これは、引揚げ交渉が多少円滑を欠いておつて、集団的に引揚げて来られる方が少かつた関係で、臨機応急に保安隊の方が使つている。しかし、これが使つておりましても、ただいま申しましたように、二千名ないし三千名一時的に収容できる。但し、お話のように一万人も帰つて来ますと、一時に収容ができません。そこで、そういうふうに帰つて来られるとなりますと、外交交渉の進捗状況あるいはその他の情勢を見合せて、万全の措置を講じたいと考えております。
  85. 中山マサ

    中山(マ)委員 厚生大臣にお尋ねをいたしますが、この三万人の人々が帰つて参りましたときに、帰還手当をお出しになる御用意がありますでしようか。
  86. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 これは先ほども申しましたが、帰還手当は出したいと考えております。
  87. 中山マサ

    中山(マ)委員 出したいという希望だけでは助からないと思うのでございます。その予算措置ができておりますかどうか。
  88. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 先ほど申し上げましたのは、定着地までは何とかして無事にお届けしたい、その意味で五千百万円の予算をとつておりますが、そのうち八百数十万円を使つておりまして、あとつております。なおまた、相当お帰りになるようでありますれば、臨時の財政的措置を講じて、万遺憾なきを期したい、かように先ほど申し上げたわけであります。
  89. 中山マサ

    中山(マ)委員 それから、留守家族の給与につきましては、御案内の通り二〇%のベース・アップもあつたのでありますが、そういうふうなことになりますと、自然物価も上つて参りますし、インフレにもなつて参りましようが、留守家族のそういうふうなお手当というようなものはベース・アツプになるのでございましようか。
  90. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 留守家族の方々に対する援護でありますが、これは今回のべース・アツプという問題ももちろん関係はないとは申しません。たとえば生活保護法なんかがむしろ直接関係が多いのでありますが、これらの留守家族の方々に対する援護の問題は、実はただいま恩給法の制定等と関連をいたしまして、来年度予算において根本的に考究いたしております。単に二割べース・アツプしたからというようなことのみに限定せず、根本的に検討いたしたいと考えております。実はこの二割ということについて、生活保護法に関し先般検討いたしたのでありますが、ベース・アツプ云々ということでなくて、留守家族に対しては、もつと総合的に援護の道を考える方が適当じやないかと思つて、ベース・アツプの問題その他の条件をも勘案いたしまして、来年度予算において根本的に検討いたしたいと考えております。
  91. 中山マサ

    中山(マ)委員 十三国会におきまして、戦犯者の家族に対する手当の問題が考えられましたときに、韓国の方々は、今はむろん外国人として登録されておりますが、その当時は同胞として第一線に行つてもらいまして、そして不幸にして戦犯となられました。しかし戦犯者に限つては、同胞時代と同じに扱うようにあのとききまつたように私は思つておりましたが、つい最近私は巣鴨の方の韓国のお方からこういうお手紙をいただいたのであります。それには切々と、自分たち日本人としてそのときには動員されて——軍属その他の人たちでございますが、そうして大勢の青年たちが第一線で死んで行つた。しかも国家の最高機関であるところの最高裁判所においては、第三国人といえども日本国の刑の執行義務には影響なく、刑の終了時までは日本人として取扱うということを言うたにもかかわらず、自分たちは今日まで実に冷たいところの扱いを受けて来た、日本国民の叫ぶ国際信義の実体とはこういうものであるか、というような陳情のお手紙をいただきまして、私は驚いたのであります。もう十三国会できまりましたから、たとい韓国のお方であろうとも、そのときにきまつたことは実行されておると思つておりましたが、実行されていないような口吻をここに漏らしてあるのであります。この点はどういうふうになつおるのでありましようか。この中には、一部釈放された人たちが世の中に出て行つて、たとい最高の学府を出た人たちでも、その生活には非常に困つておられるというようなことを聞いた、ましていわんや韓国人である自分たちが釈放されたあとの生活は非常に心配になるのである、だからぜひひとつ国会におきましては次のことを御考慮願いたいという陳情をここにいただいております。それは五点ございます。釈放後職を得る程度の生活安定を得るまでの期間の生活保障として、最低一箇年間の生活費を支給してもらいたい、日本戦犯と同様留守家族援護法の適用をしてもらいたい、第三には、希望者には日本永住権を付与してもらいたい、第四には、釈放後寝具及び一般社会に通用し得る被服の支給をしてもらいたい、釈放の促進、この五項目をあげて来ておるのでございますが、この間外務省関係交渉をいたしましたところのあの日韓の問題につきましても、あれがうまく行かなくて今日に至つておるのでございますが、こういうふうな人たちを、もう講和ができたのだから、これは第三国人であつて、外人だという考えで扱うておきましたならば、ここにおります人数はわずかに二十九名ではございますけれども、実にこういう人たちわが国に対して抱きます恨みというものは恐しいものがあるのではなかろうかと私は考えます。世界の平和という観点に立つて物事を考えて参りますと、日本のために働いて、しかも戦犯となつて抑留されておる人たちが、もはや第三国人ですから、なぜすみやかに釈放されないかということもふしぎな問題の一つでございますが、この人たちの家庭に対する援護の問題、もしできましたならば、今あげました箇条書について、厚生省としてはどういうふうなお心づもりを持つていらつしやるか、私は聞かせていただきたいと思います。
  92. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 ただいまお述べの御意見、われわれもきわめてごもつともだというふうに考えております。ただ、なぜこういうふうになつたかと申しますと、戦犯の家族の援護をあの法律を使つてやろうとされたことに間違いがあるのではないかと私は考えております。つまり未復員者給与法というものを基礎にした特別未帰還者給与法、これを少しいじりまして、戦犯者の家族を援護しようという形をとりましたために、そういうことが出て来たわけでございます。特に第三国人であるからというので差別待遇は全然いたしておりません。ただ御承知の通り、日本国内に家族がおります者についてのみ、その留守宅渡しをする。これは日本国の行政権の範囲内でできるのであります。そのできる範囲内のことをするというのがあの法律の建前であります。その法律を使いましたので、ちようど韓国人に対しては非常に不合理な結果になるということに相なつたわけでございます。これにつきましては、やはり正々堂々と戦犯者の家族を援護するための特別な法律を出すという方法をとりますならば、その趣旨は通つたのではないかと思いますが、そうでなしに、そういう特別な別の目的を持つていた法律を使いましたので、結論がああいうふうになつた。従いまして、こちらにおります日本人と同じような扱いが結局最後に出て来るということになる。つまり韓国人でありましても、日本人でありましても、現在の扱いとしましては同じ扱いをしております。ただ、たまたま家族が韓国人は韓国におりますし、日本人はこちらにおるということで、前渡しができないというような形になつておるだけでございます。  今入つております韓国人が出て参りますときには、その人に対する給与は出るということになつておると存じます。
  93. 臼井莊一

    ○臼井委員 厚生大臣に、時間がないようですから、一応緊急なことだけお聞きします。  例の遺家族の年金でございますが、あれは非常に手続が煩瑣であり、それから数が多いためでありましようが、大分遅れるらしいので、遺家族の方でやきもきしておられるようですが、何か迅速にできるような簡便な方法でもおとりになつていらつしやいませんか、ちよつとお伺いいたします。
  94. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 ただいまのお尋ねの年金の支給に関しましては、たしか四月の三十日にあの法律ができまして、その後に政令をつくりましたり、いろいろな手続の基準をつくりましたりいたしまして、実際に遺族の方々に御通知申し上げて、いろいろ申込みを受付けるに至りましたのが、大体六月の末から七月であります。実は、私が就任いたしました際に、まずこの問題を検討いたしました。当時におきましては、日に三千件くらいがやつとで、とうてい三千より上は行つていなかつた。大体十一月の初めごろに十数万件が裁定をされて、通知を受けたが、遺族の方々は二百万内外おられる。これではとうてい間に合わず、年末を控えて遺族の方もお困りであり、せつかく法律をつくつて、あたたかい国の手を差延べたのに、皆様に届いていないということでは困るというので、私は現場にも参りまして、——御承知でもありましようが、復員局でもやり、舞鶴でもやつておりますが、その現場に行つて、つぶさに手続のやり方を検討いたしました。御承知のように、遺族の方々から市町村、府県を通じて厚生省に参り、厚生省で裁定をいたしまして、その通知をいたしました後に、大蔵省あるいは郵政省の郵便局の窓口を通じて皆様のお手元に渡る。裁定につきましても、実は府県でいろいろ身分関係その他を調べまして、そして厚生省に持つて参りますが、身分関係その他死因等が明確なものにつきましては、本省の方では、府県の方で確かだということを申して来れば、一応省略して、少しでも手続を簡略にいたすようにいたしました。それから、何分にもこれは相当の手続を要しますので、少しぐらい間違つてもいいじやないかということも言われたのでありますが、事国家の会計に関する限りにおいては、やはり正確を期さなければいかぬということもあり、一方を通せば一方が通らぬというようなことで、いろいろ困りましたが、ただいま申しましたように手続を簡略にいたし、それからこの事務に従事いたしておる者は、なかなか厚生省の定員だけではまかないきれませんので、臨時雇いを相当便い、それでもまかないきれませんので、厚生省の中から他の者を流用し、転用いたしまして、手続の簡略化をはかるとともにさような措置をとりまして、大体十一月を経過いたしました。そうして私は、裁定通知の状況について毎日日報をとり、私が毎朝一番最初に厚生省から報告をさせます書類は、この裁定通知でございます。そうしてやつて参りまして、それでもなかなか行かぬ。遺族の方々がたくさん見えて、また国会でもいろいろ陳情があり、苦情がありまするので、これは何とか年末にいたしたいというので、実は御承知の超過勤務でありまするが、各省の超過勤務は、従来大蔵省がなかなか厳重な態度をとつておりまして、なかなか出しません。しかし事裁定通知の事務に関する限りは、従来の超過勤務と違うからと、閣議で特に大蔵大臣に申して、この点に対しては従来の超過勤務に対する大蔵省の態度を適用しないで、ことにこの裁定通知の事務に従事しておる人は臨時の人が多く、また遺族の子弟の方が多く、あるいは未亡人の方もおられるので、さような関係で、この超過勤務に対しては大蔵大臣が特別の考慮を払うということにいたしまして、これを閣議できめまして、私が就任いたしましたときには一日三千件以下でありましたのが、その後ただいまでは二万一、二千件ぐらいになつております。そうして年末までに大体三十万件ぐらいがやつとであろうと思われておりましたのが、きよう現在では八十五万三千件に相なつております。そうして、一時は遺族の方々からの苦情の種でありましたものも、最近は、私どもの手元には、むしろ恐縮の手紙がたくさん参るくらいであります。しかし、なおこれでも満足いたしませんで、できるだけこれらに対しましては最善の処置を講じて行きたいと考えております。
  95. 臼井莊一

    ○臼井委員 いろいろお骨折り願つておるようで、まことに感謝にたえないのですが、地方の県庁あたりを見ますと、厚生省へ行つたのがどかつともどされるので、仕事がたまるから、手数でも、できるだけこまかく——、出す方もそうすべきであるし、もどす方も流れ作業的に間断なくやると、仕事が絶えなくていい、こういうようないろいろな希望があります。地方でも一生懸命やつておるようですが、今後ともそういう点を御督励をいただきたいと特にお願いをいたします。
  96. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 本日は、都合がありますので、この程度にいたし、遺家族援護についての政府当局よりの説明聴取は延期いたします。なお、次会は公報をもつてお知らせをいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時十三分散会