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国務大臣(大橋武夫君) 先般
和田予算
委員長より政府に対しまして自衛力漸増
計画の全貌について資料を
提出するような御要求を頂いたのでございます。政府といたしましては、警察予備隊は直接戰争を
目的としたものではなく、国内治安の必要から編成をいたしておるものでございまして、これが直ちに御要求になりました自衛力そのものに該当するや否や、多少研究の
余地があるとは存じておりまするが、併し今日国内におきまして自衛のために持ち得るといたしまするならば、この警察予備隊が差当
つて考え得る唯一のものと存じまするので、それについての今後の拡充
計画を御説明することが適当であると存じましてこの資料を
提出いたした次第でございます。
この警察予備隊につきましては御
承知の
通り一昨年八月、七万五千人を以て発足いたしまして、今日まで人員を充足いたしたのでございますが、今年度におきましては諸般の
情勢に鑑みまして十一万に増強する必要があると存じまして、予算案として御審議を願
つておるのでございます。これに伴いましては当然に現行警察予備隊令を
改正する
法律を必要といたすのでございまするが、これも近く提案の運びに相伐
つておるのでございます。この十一万の増強以上になお今後の国内の治安並びに財政
事情等ま考慮いたしまして、必要であり又許され得るならば、政府といたしましてはなお増強いたしたいという
考えを持
つておるのでございまするが、併しながら何分将来のことに属しまするので、今なお研究の段階にありまして、具体的
計画として資料によ
つて申上げる
程度に達しておらないのでございます。即ち現在具体的
計画といたしましては、人員は十一万の増員以外に決定いたしたものはございません。
次に編成でございまするが、現在の警察予備隊の編成といたしましては、全体を統括いたしまする総隊総監部の下に四つの
方面隊並びに総隊総監部の直轄部隊、こういうふうなものから成
つており、又管理補給諸部隊というものがあるわけでございますが、今回増強される三万五千を以ちまして
只今の構想といたしましては、
方面総監部
一つを増員いたしたい、この
方面総監部を増員いたしますると、これによりまして約一万五千の人員を必要といたすのでございます。で残余の約二万名は現在管理補給諸部隊並びに直轄部隊が不十分でございまするので、この増強に充てる
計画をいたしております。なお特に幹部の指揮能力及び技能の向上を図りまするために学校等の整備をいたして参りたい。同時に今後の警察予備隊の幹部は、できるだけ警察予備隊自体で新らしく養成する必要があると心得ております。今日までの幹部といたしましては、
一般隊員から募集をいたしました者の中で、試験によ
つて選考をいたし幹部に任用いたした者、又従来の官庁その他の実務の経歴から見まして幹部の資格ありとして幹部に任用いたしました者、並びに昨年八月以降におきましては、逐次追放解除になりました陸海軍旧軍人の中で中佐以下の階級にあつた人々約一千人、こういう人たちを以ちまして幹部を形成いたしております。もとより今回の増員に際しましては相当多数の幹部を採用する必要がありまするから、これらの幹部に直ちに任用いたしまする者につきましては、同じような分野から選考をする必要があると存じておるのでございます。併し将来に備えまして、警察予備隊みずからの手によ
つて新らしい幹部を教養する必要があるこう
考えまして、特に新らしい幹部の養成のための教育
施設に全力を注ぎたい、こう
考えている次第でございます。
第三の装備について申上げます。現在警察予備隊において
米軍から貸興せられておりまする武器といたしましてはカービン銃、ライフル銃という機関銃、バズーカ並びに若干のピストル、こういうことに相成
つております。これらの武器はいずれも
米軍貸與にかかるものでございまして、ここ暫らくはこういう
状態を以て行かなければなるまいと存じております。殊に三万五千名二十七年度において増員される者に対する武器の装備も又米国から借受ける以外に方法はない。こう
考えているのであります。ただ警察予備隊が実際
米軍より貸與を受けておりまする武器を借りるやり方というのは、従来は総司令部の民事局所属に警察予備隊に対する
米軍の顧問団ができておりまして、これは中央から現地部隊にまでこの顧問団が駐在いたしまして、現地部隊についてまで指導をいたしているのであります。そこで武器は
米軍の顧問団が全面的に管理をいたし、その現地の顧問がその責任において保管をいたしてありますものを警察予備隊の隊員の個人に使用せしめる。こういう形をと
つておりましたので、従いまして武器の保管並びに管理という面につきましては、
日本側の諸機関は何ら責任を負うことなく、又保管の事務についても關與いたしておらなか
つたのでございます。併しながらこの方式につきましては
米軍側においても甚だ不便である、こう
考えておられまするし、又
日本側といたしましても、隊員各個人が直接に
米軍顧問団から使用の許しを受けるというやり方は、監督上又部隊の管理上不適当でございまするので、
日本側の機関が
米軍から一括して中央において引渡しを受け、これを今後は各部隊に、
日本側の機関に対して管理の責任を命じ、そうして管理者より部隊において借受けて使用する。こういう形にいたしたいと思いまして、これらの点につきまして
只今米軍側と事務的な打合せをいたしているところでございます。武器以外の車両、通信機等につきましては、現在においてもすでに国内
生産のものを使用いたしているのでございまして、これは今後も又こういう方法を続けて参るつもりでございまするが、現在の
状況では部隊として必要とするものは未だ十分充足いたしておりませんが、二十七年度予算の実行に伴いまして、大体車両、通信機等については十分なる装備を完成し得るものと
考えているのでございます。
なお今日警察予備隊といたしまして最も不便に感じておりますのは、適当なる演習場の
施設を持
つておらないということでございます。特に演習のための訓練につきましては、
米軍の使用いたしておりまする演習場を借受けて使用する、或いは又他の公共団体等の管理いたしておりますのを一時借受けて使用するというような
状況でございまして、これにつきましては速かに固有の演習場を持
つて自由に演習を実施するということが必要であるわけでございます。従来警察予備隊の訓練といたしましては、一昨年八月以来数次の予定を立てまして訓練を続けて参
つております。当初は各個訓練即ち個人個人の動作の仕方であるとか或いは武器の操縦方法、こういう訓練でございましたから、そう広い演習場を必要としなか
つたのでございますが、昨年の春頃から漸次部隊單位の訓練を実施いたしております。
只今のところは大隊單位、即ち約千名
程度を軍位といたしまする訓練をいたしておるのでございまして、これがためには最小限度二十万坪乃至二十五万坪くらいの敷地を必要とするように相成
つておるのでございます。将来更に連隊軍位或いは
方面單位の訓練を実施するということに相成りますると、数百町歩或いは数千町歩という広大な地域がなければ十分な訓練ができないということになるかと存ぜられますので、今年度におきましては、この演習場の獲得に工夫をしなければならない、こういうふうに
考えておる次第でございます。
警察予備隊の漸増
計画につきましては以上の
通り御回答申上げます。