運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-12-01 第15回国会 衆議院 運輸委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月一日(月曜日)     午後一時五十四分開議  出席委員    委員長 逢澤  寛君    理事 尾崎 末吉君 理事 關谷 勝利君    理事 田原 春次君 理事 正木  清君       岡田 五郎君    佐々木秀世君       玉置 信一君    徳安 實藏君       松岡 修三君    山崎 岩男君       山田 彌一君    臼井 莊一君       河本 敏夫君    吉川 大介君       熊本 虎三君    楯 兼次郎君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 石井光次郎君  出席政府委員         運輸事務官         (海運局長)  岡田 修一君         運輸事務官         (船員局長)  武田  元君         運輸事務官         (自動車局長) 中村  豊君         運 輸 技 官         (船舶局長)  甘利 昂一君         運 輸 技 官         (港湾局長)  黒田 静夫君  委員外出席者         運輸事務官         (大臣官房観光         部長)     間島大治郎君         海上保安庁次長 山口  伝君         専  門  員 岩村  勝君         専  門  員 堤  正威君     ————————————— 十二月一日  委員小西寅松君辞任につき、その補  欠として永田良吉君が議長の指名で  委員に選任された。     ————————————— 十一月二十八日  戸井線敷設促進請願川村善八郎  君紹介)(第一七〇号)  糠平発電所設置に伴う鉄道路線移設  に関する請願高倉定助紹介)(第  一七一号)  上川、十勝三股間鉄道敷設請願  (高倉定助紹介)(第一七二号)  上士幌、西足寄間鉄道敷設請願  (高倉定助紹介)(第一七三号)  通運事業者の公正なる自由競争確保  に関する請願芦田均紹介)(第二  一一号)  の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  運輸行政に関する説明聴取     —————————————
  2. 逢澤寛

    逢澤委員長 これより開会いたします。  前会に引続き運輸行政に関し説明を聴取いたします。  この際運輸大臣より発言を求められておりますので、これを許します。石井運輸大臣
  3. 石井光次郎

    石井国務大臣 私このたび運輸大臣に新任いたしました石井光次郎であります。大分おなじみの方が多いのでありますが、また新たに御就任の委員の方もおられるので、何分よろしくお願いいたします。  政府といたしましては、独立の裏づけとなる自立経済の達成こそ、現下の日本に課せられました最大の急務であるという考えをもちまして、去る二十一日の閣議で重要施策要綱を決したのでありましたが、経済基盤拡充発展基礎的条件になりまする海陸空運輸に関する行政を担任いたしております運輸省の責務も重大でありますが、同時にこの諸施策を強く進めて行かなければならないと思つておるのであります。この間の重要施策要綱の中にも、外航船舶増強という問題、それから鉄道新線建設老朽鉄道施設の更新並びに既設線の電化の促進という項目をあげておるのであります。運輸省としての重要な問題は当然こればかりではないのでありまして、いろいろな問題がたくさんにあるので、各局長から先ごろ来だんだん御説明申し上げておるのでありまするが、何分とも皆さん方の深い御理解のもとに、日本経済発展基礎となります、また経済発展の大きな潤滑油となるべき交通問題につきまして、どうか皆さん方のお力によりまして、日本交通が各方面においてりつぱな発達をいたしますように、私どもとしては行政をつかさどるつもりでありますが、なお一層の御指導をお願いする次第であります。これをもつてごあいさつといたします。
  4. 逢澤寛

  5. 中村豊

    中村(豊)政府委員 終戦復興の跡の最も著しいものの一つ自動車だといわれておるのでございますが、それについて最近の情勢、また運輸省自動車局として所掌しておる仕事内容及び問題の点について概略を御説明申し上げたいと思います。お手元に配付いたしました資料の九の、自動車局所掌事務の概要をごらん願いたいと思います。  まず二十五ページに自動車保有台数推移表というのがございますが、これについて見ていただきます。昭和十年の自動車台数が全部で十七万六千台でありました。昭和十三年の戦前最高台数で二十二万二千台でありましたが、最近の二十七年八月末においては六十万七千台に達しておるのでございます。そうして毎月一万台以上、一年間に十二万台以上の自動車がふえておりますので、この調子で行けば一、二年のうちに百万台の大関門を突破するだろうと予想されるのであります。それほど自動車復興ぶりは著しいのでございます。これを輸送数量にしてみましても、最も代表的なバストラツクについて見ますと、バス戦前最高昭和十三年の十九億人であつたのでありますが、昨年の二十六年度はもう十七億まで復興しております。二十七年、本年度はおそらく二十億を突破して、戦前最高のレベルを抜いておると予想できるのであります。またトラツクについては特に増強は著しいのでありまして、戦前最高は十八年の二億七千三百万トンでありましたが、昭和二十六年においては三億二千四百万トンと、はるかに戦前を凌駕してしまつたのであります。特に貨物輸送機関としては、トラツクのほかに国鉄私鉄あるいは船舶というものがあるのでありますが、それらの輸送トン数を見ますとトラックは昨年においては三億二千四百万トンであつたのに対して、国鉄は一億五千二百万トン、海運は内航、外航合せて七千四百万トン、私鉄は三千百万トンというふうに、貨物自動車陸上貨物運送の王座を占めておることが十分にわかつていただけると思うのであります。  そこでこれらの自動車に対して運輸省といたしましては、資料の三ページにありますように、運輸大臣の下に各局と相並びまして自動車局がございまして、それに総務課財務課という局直属のもののほかに、業務部整備部というものを二つ置いておるわけであります。業務部は旅客、貨物通運というふうな事業監督道路調査をやつております。整備部の方は登録資材とか整備車両という、主として技術面整備面を取扱つておるわけであります。このような中央機構を受けまして地方の九つのブロックに陸運局というものがございまして、これは自動車のほかに地方鉄道軌道監督及び倉庫の監督もしておるわけであります。さらにその下に、各都道府県知事のもとに陸運事務所というものを置きまして、これが陸運行政末端車両検査登録整備あるいは輸送監督第一線監督をしておるような形になつておるわけであります。なおこの陸運事務所都道府県知事の下に直属しておりますけれども、この人事と予算運輸大臣が直接握つておりまして、その意味運輸省直轄行政機関ということが言えるのであります。  五ページを見ていたきますと、自動車局所掌事務内容が書いてあるわけでありますが、かいつまんで申し上げますれば、先ほど申しましたように、バスタクシーハイヤートラツク自動車道事業通運事業というふうな事業監督という大きな部分と、自動車検査登録整備技術指導というふうな大きな部分と、この二つになつておるわけであります。自動車局仕事の最も大きな特色は、自動車関係仕事国家事務であるという点でございます。この点は先般来自動車のような仕事は、現場第一線仕事であつて、これは地方事務であり、地方府県知事に委任すべき一仕事であるということが盛んに主張されたのでありますが、しばしば論議されました結果、現在では国家事務であるというふうに認められております。但し最末端仕事地方行政との調和をとるために都道府県知事の中に入つておる、このような形になつておるのでありますが、この機会にもう一度繰返して国家事務であるという理由を申し上げておきたいと思います。  その第一は、自動車は数時間にして一つの県を一つつて隣の県に入つてしまう。一日走れば数府県にまたがつて走るように、その行動半径は一府県のような狭い範囲に跼蹐しない非常に大きなものでありますので、これを一府県知事監督するということは、まつたく自動車行動性機動性に即応しないということから、広域行政であるという意味国家事務であると思うのであります。第二は、自動車はもとより鉄道軌道、航空、海運というものと総合して交通政策を立てなければいけませんので、これは総合行政であるということが言えるのであります。これを知事がただ狭い観点からやることは間違いであろう、この意味国家事務であるということが言えるのであります。また通運については、国鉄と密接不可分、脣歯輔車関係にある仕事でありますので、これは国鉄その他の鉄道監督する国家がやるべきことは当然であると思います。さらに車体の検査登録については、これまた全国的に一元的に行う必要がありまするし、保安を確保するためにはこれに非常に力を入れなければいけませんので、これまた国家事務であるということが明白であろうと思うのであります。そのようにして自動車行政国家事務であることは明白であると思うのであります。  ただ運輸省行つている自動車行政は、国家事務としての自動車仕事のうちで、全部ではなくてその一部分をやつておるにすぎないことは、まことに残念なことであります。と申しますことは、自動車行政のうちで、運輸行政もきわめて重要でありますが、その他にたとえば自動車生産行政、あるいは道路行政、あるいは道路交通取締り行政というものも重要な部分に当るのでありますが、これらはいずれも他の官庁において所管しているのであります。生産行政は通産省により、道路行政建設省において、交通取締り行政警察関係においてやつておるのであります。かんじんの自動車総合発達をはかるために、これらの行政権が各官庁に分属しているということは決して望ましい状態ではなく、健全な発達をはかるためには、これらを一元化することがぜひとも必要であろうと思うのであります。  自動車行政運輸行政保安行政をやるにつきまして、根拠となつている法律としましては、バストラツクタクシーハイヤーというような自動車運送事業監督をしておるものとして、道路運送法がございます。これを中心にしまして——いろいろの政令とか省令が出ているわけでございます。次に重要な法律としては、通運事業監督しているところの通運事業法がございます。また車両保案行政中心としては、道路運送市両法というものがございます。これに関していろいろな政令省令が出ているのでございます。これらの道路運送法あるいは道路運送車両法は、いずれも昨年の国会において審議決定をしていただいたものでございまして、その後の実施状況も円滑に行われているのであります。ただ最近の実情にかんがみて多少修正すべき点も現われておりますので、いずれ近いうちに提案申し上げて御審議をお願いしようと思つております。なお自動車法律として重要なものに、自動車抵当法道路交通事業抵当法二つあるのであります。自動車抵当法というのは、動産である自動車一つ一つをつかまえて抵当権目的にして、比較的少額、短期の資金を借りる金融の道を円滑にするための法律でございます。道路交通事業抵当法は、自動車運送事業なり、通運事業なり、自動車道事業なりの事業に従属する財産を一括して財団を設定して、それを抵当権目的にして、比較的長期多額資金を融通するための法律でございます。この二つともその後の実施状況はきわめて利用価値が多いのでございまして、非常に効果のある評判のよい法律ということになつております。これらの法律の御審議にあたつていろいろ御心配になつた点も、十分にその目的を達しておるように見受けられるのであります。こまかい内容につきましては、お手元資料に詳しく書き上げてございますので、おひまの節にゆつくりと御検討をお願いたいと思うのでありますが、問題の重要性にかんがみまして、自動車行政当面の重要な問題四、五項目について御説明を申上げたいと思うわけであります。十九ページにこの項目を羅列してございますから、以下これについて簡単に要点を御説明申し上げたいと思います。  第一は、国営自動車に対する行政方針でございます。国営自動車のうちで最も代表的なのは、日本国有鉄道が経営するいわゆる国鉄バスでございますが、これが最近非常に地方から要望がございまして、各地で国鉄バスを動かしてくれという御希望がございます。ところが、それに対してその付近に民営バスがすでに非常に発達しておりますので、国鉄民営の問題として至るところで摩擦を起しておるのでございます。これについてはたびたび国会でもご審議、御質問があつたのでありまして、前の国会でも前村上運輸大臣から国鉄自動車に対する考え方ということを申し上げてありますが、それらの考え方をもう一度繰返して申し上げておきたいと思うのであります。  国鉄自動車は、日本国有鉄道法によつてその性格におのずから制限があるのでございまして、日本国有鉄道に関連する自動車ということになつております。これを具体的に申し上げますれば、鉄道建設線の先に行く先行線及びかわりに行く代行線、それから鉄道鉄道との間をつなぐ短絡線、及び鉄道から枝葉のように伸びて鉄道を培養するところの培養線、この四つ国鉄バスのやるべき分野でございまして、この四つに該当しないような線については、これは国鉄バスをやる余地はないのでございます。問題は、そのような四つ性格に該当する場合であつても、その地区民営バスがある場合にどうするかという問題でございまして、これについては民営であろうと国営であろうと、自動車運送事業に関してはまつたく同じように見る。公共性の強いものであるから、国営を優先にする考えはないのだという根本方針があるのでございます。と申しますのは、民営であつても、道路運送法によつて厳重な監督取締りのもとにあるのでありまして、公共事業として大きな責任義務を持たされております。そのような責任義務を尽す以上は、民営事業であつてりつぱな存在理由があり、これを助長すべきことは当然のことでありますので、運輸省としましては、今後具体的な案件に基きましては、はたしてそこの民営バス業者が十二分に法律の要求するところの責任義務を果しておるかどうかということを厳重に審査しまして、責任を果しておればあえて国鉄バスを認める必要はない、また責任を果す見込みが十分であれば、国鉄は認めないのであるが、万一不幸にも民営バスが十分な責任義務を果していないときには、これは民営であつても助長する余地がないのでありまして、初めて国鉄バス免許される、こういうような段取りになるのでございます。問題は、個々の場合に具体的に検討すべき問題でありますが、根本観念としては、既存事業者をできるだけ助長さしてやるというところにあるのでございます。  第二は、通運事業免許方針でございますが、通運事業は、戦争中数次の統合によりまして、大部分の駅が日本通運独占形態になつたのであります。地方地区については、これに準ずるものとして地図統合会社ができまして、形としては全国各駅とも一店の制度ができ、それを日本通運が大きく統轄するという態勢になつて戦時を過したのであります。ところが終戦後、そのような形は独占であるから経済民主化の理念によつてこれを複数化して、自由公正な競争をさすべきだという議論が強まりまして、ごもつともでありますので、通運事業法が制定されて、通運事業における複数制が採用されたのであります。それに基きまして各主要駅において通運事業の新しい免許が続々と行われたのであります。すでに通運事業者数は、終戦直後には二百四十三しかなかつたのが、二十六年には七百七十三業者に増加している状況でありまして、大体全国主要な駅においては複数化が完了されまして、現在それらの業者の間に自由にして公正なる競争が行われつつあることはまことにけつこうなことと思うのであります。従いまして今後残された問題として、比較的取扱い数量の少い駅でございますので、これらについて全国どこもかしこも複数制にするか、あるいは多少例外的に数量があまりにも少いから一店だけでよろしいとする駅をどの程度に認めるかという問題があるのでありますが、大体この通運事業における公正な競争態勢は、その基盤ができたとわれわれは信じておるのであります。  第三は、自動車運賃の問題であります。これは道路運送法に基いて、運賃定額制及び現払制という新しい制度国会において認めていただいたのでありますが、ちようど十一月が定額制の切りかえ時期になりましたので、タクシーハイヤーについては、ごらんのごとく東京において従来百円であつたものを、中古車によるものは八十円に値下げするという方法を講じまして、定額制を確立いたしました。またトラックについては、十二月から定額制を実施して、大体現在のマル公よりは二割ないし三割低い線で額をきめようと思つておるわけであります。その他についてもせつかく勉強して、早くこの運賃の理想的な制度を実施したいと思つているわけであります。  第四は、輸送秩序の確立という問題であります。自動車運送事業は、先ほど申しましたようにきわめて公共性の強いものでありますから、自由にかつて営業することはできない、すべて運輸大臣または陸運局長免許を得なければいけないということになつております。そうして免許制度業者を保護するかわりに、また十分な責任義務を尽さなければいけないことになつているわけであります。ところが特にトラック部門において、終戦自家用車が非常にふえまして、戦前と主客を転倒して、大型車においては自家用車普通営業車の二倍、小型車においては十倍にまでふえたものでありますから、それらの自家用車営業部門に進出して、一般貨物を取扱うということが起つて来たのであります。これは明らかに違法行為でありまして、これを容認しておきますれば、輸送界秩序は混乱して、法律はあれどもなきがごとき状態になりますので、これについてはぜひとも取締りを強化して違法行為を絶滅させなければいけないという趣旨から、本年の当初からその猛運動を展開しているわけであります。このような運動を推し進めると同時に、免許を受けたトラック業者には、公益事業者としての十二分な責任義務を果すように、そうして常に公衆の満足を得なければならないというふうに指導いたしております。それがないと結局権利を擁護するだけで、権利の上に眠つてしまつて、しかも新しい業者が進出することに反対するということになりますので、そのようなことのないように、免許業者に十二分な責任義務を尽さすように努力しておるのであります。しかしながら自家用車を取締ると必ず起る問題は、新規免許を与えろという問題であります。つまり違法行為は改める、しかし正道につこうとして免許をくれというのに何ゆえ免許を与えないか、そのような厳重な態度6あるならば、免許制度は実は既存業者の擁護にすぎない、従つて免許制度は廃止すべきであるという、免許制撤廃問題が最近一部に起つているわけであります。これについては私たち免許制度というものは、トラックバスというような公共事業については絶対に維持すべきものであると信じておりまするが、ただ問題は個々の場合に新しく免許を申請するものに対して、門戸を閉鎖しないように、りつぱなもの、正しいものに対しては十分に免許を与えるということが必要である。その方針さえ適正に行われて誤解がないことになれば、免許制度の撤廃ということはなくなるのではないか。またそのように免許制度を運用することが必要であると私たち考えておるわけでございます。  第五は、都市交通調整の問題であります。都市の輸送力はどんどんとふえて参りまして、特に自動車においては、都心部においてごらんになりますような非常な混乱状態を来しておりますので、各種輸送機関、たとえば国鉄電車であるとか、路面電車、あるいは郊外電鉄に対して、バスあるいはトラックをどういうふうに調整して、相互均衡のある発達をはかるかということは重大問題でありますので、来年度においても予算にも計上することをお願いして、この調整均衡化をはかろうと努力しております。そのうち特に重要なものとして、ターミナルと。パーキング施設についていろいろと研究をしておるわけであります。  ターミナルと申しますと、バスとか路線トラック総合発着所とでも申すもので、ちようど鉄道でいえば中央発着所のようなものに当ると思うのであります。バス路線トラックが非常に発達して参りますと、それらが都心部に乗り入れて、そこでたくさんのお客、貨物を扱う、それを現在のように道路の上で仕事をしていたのでは、道路炎通を阻害するし、また利用者にも非常に御迷惑をかけるし、また事業者としても運転費について非常に費用がかさむので、それらを総合して、一箇所にまとめるようにすれば、相互交通機関同士において連絡、乗りかえも便利になり、利用者事業者みなが非常に助かるというものでございますので、何とかできるだけ早いうちにターミナル施設整備いたしたい、まずそれに必要な法制を準備いたしたい、かように思つております。  次にパーキング施設の問題であります。これまた絶えず乗用車を利用される方々はいつも痛感されることと思うのでありますが、都心に入れば入るほど自動車の置場に困つて、そのためにせつかく便利である自動車が、かえつて不便になるという状態が現われております。これらを何とか解決するためには、駐車場施設及びその一つの形である車庫を整備する必要があるわけで、それに関する法制あるいは具体的な計画を目下いろいろ練りつつあるのでありますが、これらに関する法律案を提案するようなときには、十分に御審議を願いまして、一日も早くこの問題を解決いたしたいと思つております。  第六には、外国乗用自動車輸入の問題であります。これは先般の前国会の当委員会において、十分に御審議を尽していただいた問題でありまして、おかげさまでその後比較的この問題は好転しまして、割合に外国乗用自動車輸入されつつあります。ぜひ外国自動車輸入しなければならない必要性その他については私から申し上げるまでもなく、皆様方の痛切な御要望はかねがね承りましたので、その方向に努力しておるのであります。なお一層この輸入が円滑に行つて日本乗用自動車りつぱなものになり老朽自動車が一日も早く更新されるように努力して行きたいと思います。  第七は、自動車事故防止方策であります。自動車がどんどんふえますと、いかに努力して運転者が注意いたしましても、事故はどうしてもふえる傾向にございます。そこで自動車検査能力を充実し、また自動車検査施設拡充をいたしたいと思つております。一昨年から自動車検査施設拡充整備五箇年計画を立てて、それぞれ予算を要求しておりますが十分な予算がもらえないために、まだ自動車検査場という名前のみで、実際には何ら検査設備を持たない場所が二十三箇所も全国にあるのであります。これらを一日も早く整備して、しかも機械化することに努力いたしておりますので、予算の御審議にあたつては十分に御援助を願いたいと思うわけであります。最も多くの事故の発生する場所で、しかも大きな結果を引き起すものは鉄道踏切りでありまして、その結果たるや人命に及んで実に恐るべきものがありますので、これについて何とか保安を確保する法律考えたいと思つております。鉄道踏切りははたして鉄道線路なのか、道路なのか、その中間なのか、これに非常に疑問があります。従つてそれをりつぱなものにするために、鉄道側と道路側が消極的に争い合つて責任を回避し合つているという奇怪な現象が起つておるのであります。そして迷惑を受けるものは結局自動車関係ということになりますので、自動車局といたしましてはむしろこちらから音頭をとつて鉄道及び道路側に呼びかけて近く鉄道踏切り保安施設法とでもいうべき法制を立案して御審議を願いたいと考えておるわけであります。  最後に、自動車事故の賠償責任保証制度を確立いたしたいと思います。たびたび申しますように、自動車が非常にふえますと、道路上を通行している人に被害を及ぼすことが非常にあるのであります。またその積荷とか、お客さんに事故を起すことが多いので、十分注意すると同時に、万一事故が起つた場合には今までのようにその都度都度の直接交渉で、やれ山をかけたり、それをたたき切つたり、泣寝入りが起るような不明瞭な事態をなくするために、事務的に技術的に簡単明瞭に保険制度でこれを解決して行くことが一番よいのでないかと思うのであります。そこで世界各国ともこの自動車事故の賠償責任制度をとつておりますので、わが国もおそまきながら保険制度その他によつて簡単明瞭に、迅速に、賠償責任を解決して行く制度をとりたいと思うのであります。もちろん保険一本やりで行くか、あるいはその他の保証制度をあわせてとるかという問題とか、営業用車だけにするか、自家用車にもその制度を広めるか、いろいろと問題はたくさんありますので、それらの点については、業界あるいは学識経験者の意向を十分聞いて、案を練つた上で、成案を得ましたならば御提案申し上げますから、その折はぜひ慎重に御審議を願いたいと思つておる次第でございます。  以上で、ごくかいつまんで自動車関係の所管事務について申し上げた次第であります。どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。
  6. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に観光局関係につき説明を求めます。間島説明員。
  7. 間島大治郎

    ○間島説明員 観光行政の現状について概略の御説明を申し上げます。お手元に差上げてございます「観光行政の現状」という刷りものの順序に従いまして、大体御説明を申し上げたいと思います。  まず最初に行政機構でございますが、運輸省側といたしましては大臣官房に観光部がございましてその中に計画課、業務課、整備課の三課がございます。計画課は全体の計画的な事項、調査、統計、あるいは財務に関する事項を取扱つております。業務課は観光宣伝の企画、あるいはまた接遇の向上というふうなことを主たる業務といたしております。整備課はその名のごとく観光施設整備を主たる業務といたしておるのであります。地方機構といたしましては、その業務によりまして都道府県の観光主管課、あるいは陸運局海運局の総務課にあります観光係というものを下部機構として使つておるのであります。都道府県におきましては、府県の事情によりましてあるいは土木部で所管し、あるいは経済部で所管いたしておるというふうなことで、必ずしも所管の部局は一致いたしておりません。なお観光行政機構といたしまして、御存じの通り内閣に観光事業審議会というものが設置せられております。これが最初置かれましたのは芦田内閣のころでございまするが、その後吉田内閣になりましてからも、引続き今日に至るまで設置せられておりまして、観光事業の基本的な事項の審議に当るということを使命とし、また各省にわたるような仕事につきましてその調整をはかるということが使命と相なつておるのであります。現在の審議会はこの四月に委員の改選を見たものでありまして、委員は二十名、全部民間の人をもつて構成せられております。幹事もやはり二十名でございますが、これは各省の局長級と民間の者と両方で編成されておりまして、現在この会長は東京銀行の頭取の浜口さんでございます。吉田内閣になりましてから、十数件にわたる重要事項につきまして審議し、これを政府に建議せられ、政府は大体その方針にのつとつて各省に提示せられたのでありますが、この四月に改選になりましてから後は、講和条約発効後、四囲の状況も若干かわつておりますので、基本方針をあらためて審議せられまして、政府に対して観光事業の基本方針というものを若干建議せられたのであります。従来ありましたこの審議会が、政府に建議しました基本方針と若干異なつておりまするところは、講和条約発効後の状況等をにらみ合せて、さらに施設整備をはかる。同時にまた、従来は国際観光のみに重点を置いておつたようでありますが、国内観光の面にも若干重点を置くというふうな、少しニユアンスの違いはあるようでありますが、大体従来の基本方針と大差ないものでございます。  次に、最近の外客来訪状況につきまして簡単に御説明申し上げます。「昭和二十六年外客統計年報」、これもお手元へ差上げてあると存じますが、もしございましたらごらん願いたいと存じます。これの四ページをお開き願いますと、戦前からの歴年の統計を出してございます。戦前におきまして外客の入国が一番盛んでありましたのは、昭和十年あるいは十一年のころでございまして、十一年におきましては入国者数が約四万二千六百、またその消費額が一億七百万円、ドルに換算いたしまして約三千百万ドルでございます。その後戦時戦後の二、三年間はほとんどブランクでございましたが、昭和二十二年にようやく外客の入国が忍び認められるようになりまして、外客の入国範囲が広がるにつれまして、毎年ふえて参りました。昭和二十六年におきましては入国者数が五万六千、その消費額がドルにいたしまして千四百八十万ドルということに相なつておるのであります。但し戦前と戦後とでは若干統計のとり方を異にいたしておりまして、昭和二十六年の五万六千人の中には、船が一時港に碇泊しておりまする間に短期間上陸して観光する者を含めております。戦前の統計にはこれがございませんでした。それが非常に数が多うございまして、昭和二十六年には三万六千人と推定いたされるのであります。これを差引いたしますと、戦前と比べます場合には、昭和二十六年の入国者数は二万人ということに相なるのであります。入国者数、消費額から見ましても、まだ戦前の半ばには達していないというのが現状でございます。しかし二十七年に入りましてからも、講和条約の発効を機といたしまして漸増の傾向にございまして、この昭和二十七年の見通しといたしましては、入国外客数は六万三千人、またその観光収入は約二千万ドルというふうな予想をいたしておりまして、明二十八年におきましてはさらにこれが三割ぐらいふえるのではないかというふうな予想をいたしておるのであります。  こういうふうな外客の漸増に対して、われわれといたしましてはいろいろの対策をとつておるわけでございますが、まずこういつたものを迎え入れるにあたつての受入れ態勢、特に宿泊施設整備が一番の問題でございます。これにつきましては、この説明の二ページにございますように、国際観光ホテル整備法というものが三年ばかり前に制定を見たのであります。この国際観光ホテル整備法は、外客宿泊施設整備によりまして、大いに海外から観光客を引こうということが目的でございまして、一定の施設基準に合致したものに対しまして登録をいたします。そうして登録を受けましたものは、それに対して法人税、所得税等の軽減、あるいは固定資産税等の軽減の恩典を受けるわけであります。現在までのところ登録を受けましたホテルは五十二軒、また旅館でもやはり一定の基準以上のものは登録を受けることになつておりまして登録を受けました旅館が四十七軒ということに相なつておるのであります。現在、日本のホテルといたしましては、数は百二ございまして、そのうち五十二でございますが、しかし今後登録し得る見込みのあるものは、設備の関係から申しまして二十軒足らずではないかというふうに考えておるのであります。このホテル整備法によりまする恩典といたしましては、今申し上げました通りまず第一は、ホテル用の建物の償却年数に特例を設けておりまして、早く償却ができるということに相なつておりましてその結果利益がありました場合には、法人税あるいは所得税の軽減となるというのが一つの恩典であります。それから登録を受けましたホテルにつきましては、固定資産税について不均一課税をすることができるということになつております。固定資産税の軽減ができ、その結果、現状におきましては二十七軒のホテルが四割ないし五割の固定資産税の刺激を受けております。それからなおこのホテル整備法によつて登録をされましたホテル、あるいは登録を受けようとして整備をするホテルに対しては、昭和二十四年以降融資あつせんを実施いたしまして、最近では設備資金の抑制というような方針ではかばかしく参つておりませんが、現在までのところにおいてその件数は百四十一件、約八億一千九百万円程度の融資あつせんが成立いたしております。  またこれは直接ホテルの整備と申しますよりも、日本における外客の旅行経費を低下させる。日本の旅行経費が、世界的に見ましても一番高いというふうな評判を受けております。また事実外国と比べますと非常に高いのでありますが、これを軽減させるというふうな目的から、前国会審議されました地方税法の改正案で、登録を受けましたホテル、旅館における外客の遊興飲食税を免税とするという改正がございました。これが明年の一月一日から実施されるという段取りに相なつておるのであります。また登録を受けましたホテル、旅館等につきましては、どうしても外国から輸入しなければならないものもある程度でございますので、これに対しましてはある程度の外貨を割当てるというふうな方法もとつております。本年度におきましては、こういつた主としてホテルに関するものでありますが、百五十万ドルの外貨割当が実施されておるのであります。なお外客の旅行経費の低下に関連いたしまして、もう一つの方策として最近実施されましたものは、外人が日本に参りまして買いまするみやげ品に対する物品税の免除であります。外客が消費いたしまする金額の中で、約三割がみやげ品だといわれております。これに対しましては諸外国でも、特にこれが海外へ持ち出されるということを条件にいたしまして物品税の軽減をいたしておりますが、この制度がようやくこの九月から実施になりまして、指定を受けました販売店におきましては、一定の条件のもとに外客に売りましたみやげ品に対しまして、物品税の免除が行われるという制度ができておるわけであります。  次に、海外観光宣伝の現況について申し上げます。戦前におきましては、海外観光宣伝につきましては政府及び国鉄の助成のもとに、国際観光協会がもつばら対外観光宣伝の任に当つてつたのであります。戦争中にこの団体が財団法人日本交通公社に合併いたしまして、戦後において海外観光宣伝を再開いたしました後におきましては、政府といたしましてはこの日本交通公社にある程度の補助金を交付いたしまして、その監督のもとに対外宣伝を実施せしめておるのであります。本昭和二十七年度におきまする補助金は四千九百万円でございますが、これによりまして各種のパンフレットあるいは映画、ポスターというふうなものをつくりまして海外に送付いたしますると同時に、本年七月からアメリカのニユーヨークにおきまして観光宣伝事務所を再開いたしました。宣伝は戦前におきまして、最盛期は海外に約十箇所の海外宣伝事務所を持つてつたのであります。ようやく今年七月、ニユーヨークに初めて再開いたしたのであります。この事務所がアメリカにおきまする観光宣伝の基地となりますると同時に、旅行業者あるいは直接観光を仕事とする人たちに対して、いろいろのインフォーメーシヨンを与えまして、非常に大きな役割を果しておるのであります。われわれといたしましては、なお来年度におきましてはアメリカの西部あるいはハワイに、できまするならばさらにブラジル等にもこの宣伝事務所を再開いたしたいということで、現在要求いたしておるのであります。なおついでに今申し上げました補助金の制度は、国際観光事業の助成に関する法律というものに基いて支出いたしておるのであります。これによりまして政府がこの補助金を支出する団体を指定することに相なりますが、この指定を受けておりますのは今申し上げました日本交通公社と、もう一つ日本観光連盟でございます。この全日本観光連盟は全国の観光機関、たとえば府県の観光協会、あるいはまた都道府県、市町村というふうなところも直接加盟いたしまする全国の観光機関、観光団体の総合機関でございます。これがそういつた総合機関の役割を果しますと同時に、みずから国内の観光事業に関する啓蒙運動あるいは受入れ態勢整備というふうな点にかねがね努力いたしておりますので、政府もその重要性を認めまして、補助金を支出することにいたしたのであります。本昭和二十七年度におきましては千六百万円の補助金を支出することに相なりました。  次に観光関係法律といたしまして、さらに適訳案内業法というものがございます。通訳案内業法はいわゆるガイドに関する法律でございまして、これは戦争前から内務省令によりまして、一定の府県知事のみがガイドの試験をすることができるという制度に相なつておりましたが、昭和二十四年にこの法律ができまして、従来区々になつておりました試験を全国的に統一いたしまして、運輸大臣が資格認定試験を毎年行う、そして都道府県知事が身上を調査した上で免許を与えるという制度に相なつたわけであります。この法律実施後は、戦前と異なりまして非常に質のいい、教育程度の高い者が多数ガイドとして試験に合格いたしておるのであります。現在まで四回の試験を実施いたしまして、合計五百十七名がこの試験に合格いたしておるのであります。しかし私どもといたしましては試験を実施するのみでなくして、一刻も早くこの人たちが優秀なガイドとして十分役立ち得るようにしなければならないというふうな考え方で、こういつた試験に合格した者にさらに実際の知識を与え、すぐ役立つようにするという意味で、研修制度をこの十二月から実施いたす考えでおります。  それからもう一つ法律といたしまして、前国会で通過いたしました旅行あつ旋業法のことを申し上げたいと存じます。この旅行あつ旋業法は、戦後年を経るに従いまして国内旅行も交通事情が緩和して非常に盛んになつて参りました。また先ほど申しました通り海外からの来訪も年を追つて多くなつたのでありますが、その反面、この旅行者を対象といたしまして仕事をしておりまする旅行あつせん業者が相当不正行為をして、旅行者あるいはまた交通業者、旅館業者等に非常に大きな迷惑を及ぼすというような事態も出て参りましたので、かねがねこういつた法律によりまするある程度の規制が必要ではないかと思つてつたのでありまして、前国会で議員提案によりましてこの法律が通過いたしたのであります。この法律によりまして旅行あつせん業をやろうとする者はまず登録を受けなければならないことに相なつております。これには一定の条件がございまして、特に過去二年間に不正行為をやつた者は登録を受けることができないということに相なつておりまして、まずそこで不正業者を排除する。それから営業いたしまする前には一定の保証金を積まなければならないということになつておりまして、もし不正行為等がありました場合には、この保証金をもつて優先弁済に充てるというふうなことにも相なつております。また不正行為をしましたときには登録は取消されて、営業ができないというふうなことにもなるわけであります。この法律の運用によりまして、一方において旅行者あるいはその他業界の保護をはかりますると同時に、さらに進んでは旅行あつせん業自体の健全な育成をもはからなければいけないと存じておる次第であります。この法律は十月十五日に施行になりまして、三箇月の猶予期間がございまして一月十二日以降は登録業者でなければ営業ができないということになつておるのであります。現在まだ猶予期間中でありまして、全部の業者登録は申し出ておりませんが、この法律の趣旨の徹底に努めまして、運用に遺漏なきを期しておる次第であります。  法律関係はそのくらいにいたしまして、最後に、とりまとめまして現在当面の問題として一番主眼点を置いておる点を申し上げますと、まず第一には、先ほど申し上げました海外観光宣伝の強化でございます。これにつきましては相当の補助金を出して海外観光宣伝の実施をいたしておるのでありますが、戦前状況あるいは諸外国の実情を見ますと、非常にまだ小規模でございます。海外観光宣伝をやります以上は、もう少し大きな規模でやらないと、大きな効果が出ないのではないかと考えておる次第であります。来年度予算におきましてはわれわれは相当額要求をし、大蔵省と折衝を続けておるのであります。  第二は、受入れ態勢整備、これにつきましてはいろいろございまするが、しかし何をとりましてもまだ十分だというものはないのであります。先ほど申しました宿泊施設につきましても、接収ホテルの解除によりまして昨年ほどひどいことはございませんが、しかし外客の現状から見ますと、たとえば東京市内のホテルのごときは常時この四月以降も満員でございます。春の季節になりまして、観光団が相次いで来るというような場合には、すぐ困つてしまうというような状況でございます。またその経営につきましても、いろいろ困難な点がありますので、こういつたところを打開いたしたいと考えておるのであります。さらに道路の問題につきましても、これは御承知の通り道路らしい道路日本にないというふうな悪評をこうむつておる次第でございますので、われわれといたしましては観光道路整備ということにつきまして独自の案を設けて、これを関係当局に要請いたしております。特に最近の問題といたしまして、御承知の通り新道路法による国道の選定が行われておりますが、この二級国道の中には観光道路を入れ得るということに相なつておりますので、重要な道路はすべて観光道路に入れてもらうように折衝を続けておるのであります。  第三には、旅行障害の除去という点に重点を置いております。これはいろいろございますが、たとえばまず先ほど申しました旅行経費の低下でございます。世界的に見まして非常に高い。旅行経費をどうしても下げなければならない。戦前におきましては、日本一つの魅力は、景色とかあるいは文化ということもございますが、世界水準から見まして非常に割安であるということが大きな魅力であつたのでありますが、これが非常な割高になつておる。これにつきまして総合的な施策を構じて、できるだけ安くしたいということを考えなければいかぬと思つております。それからまた日本戦前におきましては、習慣その他において非常にやかましい国だといわれております。戦後は若干ずつ改められましたが、国際水準から見ますと、やはり入出国の手続その他はまだ非常にめんどうな点が多いのであります。海外からもこの点を非常に指摘されており、若干は改善されておりますが、さらに入出国の手続の簡易化に努力を傾到して行きたいと考えておる次第でございます。  以上概略でございますが、観光関係の御説明を申し上げました。
  8. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に港湾局関係について説明を求めます。
  9. 黒田静夫

    ○黒田政府委員 所掌しております港湾行政につきまして御説明申し上げます。  所掌業務に入ります前に、港湾のただいまの一般の状況について簡単にお話申し上げたいと存じますが、日本の港湾は大体三千くらいございまして、そのうち六百程度が運輸大臣の指定する港湾となつております。これらの港湾はどうにか港湾としての多少の設備を有しているのでございまして、そのほかに港湾法によりまして重要港湾を約六十港認定いたしております。特定重要港湾として国際上外国貿易の重要な港湾として八つの港、東京、横浜、これは川崎を含めたものでございますが、それから四日市、名古屋、清水、大阪、神戸、それから関門、これは若松も含んでおりますが、これらの八つの港を重要港湾にしております。これらの港湾で二十六年中に扱いました貨物トン数は一億七千五百万トンとなつておりまして、鉄道輸送いろしました一億六千トンより少し上まわつておるような現状でございます。さらに三千有余の港湾は海岸線八キロごとに一つの割合になりますが、指定港湾の六百は大体四十キロごとに一つあるような現状でございます。国民生活と港湾は相当密接なつながりを持つておるのでございまして、港湾所在の市町村の人口は、日本人口の八千三百万の大体五五%になつております。そのほか人口十万以上の都市は、いずれも八割程度が港湾を持つておるような現状でございます。その点から申しましても、港湾は私どもの生活に非常に密接な関係があるのでございます。また臨海工場地帯と申しますか、港湾における工場生産は、日本の工場生産の八割が港湾地帯でなされておるのでございます。その意味でも近代の産業の発展あるいは産業の合理化という面から、港湾が浮び出て参るのでございます。そのほか六百有余の地方港湾につきましては、いずれも国土の総合開発の点とか民生の安定の点、地方の発展の点から重大な関係があるのでございます。  これらの港湾の現状に対しまして、港湾局といたしましては六課ございまして、施設の管理をやつておりまする管理課と、それから港湾における荷役をやつておりまする港政課、それから奥地の倉庫も含めまして、港における倉庫の行政をやつておりまする倉庫課、それから施設計画をやつておりまする計画課、それから建設課、それから後ほど申しますが直轄工事をやつております関係で、これらのものに対する機材課、この六課からなつております。出先機関といたしましては、港湾の直轄工事をやつておりまする出先機関に、地方港湾建設局がございます。これは四つございまして、第一港湾建設局は新潟にございまして、日本海沿岸諸港の中の重要港湾の工事の直轄施行をやつております。第二港湾建設局は横浜にございまして、主として太平洋沿岸の青森から三重県までの港湾のうち、重要なるものにつきまして直轄工事をいたしております。第三港湾建設局は神戸にありまして、瀬戸内海を中心といたしました中国、四国の港湾の直轄工事をやつております。第四港湾建設局は下関にございまして、九州と山口県の港湾の直轄工事をやつております。港湾の工事は、御承知のように海面以下の工事が主でありまして非常に価格の高い作業船とか、特殊の技術を要する関係で、民間の土建業者で港湾工事をやつておるものは、埋立て事業とかその他簡単な護岸事業でございまして、基本的な港湾工事はおおむね直轄工事をやつております。この点が一般の土木事業と比べまして非常に異なつておる点でございまして、港湾建設四つ予算で大体九五%程度は直轄工事で、残りの四、五パーセントを請負に出しておるような現状でございます。この港湾工事を直轄でやります点は、アメリカでもこれは陸軍がやつており、工兵団というものがありまして、港湾の工事を直轄でやつております。  それから倉庫の行政あるいは港湾荷役の行政等に関しましては、地方に十の海運局がございまして、それぞれ所管の区域のそういつた行政指導監督をやつております。港湾局の所管業務の内容といたしましては、先ほど申しましたように港湾内並びに航路の建設改良あるいは維持保全に関するものと、港湾法に基く港湾管理者の設立の指導監督であります。今まで港湾法がなかつたのでございますが、港湾法の設立によつて地方の公共団体もしくはポート・オーソリティーと申しますか、港務局が港湾管理者になるようにきまつたのでございます。しかし現在までのところ、ポート・オーソリテイーによる港湾管理者はまだ一つもございませんので、地方の公共団体が港湾の管理者となつております。それから従来国営港でございました横浜、関門、神戸等の国有港湾施設の管理処分に関する事項を所管いたしております。また港湾区域内における公有水面の埋立てあるいは港湾区域内の干拓工事に対する許認可のことをやつております。また港湾法によりまして、重要港湾については運輸大臣が港湾計画審議をすることになつておりますので、港湾計画審議をいたしております。それから統計法によつて指定統計となつております各地港湾の統計に関する業務をやつております。また国土の総合開発の一環としての港湾のいろいろな調査あるいは調整のようなこともいたしております。その次には先国会に成立いたしました港湾運送事業法の関係でございますが、従来港湾の荷役については何ら法的根拠がございませんでしたが、港湾運送事業法によつて港湾運送事業登録とか、あるいは基準料金の設定とか、抵当権の設定ができるようになりましてこれらの港湾のいろいろな荷役に対して指導監督をいたしております。倉庫業につきましては倉庫業法がございまして、倉庫業の発展改善のためのいろいろな指導監督が所管事項となつております。  港湾局で最も中心になつておりますのは、御承知のように港湾の公共事業費でございます。昭和二十七年度におきましては、公共事業費の関係は七十三億となつております。七十三億のうち、四割は災害復旧費でございまして従来の施設で、台風あるいは地震等によつて被害を受けたものの復旧に四割が投ぜられておりまして、残りの四十四億が新しい改良に投ぜられておることでございます。内容はお手元に差上げました「行政の現況」というものに書いてありますので、御説明は省略をいたします。この七十三億の公共事業費は、一般の公共事業費のおよそ五%程度にしか当つておりません。戦前におきましては一〇%程度近くあつたのでございますが、終戦後の諸情勢のもとに制約されまして非常に圧縮を受け、地方のたくさんの方々の要望を満たし切れない現状であります。この予算のわくを港湾に対して拡大して、港湾の整備促進することが当面の大きな問題になつておりまして、ただいま港湾公共事業費といたしましては、二百六十億を関係方面に要求しているような次第であります。二百六十億ありますと、おおむね各地方の港湾整備の希望は達成できると考えております。  それからもう一つは、港湾施設の中で、今まで申しましたように、基本的な防波堤、岸壁、浚渫というような事業に対しましては国の補助がありますが、荷役機械あるいは上屋のような荷さばき施設、あるいは埋立地のような土地の造成に対しましては、港湾施設ではありますが、でき上つた後に収益があり、使用料等をとることによつて償還が考えられますので、補助の対象になつておらないのでございます。しかしながら現在の情勢といたしまして、港湾荷役の合理化あるいは近代化を促進する声が非常に強くなつて来ております。また臨海工業地帯の造成をやつて、港湾において荷役の合理化をしたいという希望がありますので、これら港湾整備の補助のつかない事業に対しまして特別措置をとらなければ、とうてい現在の要望に応じ切れません。この意味において港湾整備特別措置法というものを来国会に提出いたしたいと考えて、関係方面に説明を始めているような次第でございます。これは三箇年に九十一億、昭和二十八年度におきましては三十一億要求いたしております。これはこれらの港湾施設に対して、政府の財政資金を特別に導入して整備をはかろうとする考えでありまして、特別会計をつくつて整備し、でき上つた後には早いものは三年、おそいものでも十五年の間には償還して行くという計画で現在進めております。この港湾公共事業費のわくの拡大と、整備のための特別措置法の二つが、ただいま港湾局として問題になつている最も重要な点でございます。次に行政の面におきまして、お手元に差上げました書類には接収解除に伴う港湾復旧施設予算がございますが、これは目下おおむね希望に近い額が事務的に話がつきつつございます。それからもう一つは、行政協定に基いて港湾施設で提供するものがございます。東京は大体全部接収から解除される見込みになつておりますが、横浜においてはノース・ピヤーの施設中心としたものが提供施設になろうかと存ずるのでありますが、これは横浜港の接岸荷役施設の三割程度になるのではないかと思います。また神戸港におきましては第六突堤一本を提供することになつておりますが、これが一割程度になります。門司におきましては七バースのうち一バースが提供施設になりますので、これもやはり一割五分程度になります。博多におきましては大部分つて参りまして、小船だまりを少々提供するようなことになつておりますが、これらの提供施設に対するかわり施設を、ぜひ早急に建設する必要があるということを関係方面に要請いたしまして、その一部は実現を見つつございますが、なお大部分が今後の折衝に残されておるような現状でございます。  それから多少当面の問題になつております点について申し上げますと、港湾運送事業法が先々国会に成立して、その後一年間の運用の結果、なお改正を要する点がございますので、来国会に運送事業法の一部改正をやりたいと、いろいろ各方面の意見を徴しております。その要点は、港湾運送事業登録になつておりますが、登録の基準をはつきりさせたいということと、この事業者の基準の料金ができておるので、この基準の料金等につきまして、独禁法あるいは事業者団体法からはずそうという問題、それから港湾運送事業法より後に木船運送業法ができまして、港湾内におきまするはしけあるいはその他の木船による運送の調整をとる必要がありますので、そういつたような改正をやりたいと存じております。  倉庫業法の改正につきましては、講和条約締結後の諸情勢によりまして、改正すべきかどうか、あるいは発券倉庫の許可制をどういうふうに持つて行くかという点について、なお今各方面の意見を徴しておるような現状でございます。  最後に、港湾の最近の情勢につきましては先ほど申上げましたが、今後の動向といたします点は、荷役の合理化という点でないかと存ずるのでございます。日本の港湾は、御案内のように陸運、海運の間にはさまれまして、責任の所在があまりはつきりしておらなかつた点等もございまして、非常に立ち遅れております。沖荷役が六割であり、接岸荷役が四割で、非常に原始的な荷役をやつております。終戦後アメリカの船が来て、荷役の状況を見ておりますと、全部接岸でございます。この接岸をして機械荷役をやることによりまして、沖荷役がトン当り二百四十円でできるようなものは、百二十円になります。さらにこれを機械化するとトン四十円、三分の一ないし四分の一程度に切り下げられるのでありまして、輸送費の軽減にもなりまして、産業の合理化に非常に重大な影響を持つて参るのでございます。もう一つは、終戦海運の市場がかわつて参りまして、戦前までは東亜貿易が多くて六割五分程度で、残りの三割五分が欧米でございましたが、終戦後は市場がたいへん遠方になりまして、濠州とかあるいはカナダ、アメリカ方面のものが多く、これが七割程度になりまして、東亜地区のものは三割くらいにしかなつておりません。これがため船型が非常に増大いたしまして、港湾に入る外国貿易の貨物船の総トン数の平均が四千二、三百トンのものが、終戦後は五千六百トンくらいになつておりまして、これに応ずる港湾施設の改良、水深の増加等が、やはり今後の港湾の動向になるかと思うのであります。  それから先ほど申しました臨海工業港の促進、あるいは避難港という問題が最近出て参つたのでありますが、これは主として機帆船あるいは汽船のうち、千トン程度の小型船の避難を考えて港湾整備をやろう、このことによりまして、海上保安庁等の統計によりますと、海難事故は三分の一に減るのではないか、あるいは小型船の稼行率は倍近く向上するのではないかということがいわれておるのでございます。そのほか港湾の災害の復旧工事を促進するとともに、災害が起きないような基本的の防災工事をやる必要があるのではないか。特に一昨々年のジェーン台風によりまして、関西地帯が非常な打撃を受けましたので、この地方に対しまして防潮工事をやつておりますが、この問題は台風の被害を受けまする西部日本地区において、基本的な防災工事を促進することが必要かと思うのでございます。その他地盤沈下によりまする港湾施設整備、あるはい海岸決壊が日本海の諸港に現われておりますが、これらに対して災害を受けない前の防災的な港湾の整備をやる必要があろうと存じておるのであります。  簡単でございましたが、おおむね所管事項につきましての説明を終ります。
  10. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に海運関係につき説明を求めます。岡田政府委員
  11. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 それでは海運関係の所管事項につきまして御説明いたします。  海運局では水上輸送の改善発達に関する助長の行政と、同時に海運局、船舶局、船員局、港湾局、この四局にわたりまする事項についての調整の事務をやつております。この調整の事務のために、特に海運局の中に海運調整部というのがございます。海運局には海運調整部のほかに現在四課ございまして、一つは外航課で、日本船の外航配船の仕事を主としてやつております。その次が監督課、これは海運会社の監督並びに資金のあつせんなどの仕事をつかさどつております。他は内航課、これは主として内地沿岸を動いておりまする小型汽船ならび機帆船を対象としての仕事、そのほかに定期船課というのがございまして、これは内地沿岸の旅客定期航路を対象にした行政をやつておるのでございます。現在私どもの所管しておりまするおもな事項につきましては、お手元に配付いたしておりまする資料の中に掲げてございますので、これに従いまして簡単に御説明申し上げたいと思います。  まず資料は、赤紙の四と張つてあるものでございます。第一に、外航船腹拡充方策でございます。この題に入ります前に、簡単に現在までの船腹回復の状況を申し述べますと、終戦当時に日本の保有船腹は約百八十万総トンといわれております。しかも実際動いておりました船腹は六十万ないし七十万総トンにすぎません。現在この船腹が約二百八十万総トンまで回復いたしております。このうち外航に出得る船、外航船腹と称しておりまするものが、昭和二十四年末にはわずか十万総トンでございましたが、これが今日約百八十万総トンに相なつております。昭和二十四年度以降外航船腹の拡充政府が本腰を入れまして以来、相当量の増加を示して参りまして、ただいま申し上げました数字のほかに、現在建造中のものがございまして、これが完成いたしますると、大体全体の船腹が約三百十万総トン余になるわけでございます。外航船腹も二百十万ないし十五万総トンになる予定でございます。しかしこれを戦前の保有トン数に比べますると、開戦の年の暮れにおきます保有トン数が約六百万総トンで、従いまして現在まだその半分に達しておりません。それから日本中心とする外航定期航路についてみましても、現在戦前の四〇%でございます。これを少くとも戦前の七〇%まで回復する必要があると考えております。また将来の日本経済の長期的見通しに立ちまする場合、どうしても海運で外貸収入を少くとも二億四、五千万ドルは獲得する必要がある、こういう観点からいたしますると、今後数年間にこの外航船腹は、現在建造中のものを加えまして二百十五万トン余りのものに対しまして、なお百二十万トン余をつけ加える必要があるというふうに考えておりまして、運輸省といたしましては、二十八年度以降四箇年間に外航船腹百二十万総トン建造計画を立てておる次第でございます。  この外航船腹拡充方策の第一に考えておりますのは、その前提として二十七年度に大体三十五万総トンの建造計画を立てましたが、現在までに貨物船は二十万トン、タンカーを十万トンの建造計画を決定して実施しておるのでございますが、なお本年度の計画として五万総トンの建造計画が残されておるわけであります。この五万総トンの建造計画を加えますると、先ほどの外航保有船腹が大体二百二十万トンでございますが、それに来年度以降の四箇年計画として大体百二十万トンを加えますると、三百四十万総トンの外航船腹になるわけでございます。この本年度に残されておりまする五万トンにつきましては、目下これの所要の財政資金につきまして、大蔵省それから開発銀行と折衝中でございます。従来この船舶の建造につきましては、貨物船について大体四割の財政資金を融資する。油槽船については二割という方針で参つておるのでございまするが、今日海運事情が非常に悪化いたしまする半面、すでに相当量の舶舶の建造によつて市中銀行から海運会社に出ておりまする金が、非常に巨額に達しておる。従つて今後市中銀行からの融資が多く期待し得ないというふうな状況に直面いたしましたので、これからつくりまする船舶につきましては、少くとも財政資金貨物船については七割融資したい、かように考えておるのでございます。そういたしますとこの五万総トンに対しまして、本年度約二十八億の財政資金を必要とするのでございます。目下これについて交渉中でございますが、同時にこの財政資金の融資比率を引上げますとともに、市中銀行からの融資分に対しまして、今後は利子補給をするという方針を樹立いたしたのでございます。とりあえずこの五万総トン分に対する利子補給を、今度の補正予算に計上されているのでございます。その利子補給の率は、市中銀行から貸し出される利率を財政資金の七分五厘と同一ならしめるところまで補給する、こういう建前でございまして、大体市中銀行から出されます融資の金利が一割一分三厘程度というふうに踏んでおるのであります。従いまして七分五厘との差額三分八厘余を政府が補給しているという建前のもとに、今度の補正予算にこの五万総トン分に対して五箇年間に支給される分として三億二千万円余り国庫負担分として承認を求められている次第でございます。この五万総トンにつきましては、現在造船所の手持ち工事はほぼその能力一ぱいに持つておりまして、造船所としては今が一番いい時期を迎えているのでございますが、来年一月以降になりますと、相当量の船腹が進水もしくは竣工いたしまして、造船所に相当のアイドルが出る。従いましてこの一月以降三月までの間にぜひともこの五万総トンを着工して、造船所のアイドルをなくすようにいたしたいと考えている次第でございます。  それから来年度以降の拡充計画でございますが、ただいま冒頭に申しましたように、日本海運としては国際収支の改善並びに定期航路の整備計画等から見まして、今後四箇年間に少くとも三十万トンずつ船をつくつて行く必要があると考えておるのであります。その内訳といたしましては、毎年三十万トンずつつくるわけでありますが、油槽船を七万トン、貨物船を二十三万トン、合せて三十万トン、こういう計画でございます。二十三万トンのうち少くとも三万トンは貨客船をつくる。これは御承知の通り南米方面に移民の計画がぼつぼつ実施されおりますので、移民を運ぶ船を持つ必要があり、さらに北太平洋航路におきましては、在米方面の国民の帰還とか、その他相当交通量がふえておりますから、いわゆる中級の旅行客を対象にした貨客船をつくる必要があると考えているのでございます。二十八年度もその構想をもつて進めておるのでございまするが、それに対する計画を進めまする上におきましてまず第一に必要な財政資金の額、同時に市中銀行からの融資の額という問題があるわけでございます。貨物船につきましてはただいま申しましたように七割、貨寄船の場合は少くとも八割、油槽船の場合は今日なお市況が相当程度維持しておりますので、船価の二割というところに押えたいと存じているのでございます。そういたしました場合に、来年度の所要の財政資金は二百六十三億、これに対しまして本年度の計画の残りが来年度に相当響くわけでございます。これに対する財政資金がさらにこれにつけ加わるわけでございまして、私どもといたしましては来年度の造船に要する財政資金を二百九十億というふうに考えておるわけでございます。どうしても二百九十億の造船に対する財政投資を拡充したい、かように考えておる次第でございます。今日まだこれに対する財源がどの程度に確保し得るか見通しが立つておりません。来年度一般予算並びに財政投資に対する財源調達のために、政府が特別の方策を講ずるというふうな政策にかかつておりますので、今日まだそれの見通しがついておりません。  それから市中資金でございますが、これには来年度の新規のために百二十億と書いてありますが、このほかに前年度からのずれがございまして、同様市中資金も二百三十億余りが必要になる、かように考えておるのであります。ところが先ほど申しましたように、今日海運会社が市中銀行から受けております負債が、本年の三月末で約三百九十億ございます。これが来年の三月末には六百五十億くらいになるのじやないか、かように考えております。それから財政資金海運会社に融資されておるものが来年の三月末には、これまた六百五十億程度になるのではないかというように考えておりまして合せて千三百億の負債に相なるわけであります。そこへ持つて来て今日の市況で海運会社の市中金融機関に対する返済が予定通り行かないというような状況もございますので、この市中融資を確保いたしますためにも、相当の方策を講じなければならないわけであります。その方法としてまず考えられますのは、お手元に配りました資料に書いておりますように、船舶の建造に対する市中金融機関からの融資に対しまして、今度の追加五万トンに実施しましたと同様の利子補給制度を来年度以降の建造においても実施するということと同時に、その融資に対してもし市中金融機関が損失をこうむつた場合には、政府がそのしりを見てやる、いわゆる損失補償制度を確立するということが必要になるわけであります。この船舶建造に対する利子補給、損失補償制度は、戦前にも実施しておつたのでございます。昭和十四年に同様の法律をつくつて実施しておつたのでございますが、終戦になりましてそれが打ちやめになつております。それから諸外国の船舶建造に対する助成方策を見ましても、この損失補償制度というのは相当多くの国で実施しておる方策であります。船舶融資の特殊性から見て各国とも採用しておることは事実でございますので、ぜひともこの制度の確立をする必要がある。特にわが国の現在の造船金融の状況からいたしまして、こういう政府のてこ入れを必要とするというふうに考えておるのであります。  なお特に海運会社の市中借入れを容易ならしめる方策といたしまして、すでに海運会社が市中から借り入れております借入金を一部開発銀行に肩がわりをするということがございます。これについては今まで随時実施しておるのでございますが、本年この肩がわりに対する大蔵省並びに開銀の方針のやや転換がございましたがために、一応ストップの形になつております。しかし市中金融機関に対する海運会社の負担軽減、また市中金融機関に対する借入れを今後さらに進める上におきまして、どうしても財政資金への肩がわりを推進する必要があるわけであります。  それから現在海運界で非常に問題になつておりますのは、日本海運の海外競争力の強化の問題であります。日本海運は御承知のように戦争でほとんどすべての船を失つてしまつた。現在相当船腹拡充をいたしましたが、このいずれもが新造もしくは多額の金をかけて改造した船であります。従つて元の船の価格において諸外国と比べものにならない高いものであります。さらに新造船価だけを比べましても、日本の新造船は、鋼材その他の材料が高い関係で、英国あたりに比べて二割程度高価である。従つてこういう新造船をもつて外国海運競争いたしますがためには、この船が経済的に外国船と競争し得るだけの基礎を与えてやらなければならぬ。その船価高につきましては後ほど船舶局長から説明があると思いますが、鋼材に対する補給金を交付して、その船価の低減をはかるという方法が考えられておるわけでございます。  なおこの対外競争力の上におきまして一番大きなウイークポイントでありますのは、金利が高いということでございます。英国あたりでは二分五厘の金利、あるいは大きな他よりの借入金よりも、自己の蓄積資本で船をつくつておる。従つてその新造船に対する金利も二分五厘以下であるというのが通例でございます。日本は、財政資金の七分五厘と市中金利の一割一分余を平均いたしましても、一割近くの高利の金利でございます。この金利が高いということが日本海運の対外競争力における一番の大きなウイークポイントでございますので、この金利をできるだけ下げる必要がある。従つて財政資金は現在は七分五厘でございますが、これを少くとも五分くらいに下げる、さらに市中金利を財政資金と同じようにするために利子補給制度を確立してもらいたい、こういう要望が強いわけでございます。その一部が今度の補正予算で実現したわけでございますけれども、海運会社の経営の強化という意味におきまして、この利子補給制度を今後の建造船のみならず、過去の新造船に対してもさかのぼつて実施するという問題が残されておるのでございます。  それからもう一つは、現在市中から借り入れておりますのがいずれも三年の短期の借入れでございます。造船融資は戦前におきまして十五年ないし二十年の長期融資が通常の例でございますし、また造船融資の性質からいたしましてもそうあるべきものでありますが、これが三年の短期のものであります。開発銀行への肩がわりも、そういう短期のものを長期の金に切りかえる。単に目前の償還が苦しいという意味のみならず、短期の融資を長期のものに切りかえるというふうな意味においてその必要性を認めておるわけでございまして、この開銀の肩がわりということが経営強化の一つの問題になつておるわけでございます。  それから現在船体保険につきまして、三億円以上のものは国が再保いたしております。これが一応大蔵省との話合いでは本年をもつて打切りになる予定でございます。そういたしました場合には、この船体保険にロンドンあるいはニューヨークの保険会社に売りに出さなければならぬ。そういたしますと、日本の船腹は戦争中につくりました標準船のような素質の悪い船をかかえておりますので、もう一つ日本海運の現状がよく外国に知られておりませんために、少くとも保険料の三割以上の引上げを来す、といたしますと、日本海運会社の負担は十三億ないし二十億程度の負担増を来すわけでございます。これは市況が非常に悪化いたしております今日、海運会社として耐えられない負担でございますので、この国家再保をさらに今後数年間継続する必要がある、さように考えておるのでございます。現在国は再保をいたしておりまするが、目下のところ損はごうむつておりません。ある程度の剰余金を持つておるわけであります。今後そう多額の損害が出ることが予測されませんし、国としては損失をこうむることはほとんど考えられないのではないか。従いましてこの国家再保については、ぜひとも今後継続する必要があるというので、目下折衝中であります。それから海運に対してもう一つ外壁との比較において不利と思われます点は、船舶に対する税の問題であります。現在船舶に対しまして固定資産税が適用になつております。千分の十六でございますから、たとえば現在貨物船の一番安いものにいたしましても、新造いたしますると十億かかりますが、千六百万円というものは、その船がかせいでもかせがなくてもかかるわけであります。こういう船舶に対する高額の税金というものは、外国にはまつたく例がありません。高額というよりは、こういう固定資産税のようなものが実施されていないわけであります。しかるに日本はそういう高額の税を課しておるというのが、海運に対する大きな弊害になつておるわけであります。これを今後少くとも戦前にありましたような非常に税率の低いものにして、しかも船の本質に合つたような税に改める必要を感じておるわけであります。なお海運に対する事業税が、現在収入を課税標準としておりますが、これは一般運送業が、電気とかあるいはガスとかこういう簡単に消費者にその税を転嫁し得るものと同一に見られておる建前から来ておるのでありますが、私鉄はいざしらず、海運はまつたく自由競争の企業でありますので、本質的にガス、電気の独占事業とは違うわけであります。従つて他の一般産業に課せられると同じ収益課税方式に改める必要があるので、目下自治庁ととれについて交渉中でございます。  それから海運につきまして、海運自体の経営の合理化をはかつて、経費の節約を大いに推進すべきである。それがためには店費、船員費、港費、こういう費用についての節減をはかるべきでありますが、特に日本の船員は、給料は外国船員よりは低いのでありますが、乗組定員が外国船に比較しまして相当多い。この乗組定員について再検討を加える必要があるわけであります。さらに後段に出て参りますが、現在ある数港では強制水先制度をしいておりますが、この強制水先制度海運経営にある程度の拘束を与えておる。この強制水先制度についての再検討をする必要があるという問題があるわけであります。  次に内航船過剰対策でございますが、現在国内沿岸だけしか動けない船腹が相当多数ございまして、その中心をなすものはいわゆるE型と称する戦争中につくりました重量トン千五百トンの船であります。国内の荷動きとそれらの船腹量を対比いたします場合に、どうしても二十万総トン余りの船腹が過剰になるわけでございます。今後数年間の経済趨勢を見ましても、その過剰状態が解消し得るという見通しはないわけであります。しかもそれらの船は相当質も悪く、他に使い道もないという状況でございまして、この内航船を何とか処理して参りたいということが、小型汽船船主の痛切なる叫びでございます。これにつきましては昭和二十五年でありましたか、当時船舶運営会で経営をいたしておりました船を全部船主に還元をいたしました。当時昭和二十六年でありますが、朝鮮事変の前で、内外ともに非常に市況が悪かつた。約百万重量トンの船が繋船されておつたのであります。これに対しまして、政府としては約六十万重量トンの船腹を買い上げる方策を立てまして、実施に移したのでございますが、たまたま朝鮮事変が起りまして、それらの小型汽船が朝鮮事変のために使用されるという事態が起り、従つてその買上げ方策を幾分緩和をいたしまして、そして六十万重量トンの計画で、実際実施いたしましたのは二十万重量トン程度にすぎなかつたわけであります。計画通り実施いたしておりますと、今日こういう事態は起らなかつたのでございますが、不幸にして朝鮮事変のためにその計画が緩和された。それが今日のがんになつておるわけでございます。内航船が過剰であることは、同時に外航船腹の活動にも制約を来すわけでございます。御承知と思いますが、外航船腹は外航に就航して帰つて来ると、次の外航をかせぎますまでに一週間ないし二週間の余裕があることが多いのでございます。そういう間内航を一航海あるいは二航海かせいで、車さらに外航に出るのが海運経営の妙味でございますが、この内航船腹が過剰でございますと、そういう外航船腹の運営の妙味が発揮できない。従つて日本海運全体として非常に大きなマイナスになるというふうな見地もございまして、この内航船腹の過剰に対しましても、このまま放置できない状況に立ち至つておるのでございます。といつていかなる方策を講じるか、非常に困難な問題でもございますので、まだ具体的な方策の樹立に至つていないのでございますが、至急何らかの代案を考えたいと考えております。  それから離島航路整備につきましては、現在離島航路に就航しております船が、多くは非常に老齢の船である、あるいはその安全性をほとんど欠くに至らんとしておるようなものであるのが多いのであります。離島民の生活安定あるいは民生向上というふうな見地からいたしまして、この船の改善の必要があるというので、前国会で離島航路整備法が通過成立したのでございますが、今度の補正予算で、この法律に基きまして離島航路に就航する船の新造二隻、改造一隻に対する予算案が成立したのでございますが、それはそれらの船を新造もしくは改造した場合に、市中から借り入れた額の四分に相当するものを利子補給しよう、こういう建前でございます。その利子補給の額がただいま申しました隻数に対して成立したわけでございます。来年度の予算におきましても相当数のものを改造もしくは新造せしめる、かように考えております。同時にこの法律の成立に関連して附帯決議が出されまして、これらの船舶に対しては、開発銀行からも融資をはかるということになつておるのでございます。その後の開発銀行との交渉において、その点も現在のところやや順調に進んでおるということを、御報告申し上げる次第でございます。  次に、水先料並びに強制水先制度について今問題が起つております。水先料につきましては、現在の水先料金が非常に安い、これを上げてもらいたいという要望が、水先人の方から強く出ております。それから船主側から、現在佐世保、関門、阪神、横浜、これが強制水先制度である、この強制水先制度は不当であるから、これを廃止してもらいたいという要望があります。あるいはこの水先というものに対する概念をお持ちにならない方もあるかと存じますので、簡単に申し上げますと、船が出たり入つたりします場合に、水先パイロットをその船に乗せるわけでございます。多くの港は自由でございまするが、今申しました四港については、必ずこれを乗せなければならないという制度になつておるのでございます。これは終戦後できた制度でございます。そこで今両方の主張がございまするので、私どもとしては、水先料の引上げをある穫度やりますとともに、この強制水先制度につきましても、これを廃止するか、緩和するかということについての根本的な検討をしておるのでございますが、廃止しないにしましても、強制水先制度につきましては、相当これを緩和するという方向に進みたいと考えておるのでございます。水先料の引上げについては、現在も相当低いものでありますので、これはある程度引上げる必要があるかと考えております。  次に、木船に対する国家再保険制度であります。これは戦争前に、機帆船に対する国家再保険制度が実施されておつたのでございますが、終戦後に司令部からの圧力によりまして、この再保険制度が廃止になつたのであります。ところが一方において、この木船と同様の性格である漁船に対しまして、国家再保険制度が現在行われておるのでございます。また木船事業の実態からいたしましても、木船事業は多くが非常に零細な事業である。そのほとんど全部と言つていいかと思いますが、保険に入つております。従つて事故に遭遇して船が失われまする場合に、一家路頭に迷うという事例なきにしもあらずと考えるのでございます。さもなくば非常に高利の金を借りて船を新造するという状況でございます。木船事業の保護育成という見地から、この保険制度を普及する。それには国が再保の援助を与えるという必要があるかと考えまして、目下大蔵省と交渉中でございます。次の国会には、ぜひともこれが視案の運びに持つて行きたい、かように考えておる次第でございます。
  12. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に船舶関係について説明を求めます。甘利政府委員
  13. 甘利昂一

    ○甘利政府委員 船舶関係仕事の概要につきましては、先ほど運輸委員に対する事務概要説明資料と申します小さなパンフレットを差上げてありますが、そのうち特に当面する重要問題について、本日御説明申し上げたいと思つております。  先般の海運造船合理化審議会において、運輸大臣から三つの問題の諮問がありました。その第一は船腹の拡充、第二は海運経営の基盤の強化について、第三に造船船価の低減についてという諮問事項がございました。それに対しまして委員諸公からいろいろな意見が出ましたが、特に船価の低減について問題になりますのは、造船船価のうちの約二割を占めますのが鋼材の価格であります。あとの五割が、造船所がほかのメーカーから買いますところのたとえば主機関とか、補機とか、無線の機械とか、塗料とか、こういうようなものでありまして、われわれが一般に造船関連産業と申しております二百余種類にわたる各産業部門から購入するものでありましてこれらが船価の約五割を占めております。残りの三割が造船所でこれらのものを集めて艤装したりあるいは船体そのものをつくる費用でありまして造船船価を下げるためには、単に造舶所のみの合理化によつてはとうてい下げ得ないのでありまして、むしろこれらの船価の大部分を占めますところの鋼材の価格の引下げ、あるいは関連産業から購入する物品の価格低減の問題であります。これらの鋼材及び購入物品の高いのは主として材料高によるのが多いのでありまして、特に鋼材につきましては、例を引きますと、現在わが国の造船用の鋼材はトン当り約百三十九ドル、ところが同じ海運国でありますところのイギリスでは八十三ドル、その差額が約五十六ドル、日本円に直しまして二万円にも達しておるのでありましてこの差額をなくすることによりまして、現在英国と日本との船価の差であるところの約一割程度の差は、十分にカバーし得るのであります。ところが一方、いろいろな運賃あるいは原料等の価格の低減に基きまして鋼材も漸次下つて来る、従つて造船用鋼材もおいおい価格が下るのではないかというような話がありますが、御承知のように造船用鋼材は、一般の鋼材と違いまして特殊の規格鋼材であります。先ほどお配りした造船用特殊規格鋼材における割増料軽減のための助成措置についてこれを見ましても明らかなように、造船が国際的な性格を持つている関係上、船に使います鋼材は、国際的の規格に合つたものでなければならぬ。従つてその品質について相当のやかましい規格を設けております。それに対して現在日本においてはトン当り約四千円の割増料をとられております。イギリスでは約五十円程度のごくわずかのものしかとつておりません。なおまた造船冊鋼材は非常に長尺のものを使います。一般用の鋼材は、たとえば幅が四尺とか五尺、長さが八尺とか十尺とかに比べまして、造船用鋼材の幅は十尺あるいは十二尺、長さは三十尺ないし四十尺、最近では六十尺というようなものも使つております。こういう幅なり長さについて非常に特殊の寸法のものを使つておりますので、これらの寸法に対する割増料が、現在日本においてはトン当り約二千五百円もかかつておりますが、これは外国にはその例がないのであります。なおそのほかに最近船が従来の鋲接構造から溶接構造に転換になりました関係上、特に特殊の規格を持つた鋼材が要求されますので、これらに対してはトン当り一万円ないし二万円というふうな非常に高価な割増料がついております。もちろんこれらの材料は二分の一インチあるいは一インチ以上特殊の厚板について割増料がついておるのみで、特殊の二万円ないし二万円という割増料は全般の鋼材にはついておりません。しかし一般にこういう特殊の割増料だけでも約二万円外国に比べて高い。従つて一般用の鋼材の価格が低下いたしましても、これらの造船用の特殊鋼材についてはなかなか低減で覆いというのがわれわれの見解でございます。しかし一般用鋼材についても、現在のように遠隔地から鉱石を運びますと、勢い運賃なりが相当加算されますので、そういうものに基く鋼材の価格は自然上つて来るのであります。たとえば運賃でありますが、現在のようにインドあたりから入れます鉱石の運賃が、一時十四ドルもしておりましたが、現在は七ドル程度であります。このように下りましても、この鉱石を運ぶ運賃が鋼材に及ぼす影響は約二五%程度でありますので、現在五万円もする鋼材について二五%と申しますと、二千円未満の低減であります。いかにこういう措置を講じましても、一般用鋼材は二千円あるいは三千円下るかもしれませんが、しかし先ほど申しました特殊の規格の一万円前後のものはどうしても下りませんので、これらの点から考えますと、特殊の助成措置を造船用の規格鋼材に対して講じなければ、わが国の造船船価は外国に比べて安くならないというふうな見解を持つております。  現在わが国の造船能力は、われわれは大体五十八万トンと称しておりますが、それは設備能力から見てもそうでありますし、また現在約八万人くらいの工員がおりますが、この行員をベースにしてはじいた造船能力も大体それに近いものであります。その能力をもつてこの九月末におきましては、約五十九万トン程度の船をつくつておりますが、これはおそらく戦時中を除いてはこれほど多量に船をつくつておることはないのでありまして、少いときで三万トンあるいは五万トン、多いときでも二十万トン程度であつたのであります。現在は幸いにして能力に近い程度の造船量を持つておりますが、この十一月、十二月以降逐次これらの船は進水あるいは竣工いたしまして、来年の一月、ろになりますと、この能力のほとんど半分はあいてしまいます。三月ごろになりますと、ほとんど船台はからになつてしまうというような状況にあります。先ほど申しましたように、造船業は単に造船所のみの仕事でなしに、非常に関連した幅が広いものですから、造船所がかくのごとく船がなくなり、衰微するということは、これに関連した諸産業が一時に衰微するということになりますので、そういう意味においてもある程度の操業度を造船所に維持させることが、造船所のみならず一般の関連産業の操業を維持することになり、またこれらの産業を通じて一般の産業の景気を振興することになりはしないか、このように考えております。約五十九万トンつくつております中の四割四分は輸出船でありまして、これは諸外国の造船状況を見ましても、現在約千五百万トン程度建造並びに発注の船がありますが、その中の三割五分は輸出船でありまして、従来自国建造でその国の海運なりに追随して、その国で船をつくつたものが、戦後におきましては、各国とも輸出船をつくるごとに相当力を入れておりますし、また各国とも自国船を、自国の造船所のみならず、その足りない分を他国の造船所に依頼してつくるというふうな傾向があります。わが国でもその例に漏れず、つくつております船の大体半分は輸出船であります。また一方昨年度の例を見ましても、輸出船において獲得した外貨が七千万ドルにも上り、昨年度の機械輸出の中の約八割を占め、プラント輸出の約四割を占めておる。しかもその輸出先は、ほとんど大部分がドル圏内であるという意味から、船舶の輸出が輸出振興という意味において、非常に好適のものであるということが言えるだろうと考えます。しかしこれらも昨年それほどとれた船が、本年どうして輸出が振わないかと申しますと、昨年は海運市況がよかつたものですから、船価のある程度高いのをがまんして日本に対して相当注文があつたのでありますが、最近の海運市況の悪化に伴いまして、やはり船価が相当安くなければとれないという点において輸出が非常に困難になつたのであります。先ほど申しますようにイギリス並の鋼材の価格にすれば、これらの輸出船が十分とり得るのであります。従つて単に内地の船価を下げて運航採算をよくするという点からのみならず、輸出船の増加という点から見ても、わが国の造船用鋼材をある程度外国並に下げるということが、緊急の必要性があるのではないかと考えております。  なお船価の低減策としましては、先ほど申しましたように関連産業の合理化、あるいは関連産業でつくりますいろいろな品目の価格の低減が必要でありますが、これらの関連産業の合理化と申しますと、結局日本の全産業の合理化をするにあらざれば、とうてい期待し得ません。しかもこれらは大部分がその材料高に基くのが一つと、これらの産業が大は数億円の会社から、小は数十万円の小さな会社に至るまで、会社の経営の規模が非常に複雑雑多であるということ、しかも注文される品物が請負注文であるために、規格が一定していない。従つてこれらの規格を統一することが大事でありますが、大部分が中小企業でありますので、金融面において非常に困つておる。これらの点がまた購入品の価格を高くして同時に船価を高くするということになつておるのであります。そういう点で鉄鋼の価格の引下げ、これらの関連産業の合理化及びいろいろな金融措置が、船価低減の主要目題になつておると考えるわけであります。  なおこれらの輸出船が先進国に相当輸出されておることから見ましても、わが国の造船技術がほかの一般の輸出品に比べて非常にすぐれておることを裏書きするものでありますが、しかしたとえば船の推進性能とか、あるいは船型については、少くとも世界の各国に比してひけをとらないのでありますが、戦時中あるいは戦後のいろいろな空白時代におきまして、その他の一般の技術とともに、造船に関する技術の助成及び補助策が全然講じてないために、相当困難を感ずる点があります。特に戦前日本の海軍は、艦艇の技術を上げるために惜しげもなく費用を使つて、造船技術及びこれらの関連産業の技術の向上について非常に拍車をかけたのでありますが、これらがなくなつた以後全然放置してありますので、世界各国の戦時中を通じての技術の進歩に、ある点において追いつけない点があります。それでわれわれとしましては、特に造船関係の技術の振興に対するいろいろな助成策を特に講じてもらいたいと考えております。外国におきましては、政府自身がすでにこういう面に対する研究資金を相当出しております。アメリカの例を引きましても、財政資金の中の三%ないし五%はこういう技術の振興に予算を出しておりますが、わが国ではその約十分の一であります。また会社の収入のうち、こういう技術面に支出しておるものが、二・五%ないし三・五%という外国の例に比べまして、わが国は約十分の一の〇・二ないし〇・三という非常に少い研究費しか出していないのであります。これらは造船所の現状から見まして、さしあたり収益もないために研究費を出すことが非常に困難であるという理由もありましようが、一般財政資金としては、日本の全般の技術水準に関係のある造船関係の技術振興のために、ある程度の技術助成をすることが当然じやないかというふうに考えております。  なお私どもの方としまして、本国会に提出する予定でありますのは、艦艇等の製造に関する法案でありまして、これはポツダム勅令の廃止に伴いまして、この禁止条令が一時延長されておりましたが、それも先月の二十四日効力を失効いたしましたので、現在は艦艇の製造については何ら規制がないのでありますが、わが国の現状から考えまして、艦艇の製造を放任しておくということは時宜にそぐわないものと考えます。特に国の注文する艦艇のみならず、最近においては諸外国からも相当艦艇の注文があるのでありますが、これらの艦艇に対して公共の安全の意味から何らかの規制をすることが必要ではないかという観点から、今国会に艦艇等の製造に関する法律を提出いたしたいと思つております。  以上簡単ではありますが、私の所管のうちで、特に重要問題について御説明申し上げました。
  14. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に船員局関係につきまして説明を求めます。武田政府委員
  15. 武田元

    ○武田政府委員 船員局の所管しております行政事務の遂行にあたりまして、当面しておりますおもな事項ニ、三について御説明申し上げます。  最初に船員の労働組合運動の動向について申し上げます。船員の労働組合のうち、全日本海員組合、これは現在船員数十八万人中十一万人が加入しておりまして、通称全日海と称しておりますが、この全日本海員組合は、全国単一の組織をもちまして、海運業及び漁業を通じ、すなわち汽船、機帆船、引舟の乗組員のみならず、漁船船員も入つておりまして、あらゆる職種の船員を組合員といたしまして船員労働組合運動の大勢を支配しております。この組合は現在国内的には日本労働組合総評議会、国際的には世界自由労働組合連盟及び国際運輸労働組合連盟に加入しております。この組合の運動は、国内的には経済活動を主といたしまして、日本船主協会との間に比較的進歩的かつ合理的な労働協約を結びまして、組合員の労働条件の維持改善に努力いたしますとともに、国外的には平和条約を支持し、日米安全保障条約を是認して、現在健全な発達を遂げております。しかし一度実力行使のやむなきに至るや、秩序統制ある強力な運動を展開いたします。  たとえば今年の八月、船主協会に対しまして、退職金制度の改善を要求いたしまして、八月七日から二十日まで全国的ストライキを行いました。このときは停船隻数九百九十二隻に及びました。幸いこの問題は、船員中央労働委員会会長のあつせんで妥結をいたしたのであります。この退職金制度の改善の要求に先だちまして、この七月九日に賃金の値上げ——この値上げの要求の趣旨と申しますのは、現在の特別最低賃金制度内容に若干不備の点がありますので、これを是正すること、それからその後の物価の値上り、一般賃金の上昇傾向並びに生活水準の向上のため、給与の引上げをはかりたいという趣旨からいたしまして、現在の平均賃金約一万六千円の三割ないし四割の引上げを要求いたしまして、数次にわたります労使間の団体交渉も妥結となりませんで、この十一月二十日船員中央労働委員会に調停の申請をいたしまして、十一月二十六日第一回の調停委員会が開催をされました。第二回は十二月十日に開催をされる見込みでございますが、現在の海運市況の深刻な不況にかんがみまして、この問題の解決は非常な困難性を包蔵しておる次第であります。  次に戦傷病船員、戦没船員遺族の援護について申し上げます。終戦後七年間、各般の情勢によりまして戦争犠牲者に対しまして特別の援護措置を講ずることができませんでしたが、前国会において戦傷病者戦没者遺族等援護法が公布せられまして、これは船員も包含されて、一応の援護が与えられることとなつたのでございます。しかしその内容は決して満足と申すべきものではございませんでした。この措置は暫定的なものであり、さらに将来の保障制度につきましては、恩給法特例審議会を設けまして、その研究にまつことになつたのでございます。今回恩給法特例審議会におきまして、新聞紙上に出ておりますように、軍人恩給の復活について政府に答申がなされたのでありますが、戦争中船員動員に関する諸制度によりまして、強制的に戦争に動員され、陸海軍の指揮下に危険水域を航行しますとともに、軍人同様直接戦闘に参加し、軍人以上の犠牲を払つた船員につきまして、軍人以上と申しますと、戦没船員の数は五万八千に及び、比率にいたしますと四割七分に達しております。しかもこれらの船員は、その功績抜群なる者に対しましては金鶏勲章が授与され、またその遺骨は軍人と一緒に靖国神社にまつられております。こういつた船員が、軍人恩給の復活に伴いまして、旧軍人はべースーアツプによる恩給、障害年金、あるいは遺族年金等が支給せられることとなります場合は、旧軍人との懸隔が非常に大きくなるのでありまして、この点につきまして、これら戦傷病船員、戦没船員の遺族は非常な不安と不満を持つておるのでございます。全日本海員組合及び船員遺家族援護期成連盟は、政府関係当局に対して目下猛烈な運動を展開いたしておりますが、このままに放置いたしますと、社会政策上また将来の海運政策上好ましくない結果を生ずるおそれがありますので、運輸省といたしましても、戦傷病船員及び船員の遺族につきましても、軍人恩給と同等の保障が与えられますよう、何らかの法的措置を講ずる必要があると認めまして、目下厚生省当局と折衝中でございます。  次に、お手元資料を差し上げてあることと思いますが、優秀船員確保に関する措置について申し上げます。わが国の海運が強力な国際競争力を持つためには、優秀な船員を確保することが必要でございます。御承知のようにこのたびの戦争で多くの優秀船員が失われ、現在残つております船員は、戦争当時急速に養成されました船員、あるいは終戦後の混乱期に不十分な教育を受けました多くの船員が第一線に出ております。これらの船員の素質の向上をはかるための再教育の実施、並びに今後において優秀な船員を養成することは、きわめて必要な問題であります。これがために船員の教育施設整備強化いたしまして、船員の教育内容を充実し、優秀船員の養成をはかりたいという趣旨をもちまして、運輸省としましては、船員教育制度及び機関の整備について、大蔵当局に予算を目下請求いたしております。現在の船員教育施設はほとんど戦時中に設けられたものでありますが、当時は一刻も早く船員を養成しなければならぬという急迫した事態に追われまして、運航技術を十分に訓練するための施設等は、これを整備する余裕がなかつたのであります。終戦後幸いに戦災を免れました施設も、こうしていわば片ちんばの不十分な施設であり、しかも終戦後今日に至るまで老朽の度を加えこそすれ、同腹を見ておらないのであります。運輸省といたしましては、大学と高等商船学校は文部省の所管でございますが、それを運輸省の所管である普通船員の養成機関並びに再教育機関について、その教材、備品の整備、それからそれら教育機関の学生、生徒に対する給費制度の設定、それから普通海員養成所、これは海員学校と申しておりますが、それを一校増設するごと等につきまして、具体案をつくつて大蔵省に要求をいたしております。そのほかなお航海訓練所におきまして、三千トン型練習船一隻を新造することを計画いたしております。これは現在訓練所が持つております戦標船改E型二隻、この練習船はずいぶんいたんでおりますので、これを廃棄し、それから神戸商船大学が新設されましたので、これに伴つて練習船の船腹を増加いたさなければならないという理由に基くものでございます。それから船員に関する基本法規でございます船員法並びに船舶職員法、これは船員局で所管実施いたしておりますが、この実施状況の詳細につきましては、お手元資料によつて御検討をお願いいたしたいと思います。これをもちまして船員関係の御説明を終ります。
  16. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、海上保安関係につき説明を求めます。山口説明員。
  17. 山口伝

    ○山口説明員 海上保安庁の現況につきまして御説明申し上げ、次いで当面の諸問題につきましてお話申し上げたいと思います。お手元資料として「海上保安庁の現況」というのを差上げてございまするが、新しい役所でございますので、最初簡単に沿革を申し上げたいと思います。  御案内のように、海上保安庁は昭和二十三年五月発足を見たものでございます。開設当時は海軍の残留船艇である駆逐特務艇と申しまして、わずかに百トン前後の木造船二十八はいをもつて事業を開始したのでございますが、その後若干の経緯を経ましたが、二十五年に至つて御承知のマツカーサー書簡が出まして、当時の警察予備隊とともに海上保安庁の勢力の増強の指示があつたのでございます。その後逐次施設において、あるいは舟艇において、あるいは職員において増強が行われて参つたのでございますが、本年すなわち昭和二十七年に入りましてから、海上保安庁の中に海上警備隊が設けられました。ところがこれが設けられて間もなく本年の八月一日の行政機構の改革によりまして、ただいま設けられました海上警備隊と、当時海上保安庁の中でやつておりました航路警戒の仕事が、新たに総理府に設けられた保安庁に移管され、またその際従来海上保安庁で所掌いたしておりました検査部の仕事、すなわち船舶検査仕事船舶職員の仕事運輸省の本省に返しましたので、現在の姿に相なつたのであります。  まず最初に現在の海上保安庁の組織、機構について御説明申し上げます。ただいまの海上保安庁は、運輸省の外局といたしまして海上保安行政を一元的に掌握しておりますが、その所管しております広汎な業務のそれぞれの責任体制を確立するために、中央の機構といたしましては、海上保安中央機構が東京にあるわけでありますが、内部の構成としましては総務部、経理補給部、船舶技術部、警備救難部、水路部及び燈台部、以上の六部の構成になつております。そのほかに付属機関といたしまして海上保安審議会、それから職員の養成機関といたしまして海上保安大学校、海上保安学校、海上保安訓練所、この三段階の養成機関を持つております。さらに地方機関といたしましては、全国を九つのブロックにわかちまして——これは海運局の十にわかれておるのと若干違うわけでございますが、海岸線を中心として九つにわけまして、それぞれに管区海上保安本部というものを置いております。その管区海上保安本部の下に、下部機関といたしましては大阪に海上保安監部、それからなお三十九箇所に海上保安部を置いておりまして、この海上保安部並びに海上保安部が第一線仕事中心になる部署でございます。なおこれらの下部機構として、さらにこまかい港に、警備救難署を全国で三十七箇所、なおそのほかに水路観測所八箇所を置いております。これらが地方の機関でざこいますが、これらによりまして海上保安業務の運営に万全を期しておる次第でございます。  以上が組織でございますが、職員は、行政機関職員定員法によります定員、すなわち八月の行政機構改革後の海上保安庁の定員といたしましては、現在一万一千百一名でございます。かなり多いわけでございますが、運輸省全体の職員が現在二万六千四百八名でございまして、これに対して海上保安庁はその中に含まれておるわけでありますが、四二%に当つております。十月一日現在の実員数を申し上げますと一万四百九十三名でありまして、若干の欠員を持つておる次第でございます。これを仕事関係上、陸上員と海上員と二つにわけるわけでありますが、陸上員といたしましては五千五百八十六名、それから海上員が四千九百七名、約半分近い人が海上で働いておるわけであります。さらに全体の一万余の全員を中央、地方にわけますと、中央の職員が二千百二十四名、この中には付属機関を一応含めました。地方の職員が八千三百六十九名、約二割の人が中央で、八割が現場におるということに相なるわけであります。  次に予算関係について申し上げます。昭和二十七年度成立いたしました予算の概要は、年度初頭には先ほど申し上げたように八月の機構改革で変更がございましたので、当初予算としては九十二億三千余万円ということでありましたが、機構改革の結果、今日の海上保安庁のものとしては、そのうちから四十億ばかりを移しがえいたしましたので、実際の本庁の本年度予算額としては五十三億二千三百七十八万三千円と相なつた次第でございます。これを御参考のために職務別に一応わけますと、総務部関係が一億三千八百万円ばかり、警備救難部——この仕事が非常に広範でございます。警備救難部関係が三十二億八千万円ばかり、船舶技術部が一千一百万円、水路部が二億三千四百万円、燈台部関係が十三億三千万円、教育関係、先ほど申し上げた三つの機関の関係が二億一千万円ばかりでございます。これが今日の海上保安庁の年間成立予算と見ていただいてけつこうであります。次に、現在海上保安庁が所有しております船艇について申し上げたいと思います。まず警備救難の仕事中心になりますパトロール・ボート、すなわち巡視船でございますが、これが現在では九十三隻ございます。これの排水量が、お手元にあると存じますが、二万六千六百九十トン、これについてちよつと申し上げたいことは、先ほど仕事を始めます設立当初においては二十八はいと申し上げましたが、現在では九十三隻に一応なつております。この内訳によりますと、新造部分が四十四隻でございます。従つて在来が四十九隻、かなり新造がふえまして、質的改善を見たのでありますが、なお後ほど申し上げたいと思いますが、まだ十分な勢力とは申し得ないのでありまして、今後これが改善をはかつて参りたいと思います。港内艇が二百四隻、軍船が二十四隻、燈台船が八十四隻、これらを合計いたしまして、現在では大小織りまぜて四百五隻の舟艇を駆使しておるわけでございます。  次に犯罪検挙の状況、これ海上保安庁といたしまして、巡視艇もしくは海上保安官等によつて調べました仕事の統計でございますが、犯罪検挙の数を最近の一年間、すなわち昨年の八月からことしの七月までの一年間を一応とつてみましたが、不法入出国関係で四百四十三件、関係人員として千二百十七人、次に密貿易関係が百十二件、人員で四百三十一人、密漁関係で二千六百六十四件、人員におきまして三千二百十四名、経済関係といたしまして件数が五百三十三件、関係人員五百六十四名、刑法関係といたしまして三百六十九件、人員六百人名、その他が四百二十二件、人員におきまして五百五十六名、かような仕事になつております。これによりましても相当仕事があることをおふくみとり願えることと存じます。  次に、海難救助の実績でございますが、これは一年ずれますけれども、昨年の九月からことしの八月までの一箇年間の統計でございます。船舶におきまして海上保安庁の救助いたしました隻数が一千六十四隻、救助人員が八千三百九十二名ということになつております。これは海上保安庁に救助を頼まれました船舶に対して、海上保安庁によつて救助いたしました船舶の比率をとりますと三一%ということになります。隻数において三一%、人員におきましては二六%、これは海上保安庁が創立以来逐次上昇して参つておりますが、今のところこの程度であることを申し上げておきます。  次に、水路関係の業務についてでございますが、最近一年間、これは昨年の九月からことしの八月までの間に、水路測量といたしましては沿岸測量が二十箇所あります。海洋測量が二箇所、磁気測量が五箇所、海象観測といたしましては観測海面が七箇所、潮流観測が四箇所、波浪観測が一箇所ということになつております。  次に航路標識、これは燈台部がやる仕事でありますが、航路標識の現況といたしましては、お手元にくわしい資料が一応ございますが、簡単に申し上げますと、海上保安庁が直接管理いたしておりますのが夜標、昼標とあり、それから無線方位信号、霧信号、船舶通航信号あるいは潮流信号等でございますが、すべてで施設数が千七百二十八箇所、このほかに海上保安庁が監督いたしております部外のものとして約三百基ございます。従つて総体におきまして、個数は二千二、三十になるわけでございます。これはお手元に差上げました資料の概略のところであります。次に、当面のトピックといたしまして若干申し上げたいと思います。まず第一に船艇の増強とこれの装備の強化でございます。まず新造計画であります。先ほどから申し上げますように、警備救難業務は非常に広汎な仕事になつておりますが、これを十分に遂行するためには、なお今後高性能の新造船が相当数必要でございます。この対策として、目下二十八年度建造として計画中でありますものは、巡視艇十二隻、合計しまして八千トン、一番大きいのは千二百トン型から始めまして、以下小型になりますが、十二隻で八千トン、港内艇が五十三隻、トン数といたしまして合計千四百三十トン、それから練習船二隻、千五百トン、これは新造でございますが、現在の勢力につけ加えるばかりでございませんで、実はこれだけつくつて、一方老朽しております駆逐特務艇、駆特艇と申しますが、これが七はい——これは現在巡視艇に使つておるのでございますが、それが七はい、それから港内艇の十隻ぐらいは廃棄をしたいということで、差引増強をされるわけであります。隻数の増加と同時に、質の向上をどうしてもはかりたい。特にかような数字になりましたのは、後ほぞ申しますが、北方あるいは朝鮮海峡あるいは東支那海等で拿捕事件がございますので、これらの漁船保護のために、現在常時これらの海面に少くとも五、六隻動員をいたしております。これらを五、六隻常時動員するためには、どうしてもこれの倍数ぐらいの船がないと現場に行つておるわけに参りませんので、これらの穴埋めということになりますし、それから先ほど申し上げた従来からある巡視艇の中で、性能がきわめて悪いものは何とか早い機会に置きかえたい。これらが統計されて、今のような数字に来年度の計画ではなるわけであります。なお先般明神礁の遭難で失いました第五海洋丸、これは二百トン前後の観測船でございましたが、これの代船として今度の補正予算で約六百トンぐらいの在来船を買い入れまして、これを改造して代船として使いたいという計画でございます。一応政府原案として国会に上程されました補正予算の中には、購入費、改造費を合せまして七千五百万円だけあげておる次第でございます。  次に、これらの巡視艇の装備の強化でありますが、現在のところの海上保安庁の巡視艇は、火器としては拳銃を数ちよう持つておるだけでございます。凶悪な犯罪船に対しましては心細いのでありましてまた拳銃だけでは——むろん向うの舟艇へ乗り込んでからは、それでも用をなしますが、それ以前の段階では拳銃は用をなさないために、何らかの装備をしたいということで、寄り寄り研究しておりましたが、そのために巡視艇の大型には三インチ砲、その他小さなものになると機銃になりますが、これらのものをぜひ装備する。これは要するに実力行使ということではないのでありまして、平生の密航、密輸、密漁等の取締りをやるために停船を命じた場合に、聞かないで逃げ出すようなときに、威嚇のために装備されるわけであります。この火器は大体アメリカから借りるということに予定しておりまして、了解を得ておりますが、これらの今後の実施につきましては、目下外務省ととりきめ等につきましてどういうふうに持つて行つたらよいか交渉中であります。話がきまりますれば、今後巡視艇がドツキングをやる場合に、逐次武器の搭載、あるいはそのための改造、弾薬庫等いろいろありますが、それらの工事をいたしたいと思つておりまして、ただいま補正予算ではとりあえず二十六隻について装備することができるように二億二千万円ばかりのものが内定いたして、国会にそれが出ておる次第であります。  次は、航空機の保有の問題でありますが、海上保安庁の海上における警備救難業務は、今日まで舟艇だけで行つてつたのでありますが、日本を包む厖大な海域の中では、浮流機雷その他の浮流物の発見、あるいは密航、密輸、密漁等の取締り、あるいは海難救助等の場合には、近代的な機械として航空機の使用を船と併用することがどうしても必要でございます。そのために今回補正予算で要求しておるわけであります。大体航空機をどのくらい持つかということになりますが、二十七年度といたしましては補正予算ではヘリコプターが六機、それから来年度はグラマン飛行艇六機、それから大型飛行機八機程度を購入したい。なおその際の基地といたしましては、ただいまのところ函館、横浜、大村、舞鶴、新潟等を一応予定しております。これらのことにつきましては将来警備隊との関係、その他民間の航空機会社等といかようにやつて行くのが最も合理的かということは寄り寄り研究しておりますが、いまだそれらの方が整備されない以上、警備救難業務としてこの程度のものはさしあたりほしいというので、予算を計上しておる次第でございます。  次に、冬期の海難防止の対策でございますが、日本の沿岸一万海里に及ぶこの水域におきまして、平生相当の遭難事故がございます。最近のところ日平均十隻以上になる次第でございます。これらの海難によつてとうとい人名と莫大な損害と物的損失をこうむつておるわけでありますが、海上保安庁といたしましては毎年台風期あるいは海難の最も多い冬期には、それぞれ特別な対策を立てて実施をいたして参つたのでありますが、ちようどこの十二月から来年の三月までの四箇月間を本年度の冬期海難防止期間といたしまして、ことしは主として小型船を対象といたしまして、先ほど申し上げた管区海上保安本部ごとにその実情に応じて防止対策を実施することにいたしております。  次は、浮流機雷に対する被害防止対策でありますが、浮流機雷は、御承知の通り、朝鮮事変以来本州日本海方面に現われるようになつてつたのでありまして、航行船舶に対して多大の脅威となつてつたのでありますが、海上保安庁といたしましては、これまで巡視船を使いまして、機雷の捜索に当り、また特に浮流機雷が多く現われる海面もしくは時期には、特に従来は掃海船も派遣いたしまして、巡視艇と協力して、航路の安全をはかつてつたのでありますが、本年八月保安庁ができて以来浮流機雷に対する業務は、海上保安庁と警備隊との両者が所管することになりましたので、この仕事の円満な実施をはかるため、去る二月十八日に海上保安庁との間に業務の協定をいたしまして、両者密接な協力、連繋のもとに本業務を遂行することになつたのであります。  ただいまのところ海上保安庁として立てている対策としましては、冬期日本海における浮流機雷の対策がまず第一点でありますが、これは毎年の現象として十二月から翌年の三月までの冬場の間、本州の日本海方面に浮流機雷が猛威をたくましゆうする傾向がございますので、日本海方面に特別の対策を立てまして、浮流機掛の積極的発見、処分に当つておつたわけであります。今年もこの十二月から昨年同様実施することにいたしております。  次に津軽海峡における浮流機雷の対策でありますが、津軽海峡における浮流機雷は、毎年夏の五月から八月にかけて増加して参る傾向がございます。これが青函連絡船の運航に非常な支障を与えておつたのでございますが、これまではその浮流機雷が津軽海峡に漂流する期間は、海峡の西口におきまして積極的にこれを捕捉することにして処分を行つてつたのでありまするが、今年はさらにそれに加えまして恒久対策として、北海道側の白神岬と青森側の龍飛崎、その問がたしか二十キロあると思いますが、この最も接近した両箇所に最新式レーダーを装備いたした機雷探知所を設けまして、これによつて二十四時間常時警戒を行うことになつております。この探知所は去る十月末に完成を見まして、ただいまのところ試験期間として大いに練習を積んでいるわけでありますが、近々のうちにこれが本格的な活動を実施することになる次第であります。  次に、漁船拿捕に対する保護対策であります。これまで拿捕事件がひんぴんとして起つておりましたが、特に平和条約の発効以来、マッカーサーラインが撤廃されましたので、日本の漁船は従来のマッカーサーラインを越えることができるようになつた。その後拿捕事件が急にふえたようなことなのでありまして、その後こういつた現象に対処しまして、去る五月閣議決定に基きまして、海上保安庁の巡視船の一部をこれらの危険海域に派遣して、操業漁船が相手の国の領海を侵犯して拿捕されるようなことがないように、水産庁の監視船と共同いたしまして、操業秩序の維持と漁船の保護に当つて来たわけであります。現在この決定に基いて派遣しているのでございます。隻数は、先ほどもちよつと申し上げましたが、常時宗谷海峡に一隻、千島付近に二隻、日本海、朝鮮海峡方面に一隻、支那海域に二隻程度出すようにして、哨戒に当つております。なお朝鮮水域につきましては、御承知のように李承晩ラインあるいはその後国連軍によつて設定されました防衛水域の問題がございまして、これらのために日本漁船の操業に重大な支障が起りつつあるのでございますが、これらにつきましては目下外務省あるいは水産庁と十分相談しながら、韓国には外務省からアメリカ大使館を通じて、それぞれこれが対策について交渉していただいております。今のところまだ的確有効な結論に達しないのでありまして、今後この問題は相当紛糾するのじやないかと思います。  次は、水路の設定及び海象観測能力増加の点でございます。日本の沿岸の水路測量につきましては、ただいまのところ五つの班を持つて業務を遂行しておりますが、どうしても各管区ごと、すなわち九つぐらいの測量班を編成してこれに当らなければ、とうてい要望にこたえられないという現状でございます。現在のような能力で推移するとすれば、日本沿岸の海測に要する測量は、今後なお三十年くらいの長年月を要することを予想されるのでありまして、なるべくすみやかに測量船を増強して参らなければならぬ。また測量の機器につきましては、近代的なものを利用しなければならぬ必要に迫られている現状でございます。海象観測については日本近海の全域にわたつて行われておりますが、特に黒潮、親潮、それから対馬海流の調査研究に主力を注いでおりまして、現在三隻の観測船をもつて常時操業いたさせております。この海象観測の究極の目的は、観測の成果を正確に予報することでありまして、現在のところ潮跡あるいは潮流についてはすでにその予報を実施いたしておりますが、観測施設の不十分なために、海流とか波浪等につきましてはまだ実施ができておらないのであります。今後観測船あるいは観測所の増強をはかつて、これらのことを始めて参らなければならぬと考えております。  次に、航路標識の整備関係について若干申し上げたいと思います。わが国の航路標識は、先ほど申し上げるように海上保安庁所管外の約三百を合せまして、本年十月一日現在では総数が二千五十四基になつております。これらは明りをつける夜燈と申しますのと、昼間の標識と、それから信号標とか、ラジオ・ビーコンとか、霧信号とかであることは先ほど申し上げましたが、そのうち燈火による夜間航路標識について考えてみますと、日本では海岸線八海里当り平均十四基にすぎません。終戦後、相当いためられました航空標識につきましては、これが復旧に重点を置いたのでありますが、最近の二、三年はこれが増強にどんどん手がまわつて参つたわけであります。それでもなお現在のところ八海里当り十四基しかないのであります。これを先進国に例をとりますと、オランダにおいては、七十五基になつております。アメリカは二十三基、イギリスは二十基でありまして、これらと比べますと、日本の近海に与えられておりますダーク・シーあるいは海難国という汚名を返上するまでには、まだ相当の隔たりがあるわけであります。なおわが国の航路標識には旧式なものが多いのでありまして、燈火の機器初め音響信号あるいは電波標識等について、今後技術的改良が非常に大事なのでありまして、目下いろいろと計画を立てて整備に努力いたしている状況でございます。以上当面の問題について申し上げた次第であります。  最後に一言つけ加えたいことは、海上保安庁の義務はいろいろ広汎にわたつておりますが、これを端的に申しますと、各省の出先として舟艇、船員あるいは通信施設などを渾然一体として、時に応じ場所に応じて動員して扱う現場業務をやつているわけであります。しかし何と申しましても運輸省の海事関係とは特に密接不可離の関係にございまして、常時海運局とは不断に手を握りながら進んでいるわけであります。海上保安庁発足以来四年半になりますが、どうにか今日軌道に乗りつつあるのでありまして、今後海上保安庁に付託されました海上の治安並びに海上の安全、これらの業務の確保は若干軌道に乗つておりますが、これを大幅にやつて参りたいと思つております。どうぞ何分にもよろしくお願いいたします。
  18. 逢澤寛

    逢澤委員長 明日午後一時から開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十八分散会