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新谷寅三郎君 その点につきましては、多少私もまだ疑問がございますが、持ち時間がありませんので、私自身の
質問をいたしたいと思います。僅か
あと五、六分でありますから、具体的な御
質問はできませんので、ただ抽象的ではありますけれども、私の所見を二、三申上げまして、それに対する
総理のお
考えを伺えれば結構と思うのであります。
我が国が
平和條約の発効を控えまして、非常にたくさんの処理すべき重要な問題が内外ともに多いということは、私が申上げるまでもないところでありますが、私の受けております印象を、実はこれは極めて率直に申上げるのでありますが、或いは言葉が過ぎるかも知れませんけれども、今日、最近における
政府のいろいろな施策が、ともすれば余り安易感にとらわれ過ぎておると申しますか、そういうような嫌いがあるのじやないかということを私は憂えるのであります。例えば先ほど楠見君から
質問がありましたが、防衛力或いは防衛費の問題につきましても、これは来年度の
予算とか、或いは計画というものは一応明らかにはせられておるのでありますけれども、今後将来に亘りまして、どういう程度の防衛力を持ち、これにどういう程度の経費が必要であるか。
従つて国民の負担がどうなるか、言い換えますると、従来
政府はインフレを防止する、均衡財政を堅持する、又できるだけ減税の
方針をとるということをしばしば言明しておられるのでありますけれども、果してこの基本的な
方針だけで、我が国の必要とする防衛力を充実することができるかどうか。こういつた点につきましては、
国民が一番関心を持
つておる問題であります。
政府もこれに対しましては、率直にその所信を述べられる必要があると
考えるのであります。
国民は殆んど事態を知りませんので、ただ端摩臆測するばかりでありますけれども、こういつた問題は、やはりどうしても
国民全体の協力がないと、十分に実行できないことは、私から申上げるまでもないと思うのであります。これにつきましても繰返して具体的には申しませんが、
政府が速かに率直に、我が国の置かれておりまする国際的な環境とか、そういつたところを
国民に知らしめて、そうして我が国の進むべき道というものについての
政府の所信を明らかにして
国民の批判に待つというような
態度が望ましいのであります。このほか、例えば昨年の米穀統制の撤廃の問題にいたしましても、これは総司令部の意向の如何は別といたしまして、要するにこれは
政府が食糧事情とか、或いは統制撤廃から来る影響とかいうものにつきまして、
考えが余り楽観に過ぎた結果ではないかと私
たちは
考えているのであります。このほか具体的に挙げますると、いろいろのことが言い得るのでありますけれども、先ほども申しましたように、本日は私ここで具体的問題について
総理の御意向は伺うつもりはないのでありますが、初めに申上げましたように、この重大な時局に、
政府が我が国の将来に対しまして真剣に、そうして愼重に考慮を拂
つて頂きまして、まあいわば占領行政というものに慣れて、成行きに任せるというような他力本願的な、或いは安易な
考え方で施政に当られることがあ
つてはならないということを私は強調いたしたいのであります。少し言葉が過ぎたかも知れませんけれども、私のこういう認識が間違
つておれば私は幸いだと思うのでありますけれども、
総理はこういうことに対して、どういう御所見をお持ちにな
つておりますか。それを伺いたいのが第一点でございます。
それからもう一つのことは、これに関連する問題かと思いますけれども、最近における
政府のいろいろの施策を拝聽いたしまして感じますことは、どの行政部門におきましても極めて計画性に乏しいということでございます。長い間占領行政下に置かれまして、而も極めて変転の甚だしい国際情勢の下におきまして、長期に亘る計画を立てるということは、これは非常に困難であるということは私もよくわかりますけれども、それにいたしましても、我が国力に比較いたしまして、なすべきことが余りに多い現状におきましては、これはどの行政分野における施策におきましても、それぞれ長期計画を立てて、そうして一つの目標というものを以て進むのでなければ、到底国力の急速な回復はできない、私はかように信じているのであります。例えば公共事業の問題にいたしましても、或いは最近やかましくな
つて参りました商船隊の再建の問題にいたしましても、極めて焦眉の急を要することは、誰もが疑
つておらないのでありますけれども、本年の計画がわか
つてお
つても、翌年の計画についてはまだ十分確たる計画が樹立されていない。そのときの状況で或いはどうなるかもわからんというような状態に置かれているように
考えるのであります。殊に私の知
つている範囲内におきましては海運の問題、その問題については極めて将来に対する計画に乏しいのであります。惡く言いますとその日暮しというような状態かと
考えるのであります。もとよりこういう事態でありますから、一つの長期計画に余りに強く固執するということが間違いを起すもとであるということもこれもわかりますけれども、これらの事業はいずれも数十年の努力を継続して、初めてその実を結ぶものでありますから、これらの施策に対しまして、今日なお長期に亘る基本的な計画が樹立されないということは、どうしても私
たち解することができないのであります。これらにつきまして甚だ抽象的でありますけれども、
総理から御所見を伺えれば幸いであります。