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菊川孝夫君 私は社会党の第四控室を代表しまして、
労調法等の一部を
改正する
法律案、それから
地方公営企業労働関係法案並びに
労働基準法の一部を
改正する
法律案に対しまして、
委員会の
修正案及び
修正部分を除いた原案に賛成いたします。簡単に賛成の
意見を申述べたいと存じます。
私が賛成すると申しましても、実は原則的にはやはり
労調法、
労働組合法、
労働基準法等のいわゆる労働三法は今直ちにこれは
改正するべきでないし、又
改正する必要を認めないのであります。と申しますのは、何と
言つても、この三法は、これはまあ
慣習法で、長い間の労使の
経験を生かして逐次こう、その
経験が
法律化せられて行く、こういうコースを辿らなければならんと思うのであります。それから現在の三法は、これは
占領軍の指導に何と
言つても私は負うところが多いと思います。これを
独立後
日本人みずからの手で
一つ、みずから運用してみた上で、欠陥があつたならば逐次
改正して行く、こういう方向をと
つて行かなければならないのにかかわらず、
独立後直ちにこれらの
法律を
改正するということは少し早計に過ぎるのではないか、かように私考えるわけであります。で、今次の
改正の焦点は、何と申しましてもあの二・二
ゼネストの際に発せられました
マツカーサーの
命令に代るものを何らかこれは用意しておかなければならん。少し
争議が大きくなりますると、従来はこの
マツカーサー元帥の
命令を援用して、或いはマーカツトの声明といつたようなものから
争議の
解決という端緒を見出すことが、
占領下における
一つのまあ慣例のようなことにな
つてしま
つておる。これでは困る。確かに自主的にこれは
解決するようにしなければならん。併しそれはいろいろのケースが
一つの慣行とな
つて、こういう
解決が最もいいのだというところから私は立法されて行くべきであるし、現在あの二・一
ゼネスト当時のような
ストライキが起り得るという、今直ちに起るというような
情勢にもないし、だからと
言つて、
労働大臣が言うように、必ず絶対に起らんという保証も勿論ありませんけれども、これは
常識判断から考えても、そんなものはないと思います。併し急いでそれに対する
対抗策としてこの
緊急調整というものを企図されたのは、明らかにこれは
マツカーサー元帥の
命令に代る何らかの
強権処置を
政府としては必要とした、こういう意図の下に私は出されたと
言つても
過言ではないと思うのですが、今そういう
情勢がない。先ほど申上げましたように……。
従つてこれを急いで、こういう
緊急調整というようなものを設けることは、徒らに私は
労働組合側を刺激いたしまして、むしろ平地に波瀾を起すという結果になるのではないかということを最も恐れるのであります。率直に申しまして
ストライキもやれないような
労働組合なら、これはあ
つてもなくてもいいんだというまで私は極言しても差支えない。
ストライキというものは、これは
労働組合がある以上は、いつかはこれは
ストライキが起るのでありまして、むしろ
アメリカのほうにおきましては、官公の
ストライキにいたしましも、或いは今行われておりました鉄鋼の
ストライキにいたしましても、
日本の
労働組合の
ストライキと比べました場合に、その
規模におきましても、到底比較にならないのであります。而も
アメリカにおいて行われた大
規模の
ストライキが、長期に亙
つて行われましても、決して
アメリカの
民主主義が後退するどころか、前進しての一歩々々を辿りつつあると
言つても
過言ではないと思うのであります。にもかかわらず、
日本においてあれに比較するような大きな
ストライキは今までにあつただろうか。成るほど新聞にはそれぞれ
ストライキを伝えられまして、記事を賑わしたようなことがございますが、実質的にあのような大きな
ストライキがあつただろうか。又現在起り得るだろうか。而も今
日本の
労働組合の主流は、殆んど
民主主義の上にこれを理解して、成るべく
民主主義を前進しようということに努力をいたしております。
日本の現在において、ああいう大きな
ストライキをやつた場合に、
国民生活に重大な脅威を与えるということは、
労働者みずからも知
つております。従いましてその限界をよくわきまえた上で、
争議行為もなされておる。従いまして極めて常識の上に立つた私は労働
争議が
日本においては行われておる。これは勿論一部には当然共産党の労働
争議を利用しての暴力革命を前進しようという動きは全然ないということを否定するものでありますが、それに左右されないまでに、
日本の
労働組合はすでに成長しておるということを申上げても
過言でないと思います。又申上げ得ると思うのであります。一部においては、最も好ましくない
事件も極く少し起り得るか知れませんが、それは問題にならないと思うのであります。
従つてこの際に刺激を与えて、むしろ平地に波乱を起すようなこの
緊急調整という条項は暫く出すべきではなかつたと思うのでありますが、
政府のほうでは、どちらかというと、幻影におびえたというような恰好からお出しに
なつたと思うのでありますけれども、
従つてこの点が我々としてはどうしても承服できないものでありまして、併しながら当
委員会におきまして、各
委員かこの問題については真剣に論議し、且つ又検討し、今の国内
情勢に合致するような
修正案を作成いたしまして、全員の一致の結論を得ました。これは我々としては必ずしも満足すべきものではなしに、むしろ不満足であ
つて、不要だとは思いますが、併し
政府の原案よりもたしかに現在の
情勢に適するものである。かような見解の上に立ちまして、この点について賛成する次第なのであります。
なお又
公共企業体労働関係法並びに
地方公営企業労働関係法案、この二つの
法律に律せられるところの
労働組合をもこれは含めまして、労働三法の
適用を受けるようにするのが常道ではなかろうか。この
公共企業体労働関係法はそもそも
占領下の落し子でありまして、どうせ
労働組合として
承認する、認める以上は、これは労働三法を
適用するのが常道であろうと思います。確かにこの
占領下の落し子をそのまま残して行くというよりも、速かなる機会におきまして、労働三法の
適用をするという方向に私は向うべきであると考えます。と申しますのは、
労働委員会でその調整を行う一方、労働三法の
適用を受ける
組合は
労働委員会において
争議の起つた場合の調整を行う。ところがこの
公共企業体労働関係法においては特殊な
仲裁委員会並びに調停
委員会等を持ちますが、それは徒らに複雑にするだけではなかろうかと思います。
従つて公営
企業並びに公共
企業におきましては、その公益性を確保するというところにおいて、或る程度の除外例を三法の中に設けまして、そしてその他はすべてこの三法を
適用するとこういうふうにして、而もその調整は、
争議関係の調整等はすべて
労働委員会において一本に調整するようにしたほうが正しいのではなかろうか。特に今回
政府は、この
法律案をお出しになる際も、
労働関係調整法、それから
公共企業体労働関係法、
労働組合法、この三つを
一つの
法律案として
労働関係調整法等の一部を
改正する
法律案としてお出しにな
つたのは、これは一貫した
労働関係の調整を明らかに、そういう関連を明らかにする意味においてお出しに
なつたと言われておつたことから見ましても、この三法を
適用するというのはやはり正しい、そうすべきであるというふうな考え方もあ
つてのことだと私は思うのでありますが、この三法を
一つにまとめて、等の一部を
改正するとお出しに
なつたことを裏から見ますならば、これは又見方もございましようけれども、これは、私はこの際にはもうそのことを申上げなくて、むしろこれは調整はすべて一貫した関連の下においてやろうという意図があるのだということをこの際は申上げまして、
公共企業体労働関係法、並びに
地方公労法等の
適用を受ける
労働組合は、速かなる機会に、労働三法の
適用を受けるように、而も公益性はその特別の条項を一項設けまして、そうして公益を守るという方向に進めるように、将来これは速かに検討に入られるように要望して、そうしてこの
公共企業体労働関係法の一部を
改正する
法律案に賛成するものでありますが、特にこの際申上げておきたいのは、
公共企業体労働関係法の十六条の
規定でございますが、これは
公共企業体労働関係法が施行されましてから、特に
仲裁委員会の裁定が下されました際に、いつも仲裁裁定の効力、それから
国会の権限、これらについて学者の間に、或いは
労働組合運動の実際家の上にも
意見が対立いたしまして、未だに統一した
意見というものが見出だされておらない。勿論
政府には
政府の見解がございましよう。併しながら必ずしも学者の間に本当にまあこう行くべきであるというような
意見にはな
つておらず、むしろ
政府の見解に対して反対の解釈をする。別にこれは左傾の、いわゆる共産党の学者というような意味ではなしに、むしろ本当に中立的な、穏健な学者でも、
政府の見解に反対の意向を表明しておる人は多いのであります。
従つて、今回の
改正を行うに
当りましては、この点に対して明確なる、いわゆる
法律上の
異議が将来に起らないように私は
改正すべきであろうということを
委員会においても質問も申上げ、且つ主張をいたしたのであります。併しながらこの点において
政府の見解と多少対立いたしまするし、今の
国会の勢力分野、参議院の政治的立場を異にする会派の勢力分野から考えまして、我々の主張をそのまま入れることができなかつたことは極めて遺憾でありますが、少くとも現行法よりも一歩前進したところの
修正案が当
委員会において一応きまり、全員一致ででき上りましたので、この意味におきまして、現行法より一歩前進であるという意味におきまして、私は賛成をいたしたいと思うのであります。速かなる機会において、我々
労働委員会といたしましても、これらの特別立法によ
つて律せられる
労働組合に対して、三法
適用のために今後とも研究し、努力を重ねたい。かように考える次第であります。
地方公営企業労働関係法につきましては、残されました、この
適用を受けない単純労務者につきましても、
労働省としては、あとで速かに単純労務者については何らかの立法
処置を講ずるのだという
労働大臣の言明もございましたけれども、併し当面空白のような状態にな
つております。従いましてこの点を何らか
解決しなければならんというのは、当
委員会の大多数の
委員諸君の一致した見解でありまして、幸いにいたしまして、今回
修正案を作るに
当りまして、これら単純労務者に対しましても、当面
地方公営企業労働関係法を
適用するという
修正案ができましたので、この点からも一応満足いたしまして、この点については、一応
政府原案よりもいいという意味におきまして、この
修正案に賛成する次第であります。
次に
労働基準法の一部を
改正する
法律案につきして、これは中央労働基準審
議会の議を経て
労働省において立案されたものであると聞きますので、まあ我々も
異議なく賛成いたしたいのでありますが、そのうちでも申上げたいのは、この年少者を坑内労働に従事させる場合に、技能養成者として従事させるのに、今まで十八歳
未満の者はさせることはできなか
つたのでありますが、今度の
改正で、これを十六歳まで年令を引下げるという
改正案につきましては、将来これが惡用される危新があります。勿論一流の炭坑、或いは金属鉱山等におきましては、これら十六歳以上の技能養成者を坑内において労働させる場合には、決してその本当の意味の坑内夫として養成するよりも、坑内夫の指導者、或いは技術要員を養成するという意味において、私はこれらの人たちを見習者として坑内に入れてやらせましよう。併しながら、中小炭坑や、或いは中小鉱山へ参りますると、必ずしもこの
法律の意図するような運用がされないのではなかろうか。現に隠れて、基準監督署の監督の目を逃れて、こうした年少者を本当の一人前の坑内夫と同様な労働をさせているということが、こういう中小鉱山がなきにしもあらずだと思います。従いまして、これがルーズになりました場合には、非常に年少者の坑内労働、それから世界の水準等から考えまして、又
日本のチープ・レーバーということが大きな世界的な問題にまで発展する危新があると思います。で、将来この運用につきましては、基準監督局は申すに及ばず、
労働省全般としても十分な監督の目を光らせて頂きたい。又我々
委員会といたしましても、機会あるたびにこれらの運用がうまく行
つているかどうかということは
調査しまして、そうして
労働省に対してはどしどし
意見を申述べて、その運用の正確適正を図りたい。かように存じておる次第でありますが、この点を特に強調いたしまして、
労働基準法の一部を
改正する
法律案、この
法律案に対する
委員会の
修正案、並びに
修正部分を除く原案に賛成する次第でございます。
甚だ簡単でございますが、幸いにいたしまして、当
委員会におきまして、全会一致で以て
委員会の
修正案がまとまりましたので、言うべきことを成るべくこの際は差控えまして、幸いにして全会一致の
修正案がまとまつた以上、ただ特に申上げなければならない点だけをかいつまんで申上げ、そうして賛成の
討論といたす次第でございます。