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1952-03-25 第13回国会 参議院 予算委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月二十五日(火曜日)    午前十時三十一分散会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長            和田 博雄君    理事            中川 以良君            山本 米治君            小林 政夫君            杉山 昌作君            内村 清次君            堀木 鎌三君            東   隆君            木村禧八郎君            岩間 正男君    委員            愛知 揆一君            石坂 豊一君           池田宇右衞門君            泉山 三六君            大島 定吉君            楠瀬 常猪君            左藤 義詮君            白波瀬米吉君            杉原 荒太君            鈴木 直人君            中川 幸平君            宮本 邦彦君            平林 太一君            岡本 愛祐君            小野  哲君            片柳 眞吉君            加藤 正人君            楠見 義男君            新谷寅三郎君            中山 福藏君            荒木正三郎君            岡田 宗司君            吉田 法晴君            波多野 鼎君            松永 義雄君            山下 義信君            山田 節男君            駒井 藤平君            鈴木 強平君            西田 隆男君            岩木 哲夫君            深川タマヱ君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 吉田  茂君    法 務 総 裁 木村篤太郎君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    運 輸 大 臣 村上 義一君    労 働 大 臣    厚 生 大 臣 吉武 惠市君    国 務 大 臣 大橋 武夫君    国 務 大 臣 岡崎 勝男君    国 務 大 臣 岡野 清豪君    国 務 大 臣 周東 英雄君   政府委員    内閣官房長官  保利  茂君    警察予備隊本部    次長      江口見登留君    地方自治政務次    官       藤野 繁雄君    法制意見長官  佐藤 達夫君    法務法制意見    第一局長    高辻 正己君    大蔵大臣官房長 森永貞一郎君    大蔵省主計局長 河野 一之君    大蔵省主計局次    長       石原 周夫君    海上保安庁長官 柳沢 米吉君   事務局側    常任委員会專門    員       野津高次郎君    常任委員会專門    員       長谷川喜作君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○小委員長報告昭和二十七年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十七年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十七年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 予算委員会を開会いたします。  今朝の理事会でこの委員会運営は次のようにきまつたので御了承願いたいと思います。十一時から総理大臣総括質問をいたします。十一時まで先ず楠見小委員会委員長報告を聞きまして、それに関しまする委員のかたの質疑をいたすことにいたしております。では楠見小委員長報告を求めます。
  3. 楠見義男

    ○楠見義男君 昭和二十七年度予算憲法に関する小委員会における審議状況について御報告申上げます。  小委員会昭和二十七年度予算内容において憲法第九条及び第七十二条に違反する虞れありやなしやの点について疑義ありといたしまして、この点についての審議を深めるために、本委員会の委託を受けまして一昨二十三日設けられたのでありますが、今日この委員会においてその審議状況を御報告いたすことに理事会の御決定がありましたので、従つて何分にも時間的の制約があり、それにもかかわらず問題の重要性に鑑み、各委員の極めて熱心なる質疑は一昨日に引続き、昨日も午前十時より午後九時まで行われたのでまして、その結果につきましては、本委員会の御期待に副い得たかどうかは甚だ心許ないところではありますが、以下その審議状況について御報告申上げたいと存じます。  各委員質疑応答を重ねました政府委員は、木村法務総裁岡崎大橋国務大臣佐藤法制意見局長官柳沢海上保安庁長官及び江口警察予備隊本部次長でありまして、それに奥野参議院法制局長意見を随時質疑応答の形で徴したのであります。なお審議に際しまして、憲法第九条及び第七十三条との関連において、本委員会において論議せられましたところの諸点は、一応小委員会におきまして、おおむね総ざらい的に重ねて論議され、その基礎の下に更に掘下げて質疑され、又九条、七十三条に関連してその他の関係深き事項につきましても質疑応答が行われたのでありましたが、それらのすべてを報告いたすことは時間の関係もありますので、詳細は速記録によつて御承知願うことといたしまして、ここでは主として直接憲法第九条及び第七十三条に関連する事項で、而もその論議のうち若干のものについてのみ申上げることといたしたいのでありますが、その点御了承おき願いたいと存じます。なお結論的に申しますならば、当初より質疑を持つておられた委員のかたがたにとりましては、その熱心なる質疑にもかかわらず、時間の関係もあつたのでありましようか、依然その疑義は明らかにせられなかつたようであります。このことをあらかじめ申上げておきます。  質疑応答事項は、当然委託せられました憲法第九条及び第七十三条関係でありますが、先ず第一の憲法第九条関係について申上げますと、本条に関しましては、申すまでもなく、問題の中心がその第二項の戦力の意義、限界等の問題について論議が集中せられたのは当然であります。即ち本委員会においても論議せられましたように、例えば戦力の中には潜在的のものをも含むのではないか。警察予備隊装備戦力か、単なる警察力か、戦力戦力ならざる力との限界はどこに置くか。武器もその目的によつて戦力となるのではないか。又警察限界武器の種類との関係はどうかというような点、或いは憲法第九条第二項において戦力を保持しないというその規定違反するということは、戦力の漸次発展して行くということ、即ちその方向に意識して向うときに違反の事実が起るのではないかということ等でありましたが、これらの点につきましては、政府側答弁は、これ又本委員会におけると同様に、戦力を抽象的に近代戦を遂行する上において有効適切なる力、而もその力は客観的に、総合的に判断される力と定義付け、その具体的説明についてはこの定義の抽象的なる範囲を出でなかつたのでありますから、この点については質疑応答も終始同じところを行つたり来たり、或いは中心点の廻りをぐるぐる廻る状態で、本委員会以上に、全く新らしい発展を見なかつたのであります。ただ一、二ここで附加えておきたいと思いますことは、一つ戰力構成要素に関して、日本警察予備隊の力は、それ自体では戰力そのものでなくとも、いわゆる非常時において米国軍隊と一体となつて活動した場合、それは近代戰遂行上有効なる力となることは当然であるから、この場合の力は戰力と言えないかという質疑に対し、佐藤法制意見局長官の答えは、憲法戰力とは、日本国独自の力のみを対象とするとのことであり、同様の趣旨質問に対する奥野参議院法制局長意見は、米軍との協力行為により、武力を用いる場合には、憲法第九条の戰力に該当するものと思われるという趣旨でございました。  もう一つ附加えて申上げたいと思いますことは、安全保障条約の言うところの自衛力漸増ということと、警察予備隊海上保安庁関係増強とは対応するのかという質問、別の見地からいたしますれば、米国駐留軍漸減計画と我がほうの右のごとき漸増計画との対応関係はどうかとの質問に対し、大橋国務大臣答弁要旨は、警察予備隊海上保安庁増強自衛力漸増ということに当るかどうかは確信はないが、いずれにしてもこれらのものは実力組織である。そうして直接には自衛目的としたものではなく、国内治安及び海上治安目的としたものであるが、併し自衛の必要が生じた場合、その実力便宜自衛のために利用されることは十分考えられる。即ち自衛のために用いられ得る力であるという説明でありまして、この点は昨日本委員会での自衛力漸増計画説明の冒頭に当り述べられたと同趣旨でありますが、更にこの点について、大橋大臣はそう言うけれども、本委員会における今までの審議の過程において、総理大蔵大臣は、警察予備隊海上保安庁増強は、自衛力増強言つているではないかとの追及がありました。これに対して大橋大臣は、総理大蔵大臣がもう少し詳細に答弁せらるれば自分と同様の答弁をせられたであろうとのことでありました。又米軍漸減計画と我が方の漸増計画との関連性についての答弁は、両者には関係がない、日本政府としては、自主的に計画は持つているが、それを先方がそれによつて漸減するかどうかは不明である、併しその漸減の判断にはなろうと思う。又このことは、総理自分の国はできるだけ自分の力で守るために漸増するのであるという点とも異なりはしない。又明年度において、事実警察予備隊及び海上保安庁関係増強するが、これは先方の漸減計画に即応してやるのではないとの趣旨答弁でありました。  なお、海上保安庁関係漸増計画につきましては、昨日本委員会における警察予備隊に関するいわゆる自衛力漸増計画と同様の計画書提出は遂になかつたのでありますが、この点についての関連しての質疑の中の若干をここで申上げますと、同様に戰力問題中心でありますが、明年度において海上警備隊というようなものを設け、大型艦艇も逐次増加して行くというふうに漸次拡充して行くと、結局どうしても戰力方向に向つて行く、従つて憲法第九条第二項問題に近付く、そこで逆の立場から言つて、一体戰力にならない範囲如何との質疑に対し、答弁要旨は、漸次拡充して行くから戰力方向に進んでいることは認めるが、併しそれは現状の不十分な装備から警備隊に必要な装備に向うのであつて、その限度としては、第一に、その任務に必要なる限度であり、第二は、憲法第九条第二項の限度である。この理論上の見解に加えて、実際上の問題としても、政府戰力限界までの必要を認めておらず、更には財政がそれを許さんとのことでありました。又新らしく計画されておる海上警備隊に関して、政府からこの警備隊は特命に応じて出動するのであるが、その出動の事例として、密入国や海上漁業に対する妨害行為取締りに当り、特に相手国が多数集合の場合、武器を持つておる場合等の説明がありましたのを契機といたしまして、種々質疑が行われたのでありますが、相手方武器を持つておる場合、こちらが威嚇射撃をし、相手方がこれに対し射つて来、そこで射ち合いが行われた場合、それはどういうことになるのか、憲法第九条第一項の武力行使に該当する慮れはないか、少くとも国際紛争の第一段階としての状態となる虞れはないか等の質問に対し、事実上射ち合いが行われることは理論上あり得るが、これは正当防衛行為であつて、戰闘行為、戰争という性質ではない。それ自体実力で以て相手方意思を当方に従わせるという、いわゆる国際紛争解決の手段ではない。ただかかる事実行為国際紛争を生ずる因となるのであるから、我が国としては、その海上警備隊の行動については、それだけに特に慎重を期せねばならんことになると思うとの答弁でありました。海上警備隊関係につきましては、このほか講和回復後のマッカーサー・ラインの問題或いは警備隊所属艦艇搭載火器速力等の点についての質疑がありましたが、これは省略いたします。  次に憲法第七十三条関係について御報告いたします。この関係につきましては、問題点は申すまでもなく、第一は、今回の行政協定条約であるから、憲法第七十三条第三号の規定によつて国会承認を要するのではないかという点、第二は、安保条約に言うところの駐留軍隊配備を規律する条件を逸脱して行政協定が結ばれていないかどうかの点、第三は、行政協定成立に伴い、その実施上における事例憲法違反の虞れありやなしやの具体的の問題等であります。  先ず第一の国会承認の要否の問題でありますが、この点につきましても、戰力問題と同様、政府は終始一貫、本委員会におけると同様の態度を持し、従つて論議としては、本質的にそれ以上何ら発展を見なかつたと申しても過言ではありませんでした。即ち行政協定安全保障条約第三条がなかつた場合は当然国会承認を要する条約であるというが、この条文の文言、即ち「軍隊配備を規律する条件は、両政府間の行政協定で決定する。」というこの文言それ自体からは、当然に七十三条除外ということは言えないではないかとの質疑に対し、岡崎国務大臣は、条文だけではそんな解釈もできぬではないか、政府としては、安保条約第三条の規定によつて包括的承認を得たものとするという解釈をとつて来ており、事実上臨時国会における特別委員会でもしばしば言明して来たことでもあり、又国際慣行にもあるところであるという趣旨答弁でありました。又国際慣行の点について、この種の行政協定は新憲法下初めての事例であり、両政府間の協定に委ねるということは、条約締結権に関連いたしまして、アメリカにとつては意味があるけれども、日本にとつてはそれは条約として素直に憲法規定従つて、その取扱い解釈すべきではないかとの質疑に対しましては、それぞれ国によつて取扱いは異なるが、日本憲法解釈上からも、安保条約第三条の規定があれば、それによつて改めて承認を要しないという法理論の上に立つておるとの前言を繰返されたわけであります。かくのごとく、この点については、両論は並行線を続け、側面的に条約不可分論や、条約乃至行政協定国内法としての効力発生問題等々について種々熱心な論議が重ねられたり、或いはその一部の実施上、立法的、予算的措置国会にかける必要があるならば、その親の協定自体をも国会審議にかけるべきではないかとか、或いはそれよりも内容も示さずに委任を総括的に受けたというのはおかしいではないか、或いは仮に白紙委任されておつたとしても、その後国会承認を求むべきであると決定した場合は、政府は進んでその措置に出すべきではないか等々のいろいろの意見或いは質疑が行われ、又それに対する応答がありましたが、前申述べましたごとく、遂にこの両論の並行線はいずれもその方向を些少なりとも変更することはなく過ぎたのであります。  第二の安保条約に言うところの、駐留軍隊配備を規律する条件を逸脱して行政協定が結ばれていないかどうかの点についての問題点は、主として行政協定第二十四条の関係でありますが、一体最も新らしい国際慣例たる北大西洋条約には、この第二十四条のごとき規定はないのではないか。そもそも一体軍隊配備条件とは何ぞや。又第二十四条に予定するところの非常時においては日本国家主権の発動又はその制限の問題が起ることが予想されるのであるから、問題は極めて重大である等の論議に対し、岡崎大臣答弁は、北大西洋条約は初めから締約国の或る一国が攻撃された場合、他の締約国に攻撃あつたものと認める精神からできているいわゆる軍事協定で、今回の行政協定と性格がまるで異なつている。又二十四条は祕密協定乃至了解事項があるのではないかという疑惑に対し、具体的に何も拘束していないことを明らかにしたに過ぎんのであつて、中身は何もきめていないから本条によつては何も起らない。そのときになつて協議をするというだけであつて、その結果は重大かも知れないが、問題が起ればそのとき国会その他に対し適当なる措置を講ずるつもりであるとの、従来本委員会におけると同様の趣旨答弁を繰返されたのでありました。  第三の問題、行政協定成立に伴い、その実施上における事例で、憲法違反の虞れありやなしやの具体的問題についての論議は、例えば予備作業班が作業を始めるに当り、問題が具体的になつて来るに従つて憲法違反の虞れがだんだんと余計明白になつて来るように思われた。例えば農地の買收等の問題について然りであり、而も岡崎ラスク両氏の交換の書簡において、施設及び区域の継続使用承認されている結果、国民に選択意思をなからしめることになると解されるが、講和発効所有者が是非返還してもらいたいと希望した場合どうなるかとの質問に対し、交換公文趣旨従つて政府は手当をすることに努めているが、この書簡は直ちに国会を拘束するものではない。なおでき得る限り所有者と合意の上解決したい。併し所有者意思に反して使用する場合は別に法律を作り、それにより措置することといたしたいとの趣旨答弁がありました。  以上のほかにいろいろの議論、質疑応答がいろいろの角度から行われたのでありましたが、時間の関係もあり、最前申上げました通り、詳細は速記録に譲り、この程度で小委員会状況報告を終らせて頂きます。
  4. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 只他の小委員長からの報告がありましたが、お手許に昨日政府が約束しました海上警備隊についての資料が出ておりますので、あと時間が、十一時から総理質問を始めるとして五分しかありませんから、一応この説明政府から簡單に聞きまして、総括質問が済んだあとで小委員長報告についてのいろいろな質問をしたいと思いますが、さよう取計らつてよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 和田博雄

    委員長和田博雄君) それではさように、取計らわして頂きます。
  6. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 昨日提出いたすことができませんでして誠に遺憾に存じておりますが、本日委員長に対しまして海上警備隊に関する状況計画資料を以て申上げております。それにつきまして多少補足的に説明をさして頂きたいと存じます。  まず第一に人員でございまするが、海上保安庁の現在の状況といたしましては、船舶四百五十一隻約五万トンでございまして、このうち五十トン以上のものは百六十四隻、約四万トンということになつております。これに附随いたしております現在の人員の総数は一万三千人余りでございまするが、昭和二十七年度予算におきましては、六千八名の増員を要求いたしている次第でございます。このほかになお海上保安庁といたしましては、予備費その他の費目の使用によりまして、海上における偵察のために航空機、と申しましても、これは極く小型のヘリコプターでございますが、ヘリコプター十機程度を早急に装備いたしたい、こういう計画を持つております。これに伴いまして、予算案に示してございます以外にヘリコプター装備いたします際には、約二百人の増員が必要となるものと予想をいたしております。次にこの増加分についての編成等について申上げまするが、予算案に示されました六千人の増員は、六十隻の船舶要員及びこれが管理のため必要な陸上要員に充てることとなつておるのでございます。次の装備のところに、その六十隻の船舶内容について若干の説明を加えてございまするが、この船舶につきましては、千五百トン程度のものを十隻、二百五十トン級五十隻、こういうものを米国より借受けたいと存じまして、只今交渉をいたしておるところでございます。これらの船舶につきましては、号砲として用いるための小口径の大砲を備えたい、こういうふうに考えております。恐らく希望通りのものが手に入り得るのではないかと考えておる次第でございます。これらの新らしい船舶六十隻及び六千人の人員は、その全部を以ちまして、現在の海上保安庁管轄下におきまして特殊の部隊を組織いたしたいと存じます。これは海上警備隊と名付けまして、差当り二、三カ所に根拠地を置きまして、その根拠地において平時は訓練を行い、特別の必要がありまする場合には海上警備並びに救難等のために出動をいたす、こういうふうに運営をいたして参りたいという計画を立てておる次第でございます。なおこれ以上の今後の増員につきましては、第四項に掲げてありまする通り、今後も治安状況において必要ある、こう認められ、且つ財政の事情がこれを許すという場合におきましては多少の増強を行いたい、こういうふうな考えをいたしておりまするが、併しこれについての具体的な計画警察予備隊同様にまだ何ら定まつたものはございませんような次第でございます。一応簡單ながら御説明を申上げます。
  7. 和田博雄

    委員長和田博雄君) これより総理大臣に対する総括質問をいたすことにします。平林太一君。一人の持時間は二十五分でございます。時間を厳守して頂きたいと思います。
  8. 平林太一

    平林太一君 現に行政協定の問題をめぐつて政府に対する攻勢が頗ぶる活溌に展開されております。私はこれらが挙げて憂国の至情に出でた祖国独立に備える言論である限り、敬意を表して傾聴いたしたのであります。これが又過去六年有余、つとに占領軍に協力しながらも、独立国としての矜持を堅持せる日本民族の真骨頂の流露である限り、大いに歓迎の意を表した次第であります。ただ併しこの問題は国際法憲法解釈に関する極めて専門的な事項を多分に包蔵しているのみならず、高く且つ広い視野に立つて考察すべき遠大な国際政治の問題であることを指摘したいのであります。つとに第十七条、第十八条、第十九条による主として刑事裁判権の問題のごとき、もとよりこれが国民的感情に触れる微妙な問題であることは千万承知の上でありますが、それにしてもこの問題は本来問題それ自身が価する以上に過大に評価されているのではないかという強い印象を受けるのであります。自国の防衛他国軍隊に依頼することを名譽と心得る日本人は一人もないはずであります。昨日まで武力を以て世界を震がいせしめた日本が、祖国防衛他国に依存せざるを得なくなつたのは、無条件降伏に伴う徹底的武装解除であつて、当時の戰勝国は日本とドイツからさえ武力を取上げておけば世界は平和になり人類は安全であるという大きな誤りを犯したというべきであります。それはともかくとして、国防を外国に託し外国軍隊の駐屯を許す以上、これに対し裁判管轄権や課税に関する特権免除を与えると品いうことは、万国公法に基く国際上の通義であると信ずることを私は承知せざるを得ません。かかる特権免除を総括して、一部の学者は治外法権言つているのでありますが、然らはこの意味治外法権が属人的であり国辱であるならば、平和条約発効日本に駐在する外国使節日本の領海や港に入る外国軍艦特権免除を許与しなければならないことも、当然国辱と言わざるを得ないことになるのであります。我々は広い視野に立つてこの問題を眺めなければならない理由は、ここにあると私は断定せざるを得ないのであります。故に私はこの際ただ一つ行政協定憲法第七十三条との関係について総理見解を質したいのでありますが、これは行政協定内容が、安全保障条約第三条の授権の範囲又は委任限度を逸脱したものと仮定して、この協定が果して憲法第七十三条にいう条約のうちに含まれるか否かという問題であります。憲法第七十三条に条約事前又は事後に国会承認を経ることを必要とするとあるけれども、この条約という言葉定義が掲げてありません。そこでこの条約という言葉は、日本外国と結ぶ一切合切を含むとも解釈されれば、又そうでないとも解釈ができるのであります。ところが私はここにこの疑問を解く一つのかぎがあることを発見するのであります。即ちこれは事前又は事後に国会承認を求めよという昭々たる憲法規定であります。この事前又は事後という言葉条約の調印前又は調印後という意味ではなく、批准前又は批准後という意味であることは当然でなければならないのであります。かように解釈しなければ、政府は常に調印前の条約案を国会提出しなければならなくなるからであります。やはりそれは調印後にして批准前のことでなければならないのであります。果して然らば政府が必ず国会承認を求めなければならない国際上の約束は、批准の形式をとつて締結されるもののみに限られているという結論になるのであります。勿論これ以外の形式をとる国際化の約束といえども、国会提出して悪いという禁止規定憲法にないのでありますから、政府の自由裁量によつてこれを国会提出することは毫も妨げないのみならず、民主主義の政治論から申せば歓迎すべきことであります。併しこれは憲法上の要求ではない、憲法の要求は批准を必要とする国際上の約束のみが国会承認を求めるべきであつて、これ以外の国際上の約束は政府の時宜によつて承認を求めてもよければ、求めなくても憲法違反ではないという解釈であります。行政協定の場合は私を以て言わしむれば、すでに今日批准を必要とせざる国際間の約束、取極であると申すのであります。  以上は憲法解釈に関する重要なる問題なりと存ずるのでありますが、故に、この際一定せる政府見解総理の御所懐を明らかにせられて、多くの国民の納得を求められたいのであります。一先ず御答弁を要請いたします。
  9. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 行政協定憲法七十三条第三号との関係につきましては、従来しばしば政府としては見解を述べて来つたのでありますが、見解は初めより一定いたしているのであります。即ちこの行政協定安全保障条約規定によつて見ても、これは両政府間の協定でありまして、いわば事務的協定であるのであります。国際間の約束とか或いは条約とかいろいろそれには種類があります。これは曾て枢密院が存在しておつたときにも随分議論があつたので、どれまで条約というか或いはことごとく枢密院にかけなければならぬかということは、過去の戰前において枢密院においても問題になつて来たのでありますが、併しながらその都度政府説明するところは、今日私どもが説明をいたしておることと同様であります。で、これを憲法規定によつて国会にかけるべき条約であるかどうかということは、政府としては行政協定憲法規定によつて国会承認を経べきものではない、但しこれが法律となり、或いは又予算関係ある場合には、その都度国会の協賛を経べきであるが、併しながら行政協定そのものはあくまでも国会の協賛を経なければならぬというものではないという見解を堅持して来たのであります。又これが正しいと考えるのであります。  又条約であるからといつて事前国会報告をし、又相談をするということはできる限りはいたしたいと思いますが、併しながらこれをなすことによつて協議を渋滞せしむるとかいうようなことが交渉上なきにしもないのでありますから、政府としてはできるだけ国会と協力をし連絡をとりたいと考えますが、交渉の次第により性質によつてはできないこともあることを御了承を願いたいと思います。細かいことは岡崎国務大臣から説明させます。
  10. 平林太一

    平林太一君 只今総理が詳細は岡崎国務大臣よりこれを答弁せしめるというお話がありましたが、岡崎国務大臣のなお詳細なる見解を明らかにせられたいと思います。
  11. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 本会議へ今岡崎国務大臣が出席しておりますので。
  12. 平林太一

    平林太一君 本会議に御出席中で御不在ということでありますからいずれ後の機会にいたします。只今総理が当初より首尾一貫してこのことに対しまする見解を重ねて只今表明せられたのでありまして、定めし全国民も了解納得の行くことと存じます。又私も深く同感の意を表する次第であります。  次に申上げたいことは平和条約及び日米安全保障条約、同条約第三条に基く行政協定の取極、締結、この一貫せる日米両国の関係はこれによつて太平洋の平和に一礎石をなし、これがまた国連憲章を基本とする世界の平和に大いなる貢献をもたらしたるものと了承いたすのであります。従いまして私は、アメリカ合衆国はこの際平和条約第三条についてみずから関係各国に与う限りの時期におきまして了解を求められて、講和発効後速かなる機会にこれを改訂せられることを望んでやまないのであります。即ち北緯二十九度以南、琉球諸島等の南西諸島及び小笠原群島を含む領水、領域の関係諸島の、現在講和発効後におきましてアメリカ合衆国を施政権者とする信託統治制度を我がほうに返還せられることを私は強く要望いたす次第であります。政府行政協定取極に当りましてその内容に深く立脚するにつきましても、互信互譲、我、彼に信を与え、彼、我に信を与うることにおいて至大の成功を收めたるこの協定の成功に鑑みましても、当時この問題に対して話合いをせられたることありや否や承わりたいのであります。若しそれ今後においてこの用意がおありになるや否や、総理に御所懐を承わりたいと存じます。
  13. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この問題は行政協定の問題とは離れておる問題で、平和条約の交渉が行われた当時、日米両国政府の間にはごく率直な話合いと申しましようか、意見交換を行い来つたのであります。米国政府としては沖繩その他の所は、それは戰略上の意味で又東洋平和を確保するためから、止むを得ず委任統治と申しますか、日本の主権から離してそうして委任統治の下に置くということは、これは全く戰略上の意義であえてこれらの領土を望むものではない、故にでき得るだけ日本側の要望を容れるということで平和条約規定のようなことになつたのでありますが、日本政府及び日本国民の希望、或いは考えているところ、これは十分米国政府に伝えているのであります。今後どうなるか、これは今後の問題でありますが、併し意思は今申したようにあえて領土を望むわけではない、戰略上の必要から、その必要が存する間だけの問題であるということは絶えず申しておるのでありまするから、これは日本国民の希望はやがて徹底する時期があると私は確信いたします。
  14. 平林太一

    平林太一君 只今この問題は行政協定とは別個の問題であるという御答弁でありましたが、私も同様に感じております。併しながら私はこの際別個であるということほどに極めてこれは重要に、国民感情の融和、親和を深く考えるにつきまして考えなければならない問題であると思うのであります。駐留軍を我がほうに迎えまして、そうしてこの駐留軍を迎える我が国民の態度、又彼の態度、これらは非常に微妙なる間に政治の衝に当る総理といたしましては、いわゆる国民感情、民情に対しまして深い御考慮を御必要とせらるるにはあらざるやと思うのであります。従いましてこの信託統治の問題は、すでに駐留軍が我がほうに駐留いたすというのでありますから、只今総理のアメリカ側の御意思に対する御説明がありましたが、それであればあるほどにこれはむしろアメリカ側から進んで駐留軍の駐留の機会を通じまして我がほうに処置いたすべきであると思うのであります。そのことがいわゆるアメリカの意図しておりまする平和の上に日米両国の大いなる固い強い体制ができるのであるということを深く信じまするので、この点は変らず私はこの考えを持つております。今後とも機会あるごとに総理におかれてはアメリカ側に我々国民意思のありますところを誤解のないように伝えまして、速かなる機会に我がほうに返されることを十分御措置あらんことを要望いたしておく次第であります。  次に申上げたいと存じますることは再軍備に関してであります。
  15. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 平林君、もう時間があとありませんから。三分ぐらいであります。
  16. 平林太一

    平林太一君 総理はしばしば再軍備をするか否かは政府が決定するわけではなく国民自身が決定することであるという、極めて含蓄ある声明を行なつておられるのであります。そこで総理は再軍備は行わないと繰返されている理由は、主として日本の再軍備を恐れている東洋の友邦諸国の思惑を深く考えられ、対外的影響を考慮せられた結果であることを想像せざるを得ないのでありますが、さればといつて日本を丸裸のまま国際的烈風の真只中に放置することは民族の運命を担う責任ある政治家のなし得ないところであります。オーストラリアのケーシー外相は、日本を最も狙つているのは中共である、中共は自己に最も欠けている工業力を日本征服によつて償わんとしていると述べているのであります。かかるジレンマに陥つている総理の苦衷はこれを了とするのであります。併し一方においてソ連の平和攻勢は相当に功を奏し、しきりに国防否定論が特に近来若いところの日本を双肩に担うべき青年の間に横行しているのであります。政府といたしましてはこれら青年に正しい進路に導く努力が必要ではないか。現にソ連ですら昨年のサンフランシスコ会議において、自己防衛のためと前提して日本に許すべき陸海空軍の軍備の規模を示している事実があります。政府は周囲から発する国防意欲を待つことなく、積極的にこれを指導善導する必要を認めないかどうか。スターリン憲法にも祖国防衛はソ連邦各市民の神聖な義務であると規定するのみならず、赤軍の軍務に服することはソ連邦各市民の名譽であり義務であるとも明記してしるのであります。この規定はひとりソ連にのみ適用する原理ではなく、地球上の七十有余の独立国全部に対して適用ある普遍的な原理でなければならないのであります。総理のこの際御所見を承りたいと存ずるのであります。
  17. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 自国の独立安全を自国の国民の国力によつてこれを守るということは当然であり、又日本国民として自国の安全独立を自国民によつて、自国の国力によつて守る、或いは自国国民の力によつて守るということは、これはソ連のみならずいずれの国も国民としてこれを名誉と考え義務と考えており、殊に日本においてその考えをなしているということを私は信じて疑わないのであります。併しながら敗戰の今日、日本が各国が軍備を競つて非常な莫大な国費を費しているときに、日本がそれと同じように国力を傾けるということは、これは国力がこれを許さないのであります。たとえ国民の愛国心が自国を守る熱意に燃えているといたしたところが、敗戰後の日本が莫大な国費をこの軍備に費すということは、これは到底堪え得ないものであり、又これを無理をすることによつてとんだ状態に陥る、或いは国民の国力のせつかく興らんとしている国力を再び中途においてこれを破壊するというようなことにならんとも限らないのでありますから、ここで安全保障条約というものを結んでいわゆる集団的攻撃に対して集団的防禦の方法を講ずることは、あえてこれをいたしたところが日本国の不名誉になるという筋合のものではなくて、今日のヨーロッパにおいても同じく集団的攻撃に対しては集団的の防禦の方法を講じているのでありますから、日本が日米安全保障条約を結んだからといつて日本国民の不名誉とのみ言うべきものでないことは、これは国民も了承いたしていると思います。無論この日本の国力の上から考えてみて共同防衛の線で一応独立安全を守り、国力が回復したならば日本独立安全は国民の手において守る日の近からんことを希望いたしますが、現在においては如何ともできがたいために安全保障条約を結んだのであります。今申した通りこれを結んだからといつて日本国民の義務を減ずるわけでもなければ名誉を傷つけるわけでもないと考えるのであります。お話の通り独立安全は国民の手において守ることを名誉と考え義務とすることは当然であり、国民の愛国心は必ずこの点において一致いたしておると私は信じて疑わないのであります。
  18. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 先ず最初に行政協定の問題についてお伺いをいたしたいと思うのでありますが、この問題につきましては、予算審議の当初より国会承認を必要とするのではないかということについて活発な質疑が行われて来たものであります。併しこれに対する首相並びに関係大臣の答弁には今以て私どもは納得の行かないものがあるのであります。政府説明によりますると、行政協定安保条約第三条に基く施行細則的なものであり、事務的な取極であるから国会承認を必要としない、こういうことであります。併し行政協定が果して政府が言われるように單なる施行細則的な、或いは事務的なものであるかどうか。私どもは然らずと考えているのであります。何故ならば行政協定の中味を見ますときに、国家の主権が制約されたり、国民の権利義務に拘束が加えられているのであります。こういうような国家の主権が制約されるというような内容を持つている行政協定を事務的な取極であるというふうには解釈ができないのであります。これは明らかに事務的な範囲を超えておる、こういうふうに考えるのでありまするが、先ずこの点について首相の御意見を更にお伺いしておきたいと思うのであります。
  19. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) その点はしばしば繰返しておりますが、私の説明について不満足であるというならば佐藤法制意見長官からお答えいたします。
  20. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は吉田首相に対しまして事務的な範囲を超えておるのではないかと、こういう点をお伺いしておるのであります。従つて事務的な範囲内のものであるかどうか、この点を明らかにして頂きたい。こう思うのであります。
  21. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) お尋ねの点をも含めまして一応御説明申上げます。
  22. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 簡單に私は事務的な範囲内のものであるかどうか、簡單にこれを結論をおつしやつて頂きたい。
  23. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) わかりました。申すまでもありませんが安保条約第三条におきまして、駐留軍の配備を規律する条件については、別に両国政府間の行政協定で定めるということを調いまして、この配備を規律する条件について行政協定が定められることを予定しているのであります。この配備を規律する条件という観念に今回の行政協定がはまるかどうかということに御指摘の疑問があるのであろうと存じますが、私どもはこの駐留軍の配備を規律する条件という中にすべて含まれるものであつて、それを逸脱する部分は毛頭ないというふうに確信いたしております。
  24. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それではこの行政協定の中味は單なる施行細則的なものでない、又事務的な範囲内のものでないということは、首相自身もしばしば言つておられるように、又本委員会においてもこの行政協定に伴つて日本が支出しなければならない予算についても現に審議をいたしておるのであります。單に予算だけの問題でなしにこの他にも国会承認を要すべき事項が多多あるのでございます。こういうふうに行政協定内容の中には国会承認を必要とする事項が含まれておるのであります。そういたしますと、これらの事項を含んでおる行政協定そのものは單なる事務的な取極でなしに、施行細則的なものでなしに憲法第七十三条にいうところの条約であるというふうに解せざるを得ないのであります。こういう点について重ねて明らかにして頂きたいと、かように思うわけであります。
  25. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 政府といたしましてはたびたび御説明しました通りに、行政協定は若しも安保条約がなくしてこれが締結されたものといたしますれば、これは当然憲法七十三条によつて承認を経べき事柄のものである、そういう性質のものであるということでございまして、次に然らばその安保条約におきまして、行政協定内容事項として予定しておるものは何かということは、先ほどのお答えいたした駐留軍の配備を規律する条件ということになるわけであります。ところで駐留軍の配備を規律する条件というものは、客観的に過去の幾多の先例或いは確立した国際慣例というものから、駐留軍がある以上は当然そうすべき条件というものはもうすでにわかりきつておる常識の事柄であると存ずるわけであります。従いまして費用の分担の関係等も当然その中に予想され含まれるべき性質のものであると存じます。而してその関係のことを……。
  26. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 結論だけおつしやつて下さい。
  27. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 然らば国内でどう処置するかということは、この行政協定の最後の二十七条であつたかにおきまして、立法機関に対して必要な措置を求める、ということを協定自身に謳つておるわけであります。
  28. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 なおこの問題につきましては、只今の説明では行政協定条約である、ただ安保条約があるから国会承認を必要としない、こういう只今御説明であつたと思うのです。ところが先ほど首相は行政協定は七十三条にいう条約ではない、こういうふうに答弁をせられておるのとは明らかに食違いがある。かように考えるのでありまするが、吉田首相は今の政府委員答弁と食違いがあるところをどういうふうにお考えになるか御答弁を願いたいと思います。
  29. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私がそばにおりまして拝聴いたしましたところでは、総理のおつしやつた御趣旨は、この憲法七十三条によつて更に承認を求めるようなものではないという御趣旨だと私は了解しております。
  30. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは先ほど平林委員答弁の中において、条約といえども交渉の性質によつて国会に諮らないこともある、こういう発言がございました。これは祕密条約を結ぶことができる、こういうふうに解釈して差支えないものかどうか、首相からお伺いしたいと思います。
  31. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは私の説明をいたしたのは、従来枢密院においても国際の協約と、何て書いてあつたか忘れましたが、両国の間における協約は、約束はすべて国際約束と書いてあると思いますか、枢密院の規則にある国際の約束、それはすべて枢密院に持つて来いという議論は盛んに行われたのであります。これに対して国際の約束或いは条約といいますか、それはことごとく枢密院に持つて行かなかつた先例があるということを申したのであります。又条約の中にも条約という名前で実質は單に事務的のものも随分あるのであります。故にそういうようなものに、条約というよりは両国の間の約束というようなものの中にも必ずしも国会にかけなければならんものばかりではないということの例として申したのであります。而してこの行政協定憲法の七十三条の、いわゆる国会の協賛を経なければならない条約でないということを申したのであります。
  32. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは次の問題に移りたいと思いますが、自衛力漸増計画による警察予備隊及び海上保安隊の強化は憲法第九条にいう戰力に該当するのではないか、この問題であります。昨日政府から自衛力漸増計画についての説明がございました。それによりますと、大体警察予備隊の規模、それから編成、装備、訓練の状況を概括的にこれを見まするときに、先ず人員におきましては十一万人に増強するということが言われております。これは平時編成の十個師団に該当するものである、それだけの人員の規模を持つておるというふうに考えられるのであります。又第二番目の問題といたしましては幹部の問題でありますが、これも追放解除になつた旧軍人が主に占められておる。この数はすでに一千人に及んでおるということであります。第三に予備隊の指導に当つているアメリカの離間団もやはりアメリカ軍の将校であるということであります。更に装備の点については、現在予備隊が保持いたしておりますところの武器はアメリカ軍より貸与されたものであるということであります。大蔵大臣はこれに対しましてその額は数千億円に上るだろうという説明をまあいたしておるのであります。更に訓練の方面から見ましても、個人訓練のみならず部隊訓練に重点が逐次置かれつつある。而も一人の予備兵の訓練のために使用する弾薬が一カ年二千発に及んでいるということも説明されているのであります。そこでこのようなことを総合的に判断をいたしますと、これは明らかに私は再軍備であると言わなければならんと思います。首相は僅か二千億円ぐらいの金では再軍備はできないじやないか、或いは木村法務総裁は原子爆弾を持つておらないから再軍備にはならないじやないか、こういうふうな説明でありまするけれども、これでは到底私どもの納得できがたいところであります。  そこで私はこの際お尋ねいたしたいことは、警察予備隊とか海上保安隊の装備、編成、訓練、そういうものがどのように強化されてもこれは再軍備にはならない、或いは憲法第九条にいう戰力とは関係がないのである、こういう主張が成り立つかどうか、こういう点について首相の見解を伺いたいと思います。
  33. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 海上警備隊並びに警察予備隊装備編成につきましては昨日申上げ、又今朝それを補足いたしました説明の際にも申上げたような実情でございます。而してこれらの装備、編成又訓練は、いずれも警察予備隊の任務といたしまする我が国の平和と秩序を維持し、国内治安を確保する、こういう任務から申しまして、必要の範囲内において装備をいたし、又その目的のために編成をし、訓練をいたしているのでございます。それ以上のことを目的としてこれらの装備、編成、訓練をなしておるものではございません。又政府といたしましては、今後におきましても、装備、編成、訓練、いずれも国内治安確保の目的限度内においてこれを実施して参るという方針をとつておるのでございます。従いまして、これが再軍備となるということは断じてあり得ないと確信をいたしております。
  34. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今日は総理に対する総括質問であると私は心得ておるわけなのであります。従つてできるだけ私は総理から答弁を求めたいと思いますので、然るべく取計らいを願いたいと思います。  次に、中国との国交、平和回復の問題についてお尋ねをいたしたいと思いますが、政府は台湾にある国民政府と現在和平に関する交渉を進められておるのでありまするが、これは台湾政府を中国の政府と認めて和平交渉に当つておられるのかどうか、その点を先ずお伺いしたいと思います。
  35. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは私のダレス書簡において明らかにいたしておる通り、台湾、澎湖島における現に統治の実体をなしておる台湾政府と善隣関係に入りたいという考えから、条約の交渉に当つておるのであります。中国全体とか、中国を代表するという意味合いではないのであります。
  36. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そういたしますと、吉田首相は台湾政府は中国の政府ではない、こういう認定を下しておられるか、そういうふうに解釈して差支えがないでしようか。
  37. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは平和条約にあります中国、いずれの中国政府……何と書いてあつたか記憶がありませんが、平和条約における中国全体を代表した政府、そのいずれの政府を中国を代表する政府と認めるかどうかは日本の自由であると書いてありますが、その意味合いではないのであります。澎湖島若しくは台湾、現実に統治の実権を握つておる国と善隣の関係に入るというだけの考えであります。
  38. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そういたしますと、吉田主相もしばしば中国その他の国とも国交を回復したい、こういうふうに言つておられるのでありまするが、その中国の正統なる政権というものは、いわゆる台湾ではないということになりますと、これは北京政府を指す、こういうことになるのか、その点。いわゆる中国の正統なる政権はいずれを認むべきか、こういう問題について首相のお考えをお伺いしたい。
  39. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは将来の実際の事実問題でありまして、或る政権が中国全体を代表するような事態が生ずれば、成るべくこれと善隣関係に入りたいという考えは変つておりませんが、現在中国北京政府とは何らの交渉も持つておりません。又交渉に入ろうという希望も承知いたしておりません。
  40. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 現在世界の各国は、中国の政権を或る国は台湾を正統なる政権と認めておる、又他の国は北京政府を認めておる、こういう事情にあることを考えるとき、日本も又いずれを選ぶべきかという問題に当面しておると私は思うのであります。そういう際に中国が今のように二つの政府があるからきめにくいのだ、こういう態度では、私は国際的な事情から言つて許されないのじやないか、こういうように考えるわけであります。そういう点から考えましても、将来吉田首相は中国政権をどう認めようといたしておるのか、お伺いしたいと思います。
  41. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 将来の事態の発展によることであります。
  42. 和田博雄

    委員長和田博雄君) あと五分ですから、そのつもりで……。
  43. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは、最近国際自由労連を初めといたしまして、世界の民主的な労働組合は吉田政府の施策に対して重大な関心を払つておることは、吉田首相も御存じのことであると思うのであります。極く最近国際自由労連は吉田内閣の施策、特に反民主的な傾向に対しまして強い警告を発しておるのであります。更にアメリカの最大の組合と言われるCIO、AFLにおきましても、その機関において正式にこれらを批判する決定をいたしているのであります。又これを国内的に見ましても、日本最大の組合であるところの日本労働組合総評議会は、吉田内閣の累次に亘る労働強化、低賃金、言論集会に対する圧迫等の諸政策につきまして、強い反対の意向を表明しているのであります。私は今後日本を再建するに当りまして、国内的にはこれらの労働者の理解と協力なくしては日本の十分なる再建は果し得ないと考えているのでありまするが、又国際的に見ましても、日本国際社会の一員として世界各国との友好関係を増進する、こういう場合に、世界の労働組合から強く非難されるような政策を堅持しておつて、果してそういう目的を達し得るかどうか、甚だ疑問と考えているのであります。そういう点に鑑みまして、政府の今までとつておられた施策に対して反省するところはないかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  44. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 労働大臣から……。
  45. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 荒木さんの只今の御質問の中に、世界自由労連からいろいろの意見を申出ているということでございますが、これは日本の事情を十分に理解せられないところから出ていると私は思つております。今回労働三法を改正するにつきましても、御承知のように労働基準法は中央労働基準審査会にかけまして、十分意見を聞いているわけであります。過日労働側、使用者側及び公益側の三者から成りまする委員会意見が完全に一致して、答申が出ておりまするので、政府といたしましては、その意見を十分尊重いたしまして、改正をするつもりでございます。毫も労働者の権利を抑圧をするというような考えは持つておりません。而も日本の労働基準法は大体国際会議で決定されました諸条約を基にしてできておりまして、国際的に見ましても、決して日本の労働基準法は劣つているとは私は存じないのであります。なお、労働関係法につきましても、労務法制審議会に諮問をいたしまして、一応の答申が出ました。この答申は過日も申上げました通り、最後の答申は、重要事項は労働者側の意見、或いは使用者側の意見につきましても、それぞれこれをかけまして、極く事務的なものが答申されておりますが、政府といたしましては、この労務法制審議会の審議の過程において論議されました事項を十分参考にいたしまして、立案するつもりでございます。
  46. 和田博雄

    委員長和田博雄君) もう時間がありませんから……。
  47. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 ちよつと説明が長かつたですから、締括りとして最後に……。(「議事決定通りに願います」と呼ぶ者あり)
  48. 和田博雄

    委員長和田博雄君) なかなか時間が詰つておりますので、時間だけはお守り願つて……。
  49. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は最後に吉田首相に対しまして、一言申上げておきたいと思います。
  50. 和田博雄

    委員長和田博雄君) それは荒木君、許可しておりませんから……楠見義男君。政府のほうも一つ簡単に要領を得た答弁をしてもらいたいと思います。
  51. 楠見義男

    ○楠見義男君 私はただ一点だけお伺いしたいのでありますが、それは我が国の人口問題についての政府の対策如何という問題であります。この問題は本委員会における予算審議の過程におきましても、餘り詳細なる論議が行われなかつたのでありますが、実は非常に重要な問題であることは改めて申すまでもないのでありまして、この重要なる理由についてはここに改めて説明するの煩を避けたいと思いますが、要するに経済自立と言い、国民所得増加と言い、生活水準の向上と言いましても、結局この狭い国の中において、一方において年々百五十万人程度の人口増加、これを我が国人口の現状に対処して確たる而も恒久的な方策がなければ甚だ心許ないと思うのであります。例えば最近新聞紙の報ずるところによりますと、農林省において相当厖大なる食糧需給五ヵ年計画を目下作成中であるかのごとく伝えられておりますが、この場合の結果におきましても、又曾つて経済安定本部がいわゆる経済自立五ヵ年計画をお立てになつたその場合におきましても、依然その計画達成時における食糧の要輸入量は一向減少をしないようであります。戰前の我が国の産業別人口配分状況の実際に徴しましても、曾つては御承知のように毎年家族を合せて百五十万乃至二百万の増加人口が商業とか、ときによりましては鉱工業等の部門にそれぞれ吸収されておつたのでありますが、今日の見通しからいたしますと、必然的に今後生ずる産業の近代化、合理化等に伴つて、従来とは逆の場合も予想されるのでありまして、現状を以て推移いたしますると、決して将来楽観を許さんと思うのであります。又いわゆる海外移民の問題も、講和発効後の今後においては一つの問題として生ずるでありましようが、過去の満州開拓の例に徹しましても、御承知のようにあれだけ日満両国が国策として大規模に取上げて実行いたしました結果は、十年経つても漸く十万戸に達しないというような状況でありました。従つて海外移民の問題も事柄自体は非常に重要でありますけれども、決して過大評価できないと思うのであります。このような一、二の実例に徴しましても、問題は極めて重大でありまして、ひとり当面の対策にとどまらず、将来長きに亘つて恒久的に而も総合的な対策が必要であると思うのでありまするし、政府もこの点については十分な案をお持ちになつていると思うのであります。従つて私はこの点については必ずしも総理答弁は要しませんが、政府のそうした構想、或いは又具体案等について、詳細御説明を煩わしたいと思うのであります。
  52. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。この問題は御意見通り重大なる問題であります。移民問題については私は今日ここで以てとやこうや申すことは差控えますが、その他の問題についても私はどこの国でも人口問題に対する最後的な解決は非常にむずかしいのではないかと思います。又どこの国でも案が立つておらないのではないかと思います。併しながら、さればと言つて日本政府は案なしに行くかということは許されないことでありますから、今お話のような食糧政策であるとか、或いは産業の振興であるとかいうようなこと以上に取上げて、ここにこうするというような最も名案は、これはどの政府でも立ちにくいのではないかと思います。併し詳細のことは主管大臣からお答えいたします。
  53. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 人口問題は只今総理からもお話がございましたように、日本といたしましては極めて重大な問題であると存じます。ただ御指摘になりました毎年百五十万ということでございますが、二年ほど前の状況はそういう状況でございましたが、この二年間に大分減りまして、大体毎年百二十万台のような見通しを持つております。そこでこれをどうするかという問題でございますが、何と申しましても、日本における生産規模の拡大によりましてこの人口を養つて行くということが最も重要であろうと思います。幸いに大体今年は生産指数も一三八ぐらいでありますが、安本等とも協議いたしました見通しといたしましては、三十年には一九〇ぐらいに伸びるのではないかと、かように存じております。なお御指摘の食糧増産の面におきましても、土地改良その他におきまして極力この面に力を入れて行きたいと思います。  なお人口調節の問題にいたしましても、これは積極的にというわけにも参りませんが、目下母体保護の立場から、これの普及徹底というものにも本年度の予算に若干予算を組みまして乗り出そうといたしております。これらはいずれも重要な問題でございまして、目下政府としては民間のこれらの方面の権威者とも協議いたし、研究を続けている次、第であります。
  54. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 総理大臣は先ほど荒木君の質問答弁をされまして、行政協定安保条約実施細目のようなものであるから、憲法の七十三条の条約には当らないんだというふうな御答弁がありました。その御意味は、これは憲法七十三条に書いてある条約じやない、行政協定という別のものだという御意味でありますか。或いは条約ではあるが、憲法七十三条但書によつて国会承認を受けなくてはならないような条約ではない、こういう御意味でありますか、どういう御意味でありますか、はつきりして頂きたい。
  55. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これはしばしば同じことを繰返すようでありますが、安全保障条約においてはすでに原則がきまつてつて、その原則を施行するために……行政協定目的は主としてそこにあるのであります。併しこれが行政協定条約であると言いましたところが、安保条約の三条でありますか、規定がある以上は、憲法にいわゆる国会承認を要しなければならない条約ではない、こう私は考えるのであります。
  56. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 それなら大体わかりました。私は行政協定安保条約の一部であり、憲法第七十三条に書いてある条約ということには当るものである、これは疑いはないと思つております。ただ国会安保条約承認するに際しまして、同条約第三条の規定において駐留米国軍の配備を規律する条件を決定するために政府間で取極の決定をなし得る権限を一定の厳格な条件の下に政府に一任することを国会承認したものである、こういうふうに考えております。それで改めて右行政協定そのものについて国会承認を要しない、そういう意味なら私はわかるのであります。総理大臣もそういう御意味であるかどうか、もう一度伺つておきたいと思います。
  57. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御意見通りと私も考えております。
  58. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 御意見の相違じや困るので、御意見通りならいいと思います。平和条約が近く効力を発生する見通しが付いたようであります。もう一国、例えばパキスタンが批准をすればいよいよ条約が効力を発生する、こういう状況になつてつております。そこでまあパキスタン相手ではわかりませんが、政府はどのくらいの時期にパキスタンが批准をし、そうしてこの六カ国の批准書がアメリカに寄託されまして、そうして効力が発生する、その時期はいつであるとお考えになつておりますか。
  59. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたしますが、いつ幾日ということをはつきり申上げるだけの資料はありません。又パキスタンがいつ批准をするか、この点についてもはつきりしたことは私は材料を持つておりませんが、併し全体から考えてみて先ず四月の中旬には条約の効力の発生ということになるであろうと期待をいたしております。
  60. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 四月の中旬頃には条約が効力を発生するだろうというお答えでありました。そこでその後その効力を発生した当事国との間に通商航海条約というようなものがだんだんと結ばれて行かなければならんと思いますが、それは今国会中にそういうものをやる必要があると思うのですが、そうすると国会の会期を延長しなければならんというようなことが政府でありますか、自由党のほうであるか伝えられておりますが、それはどうお考えになつておりますか。
  61. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 通商航海条約はわけて主要国との間には成るべく早く取極めたいと只今準備を進めております。予備交渉といいますか、話合いを進めております。さてその見通しはどのくらいの間にできるか、或いは従来の条約をそのまま踏襲するというようなこともあり得ることだろうと思いますが、その協定の期限については今ここに私は申す材料を持つておりませんが、政府としては成るべく早く速かに主要なる国と、少くとも主要なる国との間には通商条約を締結いたしたいと目下頻りに努力いたしております。
  62. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 四月の中旬に条約が効力を発生しまして、国会の会期は五月早々に切れるということになりますと、当然会期の延長が必要になるのではないか、こういうふうに思われるのであります。まあその問題はそういたしておきまして、次に国連に対して条約が効力を発生した後、速かに加盟を申込まれるという政府のお考えがありますか。そうしてその加盟を申込む前に国会承認を得られるおつもりでありますか、その点をお答え願いたい。
  63. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 国連の関係については、まだ政府は国連と交渉を開始するだけの資格といいますか、関係に立つておりませんから、予備交渉もいたしておりません。これは想像いたしますのに、主として米国側が日本政府に代つて話をしてくれているものと想像いたします。併しその何は、どういうふうな条件というようなことは、これは国連のほうの希望もあり、文意思もあることでありましようから、そのどういうふうな条件で、どういう時期というようなことは私は今日ここで以て申す材料はないわけであります。
  64. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 それではう一つお聞きいたしますが、米国軍以外の連合軍が条約発効後も日本に留まる希望があつて日本政府といろいろ協定をしなければならんというふうに伝えられておりますが、それはどういうふうな関係に立つておりますか。又その協定は国連当局とするのでありますか、国連軍として留まつている英国のほうとするのでありますか。又その協定行政協定というのでありますか、或いは条約でありますか、その点を伺いたい。
  65. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ちよつと聞えませんでしたが、国連軍が日本に駐留することを言われるわけでございますか。つまり米国以外の国、濠州軍などが日本にいる、この関係はどうするかという……。
  66. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 そういうわけです。
  67. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは自然国連との間の関係になりましようから、国連からしてこうしてもらいたいとか、ああしてもらいたいとかいう交渉はあるだろうと思います。只今のところは何らの交渉はまだないのであります。
  68. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 そのときに国連のほうと日本といたします取極は、行政協定という名前でやられるのであるか、条約であるか、又どういう名前であるか、それをお聞きしているのです。
  69. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは行政協定という名前にしようとか、或いは条約にしようとかいうような何らの只今のところでは交渉はないのであります。いずれ国連からして申込みがあつた上で以て考えようと思います。
  70. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 次にお伺いいたしたいのは、アメリカの上院で、平和条約審議するに当りまして、平和条約の第二条の(C)項、即ち「日本国は、千島列島並びに日本国が千九百五年九月五日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。」という条項を審議いたしまして、これはソ連に領土権を認めたものではない、こういう議論が議員の各人から出され、又政府もこれを肯定しております。そうでありますから、この平和条約がアメリカその他との間に効力が発生しました後に、政府は速かに堂々とこの一旦放棄した千島並びに南樺太を日本に還してもらいたいという意思世界に訴えるために声明でもせられる御用意がありますか。それを伺いたい。
  71. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 上院の平和条約審議の際に、お話のような議論があつたことを新聞では承知いたしております。併しながら政府の公電としては何らの留保なくして条約は批准されたというだけの話で、詳細の材料については政府としては承知いたしておらないのであります。樺太等の問題については将来のことに属しまするし、まだ独立もいたしておらず、又ソ連との関係も微妙でありますから、ここでお答えすることは差控えたいと思います。
  72. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 次に行政機構の改革についてお尋ねをいたします。政府は初め大々的に行政機構の再編成をお考えになつておつたようであります。ところがいろいろな事情から僅かに一つの府、十一省というような、誠に小さな改革にとどまつたということであります。それでそれを近く国会に御提出のようでありますが、一方には衆智を集めた行政制度審議会というようなものを政府が作られて、又改めて検討するというふうにお考えになつておるというふうに我々は聞いておるのでありますが、それはどういう関係総理はお考えになつていますか。
  73. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 行政機構の改革は短い期間の間に、何と言いますか、拙速を尊ぶというのではなくて、十分慎重審議して各省の間の関係、或いは又複雑になつておる関係等を整理して、そして成るべくさつぱりした機構にする。そうして行政の簡素化を図りたい、こういう趣意から出発したのであります。大小の規模についてはおのおの只今研究中であります。大きい規模で、或いは小さい規模でといろいろ議論がありますが、政府としては成るべく慎重に今申した行政簡素化の線に沿うて結論に達したいと努力いたしております。併しいずれのときにおきましても、行政機構の簡素化とか、或いは又行政機構が複雑になることを避けるためには絶えずこれを監視しておる必要があり、又研究しておる必要がある。実情に適するようにいたすためには、或る委員会を設けて絶えずこの問題を常時的に研究さしておく必要を認めますから、そこで今お話のような委員会を設けたいとも考えております。
  74. 和田博雄

    委員長和田博雄君) もうあと二分しかありませんから…。
  75. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 では、最後に地方自治に関する総理大臣の御所見を伺いたいと思います。いろいろ申上げたいのですが、時間がありませんから簡單に私がお尋ねしたいことだけを申上げます。政府は地方行政、地方自治のあり方につきまして、地方行政調査委員会議というものを吉田内閣が一昨年の一月にお作りになりました。そうしていわゆる神戸委員会と称せられまして、神戸正雄氏が議長になつて苦心の結果三回に亘つて……。
  76. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 岡本君一つ簡單にお願いします。
  77. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 その取りまとめた結論を政府並びに国会に勧告して参つております。ところが、その勧告を一向に採用されないで、別の見地と申しますか、から地方自治法の一大改正を今度やられるようであります。これはどういう意味であるのか。私は折角設けられた神戸委員会の勧告、この線はやはり尊重されなければならない、法律にもそう書いてあります。それはどういう関係に立つておりますか、お尋ねしたい。  それからもう一つ、なお政府は更に地方制度調査会というようなものもお作りになるように言われております。それならば地方制度調査会で衆智を集めましてよく御研究になつてからこのような大きな改革はなさるべきだと思うのですが、それをどういうふうに総理はお考えでありますか。
  78. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 詳細なことは主管大臣からお答えいたしますが、今の神戸博士の委員会報告書は当局において十分参考にしておるはずであります。
  79. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 十二時五十五分から本会議の採決がありますので、午前はここで暫時休憩にして、午後は一時二十分から始めたいと思います。  それからこれは一つ委員のかたも、政府のほうも、時間が非常に制約されておりますので、一つ要領のいい質問をし、核心に触れた御答弁をして下さるようにお願いいたしておきます。そうしないと徒らに時間が延びて来て委員長は甚だ処理に困ることになりますから、その点を一つ十分お含みおきを願います。(「名委員長」と呼ぶ者あり)    午後零時二十七分休憩    —————・—————    午後一時三十三分開会
  80. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 午前に引続き委員会を再開いたします。  質問を続行いたします。山田節男君。
  81. 山田節男

    ○山田節男君 本国会の開会の劈頭におきまして、吉田総理は施政演説の中で、一昨年以来の、殊に昨年の春以来の経済的な発展につきまして、非常にまあ楽観的な、自信のある演説をなさつたのでありますが、それと同時に、大蔵大臣並びに周東長官もこれを裏打ちするかのごとく極めて楽観的な、又一面において自信のある施政の御演説があつたわけですが、それに基いて立てられました来たる昭和二十七年度の予算案を本委員会において検討いたしたのでありまするが、その後国際情勢等の変革、変動と申しまするか、急激なものがございます。例えば貿易の見通しでございます、総理並びに周東安本長官の御演説では、将来の貿易は極めて朗らかなお見込でありましたけれども、最近になりまして、英国、濠州、ニュージーランド等が、対日の輸入を極力削減し、又或るものはこれを杜絶しようというような情報も参つております。又御承知のように、ポンドが一億ポンドも集積いたしまして、非常な、今日本の貿易上におきましても、大きな問題を投げかけております。なお外資の導入に対しましても、過日のマーカット少将の声明がございました。これは明らかに日本の現在の政治経済に対する苦心の現われと思うのでありますが、かようなわけで、こうして二十七年度の予算をお立てになつた後におきまして、そういつたような情勢の変化がございまする上に、この予算を各大臣から責任ある御答弁を得まして、いろいろ研究して見まするというと、なかなか総理が施政演説で述べられたような御希望を実現し得るかどうか、甚だ疑わしい諸点が幾多出て来ておるのでございますが、その中の若干の点を更に今日総理大臣に御質問申上げて、国民に安堵感を与えたいと思うのでございます。  第一には、これは本委員会で非常に問題になりましたが、例の自衛力の漸増と来たるべき補正予算、或いは二十八年度の予算における見通しでございます。池田大蔵大臣は、この二十七年度の予算におきまする防衛支出金、警察予備隊海上保安庁、安全保障諸費その他合せまして千八百二十億円でございますが、池田蔵相は、これはもう最大限度である、吉田総理は、これは最小限度だとおつしやつたけれども、大蔵大臣としては、これはもう最大限度である、従つて、補正予算においても殖えようとは思わないし、極力これを最大限度として行きたい、のみならず、これは吉田内閣の建前である増税をしない、むしろ減税をして行く、而もこの財政は飽くまで超均衡であり、民生第一主義である、かように言われておるのでございますが、これは私どもとして誠に喜ばしいことと存じまするが、大橋国務相から自衛力漸増計画についての昨日の行政協定に関する小委員会予算委員会の小委員会資料として出されたものを見ましても、やはり今後の治安或いは財政事情を考慮して、この漸増のスピードをこれ以上、十一万以上の増員を考えたい、かようなことを言つておられるのでございまするが、今日国民が一番心配しておりまする点は、この自衛力漸増安全保障条約で義務付けられておりまするこの自衛力の漸増によりまして、将来増税するのではないか、それがために国民生活が犠牲になるじやないかという不安を持つておるのでございますが、重ねて私は総理にこの大蔵大臣の声明なり、或いは総理のたびたびの御声明につきまして、もう一度一つこの席上で御確認願いたいと思うのであります。
  82. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) しばしば国会内外において申しておりまするが、日本の国力に応じた防衛をいたすべきである。今日日本の国力としては、現在の防衛費が最大限と言い、最小限と言うのは、物の裏表を言つておるだけの話でありまして、同じことなのであります。とにかく増税はいたしたくない。又防衛費もなるべく倹約いたしたい。これは一に外界の事情によるわけで、日本に対する侵害の程度がどうであるかという外界の事情によることであり、又日本財政負担能力に適応した防衛をいたしたいと思うのであります。現在においては、いずれにしても、この予算案において御覧の通り、この上増税いたす考えもなければ、又防衛費を増加する考えもございません。
  83. 山田節男

    ○山田節男君 次には外資導入の問題でございまするが、過日も御質問申上げたのでありますが、更にはつきりしたいために重ねて御質問申上げます。先ほど申上げましたように外資の導入は吉田内閣のこれは重要な政策でございます。これを持ちましてこそ、吉田内閣日本の自主的な経済産業政策が確立できるという、これは非常に重要な政策でありまするが、今日におきましては、先ほど申上げましたように外資導入が極めて困難である。その原因は、これは単なる日本におきまして国内法の、外国の投資に関する法律を改正したくらいのことで解決し得るようなそんなやさしい問題ではないと存じます。即ち先ほど申上げましたが、この日本の金融財政、インフレーシヨンの問題、或いは政治の安定を欠いておるということ、殊に日本の産業資本家が朝鮮の特需以来、動乱以来示しております通り、極めて杜撰な経営であります。大蔵大臣は資本の蓄積ということを言つておられますけれども、この特需で栄えておる会社が三割、五割、六割というような配当をいたすような情勢であります。かような極めて、吉田首相の言つておられる自由主義経済に基く無統制な経済が、このアメリカの資本家たちに対しまして極めて不安な情勢を与えておるのだと思うのであります。そこでどうしても吉田総理といたしまして、又我々としましても、日本の経済の自立のためには外資を或る程度まで導入しなくてはならない、かように思うのでありますけれども、先ほど申上げましたように、マーカツトの声明は日本の外資導入の態勢が整つていないという、これは一つの大きな私は証明であると思うのであります。吉田総理は、こういう日本の産業の外資導入の必要性に鑑みまして、今後この外資導入の態勢のためには、単に国内法のそういう外資に関するような法律を改正するのじやなくて、それ以上の外国が信用し得るように、アメリカが好んでいわゆる高き所から低き所に水が流れるような態勢になれば外資は入つて来ると思うのであります。これは絶対に必要だと思うのでありますが、総理はこういう外資導入の受入態勢のためにもつと合理的な、又もつといい意味の統制経済、これを立てるような考えはないか。又それによつて、又その他の方法によつて日本の金融なり、或いは日本の殊にこの産業政策というものを信用させるようにしなくちやならんと思うのでありますが、これに対しまして総理としての具体的な心がまえを一つお伺いしたいと思います。
  84. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 外資の導入は決して容易なことではない。又我々も安易な楽観的な考えを持つておるのではないのであります。併しながら外資導入は日本の経済安定のためにもどうしても必要なことであり、この外資導入については極力政府としては努力いたす考えであります。又米国政府或いは米国民として日本の経済自立を念願すると言いますか、希望してできるだけの援助をいたしたいという気持は十分あると私は考えます。故に日本の国情が安定し、又今お話のような日本財政経済に対して十分安心が行くならば、米国の資本家或いは米国政府日本に対する経済援助と言いますか、外資の導入については十分の努力をいたしてくれるものと私は確信いたします。  詳細な点は大蔵大臣から御説明いたします。
  85. 山田節男

    ○山田節男君 大蔵大臣からは更に又機会があつたら伺いたいと思いますから省略いたしたいと思います。それから第三には、これは甚だ私としてどうも吉田総理に対して僭越な申入れかも存じませんが、私は日本が戦争に敗けまして以来、戦後国民一般が虚脱の状態に入りまして、これはどの敗戦国におきましても道徳の頽廃するということはこれは通性でございます。併しながら日本の終戦以来六カ年間のずつと思想、風潮を見ますときに、全く人心地に落ちると申しますか、道義というものが低下して参りまして、これが競馬であるとか、競輪であるとか或いはキヤバレーであるとか、カフエーであるとか、東京温泉であるとか、或いは犯罪も悪質なものがどんどん殖えて参り、又官吏の汚職問題も頻発いたしておるような次第でありまして、全く今日この道義の点におきまして誠に憂うべき状態にあると思うのであります。又政治上におきましては、これは甚だ失礼ではありますけれども、今回の自由党ができまして衆議院の絶対多数をお持ちになつておる、このことがむしろ悪用されまして、政治道徳の頽廃ということが非常に私は顕著になつて来ておるものと存ずるのであります。今日東京を見ましても極めて軽薄ないわゆる。パンパン文化のような工合になつておるのでありまして、私は一昨年西ドイツ或いはイギリス、アメリカ等を廻つて来ました。特に戦勝国であるイギリスが厳粛なる耐乏生活をしておる。又西独におきましては実に臥薪嘗胆でございます。我々が見まして実に日本は戦争に敗けたのではなく、勝つた国であるように思われるのであります。これあればこそ西ドイツにおきましては、一九五一年におきましてあの四千八百万の人口でありますけれども、三十五億ドルの輸出をしております。かような私は日本が人心地に落ち、道義も全く地を払う、かような事態に直面しまして、吉田総理は絶対多数党の総裁としまして、而もあなたは功成り名を遂げられた一立派な地位にあられるかたであります。いよいよ独立を迎えようとする日本といたしまして、吉田総理は絶対多数の政党を持たれ、又憲法で保障されたヒトラーにも比すべき独裁権をあなたは持つておる。併しながら今日あなたの政治の根本には道義の精神がない。アデナウアーにしてもチヤーチルにしても道義の精神がある。トルーマンも然りであります。併しあなたの過去三年半の政治を見まして、道徳、道義というものを打出していない。全く自由党の自由経済の唯物主義のかたまりだと思います。こういうことがいろいろ日本国民の道義頽廃に拍車をかけておると思うのでありますが、吉田総理はこういうことをどうお考えになつておりますか。あなたこそ一つ乗り出して一国の宰相として、政治道徳の権化として、国民の士気の頽廃しておるのを振興するというようなお心がまえはないか。若しおありならばどういうようなことをおやりになるつもりか。これを一つ伺いたいと存じます。
  86. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御意見によると自由党が絶対多数を持つておるから道義が頽廃したというようなふうに聞えるのでありますが、私は自由党が絶対多数を取ることによつて政界は安定し、政情が安定する。政情が安定することによつて日本国民の心理が虚脱状態にあつたといたしましても、安定することによつて漸次道義と申しますか、良心的な気持が回復し得るのであつて、若し自由党が安定勢力とならなかつたならば、もつと激しい道義の頽廃を来たしたと私は確信いたします。私は自由党の絶対多数を持つておることが、今日道義頽廃の原因であるとは断じて信じないのであります。
  87. 山田節男

    ○山田節男君 私はこれは少し総理が感違いしておると思う。私はそれがいわゆる道義頽廃になつておるとは申したのではないのであります。私はそういつたような大政党の総裁であり、又総理大臣であらせられまして、殊にあなたが御努力になつた平和条約、或いは安保条約も近く発効するのであります。そこで私は今次の世相を見まして、総理が先頭に立つて精神作興をやるのだとお叫びになれば、独立後の日本はあなたの御希望のように立派な国となるのでありますが、この重要なチャンスを御認識になれば、今まではあなたの政治には道義というものを強く打ち出していない。トルーマンにいたしましても、アデナウアーにいたしましても、それらのステイトメントには道徳政治というものがあります。これがあなたの三年半の政治の中において一番欠けておる点と思います。ですからあなたのような立派なかたがそうして陣頭に立つて頂けば、今日の実に頽廃しておる思想を明朗にできると思うのです。あなたその勇気をお振いになる元気があるかどうかということを私はここにお願い申上げておるのです。
  88. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 若し私がヒトラーであるなら、お話のように私が陣頭に立つて指揮もいたしまして、振興になるのでありましようが、日本国民は私一人によつて振起せられるのではなくして、国民国民的精神によつて振起せられるのである。これは私一人の責任ではなく、諸君も又参議院におかれても、各政党におかれても同じ気持を以て協力せられることによつて初めて国民の精神が振興せられると考えるのであります。(拍手)
  89. 山田節男

    ○山田節男君 時間がございませんからそれ以上御質問申上げませんが、どうぞ総理の地位のウエイトというものが、これは勿論我々協力すべきでありますけれども、総理がそういう点をちよつとでもお出しになれば、そういう空気がおのずから開けるということを私は申上げたいのであります。  次には蒋介石政権と目下条約について折衝なさつておりまするが、過日この本委員会におきまして、岡崎国務相が、日本はこの毛中共政権と外交交渉をする権利を保留するものであるということを言われたがために、一時台湾政権との条約折衝が危機に陥つたように聞いておるのであります。然るに昨二十四日のニッポン・タイムスを見ますると、岡崎国務相が過日本予算委員会で言つたことは、これは一つのホーム・コンサンプシヨンのために言つたのである。即ち本事実は蒋政権を代表とする中華民国のみを認めるのだ、かように蒋政権代表の葉全権も申しておるのであります。政府は、果してこれが事実であるかどうか。話の途中で、日本側のほうでは非公式にこの国民政府の中華民国のみを認めるということはすでに取消されているのか、取消した上でこの条約が成立されるべく交渉しつつあるのかどうか。又外電の報ずるところによりますと、この交渉はアメリカの当局者が介入しているやに聞くのでありますが、そういう事実があるかどうか、この点をお聞きしたい。
  90. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この予算委員会で私の答弁が、中共に対する外交を処理する権利を保留すると申したと、こういうお話でありまするが、恐らくこの予算委員会に出席の諸君は、私がそういうことを言つたことがないことは十分御承知だと思います。全然そういうことはないのであります。外電でそういうふうに伝えられて来たことは私も見ました。早速そういうことはないということを外電の関係の社にも申しておりますし、又台湾に行つている全権のほうにも念のため伝えておきました。そんなことは全然ないことは、もうここで弁明する理由は、必要はないと考えております。  なお台湾と日本の間の只今の交渉にアメリカが介入しているという事実があるかというお話でありまするが、そのような事実は全然ありません。最近倭島アジア局長が現地に参りまして帰つて参りましたその報告によりましても、アメリカの代理公使は全然この問題に関係をいたしておらない、又日本の全権もアメリカの公使に面会したこともまだないというお話であります。
  91. 山田節男

    ○山田節男君 最後にこれはテレビジヨンの問題でありまするが、吉田総理はこのテレビジヨンを早く日本に置け、これは勿論我々も望ましいのでありますが、このテレビジヨンは極めて金のかかるものでありまして、放送いたしますにしても、或いは受像いたしますにつきましても、恐らくはこの施設だけでも東京から福岡まで数百億円の金が要ります。又これを公営にするか、民営にするか。公営にした場合に、これも年々二千円、二千五百円取らなければならん、こういうような金のかかるものを、又全然完成の域に達していないものを一つ早くこれを備えようというお話でありますが、これは日本が只今申上げましたように耐乏生活をいたし、又一面におきましては経済の振興を極力やらなくちやならん、こういうときにテレビジヨンをやるということは、これは先ほど申上げましたように、日本が非常に軽挑浮薄になりまして、何でも新らしいものが欲しいというような、こういうような一つの現われと思うのでありますが、又今日日本にテレビジヨンを設けましても、これは裏長屋に電気蓄音機を置いたようなものであると思うのでありますが、吉田総理はやはりテレビジヨンを一日も早く実現させたいというおつもりなのかどうか。この点をお伺い申上げたいと思います。
  92. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私はテレビジヨンが成るべく早く日本において実現するようにと申したことは曾つてないはずであります。のみならず、逆にテレビジヨンの発明をした人、その人でありましたかちよつと忘れましたが、曾つて私の所へ手紙をよこしてテレビジヨンをやりたいがということでありましたが、併し政府としては予算もなし、又今日国民としてもテレビジヨンのごとき高価なものを各家庭が備えるということはどうであろうか、実現はむずかしいという返事をしたことを記憶しております。それから現存テレビジヨンについては電波監理委員会その他において、日本に持つて来ることがいいか、導入することがいいか悪いかということを研究しております。私としては意見を、今お話のような成るべく早く日本でやるようにということの意見は申さないのみならず、むしろこれに対して反対の行動と言いますか、処置をとつたということを、ここに申しておきます。
  93. 山下義信

    ○山下義信君 一つだけ伺いたいと思います。去る二十一日リッジウエイ総司令官は三新聞代表者の会見におきまして、ソ連は極東、シベリア、樺太、ウラジオなど日本海に面した諸地域に厖大な軍事力の配備を終り、いつ何時でも軍事行動を起し得る態勢を整えておる、国際情勢は緊迫しておる云々というお話をなさつたということであります。国会におきまする自衛力漸増、或いは戰力関連いたしまして憲法の問題、行政協定等の問題がいろいろ論議せられ、慎重に御検討相成つたのでありまするが、肝心の国際情勢の検討につきましては私どうもいささかまだ不十分である、不十分というよりはむしろ本当にそういうことが国会論議されていない点を反省いたすのでございまするが、本日の毎日新聞におきましてもこの点が指摘せられてあつたように思うのでございます。先般私は本委員会におきまして、直接侵略に対する脅威ということについて政府はどういうふうに見ておるかということを木村法務総裁に伺いました。ところが木村法務総裁は、その点は当分の間懸念はないと、極めて何と申しますか、非常に安易なお考え、御観測のようで、御答弁は極めて簡單に相成つたのであります。国民国際情勢の、殊に極東情勢の状況につきましては非常に関心を払つておるのでございますけれども、米国側或いは諸新聞の報道等はしばしば私ども見聞いたすのでございまするが、それを、政府からそれらに対しまして何らかの御説明御発言を承わつたことがないのであります。毎日新聞も政府当局、殊に吉田首相がこの点について国民に対する説明が足りない憾みがあるということを指摘しておるように思われるのでございます。私ども直接侵略の脅威云々という問題が根本であるわけでございまするから、或いはいつも首相がおつしやるように、今政府としては、いろいろ日本としては諸情報を持つておらんということだけで御説明が今日までなかつたのでございまするけれども、こういう点に関しまする国民の関心に対しまして、若干の御説明を得ますれば結構と思うのでありますが、如何でございましようか。
  94. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 米国軍等から朝鮮その他における共産軍の活動等については漸次報告を受け、又説明を受けております。併し御承知の通り日本としては外交機関は持つておらず、お話のような情報収集の機関もないのであります。従つて他から聞いたところを以て説明をするとか、或いは又ソヴィエトその他も現在占領軍の一部になつておるのでありますから、ソヴィエト軍はこういうふうなことをしているとか、或いは朝鮮における状況はどうというようなことは、一に新聞或いは連合軍の情報を聞いておるだけの話で、政府としてこうであるああである、こういう確信を以て正確な情報をお話する地位にないのであります。ただ朝鮮の状態から考えて見ても、又その他アジアにおける共産軍の活動等から考えて見ても、決して安易な考えを持つておりませんが、然らばこういう事実がある、ああいう事実があると言つて事実を以てお話するだけの位置にないのでありますから、いずれ日本独立をいたし、そうして外交機関等が整備した場合には特別情報を収集してお話をいたしたい、こう思います。
  95. 鈴木強平

    鈴木強平君 私はこの際講和発効に伴う国内態勢整備の問題についてお伺いをしたいと思います。予算も二十七日を契機といたしまして一応審議を終るのでありますが、従いまして今後国会講和発効に伴う国内態勢整備、主なるものを申上げまするならば、行政機構の改革とか、労働三法の改廃とか、或いは団規法とか、或いは過度経済力集中排除の法律、或いは独禁法などにつきましもいろいろ改正が行われるのではないかと思いますが、政府は今のままの姿で直ちにさような重要な法律案を国会に迅速にお出しになりますか、お伺いしたいと思います。
  96. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今諸法律の改正法案については準備いたしております。成るべく速かに国会提出いたしたいと考えております。
  97. 鈴木強平

    鈴木強平君 先日来新聞紙上を賑わしました労働法規の問題や、或いは行政機構の問題等出ております。特に行政機構改革の問題につきましては、政府の責任あるかたがたからも御意見を聴取しましたけれども、新聞その他に詳しく出ておりますが、先ほども岡本委員からも指摘されておりましたが、時間がないのでおやめになつたと思つておるのでありますが、政府は講和条約を結ぶ前にどうしても国内態勢を整えなければならんという観点から、先ず第一に国内の行政機構を整備して行く、行政の簡素化、合理化を図る、地方の自治団体或いは各種団体に模範を示したい、さようにすることが新日本建設の第一歩であるということを総理みずからも言われております。漸くにいたしましてこの法案が出て参つたように思うのでございますが、現在伝えられておりますところの一府十一省、この案で御満足であるのでありますか。或いは出先機関の整備の問題、各種委員会その他部局の統合廃止の問題につきましても、伝えられるところのような程度であつては我々は納得行かないと思うのでございますが、新聞紙上ではすでに閣議でも御決定になつたように聞いております。又総理もこの問題については相当お骨折りをしておられるように聞いておりますので、かような案で国会にお出しになるのであるか、お伺いいたしたいと思います。
  98. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 所管大臣の法務総裁から詳細お答えをいたします。
  99. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 国内整備につきましては、先ず行政機構の改革は重要な位置を占めておると政府は考えておるのであります。そこで只今我我の考えておる行政機構についての最終案というものはまだ決定されておりませんが、大体新聞紙上で伝えられておるところとは大差はないのであります。最も我々が重点を置きましたのは、何と申しましても終戰以来いろいろの委員会ができておるのであります。殊に行政的性格を持つた委員会で、果してその責任の所在をどう持つて行くかという不明なものもありますから、でき得る限り行政的性格を持つた委員会はこれを廃止いたしまして、ただ審判的性格を持つた例えば公正取引委員会というようなものはこれを存置いたしたい、こう考えております。なお御承知の通り各省におきましては外郭いわゆる外局というもの、何々庁というものがたくさんあるのでありますが、これはできるだけ整理いたしたいと考えております。その他各部局について相当能率的にこれを廃除、統合して、能率的に運営いたすことに考えておるのであります。併し根本的にあれするのには、どうしても行政事務の整理をやらなければならんと考えております。併しこの行政事務は法律が非常につながつておるのでありますから、それは再検討いたしまして、第二段階にこれを研究して実行に移したいと考えております。
  100. 鈴木強平

    鈴木強平君 時間がないので、私といたしましては総理からのお答えを願いたいと思います。併し簡單で結構であります。これは新聞の輿論ばかりでなく、一般の国民から見ても今度の行政機構の改革に当りましては、非常に不満の声が強い、吉田首相があの通りにこれこそ自分の身命を擲つてもやりたいというようなお考えの行政機構の改革がかような程度に追詰められたゆえんのものは、言うところの選挙が近くであるとか、或いはすでに組閣以来三カ年を経ております。平時なら十年乃至十五年の時間を経ておると思う。従いまして、一般国民におきましても、政府に対する考え方が、信任の程度がはつきりしておらない、そういう点に私はあると思います。従つて我々が要望したところの本筋の通つたような改革案は未だ出ておらない。かような案が若し国会に出るならば、我々みずから真先に反対して潰さなければならない。何故ならば再び吉田内閣が第四次内閣を組織しようと、或いは他の政党が組織しようとも、かような骨筋の通らない行政機構の改革案が出て国会を通つたならば、育ちに次の内閣、他の内閣でこれを変えるようにしなければならないと思います。従つて国家百年の大計をなすべきような行政の改革でなければならんと思つております。政府はここに行政審議会を作つて徐々に改正するように逃げ道を開けておくということは以てのほかであると思います。私はふだんから吉田首相の行政手腕を高く買つております。又国民も高く買つておると思います。何故に、かようなお考え付きはいいのにかかわらず、結果においてはかように歪められたか、こういう点について吉田首相御自身としての御心境があると思いますので、御心境を伺いたいと思います。
  101. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 行政機構改革の政府案が筋が通るか通らないかは、提出した上で以て御判断を願いたいと思います。私は行政改革というのは、絶えず政府としても行政の簡素化を管理しておらなければいかず、又一どきに急激にこしらえ上げるということは無理な点がありますから、何と名前を付けるかまだ考えておりませんが、方法としては委員会を設けて絶えず行政簡素化の線において、政府の行政機構を保持して行くような意味に考えますから委員会を作る。その委員会を作つたからといつて、行政機構の改革を延ばすわけではないのであります。又行政機構の改革は選挙と何ら関係はないのであります。一に戰後の政府機関として成るべく簡素にして、そうして統一ある行政機構に持つて行かなければならんという必要からのみ考えておるのであります。
  102. 鈴木強平

    鈴木強平君 吉田首相は曾つて私たちの部屋にもお見えになつて、何としても講和発効後の日本を若返らして、そうして外国と自由な貿易をするのには、国内の無駄を省いて、そうして身軽にしなくちやならん、これは最も急ぐ問題である、恐らく何人もこれに異論はないと思つております。併しこれを徐々にやつてつてよろしいことであれば、もはや論ずる価値はないと思います。講和発効の機会に新たなる日本再建のために、少しぐらい無理な手も打たなくちやならんと思つております。併しながらかような手が打てないということは、どこかしら国内の行政に納得の行かない点があると思います。先日首相は自由党の大会におきましてやや国民も最近は弛緩しているように思われる節があると論ぜられております。勿論世論調査におきましても、いつも答えのない三〇%、四〇%の人々のおることは、やはり弛緩しておると言われても止むを得ないと思つております。併しながら果して国民の一部のみが弛緩しておるのでありましようか。政府においても、或いは与党においても、官僚においても、弛緩の状態においては私は一、二を論ぜられないと思うのであります。かような立派な考えが歪められるゆえんのものは一体どこにあるか。人心が弛緩しておる、且つ又新らしい新鮮な世論を国民が望んでおると思うのであります。言い換えますならば、現存問題になつておりまするところの解散を一日も早く断行するところに新らしい政治が生まれて来ると思うのでございます。而も四月半ば過ぎれば、批准も終つて条約は発効するように聞いておりますので、この際政府におきましては、はつきりと民心をつかんで行くという観点に立つて、自由党の幹部自身もラジオ討論会においても解散を翼つておる。勿論反対党は全部挙げて解散を翼つております。決議案さえ出しております。日本の国力を、いつもよくなるように受けて立つ、たとえ世論は上らないでも受けて立つ、首相は日本の政治について、解散であろうとも受けて立つという気持で以て、ここに書いてある通りに、あらゆるむずかしい法律案も、端的に、よい気持の上に国会においては論議せられて通過するであろうと思います。特に労働法規の問題のごときは、労働組合側から申しますならば、実力を行使してまでも反対するというようなことを言つておられる。或いは行政機構改革に当りましても、今のような案が出ても必ずしも国会は通るとは言えないと思うのであります。この際非常な決意をして頂きたいと思うのでありまして、与党は参議院にもおりますけれども、参議院においては、重要な法案が通らない場合に、衆議院のように三分の二以上の絶対多数を与党が持つておるのならいざ知らず、そうでない場合におきましては、やはり重要な問題が参議院を通らないことは、言い換えますならば世論がこれを支持していない、かような観点に立ちまして首相の解散に対する心構えをお尋ねしたいと思います。
  103. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 解散は始終反対党諸君から迫られますが、私は施政の方針その他において申上げております通り、ここに一年間は独立後の日本においては国情が安定して、そして幾らか経済回復、国力の回復を考えるべ、政争に一年を費すということはよろしくない、故に解散はいたさないということをしばしば繰返しておりますが、今なおその決意を持つております。
  104. 鈴木強平

    鈴木強平君 総理のさように重要なときに空間をおかないで、そうして十分に国会運営させて行く、非常に御立派な考えであると思うのです。併しながら選ばれておる、選出されております国会議員の考え方は別にあるのではないかと思うのです。而も先日の第六区の選挙におきましても、何故に各党があの通りに争つたか。言い換えますならば、若しこれが任期一ぱい済んだ暁におきましては、選任されておりまする現任の衆参議員といえども……いや、代議士といえども、新たに党から立候補する場合公認になるということを考えますならば、任期一ぱい済んだ場合に誰がなるか非常な紛糾を来たすのではないかと思います。併しながら、事、解散となりますならば、優先的に現任議員が推されることは議会史始まつて以来の常道でございます。ということでありまするならば、恐らく任期の前に与党、野党一致して解散決議をすらしなければならんというような情勢に至るのではないかと思うのであります。さような場合におきまして、国会の最長老でありますところの吉田首相の判断が誤まつておつたということであつては、私はならないと思うのであります。従いまして、情勢の変化によつては解散も止むなしというようなお考えではないかと思うのでありますが、もう一言重ねてお伺いしたいと思います。
  105. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 解散はせずにこのまま参るつもりでおります。
  106. 鈴木強平

    鈴木強平君 去る十九日に参議院におきましては教育施設確保に関する決議案、言い換えまするならば、終戰以来占領軍に占領されました学校施設その他に関するものを未だ占拠されておつて、今度の講和発効に伴う機会においても或いは解除されないのではないか、すでに数件解除されたものが予備隊にこれを編入されておる。誠に教育施設の問題が独立しながらも他国の軍事施設に使われておる、教育が最も反対な方向に歪められるということがあつては甚だ重大問題だと思うのでありますが、参議院が決議いたしましたその後におきまして、如何ようにお取計らいになつておりますか、なお今後のお見通しをお伺いいたしたいと思います。
  107. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 只今そういう問題についていろいろ研究し、又話合いも行なつておりますが、御懸念のようなことは……まだ話合いは結了いたしておりませんから正確にここでこうだと申上げることはまだ早いのでありますが、御懸念のようなことは恐らく全然ないであろう、こう申上げて差支えないと考えております。
  108. 鈴木強平

    鈴木強平君 それでは我々が決議いたしました四十数件の教育施設につきましては全部解除されると解して差支えないのでございますか。
  109. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは只今申したように、まだ話合いを一部いたしておりまするが、日本命体について話合いをまだいたすところまで行つておりません。従いまして、やつて見なければはつきりしたことは申上げられませんが、政府側としましてはそういうものを第一の優先順位に置いております。先方もこれを了解しております。従いまして期間的には多少のズレがあるかも知れません。又極く一、二の例外等がある場合もあり得るかも知れませんが、先ずそういう心配も殆んどないであろうということだけは原則的にはここで申上げられるのであります。
  110. 和田博雄

    委員長和田博雄君) あと五分です。
  111. 鈴木強平

    鈴木強平君 次に治安の問題についてお尋ねしたいと思いますが、最近学校の内部におきましても、学校側と警察側との意見の違いがあり、多くの問題を孕んでおります。併しながら最も大きな問題におきまして、言い換えまするならば予算においても千八百億田以上の予算防衛費に充てておる。そうしていわゆる警察予備隊も、この際施設もそうして人間も殖やされる、而ような観点に立ちまして、一体国内の治安といたしましては国外から来るものは何であるか、国内の治安の相手の国なり……或いは相手の団体は何であるか、論議は種々いたしておりますが、はつきりつかんでおりませんので、一体何を相手としてあのような厖大な予算を組まなければならんのか、はつきりして頂きたいと思います。
  112. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) この内地の治安の問題でありまするが、相当激烈なる出版物が配布されておることは皆様御承知の通りであろうと思いますが、殊に破壊的暴力的な、非常な計画的な文書が祕密に発行されておるの外あります。それと一連の関係した事象がしばしば各所に現われおります。殊に最近に至りましては、各税務署の事務所あたりも多数襲撃されておるしいう事実があります。新聞紙上に現われていない事実も我々は報告を受けておるのであります。それらの事象を総合して考えますると、相当な我々は決意を持つてこれに対処して行かなければならんと、こう考えております。殊に国外からの密航者がありまして、それと連絡をとつて相当に危険な計画をしているという事実もあるのであります。これらに対して十分なる警戒とこれに対する手段を我々も考えなければいかんと思つておるのであります。
  113. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 鈴木君、あなたの持ち時間は二十五分までですから……。
  114. 鈴木強平

    鈴木強平君 私のお尋ねするのは、その相手は何であるか、かように厖大な予算を組み、そしてかように我々が設備を完備するゆえんのものは、相手は何であるか、それをお尋ねしておるわけであります。
  115. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それは外国との連絡を持つて、いわゆる教唆干渉による内地の反乱、擾乱を考える、そういうことを予想してやつておることであります。
  116. 鈴木強平

    鈴木強平君 それはいわゆる世に言うところの極左であるか極右であるか、どちらであるか、なおそれに関してはつきりと言つて頂くほうがいいいと思うのですが、若し世に言うところの何からしい団体があるならば、それを言つて頂いていいと思うのですが。
  117. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) この取締の対象になつておるのは、勿論極右も極左もであります。必ずしもどちらとも言えません。極右もこの対象になつておりますし、極左もこの対象になつております。
  118. 和田博雄

    委員長和田博雄君) あと三分しかありませんから、時間を厳守願います。
  119. 鈴木強平

    鈴木強平君 先日も自由党の左藤委員から共産党の非合法化の問題が論じられたのであります。何か時間がないようで、特に総理が出席しておられないので、話を打切つておられます。一体純真な学生の前で、或いは溌剌たる労働者の前で、共産党が非合法化されないで、共産党らしい行動は新聞紙上ではけしからん或いは云々と、かように言いながら、一面においてこれが堂堂たる合法政党であつては、青年の指導もできなければ、国内の対処もできない。又国民は多額な税金をかけてかような意味におきまするところの防衛費を出すことは肯じないだろうと思う。さような点は、政府ははつきりと意見を述べられ、はつきりと法律化することが必要だろうと思いますが、どうお考えになつておりますか、総理の御見解を承わりたい。
  120. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 共産党非合法化の問題は、政府としてもかねて考えておるところでありまするが、私は理想としては、国民の自覚によつて、例えばイギリスにしても、アメリカにしても、国民の自覚によつて、共産党の議員数というものは非常に少く、現に減りつつあるのであります。国民の白覚が先ず第一であり、国民が共産党の、或いは共産主義の恐るべきことを十分自覚するようにいたして、そうして法律を用いて非合法化というようなことにならずに、国民自身の自覚によつてこの問題が解決できたら結構であると、これが理想であると思うのであります。
  121. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 特に総理大臣にお尋ねいたしたいことは、先日リッジウエイ総司令官が三新聞の代表者に声明されたことと、池田大蔵大臣が衆参両院を通じて繰返して言われたことに対して、重大な齟齬があるのであります。それは御承知の通り、進駐軍が駐留軍となつて行く場合の移転建築諸費は、リッジウエイ総司令官は日本政府にはびた一文も厄介はかけないという意見でありますのに対して、池田大蔵大臣は現在の安全保障諸費五百六十億中三百何億はこれらに要するのだと言つて、全く相反することをこの議会においてしばしば繰返されております。この点は特に先日の本委員会におきまして私が池田大蔵大臣に二度も重ねましたところ、池田大蔵大臣の御意見は、間違いないと二度も重ねて言われたのでありますから、もう取消されることはないと思うのであります。そこで総理大臣にお尋ねいたしたいのは、若しリッジウエイ総司令官の言われるごとく、進駐軍が駐留軍となつて移転諸費を要しないというようなことになつた場合には、現在の安全保障諸費の池田大蔵大臣説明のこれらに要する三百幾億のものは当然要らないことになるのであるかどうか、この点は当時の責任者として恐らくや総理大臣関係御当局と折衝された基本的な問題であろうと思いまするが故に、この際総理大臣の御見解を承わつておきたい。
  122. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私はリッジウエイ総司令官の言われたことについては承知いたしておりません。詳細は大蔵大臣からお答えいたします。
  123. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) リツジウエイ総司令官と新聞社の幹部との会見の様子は、私もあなたの質問がありまして後に見まして、新聞によつて同じとは言えませんが、一番詳しく載つておつた或る新聞は、自分としては駐留軍の移転について日本のほうに負担をかけないことを希望すると、而してこれはアメリカの国会予算をきめることだというふうに言われておることを私は見たのであります。従いましてこれは、英語を使つて恐縮でございまするが、リッジウエイ将軍の個人的希望、パーソナルデザイアと私は考えておるのであります。従いまして私は、予算を編成いたしますときには、岩木君御承知の通りに、こういう内容予算を組みますということは、最高司令官、スキヤップの承認を得ておるのであります。私は今まで説明しておりますように、駐留軍を六大都市その他の都市から出てもらう場合におきまして、賞金その他を建てる必要があることを考えまして予算を組んでおるのであります。従いまして、アメリカの国会で若しそういう移動に伴う経費を全部向うがリッジウエイ将軍の願つておられるように議決して出して下さるならば、何を好んで我々出しましようか。そこではつきり申上げまするが、私はただ周辺に移動するための経費を見込んで出しておるのであります。
  124. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 そうしますと、リッジウエイ将軍の個人的御見解にしても、若し要らないという工合に、アメリカがそういう議会の決定になりますれば、それでは今回の予算の五百六十倍中大蔵大臣の指摘する三百幾億のものは要らないということに解釈されると思うのであります。そこで私は次にお尋ねいたしたいのは、かような不確定な要るであろうと想定されることを前提として、貴重な国民のこの血税を、而も厖大に盛つたという根拠については、甚だ予算編成上の責任重大であると、又日本防衛財政の土に将来性に鑑みましても、かような財政の盛り方というものは、国民に与える不安、疑惑というものは私は深刻であろうと思うのでありますが、一体これは大蔵大臣はどういう考えで、そういう思うというような想定でかかる厖大なる予算を編成をされたか、この辺を承わつておきたい。
  125. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) あなたは、アメリカの国会で移駐に伴う経費が出ることを確実だという前提の下でお話のようでございまするが、私が、予算を作りそうしてスキャップの承認を得るときには、これが向うも必要であるというので承認いたしておるのであります。私は只今のところ、駐留に伴う経費は先般もお話申上げましたように、ああいう内容で必要であると考えて御審議つておるのであります。
  126. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 これは必要であると考えられても、大蔵大臣財政の盛り方の構造と、リッジウエイ将軍との、個人的見解にしても重大な齟齬があつて、これは政治的にも決して等閑に付すべき問題ではないと思いますが、今この時間は……この問題は又別の機会に譲ることにいたします。  それから次にお尋ねいたしたいのは、総理大臣にお尋ねいたしたいのは、自衛力の漸増について昨日及び本日に亘つて警察予備隊海上保安隊等の数字的なことを承わりましたが、私たちがこの日本安全保障条約を結び、日本自衛力増強しようということは、当面するこうした内容の技術的のことではないのでありまして、どうして日本のこの島を守るかということについての自衛力漸増計画は、いやしくも或いは三年計画或いは五カ年計画等の相当基礎に立つたものでなくてはいかん。又この基礎がない限り、アメリカ駐留軍の漸減、撤退ということは望まれないのであつて、何らこれらの計画なくして自衛力の漸増に対する本年度予算が将来どのような形でどう変るのかということは、国民としては重大な問題として注目しておるわけであります。吉田総理大臣は、日本自衛力漸増は一体何カ年計画くらいでどういう構造を考えられておるかということを承わりたいのが第一点と、もう一つは、今日警察予備隊その他を見ましても、いわゆる人海作戦……言葉が悪ければ取消しますが、労務軍隊或いは土持ち軍隊などのような自衛力の地上部隊編制方針に重点が置かれておる。日本のこの島を守り日本の空を守るということが自衛力漸増自衛力増大計画の規模でなくてはいかん。従つて自衛力漸増計画は空海軍……軍という言葉を使いますと又総理大臣は御警戒なさるか知れませんが、いわゆる空軍勢力、海軍勢力というものが漸増計画の基本的構造でなくてはならんと思うのでありますが、こうしたことについて総理大臣の特に御見解を承わりたい。
  127. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今日軍備等は非常に巨額の金を要するものであり、各国の例を見ましても予算は厖大なる金額に上つております。日本が今回敗戦後の日本として、国力の消耗した日本として、何カ年計画とかいうようなことを立てるような、国力において余力のないことは御同意であろうと思うのであります。今日は成るべく国力を消耗せず、国力を蓄積して、そうして日本の自立を図るべきときであるのであります。故に安全保障条約というようなものを結んで、理想を申せば国力を以てみずから独立安全を守るということができれば結構でありますが、これができない現在の状況でありますから、この際財政に余裕があればとにかく、今の国力を以て何カ年計画を立てる、或いはイギリスその他におけるがごとく何カ年計画を立ててやるというような計算は立ちにくいはずでございます。今日日本としては成るべく国費を消耗せずして日本の安全を図るという地位にあるのであります。今日然らば漸増計画は何かと言えば、差当りのところ十一万に警察予備隊増強する、その程度にとどまつて、先は先と言わざるを得ないのでありますから、その先は即ち安全保障条約によつて日本独立安全を保護する、この計画以外に立てられないのであります。然らば米国軍は永久に日本におるか。日本におりたくないのであります。成るべく早く引揚げたいという希望であり、又日本がみずから独立を守る域に速かに達することを希望して、日本防衛力の漸増を希望し、又米国軍の駐留の漸減を希望しているわけであります。
  128. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 その総理大臣の御指摘なさる、米軍は成るべくおりたくないという、早く引揚げたいということには、即アメリカ軍の漸減に対して日本自衛力が漸増という、こういう工合に噛み合わさないと、日本の安全保障或いは日本防衛というものは維持されないのだ。そこで差当り警察予備隊その他こうした方法をとるということについては私はもつと基本的な日本防衛組織というものは、軍隊に……いわゆる警察予備隊に要る金をもう少し半分に減らしても海空軍の増強ということこそ防衛の本質的な問題ではないか、かように思うのであります。従つてアメリカ軍が早く引揚げたい、おりたくないということは、即日本自衛力漸増計画が成り立たないと、いつまでもおりたくないと言われるアメリカ軍が、それじやいつまでも日本にいるという印象は、非常に日本防衛精神の振起の上に私は問題であろうと思うのでありますが、こうしたことにつきまして重ねて承わりたい。
  129. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 日本の国力がますます減ると考えればそうい考えもできましようが、私は日本国民として、日本の国力はますます将来殖える、国力は増進するという確信を持つていると思います。故に防衛力の漸増計画は立ちましようが、現在においては今申す通り国力の培養ということが肝腎でありますから、この線で参ります。
  130. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 多少まだお聞きしたい点がありますが、次に移りたいと思います。政府は、国連軍司令官とでありますか、国連各国とでありますか、日本に駐留する、或いは駐屯することでありますかどうか知りませんが、こうしたことを近く取極めようということを、先般来の委員会岡崎国務大臣も言われているのでありますが、一体これはどういう条約を根拠として国連軍の日本駐軍に対する条約を結ぼうとされているのでありますか。又それは日本の義務のどういう義務を意味するものであるか。国連が日本防衛するということは、仮に日米安全保障条約というものと、更にその上に被さるもの、ダブるものとは申しませんが、被さるようなものと解釈を受けて……どうもこの点が明瞭でない。更に国連軍との駐屯条約ができたときに、これらの財政措置というものは、日本国民の権利義務及び財政措置というものは、又安全保障条約による今回の行政協定と別箇に財政措置が必要とされるのであるか、ちよつとこの辺を承わつておきたい。
  131. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは平和条約及び安全保障条約承認の際に、同時に認められました日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約の書名に際し吉田内閣総理大臣とアチソン国務長官との間に交換された公文というものかあります。その中にアチソン国務長官からの手紙と吉田総理大臣の返書とがあります。それによりますと、途中を略しますが、「一又は二以上の加盟国が」——これは国連の加盟であります。日本国内及びその附近において軍隊を支持することを日本国が許し且つ容易にすることを確認いたしております。そのときに使用するものは施設及び役務となつておりまして、又その費用につきましては、日本の施設及び役務の使用に伴う費用は現在通り又は日本国と当該国際連合加盟国との間で別に合意される通りに負担されることとします、こうなつております。この交換公文に基きまして、今後国連軍との間にどういう取極めをいたすかを話合うつもりでおります。
  132. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 どういう取極めをいたすかを話合うというだけのことは、もう先般来三度に亘つて承わつておるのであります。私はその交換公文によつて仮にそういう約束がありましても、その国連軍とこうした条約を結ぶにつきましては、そうした簡單なことで更に日本の領土にアメリカ軍以外のいろいろの軍隊日本に駐屯する、これが日本の国権、日本の主権、或いは権利義務、その他財政上に及ぼすいろいろの波及した問題を考えますと、ただ交換公文のみでかような条約を結ぶという根拠が果して憲法上成立つのかどうか。又これによつて財政負担というものは、又日本国民の権利義務というものはどのように制約され、或いは拘束されるようなことになるのか。やはりその見通しを一応承わつておきたいと思うのであります。
  133. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは先ほど本院の本会議におきまして決議案が上程されたときの、理由書にも書いてあります通り条約というものは單にトリーテイという名前のものばかりではなくて、協定もあれば、交換公文もあり、すべてのものが条約……国際間の取極めは条約であると、こういう理由書をお書きになつたと思います。この交換公文条約の一部として国会承認を得たものでありまして、条約と同様の効果を持つておるものであります。又平和条約におきましてもその二条において同様の規定があります。元来国連は世界平和維持のために努力しておるのでありまして、そうして各国共に犠牲を払つて、その貴重なる平和を維持しようと努力しておるのでありまして、日本政府といたしましても当然これにその能う範囲内の協力をいたすことになるのは当り前と考えております。併しながら国連軍は今おつしやるように日本防衛のために駐屯するのではないのでありまするから、アメリカの安全保障条約に基く軍隊の駐屯とはおのずから差別がありまして、主としてフアシリテイと称せられる便益を供与することになるのであります。又費用も今までのところは国連軍の活動に要するものは全部ドル払いとなつておりますが、今後も別の協定がない限りはそうなるということは、只今読上げました交換公文に明らかであります。従いまして国民に直接の負担のあるようなことはないと考えております。
  134. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 その場合にアメリカ駐屯軍が、又国連軍としての二枚羽織を着る。そういつた場合に国連警察軍として外地行動をする。日本の駐屯地以外の外地行動、朝鮮、或いはビルマといつたような外地行動をするといつたような場合には、一体この日本安全保障条約行政協定というものはどのような義務、拘束力があるのか。この辺の明確性を持たないと都合のよいときには国連軍、都合の悪いときには駐屯軍、駐留軍と、こうした結果、日本の権利義務、或いは財政的支出の面におきましても極めて混淆する虞れがあると思いますが、この辺の明快なる措置がとれますかどうか。又こうしたことは今交換公文国会の了承を得ておると言われますが、国連憲章の第二条によるあらゆる協力につきましては、あらゆる協力の意思を表示したのであつて、この内容条約に対することを認めたのではないので、従つてこれらは当然国会に付議せなくちやならんと思うのでありますが、如何でありますか、お伺いいたしたいと思います。
  135. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 只今都合のいいときは駐屯軍、都合の悪いときは国連軍でありましたか、その逆でございましたか、おつしやいましたが、我我はたびたび繰返しますように、アメリカ側でも日本側でも、この協定なり条約なりは両国の信頼と、そうして好意に基かなければ運用されないものであるということを双方で確認しておるのでありまして、都合のいいときにはこうやるというような、そういうやり方を考えるべきものでないし、又そういうことは決してあり得ないと信じております。現に現在でも、日本占領軍として来ておりまする軍隊が、同時に国連軍として活躍しておりまするが、その間の計算は明確に逢つておりまして、国連軍としての活動に要する費用は全部別払いになつております。さようなことでありまするから、この点は何ら御心配はないと考えております。
  136. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 岩木君もうあと三分ですから……。
  137. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 ああ、そうですか、それではちよつと…、国連加入になりますと、自然安全保障条約は廃棄になると思うのでありますが、この点を承わりたいのが一点と、それは岡崎国務大臣でも結構ですが、一緒に総理大臣にお聞きいたしたいことは、昭和二十四年八月に吉田内閣は石炭国管を解いて、いわゆる自由制度にいたしたのであります。その当時の閣僚は現在の吉田内閣におられませんから、吉田首相がこの事情を一番詳しく……又当時の責任者として、このときに、司会部のマッカーサー元帥及びマーカット少将等との会談のときに、将来石炭価格が上らないように努力する、上つたならば、上るような結果が起つたならば再び統制をして、或いは電力の問題、日本の基礎産業の問題について善処する、こういうことが当時の約束にあつたと認められるのであります。この当時のそういつたような司令部の見解の記録も持ち合せておるのでありますが、ところが今日又吉田内閣は、これは石炭の問題と違いますが、電力の九分割を元の一本に直そうとしておる。これと同じような問題であつて、石炭が自由になつてから当時の炭価トン当り三千六、七百円のものが今日七千七、八百円にも高騰しておる、倍近くにも高騰しておるという事態にある今日一般の日本の生産工場の、或いは家庭生活の、或いは電力の問題にいたしましても、日本の今日のインフレなり、高物価、或いは生産コストの問題に対して極めて重大なる問題を投じておるのであります。そこで吉田内閣はその当時、石炭の価格が上るような場合になつたならば統制をするということを司令部に約束されておると思うのでありますが、今日石炭がかような状態にあり、非常に石炭価格が上つたために、例えば全国長者番付でも二十番中十四人がことごとく石炭業者である、こういう事態は如何に石炭の価格が異常の高騰によつて、又利益も得られ、これが、日本経済に生ずる影響というものは甚大なるものがあるのであります。こうした状態に鑑みまして、吉田総理大臣はこの石炭の統制の問題は……自由の問題は将来どう対処せんといたされておるのか、この辺を承わつておきたいと思います。
  138. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話の通りに、石炭の統制撤廃をいたします場合に、若し将来石炭が急激に価格が騰貴いたしまして、そうして統制の必要がある場合においては、統制をするという話合はあつたと聞いております。併しその後の石炭の上昇状況はしかく認めておりますように、統制を再びしなければならんほどの上り方ではなかつたのであります。三年前の問題から比べますると今では相当上つておりますが、これは石炭ばかりでございません。ほかのものも上つておるのであります。政府は只今石炭を統制しようという気持は持つておりません。最近石炭業者の収益の状況がよくなりましたことは石炭が相当増産された、一人当りの一カ月の出炭量も昔に比べまして倍以上になつたところがある。そういうような関係と産業の殷賑によりまして、需要が相当上つて来たことにあるのであります。私は石炭の価格は今非常に高過ぎるということは考えていないのであります。  なお、今回電力開発会社を設けまして、又昔の自発を再現しようとしているというお言葉でございまするが、そういう考えは政府は持つておりません。
  139. 東隆

    ○東隆君 私は行政機構の改革と地方制度のことについてお聞きをするつもりでありましたが、先ほど民主クラブの鈴木さんから行政機構の改革についての質問がありました。それでその問題は簡單にしますが、ただ一点実は鈴木氏に対するお答えの中に、何か委員会のようなものを作られて、そうして行政機構の改革を進めるのだ、こういうお話があつたわけであります。総理の一月二十三日の演説には実は「行政機構関係について申述べますが、政府は講和の成立を機として、現行の複雑厖大な行政機構に根本的検討を加え、極力行政の簡素合理化と共に国費の縮減を行い、簡素且つ能率的な行政機構に改めるがため、国家行政組織法及び各省設置法等の改正法律案を本国会に提案して協賛を得る考えでございます。」とこうあるのでありまして、これは私はいろいろ先ほど鈴木君からもお話がありましたが、行政改革を通していろいろ複雑な問題ができて参つたので、総理大臣は考え方を変更されたのでないか。そして先ほど法務総裁は内閣にあるいろいろな庁であるとか、或いは委員会を整理すると、こういうようなことも言われておる場合に、新たに又そういう委員会をこしらえて、慎重に而もゆつくりとおやりになるのだ、こういうふうに聴取れたのであります。それでこの辺に大分いろいろ事情があると思いますのでその点を伺います。
  140. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは先ほど申した通り何らの事情はないのであります。行政簡素化は飽くまでも徹底してやりたいと思います。これは絶えず徹底して考えて参らないと、ややともすれば複雑化するから行政機構政革を一応いたした後に、更に又絶えず行政の簡素化を図る、若しくは複雑化することを防ぐために委員会を設けて監視する、こういう構想であります。
  141. 東隆

    ○東隆君 行政機構改革についてはこの程度にして、地方制度の改革についてお伺いをいたしますが、巷間自治法の改正のことが盛んに言われておるのであります。地方自治法はこれは民主主義の理念の下に勿論作り上げられている法律だ、こういうふうに考えておりますが、私は民主主義の基本的なものとして、而も大衆的で民主的な団体には、凡そ四つの民主主義的な原則が働いておる、こう考えておるのであります。甚だ廻りくどいようなことを言うようでありますが、第一にそれはワンマン・ワンボート、一人一票で以て市長や役員を選挙するというこの一つの選挙を通してやつて行くというこの原則は、これは私は民主主義の原則を貫く上において非常に大切なことだと、こう考えるのであります。その次には、構成員が発議権を持つているということ、イニシアテイーブを持つているということ、これも重要なことと思います。その次には私はリコールという、首切りの権利を構成員が持つておらんければ、これは民主主義の団体でない。こう考えておる。もう一つ民主主義の団体は、これは利潤の追求をやらない。こういう私は四つの原則が民主主義の団体、而も大衆的な団体、そのうちには民主主義の憲法の下における自治体も、それから日本の国でも、私はこの今申上げた四つの原則というものは、完全に当てはまると思います。同時にこれは労働組合にも協同組合にも完全に当てはまるものだと、こう考えておるのですが、これはお認めになりますかどうか、お伺いをいたします。
  142. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 岡野国務大臣からお答えいたします。
  143. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。只今の四つの原則はその通りでございます。同時に私たちは独立後の日本に対しまして行政の簡素化をして、本当に民主主義の地方自治行政をやつて行きたいと思いまして、近いうちに地方自治法の改正を提案いたして御審議を願いたいと思います。それにはそういうふうな原則が十分尊重してございますことを御承知願いたいと思います。
  144. 東隆

    ○東隆君 今の四つの原則は、私は先ほど申上げましたように自治体にも協同組合にも、それから労働組合にも働くのだ、こういうことを申したわけでありますが、英国のシドニイ・ウエツブという人は、協同組合は任意加入の自治体である、自治体は強制加入の協同組合である。こういうことを言つておるのであります。勿論先ほど申上げましたような四つの原則が、完全にその中に働いているわけでありますが、そのことについて私は、非常にこれは民主主義の憲法の下における日本の自治体法を初めとして、民主主義的なあらゆる団体に非常に大切なことだとこう考えておるわけでありますが、その考え方について御意見がございましたら承わります。
  145. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) 大体お説の通り了承しております。
  146. 東隆

    ○東隆君 巷間に伝えられております自治体法の改正の中に、東京都の区長は現在選挙できめられておりますが、この区長を公選制をやめてそうして任命をする。こういうことが伝えられておりますが、これは私が先ほど申上げました民主主義の原則から言つて、非常に間違つた昔の官治制度に帰る一歩であると、こういうふうに考えますが、如何ようにお考えになりますか。
  147. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) 自治法の改正案につきまして区長を任命制ということにしたいという腹案を以て考えております。併しながら私どもの考えといたしましてはこれはお説と甚だ残念でございますが違つておりまして、決して民主主義の原則を破つたものではない。これは一応区議会の承認を得まして、そうして知事が任命するということにしておりますわけであります。
  148. 東隆

    ○東隆君 私は非常にその間の問題についていろいろなことを考えさせられるのでありますが、賀茂川の水と山法師は朕の意にかなわぬというようなことをさるやんごとなき人が言つておるのでありますが、選挙はこれは俗に水物だと、こういうようなことをよく言うのであります。それで何かこれは知事選挙で思う通りに行かなかつたり、或いは選挙のなんかでもつて思う通りに行かない、こういうようなことがたびたび現われて参ります。そういう関係で私はまあ手つとり早いところで一つ一角を崩して、そうして民主主義の原則を一つ壊して昔の官僚政治の、官治政治の一角を取戻そうとしているところの運動があるのではないか、こういうような気持が私はされてならないのであります。そういうような私の意見はこれは間違つておるかどうか伺います。
  149. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。区長を任命制にするのは、今後官治政治をやつて行く第一歩じやないかというような御質問だと存じますが、私はそう考えませんで、今回の区長の任命ということにつきましては、いずれ自治法を出しましたときに十分その理由を詳しく申上げまして、お時間がございませんでしようから私は簡單に申上げます。そういう意思でやつているのではなくて、区長任命ということにつきましては、あれは都というものが一団となつてそうしてやつて行く、同時に今区における役人というものは殆んど全部が都の役人でございまして、区長と約二百人ぐらいな区の役人がついているだけでございまして、そうして事毎に都と区との間に紛争が起きて過去二年間ぐらいやかましい問題になつておるのでございます。でございまするから私といたしましてはあれはいわゆる直接選挙を間接選挙の区長にすると、こういう意味でやつたわけでございます。これは詳しいことはいずれ自治法を出しまして、御質問を受けまして御納得行くような御答弁を申上げたいと存じます。
  150. 東隆

    ○東隆君 私は岡野さんとは大分観察を異にしておりますが、この次に私は都道府県知事の任命、こういうような問題もこれは起きて来る可能性があるのではないか、こう思いますので実は非常に心配をしておるわけで、その点についてはつきりと都道府県知事は公選制で行くのだとこういうことを言い切れるかどうか。これは総理大臣にお聞きをするのであります。
  151. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 岡野国務大臣からお答えいたします。
  152. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) 都道府県知事の官選制が出るんではないか、それが出ないということをはつきり言えというような御質問でございますか。
  153. 東隆

    ○東隆君 そうです。
  154. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) 御承知の通りに……。
  155. 東隆

    ○東隆君 総理大臣が……。
  156. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) 総理も私も同じ意見でございます。若しなんでございましたら私のほうが詳しうございますから……。只今のところではそういうことを考えておりません。
  157. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はこれまで長い時日を費してこの予算案をいろいろな角度から検討して参りましたが、その検討の結果、到達いたしました結論に基いて総括的な質問をいたしたいと思うのです。その質問の要点は三つなんであります。我々のこの予算審議を通じて到達した結論として結局この予算案は、又この予算案の担つている日本経済の再建計画、講和後の日本経済の自立計画というものを、或いは又講和条約に基く日本の安全保障、或いは独立、こういうものは私は三つの幻想の上に立つていると思うのです。或いは又希望的観測であると言つてもいいと思うのです。そこでその三つの幻想乃至は希望的観測について総理はどういうふうに考えられるか。それは現実のものであるか幻想であるか。私は幻想と考えますが、若しこれが幻想であれば大変なことになると思うのです。その一つは、この平和条約、或いはそれに基く安全保障条約、或いは行政協定、それからできます予備作業、こういうものを通じて一体日本の安全は保障されるかどうか、或いは又日本独立というものは確保されるのか、日本の安全が保障され、或いは日本独立が確保できると考えられていることは幻想ではないか。いろいろ行政協定或いは戰力問題等について審議をいたしましたが、結局我々の到達した結論はそうなんです。幻想ではないか、例えば安全保障といつても、朝鮮のような形において安全保障されたのではたまらないのであります。今度の行政協定、或いは安全保障条約を通じて我々が考えられることは、一方の陣営にはつきりと入つて、他方の陣営を敵とするという形において、そうして日本の安全は本当に保障できるかどうか。それからこの行政協定等を通じて日本独立というものは本当に確保できるのかどうか、これは幻想ではないか、その点総理に先ずお伺いしたい。
  158. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 確保できるという確信を持つて安全保障条約を作つたのであります。
  159. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 前の対日理事会のイギリスの代表のマクマホン・ボール氏は、日本の講和というものは、これは單に日本とその他の国の講和だけではない。結局問題は米ソの問題である。日本の講和は米ソの問題だ、従つて日本の講和を考えるときには米ソの対立を如何にして緩和するか、そういう方向において考えるべきだ。若し米ソの対立を深めるという形において講和をやつたらば、それは本当の日本の安全を保障する講和ではありませんし、今度の平和条約、或いは安全保障条約、それに基いて日本を軍事基地化する、或いは又再軍備への傾向が見られる、こういう形を通じて米ソの対立が深まる方向において日本の講和というものは結ばれて来るのではないか、私はそう思うのであります。その点日本の安全というものは朝鮮のような形において国連の警察軍が出動して日本が戰場になる、そういう形において安全が保障されるという、そういう形で総理日本の安全保障というものをお考えかどうか。
  160. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 日本の安全保障は、日米安全保障条約の線で考えております。
  161. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは第二に伺います。第二の幻想についてお伺いいたします。その前に私は総理に要求したいことがあるのですが、十四日のこの委員会におきまして、総理は外資の問題につきまして、私に二回も事実と反する答弁をされております。即ち一回目は、「昨日マーカット少将によつて確かめたところによりますと、新聞に出たマーカット少将の声明でありますか何かは、全く少将のあずかり知らざるところであるそうであります。」こういうふうに一回目は答弁されております。第二回目は、「私はマーケット少将に確かめたところが、あの声明は自分のあずかり知らざるところであるとはつきり申しておりました。」こういうふうにいわゆるそのマーケット声明について、私が総理質問したときに御答弁なすつておる。ところがその後において池田大蔵大臣が、マーケット少将に会われて、そうしてこの外資導入について三つの方針といいますか、指針というものを示された、その指針を見ると、マーケット少将があの新聞に声明された趣旨と同じであります。あれを要約したものであります。それならばマーケット少将は全然あずかり知らない、こういうふうに私に御答弁されたことは、私は事実と違つた答弁をされておると思うのです。それで私は、あの場合に、マーカット少将があずかり知らないというので、あずかり知らないものを質問するわけに行きませんので、私は質問しなかつた。これは事実に反する御答弁をなさつておるものでありますから、私は取消されるか、訂正されるかして頂きたいと思います。
  162. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は訂正する必要を考えません。
  163. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは、事実に反する御答弁をなさつてもよろしいのでございますか。それは事実がはつきりしておるのでございます。
  164. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私はこの問題につきまして、先の委員会でも申上げましたが、その後マーカット氏とも会いまして、総理があずかり知らざるところだと、こう言われたというのは、マーカットの声明に対して新聞が如何に書こうともあずかり知らず、こういう意味総理はお答えになつた、こう私がマーカツトにも言いましたら、それはその通りだろうと言いましたから、総理も取消さず、私はマーカットと総理の両方の意向を知つておるので、新聞に如何に書こうともあずかり知らない、こういうことだと思います。(「日本語に反する」と呼ぶ者あり)
  165. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そんな不誠意な御答弁では……。あれは渉外局の発表であります。渉外局の発表を否定されるようなことを言われて、而もそれがそうでなかつたわけなんでございますが、そうですね。事実と違つた御答弁をされて、それがわかつたら取消したつていいだろうと思うのですが、事実に反した答弁をされてもかまわないのだと、総理はそう考えていると私は了承して、そういうふうに考えて、私は質問を続けます。  第二の幻想は、講和後において日本にこの講和条約との交換条件といいますか、新聞にはそういうふうに出ておりますけれども、やはり相当のアメリカの外資或いは援助、こういうものがなければ、日本国民生活水準を下げないで日本経済を再建することは困難である。そういうふうに私は考えておつたろうと思うのです。朝鮮戰争が、これが仮に終つたあとでも、アメリカは日本に相当の援助を与えなければならない。そうしなければ日本の自立を、国民生活水準を下げないでやるということは非常に困難である。相当外資というものを期待して、そうして講和後の日本の経済の自立というものを考えていたんじやないかと思うのです。それが幻想に終つた。私はそんなに簡單に、アメリカの最近の経済等を考えれば、そんなに簡單に外資というものは入つて来ない。そこでこれは余り過大に外資というものを期待したその幻想が裏切られたんじやないか。私はそう思うのですが、それで、日本の経済はそういう外資を当てにしないで、そうして国民生活水準を下げないで、今後自立できるとお考えになつておりますかどうか。
  166. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これはしばしば説明いたしておりますが、今の予算は外資に関係なくでき上つておるものであります。而して外資は、私は必ずアメリカが日本の経済独立、自立を助けるという考えがあり、それを希望している以上は、必ずいずれかの日に参ると思います。
  167. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はまあそれが幻想に終らなければ幸いだと思うのです。それで外資が来なければ、どうしても私は講和後の日本の経済を考える場合、防衛費の大きな負担、電源開発のための大きな資本投資等々、いろいろ考えますと、国民生活水準が下がらないで、そうしてこういう負担を私はし得ないと思うのであります。幻想でなければ幸いだと思うんですが、私はどうも幻想の上に立つて日本経済の再建を考えている。この幻想が若しか幻想で、実現しない場合は、これは大変なことになつて来ると思うんですが、時間がありませんから次の問題に移りたいと思うんです。  第三の幻想は、東南アジア開発によつて講和後の日本経済の自立ができるとお考えになつているんではないかということであります。総理はサンフランシスコの講和調印の当時においても、中国の経済、中国との貿易というものを、一般に余りに過大評価している、こう言われておりますが、私は総理は逆に東南アジア開発というものを過大評価しているんじやないかと思う。前に私のほうの党の千葉信君が本会議において総理にこの中共貿易について質問した時、総理は戰前の日本と中国との貿易は大体五%程度であつて、大したものじやなかつたということを答弁されておる。一体何の数字によつてそういう御答弁をなすつたか、私はその点お伺いいたしたいのです。
  168. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 戰前の統計によつて私はお答えしたのであります。
  169. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どの統計かわかりませんが、常識から言つて、戰前においては中国との輸出入貿易は、大体輸出入それぞれ四〇%或いは三七%ぐらい占めていた。東南アジアの貿易は戰前においては大体一五%程度です。むしろ中国との……中国といいましても満州或いは関東州も入つておるのであります。そこのほうのウエイトが大きいのであります。東南アジアのほうのウエイトは小さい、戰前には……。それをですね、どういう事実、どういう根拠に基くのですか、これは私は事実に反したそういう御答弁をなすつておると思う。そういう根拠がなくて、そうして千葉君の質問に五%程度だから大したことはないと、過大評価だと、こういうふうに言われているんです。その点如何ですか。
  170. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) あなたの言われるのは満州をこめての中国貿易でありましようが、満州においては日本の投資もあるから、二〇何%以上の統計が出ておるのであります。中国だけの計算ならばだ、六%乃至七%に及ばないのであります。
  171. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはですね、まあ常識として現在では満州を含めて考えるのが妥当だと思うのですが、総理の経済学においては(笑声)又特別らしいですから……。一応中国貿易はまあ余り当てにしないと仮にしても、そんなら東南アジア開発によつて日本の経済の自立、これが達成できるかどうか、これが私は重要な問題だと思うのです。東南アジア開発は大体まあ今日まで専門家の言われるところでは、アメリカも日本も一応採算というものを、コンマーシャルベースでは駄目だ、採算というものを一応無視してやらなければ開発は困難だと言われている。ところが今要請されているのはコンマーシヤルベースなんです。それを東南アジア開発とうものは一体どういうのか。これは日本の講和後の自立経済の運命を賭けた問題です。中国との貿易を一応諦め、断念して、そうして東南アジア開発に日本の講和後の経済の自立の運命を賭けているのです。その東南アジア開発がうまく行かないとなつたならばこれは大きな問題だと思うのです。そこで東南アジア開発はいろいろ新聞に報道され、楽観的な報道、或いは悲観的な報道、いろいろ伝えられますが、総理は中国との貿易を犠牲にして、そうして東南アジア開発によつて日本の経済の自立が一体達成できるとお考えかどうか、この点お伺いいたします。
  172. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) あなたの幻想と私の幻想とはよほど違つております。私の申すのは、終戰後今日まで、中国なくして日本の経済はできておつたから、故に中国によらねば日本の経済は立たんという幻想は持たないのであります。(笑声)
  173. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、総理はサンフランシスコ会議において中国との経済を過大評価してはいけない、過大評価するものでないということを言われたことは非常に軽卒だと思いますし、当時世論もそういう批評をした向きもあつたのであります。今後日本経済の自立を考える場合、実際問題として今の原材料の問題をお考えになつても、しばしば各委員が御指摘されているところでありますけれども、わざわざ安いところの、アジアのすぐ近くに安い原材料があるのであります。それを遮断して、その貿易を遮断して、高い東南アジアに貿易を求める。それもうまく行けばいいのです。うまく行けばいいのですけれども、専門家の間では、アメリカも日本も一応採算を無視してやらなければ今開発はできないのに、コンマーシャルベースによつて開発を、要求されていてはこの開発はうまく行かないのじやないかと思うのであります。で総理の幻想は私の幻想と違うとまあ言われますが、それでは総理の幻想も幻想で終らなければ幸いであります。私は本当に講和後の日本の経済を心配するからそう言つているのでありまして、これまでの予算審議を通じていろいろな角度から考えた結果、どうも今までの新聞、雑誌、ラジオその他の報道は余りに講和後の日本の経済を楽観し過ぎている、希望的観測に基き過ぎている、幻想に基き過ぎている。もつとこの幻想をなくして、そうして本当に地についた考え方をしてやつて行かなければいけないのではないか、こういう観点から質問をしているのであります。東南アジア開発がうまく行かなければ一体どうするか。これが今後の日本の自立経済の運命を賭けた問題です。その場合アメリカから外資でも援助を受けなければできない。その外資がなかなか入つて来ない。そうすればそんな簡單日本の経済は国民生活水準を下げないで自立できるということは考えられないと思う。私は総理は非常に、非常にと言つては言い過ぎかも知れませんが、講和後の日本の経済を楽観している。主観的には品では楽観していないと言われますが、客観的にいろいろな施策を見ますと、私は楽観していると思う。そうではございませんか。
  174. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) どうもあなたと前提が違つているから、いつまで議論しても尽きないと思いますからお答えいたしません。(「その通り」と呼ぶ者あり)
  175. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 やつぱり例によつて例の御答弁が出て来たわけでありますが……。(「聞くほうも例によつて例のことしだ。」と呼ぶ者あり)最後にお伺いいたしますが、今後日米経済協力というものを推進して行かれると思うのですが、その場合アメリカが各国と結んでいるような日米経済協定というようなもの、こういうものを締結される計画がおありかどうか伺いたい。
  176. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今のところはそういう話はまだ具体化しておりません。
  177. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 具体化していないそうですけれども、そういう計画はおありになりますか。アメリカは各国と経済協定というものを結んでいるのですが、計画はおありなんですか。
  178. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 計画が今後具体化するかどうかは今後の問題であります。(笑声)
  179. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 計画はおありのようであります。  次にお伺いいたしたいのですが、これは二十七年度予算憲法九条及び七十三条に関する小委員会で問題になつたのでありますが、岡崎国務相は行政協定の二十四条は安保条約三条の範囲を逸脱しておらない、こういう御答弁でしたが、私はその範囲を逸脱していると思うのですが、この行政協定二十四条について総理大臣の御見解を承わりたい。岡崎国務相の御答弁は伺いましたから、総理大臣の御答弁をお伺いいたします。
  180. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 逸脱しておらないと考えます。(笑声)
  181. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この二十四条は岡崎国務相は、本来ならば余り当然のことであつて入れなくてもよかつた。世間で余り祕密協定かなんかあるのじやないかといろいろ疑念を抱かれるからこういうものを挿入した。そういうふうに非常に簡單に扱つておられるようですけれども、この二十四条の規定こそが非常に私は重要であつて行政協定を結ぶに当つて、これは北大西洋条約に基く軍事協定、この日米行政協定と非常に似ているのですが、北大西洋条約に基く軍事協定の中には、こういうものは入つておらない。従つて私は明らかにこれはいわゆるアメリカの駐留軍が駐留する条件範囲を逸脱しているとこう思うのですが、ただ逸脱していないという御答弁だけでは満足できないのです。どういう理由によつて、どういう根拠によつてこれが逸脱していないか、その点をお伺いいたします。
  182. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 岡崎国務大臣からお答えいたします。
  183. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 北大西洋条約条約そのものが、加盟国の一国が攻撃されたならば全部の加盟国が攻撃されたと思つて、これに当るという精神で以て全部が作られたのであります。従つてこういうものは条約そのものの中に入つておる。それから今度のは、ただ政府が協議をするということだけを書いているのでありまして、協議の内容等がないのでありまするから、重要とは私は考えておりません。併しながら私が申した通り、念のためにこういう規定を入れておるのであります。併しながら行政協定範囲を逸脱したとは到底考えられないという趣旨であります。
  184. 岩間正男

    ○岩間正男君 先ほど木村君は、吉田内閣は三つの幻想に立つて経済政策を進めておるということを言われたのでありますが、私はこの幻想という言葉を、吉田内閣の経済政策の中にありますところの戦争依存或いは戦争期待の性格、こういうふうに置き直してみることもできると思うのであります。政府の現在とられておりますところのこの財政経済政策を見ますというと、金融の面から、又財政の面から又生産の面から見ましても、非常に日米経済協力の線が最近物凄く強化されて、そのしわが中小企業或いは民族産業、或いは労働階級にこれは物凄く押し寄せられているのであります。こういう点から考えまして、明らかに吉田内閣のこういう政策の中に横たわつておる性格、この性格を我々は今日大きな問題として考えざるを得ないのであります。で吉田総理の過般行われましたところの施政方針演説の中の一端を見ますというと、例えばこういう問題につきましても、「外国貿易は一昨年以来とみに激増し、輸出入総額は一兆二千億余円、三十五億ドルに達し、世界の軍拡景気に刺戟せられ、ますます活況を呈しつつあるのであります。」こういうことを述べておられるのであります。まさにそういうような軍需景気、軍需産業、こういうものに期待を寄せられるような言葉をはつきりと吐かれておるのであります。又同じように池田蔵相の財政演説を見ましても、「世界的な軍備拡張に伴う国際経済の好況と我が国の地理的条件に基くいわゆる特需の増大とによるところが多いのであります。」と述べまして、日本の現在のこの戦時的な一つの景気を謳歌しているのであります。こういう点から考えまして、一体このような財政並びに経済政策というものは、一体永続性を持つものであるかどうか。そういうようなはつきりした確信の上に立つてこれを進めておられるかどうか、この点先ずお伺いしたいと思います。
  185. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 大蔵大臣が代つてお答えをいたします。
  186. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 財政演説で私が申述べました通りに、日本の経済はますます安定と発展の度を加えております。過去三年間の実績を御覧下さればおわかりと思います。
  187. 岩間正男

    ○岩間正男君 大変これは、自分で自慢のお話でありますが、併しこれは我我はそういう点をいろいろ検討して見ますときに、いろいろな不安定要素の上に立つている。それが最も端的に現われておるのは、何と言つて国際収支の面じやないかと思うのです。で国際収支の面をまあ覗いて見ますというと、今年度の貿易尻は、これは言うまでもなく、最初の安本の計画よりしまして五億ドル赤字ということになつております。殊にドル地域におきましては、これは七億ドルの大きな赤字になつておる。それでこの貿易尻を埋めるためにどういうようなこれは収支のバランスをここで安本では計画に載せておられるかと見ますというと、先ず特需に対して三億の期待を持つておる。又米軍日本国内での消費、これが二億一千万ドル、でこの中には相当半分以上の、恐らく一億五千万ドルに達するであろうと言われるいわゆる特婦である、或いはパンパンという名前で呼ばれますけれども、こういうような者の挙げる収益によつているのであります。又更に駐留軍によるところの、このたびのこれは駐留費の負担、この中から払われるところの労務費、役務費、こういうものに対しまして、これは相当多額の一つの期待を寄せているのであります。更に最近はマ声明によるところの、新特需によるところの新しい兵器生産或いは車両の生産、こういうような期待がもたれるものに対しまして一億五千万ドル、こういうようなもので国際収支のバランスをこれは合せておるのであります。そうしますと約七億ドル以上の厖大な、約十億ドル近いところのものが、今挙げました特需とか或いはパンパン、とか、或いは労働者を犠牲にするような労務費、役務費、こういうような不安定経済の要素の上にはつきりこれは立つておるのであります。  そこで蔵相は只今非常に安定な日本の経済であるというようなことを漏らされたのでありますが、我々の見るところでは非常にこれは不安定な、実にどうなるか、世界の情勢如何によつてはどうなるかわからない、こういう面に立つておると思うのであります。こういう点から考えまして、これは首相にお伺いしたいのでありますけれども、一体こういうような不安定要素というものは永続性があるとお考えになつておりますかどうですか、これは総理にお伺いしたいと思うのであります。総理に御答弁を願います。
  188. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 大蔵大臣からお聞きを願います。
  189. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 一国の経済はそのときどきの国際情勢に支配されるのであります。私は今特需関係或いは連合国人の費消する、国内において消費する金額等で、日本の外貨の勘定は受取超過の勘定であるのであります。而もその受取超過たるや、各国にその例を見ないような受取超過であるのであります。日本の経消が不安だとかいうのは国内の一部の人で、そうして国際的にはソ連関係だけ……自由国家群は、日本の経済が年と共に安定しておるということを認めております。
  190. 岩間正男

    ○岩間正男君 蔵相の只今の御答弁では、国際情勢によつて変るということを言われたのでありますが、先ほどの非常に安定しておるという話と私は矛盾すると思うのです。それから又、現在のこの国際収支が受取勘定になつておる、こういうことでありますが、これは幾分受取勘定になつておりますが、その受取勘定の中の要素を私は先ほどから分析して申上げたのでありますが、特需とか或いは実にこれは余り望ましくないパンパンというような形でやつております。そこで私はお聞きしますけれども、それでは大体現在伝えられておりますところの世界の情勢の中で、日本と直接関係を持つものは、これは朝鮮の休戦の問題だと思う。更にアメリカにおけるところの最近伝えられておりますところの軍拡の経済の行詰りと申しますか、中だるみと申しますか、約五百億ドルもこれは前年度の予算が使えないという問題、更に兵器生産が軌道に乗らない。この目標を二、三年先に延ばさなければならないという、そうしてそういうような問題の中には、兵器がどんどん一方では進歩して行く、そこで規格が合わなくなつて、古い規格では何遍もやり直さなければならない。例によつて戦車のごときは千何回もやり直した、こういうようなことで以て、結局商業的な採算を本体とするところのアメリカのこういう兵器生産においては、なかなかこれが採算に乗らない、こういうような問題が起つておることが報ぜられておりますけれども、この二点に対しまして吉田総理はどういうふうにはつぎりこれは見通しを持つておられますか。この点は日本経済の前途にとつて非常に重要でありますし、私が今問題にしておりますところの中心の問題とも大きな関連を持つのでございますから、この点の見通しをお伺いいたしたいと思います。
  191. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 主管大臣からお答えいたします。
  192. 岩間正男

    ○岩間正男君 総理大臣から……。
  193. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 大蔵大臣からお答えをいたします。(笑声)
  194. 岩間正男

    ○岩間正男君 大蔵大臣は経済的な見通しだけで……私は国際情勢の見通しを聞いておるのです。
  195. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 只今特需関係その他の関係で外貨の収入が急激に増加したのでありまして、朝鮮動乱がとまつた場合にはどうかということになりますと、いよいよ朝鮮の復興、東南アジアの開発に向つて行くのでありまして、将来楽観は許しませんが、国民の協力によりまして、外貨の収入を殖やすようにやつて行きたいと思います。而してアメリカの軍需生産その他の関係は、あなたのいわゆる幻想でありまして、私はそう考えております。
  196. 岩間正男

    ○岩間正男君 幻想という言葉がはやり出して、濫発されて困るのでありますが、もう少し慎んで、日本用語については吉田内閣は研究する必要があると思う。実際に……。実に的確でありません。日本用語をはつきりやつてもらいたい。これは余談でありますけれども……。  そこで私は先ほどからいろいろな要素を挙げたのでありますけれども、この中で新たに問題になつておりますところのマ声明によるところの一億五千万ドルのいわゆる新特需といわれる問題であります。これによりますというと、兵器製造禁止がこれは一方で解かれた。そういうことによりまして日本の今後の兵器生産というものがこれは期待される。こういう形で吉田内閣の政策は進められていると思うのでありますけれども、大体この兵器生産というものに対しましては、一体こういう期待を持つていいのであるか、殊に私は問題にしたいと思うのでありますけれども、まあ蔵相は先ほどから日本のこういうような経済の好況というような一時的な、誠に頼りにならないところの好況を謳歌されておるのでありますけれども、我々はここでやはり一つのこういう財政経済の倫理性とでもいうような問題について考えてみなければならないと思う。大体特需に期待する或いは兵器生産、こういうような問題が起つておるのでありますけれども、一体この兵器の蔭では、例えば朝鮮の戦域におきましては百数十万の人々が爆撃にさらされている。そうして家を失い財を失い、或いは死傷しておる。又米軍においても十数万の人々が死傷しておる。こういう点から考えますときに、日本のこのような兵器生産というものは、これは法理的にはいろいろ問題があるところでありますが、この点は一応おくにいたしましても、一体果して日本憲法の精神に副うものであるかどうか。こういう点から考えて、こういうようなはかない戦争を期待し、戦争依存の経済政策をとつて行くということが、果して真に正しいところの途であるかどうか、殊に私は憲法の前文に問題があると思うのであります。念のために読み上げたいと思う。憲法の前文になつていることを今読みますというと、もう反古になつておかしいという考えが日本国内にあるかも知れない。或いは政府の諸公も持つておるかも知れませんが、これは大変な間違いと思いますので、仮に読み上げてみます。「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは、全世界国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」これが憲法の前文の精神で、憲法全体に流れている精神、いわゆる平和憲法に流れているところの精神であります。こういうものに対しまして、これを徹底的にこの精神を貫いて行く、こういうことになるならば、我々は兵器生産というものは、非常にこれは倫理的に考えても大きな問題を持つだろうと思う。ところがこういうことを期待し、こういうものをどんどん増加することによりまして、そうしてそれによつて好景気を調うということは、丁度欧州第一次大戦のときに、我々は遠いどこかで戦争が起つて、この戦争によつて日本には成金が非常に発生したのであります。あれを謳歌しておる姿に正に彷彿たるものがある。こういうことが果して許されるものであるかどうか。この点が非常に私は大きな問題であると思いますので、総理はあなたが、先ほどから問題になりました倫理性の問題とも関連しまして、この兵器生産というようなものをどうお考えになつておりますか、この点改めてお聞きしたいと思うのであります。
  197. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) あなたのおつしやつたマ声明の一億五千万ドルは、将来日本に注文するということだけでありまして、内容は誰も聞いておりません。あなた一人が兵器生産を幻想されておるようであります。まだこれはわかりません。而して外貨が只今十億ドル近く溜つたということは、日本のためには非常にいい。これを日本の経済力増強のために使つて行こうと思つておるのであります。今お読みになりました専政を排し隷従を排するということ、これはどつかの国で専政、隷従をやつておるようでありますが、こういうことは私は絶対嫌いでありまして、憲法の精神に違反していないと思います。
  198. 岩間正男

    ○岩間正男君 極めて驚くべきことをあなたは御答弁なつた。これは吉田内閣全体の意見でありますか、総理に伺います。失言じやないですか。
  199. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 大蔵大臣説明は私の説明と御承知を願う。
  200. 岩間正男

    ○岩間正男君 確認したいと思う。吉田内閣が全部そういうことを考えておるか、一方において戦争を放棄して、そうして真に平和に徹底するということを謳つておきながら、そういう憲法の下に……この憲法によつて成立したところの内閣でありながら、而も一方におきましては多数の殺戮を目的とするこういう兵器製造、こういうようなものがどんどん進められおる。これは何も新しい、特需だけの問題ではありません。現に進められておるいろいろなものが、兵器という名前が附こうが、附くまいが、そういうものがナパームやらその他のものが作られておることは、これは紛れもない事実である。こういうことによつて日本に好景気を期待する、こういうことが差支えない、こういうことになれば、これは一体どこを基準にして倫理とかそういうことが言えるか。  こういう点と関連してもう一つお聞きしたいのでありますが、例えばこういうような日本の、これは地方の財政のほうを見ますと、地方財政は非常に苦しい。そこで止むを得ず最近におきましてはこれは大きな期待を特飲、遊興飲食税、こういうものに求めております。これは全体的に見ましても相当なパーセンテージになつております。更に東京だけを見ますと、一五%以上が特飲、遊興飲食税に求めております。それで口先では特飲街とか赤線区域を取締るとか、道義的に悪いと言つておりますけれども、財政的な基礎をこういうものに求めて、それによつて、学校を建てるとか、いろいろなこれは政策をやつておるのですから、どうしてもこれを禁止することは痛し痒し、こういう態勢におかれておるのであります。立川においてもこういう態勢が非常に出ております。例えば競輪、あの立川の競輪場が新設されて、我々はその反対陳情を受けて戦つたのでありますが、とうとうできた。非常に不法なやり方で以てこれはできた。一億の財源をこれに求めておる。これによつて学校を新設するというようなことでやつおる。併しこれはパンパンの街である。三千人以上のパンパンを持つておる立川においては何ら問題にならない、全然問題にならない問題としてこれは見逃されておるのであります。こういう形で以て進められておる政策、そういうような経済的な、財源をそういう面に求めておるのでありますから、それは口先だけでこれを取締る或いは行き過ぎを矯正するとか口先だけで言つても始まらない。こういうような政策に対しまして、私は非常に現在の腐敗と堕落の根源は正にこの経済政策にある。その根本は吉田内閣そのものの中にあるのだ。こういう態勢の中にあるのだということを私は指摘せざるを得ない。私の申しましたことに対しまして、一体総理はどういうふうに考えられますか、この点は重要でありまして、どんなに総理が、愛国心とか道義心とか、或いは一方におきましては祕密外交で、国民には何ら知らせないであらゆる問題を決定しながら、個々の立場になりまして、国民の協力が薄いとか協力をしないとか、こういうことを言つたつても、これは問題にはならないと思う。こういう点のもとを正すということが一番重要でありますから、こういうような点と関連して、現在とられておるところの政策について、これは総理の御意見を承わりたいのであります。これは蔵相じや答えられないでしよう。倫理問題も蔵相にお任せですか、総理は徹頭徹尾あなたはお答えにならないか。
  201. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 大蔵大臣から答弁いたします。
  202. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 道義を振興することは、午前中から総理がおつしやつた通りであります。遊興飲食税りつきましてお尋ねでございますが、これは我々は遊興飲食には課税いたしまして、それでできるだけ少くしようという戦前からの政策を踏襲いたしております。
  203. 岩間正男

    ○岩間正男君 パチンコもあなたがやめるとおつしやつたけれども、パチンコはますます殖えておりますが、これはどういうわけですか。
  204. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) パチンコは望ましくないということはここで申上げたのであります。従いましてパチンコが行き過ぎにならないように、関係当局で考えております。
  205. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 岩間君、あと五分です。
  206. 岩間正男

    ○岩間正男君 それではもう一つ。私はこれに関連しましてお聞きしておきたいと思うのでありますが、やはりこれは文化政策の一端でありますが、これは映画の政策であります。映画政策であります。現在の日本映画を見ますというと殆んどこれはアメリカの映画です。その内容はどうかというと、八〇%までがギャングのものです。ギヤング……これは戦争を挑発するには非常に工合がいいだろうと思う。ところが来年度の映画の輸入計画を見ますというと、アメリカの映画は昨年の上半期は七十五本であつたのが七十八本にこれは殖やされ、イギリスは七本半であつたのが七本に減らされ、フランス映画は七本半であつたのが六本に減らされ、イタリー映画は、二本半であつたのが、二本に減らされ、そうしてソ連映画のごときは今まで三本であつたのが、ここで全部切られる、こういうような映画政策をとつている。勿論映画の質についてはここで論議する気持はありませんが、フランス映画、ソ連映画、イタリー映画を見たいというのは日本の映画フアンの心理だと思う。如何にアメリカ映画というものが最近ひどいものであるかということは、これは実証されている。ところがこういうふうにして本当に映画のフアンの見たいもの。こういうのはしりぞけられておりまして、一方ではこれは日本に対する思想対策の問題があるのであります。一方ではこれを独占する態勢におきまして、向うでは大体今五百万人くらい動員できなければ、アメリカの映画というのは向うで採算が取れない。ところがそういう映画は年に約二、三百本作つても僅かに十二、三本だ。それ以外の映画はどんどん日本に流されている。この害は至るところにありまして、富士銀行のギャング事件が起りますというと、すぐに模倣する者が至るところに起つて来る、こういう態勢であります。こういう態勢で、これは文化の上からも、いわゆる反共工作というような形で以て遮断されている。或いは世界のそういう優秀な文化を我々は取入れて、そうしてこれに対して飽くまでも栄養を吸収して、日本の真の独立を図るということが大切だと思うのでありますが、こういう文化映画政策、こういうものに対しまして一体首相は正しいとお考えになつていられるのでようか。
  207. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 映画の輸入につきましては、外貨の面から大蔵省で相当制限いたしております。こういうことと、片一方ではこれはやはり営利事業でございますので、日本人の好む映画が入つて来るのはこれは止むを得ないことで、どこの映画は何本しか入れない、どこの映画はたくさん入れる、こういうふうな方針でやつているわけではございません。
  208. 和田博雄

    委員長和田博雄君) もうあと一分しかありませんから。
  209. 岩間正男

    ○岩間正男君 最後に、これは是非とも総理にお答え願いたいのでありますが、台湾の条約の問題は午前から問題になつたと思うのでありますが、併し中国とは飽くまで国交を回復しないということを言つておられるのでありますけれども、併しながら実際台湾政府とこれはああいうような条約を結ぶ、こういうようなことになりますというと、これは非常に現在の、別の政府中心とするところの中国に対しまして私は悪影響を与える、むしろ悪影響を与えることが目的であるかのように、こういうような条約が締結されておると思うのであります。その中で祕密条項があるかないか、ないということを繰返されておるのでありますが、私は特にここでお聞きしたいのは、一月七日のテレプレス電によりますと、香港電が最近台湾から香港に到着した米人消息通の談として次のように伝えている。
  210. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 岩間君時間がありません。
  211. 岩間正男

    ○岩間正男君 即ちこのほど台湾に赴任した米大使館のジヨンズ参事官がランキン米大使に対し訓令を手交し言明を発表した、その中で、「台湾にある米当局の最も重要な任務は、国府と日本の軍事同盟条約を締結することにある。」こういうような、これは時間の関係あと全部読めないのであります。軍事同盟の締結、これが目的であるような、こういう情報が伝えられておるのでありまして、こういうような情勢に対しまして、総理は一体はつきりとこの条約にはそういうものはない、こう言い切れるかどうか、お答え願いたいと思います。
  212. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) そういう祕密条約、軍事同盟の締結を目的として台湾の間と交渉はいたしておりません。
  213. 和田博雄

    委員長和田博雄君) これにて総理大臣に対しまする総括質問は終りました。  午前の当委員会の決定に従いまして、政府が配付しました防衛力漸増についての資料について質問を続けたいと思います。そこで政府関係各大臣は残つていて頂きたいと思います。
  214. 内村清次

    ○内村清次君 私は次の三点から大橋国務相に質問を申上げたいのであります。  第一は昨日説明自衛力漸増計画、これをお配りになりましたが、これは全く私たちの期待に反した計画書であります。    〔委員長退席、理事小林政夫君委員長席に着く〕 而も又この期待に反したということは、現にこれは政府は両条約のこの条項によりまして、すでにアメリカとはやはり条約条文規定によつて漸増計画を約束しておられる。勿論私たちはこれには不賛成であります。反対でありまして、而も又このような漸増計画というものが平和を乱すものであるというような観点につきましては、これは確固たるものがあるわけでございますが、併しこれを約束をされた政府の立場から考えて見ますると、条約条文の中においては明らかにこの自衛力の漸増というものが約束しておられる。それが今回出されておるところのこの計画書によると、僅かにこれは予算書にもあるように十一万の漸増計画警察予備隊漸増計画、これだけしか考えておらないのであります。来年度及び又再来年度についてはこれは治安及び財政事情の推移によつて考えるというようなことだけしかこれには謳つていないのです。これは私はやはり条約を決定されましたときの政府の立場からも国際的信義によつておらんような状態になりはしないか、このことが第一点。  それから第二点は、政府のほうではすでに自立経済五カ年計画を発表しておられるが、この発表に基きますと、五カ年計画は過程におきまして、この両条約というものが吉田総理の祕密外交によつてこれは昨年から急に活溌になつて来ておる。そうしてこれが締結をされておるのであります。その以前に五カ年計画というものは発表されておる、この計画の年次におきましてこの自衛力の漸増ということを一方考えて行かなくちやならん。そうして行きますると、財政事情が許すか、或いは又治安の問題は、国際情勢の変化に上りましてこれは突如として起つて来るでありましようが、大きな治安の問題というものはこれは起つて来るでありましようが、この財政事情の変化ということは、やはり一方には産業計画と併せてこの自衛力漸増計画がなされるであろうということは、これは我我どもが考えておるのでございまするが、この予算委員会で最も必要であろということは、その点を是非聞かなくては、一体それでは政府の産業五カ年計画はやり直さなくちやならない。私たちは一貫したところの産業五カ年計画で、これで即ち国の財政というものがどうなつて行くか、不安定のままに陥るのではないか、或いは又安定の軌道に乗つて行くかどうかということを、予算委員会で本年度の出されたところの予算中心として考えなくてはならない。この産業計画というものが、これは政府が出し直すなら別でありますが、出し直さずにして、そうして我々にこの漸増計画と含めて考えて行けということは、予算審議に大きな支障を及ぼすという点が第二点です。  第三点は、これは大橋国務大臣も御承知と思いますが、この輿論機関でありまするところの新聞には、こういうような予備隊三十一万に増強というような記事というものが、これは只今までたくさん出されておる。而も又この輿論機関のこういう報道というものが、これは政府が宣伝をして国民思想というものを引ずつて行くための宣伝であるかどうかは、これはあと答弁をお伺いしたいのですが、問題は、私がこれを収録いたしてみますると、各社、これはもう東京タイムスから、毎日、読売、朝日、時事、産業、東京日日と、こういうような十二月から二月までのこういう漸増計画の出されたところの記事というものは相当多数に上つております。それではこの輿論機関でありまするものは、これは自主的にそういうことがなされるであろうという仮定において、自主的にその機関自体がこういう新聞に載せるのであるか、この点がどうも私たちはわからない。ただ問題は、これによつて政府の意図というものが国民思想に及ぼすところの状態というものに対して、私たちは大きな、何と申しまするか、不審に考えるわけです。この点に対して政府は若しもこの計画がこれだけであつて、ほかには計画がないというようなお心持であるとしたならば、こういう宣伝というものは、又機関の、即ち新聞掲載というものに対してはどういう考えを持つておられるか、この点を私はお伺いしたい。
  215. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 昨日並びに今朝提出いたしました資料につきまして御期待に反したという点がありましたといたしますれば、これは極めて残念に思いまするが、併しながら政府といたしましては御要求の趣旨に従いまして、現在政府の持つておりまする漸増計画をお答えいたすほかには途がなかつた次第でございます。成るほど講和条約と同時に締結せられました安全保障条約におきましては、米国政府日本自衛力の漸増ということについての努力を期待するという趣旨は掲げられてあるのでございます。併しこれはこの期待に即応いたしまして将来において日本政府が漸増について自主的に計画を立て、又これに努力するであろうというふうな期待を示されたわけでございまして、日本といたしましては、この趣旨に従いまして来年度においても財政上許す限りの漸増計画を先ず第一に立てたわけでございます。これ以上のことにつきましても、もとより政府といたしましてはかような漸増計画というものを将来作るということになりまするならば、これはいろいろの施策の基礎になりまする事柄でありますから、できるだけ早く立てたい、こう思うのでございまするが、併しそれにはとにかく今後の治安の実情並びに特に財政事情というものについての見通しというものが基礎にならなければ、この計画の立てようがないわけでございまして、只今といたしましては、そういう点につきまして基礎的な研究をいたしておる段階でございまして、具体的な計画といたしましては、この資料として提出した以外には全然持ち合せておらない次第であります。  なお、新聞に予備隊の増強についての記事がたびたび出おるという御指摘でございまして、この点は私どもも新聞によつて読んでおるのでございますが、これはどういうニュース・ソースから提供されたものであるかは存じませんが、併しながら政府が何らかの作意によつて、宣伝的意図を以てかような記事が掲載されるようなことを企てておるという事実は全然ないのでございまして、政府といたしましては、かような政府にないところの計画が、如何にも政府が隠し持つておるがごとき形で新聞に載せられるということにつきましては誠に困つたものである、こういうふうに考えておるのでございます。併しながらこれは新聞のことでございまして、政府といたしましては内心甚だ迷惑には思つておりますが、如何ともできない次第であります。
  216. 内村清次

    ○内村清次君 只今の御説明によりますると、やはりこれだけ出しただけである。そういたしますると、漸増という問題は、これは日本の自由性から考えられるところの漸増ということは一年先のこともわからないが、これはどうしてもアメリカからの注文によつて、そのときの情勢によつて漸増というものが成り立つて行くというお考え方でありまするかどうか、これが第一点であります。  第二点は、先ほど新聞の記事というものは、非常に政府は困つたものであるという話ですが、これに対しては政府として困つたならば困らないような方法をおとりになるお考え方はないかどうか、この点について……。
  217. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 自衛力の漸増ということにつきましては、政府といたしましてはこれは日本政府が国内の治安並びに財政事情を基礎にいたしまして自主的に決定すべき建前である、かような考えを持つておるわけでございます。但し現在の実情におきまして、各種の装備のうちには、国内において生産せられるものもございまするが、併し火器等につきましては、米国から借りなければならないというものも相当あるわけでございまするから、その日本側の立てましたところの自主的な計画日本側だけの力で実現されるかどかうということになりますると、そこに又先方から貸してくれる武器という関係も出て来るわけでございます。併しながら何と申しましても計画を立てる日本政府が、その計画自体を自主的に決定し、それに対する資材或いは武器の補給、こういう順序でございまするから、日本政府が主になるべきものと、こう考えております。  それから新聞の記事につきましては、私どもはでき得る限りの機会におきまして、さような事実を打ち消すように努めておるわけでございます。
  218. 左藤義詮

    左藤義詮君 政令二百六十号で警察予備隊が発足しまして以来、米人の顧問というものが予備隊の中におつて、これが武器の保管をしておる。一々武器使用するのにもその手を煩わさなければ鍵がもらえない。号令のかけ方から訓練の仕方までいろいろアメリカ式にやつておるということになつておつたのでありますが、今度その武器が全部予備隊の本部において総括的に拝借ができることになつたというこの間御説明でございましたが、それにもかかわらずなお顧問というものが予備隊に残置されておるというような御説明でございましたが、さよういたしますと、その顧問或いは顧問団というものは、新らしく発足いたします講和成立後の独立日本としては、どういうような法的根拠でこれが予備隊におるのでありますか。何か条約をお結びになるのか、協定をなさるのか、或いは単なる予働隊の雇用関係であるのか、又はその権限はどういうような権限を持つのか、身分は果して駐留軍の現役の軍人が来るものであるのか、或いは顧問団として一括して来てそれが各隊に配属されるのか、各隊ごとに顧問が行くのか、又予備隊の指揮命令系統には全然タッチしないわけでありますのか、非常事態のような場合にもやはり顧問というようなものに御協議をなさるのでありますか。従来は武器関係でありましたから止むを得なかつたものでありますが、その点が今度解消をしても、なお顧問というものを独立した日本の愛国心によつて国内の治安を守つて行こうとする予備隊にどうしてそういうものを持たなければならんのか、その点を一つよく御説明を頂きたい。又同じようなことが海上警備隊にもやはり顧問のようなものが置かれるのであるかどうか、この点もやはり併せお答え願いたいと思います。
  219. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 現在の米軍顧問の制度は、発足当時から司令部の民事局が主として予備隊の顧問的な任務を担当する、こういうことになつております。従いまして民事局の嘱託の下に各駐屯部隊にまで顧問が駐屯いたしまして、そうして武器の管理並びに武器の操作についての日本側の指導者に対する顧問的な役割をいたしておるのでございます。特に予備隊発足当時にありましては、日本側の管理機関が完成せずに、先に隊員が募集せられました関係上、或る程度まで予備隊の管理事務にまで立入つていろいろ協力を願つておつたこともありますが、併し日本側の各隊におきまする幹部が大体昨年の三月末を以て配置を完了いたした状況でありまして、昨年の四月以降におきましては、すべての部隊の管理はことごとく日本側の幹部の責任である、こういうことになつておつたのでございます。従いまして訓練、指揮等は一切日本側の幹部の責任で行う、ただ指揮、訓練等に当りまして必要なる技術的な指導を幹部が顧問から得て、そうしてこれを隊員に対して実施をする、こういう形で参つたわけでございます。ただ兵器についてのみは、先般申上げましたような関係がございまして、この武器の点は近く保管の責任を日本側の機関に移したいというような司令部側の意向もございまするので、只今その方法について司令部当局との間に事務的な打合せを開始いたしておる次第でございます。    〔理事小林政夫君退席、委員長着席〕  この顧問の現在の法的な性格と申しますか、これはやはり一つの占領に伴う制度であると心得ておるのでございますが、講和発効後においては、占領に伴う制度というものは一切廃止せられまするからして、従いまして米軍顧問というものも一応そこで解消するものと考えられるのであります。ただ何分にも多数の米式の、米国からの武器を借りておりまするし、又最近におきまするこの武器の操縦その他の技術というものは非常に複雑になつておりまするので、当分の間は、さような技術的な面につきまして引続き顧問の指導を受けるということが予備隊の整備の上から言つて非常に適切でもあり、又必要でもあると、こう考えておるのでございます。併し講和発効後における米軍顧問を、それならば如何なる形において予備隊の顧問として受入れるか、その法的な形、又法的な根拠、こういうものにつきましては、まだ米軍側においてもはつきりした考えもないようでありまするし、日本側におきましても目下いろいろ研究をいたしておる状況でございますので、いずれ何らかの措置がとられると思いますが、併しこれにつきましては、法的な根拠に基いてどうこうするということは、必ずしも必要ではないんではないか……。日本側において実際上何か聞きたいことがある、或いは確かめたいことがある、そういう場合に、事実上そういうことについていろいろな技術的な知識を求める、或いは技術的な指導を受ける、こういう事実上の問題でも解決できれば、それが一番よろしいのではなかろうかと、こういうふうにも考えておるわけでございまするが、併しこの点につきましては、なお事務当局といたしましても検討をいたしておる次第であります。なおこの米軍の顧問となつてもらう人は、無論米国の軍籍にある人であると存じますが、それが駐留軍に属する人であるか、どういう人であるか、これについてはまだそこまで話が進んでおりません。それから勿論そうした事実上予備隊の訓練なり或いは研究なり、そういうことに必要な知識経験について事実上の指導を受けるということが目的でございますからして、これらの米軍顧問が予備隊において直接隊員に対して指揮命令をするというようなことは、如何なる意味においても考えられないところでございます。これは平生においてはもとより、非常事態の発生いたしました場合におきましても、かような顧問が直接に警察予備隊を指揮するというようなことは政府としては考え得ないと、こういうように思つております。
  220. 左藤義詮

    左藤義詮君 複雑な兵器の操作について技術的な指導を受けるとおつしやるのですが、この間挙げられた武器の種類、航空機の種類から申しますと、そんな複雑なものはないと思います。又そんな複雑なものがあつたならば、戦力の問題が又蒸返されるのでありまして、航空機等の若干の要員をアメリカにやつて訓練を受けさせる、その人たちは日本人の技術水準から言いましても、それでやつて行けるわけでありまして、今のお話では、そういうようにどこかに顧問がおつて、そこに幹部が指導を受けに行くのか、或いは各管区、或いは部隊に従来のように顧問が行つて、起居を共にしながら指導するのか。これは予備隊が将来飽くまで独立自主の精神において日本を守つて行く上においても、非常に大事なことと思いますのです。もう近く講和が発効しようというのに、未だ研究中ということでなしに、この点については相当私は予備隊が飽くまで自主独立の精神を貫いて行くように、又いろいろ野党の諸君の言われるような疑いを受けない……その点で若し又話がついていないのだつたら腰を据えて交渉して頂きたいと思うのですが、その点につきまして各部隊へ臨むのであるか、個人の顧問として、而もそれが現役軍人として駐留軍の一員として臨むのであるか、或いは駐留軍のどこかへときどき技術上のことについて御指導を受けに行くつもりであるか、その見解を先に一つ……。
  221. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 兵器の操作につきましてはそう顧問の必要はないのではないかという御意見でございましたが、成るほど兵器そのものはそう大して複雑な兵器はございません。併しながら最近の兵器の実際上の使用というものはいろいろな単純なる兵器総合されまして、これを総合的に活用して、そうして目的を達するというようなわけでございまして、兵器の構造そのものはそれほど複雑ではございませんが、この各種の兵器を組合せて使用して行くということは、この使用する技術というものはかなり新らしいことでもございまするし、又相当研究を要することなのでございまして、これらの点につきましては実際相当期間これらの兵器を総合的に運用いたしました顧問の経験と知識というものは予備隊を訓練いたします上からいたしまして非常に貴重なものであると、かように考える次第であります。従いましてそうした面におきまして顧問の援助を受ける必要は十分にあるものと、又それが予備隊の発達のために望ましいとこう政府としては考えておるのでございます。もとよりかような顧問は日本側の自主的な判断によりまして、日本側の必要と認めまする事柄について事実上の協力を受けるというのが建前でございまして、いつまでも顧問に依頼いたしまして、予備隊がいつまでも依頼心を基礎にしたそういうようなあり方については御意見通り厳重にこれを避けるべきであると、こう政府といたしても考えておるわけでございまして、特にお示しになりましたような今後の予備隊の運営については政府が責任を持つて日本側の機関が責任を持つて自主的な心がまえで当らなければならないという点につきましては全く同感に考えておるのでございます。なお顧問の実際の勤務の場所、即ち原隊に配属されるか、或いは管区隊或いは相当なる隊の部隊にまで行つて末端まで行かないか、その辺のことにつきましては、なお研究をいたしておる次第でございまして、この研究に当つての根本的な心がまえはお示しのごとき自主的な考えを持つておるつもりでございます。
  222. 和田博雄

    委員長和田博雄君) よろしうございますか。波多野君……。
  223. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 最初に千五百トン級十隻というのがございますね。いわゆるフリゲート艦と言うのか知れませんけれども、どんな性能のものですか。
  224. 柳沢米吉

    政府委員柳沢米吉君) 大体千五百トンクラスのものがスピードにしますと、大体十七、八ノットくらい、それでこれは今まで海上保安庁といたしましては、大洋におきまして難破船ができましたときに、現在持つておる船は七百五十トン程度しかありませんので、非常に救助に苦難をいたしております。従いましてトン数の少し大きいものが欲しいということを考えておつたのであります。こういう船を国内において造るということと、借りられれば借りたほうがいいのじやないかということを考えておるわけでありまして、現在交渉中のものでございますが、これの性能は大体今十七、八ノツトの性能を持つておるものでございます。
  225. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 難場破船救助用ですか、その他に何か使うのですか。難破船救助だけですか。
  226. 柳沢米吉

    政府委員柳沢米吉君) この船は大体目的といたしましては、常にパトロールさせまして業務を行いますのには少し大き過ぎる。従いましてこれをパトロールさせますと油の消費その他から申しまして不経済になるのじやないかというふうに考えております。そこででき得れば、この船はこの前の十勝沖の地震というようなときに相当に難破船ができる、或いは被害をこうむるというようなときにはこの船を出動させてやる、又先ほど申しましたような大洋におきまして荒天時に難破が起きましたときには、これを用いたい。なお不法入国その他のもので普通の巡視船で手が廻らないような場合にはこういうものを出して行くというふうな考え方をいたしております。
  227. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 十隻ばかりでいいのですか。大体日本の沿岸に相当配置しなければ……そういう意味のものにならば方々に置かなければならないと思いますが……。
  228. 柳沢米吉

    政府委員柳沢米吉君) 大体海上保安庁としましては今までに船舶を或る程度つて頂いております。それで普通業務につきましては、その船舶で或る程度、まだ欠陥がございますが、やれるのじやないか。併し先ほど申しました大型のものがどうしても必要になつて来る、これは大体十隻ほどあれば急に応じて出て行けるのじやないかというふうに考えております。
  229. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 まあ、我々船の知識がないのでわかりませんが、機会があればいつか一遍見学に行つてよく聞いて見たいと思いますが、その点はやめまして、借受けるというのですがね。例の対日援助資金がいつの間にやら日本の借金になつておる。我々国会においては借金とは考えていないで感謝決議ばかりやつていたのですが、いつの間にか大蔵大臣は借金と言い出した。併しあれは、憲法上国が債務を負うには国会の議決を要するというあの条項とどういう関係になるか。これは又別に聞きたいと思つておりますが、この借受けるというのはどんな契約なんですか。これは又返さなければいけないとか何とかいう大変なことになるのじやないですか。
  230. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 船のことはなお打合せて申上げますが、警察予備隊で借りておりまする武器につきましては、これは正式に借受けるという形ではございません。現在は占領軍日本において保管をいたしておりまする占領軍武器を、警察予備隊が事実上使用を許されておる、こういう形でございまして、借受けという言葉は必ずしも当るかどうかはわからないと思うのであります。従いましてこれに伴いまして日本側でどういう責任を負うか、賠償の責任を負うか、そういう問題はこれは又別途に考えらるべきであつて、借受けに伴つて当然に賠償の義務があるというふうな性質を持つておるものではないのでございまして、そういう意味において義務を負担するということは、このことから直接には出て参つておらん、そういうような関係になつております。
  231. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 いや、それはどういう……何か契約書でも取交しておりますか。そういう了解はありませんか。
  232. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 現状におきましては何らの了解もございません。ただ米軍の顧問が日本側のキヤンプにおいて保管のための倉庫を持つております。そこでその倉庫は、その倉庫において保管してありまする兵器を個人の隊員に直接貸して使わしておる、こういう状況でありまして、今までの例から申しますと亡失した例もございます。亡失した際においてはこれは管理者たる米軍の将校の責任として米軍将校が米国政府に対して会計法上の責任を果す、こういう形になつておるだけであります。但しその点は司令部といたしましても、現実に自分使用しておらない品物について、他人の保管中と申しますか、他人の使用中に損害又は亡失があつた場合に、その責任を米軍の将校が負担をするということは不合理である、従つてこの方式は変えなければいけない、こういうことに相成りまして、そこで現在では日本側の予備隊の機関に一括して兵器を引渡して、予備隊の責任において使用をしてもらいたい、こういう意味でございます。但しこの場合におきましても、その亡失或いは損害に対しまして米国が損害賠償を要求するという意味においてそういう制度の改革をするというのではなく、従来米軍の将校が自己の責に帰することが困難な事情の下に責任を負わされておつたその顧問の責任を解除する、こういう意味においてそういう方式を採用したい、こういう申入がありまして、現在この申入を基礎にいたしまして、双方で如何にするかということを協議いたしておるような事情でございます。
  233. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 それはそれでまあいいと思うのだが、現地の予備隊が借りて保管並びに使用しておるわけですね、それに対してあとで賠償しろと言われた場合に丁度今の援助資金と同じことで、これはもう賠償するのは当然だと大蔵大臣が言い出すと国民は非常に迷惑しますから、何か的確な契約がしてあるかどうかということを聞いておる、返さんでもいいとか、或いは賠償しなくともいいとか、返す場合に原状に回復して返すとか、そういうことをしなくとももらいつ放しだとか、その辺のところはどうなんですか、あいまいなままじや困る。
  234. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 現在におきましてはただ使用をいたしておるのでございまして、貸借というような正式の関係はないわけでございますから、従いまして賠償といつた問題は生ずる余地はないわけでございます。今後米軍から借受けるものについて、どういう形式にするかということは今向うと打合せ中でございまして、その結果或いはこちらが受取を出して借るか或いは又補償の責を負うか、そういう点は、これから打合せをしなければならんことであります。
  235. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 どうも何もかもこれからと言われるけれども、もうじきですよ。平和条約が発効しますれば、私はじきだと思うのだが、十分打合せて的確に国会報告して下さい。そうでないと、あとで又文句が出て来ると思います。船のほうはどうですか、船は大きいが……。
  236. 柳沢米吉

    政府委員柳沢米吉君) 船につきましても只今大橋大臣からお話のありましたようなことでございます。なおこの船につきましてのいろいろのあれも現在向う側と打合中でございます。
  237. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 事実上の使用ですか、使用許可ですか。
  238. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 現在においてははつきりした契約で貸借をするというような形式ではなく、事実上受取つて使用をするというふうな形になつておるわけでございまして、それは飽くまでも米国の法規に従いまするというと、米軍の将校がその責任において日本において管理をしておる、米国の管理下にある武器、これを事実上、日本警察予備隊使用をさしておる、こういうわけでございます。従いましてこの物品の米国法律上の保管義務者というものは飽くまでも米国の将校でありまして、その人が米国における会計法規上の責任までを今負わされております。この責任を負わすということは不合理であるから、それを解除する方法として日本側の機関に引渡すということによつて責任を免かれるようにいたしたい、そういうことの申出が数日前にございまして、その申出を基礎といたしまして、只今いろいろな手続又はその場合の法律関係等をこれから事務的に打合せる、こういう段階でございます。いずれも打合せが終りました上は成るべく速かに国会に御報告いたします。
  239. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 今の問題で一番大事な点は、米軍の将校が管理責任者であつたのをその地位を解いてやつた、責任の地位を解いてやつたということは、日本の現地部隊なり、それを使用する人が責任者の地位に立つたということなんですがね。その責任者としてどういう法律上の義務を負わなければならんか。又国の機関ですから国が又どういう法律上の責任を果さなければならんかといつたようないろいろの問題が起きて来るのです。そういう点を明確にしておかないと、いつの間にか借金しておつたということになる。それをくれぐれも要求しておきます。
  240. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 私はここで以て漸増計画について実際に大きな問題として数数起つて来る問題であると考えられるのは、この演習場その他の土地の問題じやないかと思うのであります。で、お話によれば、まあ財産権保護の意味で以て特別な立法をなされるということを承わつております。まあそのほうはそれにいたしまして、この演習場その他について現在岡崎国務大臣ラスク氏との書簡で以てきめられておる予備作業班の、取りあえず任務を一つ承わりたいと思うのであります。
  241. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 予備作業班はアメリカ側に使用せしむべき施設及び区域について、行政協定発効前に話合いをし、できるだけ早くきめるものはきめる、こういう任務を持つております。
  242. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 予備作業班によつて作成されましたところのものは、警察予備隊のほうの施設関係とは仕事の関係で連繋はあるものですか、ないものですか。
  243. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは行政協定の第二条及び交換公文に書いてありますように、演習場とか射撃場というような種類のもので、常に使わないものは、アメリカ側が使用しない場合には、日本政府若しくは日本国民がこれを使用することができると規定しております。この一部は、演習場等について警察予備隊がそれを使用することもあることを考えております。
  244. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 予備作業班の仕事が完了しまして、合同委員会に引継がれますというと、一切のそういつた問題の処理解決その他は合同委員会によつて責任を負われるのでございますか。
  245. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 合同委員会は法律的な、何と申しますか、きちんとした権能は持つておりませんが、この行政協定によりまして特に施設、区域等を決定することになつております。従いまして合同委員会がきめるのでありまするが、若し意見の合わない場合には、今度はずつと高いところのつまり両国政府間の協議に譲ることになります。
  246. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 そうしますというと、大体においてその法律の必要なもの、或いは法律によつて規定されるものは、そういつたものによつて処理され、合同委員会で決定できないものは、更に上の機関に諮るということはよくわかりますけれども、合同委員会によつて大体の方針とかそういつたものは決定されると承知いたしてよろしいわけでございますか。
  247. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 合同委員会は勿論この基準を考えて、それに基いていろいろの問題を処理して行くわけでありまして、つまり原則のようなものは合同委員会の双方で案を持寄つて、大体の標準をきめまして、それに基いて実際の処理をいたします。こういうことになります。
  248. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 合同委員会につきましてはそのくらいにいたしまして、私は警察予備隊漸増計画に関しまして昨日承わりましたところの演習地については一つお伺いいたしたいと思います。昨日承わりましたところの計画を拝聴いたしますというと、大体千名単位くらいで以て一つの単位ができる、その単位の所要面積が二十万坪乃至二十五万坪、それからそれ以上のものは、大きな方面監部と言いますか、方面部隊と言いますか、そういうものは数百町歩乃至数千町歩、こういうようなお話でありました。今朝の新聞を見ますというと、林野庁のほうと協議されて、できるだけ国有林或いはそういつた林野関係から物色するというような御方針のように農林大臣の談話として発表されておりますが、これは誠に私ども結構なことだと思つておるわけでございますけれども、実際問題として三十万坪乃至二十五万坪の千名程度の人たちの部隊訓練のためには、なかなかそういつた工合にうまいわけに附近に山林は求めがたいのじやないかと私は思つております。こういう点について過日の農林委員会で実は私この点について質問いたしましたが、今日は農林大臣、農林政務次官はおられないようですから、委員長のほうからお伝え願えれば結構です。
  249. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 承知しました。
  250. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 農林省当局のほうではできるだけ警察予備隊のほうと協議をして、そうしてそういうところを避ける。けれども万止むを得ないときはそういうところも、農耕地或いは開拓地も使わなければならん、こういうお話であります。私もその通りだと思うのです。やはり二十万坪乃至二十五万坪の土地をわざわざ遠くの山の奥へ行つて求めるということは、これは部隊訓練上恐らく不可能なことじやないか、そういうことがしばしば起るのじやないかということを考えられるわけなんです。ところがこれに対して、実際問題としてどのくらい費用がかかるかという質問をいたしましたときに、大体農家二戸当り百数十万円乃至二百数十万円、こういうお答えがあつたのです。そうしてこれらの補償をすると同時に、できるだけ北海道その他に入植させて、そうして生業の安定を図るということを言われておつたのですが、私はこれは非常に認識が不足じやないか、こんな考え方で以てものを考えられちや困るということを実は私強く考えているものなのです。大体におきまして今日開拓地に入つておるかたがたは、これは戦後入つた人たちなのです、そうして大体開拓地に入つた人たちは、今日私調べて見ますというと、三十五歳或いは四十歳前後の人が多いのでございます。これがすでに若い壮年期を五カ年間あの原野に入つて粒々辛苦、本当に肉、骨を削つて開拓地を完成しておるのでございます。その人たちにもう一度北海道へ行つて五年間或いは七年間この苦労をもう一度やれということは、これは恐らく不可能なことじやないか、私はそういうふうに考えておるのです。で、この点について北海道その他に再入植させるというような御方針を承わつたのでございますけれども、これは非常にむずかしいということを申上げておきたいと思います。で、私は一つの試案を持つております。私は長いこと開拓の経験がありますけれども、大体において開拓地に入つて直ちに成功し得るというような開拓地は内陸湖面の干拓地、或いは南方と言いますか、九州或いは中国あたりの干拓地ならば、大体いいところならば入りまして一年で完成農家になります。かかつても二年間くらいで大体完成農家になりますけれども、北海道あたりに参りますというと、五年乃至七年はもう一度骨を削り肉を削るような苦労をしなければならないと思うのです。こういつた問題に対して警察予備隊関係或いは農林省関係がもう少し真剣になつて考えて頂きたいと私は思うのでございます。当然今申しましたように相当の面積が今後も潰れて行くのじやないかというふうに私は考えております。現に私の知つております数字を申しますと、再接収されましたところの農地に関係しておる農家が大体七千戸を越しております。それから目下再接収の準備の段階にあるような折衝中のものが大体二千戸近い農家があるのじやないかと思うのです。すでに今日判明しておるものがそれだけあります。で、是非私はこういつた点について一つ十分な御計画をお願いし、そうしてできればそういつた細部にまで、この施設計画に当ります相互の連絡を緊密にしてやつて頂くことの希望を申しまして私の質問を終りたいと思います。
  251. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 今の問題に関連してですが、最近連合軍使用中の飛行場の拡張計画が方々で進んでおるようであります。私の知つているところでもそういう計画があつて、測量をどんどんやつているので、附近の農家はもう恐慌状態に入つております。而も新聞で見ると、それは農家に対する補償は従来の接収地域に対しては今考えておる限度の補償はしない。今後接収されるものについてのみ農林省が考えているような補償をするというようなことを言つておりまして、そのために又非常に心配しているようであります。今後というのはいつのことなのか、土地収用法の改正もまだ行われておらないし、或いはその他そういうものの賠償についての新らしい法律もできておらない。そうしますとそういう法律ができる、或いは土地収用法の改正が行われるあとで接収されたものについてのみ一定額の補償をされるのであるかどうかということですね。現在測量されているものは……、非常に困つているのはああいう土地収用法の補償はどういう方法でやるのか。予備作業班で多少研究していると思うのですが、どうなんですか。
  252. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 予備作業班は新聞でも御承知と思いますが、北海道及び東北地区を視察して大体の施設及び区域について見当をつけております。その報告によりますと殆んど新らしく接収と言いますか、収用すると言いますか、使用する土地は今のところないのであります。ただ一、二飛行場の附近に多少の拡張をする所がある、その程度であります。それから関東地方、だんだん南に行きますが、先ほどの御質問に原則とだけ申しましたが、原則の中には、例えば今の施設なら学校とか何とかというものがたくさんあります、それから飛行場とか演習場とかというところには先ず農地を避ける、それから住宅のある所を避けるというような原則が掲げられております。演習地等もできるだけ農家のある所、或いは農地のある所は避けるという方法で来ております。ただ今都心から離れるということになるのでありますから、地方の部隊におきましてはいろいろ測量をしているのですが、これは予備作業班できめなければ幾ら土地を測量しても、或いは既成事実を作ろうとしても駄目であるということを言つているのでありますが、最近測量ということは余りなくなつたようでありますが、この要ではいろいろとそういうことがあつて人心甚だ落着かない場合もあつたのであります。この点は更によく徹底して、予備作業班できめるまでは幾らどうやつてもこれは駄目だということを徹底させたいと考えております。できるだけ人心の不安は除くつもりであります。  又補償につきましては、差当りの考えは、普通の売買で必要な場合は土地を買つて行く、併しどうしても買えない場合で、又どうしても必要な場合もあるかも知れんというので収用というようなことを考えなければならんだろうというので法案を研究いたしております。原則はやはり普通の売買で行きたい、こう考えております。
  253. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 収用される場合の補償をしなければならんという場合ですね。収用して補償しなければならんという場合、農林省が新聞でちよいちよい発表しているあの限度のものは考えておられるのでありますか。政府全体として……。
  254. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 農林省としてと言いますか、新聞にちよいちよい出ているのはいろいろなものが出ておりましてよくわかりませんが、大体今農林省等の意見を聞いておりますが、農林省の意見はこれはまだここで申上げるわけには行かんと思います。いろいろまだ研究しているようでありますが、大体農林省の意見従つてそういうものをきめようとする、これはまあ農地等についてでありますが、そう考えております。
  255. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 最後にもう一つだけ……。司令部が、司令部というのか、現地軍が現に使つている飛行場の拡張計画をやつている場合には、これは予備作業班の決定を待たずにやるものですか、それとももう現在だから予備作業班のほうに問題を移して、そちらのほうで決定してから初めて現地軍も拡張工事に入るということになりますか。その手続はどうなりますか。
  256. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今のところは法律的には現地部隊でやれるのであります。つまり独立のときまではできるわけでありますが、すでに予備作業班が働いておりますから、今現在におきましては、予備作業班がやるということになつておりまして、現地軍はやらないということになつております。
  257. 小林政夫

    ○小林政夫君 私はこの資料を要求した一人としてこの資料ではどうも満足しないということだけ今大臣に述べておきます。その詳細については、小委員会等においても言及されたところでありますし、ここで重ねて質疑はいたしませんが、意見については討論のときに申上げます。資料を要求した一人としてこの資料では満足をしないということだけ申上げます。
  258. 鈴木直人

    鈴木直人君 独立防衛隊がトラックその他の軍用車両が相当日本の道路を走るわけでありますが、その際には交通規則は日本の交通規則そのままを適用されるということになりますか。
  259. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 駐留軍のことでありますれば日本の交通規則を全部守るわけでございます。
  260. 鈴木直人

    鈴木直人君 若し交通規則に違反したという場合にはそれを取締る官憲、その方法はどういうことになりますか。
  261. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは警察でありまして、その場所々々によりまして国警なり、自治体警察なりがつかまえまして、そうして先方に引渡して先方の処罰を求める、こういうことになります。
  262. 鈴木直人

    鈴木直人君 それから警察予備隊に顧問が現在おるそうでありますが、それはアメリカ側のどういう機関に身分が所属しておりますか。
  263. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 現在の顧問団はすべて総司令部の民事局の管轄になつております。
  264. 鈴木直人

    鈴木直人君 将来独立後の新らしい防衛隊に顧問ができたという場合には、その身分上の所属はアメリカのどういう機関に属しますか。
  265. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) この問題はなお当方におきましても、先方におきましても研究をいたしておるのでございますが、特に顧問として米国から正式に派遣してもらうということは当方としても考えておらないわけであります。便宜駐留軍の将校で手のあいた人に事実上必要な知識経験において協力を仰ぐ、こういう事実上の関係になるのじやないかと存じますが、なおこの点は今研究をいたしております。
  266. 鈴木直人

    鈴木直人君 海上警備隊に属する部分については、同じように顧問がつけられるようなことになりますか。
  267. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これはアメリカ海軍の人から協力を受けるというようなことになるかと存じます。
  268. 和田博雄

    委員長和田博雄君) ほかに御発言がなければ、政府に対する質疑はこれで一応全部終つたことにいたします。本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十九分散会