運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-05-23 第13回国会 参議院 労働・人事・地方行政連合委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月二十三日(金曜日)    午前十一時十六分開会   —————————————  委員氏名   労働委員    委員長     中村 正雄君    理事      安井  謙君    理事      波多野林一君    理事      村尾 重雄君            上原 正吉君            大屋 晋三君            九鬼紋十郎君            一松 政二君            高橋龍太郎君            早川 愼一君            菊川 孝夫君            重盛 壽治君            櫻内 辰郎君            堀木 鎌三君            堀  眞琴君   人事委員    委員長     カニエ邦彦君    理事      千葉  信君            工藤 鐵男君            田方  進君            平井 太郎君            溝口 三郎君            村上 義一君            木下 源吾君            森崎  隆君            紅露 みつ君   地方行政委員    委員長     西郷吉之助君    理事      堀  末治君    理事      中田 吉雄君    理事      岩木 哲夫君            岩沢 忠恭君            石村 幸作君            高橋進太郎君            宮田 重文君            岡本 愛祐君            館  哲二君            若木 勝藏君            原  虎一君            吉川末次郎君            林屋亀次郎君            岩男 仁藏君   —————————————  出席者は左の通り。   労働委員    委員長     中村 正雄君    理事            安井  謙君            波多野林一君            村尾 重雄君    委員            上原 正吉君            一松 政二君            重盛 壽治君            堀木 鎌三君            堀  眞琴君   人事委員    委員長     カニエ邦彦君    理事            千葉  信君    委員            溝口 三郎君            森崎  隆君            紅露 みつ君   地方行政委員    理事            中田 吉雄君            岩木 哲夫君    委員            岩沢 忠恭君            石村 幸作君            館  哲二君            若木 勝藏君            原  虎一君            林屋亀次郎君   国務大臣    労 働 大 臣    厚 生 大 臣 吉武 惠市君   政府委員    労働省労政局長 賀來才二郎君    労働省労働基準    局長      亀井  光君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巖君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君    常任委員会専門    員       川島 孝彦君    常任委員会専門    員       熊埜御堂定君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○労働関係調整法等の一部を改正する  法律案内閣送付) ○労働基準法の一部を改正する法律案  (内閣送付) ○地方公営企業労働関係法案(内閣送  付)   —————————————    〔中村正雄委員長席に着く〕
  2. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 只今より労働人事地方行政連合委員会を開催いたします。  労働関係調整法等の一部を改正する法律案労働基準法の一部を改正する法律案地方公営企業労働関係法案、以上三案を議題といたします。  先ず提案理由説明のために労働大臣の発言を許します。
  3. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 只今議題となりました労働関係調整法等の一部を改正する法律案地方公営企業労働関係法案及び労働基準法の一部を改正する法律案につきまして、一括してその提案理由を御説明申上げます。  終戦以後占領下において我が国労働立法は、労働組合労働関係調整浅、労働基準法公共企業体労働関係法等が順次制定整備せられ、戦前に比して飛躍的な発展充実を遂げたのでありまして、これら労働立海により労働者の利益は擁護せられ、その福祉は増進し、又我が国民主化促進強化に貢献したことは至大であつたのであります。更にこのことは我が国国際的信用を高め、日本経済再建に寄与することも又甚大であつたのであります、  今日占領が終結し、国民待望独立を迎えた後におきましても、かかる労働法基本原則労働行政の根幹としてこれを堅持すべきものであることは申すまでもないところであります。  併しながら、労働法規具体的内容につきましては、そのときどきの情勢に応じ、適切に改善すべきものであることは当然でありまして、特にこれら労働法規は、すべて連合国最高司令部の強い勧告と指導の下に立案せられ、且つその施行においても常に最高司令部協力指導の下に運営されたものであります。従つてその具体的内容においては必ずしも我が国実情に適切でないものも含まれていたことは御承知通りであります。又特に占領終結後において総司令部援助協力がなくなつたときにおいて、産業平和を維持し、労働生産性を高め、以て日本経済再建のための不可欠の基盤を築く上において、現在の労働法規が果して十分な態勢を備えているか否かと申しますと、必ずしも欠けるところなしとは言い難いのであります。  耐も今後我が国独立国家として国際間に伍して参るためには、経済自立が何より必要なのであります。その経済自立のためには、労使双方の自発的積極的な協力が不可欠なであります。かかる点より現行労働法規を見ますならば、そこには可成り再検討の余地があると考えるのであります。  即ち、一方においては勤労者大衆が安んじて自発的に経済再建協力するために、労働者権利を能う限りこれを保障し、その福祉増進を図ることが必要であると同時に、我が国実情に即してその労働生産性を発揮し得る態勢を整えることが目下の急務なのであります。又他方において経済自立を妨げるごとき結果を生ずる労使間の紛争はできるだけこれを防止し、万一国民生活に重大な損害を及ぼす大規模争議行為の勃発するごときことがあれば、合理的な機関によつて合理的な解決を平和的に図る方途を講じ、以つて産業平和を確保することが肝要なのであります。  かかる見地よりいたしますならば、現行労働法規については、これを率直に再検討いたし改めるべき点については速かにこれを改めるべきであると考えるのであります。すでに昨年夏、いわゆる政令諮問委員会よりもこの趣旨により或る程度具体的な意見政府答申せられ爾来労働法規改正の問題について各方面より種々の意見が開陳せられて来たのであります。政府におきましては、これらの意見を率直に受け入れて研究いたすと共に、特に問題の重要性に鑑み、労働組合法その他の労働関係濃規につきましては、特に設けられた労働関係法令審議委員会に、又労働基準法につきましては、同法により設けられている労働基準審議会に諮問いたしたのでありまして、これらの委員会は、昨年秋以来約半歳に亘つて鋭意議を練り、本年三月それぞれ改正に関する答申がなされたのであります。政府においては爾来この答申を慎重に検討して参つたのでありますが、労使公益の三者より成るこれら委員会の民主的な討議の結果は、これをできる限り尊重すべきものであり、且つ今回の問題についてはおおむね妥当と考えられますので、労働法規については、全員一致を見た答申は殆んど全部これを容れ、また答申されるに至らなかつた事項については、公益委員意見を尊重して、おおむねこれに沿つて改正を立案することといたしたのであります。又労働基準法につきましては、全員一致の下に答申された事項を全面的に受け入れ、これに沿つて改正を立案いたしたものであります。以下各法案の大綱につき順次御説明申し上げます。  第一に労働関係調整法等の一部を改正する法律案につき申し上げます。本法案労働関係に関する三法律即ち労働関係調整法公共企業体労働関係法労働組合法の三法の改正案を、内容が相互関連いたしますので、便宜一本の法律案にまとめたものであります。  先ず労働関係調整法について申し上げますと、公益事業労働争議又はこれに準ずる大規模若しくは特別の性質事業に関するものであるために公益に著しい障害を及ぼす労働争議については、これを放置すれば国民生活に重大な損害を及ぼす場合には、労働大臣緊急調整の決定をなし得ることとし、その間五十日間は争議を行うごとなく、中央労働委員会調停実情調査その他の手続によりこれが平和解決を図らんとするものであります。又公益事業争議については、従来三十日の冷却期間が定められていたのでありますが、その制度が本来の趣旨を没却せられ、殊に争議権獲得のみのために労働委員会調停を申請し、そのため冷却期間による平和的解決の実効を挙げなかつた嫌いがあつたので、今回かかる弊を矯め、冷却期間をしてその本来の趣旨に帰らしめるため、当事者の事前の自主的交渉が著しく不十分のときは、労働委員会調停の申請を却下できることとし、この場合には冷却期間は進行しないこととし、併せて冷却期間は従来の三十日を縮めて十五日といたしたのであります。以上の二点は、労働関係法令審議委員会公益委員意見を取入れたものであります。労働法関係では、以上のほか、委員会答申に基いて、労働争議調停仲裁を行わせるため、特別調整委員制度を設けること、斡旋員労働委員会委員兼職禁止を廃すること、及び労働委員会による労働争議仲裁仲裁委員会を設けて行うことを規定いたしております。  次に、公共企業体労働関係法につき申上げますと、従来占領下においては、国家公務員は御承知のごとくすべて団体交渉権を認められていなかつたのであります。このことは、公務員国民全体に対する奉仕着たることから、当然止むを得ないことではあつたのでありますが、公務員のうちでも郵政その他の現業公務員につきましては、その業務性格実態一般行政事務とは著しく相異いたし、むしろ国鉄等公共企業体に近い点もありますので、これらについては例外的に団体交渉権を認めることといたしたのであります。この点については労働関係法令審議会公益委員意見もありますので、政府としては許される限り労働者権利を認めたいという立場から、公共企業体労働関係法改正して郵政、印刷、造幣、営林、アルコール、専売現業職員には、今回公共企業体に切り換えられた電通職員と共にこれに同法を適用することとし、これら現業公務員にもおおむね国鉄専売に準ずる取扱をいたすように規定したのであります。なお公労法関係につきましては、右のはか行政簡素化の建前から、従来国鉄専売につき別々にあつた調停委員会を一本の公共企業体等調停委員会に統合し、これに新たに斡旋を行うことを認め、又、組合規約不当労働行為等につき労働組合法との重複を整理し、団体交渉事項の表現を明確化する等その他若干の技術的改正規定しております。  次に労働組合法関係につきましては、労働関係法令審議委員会答申を殆んど全面的に取り入れ、又その意見をできるだけ尊重いたしまして、不当労働行為について実態及び手続規定を整備いたし、労働委員会証人喚問権を明記し、労働組合資格審査実情に適合せしめ、労働協約について成立要件及び期間に関する規定を整備し、及び地方労働委員会委員の数について事務の繁閑に応じ差異をつけることといたしております。  第二に地方公営企業労働関係法案について申上げます。本法案は、その趣旨においておおむね現業国家公務員に関する公労法改正と同様であります。即ち、占領下にあつて昭和二十三年政令第二百一号により団体交渉を許されていなかつた地方公務員のうち公営企業に従事するものについて、現業国家公務員に対すると同様の趣旨から、これに準じて団体交渉権を認めんとするものであります。従つてその取扱内容もおおむね国の現業公務員に準ずるものであります。ただ地方公営企業の場合は、その規模が地方的なものであるために、交渉単位制度はこれをとらないこととし、又斡旋調停仲裁は別に特別の機関を設けず、地方労働委員会をしてこれに当らしめるごととし、更に條例規則協定との関係規定しているごと等が主なる相違点であります。  第三に労働基準法の一部を改正する法律案につきまして申上げます、本法案労働基準審議会における全会一致答申をその内容において妥当なものと認め、これに全面的によつたものであります。  即ちその内容につきましては、第一は手続簡素化し、或いはこれを労使自主的協定に委ねようとするものであります。即ち貯蓄金管理技能者養成認可届出に改め、危険有害でない仮設建築物設置届を廃止し、又貯蓄管理賃金の一部控除或いは有給休暇賃金につき労使協定制度をとり入れたのがこれであります。第二は女子の時間外労働制限並びに深夜業禁止に多少の修正を加え、十六才以上の年少男子につき坑内搾業の技能養成を認めることといたしたのであります。前者につきましては、従来法律実施にあたり決算期における業務エアガール勤務等につき実情に即して所要の改正をすることといたしたのであります。又坑内作業にも技能養成を認めることといたしましたのは、世界各国の例に倣い、鉱山における労働者技能の向上と、災害の減少を図ろうとするものであります。第三には、従来労働基準行政は、とかく法律違反を是正するという消極行政にとどまり勝ちでありましたが、労働基準法目的達成のため国の援助義務規定し、労使に対してサーヴィス活動を行うことを明文化したのであります。  以上三法案について提案理由を御説明申上げたのでありますが、以上によつても明かなことく、これら法案はすべて各方面意見を広く聞き、最も慎重且つ民主的な検討手続を経て作成提案いたしたものでありまして、講和後の労働行政上ことごとく必要不可欠な内容のものと考えております。又これにより政府が不当に労働者権利制限するのでもないことは申すまでもなく、国家公共福祉と共に労働者権利をも十分に尊重するものであります。何とぞ御審議上速かに可決せられんことをお願い申上げます。
  4. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 続いて労働基準法の一部を改正する法律案について逐條御説明をお願いいたします。
  5. 亀井光

    政府委員亀井光君) 只今御上程になりました労働基準法の一部を改正する法律案につきましては、労働大臣提案理由説明の中にございましたように、全文中央労働基準審議会において答申のなされました事項をそのまま法文に直したのでございます。十六條に亘る改正でごいます。  先ず第一は、十八條の貯蓄金管理に関しまする規定改正でございます。現行法におきましては、使用者労働者貯蓄金管理しようとしまする場合には行政管庁認可を受けなければならないことになつておるのでございます。併しながらこの問題につきましては、手続簡素化を図るという趣旨で、労働者使用者との間に協定が整いまして、お互いに納得が行くならば、これを届出に直すほうが手続簡素化になるのではないかという趣旨改正が主たるものでございます。併しながら認可制届出制に直すことによりまして生ずると思われまするいろいろな弊害につきましては、これを除去いたす必要があるわけでございます。従いまして新たに三項以下の規定を設けまして、それらの措置が講じられておるのでございまして、三項では、使用者労働者貯蓄金管理しようとしまする場合には、どういう方法でこの貯蓄金管理するかという管理方法を定めまして、これを労働者に周知させなければならない義務を課しておるのであります。  又第四項におきましては、貯蓄金管理には二つの種類がございまして、一つはその労働者から委託を受けて管理をしまする金を、使用者みずからがこれを管理する場合、或いは労働者或いは労働者預金をしました通帳使用者管理する場合と二つあろうと思います。この場合の現金そのもの使用者管理する場合におきましては、その利子につきましては一定の制約をつけますることが労働者保護の上において必要でございまするので、その場合においては一般金融機関預金利率を考慮いたしまして、労働大臣一定利率を定めまして、その利率を下る利子使用者がつけましても、それは法律上の違法でありまして、労働大臣の定めました利率においてつける義務がそこに発生して来るという規定をいたしております。貯金通帳或いは預金通帳の場合は、それぞれ金融機関におきます利子がそのまま労働者の手に渡ることになるのであります。  次は労働者返還を要求いたしました場合におきましても、直ちにこれを返還する義務使用者に課しております。その場合にその要求がありましても返還をしないという場合につきましては、その貯蓄金管理を中止させるという中止命令制限をそこにつけますと共に、又その中止命令に違反した場合におきましては、使用者に対しまして罰則を適用するというふうに、いろいろ認可制届出制に変えましたことによつて生ずると思われますいろいろな弊害につきましては、それぞれそれを排除しまする規定を設けておるのでございます。  次は第二十四條の賃金支払に関する事項でございます。現行法におきましては、現物給与或いは賃金の一部控除につきましては、法令の根拠のある場合又は、労働協約において定められました場合に限定されておるのであります。現物給与につきましては、労働者の欲しないものを使用者が押付けたり、或いは賃金の低下をそこに来たさせるというふうな慮れがございまするので、この点につきましては何ら改正をいたす必要はないと思いまするが、賃金の一部控除につきましては、労働協約のない場合、例えば労働組合の結成されていないような場合、或いは組合が結成されておりましても、労働協約の締結が見られなかつたというような場合につきましても、購買組合からいろいろな品物を買いまして、そうして賃金支払に当つてそれを差引くというようなこと、或いは共済組合の掛金を差引くというようなことは、現案にそういう工場、事業場におきましても必要がございますので、賃金の一部控除につきましては、労働協約のある場合のほか、労働者の過半数で使用者協定した場合におきましてもこれを認めようという趣旨改正であります。  次の第三十三條は、非常災害の場合の休日労働を認めようとするものでございます。現行法におきましては、非常災害その他避けることのできない事由によりまして、臨時の必要がある場合には時間外の労働労働時間の延長は認めておりまするが、休日労働はこれは認めていなかつたのでございます。併しながら国鉄の場合におきましても国有鉄道法の第三十三條におきまして、この休日労働が認められておりまするし、又国際労働條約におきましても、これら非常災害の場合におきましての休日労働が認められておるわけであります。従いまして従来行政解釈といたしましてこの点を認めて来たわけでありますが、今回これを法文の上におきまして明確にいたすための改正をいたしたのでございます。  次に、第三十九條の年次有給休暇に関しまする規定でございます。この年次有給休暇支払われまする賃金につきましては、現行法平均賃金によつて支払うことを要求しておるのであります。ところが御承知のように平均賃金算定は、非常に手続の上で煩瑣なものでございます。で、有給休暇のように、損害賠償というふうな特殊の性格を持たないものでございまして、いわば労働者に対する慰労的な性質のものでございますから、それほど補償の場合のように厳格に計算されなくてもいいのではないかという趣旨で、これも手続或いは事務簡素化趣旨改正がなされたのでございまして、平均賃金によるか、或いは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金によるか、これは就業規則において定めました場合には、どちらによつてもよろしいという改正でございます。更に又一番簡単な方法は、健康保険標準報酬日額算定の基礎にいたしますのが最も簡単でございまするが、この標準報酬日額は、実際の賃金に比べまして低くなる場合もあるでございます。そこでそういう慮れのあるものにつきましては、やはり労使協定のある場合にこれを限定するのが適当であるという趣旨で、労使協定のある場合におきましては標準報酬日額によつてもよろしいという趣旨改正でございます。これも手続簡素化のための改正でございます。  次は仮設物届出を廃止しようという趣旨の第五十四條の改正でございますが、現行法におきましては、常時十人以上の労働者を就業させまする事業、或いは命令で定めます危険な事業又は衛生上有害な事業建設物その他につきましては、工事着手の十四日前までに行政官庁届出でなければならんことになつている。併しながらこれらの建物の中でも、仮設物で、例えば土建の有期的な事業の仮の便所だとか、或いは危険なものを入れない仮の倉庫というふうなもの、或いは仮の守衛所というふうなものにつきまして、一々青写真を附けまして届出でなければならないということは、それほど危険有害の慮れもございませんので、手続簡素化趣旨から、こういう特殊のものに限りましては届出を要しないということに、改正をしておるわけであります。  次は第五十六條の改正でございます。これは最低年齢に関しまする改正でございます。現行法におきましては、満十五歳に満たない児童労働者として使用してはならないという原則に対しまして、但書で、満十四歳以上の児童でありましても、義務教育の課程を終了した者につきましては、これを使用することができるという但書規定がございます。ところが六三制を施行されました現在におきましては、義務教育を終えたもので満十五歳未満のものはいないわけでございます。従いましてこの條文は従来空文になつていたのでございますが、今回の改正におきまして、この整理をいたす趣旨で削除をいたすことと相成つたのでございます。  次は六十條の改正でございますが、これも只今の五十六條の改正に関連しまして、形式的に字句を削除いたしたのでありまして、実質的な意味はございません。  次は第六十一條でございます。これは文子労働時間の延長に関しまする改正でございますが、現行法におきましては、満十八歳以上の文子につきまして時間の延長を認められまするのは、一日について二時間、一週間に六時間、一年について百五十時間という制限がつけられておるわけでございます。併しながら仕事の性質上、一週六時間即ち一週間に三日、毎日二時間ずつ延長し得る現行法に対しまして、決算事務等の場合におきましては、三日間では処理が非常に困難でございます。それかといつて、そのために常時職員を傭つておきますることも、これ又経済上許しがたいところでございまするし、又そういう場合に、臨時職員を傭い入れましても、事務に慣れておりませんために、能率も上らないというふうなことから、この点に関しまする改正を要望されていたところで、ございまして、国際條約におきましても、文子の時間外—労働につきましては、非常災害の場合或いは損敗しやすい物を急速に処理しなければならないような場合、或いは棚卸、決算賃金支払というような場合、又は異常の業務繁忙の場合等、広くその例外を認めておるわけでございますので、今回の改正におきましても、極く限られました決算期だけにおいて、一週六時間という制限を二週について十二時間というふうに改正をいたすことになるのでございまするが、従いまして六日間、従来一週について三日しか連続時間外勤務が許されなかつたのでございまするが、今回の改正によりますると、これが六日間は許される。六日間の時間延長でございますると、大体従来の実績から見まして、各会社の決算事務もこれで処理できるものではないかという趣旨でございます。  次の六十二條は、文子の深夜業の制限に対しまする例外を定めたのでございまして、例えばエアー・ガールとか、或いは文子の寄宿舎の寮或いは普通の寄宿舎の賄いというふうなものは、現行法で定められておりまする午後十時過ぎては労働さしてはならないという、この制限につきまして、現実の問題で非常に困つておる問題があるわけでございます。特にエアー・ガールにつきましては、諸外国におきましても、現実的にこの問題は行なわれておるのでございます。又国際條約の観点から見ましても、非工業的企業については文子の深夜業については制限はございませんし、又工業的企業につきましては制限はございまするが、この航空業につきましては、その適用を除外しております。そういう関係におきまして、極く限られまとた場合において、実情に即するようにこの問題を処理したいという趣旨でございます。従いましてこれが濫用されることを防ぎまするために、その業種の指定につきましては、中央労働基準審議会の議を経てというふうにいたし、而もその業務文子の健康及び福祉に有害でないという業務に限定をいたすことになるわけでございます。この中央労働基準審議会は、御承知のように労使公益、三者構成でございまして、而も議を経てというように議決を経なければこれをきめることができないというふうな縛り方をいたしまして労働者意見も十分にここに反映されまして、これが無駄にと申しまするか、有害に拡張されることを防いでおる次第でございます。  次は技能者養成でございまして、現在現行法におきましては、十八歳未満の男子は坑内におきまして労働いたしますることは禁止をいたされておるわけでございます。併しながら十八歳未満の男子につきましても、十大蔵以上の男子であれば、技能養成という特別の目的のためであれば、これを坑内において労働することを認めようという趣旨でございまするが、これにつきましては、なぜこういう改正が必要かと申しますると、一つには、従来の実績を見ますると、技能養成の過程を経ました、戦争中でございまするのでそれほどの長期間或いは精密な訓練ではございませんが、一応ともかくも訓練を経ました労働者は、そのほかの労働者に比べまして、災害も非常に少く、能率も非常に高いというふうな案績が示されております。又賃金も従いまして高いというふうな実績が出ておるのでございます。又現在我が国におきまする労働衛生関係における一番大きな研究機関でございます労働医学心理学研究所の調査によりましても、いろいろの制約をこれに加えまするならば、それほどの身体に影響はないという研究の結論もあるわけでございます。我々としましては、この問題について、例えば珪肺の虞れのある場所における就業を禁止する、或いは坑内の労働時間につきましてできるだけこれを制約して行く、或いは高温高湿の場所における就業につきまして制限をする、或いは発破その他危険の場合における就業を禁止する、以上の條件をつけましてこれを行いまするならば、現在日本で要望されております坑内におきまする技術の向上、延いてはそれが生産におきまするいい影響をもたらすのではなかろうかという趣旨でこの改正案が提案されたわけであります。国際條約の関係を見ますと、従来国際條約では、満十五歳以上の男子でありますれば、坑内労働が許されていたのでございます。併し昨年の炭鉱委員会におきまして、これの條件を引上げる決議がなされまして、本年の総会におきましてそれが提案されるごとと思われるのでございまするが、その改正の決議によりますると、十六歳以上の男、十八歳未満の男子であれば、一定の條件において坑内における技能養成は認められておりまするし、更に又技能養成のみならず、一定の條件が与えられまするならば、坑内におきまする軽作業につきましても、国際條約は認めようといたしておるわけであります。そういう趣旨から申しましても、この程度の改正でありまするならば、国際的水準を下廻るというような慮れはないのではなかろうか。ただ問題は、どのようにしてこの條件をつけて行くかという問題でございまして、これにつきましては技能養成審議会におきまして、労、使、公、三者の意見を十分尊重いたしまして、厳格な基準を設定をいたしたい、かように存ずる次第であります。  次は七十一條の改正でございます。これは技能養成は現在は認可制でございまするが、これも先ほどの手続簡素化趣旨によりまして危険、有害でないものにつきましては、これを届出制に改める、但し命令で定める危険又は衛生上有害の虞れのあるものにつきましては引続きこれは認可制を以て処理して行こう、更に又これを制約する意味におきまして、七十三條では技能養成の中止を金ずるというふうな措置を講じ、或いは又認可の取消というふうな処置によりまして、それぞれ発生する慮れのある有害な措置につきまして、これを排除する改正をいたしておるのでございます。  次は第百五條の二、これは先ほど労働大臣の提案の理由の中にもございましたように、従来労働基準行政は監督を中心といたしました消極的な行政が主体でございましたが、併しそのうちにも積極面の行政が当然あるのでございまして、現実の面におきましても、やはりここに掲げてございますような、この法律の目的を達成するためには労働者及び使用者に対して資料の提供その他必要なる援助をする、いわゆるうサービスにつきましては、従来も行つてつておるのであります。それに対しまする法的の根拠を与える趣旨におきましてこの新しい條文を附け加えた次第でございます。  次に第百十四條、第百十九條、第百二十條は、それぞれ形式的な、或いは罰則の一部の改正等でございまして、特別に御説明を要しないと存じます。以上でございます。
  6. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 引続きまして、労働関係調整法等の一部を改正する法律案地方公営企業労働関係法案の二法案につきまして、提案理由説明の補足説明を労政局長からいたします。
  7. 賀來才二郎

    政府委員賀來才二郎君) 提案理由に対しまする補足説明の意味におきまして、大体の概要につきまして御説明を申述べたいと思います。先ず、労働関係調整法等の一部を改正する法律案でございますが、この法律案の中には、労働関係調整法の一部改正と、公共企業体労働関係法の一部を改正するものと、労働組合法の一部を改正するもの、及びその附則といたしまして、経過規定を附しておるのでございます。この三つの法律は、いずれも労使関係を調整する立場をとつておりますと共に、相互に準用関係もございますので、これを一括いたしまして、労働関係調整法等の一部を改正する法律案として御審議を願うことにいたした次第であります。  第一條は、労働関係調整法の一部でございまするが、大臣から提案理由説明にも申上げました通りに、独立後の経済自立のためにどうしても欠くことのできない産業平和の維持及び労使関係の安定を図りますために、現行労働関係調整法規定を以ていたしましては、必ずしも十分ではないと考えるのでありまして、労働関係法令審議委員会答申及びその公益委員意見を取入れまして国民生活に重大な損害を与えるような労働争議につきましては、合理的な機関によつて合理的な解決を図るということを考えますと共に、公益事業につきましては、その平和的解決を促進する方法を講じますると共に、且つ斡旋調停仲裁のための組織、或いは手続等に関しまして実情に副うように適当な改正をやろうとするものでございます。  従いましてその主要な内容といたしましては、第一に労働争議調停仲裁に参与させますために、特別調整委員制度労働委員会に設けることにいたしたのでございます。  第二は調停委員労働委員斡旋員を兼ねられないことになつておりますものは実情に副いませんので、この兼職禁止をやめたのでございます。  第三は、公益事業につきまして冷却期間を十五日に短縮することにいたしますとともに、調停申請につきましては、当事者間の自身の自主的の交渉が不十分のときには申請を却下することにいたしたのであります。  第四番目は、労働委員会によりまする労働争議仲裁仲裁委員会を設けて行うことにいたしました。  第五は、公益事業は大規模若しくは特別の性質事業に関するものでありますために、公益に著しく障害を及ぼす労働争議につきましては、これを放置いたしますと国民経済に重大な損害を与えるというふうなときには、労働大臣が五十日間の緊急調整の決定をなし得ることにいたしました、この間争議行為を禁止することにいたしたこと等が主な点でございます。  この第一と第二と第四は労働関係法令審議委員会全員一致答申によつたものでありまして、第三と第五は、おおむねその公益委員意見によつたものでございます。  次に、公共企業体労働関係法の一部を改正する條文について申上げたいと思いますが、公共企業体労働関係法は、公共企業体でありますところの日本国有鉄道及び日本専売公社の職員に関しまする労働関係を規律いたしましてこれに団結権、団体交渉権を認める法律でございまするが、今回の改正の主要な眼目は、新たに公共企業体となりますところの日本電信電話公社に関するものもこの法律の中に適用するようにいたしますと共に、国家公務員ではございまするが、その従事する業務内容が国営の企業であるという点におきまして、公共企業体に一脈通ずるもののありまするもの、例えば郵政、営林、印刷、造幣、アルコール専売等に勤務いたしますものの労働関係につきましても本法を適用せんとする点であります。これらのいわゆる現業公務員と申しましても、もとより国家公務員でありまする関係から、国民全体に奉仕する義務を負うものであると言えるのでありまするが、その業務内容から見まして、例外的にこれらのものに団体公海権を認めましても、さほど弊害は予想されないのみでございませず、むしろ実情に適する点があると考えますので、今回これらの職員労働関係に関しまして公共企業体労働関係法改正いたしまして法律の名称も公共企業体労働関係法といたしまして、おおむね公共企業体に準ずる取扱いをしようといたしたのであります。なお本條におきましては、右のほかに行政機構簡素化の建前から、従来各公共企業体ごとにありました調停委員会を一本に統合いたしまして、公共企業体等調停委員会とすることにいたしました。労働組合法との関係を調整いたしまして、不当労働行為組合規約等に関しまする重複する規定を整備いたしますると共に、新たに法文斡旋制度を認めることにいたしまして、団体交渉の範囲につきましても規定の表現を明確ならしめるようにし、公共企業体労働関係法の施行に関しまする法律と本法との関係を調整するというふうな若干の改正規定いたしておるのでございます。  次に労働組合法の一部を改正する條文でございますが、本條は労働組合法の一部を改正することを規定いたしておりるのでございまするが、御承知のように労働組合法昭和二十一年より施行になつておりまして昭和二十四年に全文改正が行われたのであります。でこの労働関係法規の基本法として労働組合法はその意義を持つておるのでありまするが、この規定の細部の点につきましては、占領下の立法でありまする点もありまして、我が国実情には沿わないという点が若干なしとはしなかつたのであります。又施行以来通計七年を経ておりまして、その後改正をいたしましたあとからでもすでに三年を経ておるのでありまして、この間の運用をいたしました実情から見まして改善すべき点もなしとしない。この法案におきましては、これらの点につきまして労働関係法令審議委員会答申に基きまして当面必要とせられる限度の改正を行おうといたすのであります。  この具体的内容は、第一は、労働組合資格審査斡旋調停仲裁の場合においてのみこれを行うということにいたしました。第二は、不当労働行為の審査又は労働争議の調整中の発言等の理由によりまするところの不利益取扱のことを不当労働行為とすることにいたしたのであります。第三は、労働協約は記名押印を以てしても成立いたし得ることといたしたのであります。第四は、労働協約期間は最長二年といたしまして、期間の定めのない協約の解約につきましては、一定の予告期間を置くことを要するといたしたのであります。第五は不当労働行為の申立期間一定制限を付することにし、第六は、労働委員会証人喚問権を明記いたしまして、証人には費用の弁償をすることなどが主な点でございます。  以上のうち第二、第三、第四、第六につきましては、労働関係法令審議委員会全員一致答申によるものでありまするが、第一及び第五につきましては、全員一致答申に至らなかつたものでありまするが、これは公共委員の御意見を尊重いたしまして参酌し、これを取入れて改正をいたしたのでございます。  もう一つの新設の法律は、地方公営企業労働関係法案でございます。この法案の目的といたしますところは、地方公共団体の経営いたしまする企業に従事するいわゆる現業地方公務員に対しましても、団結権、団体交渉権を認めますと共に、これと地方公共団体及びこの経営いたしまする企業の公共性とを調和させまして、相待つて地方公共団体の住民の福祉増進に寄与しようとするにあるのであります。これらの企業に従事いたしまする職員と申しましても、もとより地方公務員たることに聞違いはないのであります。従いましてその住民全体に対しまする奉仕者たるの地位に変りはないのでございまするが、一面この従事いたしまする業務は、いわゆる行政権限とは一応切り離されておりまして、一般行政事務と異なつ業務に従事しておるものであります。丁度国におきまする国鉄専売等の公共企業体等にむしろ近いものであるわけであります。従いまして一般地方公務員とこれら企業職員とは、おのずから或る程度取扱いにおきまして異なることは止むを得ないと考えるのであります。現に昭和二十五年に制定せられました地方公務員法におきましても、その附則第二十項におきまして、これら地方公営企業につきましては地方公務員法をそのまま適用せず、将来別個の立法がなされることが予定されていたのであります。本法案はその二十項の規定を受けまして、すでに今国会に提案せられておりますところの地方公営企業法案と相待ちまして、これら企業の特殊性に相応し、且つ住民の福祉に最も貢献するような立法上の取扱いをしようとするものでございます。  本法案内容は、地方公営企業職員労働関係につきましては、原則として労働組合法労働関係調整法によることといたしまして、組合組織、団体交渉等につきまして若干の特例を設けますとともに、争議行為はこれを禁止することといたしまして、調停及び仲裁制度を整備いたしまして、職員の利益と住民の福祉擁護との調和を図つておるのでありまして、この取扱いはおおむね公共企業体に準ずるものでありまするが、交渉単位制度を設けていないこと、斡旋調停仲裁地方労働委員会或いは中央労働委員会に行わしめるということ、及び條例規則協定との関係規定してあるというような点が公労法と違つておりまする重要な点になつておる次第でございます。  以上で大体の概要を申述べましたが、これらのことは先にお手許に差上げておりまする逐條説明に、大体印刷をいたしまして差上げてある次第でございます。
  8. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 労働関係調整法等の一部を改正する法律案ほか二案につきまして、提案理由説明並びに補足説明は以上で終つたわけでありますが、爾後の連合委員会につきましては、関係委員長の間におきまして後刻協議いたしまして決定いたします。なおこの連合委員会に対しましての関係大臣或いは政府委員等の出席要求等につきましては、それぞれの委員長にお申出願いまして、委員長の協議の際に決定いたしたいと思いますから、さよう御了承願いたいと思います。  以上で連合委員会を散会いたします。    午後零時九分散会