○松岡(俊)委員 講和によ
つてわれわれは独立した。このときに長年やり来つたものを何とかし
ようという
ようなことではなしに、この際ほんとうに日本を何とかせんければならぬというためには、現状ではいけないのだ。どこにかメスを入れなければならぬ問題に直面しておるのだと思うのであります。木村次官は最も卓越した政治家なんですから、こういうときにほんとうのメスを振うべきときが来たという
ようなぐあいに
考えていただきたいということを前提として私は
お尋ねするのですが、
国鉄にあんなふうにして、われわれ鉄道省からあるい
運輸省から鉄道の方を預けた
ようには
なつておりますけれ
ども、
国鉄の使命から言うたならば、私はもうかる線などは民間に払い下げて、しつかりその金をと
つて、そうして新しい
希望を満たしてやる
ような
考えを持つのが私は政治家じやないかと思う。どうも鉄道が自分らのところに入
つたのだからして、もうかる方に独立採算云々なんということは、これは
国鉄のほんとうの使命じやない。
国鉄は、
政府がもうからない、何とかせんければならない間は育ててやる。もうかる
ように
なつたら、それを高く、民間の方で要求するならばこれをや
つて、そうしてその金でも
つて新しい
希望するところの線をつくるというところにこそ、私は始めて
国鉄の使命があるのじやないかと思う。こういう点に今まで論議がされたのかどうか、審議会な
ども見まするというと、実に姑息なものです。ああいうあんばいな、いろいろ建設する必要の理由な
ども私見まするというと、あれでは百年河清を待
つてもできはせぬ。今日の
ようなぐあいに、片方危険を防止するために、あるいは
サービスをよくするために金がいるという
ようなことに
なつてお
つても、しかも独立採算云々という
ようなことにもとらわれておる。建設だけは国家からこれを出してもらう
ようにする。しかしながら利子の補給も問題だ。先般来の質問応答を聞していますると、結論は金がないということになる。金がないということは、
国鉄の使命、ほんとうに性格がはつきりしていないから、そこに来るのじやないか。
国鉄というものは、もうからないで民間ではとてもやれないところをや
つてや
つて、そうして少しもうかる
ように
なつたならば、それを民間に与えてこれを高く売ると言うては何ですけれ
ども、適当な値で売
つて、その金で新しいものをやる。ち
ようど商売を料理する
ようなぐあいに行くのがほんとうじやないかと思う。どうも一たび自分の領分に入つたら、これをあくまで離さない
ようなぐあいにして、営業のうまくい
つている線から出た金で、修理云々するなどという
ようなことばかり
考えておるのはどうかと思う、この
国鉄の使命をち
ようどいい機会ですから、独立に
なつた今日では、ほんとうの日本の更始一新の上から
考えて行かなければならぬじやないか、これがほんとうの政治家の私は任務だと思う。幸いに木村君が石井
大臣とともにおられるのですから、この
国鉄の性格をはつきりして、そうして国策の
一つとして何か
考える
ようなぐあいに行かなければ――たいへん私のことを申し上げて恐れ入りますけれ
ども、明治の御維新のときに、伊藤博文が何と言うたか、東北の賊軍を征伐し、まさに凱旋せんとする官軍の将兵は云々と言うて、そうして建白書を出して、この建白書がものを言うて近衛師団ができた。近衛師団ができて、
一つは論功行賞の不平を押える。
一つは明治
政府のいまだ定まらないものを固くする。地方の人心を治めるという一石三鳥をやつたゆえんですけれ
ども、これがすなわち東北の賊軍ということに
なつて、東北の――ここに永田さんなんかいらつしや
つて恐れ入りますけれ
ども、東北がこういうぐあいにして八十年遅れておる。この線路図を見てもわかるのです。これほどまでに遅れておる。この間からたいへん
国鉄総裁、その他が
サービスサービスと言いますけ
ども、東京から大阪に行くところの汽車の
サービスと、上野から行くところの
サービスをひ
とつごらんになさればわかる。
か
つて雪害問題を唱えたときに、たいへん尾籠な話ですけれ
ども、冬、もう私のところは雪が五尺も降
つておりますが、汽車の中で便所に行
つて来ればすぐかぜを引く。あんなふうにして汽車の中にいて、スチームの暖かいところにいてつい便所に行くというと、もうもすつかりかぜを引いてしまう
ような汽車にしておいて、これを何としているのだと言つたときに、喜安鉄道次官が、まことにそうです、恐れ入りましたというぐあいで、五百万円を投じて
ようやくスチームを通す
ようにした。また東北に働いておるところの鉄道員も、私が雪害問題をひつさげるまでの間は、熊本の方面も九州の方面もどこでもみな同じ取扱いではありませんか。言う者がないというとこんなふうに
なつている。そればかりではない。さらに全国の国有林中東北大県だけで四割五分を占めておる、こういう間違つた政治が実際にある。あそこに今北海道からおいでの方がいらつしやるけれ
ども、維新のときには、東北六県を飛び越えて北海道に国力がすつかり使われたものですから、北海道は、函館などは東京と同じ
ように銀座に
なつていますけれ
ども、一たび東北を歩いたらどんなことになるか。東北の惨状は実にあまりにもはなはだしい。そこに持
つて行
つて政治家の少し有力な人がいなかつたかどうかわかりませんけれ
ども、この十一線と十六線のことなんです。みなこれを調べてみますと、東北の方が、北陸三県中の百五十何キロに対して、わずかに五十キロそこらしかない。こういう配分をや
つておるじやありませんか。こういうぐあいに
なつておるときに、金がない、戦災のために、まことにもつともな話、これを
復旧して危険のない
ようにする、
サービスもよくせんければならぬという、一々ごもつともな話で、私は決して無理を言いません。それだからこそひ
とつ東海道を山陽線までずつと、あるいは東北の日本鉄道の持
つて行つた
ようなところの、もうかる線の
ようなものを高く売り飛ばして、民間にやらして、その金で新しい線を建設するという
ような画期的なことをしなければ、未開発なところを開発するということはなかなかむずかしかろうと思う。国家はこんなに貧乏なんですから、貧乏な中においてひ
とつこういうぐあいの画期的なことをやるには、非常に熱望しておる鉄道がなければならない。もうすでに自動車の道もでき、たくさん自動車も利用されるし、飛行機も利用されます。けれ
どもその飛行機が東北のあの雪の中でも
つて利用できますか、自動車が利用できますか、これを
考えなければならぬと思うのです。そうでなければわれらはいつのときにか国家のあたたかみに浴することができるか。
国鉄の人はこれがわか
つているかと思うのです。自動車も利用することができない。飛行機も利用することができない。ただ
一つ鉄道を利用して行かんければならぬ。その鉄道がハンディキャップで、半年ないし四箇月も雪の中に納ま
つているものですから、工事が難儀だ、人口が少い、みな条件がはまらないじやありませんか。この選択の順位に来ない
ようなところばかりが残
つておる。この残
つておるところをいつのときや
つてくれるのか。私はどうも東北の人間が少しぼんやりしておるものだから、昨今の
ようなデモ行進をすることも知らない者ばかりおりますけれ
ども一たび真剣に
考えときには、日本政治のあまりに不公平なのに対して、何びとか敢然として立つときがあるのじやないかと思う。私が十年間苦闘して、
ようやく雪害の二字を入れて、――この前申し上げました
通りに、その当時はどこでも共鳴するものがなかつた。東北六原の中でも福島県や宮城県は共同しなかつた。新潟県だけです。それが今日は鳥取、島根に及ぶ積雪寒冷単作地帯でも
つてちやんとい
つている
ようなぐあいに、利用する
ような頭がぴんと来る人と、東北の
ようなぴんと来ない人間がいるところでは、こんなふうに
なつているのを政治が少しは
考えなければ、ほんとうの政治じやないと私は思うのです。一番
国鉄ではわか
つているのじやないかと思うのでございますが、今私が根本的の問題をお聞きしたいというのは、
国鉄の使命、性格、これをはつきりしていただいて、もうかる線であつたならばこれを民間に移してもうからない線こそ国家の力をも
つてや
つて行こうという
ようなぐあいにしていただけるかどうか。長い聞こういう不遇な地域にいるものも税金は出しているので、その税金によ
つて鉄道もできているのです。その鉄道でも
つて相当利用されている。この線路図を見ると、一目してよくわかる。こんなふうにいいものはいつまでもいい。悪いものはますます悪いものに
なつて行く
ようなぐあいに
なつている。政治はこの機会だからこれを改めることが心要じやないか。私は木村君はお父さんの時代からよく知
つていて、なかなか実力のあるお方ですから、私の話はよくおわかりだと思うのです。戦争のあとでこういうぐあいに
なつているときにこそ、初めてほんとうの政治をやる機会だと思うし、またそれが政治家としての本来の使命でもあるかと思うのでございます。こういうために、
国鉄の性格をはつきりさせるために、大きいといいますか、力強い調査会をつくる
考えがおありになるかどうか。またもう
一つは、こういうあんばいな政治に
なつて議会政治が重んぜられるときにおいて――この前、田原君が質問されましたが、方々に議会を拘束する
ような審議会の
ようなものがたくさんある。これは法令でも
つてできているからというこの間の御答弁でありましたが、それは単なる御答弁と私は承るのですけれ
ども、議会が無視されて、これで政治家はいいのか。議会に力のない者ばかりいるからこんなことになるのか、どうなのか。それだから議会に何ら席のない者さえも
大臣になるという
ようなぐあいに
なつている。こういうぐあいではたして議会政治に権威があるかどうか。いろいろ
考えますと実いい機会ですから、
国鉄の性格の問題を一導因として、日本の政治の更革のところまで進む
ようなぐあいに、木村政務次官に
大臣とともに御奮闘くださるお気組があるかどうか。ここまでの御答弁を願いたいと思うのでございます。