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1952-03-20 第13回国会 参議院 予算委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月二十日(木曜日)    午前十時三十四分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     和田 博雄君    理事            中川 以良君            山本 米治君            小林 政夫君            内村 清次君            堀木 鎌三君            東   隆君            木村禧八郎君            岩間 正男君    委員            愛知 揆一君            石坂 豊一君           池田宇右衞門君            泉山 三六君            大島 定吉君            楠瀬 常猪君            左藤 義詮君            白波瀬米吉君            杉原 荒太君            鈴木 直人君            平林 太一君            宮本 邦彦君            岡本 愛祐君            小野  哲君            片柳 眞吉君            楠見 義男君            荒木正三郎君            中田 吉雄君            岡田 宗司君            吉田 法晴君            波多野 鼎君            山下 義信君            松永 義雄君            駒井 藤平君            西田 隆男君            岩木 哲夫君            深川タマヱ君   国務大臣    法 務 総 裁 木村篤太郎君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    文 部 大 臣 天野 貞祐君    通商産業大臣  高橋龍太郎君    労 働 大 臣    厚 生 大 臣 吉武 惠市君    建 設 大 臣 野田 卯一君    国 務 大 臣 大橋 武夫君    国 務 大 臣 岡崎 勝男君    国 務 大 臣 周東 英雄君   政府委員    内閣官房副長官 剱木 亨弘君    警察予備隊本部    次長      江口見登留君    地方財政委員会    委員      青木 得三君    地方財政委員会    財務部長    武岡 憲一君    行政管理政務次    官       山口六郎次君    外務政務次官  石原幹市郎君    大蔵大臣官房長 森永貞一郎君    大蔵省主計局長 河野 一之君    大蔵省主計局次    長       石原 周夫君    大蔵省主税局長 平田敬一郎君    厚生省引揚援護    庁次長     田辺 繁雄君    農林政務次官  野原 正勝君    通商産業通商監 黄田多喜夫君    通商産業大臣官    房長      永山 時雄君   事務局側    常任委員会專門    員       野津高次郎君    常任委員会專門    員       長谷川喜作君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○昭和二十七年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十七年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十七年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 予算委員会を開会いたします。  昨日に引続きまして一般質問を続行いたします。
  3. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 岡崎国務大臣に二、三お尋ねいたしたいのでありますが、岡崎ラスク代表交換公文はこれは條約の一部でありますか、どうでありますか。
  4. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 通例交換公文は、そのとき結びました條約なり、協定なりの一部をなすものとされております。今回の交換公文行政協定の一部をなすものと考えております。
  5. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 今のお答えは二様に解釈されて明瞭でないのでありますが、従来のこうした交換公文は條約の一部という場合もあるが、今回は行政協定の一部の事項である、こういうことで行政協定の一部の事項であるところにウエートを多く置かれて御回答でありましたが、それであるならば、特に岡崎大臣からラスク特別代表に宛てたこの文書は、いわゆる憲法で制定されている国有財産、これは第八十三條及び第二十九條、二十二條、三十五條で制定されている国民財産権及び居住権を侵害する事項を相手の代表の人に約束をしている。法的手続をとらずしてただ交換公文約束しているということは、これはどういうことなんですか。
  6. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) どうも御質問趣旨がよくわかりませんが、私からラスク代表に宛てた手紙の中で、法的手続をとらないで約束しているということは、例えば施設区域協定ということでありましようか。そういうことであるならば、これは行政協定の一部をなすものでありまして、行政協定の中で本来なら規定さるべきことでありまするが、この私の書簡なり、ラスク氏の書簡なりに記載してある事項一種の過渡的のことでありまして、この行為が済んでしまえば自然消滅するような事項であつて、本元は協定二條に書いてあるのでありますから、それで書簡にいたしたまでの話であります。
  7. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 それは過渡的のことであるといたしましても、この本文に現われておりまするように、合衆国軍隊による施設及び区域使用が、それ七れの政府日本国との平和條約、安保條約及び行政協定に基いて有する権利條件としてこの予備作業班合同委員会ができるまでの間は予備作業班にその接収権利を與えておる、そうしてこれは直ちに効力を発生するということがここに明文化されておるのであります。で、直ちに接収されることが効力を発生することを予備作業班に與えておるということは、法的手続をとる前の即ち手段としては、ただ経過というだけでは済まされない。特に第八項においては従来の占領軍使用しておる施設その他の使用継続を、平和條約が発効した後も日本国政府に代つて合衆国にこの使用継続を許可するということを言つておる、使用継続を許可するということは、いわゆる土地収用令その他によつて日本法的措置を講じて、そして裁判の判決によつて、これが占領軍解除されて平和條発効後における措置とされなければならないのにかかわらず、この條文においては、そういつた手続をとる前に岡崎国務大臣私有財産アメリカ政府及びアメリカ合衆国軍隊使用の許可を與えるとは、これはどういうことなんですか。誰もそんなことは岡崎国務大臣に、官有財産といえども、或いは私有財産といえどもそんな外国軍隊使用を與える権利を與えた覚えはありませんが、どういうことなんですか。
  8. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 第一の御質問の点は、予備作業班のことでありますが、これは書簡の上にはこう書いてありまするが、実際上は解除されるものがかなり多くある予定でありまして、その解任されることにきまつたものを講和條発効まで待つということは、国民にとつても決して都合のいいことでないと考えましたので、予備作業班で合意されたものは直ちに実行されるようにすると、こうやつたのであります。そこで新らしく接収されるようなものがありとすればそれは事実上は予備作業班でやらないで、合同委員会で條約の効力発生後やるのであります。これは解除されるほうの問題ばかりであります。若し事実上解除じやなくして、新らしく予備作業班決定によつて新らしい接収等が行われるとすれば、それは問題であります。併し解除ばかりであるならば、形式的にはこれは占領軍解除するのでありまするが、事実上講和條発効までそれを待たなければならんという理由がないと考えましたので、こういう書簡を出したのであります。それからあとの問題につきましては、これは誰が見ましても事実上いたし方がない場合であるのでありまするから、実際上これは仕方がない問題と思いますが、こういうことは恐らくないであろうと考えております。併しながら仮にありとすれば、それに必要な法律が成立したときにこれはできるのでありまして、法律が成立しなければ実施はできないのであります。
  9. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 先に私が質問した要点大臣は外されておりますが、私は平和條約、安保條約が発効と同時にこれらの公文なり、行政協定発効すると政府は言われておる。その以前に解除されるという、ものは解除を予想されるに過ぎないのであつて、実際の解除占領軍という体制平和條安保條約が発効と同時に解除される。但しそれは九十日間の期間がありといえども、とにかく占領軍に使われるのである。そこで占領軍接収しておるものが行政協定が即日発効することによつて直ちに接収継続使用する意図を先からこれを謳つたのであります。これは法律によらない限りはいけないのであつて、それを大臣がただ公文書国有財産私有財産を通じて続いて継続使用することをアメリカ駐留軍に認めるというならば、同時にそういう法の手続をとるということの公文書でなければいけない。あなたはこの公文書において国有財産及び私有財産接収状態継続をそのまま駐留軍にも権利を與える、権利権能権力を與えるという意味のこれは公文書であつて、誰が見ても仕方がないというのはどこを根拠として言われておるのか。いわゆる占領軍体制というものは平和條約が発効と同時に解消される。従つて自由独立するから日本国民が非常な犠牲拂つて、今日いわゆる平和回復処理費と称せられる二千億の予算も計上しておるわけである。これらの大きな血の犠牲払つてこの平和を獲得しようというときに、占領軍体制と同時に同じような接収状態継続されることは止むを得ないということは、何を根拠として言われておるのか、これは全くわからんじやないですか、もう一度お尋ねいたします。
  10. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私の申しておるのは、あなたのおつしやつたその私の書簡の末段のことを言つておるのであつて、九十日以後でも、例えばこちらからあちらへ移る建物ができない場合には、そのできるまでの間は当分今いるところにいざるを得ないと、こういうことを申しておるのであります。
  11. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 どうも大臣は、私はこの点においては非常な疑問を持つておるのですが、要点を外されるので困ります。私は特にこの公文書の中ほどにおいて、予備作業班が取極めたことは直ちに効力を発生するということは、これは行政協定の一部だと言われる観点から見て、法律に代る、或いは法律と同等の効力を発生することを予備作業班に事前に與えているということに私は疑問がある、これはむずかしく言えば憲法背反であります。それが一点と、特に末項を繰返して言いますが、我々の財産国有財産私有財産はまだ駐留軍に貸すか、貸さないかは未決定の問題、未決定の問題を政府が先に貸すという約束をしているということは違憲ではないか、特に個人の財産権居住権を侵犯するも甚だしいこれは行為であるということを私は指摘しておるのであります。かようなことは、これが私は屈辱外交だというのであつて駐留軍日本の必要に応じて、懇請において駐留するということに対する日本協力はこれは我々も拒むものじやない、協力すべきだと思うのです。併しその協力とは法律的措置を持つて順序を踏んで行かなければならないものを、あなたのこの公文書は飛躍しておる。法律なり、憲法條文を蹂躙して飛躍して、その意思を、或いはその態度を結び付けているというところに問題があるということを私は指摘しておる。その点はくどく言いませんが、まさに憲法違反であると断定せざるを得ないと思いますが、大臣はそうはお考えになりませんか。
  12. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 無論憲法に違反したど思つてこういう協定を結ぶわけはないのでありまして、憲法法律その他いろいろの規定、それから国際條約というものの性質等考えまして、これで差支えない、こう考えて結んだわけであります。
  13. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 大臣はこれで差支えないと言う。私は差支えないどころじやない、大変なことだと思いますが、これは議論になりますから、一応これは後の問題といたします。それから次にお尋ねいたしたいことは、この行政協定がいわゆる日本三権分立に対する侵害的な事項及び内容が多岐多様に亘つておることは、今日までの委員会でそれぞれ指摘したところであります。殊に司法権の侵害の点などは特に三権分立の上の崇高な立憲政治立憲社会を維持する、秩序を維持する上においての問題であるのに、ただ一片の行政協定を以てこれを料理しておることにつきましては、より政治的に問題がありますが、特に私は指摘いたしたいのは、今回合同委員会を設けるということにおいて、事後のいろいろの行政協一定でなお残されたもの、特に第二十四條或いは第二十五條等に関連する問題について合同委員会の受持つ責任は重大である。又この内容は依然としてまだ明快でないのでありますが、この合同委員会の性格と申しますか、資格と申しますか、アメリカ軍日本駐留一する、いわゆるこの行政協定一條、第二條にいう権利権力権能というものと対比して、この合同委員会というものは、どういう資格と、どういう権能と、どういう法律的根拠があり、一資格があるのか、この際これを明確にしておいてもらいたい。
  14. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 合同委員会法律上の権限等は持つておりません。ここに書いてありますように、協定実施に関して相互協議を必要とする事項について協議をいたす、こういうことでありまして、更にその協議がまとまらない場合には両国政府間で相談をする、こういうことになつております。結局は最後には政府の承認を得なければ無論できないものでありますが、いろいろ相互の間に話合をいたすような必要がありましようから、連絡の意味を以ちまして、そうして殊に施設及び区域につきまして特に任務を與えられておるのであります。今御指摘のような第二十四條は、これは特別規定でありまして、第二十六條は一般規定であります。従つて特別規定一般規定に優先する建前から、日本区域における敵対行為等の場合におきましては、これは合同委員会を通じないで日本国政府合衆国政府とが協議をする、こういうことになつております。
  15. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 合同委員会協議がまとまらない場合には、両国政府協議してこれを決定するというのであります。ところが合同委員会できまつた事項は、日本の場合、日本国内的においては法律と比べてどういう権能権利資格、権威があるのか。若し合同委員会できまつたことを、国民がそれは服従しない、応じないといつたような場合には、どういう罰則規定取締規定があるのでありますか。
  16. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 国民権利義務等に直接の関係があるものは、それぞれ国内法によつて規定されるのであります。合同委員会決定は、国民に直接の権利義務は及ぼさないのであります。若しそういう何か及ぼすような場合がありとすれば、それは日本国内法に基いて、それに従つた決定をいたすことばかりであります。
  17. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 岩木君、大蔵大臣も来ておりますから……。
  18. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 これは国民権利義務に及ぼす事項に直接でなくても、国の行政事務或いは財政措置、そういつた問題にも直接間接に影響することが甚大であります。この中を見ますれば明らかでありますが、それまでの権利権能合同委員会に許される、その任務を與えた根拠はどこにありますか。
  19. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは政府行政担当機関として行い得る範囲のものを合同委員会にその一部を與えたのであります。政府の一部の機関としていたすのであります。
  20. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 時間もないので、次にそれじやお尋ねしますが、この行政協定にはおのおの各自の義務具体化ということがありますが、アメリカ駐留軍日本駐留する義務なるものは、ただ日本防衛をするというだけの大まかなことであります。ところが日本政府施設土地、あらゆる関税、あらゆる法律まで改正して具体的にこれらの義務具体化しておりますが、アメリカはこの行政協定に関連いたしまして、どうした具体的義務を列挙し得ることができますか、この点を御指摘願いたし。
  21. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この協定権利義務を取合うという協定ではないのでありまして、今御指摘のように、アメリカ日本防衛する義務を持つておる。この防衛ということを簡単にお考えになりまするけれども、万一の場合にはアメリカの国費を非常に消耗するのは勿論でありまするが、アメリカ青年子弟日本の国のために死ぬ場合、負傷する場合等も予想されるのでありまして、これはそう簡単に片付けられる問題でないと思います。これが一番大きなこの安全保障條約のアメリカ側としては苦痛とするところであります。これをしてもらうために日本側としてはでき得るだけアメリカ軍が居心地のいいように、そうして且つ日本のために戦つて、場合によつて犠牲拂つてやろうという決心の付くようにいたそう、これが安全保障條約の趣旨であり、行政協定趣旨であります。
  22. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 それはそうしたことが起るであろうという想定であつて双方の合意に基いて対等であるべきはずの行政協定が、アメリカ軍がそうしたことをしてくれるであろう、又こうした犠牲もあるであろうということにおいて、こちらがすべてのものを捧げておる。こういうことはいわゆる平和條発効後に発効するこの行政協定本質論から見まして、共同の義務、おのおのの義務具体化という点には欠けておる点がある。そこに一般論としまして、行政協定に対するいろいろ批判があると思うのですが、アメリカ軍は自由に日本区域というこの行政協定区域を指定いたしておる。日本区域とは、グアムも、沖繩も、或る場合には小笠原も全部指摘されておる。或る場合においては、広義の解釈では朝鮮指摘されておる。こういつたような状態などから、アメリカ軍日本四つの島以外の日本区域、即ち沖縄であるとか、或いはグアムであるとかいつたような所に作戦の必要上撤退するというような場合に起る日本防衛責任というようなものは、これはもう大変な問題であろうと思うのですが、こういつたような日本四つの島を飽くまでも死守するという基本的な條件がこの行政協定の中に謳われておらないということは、私は政府の失態ではないかと思うのですが、この点に対する将来第二十四條によつて生ずる場合に想定されるアメリカ軍行動義務、こうしたことにつきまして折衝の衝に当つた岡崎大臣はどういう見解をお持ちか、御披瀝を願いたい。
  23. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) いろいろの御質問がありましたが、先ずこの協定は本来平等であるべきものが平等でない恰好になつておる、こういう点でありますが、これは残念ながら、根本的に言えば平等ではないのであります。片務的なのであります。というのは、日本が危険に追つたときはアメリカ安全保障をする努力をするということでありまするけれども、アメリカが危険な場合に日本が行つて安全を保障するという規定はないのであります。従つて我々のほうから言えば、アメリカ軍隊日本のために働くというだけであつて日本側アメリカのために働くという、いわゆる双務的の條項がないのでありまするから、その点においては片務と言われても仕方がないのであります。それからそういう片務的の場合でありまするから、日本のほうばかり義務があつてアメリカのほうは義務がないじやないか、金を出したりするような、こう言われますが、それに対して私がアメリカ軍は多大の犠牲を予想しておるのだと言いますと、それは現実に起つていないと、こうおつしやいますが、これは私は例にとつて果して確かどうかは別としまして、わかりやすく申せば、一種保険をかけておると思うのであります。保険会社保険金を拂う。そうかといつて火災保険を拂つたところで、火事が起るかどうか、これはわからない。火事が起らない場合もあるじやないか。併し保険金は出すのであります。それでこの場合でも、日本攻撃するというような場合が将来起るか起らないかわからない。併し起つた場合には大変であるからして、それに対する所要の安全保障をやるのでありまするから、まあいわば保険金をかけるようなつもりで我々はやつております。併しただ家が焼けるなんということと違いまして国の独立を失うかどうかという大問題でありまするから、そういう場合に対しては、日本側でも相当の負担をいたしても将来に亘つて安全の保障を確保する、こういうつもりで来ておるのであります。それから日本区域という問題でありまするが、これは例えばグアムが入るとか、フィリピンが入るとか、朝鮮が入るとか、そういうことではないのであります。これはこの前も申上げた通り日本領土というふうに書きますと、日本領土に直接の侵犯があるまではこの安全保障條約のアメリカ軍の出動ということは起らないと解釈される危険がある。明らかに日本側に向つて大部隊が侵略するような、まあこんなことはないとしましても、仮定しました場合に、日本領土に入つて来るまでは手をつかねて待つておるのだというわけには行かないので、日本区域といたしたのであります。そうして更にアメリカはどういうことをするのか。これは安全保障條約の第一條にあります通り、「外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄與するために使用する」、こういうことになつておるのであります。
  24. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 どうもぴんと来ませんが、もう一、二お尋ねしたいのは、アメリカ上院議員スパークマン氏は、この行政協定は正に日本にとつては不利であつた、そうしてこれがために日本反米思想或いは反米運動が起りはしないかというような懸念をしたような外電がありまするが、この行政協定において我々も非常に憂えるところは、折角アメリカ軍日本駐留を懇請しておりながら、この行政協定内容におきましては、国民感情を悪く刺戟するところは甚大であります。これはアメリカスパークマン上院議員指摘しておる通りでありまして、こうした結果、反米思想が起るとか、反米運動が起るとかいつたような責任日本政府にあるのじやないかということは一部かなり言われておりますが、政府の御見解は如何でありますか。
  25. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私はこの行政協定において反米思想の材料になるようなものは一つもないと考えております。若しそういうことがありとすれば、イギリスにおいてはやはり反米思想が起るべきはずでありまするが、イギリス協定日本協定とは実質上何ら変化がないものであります。この協定から反米思想が起るというようなことはないと考えております。尤も国会議員は、アメリカでも日本でも反対もあれば賛成もあるのであります。現にこの委員会でも反対される有力な議員はたくさんあるのであります。それを一々取上げればきりがありませんけれども、国会の論議は別としまして、事実私はどこにもそんな反米思想を起させるようなものはないと考えております。そこで政府に対するまあ野党という言葉は悪いかも知れませんが、反対党政府攻撃されることはこれは御自由でありまするが、我々の願うところは、政府に対する攻撃が将来の日米間の国民感情を悪くするような方向に行かないことを非常に願つているのであります。
  26. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 それから最後にお尋ねしておきたいことは、この行政協定にも現われております。ごとく、アメリカ合衆国及びアメリカ合衆国軍隊といつたようなことで、アメリカ合衆国駐留軍アメリカ合衆国とが二つに、この内容に分れた取極事項があります。そこでこの行政協定発効され、即ち平和條発効後において、日本にはアメリカ合衆国代表するアメリカ大使館の意味であるか、或いは大使館と違つたアメリカ合衆国代表機関が、何か指導機関のように日本に設置されるのかどうか。それから別個にこの駐留軍の、又総司令官が当然おられると思うのでありますが、こういうものも勿論日本に置かれる。そういつた場合には、日本には占領下中と同様な、或いはそれ以上のようなことになるのではないかということも考えられますが、こういつた問題について一つ承わつておきたいと思います。
  27. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) とかくよく世の中にそういう種類の誤解がありまして、丁度適当な御質問でありますから、簡単にお答え申上げておきますが、アメリカ合衆国代表する機関は大使館であります。日本政府が正式にアメリカ合衆国と交渉に当るのは大使館であります。それ以外の機関日本でも将来外国に置く場合もあると思います。例えば財務官であるとか、商務官であるとか、その他国連の代表部であるとか、いろいろなものがあると思いまするが、これらはすべてその国の大使を通じてその国に対して交渉いたすのであります。或いは申入をいたすのであります。アメリカ駐留軍司令官は無論いるはずでありまするが、この司令官が直接日本政府と交渉する権限もなければ、その機会もないのであります。従つて先ほど御指摘になりましたように、合同委員会というものを作りまして、これが直接に軍隊の意向も代表する。委員が来まして日本側委員とそこで話合いをいたして連絡を密にする。併しすべて正式の日本政府に対する交渉というものは、これはアメリカの大使を通じてなさるべきものであります。又大使の権限と申しますものは外交交渉に限られておりまするから、内政に対する一種の注文とか、話合いとか、そういうものは今のような状態は全然なくなりまして、純然たるこれは外交機関になるわけであります。従つてこの点では占領と独立とのけじめは非常にはつきり付くと考えております。
  28. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 大蔵大臣に二、三お尋ねしたいと思いますが……。
  29. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 ちよつと関連して……。岩木さんの最後から二番目の御質問に関してちよつと関連事項でお尋ねいたします。過日来政府の御答弁を伺つておりますと、二十七年度の予算では、防衛費は日本の財政の許す最大限度をいつているということで、ございました。ところがここに一旦緩急が生じまして、アメリカ日本並びにその周辺を防衛してくれますためには、増員をしたり、或いは行動を起しますために経費が殖える場合がございます。その場合にも、常識から考えますと、日本の分担金は殖やさなければならないように思えますけれども、さつき申しましたように、日本の財政から申しますと、最大限度出していると申しますと、出せないわけでございますが、どんなにアメリカ軍が殖えましようとも、どんなに経費が多くなりましようとも、全部アメリカ犠牲において守つてくれる、こう解釈してよろしうございましようか。
  30. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) お金の問題でありまするから、丁度大蔵大臣がおられますから、大蔵大臣からお答えいたします。
  31. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 行政協定の第二十五條をお読み下さるとわかると思います。第二十五條の第一項には、第二項の日本の負担する以外のものは全部アメリカが負担する、こう書いてある。二十五條第二項の一号は、アメリカ駐留軍日本駐留いたしますためのレソト、即ち不動産或いは建物の賃貸料は、これは日本で負担する。そのことはアメリカ相互安全保障法で、アメリカはどこの国に駐留いたしましても、不動産の賃貸料等は拂わんという規定を置いております。これに対しまして、日本もその規定によりまして九十二億円の賃貸料は拂う。それからそのほかは一億五千五百万ドル、即ち五百五十八億円、これだけは拂う。それ以上要つた場合には第一項に遡りまして、全部アメリカが負担することに相成つているのであります。二十五條にはつきり規定してあります。
  32. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 大蔵大臣にお尋ねいたしたいのは、昨日マーカツト局長に大臣がお会いになつて、外資導入の問題でいろいろ懇談された。その際にメモを渡された。外資導入を前提とする條件と申しますか、考慮すべき三條件を渡したと新聞に出ておりますが、これは事実でありますか。
  33. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先般来当委員会にも問題になりまして、機会があつたら真意を聞こう……。一応私はマーカツト局長の日頃の考え方を知つておりますから、総理の関せずというお答えのあと、私が敷衍して答弁したことは御承知の通りであります。昨日は定例会見の日でございまして、たまたまこの問題がありまして私は確認しております。今まで自分はこういう考えでいる、そして議会でもこういう答弁をしている。あなたの声明は詳しくは読んでいないけれども、根本思想はこうだろうと言つたら、そうだ、念のために自分が書いてみようと言つて三項を書かれたのが、昨日ここで発表したものであります。今日の新聞にも出ておりますが、間違い、ございません。
  34. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 それではメモを渡されたということの動機は、大蔵大臣考え方というものをマーカツト局長に言われ、マーケット局長もそれはその通りだ、それじや念のためにメモを書いてくれというので渡された、こう解釈してよろしうございますか。
  35. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 念のために書いてくれと暑い喜ん。いろいろな書類を見ている間に向うがこういうメモを書いたので、私が要求して書いたわけじやございません。自分はこうだと言つて出して、私が読みましたらその通りだと言つた。こつちから要求したわけじや、ございません。
  36. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 総理大臣が第十三国会において施政演説をされた。外資導入の必要性を説かれ、それによらざれば日本の自立経済は成立つて行かな、いという基本的な、本年度の或いは今後日本の向うべき財政経済の要素を政府が披瀝された。ところが昨日大蔵大臣がお会いになつてから、まあ念のためにというのか、お話合の結論がここにあつたということは、これは総理大臣が施政演説をされる以前からこういう方針であるという大蔵大臣なり総理大臣は御見解を持ち、この見解に立つて外資導入を図るべきであるし、又この見解に立てば外資導入が可能である、こういう基本的な考えでおられたわけでありますか。
  37. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) さようでございます。いささかも変つておりません。
  38. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 そこでお尋ねいたしたいのは、それなら商業採算で十分償還も可能であるという條件、事業計画、それから返済計画というようなものが明確なものであるならば外資の導入が可能である、こういう御見解だろうと思うのであります。然らばこの場合に、政府はこの商業採算で事業計画は十分そろばんが立ち、而も返済計画が立つて行こうというようなものは可能であるという見解で方針を立てられておると思うのですが、その具体的な、例えばどういう事業が商業採算として成り立つて行く外資導入の機関であるし、方法であるか、或いはその内容例えば鉄鋼であるとか、肥料であるとか、造船であるとか或いは電力であるとか、それぞれ具体的な外資の導入をしようというその計画の内容をこの際承わつておきたいと思います。
  39. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 計画検討はいたしておりまするが、その内容をここに申上げるまだ段階に至つておりません。
  40. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 それじや内容は全部言えないとおつしやいますが、これはすでに第十三国会で総理大臣が披瀝されていることであるし、今日相当の日数もたつているときに、まだその内容が言えないということじや日本の産業構造というものの前途が業界にいたしましても立たないじやないですか。例えば当面電力の問題にしても或いは造船資金の問題にしても或いは肥料の問題にいたしましても、その他重要基礎産業というものの動向が、政府資金のみではいけない、どうしても外資導入によつて行くべきだということの指導方針を政府は披瀝して、まだその内容国会に明らかにできんということはこれは一体どういうことなんですか。若しできなければ私は具体的にお聞きいたしましようか。お尋ねいたしたいと思います。
  41. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 岩木さんと私の考え方の前提にちよつと食違いがあるようでございます。総理は施政演説におきまして、外資が来なければ日本の経済は立ち行かんとは言つておられないのであります。外資は今まで或る程度は参りましたが、国民各位の努力によりまして自立経済の発展は着々と功を奏しつつあるのであります。而して総理は外資が来れば日本の経済自立が急速に達成し得る、こういうことを言われまして、外資の導入について政府の施策に重点を置かれているのであります。それで今外資は来なければ日本の経済は立てないというわけではございません。只今のお話のように電気におきましても昭和二十七年度には千億円以上の投資を予定しております。又造船にいたしましても相当の計画をし、最近では外資と名付けることは語弊があるかないかわかりませんが、相当の外国の注文を受けまして船台に殆んどフルになるような状態に相成つておるのであります。而して又お話のように遊休設備も相当ありますし、又その遊休設備を近代化し得る場合も相当あるのであります。我々は個々の産業につきまして、電気といわず或いは製鉄業といわず、石油業といわず、化学工業といわず、各方面につきまして外資を受入れるような受入態勢を作るのであります。而して法的の問題といたしましては、外資法が十分でありませんので、今後民間外資が入りいいようにするためには出ることが楽なようにしておこうということから外資法の改正をする。或いは綿花借款におきましても四千万ドルの十五カ月のクレジットを得るとか、いろいろな方法を講じているのであります。綿花ばかりじやございません。外のほうにもそういうふうなアメリカの品物を日本へ入れるためのクレジット等につきましても私は考えているのでありますが、今こういう事業に対してこれだけのクレジットを要求しようとしている、こういうことは私として今申上げないほうがいいと思いまするが、あの手この手で外資の導入を図り、而も善通の自力での経済発展を外資の助けを得て急速に、而も完全とは申しませんが有効にやつて行こう、こういうのが我々の考え方であります。
  42. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 くどいようですが、もう相当外資導入をおふれまえになつてから日数もたつているのでありますから、この際やはり大蔵大臣はどういう業種が外資導入受入れの可能の基礎産業であるか、日本の産業構造の上に必要なものであるということは、この際この国会において明らかにして、そうしてこの外資は、いわゆるアメリカ民間の例えばシンジケート国その他においてやられるのか、或いは両国政府の何らか保証の下においてやられるのか、こういつた点をそしてどの程度という金額の予想、外資導入をしなければ日本の自立経済が成り立つて行かないということについての御見解は、今大蔵大臣が多少訂正されましたが、よりよくなるということに対する外資導入の希望総額というものもおよそなくてはいかん、むちやくちやに入れてもいけない。およそ限度もあろうし能力もあると思うし、そういつた予想金額、どういう業種業態、これは民間から民間に直結するものか、単独責任で行くのか、或いはシンジケート団組織において受入れするのか、或いは両国政府がこれを保証するのか、こういつた点を一つ明らかにしてもらいたい。
  43. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は前からの考え方を訂正いたしておりません。先ほどの答弁もずつと昔から二、三年前からの答弁と同じでございまして、何ら変りはないのであります。いかなる産業に外資を期待するかというと、私は日本の経済力を強める産業、而して又その次には東南アジア開発に資する産業、又ひいては世界経済に貢献し得る産業に持つて行きたい。而して今までの状態を見ますると、これはアメリカ人の話ですが、日本の外資導入は、日本の実業家或いは金融家が先達にならずに、アメリカの会社の重役等が日本に来て、或いは日本に支店をおいてそういう者がやつておられる。これは本筋でないので日本の会社、日本の銀行が話をしたほうがいいだろう。こういうふうな意見もありますので開発銀行の保証規定を置くとかいろいろな手を考えております。これは度々申上げることでございまするが、外資の導入につきましては民間と民間との問題もあります。これが一番普通のやり方でございますが、この支障になつているのは外資法の関係でございます。即ち入つて来ることは認めるけれども、出るときには非常にきつい制限をいたす、これじや入つて来ませんから出るときも割に楽に出得るように改正をしよう。民間のほうの分では、私が業者の話を聞いているのは、いわゆる繊維工業、或いは石油工業とか、こういうものがございます。又最近ではいろいろな工作機械のようなものもありまするが、これも異口同音に、とにかく外資法が改正になつて利潤その他の元本の返ることが期待し得るような方法にしてくれということが要望であるのであります。これは昨日も答えましたが、先般の第一回の日米の商工会議所連中の大会でこの点を私は応援いたしまして相当効果を挙げたというように考えているのであります。  以上は民間投資の問題でありまするが、次には向うの政府機関とこちらの民間との場合、それはいわゆるアメリカの輸出入銀行がアメリカの製品を日本に売つた場合のクレジット、これは現に綿花借款で四千万ドルできております。今後どういうものにつきましてこれをやろうかということにつきましては私には腹案がございます。綿花ばかりに限らずほかのものでも行き得るのじやないか、これは主として建前はアメリカの製品を日本に持つて来る、海外に持つて行くための金融なのであります。併し最近の情勢は輸出入銀行もそれに限つたことはない、輸出入銀行が民間の商社とタイアップしてやる場合もあるのでございます。そういう点を研究いたしまして第二段の方法として輸出入銀行を使う場合もあるのであります。  第三段の方法といたしましては御承知の国際通貨基金に加入いたしまして、世界開発銀行からの投資を受ける、この問題は先の国会におきまして国際通貨基金加入のための二百億円を計上して御決定を願つているのでありますが、日本の割当その他出資の問題につきましてなお折衝を重ねておりまするが、近目中には入り得ると思います。こういたしますとIMFの組織を通じての点も考えられます。  第四段目の点はいわゆる政治借款と申しますか政府政府、或いは日本政府と向うの金融団、昔のあれで申しますると外債、こういう問題があるのであります。昨日もここで申上げまするように、ポリチカルの政治借款というものは、これはアメリカ政府アメリカ国会がやることである、こういうことを言つておりましたが、この問題は多分にいわゆる政治的意味を持つているので私が今ここで政治借款がどうとかこうとかいうことは申上げかねます。これは衆議院の予算委員会におきましてもたびたび聞かれましたがこのことについては何も申しておりません。ただ問題は昨日のマーカツト少将との話の第二段にあるが、ごとく日本のドルを積んだつて、これはドルを積むだけでは効果がない、日本にドルを持つて来まして、それでそれに相当する円資金を国内に散布いたしますると、これはインフレの危険性が多分にある。そこでこれは今外資導入につきまして、何としても増産等のためにできるだけ原材料を入れる、或いは設備の近代化、これを図るのにお金を使わなければならんと思います。これは誰が考えてみてもそうだ、日本は二年前はドルを殆んど持つていなかつた、過去二年間の努力によりましてドルは六億ドルになつている。ボンドは一年間に七千万ポンドの増加をしている。オープン・アカウントにおいては一年間に七千万ドルの増加をしている。こういう状態でありますから徒らに外資々々ということよりも持つている金を有効に使う。そうして又ここ一、二年は相当ドルが入つて来ると思います。で極力日本の経済の将来を見越して、この際に外貨資金を有効に使い、そうして若し特需関係その他がなくなつた場合におきましてはこれはもう外資に頼るほかはないのであります。そういう二段がまえの気持を以て進んで行こう。而して今ドルがあるからといつて差向き外資導入は要らないのだと考えてはおりません。あればあるほどよい。日本の貿易上からいつてドルが六、七億ドルの常にたまりを持つているということは、国の信用上からいつてもこれは適当なことであるので、一定のドルを持ちながらドルをどんどん使つて行こう、而してそれによつて日本の経済が伸びて行けばこれを利用して外資をどしどし入れる、こういう考えで進んでおるのであります。
  44. 和田博雄

    委員長和田博雄君) もうあと五分しか時間がございません。農林大臣は来ておりません。政務次官が来ております。それから厚生大臣も見えております。
  45. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 時間がないので大蔵大臣にもう一点お伺いしたいのは、日本の産業がよりよく発展するためにこういう商業採算を基礎とした事業もあるなら、又今は犠牲拂つても社会性を帯びた公共事業的な商業採算は合わないが、日本の発展のためには或いは民生安定のためには社会事業的なものなどもある。これらの返済計画も両二、三年では返済されませんが十年先では返済されるというようなものなどいろいろあるのであります。そこでこのマーカツトのメモによる三原則の問題は、第一に商業採算を基礎としているようであります。ところが商業採算で現在一番飛躍的に成り立つのは軍需産業だろうと思います。更に今回日本予算においてもアメリカ自体からの発注から見ましても、早くも軍需産業が指定工場になつているその実態から見ても、株式市場その他現在の生産状況、将来の見通しから見ても、軍需産業が商業採算はいわば今後可能なものだと判定されますが、こういう軍需産業には外資導入はメモランダムの第一の項目に当てはまると思います。一番要素として。そこで商業採算を重点に置くのと、日本の自立経済発展の基礎産業として置くのとでは、非常にその内容も、返還計画自体も違うと思います。が、こういう方面に対して政府はどういう指導と申しますか、見解を持つのかということを一点お伺いしたい。  それからもう一つは政治借款が、これはマーケット局長も池田大蔵大臣も何ともそこできめられることではない、ということはわかつております。ところが先のメモランダムの第一項の、商業採算に基礎を置く借款の方法と、もう一つは政治借款、いわゆる日本がこれは先ほど私が申したことと多少矛盾するかもしれませんが、防衛機構なり防衛施設を増強するために政治借款をするというその一つの考え方と、それから遠大な日本の自立経済の基礎構造に導入する、或いは社会性を持つた方面に導入するために政治借款をする性格のものがある。こうした問題は国民の負担が防衛計画において堪えられるとか、堪えられないとかいろいろ議論もありますが、将来政府はこうした防衛計画に導入する外資の借款を国会の承認を得て、或いは政府へ要請するとか、或いは社会性を帶びた民生安定のために政治借款をするというようなことを国会の承認を得てやる意図があるかどうか。あるならば大体の商業借款と睨み合わせてどうした規模が適当であるか、どういう御見解があるか一つ承りたい。
  46. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御質問の第一点は、コマーシャル・ぺースで行くならば、軍需産業が一番よいのじやないか、そういう考えの下に軍需産業としての外資の導入がどの程度見込まれるか、或いは政府はそれにどういう考えを持つておるか、こういうことでございますが、軍需品の生産と申しましても、これが平和産業にた易く切り替え得るものと又なかなか切り替えにくいものがあります。そういたしますとコマーシャル・ベースもそこで動いて行くりであります。一概にお話のように軍需産業がコマーシャル・ベースに乗るとも考えられません。又軍需関係でも品物によりますと今の既設の設備を使つてできる場合もあります、又固定資産をふやさなければならん場合もあります。併しこういう軍需品の注文を受ける人は、私の身にもなつて考えて五年も十年もこれが続くかどうかということを考えますとなかなか困難である。例えば飛行機の製造をやつたといたしまして、製造工場はあるけれども、今度は滑走路までそのできた飛行機を持つて行くのに非常な金がかかる、そこまで移転するには。そういう場合については飛行機の生産ではかなり儲かるけれども、その固定資産の滑走路に大金を出してやるということは困るというので、外資導入がちよつと一時停頓した場合もあるので、ございまして、個々の問題についてこういう場合どうか言つてもなかなか答えはむずかしいのであります。そこはやはりコマーシャル・ペース、お互いの民間の見通しによつてきまるべき問題だと思います。  第二の御質問の社会事業的のものにどれだけの政府借款をするか、或いは経済発展のためにどれだけの政府借款をするか、これに対しての腹案はありません。
  47. 東隆

    ○東隆君 私は先般総理大臣質問をいたしましたときに、主務大臣をして説明をさせる、こういうような御答弁があつた問題についてお伺いをしようとこう思つてつたのでありますが、その第一点は行政機構の問題なんでありますが、その行政機構については、まだお見えになつておらんわけですが、それでそれに関連してその次の問題は、実は文部、建設、それから農林三省に関係をした問題を取上げているわけであります。それでその問題もあとに延ばされるので、私としてはあとの問題は実は附けたりのつもりであつたのでありますが、取りあえず金融関係の問題で大蔵大臣に伺いますが、例のマーカツトの声明はああいうような内容ではないとこう言つて大蔵大臣はそれについて三つの條件を挙げられてそうしていろいろ説明されたのでありますが、私は依然として消極的な方針というように考えざるを得ないのでありまして、そのためにはどうしても自立経済を促進するために国内における国としての資本の蓄積をやらなければならん、この考え方ますます強くするわけであります。それで資金運用部資金のあのタンクをどうしても増大をして行かなければ、今後の日本におけるいろいろの産業の方面はもとよりのこと、公共事業、公益事業関係は私はなかなか進むものでないと、こう考えざるを得ないのであります。殊に公共事業関係の仕事を通して行われる公益事業関係につきましては、どうしてもあの資金運用部の関係を大きくして行かなければならんと、そのために私が先日申上げましたのは、郵便貯金の金利をもう少し上げる必要があるのではないか、この問題。それから郵便貯金の額に制限があるわけであります、この制限を撤廃する必要があるだろうと。それから簡易保険保険額に制限が加えられておるのだがこれをどうしても制限をとる必要があるのではないかと、この制限をもう少し上のほうに上げる必要があるだろうと。こういうことを質問したのでありまするがそれについて余り明確な御返事が頂けなかつたのであります。それでその点について再び質問をする次第であります。
  48. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 郵便貯金の利子引上げにつきましては、従来の二分七厘四毛を三分九厘六毛にいたしました。これは銀行預金等との関係もありますし、又郵便貯金が課税外におかれていること等から、私は今の改正即ち三分九厘大毛が適当であると考えております。それ以上に上げますと、銀行預金の問題、或いはこれが引受けます貸付金利にも影響しますのでこの程度が適当と思います。又郵便貯金の限度三万円は十万円に引上げることにいたしました。この程度で私は適当であろうと思います。それから簡易保険の限度五万円を今回八万円に引上げることにつきましても、民間保険事業等との状況を考えまして八万円と決定いたしたのであります。これは今国会の審議中でございまするが、私はこういう問題は一遍に急激な変化を起すということは好まないのであります。金融市場並びに各金融関係條件を見ながら適当なことにきめて行かなければならんものであると思います。  ただここでお断りをしておきたいことは、マーカツトの言われた三條件というのは、條件ではないのでありまして基準といいますか、考え方といいますか、こういうふうに御了承願いたいと思います。
  49. 東隆

    ○東隆君 マーカツトの言われたのは、條件でも基準でも私は差支えないのですが、今も民間の保険会社との間のことを考えて五万円を八万円にする、この関係の中にある民間側の主たる要望はどういう要望なんですかお伺いします。
  50. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御承知のごとく、民間の保険につきましては、健康診断をいたしてやります、簡易保険のほうでは原則としてしない。そうして又、民間の今の平均の加入金額は十万円であつたと思います。それから又民間のほうの今の状態は、戦前とは違いましてかなり経営が只今のところでは楽でないのであります。私は民間保険事業というものもこれは育成して行かなければなりません。かといつて簡易保険もそのときの情勢によつて限度を引上げて行かなければならん。こういう点を考え合せまして八万円ということに決定いたしたのであります。
  51. 東隆

    ○東隆君 私は、民間の保険に対して診療その他の予備的な方面等をいろいろお考えのようでありますが、簡易保険も高額になりますれば、そういう方面をとることがこれは当然であると考、えておりますので、そういう方面については大分大蔵大臣と意見を異にしておりますがこの問題はその程度にいたします。  そこで最初に帰りまして、行政機構の問題について伺いますが、先日伺いましたとき、実は主務大臣に答弁をさせると、目下鋭意やつておるんだと、こういうお話なんです。この行政機構の問題は今の農林大臣が以前担当をされておりまして、そしてその当時は何か資源省を作るというようなことを中心にして各省のいろいろな統合の問題を考えられておつたようであります。今日は農林大臣もお見えになるはずでありましたのでその問題と、それから建設大臣が今回の行政機構について中心的な役割を果されておるようでありますので建設大臣と、それから橋本さんが中に入られたんですが今大臣をおやめになつておるので集つて頂くわけに参りませんので、お二人を中心にして実はお聞きをするつもりだつたのであります。ところがこの問題は建設大臣も恐らくお逃げになるんじやないかと、こういう予想をするわけであります。それから農林大臣はお出でになりませんので、それでこの機構の問題については……。
  52. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 文部大臣は見えましたよ。
  53. 東隆

    ○東隆君 それで私はお逃げになるんじやないかと、こう思いますが、一応、特にいろいろ新聞その他にも出ておりますし、なかなか大きな問題でありますので、今の段階を説明をして頂きたいのであります。
  54. 野田卯一

    国務大臣(野田卯一君) 行政機構の問題につきましては木村法務総裁が主管をしておられますので、別な機会で木村さんからお話を一つお伺いになるように願います。
  55. 東隆

    ○東隆君 私はそういうことを予想しておつたのでありますが、野田建設大臣もおやりになつておる、こういう前提の上にお聞きしようと思つていたのでありますが、今のお話で又別な機会にお伺いをすることにいたしまして……。
  56. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 法務総裁は呼ばないようでございますか、今呼んで来ますか。
  57. 東隆

    ○東隆君 あとでお出でになつてからお伺いすることにしまして、次の問題に移ります。  それは文部大臣もお見えになつておりますので、北海道の一つ特別な極端な例を申上げて、そうしてそれに対する文部大臣の対処の仕方、そういうようなことを一つお聞きいたしまして、そうしてこれを中心にすれば恐らく非常に困難な教育の問題は解決されるであろうとこういうことを考えますので、私は文部大臣を中心にして非常に特別な例を一つ申上げるのであります。それは北海道に別海村というのがあるわけであります。これが面積は約九十方里、ちよつと府県の一県に相当する面積を持つておるわけであります。この村には小学校が五十あるのであります。    〔委員長退席、理事中川以良君委員長席に着く〕  この学校の五十あるというのはこれは別に面積から申しますとそう多くあるわけでは、ございません。北海道にはたいていな村には十以上は学校がありましよう。それでそんなに不思議ではないのでありますが、ここでは人口は非常に少いし、それから従つて村税なんかの歳入は殆んどないのであります。そこへ、これは農林大臣関係でありますけれども、移民が入るわけであります。そうすと忽ち学校が必要になつて来る、それからお医者さんが必要になつて来る。こういうわけで殆んど村民はこの教育費それからお医者さんの関係、そういうようなものに非常にもろ手を挙げているわけであります。こういうような学校ではもとより先生はこれはもう一人か二人、それもかけ持ちでやつている、いわゆる単級二年も三年もの学級一をやる複式の何をやつている、こういうような所なのであります。それでここの先生がそういうような先生であります。設備ももとより非常に悪い。そこでこういうような所に対しては、これは今教科書を無償で国が配付するというようなこともこれは必要なんでありますけれども、まさにこれは人間を放牧をしていると、こう言つたほうがいいのでありまして、権利があるとかそれから義務があるとかそういうようなことは、これは実は考えられない、そういうような状態の所がある。こういうことを前提に置いて、そういうようなところの教育を、日本国民ですから、その教育を文部大臣はどういうふうに考えてよくしたらいいか、そういう方法を若しお考えでありまするならばお聞きをしたい。
  58. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 私は、文部省の力ですぐできることでは、ございませんけれども、そういう所に何よりも大切なことは先生の住宅だと思います。そうして先生の住宅を持つている小さいやはり小学校を作つて、そうして先生の住宅があり給與がよければ相当な人が又そこに来るということもあり得ると思うのです。現に九州では月明学校とか山形のやまびこ学校は、そういつては大き過ぎますが、とにかくそういう田舎の隅で非常に理想的な教育をしておる人たちがあるのでございます。だからどうか何よりも大切なことは先生の給與がよいことと住宅を作るということ、そういうことをしてそこに相当なかたが教育をすれば、幾学級を持とうといい立派な教育ができるということは多くの実例もこれを示しているように思います。ただ文部省がそれならそういう住宅を作るということができ得るかといつてもこれは文部省ではなかなかできない。従つてそういう点に関してもやはり義務教育というものを全般的に国が考えて行くというような制度が確立しないと、そういうことまで手が及ばないのではないかという考えでございます。
  59. 東隆

    ○東隆君 私は文部大臣がお考えになつているようなやり方では……、実は現在もそういうような形で実は進んでいるのでありますが、勿論単級の学校で非常に成績を上げている学校もこれは相当ある。併し学校の設備も殆んど問題にならない、先生もなかなか問題にならない、こういうような條件の下には、私はもつと別な施策も考えなければならん、こう考えるのであります。それで私はこの話を申上げるのは文部大臣と、それから建設大臣或いは農林大臣、この三相が実は緊密なチーム・ワークをしなければ、そういうような地帶における教育というものはこれは完成されない、こういう考え方を持つております。それで簡単な私は例を申上げますと、小さな学校をたくさんこしらえて、そうしてそこに先生を置くのは私は愚の骨頂だろうと思う。やはり学校は或る程度の大きさを持つて、そうしてそこに十分な設備を持たし、そうして先生もそこに相当の数入れる。こういう態形を作らなければ、私は普通の義務教育もこれはなかなかできるものではない、こう考えるのであります。そこで問題はこういう問題なのでありますが、四十年くらい前のアメリカの農村で以て問題になつてつたのが何かと申しますと、それは教会とそれから小学校、これをどうするかという問題だ、こういうのであります。それであの広大な面積を持つた、経営面積が非常に大きいアメリカでどういうふうにして教会を立派なものにし、それから学校を立派なものにしたかと言いますと、これは統合をやつたのであります。私はこれを先ほど申したような地帯ではどうしてもやらなければならん。そのためにはルーラル・プランニングをやつぱり考える必要がある。教育のセンターを考える必要がある、こういう考え方を持つ必要があります。学校を統合することによつて部落の者が非常に不便だ。これは私は道路を立派に作り上げて行くことによつて解決が付く。アメリカはそういう方法をやつた。そうして実は解決を付けたようであります。自動車で以て恐らく運んだのでしよう。こちらのほうに来ている進駐軍の子弟を教育するのにもそういうふうな方法をとつております。あの形を当然辺鄙な村々ではとるべきではないか。それで、これは文部大臣だけの力ではできないので、建設大臣の方面で大きく動いてもらわなければこの形はできません。立派な道路を作つて、そうしてバスを通し、或いはトラックを通しすることによつて完全に私は児童を学校に通わせることができる。北海道のような冬季間の非常に長いところではバスが通りませんが、そういうような場合には、これこそ寄宿舎を作つて寮を作つて、そうして部落の若い女の人たちに共同炊事をやつてもらう。こういうような態勢を整えることによつて初めて児童の教育ができ上る。こう考えるのであります。こういう考え方に達つせざる以上、私は小さな学校をたくさんこしらえてやるのだ、それから住宅を與えれば先生が行くだろう、こういうお考えは私は或る程度の所にはこれはいいかも知れませんけれども、今申上げたような地帶には道路を真先きに開いて、そうして経済的に距離を短縮さして、そうしてそこで以て仕事をやる。    〔理事中川以良君退席、委員長着席〕  そうすれば各方面における産業の方面の問題、その他の問題も解決をいたしますし、それからそこに住んでおる人たちの便益も非常に大きくなるし、私は立派なものになる。それからこの点も一つ十分にお考え願いたいが、村の予算を見たときに、これは土木費と教育費が非常に大きくなる、御承知のように。それでこの面の合理化をやるということに思いをいたさなければ私は本当の施設はできない、こういう考え方なんです。それでこれは私は開拓地におけるところの植民の問題から考えて、農林大臣も十分に考えられなければならん問題なんです。それから建設大臣も私は十分に考えなければならん上、もとより文部大臣も直接の問題でありますから考えなければなりません。それで私はこの問題について実は関係大臣から強力にそういう考え方で行かなければならんとこういうような考え方を漏らして頂きたくつて実は質問をしておるんで、関係大臣から、私は意見をお聞きしたいのであります。
  60. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 只今のようなお話は確かに私らが今後大いに考えて行かなきやならないかと思います。私は従来のような考えから前の説を申したのですが、若し完全にそういうことができるなら、確かにそれも一つの案であろうと思うのです。ただ私は普通の考え方で行きますと、新制高等学校などなら家から離して寄宿舎に入れるとか、冬季中入れて置くということもよいことでございますが、小学校の子供を親の手許から離して寄宿に入れるということは、私はこれは非常に考えるべきものがありはしないか、学校が大きくて物が整備しておるということが、親の手許から子供を離すということを償い得るものかどうかという点にも非常に疑問を私は抱いております。仮に小さい学校でも、よい先生が来るならば、先ほど言いました月明学校がその一つの例の、ごとく非常にいい教育をやり得ることもできると思う。子供にとつて一番大切なことは、私は親の手許におるということじやないかと思う、小さい子供にとつては。だから中学以上高等学校になりますならば、今のような説が誠に結構で、ございましようが、小学校ではまだ私は考えが古いためで、ございましようか、よほど考うべきものがある。大体の構想としてはお考えのようなことを私どもも大いに研究しなければならないというふうに思います。けれども只今もお話のあるように、そういうことを考えて行くには、国がどうしても義務教育なり、教育ということをすべて握つて行かなければなかなかできないのではないかという考えでございます。
  61. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 東君、農林政務次官でございますが……。
  62. 野原正勝

    政府委員(野原正勝君) 開拓地等におきましての一番問題になりますのは教育の問題で、ございまして、農林省としましては開拓、営農と並んで教育の問題につきましてもできるだけこの目的の立てられるように十分考えておるつもりでありまして少いながらも営農に関する予算措置も教育の部分も含めて考えておるつもりでございます。只今の御説明のような非常に広い地域に散らばつております開拓地、或いは山村等におきましては、どうしても農村の実態から申しまして、お説のような教育上の考慮を今後十分拂つてもらわないと、真の農村の発展は期待できないと考えますので、この点につきましては農林省としましても、努めて教育の問題には真剣に検討いたしまして努力をいたします。
  63. 野田卯一

    国務大臣(野田卯一君) 東委員のおつしやることは非常に私も同感で、ございまして、お話の点は十分承わつておきます。
  64. 東隆

    ○東隆君 私は先ほど文部大臣がお答えになつた高等学校の生徒にはそういう寮をこしらえたりなんかするのはいい、こういうお話ですが、これはもう昔からあることであつて、決してそれを私はかれこれ言つておるわけではありません。それから小学校の場合における問題は、道路を作つてそうして夏の間はどんどん通わせる、通学をさせる、こういうことを前提に置くわけです。冬季間はこれは一週間寮に泊めて、そうして土曜日には帰えす。こういうような方法をとるべきだ、こう考、にるのです。決して親から子供を奪い取つてしまつて、そうして離してしまう、そういう考え方ではなくて、団体生活をさせるうちに、私は親の所にいるよりもいい、あの開拓地における場合には却つて立派な、それよりももつと進んだ日常の生活ができる、こういう考え方なんです。それでその点は一つお考えを変えられてそうして違つた角度から開拓の問題、開拓地における教育というものは違うのだ、こういう観点から考え方を翻えして頂きたい、こう私は考えるのです。
  65. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 私は開拓地に対する知識に乏しいものでございますから、もつとよくお考えのようなことを研究いたしたいと思います。
  66. 東隆

    ○東隆君 私は今お答えを願つた三省の関係のかたに特に強調をしておきたいことは、日本の人口問題のはけ口、それから今後におけるいろいろな問題の解決の中心になると思いますが、それが私は今申したような期待がその問題を解決するところのすべてであるとは申しませんけれども、大きな役割を持つております。そういうことを一つお考えを願いたいのです。と同時に、私は端的に例を挙げたわけでありますけれども、併し私が今申上げたようなことをすでに北海道でやつておる所もあるわけです。そうしてそこでは相当な成績を挙げようとしておる。従つて六三制の中等学校の設備の問題なんかはこれは非常に大きな問題でありますので、これは前に申したものよりももつと、私が先ほど申したような形をとりますれば、解決はまだ簡單に行くのではないか、こう考えるのです。そういう点を十分にお考え願いたい、こう思うわけでございます。  その次に、次官がお見えになつておりますから、私は農林省関係のことについて伺いたいのでありますが、それは何かと申しますと、農事実行組合と称するもの、それは部落団体の問題でありますが、これは実は先般も総理大臣に聞いたのでありますけれども、総理大臣はお答えにならなくて岡野国務大臣が答えられたのであります。併しそれは町内会、部落会という名前で以て聞いたのでありますが、これに対する答えは私としては余り満足をしておらんのです。それで農山漁村における自治体の最下部の団体としての部落団体、これは戦前には産業組合法によつて簡易法人として認められて、そうして非常に立派な仕事をやつて来ておるわけであります。併し戦争中に指導者原理で以てこれは非常に曲つて参りまして、そのために終戦後にこれは恐らく占領軍の忌避するところとなつたのだろうと思いますが、これは実は禁止をされてしまいまして、そうして新らしくできた農業協同組合法、或いは漁業関係の協同組合法の中にはその問題が取上げられておりません。併し独立後の日本としては私はこの問題を大きく取上げて行かなければならん、こういう考え方を持つておりますが、この部落団体の問題について如何ようにお考えになつておるか、お聞きいたします。
  67. 野原正勝

    政府委員(野原正勝君) 御説のように農山村におきまする各部落に対しまして、曾つて部落の実行組合があつてそれが部落の経済統制、極めて共通した利害関係のある各部落ごとの経済統制に非常に役立つたという事実に対しましては、全くお説の通りでありまして、これらのものがいわゆる協同組合というものに統合されてしまつて、昔の非常に素朴な姿の実行組合というものが姿を消しておるという点につきましては、むしろ私どもは非常に遺憾に考えております。本当の地に付いたその部落々々の実態に即応した、各個々の農家の経済に直結しておるそうした共通の部落事情というふうなものを前提としての経済統制などをやるためには、やはり実行組合のような機関があると非常にやり易いのではないか、私などはそう考えておる一人であります。その点につきましては大きな問題でありますので、今後一つ農林省としましては、改めて十分研究いたしたいと考えております。
  68. 東隆

    ○東隆君 それでは農業協同組合法その他の改正の場合に、簡易法人として取上げられたようなそういう考え方まで、まだそこまでお進みになつておらんわけですか。
  69. 野原正勝

    政府委員(野原正勝君) まだそういう点までのことははつきり申上げかねますけれども、曾つて実行組合等がありました当時、部落を單位とする経済統制等に非常に役立つておるという点と、又今後の日本の農村の振興、特に食糧自給度の向上等につきましては、小規模の土地改良であるとか、いろいろな農業生産物の利用加工、或いは集荷、その他すべてのいわゆる協同組合の活動をより一層徹底するためには、やはり小さくとも部落に分けてやつたほうが非常に効果が挙がるというふうなこともこれは想像できるのであります。過去の例から見ましても、こういつた実行組合と申しますか、各部落ごとのそうした考え方で一つ現在の協同組合等につきましても、これを再分割というようなことでなしに、別な角度から考えまして、協同組合を育成強化するという線にも十分マッチするような形で一つ再検討してみたいと考えております。
  70. 東隆

    ○東隆君 今農村における団体問題は非常にいろいろな角度で以て検討を加えられなければならんような状態にある、こう思うのですが、例えば農業委員会の問題、それから農業災害補償法による農業共済組合、或いは農業協同組合法による各種の事業団体、こういうようなものを通して考えて来たときに、非常に考えねばならんことは、農村における指導者の力というものが非常に分散をされておるんではないかとこう考えますので、そういうようなものを統一をして、そうして昔のような農会、それから産業組合、こういうよう公法人、それから私法人、こういうような形で以て統合をして行くような考え方は農林省には、ございませんか。
  71. 野原正勝

    政府委員(野原正勝君) 非常にむずかしい問題で、ございまして、今ここではつきりとお答えを申上げることができないのは甚だ遺憾でありますが、御説のように今日農村におきまして、農業委員会或いは農業共済組合とか、協同組合等々いろいろと、ございまして、それらが指導者の力が分散をしてその村におきまして各農村の実態に即応した本当の力をまとめるというふうなことに困難を感じておるというようなふうに、我々もそういう点につきましてはいろいろと考えさせられるものを持つておるのであります。併しこれに対しまして、これを直ちに昔のような農会の形、或いは産業組合といつたようなものにこれをすぐに変えるのがいいかどうかということにつきましては、なおこれは愼重に考えなければならんのじやないか。御説のように協同組合法によりまして協同組合が生まれまして、まださほど年数もたつておりません。協同組合そのものもまだ成長の過程にあり、十分なる活動をいたしかねておるわけでありまして、農村の力が結集されまして、そうして真に農村の振興に役立つような指導機関、或いは生産に関係ある力がやはり集中されるような形に行くのが好ましいのではないかという点におきまして、現在の協同組合、その他につきましてもいろいろと将来検討をいたしたいと考えております。
  72. 東隆

    ○東隆君 私は農林関係は非常にたくさんまだ質問したい問題があるのですが、時間も大分遅くなつておるようでありますから、この程度で質問を打切ろうと思いますが、十勝沖の震災に関連をいたしまして、非常に政府の力を仰いでやらなければならん問題が非常にたくさんあるわけです。それでこれはすでに開発庁その他におきましても成案を作つておられますが、その中には非常に困難が予想されるような問題があります。例えば住宅問題を、二万数千戸破壊されておる住宅問題を解決するにいたしましても、今の現行の法律はこれはなかなか解決をすることができないのであります。それでこういう点を考えて見ますと、都市を中心に考えますと、住宅金融公庫法であるとか或いはその他の災害復旧の関係なんかについてはありますけれども、都市以外の住宅その他についてはこれは非常に手薄になつておるわけであります。それで私は地震だの洪水だの、こういうようなものは非常に日本にはこれはしよつちゆうやつて来るようなことを考えて見ますと、この際住宅その他の方面については都市と否とを問わず、大きく手を打つべきではないか、こういうことを考えるのですが、これについて建設大臣の所見をお伺いいたしたいのであります。
  73. 野田卯一

    国務大臣(野田卯一君) 今回の十勝沖震災によりまして、多数の住家が或いは全壊或いは流失、或いは半壊という目に会われましたことについては、衷心から御同情申上げる次第であります。政府といたしましても速かにその復旧対策を講じておるのであります。只今御指摘になりました住宅金融公庫の制度があります。そのほかに御承知の公営住宅法によりまして、第二種住宅の制度があります。こういう制度を活用いたしまして速かに解決を図りたいと思つております。なおその他家屋の破損、これは相当あるのでありますが、家屋の破損についての資金的措置という問、題があるのでありますが、これにつきましては、今まで実行いたしました所もあるのでありますが非常にむずかしい問題があります。その程度もなかなかわかりませんし、その財源確保という面から問題がある。今後そういう問題につきましては、一応生業資金という面からお世話したほうがいいのじやないかというので、こういうふうにしてお世話いたしておるのであります。今日も閣議におきまして、早速住宅ばかりではありませんが、公営の住宅その他の施設に対しまして、緊急復旧を図るために十一億円の繋ぎ融資を出すことに決定いたしました。又融資住宅建設のため住宅金融公庫の金を取りあえず一億出すことにし、又国民金融公庫の枠を一億取りあえず拡げるというような措置をとつて対処いたしておるのであります。
  74. 和田博雄

    委員長和田博雄君) それでは午後は一時二十分から再開いたすことにいたしまして、暫時休憩いたします。    午後零時十八分休憩    ―――――・―――――    午後一時三十六分開会
  75. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 午前に引続きまして、委員会を再開いたします。質問を続行いたします。
  76. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は非常に多くの大臣を要求しておるのですが、今大臣の出席が非常に悪いので、止むを得ず安本長官がお見えになつておりますから、安本長官への質問から始めたいと思います。  それで、私が安本長官にお伺いいたしたいことは、今度の平和條約を結び、そうしてそれと関連して安保條約ができ、安保條約の具体化として行政協定ができ、行政協定具体化として今予備作業班が作業をやつております。この結果として今度の平和條約とか、安保條約、行政協定、こういうものが日本の経済にどういう影響を及ぼすかということが、具体的に非常にはつきり出て来たのです。非常にはつきり出て来ております。そこでこの予算の編成とも重大な関連がありますので、この行政協定の結果、日本の経済にどういう影響が来るか、この点について先ず総合的に安本長官にお伺いいたしたいのです。このことはわかつていなければならないはずであります。ですからこのことは私は建設方面にも、それから農林方面にも、それから或いは運輸、通産、地方財政、広汎に亘つてこの行政協定具体化される場合に、重大な影響が出て来るのであります。予算には一応防衛費千八百二十億と組んでありますが、その影響は一千八百二十億だけの影響ではないと思うのです。その間接的な影響は非常に大きい。それがこの予備作業班を始めてからはつきりわかつて参りました。そこで当然安本長官は総合企画庁として、この行政協定日本の経済に具体的にどういう影響を及ぼすか、農業方面にどういう影響を及ぼすか、或いは又建設方面にどういう影響を及ぼすか、運輸通信方面にどういう影響を及ぼすか、その結果二十七年度予算との関連がどういうようになるか、或いは自立経済計画との影響、自立経済計画にどういう影響があるか、こういうことについて先ずお伺いいたしたい。
  77. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お答えします。木村さんの御心配の点は御尤もでありますが、併し今の段階においての行政協定から来る日本経済に及ぼす影響としては、そう私どもは心配いたしておりません。殊に物資の調達の面等から考えましても、あれは十何條でありましたか、特に日本から物資を調達する場合においては、日本の経済に影響を及ぼすような虞れあるときには、日本の官庁を通じ、又は相互話合いの結果これを調達するというような規定もございまするし、又御心配の建設方面にどうかということであります。これは成るほど今年の予算等の中にも、平和関係処理費として施設の移転等の問題もありまするし、差当つて駐留軍等の営舎等の建築が始まると思います。併しそれらにつきましても、木材、セメント等の必要な分ということを考えましても、それが直ちに日本の建設方面に悪影響を及ぼすというようなほどに物資が過剰に調達されるとも考えられませんのであります。従つてそういう方面に使われる物資について過剰にならんような処置は必要でありますが、これは今も申しましたように、日本経済に悪影響を及ぼす慮れのあるような場合には、よく相談をしてやることになつておりますから、今の段階においてさほど私は影響はないのじやないかと思います。又農業生産についてのお尋ねであります。これは或いは営舎とか施設の設置の個所において、場合によつて農地等が借入れられるというようなことが起るというような場合を想定してのお考えかと思いますが、これは具体的の話が出て見ないとわかりませんが、できる限り、政府といたしましてもその点は心配いたしております。そういう場合においても既存の農地等を潰すというようなことはできる限り避けたい。そういうことも結局先ほど申上げたような條文によつて、十分懇談して具体的の場合において農地等の収用されることの少いように努力いたして行くつもりでおります。直ちに行政協定の結果、日本経済が非常にゆがめられ、従つて日本経済が圧迫されるというようなことの虞れが出て来るものとも考えておらないのであります。
  78. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 恐らくそういう御答弁であろうと思つたのです。大体政府はこの予算を組む場合、或いは講和後の日本の自立経済計画を立てる場合に、この行政協定の結果というものを織込んでやつておらないと思うのです。これは今後具体的に予備作業班の作業ができて実施に移ればわかつて来ることであります。そこで只今のような御答弁では私は満足できませんから、これは他日書面でよろしいのであります、書面でよろしいのでありますから、安本としてこの行政協定に基いてどのくらいな資材が、例えばセメントはどれくらい要るか、木材がどれくらい要るか、鋼材がどれくらい要るか、銅がどれくらい要るか、こういう物資別の数量を私はお示し願いたいと思う。それと併せて電源開発にも相当のセメント、鋼材、銅等も要るわけです。公共事業にも相当要るわけであります。そういうものを合せてどのくらいの物資が公共事業関係、それから電源開発関係、それから行政協定に基く防衛関係で要るかということを私は資料として提出頂きたいと思う。  それから各省の大臣がおられませんから私は質問することができませんが、この際私は各省大臣にもこれは委員長から申入れて頂きたいと思いますが、この行政協定の結果、地方財政或いは又建設省の関係、それから運輸省、電気通信省、そういう方面にどういう具体的影響が出て来るかを、これも私は資料を以て提出して頂きたいと思います。
  79. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 御尤もな御注文でありますが、これは今のところ住宅とか営舎等についてははつきりわかつております。その他についてはどの個所をどういうふうに要求されて具体化するかということは今後に残されておる部分もありますので、はつきり徹底した資料は提出しかねる部分があると思います。併しわかつておるものについてのおよその見積りについては出し得るかと思いますから、後ほど研究の上提出いたしたいと思います。
  80. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その資料を見た上で又重ねて御質問しなきやならんと思うのですが、安本長官は他においでになるので、実はそれと関連して大蔵大臣にもお伺いしたいのですが、一応安本長官のほうの御答弁から煩わして行きたいと思います。  そこで第二に安本長官にお伺いいたしたいことは、講和後の日本経済の自立経済計画ですね、特に昭和二十七年度の自立経済計画についての構想、これを伺いたいのです。私は、記憶するところでは、最初政府は講和後の日本経済については、一応外資導入というものを予定して自立経済計画を立てたはずだと思うのです。その後外資導入というものが具体化しませんから、特に電源開発についてはそれを外して、これは大蔵大臣も御答弁になつたのですが、日本の今の予算の中にも資金計画の中にも外資は入つていない、こういうお話でありますが、そうすると、そういう外資援助というものを除外して日本経済をどうして自立されて行くか。二十七年度の自立経済の構想を、例えば生活水準をどの辺に持つて行く。これは一応資料として頂きましたがもう一度確認しておきたい。生活水準それから生産規模、それで生活水準が下らないのかどうか。一応二十七年度の構想を外資を予定しなかつた場合の構想を伺いたい。
  81. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 先ず先にお答えをしたいのですが、二十七年度の計画について初めから外資を何ほどというふうに考えて組んでおるのではないか、従つてそれが入らん、なくなつたら計画が変るのじやないかというような質問がありましたが、私どもとしては、外資の問題については再三総理からもこの席で申しておりますように、多少この間のマーカツト声明に関連して思い過ぎのような御心配があるように思います。マーカツト氏はまだ外資がイエスともノーども、そういう問題について触れておらないのであります。具体的の問題について、償還計画等を立ててしつかりした上で相談がされると思います。その点ははつきりと申上げておきます。同時に然らば二十七年度の目標はどこにおいたかということであります。これにつきましては今日生産指数は大体二二六と思つておりますが、そうして総鉱工業生産については二十六年度よりも九%増、農業生産においては三%増、それから賃金関係においては一〇%平均賃金の増加、物価については大体横這いの傾向を考えておりますが、卸等において二%くらいになるかと思います。雇用は大体一%くらいを考えております。この計画の内容については、もとより将来に向つて生産について最も必要となるべき原動力の電力を頭においておりますが、併しこの電力の開発について、二十七年度の資金計画から見た上において、直ちに二十七年度から外資を初めから予想して立てておりません。併し外資の入ること、金若しくは物というようなものについて入ることがあればより一層進むことになります。従つて電源開発に関する二十七年度計画としては、曾つても申上げましたように、大体千二百億ぐらいのことを考えて、その中で政府資金として考えられるものが、大体六百十億程度を考えて、民間の資金を残余の問題として考えておる次第であります。これは二十七年度以降三十年度までの計画を立てて今電源開発に関する法律を準備しております。その間に処して当然に外資関係のもので援助せられるならば、更によりよき推進ができるわけであります。外資が仮に、あなたの仮想的な前提でありますが、外資がなければ二十七年度は動かないということじやないのです。初年度においては六百十億程度の政府資金、或いは民間の資金を考えて案を一応立てておるわけでありますから、その点は御了承願いたい。  それから生活水準の問題についてはたびたび出ますが、いろいろの新らしい負担もありまするが、今申上げたような計画の下に、せめて毎年一%乃至二%の増加を考えて行きたいと、かように考えております。
  82. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 安本長官はなかなかずるいです。僕が仮定して考えておる……、そうじやなくて、安本としては一応外資導入を予定して計画を立てたのじやありませんか。講和後の日本経済、自立経済計画、新聞にもたくさん出ていました。電源開発をやつて、どうしても安本で計画した以外に七十六万キロ、これを新らしく開発しなければならない。それにはどうしても一億八千五百万ドルの外資を導入しなければ資材面において、電源の、電力開発のほうに固定化して行くとすれば、セメントも或いは鋼材、電線……、そこでそれが輸出に影響を與えるから、国民生活に影響を與えるからそのカバーとして一億八千五百万ドルの外資を入れて、国民生活水準を下げないで電源開発をするという計画をお立てになつたのじやないのですか。私が仮定しておるのじやない。それが、その計画が変つたのです。その計画が変つてそのときの外資導入、電源開発のために外資導入を予定したときの生活水準の向上の仕方は、目標として昭和二十九年に戦前の九一%、昭和七――十一年平均の九一%まで引上げる、昭和二十六年は八五%、そういう計画であつたが、外資導入がこれは予定できないことになりましたから、今度の二十七年度のごの計画を見ましても、生活水準は下つておるのじやないのですか。計画として下がつておるのです。すでに下つておる。もうそこで外資導入を、これを最初予定して生活水準を下げないために外資導入は必要であつたが、それができないから今度は結局生活水準を下げることによつて電源開発、或いは今度の防衛費、そういうものを賄わざるを得ない、こういうことになると思うのです。大蔵大臣は今後防衛関係、それから国内発展のための蓄積関係、それから生活水準の向上、この三つを総合的にうまく勘案して、どこにもその悪い影響を與えないようにやつて行くと思いますけれども、今の政府の外資を予定しない計画では、生活水準が下らなければこれは実現できないことになるのです、どう考えつて……。それを何か生活水準が下らないかのごとく説明して、それで外資導入というものは全然予定しなかつたかのごとく言われるから、私は、それはごまかしておる、確かに、ごまかしておる。最初は外資導入を予定して、そうして講和後の日本経済の自立については生活水準は下らないように、防衛費を負担しても、電源開発をやつてそういう資材がたくさん要つても生活水準は下らない。それは外資が導入されるからである、こういう仕組になつてつたのです。マーカツト氏がどう言つたとか、吉田氏が全然関知しなかつたとか、そんな細かい言辞を捉えてどうこう言うようなことは私はいたしたくない。根本の問題として政府の基本的な政策として、最初外資導入は予定されておつた。そうして国民に対して講和後の日本経済は心配ない、何故ならばさつき言つたように外資が入つて来るから国民生活水準は下らない。防衛費を負担しても下らない。電源開発をやつても下らない。それが狂つた。狂つたから、それを予定しなかつたことが私は悪いというのじやないのですけれども、それなら当然影響が出て来ておるはずです。国民生活水準は下らなければならないはずなんです。計画においてはすでに八十何%下つておる。その点を私は伺つておるのです。ですから、私が外資導入を予定したのじやない。政府が最初、計画を立てたのだ。ところが入つて来ないので、外資が入つて来ない計画になつておる、確かに……。それで生活水準が下らないかということです。
  83. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) いや、私の申上げるのは、外資導入はもう駄目になつたというようなことをあなた前提において御質問だが、それは私の意見と違う。その点はまだ外資問題については、悲観して考えるべきじやないということを私は申上げたい。而も今外資導入がなくなつたから、それを前提として何か自立経済計画を変えたようなお話ですが、それは私どもは別に変えておらん。よく御覧頂けばわかりますように、あなたは去年の正月に出た自立経済三カ年計画というものを指しておられると思う。その点においては、むしろ最近における状況は私はよくなつておると思う。この間も申上げましたように、最近における消費水準の状況は、都市と農村とは違いますけれども、大体平均して八二くらいになつておる。これを私どもは、でき得べくんば今後において、大幅に一遍に上げることはなかなか困難にしても、徐々に年々一%なり二%なり上昇させつつ、新しく殖えた国民負担等についても処理して行きたい、こういうことは考えております。併し将来のいろいろの計画というものを、外資導入が見込がなくなつたから変えたというようにおとりになつておると、これはちよつと私は誤解じやないかと思います。今日におきましても、電源開発等につきましても、外資が入ることを私は期待をいたします。併しそれは今後の問題です。それが今打切られたとか或いは駄目だとかということでは私はないと思います。いわんや、今日まで外資の導入につきましては、民間的にいつて、株式、社債等についての投資面における外資が年々殖えて来ておる。それから技術の導入等価額に見積れば相当なものになりますが、そういう情勢を見つつ、今後における日本の国内における産業計画の一つの案を立てたと言つても私はちつとも差支えないと思う。併しあなたがおつしやるのは、何か外資導入がなければ、それを織込んだ計画だから、それがなければ、急に我々の生活水準、消費水準が下つて計画が狂うじやないかというような質問でありますから、今日までのところの我々の考え方としては、そう早く計画を変えるとか、狂うとかいうふうには考えておらんということを申上げます。
  84. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは安本長官の御説明らしくないと思うのです。これは結局循環的に影響は出て来るものですから、ですからここで安本長官が影響ないと言われても、今後具体的に出て来る、経済問題はあとになつて出て来るのですから、今影響ないと言われたつてすぐ、この場は凌げる、凌げますが、具体的に、結果は結局私は出て来ると思う。というのは、安本長官は、最初外資を予定して国民生活水準が下らないような構想であつたが、実際問題として入つて来ない。そうするとこの電源開発なり防衛費に使う資材、そういうものが固定化されて行くわけです。日本の再生産から、一応そつちのほうに、すぐ再生産に廻らないようなほうに固定化して来る。そのときの影響をどうして遮断するかということについて考えなければならん。それだけ輸出も減りますよ。輸出のほうに影響します。セメントが電源開発に固定化して行けば……、それから又防衛関係でも、今度の條約関係でもまだまだ影響は随分たくさんあると思うのですが、その場合に再生産の上からいつて輸出にも影響する、国民生活水準にも影響するのです。それは結局物価高という形になつて来ると思うのです。結局はそれで国民生活水準は最初計画されたよりも下げてここに出しておられる。一月に発表されたのは二十六年度八五%です。それがこれでは八二%、二十七年度は八四%、一月の計画は二十七年度は八六%くらいと思う。もうすでにこういうふうにして出て来ている。具体的にもう計画において国民生活水準を下げるような計画になつて来ている。而も今度一番重大なことは、この予算実施した結果どうなるかということについては検討されてないのです。この非常に非生産的な、インフレ的な要因を持つこの予算実施した結果どうなるかということは、これは大蔵大臣にもこれから伺いたいと思いますが、それを伺えば、国民生活水準を維持し向上さして行く、防衛費も又十分賄う、而も又日本経済発展のために資本蓄積も賄う、この三つが今後の日本経済運営の大きな方針であると言つていますけれども、そんなにうまく行きますか。アメリカでさえ、あんな大きなアメリカでさえも国民生活水準の低下というのが問題になつて来ている。私は政府国民生活水準が下らないかの、ごとく言つていることがおかしい。常識からいつたつて、これまで以上に大きな防衛費を負担するのです。アメリカの援助もなくなるのです。そうして国民生活水準が下らないというのはどういうわけですか。電源開発のほうにたくさんの資材を投入する。三つが皆うまく行くはずがない。どこかが犠牲になるはずです。どこかにしわが寄つて来るはずです。それを政府は隠している。これは周東安本長官は率直に、相当の国民生活水準を犠牲にしなければ防衛費もできない、電源開発もできない、従つて国民は相当耐乏生活しなければならんということを言われるのが本当なんです。私はおかしいと思うのです。国民生活水準を維持向上するというのは、その点私は、ごまかしていると思うのです。外資導入の問題はそこにあると思うのです。国民生活水準との問題にある。それでマーカツト氏が入るとか入らんとか、或いは困難であるとかいや絶対に入れないと言つたんじやない。そんな言葉尻の問題じやない。今後日本経済自立計画と、それから今度の予算国民生活水準とのこの三つの関連を問題として外資の問題を考えないで、それが……。あれはマーカツト氏は関接に断つたんでしよう。体よく断つたあの断り状文を、まだ断つたのでないかの、ごとく、これをまだあれしているのは私はおかしいと思う。勘が鈍い、勘が鈍いかのごとく装つているのかも知れませんが、そうだと思うのです。その通りです。だから国民生活水準は下らん、それなら国民も心配要らんのですが。それが下るとみすみすわかつているのに、又下らなければこんな非生産的支出をして賄つて行けるはずがない。これはもう今後一カ年間たてば必ず出て来るのです。そういう影響が……。それを私は無責任だというのです。そういうふうに何だか皆うまく行くようなふうに答弁していることが私は無責任だと思う。もう少し真剣に御答弁願いたい。
  85. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) どうも私は前提が違つているから私は議論にならんと思うのです。あなたはもう全然外資は入らんことにしておきめになつて、その上に立つてとにかく影響が起るだろうと議論をする。それは勿論間接的に外資が一つも入らんというようなことであれば、それは資金計画において重点的に使われると思う。影響は受ける、それはそうでしよう。併し私どもは今あなたの大前提にしておられる外資は入らんじやないか、こう言われることにおいて私どもは意見が違う。殊に最近におけるマーカツト声明の問題というような問題は別にいたしましても、第一今日まで年々月々に外資が殖えていることは事実であります。民間外資の導入、先ほど私が社債、株式等において殖えているということを申しましたが、これは資料を差し上げて出してもよろしうございます。二十四年、二十五年、二十六年これは毎年民間外資は投資社債において殖えている。技術に対する協力も非常に加速度的に殖えている、これは事実であります。そこへ新しくいろいろ電源開発等にからんで問題が出ておりますが、それは又別個の見方です。いつだか予算総会等において衆議院で池田君も話しましたが、導入の形はいろいろある。政府からの借款もあるし民間投資もあるし、又アメリカにおけるエキスポート・バンク或いはインポート・バンクの関係もありましようが、いろいろの形において筋があります。その関係において私どもは一つも悲観しておらん。だからその前提から言つて、私はあなたが入らんということを前提にして日本の経済に影響するだろうと言われる。我々はそれを断定するのは早過ぎるという議論なんです。従つて昨日も一つ計画を直す必要があるだろう、予算を直す必要があるだろう、そういう御質問がありましたが、私どもはまだ今日そういうことを議論して、その前提に立つて計画を直すということは考えておらん、心配要らん、こういうことを申上げておきます。
  86. 和田博雄

    委員長和田博雄君) ちよつと申上げますが、地財委のほうの政府委員も出ております。
  87. 松永義雄

    ○松永義雄君 若し資金関係で時間があれば関連質問をいたしたい。ほかに移られてやるのでしたら、その前に関連して質問したいのですが。
  88. 和田博雄

    委員長和田博雄君) よろしうございますか。
  89. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうぞ。
  90. 松永義雄

    ○松永義雄君 簡單にお尋ねいたしたいと思うのですが、電源開発の昭和二十七年度における資金計画総額及びその内容についてお話し願いたいと思いますが。
  91. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 二十七年度の電源開発に関する資金計画については、只今も申しましたように大体一千二百億前後を予定しております。その中で政府の資金として大体六百十億、うち見返資金関係が三百億、それから貯蓄債券の発行が六十億、政府の出資関係で五十億、あと二百億が社債発行であります。こういう関係で大体六百十億を考えております。あとは民間資金でやるごとになつております。
  92. 松永義雄

    ○松永義雄君 その民間資金はいろいろありましようが、丁度通産大臣も見えましたからお伺いしたいのですが、増資ということは考えられておりましようか。
  93. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 勿論民間資金のほうは、企業会社における増資、自己資金ということは勿論考えております。それと同時に借入金もありますが、自己資金、増資は考えております。
  94. 松永義雄

    ○松永義雄君 その増資をやるについては、経済界の常識としては電力会社としてはしたくても事実上できないことであつて、それで電力料がそのために値上げをするのだ、こういう話を聞いております。電力料の値上げと増資とは関連があるのですか。
  95. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 電力料金の値上げにつきましては、まだ私ども政府のほうにはどういう内容を持つかということについての具体的な要求はまだ出ておりません。併し伝えられるところによりますと、これは増資との関連においての値上げということよりは、やはり経営上の面において、或いは火力発電等についての石炭の使用量の増加、その価格の問題でありまして、補充等の関係でありまして、コストの上に現われた関係において電力料金の値上げが必要だというふうに私は聞いております。又具体的に、私どもが聞いておるのは、どのくらい、どういうふうになるか、又どういう原因ということはまだ詳しいことは聞いておりません。
  96. 松永義雄

    ○松永義雄君 もう一遍肝心なところですから、配当ということを予想されて……今度の電力料の値上げによつて電力会社の收入が殖えるでしよう。そうすれば場合によつては配当ができる。配当ができれば増資の見込がある。こういう考えを以て経済界は見ておる。そういう点についてちよつとお尋ねして置きたいと思います。
  97. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) もとより現在の損失のままで場……、だから損失が続いているから、赤字があるということであれば、これは経営上、今直ちに言われておる電力料金の値上げをすぐ肯定するものではありませんが、併し経営上赤字になるような会社においては増資関係で応募することは少なかろう。その赤字になれば増資をしようということは、これは関連的に言えます。  もう一つ附加えて申上げたいことは、電力会社のみの増資の関係で……これは二十七年度以降における電力開発の一つの大きいところでは、自家発電等についての問題も当然許容する考えである。従つて計画としては自家発電なり九つの電力会社の問題もありましようし、新らしい機構に基く開発もあります。従つてその自家発電を行う会社等についての増資、それは恐らく発電のための増資、産業のための増資も含むと思いますが、そういう関係から見て、自己資金を持つて行くのじやないかということを附加えておきます。
  98. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 関連質問は成るたけ重点を整理してやつて頂きたい。と申しますのは時間が割合制限されておりますし、後にまだ質問者が相当たくさんありますので、委員長としては成るべく質問を許して上げたいのですが、そういう事情もありますので、二、三点重点だけをお願いしまして、木村君にも速かにして頂きたいと思います。
  99. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 途中でちよつと外しましたので、先ほどの点について御質問したいのです。安本長官はもう外資が駄目だからということを前提にしておるのですが、これまでほかのかたが今度の外資に関連して質問したところによれば、二十七年度における財政においても、資金計画においても外資は前提としていない、こういう御答弁だつたからですよ、むしろ政府のほうで予定していないというから、その前提で私は質問をしておるわけです。池田大蔵大臣ははつきりと二十七年度の資金計画には外資を予定していない、入つていないとはつきり言いました。財政計画にも入つていない、それだから、入つてないならどうして国民生活水準の低下を防げるかということを聞いておる、そういうことなんです。  そこで私は時間がありませんから更に質問を続けますが、自立経済の一審の基本は電源開発であります。而もそれは二十七年度における資金計価について今お話がありましたが、公聴会におきまして第一銀行の酒井杏之助氏は、市中銀行からの借入金二百十億円、社債百十三億円は民間では賄えないと言つている。とてもこれは賄えませんと言つている。それでどうして資金関係から電源開発は具体的にできますか。更にもう一つは資材面から見まして、これは通産省からもお伺いしたいのです、果して二十七年度電源開発にセメント百十七万トンが供給できるか、鋼材二十七万トンをはつきり安本で計画している通りに割当てできますかどうか。銅が二万六千トンですか、これははつきり電源開発に供給できますか、資材面からいつてです、私の見るところでは資金面、資材面からいつてぺ一パー・プランじやないかと思う。ペーパー・プランと言つては少し憤慨されるかも知れませんが、実際にできなければペーパー・プランだ。電源開発、電源開発と大きなことを言つておりますけれども、実際に国民生活水準を下げないで、どうして資材、資金というものを調整できるか、外資によらないでですよ。その点伺いたい。民間の市中銀行の人が資金がこれだけ賄えませんと言つているのです。その点どうなんです。
  100. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) その点は先ほど申しました金融債等で政府は面倒をみるつもりでおります。同時に今お話のあつたように、いよいよ開発して銅線が要るとか何とかいうことになるのは少しあとになります。従つて初年度の計画として、二十七年度として千二百億円並びにそれに伴う建設資材面のセメントというようなものについては、これは大体私どもは確保できていると考えております。銅線等については、いよいよダムができて、発電所ができて、それから銅線が要るという段階になる。そこに私は時間的の段階がある。今一つの計画があるからすぐ銅或いは機械類が全部一遍に来年度、二十七年度にこれは全部の計画に対して出て来るから、すぐ行詰りが生ずるというふうに見るのは私は早いと思う。これは計画の段階があります。おのおの物資については勿論、電力開発については重点的に配給するつもりであります。これはやるつもりでおりますが、そこには来年度すぐに何もかも電源開発に対して必要な物資が集中されなければならんとは私は考えておりません。
  101. 高橋龍太郎

    国務大臣高橋龍太郎君) お答えいたします。電力開発の資材は、主なものは、セメントが大体百万トンと買われております。来年度のセメントの生産計画は七百五十万トンであり、現在セメントはぼつぼつ輸出をしおるような状態でありますから、百万トンこの電源開発に使うことは問題でないように思います。それから銅は一万八千トン、大体二万トンぐらい必要だという計画なんですが、来年度の生産計画は九万一千トンになつております。それから鉄のほうは二十七強度の生産計画は四百八十万トンであつて、そのうち百五十万の輸出を見込んでおるのですが、この百五十万の輸出は少し困難だ三思いますし、かたがた電源開発に十数万トン、或いは二十万トンの鉄は少しも差支えないと思います。
  102. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは電源開発だけはそうでありましよう。併し日本経済は電源開発だけで動いているのではありませんから、公共事業にも使います。今度の又防衛関係にも使います。そこでそつちのほうに重点を置いて他関連産業のほうに供給される、そうなると輸出のほうに対してどういう影響がある、国民生活にどういう影響がある、皆関連して来るのである。私は七百数十万トンのセメントの生産のうち百万トン程度だから大したことはない、これは説明にならないと思う、その影響です。それが関連して関連産業にどういう影響を及ぼすか、これは安本として電源開発をぐつとせり上げてやつておりますけれども、それと総合的な物動的ないろいろ薄雲すね、こういうものが関連して考えられなければならんわけです。私はそれが一体できておるかどうか。それから今金融債を云々と言つておられますけれども、金融債はこれは資金運用部で引受けるのでありますか、これは大蔵大臣にちよつとお伺いしたい。
  103. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 物事は総合的に考えて頂かなければならん。私はセメントの問題でも御承知の通り月に十万乃至十五万トンの輸出をやつている先月十万トンあつたというふうになつておりますが、セメントの輸出が電源開発のために減る、或いは二十数万トンの鋼材が輸出のほうに割込んで来る、こういう問題があるから、いわゆる輸出が減つて外貨の支払いに困るようになる。そうしてドルの導入というようなことについて考える。物事というものを総体的に考えて、今外貨がどれだけ来るかということを問題にしているより前に、私は溜つた外貨をどうするかということが先決問題であろうと思う。これは余談でございますが、この金融債の引受けについては大体申上げたと思いますが、資金計画の一応の考え方では絶対均衡予算の建前から、見返から出しまする支払超過の、撒布超過の四百六十五億円というものを預金部のほうで埋めようというのでやつて、一応は金融債は今の計画では引受けないということになつておりますが、これは引受けないということをきめたのではないので、私は貯蓄の増強によつて固く見積つた郵便貯金或いは簡易保険、厚生年金が上廻り、或いは政府の余裕金も相当出て来る、従いまして今は預金部の資金計画に乗つておりませんが、昨年と同等或いはそれ以上の努力目標を持つてつておるのであります。従いまして安本長官が今お答えになつたように、金融債の引受けも確保して行く。それは可能性も認めております。最近において実行に移るかと言うのでありますが、第一銀行の酒井君の、自分はこれだけの金融債を引受けられない、これだけの社債を引受けられないということを金科玉條にお考えになつては困るのでございまして、我々は計画を立てた以上はあらゆる手を盡しまして、例えば社債の発行、今安本長官が自己資金を五百数十億円と言つておられましたが、これはごのうちの大部分は増資なんかじやない。第一には償却の金を持つて来る。第二は社債の発行です。第三は、困難でありましようが、できれば九電力会社の増資、或いは自家発電の個々の産業会社の増資、こういうことを考えておるのでございます。金融債を絶対に発行しないとかということは私は言つていない、そこまでいつていないということであります。酒井君はどういう考え方で言われたか知れませんが、酒井君のお話が当るか、安本長官、大蔵大臣の話が当るか、これは一年たたないうちにわかりますから、どうぞそういうところで御了承願います。
  104. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今の大蔵大臣の御説明で非常にはつきりしたわけです。まあ金融債のことについては事情も知つていますから、わかつていますから、これ以上余り触れないほうがいいと思います。見返資金の四百六十何億ですか、あれはあれのOKをもらうためにああいう処置をしたと思いますが、この点は突込まないほうがいいと思います。それより重大なことは、今大蔵大臣が言われたことは電源開発その他に資材が要る。要るからそれは輸出にも影響する、輸出が減つて来る。それから公共事業を今調べましたら、公共事業は二十七年度は鉄鋼十九万四千トン、セメント百七十八万トン使うのです。木材は九百六十四万石、こんなに使う。電源開発の資材を入れれば三百万トンくらい、四割近いものになる。相当やはり影響が大きいのです。それで輸出にやはり食い込む、食い込むから外資が必要であるのだ、こういう今の大蔵大臣の御答弁なんです。こういう事態ははつきりした。そこでそういう予定がないから輸出の減る分を外資でカバーしないことになつた、この予算の編成の過程においては……だからどこかで埋めなければならん。何で埋めるかと言えば、国民生活の低下で埋めるより仕方がない。それを私は隠していると思うのです。そこが私の質問したいところであつてそこを大蔵大臣はさすがに正直にその点を言われたわけです。(笑声)その過程を、今までの外資がなぜ必要であるかという、必要の目的は私は大蔵大臣が言われたことが正しいと思う。結局直接円投資のカバーのために外資を輸入するのではない、円投資の調達のためじやない、結局必要だつたのは自立経済計画のために電源開発をする。そのために資材が食われるから輸出が減るし国民生活が下る。その輸出が減るから輸入が減る。それで国民生活水準の低下を防ぐ意味で外資を予定して作業をしたのです。大蔵大臣ははつきりと言われたのですから、それだから、それを予定して、国民生活水準を下げないために予定した外資が入らなくなつた結果、電源開発や国防方面にたくさん資材を使う。公共事業に使う。これで国民生活水準がどうして下らないか、ここなんです、私の聞きたいのは。
  105. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大分本論に入つたようでございますが、そこで、(笑声)外資が来ないから国民生活水準が下る、こう言いますが、外資は二、三年の先のことはいざ知らず、三、四年先の……今の場合は、国民の労働力或いは国力の生産物によつて外資はどんどん殖えている。だから今一憾、二億ドルを今買つて来るがいいか、或いはここに溜つた六億ドル以上、ポンドその他を合せて十億以上の一年半、二年に溜つたものを有効に使つて行くのがいいか、そこに必要な外資が入らんから国民生活が下るということ以前に、今溜りつつある外貨をどういうように使つてつて国民生活水準を向上さすかという問題です。外資というのは先のことなんです。ある外貨をどういうように使うかというのが只今の問題です。そこで昨日も新聞記者の連中と会つたときに――もつとはつぱをかけろと言う。経済は金だけでは……いわゆる米櫃も箪笥も空にしてどんどん輸出している。それじや脆弱な日本の経済がますく脆弱なる。溜つている金をどんどん使つて、米櫃も相当多くしようし、箪笥も一ぱいにするくらいにしてストックも持つ、こういうふうにして行くのが先決問題である。そうして、自分の金を使つてしまつて有効にして、なお足りないところは外資で行く。今外資が入る入らんという議論をする前に、溜つている外資をどうするかというのが議論の根本だと思う。だから私は今外資が二億ドルすぐ来るか来ないかという問題よりも、使い得る金をどういうふうにして生活水準を上げるのかということが先ず先だと思います。従いまして私は、できるだけ外貨というものを有効に使つて日本の、先はど申上げましたように設備の近代化、或いは原料の買溜とかいうことをやりまして生活水準の向上、経済の発展を図ろう、それが先の問題である。だから外国は、日本がそれだけやつて外貨がないというのならば非常に日本に対する外貨の貸付の気持も強くなつて来る。それが昨日マーカツト氏との会談で、ドルを溜めて円資金を出すということによる外資の導入はむずかしい話だ、こう言つたのは、そこにあるのであります。従いまして外資の問題よりも先に、ここに溜つている外貨をどうして国民生活の水準を上げるのかというほうが先だ、それを議論してから後に外資のほうに移つて行くのが本筋だと思いますが、如何でしようか。(笑声)
  106. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣はうまく整理されました。それは非常に幸いなことに溜つたのです。これはまあ大蔵大臣は実に運がいいのです。前はドツジラインで恐慌になりそうになつたところ、朝鮮動乱が起つて救われて、そうして自然増收がたくさん出て、千五百億も出て、すつと出て救われている。大蔵大臣は実に運がいいのです。併しそれは確かに大蔵大臣が言われる通り、それは問題が又おかしくなつて来るのですが、それなら外資を予定すると言つても、そんなに大蔵大臣は……外資が入つて来ないじやないか、やつぱり外資に努力するぞ努力するぞと言つている。そんなに溜つている外貨をどうして処分するかが問題なら、どうして外資を努力するのですか。そこがまあおかしいど思うのですが、一応大蔵大臣の言われたことは筋が通る。ですから、私が前に言つたことを大蔵大臣は一応認められたわけなのです。どうして外資が必要だつたかという、前の私の前提です。そのいわゆる自立経済計画による電源開発や何かに資材が要る、それから防衛関係にも資材が要るから、そういうものに食われるから、輸出が減つて、それをカバーするためにあれすると言つたのですけれども、ところが偶然外貨は殖えちやつて、今必要だ、そこで、じや何のために外資導入を一生懸命でやるのか、私も不思議に思つてつたのです。外資導入、外資導入と言うから不思議に思つた。それへ吉田さんが出て筋がズレたと思うのです。吉田さんは恐らく施政方針演説をやつたときと最近とは少し違つたと思う。あれを書いたときはやはり溜まらんと思つて、一に外資導入が日本経済を再建すると書いておつたけれども、ズレて溜まつてしまつたので、これが問題になつたので、いきさつが少しおかしくなつたと思うのです。ですから私は、そんならなぜ白洲さんや何か集つてああいう書簡を送つて、そうしてあんなに要請したか、それが私はおかしくなると思う。併し私もう時間がありませんから、それでは大蔵大臣に次にもつと突込んだ質問をしたいと思うのです。  それは先ほど安本長官に伺つたのですが、この二十七年度予算を編成するときに行政協定の影響というものを織込んで編成されているかどうか。大体安本長官は織込んだと言いませんけれども、そんなに大した大きな影響はないと思うという御答弁でしたが、財政的にはこれを織込んで編成されているかどうか。
  107. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大蔵大臣の幸運ではございません。国民の努力と、或いは国際連合軍の協力によるのでございます。私は何も幸運ではない。やはり国民が努力されたからこういうふうにうまくなつたので……。それから時期がズレて、総理の言われたようなことは今違つているのじやないか、こういうお話でございまするが、これはそうではない。初めから計画通りに行つているのであります。丁度日本の経済はよくなつて幸運であるがどうか……。計画通りに行つている。それはなぜかと申しますと、六億ドルの外貨、これで十分かといつたらそれでは十分ではない。フランスのような国でもまあ日本よりは少うございますが、或る程度持つている。イギリスは貧乏をしたといつても二十億ドル足らず持つている、そうして債権国であるのであります。だから六億ドルで私は十分で外貨は要らんというのじやない。而も特需関係等があつてつて来ている。三、四年先考えると心配だから今外資ということも考えて、いろいろな計画を立てて、入るものは入る……。併し裏付なく入つた外貨というものは不便である。その不便というものをなさないように、今ある外貨を使い、又使つた場合の見通しをつけるというので、我々長い目で外資導入を計画いたしているのであります。今溜つたからというので急に方向転換したわけじやございません。ドルにいたしましても、一昨年の暮は五億ドル近い、正確に申しますと四億七千五百万ドルであつた。それが今六億ドルになろうとしているのであつて、一年間に一億二千万ドルしか殖えていない。而も特需は相当あつて……、それだから今溜つたけれども、これはあなたが言うように偶然とは申されませんけれども、特需関係……。だからこれは、いつまでも溜るものとして外資導入を安閑としているわけには行かない。長い目で見て今から外資導入に努力しなければならないと思つているので、吉田総理大臣が施政方針演説を書かれたときと何ら変りはない。我々は極力外資導入に努力を続け、それが日本自立とのいたちごつこでよくなつて行く、こういうことであります。  それから行政協定の分は、これは木村さん、私行政協定に直接当つたわけではございませんが、事務当局が毎日やつている。而もあの行政協定ができますときの防衛支出金の問題にしても岡崎さんの話の前に大体やつている。そしてこれは動かんということを言つた。そうすると防衛金二千億とか二千五百億の問題があつて防衛支出金の六百五十億は動かぬ、そこで警察予備隊費と安全保障諸費が二千五百億とか二千億とかに釣合える……。私どもは行政協定がいよいよ実際の会談に入ります前に、警察予備隊費はどのくらい、或いは安全保障諸費が、建設関係が多いからこれを余りやると日本経済が壞れるというので、安全保障諸費の分をぶつたつたので、私は行政協定の財政関係に関する限りは相当の見通しを以てやつてつたのであります。これは一応織込んでおります。
  108. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まあ外資の問題は時間が、ございませんからあれですけれども、結局結論としては今溜つた外資は、国民の生活安定のために大蔵大臣は使うというようなお話ですから大いに期待しておきます。実はこのぐらい溜つても今後賠償関係があり、外債の支拂があり、従つてこのぐらい溜つたからといつて安心できないことは大蔵大臣言われた通りです。従つて、そうむやみにこれを国民生活のほうに使えるかというとやつぱり使えない。本当は使えない。そうすると結局・国民生活水準が下らざるを得ない。これが結論だと思う。それを今、国民生活を維持向上させる……維持ならまだよい、向上させるというから常識としてそんなことはあり得ない。そこを私はもつと、本当ならば実際のことをぶちまけて、国民にこれを、本当の事実、真実を知らすべきです。それをごまかしているから私はどうも割切れない。それから今大蔵大臣行政協定のあれを織込んでいるというのでございますけれども、それではお伺いしますが、六百五十億の分担金のうち約九十億は施設その他、あれはまあ一億五千五百万ドル以外ですね、あれは九十億というのはどういうものですか。あれは殖えないのですか。
  109. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは前のを繰返すようですが、国民の努力、労働力、その他国内の資材でドルがこれだけ溜つた。これを経済力の発展をさすために使うようにして行けば、国民生活の維持向上が図れる。溜つた外資を輸入に使う……、国内資金をもつと有効に使うように、今セメントの問題がありましたが、私はこういうことがあるから……、昨年の十一月頃から諸種の制限をしたのはここから来ている。外資が入らんから国民生活を考えて溜めている金を有効に使う。そして、それが又外資導入になるのですが、私は根拠のある説だと思う。今御覧願つたらいいと思うのです。それから……。
  110. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 九十億……。
  111. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) あれの分は二十五條の二項一号にきまつておりますように、今進駐軍が占拠しておりますと言うか、住んでおりますビル、それから官庁の建物、それから個人の住宅、これの費用なんであります。これは私は住宅なんかもだんだん解除しますし、ビルも解除いたしますから、この分は今大体私の計算では五十五、六億――六十億ぐらいだと思います。併し非常に安くやつておりますから、これは相当値段が上る、こう思いまして九十二億をあれしたのですが、今後これは殖えません。これが動くと私は相当強い力を持つてつて参ると思います。
  112. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 木村君、岡崎国務大臣が来られました。御質問がおありなら……。
  113. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 急がれますか。
  114. 和田博雄

    委員長和田博雄君) まだ一時間ぐらいは……。
  115. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじや今大蔵大臣は、九十億が減ると言われましたが、賃貸料、あの中には買収費というものは入つていない。物を買う、土地とか家屋とか買う買収費が入つていない。そうすると買収費というのはどこに計上されているのですか。
  116. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは今住んでいる進駐軍が代つて参りまして、そうして今度住宅を建てたり兵舎を建てるときには安全保障諸費で行くわけであります。だからだんだんこれは減つて参ることに相成ると思います。
  117. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは私はおかしいと思うのです、何か……施設というところにあるのは実は九十二億では足りなくなつた場合に、恐らくこういうことに私はなつて来ると思つたのですが、安全保障諸費のほうで作業するのですか。あの九十二億に該当する分が膨らんだ場合には、安全保障諸費でこれは措置する。そうするとこれは大きな重大な問題になると思うのです。安全保障諸費はそういうための費用でないと思う。これはどうなんです、大蔵大臣
  118. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私の考えに間違いないと思いますが、九十二億の算定は、今まで、御承知の通り、終戦処理費で賃貸料を拂つておりました。終戦処理費で拂つておる賃貸料の分がここに上つて来るのであります。それで、終戦処理費の賃貸料費の中には、住宅とかいろいろのものがありました。それがなくなつて参ります。これはだんだん減つて来ますが、含での実績より或る程度多くなつたのは、なくなり方の度合にもよりますが、片つ方値上げもございますから……将来は住宅も減つて来るということになれば、だんだんこの金額は減つて来ると考えておるのであります。併しこれが殖えるような場合は絶対にないかということになりますと、私は今十分に検討を加えておりませんが、殖えるということは今まで考えたことはないので、検討して見たいと思います。而して、今まで終戦処理費で拂つておりました住宅或いは営舎におる進駐軍が六大都市以外の所に出て行く場合におきまして、その施設に充てるために安全保障諸費を入れておるのであります。
  119. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間がありませんから……。
  120. 和田博雄

    委員長和田博雄君) もうあと五分あります。
  121. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 聞くところによると、あの中には土地その他の收賣費というのが入つていない。土地なんか收賣する場合は百億くらい要るのであるけれども、あそこからは出せないので、どこから出すかについて今検討中であると言われていますから、それがはつきりしてから御答弁願いたい。  時間がありませんから、次に岡崎国務大臣が見えましたから伺いたいのですが、今度日本の賠償指定が解除されます。その場合、今まで進駐軍が使つていたものを、これは全部解除されると思うのですが、その場合、これは若しか解除される場合に、今度は争いが起きたときどうするか、進駐軍がもつと使いたいと、こつちがいや解除してもらいたいと、そういうときにはどういうふうになるのですか。その点の何か取極があるのか。今日の新聞を見ますと、民間工場は大部分民間指定の機械その他解除すると言いますけれども、中には非常にいい工場が継続使用されるようになつているのです。この間の取極はどういうふうになつて参りますか、ちよつと伺つておきたいと思います。
  122. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 賠償指定の物件につきましても、原則的には、今やつておりまする予備作業班なり、或いは将来は合同委員会で、向うが必要とし、こちらが必要と認めたものは提供することになります。そこで、その場合には、一番簡單に行きますのは、国有財産である軍工廠等のものなら簡単に行くわけであります。民間のものであるならば、民間と話合いをしなければできないことになります。それには又使用料とか、いろいろのものがあると思います。要するに、これは予備作業班、それから合同委員会にかけて相談をして、合意のあつたものだけを使う。ほかの施設区域と同様であります。
  123. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その場合、民間で嫌だと言つたときどうなんです。民間で継続使用を、嫌だと言つたときにどういうことになるのですか。
  124. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 只今の関係では嫌だと言えば仕方がないわけです。
  125. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 仕方がないというのは何できめてあるのですか。仕方がないというのは何できめてあるのですか。仕方がないという根拠はどこにあるのです。
  126. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 只今のところは嫌だというものを無理に使う法律的の根拠はないわけであります。
  127. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういう意味ですか。こういうことはないわけですね。継続使用を向うで申込んで来たときに、継続使用を認めるということをあなたはラスクさんとの間に書簡で交わされておりませんですね。若しか話合いにして、どうしても話合いできなかつた場合は、アメリカさんのほうに継続使用を認めるという確言はしておりませんですね。この点どうですか。
  128. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは私のラスク大使との間の交換公文最後のところを言つておられるかと思いますが、これは、もう非常によくよくの例外的なことを念のためにきめたのですが、ですから原則的には合意が合わんというようなものはないと考えております。それから、若し仮にあつたとしても、そんな長い間合意ができないという筋のものではないわけです。殊に、これは主として、何というか、施設の、都心から移るというような場合のことを主に考えておりまして、工作機械とかというような賠償指定の関係のものについて、九十日以内に合意ができないなんということは全然予期しておりません。
  129. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは非常に私は重大だと思う。今後できないことはないなんとおつしやつておりますけれども、現にこれから予備作業班がどんどんやつて行きます。その過程に私は問題が起つて来ると思う、実際問題として。最後にどうなるかというと、岡崎さんがあの交換文書で、向うで継続を希望したときには継続を認めますよということをあなたは言われておるものですから、これを楯にとられたらどうにもしようがない。今実際問題としてそのことはよくくないだろう言われますけれども、私は起つて来るじやないかと思う。何故ああいうことを、これは立法によらずして、立法によらずしてああいうことをラスクさんに約束できるかどうか、これは問題じやないかと思う。合意できない場合には、継続使用を優先的に認めるということは、これは私はこれこそ大きな憲法違反ではないかと思う。この点は私は重大だと思う。今後予備作業班でやつて行く間に具体的に起つて来ると思う。そのときにどうするか。結局強引に、まだ占領下でありますから、どうしても強引に進駐軍の言うことですから我慢しろ、こういう形で行つたんでは非常にまずい。この点私は大変なミステークをやつたんじやないかと思うのですがどうですか。
  130. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 木村君は安全保障條約にも反対しておられるのですからして考え方が非常に何といいますか、うたぐりを持つてつておられる。我々のほうから行くと、これはお互いに本当に好意を持つて両方で以て誠実に行わなければ安全保障條約というものは守れないものであります。たびたび言うようではありますが、アメリカ軍隊がここにいて、万一の場合には、日本のために死ぬんだということについては、我々はアメリカ軍隊にそれだけの信頼を置かなければなりません。又アメリカ軍隊から言えば、日本国民が横のほうを向いて反米的の気持でおるときに、国内にいて日本のために死ぬまで戦おうというような気持が起らないのは当然であります。従つて、我々のほうから言えば、アメリカ側にできるだけ居心地がいいようにする。アメリカ側のほうから言えば、日本国民の感情をできるだけ尊重して自分たちは歓迎される客であるというふうにならなければ、両方ともうまく行かないのであります。そういう意味から申しまして、又ラスク大使との談合の際におきましてこれは司令部の関係官もたくさん見えております。これらの考え方から言いましても、又現に予備作業班の行なつておる作業の実績からいいましても、木村君のお考えになるような事態は、建物については、これは建設中で延びるということはあるかも知れませんが、それ以外に私はないとこの頃はだんだん強く信じて来ております。
  131. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今岡崎国務相らしくないことを言われたと思う。僕は反対党です。それから安保條約には反対しました。併しながら、反対したから物を曲げて解釈するということについては、私も一身上十分これは弁明して置かなければならん。私も職業としては評論家です。経済評論、評論をやる場合には飽くまでも客観的に物を見なければならん。私は、反対でありますけれども、事実は事実としてですよ、これはやはり見るにやぶさかでないのであります。ですから財政の、大蔵大臣質問するときでも、大蔵大臣が本当のことを言つて自分が間違つたときには、私はいつでも率直に取消しています。そんな狭いことを言つておるのじやない。これは日本民族にとつて重大な影響があるのであります。今の協定はこれから業者にとつて事業者の利害に重大な関係があるのですよ。若しかできないときには、継続を認めるとすれば、一方的じやありませんか。その事業を私は指している。これは私は今後大きな問題にならなければ幸いだと存じます。併しこの点は今後予備作業をやつて行く場合に随分これは大きな問題になると思う。必ず大きな問題になると私は思う。最後に時間がなくなりましたので大蔵大臣に二点だけ伺つて置きたいのです。時間がなくて甚だ残念で、もう少し大蔵大臣と火花を散らしたかつたのですが……。その一つは財政規模の問題です。財政規模を大蔵大臣は八千五百二十七億に対してこれが国民所得五兆三百四十億ですか、大体まあ一七%、一六・九%で二十六年度と大体同じである。従つて国民所得に対してこの財政は二十六年度に比較して余り過大ではないのだとこう言われましたが、それは私は今度は総合予算として見た場合、地方財政を加えた場合は二十六年度のこの二三%が約二五%になつて来ると思うのです。これは平衡交付金或いは政府の補助金を差つ引いてネット計算すると……。そうすると、大蔵大臣は前には総合予算、総合予算というけれども、我々は税金は国税と地方税両方納めるのですから、財政規模を見るときには、この一般会計、中央財政と地方財政をひつくるめて見なければならん。そうなると、地方財政をひつくるめて見ると、財政規模は二十六年度より拡大しています。二三%、二五%拡大しています。従つて国民所得から見た場合、この予算の中央地方を通ずる予算国民生活に対する圧迫は私は大きくなつて来ると思います。二十六年度と同じである、こういう一般会計だけ見て言うのは、私はこれはおかしい、正確でないと思います。如何にも圧迫していないかのごとくに国民に誤解を與える。この点については私は第一非常に正確でないのじやないか、やはり今年度の予算は中央地方を通じてすれば、二十六年度よりも大きくなつて来る。国民生活にやはり大きな圧力を與えて来ているのだ、これは事実だと思うのです。その点大蔵大臣の説明には不十分さがあり、正確を欠いていると思うのですが、その点どうでありますか、この点が第一点。  それから第二には、この予算大蔵大臣は均衡がとれた健全予算と言つておりますが、私はこれはむしろ表面だけは、均衡のとれたように辻棲を合しておつてその予算のほかに非常な不均衡なインフレ的要因を非常に残している。ですからこれは実際インフレ予算であると思うのですが、第一に実はこの予算が赤字財政になると困るので、八百八十三億をこれを交付公債として旧軍人遺家族に與えるごととして予算から一応外しています。これは一種の赤字財政である。それがインフレであるとは言いません。一種の赤字財政である。もう一つはこのインベントリー・フアイナンスのほうに逃げていつておる。私はインベントリー・フアイナンスについても時間があれば詳細伺いたかつたのですが、大蔵大臣は二十六年度のインベントリー・フアイナンスをどうするのですか、インベントリーですね、平和回復に二百億も使つてしまう、それから日銀のスワップを七百五十億、八百億もしているのです。これなんかも実にひどい。而も二十七年度においては日銀からの借入れ限度を七百億を千億に殖やす、それから二十七年度の三百五十億のインベントリー・フアイナンス、これを担保にしてすでにスワップとして使つちやつておる。二十七年度におけるインベントリーの金はないわけです。そうすればこれはどうしても金融的に操作しなければならんので、そこに金融インフレが起る大きな要因がある、ここの二つに逃げて行つて、そうしてこの二つを除いて均衡予算である、健全予算である、こう言つているのです。この二つは大きなインフレ要因があると思う。それから最後にもつと大きい要因としては、この非生産的支出がいわゆる防衛支出が千八百二十億だけじやない、私はこのほかにどのくらいあるかを私は大蔵大臣に聞きたいのであります。それは公共事業の中に、例えば港湾、道路、こういうものについて軍事的の支出が相当あると思います。今度は基地を設ける、基地の周辺に道路を設ける。そうして今までの港湾なんかは七〇%或いは九〇%も進駐軍に接収されている。道路なんかもこの弾丸道路などはこれはやはり軍事的な道路と言われておる、そういうように非常に間接的なこの軍事施設が相当あると思います。それから国鉄にもある、いわゆる準備車輌として空車車輌として待つておるのが二千輌にも上つておる、それから電通省のほうにも電信、電話にも影響はあると思います。で進駐軍の今度は駐留軍というのですが、サービスとして與えます、そのサービスの建設の資材の負担は日本の負担である。そういうことを考えると、間接的なこの防衛負担、日本経済に與える影響というものは非常に大きいものだ、これは非生産的な施設だと思います。このインフレ要因をどう考えるか。今日は時間がございませんからこれだけお伺いしておきます。
  132. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 中央財政は均衡主義だが地方を入れると必らずしも均衡でない、殊に前に比べると国民所得に対して殖えるのじやないか、こういうのですが、これは昔から政府は赤字をしないと言つても、地方におきましては二、三年前は三百五十億とか、或いは昨年度におきましても五百億とかやつておるんです。地方の財政とこの国の財政とはおのずから違いまして、事業会計等相当持つておるのであります。だから一概にそうとは言えません。私は地方のほうもできるだけ地方債の引受を抑えて、いろいろな経費につきまして干渉はいたしておりますが、昔の大蔵大臣のように地方の財政についての権限はないのであります。たまたまその歳出の一割に相当する程度の地方債を抑えるというぐらいのことしかないし、その分も平衡交付金を殖やせとか、或いは地方債を殖やせというこれは院議で非常に攻められる、こういうことから考えまして、できるだけ地方の財政を圧縮するようにいたしておりますが、やはり事業会計が相当あるのであります。国民生活の向上のためには、地方財政で或る程度膨脹して行くのも止むを得ない。ただここの財政につきましては、今言つた、ように国民所得に対しまして一七%弱で抑えて行く、こういうことよりほかにしようがございません。今の制度から止むを得ないことであると思うのであります。  それからインフレ要因がある、これはもう木村さんは昭和二十六年度の予算についても、これはインフレ要因でもうインフレになつてしまうと言いますが、今の現状では十人寄れば八、九人はデフレの状態ではないかと言つております。予算のうちにいろいろな点にお話の点がありましよう。これは一家の家庭の生活でも、それはときには無駄がなきにしもあらずです。併し国の予算に無駄があつてはいけませんから、今すぐそれが役に立たんからと言つても、一国の財政を整える以上は、それはできるだけ緊急止むを得ないものに限るごとといたしますが、鉄道車両にいたしましても、車両が少ないために滞貨が多くて物価に影響するということもありますので、やはり経済の見通しを付けましてそこに成る程度の余裕は持たなければいかんと思うのですります。で防衛のための建設その他についてでありますが、私といたしましては、先ず第一に均衡のうちにも、物資面について不当な悪い影響の起らないように予算の執行上で考えて行くべきである。私はあなたとはいつも違うのですが、インフレ要因とは思つておりません。得てして日本のこの頃の状態はひき締め過ぎるのがデフレになりかける場面も多いので、インフレを抑えると同時にデフレに陷らんようにしなければならん、(木村禧八郎君「物価は上つていますよ」と述ぶ)常にインフレ、デフレの議論がありますが、私はこれを以てインフレ予算なりと断定するわけには行かないと思います。
  133. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 時間が参りましたので……。
  134. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちよつと一言だけ……。大蔵大臣今インフレ予算でないと断言されて、私がただ默つているとそうとられると思いますから、今後又他の機会に質問したいと思います。
  135. 岩間正男

    ○岩間正男君 最初に池田蔵相にお伺いいたしたいのですが、これは周東長官が今ちよつと衆議院のほうに行かれたので帰られたら一緒にお聞きしたいと思う。私の要求大臣はそのほかに岡崎国務相、大橋国務相、それから木村法務総裁、それと天野文相ということになつておりますので……。
  136. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 今要求しております。
  137. 岩間正男

    ○岩間正男君 最初に岡崎国務相にお伺いしたいのでありますが、これは先ほどの木村君の発言に関連しまして、私も反対党である。先ほどのお話では、どうも反対党だから物事を逆な方面から見る、こういう御発言があつたのでありますが、これは非常にやはり問題だと私は思うのです。反対党の意見こそ十分にお聞きになつて、それごそれに対して我々の懸念しているところの民族の将来の問題につきまして十分に解明を與える。或いは予想しないいろいろな事態が起るのでありますから、そういうような事態に対しまして十分にこれは処置して行く、殊に行政協定はこの前も論議になつたのでありますが、これは仮定の問題、仮定の條約なんです。仮定のことを予想してこれは結ばれているのであります。若しもそうでないとすれば、現在どうしてこんな行政協定が必要か。こんなものは必要ない。我々は将来においても必要ないと思いますけれども、こういうものは必要ないはずなんです。ところがそういうような仮定を前提として條約を結んでおきながら、いろいろの予想された條件に対しましては、我々は理解と信頼で行くのだ。そういうことは起らない、そう信念する。こういうことでは、これはあなたの信念は、如何に仮にそう信じたとしても、併し予測外のいろいろな問題が起つ来るのであります。これに対して十分なやはり民族の将来の問題として考えなければ大変なことになるのでありますから、只今のような御発言は私はこれは非常にけしからんと思うのです。そういうことでなく、もう少し日本国民の全体の将来の運命並びに利益に対して腹の坐つた答弁を願いたい。こういうふうに思います。  それでいろいろお聞きしたいのでありますが、先ず第一にお聞きしたいのは、今朝ほどのニュースによりますというと、国際連合に対して日本は加入したい、それでその申請を閣議でまとめてそうして国会にこれはかける。こういうふうなことでございましたが、大体これは国会にそういうものを提案されるのはいつ頃になるのでありますか、この見通しを大体伺つておきたい。
  138. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは手続のでき次第提出いたしますから、極く一両日にも提出できるかと考えております。
  139. 岩間正男

    ○岩間正男君 まだ講和條約は発効していないのであります。そうして又国際連合に加入するとなれば、するだけの日本のいろいろな予備的條件というものは私は揃えなければだめだと思う。そういう点からこれは併行的にやられる政府の態度だと思うのでありますが、そういうものを急いでおられる、国際連合にここで大急ぎで加入しなければならない、こういうような何か必要……そういうものはどういうふうにお考えになつておりますか。
  140. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 国際連合は世界の大部分の国が加入しているのでありまして、その目的等についてもこれはどこの国も異論のないものであります。従つてできるだけ早く加入をすることが適当であろうと考えているだけであります。ほかに別に特殊な理由はないのであります。
  141. 岩間正男

    ○岩間正男君 大体日本の現状において、これは国連加入は可能性があるというふうに考えておられるのですか。大体私は国際連合に加入するにはいろいろな條件を整えなければならない。而もその中で国連憲章の精神に徹することが非常に重要だと思う。ところが現在果して国連憲章の、而も国連憲章が一番目指すところは世界の平和の問題であります。然るに日本の従来政府のとつて来た態度というものは、これは全面講和の線というものは塞いでいる。そうしてこれは我々の見るところでは、行政協定によりまして日本はもつとく軍事基地化されて行く、そして軍事態勢というものは非常に強力になつて来る。一方におきましてはポツダム宣言によつて禁止されておるところの兵器生産、こういうものも大ぴらにこれはなされようとしておる。このような禁止條項が解かれ、まるでこれは反対の方向に動いておる。こういうように日本の態勢を持つて行きまして、果して国連憲章に合致した行動を今日日本はとつておるか。だからして日本は国連加入が容易にできると、こういうふうに考えておられますか。その点政府の御決意をお聞きしたいと思います。
  142. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 国連に加入している国々は、これは殆んど全部と言つていいくらい軍隊も持つておれば兵器も製造しております。従つて日本が兵器を製造するかしないかは、これは日本の国内できめる問題でございますが、條約上は兵器を製造してはいかんという制限は全然ないのでございます。従つて国連としてはほかの国並みにそういう問題は考えられるであろうと思いますので、この点で国連加入に支障になるとは思つておりません。ただ日本側だけで支障はないといたしましても、例えばイタリアにしても、ソ連、アメリカイギリス、フランス等の各国との間の平和條約で、このソ連を初め全部の国がイタリアの国連加入を支持するということを條文に書いてあります。ところがイタリアが加入申請をいたしますと、ソ連が拒否権を用いて加入を妨げて来たのであります。そういうような事態もありますので、国連側でどういうふうにこれが取扱われるかは別問題として、日本としては国連に加入を申込む資格は十分あると、こう考えております。
  143. 岩間正男

    ○岩間正男君 それは岡崎国務相の解釈ではないかと思う。先ほどのお話によりますと、国連に加入しておる国は軍隊も持つておる、兵器生産もこれは許されておる、そうすると日本も何か今のお話の裏から読んでみるというと、そういう條件ができたというふうに私は聞えるのでありますが、そのことはちよつとおかしいと思う。  それから国連に現在加入している国にはいろいろな段階がある思うのでございますが、私の一番やはり問題にしたいと思うところは、国際連合の精神から行きまして、飽くまでもこれは世界平和というものを推進する、逆に戰争を禁止して行く、こういうようなところに一番大きな精神があるはずです。そういう点から考えまして、日本の現在とつておりますところの態勢というものは一体どうであるか、こういう点で、当然これは先ほどイタリアの場合にソ連が拒否権を発動した、こういう問題が話されたのでありますが、恐らく日本の場合におきましてもその後とられたところの條約或いは行政協定、その後のもろもろの態勢から見ますときには、これは日本の参加に対しましてそういうような拒否権の発動ということが行われる可能性が出て来るのではないかと思うのでありますけれども、こういう点の見通しは如何でございますか。
  144. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は今お答えいたしましたのは、岩間君が日本で兵器を製造しておる、だから国連加入の資格がないのじやないかというふうに聞きましたので、兵器を製造するということは、日本はやるかやらんかは別問題として、国連加入の妨げにはならないと、ほかの国もそういうことはやつておるのだということを言つたのでありまして今度は岩間君は逆に、兵器を製造したり軍隊を持つたりほかの国はしておるから、国連加入はあらかじめ兵器を製造したり軍隊を持つたりしなければできないようなお話でありますが、それは全く違うのであります。兵器を製造するしないということは国連加入の條件ではない、こういうことを申しておるのであります。  それから国連憲章の目指すところは国際間の紛争を力によつて解決しない、交渉によつて解決するというのが眼目であります。日本は無論そのつもりでありまして、今までも今後も力を持つて国際紛争の解決をしようなんということを考えたことは全然ないのでありまするから、これは国連加入の資格ありと我々は考えておるのであります。但し今までも申した通り條約で国連加入を支持するということは書いてある、その條約に署名した国がイタリアに対しては拒否権を用いているような世の中でありまするから、こちらで幾ら資格があつてもそれはできない場合があります。併しながらこれも国際間の主義とか原則とかいう問題でないことは、現にソ連側で以て今まで拒否権を用いて拒絶しておつた共産系の数カ国も一緒に加入させるならみんな加入させようじやないかという提議さえも出しておる。従つてこれは主義の問題ではなくて便宜上の問題とも考えられますから、どう取扱われるかはまだ将来のことで、できるともできないとも言えませんが、とにかく我々としては加入を申請する資格十分ありと思いますので申請をしようと、こう考えておるのであります。
  145. 岩間正男

    ○岩間正男君 大体国連が安全保障條約を作つた……安全保障というようなこれが態勢を作つた、そういうのは、これは旧敵国の戰争を惹起したそれに対する一つのこれが措置としてできたのだ、こういうふうにはつきりこれは明らかなことだと思うのです。そういう点から考えまして、旧敵国であるところの日本が現在進めておる態勢、これについては非常に大きな問題になつております。殊に国会の論議では何がやられておるかというと、仮想敵国というようなことで、そうしてたまたま中国やソ連というようなものをそういうような対象においてこれが論議されているほどじやないか。それは安保條約の中でもこういう問題が出て来ているじやないですか。これは速記録を調べて見れば明らかであります。こういう態勢をとつておる。いわばむしろ世界の戰争、そういうものに対して一つの役割を果すような態勢にだんだん追い込まれておる日本に対しまして、これは当然全世界の平和を確立して、そうしてできるなら五大国の平和條約によつて世界の平和を推進するというような根本的な対策というものを考えておる。例えばソ連なんかにおきまして、この日本のいわば敵対行為、こういうような形で以て現在進められているこの態勢が、このまま容認されるというような甘い考えを持つておられるかどうか、この点は私は旧敵国であつた日本自体において十分にこれは反省し、そうしてかような戰争原因というものは全部除去するという態度になつて、初めて我々はそういう資格ができるのだと思うのでありますけれどもまるでこれはポツダム宣言の線から見ますというと、現在におきましてはポツダム宣言はまさに反故、敝履のように捨てられておる。こういう態勢であります。今日ポツダム宣言という言葉を言うことさえが何か古証文を持出して問題にしているのじやないかというような印象を伴うほど日本の論議というものは後退している。こういう態勢の中におきまして、日本が如何にこういうような国際機関に参加しようと熱望を持つていたとしても、現在のこの状況から考えまして、果してこれは條件が備つておるとお考えになりますか。この点もう少し明確に私はお聞きしたい。
  146. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 国際連合の措置は、世界の長い目で見た平和維持を考えておるのでありまして旧敵国に対する防衛措置という小さなものではないのであると私は考えております。又国際連合の中では地域的の安全保障措置を講ずることは当然考えられておるのでありまして、これは一向国連憲章と違うものではないのであります。又ポツダム宣言のことを言われましたが、ポツダム宣言は、その條項実施されて日本責任ある民主政府ができたときに平和條約も結び軍隊も撤退するということになつているのであります。このたび平和條約が今や間もなく批准されて効力を発生しようという事態にあること、それがつまり連合国としては日本がポツダム宣言を忠実に履行しまして、十分にその効果を挙げたということを認めてのことであります。そこで平和條約ができますれば、平和條約の原則は、旧敵国であるとか、戰勝国であるとか戰敗国であるとかいうことは全部もう水に流しまして、平等平和の原則に立つて條約を作ろうど考えておるのでありますから、只今はまだその時期ではありませんが、講和條約が効力を発生しますれば、戰勝国とか戰敗因とかいう観念は少くとも日本と連合国との間にはなくなるはずであります。
  147. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 岩間君にちよつと申上げておきますが、法務総裁が三時三十分ぐらいまでに参りますから……。
  148. 岩間正男

    ○岩間正男君 我々はそういうことのためにこそ全面講和を願つたのです。国際連合に入りたければ、世界のあらゆる国々と平和の間柄を早く回復する、こういうことでなければ事実これは入り得ない。ところがその後とられたところの日本の態勢というものは、全くこれは逆な方向に行つてしまつた。そしてアメリカ一辺倒というような形で、特に朝鮮事変が発生しましてからは、国連協力の名におきまして日本は露呈のいろいろな協力までしておる。こういうような態勢でやつていて、そうして今日あなたが言われるようにポツダム宣言を完全に履行されている……これは全く三歳の童子もおかしがるでしよう。例えば兵器の一つの問題がさつき出ておりましたけれども、兵器製造禁止の問題、これは実施されていますか。兵器禁止の條項に何と書いてありますか、この一事を見ただけでもこれははつきりしている。こういうことが今日許された、覚書によつてこれは解除された、こういう形で、まるで日本人は、これは日本国民はおもちやのようにされている、大切なときに。戦争の原因を除去しろ、戦争を放棄しろ、こういうような形で以て憲法を作り、平和に寄與すると言つておりながら、現在において情勢が変るというともう紛うかたなきところの何か集団を、実際警察予備隊という名前で持たされておる。そうして兵器も造らせようとしている。日本民族はおもちやじやない。これは国際連合の全体の意図するところじやない。国際連合の一部の中で、その中で権力を握る、そういう国によつて日本が支配され、こういう形で以て日本が国際連合に参加する、こういう形を仮にとつたとしても、世界各国が果してこれを承認するかどうか、殊にもう仮想敵国というような形で以て、そうしてそのための態勢を進めている日本に対しまして、当の敵国視された国がこれに対してどうして一体黙つていることができるかどうか、これは考えても明らかだ。従いまして私のお聞きしているところの問題は、ソ連の拒否権が発動される、こういうようなことに対して、これはどういうような見通しを持つておるか、こういう点あなたにお聞きしたい。
  149. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 我々はどこの国を仮想敵国というようなことを言つたことはないのであります。仮想敵国の話が出ますれば、むしろ中ソ同盟條約が日本を仮想敵国としている疑いあり、こういうことになるのであります。なお日本としては国際連合に加入する資格は十分ありと考えております。そこで若し拒否権を用いてこれに加入を拒むような国がありましたならば、恐らく日本国民全般の憤激を買うであろうと固く信じております。
  150. 岩間正男

    ○岩間正男君 仮想敵国と言わないなどということは、あなたは言つておるかないかわからないが、問題にしておりませんが、吉田総理はちやんとこの前内村君の質問に対してそういうことを了承した上に立つてはつきり答えております。そういう馬鹿げたことが国会の論議の中で行われて、これを信じている、それに対して拒否権を発動したら日本国民の憤激を買う、成るほどそれには今からの事前の国民に対する宣伝としては利くかも知れぬけれども、世界の情勢を本当によく見て十分お考えになればいいと思う。当然そうなれば日本は正式に加入できない、我々はやはり自分の本を正してそういう前提條件を十分に揃えて、飽くまでこれは我々の体制におきましてはこれは国際連合の精神に適う、こういう体制をとらなきやならないと思う、併し拒否権なんかでもありますれば、当然これはどういうふうな処置をとるのでありますか、その点お伺いしたい。
  151. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は再三繰返しておりますように、日本としては国際連合に加入する資格は十分にあると思いまするので、拒否権を用いる国がありとすれば、それは拒否権を不当に用いておる国である。従つて国民の憤激を買うであろう、こう申しておるのであります。
  152. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうときにどういう態度を……。
  153. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) こちらが悪いのでなくして先方が悪いのでありまするから、こちらとしては改めるところは何もない。
  154. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 関連して岡崎国務相にお尋ねいたしますが、只今日本は国際連合に加盟する十分な資格を持つているというふうに申されましたが、軍備がなくても加盟する條件を国際連合憲章に照らして十分持つていると政府は理解されていますか。その点について国際連合憲章との関係で一つお答え願いたいと思うわけであります。第四條には、加盟国は国際連合が意図しています義務を受諾する、そしてこれを誠実に履行する能力があることを先ず加盟国の資格としているわけであります。そこで国際連合といたしましては、岡崎大臣が申されましたように、先ず第一番目は、国際連合憲章の第六章に、紛争の平和的な解決を意図しておる、そうしてそのためにいろんな手続きをとつて、この協調によつて国際紛争を解決するということを言つているわけであります。ところが第七條におきましては、それでも国際紛争が承和的な手段で解決できない、平和に対する脅威、平和の破壊、及び侵略行為に関する行動といたしまして、第三十九條には安全保障理事会は国際紛争の起きたときに、侵略された国に対して武力的な援助を勧告いたしまして、そうして紛争の実力的な解決を意図するというのも一つの国際連合の持つ使命であるわけであります。従つて私が岡崎国務大臣に御答弁願いたい点は、第四條の関係、加盟国の二一の資格義務を受諮し、そうしてこれを実行する能力があるという点、それから平和的な紛争の解決、我々といたしましては国際的な紛争を平和的に解決する、この方面に多くの期待を持つているのですが、併し第七章の関係において日本はどうなるか。そうして平和憲法の立場を持つていても十分資格があるとお考えであるかどうかということとの関連においてお答え願いたい。そうして特に申上げたい点は、朝鮮事変におきまして、加盟国は六十カ国でありますが、この三十九條の勧告に基いて、七章の勧告で実際朝鮮戦線に出ております地上兵力は、私の調査では二万足らずで、アメリカを除きましては二万足らず、イギリスが六千、その次に多いトルコが五千というようで、合計いたしまして二万足らずでありますが、勧告に従つていない国が四十数カ国あるというようなこととの関連におきまして、ともかく軍備を持たなくても国際連合に加盟する資格があるというようなお考えであるか、或いはこれを楯に取つて、再軍備するという一つの手段としてのことではないかという点についても関連してお答え願いたいと考えるわけであります。
  155. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は国際連合というものは世界の紛争を平和的に処理しようというつまり平和維持の目的でありますので、武力を持つていなければ何といいますか、軍隊を持つていなければ紛争を武力で解決しようとしてもできないわけでありますから、国際連合の理想とするような国とも言えば言えるのであります。従いまして、そういう原則的な議論から言いますと、軍隊を持つていないから加入はできないという理屈は毫もないと私は考えております。ただ国際連合に加入する諸国というものは皆実際上軍隊を持つておりますから、軍隊を持たないで加入した国があるかと、こう言われますと、甚だ困るのでありますが、一例を挙げますと、この前の国際連盟のときにルクセンブルグが加入を申込みました。ルクセンブルグは軍隊を持つておらないのであります。確か條約で以て、その要塞を段ち軍備を廃止するということになつておりました。そのときのルクセンブルグの申入れには、ルクセンブルグは軍隊を持つていないけれども、領土内の国際連盟軍の通過とか、或いは関税の措置とか、或いは財政的の措置とか、その他の措置で十分に国際連盟の趣旨とするところに協力できますから加盟はできるのである。こういうことで申込んで加入をいたした例があるのであります。例は非常に少うございますがそういう例もありますので、軍隊を持たないということで加入ができないという、資格條件が欠けるということにはならないと我々は考えておりますが、これを国際連合がどういうふうに取りますかは、これは申入れをしてみないと正式にはわからないわけであります。
  156. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 もう一つ、それでは私たちといたしましても、国際連合に協力する仕方といたしましては、平和的な方法によつて軍備以外でも協力できると思いますので、只今の答弁で十分満足するわけでありますが、大変恐縮ですが、そういう点では、アメリカとの行政協定なんかでその点を御相談なされたようなことはないわけですか。国連における指導国とされてのアメリカ話合いをされて、軍備を持たなくても大丈夫だろうというような折衝はなかつたのですか。吉田内閣とされて独自の判断で、国連憲章に十分軍備を持たなくても副い得るという御見解なんですか。その点ちよつと……。
  157. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 行政協定では別に話合いは何もありませんで、ございましたが、平和條約の條項についての交渉のときには、御承知のように国連の條項を守るとか、国連加盟も出ておりますので、そのときには話合いが出たわけであります。併しながらこれは正式に出して見ないと、アメリカ一国での考えでもきまらないものでありますから、各国がどう考えるかというところまではまだはつきりいたしておらないのであります。
  158. 和田博雄

    委員長和田博雄君) ちよつと今の点重要な点で、私からもお聞きしておきたいのでありますが、今後国連加盟を申請する場合に、やはりルクセンブルグがやつたように、日本としては憲法の範囲内においての協力ということで十分国連に協力できるという、そういうようなやはり理由なり條件なりを付けて加盟を申請されるのか、そういう点はどうなんですか。
  159. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは普通加盟には、ただ国連に国連憲章を守るという意思を表示いたしまして加盟するのであつて、こういう点でできるとか、こういう点でできないとか言うことは普通言わないのであります。併しながら若し問合せがありますれば、そういう説明をすることは当然と思いますが、初めはただ日本としては国連憲章を遵守してそれに加盟する意思があるということだけで、詳しいやり方等は別に申出る必要は、ございません。こう考えております。
  160. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはオブザーバーの場合ですが、資格とか権限はどういうことになるのですか、念のためにお聞きしておきたい。正式に加入ができないという事態が起ればオブザーバーの問題が出て来ますが、そういうときにはどういう資格権限を持つのですか。
  161. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) オブザーバーは特に資格とか権限とかいうものはありませんけれども、国連の中に、国連の会議の場合には、席を設けられまして、これに対して議事を見守つていることはできます。又特に招じられれば本会議若しくは委員会等で意見を述べることも認められております。これは先方でそういうことをされた場合です。オブザーバーというものは、特に表決権もありませんし、権限は特殊なものはないわけであります。
  162. 岩間正男

    ○岩間正男君 国連協力というものを政府はどういうふうに考えておられるのですか。国連憲章の精神に徹して、それで飽くまでも平和的解決をするのだと先ほどお話がありましたが、併しどうですか。日本の現在の国連軍協力、こういう形で進められておる態勢は、一方の陣営に身を投じ或いはできるだけの協力をする、こういうことによつて、現実的には戦争の中に介入する危険性が非常に多い、こういう態度をとつて、本当に国連協力になるとお考えですか。若し政府の態度が国連憲章に徹するならば、飽くまでも、例えば朝鮮事変のような問題については、これは現在は、そういう態度がとれないでしようけれども、講和発効後において、むしろ戦争を回避する方向、これをやめる方向、そういう方向にあらゆる努力をするのが、国連憲章参加の最大の我々は資格だと、こういうふうに思うのでありますが、現在アチソン、吉田交換文書によつて、すでにこれは日本が国連軍との條約を結ぼう、これはこの前私は岡崎国務相に質したところでありますが、そういう企てが進められておる、こういう態勢をとつておいてそこに矛盾がありませんか。むしろ見ようによつては、そういう国連軍との條約を、もつと合理化するために、国際連合参加というような方向も、ここで考えられておる、こういうふうに考えられる節もございますけれども、これはどういうふうになるのですか。その点が一つと、それから先ほど申しましたところの、国連軍とのこの條約、こういうものは、やはりこれに参加するかどうか、こういうものとの関連において決定されるものであるかどうか。この二点を伺いたい。
  163. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) どうも岩間君とは根本的に意見の相違があるようでありますから、私の言うことを承服されないかも知れませんけれども、国連側の考えから申しますと、三十八度線で穏やかになつていたところが、北鮮側が南鮮側に侵入して来た、それでそこに戦争が起つた、そこで侵入軍を南鮮から追拂うという目的で、つまり朝鮮の平和を維持し、原状に回復するという目的で、国連軍が出動した、こう考えております。従つて、我々は非は北のほうから南のほうへ侵略して来た軍隊にある、それを追払うための国連軍の措置は、警察行動である、隣の家に無理やりに侵入して来たやつを追い返して、元へ戻すための国内警察行動と同じことだと思いますので、それにできるだけ協力をする、これがつまり世界の平和維持である、こう考えてこれに協力するのであります。なお第二の点につきましては、国連加入と今の国連協力との趣旨は全く別個でありまして、国連に加入しようとしまいと、世界の平和維持のために努力しておる国連軍に対しては、日本の能力の範囲内では、できるだけ協力をいたそう、その協力をいたす場合に、二国若しくは数国間との間に協定のようなものが必要となるか或いは事実上の便宜供與ぐらいで済むのか、これは国連軍側の希望にもよりますので、目下いろいろこちらでも研究しておりますが、向う側でも研究しておるようであります。これはだんだん先方の意見がまとまりますと、話合いを進めると、こういうことになります。これは国連加入とは全然別個の問題であります。
  164. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあどつちが侵略したかということを、ここでやるには時間がありません。併し国連のこの前の会議において、例えばダレス氏が証人として呼ばれて、例えば五カ條の問題について、これはマリク代表つたと思いますが質問を受けた、こういうような問題も、これは日本では余り明らかにされていないようでありますけれども、その五カ條のいろいろな問題を挙げることはできると思います。そういう問題については十分検討されておるのでありますか。そうして只今のような発言をなされておるのでありますか。若しそうでなくて、一方的な意見だけを聞いて、そうしてその前提條件に立つて日本の今後の態度をきめ、或いはきめたほうが工合がいいなどというようなやり方をするということは、私は非常に民族の将来を誤まると思う。この点では論議をすれば非常に長くなりますので、まあ今やめますけれども、そういう点で少くとも日本の外交を担う立場に立つている責任者は、もう少し広い眼界を持つて、あらゆる情報の上に立つてこれを判断すべきである。当然そういうような水先案内としての役割、いや、むしろもつと大きな義務を持つておるのでありますから、只今のような安易な解釈によつて、私は、一方的な前提を作つて、その上に立つて行くというこのやり方に対しては、絶対不賛成であります。それは議論に亘りますからその点はやめます。ただ時間の都合上、岡崎国務相にもつとあるのでありますけれども、木村法務総裁がお急ぎのようでありますから、木村法務総裁のほうにお伺いしたい。  それはこの前もこれは総理に質したのでありますが、今度行政協定との関連におきまして、何か特別刑事法、まあいわば防諜法、こういうようなものが作られる、こういうことで、今そういうような提案を急いでおると思いますが、この前も私はこれにつきまして二、三点の問題を挙げたのであります。一体国会の論議というものは、こういうものによつて制限される事態が出て来るのか、軍の機密に触れるということにおいて、例えばどこそこに基地がある、この基地の問題について、当然これと関連したところの農民の生活権の問題、こういうことは当然ここで明らかに論議されて行くのでありますが、こういう点については、これはどういうふうにこの防諜法が働くのか。第二に伺いましたのは、例えばPD工場、軍工場、こういう所で働いておるところの労働者、この労働者のこれは生活権というものは、御承知のように現在の契約のやり方によりましては、非常にこれは低賃金に追い込まれて来ております。而してこれは労働法の、日本国内法の適用があるかというと、これは一応あるという行政協定の建前にはなつておりますけれども、併しその條文をよく詳しく読んで見ますというと、ここにお互いの合意がなされた場合、そういうような場合には、そういうようなこれは適用というものが、これは除外されて行く、ところが力関係から言いまして、当然これは軍の強力なる発動がありましたときには、こういうものはこれは権力を失う、いろいろな権利を主張することができない、事実そうであります。現在のPD工場に起つておる問題については、ここでしばしば論議されたところでありますが、そういうことが起つておる。そういうことで最後まで生活権を守らなければならないということで、先ほど木村君から聞かれたことと同じでありますけれども、これに対しまして合意しない、どこまでもこれは基本的な労働権を守る、国内法の適用を望む、こういう事態が起つた場合に、やはりこの特別刑事法というようなもので防諜の立場からこれに対していろいろなものが引つかかつて来ると、こういうようなこと、或いは農民の土地を取上げる場合に、どこどこの基地ということが当然出て来るでありましよう、これもやはり防諜法に反するというので引つかかつて来る、更に新聞の問題であります。私のお聞きしたいのは、新聞の場合に、例えば国会のこういう論議が余すところなくやはり伝えられるというのが、私は日本の民主主義のために絶対必要であると考える、ところが例えばそういう論議が国会でなされた、併し防諜法の立場から、それに対して大きな責任を問われる、これはプレス・コード違反なんです。こういう制限そのものについては、併しながら軍の防諜の立場からどうしても制限しなければならないということで、言論が非常に抑圧されて来る、私は特徴的な三、四の例を挙げたのでありますけれども、今のような一つの、日本憲法によつて当然守られておるところの基本的人権の一つで、而も最も根本的な一つであるところのこの言論の自由、こういうものに対しましてどういうような一体特別刑事法というようなものが制限を加えて来るのでありますか。この点をどういうふうに考えておられますか。
  165. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。行政協定実施に基く各種の法案は今作成中であります。この作成に当りましても無論日本憲法の枠内で立案することは当然のことであります。従つて憲法規定されておりまする基本的人権、特に言論の自由何かについては最大の注意を拂つております。今岩間君が指摘されましたような点については十分に考慮いたします。近く法案のでき次第国会の御審議を願いたい。どうぞ、この憲法の枠内であるということだけを私は申上げる。
  166. 岩間正男

    ○岩間正男君 一応そういう御説明でありますけれども、実際問題としてこの憲法とそれからこういう防諜法というものは私は、必ずこれは抵触する問題で、判断の付きかねるような問題である。その場合に誰が判断するか。このことも又非常に大きな問題になります。それから只今木村総裁の説明によれば、飽くまで憲法の線は守りたい。そうしますとこれは国内法を優先させて、飽くまで国内法憲法を優先させて、そうして徹底的にそういうところを守るんだということを條文の精神か何かにこれははつきり明示するのでありますか。そういう点が非常に、只今の御答弁の裏付けというものが、私は條文に明確化されなければ意味をなさない。單にそれは法の適用、運用の面でそうしたいというようなのでは、私はこれは問題にならないと思うのでありますが、どういう御意見でありますか。
  167. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 憲法の枠内で作ると申上げますのは、要するに憲法規定されておりまする基本的人権を十分に尊重するということであります。従いましてこの線に沿うて我々は立案して国会の御審議を経るのであります。どうぞその成案を見て御論議を願いたいと考えます。
  168. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は根本的な態度についてどういうふうに臨むかということをお聞きしたのでありますが、明確なお答えがない。併しそういうような防諜法について、今後どこがこういうふうなものに当つて、そうしてそれを調べ、認定し、やるのですか。これは特審の拡充問題なんかとも関連して、そういう機関日本に設置するのでありますか。つまりこの特別刑事法とも言うものをもつとこれを具体的に行政面において運用するためにそういう機関を作るのでありますか。この点如何ですか。
  169. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 特別刑事法実施のために必要なるさような機関を設けるの意思は少しもありません。
  170. 岩間正男

    ○岩間正男君 特審の拡充問題につきまして、なお、例えば東大事件に代表されるようなああいういろいろな事態が起つておる。私はあの問題につきまして田中警視総監に法的根拠を聞いたのです。例えば身元調査、それから思想調査、こういうようなものはどういう法的根拠によつてこれは警察官がなすのであるか聞いたのでありますけれども、何ら法的根拠はない。ただ従来の慣習であるという答えである。従来の慣習と言いますと、これは戦争前の慣習じやないか。戦争前の慣習だ。こういうことを偶然にもこれを問わず語りに答えておる。従いまして法的根拠のない、そういうようなことをこれは日本の警察はできない、こういうふうに思うのでありますが、実質的には本富士署には三人、その他東京都内には何十人かのそういうような秘密スパイ的な組織で以てこういう情報が集められておるというのは、これは紛れもない事実だと思うのであります。こういう点に対して木村法務総裁はこれはどういうふうに処断されますか。私は処断を要求していいと思う。こういうような国民権利に対してまるで権利を制限されるような、警察官の範囲を逸脱したこういう行動に対しましては、これは当然処断すべきじやないかと思うのでありますが、どういうふうにお考えになりますか。
  171. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 東大事件のお話が出たのですが、東大事件について警察官がその職務を逸脱しておるかどうかということについては、目下人権擁護局において調査中であります。
  172. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 文部大臣が来られました。あなたの質問時間はまだ十五分ございますから……。
  173. 岩間正男

    ○岩間正男君 今の問題については当然、法的の根拠のないああいう行動に対しましては、どういう措置もとられないのでありますか。私は当然、而もこの国会に参りまして絶えず虚言を吐いておる。前言を翻すことを何とも考えておらん。こういうことをやつておるのです。こういうような公務員というものはどうなんです。一体公務員としてどうお考えになりますか。これは木村法務総裁の御意見を伺つておきたい。
  174. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今申上げた通り職務権限を逸脱しておるかどうかということは、目下調査中であるということであります。
  175. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは逸脱しておるかどうかということは私は明らかだと思いますけれどもね。国会のあの一つのあれだけ見てもわかると思うのです。まあこの問題は、それじやなお具体的な問題については後に保留したいと思います。  その次に私はお聞きしたいのは、現在いろいろ大衆運動、或いは共産党運動、こういうようなものについて弾圧的態勢がとられておると思うのであります。併しながらいろいろ国民の前にはその真相というものが蔽われておると思うのでありますが、私は民主主義を破壊しておるのは実は吉田内閣じやないかと思う。例えばこの前この国会議員であるところの細川嘉六、そのほか四人の国会議員政府は何らの理由なしにこれを逮捕した。更にその期間が過ぎますと、これは釈放しておる。そうしておいてこれを追放した。こういうことは、これは東條もやらないところの暴虐だと思う。而も二十何万人によつて選ばれたところの国会議員というものがいわば政府のそういうような一方的な、全くこれは切捨御免のようなやり方で以て追放されておるのであります。こういうことは、まさにこれは私は吉田内閣こそは民主主義を破壊しておる、こういうふうに思う。更にいろいろな問題につきましても、例えば再軍備の問題、こういう問題で論争されておりますけれども、こういう問題につきましても、非常に確信がない。閣僚の答弁が非常に確信がない。前言が翻されることしばしばであります。こういうふうにして日本憲法は本当に守られるという態勢が危くなつておる。こういうことをやつておいて、又いろいろ政治の面におきましても、これは論及すれば長くなるのでありますけれども、これは労働者の生活権、こういうものが守られない、こういう事態が出て来ておるのであります。これはどうしても基本的な生存権を守るという立場から、これに対して反撃を上げて来ることは私は当り前だと思う。ところが政府はその本を正さない。何故にそういう態勢に陷つておるか。戦争協力態勢の方向に大きく動いて行つて日本の産業経済、国内のいろいろな態勢もそういうところに、大きく憲法違反の方向に動かされて行つておる。そうして労働者の生活、あるいは中小企業者の生活というものは非常にこれは苦難なところにさらされておる。従つてどうしてもそういうような基本的な生活権を守る。これは当然日本憲法から行きましても、又個人の生きる権利から行きましても、そういうものに対しましてその根本を正しく要求するのは当り前だと思う。ところがそういうような要求に対しましては、これはあらゆる態勢によつて大きく弾圧して来る。国会に労働者が押掛けるというのであの鉄かぶとが非常に厖大に出動します。あの姿を見ても一体どつちが本当に国民のためを思つておるのだか……国民のものである、こういうことは明らかだと思うのであります。まるで最初から主権者であるところの国民を疑つておる、こういう態勢によつて進められておるのでありますけれども、私は現在とられておるこういうような弾圧、そうしてそういうよう事態いろいろ起つたからやつておるのだと言いますけれども、その根源の政治の本を正すという、こういう点についてはつきりした解明がなされない限りは、どうしたつてこれは私は下からのそういうような基本的人権を守るための当然の要求というものが起つて来ることは止むを得ない、こういうふうに思うのでありますけれども、法務総裁はこういう点どう考えられるか。これは連関だつたと思いますけれども、当然です。人間の自由と人権というものが本当にこれは踏みにじられる、そういうときにはどうしてもこれはそういう人間は自分の自由を守るために反抗する自由がある、こういうことを言つておると思うのです。又世界人権宣言の前文を見ましても、これは国際連合で決定されたのでございますけれども、その宣言の前文を見ますというと、専制と圧迫に対し人間の最後の手段として反逆に訴えざるを得なくなつたことを防ぐために、そのために法の規律によつて人権を守ることを規定しておるものと思う。ところが人権が今言つたように易々と軽視されて事案政府が細川老人に加えたような、ああいうようなやり方で人権を侵害しておる。こういうような場合には、当然これを守るという動きに対しまして、これは当然止むを得ないことだと私は考えるのでありますけれども、法務総裁はこういう点どう考えられますか。政治の本を正すということが一番根本の問題だと思うが、これはなすことなくして、そうしてそこから起つた現象面に対しましていろいろな態勢を強化して行くということは、こういうことは本末顛倒だと思うが、こういうことについてお聞きしておきたいと思います。
  176. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 岩間君の今の御質問要点は、私には余りはつきりいたしていないのでありますが、少くとも現在の情勢におきましては、破壊的暴力行為が相当全国に行われておるのであります。政府が治安確保の面から見てこれらの行動について相当の措置をとるということは当然であります。この措置をとるに当つては、どこまでも我々は基本的人権を擁護しつつやる。決してみだりに国民の基本的人権を侵害するの意思は毛頭もないのでりまして、ただただ破壊的危険分子に対しては、どうしても治安の面から言つてこれを措置しなければならんということを確信を持つて我々はやつておるのであります。
  177. 岩間正男

    ○岩間正男君 破壊的分子とか、治安を維持するというようなことを言つておりますけれども、一体何の破壊です。憲法を守らないで、我々を泥沼に落して行くものに対して、これは当然これに対するところの一つの反撃、これは当然国民が持つているところの基本的権利の一つだと思う。それから秩序維持と言いますけれども、どんな秩序ですか。日本の国を挙げて外国の手先にする、そうしてそれを売るようなこういうような秩序というものは、戦争に突入するような、そういう秩序に対しては、当然これは平和を守り抜く憲法の精神に徹する、これは当然の国民権利だと思うのです。どうなんですか、問題は根本はどうだと言つておる。吉田内閣のとつてる政策の根本を言わずして、そういうような起つた現象面だけを問題にしておる。東大事件につきましても、あの刑事があすこに介入しなければ問題は起らない。そもそもこれは田中警視総監も認めておる。自分から種を蒔いておる。そうしていろいろな問題が起るというと、それに対しまして、どうした、こうしたという問題をやつている。これは根本を正さなければ、これは問題にならんと思う。どういう秩序ですか、その秩序についてお聞きしたい。政府の言う秩序とはなんですか、治安とか、秩序とかいうものは何ですか。
  178. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 政府の秩序というのは、つまり平和的秩序であります。平和な生活を送ることのために我々は処置しておるのであります。これがいわゆる平和的秩序であります。そこでこの平和的秩序を破壊せんとする暴力的行為に対しては、どこまでも我々はこれを処置しなければならん、これは確信を持つております。現政府におきましては、岩間君の言うがごとく、他国に売るというような、国を売るというような考えは毛頭もありません。我々は自主的国家を建設して行こうということに日夜苦労しておるのであります。ただただこの自主的国家を建設する途上において破壊的行為を企つるものがあれば、我々はその面から見て十分なる処置をすることは当然だろうと思う。
  179. 岩間正男

    ○岩間正男君 木村総裁がそう考えるのは自由だと思いますが、我々はいろいろの面から見て政府の政策について、これは事実今言われたことでないようなことが上つておる。今度の行政協定一つ見ればわかる、いろいろな経済政策を見ればわかる。この本を質さないで、そうして平和に対する秩序を飽くまで確立すると、こう言うのですが、一体平和を守るような方向に現在行つてるかどうか。戦争の危険に対して今おののいておるというのは、日本国民の姿だと思います。世界における戦争気がまえが最も大きいのはアメリカ、その次は日本だと言われておる。こういう態勢の中で平和を維持するのだと言つて逆の方向の政策がとられておる。このことが大きな問題、これは議論に亘りまから、この点は後に譲りますが、次に大橋国務大臣にお聞きしたいのでありますが、時間が余りありませんので……、この前警察予備隊が当然日本の講和発効後に、これは今までのようなアメリカ軍との関係を維持して行くことはできないだろう。こういう点からどういうような態勢をとられるか。殊に現在総監部でありますか、あすこのおる場所とか、それから米軍顧問によつて指導されておる。殊にその中で一番大きなのは武器貸與の問題であるが、この武器は一体どのような形で日本に貸與されておるか。我々の聞くところによると、この武器は殆んど予備隊の自由にならない。一々これに対しては倉庫に納められて錠をかけておかれる。使う弾丸については、一々制限が加えられておる。貸與という形になつておるけれども、これは全部アメリカによつて管理されておる。こういう形になつておるというのでありますけれども、先ず武器がそのように顧問団の手によつて全部これが管理されるという形が出て来たならば、当然警察予備隊の自主性なんということは品に言つても突を上げることはできないと思う。従いまして独立後の態勢の中で当然切換えられなければならないと思う。政府は十一月から防衛隊にこれを切換えるのだと言つておりますけれども、講和発効後には半年あります、政府が四月に発効すると言つても十一月には半年ある。それまでに今までのような態勢ずるずるべつたりとつて行くか、それともここではつきり日本の警察予備隊としての性格を確立するのであるか、こういう点についてこの前これは江口次官だつたと思いますが、これに対する資料の提出を求めたのであります。ところが未だにこの資料の提出がないのであります。従つてこれを大橋国務大臣にお聞きしたいのでありますけれども、殊にその中で武器の問題、これはどういうことになるのでありますか。この点は非常に私は先ほどから問題にされておるところの統帥権の問題とも関連して、大きな問題になつて来ると思いますが、この点お聞きしておきます。
  180. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 予備隊が現在使用しておりまする武器についてのお尋ねでございまするが、現在は予備隊の使用いたしてお力まする武器は、米軍が日本において所持し管理いたしておりまするものを、使用に際してその都度事実上貸し與えられるという形をとつておるわけであります。従いまして、現在予備隊が使用しております武器は、米軍の武器を使用をいたしておるというふうな表現を用いるならば、非常に当てはまるのではないかと思われるような状態でありますから、当然管理者たる米軍が米国の法規に従いまして、これを管理いたしておるわけであります。勿論この講和の発効によりまして、日本アメリカとの関係が根本的に変つて参りまするし、又現在占領軍対警察予備隊という関係は、駐留軍というものの権限といたしまして当然には警察予備隊に対しまして指導を與える、そういうふうな立場にはないことに相成つたのでございまするから、この際に現在使用いたしておりまする武器をどういう形で日本が受取り、使用するか、この点は多少現在とは考え方を異にするべき筋合いのものであろう、こう思つております。併しその実際の取扱の方法につきましては、なお双方協議をいたしております。
  181. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 大分時間が超過いたしましたから最後の一点だけ許します。
  182. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうしますとこの武器は、今までの予算審議の中でしばしば言われましたように、急速には日本は持てない。こういう武器を充足するというと、この前大橋法務総裁の御答弁だと思いますが、一方面隊で一千億かかるというお話があつた。当然財政的な方面からこの武器というものは、これは警察予備隊の手に日本のものとして持たすことはできない。そうしますとこの貸與しておる限りはこれは米国のものだ。そうしますと飽くまでもこれは米国が管理する、こういう形になりますと、永久にこれは日本の警察予備隊というものは武器の面から考えましても、当然これは自分で自分の、日本の国の本当に治安を守るんだと言われておる、そういう任務を私は遂行することができないと思う。最後の場合には、鍵を握り、その管理権を握つておるアメリカの手に握られておる。先ほどから問題になりますように武器が問題です。このままずるずるべつたりに行つて防衛隊に切換える、こういう形になつてつた場合、私はここにどんなに、これは日本の国内治安のために作つたところの防衛隊だ、こういうことがどんなに言われましても、この武器の方面からは断じて自主性を持つことはできないだろう、こういうふうに思われるのでありますけれども、これはどういうふうに結果はなるのですか。非常に只今の御説明だけでは不明瞭なんです。少くとも講和発効後にこれははつきり日本で借りるなら借りる、併し借りるならばそれは一つの條件がありましよう。借りたならばこれは日本のものなんだ。借りたという貸借関係は残つておりますけれども、これは日本のものだ。借りた、而もそれが管理される、あらゆる面において干渉される、こういうことになつたならば一体どういうふうになるのです。警察予備隊の死命を制する武器の問題でありますから、内容が明らかにならなければ、私たちはこの十一万に増強する、この問題と関連しましてこれは非常にいろいろな問題が当然起つて来るだろうと思うのであります。どこの軍隊であるか、どこの警察予備隊であるかという問題につきまして、当然日本国民負担というものがこれに対してどういうような関連を持つか、非常にこの点は明瞭にされなければならない問題と思いますが、この点についてはつきりした、もつと具体的に……、当然これは心配しております。この点が国民は……明瞭な形でなく、ずるくべつたりの形でいつの間にか何だかわからない予備隊というものがそういう形で作られる、行政協定との関連におきましては、一応建前上別になつておるということになつておりますけれども、実質的には大変な関連を持つておるんです。切つても切れないところの関連になつておる。こういう点をどういうふうに解決するのでありますか、これははつきりした政府見解をお聞きしたい。
  183. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 只今の法律関係は先ほど申上げた通りでございまするが、講和発効後におきましては、この問題は岩間君も御指摘になりました通り日本がはつきりと借受ける、そうして武器の管理運用につきましては日本の自主的な決定によつてつて行くべきものである、こういう御意向でございますが、これは全く同感でございまして、そういう趣旨を以ちまして講和発効後における武器の取扱を如何にすべきかということを現在協議をいたしておるところでございます。
  184. 愛知揆一

    ○愛知揆一君 私は先ず第一に防衛支出金に関する若干の問題について大蔵大臣にお尋ねをいたしたいと思います。平和條約の第六條によりまして、連合国のすべての占領軍は、條約発効後九十日以内に撤退することになつておるのでありますが、これは軍としての物理的な撤退の期限を規定したものと思うのであります。併しながら第六條の(C)項によりますると、代価が支拂われていないすべての日本財産で、條約の効力発生の時に占領軍が占有しているものは、別段の取極がない限り九十日以内に返還すればよろしいということになつておるのであります。従つてこれを反面解釈いたしますれば、約九十日の間はその占有に直接起因しておりまする経費、例えば占有不動産の賃借料は日本政府の負担となるものと解釈せざるを得ないと思うのであります。ところで條約の発効は極めて最近のことということでありますが、恐らく昭和二十六年度中、即ち三月末日までには発効はしないのではないかと思うのでありまするが、これが四月に入つてから條約が発効いたしました場合、米軍に関する限りは今申しましたように占有不動産の賃借料というようなものは、行政協定によりまして防衛支出金によつて支出することになると解せられるのでありまするが、イギリス軍、或いは濠州軍といつたような米国軍以外の場合におきましては、この経費はどういうふうな支出によつて負担されるのでありましようか。恐らく私の解釈では二十六年度から繰越明許によつて繰越されますところの終戦処理費によつてこれが賄われるのではなかろうかと思うのでありますが、若し然りといたしまするならば、この終戦処理費が二十七年度に繰越されたる見込の額、又これに対しまして米軍以外の軍がこの種の経費としてどのくらいなものを使用することが見込まれるのでありましようか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  185. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話の通り平和回復後におきまして、平和條約の第六條の問題があるのであります。米軍につきましては、行政協定によりまして負担が参りまして、防衛支出金のほうから不動産の賃借料を出す。英濠軍につきましては、九十日間におきまする英濠軍の使用している建物の料金1は、終戦処理費から出して行く考えであります。大体終戦処理費はいつもと同じように百七、八十億ぐらい繰越すと思いますが、そのうち百億余りはもう支出の確定したものでございます。四月に拂わなければならんものでございますが、純剰余というのは六十億余りである。従いましてこのうちから英濠軍の平和回復後の、而も九十日以内におきまする使用料を出して行くつもりでありまするが、十分賄い得ると考えております。大体二、三億程度ではないかと思います。一月分といたしまして……。
  186. 愛知揆一

    ○愛知揆一君 次にお尋ねいたしたいと思いまするのは、この安全保障條約に基く行政協定、それからこれに関する議事録というようなものによつて、米軍の駐留に伴う日本側の経費の支出につきましては、その方法なり或いは機構なりについては順次明瞭になつてつたと思うのでありまするが、一方において政府は、終極においてはいわゆる集団的な安全保障ということを考えておられると思うのであります。で、現在の日米安全保障協定よりも広範囲な集団的な安全保障が行われるといたしまして、どういう形で行われるかということは、勿論将来の問題になるわけでありまするが、これによつて更に日本側の負担すべき防衛費というものが増加するのではなかろうかというような懸念がいろいろと巷間に危惧の念を以て見られている向もあるやに思うのでありますが、こういうことに対する将来のお考えはどういうふうに考えておられますか、伺いたいと思うのであります。
  187. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういう安全保障の問題も議論せられておるようでありまするが、事外務省に関係いたしますので、私は確たる御答弁を申上げませんが、御質問の集団安全保障になつた場合に日本防衛支出金が殖えるかという御質問でありまするが、それ以前に日本は自衛力強加ということが先決問題であります。而も日本自身として一朝事ある場合におきまして自衛できない、安全保障條約によつてつてもらう、こういう現況でありますので、集団安全保障がたとえできるといたしましても、これによつてすぐ日本の負担がそのために殖えるというふうなことは考えられない。先ず自分を守る費用が不足するので、アメリカから援助してもらつておるのであります。そういうときに集団安全保障のための支出は大蔵大臣としては考えておりません。
  188. 愛知揆一

    ○愛知揆一君 次に安全保障條約の署名の際の交換公文、これを見ますると、国連の加盟国が国連の行動に従事する場合、国連の行動に従事する軍隊に関する規定があるわけでありますが、その軍隊日本国内において、日本側がこれを支持することを認めておる趣一音の公文があるのでありますが、その国連の軍隊の所要するところの経費に関しまして、米国軍以外の占領軍が国連軍として日本に或る期間残留し、或いは将来において通過し、或いは暫時滞留するということが考えられるかと思うのでありまするが、その経費については、今回の安全保障條交換公文或いは行政協定の附属書類等によりましても何らこれに関する規定はないように思うのでありますが、この際の経費に対する政府見解は如何でありましようか。
  189. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国連軍に協力する便宜を與えるということは、安全保障條約の前文に載つておることは御指摘通りであります。併し国連軍に協力する場合におきましての予算措置といたしましては行政協定の第六條に規定してあります。而も愛知君の御指摘の、九十日間の今まで使用しておる建物等の使用料だけしか規定しておりませんので、反対解釈といたしまして、連合軍が、九十日の間の連合軍の費用も私は日本で負担すべきものではないと考えておるのであります。この点につきましては疑問があるという人もありますが、私はイタリーの例を見ましても、不動産の借料につきましては、日本が負担するということは六條によつてやる、その他は規定しておりませんから、国連軍に協力するための費用というものは、今のところでは財政負担は全然考えておりません。又負担すべきではないのではないかと思つております。
  190. 愛知揆一

    ○愛知揆一君 行政協定防衛支出金に関しましてなお数点伺いたいところがあるのでありまするが、時間の関係上衣の機会に譲ります。  次に金融関係の問題につきまして大蔵大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。端的に申しまして最近におきまする日銀券の推移を見ますると、相当予想以上に収縮しておるように見受けられるのでありまして、例えば通貨発行審議会等において予想せられましたところからは、相当通貨の量が縮小しておるように思うのであります。いろいろ先般来インフレ論、デフレ論等ございましたけれども、現在の情勢において、日銀券が予想以上に収縮しておるのではなかろうかということに関連いたしまして、先般来のポンド過剰問題とも関連いたしまして、いわゆる相当不況的な現象が現われておるように思うのであります。今朝の新聞にも一万田日銀総裁も、いわゆる不況の対策について何かお考えのようなことが出ておるのでありまするが、大蔵大臣とされまして目前の、或いは将来に亘りまして景気の振興策ということについて何か積極的な方策をお考えでありましようか、この点を伺いたいと思います。
  191. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のように通貨はかなり減つております。十二月のピークのときは五千五百三十億円程度でありましたのが、昨日の現在では四千二百八十億、四千三百億を割る、年末は五千五十億でありますから、それに比べましても七百億円余りの収縮、これは一昨年と昨年の今頃に比べまして、大体一昨年は二、三百億円の収縮でございましたが、七百億円の収縮ということは少し収縮し過ぎておるんじやないか、日本銀行の貸出しを申しましても、昨年の輸入促進、ユーザンス制度の創設のときからずつと考えて見ますと、日本銀行の貸出しと外貨の貸付とで大体三千九百億円くらいであつたのが、昨日の現在では貸出しが二千四百億円、外貨の貸付が千億円程度、とにかく四、五百億の信用供與の減退、通貨の七百億の年末における減ということは、ちよつと財界が萎微沈滞せんとしておるのではないかというふうな気持も窺われるのであります。御承知の通り昨年の夏頃から輸入過多と申しますか、或いは国際的物価の横ばい、下落と申しますか、これによりましてかなりの痛手を負いました商社を中心としての整理過程にあること、並びに世界経済の中だるみとい、うところからの影響があると思うのでありまするが、半面におきましては国内におきましての政府関係の引上超過が非常に多いのであります。昨年のそれに比べまして、税なんかにつきましても一、二月は昨年度の五、六十億であつたのが、本度年は五百億程度に相成つております。而して三月におきましても政府の引上超過はここ九十日間で四百億余りになつておる。こういう状態を見まして、私は先ほども触れましたように、昨日の記者会見におきまして、余りに何と申しますか、昨年来の整理過程において萎微沈滞しておる気風があるんじやないか、そこで私はこれに活を入れるというのではありませんが、もつと積極的に経済の復興を図るような施策を講じなければならんということを申しましたし、又昨日通産委員会におきまして、又先ほども触れましたように、政府の引上超過のものを何とかこれを撒布いたしまして、金融界に潤いを與える方法をとるべきときが来たというので、予算上は計画しておりませんが、金融債の引受けを今日の新聞に出ておりましたように百億程度やつてつたらどうか、こういう考えを持ち、又この外貨の議論のときにも、溜つた外貨を、ポンドのみならず、ドルにいたしましても有効に使つて、発刺たる気持を経済界に與える必要があるということを二三日来考えておつたのであります。期せずして一万田君もそんなところを、まだ会つて話はしておりませんが、私と同じような気持になつておるやに思つております。あの新聞の記事を私は読みました気持と、今朝日銀の理事が私のところへ来て話したことと幾分違つておりますが、いずれにいたしましても今の通貨、或いは金融の状況、殊に銀行が、市中銀行が少し怯え過ぎておるのではないかというふうな嫌いもあります。かてて政府の、国庫の状況から申しまして最近のうちに或る程度の方法を講じよう、例えば今まで長期資金によつてつた長期金融機関にいたしましても四月からの枠がないからというので心配しておるようですから、四月からの枠は新たに與える。又中小企業方面におきましても商工中金、或いは相互銀行等中小金融機関のほうに政府の指定預金……勿論食管関係のほうでここ十日くらい前から農林中金とか、或いは一部の市中銀行、食管関係のいわゆる主食の輸入関係の金融機関には数十億、百億程度の融資はいたしております。そういうふうな考え方で余り萎縮しないように新らしい手を打つて行こうと考えておるのであります。殊に今朝来言つておりますような外資の使い方、まだ外資委員会は開かれません、幹事会でいろいろな事務当局の意見が新聞に見え  ておるようでありまするが、今回のここ二三日のうちにきめる外貨予算の問題につきましては私は今までのような考え方ではいけない、こういうつもりで幹事会から来る案を待つておるような状況でございまするが、外貨の使い方につきましては今朝ほど来の私の考え方を聞かれればわかると思いますが、思い切つて一つやりたいという気持を持つております。
  192. 愛知揆一

    ○愛知揆一君 当面のいろいろ御苦心の点は非常によくわかるのでありまするが、同時にすでに衆議院におきましても論議が重ねられたようでありますが、先般来オーバー・ローンの解消論というものが相当賑やかに論ぜられておることは御承知の通りでございます。今私はここでオーバー・ローンの解消論についてこれを分析して議論を申上げるつもりは毛頭ないのでありまするが、この二、三出ておりまするところのオーバー・ローンの解消論の中で、私は或る違つた見方から興味のある点があるのではないかと思うのであります。それは極く正常な状態におきましては、通貨の発行の準備というものは、金、公債、証券、商業手形というふうな順序になると思うのでありまするが、正常な場合は、そのうち金と、公債とが大部分を占めまして、中央銀行のいわゆる通貨の調節力というものは、この点については殆んど触れ得ないというのが正常な状態であるかと思うのであります。元来一国の通貨の流通量の中には、国民の生活を維持する上に必要な一定数量の通貨があつて、そのいわば基本的な通貨量は正常の場合であるならば、金と公債によつて支えられるものであると、こういうふうに私は考えるのであります。ところで例えば昭和十五年の当時を見てみますると、発券高四十七億円、これに対する発行の準備は正貨、国債で八五%であつて、その他の証券と商業手形とは  一五%に過ぎなかつたのであります。ところが現在は日銀の発券高が四千二百数十億円に対しまして、金と国債、それに政府の貸付を加えまして、僅かに千二三百億ではないかと思うのでありまするが、この発券の準備の大部分は日銀から市中銀行への融資によつているわけでございます。そこで私が只今オーバー・ローンの解消論の中で興味のある点と申しまするのは、これは私の意見ではないのでありますが、客観的に見た場合に、中央銀行というものがこの強大な現在のようなオーバー・ローンの分量の上に立つて、そうして正常の場合には行い得ざるような通貨の調節力を持つということは如何であろうかということに対する一つの批判がこの案の中に含まれておるのではなかろうかと思うのであります。そこで例えば政府がこの際公債を発行して、このオーバー・ローンと置替えるということになりますと、政府としてもこの点に対して非常な責任と権限とを持つことになりますが、同時に国会の側から申しましても、これに対して常時現在より緊密に金融政策或いは通貨の政策に対して関係が保たれることになるのではなかろうか。中央銀行というものは中立的なものでなければならないではありましようが、余りにも中立的過ぎてそうして政府の権限或いは国会の審査の対象からともすると外れて、ここに強大な権力を持つておるのではなかろうか、こういうような批判が、こういう点が生れて来るのではなかろうか、こういう点から実質的には先ほど申しましたような通貨の発行の準備、いわば通貨制度ということにも触れて一つのこのオーバー・ローンの解消論というものは一つの興味のある示唆を與えておるものではないかと思うのであります。即ちこういうような中央銀行と政府との関係、或いは国会との関係、更に実質的には先ほど申しましたような通貨の発行の準備、いわば通貨制度ということにも触れて一つの私は議論だと思うのであります。そこでそれはともかくといたしまして、大蔵省においては先般来臨時金融制度審議会というものを事実上の機構としてお持ちになつた。そこで私は今のオーバーローンに対する大蔵大臣のお考え方を簡単に承わると同時に、この臨時金融制度審議会というものを折角設けられたのでありますから、これを恒久化してそうして将来長きに亘る……新らしい平和條発効のこの機会に将来長きに亘る日本の通貨制度の基本になるような研究をされてはどうであろうか、それにはこういつた審議会を恒久化するということが一つの著想になりはしないか、そこで多くの権威者をお集めになつて研究をされるというようなお考えはないか、この点を伺いたいのであります。実は第一次吉田内閣の当時に御承知の通り金融と税制と財政に関して相当広範囲に亘つて有識の学者を集められてなかなかよい研究も行われたように思うのでありますが、その後そういつたような試みはない。又古くは一九三〇年当時のイギリスのマクミラン・リポート等を想起いたしますると、この新らしい日本の発足のときにこういつたようなことを考えられてはどうであろうか、こういうふうに思いますが、大臣の御見解を伺いたいのであります。
  193. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 問題は二つでございます。お終いのほうからお答え申上げましよう。日本の金融制度は終戦前、御承知の通りどちらかと申しますると分業主義を主としてやつてつた、即ち商業銀行と投資銀行、こういうふうになつてつたのでありまするが、終戦後全部、殆んど全部商業銀行という建前になつてしまいまして、長期の投資銀行というものは漸く日本興業銀行一つというふうな状況に相成つておるのであります。この間国の復金の貸付があつたり、又最近では開発銀行、輸出銀行等が出て来ておるのでありまするが、何とかして日本の金融制度の整備確立を図りたいというのが今度の臨時金融制度懇談会でございます、設けまして今四、五カ月になりますが、その間の審議の状況を見ますると、例えば貯蓄債券の発行とか、或いは長期金融機関の問題とか相当の見解が出ておるのでありまして市中銀行法の改正とか、或いは金利調整法等の根本問題につきましては今までの臨時金融制度懇談会では触れておるのでありまするが、なかなかその及ぼす影響が重大である、又日本の経済の今の現状から申しましてなかなか結論が出にくいと思います。私も実は結論が出にくいので諮問をしておるわけで、ございまして、こういう問題につきましては今後とも十分朝野の有識経験者の意見を聞きたいと思いますので今後も続けてやつて行きたいと思います。今までのように委員会と申しますると、政府が原案を作つてそれに賛成を求めるというふうな委員会とは違いまして、今度の分は本当に向うで案を作つてもらうという考え方でやつておりますので、非常に裨益するところが多いので今後もこれを続けて行きたいという気持を持つております。  それからオーバー・ローンの問題でございまするが、私はこの前も申上げましたようにこれはオーバー・ローンはネセサリ・イヴルで、願うことじやないけれども止むを得ない、余り気にかけていないであります。徐々にこれは解消して行かなければいかん、その前提として今の臨時金融制度懇談会もオーバー・ローンを徐々に解消して行く上の方法として御審議を願つておるのであります。木内案とか石橋案とかいうものが出ておるようでありまするが、私は余り賛成いたしません。併し今愛知君の意見で見ると大体石橋案のような恰好で、目的が違う、一つの政策を持つておるということが石橋案よりも変つておると思います。石橋案のオーバー・ローンの解消策の第二の点の銀行の貸付を社債とか株式に振替えるということは、これは我々は前からとつておる政策で全面的に石橋案に共鳴いたしておりまするが、第一の点の日本銀行の貸出を商業金融のものと大体長期金融のものとに分けて、片一方は、国債に添えて、日銀から市中銀行にせつつくことを少し緩和したらどうか、こういうふうな気持から出る案だど私は必ずしも賛成しない。これはもう国債を持つことによつて安心感を與えてこの銀行の長期貸付をそのまま温存するというような恰好になりますので、これは恰好は変りますけれども実質的には余り効果がない、却つて逆に日本銀行からせつつかれるのが比較的少くなつてオーバー・ローンを助長するというような結果も考えられないことはない、こういうふうな気持がいたします。今の御質問の点はこの日本銀行が正貨或いは国債の準備を持たずに商業手形等の融資をやつておる、その金額が厖大になり、而もそれには長期的なものがあるから長期的なものを政府が市中銀行に貸して日本銀行の短期融資とそれから政府の長期融通とこの二つで市中銀行を監督したらどうかというようなお考えのようでございまするが、これは政府日本銀行に公債を持たしてその肩替りとして市中銀行に政府の預金をしてやるということは金融政策上如何なものかと思います。考えて見ましても市中銀行はすぐ反対をするでしよう、又そうしなければ政府の力が市中銀行に及ばないんじやないかというほど政府が市中銀行をリードすることも如何なものかと思うのであります。私はここ三、四カ月前にいろいろな議論がありますように政府資金を一般市中銀行に出すということも実は余り政府としては好まない。やはり銀行は銀行、日銀或いは市中銀行、そうして産業界と、こういうふうに民間のほうでやる。余り行き過ぎな点は勧告を與えますが、政府が銀行の貸付その他につきまして個々に直接に指示を與え、るということは如何なものかと思いますので、指定預金を拒否しておつたのでございます。先ほどの指定預金というのは特殊の目的で、中小企業対策、或いは今まで引受けておつた金融債の引受を一時復活する意味におきまして特殊金融機関への指定預金ということを考えておるわけでございます。今これは大きい問題でございまして、お話の通りに金融制度懇談会にかけまするが、日銀と政府とが銀行の金繰りにつきまして関與するということは、余り今のところよほど研究を要する問題であると思います。
  194. 愛知揆一

    ○愛知揆一君 そういたしますると大体やはり大蔵大臣のお考えの基礎は、金融に対してこの際余りドラステイツクなことはお考えにならないで、いわゆる正常化への道を着実に歩いて行きたいということのように了承できるようた感じがするのでありまするが、そういたしますると例えば現在の金融の状態を正常化するためにいろいろの方策が他にも考えられると思うのであります。例えば一、二の例を申しまするならば、例えば銀行の大口の貸出先には社債を発行させる、そうしてこれを貸出の銀行が引受けるというようなこととか、或いは日本銀行から市中の国債を更に買上げることとか、或いは開発銀行等によつて一般の社債の買入をしたり、場合によれば電力とか製鉄事業というような基礎産業について、是非とも必要なものについてはその社債に或る程度政府の保証というようなものをつけるというようなことが考えられるのではなかろうかと思うのであります。これらは單に二、三の対案の例でございますが、これらに対してどういうふうにお考えになつておりましようか。
  195. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今お話の点は全部賛成でございます。ただ一点民間の会社の社債について政府が保証するという点は私は困ると思います。その他全部いいと思います。今回電力の問題につきましても議論がありましたところは、九電力会社の社債を政府保証をしてくれというような議論がありましたが、私はそれはお断りする。予定しております電力公社の社債につきましては政府が見てもいいが、普通の民間会社の社債の発行に政府が保証する、こういうことはよくない。而してこの社債が外債のある場合におきましても、私は政府関係機関的のものの外債ならば保証いたしますが、民間の会社が外国において発行する社債におきましては私は開発銀行がこれに応ずることを以て足りるのじやないか、今のところではそう考えております。ただ民間の会社が特殊の目的を以て一つの会社でなしに合同してやろうというような場合におきましては、これは考えられんことはございません。例えば九電力会社が全体として共同担保で外資導入のための社債を発行するというようなことになれば、これは民間会社でありましても特殊の目的を持つたものにつきましては考えられんことはありません。大体のところは、社債の政府保証以外は御説御尤もだと思います。
  196. 愛知揆一

    ○愛知揆一君 次に具体的な問題について一、二伺いたいのでありますが、その一つは、為替銀行の問題でございます。時間が、ございませんので私の意見は別にいたしまして、為替銀行に外貨を保有させるという案が考えられているようでありまするが、現在直ちに外貨を銀行に保有させて大丈夫やつていけるものでございましようか。政府としての為替銀行の育成の方針について簡単に御意見を承わりたいと思います。
  197. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日本の為替銀行は十一、二ございまするが、ほんの鞘稼ぎで、実際の為替業務は実はやつていない、十一の中で為替の取扱は一つの銀行が二割、その程度、あと二、三の銀行がおのおの一割程度余りやつている。実際の為替銀行たる体制を整えておりません。それはまあ資金の足らんということもありましようし、又海外に支店を持つていないということもありましようし、又為替業務にうとい銀行員が大多数でありますので、実際問題としてやりにくい点もあると思うのでありまするが、併し今度日本が独立いたしまして、而も貿易をどんどんやつて行く場合において今のような一部の鞘稼ぎの銀行では、これら貿易の将来からいつたら誠に寒心に堪えない。そこで私は、少くとも今の十一、二の為替銀行の中でできるだけ外貨を持つて、自分で操作してやつて行く、こういうことを奨めておるのであります。るが、なかなかその外貨を持つ資金は、日本銀行から特別に貸してくれとか、いろいろな文句が出まして、私の思うような準備はできておりませんが、方向といたしましてはそういうふうに為替銀行を育成して行かなければならん、今まで為替銀行という名目を持つておるが、政府日本銀行におんぶされているが、いつまでもおんぶしていては駄目でございます。早く歩けと政府で手をとつてやる、日銀で導いてやる、こういうふうな歩く癖をつけなければいかんのでありますので、為替銀行が外貨を持つべく話合いをいたしているのであります。そういう方向で為替銀行の育成ということは、日本の貿易を発展さす上からいつても是非必要でございますので、その辺に力を入れたいと思います。
  198. 愛知揆一

    ○愛知揆一君 今一つはこの予算に関連する問題でありますが、條約発効後国際通貨基金に加入することはできるだけ早いことが望ましいと思うのでありまするが、この加入の見込、或いは交渉の経緯等、対外関係もございまするが、差支えのない範囲でお聞かせ願いたいと思うのであります。
  199. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この国際通貨基金の加入の問題につきましては、先の国会でも御審議願いましたとき申上げたのでありますが、この先ず問題になりますのは日本の通貨基金加入への割当額これは国民所得とか貿易とか産業状態、人口、こういうことできまるのでありますが、私の見通しでは少くとも三億ドルくらいの割当が来ることを期待しております。然るところ或る国は二億を主張いたしまして只今のところでは二億五千万ドルにきまりそうであります。アメリカ電報によりますると、大体確定的だというふうなこの点につきまして、私は不満な点が一点ありますのと、それからもう一つの点は、割当額が二億五千万ドルとしてきまりました場合におきまして、日本政府の出資する基金、これは予算の審議のときには大体五千五、六百万ドル、こう計算いたしまして二百億円を審議御決定つた。そのときにおきましても、そんなに要らんじやないか、百億で済むだろう、或いは百二十億円で済むだろうという御議論がありましたが、私は二百億は要りますということで御決定つた。然るところ、最近の情報におきましては、三億ドルの割当が二億五千万ドルに減り、出資額は五千五百万ドルでなしに、開発銀行のそれを加えまして六千五百万ドル、こういうふうな情勢でありますので、これはちよつと待つたというので、私は実は抑えているのであります。まだ交渉を継続さしておりますが、その條件さえ私が呑めば大体いつでも入れる、ということは少し言い過ぎでございますが、あと手続だけの問題になつております。その二つ、即ち三億ドルにしてもらいたいということ、こつちの拂込を二百億円程度、即ち五千二、三百ドル程度にいたしたい、こういうので在外事務所を通してやつているのでありますが、見通しとしてはなかなか困難のようでございます。併し我々としては成るべく早く国際通貨基金に加入いたしまして、国際経済に名実共に参加し、そうして国際通貨基金を通じての日本の産業復興の外資導入ということも考えたいと思います。いずれにしても最近の事態に何とかきめたいと考えております。
  200. 小林政夫

    ○小林政夫君 先ほど愛知さんがもうちよつと触れられるかと思つたのですが、為替金融の問題で、最近行政機構の改革で、外国為替管理委員会を廃止するという案が出ているようでありますが、それと関連して爾後どういうふうにやられるのか、外国為替管理委員会を廃止したあとにおいてはどういうふうにやつて行くか伺います。
  201. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 別にまだきまつておりませんが、別にやり方を変えるほどのことはないと思います。若し外国為替管理委員会を廃めたならば大蔵省に為替局を置きまして、そうして昔のようなやり方で大蔵省に為替局を置きましてそれでやるという恰好で行くと思います。特別会計はやはり残りましよう。ただ日銀との関係、それから外貨予算の問題で通産省との関係はございまするが、これは事務の簡素化から申しまして通産省と話合いで閣議で決定する、こういうことにして行けば今まで以上に円滑に敏速に行くのではないかと思つております。
  202. 小林政夫

    ○小林政夫君 その廃止と関連をして、今愛知さんの言われたような為替銀行の問題、この措置をつけて行く必要があるのではないかと思いますが……、すぐ廃止はできませんが、時勢の方向は今大蔵大臣が言われた為替管理委員会、日銀というものに多少意見の不統一があるようでありますが、その点について外国為替委員会を廃止するという措置をとられるに当つては応急的なというか、外国為替銀行をどうするというような処理をはつきりしてやられる必要があるのではないかと思いますが……。
  203. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) その点はございません。外国為替管理委員会といつて行政機関でございます。委員会制度が一つの部局になつて大蔵省に置かれるだけでございます。為替銀行の育成……外為委員会がなくなりまして或いは為替局になりましても事柄は同じであります。行政の仕方が委員会でやるか或いは部局でやるか、こういう問題だけで、特別会計というものを存置しておく以上におきましては、日銀との事務的な調整だけでよいのであります。
  204. 和田博雄

    委員長和田博雄君) あと五分しかありませんから……。
  205. 愛知揆一

    ○愛知揆一君 最後に私が最近感じましたことを申述べまして、大蔵大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。それは丁度今月の十一日と記憶いたしますが、英国のチャーチル内閣大蔵大臣のバトラー氏が財政演説をいたしておるのであります。その内容を詳らかに知ることはまだできないのでありまするが、新聞紙その他の報道されておりまするところを要約してみますると、次のようなことがその内容になつておるようであります。即ち先ず第一がポンド価値の維持であります。これに関連して輸出を大いに振興しなければならない、輸入をその半面調整しなければならない、その次は財政の均衡ということを大きな旗印しにいたしております。一九五二年から三年への会計年度におきまして、通常会計において歳出が四十二億ポンド、歳入が四十七億ポンドということで、五億ドル余の黒字を計上いたしておるわけでございます。更に又補給金の削減、これを大幅にやつております。又所得税の軽減をやりますると同時に、法人に対しては超過利得税の新設をいたしておるようであります。又ガソリン税の引上げをやり、公企業体に対しましては独立採算制ということで或る程度の値上げをやつておるようでございます。又金利につきましても、新らしい考え方を出しておるようでありまするし、社会保障制度につきましても、前内閣の行過ぎを是正いたしますると同時に、例えば戦争未亡人に対する給付金の増額というようなことをいたしておるようでございます。私はこれを非常な感慨と興味を持つて読んだのでございまするが、と申しまするのは、たまたまここに挙げられておるような諸項目、諸政策というものは私に昭和二十四年四月の当時を思い出させるからでありまして、丁度こういつたような内容は、当時の池田大蔵大臣の財政演説の中に取上げられておりますることと殆んど符節を合せたように感ずるのであります。勿論イギリスの今日と昭和二十四年当時の我が国との間におきましては、與えられておる環境や條件は相当に違つております。簡単に申しましても当時の日本経済の課題の最大の支柱というものは、すでに起りましたところの終戦後の大インフレを収束するという建前から、いろいろの苦心を当時の政府としては拂われたわけでありまして、このインフレを収束し、経済を安定し、そうして又単一の為替レートを設定して、これを堅持して、国際経済に入つて行こうということをその支柱にしたと思うのであります。これに反して今日の英国は国際収支の均衡回復を第一の狙いにいたしております。若し国際収支が今日以上に悪化いたしまするならば、ボンドの信用はますます低くなり、遂にイギリス経済が非常な窮境に陥るということを防ごうとしておる、これを挽回することは、イギリスの現在の立場からいえば、これから起ろうとするところのインフレを抑制するという立場をとつておるものと思うのであります。でそういつた関係から輸出の振興、輸入の削減というようなことも当然その政策の内容になつて来ると思うのであります。こういつたようないろいろの点については、條件や環境は違いまするけれども、一つの日英の間には同じ問題の裏と表を今日私は持つておると思うのであります。即ち英国は国際収支が逆調であるということ、そうして又ポンドを何とかしてその価値維持をして行こうということでありまするし、又我が国の今日におきましては、国際収支の受取超過がある限りにおいては、却つて逆にインフレの要因が存在するということが言えると思うのであります。而もこの受取超過の中で最も大きな我我の頭を悩ますものは、ポンドというイギリスの金でありますることは、いろいろの意味で非常に興味のあることであり、又日本大蔵大臣としての池田さんが、この、バトラー蔵相の財政演説に対して、私などが感ずるよりは、比較にならない感慨をお持ちになると思うのでありますが、私は最後にごういつた点についての大臣のお気持を伺いまして、私の質疑を終りたいと思います。
  206. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話の通りに、今のイギリス国の置かれた立場と、昭和二十四年、あのインフレを防止する場合に立つた日本の立場とは、よほど裏腹の点があることは御指摘通りでございまするが、併し一国の経済が危殆に瀕しているのを建直す場合も、又一国の経済が危殆に瀕せんとする場合の措置もこれは同じであるのであります。だから状態は違いまするが、考え方は同じであるべきであります。従いましてその施策を見ますると、昭和二十四年から五年にとりました私の態度とは、殆んどバトラーのやられた考え方と符節を合すような状態でございまして、私はこの経済建直しにはほかの方法はない。昭和二十四年、二十五年の予算案審議におきまして、超均衡予算だと、デフレ予算だとこう言つておられましたが、イギリスのこの一九五二年の分を見ますと、前年度の予算におきましては三億ボンドの黒字、その三億の黒字じやまだいかんというので、五億五千万ポンドの黒字を出しておる。即ち歳出の四十二億ポンドに対しまして、歳入は四十七億七千万ポンド、こういう予算を出したら、昭和二十四、五年に私は現われたよりもよほど非難をもつと強く受けたと思います。そのときの状況は、今度のバトラーの演説のときに補給金を減らすということを出した演説にありましたときに、このときは国会與野党を問わずごうごうたる非難の声があつた。而うしてその後において所得税を減税すると言つたならば、與党のみならず、野党もほつとして拍手したと聞いておるのでありますが、私は万難を排しまして、補給金を減らしてそうして所得税を減らす。それから公共企業体の分もイギリスは郵便料金を上げました。あの当時問題になつておる鉄道運賃を引上げ、そうして取引高税をやめる、これもやはり同じように軌を一にしております。イギリスにおきましても大体輸入を十一億ポンドも切りまして、三十一億ポンド、これは一九五〇年の九〇%しか輸入しない、こうやつて参りますので、而も食糧の補給金の三億六千万……、三億七千万ポンドのうち、一億六千万以上切りまして、一億ポンドしか出さない。これによりましてパンも値上りします。或いは牛肉、バター、チーズも相当の値上りです。大体報告では一人当り一週間に一シル六ペンスくらいの生活費の増嵩でありましたので、前の労働党の大蔵大臣のゲイツケルは、この政策を非難して、人と物価の悪循環、そうしてイギリス経済の縮小、こういうので反対しておるようでありまするが、これはまあどこでも同じことで、私は強力な経済再建の方策をイギリス日本と同様にとられたということを以て、何と申しますか、ほつとしたような状態でありまするが、併しバトラーの言つておるように、あらゆる犠牲拂つて、あらゆる国民犠牲をかけてもとにかくポンドの維持をするというこの決意は我々も他山の石とすべきだと思います。金利の問題につきましても、昨年中二%を二一五%に上げ、今度は四%の割引料にしたということは、これは今まで外国の、殊にイギリスの金利政策上ないことで、あらゆる点から非常な強硬政策をとつております。  社会保障制度に触れられましたが、イギリスの社会保障制度の行き過ぎは先に訂正し、今回の演説では物価が上り、生活費が上つた程度の分しか殖やしておりません。即ち戦争未亡人とか、不具廃疾の人の補助金とか、年金の増加、これは日本の生活保護費を上げたと同じような態度でございます。減税にいたしましても数字の上で物価が上つた分だけを減らしておる。木村さんがおられたならばなんですが、税金を納めぬようにしておる人にはどうか……こういう議論がイギリスでもやはり起つていると思いますが、とにかくバトラーはイギリス経済再建のために国民と共に身命を賭して努力されているということは、我々としても大いに銘記すべきことだと思います。
  207. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 本日はこれにて散会いたします。    午後五時一分散会