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政府委員(
佐藤達夫君) 英文にどのくらいの権威を求めるか、これはもうそつけなく申上げれば、英文というものは何でもございません、
日本文が成文でございます。帝国議会によ
つて三分の二以上で可決されましたものは、英文はよ
つてではございません。
日本文によ
つて可決されましたのでございます、と申上げればそれきりでございますけれども、併し成立の経緯から申上げますれば、私どもも英文は随分使いました。お互いの交渉については英語で交渉したということも、これは事実でございますから嘘は申上げられません。併しその制定の経緯として、まあ今なら申上げていいと思いますけれども、実は向うと折衝いたしました場合に、
日本文と英文と両方向うの人が見ております。
日本文のわかる人がやはり向うにたくさんおりまして、常にそれが神経質に
日本文のほうまでも穿繋いたしまして、例えば補弼賛襄というような
言葉、今は助言と承認とな
つておりますけれども、昔は補弼賛同というような
言葉が使われたというようなことがいろいろございます。それらについても向うの人が目が届く。と同時に、英文のほうにつきましても、我々のほうとしては英文を
日本文に合せたいという
趣旨で、始終英文についての改善を加えておりました。第九條の英文につきましても、私の記憶いたしておりますところでは、少くとも六回は変
つております。
日本文に
関係なしに英文だけを変えております。例えばアザー・ウオー・ポテンシヤルのところでも、最初はオアと書いてあるのを、アズ・ウエル・アズと直したほうがいい、或いはコンマの打ちどころとか、ポテンシヤルの問題も
日本文とどうもび
つたりしないところがあるのじやないかという気待は当時から待
つておりました。エアー・フオースとか、何とかフオースとありまして、
日本文
通り「その他の戦力」というのを英語にそのまま移そうとい
つても、適切な
言葉がなか
つたということも、これは本当の事実であります。併し今仰せのように、潜在的の観念というものはどうしてもポテンシヤルという
言葉の中にあるのじやないかということは、当時から
考えておりましたけれども、我々当時、自己満足かも知れませんけれども、
考えておりましたのは、陸海空軍とあ
つて、やはり英語にもそうありまして、そこにアザーという
言葉がついておる。
日本文の場合にその他とあるのに対応いたしまして、アザーとな
つておる、アザーとあることはやはり前のものと全然無縁のものでアザーで受けるはずはないだろうというようなことを議論したことも覚えております。それからもう
一つ潜在という
言葉が普通使われておりますけれども、これは潜在と言うのは広過ぎるので、稼働していないといいますか、未稼働といいますか、非稼働といいますか、いわゆる稼働していないという
状態もポテンシヤルの中に
考えられるのじやないか。そうすると、例えば、これは私の個人のことで恐縮でございますけれども、陸海空軍というものでも、現実にアクチユアルに働いておる場面と稼働していない場面というものがある。例えば平時においてそのまま静止しておるというような場合もあるのであります。従いまして、ポテンシヤルという
言葉も、今のようなことを総合いたしますと、そう広い潜在性というものはそこから出て来ないのじやないか。せいぜい未稼働という
程度のものじや、ないだろうかというふうに私自身は、これは個人のことでございますけれども、
考えておる次第でございます。