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山口説明員 まず御
質問の北方における拿捕の状況でございますが、終戦後ひんぴんとして拿捕事件が起つたのでございますが、その後本年の平和条約発効後、なおかつその問題が継続いたしておりました。それでこの問題に対して去る五月の閣議で、これが対策といたしまして、北方水域に対しましても海上保安庁の巡視艇を特別に哨戒させることに相なりまして、現在のところ常時あの水域に二はい
程度巡視を実施いたすように手配をいたしております。このようにして巡視艇が出ましてから後は比較的拿捕が少くな
つております。これは北方における特有の現象でございます。
いかなる意図に基いて減少したか、的確に判断はつかないのでありますけれ
ども、幸い今年に入りまして、ことにこの巡視艇が出るようになりましてから、比較的北方の拿捕は減
つておるわけでございます。いろいろの情報よりますと、こちらの巡視艇は御承知の
通り現在のところ火器は持
つておりません。海上保安庁という行政機関として、平和的に
日本の漁船が操業の統制を守るように監視かたがた行
つて、何か事故がありましたときにはそれが保護に立つというような建前で行
つておりますので、その辺のことが相手のソ連側にわかつたのかしれませんが、比較的向うの監視艇と接触する場合もございますが、それが巡視艇との間にトラブルを起さずにわかれておるような状況でございます。事件がごく最近あつたようでございますが、約半年間というものはほとんど拿捕事件がなかつたというのが北方の実情でございます。ところがわれわれの方の巡視艇はそういう方面に出て行きました場合には、実力としては持
つておりませんので、拿捕された場合には、なるべく事前に拿捕にならないように、向うの領海を侵すようなことがないようにという点を指導しまして、万一拿捕事件でも起りもしたら、なるべく円満に行きますように、どういう地点で、どういう
内容であつたかということを復命することに今日では努めておるほかはないのでございます。
次に朝鮮海域の問題でございますが、この方面も先ほど申し上げた
閣議決定の場合に、朝鮮水域に対しましても二隻ないし一隻、常時巡視艇も哨戒できるように手配をいたしました。むろん水産庁はこの朝鮮海峡の方に監視船を重点的に配置しておりますから、あちらの方では三隻ないし四隻くらい出ておると思いますが、ただいまのところ巡視艇としては東支那海へ特別哨戒に出る二隻が往復ともに朝鮮海峡の哨戒をし、それから現在ではさらは舞鶴方面から特別にこのために朝鮮海峡の方へ哨戒に出るようにいたしております。それで朝鮮海峡の方におきましては、最近非常に重大な問題が起
つておるわけであります。お話の李承晩ラインというものは、御説の
通り国際法上から見ては何ら根拠がないと
日本政府としては認めまして、これは私
どもとしても問題にいたしておりませんが、その後お話の防衛水域の問題が現在では非常に深刻な問題にな
つて来まして、
日本の漁船としましては済州島の周辺あるいは朝鮮の南方の東海岸、この方面に非常に魚がおるわけでございまして、どうしてもそこへ行きたいということでございましたが、この防衛水域が設定されましてから、この防衛水域の性質と申しますか、あるいはこれによ
つて受ける打撃がどういうふうになるか、取締りをどうされるのかという点につきまして、宣言そのものでははつきりわかりませんので、いろいろその後アメリカ大使館を通じまして、国連軍側にも、これの性質あるいはまたこれが
日本の漁船にと
つては致命的な打撃で、もしも
日本の漁船の当該海域に入ることを禁止するということであれば、きわめて重大な
影響がございますので、その間非常にデリケートでございますが、向うの宣言では国連軍の作戦行動の遂行に阻害を与えない限り入り得るのだ、また各国の漁船もしくはその他の
船舶の航舶の航行とうものは、ただいまの作戦行動の遂行に阻害がない限り許されるのだ。それは公平に取扱うのだというお話でございますけれ
ども、事実におきましては、今どういういきさつか知りませんが、国連軍の船もしくは韓国の艦艇と思われるものから立ちのきを命ぜられたり、翼撃を受けたりして困
つておりますので、これらが防止につきまして、せつかくただいま外務省が非常に苦心して交渉いたしておるわけであります。保安庁の巡視艇が出ておりますが、これらの
仕事の執行の仕方はただいまここで申したと同じことでありまして、実力をも
つて防止するというようなこともできませんので、随時
日本の漁船が拿捕されるような、いわば向うの本来の領海に入るようなことがないように、またいろいろと無電による連絡等によりまして、極力事実上の不当行為にあわないように指導をするよりほかやむを得ない状態でございます。それから不幸にして拿捕された場合に、その損害についてどうするかということでございますが、お話の
通りこれは水産庁の方でやるわけでございますけれ
ども、先般、拿捕事件がふえましたので、過去三年くらいの実績を前提として一種の保険ができておることは御承知のことだと思いますが、あれは相互保険式にな
つておりますが、これらについてもつと国として、何らかそれに幾らか金を援助したらどうかという御意見もむしろ出ておりまして、
目下水産
委員会でもこの問題が議論されておるようでございます。私
どもも水産
委員会の方へは、この防衛水域に関する問題につきましてはその都度列席させられまして、いろいろと聴取しておる次第であります。