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1952-03-06 第13回国会 参議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月六日(木曜日)    午前十時二十四分開会   —————————————   委員の異動 本日委員小林孝平君辞任につき、その 補欠として、岡田宗司君を議長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     和田 博雄君    理事            中川 以良君            山本 米治君            小林 政夫君            杉山 昌作君            堀木 鎌三君            東   隆君            木村禧八郎君            岩間 正男君    委員            愛知 揆一君            石坂 豊一君            泉山 三六君           池田宇右衞門君            楠瀬 常猪君            左藤 義詮君            白波瀬米吉君            杉原 荒太君            鈴木 直人君            中川 幸平君            平林 太一君            岡本 愛祐君            小野  哲君            片柳 眞吉君            加藤 正人君            楠見 義男君            高良 とみ君            新谷寅三郎君            中山 福藏君            荒木正三郎君            内村 清次君            岡田 宗司君            吉田 法晴君            波多野 鼎君            松永 義雄君            山田 節男君            吉川末次郎君            駒井 藤平君            鈴木 強平君            西田 隆男君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 吉田  茂君    法 務 総 裁 木村篤太郎君    文 部 大 臣 天野 貞祐君    農 林 大 臣 廣川 弘禪君    運 輸 大 臣 村上 義一君    労 働 大 臣    厚 生 大 臣 吉武 惠市君    国 務 大 臣 大橋 武夫君    国 務 大 臣 岡崎 勝男君    国 務 大 臣 周東 英雄君   政府委員    内閣官房長官  保利  茂君    地方財政委員会    委員長     野村 秀雄君    法制意見長官  佐藤 達夫君    外務政務次官  石原幹市郎君    大蔵政務次官  西村 直己君    大蔵省主計局長 河野 一之君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十七年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十七年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十七年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付) ○理事補欠選任の件   —————————————
  2. 和田博雄

    委員長和田博雄君) これより予算委員会を開会いたします。
  3. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 審議に入る前に議事進行について発言をしたいと思いますが、よろしうございますか。
  4. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 結構です。
  5. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は今日から予算審査に入るのでありますが、こういう形ですぐに予算審議に入つてよろしいかどうかについて重大なる疑義を持つているのであります。参議院予算委員会としては、今日からいよいよ独立第一年目と言われる昭和二十七年度予算の本審査に入る段取りとなつておりますが、審議に先立つて参議院予算委員会としてこの予算をどう取扱う、如何に取扱つて審議するかということを明確にして置く必要があると思うのであります。即ち独立第一歩の二十七年度予算憲法違反しているのであります。行政協定国会審議を求めずに調印したということは憲法第七十三條に違反しております。総理只今の本会議で、行政協定実施細目のようなものであると言われましたが、実施細目において罰則規定するということは憲法七十三條違反でありまする(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)政令が罰則規定するときには法律の委任がなければ罰則規定することができないのに、この行政協定においては罰則規定があるのであります。そういうことは憲法七十三條の違反であります。第二に、警察予備隊の増強は憲法第九條の違反と思います。更に又戰争犠牲者のうち、特に旧軍人遺家族の援護を行うということは、旧軍人に特別な特権を與えることになりまして、これは又憲法第十四條の私は違反であると思うのであります。更に又予算総則第九條、第十三條等は、これも又財政法精神に反していると思うのであります。このように憲法違反しておる予算は正式に国会審議を求めるに値しないのではないか、国会審議の対象たる資格はないのではないかと思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)憲法違反予算案内容審議するということは、予算案合法性を一応認めることになりまして、憲法違反の事実を参議院予算委員会が容認することになりはしまいかそうなりますと、我々国会議員みずから憲法第九十九條違反を犯すことになりはしまいかと虞れるのであります。周知のごとく憲法第九十九條には「天皇又は攝政及び国務大臣国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と規定しておるのであります。この規定にあります通り我々国会議員憲法を尊重し、擁護する義務を負つておるのであります。この憲法擁護義務を果すために憲法違反しておるこの予算案内容審議参議院予算委員会としては、私は拒否すべきであると思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)そうして政府に対しまして、憲法に基いて予算案編成し、そうして国会審議を求むべきことを要求しなければならないと思うのであります。少くとも憲法違反しておる部分は、この予算案から除いて、そうして憲法に基いて予算編成し直して、補正として再提出する、こういうふうにすべきであると思うのです。独立第一歩において政府は重大なる憲法違反を犯し、これを国会が容認するがごとき態度に出でましたならば、その弊害は恐るべきものがあると思います。国民国会権威を疑うばかりでなく、憲法権威をも疑うようになりまして、遵法精神は地を拂い、法治国としての実を失い、フアシズムの抬頭を許すことになるのではないかと思うのであります。又対外的にも重大な惡影響を及ぼすのではないかと憂うるものであります。三月三日の読売新聞でありますが、ジヨセフ・フロム氏はこれはユー・エス・ニユース・アンド・ワールド・リポートの特派員でありますが、こういうことを書いております。日本が再軍備に向つておずおず踏み出しているとき、なお戰争放棄條項が修正されないでいるという事実は、将来の立憲政治にとつて脅威である。それは明確な憲法上の根拠もなければ、その権限や責任が法によつてはつきりと規定されてもいない。軍隊を作るという目前の危険を生んでいる。万一このような事態が許されるようなことがあれば、それこそ新らしい軍隊立憲政治そのものを破壊するような権力を握るのを防ぐために、憲法を改正しようとしても手遅れであるかも知れない。それどころか若し再軍備の問題を憲法でごまかせるとなれば、日本民主制度の保持にとつて同じように肝腎な他の問題についても容易にごまかせるのであるというようなふうにフロム記者は書いているのであります。衆議院が御承知のような状態でございますので、せめて私は参議院において憲法を守らなければならない。(「その通り」と呼ぶ者あり)どこで憲法を守ることができるでありましようか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)今こそ我々国会議員憲法第九十九條の国会議員義務を、憲法擁護義務を果さなくてはならないと思うのであります。又一歩を譲りまして、少くともこの予算案憲法違反であるかどうかということを明らかにしてから、まあ審議に入るのが私は当然であると思うのであります。そういう意味におきまして、私は委員長からこの審議に入るに先立ちまして、この憲法違反に基いて、憲法違反して編成されているこの予算をどう取扱うのかということを私はお諮り願いたいと思うのであります。以上であります。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  6. 内村清次

    内村清次君 議事進行について……。只今木村君から御発言のありました本予算案編成については、憲法違反のかどがあるという点を指摘せられまして、この憲法違反の点を明確にしなければ、これを審議をすることは拒否すべきであるという御発言でございます。私といたしましても、今回の政府編成をいたしました予算そのものにつきましての中に含まれておりまする防衛分担金安全保障費その他のこの防衛関係費用というものは、これは明らかに憲法第九條の戰力保持の点につきまして違反の点がある。これを先ず改正すべきであるということの点については同意見でございます。この点は参議院といたしましては極めて重大でありまするからして、その特異性従つて、明確にしておかなければならないということを私も考えるわけであります。ただここで私たち考えておかなくてはならないことは、実はこの二十七年度の予算案は、すでに衆議院議決を経まして、本参議院のこの予算委員会において審議をするということに相成つておるわけでありまして、私は衆議院がこの憲法違反の問題に対しまして、明確なる答えを出したかという点につきましては、遺憾ながらその不十分の点に対しましても不満を持つておるものでございまするが、併し現実におきまして、この予算案はすでに参議院予算委員会審議の段階に参つておるわけでありまして、当予算委員会におきましては、すでに理事会も再三開きまして、先ず総理の一般総括的な質問を展開すると、而もこの総理総括質問に対しては、三日間をこれに費やすということもきめて今日になつておるわけでございまするが、私はこの只今木村委員発言は最も重要でございまして、私も同感でありますし、又他の委員かたがたにも憲法違反なりと考えておるかたもあられるでしよう。或いは又憲法條項に抵触する疑いがあると疑義を持つておるかたがたも多くおられると存じますが、この点はこの総括質問を終いました、即ち三日間の終りにおきまして、この参議院といたしましては、明確に今後この予算案をどう取扱つて行くか、憲法違反の問題をどう取扱つて行くかということを、委員長におきましては、理事会においてその運営の方法を是非お考え頂きまして、そうして差当つて折角理事会決定をいたしております総理のこの総括質問日程だけは、先ず議事進行上において各委員質問を展開して行く、而も又この質問の中には、恐らくこの憲法違反の問題も総理質問として展開されるでありましようし、又政府のほうからも、この問題に対しましては必ず答弁があろうかと思いまするからして、そのような取扱いをして行かれますことを私は希望いたすわけでございます。この点をどうか委員長におきまして諮られて頂きますようにお願いしたいのであります。
  7. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 皆さんにお諮りいたしますが、只今木村君と内村君から、本予算取扱いについての御発言がありまして、本予算案憲法違反疑いがある、又憲法違反だと、こういうような御意見を持つておるようでありますが、そうでなくて、これは憲法にも抵触しないというような御意見を持つておるかたも委員の中にはおられると思います。重要でありますので、委員長といたしましては、内村委員の御発言のように、当委員会としましては、差当つて衆議院からの議決も経て来たものでありますので、総理総括質問日程通り終えまして、その直後、直ちに理事会におきまして、憲法違反の点及びこの予算委員会予算案をどういうように扱うかにつきまして、理事会で相談してきめるということにいたしまして、総理に対する総括喜質問日程に入りたいと思いますが、如何で、ございましようか。    〔「異議なし」「異議あり」と呼ぶ者あり〕
  8. 波多野鼎

    波多野鼎君 この二十七年度予算案につきましては、予備審査の最初のときにも、すでに憲法違反疑いがあるからということが問題になりまして、理事会でその問題の扱い方をきめてもらう、そうして委員会においては憲法違反疑いがあるかどうかということをきめたあと審議に入つてもらうということは、もう一カ月も前にきまつておつたことなんです。今更その問題を蒸し返すのはおかしいのですけれども、委員の中にはいろいろな御意見を持つておられるかたも私はあると思う。そういう意見を闘わしたあと委員会としての決定をして行く、この問題については……。それから審議に入るのが穏当ではないかと思う。こういう憲法違反疑いがあるというような疑義を持ちながら審議を進めるということは私はいけないと思う。で、私は早速理事会を開いて頂いて、この問題について参議院予算委員会としての態度決定して、そうして審議に入つて頂きたい、私の希望を申上げます。
  9. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 昨日の理事会でそのお話が出たわけでありますが、憲法についての違反であるかどうかという点については、各委員それぞれいろいろな御意見を持つておられまして、それを究明いたすとしますれば、これはなかなか結論にもすぐには達しない点もありまするし、又行政協定その他ほかの委員会との関係もありますので、理事会としては、この問題は総理質問だけを終つてあとで直ちに究明して、予算案の本当の取扱いについての態度をきめる、こういうことに実は決定いたしたわけでありますので、さように一つ取計らうように御了承願いたいと思います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 和田博雄

    委員長和田博雄君) それではそのように一つ計らわして頂きます。   —————————————
  11. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 内閣総理大臣に対しまする質疑をこれから始めます。各党会派の持時間は、それぞれ事務のほうから各会派のほうに御通達申上げたと思うのでありまするが、又順序も同様にお知らせいたしたと思うのであります。先ず内村清次君。
  12. 内村清次

    内村清次君 二月の二十六日のイギリス下院におきまして極東問題の論議の際に、前外相モリソン氏は、中国問題で、吉田総理国会で述べられました国府承認方針を引用されましてこれは昨年の七月に、モリソン外相ダレス氏との間の約束とは違つておるというようなことを明らかにされております。ダレス氏に送られました吉田書簡が、国際的にこのように反響を示しておりますることは、誠に国際道義を乱すような結果になつておる。この秘密裡に強行せられました裏には、何か吉田総理ダレス氏との間におきまして密約があり、それが又書簡になつて現われたというようなことを、国民も又ひとしく考えておりまして、納得しかねておるような点でございまするが、この点に対しまして、総理は早く一つ国民にその間の事情を明らかにされてはどうであるか、この点をお伺いいたしたいのであります。
  13. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをしますが、ダレス氏との問における話合は、議会においてしばしば私からしてすでに申したところであります。非常に長い何かいきさつがあり、若しくは秘密があればとにかく、秘密はないものでありますから、私は今日までの経過は一応説明したつもりでありますが、重ねて申しますが、ダレス氏が見えたときに、米国国会の中にも中国問題についてはいろいろ関心持つておるのである、一体中国に対して日本政府としてはどう考えるか、政府としては成るべく善隣関係を重んじて、イデオロギーは別として、とにかくすでに統治の主体となつている政権があれば、それと友好関係、若しくは條約関係に入ることは、日本の治安その他に妨害のない限りは、一向異存はないのである、ダレス氏は若しその通りであるならば、日本政府考えておることを書面に書いてくれないか、そうすることが、米国国会において平和條約を審議するのに便宜であるからということでありますから、私の書簡を、政府考えておることを率直に述べて申送つて平和條約の批准に便宜ならしめたいと思つて書いたのであります。これは議会でもしばしば申上げております。それ以外に何らの秘密はないのであります。御了承願います。
  14. 内村清次

    内村清次君 今回日本政府国府との間に講和條約の締結をせられるという態度は、これは非常に又反響を呼びまして、中国大陸支配中共政府との国交というものは最も刺戟を與えておるように感ぜられるのであります。勿論すでに中共政府承認イギリス及び又インドパキスタンその他自由国家群におきましても、共産主義国家群におきましても、約二十一カ国がこの中共承認いたしておりまする事実において、国内的にも非常な悪影響が現われておるように思うのでありまするが、その現われは、先ほど申しましたような、イギリスにおける現実様相、これが雄弁に物語つておるわけでありまするが、このような吉田内閣外交方針の基調が、アジアの平和を乱してそうして日本アジアから孤立して行くというような方向に進んでおるように考えておりまするが、総理はどのように考えておられるか。
  15. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は、あなたが日本外交が孤立化されつつあるということのお考えのようでありますが、現にパキスタン或いはインド等も、やがて條約関係に入るという、又入りたいという希望を現にインド政府のごときは述べておられるのであります。このために日本外交が孤立化するというようなことはないと思います。又イギリス関係においては事実はよく知りませんが、新聞以外に事実は知りませんが、日英関係において、特に現在外交がこの国府問題のために悪化したと考えられるような形跡は毫もないのであります。
  16. 内村清次

    内村清次君 中共政権台湾政権との間には、これは総理もお考えでございましようが、決して親善的な様相はないように考えます。これは各要人の談話を総合いたしてみましても、極めて險悪な空気が漲つておるように見受けられるのであります。不幸にいたしまして、中国のこの内部におきまして、内戰的な戰火が勃発いたしましたときにおきまして、国府との講和條約をしようとしておられる日本政府といたしましては、どういう即ち態度をとつて行かれるか、即ちこの両者に対しまして、どういう態度をとつて行かれるか、その点をお伺いします。
  17. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ちよつとお尋ねしますが、どういう態度というのは、例えば同盟というのもおかしいですけれども、援助し合うというような御質問ですか。
  18. 内村清次

    内村清次君 そうです。
  19. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この国府との間の條約は、いわゆる條約関係に入るだけでありまして、政治的の意味合で、例えば中共と言いますか、北京と台湾との間に、或いは支那の内戰が生じた場合に、日本がどちらを助けるかというような政治的の意味合は全然含まれておらないのであります。主として経済関係貿易関係、又政治上の今のお話のような條約の意味合は全然含んでおりません。又含むべきでないと思います。中国内政に干渉するがごときことは、日本政府としては何にも考えておらないことをはつきり申上げて置きます。
  20. 内村清次

    内村清次君 そういたしますると、吉田書簡内容の中におきまして、又今回日本政府日華條約の基本的な方針といたしまして打出しておる領土の問題でありまするが、この領土が、日本台湾及び澎湖島の領有権を放棄するだけでなくして、右領土を中華民国を構成するところの領土として承認するという規定もあるようであります。又更に同條約は、現在或いは今後ともに国府及び日本国政府管轄下に入るところの領土に適用されるとも規定されておる、今後この管轄下に入るところの領土と、うことになつて参りますると、やはり領土拡大方針というものがやはりここで規定せられて行きやしないか。そういたしますると、領土拡大の即ち方向というものはどこを指しておるのであるか、即ち台湾政府中共大陸を拡大して行くと、こういうことをも含めてあるのであるかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  21. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 主とするところは、趣意とするところは、現在台湾政府統治関係の下に置いておる領土だけのことを考えるのであります。将来どうということは全然考えておりません。
  22. 内村清次

    内村清次君 これは重大な問題でありまして、私たち心配もこの一点にあるわけでありまするが、今後この條約の批准に当りましては、これはもう当然憲法の第七十三條の三号によりまして国会承認を求めるべき事項であると私は考えるのでありまするが、総理はどういうお考えでありましようか。
  23. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは無論国会承認を求めるつもりであります。
  24. 内村清次

    内村清次君 勿論先ほどは領土拡大方向についても政治的な考え方はないということを言明されておりまするが、これはこの條約が締結をされましたならば、やはり国府関係との経済関係におきましても、政治関係におきましても、いろいろの又密接な関係いうものが生れて来る、それから特に又今回の行政協定におきまするところの日本安全保障の問題にも関連いたしまして、そうして台湾政府中共との、即ち大陸に兵を進めて行く、或いは又中共内部において大陸内部において、即ちそこに動乱的な要素が起つたという場合のときにおきましては、政府のほうにおきまして、経済的に、或いは又政治的に、或いは又国連関係といたしましての協力態度からして、どう処置をしようとされるのであるか、この点が一点であります。私はこの点を先ず一つ明確にして置きたいと思います。
  25. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今申した通り中国内政、内争には関係する考えは毛頭ないのであります。現在台湾政府がその統治の下にある区域において條約関係に入るということは明記いたしておることであります。
  26. 内村清次

    内村清次君 その点は総理只今の言葉を私どもは明確に記憶いたして置きます。私たちはただ心配をいたしますることは、若しもこの台湾政府行動を共にするような、或いは精神的にも物質的にも行動を共にするようなこと、或いは行動的に若しも行動するようなことがあつたとしたならば、中ソ友好援助條約の第一條に抵触をするということ、こういう点を考えておるのでありまするが、総理はそういうようなことはしないというような確信でありまするから、この点は重要でありまするが、確認をして置きます。それから総理は本国会での施政方針演説におきまして、講和調印国との間に速かな国交の回復を実現するように現に話合いを進めておると言明せられました。先ほどもちよつと触れておられるようでありまするが、どのような国と、どのような方針でその話合いを進めておられるか、この点を明確にして頂きたい。
  27. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは平和條約に書いてあります通り平和條約に規定せられた線において日本平和関係に入り、若しくは友好関係に入りたいという国があるならば、平和條約に規定してあります通りの線において條約関係なり、友好関係に入るつもりでおります。
  28. 内村清次

    内村清次君 まだどこの国との話合いが進んでおるという具体的な、即ち相手国の名前の指摘はできないのでありますか。
  29. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) すでに総理もお述べになりましたように、インドとは話合いを進めております。又その他にもパキスタンであるとか、或いはイタリーであるとか、或いは西ドイツであるとか、いろいろの国と話は進めております。
  30. 内村清次

    内村清次君 ワシントンの二月の十三日の共同通信で、アメリカアチソン国務長官ワイリー共和党上院議員に送りました書簡の中で、最近の情勢から判断したならば、対日平和條約発効後、ソ連又は中共日本領土の占領を企図するような徴候はないということを述べた書簡が二月の十三日のアメリカ上院外交委員会におきまする対日平和條約の聴聞会で、その内容が発表せられております。なお日本国民に直接侵略間接侵略を説かれましたところのダレスアメリカ国務長官顧問は、二月の十六日アイオワ州のデモインアメリカ農業協同組合の席上におきまして演説されまして、ソ連の指導者たちは、これまで公然たる軍事力によるところの征服を求めたことはないということは、赤軍は必ずしも共産政権に忠誠ではないからだ云々という演説をしておられます。ところが吉田総理はサンフランシスコの講和会議におきましては、北辺からの共産軍の侵略の脅威を訴えられまして、安全保障條約も真空状態の脅威に対しましても、この国土の防衛の処置として安全保障條約を結ばなくてはならないということを強調せられておるようであります。吉田総理は今なお共産勢力というものがこの日本侵略の対象になつておる、そういう危險があるんだということをお考えであるか、その点を率直に一つ述べて頂きたいと思います。
  31. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ダレス、アチソン氏等の演説でありますが、内容については私は存じませんが、併し合目、日本の周辺において現に朝鮮においては戰争が行われておるのであるし、又北海道方面においてはいろいろな流言蜚語が盛んになつておるので、警察方面においても種々その情報の收集に苦心いたしておるのであります。又各地においていろいろなデモが行われ、又朝鮮人が云々というようなことは新聞でも御承知の通りでありましようが、政府としても、地方における各大小の事件、殊に北海道あたりについては注意をすべきものと考えて、これに対しての警戒は怠りなくいたしておるのであります。
  32. 内村清次

    内村清次君 こういう只今国内的なそういうような騒擾その他の事件が考えられるというようなことですが、朝鮮動乱のほうはああいつた停戰的な状態であります。ただ具体的に今後この安保條約の第一條にあるような直接侵略というような事態が今後想像せられて来るか、若しも想像せられるとしたならば、即ちどういうことが動機になつて来るか、私たちはむしろ吉田総理の現在とつておられる立場そのものがそういう侵略の動機を作つておられると考えておりまするが、こういう考え方もたくさんあるのです。だからして平和を望む者、即ち或いは憲法を守つて行くというような者たちはひとしくこの点を非常に心配いたしておるわけでございまするが、更に具体的にどういう即ち経路で侵略の口実がなされて行くかということの所信を伺いたい。
  33. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 将来のことでありますから今日こういう状態でこうであろうとか、或いは私の言動がかかる事態を激化するというような御心配があるようでありますが、かかる事態を激化せしめるために私、現内閣としては処置をとつているものではないのであります。
  34. 内村清次

    内村清次君 どうも余り答弁の要領がよくて……、而もこれでは国民はどこにその北辺からの脅威が存在するかという点が明確に私はならないように考えますが、これは具体的に申し述べられるところの理由自体というものがまだ総理には確実に御方針がないように私は考えます。  次に伺いますが、この吉田総理国会におきましてこれはたびたびでありまするが、対日講和の問題に対しましては、しばしば全面講和は好ましいが現在講和を好む国々と次々と講和をして行こうという多数講和方式をとつて現在来ておられるわけでありますが、この前の国会におきましては、やはり未調印国との講和の問題にも論及せられ、又只今もそういう気配があることも言及せられておりますが、特にこの中共、ソ連との親善関係についても考えているというような発言もあつたと私は記憶いたしております。  ところがこの二月の二十七日、アメリカの報道によりますると、ソ連は千島及び歯舞諸島を日本に返還するというようなことで單独講和を申込んで来るというような、こういう報道がなされておつたと記憶いたしておりまするが、若しこのような即ちソ連の態度を以て今後単独講和を申込んで来る場合のときにおきまして、吉田総理はどのような御態度であるかその点を一つ。
  35. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) そういう具体的の問題がありましたらそのときに研究いたします。
  36. 内村清次

    内村清次君 これは外交の問題でありまして、而も又これは基本的な日本との講和の問題でありますし、日本の平和という点につきましては重大な問題でございまするが、その場当りの外交方針では私はいかんと思う。やはり総理がどういうふうな方法で外交方針を建てて行くということは、もう今しつかりと肚にきめて行かなければいかんと思うのですが、そういう事態があつたときにはその呼びかけに応じて行かれるかどうか、その点はつきりしておかれたい。
  37. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 外交のことは簡單でないのであります。影響するところは日本のすべての立場に影響いたしますから愼重に考えます。従つてここで以て仮定の問題について簡單にこうこうするということは責任のある私としてはお答えがしにくい。
  38. 内村清次

    内村清次君 これは甚だ……。国民の世論もそういうような日本を安全にして行こう、平和を護つて行こうという即ち強い要望があるにかかわらず、総理国会の議員の中にもそういうたくさんの議員のかたがおられるにかかわらず、外交のことは俺に任せろ、その場その場で一つやつて行くのだというような私は方針に対してはどうもついて行かれない。こういう態度ではこれはいけないと思う。やはり外交というものは親善的な信頼というようなものを私は世界に示して、そうしてその日本を安全な地位に護つて行くということが私は外交の基調でなければならんと思うのですが、どうも総理のお考えかたにつきましては私は納得行きません。  それからダレス特使は日本安全保障というものはアメリカ軍が当る。だからして日本日本の要請によつて日本が頼むならば、アメリカ軍が当るのだからして安心しなさい。こういうようなことで、今回の安全保障條約が結ばれておりまするが、その間において吉田総理は、アメリカ政府から相手方の一切の攻撃からは日本を完全に護つてやるのだという公約をとつておられますか。その点第一点であります。  それから総理考えておりまするところの仮装敵国でありまするソ連、中共の原爆を含めましたところの戰力を総理はどのように算定をしておられるか、どのような認識の下に考えておられるか、この点も一つ併せて伺いたい。
  39. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 行政協定においてはつきり書いてありますように、若しかかるような危險な状態が起つた場合においては、両国政府において隔意なく相談することにいたしておるのであります。故に日本に対する攻撃はアメリカに頼むとか、依存するということは、曾つて話にのつたことはないのであります。日本としては飽くまで日本独立安全は、日本国民の力、日本国の力で以て護る。併しながらそれにもかかわらず共同的な、集団的な攻撃にあつた場合にはどうするか、これは集団的な攻撃に対しては常に申す通り、集団的防禦の方法を講ずる以外に、今日日本国としていたし方ないのでありますから、安全保障條約はこの目的のためにできているのであります。が今日において大体よそから来た、こういう敵に対してはこうするとか、ああするとかいうような具体的な話よりも、抽象的に一たん危險な状態が追つた場合には、日本アメリカ両国政府の間に隔意なくこれに対する措置を講ずる、こういうことだけにきまつて決議、協議をきめているわけであります。
  40. 内村清次

    内村清次君 ソ連と中共の兵力の問題のあなたの御認識です。
  41. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは私にはまだ認定がありません。何となれば、在外公館その他海外の事情を牧集する機関がないのであります。又私としてかくのごとき兵力があるとか、これだけの集団的攻撃をなさんとしているとかいうようなことは、これは外国の関係もありますからして憚つて言明いたしません。
  42. 内村清次

    内村清次君 極めて重大な点に対しまして総理の認識のないことを残念に思います。アメリカの指導者や吉田総理考えておりますこころの、武力に対しては武力を即ち充実をして、そうして相手方の侵略を阻止して行こうというようなこういう態度、それで果して平和が確立されるかということになつて参りますると、私たちはこれはもうすでに日本はそういう過去の経験があるのだというところの一語に盡きるのでありますが、総理は相手方の戰力の状態も考えないでただアメリカに委せてこの安全保障條約を締結したのだ、こういうようなわけであります。そういたしますると、予備隊の増強又はアメリカの駐留軍の兵力の問題、この兵力の問題はこれは誰が計画をいたしまして、そうして又これの計画に従つて即ち自衛力を漸増して行くというようなことは、日本政府というものが自主的に考えておるのであるかどうか。或いは又アメリカの要請によつてこういう警察隊というものが増強せられて行くのであるか、この点を一つ明確に正して頂きたい。
  43. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 安全保障條約前文にもあります通り日本としては自衛力をだんだん増して行くというつもりでおるのであります。予備隊のほうはその意味でできる限りの努力をいたしまして、と言つてもそう大きなことはできませんけれども、できるだけ自衛力を漸増して行きたい。こういう趣旨でありまして、特にアメリカ側との話合でやるというような意味ではないのであります。  なお日本の安全を保障するアメリカ軍隊の兵力等につきましては、これは仮にそういうものがはつきりわかりましても軍の機密という関係もありますので言明は差控えるのが適当と思いまするが、併し根本的にはアメリカ日本を安全にするための兵力というものは、條約にありまする通り日本の国内及び周辺となつておりまして、例えば沖繩であるとかグアムであるとかそういう方面にある兵力をも総合的に考えまして、そうして日本に対する安全を保障するに足るものを考えている、こういう意味とお考え下すつていいのではないかと、こう考えております。
  44. 内村清次

    内村清次君 これは警察隊の増強、即ち自衛力の増強については日本の立場を考えてと、こういうことでありまするが、基本的ないわゆるどこが侵略して来るかという、この国の軍備に対するところの想定を以て、そうして即ち日本の国の安全を守つてやろうというアメリカとの話合によつて日本の自衛力というものが考えられて行かれる。こういうような私は政府考えかたではなかろうかと、こう思うのですが、ただ相手のほうのことは考えずに、ただ日本で自主的に考えて行くんだとこう言つておられまするが、どういうことを事態として自主的に考えて行かれるか。或いは又それには何年度にはどのくらいの増強をやるというような計画性がなくては私はいかんと思うのですが、その点に対しましての御答弁を要求いたします。
  45. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 只今の御説明は十分でなかつたかも知れませんが、日本が万一の場合のときにアメリカ政府日本政府が緊密に連絡するというのは、これは当然のことでありますが、日本の自衛力につきましては、これはいろいろ御意見もあるかも知れませんが、政府としては只今の七万五千人の予備隊というものは、八千四百万の国民のおるこの国を守るに足るとは到底考えられないのであります。従いましてどこまで行けば守るに走るかということについては意見の一致がない場合もありましようけれども、少くとも今の状況ではまだ到底足りないということだけはどなたも御異議はないと思います。そこで予算の許す限りで、又国内の国民の気持がそれに向く範囲においてでき得る限り自衛力の漸増をいたして行こう、こう思うのでありますが、その方針といたしましてはまだまだでき得る限り増して行く必要があると思いまするので、只今その努力をいたしておるわけであります。  そこでこの方針等につきましては、いよいよ独立いたしまして国民が本当に独立国民として新らしい立場から考えてその動向にもよりまして計画を立つべきものと思いまして、只今は一意予算その他の許す範囲において自衛力の増強を図ろう、こういう努力をいたしておるわけであります。
  46. 内村清次

    内村清次君 この日米安全保障條約の第一條は、確かにアメリカ軍が日本の国土内及び周辺に配備をして、そうして大規模の内乱、或いは又その内乱は一国又は二国間の思想によるところの内乱、それから又第二項といたしましては即ち外部からの侵略に対するところの国土の安全を守るというようなことが規定されているのです。そういたしまするとこれはその事態の認識でありまするが、この認識については日本政府が認識をして米軍の要請をする、そうして要請をいたしまするとこの要請に対しまして米軍が出動する。米軍が出動すれば結局これはやはり日本の防衛隊、即ちあなたがたの言う警察隊、この警察軍というものがやはり共同動作をするのだろうと思いますが、この点はどうですか。
  47. 和田博雄

    委員長和田博雄君) できる限り一つ吉田総理に御答弁頂きたいと思います。やはり委員なり国民総理の答弁を求めているのでありますから。
  48. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 委員長の強請によつてやむを得ずお答えをしますが、今日お話のようにこの事態において即ち日本の規在の状態において理想的に日本の国力を以てすべての危險に備えるということは今日の国力が許さないのでありますが、同時に外敵というのもおかしな話でありますが、日本に対する危險は決してないとは言えないのであります。この危險がどれだけのものであるかと想像するかということでありますが、これはおのおの意見の立てようであります。我々も文單に想像する程度のものでありますが、併し危險の存在ということは確かであると思います。この危險をすべて従来のように日本の国力だけで守ることができ得るならば結構でありますが、只今日本といたしましてはそれだけの国力がない、又経済的財力もないとするならば、安全保障條約のごとき集団的防禦方法によるより仕方がないから、ここに安全保障條約を作つたのであります。而して危險が実際に起つた際どうするか。これは只今申した通り両国政府において、隔意ない話合においてきめる方法を講ずるということになつているのが安全保障條約であります。
  49. 内村清次

    内村清次君 共同動作はやはり米軍と一緒に日本の警察隊というものをとつて行くということに伺つてよろしうございますね。そうしますとこの共同作戰というものに対するところの統帥の任に当る者は一体誰であるか。これは合同委員会決定される問題であるか、どうであるか。
  50. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは具体的事実が、危險が起つた場合、この危險に処するために適当な処置を両国政府において隔意なくきめる、これが行政協定の趣意であります。
  51. 内村清次

    内村清次君 では私としては最後でありますが、そういたしますると私はその一番憂いますることは、このような即ち警察予備隊、こういう性格というものが日本国内に存在をする。そうしますると憲法第九條のこの武力によるところの威赫又は武力の保持というもの、こういうようなことについては、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」。と、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戰力は、これを保持しない。」こういう規定と、同時にこのたびの即ちアメリカ軍というものが、駐留軍が日本の国土内において戰力的な要素としてこれが現存する、それに行政協定で即ち費用の分担をやるというようなそういうようなことは、私はこの第九條の違反ではないかということを痛感するものでありまするが、これに対して総理はどう考えるか。
  52. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 第九條なるものは自衛権を否認したものではないのであります。国が独立いたした以上は自己の国の安全を守り、又自衛の手段を講ずるということは当然のことでありますが、併し第九條は国策遂行、いわゆる国際的、何と申しますか国策遂行の機関として兵力を用いないということだけの話で、併しながら国の自衛をすることは拒んでおるのではないのであります。自衛のために国としてはあらゆる手段を以てして独立を守る、これは当然なことであります。
  53. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 時間の関係もありますので極く簡單に質問をいたしたいと思いますが、先ず外交関係する問題でありますが、総理は年頭の施政演説におきまして「各連合国における平和條約の批准の状況は順調に進行している模様である」こういうふうに述べられておるのでありまするが、その後の事情を見ますとき必ずしもかような楽観的な事情ではないように私は思うのであります。特に最近新聞紙の報道などを見ましても肝腎のアメリカにおけるこの問題の取扱方はかなり遷延しているように思われるのであります。そこでお伺いいたしたいことは、この平和條約が、各国の批准終つて効力がいつ頃一体発生するか。こういう見通しについて首相はどういうふうにお考えになつておられるか承わりたいと思います。
  54. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) すでにイギリスは條約を寄託いたしておりますし、それからセイロンは……ちよつと具体的に国々は覚えておりませんが調べてお覧をいたしますが、だんだん批准を急ぐために或いはすでに下院の議決が済んでそうして上院に廻つているとかいつて、たしか濠洲でもすでに上院に廻つているように記憶しております。詳細なことはいずれ調べてお答えいたしますが、批准国会の手続等は各国ともに相当進んでおります。いつ批准ができるかということになりますと、これは外国の議会等の手続もありますからしてはつきりしたことはここに言いかねますが、多分三月若しくは四月にはできやしないか、終りはしないか、つまり六カ国や七カ国の講和條批准は終ることになりはしないかと私は予定いたしております。
  55. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでこの條約が発効するのには当然一定数の批准がなければならないのでありまするが、特にアジア地域における諸国の態度でありまするが、現在若干の国に対しては賠償問題について交渉をしておられるようでありますが、この賠償問題と平和條批准関係でございますが、私は賠償問題が円滑に解決をしない、こういう場合には平和條約の批准にも非常に関係をして来るのではないか、こういうふうに考えているのであります。こういう点については首相はどういうふうにお考えになつておられるか承わりたいと思いますのと、それから賠償問題については講和條約に決定されたああいう内容で十分話合いが進むと、こういう見通しを持つておられるのか。そういう点をお伺いしたいと思います。
  56. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 講和條約調印の際に賠償問題を、留保して調印した国もあります、そうでない国もありますが、そういう国としては、講和條約の批准ということと賠償問題とは自然関連さしてそうして態度をきめることであろうと思いますが、さてこの賠償問題についての話はとにかく今日まで支障なく進んでおります。金額その他についてはまだ問題がありましようが、政府としては平和條約の條項従つて誠意を以てこの問題の解決に当るつもりでおります。この誠意は、フイリピンにしてもインドネシア等においても政府の誠意は認めておるようでありますから、何かの方法によつて賠償問題も適当なところに落着き得るのではないか、又落着けたいものと政府考えております。
  57. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は、平和條約に調印をした国々との国交を回復するということと同様に重要な問題は、平和條約に調印しなかつた諸国に対しても速かに国交の回復を図つて行くという問題があると思うのであります。この問題につきましても首相は施政演説におきまして平和條約に調印しなかつた諸国とも速かに国交の回復を実現すべく現に話合いを進めている、こういうことでありました。先ほど内村君の質問に対しましては、インド及びその他の国と話合いをしているのだ、こういうことでありますが、未調印国にはソ連或いは中共支配下の中国、こういう大国があるわけであります。未調印国は、インド中共支配下の中国或いはソ連を合せますと世界の人口の半数にも達するのでありまして、而も地域的に申しても非常に日本に近接をしている。或いは経済的な関係も従来から非常に深い地域でありまして、これらの国々との国交の回復ということは申すまでもなく極めて重要な問題であると思うのでありますが、先ほどの説明によりますと、インドとは話合いをしているということでありまするが、ソ連や中共とは全然話合いがなされておらないのか或いは話合うという意思を持つておられないのか、そういう点を先ずお伺いしたいと思います。
  58. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) インドとは、積極的にインド政府側からして日本に申入があつたのであります。これに対して日本政府はこれに応じて協議いたしているのであむますが、中共とか或いはソヴイエト等とは今まで未解決の問題がある上に、何らの申入がないものでありますから協議を開始いたさないのであります。
  59. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると国交回復の問題につきましては、日本からは積極的にはそういう努力をしない、ただソ連或いは中国だけでなしに、その他の国においても、向うから話合いがなければこういう問題は取上げて行かないのだ、こういうふうな態度政府態度であると了承して差支えないでしようか
  60. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 占領が終了しない今日においては、その態度をとるほかに日本政府としてはいたし方がないのであります。
  61. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは国交回復の問題と関連をいたしまして経済交流の問題でございますが、国交が正式に回復しないでも、経済的な交流の問題については十分なし得るところであるというふうに私は考えているわけであります。そういう点について政府はどういう態度をとつておられるかお伺いしたいと思います。
  62. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 條約関係がなくても相手方が承諾して、いわゆる経済交流といいますか通商ができる。これは特にさしとめる理由もないと思いますのでこれは許しております。併しながら正式の経済交流のごときは、やはり国交が正式に回復されたのちでなければ十分なることは期待がてきないと思います。
  63. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そういたしますと、現に国交の回復しておらない、或いは平和條約に調印をしておらない国との間においても、かなり経済的交流は進められておるのでありまするが、ソ連や中共地区との経済的交流についても、他の国々と同様な態度をとつておられるかどうかという点でございます。
  64. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 中共はとにかくといたしてソ連については幾多の問題があります。現に未帰還者の問題もあり、又不当に占領しておる島国もあり、漁船のごときは何百と拿捕されているのであります。こういう問題の解決にソ連政府としてはどれだけ誠意を以て考えてくれるか、先ずこの未決の問題、占領中に起つた問題、幾多の交渉があつたにもかかわらず未決になお残つておる問題等を考慮に入れないと、直ちにソヴイエト関係を考慮することはできないと私は思います。
  65. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この経済交流の問題と関連をいたした問題で、最近新聞紙に伝えられておりまする国際経済会議の問題でございますが、この国際経済会議の準備会でありますか、懇親会でありますか、そういう本部から日本の実業家或いは学者その他の団体に対しまして、この会議に参加するようにこういう招請があつたということをまあ聞いているわけであります。でそれに対しまして政府は旅券の査証を拒んでいるというようなことを聞くのでありまするが、この問題については政府はそういう態度をとつておられるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  66. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは、先ほど申した通りソ連との関係においては幾多の不愉快な未決の問題があり、国民の感情としても相当ソ連に対しては痛切な感じを持つているであろうと思います。故に直ちに旅券を出すということはどうであろうか。先ず第一、その会議そのものが性質がどうであるか、一応調べた上でなければこの問題は決定できないと思います。
  67. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私も、ソ連と日本との間に幾多の解決すべき重要な問題があるということは、よく知つておるところであります。そうなればこそ一層それらの問題を解決するために日本としては積極的な努力をすべきではないかというふうに考えているわけであります。で、そういう困難な問題があるから他の問題については一切手出しをしないのだと、こういうことではいつまでたつて国交を回復するとか、或いは親善を回復するとかということは困難になるのではないかということをまあ恐れるわけであります。で、特に今度の国際経済会議につきましては、これは政府の代表或いは国の代表を派遣する問題ではないと思うのでありまして、全く一市民として一個人に対して招請されたものであります。で、現にイギリスにおいてはイーデン外相政府の見解としてはこれには不賛成であると、その成果にも余り期待をしておらない、けれども英国の市民が個人の資格で出席することは自由であり干渉すべき限りでないと、そういう意味から旅券は交付するというふうなことを述べておられます。又アメリカにおいても新聞紙の伝えるところでは、アメリカの或る人たちがこの会議に参加するというふうな報道がございます。そのほかフランスにおいても西ドイツにおいてもこの会議には参加するようであります。私はこの会議が期待し得るものかどうかという点については詳細な知識は持つておりません。けれどもこの招請に応じて何とかして経済的な観点において一層今の事態を改善したいという人々でこの際会議に参加したいというふうな人々があれば、これを殊更に私は拒否する理由はないと思います。もう少し大らかな気持でこの人たち希望を達成するような御配慮があつて然るべきではないかと思うのですが、各国の事情をも考えてこの際総理大臣には何とかこういう希望者の意思を実現するように御努力を願えないだろうか、重ねてお伺いするわけであります。
  68. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今指摘せられたイギリスその他の国とソヴイエトの関係と、日本との関係は違うのであります。イギリスその他は友好国といいますか、少くとも條約関係に入つておるのでありますが、日本との間においては平和條約も調印しなかつた国であります。その他幾多の問題が現に残つておるのであります。法律的に言えば敵国であります。敵国に日本国民が行くということは一応考えざるを得ない。いわんやその会議が如何なるものであるか、單にソヴイエトの宣伝の会議であるとするならば誠にかんばしくない会議であると私は思います。よく調べた上で以て決定したいと思います。
  69. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 まあこの問題については私はこれ以上申上げませんが、併し政府の見解だけでやはり国民の持つている海外渡航の権利を剥奪するということは、私は面白くないというふうに考えておるのでそれを附加えておきたいと思います。  次に、問題は全く別個になるのでありまするが、学問の自由と学園の自治に関する問題であります。ごく最近起りました東大事件において、我々は国会において文部、法務の連合委員会を開きましてその事件の内容について詳細に聴取をいたしたのであります。その結果判明いたしましたところによりますると、私服の警察官がずつと以前からこの東大の学内に入り込んでおりまして、單に学校内というだけではなしに教室の中にも入り込んでおりまして、教授の講演の内容、更に教授の思想動向、或いは学生の思想動向、更に身元調査をしているというふうな事実が明らかになつたのであります。で、これは戰前における特高警察の再現であるというふうに私どもは強く感じたわけであります。こういう事態下に若し大学が置かれているということであれば、憲法二十三條に保障されている学問の自由ということは、到底保つて行くことができないのではないかという非常な危惧を私は抱いた一人であります。そこで首相は、この学問の自由というものが現在そこなわれつつあると、こういう事態に対しましてどういうふうな考えを持つておられるか。この問題は私は非常に重要な問題として考えておりますので、特に首相の御意見を伺いたいと思います。
  70. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私も、研究の自由或いは学問の自由、これは尊重いたしたいと思います。尊重することにおいて人後に落ちないと思いますが、併しながら自治の名に隠れて学内において共産党の運動が行われ、組織が行われる、大学といえども日本政府の下にある以上は機構は重んじてもらわなければならず、治安は重んじてもらわなければならないのでありますが、併しながら大学が自治の名において今一独立国をなしておるようにすべての行政権を排斥しておる。これは自治の名に隠れて自治を濫用したものと言わざるを得ない。若しそういう事案があれば、その事実は更によく判明いたしたいと考えて文部大臣も臨んでおります。一体自治なるものがどの程度にしておるのか、果して完全な自治ができておるのか、自治と申すのはよその学校の学生が入つて来て示威運動をするというようなことをすることがないか、或いは又総長においても総長自身が学問の自由とか、研究の自由ということはどういうことを意味しておるのかよく研究してもらいたい。質してもらいたいということを文部大臣に聞いておるのでありますが、学内において学問の自由は認めますが、併しながら自治の名に隠れて擾乱を来たすとか、或いは共産党のこれが根拠になるとか、或いは学生を誘導するとかいうようなことは、これは自治を越したことと思います。事実どうであるか、今文部大臣に調査を頼んでおりますが、併しながら詳細なことは文部大臣から……。
  71. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この問題についてはこれ以上私は総理大臣にお尋ねすることは非常に問題が詳細に亘りますので、控えたいと思うのですが、併し我々が知り得た範囲内におきましては、学校側も完全な自治を望んでおるのではないということは明白であります。学校内に起つておる問題をできるだけ教育的な立場に立つて解決をして行きたいというのが学園自治の私は本来の狙いではないかと思うのです。特に学長はこの学校の秩序維持に関しましては非常な努力の跡が窺われるのでありまして、最近における東大の学内の秩序というものは非常に良好になつて来ておるということを言つておられましたが、私どももそれは認めるところであります。然るに警察官がスパイ的な行動をあえてしておる、而もなお今後においてもこれは続けて行くのであるということをその際はつきり言つておられるのであります。こういう事態は私は猶予することのできない問題であると思つておるわけであります。すでに共産党の細胞の問題等につきましては、学校においては、いわゆる学校が許可しない政治的な活動というものは、政治的な要素を帶びた活動に対しては許可しない方針をとつておる。又そういうことが守られておると、こういうふうな証言もあつたのでありますので、この点については私は即刻にこういう特高的な警察の行動をやはりとめるべきであるというふうに思いますので、このことを要望いたしまして、私の関係しておる時間がこれで終りますので終りたいと思います。
  72. 吉田法晴

    吉田法晴君 私は先ず総理憲法改正をせられる意思があるのかどうかという点についてお尋ねいたしたいと思います。日本国憲法は言うまでもなく昭和二十一年十一月吉田内閣総理大臣の下において公布せられ、その翌二十二年五月三日から施行せられたもので、成文憲法の上諭の次には内閣総理大臣兼外務大臣吉田茂という副署がこれは国の内外に対しまして、永久に残るものとして記録せられております。当時の吉田総理大臣兼外務大臣は今日の吉田総理大臣兼外務大臣その人でございます。そこで第九十帝国議会における憲法改正特別委員会委員長であります芦田均氏が、僅か数年後の今日に勇敢と申しましようか、或いは軽率と申しましようか、とにかく憲法改正、或いは再軍備を主張せられるのに対しまして、あなたがしばしば御自身憲法改正はいたしませんと繰返して言明せられて参つております。私どもは総理のこの良心と責任に信頼したいのであります、最近往々憲法改正論が唱えられておりますし、又全国選挙管理委員会では、総理の否定にかかわらず憲法改正のための国民投票法を立案研究中であると報ぜられております。又私どもも現に先の臨時国会であつたと思いますが、北海道開発法の一部改正法で憲法第九十五條の住民投票に関する條章が蹂躪られたと信じております。田中東大教授も同意見であると私は信じております。今国会において継続費の復活で憲法第七章の財政立憲主義が破壊せられようといたしました。更に警察予備隊、海上保安隊の増強という形、自衛力の増強という名自で再軍備が進められ、第九條の違反が事実上なされているのではないか。又第三章の国民の権利及び義務に関する條章が、共産主義に対する対抗策を講ずるという理由で、具体的には治安立法或いは労働関係法の改正、大学学長の政府任命、こういうような形で変えられようとしているのではないかということを、非常に大きな疑問を持つているのであります。これは私だけではなく或いは我が党だけではない、すべて国民のこれは虞れと疑問であると思うのであります。この国民の虞れと疑問に対して、総理の率直にして十分なる御意見を承わりたいと思います。
  73. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えしますが、私はしばしば申しておる通り憲法改正の今日意思はないのであります。又憲法は他の法律等と違つてそう軽々にきめ、軽々に改正すべきものでないので、私としても愼重に考えなければならんものと思います。いわんや再軍備のために憲法を改正する、再軍備はいたさないつもりでおりますから、それ故に憲法改正の必要はないと私は思いますから、只今のところ憲法改正は考えておりません。
  74. 吉田法晴

    吉田法晴君 軽々に憲法を改正すべきではないという御意見、御気持については了承をいたすのでありますが、今の御答弁の中にも今日という言葉がございますが、その今日といつたようなところに国民が危惧と憂慮とを持つわけでございます。今日はやらないけれども、もう暫らくしたらやるということなのでありますか。再軍備のために憲法の改正はやらない、或いは自分の責任においてこしらえた憲法について改正する意思はないという明言を頂けますか、その点重ねてお願いいたします。
  75. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今日という言葉が耳障りであるならば訂正いたします。
  76. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは只今申上げました中の労働関係法規の問題でありますが、これは二月二日に国際自由労連で決定をいたしまして、吉田首相に書簡を送つたという記事が新聞に報ぜられております。私ども不幸にしてまだその全文を手にすることができませんので、新聞記事によるのでございますけれども、大体その内容といたしますところは、最近の政府の労働組合関係に関しますいわゆる労働立法に対する動向は民主主義に逆行するものではないかというので、第一に日本政府が最近とつている措置は、日本の自主的労働運動の根本に重大なる障害を與えるものである。第二に、団体等規正法、ゼネスト禁止法、集団示威取締法等々、これらの法案が国会で採択せられるならば、日本政府に思いのままの干渉を許して、労働者の労働條件を破壊し、民主的な権利を蹂躪するものである。第三に、これらの措置は曾て日本がILOに加入を許された際に行なつた約束と絶対に相容れないものである。こういう内容のものだと新聞紙上に報ぜられている。それからこれは新聞が手許にございますが、アメリカのAFLにおいても同様の決定を二月二日になされておりますが、その内容についてはここで御紹介を申上げる必要はないと思うのでありますが、これらの国際的な動向、或いは吉田首相に対する申入書簡に対してどういう工合に首相としては考えておられますか、お伺いをいたしたいと思います。
  77. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今御指摘のような書簡は私は受取つておりません。
  78. 吉田法晴

    吉田法晴君 書簡は或いはまだ届いておらんかも知らんと思うのでありますが、問題はその中身でありますが、労働法の改正を通じて自主的な労働組合運動の活動を制限するような意思はないと言われるのでありますか。それともこれらの決議或いは書簡内容をなすものについて如何に考えておられますか、承わりたいと思います。
  79. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) それは主管大臣からお答えいたします。
  80. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 私からお答えをいたしますが、私どもは正常な労働組合運動を抑圧するような考えはございません。目下労働法につきましての改正につきましては、労働者側、事業主側、及び公益中立のこの三者構成になります労務法制審議会に諮問中でございまして、これらの委員会で答申されました点をできるだけ尊重いたして行くつもりでございます。
  81. 吉田法晴

    吉田法晴君 次の問題に移りますが、日本国憲法の第十九條についていろいろ論議或いは質疑が繰返されております。念のために吉田総理の、これは第九十回の帝国議会における答弁を引用いたしますと、戰争放棄に関する本條の規定は直接には自衛権を否定してはおりませんが、第九條第二項において一切の軍備を、国の交戰権を認めない結果、一切の軍備と国の交戰権を認めない結果、自衛権の発動としての戰争も、又交戰権も放棄したものであります。こういう工合にその当時は非常に明快な答弁がなされております。ところがその後最近になりますと、この答弁がだんだんぼけて参つておりますが、問題は警察力とそれから戰力との限界、これがまあいろいろと本国会においても論議せられているのであります。私はこの点についてお尋ねをしたいのでありますが、ポツダム宣言によりますと、七項に日本国の戰争能力の破砕、それから同九項に日本軍隊の完全な武装解除、こういうことがございますことは私が申上げるまでもございません。このポツダム宣言によつて武装解除せられた武力、或いは戰力、こういうものが、現在の装備を持つておりますいわゆる警察予備隊、海上保安隊の装備と比べまして、どういう工合にお考えになるか、むしろその当時の解除せられました武裝、或いは武力、これは現在の警察予備隊の裝備よりも或る意味においては以下であつたとさえも言えるのではないかと思います。このポツダム宣言の実施によつて解除せられた当時の武力と、或いは今日の裝備と比べまして、如何なる考えを持つておられまするか、承わりたいと思います。
  82. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私が自衛権による戰力でありますか、交戰権をも放棄したように言われるが、これは当時の速記録をなお調べますが、私のその当時申した気持としては、よく自衛権の名において戰争が行われるのであるから、自衛権による戰争ということも考えべきものであるが、とにかく自衛権の名において戰争の起ることは防ぐべきものであるということを私は申したつもりであります。なおこの点はこの間も芦田君のときに言われたから、速記録を調べてみると言つてお約束しておつてまだお答えしないのでありますが、気持はそうであります。  又警察力の裝備云々ということでありまするが、これは相手方の攻撃力と言いますか、外国軍が侵入した場合、その外国軍は飛行機も持ち、いろいろな重兵器を持つておるのでありましようから、これに対するために警察予備隊が多少の裝備を持つということは当然のことであります。併し飛行機一機もないような警察予備隊が、或いは又軍艦一隻もないような海上保安隊がこれを戰力と言えるか、私は戰力と言えないと思うのであります。故に現在の裝備が戰力になると言つて憲法違反と言うことは私はこれは誇張した議論であると考えます。  それから又ポツダム宣言にある戰力なるものは総司令部の厳重な監視の下に、その当時保有しておつた戰力は完全に破壊されたはずであります。
  83. 吉田法晴

    吉田法晴君 時間がないので詳しくお尋ねするわけにいかんですが、一番最後の点のその当時破砕をしました武力というものと、それと今日の裝備とを考えて、果して現在考えられますものがその当時の武力、或いは裝備より非常に劣つておると、或いは問題にならんほどのものであるとこういう工合に考えられますかどうかということを一つ先ほどの御答弁に補つてして頂きたいと思います。
  84. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私はその当時日本の海陸軍が持つておつた裝備の実際は承知いたしません。併しその裝備なるものは外界の事情と共に変つて行くのが当然であつて、曾てはピストルも一大裝備であつたかも知れませんが、竹槍時代にはピストルも重要な武器であります。(笑声)併しながら相手方の攻撃力なり、戰力なり、戰争も時代が変つて行くに随つて警察予備隊が或いは防衛隊として相当の裝備を持つということは当然なことであり、この裝備は万世不易なものではないと考えます。
  85. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは問題を転じまして、最近、これは新聞等で伝えられるところでありますが、政府において航空機生産の助成をする意思があるか、航空機生産等に関する法案が考慮せられている、或いは兵器の生産等に関する法案が準備を進められている云々ということも見るのでありますが、散見するのでありますが、これらの点について、どういうようなお考えを持つておられるのであるか。
  86. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 私からお答え申上げますが、まだ飛行機その他の生産に関する特別な法規を制定するところまでは至つておりません。
  87. 吉田法晴

    吉田法晴君 これも新聞のことでございますから念を押すのですが、政府筋の非公式見解として、憲法第九條の戰力はこれを保持しないとあるが、軍用機、兵器生産の開始それ自体は違憲にはならない、憲法には兵器生産それ自体は禁止していないと見ている、こう書いておりますが、これらの点については如何ように考えておられますか。
  88. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) ちよつと質問の要点がよくわかりませんので、もう一遍。
  89. 吉田法晴

    吉田法晴君 憲法第九條は兵器の生産を禁じておるのではないという考え政府が持つている、こういう新聞記事があるがどうかということです。
  90. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) じや私からお答えいたします。兵器それ自体を作ることは決して憲法第九條に私は禁止せられているものではないと考えます。兵器を動かすものとこれは総合して一つの戰力を構成するのであります。人それ自体戰力でないと同様、武器そのものが軸力ではない、武器と人  と総合したものが戰力であります。
  91. 吉田法晴

    吉田法晴君 これは日本国憲法、現行憲法の解釈問題でございます。木村法務総裁はその当時の司法大臣として署名を並べておりますが、総理大臣においても同様の御意見でございますのか、承わりたいと思います。
  92. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 法務総裁の意見、即ち私の意見でございます。
  93. 吉田法晴

    吉田法晴君 それではその次は事実でありますが、日本において現在兵器と申しますか、武器と申しますか、これは製造せられていると考えられるのでありますが、これは私どもそれぞれ工場を調べたわけではございませんけれども、経調特報という新聞雑誌でありますが、それにございます賠償指定設備の解除の状況、それから特需関係の労働組合の意見書等を通じて見ましても、このことは言い得るのではないかと考えるのでございますが、この事実につきましては如何ように承知をしたらいいのか伺いたい。
  94. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 従来賠償等に指定されておつたものが、今度は講和條約によりまして物的賠償は認められておりませんですから、その意味におきまして、大体今まで指定された工場施設等は解除されるということにはなつております。併し具体的にどこのものがどうなるということについてはまだここで具体的なことを持つておりませんから、適当なときに説明いたし  ます。
  95. 吉田法晴

    吉田法晴君 賠償工場自体のことを聞いておるのではないのであります。賠償工場の指定解除に関連をいたしまして、経調特報二月九日号を引いてお尋ねいたしますが、旧軍の工廠関係中相当部分、或いは航空機、兵器、工作機械、ベアリング等の生産設備の一部、これらの工廠設備中には現在軍がすでに活用中のものも多い。東京陸軍第一、第二、相模、横須賀海軍航空廠等がその例である。これらの施設中、土地、建物、機械等は国有財産である。機械、建物等の戰後の改裝、補修費は終戰処理費で賄われた。現在これらの管理施設は日本側の会社に無償貸與され、補修部品を軍給されて軍需工場として利用されている。こういう文句があり、それから特需関係労働組合の意見書、その中のこれは原文でございませんので、ちよつと残念でありますが、その中に要請事項として直接兵器工場も日本側の自主的経営とするという要求が入つておる。こういう点から考えまして、日本において現に兵器と申しますか、武器というものが製造されておると認めるべきではないか、このことについて政府としてどういう工合に認められるかという点であります。
  96. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お話のように旧工廠等の中で工作機等の製造設備等のあるものにつきましては、これを日本の企業で活用することはあります。併しそのこと自体が直ちに兵器を製造しておるというふうなお話でありますが、かようなことはございませんので、これらの個所ごとに工作機製造をして注文を受けてこれを出すことはあります。又石油工場等におきましては、将来における日本の石油精製品或いは石油化学等の関係において、これを日本が平和的にその設備を使うということの意味においてこれを使うということもあるのでありまして、一概に旧工廠の利用があるから、直ちに兵器の製造になる、こういうようなことにはなつておりません。
  97. 吉田法晴

    吉田法晴君 その点は水掛論になりますが、だんだん事態が明らかになつて参ると思いますが、争つても仕方がございませんが、先ほどの法務総裁の御意見内閣総理大臣の御意見であるという御確答を頂きましたが、この兵器を作ることが第九條の違反になるかならぬか、この点についてはこれはもう少しはつきりさしておきたいと思うのです。どの憲法の本を見ましても、この点については議論がないようであります。特にこれはその当時の政府を代表して説明されました金森国務相の説明を以てしてもこの点は明らかであります。念のために読みますけれども、「戰争目的に用いることを本質とする或る力の下及びこれを作成する必要な設備というものは戰力になろうと思つておるのであります。」この他に法学協会或いは最近佐々木惣一先生の説を見ましても、あの憲法を作りました、審議いたしました際の政府の説明としては、兵器の製作、これは戰力である、こういう答弁がはつきりなされておりますが、この点は如何でしようか。
  98. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私から御答弁いたします。戰力にならざるや否やということは、結局戰争のためにそれが使用されるかどうかということになるのであります。御承知の通り、戰争というものは国権の発動による戰争であります。そこで武器の製造それ自体が戰力かどうかということの問題でありまするが、それが戰争目的のために大きな工場施設について明らかにそれを製造するということになれば、それは金森君の言われるごとく或いは戰力の一部をなすものと言えるでありましようが、私の申しますのは、結局において戰力というのは人と武器との総合した一つの力であります。いわゆる戰争をするに有効適切な一つの力であります。それが戰力というものであつて、武器そのものを取上げて直ちにそれを以て憲法第九條の戰力とは言えない。従つて或る一つの製造工場において兵器を作るそれ自体を以て私はこれを憲法第九條の「戰力」に該当するのであつて憲法違反であるとは申せない、こういう解釈でございます。(「詭弁だ、大詭弁だ」と呼ぶ者あり)
  99. 吉田法晴

    吉田法晴君 戰争目的というこのいわゆる主観的な性格を以て戰力であるかないかという御説明、これは説明にはならんと考えます。残念でございますけれども、甚だ失礼でございますが、第九十議会の際の政府自身の御答弁をもう一度お読み返しを願いたいと思う。議論の余地はないと思います。で、問題は、その辺あれしましても、時間がございませんので先に進みたいと思うのでありますが、警察予備隊或いは海上保安隊の使用しております、これは何でございますか、武器というのか兵器というのか、どうも今の御説明でもはつきりいたしませんけれども、或いはカービン銃であるとか、機関銃であるとか、バズーカ砲であるとか、こういうものを持つておることは間違いないのでありますが、それは現在無償貸與を受けているということになつている。今後使用せられると言われる戰車でありますとか、或いはこの駆逐艦というのは、或いは防衛艦というのか知りませんが、これは今後の使います武器、兵器についても全部無償であるのか、その点一つ。  それから従来受けて参りました援助は、これは曾つてはギフトと言われた。最近では経済的債務であると、こういう工合に言われておりますが、この点について警察予備隊の、或いは海上保安隊の使用する武器の何と申しますか、無償で今後もあるのかどうか、この点についてお尋ねいたします。
  100. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今までのところは、警察予備隊等で使つておりまするものは無償で貸與されております。併しながら、例えば警察……普通の一般の国家警察等で使つておりますものの一部は国内で補修したり、或いは作つておる部分もあるのであります。要するに警察なり警察予備隊なりで使うもので、こちらで作り得るものは無論作るつもりでおりまするけれども、今のところそういう設備もありませんし、米国側で貸してくれるということでありまするから、借りておるのであります。将来のことにつきましてはどうなりますか、まだその事態がはつきりいたしません。差当りは借りておるというのが事実であります。
  101. 吉田法晴

    吉田法晴君 次に、行政協定の問題でありますが、行政協定による裁判管轄権につきまして、議論のないところだけを明らかにいたしましても、軍人、軍属の家族が駐留軍の公務と関係がなく、言い換えますと、国際慣習で認められた軍隊の治外法権以上、以外に治外法権を認められておるということ、それから基地の……基地と申しますか、政府は施設という言葉を使いますが、施設の中における日本の捜査権がないこと、この点はこれは明らかだと思います。この二つにつきまして、憲法上の主権と申しますか、統治権が及ばないという点もこれも明らかであります。そうすると、こういう憲法統治権の一部が制限せられる條約、或いは條約によつて委任せられると申しますか、首相は今日施行細則みたいなものだと言われましたが、この條約に委任されたアメリカ軍隊の配備を規律する條件、こういうものは行政協定によつて法規ができるものかどうか。私どもはそういうことはできないと思うのでありまするが、政府は臨時国会等においても憲法は條約に優先する、或いは首相自身憲法違反する條約は結びませんと、こう明言せられて来たのでありますが、或いはフランス、イタリー、ドイツ等の憲法にありますような明文がない以上、條約、而も條約の委任事項を以て定める行政協定を以て憲法の変更、修正はこれはできないと思いますが、如何に考えておられますか。この点首相にお伺いいたしたいと思います。
  102. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは安全保障條約におきまして、外国の軍隊アメリカ軍隊日本の国内に駐留させることが定められたのであります。そういたしますと、或る国の軍隊が他国に駐留する場合には、それに対しまして如何なる特権を與えるかということは、国際法及び国際慣行によつてほぼ定まつております。実際のやり方につきましては一、二違つた慣行がありますけれども、併し特権を與えるということにつきましては、国際法で定められておるところであります。それは例えばそのほかにも、外国の軍艦が日本の港に来れば、又軍艦に対する特権が與えられるのでありますが、これも別に憲法にそういうことを規定しなくとも、国際法に基いてそういう特権は與えられますので、我々の考えでは、安全保障條約で米軍を日本国内に駐屯するということをきめた以上は、その範囲内の特権というものは国際法なり国際慣行に定められた範囲内のものであれば、これは当然認めらるべきものであると思います。
  103. 和田博雄

    委員長和田博雄君) もう時間があと少ししかありませんので、そのつもりで……。
  104. 吉田法晴

    吉田法晴君 残念ながらその点は後日に譲ることにいたしまして、行政協定の二十五條二項b項によつて毎年一億五千五百万ドルを提供するということになつておりますが、これは憲法八十五條の債務負担行為であると考えますが、行政協定効力発生までに国会議決を求められるか否か、お答えを願います。
  105. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは甚だ申訳ないのでありますが、誤植でありまして、年額となるのであります。只今正誤を出しております。今年のものにつきましては、今ここで予算審議を願つておるのでありますが、年額と御訂正を願いたいと思います。これはすでに正誤を差出しております。
  106. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の問題をもう少し質疑を重ねたいのでありますが、時間がございませんので、国内問題について二、三お尋ねいたしたいと思うのでありますが、さつきちよつと荒木君から話が出ましたけれども、国立大学の学長の任命権を文部大臣に移す云々という新聞記事が見えたのでありますけれども、このことはその後非常な反響を呼んでおります。総理としてこの点について如何に考えておられますか。承わりたいと思います。
  107. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これはまだ文部大臣から相談がありませんから、私としては別段確定した意見は持つておりませんが、いずれ文部大臣から相談があるでありましよう。又文部大臣が何と考えておられますか、まだ存じません。
  108. 吉田法晴

    吉田法晴君 行政機構の改革問題につきまして、総理の抱懐しておられる目的、構想について承わります。
  109. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは主管大臣からお答えをいたします。主管大臣の構想を聞いて、然る後に内閣といたしましては方針決定をいたします。
  110. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 主管大臣の答弁をお聞きにならんでよろしうございますか。
  111. 吉田法晴

    吉田法晴君 要りません。と申しますのは、行政機構の改革について吉田首相から命ぜられた、と申しますか、指示されたと、或いは強い何と申しますか、指示がなされたということは明らかであります。所管大臣の答弁に任せられることは私の心外とするところでありますが、総理自身の御答弁を頂きたいのでありますが、時間がございませんので、次の造船問題につきまして、大型航洋船の建造助成等につきまして、如何なる構想を持つておられまするのか、承わりたい。
  112. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 運輸大臣から……
  113. 吉田法晴

    吉田法晴君 総理の簡單な御答弁を一つ頂きたい。(「これは総理施政方針演説にあるのだ」と呼ぶ者あり)
  114. 村上義一

    国務大臣(村上義一君) 私からお答え申上げます。遠洋航海の船舶につきましては、二十四年以来新船の建造なり又戰標船の改造なり、外国船の購入なりをして、今年末には大体百八十万総トンに達するのであります。併しながら今政府の持つております方針としましては、輸入物資の五〇%を日本船によつて運びたいという目標を持つておる。これにはなお相当の距離があります。二十七年度においても少くとも三十万総トンを建造したい、そうして三、四年後にはこの目標に達したい、こういう考えを持つております。
  115. 和田博雄

    委員長和田博雄君) もう時間が経過しましたから、大きな問題がありますれば一つ。
  116. 吉田法晴

    吉田法晴君 一つだけ……。
  117. 和田博雄

    委員長和田博雄君) では一つだけ。
  118. 吉田法晴

    吉田法晴君 食糧政策につきましてでありますが、政府は従来食糧事情について心配は要らんと、こう言つて来られたんでありますが、廣川農林大臣は外米の輸入懇請に出掛けなければならんということをさえも言われたのでありますが、そうしますと、二千五百五十万石の供出も事実上困難でありますし、食糧事情についても非常に不安が将来あるということを感じさせられますが、これは農林大臣でなくて総理から食糧政策についで一つ御答弁をお願いいたしたいと思います。
  119. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは主管大臣から正確なところはお聞き願いたい。(「見通しだ、見通しについて総理大臣は答えて頂きたい、見通しを一つはつきりしなさい」と呼ぶ者あり)
  120. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 安本長官から一つ簡單にお願いしたい。
  121. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 御尤もな御質問でありますが、政府は今の食糧事情は不安だから懇請に行くというのでなくして、只今の状況といたしましては、十一月一日からの持越量二千万石近くもありまするし、供出の状況も二千五百五十万石に対しましてもう九〇%を超えております。従つて二十七年度以降における食糧事情に不安はないのでありますが、従つて特に不安のためより、余計手持かできれば結構だということの考え方でございます。
  122. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 午前の会議はこれで終りまして暫時休憩いたします。午後は一時二十五分から始めます。    午後零時二十五分休憩    —————・—————    午後一時三十五分開会
  123. 和田博雄

    委員長和田博雄君) これより予算委員会を再開いたします。  この際、理事補欠互選の件についてお諮りいたします。互選は前例によりまして、成規の手続を省略して委員長において指名することに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 御異議ないものと認めます。それでは私より堀木鎌三君を理事に指名いたします。
  125. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 午前に引続きまして、内閣総理大臣に対する質疑を続行いたします。岡本愛祐君。
  126. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 私は緑風会の一員といたしまして、総理大臣に対し、平和回復に伴う経費に関連しまして、若干の質問をいたしたいと存じます。先ず第一に、総理大臣は午前、内村君の質問に対しまして、現下我が国の国内の治安状況についての御答弁がありました。半年ほど前には総理大臣は、我が国の治安状況はそれほど心配する必要がないということを明言されておりました。先ほどの御答弁によりますと、その半年ほど前の総理大臣の認識が大分只今ては深まつて来たように思います。それで相当この只今行われております集団的、又計画的なこの暴力事犯につきまして、御心配になつているようであります。それで総理大臣は、現在の国家地方警察並びに自治体警察と、現在の警察予備隊と、その力を以てしてはこれに対処できないほどに、今我が国の治安状況が心配である。そういうふうに考えておられるのかどうか、これを裏返して見ますると、現在の集団的、又計画的な暴力事犯が今後漸次深刻化して参りまして、警察予備隊を防衛隊に切替える必要がある。而もその人員を増置する必要がある。そうしなければ対処ができない、こういうふうにお考えになつておるのかどうか、又そうでなくて、現在の警察並びに警察予備隊で以てそんなものは対処できるのであるけれども、日米安全保障條約の結果として、自衛力漸増のために、こういう措置をせられるのであるか、それを先ず伺いたいと存じます。なぜこういう質問をするかと言いますと、総理大臣のお考え方によりまして、我が国の国民の防衛に対する心がまえが直接に影響されるのであります。又従つて防衛費に対する国民考え方がきまつて来る、こういう意味でお尋ねするのでありますから、御親切に御答弁をお願いいたします。
  127. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えを申上げます。現在の状態が特にというわけではありませんが、国内の治安状況は、結局国外の各種の状況によつて自然影響を受けるであろうとも考えられます。そこで国外の事情はどうかと申すというと、或いは第三次世界戰争の空気が緩和されたと言い、緩和されないと言うが、いずれにしても、国外において共産主義勢力の拍動については、各国共に決しておろそかにできないという空気のあることは、これはたしかであろうと思います。又国連における、或いはヨーロツパ等における防衛問題等にもめぐつてみて、かなり苛烈な争いが生じている。或いは又論争が闘わされているということも最近のことであります。又そうでありますか、どうでありますか知りませんけれども、各種のいろいろなデモが、三・一事件でありまするとか、或いは朝鮮の記念日等を期日としていろいろなデモが起り、或いは又その他の期日を目標として或る運動が、デモが計画されているというような、これは噂でありましようが、噂と共に事実デモが起つており、これを又各地において多少の騒擾が行われたことが事実あります。故に国としては、政府としては治安に対して万全の策を講じなければならないので、警察予備隊の強化も考えております。併しこれは国力或いは財力と言いますか、それらの方面からも考えなければならず、又最近のように、或いは警察力が軍備なりと言い、或いは警察隊が軍備であるとか、予備隊が軍備であるとか、或いは徴兵制度を布きもしないのに、これに対して反対の運動が……学生が反対の運動をなすとか、いろいろな動きがありまして、これなども政府当局としては考えに入れなければならんのであります。いずれにしましても、治安の問題は、日本国民の国力を以て、国民みずからの力を以て守るという原則は、この点においては国民がその注意を集中しなければならんと思いますが、この点に対して多少近来遅緩しているような、或いは神経が萎ましておるような嫌いもないとも言えないと思うのであります。国内の状況は決して今の状態は治安のほうから言つてみて安心ができる状態とは考えないのであります。いずれにしても治安維持のためにすべての力を盡し、すべての施設を生かして、そうして万々遺漏なきことを期したいと政府考えております。何せ安全保障條約の結果ではないのであつて、先ず日本国の治安は日本国の手によつて一応、或いは日本政府の手によつて一応確保することにいたしたいと思つて、その万全の策を講じております。
  128. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 重ねてお尋ねいたしますが、このたび二十七年度におきまして、警察予備隊を防衛隊に切替え、而も三万五千人増員をする、それは国内治安のためそれをするのだ、こういう御意味でありますか。又それと同時に、海外よりする侵略に対する防衛のためにせられるのでありますか、どちらでありますか、伺いたい。
  129. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 警察予備隊は今年の十月を以て一応の期限満了と言いますか、募集した当時の期限から申すと、今年の十月を以て一応完了するわけであります。従つて警察予備隊とせずして、何かの形でこれを防衛隊と言いますか、治安隊と言いますか、いずれにしても何かの形で以て治安を維持するだけの力を持つておらなければならないのであります。いずれこの名前等については将来決定いたしますが、いずれにしても、これは全く治安維持、確保の目的のために防衛隊なり、治安隊なりを将来組織するつもりであります。
  130. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 只今総理大臣の答弁によりますと、警察予備隊を防衛隊又は保安隊に切替えることの目的は国内治安の維持のためである、海外よりする侵略の防衛という意味ではない、こういうふうにとれるのでありますが、果してそうでありますか、もう一度お尋ねをいたします。なお併せて海上保安隊を六千六十一人ですか、増加する計画になつております。この海上保安隊の増員は、従来通り海上における密入国や密出国をするものの取締り、密輸出入をするものに対する取締り、その警備のためであるかどうか、又そうでなく、海外よりする侵略を防衛するために増員をされるのであるか、それについて併せてお尋ねいたします。
  131. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今海外の侵略ということを、直接にこういう事実がある、ああいう事実があるということは確かでありませんが、併しながら国外の事情は必ずしも安易な考えを許さないということもありますが、併し目的は海上保安隊にしても、その他におきます新設部隊にしましても、これは一に国内の治安を主たる目的としているのであります。
  132. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 そういたしますと、新聞で報道いたしており、又私が地方行政委員会におきまして、大橋国務大臣に確めたのでありますが、政府の計画によりますと、海上保安隊の六千人の増員分を以て従来の運輸省の外局になつている海上保安庁のほかに、更に海上警備隊というべきものを作つて、そうして取締りに当る、警備に当るというふうな計画もあるやに聞くのであります。そういたしますと、海上の警備というものが自治体警察による海上の警備、それから運輸省の海上保安庁による従来通りの海上の警備、従来通りというのは密輸出入なんかに対する取締りであります。それの上に更に陸上における保安隊に当る予備隊と言いますか、万一の場合における海上警備隊というものができまして、三重組織になるのであります。これは甚だおかしいのでありまして、只今総理大臣が御答弁下さいましたのによると、この六千人の増員はやはり主として従来通りの海上保安庁の警備力の増加だ、こういうふうに承わるのでありますが、その点が甚だ矛盾して来るように思うのであります。そのことをお尋ねいたしておきます。
  133. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 所管大臣からお答えをいたさせます。
  134. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 今回警察……この海上保安庁におきまする増員の分につきましては、現在の海上保安庁の持つておりまする警備力を増強するという趣旨でいたすわけでございます。而してこの増強いたしまする部分につきましては、これに必要なる船舶は合衆国から借り受けるような運びになりつつあるわけでございますし、又船に備えておりまする武器でありますとか、こういう点につきましても、在来の船舶とは多少その性能、構造等が違つておりまして、従いましてこれはそういう実際上の区別から申しまして、理論上は同じく警備に当るものではございまするが、船舶の性質、従いましてこれに要する要員の訓練等におきましても、多少従来の船舶の乗組員とはその訓練を別にすることが適当である。こういうふうに考えるわけでございます。かような事情から、同じ海上における警備力ではありまするが、従来の警備力と、このたび新たに増強されまする部分とは別途に管理することが適当である。こう判断いたしまして、これを以ちまして海上警備像というような新らしい一つの組織を考えておるわけでございまして、先ほど総理から申上げましたる事柄と、先般私が地方行政委員会においてお答え申上げました点とは、多少言葉においては違つた点があるかも知れませんが、只今申上げましたような趣旨でございまして、どちらも警備力である点は同じである。ただ船の性質、従つて又乘組員等の訓練その他の都合上、別個の機構としてこれを作ることがよろしい。こう考えておるわけでございます。
  135. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 そういたしますと、海上警備隊になる新たに新設される部隊は、どうも国内の治安のためというのでなくて、やはり外敵侵入に備えるというような色彩が濃厚になりはしないかと考えられるのであります。併し時間がないから、又別の機会にその点大橋国務大臣にお質しするごとにしまして、次の問題に進めて参ります。  一体自衛力の漸増という問題は、国内治安維持の力を漸増するという意味であるかどうか甚だ疑わしいのであります。自衛力という言葉自身が実は国内の治安の維持のためでなくて、やはり外敵の侵入に対してみずから国を守るという言葉であろうと思います。併し今言葉争いをしておつても仕方がありませんが、ともかく政府の言われる自衛力に国内治安の維持を含めて考えて見ましても、その自衛力には、戰力でない、政府が言われる現在の警察予備隊のごとき戰力でない自衛の力もあります。併しその力は弱いのでありまして、自衛力と言つてもやはり戰力でなければ力が弱いのであります。自衛力には戰力でない力と戰力と二つあると思うのであります。そうしてこの自衛力を漸増して行きますと、だんだんその自衛力は戰力に近付くんじやないかと思うのであります。例を引きますと、スポーツで申しますと、テニスで軟式庭球と硬式庭球がありまして、硬式庭球というのは世界中に通用いたしまして世界の各地に我が国の選手が行つて堂々と試合をやり得るものであります。これが戰力であります。ところが軟式庭球というのは、国内だけのもので、軟らかい球を用いて、そうしてテニスをやる、外国じや通用いたしません。警察予備隊はこの軟式庭球だと、こういうふうに我々は思つおります。ところがそろそろこれが保安隊になり、そうして海上警備隊なるものもでき、そうしてこの大砲を持つというようなことになつて来ると、硬い球を持つて来るということになるのであります。硬い球を軟式庭球で使つてつて、これは軟式庭球だ、硬式庭球じやないということは、どうしても私は言われなくなると思う。それと同じように、自衛力を漸増して行けば、必らずや私は戰力になつて来る、こういうふうに思います。そこで戰力になつてしまえば、もう憲法違反であることは、これは私が言うまでもありません。だから私は政府に申上げるのでありますが、戰力になるに先立つて国民の総意に聞いて、戰力を持つていいかどうか、戰力を持つこうこうこういう必要があるんだが、戰力を持とうじやないかということを国民の総意に聞いて自衛のための戰力を持たなければならん、こういうふうに思うのであります。政府はそういうふうになぜ考えられないのか、それを私は総理大臣にお伺いいたしたいと思います。
  136. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は戰力を持つていけないと言つておるのではない、再軍備はしない、再軍備は何のためにしないかと言いますと、憲法に禁じてありますことは、国際紛争の具に供しない、戰力を以て国際紛争の手段にしないということを禁じておるのであります。自衛手段の戰力を禁じておるわけではない、が、日本としては、今、今日考えておることは、一に国家防衛、日本の安全、独立を防衛するための自衛力を養うのであつて、これが私は直ちに再軍備とは考えないのであります。故に再軍備はいたさない、併し再軍備をいたす場合がありとするならば、あなたのおつしやるように国民の総意を問うべきものであり、又憲法を改正するに至るでありましようが、今日はそのつもりはない。單に日本の安全独立を保護する、又みずからの力を以て保護する、又みずからの力を以て保護ができないから、安全保障條約を以て集団的攻撃に備えるというのが、政府考えておるところであります。
  137. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 只今の御答弁非常に重大だと思います。なぜならば、憲法第九條は自衛のため戰力を持つことは禁じてないというふうにとれる御答弁でありました。私は自衛のためにするのであつても、戰力を持つためには国民の総意に聞かなければいけない。それは九條に多少の疑義はありますけれども、一般の憲法学者がもうすでに自衛力のための戰力を持つには憲法を改正しなきやいかん、九條を改正しなきやいかんということを言つておるのでありまして、この点につきまして、もう一応総理大臣のお答えをお願いいたします。
  138. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は国の独立、安全を保護するために持つ力については、あえて国民の総意に問うということは必要はないと思います。これは憲法が禁じておらないところであります。
  139. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 これはもう、甚だ重大なお答えであります。自衛力のために戰力を、自衛のための戰力を持つことは九條で禁止してない、こういうお答えであります。果してそうであるとすれば、私は一般の憲法学者の説にも違つておると思う。一部にはそういう説をなす人があることは私も知つております。その一部の説を総理大臣はとつておられる。こういうふうに私は了承せざるを得ないのであります。この点はもつともつと突込んでお聞きをしなければならないのでありますが、先を急ぎますから、その総理大臣の、私から言えば驚くべき御解釈を承わつておくことにしまして、次に進みたいと思います。  米国軍が我が国に駐留するのは暫定的の措置であります。米軍は永久に日本にとどまつてもらうことは米国側も困るのでありまして、日米安全保障條約の前文にも、米国側は、我が国が成るべく速かに直接及び間接の侵略に対する強固な自衛力を漸増的に確立をして、アメリカ側が速かに撤退し得るように期待をしておる、こういうふうに書いてあるのでありまして、我が国は自衛力の回復を待ち、国民に増税をしないで、自衛力を成るべく速かに強固にして行く、つまり戰力を持つようにしなければならないと私は思うのであります。それで総理大臣もそういうふうにお考えになつておるようであります。違うところは、私どもは憲法の改正をしなければならんと思うのと、総理大臣は憲法の改正をする必要はない、こういうふうにお思いになつておることの差がそこに出て来るのであります。その差が大きいのでありますが、ともかくそうなつて来ますと、それが完成いたしますれば、保障條約の第四條によりまして、将来集団安全保障方式による国連軍が集団防衛をやるということになつて来ますれば、このときにアメリカ軍は日本から退つて行く、こういうふうになります。そのときには我が国も集団防衛の責めに当らなければならない。そうすれば、その自衛の戰力も、やはり他の国が危險に瀕すればそこで助けに行かなければならんということになるのは当然でありますが、それは総理大臣もそういうふうにお考えになりますか、どうか。この点お伺いいたします。
  140. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ちよつと御質問の要点が聞き取れなかつたのでありますが、集団保障條約ができた場合には、日本軍隊が海外に出動することがあるかという御質問でございますか。
  141. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 そういうわけです。
  142. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) それは今日のところ全然考えておりません。
  143. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 自衛力を確立するには飛行機をやはり使う必要があるのじやないかと、こういうふうに思うのです。それは飛行機によつて哨戒をいたしますれば、海の上を飛びますれば、密入国を企てたり、又我が国にやつて来るものもよくわかるのでありますから、海上警備隊なるものができれば飛行機もやはり使つて差支えないのじやないかというふうに思うのでありますが、それはどういうふうにお考えになつておりますか。
  144. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 只今のところ航空機につきましては、まだ政府といたしましては計画として申上げるようなところまで参つておりません。近く海上保安庁におきましては、現在の業務をやりまするために、偵察或いは何と申しますか、海上の状態を観測いたしまするための、それから通信用の小型の飛行機を買うというような計画をいたしております。併し警察予備隊といたしましては、飛行機はまだ計画をいたしておりません。勿論現在の状況におきましても、警察予備隊の任務を十分にいたしまするためには、小型の連絡用の航空機等がありますると非常に都合のいい場合もありまするが、いろいろ差迫つた施設の必要がございますので、そこまで只今は計画をいたしておりません。このほかに特に攻撃防禦を目的といたしましたこの警察予備隊のような実力を持つ航空機を政府で以て部隊として持つということにつきましては、只今何ら考えていないわけであります。
  145. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 次に行政協定につきまして一、二点お伺いいたしたいと思います。それは先ず二十七條の二項に、「この協定の各当事者は、この協定の規定中その実施のため予算上及び立法上の措置を必要とするものについて、必要なその措置を立法機関に求めることを約束する。」、こういうふうに書いてあります。これは恐らく総理大臣が特別委員会、両條約の審議のための特別委員会におきまして言明されましたところによりますと、予算上及び立法上の措置、即ち国会承認をするのでなければ、その部分に関する行政協定の効力は発生しない、その点だけは国会がこれを否決したり、何かしたりすることがあるとすれば、その点は無効であると、こういうことを意味するものと、この二十七條の二項は解されますが、その点はどうですか。
  146. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ちよつと遠くて聞えませんでしたが、約束、協定された立法或いは予算措置が講ぜられない場合にはどうするかという御質問ですか。
  147. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 もう一度申します。つまり予算上又は法律上の措置が必要なものについても行政協定で約束をしておつて、而も約束しても、その予算並びに法律を作るには国会承認を要しますから、その承認を得るまではその部分は効力を発生しない、こういうことにこの二十七條は言つておるのじやないか、その意味と思うがどうですか、こういうことです。
  148. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは政府の責任において協定いたしたのでありますが、併し政府の責任において協定された事項は国会の協賛を得る、得ることが困難であるようなことは協定をいたしたつもりはないのであります。協賛を得るであろうという予想の下に、又得うるという考えの下に協定いたしたのであつて国会において協賛を得ることができないような無理な條項は含まれておらないのであります。又含めない考えを持つて協定いたしたわけであります。
  149. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 その点はそうでないと思うのでありまして、この行政協定ができ上りました結果、やはりそれに俘なつて立法をする必要がある事項が出て来るのじやないかと思うのです。それは出て来ませんか。岡崎国務大臣お答え願います。
  150. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 出て来ると思います。併し今総理の言われたように、合理的な協定を作つたつもりでありますから、国会承認を得るような法律案しか必要はない、こう考えておりますが、まあ仮定の問題として御質問の点をお答えしますと、行政協定自身が両政府間の約束でありますから、行政協定としては効力を発生いたしますが、若し万一、これは仮定の問題でありますが、例えば必要な立法措置が国内的に講ぜられなかつたという場合には、その当該事項だけについて実施ができない、こういうことになります。
  151. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 次にお伺いいたしますが、行政協定の第二十四條におきまして、日本区域において敵対行為の脅威が生じた場合には、日米両国政府が協議するということを規定しております。これはわかりますが、然らば日本区域以外、又は朝鮮以外と言つてもよろしうございます。朝鮮以外に駐留の米国軍が爆撃に出撃をするというような必要が生じた場合にも、アメリカ政府は当然我が国の政府に協議すべきものと思いますが、如何なる取極になつておりますか、行政協定ではそれが現われておりません。
  152. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この「日本区域」というのは、前から安全保障條約にも使つてありますが、非常に正確に現わせない言葉であります。日本領土という意味でもないのでありますが、要するに日本方面ということになると思います。そこで御質問の点はどういうことを意味しておられるのか、例えば沖縄にある米軍のようなことを考えておられるのか、或いはグアムとかフイリピン等に駐屯しておる米軍のことを考えておるのか、よくわかりませんけれども、日本政府アメリカ政府との問では、例えば極東の平和を乱すような事態が起りましたときは、いずれ必ず緊密なる連絡の下に協議をするということにはなつております。
  153. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 私の申します意味は、今日ラジオで放送いたしておりましたが、アメリカにおきましても日本に駐留する部隊又は朝鮮におりますアメリカ軍部隊が、満州並びに支那本土を爆撃するというようなことは、もうやらない、一時そういう気があつたけれどもやらないということを再確認をしたというようなことを放送しておりました。併し万一そうでなくて、前に憂えられておりましたごとく不幸にして朝鮮の会談がうまく行かないというようなときに、アメリカ側で、日本に基地を持つておりますアメリカ軍が、満州その他支那本土を爆撃するというようなことが起つて来ます。そうすると日本におるアメリカ軍が行けば、日本は戰争に巻き込まれる危險が非常に多くなる。それでそういうのを無断でやられては堪まらないのでありますから、満州を日本に駐留するアメリカ軍が爆撃をするというような前には、日本とよく相談をして、そうして日本はそれは困る、アメリカにやつてもらつちや困る、それじや第三次世界大戰が勃発するじやないか、それはやめてもらいたいというようなことを言い得る、独立国ですからそういうことは言い得ると思うのです。そういう機会があるかどうか、無断で満州へ或いは日本に駐留しているアメリカ軍が飛び出して行つて爆撃するようなことがないか、その打合せはどうなつておるか、これをお尋ねいたします。
  154. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) そういう場合は必ず日本政府アメリカ政府との間に協議をいたすことになつております。
  155. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 時間がもうなくなりましたから、簡單に総理大臣からこれはお答えを願いたいのでありますが、平和條約による賠償、それから外債の返済、援助資金の返還、これは勿論のこと我が国の存立可能な経済の範囲内において、即ち日本人の生活水準を引下げない範囲内においてやるということに條約にも明記してある。ところが、フイリピンのほうでそうでなくて、うんとそれをよこせというようなことを言つておるのでありますが、総理大臣は飽くまでこれらの賠償又は支拂を、日本の国家の存立可能な経済の範囲内にとどめる御決心があるかどうか、それを伺いたい。  又もう一つ、自衛力の漸増計画でありますが、二十七年度はその第一歩でありましようが、これから大体漸増して行かなきやならんのでありますが、その自衛力の漸増も今申した生活水準を引下げない範囲内においてやる御決心があるかどうか、それを伺いたい。
  156. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) フイリピンの賠償の問題は、只今両国政府の間に誠意を盡して協定をいたしておりますが、併し原則は平和條約に規定してある通りであります。この原則に基いて政府としては協定を遂げたいと、こう考えております。
  157. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 その後のほうの自衛力の漸増も同様に国家の存立可能な経済の範囲内においておやりになるかどうか、その点をお尋ねいたします。
  158. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えを漏らしましたが、お話通りであります。
  159. 楠見義男

    ○楠見義男君 私は、私としてのいろいろ質問を申上げたいことがあるのでありますが、岡本議員から質疑せられました事柄のうちで、重要な二つの点について、先ず私の質問を申上げる前に、更に確かめておきたいと思います。ので、そのほうを先にお尋ねします。一つは、憲法九條の戰力の問題でありますが、先ほど来の質疑応答を承わつておりますと、総理大臣のお考えは自衛のための戰力であるならば、如何にそれが大きな戰力であつても、これは憲法九條のいわゆる戰力でない、こういうふうにお考えになつておると了承していいかどうか、この点が第一点であります。  それから第二の点は、行政協定の二十七條における必要な予算上及び立法上の措置についての問題でありますが、先般来両條約の特別委員会で私どもがあの條約に賛成いたしました理由は、あの三條において実は無制限の……総理大臣は、これは実施細則であるから大したことはないというようなことを言つておられましたけれども、規定の建前から申しますと、無制限に政府に権限を委讓するようになり、そういう場合に若しかすると、これは憲法違反というようなことが行われたり、或いはそれに近いような事柄がきめられると困る。そういう場合に、政府はそれは必要な予算であり、又法律を必要とすれば、これは国会承認を得る手続をとるのだ、厳格な意味批准條項ではありませんけれども、それに近いようなことをやるのだというような御答弁があつたと、私は記憶いたしております。私のみならず緑風会の他の議員諸君も同様に理解をいたしておりました。そこで先ほど来の質疑が行われたわけでありますが、岡崎国務大臣の御答弁によりますと、若し仮にその必要な予算或いは法律案が国会承認を得ない場合には、それに関係した部分は効力を生じないことになる、こういうような御答弁でありましたが、その場合に然らばそれに代る別の行政協定が新たに結ばれなければならぬと思うのでありますが、そういうふうに理解していいかどうか。以上の二点について先ずお伺いいたします。
  160. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の先ほど申した意見は、憲法に禁じてあるのは、国際紛争解決の手段としての戰力を禁じてあるが故に、自衛に対する考えは又別であるということを申しただけの話であつて、如何に莫大な自衛といえども、これはやるべきだと申したわけではないのであります。今日は自衛といえどもできないから、国力がこれを許さないから、安全保障條約でこれをきめている、こういう趣旨で、如何に金がかかつても自衛力だからやるとまで私は申していないのであります。  第二の点については、岡崎国務大臣よりお答えいたします。
  161. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今の御質問は、先ほど申した通り仮定の問題ではありますけれども、私は効力を発生しないと申したのではなくて、当該部分に関する條項が実施されない、協定が効力を発生すれば、その部分だけは実施ができない、こういうわけであります。そういう場合にどうするかというお話でありますが、それはそのときの国会審議の状況によりまして国会承認するようなものに変えるよりいたし方がない、こう考えております。
  162. 楠見義男

    ○楠見義男君 この問題は更に又別の機会にお伺いいたしますが、私は私として以下質問をいたしたいと思います。この昭和二十七年度の一般会計予算における内容的の審議は別の機会に譲ることにいたしまして、時間の関係もありますので、私は主としてこの予算の施行に関連し、且つその施行に伴う今後の見通しについて若干お伺いいたしたいと思うのであります。  第一は、一般会計歳出予算と平和回復に伴う支出額との関係についてお伺いいたしたいのでありますが、いわゆる平和回復に伴う経費は、防衛支出金、警察予備隊費、海上保安庁関係の経費、安全保障諸費、それから連合国財産補償費、平和回復善後処理費、合計二千三十三億で、一般会計歳出予算総額八千五百二十七億の約四分の一に相当するわけでありますが、これらの諸経費はいずれもそれぞれの意義と重要性を持つておるといたしましても、ひとしく申上げるまでもなく再生産を伴わない非生産的な経費でありますから、我が国の今後の国民経済の伸張なり、或いは又国民生活安定への歩みとはおよそ縁の遠い経費であることは申すまでもないところであります。政府予算編成の基本方針におきましても、これは大蔵省でお作りになつた「昭和二十七年度予算の説明」でありますが、「今後の経済運営における課題は、国民生活の向上を終局の目的としつつ、国際的関係から生ずる諸問題、経済の充実発展のための要求および民生の安定という見地からの要請を如何に按配するかにあると思われる。また、財政金融政策としては、国民経済の正常にして能率的な機能をできる限り生かしつつ、必要な限度において、これに調整を加えて行かねばならぬ。」という考え方に基いて編成しておると言われておるのでありますが、この予算の施行に伴う今後の見通しにおきまして、政府は以下申上げまする諸点についてどのような考えを持つておるかということをお伺いしたいのであります。  第一に、総額としての二千三十三億の平和回復に伴う経費は、二十八年度、明後年度以降増加するのか、減少するのか、その見通しの問題であります。平和回復諸費の中で、狭義の安全保障と申しますか、治安関係の費用は、防衛分担金の六百五十億、警察予備隊費の五百四十億、海上保安庁関係費の七十三億、安全保障諸費の五百六十億、合計千八百二十三億円でありますが、これに見合う昭和二十六年度予算は終戰処理費九百二十億、警察予備隊の経費は三百十億、海上保安庁が三十五億、合計千二百六十五億でありますから、明年度は、前年度即ち本年度に比して約五百五十八億の増加となつております。このような増加が二十八年度以降にも続けられるのかどうかという問題であります。仮に若しそうだとすれば、我々は、氷山の一角がここに現われておつて、水面の下はどうなるかということについて十分な検討を加えませんければ、明年度の予算についてぱ必要な審議を盡されたとは言えないと思うのであります。そこで将来の財政との関係においてどういうような割合乃至関連においてこの問題が考えられるのかという今後の見通しについては、私どもは是非明らかにしておかなければならんと思うのであります。即ち、防衛分担金の六百五十億は、今回の日米安全保障條約に伴う行政協定第二十五條によりまして、一応固定的なものとなつております。これは御承知の通りであります。又安全保障諸費の五百六十億につきましては、その内容審議は別の機会に譲るといたしましても、現在までの政府の説明に徴しますれば、一応明年度限りの臨時的な経費乃至予備的な経費と解せられるのでありますから、警察予備隊及び海上保安庁関係において、明年度以降後年度に亘り大きな変革を伴わない限りは、治安関係の費用、先ほど申上げた千八百二十三億は、昭和二十八年度以降は減少すべきものであると考えるのが当然と思うのでありますが、政府はどのような見通しを持つておられるか。時間の関係もありますので続けて申上げますが、このことは一方におきましては、先ほど朗読いたしましたように、独立後の予算としての、その予算編成基本方針において、国民生活の安定という大きな問題があります。他方におきましては、これも申上げるまでもないことでありますが、日米安全保障條約に伴つて、自衛力の漸増という我が国に課せられた責任達成の問題があります。この二つの枠内で、政府はどのような方向に進まれんとするのであるか、この点をお伺いいたしたいのであります。自衛力の増加に伴う経費の増加は、明年度治安関係費の総額の範囲内において行うことになるのか、或いはその額を超えて、それだけ一般内政費に対する相対的な圧迫の下においてなされるのであるか、或いは又そういう場合に増税という問題が起るのではないか、これらの点について明年度は、実はこれはその事柄のよし惡しは別にいたしまして、昭和二十六年度におけるインベントリー・フアイナンスから減額された五百八十七億の、これは財源と申しましようか、そういうような見返的なものがありましたからいいのでありますが、明年度以降はそういうふうなことは絶対できないのであります。従つて、一般歳出予算平和関係諸費との釣合いと申しますか、均衡、割合、どういう方向においてなされるのか、この点をお伺いいたしたいのであります。
  163. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 周東長官からお答えいたします。
  164. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お答えをいたしますが、御質問の第一点でありまする、今年の平和関係諸費、防衛費その他の千八百余億円でありますが、これが国民生活を圧迫しないかという第一点のお尋ねでありますが、これについては成るほど或る程度殖えておりますが、併しその中には軍人遺家族等に対する援護費等も含んでいるのであります。大体全財政の一七%くらいであります。別途内政費等につきましても、些少ながら増加をいたしておりまするし、税金のほうの減税につきましてもなお継続して参りまして、これらの程度では大体国民生活に対する圧迫も余りない、かように考えております。  第二点において、これらの経費が来年度は更に増加するのではあるまいか、それによつて増税がないかというお尋ねでありますが、只今のところ御指摘のように、これらの関係諸費の中にはお話通り施設費等の今回限りだけの経費も入つております。そういう点から相当落ちるものもあります。一面自衛費漸増等の関係がありますので、かれこれその程度よりも増加いたさないつもりであります。従つて、今日のところ増税ということは来年度において起るということは考えておりません。
  165. 楠見義男

    ○楠見義男君 今の問題について、もう少し掘下げてお伺いをいたします。私質問いたしましたのは、例えば警察予備隊の増強にいたしましても、海上保安庁の増強にいたしましても、はつきりとした実はめどを示されておらないのであります。そこで自衛費の漸増というようなことを極限まで考えて参りますと、その極限は現在アメリカが負担してくれているその全体の防衛力まで行かなければならないのかという問題が当然出て来るわけであります。政府は明年度の予算において、内政費は前年度に比較して殖えておると、こういうふうに言つておられますが、勿論内容的に見ますと、この問題についてはいろいろ議論があろうと思います。ものによりましては公共事業費で事業分量も殖えておるものもありましようし、又一般物価趨勢等から見れば必ずしもそういうふうに言えないものもあろうと思います。そこで問題は先ほども申上げたように、将来のめどが明らかにされておらない。而も極端に言えば、現在のアメリカが負担してくれておる部分までの極限を考えて参りますと、将来の見通しはどうなるであろうか、それだけ国民経済が伸長し、国民所得が殖えればこれは別であります。併し一方では貿易の停滯その他から見ましても、決して将来は楽観を許さない。こういう場合において、その計画が明らかにせられないとすれば、これは結局増税になるのか、或いは内政費に対する総体的な圧迫になるのか、こういうことが必至ではないかということを国民はひとしく憂えておるのであります。従つてその関係で、一般の予算と、そしてこの治安関係予算とが将来どういうふうに向つて行くかということは、もう少し具体的にお示し願わなければならんと思うのであります。重ねてこの点をお伺いいたします。
  166. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 御尤もなお尋ねでありますが、先ほど申上げまししたように、自衛力の漸増といたしましても、これはやはり日本国民生活を圧迫しない程度において漸増して行かなければならんのでありまして、これは先ほど総理からの御答弁の通りであります。従つて只今海上保安隊或いは警察予備隊等の情勢といたしましては、漸増して行くことがいいと思つておりますが、今日来年度における国民所得或いは全体の財政の問題もありまするので、今どれほどまで、来年度と言いますか、二十八年度に増加するかということは、只今申上げることはできないのでありますが、併し飽くまでも私どもの考えますのは、さつき御指摘のように今年の中には一時的の本年度限りの経費が相当あります。そういうものと見合いつつ、私は本年度立てられた財政計画のうちに占むる平和関係処理費、それに対して分担費等の範囲において、将来やはり考えて行かれるものと考えておりますので、そう大きな増額はなくて済むのじやないか、又そういたしたいと、かように考えております。
  167. 楠見義男

    ○楠見義男君 只今の御答弁は甚だ不満足であります。将来に亘る財政計画の中に占める大きな要素としての、先ほど来申上げている問題については、もう少し確たる見通しなり御計画があつて然るべきだつたと思いますが、この問題は更に別の機会に譲ることにいたしたいと思います。  次は同じく平和回復処理費に関連しての問題でありますが、これも或いは総理が御答弁できなければ安本長官で結構です。明年度予算における連合国財産補償費、それから平和回復善後処理費は合計二百十億であります。正確に申しますと必ずしも対照はできんかと思いますが、この二百十億に見合う二十六年度予算における賠償施設処理費、特殊財産処理費、解除物件処理費……平和回復善後処理費は合計百十億であります。明年度は従つて約百億の増加となつております。而もこれらの経費は、連合国財産補償費は法律によつて年度割になつているような関係からいたしまして、増加しないといたしましても、賠償及び対日援助費の返済その他の外債処理に関する経費が、今後は増加することは必至だと見込まれるわけでありますが、これに関連して先ず第一に、これらの経費は、先ほどの治安関係費をも含めて我が国経済の存立可能の限度及び一般生活水準を低下せしめないという枠の中で今後の増加の最高限度……即ちもう一度申しますと、国民経済の存立可能の限度及び国民生活水準を低下せしめないという枠内において、今後の増加最高限度をどのように抑えられているか。これは例えば賠償問題についてフイリピン、インドネシアその他それぞれの国からの要求があることは御承知の通りでありますが、私どもの承知いたしているところによりますと、それらのすべての賠償要求国の要求総額が出揃わなければ、具体的に賠償額の決定はなかなか困難である、こういうふうに政府は言つておられます。従つて賠償の問題は、これは予算等でありますけれども、極めてむずかしいと同時に、一方では非常にこの問題は長引くのではないかというような見方があると同時に、政府吉田総理もかねて言つておられますように誠意を持つてこの問題の解決に当りたい、こういうことを言つておられます。若しそうだとするならば、全体の賠償要求総額が出揃つたときに、これが我が国としては存立可能な限度内においてどの程度を以て最高限度としてできるか、受入れられるものかということでなければ、この賠償問題はいつまでたつても解決しない問題だと思うのです。そこで第一の問題は、今申上げたような、そういうような経費の増加の最高限度をどのように見積つておられるか、これが第一点であります。  それから第二点は、いわゆる対日援助費の返済の問題であります。ガリオア資金とか或いはイロア資金による対日援助費の返済がどのような規模で行われるかということはこれは極めて重要な問題であります。これらの援助費の総額は約二十億ドルだと言われておりますが、そのうちどれだけかは存じませんけれども、政府はこの経費は、援助費は進んで返済すべきものであるということを表明せられております。ところが曾つては終戰処理費が対日援助費に見合うのか、或いは対日援助費が終戰処理費に見合うのかは存じませんが、とにかく両者が見合つた形で政府から説明されたことが再々あります。従つて一部ではこれらの経費についてはヨーロツパにおけるドイツなり、或いはイタリアの実際の例に徹しても、少くとも一部は返済しなくてもいいんじやないかと、こういうような考え方があつたくらいであります。このことの希望なり、或いは当否は別にしまして、いずれにいたしましても政府はこの援助資金は返済するということを言つておられるのでありますが、これをどういう規模で今後返済されようとするのか。この点をお伺いいたしたいのであります。
  168. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お答えいたします。第一のお尋ねでありますが、この点につきましては只今のところ六一体平和関係処理費、防衛分担費等合せまして本年千八百二十億、その前後の範囲を理想として今後も進めて行きたいと思います。今後所得等が増加いたしまして、変りますれば別でありまするが、今日のところこれが一つの目標として、今後進めて行きたいと思います。  第二の点でありますが、対日援助資金の返済の規模計画はどうかというお尋ねであります。御尤もなお尋ねでありますが、これらにつきましてはまだ向うとよく折衝をいたしておりません。政府としては返すべきものと思つておりますが、併し今後の折衝によつて返済方法なり、返済の額というものがきまることであります。恐らくいろいろな例を見ましても、そう日本の経済状態から見て苛酷な返済の形にならないと考えております。只今のところまだわかつておりません。
  169. 楠見義男

    ○楠見義男君 私のお伺いいたしたのは、将来における日本国民経済の伸び方なり或いは又国の財政規模等の関連において、こういうようないわゆる再生産を伴わない経費、勿論これは、併しながら一方では当然得なければならん経費でありますが、それとの割合をどういうふうに見ておるのか、もう一度申しますと、経済存立可能の限度をどの程度に見ておるのか、これは安本長官としては当然お持ちになつている考え方と思いますから、その点を伺いたいと思います。
  170. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お尋ねの点に対しましては、先ほども申しましたように、今年度の財政計画中に占めるところの額が大体一七%程度になると思つております。これは先ほどお示しの中には、軍事援護費等の内政費というものも大分入つております。それらを除きまして真の防衛分担金或いは平和関係処理費というような特別な関係を合せまして、大体一七%程度であります。この程度でありまするならば、現在の状態においては国民生活に対するひどい圧迫にならず、存立可能の程度と、かように考えております。
  171. 楠見義男

    ○楠見義男君 次に警察予備隊による開拓地の無断又は強圧的使用の問題についてお尋ねいたしたいのでありますが、この問題は総理から御答弁を煩わしたいと思います。ここに全日本開拓者連盟の委員長村山藤四郎君から警察予備隊による開墾地の無断又は強圧的使用に対する防止方について参議院に請願をした書類がございます。成規の手続によらずに一方的な申入れによつて開拓地を使用し、その使用範囲を無断で拡張し、銃彈の危險、死傷等の生命上の実害が起つておる、或いは作物の蹂躪、井戸水の濫用、野火、盗難等によつて営農並びに生活を不可能にしておる現状に対して、予備隊及び政府は即時これが防止並びに善後措置に関して適当な方策を講じてもらいたい、こういう趣旨であります。私はここで單にこの請願の趣を取次ぐというような意味で申上げておるのではありません。ここで私がこの問題を取上げる目的は、第一に総理はこういうような、以下申上げるようなことを御存じないのじやないか、又こういう機会でなければ御承知になる機会がないのじやないかということが一つと、もう一つはごの事柄は限られた地方的な問題ではなしに、現在及び将来の我が国治安対策上極めて重要な問題であるという二つの理由からここにこの問題を取上げ、そして又御意見を伺いたいと思うのであります。具体的に各地方におけるいろいろの被害の実例が述べられております。そのうちの一部分をとつて、少し冗漫になりますけれども、御参考のために申上げますと、千葉県の習志野地区では実彈演習による被害で、死亡者が出ており、又農耕、通学に非常に不安を感じておる。住居内に流彈が流れて来ており、晝間は家を空けて非難しておる。いろいろ協業があるようでありますが、協定外地区の演習をやつたり、或いは畑地を踏み荒したり、採草地、防風林を無断使用して踏み荒し、採草地の土工作業によつて通行ができない。又栃木県の金丸地区では、アドバイザーの指示によるとの理由で、強制使用をしておる。農地、採草地、薪炭林の損傷は勿論でありますが、主要道路も損壊されている。必要以上の圃場濫入、山林原野の火災が数回あり、収穫物の盗難が数十件、そしてこの隊の行動の損害を防止せんとするものの言動を思想的批判の下に不当な取調べをしておる。栃木県にはそのほか江曾島地区、駒生地区にも同様なことが行われております。又九州の大分県の十文字地区では、住宅地、農地を挾んで射撃演習をする。従つて人命が危險にさらされて、流彈のために一名は貫通銃創を受けた。爆発音のために家畜の繁殖率は七割乃至八割減少した。作物の被害は甚大で、去年の春のごときは馬鈴薯は収穫皆無であつた。京都の長田野地区にも同様のことが行われ、又宮城県の王城寺地区にも、石川県の三小牛地区にも同様のことが行われておる。ここで注目すべきことは我々は予備隊の人々がこれは上官の命令でやつているのだ、文句があつたら上官のところに行つてくれ、或いはアドバイザー、これは進駐軍のことを指しているんだろうと思いますが、進駐軍の指示によつてつているんだ、こういうことを言つておるということと、文句を言う者に対しては、これを何らか思想的な背景ある者として警察が取締つておる。この二つの事実は注目すべきことだと思うのであります。  余談でありますけれども、明年度の警察予備隊における演習地としての買収計画は、先般も伺いますと、北海道地区しかこれを予定しておらない。こう言つておるのでありまするし、又移転、その他に伴う費用も含めて補償金は二百七十万円しか予算には計上しておりません。にもかかわらず実際現地にはこういうような事態が頻々として行われております。私の強調いたしたいことは、政府は国内防衛のために警察予備隊の増強に専念をしておられる。ところが国内治安を不安ならしめておるのは、むしろ警察予備隊自身のかかる行動ではないかということであります。曾つて軍国主義時代における軍の上層部の人は、兵隊、国民を物扱いいたしました。物よりも軽視いたしました。併しながら兵隊自身は、一般の国民から非常に親しまれておりました。ところが今日の警察予備隊のかかる行動は、むしろ昔の言葉で言えば、軍民離間、今は軍でありませんが、官民離間を醸成しておるとすら思われるのであります。開拓地は御承知のように引揚者だとか、戰災者だとか、こういう人々が営々、粒々辛苦の結果やつと永住の地として安住の地としてここに居坐ろうとしておる。こういう時期にかかる心なき行動が繰返されるということになれば、むしろ警察予備隊を増員してもらわんほうが、将来の国内治安を確保し、又一たび不安な状態が起つたときに、国民がこれらの警察予備隊の諸君と協力をするという態勢を備える上において、むしろこういうような心なき予備隊であれば、増員せんほうが治安維持のためには必要でないかとすら思われるのであります。従つてこういう事情を総理はお聞きになつてどういうふうにお考えになるか。と同時にこれらの起つておる不祥な事件について即刻これを防止するの又善後措置をとられるの御意思がないかどうか。この点を最後に総理からお答え頂きたいと思います。
  172. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お話のような問題についてはよく承知いたしております。又その都度報告を受けております。更に警察予備隊のみならず米国兵の演習の結果漁業ができなかつたとか、或いは又飛行機が落ちて甚大な損害を與えられたとかいうようなことの報告も徐々に承知しております。これに対してどうしたらいいか。結局は善後処置に対して被害者の満足の行くようにいたして、その結果、今お話のような、警察隊員、この警察予備隊の増強等に不快な感じを持たないようにいたして行かなければ、警察予備隊は治安の……、お話のように治安の維持においてもよろしくないことでありますから、政府といたしては更にこれに対して補償を與えるなり、満足の行くような方法を講じたいと考えております。委細は大橋国務大臣からお答えいたします。
  173. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 警察予備隊の増強ということは、これはどうしてもやらなければならんことだと存じまするが、それにつきましては先ず以てあらゆる点に注意をいたしまして、一般国民警察予備隊に対する協力を得るようにすることが先ではないかという御意見につきましては、全く同感に存ずる次第でございます。只今御指摘の開拓地等の問題につきましては、予備隊といたしましても、演習地のために開拓地を潰すというようなことは、でき得る限り避けるようにいたしたい。荒蕪地、原野等をできるだけ演習地に利用するようにいたしております。止むを得ず開拓地等を明渡してもらつて演習地にしなければならんというような場合におきましては、もとより完全な補償をすべきである、かように考えております。又演習地として提供しておりました土地以外の演習に使われ、この附近の農地等におきまして流彈その他によるところの被害が少なくないという点につきましても、十分に調査をいたしている次第でございまして、これらの被害を極力避けるような措置を講じますると共に、その被害に対しましてはこれ又完全な賠償をいたすようにいたしたい。要するにこれらの問題によりまして、御心配になりましたような警察予備隊に対する国民一般の感じを惡くするということの絶対にないように、むしろ予備隊に対する国民の協力を引立てるような方法においてこの問題を解決したい、こう思つております。
  174. 楠見義男

    ○楠見義男君 これは総理に対する質問ではなしに、ただ申上げるだけなんでありますが、今総理がこういうような事柄はよく知つており、そして又その都度その善後措置について下僚に対して必要な措置をとるように命じているというようなお話でございました。恐らく総理はそういうようなことをやつておられるだろうと思いますが、而も実際は今申上げましたようなことがあちらこちらに起つている。先ほど申上げたこの請願も二月二十六日附で以て参つておる。極く最近にもこうした事態があるということを御承知になると同時に、下僚をよく指揮して頂きたい、これだけを申上げまして私の質問は終ります。
  175. 加藤正人

    ○加藤正人君 二、三の点について簡單に御質問いたします。今世上問題になつておりますポンド過剰対策としてとられました今回の為替措置は、政府部内において完全な意見の一致をみないままに唐突に実施せられましたもので、このことが如実に示しておりますように、従来の経済、貿易政策の肝心の金融政策がこれに伴いませんために、何ら有機的な効果が期待し得ながつたのであります。政策の立案そのものも各省間に十分の速撃がとられていない憾みがありました。今回のごとく業界に非常に大きなシヨツクを與え、輸出が一時停頓するような大損害を招いた。かような損害は避け得る損害であります。誠にこのことは遺憾に我々は考える次第であります。今後の特に重要な貿易政策の遂行に当りまして、右の点についての総理の御見解と、如何にして政策に機動性と総合性を持たせて行くかということの対策はどうしたらいいかというような点について、御所見を承わりたいと思うのであります。
  176. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ポンドの累積については、実は関係日英ともに予想外に出た問題であるのであります。初め日英協定を昨年いたした場合には、五千万ポンド以上は累積せしめないという話合いであつたのでありますが、その後ポンド地域がいわゆるインフレーシヨンの結果、これは單に日本ばかりではありません。ダラーの不足を来たして、そうして各国ともにポンドの累積には苦んでおります。これに対してどうするか。政府は今お話のように各方面においてでき得るだけの処置を講じ、又日英の間に改めて話合いをするということも考えております。併し何分今申したようにポンド地域がインフレーシヨンの結果、各国ともに同じような禍いをこうむつておるのでありますが、併し英国当局者の話によりますと、この主なるべくポンドは累積しないような処置を講じたい。結局日英の間に今後は話合いをいたすことになりますが、国内関係としましては、決してお話のように政府の各機関の間に意思は齟齬をいたしておりません。現に私のところで関係当局が集つてそうしてこの対策を協議いたしておるような次第で、やがてその間に統一と申しますか、話合いが十分ついて、いわゆる統合的の施策ができると考えます。委細は関係大臣からお答えいたします。
  177. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 只今総理からお話になりましたことで大体おわりと思いますが、附加えて申上げますが、飽くまでも過日とりましたポンドの対策のごときは暫定の措置でありまして、根本におきましては、今後関係国との間に話合いをいたしまして、基本的にポンド地域における輸出輸入の調整をなすことはもとよりでありますが、むしろ積極的に輸入の増加に努めるということが一番大きな問題だろうと思います。ただ、輸入の増加ということをいたしまするについても、多少そこに時間的な問題を生ずることは止むを得ません。これは御承知の通り現在のポンド地域からの輸入は、比較的物資が少くて、輸出の関係が多いという現状にあります。併し日本の将来の経済政策途行上、どうしても東南アジア地区に原料、材料を求めることが必要であります。そういう面から開発計画というものを進めておりますし、又日本の必要とする食糧その他の必需物資をドル地域から今後東南アジア地域に切替えるにつきましても、その半面としまして日本国内における物資の増産というものについて、バーター的に食糧の輸入をしたいというようなことが根本の問題だと思うのであります。
  178. 加藤正人

    ○加藤正人君 御発言中ですが、私の申上げておることがみなずれておるように思います。私は政府各省間において十分に有機的の連繋がとれてないということが遺憾である。今後はそういうことのないように、どういう方策をとられるかということを申上げたのです。総理はさようなことはないというお話でありますが、少くも今日新聞を見ている程度の人は、政府部内が一致した行動に出ておつたか、ばらばらの意見で衝突をしておつたかということは、大概の人はわかるだろうと思います。又安本長官のお話は今の問題に触れておりません。これ以上私は申上げる必要はもうないと思います。ひたすら今後有機的に、而も総合的に政府部内が一致して、この重大問題について今後ともやつて頂くことを希望いたします。  更に次に移りますが、私は一昨年来独禁法、事業若団体法の改廃について熱心に主張して参つたのであります。特に先般の平和條約の委員会におきましては、ほかの問題に触れず、それだけに熱心に総理にも御質問したわけです。という意味は、日本が今後経済を自立して参ります以上、どうしても貿易によるよりほかはない。然らば貿易の面においてこの活動を妨げておる事業者団体法、又国内の産業の生産の調整というような面においても非常な支障を與えておるこの法律は、もともと我が国の経済をばらばらに寸断せしめようとする懲罰的な考えを持つた当時に発せられた法律でありまして、アメリカ日本の経済の自立を助けようとするに至つた今日においては、もはや無用な存在であると思います。特に我が国のごとく今後貿易で立つて行かなければならんという運命にある国におきましては、貿易の面におきましては、アメリカにもウエツブ・ポメリン法があるごとくでありますから、我が国はたださえ貿易上の諸権益を放棄させられたり、ガツト加入の反対を受けたり、貿易上非常にいろいろな制約を受けている上において、かくのごとき手枷せ、足枷せをはめられておつては、到底今後貿易に十分の成果を見ることはおぼつかないと思います。更に今日紡績界をはじめとして諸方面に操短、生産調整というものが行われておるのでありますが、これは実行の十分に期待し得られない通産省の勧告というようなことでやられておりますが、これが業者の自主的の決議その他によれば、有効適切な効果が上り得るのである。かようなことを考えますればこそ、私は平和條約の委員会で数度に亘つて総理に御質問いたしました。ところがその都度至極御懇切な、満足なる力強いお答えを得まして喜んでおつたのでありますが、未だに何の気振りがない、これは誠に私は遺憾と思うのであります。現下ますますその必要性が増大して参つたときでございますから、さぞかし善処をお続けになつておることであろうことは万々承知しておりますが、その経過につきまして、簡單でもよろしうございますから、一応御答弁をお願いしたいと思います。
  179. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 独禁法等の行過ぎにつきましては、是正いたしたいということは、曾つてお答えをいたしておきましたが、その線に沿うて爾来政府としては、如何に改正するかということについて、真剣に研究いたしており、すでに多少の成案を得たものと考えますから、主管大臣からお答えをいたさせます。
  180. 加藤正人

    ○加藤正人君 真剣に御研究になりまして多少の御成案を得られたそうでありますから、又暫くお待ちいたしておきます。(笑声)  次にポンド問題に関連いたしまして御質問を申上げます。通商産業省ではポンド輸出を輸入の範囲内、輸入を目安としてとどめる方針だ。二十七年度は、輸入六億五千万ドルと予定しております炉、二十六年度の実績即ち四億二千万ドルの五〇%を果して期待し得るかどうかということは先ず疑問であります。ポンド地域には物そのものが十分にない、ない上に、たとえあるにしましても、その値段が割高である。且つ品質に思うようなものが少い。この事情を考慮いたしますれば、二十七年度の輸入も本年度程度のものと見通すのが安全ではないかと思うのであります。而してこの輸入の範囲に輸出を押えるといたしますれば、二十六年度の輸出、従つて即ち六億六千万ドルよりは一億四千万ドル抑制となる。即ち三割五分八厘というようなものの抑制になる。ドルクローズ撤廃の時期を勘案いたしますれば、少くとも年間三億ドルの輸出の抑制が必要となるのであります。而も問題の根本的の解決は到底期待し得ない以上、ポンド貿易の規模の縮少は、相当恒久的な問題であると言わねばならんのであります。このことは当該産業のみならず厖大な関連産業の生産減をもたらし、財政収入にも非常な影響をもたらすところが決して少くないと私は思います。三億ドルまで輸出が抑制せられるといたしますれば、税収等の財政收入にどの程度の影響があるかということにつきまして先ず御質問いたします。
  181. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お答え申上げますが、御心配の点は御尤もでありますが、ポンド地域における輸出の抑制ということに対しましても、先ほど申しましたようにあくまでこれは暫定的な措置であります。来年度の関係、四月以降の状態を考えまして、直ちに非常な財政的の上に税收入の減とか何とかいうことが起るだろうとは考えておりません。むしろ私どもは暫定的の、野放図にふえて行くポンドを抑制するということは、一時暫定的にやりましたが、今後の問題としましては、あくまでその面における輸出に関しましても、その範囲で調整をとりつつやつて行くということに考えを向けておりますから、今直ちにポンド抑制という暫定的措置から来る財政的影響が非常に大きいものとは考えておりません。
  182. 加藤正人

    ○加藤正人君 そういうふうな見解なら結構でありますが、私の憂うるようになりますと、右の結果は国際收支の見通しの大きな変化を生じまして、二十七年度の受取超過一億ドル、外為合計へのインベントリー・フアイナンスの主百五十億円の算出の根拠にもお狂いを生ずるのではないか。二十七年度の輸入を二十六年度の四億二千万ドルの同程度として、この範囲に輸出を押えるとしますれば、貿易尻の出超は約二千万ドル程度となりまして約五分の一ぐらいとなるのではないかと思うのであります。これが私の杞憂に終れば幸いであります。  では問題を次に移しまして、目下問題となつております一億ポンドにもなんなんとするポンドの累積に対する対策、又今後の累積を防止せんとする対策といたしまして、ポンドの輸入の促進、ポンド輸出の抑制の方法がとられておりますが、今安本長官も仰せられました通り、暫定措置はそれでいいといたしましても、我が国のドル輸入、ポンド輸出は、いわば我が国の歴史的必然であります以上、市場の転換のごときは言うべくして容易にこれは行いがたい問題であります以上、この際消極的のポンド輸出の抑制の、ごとき策は、相成るべくはこれを排して、ポンド輸入をできるだけ促進するためには、対外的にはポンド圏諸国となるべく早く貿易協定を締結すると共に、一面英連邦の優先買付、輸出制限、輸入税の賦課等の支障を除くよう来るべき日英支拂協定の機会に極力主張することが肝要であります。と同時に国内的施策といたしましては、ポンド輸入に対する金融的融通措置、ドル輸入圏の供與、輸入税特免、輸入物資価格保險、運賃補給金附與等が絶対に必要であろうと思いますが、安本長官の御所見を伺いたい。
  183. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お答えをいたします。只今の御意見は全く同感であります。と申しまするのは先ほども申しましたように一時的な暫定処置でありますので、どこまでも問題は積極的に御指摘のようにポンド地域における市場というものを失わん上から申しましても、その地域における貿易を伸長せしめることが根本政策でなければならんと思いますので、従つて私どもといたしましてもその地域間の輸入の増加に対して日本銀行を通ずる金融的措置といたしまして、貿易手形等によりまして市中銀行からの輸入金融に対して円滑を図るということのほかに、外貨の貸付制度というものを考えて、でき得る限り輸入の増加ということについて差当つても努めるつもりでおります。
  184. 加藤正人

    ○加藤正人君 それではもう時間がありませんから簡單にあと申上げたいと思いますが、今日経済界において非常に大きな問題になつております例の貿易商社の問題でありますが、商社の過去の繊維損失を一時棚上げにしまして、はつきりした姿に再出発させる必要があるというので、目下市中銀行、貿易商社の間に話合いがだんだん行われておるのでありますが、中にはケース・バイ・ケースで整理に着手した所もありますが、これは多少自分で、自分のほうは比較的健全であるという自信のある所が今着手しておるようでありますが、なかなか痛手の多い所がありますので、これが急速な進捗を見がたい。特に紡績は紡績以外の損害は負担できないと申します。新三品というものの損害のしわよせはまつぴら御免だということであつて、併しながら紡績と新商社の関係でありますので、商社が破産していいとまでは紡績は考えておるのではございません。応分の負担をするが、併しながらそういう自分のほうに関係のない負担まで全面的にするわけに行かない。又銀行も多少犠牲を拂わなければならないという認識ができましたので、目下話合いが進んでおるのでありますが、併しながら最後に残された、最後の尻を誰が拭うかということについて、まだ何らの見通しがないために荏苒と目を追つて参りますので、新規の約定が一向にできない。これは又日本のために非常に遺憾なことでありますが、又現在の銀行の状態では、必ずそういうような損害のしわよせするというようなことになりますので、貿易金融を重点的に政府はこれを取上げて、結局財政資金を活用してはどうか。少くも現在の民間の話合いは、最後は政府が面倒を見るという旨を明らかにすれば、忽ちに解決するのではないかと思われるのであります。その点についてもう一度お聞きしたいと思います。政府はどう考えられますか。
  185. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お答えします。只今の貿易商社の問題に関連して、政府、日銀総裁等が出まして、御協力を民間に求め、お話のように紡績会社なり、或いは銀行というものが一緒になつて、或る種の再建計画と申しますか、整理計画を立てられるというようなことを進めておる。それに御考慮頂いておることについては、政府としても感謝いたしております。そういうような計画が進められたときにおいて、それに対して必要な資金の融通については、只今考えて、できるだけ民間の自治的協力を求め、政府も金融的援助ということは今考えておりますが、御指摘のように、最後の尻を拭うために財政資金をという考えにつきましては、よく御趣旨を承わつて研究したいと思います。
  186. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 新谷君。緑風会の持ち時間はあと十分ばかりしかありませんから半までに……。
  187. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 私は、私の質問をいたします前に、先刻岡本議員の質問に対しまして、吉田総理からの御答弁がございましたが、その中の一点だけ確めたいと思うので、再質問するわけでありますが、それは日米安全保障條約の第四條によりましても、日米安全保障の方式は、やがては国際連合の枠内におけるやはり集団的安全保障に切りかわつて来るものと考えられるのでありますが、この場合には、当然日米安全保障條約は効力を失うことになると考えられるのであります。こういうふうに日本が集団安全保障の中に入つて参りました場合に、日本の防衛力と申しますか、自衛力と申しますか、日本の持つておりますこの自衛力が、他の被侵略国に援助に行く必要が生ずるのは当然かと思うのでありまするが、この点に関しまして先ほど吉田総理から、他国に援助に行く必要はないのだというようなお答えがありましたが、こういう場合を予想しても無理ではないと思いますが、その点について確めておきたいのであります。
  188. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ちよつと遠いものですから、聞き逃しましたが、海外に軍隊といいますか、防衛隊なり何なりを出動させる考えがあるかどうかという問題でありますか。
  189. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 そうでございます。
  190. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) それは只今のところ断じてないのであります。海外に警察予備隊にしてもその他のものにしても、出すだけの力もないのみならず、そういうことはいたしたくないと考えて、又米国側とも話したことは全然ないのであります。
  191. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 その点につきましては、多少私もまだ疑問がございますが、持ち時間がありませんので、私自身の質問をいたしたいと思います。僅かあと五、六分でありますから、具体的な御質問はできませんので、ただ抽象的ではありますけれども、私の所見を二、三申上げまして、それに対する総理のお考えを伺えれば結構と思うのであります。  我が国が平和條約の発効を控えまして、非常にたくさんの処理すべき重要な問題が内外ともに多いということは、私が申上げるまでもないところでありますが、私の受けております印象を、実はこれは極めて率直に申上げるのでありますが、或いは言葉が過ぎるかも知れませんけれども、今日、最近における政府のいろいろな施策が、ともすれば余り安易感にとらわれ過ぎておると申しますか、そういうような嫌いがあるのじやないかということを私は憂えるのであります。例えば先ほど楠見君から質問がありましたが、防衛力或いは防衛費の問題につきましても、これは来年度の予算とか、或いは計画というものは一応明らかにはせられておるのでありますけれども、今後将来に亘りまして、どういう程度の防衛力を持ち、これにどういう程度の経費が必要であるか。従つて国民の負担がどうなるか、言い換えますると、従来政府はインフレを防止する、均衡財政を堅持する、又できるだけ減税の方針をとるということをしばしば言明しておられるのでありますけれども、果してこの基本的な方針だけで、我が国の必要とする防衛力を充実することができるかどうか。こういつた点につきましては、国民が一番関心を持つておる問題であります。政府もこれに対しましては、率直にその所信を述べられる必要があると考えるのであります。国民は殆んど事態を知りませんので、ただ端摩臆測するばかりでありますけれども、こういつた問題は、やはりどうしても国民全体の協力がないと、十分に実行できないことは、私から申上げるまでもないと思うのであります。これにつきましても繰返して具体的には申しませんが、政府が速かに率直に、我が国の置かれておりまする国際的な環境とか、そういつたところを国民に知らしめて、そうして我が国の進むべき道というものについての政府の所信を明らかにして国民の批判に待つというような態度が望ましいのであります。このほか、例えば昨年の米穀統制の撤廃の問題にいたしましても、これは総司令部の意向の如何は別といたしまして、要するにこれは政府が食糧事情とか、或いは統制撤廃から来る影響とかいうものにつきまして、考えが余り楽観に過ぎた結果ではないかと私たち考えているのであります。このほか具体的に挙げますると、いろいろのことが言い得るのでありますけれども、先ほども申しましたように、本日は私ここで具体的問題について総理の御意向は伺うつもりはないのでありますが、初めに申上げましたように、この重大な時局に、政府が我が国の将来に対しまして真剣に、そうして愼重に考慮を拂つて頂きまして、まあいわば占領行政というものに慣れて、成行きに任せるというような他力本願的な、或いは安易な考え方で施政に当られることがあつてはならないということを私は強調いたしたいのであります。少し言葉が過ぎたかも知れませんけれども、私のこういう認識が間違つておれば私は幸いだと思うのでありますけれども、総理はこういうことに対して、どういう御所見をお持ちになつておりますか。それを伺いたいのが第一点でございます。  それからもう一つのことは、これに関連する問題かと思いますけれども、最近における政府のいろいろの施策を拝聽いたしまして感じますことは、どの行政部門におきましても極めて計画性に乏しいということでございます。長い間占領行政下に置かれまして、而も極めて変転の甚だしい国際情勢の下におきまして、長期に亘る計画を立てるということは、これは非常に困難であるということは私もよくわかりますけれども、それにいたしましても、我が国力に比較いたしまして、なすべきことが余りに多い現状におきましては、これはどの行政分野における施策におきましても、それぞれ長期計画を立てて、そうして一つの目標というものを以て進むのでなければ、到底国力の急速な回復はできない、私はかように信じているのであります。例えば公共事業の問題にいたしましても、或いは最近やかましくなつて参りました商船隊の再建の問題にいたしましても、極めて焦眉の急を要することは、誰もが疑つておらないのでありますけれども、本年の計画がわかつてつても、翌年の計画についてはまだ十分確たる計画が樹立されていない。そのときの状況で或いはどうなるかもわからんというような状態に置かれているように考えるのであります。殊に私の知つている範囲内におきましては海運の問題、その問題については極めて将来に対する計画に乏しいのであります。惡く言いますとその日暮しというような状態かと考えるのであります。もとよりこういう事態でありますから、一つの長期計画に余りに強く固執するということが間違いを起すもとであるということもこれもわかりますけれども、これらの事業はいずれも数十年の努力を継続して、初めてその実を結ぶものでありますから、これらの施策に対しまして、今日なお長期に亘る基本的な計画が樹立されないということは、どうしても私たち解することができないのであります。これらにつきまして甚だ抽象的でありますけれども、総理から御所見を伺えれば幸いであります。
  192. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 政府考え方が甘いというお感じでありますが、これは当局としては決して甘くは考えていないのであります。と言つて余りに国民の動揺を来すとか、神経を刺戟するというような言い方もいたしたくないと思います。要は国力を養う、これがまあ第一に努めなきやならぬことだと思います。戰争の結果、従来の経済体制の基礎が殆んど破壊された今日において、多少の繁栄を今日表面いたしておるようでありまするが、併しながら基礎に至つては甚だ憂うべきもののあることはこれは政府もよく認めております。殊に国力の養成が第一である。国力の養成をするためにはいろいろな施策を、金の要る事業も企つべきでありましようが、先ず政府として考えたいことは、成るべく国費の儉約をする。警察、治安、防衛等の費用にしても成るべく倹約して行きたい。そのためには安全保障條約の、ごとき條約を結んで、一応の治安を確保したいと思う。それにしても米国政府といえども、長くアメリカの兵を日本に置きたいというより、成るべく早く引揚げたいという考えでおるのでありますから、いわゆる防衛力の漸増ということになるわけでありますが、これにいたして見ても、今日の財力というものは甚だとしいのであります。飛行機一台或いは軍艦一隻ででも日本の財政の基礎は覆えるような脆弱な事態にあるのでありますから、現在の国力に相当な基礎あらしむるためには、国民一致して国力を養うということに力を盡すより仕方がないのであります。いろいろなことをすべきであるのにしないのじやないかというお考えであるかも知れませんが、したいのでありますが、力これに及ばない現在の状態であります。  然らば将来はどうか、決して私は悲観いたさないのであります。連合国その他においても、極東において日本の力を養つて日本を東洋平和の安定勢力たらしめたいという考えは十分持つているのでありますから、日本の国力を養うことにあらゆる援助を憎むものではないと考えます。又その外国の力のみによるべきではありませんが、国民の終戰後今日までの努力というものは容易ならざるものがあり、この努力の結果は更に新らしい日本の国力として養い得ると私は信じて疑わないのであります。決して政府は甘くものを考えて、そうしてなすべきことをなさないのではなくて、なしたいことはありますが、なすことのできない事態にあるので、成るべく国力を養成して種々の問題に対応したいと考えておるのであります。それだけです。(笑声)
  193. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 吉川末次郎君、総理が四時から用事がありますので、四時までに大体お聞き下さい。
  194. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 私はもつぱら行政協定の問題について吉田総理の御意見を承わりたいのでありますが、それ以外に一、二の問題について併せて御意見を承わりたいのであります。  先ずその一つといたしまして、小選挙区制度の問題でありますが、吉田さんは在野時代、或いは今度新らしく又総理に御就任になりましてから以来も、議会政治の妙を発揮するということのために二大政党主義をとつておいでになつたかと思うのであります。たびたびそうした御意見を今日まで新聞紙上等で拝見いたしておるのでありますが、そうした吉田総理がおとりになつておりまするところの二大政党主義を実現するということのためには、これは一人一選挙区制度を衆議院議員の選挙区制度として採用して行くのでなければ私はならないかと思われるのであります。政治学者等が申しておりまするようなことをくどくどと申述べる必要はありませんが、結局そうなつて来ると私は考えます。そうした小選挙区制度の採用ということについても又御意見を御発表になつたことがあると思われるのでありますが、私個人といたしましては全く吉田さんのおつしやることに実は賛成なのであります。それで是非この二大政党主義実現のためには小選挙区制を代議士の選挙制度として採用する必要がある。又その問題につきましては最近の代表的な新聞等の社説等におきまして、大体におきまして吉田さんのおとりになつている、今のような私が申しました点に賛成いたしておるかと思われるのでありますが、これはいろいろその平素の御経論を御実現にならない理由があると思われるのでありますが、昨今はもつぱら影を潜めてその御意見が出ないようであります。それでこのことについて今日なお以前の宿論を把持しておいでになるのであるかどうかということを先ずこの機会におきまして御発表願いたいと思うのであります。又我々のほうといたしましては、これは別に決定的なことではありませんが、中選挙区制或いは大選挙区制によつて選ばれて来たところの衆議院議員の諸君に、そうした選挙区制度を変えるようなことを勧めるということは、これは彼らは一応は必ず反対するだろうと思われるのであります。でありまするから、輿論がこれを支持し又いろんな点からして正しいと思われる意見、これはもとより小選挙区制というものにも多くの欠陥があることは十分了承いたしておりまするが、大選挙区制か小選挙区制か、バランスをとりまして一結局小選挙区制のほうがいいという結論になりました建前から、これは一つ参議院議員提出案の形で出して、幸いにして新聞その他の輿論もこれを支持いたしておるのでありまするから、第二院である参議院とそうして民論とが相合致して、その圧力においてと言うと語弊がありますが、その反対するところの衆議院に当つてつて、そうしてそうした方向へ実現のためにリードして行くというようなことも考えておるところの実は参議院議員もあるのでありますが、そういうことを併せて一つこの機会に先ず……吉田さん昨今一向そういう議論をおしにならないようになりましたが、御見解をこの際改めて一つ承わりたいと思います。
  195. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は議会政治を確立する上に、又政党政治を確立する上から見て小選挙区が理論的にはいいと考えます。又二大政党対立というような政治構成、議会構成になるということは、議院政治運用の上からも政治を徹底ならしめるものであるという信念は今なお持つております。併しこれが今直ちに実施ができるかできないか、又各政党の事情もありましようし、又四囲の事情もありましようし、選挙制度の確立は一日にしてできるものではないのでありまするからして、私は小選挙区若しくは二大政党対立という方向に進めて参りたいと念願いたしております。又機会あるごとにそういう意見を述べております。
  196. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 なおいろいろお尋ねしなければなりませんが、先を急ぎますので、行政協定の問題について御答弁を得たいと思うのであります。  これは本日の朝の本会議におきましても多少お述べになりました。又先の両條約の委員会その他等においても大体政府の御見解は一応は了承いたしておりまするが、我々は十分それを承認いたしておらん。今日までの政府の御答弁を基礎といたしまして、更に御質問申上げる次第でありますが、先ず第一に、このたびラスク特使との間に締結せられましたところの行政協定が條約であるかどうかということの問題であります。で今日朝の本会議の御答弁によりまするというと、これは安保條約の施行令のようなものである。であるからして議会承認を要しないものと解釈するというところの御答弁があつたのでありまするが、併しながら日本の殆んど全部の国際法学者及び憲法学者の見解といたしましては、日本語において憲法土條約と言われておるのは、あえてこのアメリカにおけるところのトリーテイと呼ばれておるところのものだけではない。行政協定、即ちアドミニストレーテイブ・アグリーメント、或いはそのほか国際連合憲章のような憲章、チャーター或いはコンベンシヨンであるとか、或いはプロトコールであるとか、いろいろそうした違つた名で呼ばれておるところのものも、これはすべて條約である。又憲法学的な見地からしても、七十三條において、議会の事前或いは事後に承諾を要するところの條約であるという見解は、私は日本においては殆んどすべてが決定しているところの議論であると考えるのでありますが、併しながら政府はこれについてどのようにお考えになるのであるか。七十三條に規定しているところの、行政協定は條約であるかどうかということについて、今日まで或いは他の閣僚諸君から若干それに対する意見も聞いておりますが、吉田総理みずからの一つ御見解をこの機会に促したいと思うのであります。
  197. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 行政協定安全保障條約によつてきめられた原則のいわゆる施行細則であり、これを実行するために両国の間に、両国政府の間に協定を遂げたものでありまして、私はこの行政協定をもこれは両政府の責任においてなされたものである。その責任は両政府にありますが、併しながら憲法規定従つて事前若しくは事後において国会承認を受くべきものでないという考えであります。
  198. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 それではもう一度承わりたいと思いますが、條約なのですか、條約ではないのでありますか。
  199. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 憲法国会承認を経ることを必要とする條約ではない、こう私は考えます。
  200. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 今のお言葉の中に、この政府の間に結ばれたるところの外交文書であります……政府の間において結ばれたという言葉がありまして、害うまでもなく安保條約第三條におきまして「両政府間の」という言葉が使われておるのであります。で、岡崎国務相が、他の委員会におきまして我々に答えましたところによりまするというと、両政府間の行政協定という言葉があつて、国と国との間におけるところのこれは締結された外交文書ではないというところの理由を楯にしまして、そうしてこれは憲法七十三條の、国会承認を経る必要のないものであるという答弁を委員会でもせられましたし、先般の参議院会議におけるところの、この問題についての議員の緊急質問に対しても又同様の言葉を以てこれに対せられておるのでありますが、岡崎君の意見はわかつておりますが、今もう一度承わりたいと思うのでありますが、今私が申しましたような意味において、安保條約第三條に「両政府間の」という言葉があつて政府政府との間だけのものであるから、これは国と国との間におけるところの條約ではない、従つて議会承認は経る必要がないものであるという岡崎君の見解と同様の見解をお持ちになつておるかどうかということをお尋ねいたします。
  201. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 政府間、或いは国と国との間にもいろいろの協定、アグリーメントと言いますか、或いはどういう文字を用いるか、両国或いは数カ国の間において政府間において或る取極をなすことは、これはあり得ることであります。その取極がことごとく国会承認を経なければならないか、経ることを要しないか、或いは安保條約のごとくに原則はすでにきまつてつて、その原則を施行するために両国の政府の間において取極められたものを、これを直ちに條約として、憲法に言う国会承認を要する條約なりや否やというと、そうではないと、こう私は解釈するのであります。
  202. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 條約であるということについては御否認にならないと思うのでありますが、然らば條約である以上は、七十三條の国会承認を必ず要するものであるということを、これは学者もそのように解釈いたしておりまするし、我々もその意見を固執するのでありますが、我々の見地からいたしまするというと、若しこの安保條約の中に、これはそうした議会承認を要しないものであるという條件がこの上に附いておりまするならば、それは或いは政府がとつていらつしやるところの見解が成立ち得るかも知りませんけれども、我々はそれを承認することはできないと思うのであります。これが條約であります以上は、政府はたびたび……吉田さんは本日の朝の本会議におきましても施行令、丁度法律がありまして、法律は議会において制定される。併しながらこの議会に制定されたるところの法律によつて作られるところの施行令のようなものでなくて、同時にこれは七十二條が現存いたしておりまする以上は、同じランクに位するところの、いわば一つの法律でありますならば、これも決して議会の賛成を得ないで制定することができるような施行令でなくしてこれは同様にやはり議会承認を要するところの私は法律の立場にあるものであると考えるものでありますが、先ほどの御答弁もありましたが、もう一度そのことにつきまして我々が、即ちこの施行令であるという立場に置かるべきものではない。一つが、これは安保條約が法律であるならば、又同様にこれは同じランクに位するところの法律でなければならんという建前の上において考えなければならんと思つておるのでありますが、もう一度御答弁が願いたいと思います。
  203. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の今申した見解は、果して日本の学者の承認するところであるかどうかは知りませんが、これまで国際の慣例は、私が申したような慣例になつております。
  204. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 今丁度総理がお言いになりました国際慣例という言葉であります。これは又他の機会におきまして同様に岡崎国務相が我々に言われておるのでありますが、我々はこれを承認いたしておらんのでありますが、然らばお尋ねいたしたいのでありますが、日本がこの新らしい憲法を制定いたしました以後におきまして、日本を中心といたしまして、そうした條約であるところのものをば国会承認を得ないで通したところの実例があるかどうかということを明白にして頂きたい。現に参議院におきまして、参議院の外務委員会には今、麻薬に関するところの條約、それからアグリーメント、協定、それから議定書、公文書というものが正式に議院運営委員会を通じまして参議院の外務委員会承認を求めているのであります。そういう前例が新憲法制定後あるかということを、一つ專門家である吉田さんからこの機会に我々にお示しを願いたいと思います。
  205. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 一々私はここで以てこういう例がある、ああいう例があるということを即座に、手放しにお答えをする資料がありませんから、取調べた上で以てお答えいたします。
  206. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 それは岡崎国務相も私がそういう質問をいたしましたときに、例を我々に示すことができなかつたのであります。そうして又国際慣例、国際慣例と言われまするが、これはアメリカの條約締結に対するところのトリーテイではありません。そうした広義における條約締結のときの国際的慣例でありまして、日本の国際的慣例ではないと私は考えるのであります。專門家であつて長らく外交官をしておられる外務大臣でいらつしやるかたが、新憲法が制定されてから、実施されてからそんなに長い年月がたつておらんのであります。今のような事例を即座に、打てば響くがごとく議員にお示しを願えないことは私はないと思うのでありまして、その御記憶にありまするところのどうぞ前例を一つ示して頂き、若し吉田外務大臣が示すことができないならば、岡崎君はこの間、それは私たち承認することができないところの、万国郵便條約によるところの料金の取極で、これでいたしましたというようなことを申しましたが、すべての列席いたしまするところの委員は、そんなものはこの実例にはならんじやないかといつて抗弁したのでありますが、吉田さんに是非御答弁が願いたいと思いますが、若しできなければ、他の、岡崎君でも結構でありますからお示しを願いたい。
  207. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今日までは日本外交停止でありますから、あなたのお示しのような問題が自由に今日までは取極められておりませんと思います。併しながら実例はあるでありましようから、取調べてお答えいたしまます
  208. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 今申しましたように、外務委員会には、麻薬に関するところの協定というものの承認を求めていられるのであります。又外国の例と言われまするけれども、アメリカにおきまして御承知でありまするように、もう言うまでもなくこれは上院が持つておりまするところのトリーテイに対する批准というものが議員三分の二の賛成を要しまするから、その関係からしばしばありましたところの外交條約がアメリカにおいては慣例として結ばれております。併しながら日本を中心にしてそのアメリカの実例というものが直ちにこれが日本の例であるかのように誤認されて、そうして私は錯覚に陥つていらつしやるのじやないかと思う。アメリカの例で、日本にはこういう実例はないのだけれども、日本には当然に日本憲法に抵触するのであるけれども、併し施行令であるとか或いは国際慣例であると言われれば、これを実例を示すことができないところの立場において、議員を若し錯覚に陷れて、政府の意思を通そうとしておられるならば甚だけしからんことであるが、若しそうでなくしてみずからが錯覚に陷つていらつしやるのならば、これは大変なことだと思いますので、吉田さんお答えにならなかつたのでありますが、岡崎国務相どうですか、一つ御答弁願いたいと思います。
  209. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今総理が申上げた通りでありまするが、新憲法下において実例を示せと言われましても、新憲法下において條約を結びましたのは極く最近のことであります。而も大部分の取極は、日本独立したときに効力を発生する種類のものでありまして、その他は国際的な取極に参加するというのが主なる点であります。従いまして新憲法下でそういう実例があるかというと、それは極く簡單な郵便條約等のものにはあるけれども、これは日本としてはまあ初めてと言つてもよいと思います。併し同時に吉川君の言われるように、これはアメリカだけに行われる国際慣例だというようなことは私はないと思います。アメリカだけでは国際慣例とは言えないのであります。アメリカと他の国がやりまするから国際慣例になるのであります。そして行政協定というものは、日本では新らしい言葉ではありましようけれども、他の国にも例はありまするし、又先ほど総理が言われましたように、安全保障條約第三條に基くアメリカ軍隊の配備の條件を規律するものでありまするから、我々はこれは当然政府限りでできる、こういうふうな解釈をとつておるのであります。
  210. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 国際慣例はほかにもあるということでお話になりました。それで曾つてほかの委員会におきまして岡崎国務相に対しまして、アメリカはこういう実例を持つておる、併しながら特にアメリカとこうしたアグリーメントを結んだところの国、併しながらそれはアメリカに対して隷属的な政治関係にあるような国でなくして、イギリス、フランス、その他のこの立派な独立国が、そのアメリカとの間に結んだところの行政協定国会においてどのように取扱つたかということの実例を示してくれということを申したのでありまするが、お答えすることができないからして、今度資料を調えて御報告しますというところの答弁であつたのでありますが、もう時間がありませんから、私はいろいろ問いたいのでありますが、省略して、どうぞお約束になつたところの、今申しましたような実例を一つ文書で、文書で外務委員会だけでなしにこの予算委員会にもお示しを願いたいということをここに申上げておきます。  それで結局いろいろとまあ論議をなお交わしたいのでありまするが、時間の都合上省略いたしまして、結局のところまあ私たちはこれは明らかに憲法違反である、そのようにまあ解釈いたしております。又その立場から講和條約には賛成いたしましたけれども、安保條約に対してはそれを理由といたしまして反対せざるを得なかつたのでありますが、それでです。仮に吉田さんや岡崎さんがおつしやるように、これはごの七十三條によるところの国会承認を要しないところの條約である、行政協定ではない、條約であると解釈いたしましても、そのような議論が仮に成立つても、我々は反対でありますが、仮に成立つたといたしましても、これは世間では、例えば蝋山政道君のような、あの人は政治学者でありまして、法理学者でありませんからでもあろうと思いますが、毎日新聞にこれが違憲であるということにつきましては積極的な意思表示はいたしておりませんが、内容は極めて重大なる問題であるから、新憲法の基本的な精神である民主主義の建前において、これをやはり国会に付議して審議し、そうしてその承認を求むべきであるということの議論を発表しておられるのでありますが、ともかくも内容は極めて重大なのでありまするから、麻薬に関する議定書のようなものでも国会承認を求めておられるのでありますから、そんなものに比ぶれば遥かに重要性の多いものでありまするが、今のような立場で、これは自分は七十三條にあるところの国会承認は要らないと思うけれども、事が重大であるから一つ国会承認を求めるというところの態度政府はお出になることの御意思はおありになるかどうかということを一つ吉田さんからお答えを願います。
  211. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今はそういう意思はありません。
  212. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 それでさつきから申上げまするように、我々はこれを憲法違反であると考えておりまするから、この憲法違反であるというところの理由によりまして、我々は憲法を擁護する建前からの、何らかの具体的な処置に出なければなりません。これは国会議員でありまする以上は、必然我々の義務であると考えるのでありまするが、そこでです。我々はこれが憲法違反であるということを何とかして明らかにして、そうしてこの政府の処置をば国民のために、憲法擁護の建前から否認したいと思うのでありますが、そこでこれはむしろ法務総裁の御答弁を促すことになるかと思いますが、吉田さんでも結構でありますが、(笑声)憲法の司法権をこの規定いたしましたるところの條項によりますというと、法律、命令、処分その他のものはこれを最高裁判所に提訴いたしまして、その審判を求めることができると思うのでありますが、処分という言葉がありまするけれども、條約という言葉がこの中にありません。それでこの條約の憲法違反性というものをば審判さすことが、何かの形において最高裁判所で判決さすことができるかどうかということについての木村法務総裁、或いは吉田さんでも結構でありますが、専門的な法律的な一つ御答弁をお願いいたします。
  213. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 法務総裁は来ておりませんが……。
  214. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 それではその答弁はあとで結構であります。
  215. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 明日呼びまして答弁させます。
  216. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 それではこの問題の結論として、古田さんにお伺いしておきたいと思うのでありますが、我々は飽くまでもこれは憲法違反である、非常に重大な問題であると考えておりまするが、そこで仮にまあ木村法務総裁がどういう答弁をいたしますかは別といたしまして、これを決定するところは結局最高の政治機関であるところの国会のほかにないという結論に我々が到達せざるを得なかつたといたしまするというと、御承知のごとく衆議院は與党が多数でありまして、どんなことでもこれは通して行くのでありますから、今日の衆議院に正しい私は議論を期待することはできないと思います。こういうときにおいてこそ参議院の職能が発揮されなければならないのでありまするから、その政治的な、法律的な効力がどのようになるかということは別問題といたしまして、ここに参議院がこれは明らかに憲法違反である、国会承認を七十三條によつて経なければならんものであるというところの決議を参議院がいたしまして、(「ノーノー」と呼ぶ者あり)これが成立いたしますといたしまするならば、私はそれは明らかに今日まで政府がとつて来られたこの問題に対する違憲性の、或いは合憲性の問題に対する否認である。又これは事が重大でありまするから、政府の進退を決して頂かなければならない重大なる責任問題であると考えるのでありますが、そういう場合は、私は今日の参議院の状態において参議院議員が、たとえ與党である自由党の諸君といえども、(「ノーノーと呼ぶ者あり)これは二院制の建前からの、(「ノーノーと呼ぶ者あり)自己の正しさを発揮しなければならんということを考えておられるならば、(「その通り」と呼ぶ者あり)我々に或いは賛成せられることになるかも知れん。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)緑風会の諸君は私は多くは賛成せられるだろうと思う。そういう決議案が参議院において成立したときにおいて、政府はどのような処置をおとりになるかということを、一つ結論的にお伺いいたしたいと思います。
  217. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) そういう決議があつたときに考究いたします。(笑声)
  218. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 それからもう時間でお帰りになります前に一つだけ承わつておきたいと思うのであります。それは、先に岡本愛祐君が質問せられたことに対する首相の答弁でありまして、これは楠見君も更に再質問せられたのでありますが、自衛のための戰力というものは、これは憲法第九條におけるところの戰力ではないというところの御答弁がありました。これは岡本君がそのときに直ちに申しましたように、極めて重大なるところの南明を吉田総理はおしになつたものと私たちは解釈いたしたいと思うのであります。今日まで政府がこの問題につきまして、参議院においてしばしば御答弁になりましたところの御答弁によりますというと、戰力というものは、或いはタンクを持つておるとか或いは原子爆弾を持つておるとか、或いは軍艦を持つておるというような、この本当に近代戰争に対抗し得る、打ち勝つことができるところのもの、戰備を意味するところのものであつて、今日の日本に存在しておるところの警察予備隊、或いは考えられておるようなものはこれは戰力ではない、従つて戰力ではないのであるから第九條の違反ではないという建前を終始とつておいでになつたと思うのであります。ところが全くこの吉田総理はこの今日の答弁におきまして、前のほかの閣僚が申しましたことと違うところの答弁をしていらつしやると思うのであります。で自衛のための戰力と言われますけれども、いずれの戰力を蓄えておりますところの国といえども、やはり自衛であるということを條件にしておられないところの国はないと思うのであります。厖大な戰力を持つておりますソヴイエト連邦といたしましても、恐らくこれは自衛のためと言つておるでありましよう。そのように考えまするならば、先のような御答弁をおしになりましたことにおきまして、憲法第九條が規定いたしておりますところの精神というものは、すべて実際上失われたことになりまして、又今日まで政府及び政府の閣僚諸君が言つて来ましたこととも全く矛盾する結果を来たすと思うのでありますが、先に御答弁にはなつておりますが、もう一度はつきり我々はこれを再確認したいと思いますので、戰力は即ち防衛のための戰力、又、先ほど来引用いたしました今日までの戰力の限界というものの限界において戰力は御肯定になるか、我々はこれは第九條の違反である、これ又憲法違反の問題が起つて来ると思うのでありますが、再確認いたしたいと思いますので、もう一度恐縮でありますが、御説明願いたい。
  219. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 第九條は、第九條において日本の自衛、独立を保護する戰力といいますか、方法を禁じたものではないのだというのが私の見解であります。国として独立する以上は、その独立を保護し、安全を保護するためには、国力を傾けて如何なることもできる。憲法九條はこれを禁止したものではない、こういう見解であります。
  220. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 本日はこれにて散会いたします。  明日は午前十時から始めます。    午後四時七分散会