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1952-03-05 第13回国会 参議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    公聽会 ———————————————— 昭和二十七年三月五日(水曜日)    午前十時二十六分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     和田 博雄君    理事            中川 以良君            山本 米治君            小林 政夫君            杉山 昌作君            佐多 忠隆君            東   隆君            木村禧八郎君            岩間 正男君    委員            愛知 揆一君            石坂 豊一君           池田宇右衞門君            左藤 義詮君            白波瀬米吉君            杉原 荒太君            中川 幸平君            平林 太一君            宮本 邦彦君            岡本 愛祐君            小野  哲君            片柳 眞吉君            加藤 正人君            楠見 義男君            高良 とみ君            中山 福藏君            荒木正三郎君            内村 清次君            小林 孝平君            吉田 法晴君            松永 義雄君            山田 節男君            駒井 藤平君            西田 隆男君            堀木 鎌三君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    公述人東京新聞    論説委員    福良 俊之君    国鉄労働組合本   部給與対策部長  沢田  広君    冨士製鉄株式会    社社長     永野 重雄君    東京大学助教授 大内  力君    宇都宮市長   佐藤和三郎君    日本労働組合総   評議会組織部長  柳本 美雄君   —————————————   本日の会議に付した事件昭和二十七年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十七年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十七年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 和田博雄

    委員長和田博雄君) それでは予算委員会を開会いたします。  本日は公述人のかたにはおいそがしいところを委員会のためにおいで願いまして、委員長から委員会を代表いたしまして厚くお礼申上げます。  先ず東京新聞論説員である福良さんから公述を願います。
  3. 福良俊之

    公述人福良俊之君) 私福良であります。  昭和二十七年度予算につきましては、その編成の過程におきまして、内政費講和関係諸費、これが相当に膨脹いたしまして、場合によつて防衛関係費をも含めて内政費以外の部分が三千五百億円以上に達するのではないか、従つて二十六年度補正予算実施されました減税措置というものも取りやめになつて場合によつて増税が行われるのではないかというふうな懸念を持たれておつたのでありますが、編成された予算案を見ますと、総額は八千五百二十七億円に抑えられ、而もその中において防衛関係諸費を計上すると同時に、他方では二十六年度補正予算実施されました減税措置もそのまま踏襲されたのであります。こういうふうな観点から見ますと、二十七年度予算案は極めて手際よく編成されておるように思われるのでありますけれども、さて私どもが第一に目に付きますことは、二十六年度予算に比較しまして二十七年度予算が著しく彈力性を欠いておる事実であります。改めて数字を指摘するまでもないことでありますけれども、二十七年度予算と二十六年度予算につきまして、政府出資投資産業投資、いわゆるインベントリー・フアイナンス等について数字を検討してみますと、二十七年度のそれは前年度に比較いたしまして著しく減少しておるのであります。而もこの著しく減少された財政投資出資産業投資インベントリー・フアイナンス等を見まして、果してこのままの状況でよいのかどうかという点について多少の疑念を持つの。あります。現在食糧管理特別会計資金の不足に悩んでおる実情は申上げるまでもないのであります。又外国為替資金特別会計円資金の調達についていかに苦しい思いをしておるかもこれ又指摘するまでもないのであります。ところが二十七年度予算におきましては、外為資金特別会計に対する繰入は三百五十億円、前年度の八百億円に比較いたしまして四百五十億円の減額となつておりますし、食糧管理特別会計への繰入は二十七年度については絶無となつておるのであります。こういつた関係現実金融面相当影響を與えておることはここに御説明するまでもないことであります。従いまして二十七年度予算実施に当りまして、このインベントリー・フアイナンスの点、又政府財政投資出資産業投資の金額の減少が金融界に対してかなり大きな圧迫材料となることを懸念いたすものであります。二十七年度予算彈力性を欠いておる点について更に考えなければなりませんことは、例えば資金運用部特別会計運用計画を見ましても、預託金増加額は前年度の九百億円に対して二十七年度は千五百五億円というかなり大きな数字を計上いたしておるのであります。然るにもかかわらず、その運用面におきましては金融債三百億円の引受を全額削除するというふうな、極めて窮屈な運用計画をいたしておるのであります。これらの点から見まして、先ほど申上げましたように、財政面のしわが二十七年度におきましては更に金融面に寄せられて行くという懸念がかなり多くあるように思われるのであります。一方歳入の面を考えてみましても、二十六年度におきましては朝鮮事件影響によりまして経済界が好調をたどり物価上昇する、生産増加する、更に又これが賃金増加となりまして、補正予算に計上されましたように歳入自然増收というものがかなり巨額に見込まれ得たのであります。併しながら二十七年度予算歳入面について考えてみますのに、果して二十六年度に見ましたような経済界の好調が二十七年度持続し得るか否かについては、最近の経済動向等を見てみますのに、かなり不安なものがあるように思うのであります。こういうふうに見て参りますと、歳入の面から見ましても、歳出内容から見ましても、二十七年度財政は繰返しますが著しく彈力性を欠いたものがあるように思うのであります。  更に第二の点といたしまして、二十七年度予算は前年度に引続きまして均衡予算の建前がとられております。数字の上から見て参りますと、確かに総合予算均衡化というものが実現されておるように思われるのでありますけれども、一方軍人遺家族の援護のために八百余億の交付公債が支出されることになつておる点を見落すことができないのであります。この交付公債は当然譲渡、質入等が禁ぜられ、その流通について或る程度抑制手段が講ぜられることは想像にかたくないのでありますけれども、一部の困窮者についてこれらの現金化或いは流通を認める方途が講ぜられるということを考えますと、名は交付公債であるけれども実質的には財政の一部としての赤字公債の発行と結果において何ら変るところがないように考えられるのであります。従つて表面から申しますならば均衡予算ということができますけれども、実質的にはすでに赤字予算に一歩を進めたものと思われるのであります。  第三に気がつきますことは、今度の予算におきまして防衛関係諸費として計上されておりまする千八百余億円、この歳出が再生産を伴わない資金であることは申上げるまでもないのでありまして、このように見て参りますと、予算総額に占める防衛関係諸費割合が二〇%を僅かに超えるものであつても、従来見なかつた予算の中に再生産を伴わない経費というものがかなり大きな部分を占めていることを注目しなければならないと思うのであります。先ほど申上げましたように財政彈力性を欠いておる事実、又実質的には赤字財政に一歩転換を示しておる事実、更に今申上げましたように再生産を伴わない資金、又場合によつて相当消費的な資金というものが考えられるといたしますと、この予算の施行に伴つて懸念されますことはインフレの誘発という一事であります。二十四年度から始まりましたドツジ予算、これは日本経済を安定化し、インフレを急速に收束せしめるという意味におきまして、かなり政府関係におきまして引揚超過の予算であり、超均衡予算と呼ばれるものでありますけれども、その結果として今日の経済安定というものが確立された効果は見逃すことができないと思うのであります。二十七年度予算につきましては、すでに均衡化は表面的には実現されておるけれども、今申上げましたように実質的には赤字財政に一歩を進めたものであり、かなりインフレ的な要素を含んでおるものといたしますならば、二十七年度予算実施に当りましては、インフレを誘発しないように十分の介意と愼重な施策が必要なことと考えられるのであります。  最後に一言いたさなければなりませんのは防衛力漸増という問題であります。二十七年度予算には防衛関係諸費といたしまして先ほど申上げましたように千八百余億円の予算が計上をされております。この点につきまして国民一般が関心を持つておりますのは、二十七年度がこの通りだとして二十八年度以降の防衛関係諸費が幾ばくに上るか、又この防衛関係諸費を賄うために今後増税実施されないで済むのかどうか、こういつた一連の考えであります。今日防衛力漸増という言葉が用いられまして再軍備という言葉が特に排除されておりますけれども、いつまで防衛力漸増というだけの表現で済まし得るものであるとは考えられないのでありますが、これらの点につきまして政府といたしましては、将来の財政のあり方について何らかの計画国民の前に示す必要がありはしないか、こういう点を考えるのであります。  最後に申上げなければなりませんのは、二十七年度予算が一方では減税実施し、講和條約発効後の独立に備えるために他方では防衛力の強化の費用を計上しておる。而も財政面としては一応均衡のとれた形を示しておる。これらのことから防衛力漸増というものが何ら国民負担増加することなしに実現され得るかの安易な考え方に陷りやすい傾きがありはしないかということであります。大蔵大臣防衛力漸増について日本経済力を考える、国民経済の向上に資することを目的とし、同時に増税を行わないということを申しておられますが、果して大蔵大臣の言われるような方向で今後防衛力漸増が期待し得るものであるかどうか、それらの点について国民はかなりの疑念を持つておるということを申上げまして私の公述を終りたいと思います。
  4. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 只今の公述に対しまして御質問のかたは……。
  5. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 非常に御尤もな御意見ですが、特にまあ彈力性を欠いておるという点は我々としても今後もつと突込んで研究してみたいと思いますが、ただ一つ若しかお調べなつたことがあつたらばお伺いしたいのですが、防衛費千八百二十億といわれておりますが、それは直接一般会計予算のほうに出ておるのですけれども、このほかに例えばやはり一般会計の中で公共事業費の道路とか港湾、或いは特別会計でも国鉄とか、電通あたり間接的に進駐軍駐留俘つて一般会計予算防衛費として出ておる以外にやはり実質的に防衛費的なものが相当あると思うのですね。こういうものを何かお調べなつたことがありましようか。或いは今お手許資料がなければ、何かどういうようなもの、この資料があるかどうか、その点ちよつとお伺いしたいと思います。
  6. 福良俊之

    公述人福良俊之君) お答えいたします。木村さんの御質問のような資料を今日手許に持つておりません。調べるといたしましたら各省予算のうちから個々別数字を拾つてみて実際問題としてその施設費等進駐軍関係のために使われておるか、或いは将来の防衛のために使われておるかということを個々別調べてみなければなかなか困難な問題だと思います。まだ私そういう計算をいたしておりません。
  7. 和田博雄

    委員長和田博雄君) ほかにございませんか。……それでは次に国鉄労働組合本部給與対策部長沢田さんに公述をお願いします。   —————————————
  8. 沢田広

    公述人沢田広君) 沢田でありますが、二十七年度予算につきましては特に国鉄関係部門からの公述をいたしたいと存じます。  最初にこれは私たち国鉄職員も含めてでありますが、非常にこういう席上で申上げることがよいか悪いかわかりませんが、特に予算委員会皆さんがたにお願い申上げたいことは、昨日の災害に併いまして北海道方面の我々の同士、その他のかたの相当困難が感ぜられておるやに聞き及んでおりますので、速かに復旧の措置を講じて頂きたいということを先ず最初にお願い申上げます。  それから昨日以来公述人が幾多の内容を以て申上げておりますので、私の申上げる内容につましても若干重複する点があろうかと存じますが、その点は御了承願いたいと存ずるわけであります。成るべく重複する点につきましては省略をいたしまして申上げたいと思います。  先ず第一に今のかたも言われましたが、我が国における防衛漸進方法でありますが、現在国民所得の五%は一応二千二百七十八億、広義に解釈いたしまして、防衛費負担として二千二百七十八億となつておるのでありますが、欧洲各国の諸外国の例をとりますと将来一〇%までがいわゆる各国における防衛費負担として考えられるのではないかと我々は国民の一人として心配をしておるわけであります。この場合一〇%に将来なるものと考えるといたしますならば、現在五兆二百億の国民所得の中において五千億程度のものが我々防衛費負担となつて現われて来るということが、いわゆる今日の情勢ではフランスにおいてすらそういううわさなり話を聞き及んでおるのでありますが、日本にもそういう事態が発生しないとは断言できないのではなかろうか。今年は僅かに五%で済んだけれども、二十八年度或いは二十九年度とこの情勢が推移いたしましたときには一〇%程度にも若し漸増する場合に我々国民生活がどのような危殆に瀕するか、いわゆる漸進方法に対する明確なる態度がこの点においては特に必要ではなかろうかと存じております。更に第二点の基本的な問題といたしまして、予備隊か軍隊か保安隊かといわれておる内容につきましてはこれは事実によつて判断をさるべきであろうかと思いますが、少くとも私たち国民の一人として考える場合においては、憲法の違反であるかないかということを、三権分立の民主主義社会においては、やはり納得するということが一つには大きな必要な問題ではなかろうかと思うのであります。いわゆる納得するということにつきましては、これは私たち国民の総数がどういうふうに出ておるかということについては、明確に判断し得る資料はないのでありますが、一昨日かの朝日新聞等世論調査の結果によりますと、すべてわからないというものを一応棄権として考えました際においては、三〇%しかこれを納得するという数字を示しておらないのでありまして、如何に高邁な理論なり高邁ないわゆる理屈が出て来ようとも、国民現実の一部ではありますが、三割というような数字は誠に今年度予算内容を示すものとしては、遺憾と言わざるを得ないのであります。  第三点は、この予算の遂行が、更に産業の中における軍備統制を必要として来るであろう、更にそのことが我々の日本経済に及ぼす影響を考えるならば、これは民生費の切下げとなつて現われて来るということが必然的にこの予算途行上出て来るものではないかと苦慮しておるわけであります。併しながら、公共事業費食糧増産生活保障社会保険結核対策失業対策等について若干ではありますが予算増加せられておるということについては、我々としても非常に了とするものでありますけれども物価上昇に比例してこの増加分が果して正当な増加分として国民の中に見返られるかどうかという点につきましては、甚だ疑問と言わなければならないのでありまして、若しも本年度における物価上昇が、二割なり三割と推定されるわけでありますが、これらの点を考えますときには却つて昨年よりもやはり下廻るという結果が出て来ると考えられるわけであります。更に国家予算の総体として安本計画を私たちが仄聞いたしますところによると、五兆二百億かの国民所得の中において、すでに昨年度よりも一〇%は国民所得の増が期待されておるし、それを予期されて今回の予算が作られているやに聞き及んでおるのでありますが、その一〇%の代りとしての公務員に対する給與ベース引上げ等の問題については何ら考慮されておらないということについては、私たちとしても是非この機会においてこれらの国民所得増加に伴う我々の公務員給與ベース引上げについても同様の措置が講ぜられて頂きたいと存ずる次第であります。更に我々として考える物価上昇の率につきましては、これは追つて最後のときに申上げますが、今安本計画国民所得増加、特に一般所得勤労所得等増加を見込んでおります点に根拠を置いたときにおいて以上の通りであります。  それから次に国鉄予算専売予算についての見解を申上げたいと思うのでありますが、非常に今回の予算が、国家予算及び国鉄予算につきましても、昨年の押し追つた頃講和関係経費の一応の見通しがつくと断ちに予算編成にかかつたやに聞き及んでおりますので、内容が、これは具体的にというよりも、不確実であり、二十六年度補正予算の單なる延長であると断ぜざるを得ないのでありまして、その後における社会的な、或いは経済的な諸條件というものについては考えておられないということができるのであります。簡粗な例を申上げましても二十六年度におきましては、臨時人夫増務給等で私ども国鉄輸送を増大するために一万二千名も必要として予算が組まれておつたのでありますが、本年は僅か八千人にしかならないのであります。これらの点を考えますと、国鉄が一億六千万トンの輸送実施する場合におきまして、その要員的な面におけるところの彈力性は著しく阻害されておるということは論を待たないのであります。更に今回の行政整理を考えますならば、その緊迫度は更に多いと言わなければならないと思います。今年は一億六千万トンで三百万トンの増加となつておるのでありますが、我々が考えます一億五千万トン、二十五年度或いは二十四年以後におけるところの輸送実績に見返られるところの施設その他の改善は期待されず、我々の單なる組合員及び職員の労力においてその負担力増加によつてこれらを途行して来ておるということでありまして、これらの点についても十分考慮をして頂きたいと思うのであります。  更に本年度予算の中におきましては、石炭価格漸進的に上つて来ておるのでありますが、第三四半期以後においても私たちの開くところによると五百円乃至六百円が増加しておるようであります。本年の予算におきましては昨年度予算よりも千円高く予算は見込まれておるとしても、奥に第三四半期以後におけるところの六百円の炭価値上りに対しましては、国鉄の総消費量が六百万トンでありますので大体三十六億、当然これ以上に見込まれなければならんという結果が出て来ておるのであります。これらの石炭節約その他については我々職員がまさに血のにじむような努力をして石炭節約を行なつておるのでございますが、現実の問題といたしましては、以上のように不当に切下げられた価格によつて、それ以上は職員負担増加させる以外の何ものでもないわけでありまして、これらの点についても十分なる配慮を願いたいと思う次第であります。  更に国鉄予算の大綱を考えました際に人件費予算の四〇%であります。戰前戰後を通じまして今年度が最も人件費において僅少であります。これは減価償却その他の当然のものを差引きました場合においては、四〇%でありまして戰前我々の人件費の占める割合は六〇%でありまして、戰後において最も大体順当なところで四六%、本年の人件費は四〇%でありまして、これらの点についても、国鉄職員給與或いは人事費等の問題についても同様でありますが、如何に給與が下廻つておるかということを十分に理解される一例であろうかと存ずるわけであります。内容の中のもう一つ修繕費でありますが、終戰後国鉄の荒廃した車両及び施設修繕費は二十六年度は四百五十億、本年度は五百億で若干増加を見込まれておるのでありますが、炭価が値上りまする二とを考えまするならば却つて修繕費は減つておるようなことになるのであります。而も修繕費物件費の占める中において四〇%も占め  ておるという経営状態ということについては、十分にどこに行つてもこういう状態はあり得べき状態ではなかろうかと存ずるのであります。では修繕費が高くなるのかというとそうではなくて、一般業務費修繕費に比例しただけの予算が組まれておらない、こういう二とを物語るものでありまして、二千億になんなんとする総予算の中において人件費四〇%、その残りの六〇%中に占める修繕費が四〇%、こういう変形的な予算でどのようにこれらの国鉄通常という問題を考えるかといえば、これらの負担はすべて我々職員負担となつて現われて来るという結果が出て来るわけでありまして、我々は働けどほんとに働けどなおこれらの予算に縛られたままで我々の給與べースも据置かれる、そうしていろいろな労働條件劣悪化が期待されなければならん。こういう歎かわしい状態であることを十分理解して頂きたいと思う次第であります。人員の面におきましても、工事勘定面におきましては二十六年度よりも三十二億増加をされておりまするけれども、これ又二十六年度物価と二十七年度物価差を換算いたしまするならば、工事費についても同様のことが言えるのであります。  以上甚だ簡單でありますが、国鉄予算内容を分析いたしました際における変形的な予算構成というものを十分御考慮の上に、我々が山陰線或いはその他の山間線のところを通ります列車が、如何に老朽して、そうして困つておるかという事情については十分御理解が頂けると思いますので、これらの点にも十分な御配慮をお願い申上げたいと思うものであります。  最後給與ベースと、それから勤務地手当についてでありますが、公務員及び国鉄専売に関しまする給與ベースについては、専売国鉄団体交渉権を持つておりながら、今回の予算内容に示されておりますように、補正予算の引延しだけにしか過ぎないのでありまして、その他の物価上昇などについては何らの考慮も拂われておらないのであります。我々は団体交渉権を有すると言いながら、かかる予算を御決定を願いますれば、我々が二十七年度賃金要求その他については本当に皆目知れない、我々の団体交渉権は実質的に剥奪されているというような事態になりますので、少くとも安本計画しておるところの国民所得増加に伴う我々公務員国鉄専売等給與ベース引上げは当然政府の責任において処置せらるべきではなかろうかと考えるわけであります。我々が考えます毎月勤労統計という一般民間賃金上昇を、一応二十五年の六月を一〇〇といたしまして、これらを最小自乗比の二次曲線を描いてとりました場合には、少くとも二五%、二割五分の上昇が予想されるわけであります。更にCPIに例をとりまして、これらをやはり曲線を描いて見ますと、これ又二割から二割五分の、二十六年九月から二十七年九月が二割六分程度が見込まれるわけであります。これらの事実が隠蔽されたままで、これらの予算が審議されるということについては、私どもも甚だ遺憾と言わなければならないのであります。  最後勤務地手当につきましては、先般人事院のほうで勤務地手当の勧告がなされました。併しながら勤務地手当はゼロ地を基準にいたしまして、物価のでこぼこを調整し、生活費の中の安定度を全国平均的にならして行くことが主眼なのでありますが、現在の地域給を引下げるものでなくて、勧告せられました勤務地手当公務員及び国鉄専売等についても適用せられるものと考えますならば、当然それは補正予算としてなり、或いは追加予算としてこれらに追加計上せられるべきではなかろうか。これが現在のベースの中において措置せられるということについては、実質的にはどこか引下げるところが出て来なければそれだけ上らないという結果が出て来るのでありまして、單なる名目的な勤務地手当上昇ではなくて、どうか予算委員会におきましても、これらの実質的な勤務地手当が支給し得るよう……。政府の答弁等を聞きますれば、何とか措置したいというようなことでありますけれども予算的には措置はされておらないということも十分考えなければならないと思いますので、是非この機会に……。この機会を逸しますと、あとはなかなか機会がないとも考えられますので、どうかこれらの勤務地手当の問題につきましても、補正予算並びに追加予算措置を講ぜられるよう切に所念して止まないものであります。更に専売の点に触れるのでありますが、専売については専売益金がすべて国庫納入となります。そのために国鉄と同様のことが言えるわけでありますが、やはり実質的に団体交渉は予算の枠内に限られるわけであります。以上のような経過によりまして、給與準則を作る場合におきましては、当然予算の枠内に限られてしまう。これらの点についてもよほど彈力性のあるように団体交渉権を認められ、我々が団体交渉権によつて労働條件の改善を図るという基本的な権利から行きますならば、これらの点については十分御考慮願えるような措置を講じて頂きたいことも併せてお願い申上げたいと思うものであります。  時間の関係上雑多な点にいろいろと触れましたけれども、以上甚だ簡單でありますが、国鉄予算及び国家予算について私たちの見解の一端を申述べて御参考に資すると共に、どうか我々が納得し得るような、国民が納得するような予算編成に御霊力下されんことを切にお願い申上げる次第であります。
  9. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 只今の公述について御質問がありますれば……。
  10. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 只今の御公述の中で、今年の九月で二十乃至二十五の物価上昇従つて給與上昇があるべきだというお話を伺いましたが、給與について考えられておりますあるべき姿の金額と、それから先ほどの御陳述との関係を一点、それから地域給のお話がございましたが、国家公務員について、これは国鉄職員を国家公務員でないと言うわけではありませんが、一般の公務員については二月十二日に地域給について意見書が出たわけであります。それが今国会で議決されて実現を見ると思うのでありますが、この一般公務員の地域給に関連して論議せられましたことは、国鉄についてあれと同様な勧告を実施するならば二億円ほどの経費が要る、ところがそれは国鉄で考えるべきであつて、一般予算の中には考慮せられておらんかのように聞き及んでおるのです。従来の地域給についても一般公務員国鉄と違つて参りましたのですが、その点についての御見解或いは実情等についてお話を願いたいと思います。
  11. 沢田広

    公述人沢田広君) 最初の二五%の問題につきましては、二十五年の六月を一〇〇にいたしまして、毎月勤労統計、製造工業部門でありますが、製造工業部門のきまつて支給される給與をとりますと、きまつて支給される給與を二十五年の六月を一〇〇にして最小自乗比の二次曲線で描いて二十七年の八、九、十の三ヶ月平均を想定いたしますと、二五%となるわけであります。これは今後電力料金の値上、或いは食品の値上等が全然見込めないで、現在の二十六年の十一月までしか出ておりませんが、十一月までの数字をそのまま平行線とした場合に出て来る数字であります。それからCPI等については若干前月の資料よりも下廻るのでありますが、それでも二十二、三の次曲線と二次曲線は若干違つて参りますが、大体で言うと、一次曲線のほうが割合は下るようであります。二次曲線のほうが割合は上りますが、今言つたような点で二三%は上るということが申上げられるのであります。更にそれ以外に電力料金等の見返りによる諸物価の値上りを考えますと、今申上げたように、国鉄では二八%は来年度上昇されるであろう、こういう推定を下しておるわけであります。それから勤務地手当の問題に対しましては、国鉄の実情は人事院の一応団体交渉権がありますが、前年度は一万八百二十四円が国鉄賃金ベースとして一応調定で決定を見、それが予算化をされたわけであります。でありますから、一万八百二十四円の賃金の分配として本俸、家族手当、地域給としてこれらを構成するわけであります。でありますから、国鉄といたしましては、人事院の勧告通り実施することでもいいし、又はその他ができるのであります。併し予算的に大蔵省と運輸省と国鉄とが決定をする予算的の構成の中においては、やはり勤務地手当が人事院なみとして配付されているやに聞き及んでおるのであります。それで国鉄では実際は五%落してあります。国鉄従業員が割合都市的な性格を持つておりますので、地域給の付いている職員は全職員のほぼ九〇%になりますので、その関係で殆んど付いておるという前提に立ちまして、五%を全員から落しまして、一段下げて実施をしておるわけであります。今回の追加勧告でほぼ上昇する人員は五万人であります。大体一万人上りますと、十円一人当りかかるのでありまして、五万人でありますから、これが五十円として、四十四万人といたしますと、二億二千万円程度が財源として必要となることになります。併しながらこれらの分が全然考えられておらない、特にCPSあたりも、その他勤務地手当という問題については資料が非常に不備であります。国鉄自体でも到底できることでもないのでありまして人事院では二十四年の五月、九月、十一月と、もう戰前というか、朝鮮動乱前のCPSなり、全国消費者価格調べを利用して今回の勤務地手当の指定を行なつているやに聞き及んでおるのでありまして、まさに一昨年の物価を標準にして勤務地手当を作つている、こういうふうに非常に資料としてはむずかしいのでありまして、国鉄としても実質的な事態の調査はできません。そのために公務員のほうの勤務地手当に準拠いたしまして、取扱いをしておるわけでありますが、実情は以上のようであります。併しながら公務員国鉄専売等職員は、給與の面については非常に密接不可分の関係にありますので、公務員等において措置せられる場合については、当然国鉄の分についても同様の措置が講じて頂きたいということを、今日までの経緯及び慣習に基きまして申上げられることであります。
  12. 岩間正男

    ○岩間正男君 輸送量の増加と人員の関係ですね、ちよつとお話がありましたが、これをもつと細かに最近の実情をちよつとお知らせ願いたい。
  13. 沢田広

    公述人沢田広君) 二十七年度予算といたしましては、業務定員の四十六万、これは中間勘定及び損益勘定全部入れてでありますが、四十六万百七十人が一応予算の人員になつております。前年度を戰前の人員にこれを換算をいたしますと、戰前の輸送量と現在の輸送人員とで生産指数の説明を申上げればわかりやすいと思うのでありますが、戰前は十一時間労働でありますから、これを八時間労働に直し、更にそれをその後占領軍、公安官等の国鉄では負担しなくてもよいと思われるものまで負担しておるものもありますが、公安官なり、占領軍その他の人員を加えましてそれから休暇の増を加えますと、現在の人員と同じような條件におきまして割りますと、戰前の昭和九年十月頃の指数を一〇〇にいたしますと、三〇〇の指数が出て来ておるわけであります。詳しく申上げますと、今年度が一億六千万トン、それから旅客人員として一億二千万人、これだけが輸送の見込人員になつておるわけであります。これらの点で扱われる人員としては、今回の行政整理で一応二万二千人いなくなるわけです。而も去年は一万二千人の増務給が見込まれておりましてそれで彈力的な年末輸送なりその他の繁閑業務に従事しておつたわけでありますが、本年度は二万二千人の行政整理があり、加えて増務給臨時人夫の面では八千人しか見込まれておらない。そうして輸送トン数は今申上げたように非常に殖えている、こういう関係から申しまして我々職員負担度が過重になつて来ておるということ芝けは、これは明確に申上げられるわけであります。この内容一つ一つ費目別に申上げればよろしいのでありますが、その点は十分本日の段階では調査して参つておりませんので、若しも御必要がありますならば、追つて調査の上御報告申上げたいと存ずる次第であります。
  14. 岩間正男

    ○岩間正男君 今のような労働過重が職場にどういうふうに現われているか、端的な一応の例でいいのですが、ちよつと伺つておきたいと思います。
  15. 沢田広

    公述人沢田広君) 以上のような場合になりますと、一番皆さんにおわかりになつて頂ける卑近な例で申上げますと、乗務員等につきましては、いわゆる週時間で抑えられているわけでありますが、簡單な例で申上げればロング・ランいわゆる長距離輸送というものが出て来るし、交番としましては、非常に交番が激しくなつて来る。それから出札、改札業務では具体的な例はちよつと見当りませんが、その他の例といたしましては、最も卑近な例といたしまして申上げられるのが、石炭の先ほど申上げた消費なんかの問題については、殆んど媛房用の石炭についても薪なんかを使うくらいにしかやらん。それから連結士、荷扱士、こういうような職員の分野に労働負担が非常に過重になつて来て、職員の離脱数というものが実にこういう労務職については激しいのであります。今年度も荷扱士或いは線路工士或いは連結士、操車上、こういうようないわゆる構内関係の重労務職の人員には相当人員の用員事情が逼迫いたしまして、これらは新規採用しなければできん、こういう状態になつておるのであります。これらの問題が現われて来るということと、もう一つは管理費が非常に制減されて来る。いわゆる局関係、本庁関係の人員が下へ、現場へ押し出されて来て、現場の労務職の穴埋めになつて来る。輸送量が増大して、人員が足りませんので、どうしても事務のほうを削減して現場に行使せざるを得ない、その結果がいろいろな労働環境の不備なり、或いは輸送等の円滑なる運営というものに実質的には阻害を来たして来る、こういうような具体的な例と申しますと、以上のような状況が挙げられるわけであります。
  16. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 一点だけ伺つておきますが、給與の問題は、先ほどお話があつたように団体交渉できめられないということが問題に一番なるのじやないかと思います。そうすると、その団体交渉できめられないというのは、団体交渉ができる権限を国鉄の従事員諸君は持ちながら事実上できないのだというのは、予算総則によつて給與総額がきめられて縛られている。以前には縛ばられていなかつたが、昨年度は縛ばられるようになつた。そこが一番問題になるのではなかろうか。国鉄職員の勤務状態から給與は幾らが妥当であるかどうかということは、予算委員としては、そこまで立入つて考えることはなかなか私はむずかしいと思う。併しながらそれはおのずから解決する手段が……、団体交渉なり、中央調停委員会なり、仲裁委員会なりできめるものなのであつて、それが予算総則で縛られているところに一審困つた点があると思うのでありますが、どうなんですか。
  17. 沢田広

    公述人沢田広君) 非常に御親切な御質問でありますが、その通りでありまして、これは堀木さんも十分国鉄の内部事情は御存じであつて、私以上に御承知のはずだと思いますが、その通りでありまして、予算総則で人件費が抑えられているために、団体交渉権が実質的には不可能になる、こういうことであります。
  18. 和田博雄

    委員長和田博雄君) ほかにございませんか……。どうも有難う、ございました。それでは午前の公聽会はこれで終りまして、暫時休憩いたします。    午前十一時十九分休憩    —————・—————    午後一時二十三分開会
  19. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 午前に引続き委員会を再開いたします。  公述人のかたがたにはお忙がしいところを委員会のために御出席願いまして、委員長から委員会を代表してお礼申上げます。最初に富士製鉄の社長永野さんに公述をお願いいたします。
  20. 永野重雄

    公述人(永野重雄君) 私は只今御紹介に預かりました富士製鉄会社の社長永野であります。  今年度予算案を拜見しまして、猟立後の日本のあり方としまして相互安全保障協定に基く義務を果し、又治安対策に意を用い、一方経済力の増強、民生の安定を図つて、且つ又増税を回避しておられることなど、これは賛意を表する次第であります。ただ今後の日本の行き方としまして、ここにどうしても考えておかなくてはならん問題は、何と申しましても八千数百万人の同胞がこの小さな四つの島で生きて行かなくてはならんということであります。それがために又一方その八千数百万人の同胞が生きるために必要な食糧は、これはその狭い地域からですから、はるかに不足をするわけであります。政府の発表によります六千万石見当とすれば、俗にいう一人年一石というので換算しますと、どうしても二千数百万人分は食糧が足りないということになるわけでありまして、この点について今年度予算案を拜見して、食糧増産に去年が三百九億を四百三億に上げられ、約百億前後のものを殖やしておられることは賛意を表するわけでありまするけれども、併しこれつぽつち……、又この成果が上つたとしても議はまだまだ足りないのでありましてどうしても海外からの買付に依存するほかには方法がない、それには資金が要る、これを今年までは海外援助資金等によりまして、この不足は糊塗して来ておつたのでありまするけれども、独立後の日本としては、それに頼るわけにも参りません。どうしても自力によつてその資金を調達しようとすれば、輸出を増進する以外には手がないのでありまして、輸出を増進しようとしますれば、どうしてもその力の基盤となる産業を振興しなくてはな円んと思うのであります。私は産業界に働いております一人といたしまして、この責務の大きさの重且つ大を考えると共に、又このためにいろいろな角度から施策をして、政府並びにこの問題を取上げて関心を持つておられると思いまする国会の諸公にお願いを申上げたいことが多々あるのであります。  先ず産業の振興と申しましても、一応先立つものは資金でありますけれども、この予算案を拜見いたしますと、二十六年度に千四百三十七億であつたものが、二十七年度予算には千百八十五億と二百八十数億のものが減つておるのでありまして、この点はむしろ奇異にすら思うものであります。一例を申上げて見ますと、産業資金のうち開発銀行の鉄鋼向けの資金を拜見いたしますと、四十億と載つておりますが、私のほうの会社だけですら今月是非必要であつて、そのうち開発銀行にお願いしたいと思つております金額でも三十億になるわけでありまして、鉄全体としますと、百七、八十億円はどうしてもお願いしたいと考える次第でありますが、この例を見ましても、全体的に見て産業資金が十分でないということが伺えるのでありまして、なおその政府資金をお願いする場合の利子も予算案では一割と、一〇%と書いてございますけれども、これは必要な産業に対する資金として果して妥当であろうかどうかということを考えるのであります。現在の一般の金融方面から調達しようとすると、かれこれそれくらいの金利はかかるのでありますから、それと比べて見れば、或いはいいという見方が成立つかも知れませんけれども、先ほども申上げましたように、今後は輸出をして食糧を買わなければならん。輸出をするには国際競争があるわけでありまして、従つて国際競争力を強めるためには諸外国の金利と似通つた條件にしてもらわなければ、その一角については少なくとも不利なんです。競争力を弱めることになるわけでありまして、この点は是非考えて頂く問題ではないかと思うのであります。そのほか産業方面から考えてのいろいろな諸施策のうちで、産業合理化法を目下審議中のように伺つておりますが、これは我々としても是非望ましい法案でありまして、御審議の上御決定あらんことを我々として鶴首しておるのであります。その他産業面から見まして困つておるものに固定資産税があります。殊にこれも私のほうの例をとりましても、相当大きな設備を擁しておる。而も国際競争の見地から利潤は比較的低い、場合によつては赤字にもなりますけれども、そういう種類の仕事にただ設備だけを見た大きな税というものはなかなかこたえるのでありまして、資本蓄積の叫ばれておる際、これは相当に考えて頂く問題ではないかと思つております。なおその他産業者の立場としまして、ここに一番痛感いたしますのは、海外に輸出をします場合には、できるだけ有利に売ることが国民経済を豊かにするゆえんである。卑近な言葉で言えば、それだけお米がたくさん買えるということになるわけでありますが、この共同買付並びに海外に販売をいたします場合でも、上は国際競争がありますから抑えられる。その国際競争の中で一番安い日本の輸出商品相互間で、金が欲しい者が売りたい念に駆られて不必要な競争をする、これも愚の骨頂でありまして日本人の努力が安く海外に持つて行かれ、延いてはそれだけ国民生活を苦しめることになるわけでありまして、この点については何らかできるような措置、書換えますならば、現在あります独占禁止法とか、事業者団体法とか、こういう法については十分な御検討をそういう角度から頂きたいと思うのであります。蛇足かも知れませんが、我々の考えます独禁法とか、事業者団体法とかいう法の本旨は、企業者が相互に協定、提携をして、大衆から搾取をしてはいかん、大衆をひどい目に会わせてはいかんというのが狙いではないかと思うのでありますが、今のような海外との商売の場合には、日本の金を少く出し、又海外から代金をたくさんもらつて不足するものを買おうとするのでありまするから、こういうことができることがむしろ大衆のために役立つことになると考えるのでありまして、そういう見地からこの法も御検討を頂きたいと思うのであります。又輸出の必要は申上げた通りでありまするが、その振興方策としてはいろいろの手段があるのであります。その一方、現在ではむしろ逆にポンドに対する輸出は抑えるというような政策を政府がおとりになつたのでありますが、これも我々産業家の立場からいたしますと、極めて不可解なのでありまして、結局どの地帯にしろ、売つておくことが将来の激しい国際競争をする場合には大事な販路でありまして、その販路を僅かの金の操作だけの理由でこれをチエツクするということはどんなものかと考えるのでありまして、よく例に、アメリカからドルで綿を買つて、そのままポンドで売れば、為替の差益で以てそのまま利益が出るという例を挙げられるかたもあるわけでありますけれども、誰もそういうばかをする人はないのであります。その物資に日本の物資、日本の労働力を附加して海外に輸出するわけでありまするから、その差があつてこそ初めて輸出ができるとも考えられるわけでありまして、それがない場合には輸出できない。できないから国家が助成をしようとすれば、これは又ダンピングとして報復を受ける。又売れないから、うんと労働賃金を下げて競争しようとすれば、これ又ソーシャル・ダンピングと言つて抑えられるのであります。にかかわらず、たまたま為替の操作がそういう状態になつておるために輸出ができるとなれば、善意に今の二つの目的が偶然に輸出しよい環境を作るわけでありまして、それをこちらから荒立ててチエツクをするということは我々にはわからないのであります。又プラント輸出の問題等につきましても、プラント輸出は六カ月以上に跨がる輸出物について輸出銀行がこれを支援するわけでありますが、そういう長期のものになれば、国ですら不安に思われるわけでありますから、その為替のリスクを業界人が考えないわけはないのでありまして、それを補償する措置がないということは、長期に跨がる設備を輸出するためには非常に支障が起きておるわけであります。この点も何らかの補償措置を考えて頂く必要があるのではないかと思います。又先ほどのポンドが過剰だという問題に返るのでありますが、ポンドが余るからそのポンドを使う、言換えますと、ポンド地域から輸入をするということは、これは極めて有意義なことと思うのでありますが、併し個々の企業、我々の立場に立つて見れば、入るのは円でありますから、安いほうがいいということになるわけであります。そこでそれをポンド地域から置付に引付けよう、懲通しようとすれば、ポンド地域から買つたほうが個々の企業から見ても有利だというような措置があつていいのではないか。言換えますと、ポンド地域から買つたものに対しては、結局は為替の実態と公定割合との差があるからそういうことになるわけでありますから、その差くらいのものは、これが一割五分になるか、二割になるか、二割五分になるか知りませんが、その差くらいのものを国家が助成してもいいことになるのではないかと思うのであります。こんなことを皆さんに申上げるのは余分なことと思いますけれども、本当の政治ならば、一人一人の国民に国家のために、国家のためにということを押付けるのでなくて、皆が自分の好むに従つて行動することが即ち国利民福、国家全体の利益になるような施策が即よい政治と我々思うのでありますが、そういう見地からするならば、何らかその間に手を打つて頂いてポンド地域から輸入することが利益なような方策をして頂きたい。それが延いては国家の利益に照応するような施策の御研究をお願いしたいと思うのであります。  又産業は設備、金も要りますけれども、同時にそこで働く人間のことも考えて頂きたいのでありまして、そのためには我々はやはり働いてくれる人たちのために二、三の不平を持つものであります。即ち現在社会保険の料金は、厚生年金とか、或いは失業保険とか、健康保険か、いろいろな施策があるのでありまするけれども、この厚生年金は受取る本人が收入の千分の十五を負担し、失業保険は千分の十、健康保険は千分の三十見当を負担しておりまするから、大損の会社の従業員は月数百円の負担をしておるわけでございまするが、これに対して政府は免税措置がとつてないのでありまして、こういう産業の立場でなく、一般住民の立場で、保険会社の保険に入れば、年四千円までは保険料は收入から控除されて、税の対象から除外されるわけでありますが、一方もつと社会施策として考えられておるこの社会保険料金について、そういう免税措置をとつてないということは、おかしなことではないかと思うのであります。この点も御研究を頂きたいと思うのであります。又そのほか産業従業員の住宅のことにつきましても、企業家が従業員に対して便宜を計らおうとしても、これは普通の社宅に入つておる場合と同じように税の対象になるわけでありまして、こういう点についても何らかの便宜を図つて頂く必要があるのではないかと考えるのであります。又先ほど申しました厚生年金でありますが、この掛金が積り積つて資金運用部に四百数十億円ある由でありまするが、これは従業員が自分のもらつた給料の乏しい財布の中から積立つた金がこれだけあるのでありまするから、これが従業員、労働者の住宅になるように、この資金の使い方について御研究を頂きたいのであります。  直接に私が産業に従事しております者としてお願いをいたしたいのは以上の点でございますが、なお今年度予算案を拜見いたしますと、公共事業費に、二十六年度九百九十四億円であつたものが、今年度は千二百三十六億円と大分増加をいたしております。そうして一方この使い方が、従来は安定本部一本の認証によりまして各省が実施に当つてつたのでありまするけれども、本年からこれが直接各省の計画実施に移されたと拜見いたしたのでありまするが、この資金も折角大事な国民の税金から出た金でございまするので、この使い方については十分なる御注意が必要かと思います。一つのところでまとめてないだけに一おのおのの各省の立場々々で重要度を勘案されまするから、国全体から見た場合に果して重要度に沿つた使い方になつておるかどうかという点については、十分の御注意が頂きたいものだと存じます。又どうしても公共事業費となれば、その費目が大事なものであるということになりまするので、どうしても国家的必要という大義名分に隠れて浪費をされることがあつてはこれ又いけないことであります。そういう点については十分と賢明な議員諸公の御注意を頂きたいものだと考えるのであります。  最後に二十七年度予算歳入の見方でありまするけれども、そのうち税收入で二十六年度よりも七百数十億円の増加になつておりましてそのうち所得税で六十億、法人税で三百八、九十億の増加を見ておいでのようでありまするが、法人税は税法の改正によりまして従来の三五%が約二割殖えて四二%、その結果これが百九十億ばかりの増加になるのでありまするが、そのほかに自然増としまして百九十数億のものを見ておられる計算になるのであります。この点につきまして、結局は利益が多くならなければ殖えない性質の金だと思うのでありますが、これが果して妥当なものであろうかどうかということに疑問を持つものであります。今年度予算歳入の基盤は二十六年度の下期と二十七年度の上期になるのでありますが、私どもの事業をやつております者の経験から申しますと、二十六年度の上期までは、九月までは朝鮮事変に関連しまして、又その余波を受けた景気で多少とも利益を挙げて参つて来たのでございまするけれども、朝鮮事変停戰の声が出、それをきつかけに内包しておる不景気の要素といいますか、十月以降からは急に値が下り、すでに紡績等では大分前から値下げ、輸出の不振等から来る商社等の不振が新聞紙上に多々伝えられておるのでありますけれどもへ私どもの従事しております重工業方面も、数カ月は遅れましたけれども、全くこれと同じような、俗にいう不景気風に襲われておるのでありまして、二十六年度の上下では大変な相違がございますし、加えまして残りの後半の二十七年度の上期も今日がその真只中でございますが、いわゆる二月危機とか三月危機とか申し、新聞紙上でも景気のいい話は一つもなく、商社救済とか、倒産とかいう問題で紙面が満ちておる今の事情、これが果して去年よりもよくなるような基盤となるでありましようか、ただ下期につきましては、これもはつきり今日見通しを言い得る人は恐らくは一人もないとは思うのでありますけれども、まだ日米経済締結、その他のいろいろの問題を当てにすれば多少ともよくなるかも知れない、併し、よくならんかも知れませんけれども、これもまだはつきりよくならないとは言いきれない面がございまするけれども、二十七年度の上期についてはこれは現状でございますから、こんな景気のいい想像は我々事業に直面しております者から申上げますと、想像がつかないことであります。この二十六年の下期、二十七年度の上期を基盤とする日本経済界を前提にして、なお且つ利益の殖えることを前提とした税收入が見込まれておるということに対して我々は疑問を持つものであります。そういう点等につきまして御研究を頂きたいものだと考える次第であります。思いつきましたものを申上げて、御参考に資したいと存じます。失礼いたしました。
  21. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 只今の公述につきまして御質問のおかたは……御質問ございませんか……それでは次に東京大学の助教授の大内さんにお願いいたします。   —————————————
  22. 大内力

    公述人(大内力君) 私東京大学の大内でございます。私は主として農業問題の研究をいたしておりまするので、今日も主として農業問題に関連した意味において本二十七年度予算についていささか考えましたことを申上げて御参考に資したいと思います。    〔委員長退席、理事木村禧八郎委員長席に着く〕  で私の申上げたいことが数点ございますが、先ず第一に申上げておかなければなりませんことは、この二十七年度予算編成の前提になつておる諸條件というものがどういうふうに見込まれているかという点であります。この予算編成の前提要件になる二十七年度経済的諸條件に対する予想という点において、この予算にはいささかの疑問があるのではないかというふうに考えられますので、先ずこの点から申上げてみたいと思います。これも数えればいろいろたくさんある思いますが、ここでは次の三つの点についてだけ申上げておきたいのであります。第一にはこれは昨日の一橋大学の都留先生のここでの証言にも指摘されていたようでありまするが、物価水準をどの程度に見込むかという点については、この予算にはかなりの疑問があるのではないかと考えられるのであります。で、どの程度物価水準を前提としてこの予算編成されておるかということについて私は細かいことは存じませんが、経済安定本部が一応二十七年度の推定として発表しておりますところによりますならば、物価水準としては二十七年度にCPI、消費者物価指数が約四%上るわけです、それから卸売物価指数が約二%上り、それから米価が約三%上る、こう見込まれておるようであります。恐らくこの予算もこの安定本部の見通しを一応前提としているのではないかと考えるのでありますが、ところがこの物価水準の見通しというものは余りにも低きに過ぎやしないかという気がするのであります。例えば過去一年間の物価の変動というものを振り返つて見ますと、昭和二十五年の十一月と昭和二十六年の十一月を比較いたしますと、CPIが二三%上る、卸売物価指数が二八%上つております。で、この一年間にこのように物価がかなり急激に上つたということは、申すまでもなく朝鮮事変の影響を受けたものでありますので、今後もこのような物価騰貴の趨勢が続くというふうに直ちに考えることはできないかも知れませんが、併し他方におきましては、今後予定されております例えば賠償の支拂とか、或いは防衛費の放出というような、具体的に申しまするならば非生産的な支拂が増加するということを考えましても、それから又この点は後にもう一度申上げますが、予算それ自体の中にインフレを促進するような條件が相当含まれておる、こういうふうに考えられるという点から考えましても、かなり今後インフレが進行して物価が上ることを我々は予想できるのではないかと考えるのであります。いずれにせよ、そういう意味でCPIが四%、卸売物価指数が二%しか上らない、こういう安定本部の見積りというものは、私は物価の動向を余りにも甘く見過ぎてはいないか、こういう感じがするのであります。そこで若しこの安本の見積り以上に物価が騰貴するということになりまするならば、二十七年度予算というものを我々が考えますときも当然そういう物価水準の変動というものを考慮に入れなければならん、そういう意味で單に名目額だけでこの二十六年度と二十七年度を比較するということはそれは意味がない、そういう物価水準がどの程度であるかということをおよそ見込んで予算の問題を考えなければならないのじやないか、こういうことを先ず考えております。  それから次に国民所得についてでございますが、この推定も私はかなり疑問を持つておりますが、この二十七年度予算の説明によりますると、二十七年度国民所得として五兆二百七十億というものが見積られております。この五兆二百七十億という国民所得は二十六年度に比べますと、八%殖えるという計算になります。ところで先ほど申しましたように安本の一応の前提では、物価水準はCPIが四%、卸売物価指数が二%でありますから、その中間をとりまして約三%ぐらい上がる、こういうことが見込まれているわけでございますから、そういたしますと、この五兆二百七十億円の国民所得というものはこれを二十六年の物価水準に直しまするならば四兆八千八百億円、こういうことになります。従つて二十六年度国民所得に対して二十七年度は実質的に五%の増加が見込まれているから、名目的には八%の増加でありますが、そのうちの三%だけは物価水準の騰貴でありまして、五%は実質的に増加する、こういう見込みが立てられている、こういうことになつております。ところが実質的には国民所得が五彩増加するということは明らかに過大評価であります。二十五年度から二十六年度国民所有は名目的には二〇%以上の増加を示しておりますが、併し物価水準を勘案いたしまして実質的な国民所得増加というものを推定いたしますと、およそ三%弱しか殖えていないと考えられるのであります。つまり朝鮮事変でかなり景気がいいとされておりましたこの一年間でさえ国民所得の実質的増加はやはり三%であります。又、戰前の統計を調べて見ますと、戰前におきましても、日本では大体国民所得の年増加率というものは均して申しますと、二%乃至三%ということが言えると思うのであります。従つて、そういう意味で五%の国民所得の実質的な増加というものを予算の前提として見込んでいるその見込み方は、私はどうしても過大評価と言わざるを得ないと思います。その点から考えますと、この二十七年度一般会計予算国民所得に対しまして一七%であります。それから二十六年度一般会計予算国民所得に対してやはり一七%寺あります。従つて二十七年度も二十六年度国民大衆の財政負担というものから言えば同じである、こういうことがしばしば言われているわけでありますが、そのことは二重の意味において誤まりを冒しているのじやないかと考えられるのであります。と申しますのは、第一には二十六年度一般会計予算国民所得の一七%である、こう申しましたときには、これはいうまでもなく最終予算をとつて申しているわけであります。ところが二十七年は申すまでもなく当初予算数字であります。二十六年度の当初予算で見すすならば、二十六年度の当初予算国民所得との比率は一四%に過ぎない、従つて当初予算同志を比べますならば、本年度はそれだけですでに三%の増加が認められる、こういうことになるわけであります。他方では先ほど申しましたように、国民の実質所得が過大評価されておりましてこの過大評価された所得に対して一七%という割合が出て来るわけでありますから、この過大評価の点を修正いたしますならば、財政負担はもつと高率になる、こう考えられるわけであります。そして今後、後に申しますが、恐らくは追加予算が組まれて財政が更に膨脹するということは不可避じやないかと考えられますので、いずれにせよ、この財政の規模というものは国民経済に対してはかなり大きな比率を持つている。二十六年度よりはかなり国民財政負担というものが増大する、こういう予想を立てることができると思うのであります。無論国民経済に対する財政規模がどのくらいでなければならないかということは、一概には申せないことでありますが、戰争前で申しますならば、およそ一四%くらいであつたのでありまして、それが戰後かなり高くなつておりまして、昭和二十四、五年には大体二四、五%となつておりますが、昨年度あたりはかなりこれが縮減せられて来た次第であります。ところが本年度以降又この国民所得に対する財政割合というものが膨脹を始めるということは何と申しましても、国民経済にとつて相当大きな負担であろうということを考えなければならんと思うのであります。  それから第三に申上げたいことは、この予算の米価であります。予算米価として考えられておりますのは、二十七年度の九月におけるパリティ指数二五五と推定いたしまして、石当り裸価格七千二百十四円というものを見込んでおります。このパリティ指数を二五五として七千二百十四円の米価を見込むということは、私は次の二つの意味において疑問を持つのであります。第一には先ほど申上げましたように、来年度物価水準が安本の見込みよりはもつと高くなるだろうという予想が立てられるのに対しまして、本年の二十七年度の九月のパリティ指数を二五五と見込むということは余りにも低きに失しているということであります。二十六年の九月のパリテイ指数は二四八・四八でありますから、それに対して僅か三%高という米価を見込んでおるのに過ぎないわけであります。ところがすでに農業パリティ指数は二十六年の十二月におきまして二五八・四七というところまで行つておりまして、すでに予定された二五五を突破しているのであります。この点から申しまして二五五というパリテイ指数の見積りは余りにも低きに失しているということであります。それから第二には、この七千二百十四円という米価は二十六年の七千三十円という米価を基準にいたしましてそれにパリティ指数の変動というものを乗じて算出したものだ、こう言われております。ところがこの昭和二十二年以来日本で行われて参りましたパリティによる米価の決定方法というものが極めて不合理な方法でございまして、これが学問的にいつて何ら合理的な根処を持たないということはすでに学界の通説になつております。従つて大体こういうパリテイ方式を踏襲いたしまして、計算されました二十六年の七千三十円という公定米価も、実は学問的な根拠のない不合理な米価であると言わざるを得ないのであります。それを更に基礎にしてパリテイ指数だけで米価を決定するということは、米価の決定方法としては私は合理的な根拠を持たないものであると考えます。この点につきまして、現行のパリテイ計算方法が如何に不合理であるかということにつきましては、御承知の通り昨年米価審議会が政府に申入れを行つておりますが、その申入れを御覧下されば明確にその点は証明されているわけであります。米価審議会があの申入れをいたしますために専門委員会を設けておりますが、その専門委員会の中で、それぞれの専門の人が相当長い間研究をしたのでありますが、現行のパリテイ方式が全合理であるという点においては全委員の一致をみた点でございます。その点から申しまして現行の米価算定方式をそのまま続けて、それを以て来年度の米価とする、こういう政府予算の立て方につきまして、私は重大な疑問を持たずにはおられないのであります。  そういうわけで以上物価水準の問題、国民所得の問題及び米価の問題、この三つだけを特に申し上げたわけでありますが、この三つの点から考えましても、二十七年度予算の算定の基礎というものが極めてあやふやな見通しの上に立てられているのではないかという気がするのであります。そういう前提の検討が十分に行われていないということから考えまして、たとえ予算そのものとしては一応の辻棲が合つたといたしましても、恐らくこれを実施いたしますならば、現実予算との間の食い違いが非常に大きく現われまして、忽ちいろいろなところに破綻を来たしはしないかということを慣れるわけであります。そういう意味におきまして、私は国会におきまして、こういう予算を立てる前提條件についての見通しが果して妥当であるかどうかということについて、十分な御検討が加えられんことを希望いたすわけであります。  予算につきましての前提條件については一応それだけとして、次に一般会計歳出のほうを見て参りますと、この一般会計歳出総額国民所得に対してすでに過大である。大き過ぎるということは先ほど申上げた通りであります。ところがこの総額である八千五百二十七億円と場いう一般会計予算から、平和回復に伴う諸経費というもの二千三十三億円を除きますと、いわゆる固有の意味における内政費というものは六千四百九十四億円となります。二十六年度の同じ意味における内政費は六千三百六十一億円でありますから、それに比べますと幾らも殖えていないということがわかるのであります。先ほど申しましたように、物価水準は来年度かなり高くなると考えなければなりませんので、その物価水準の変動ということを見込みますならば、この六千四百九十四億円の内政費というものは恐らくは二十六年度内政費よりもかなり実質的には貧弱なものになるのであろう、こういう予想を持つことができるのではないかと思います。ところでそれに対しまして、平和回復に伴う経費というものを見て参りますと、この中で例えば賠償、それから外貨債の償還、対日援助の返済というようなものをひつくるめて、一括しております平和回復善後処理費というものが僅かに百十億円しか計上されていないという点にぶつかるのであります。で、この賠償や、外貨債の償還や、その他につきましては無論今後の外交交渉に待たなければならないのでありますが、すでに例えばフィリピンだけでも八億ドル賠償の安排いの要求が出ているというようなところから考えましても、百十億円しかこれに計上されていないということは余りにも少いのではないかというふうに考えられるのであります。他方におきましては、先ほど申しましたように固有の意味における内政費というものも、実質的には二十六年よりも却つて減少している、こう考えざるを得ないわけであります。そういう点をいろいろ勘案いたしますと、二十七年度財政がこの当初予算だけで納まるかどうかということにつきましては、むしろ悲観的な見通しが強いのではないかと思うのであります。むしろ二十七年度中にかなり大幅な追加予算というものが組まれることが必要になつて来やしないか、こう考えられるのでございます。若しその予想が正しいといたしますならば、財政の規模炉国民経済に対して大き過ぎる、こういう問題は将来においていよいよ深刻になるだろう、こういう予想を持ち得ると思うのであります。予算全体についてはそういう感じを持つわけでありますが、更にその内容に立入つて少し検討して見ますと、先ず第一に気が付きますことは、これも多くの人が指摘している点でございますが、外国為替資金特別会計、食管特別会計、貴金属特別会計などへのいわゆるインベントリー・フアイナンスと呼ばれるものが、二十六年に比べまして、五百八十七億円も創られております。このインベントリー・フアイナンスと言いますものは、申すまでもなく財政インフレーシヨンの高進をチェックするという意味を以て設けられている制度でありまして、これがこういうふうに大幅に削られるということは、少くとも財政インフレーシヨンをチエツクする力が弱くなつているということを意味するものだと考えるのであります。なかんずく農業問題との関連において申しますならば、食管会計へのインベントリー・フアイナンスが全額削られているということは私は重大な疑問を持つものであります。で、全額削られたということの基礎には先ほど申しましたような誤まつた米価の算定というものが前提されているわけであります。その誤まつた米価の上に全額の食管特別会計へのインベントリーを削つているわけでありますが、その点におきまして将来若しこの米価が、この予算で要望されている枠内に納まらないということになりますと、食管会計に相当大きな赤字が出ることを予想せざるを得ないわけであります。そうしてこの外為資金にいたしましても、食管特別会計にいたしましても、若しそのバランスが乱されて参りますならば、こういうインベントリー・フアイナンスが非常に削られているという事態の下におきましては、当然その尻が日本銀行の信用膨張という形で拭われざるを得なくなつて参りましてインフレーシヨンを促進する危険性が非常に大きくなると思うのでございます。インフレーシヨンが促進されるということは国民経済全体にとつて無論大きな問題でありますが、特に農民にとつては非常に大きな負担増加を意味すると思うのでございます。すでに朝鮮事変以来、先ほど申しましたように物価水準が相当つて来てインフレ的な傾向が強くなつているわけでありますが、その際に農林省で発表しております農村物価指数を見ましても、農林生産物の上り方は農家の購入品の上り方よりもいささか握れているという傾向が出て来ております。農林生産物が昭和二十四年四月から二十五年三月までの一年間をベースにいたしまして、一〇〇といたしまして二十六年の十二月までに、一四〇・八と、四〇・八%上つておりますのに対しまして農家の購入品、これは農業用品と家庭用品に適当に加重をいたしまして平均したものでありますが、この農家の購入品の価格指数は一四一・二というふうに推定されるわけであり品まして、約〇・四%ほどの値開きがすでにできているということが示されているのであります。若しインフレーシヨンがこれ以上高進するということになりますと、こういうシエーレというものが、一層大きくなる危険性があるわけであります。それだけ農民に対する財政面からの負担というものが殖えるということを意味するのではないか、こう考えます。  それから第二に、特に農業関係経費というものに着目してみますと、この面におきましては二十六年に比べますと、開拓者資金融通特別会計への繰入金が一億円殖えております。農林漁業特別会計への繰入金が十億円殖えております。それから食糧増産経費というものが新たなる項目として出されておりますが、このうちに入れられましたものを抜き出しまして昨年度と比較いたしますと、九十四億円大体増加した、こういう計算が出て参る。このうちで最後に申しました九十四億円が増加している食糧増産経費というものを除きますと、開拓者資金増加にいたしましても、或いは農林漁業資金増加にいたしましても、殆んど名目的な増加にとどまつている。で、来年度において物価水準がかなり上ることを前提といたしますと、実質的には大して殖えていないだろう、こういう予想を持つことができるわけであります。それに対しまして、食糧増産対策費だけは九十四億円、相当大幅に殖えておりまして、総額として四百三億円になつております。併しこの四百三億円から農業保険関係の百七億円というものを除きますと、二百九十六億円になります。で、その中から更に事務費その他のものを除きまして、純粋に農業に対する追加投資、こういう意味を持つものを計算して見ますと、約二百六十二億円というふうに考えるのでありまして、二十六年度の百八十六億円に比べまして七十六億円殖えたというにとどまつております。こういう農業に対する投資が十分であるか、或いは非常に不足しておるかということは一概に里げるのはなかなかむずかしいのでありますが、併し一応の目安といたしまして他方で農林省が今計画しております食糧増産五カ年計画というものの内容を見ますと、それによりますと、少くとも年間五百億円の政府投資が必要であるということが出て参ります。そこで一方では少くとも五百億円の政府投資がなければ食糧の増産を遂行するということが困難であると考えられておるのに対しまして、先ほど申しましたように、一般会計からの農業に対する投資というものは二百六十二億円しかないのでありましてそのほかにこの農林漁業融資のうちから土地改良に向けられる百億円というものを加えて見ましても、農業に対する純粋の投資というものは、財政投資としては三百六十億円しかない、こういうことになります。で、五百億円の必要に対して三百六十億円の供給というのは、やはりかなり過少であるということを言つていいのではないか、こう考えるのであります。  それから第三の点といたしまして注意しなければなりませんのは、地方財政平衡交付金が五十億円殖えたにとどまつておるということであります。地方財政予算につきましては、無論詳しいことはまだわかつておりませんが、地方財政委員会の一応の推定によりますと、明年度の地方歳出総額が七千六億円、本年度に比べまして九百三十六億円殖えるということになつております。これに対しまして歳入のほうは、この平衡交付金を含めまして六千七百八億円ということになりまして差引二百九十八億円の赤字が出る、こういう計算になります。ところでこの今申しました六千七百八億円、この歳入の中には、平衡交付金と地方税とその他の雑收入のほかに地方債が四百五億円発行されることが見込まれております。他方国の予算のほうを見ますと、資金運用部における地方債の引受額は六百五十億円という予想をされております。ところが地方では、先ほど申しましたこの四百五億円の地方債のほかに、電気その他の公共事業のために約二百億円の地方債を発行する必要がありますので、全体ですでに六百五億円の地方債の発行が予定されておるわけであります。そういたしますと、資金運用部の引受が六百五十億円という枠があるわけでありますから、地方財政にとつては四十五億円しか余裕がない、こういう計算になります。従つて先ほど申しました赤字二百九十八億円のうち四十五億円だけは地方債の増加で埋合せることができますが、残りの約二百五十億円というものは、地方税を増徴するという以外には收入増加の途がない、こう一応推定されるわけであります。ところで御承知の通り、今までにおきましても平衡交付金が非常に不足しておりますために、殊に農業県におきましては、又農村におきましては、その財政がもともと平衡交付金に依存する度が非常に高いために、その平衡交付金が不足のために県政や或いは村政というものが半身不随の状態に陷つていると言つてもいいと思うのであります。ところが来年度の平衡交付金も、今申しましたような意味で増額が極めて不足いたしまして、地方財政相当大幅の赤字を生ずるということになつておりますので、その意味でこれは地方財政の半身不随状態と言いますか、特に農業的な地方におけるその半身不随状態というものはなかなか救えないのではないか、こう考えるわけであります。そうして又こういう地方財政の窮乏というものが地方税の増税、こういう形で現われます場合には、申すまでもなく財政窮乏の甚だしい農村地方におきまして増税が大幅に行われる、こういうことを予想することができます。従つて農民にとりましては、地方税負担が一層過重になるということを覚悟しておかなければならない、こういうことになると思うのであります。  簡單ではございますが、一般会計をそれだけにいたしまして、次に特別会計のほうを大急ぎで見ますと、この中で特に私が申上げておきたいことは、この見返資金特別会計についてでございます。見返資金特別会計の新規收入というものは、元利收入だけでございまして、百三十五億円が見込まれております。それに対しまして見返資金からの新規投資は六百億円というふうに見込まれておりますので、この差額の四百六十五億円というものは、手持国債を売却することによつて三百億円を俘かす、それから前年度からの剰余金の中で、これが二百六十五億円ございますが、その中で百六十五億円を使う、こういう形で四百六十五億円を捻出して新規投資をする、こういう計画になつております。併しこれをこのまま途行いたしますならば、言うまでもなく四百六十五億円の資金の撒布超過ができるわけでありまして、明らかにこれはインフレを促進する條件になると思うのであります。尤も財政の上ではその点には一応の考慮が拂われておりまして、資金運用部のほうにおきまして引受を予定されておりました金融債の引受が三百億円全額削られております。それから資金運用部に対する政府預託金というものが百六十五億円増加しております。この両方で、つまり出るほうを三百億円削りまして、預託金を百六十五億円殖やしまして四百六十五億円の資金の引揚超過を作り出す、こういう形で見返資金の撒布超過の尻拭いをしよう、こういうのが財政の考え方だと思うのであります。ところでこの三百億円の金融債の引受停止につきましては、すでに御承知の通りそれが長期資金の供給を非常に窮屈にする、殊に電力の復興若しくは開発という面におきまして資金不足が著るしくなるだろうということが憂えられているわけであります。又今後予定されております例えば日米経済協力その他の條件を考えますと、相当生産の拡大が行われ、資金需要が殖えるだろうという予想を持つことができると思うのであります。そういたしますと、この預金部の引受が停止されました三百億円の金融債というものも、結局はどこかで引受けざるを得ないのではなかろうか。それで引受けられる最後の行き場所は、結局は日銀の信用膨脹というところにその帳尻が向つて行くのではないか、こう考えられるのでありまして、若しそういう事態が起るといたしますならば、それはやはり通貨の膨脹を惹き起してインフレを促進する條件になりはしないか、こう考えるのであります。それから他方この百六十五億円の政府預託金増加というものは、一応の説明によりますと、租税の自然増收分が二百億円くらい見込まれている。その二百億円の自然増收分を預託して、その中で少くとも百六十五億円は、今申しましたような形で引揚超過のために使う、こういうことでありますが、この点も私はむしろ疑問にするのであります。仮に租税の自然増加分が二百億円くらいあるといたしましても、先ほど申しましたように、今後におきまして相当大幅な追加予算が組まれるということは必至の状態であります。そういたしますと、この二百億円の自然増收分をいつまでも預託しておくわけに参りませんので、結局はそれは追加予算のための財源として使われざるを得ない、こういうことになりますから、従つてこういう政府のやり方では決して資金の帳尻が合つたということにならないのではないか。やはりこの面からの資金の撒布超過が生じてむしろインフレが促進される、こういう傾向が出て来やしないか、こう考えるわけであります。いずれにいたしましても、こういうわけで見返資金の過大放出という点につきましては、十分なる御審議を盡されんことを希望するのであります。  それから最後にこの歳入のほうを簡單に言いますが、歳入におきましては租税、印紙、専売益金というものが、合計いたしまして八百三億円増加しております。これに対しまして官業收入、資産整理收入、雑收入というものが二百八十六億円減じております。租税、印紙、専売益金、それがこういうふうに八百三億円、相当大幅に増加いたしたために、この国民所得に対しまする租税の割合というものは相当殖えております。即ち二十六年度におきましては、国民所得に対する租税、印紙、専売益金の割合というものは一四・四%でございますが、二十七年度には、この予算通りで計算いたしましても一五・三%、こういうことになります。ところが先ほど申しましたように、二十七年の国民所得はむしろ過大に見込まれている、こういうことが考えられるわけであります。そのほかなお、政府は先ほど申しましたように二百億円の租税の自然増收分というものを見込んでおります。この一方における国民所得の過大評価ということと、他方における、予定されている自然増收分二百億円、こういうものを合せて考えますと、実は二十七年度における租税負担率というものは一五・三%よりももつと高くなるであろう、こういう予想を持つことができるのであります。一応の御参考までに私はこういう推定をして見たわけでありますが、と申しますのは、先ずこの物価水準に、これはいろいろ前提の仕方があるわけでありますが、この点につきましては政府の前提に従いまして大体物価水準が今後一年間に三%上る。それに対しまして実質国民所得は、先ほど申しましたように、政府は五%殖える、こう計算しておりますが、これは明らかに過大だと思います。むしろ従来の日本の実情から申しますと、せいぜい大きく見積つて私は三%と見込むのが適当であると考えます。そこで物価水準が三%上り、実質国民所得も三%殖える、こういう計算をいたしますと、二十七年度国民所得政府の発表するのと違いまして四兆九千二百十六億円、こういうことになるのではないか、こう考えるわけであります。これに対しまして先ほど申しました千二百億円の自然増收分を加えた租税負担率というものは一五・八%、こういうことになります。そこで二十六年の一四・四%から二十七年の一五・八%に殖えるわけでありますから、国民の租税負担は約一割増加する、こういう計算になるわけであります。で、併し租税負担ということになりますと、なおそのほかに地方税を考えておかなければなりません。で、地方税は一応の計算によりますと、二十六年は二千五百十億円でありますが、それに対しまして二十七年度は三千二十七億円になるのではないか、こういう予想を持つのであります。この三千二十七億円になると申します意味は、自然増收分を二百六十七億円と見込みまして、そのほかに先ほど申しましたように、地方財政から生ずる赤字が二百五十億円ある、ごう見込みまして、両方合せまして五百十七億円の増加を見込んだわけでありまして、そういたしますと三千二十七億円の地方税負担、こういうことになります。それで計算いたしますと、租税負担全体、つまり国税と地方税合せました租税負担全体が、二十六年度が一九・九%であるのに対しまして、二十七年は二二・一%になる、こういう計算が出て参りまして、約一割一分の租税負担増加と、こういうことになるわけであります。で、先ほどの公述人のお話にもございましたように、この今年度の国税收入の見積りというものはいささか過大ではないかということが、当然私の疑問とする点でありますが、まあその点には深く立入りませんで、今申しましたように、政府の言明によりますと、本年度におきましては一応税法上の増税という措置は行われない、こういうことになつております。併し税法上の増税措置は行われないにもかかわらず、国民の租税負担率というものは、以上申しましたようにかなり高くなつておる、こういう現象が出て来るのであります。なぜこういう現象が出て来るかと申しますと、申すまでもなくそれはインフレの進行につれて所得が名目的に膨脹する、ところが所得が名目的に膨脹いたしましても、例えば所得税のような累進税の場合にはやはり税率が自動的に高くなりますし、又基礎控除その他の控除が据置になつておりますならば、それが実質的には自動的に切下げられたと、こういうことになるわけでありまして、そうして租税負担が増大するということになるわけであります。    〔理事木村禧八郎君退席、委員長着席〕 而もこういうこの所得が單に名目的に殖えるということ、又は基礎控除その他の控除が名目的に据置かれておりますために、実質的には減少する、こういうことによつて生ずる租税負担の増大というものは申すまでもなく低所得者の所に比較的大きくかかる危険性を持つているのであります。そういう意味から申しますと、政府が見込んでおります租税の自然増收分というものは、実は正しく言えば自然増收ではなくて自然増税である、こう言わざるを得ない場のであります。その自然増税は而も少所得者に大きな負担をかける危険性があるのではないか、こういうふうに私は考えるのであります。その点についても御検討を煩したいのであります。  以上幾つかの点を思い付くままに申上げたわけでありますが、一言にして申しますならば、二十七年度予算というものは全体として私は歳出が過大である。この予算をこのまま途行いたしますならば、国税、地方税を合せて増税が必然になつて来る、又インフレーシヨンを促進する危険性が極めて多い、こういうことを先ず感じます。而もそういうふうに財政歳出が過大であり、国民経済にとつて大きな負担であるにもかかわらず、国内に対する財政面からの施策というものは、案外貧弱であると言わざるを得ないのであります。で、それはほかの面についても言えると思いますが、農業に対しましても十分なる政府資金が供給されているとは到底考えられないのであります。一方では財政が過大であり、一方では国内に対する施策が案外に貧弱であるという矛盾はどこから出るかと申しますと、申すまでもなく、平和回復に伴う費用というものが約六百億円も増加して、財政の中の非常に大きな比率を占めておるからであります。従つてこの財政日本経済の実情に合つたように合理化いたしますためには、私はこの平和回復に伴う費用というものを能う限り削減する以外には方法はないのではないかこういうふうに考えておるわけであります。  以上で私の申上げたい点を終ります。
  23. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 只今の公述に対しまして御質問がございませんか。
  24. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 一点お伺いしたいのですが、最後に述べられました推定の中で、物価水準三%を国民所得その他租税の負担率を出すために出されましたのですが、その中の物価水準の高騰の見通しなんでありますが、お話の中にも大分インフレの要素を御指摘になりました。或いは賠償その他の経済界に支出されるものを考えて、そしてインフレの要素は二重、三重に働く点を考えますと、三%というのは如何にも小さいような感じがするのでありますが、これらの点についてもう少し御意見を承わりたいと思います。
  25. 大内力

    公述人(大内力君) 私の言葉が足りなかつたかも知れませんが、私も最初に申上げましたように、物価水準が三%であるという安定本部の見積りは余りにも低過ぎると思つております。それが一〇%になるか二〇%になるかというようなことを正確には到底申されませんが、併し過去におきまして、先ほど申しましたように、一年間に二〇%程度物価水準の高騰があるというわけですから、それから推しましても三%というのは余りにも少くはないかと、こう考えるわけであります。最後国民所得の見積りを申しましたのは、これは一応の目安として租税負担の率を出すためにしたわけでありまして、その場合には先ほど申しましたように、名目的な国民所得増加よりも、むしろ問題なのは実質的な国民所得増加をどのくらいと見込むかという点で考えなければならないと思つたわけであります。そこで名目的な物価水準は、政府は一応三彩と見込んで財政を組まれているわけですから、一応その前提に従つて物価水準は三%上がると考え、ただ実質的に国民所得が五%殖えるという政府の見積りは過大だからそれを三%というふうに修正する、そうして得た国民所得に対しまして、この政府の見積りの財政若しくはその財政から生ずるべき租税、こういうものを掛け合せて見ますと、先ほど申しましたように租税負担相当殖える、こういう結果が出る、こういうことになるのであります。従つてこの物価水準が若しもつと上るということになりますと、国民所得は名目的にはもつと殖えますが、恐らくそうなれば財政のほうも追加予算が必要になつてもつと膨脹するので両方が変動いたしますから、その場合予想することは非常に技術的にはむずかしくなると思います。一応の計算の目安として、そういう意味でどちらについても、つまり国民所得物価水準の要素につきましても、それから財政支出につきましても、一応政府の案を前提とすると今申しましたような結論が出る、こういうふうに申上げたのであります。   —————————————
  26. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 次に宇都宮市長の佐藤さんにお願いします。
  27. 佐藤和三郎

    公述人佐藤和三郎君) 只今御紹介のありました宇都宮市長佐藤和三郎であります。私は都市関係から見まして今度の国家予算はどういうふうに都市に響くかということについて一応私の意見を申述べたいと存ずる次第であります。すでに議員各位におかれましては、現在の都市行政の内容については十分おわかりであろうと存ずるわけでありますが、一応現在の市の状況はどうであるかということのアウト・ラインを御参考のために先ず以て申上げておきたいと存ずる次第であります。  一昨年の税制改正によりまして非常に市町村は有利な立場になつた、もうこれで地方自治は市町村に関する限り確立したかのごとくに政府方面からは放送されておるやに聞いておるのでありますが、これはとんでもない話でありまして、現在の我々市と申しまるか、どうにもならん状況に立至つておるわけであります。と申しますのは、御承知の通り学制改革等によりまして六三制の管理が未だにできておらないのであります。殊に戰災八十有都市の実情を見ますると、小学校においても、市のあらゆる設備において灰燼に帰しておるのでありまして、そこべ六三制というような面におきまして新制中学も造らなければならんという状況に追い込まれて、戰災都市のごときは現在二部教授、或いは極端には三部教授をやらざるを得ない状況にあるわけでありまして、而も政府においては戰災復興その他については、何らこれらに対する措置を講じておらないというのが現状であります。戰災を受けない都市におきましても、大体人口の増加というものは農村に比較いたしまして都票どんどん人口が殖えて参つておるのでありまして、殊に敗戰後引揚げ、或いは外地より参られましたかたがた、結婚し、それによつて人口の増加というものは非常な速度を以て行われたわけであります。それが丁度明年、或いは明後年を境といたしまして極端に入学兒童が殖えて参ります。これらに対しましても政府は未だ大した施策を行おうとしておりません。今度の予算を見ましても六三制の割当に対しましては三十五億程度、昨年より大分減らされた補助金を含まれておるようでありますが、到底、明年、明後年になりまするとさなきだに狭いところにこの程度予算で置いては恐らくは三部教授をやらざるを得ないという現状に追い込まれるのではなかろうかと、かように考えておるのであります。而も警察も御承知の通り自治警察が発足しておるわけでありまするが、町村については昨年警察法の改正によりまして、大体返上したようであります。併し市に関する限りは更にこれは増強して参らなければならない。現在の治安状況からいたしましてもますます警察費というものが殖えて参つておるのであります。而もその当時、自治警察発足当時は、入場税等によつて賄えということで税制改正をやつて頂いたわけでありまするが、一昨年これは都道府県に入場税等は移管されておる。その代りに何が来たかと申しますれば、これは市として、御承知の通り市民税、或いは固定資産税というような程度のものでありまして、勿論特殊なる市町村、大きな工場がたくさんある、或いは発電装置があるというような特殊な市町村においては相当固定資産税の増強が行われるわけでありまするが、大半の消費都市においては逆減つてつておるのであります。一例を、私の宇都宮市に、小さい市でありまするが、この例からいたしますれば、二十四年度におきましては大体二億一千万程度の租税收入があつたわけでありまするが、一昨年の税制改正によりまして一億七千万に激つてつておるのであります。その後の法人税割等の市民税が取れることになりまして、僅かには殖えておりまするが、それとても一昨年の税制改正前に比較いたしますれば、まだ二割、三割の減を来たしておるというのが現状であります。併しこれとても決して放つて置くわけではないのであります。内容からいたしますれば、非常に市民の負担は増強されておるのであります。固定資産税等におきましても同様であります。相当の評価をいたしまして以て今日やつてつておるわけでありまするが、殊にこの内容につきましても、現在の税制においては取れないものが出て来ておるのであります。一例を申しますと、私のほうには東京電力株式会社がありまするが、ああいう設備におきますると、他の町村に跨がる場合においては、地方財政委員会がこれを配分いたすことになつております。私のほうでは全部これを市に関する限り調査いたしましたわけでありまするが、地方財政委員会から配分されたものは八分の一程度のものであります。私のほうは当然送電だけを特別な扱いをいたしまして、特別な固定資産税をかけるというようなことは考えておらないわけで、飽くまで公平なる立場において固定資産税はかけておるわけでありまするが、地方財政委員会方面からの割当は帳簿価格によつてつておるということで、その八分の一に満たないという状況でありまして、これを地方財政委員会で取つてもらいたい、而も取る方法がないというような、我々には査定をするだけの人員がないというようなことで、現在そのままになつておるというような状況にあるのであります。かように我々は飽くまで税というものにつきましても、これは公平に而も現在の市の運営からいたしまして財源不足を補うと言いまするか、いやでも応でも取らざるを得ない状況にあるわけであります。殊に昨年度国家公務員のベース・アツプ等に基きまして、市の吏員に対しましても当然これは上げねばならんわけでありまして、全国各市におきまして同様の措置を取つておるわけであります。これらに対する財源については、勿論政府は全然見て頂けないわけでありまして、かようなことにおいて今後現在の市をやつて参るということは容易ならざるものがあるのであります。殊に最近全国二百六十九都市に対しまして調査いたしましたわけでありまするが、そのうち百十三市、これは勿論五大都市も入つておるわけでありまするが、百四十億の赤字を現在出しておるのであります。それは恐らく無駄遣いしておるのであろうというようなことにおいて現在厳重にこれを調査するというようなことで地方財政委員会からも各都道府県にその調査を依頼しておるように聞いておるわけでありまするが、我々市といたしまして無駄遣いするどころの騒ぎではないのであります。殊にこれは各市からも調査を頂戴しておるわけでありまするが、私の市においても、前回も市長として昭和二十二年からやつておりまするが、あの二・一ゼネスト間もなく就任いたしましてこれでは財政が困るということで、もうそれ以来私は三回首切りをやつております。非常に気の毒でありまするが、止むを得ません、本年も約一割を三月、今月を以て又一割の首切りを断行いたします予算を今市会に計上いたしておる次第であります。これ以外に仕事が殖えて参つておる。併し止むを得ない措置といたしまして応分の退職金を差上げてやめて頂こうということにおいて、而も又需用費、消耗品費その他事務関係の費用におきましては極度に減らしております。従来よりも相当値上りをしておることはすでに御承知の通りでありまするが、これを節約によつて大体昨年以下に切詰めて行くというような状況であろうと、これは各市ともかような状況になつておると存じます。かようなことにおいて現在我々は極度の節約を以て今日に処しておるわけでありますが、然るに今回のこの予算案からいたしますると、いつも都道府県、或いは市町村において問題になつておりました平衡交付金が千二百五十億というように計上されておるわけでありますが、これは大体明年度、二十七年度の地方財政計画からいたしますると、都道府県においての不足額は百九十四億三千百万円、市町村関係におきましては五億六千九百万円、結局都合二百億足らぬ。そのうち平衡交付金によつて年度より五十億を増額して一千二百五十億にし、起債においては百五十億を増額いたしまして六百五十億によつて賄うということにおいて今年度平衡交付金の一千二百五十億、起債の関係を六百五十億にした、こういう状況であります。ここに問題があるわけであります。昨年皆様の非常な御支援によりまして平衡交付金その他においても増額を願つたわけであります。然るにその大半が、大半というよりも殆んど全部が都道府県に行つておるのであります。配分されておるわけであります。起債においても同様であります。ここに我々市町村が困難を来たしておるわけでありまするが、どういうわけでかような結果になつたか。勿論現在の都道府県は財源的にも困つておることは事実であります。決して都道府県が財政的にいいと私は申上げるわけではありませんが、この配分その他につきましては、十分な、今後検討を加えて頂かなければならん。そこで我々といたしましては、都道府県も困つておるならば我々も困つておる状況を縷々申上げておるわけでありまするけれども、これが未だに容れられないでおることは、非常に我々としては遺憾であります。而も明年度の問題につきましては、先ほどもお話があつたようでありまするが、市民税を七十億増強、固定資産税において百三十九億を増強する、こういうことにおいて市町村はいいのだということであるのであります。併し御承知の通り固定資産関係につきましては、年々これは償却して行くべきが当り前なはずであるにもかかわらず、昨年度固定資産は再評価によつて相当の増額になつております。而も今年度は更にそれをパーセントを上げまして、税率を上げるわけではないのでありまして、評価を上げまして、百三十九億を増強できるというのが政府の行き方でありまして、それであるから市町村のほうはその通り上るのであつて、費用は節約するのである、それで五億六千九百万円で事足りるというところに問題があるわけであります。而も市民税関係におきましても七十億の増強をするということは、私どもの市におきましても許された最高の税率を以ていたしておるわけでありまして年々市民の負担というものは市に関する限り殖えて参つておるというのが現在の状況であります。而もその配分関係からいたしまするならば、今のように殆んど平衡交付金にせよ起債にいたせ、都道府県に配分されておる。これでは到底六三制の整備やその他の整備を行おうとしてもできないわけであります。殊に御承知の通り昨年生活保護関係につきまして町村は負担がなくなりました。これは都道府県一本になつたわけでありまするが、市に関する限りは、従来県より一割の生活保護費が補助になつておつたわけであります。然るにそれが昨年以来県の補助というものは、市に関する限り打切られまして、八割が国庫補助、二割が市の負担、一割増しております。それは平衡交付金に入つておるというのが政府の行き方でありますが、すべてが平衡交付金に入つておるとは申せ、その配分から申すと、今のようなでこぼこができておるという現状からいたしましたならば……、而も平衡交付金を一文も頂戴できない市がたくさんあるわけであります。そうすればこれは少しも平衡交付金の……、補助は平衡交付金の中に入つておるというようなことで逃げ口上をたびたび我々は聞くのであります。全然もらえない都市がたくさんあることを御認識賜りたいと存ずる次第であります。かように現在のこの程度の平衡交付金では、到底我々市……町村においても同様でありまするが、完全な自治として運営できない状況にあるわけであります。殊に学校建築関係につきましても、御承知の通りこのような起債の方法において、殆んど大半が、この%において都道府県に枠が拡大されるということになりました場合におきまする今後の教育行政というものは、以て知るべきものがあると存ぜられるものであります。これを大体表によつて%を出して参りますると、昨年の平衡交付金は大体六七・五%というものが都道府県に参つております。市においては五大都市を混ぜまして九・三%、六・七五%が都道府県であります。市に関する限りは九・三%程度の平衡交付金であります。それからなお地方債関係からいたしますると、七一%が都道府県でありまして、市に関するものは五大都市を混ぜますと、二三・八%、かような関係に相成る次第であります。でありますが故に、この点につきましては、私もやはりあと五十億を増してもらいたいというのが……、政府、地方財政委員会方面にも千三百億にしてもらいたい、よつて五十億程度のものを市町村に配分してもらいたい、増額してもらいたいというのが我々としてはお願いしておる状況であります。その他細かい点につきましては幾多あるのでありまするが、失業救済事業関係におきまして、御承知の通り労務費と申しまするか、そのほうは三分の二国庫負担となつておるわけでありまするが、資材費関係においては、大体二分の一と存じております。これもやはり三分の二程度に見てもらいたいということをお願いいたしておるわけでありまするが、未だにこれか実現をいたしておらんわけであります。それから勿論これは平衡交付金に関係を持つておるわけでありまするが、自治体警察と国家地方警察との一人当りの算定が違つておるのであります。これは大分接近はして来たとは申せ、自治体警察のほうは区域が狭いのであつて、一人当りの負担はそうかからない。国家地方警察は警備区域が非常に広いからかかるのであるということで以て非常にその單価が違うのであります。併しこれは大きな間違いでありまして、犯罪の殆んど七、八割というものは都市冬行われておるのであります。而もその都市だけでこれを逮捕するというわけには参らんのでありまして、宇都宮の例をとりますというと、宇都宮で犯罪を犯した者は大体東京或いは横浜に逃げて来ておるのであります。これは全部こちらに来て捕えるわけでありまして、かようなことにおいて相当却つて費用が増しておるのであります。ここに滞在し、それらに対する捜査費、旅費というものに対しても、国家警察以上に活動範囲が却つて広まつておるにもかかわらず、この関係につきましての單価は非常に低く見積られまして、平衡交付金に織込まれておるということは、非常に我々としては、残念であるわけであります。かような点からいたしましても、これを平衡交付金の増強を図つて頂くということを我々としては考えておる次第であります。まあ大体大ざつばな点だけを申上げた次第でありまするが、要は現在の市町村を完全自治にするということ、これは勿論理想でありますが、これを実施して頂かなければ、現在すでに発足しておつて、すでに国会、政府方面に勧告もされてあるやに聞いておるわけでありますが、行政事務の再配分という問題につきまして神戸委員会が発足してすでに何年かになるわけであります。然るに何らこれに対する措置が講ぜられておらないのでありましてこの点につきましても十分国家事務と市町村事務というものについては更に検討を加えて頂いて行かなければならんと存ずるのであります。それには勿論、国の事務の簡素化という問題も当然考えるわけでありますし、我々市町村自治体の事務の簡素化ということも当然考えて頂かなければならんのであります。それと共にそれに基く税制改正をやつて頂く、よつて我々市町村には完全自治として自分だけで動けるようないわゆる財政措置を講じてこそ、初めて自治体は完成するものである、かように考えておる次第であります。この点につきましても十分なる国会議員の皆様におかれまして御検討を賜わりたいと存ずる次第であります。  以上雑駁でありまするが、大体の都市から見ました、都市に関係ある予算に関しまして私の意見を申述べた次第であります。御清聽有難うございました。
  28. 岩間正男

    ○岩間正男君 二点簡單にお伺いしたいのでありますが、第一点は只今お話のありました六三制の建築という問題ですが、これはまあ大蔵省あたりでは今までの〇・七坪の基準は一応今年度で完成するということを言つておるわけです。ところが文部省のほうの数字を検討してみますと、十五万坪不足しておることが明らかに出ておる。そういう形が実際ここに戰災都市の宇都宮あたりには大きく響いていると思うのでありますが、只今のお話のありました、大体三部教授ですね、二部はおろか三部というお話がありましたが、さようなことがどういうふうな形で来年あたり増強されるようになつておるか、これがおわかりでしたら、そういう点を先ず第一にお伺いしたいと思います。
  29. 佐藤和三郎

    公述人佐藤和三郎君) 三部教授関係は私のほうでは実はやつておらないのでありまして三部をやつておる都市があるということだけで、その詳細については私も実は承知しておらないのであります。二部教授はべたにあります。極端に、ここの近いところで申上げますと、川崎などは全部六年まで二部教授をやつておるという実情にあるわけであります。ところが来年度になりますともつと増加しますので、困つたというようなことをこの間こぼしておりました、こういうような状況であります。
  30. 岩間正男

    ○岩間正男君 今の問題ですが、人口が殖える割合に比べまして教室の増加数、これがうまく行つておりますか、その点どうですか。
  31. 佐藤和三郎

    公述人佐藤和三郎君) それがうまく行つておらないのであります。御承知の通り補助金も少いし、起債の枠というものも僅かしか認められないわけで、到底間に合わない、子供の殖えるほうが多いということになつておる現状であります。
  32. 岩間正男

    ○岩間正男君 従つて小学校のほうの建築は、やはり中学校のほうがそういう形になつておりますから、大きくそれが小学校のほうにも影響して非常に困る、又老朽校舎の問題などもつておりますね、そういうことは……。
  33. 佐藤和三郎

    公述人佐藤和三郎君) 焼けない所でも、老朽のもののこれの改築もなかなかで、先ず以て新らしく收容する場合に新らしい学校を作らなければなりませんし、老朽までは手が廻らないというのが実情であります。
  34. 岩間正男

    ○岩間正男君 第二点にお伺いしたいのは二・一スト以来三回ほど首切りをやつておるというお話でありましたが、そういう整理をやらざるを得ないというところに地方財政は追い込まれておる、そこでこういう首切りによつて事務上差支えが出ておるのであるかどうか。それから又これ以上行政整理をやる一体余裕があるのかどうか、こういう点について伺います。
  35. 佐藤和三郎

    公述人佐藤和三郎君) 非常に私のほうとしては切りたくないのだが、切らざるを得ない立場に追い込まれておるわけでありますが、今後これを切ることは殆んど不可能だと思います。事務的に、殖やさなければならないのを切つておるような状況です。どうにも手不足で困つておる、こういう実情です。
  36. 岩間正男

    ○岩間正男君 現状でも非常に困つているのですね。
  37. 佐藤和三郎

    公述人佐藤和三郎君) 困つております。
  38. 平林太一

    ○平林太一君 ちよつとお尋ねしたいのですが、御承知のように明年度におきまして政府財政資金といたしまして、或いは投資といたしまして内政費の六千四百九十四億円というこの総合額は、財政資金といたしまして投資いたしておりますものが千百八十五億円、この内訳に対しましては日本開発銀行が百七十億円、日本輸出入銀行が七十六億円、国民金融公庫が五十億円、住宅金融公庫に百五十億円、農林漁業資金金融特別会計べ二百億円、電力開発資金へ三百六十億円、趣船資金べ百四十億円、全体の内政費の大体一七彩に達するというこの厖大な資金計画でありますが、本年度におきまして総体といたしまして非常に憂えておりますのは、これら非常に厖大なるこの処置が従来ややともいたしますと、中央に偏重して地方に不偏重である。折鶴このような厖大な内政費中の最も大なるこの資金が地方において消化されないということについては非常に心配いたしておるのでありますが、例えば日本開発銀行に対しましての融資対象となつておりますのは、いわゆる設備資金或いは公共事業費というものに最も重点を置いておるわけであります。更にこの国民金融公庫、住宅金融公庫それから農林漁業資金特別会計、電力開発資金、こういうようなものはいずれも地方におきまして十分御利用を願わなければ非常に均衡がとれないので心配いたしておりますが、これらの資金に対しまして本年度及び今日までこれを御消化なされました実情及びこの資金の御利用に対しまして、隘路等がありますならば、この際承わつてみたいと思います。
  39. 佐藤和三郎

    公述人佐藤和三郎君) 金融関係の実際の統計は、私は実は持つてつておりませんので、詳細はわかりかねるのでありますが、私の市の状況からいたしますと、住宅金融公庫関係の費用がやはり相当不足しておると思います。要望はするが貸して頂けない状況であります。それからなお国民金融公庫方面のものも相当下廻つております。これを勿論私のほうは出張所しかありませんので、支所を置いて頂きたいと要望し、大体二十七年度には置いて頂くように話合いがきまつたのであります。それによつて今後市民或いは一般県民の要望に応えることができるかと存じまするが、今のところは非常に枠が下廻つておるようであります。商工中金関係方面のものについても相当県或いは市も預託いたしましてこれらの借入れをやつておりますが、大体それとても預託の二倍半程度でありまして、預金その他からして大体十倍までの枠があるわけでありますから、これらのものについても更に運動をやつておりますけれども、大体御承知の通り地方にあります一般銀行は、貸出すということより、預金をたくさん得てそれを本店の東京方面に持つて行つて東京で大体貸出す。地方で貸出すというものは預金の何分の一というような状況が現在統計に大体出ているわけであります。さような実情であります。
  40. 平林太一

    ○平林太一君 只今大要を承わりまして了承いたしたのでありますが、最後にお話になりました、市中銀行が、殊に東京に本店を持ちまする地方支店が、この地方の資金を非常に吸收しまして、そうして本店にこれを完全送金しておるというようなことは、非常に地方の財政の、殊に地方民の生活経済の上に非常にこれは悪い影響をもたらしておりますので、銀行に対しまする今後の経営の処置に対しましても、国といたしましては何かこれらに対する一つ方法を講ずるにあらざれば、銀行の本来の使命の上に非常な私は危険を生ずるということを心配いたしておるのでありますが、大変参考になる話を承わりました。なおこの際、申上げておきたいことは、日本開発銀行の資金は、現在、御承知のように昨月二月末ですでに創立以来三百四十億円を融資いたしておるのでありますが、更に今回百七十億円を明年度において国が処置いたします。挙げてこれは国家資金でありまして、これは特に地方に対しましては十分に利用のできる措置を講じてあるのでありますから、十分これらを大いに利用なされることをこの際申上げるわけであります。   —————————————
  41. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 次に日本労働組合総評議会組織部長柳本美雄さんの御公述を承わります。
  42. 柳本美雄

    公述人(柳本美雄君) 私、只今御紹介を受けました日本労働組合総評議会の柳本でございます。本日公聽会に当りまして若干意見を申上げておきたいと思います。  今年度予算を見まして労働組合で特に重要視いたしておりまするのは、これは厖大な防衛費、いわゆる軍事費が含まれておるという問題であります。この内容によりますると全体の予算の中で即ち二一・八%という数字になつております。数字にいたしまして二千三十億円になつておるわけですが、この点につきましては日本の労働組合は挙げて反対をいたしております。なぜかと申しますると、この防衛費というものはいわゆる非生産的な予算でありまして、財政インフレをもたらすということは、これはもう必至であります。そうして、こういうことに対する対策として、即ち低賃金政策がとられるということ、それから金融引締めによりまして重点産業べの資金の集中となつて現われて来る。それからそういう結果といたしまして平和産業と中小企業の破産と倒産に拍車をかける結果になる。そうして日本の自立経済の基礎を危うくせしめることになるであろうと我々断定をしたのであります。そういうことに対しましては、日本の労働組合は挙げて反対をいたしております。そこで我々が最近の日本の実情を見ました場合に、いろいろこういうところから来る重要な問題が含んで参りますが、その前に一つ申上げておきたいのは、本年度予算はいわゆるアメリカの極東政策が、独立をいたしました日本財政に大きく反映をいたしておるというこの点であります。労働組合といたしましてアメリカの極東政策に対しましては協力をいたしたいという考えを持つておりますけれども、併しこの極東政策がアメリカの軍事支配、これが日本の独立と平和に非常に危険を及ぼすということについて反対をしなければならない。而もその結果といたしまして労働階級には低賃金と労働強化をもたらして来る。そこで私は、公聽会に当りまして労働組合側の意見として、予算案内容について一々細かいことを申上げるよりも、こういう予算案が通過いたしますならば、今日起つております日本の労働者の状態経済状態から更に危険な、深刻な状態が生れて参る、そういうことで若干最近起つております問題について触れて見たいと存じます。昨年五月に日米経済協力につきましてマーケット声明というものが出されましたが、この点を私は話の順序として先ず申上げておきたいと思うのであります。この声明によりますと、いわゆるアメリカの軍拡政策の一環として日本の工業力を動員する、そうして資金はみずから調達して、世界的に不足な原料はこれは東南アジアを開発して求めて来い、日本産業はいわゆる商業採算主義に立つて適正なる価格の下に国際市場に進出しなければいけない、こういうことを言つておるわけです。そうすればアメリカの軍拡政策の一環として大いに日本の工業力を動員する、即ち日本に軍需品を注文してやろう、こういうふうに相成つておるわけであります。我々は、これに対しましてそういう内容では日米経済協力は非常に日本産業にとつて経済にとつて苛酷であるということで反対をいたしました。若しそういう形で日米経済協力が行われるとするならば、アメリカのように高度に発達いたしました設備や技術、或いは厖大な資本、設備、これに対抗するために、日本の工業力がどこに途を求めるか、その場合には非常に大きな開きの中でこれに対抗するためには、どうしても低賃金と労働強化に求めて行くより途がない、こういうことを我々が指摘いたしました。そうしてその結果として、労働階級の反抗を抑えるために労働法規の改悪が行われるであろう、こういうことを指摘いたしましたが、事実そういう状態が生れて参つております。私はこの際に、日米経済協力の問題につきまして、目立の場合の問題を取上げてみたいと思うのでありますが、目立の場合を見ますると、時間当り加工賃が大体四十八セントになつております。そうして時間当りの労務費がそれに対して約四〇%であります。従つてこれで換算された労働者の賃金水準は時間当り約六十八円、一カ月百七十五時間といたしまして一万一千九百円に相成るわけです。当時の目立の賃金水準から見ますると、これは約一〇%低下になると言われております。それから日本特殊鋼管の場合を見たいと思うのですが、やはり発注の方式は日立と同じ建前をとつておりますが、この場合には一時間三十九セントの割合になつております。これを基礎とした労働者の賃金については、会社側が提出した案によりますと、一日平均労働時間八時間といたしまして現行では七時間です。八時間といたしまして一万八千円ベースとなるわけであります。組合としましては現行七時間ですでに一万八千円から二万円になつておりますから、一時間延長になりますると、実質賃金は切下げに相成ることになるわけです。この間ニューヨークの知事でありますデユーイ氏が日本に参りましたときに、次のように言つております。即ち妻及び子供の二人の家庭に必要な毎日の少量の米、それに一切の魚多少の野菜を買うために月二十八ドル、日本の金で一万円はかかる。扶養家族に対する少額の手当を考慮に入れても、現在の組織の下では労働者はその家族を養うに足る金額を得るということは到底できない。もはやそういうことは明白な事実である、こういうふうに言つております。それに更に加えまして併しこのような低い生活状態にもかかわらず、日本の商品のコストは余りにも高いので、コストを割つて売られている始末である。併し女の工員たちは宿舎食事付ニドルの月給のために熱心に働いている。有能な速記者の收入は月に八千円である。製鋼工場の最優秀熟練工の場合は一万五千円、機関車の運転士は約二十ドル、官吏の平均給與は月九千円から一万円である。こういうふうに指摘いたしておりますが、こういう日本の労働者は低賃金状態にあるわけです。総評議会でこの間鉄鋼難業の労働者の賃金の問題についていろいろ検討いたしました場合に、一体日本の労働者が世間並みに、そうして健康にして文化的な生活を営むために、即ち人たる生活を営むためにどれだけの物量が必要であるか、こういう点をマーケットバスケット方式で計算をいたしました。これによりますと、大体七万一千円余りが必要になつて参るわけです。この七万一千円の金で生活をいたしましても、アメリカやイギリスの場合よりはまだ低いという状態にあるわけです。戰争前の日本の労働者の賃金を今の物価で計算いたしますと、約二万二千円に相成るわけです。これが今日の状態を見ますと、鉄鋼の場合でデユーイ氏も指摘いたしておりますように、一万五千円ぐらいしかなつておらないわけです。  そういう賃金の低い状態日本の労働者が置かれているわけですが、こういう状態の中で、労働組合に起つておりまするいろいろな問題は、こういう條件の中から労働者の反抗、こういうものが賃金値上の形において、経済的な要求において随所に起つているわけでありますけれども、この状態に対しまして最近とられている政府の政策を見ますると、この反抗を抑圧制限するために、労働法規の改悪の問題が具体的に日程に上つております。我々が昨年のマーカツト経済科学局長の日本経済協力のこの声明に対して指摘いたしましたように、こういう問題が具体的に日程に上つて参ります。それだけではまだ足りなくて、今度前大橋法務総裁が考えました団体等規正法は、形を変えまして特別保安法という形においてこれ又今日労働組合運動に非常に重要な問題として、関連ある法案として制定をすることが具体的に日程に上つて参りました。今度の予算案を見ましても、この予算案の中に含まれておる厖大な防衛費、そういうものをいろいろ検討いたしまして、この性格が今日の日本経済、政治の実情の中にはつきりと現われておる。そうしてこれは即ち政治的には民主化に対する逆コース即ち反民主化のコースにおいて非常に急テンポに進展しておるということであります。  こういう実情の中で、若し本予算案が国会を通過するということになりますると、この実態が更に深刻な状態となつて出て参るであろう。こういう点を予算委員会の皆様方が十分に考慮して予算案の審議を進めて頂きたいと思うわけであります。我々は、この予算案いろいろ検討いたしまして、即ち約二千億を起えるこの軍事費につきまして、いろいろの情報や、或いはアメリカ側で言われておる問題等も考慮に入れて検討いたしましたが、併しこの厖大な軍事費はこういう情勢をいろいろ検討いたしますると、氷山の一点に過ぎない。実態はまだく優れおるのではないか。そういたしますると、問題は非常に重大だと考えるわけです。最近国会の中でも、大幅な追加が予想されるということを言われておりまするが、まさにその点は、我々もこの検討の中で情勢を分析いたしました場合に、はつきりと見ることができるわけです。今若しこういう予算が組まれますると、厖大な軍事インフレが更に起つて来る原因になるであろう。そうしてこういう結果として冒頭に申上げましたように、低賃金政策が代償としてとられて参る。これはもうすでに具体的に出ておりまするが、例えば今度の人事院の勧告につきまして官公吏のベースを一万一千二百六十三円にすべきであるという、この裁定に対しましてこれに応じないという状態が生れておりまするが、これも又低賃金政策の一環として現われておると我々は見ることができるわけです。  今、日本経済の実情は、朝鮮動乱以来アメリカの極東兵站基地の役割を通じて、日本産業は軍事的に再編成されておると我々は見ておりまするが、こういう條件の中で失業問題、潜在失業者の問題は非常に深刻化しております。併しこの中で、今度の予算案の中では失業対策費というものは僅かに百二十九億円になつておりまするが、これは昨年と同じ額になつております。で、この状態で行きまするならば、失業対策については昨年よりも……、昨年やつたことだけすらできないということが実際問題として出て参ります。今、五大都市の現在登録されているものに二百五十円の目当で二十五日間の稼働を保障いたしますると、四十四億円必要であると言われております。ところが昨年と同じ百二十九億円では、昨年の九億の支出さえもこれは不可能になるという事態が生まれて参つております。厖大な治安維持防衛費というものが計上されているにかかわらず、深刻な失業問題に対する積極的な対策はとられておりませんが、こういう点につきましても労働組合は強く反対せざるを得ない、かように考えておる次第です。今若干申上げましたように、日本の労働者の置かれている状態というのは、これはもう飢餓賃金状態生活をしておる、こういう状態にあるわけです。そうしてこういう予算が若し成立いたしますならば、これは軍需産業と平和産業の間にアンバランスが起つて来る。このアンバランスの中で、労働者の場合にはすべての賃金、待遇というものは低いほうへ低いほうへ低下統一されて行くという問題です。こういうことが起つて参ります。  従つていろいろ申上げたいことがございますけれども日本の労働階級は今度の二十七年度予算の中で厖大な防衛費、いわゆる軍事費というものが組まれ、そうしてこれはインフレを更に促進せしめる結果になり、低賃金と労働強化をもたらすことはもう必須である。従つて我々はこういう問題に対しましてはむしろ生活防衛のために反対をしなければならん、かように考えておる次第です。  非常に簡單でございまするが、若干予算の審議に当りまして、こういう予算が成立いたしました場合に、今起つておるこの問題が、更に深刻な状態となつて現われて参るということを特に御留意願つておきたいと思う次第です。以上意見を申上げておく次第です。
  43. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 御質問はございませんか。
  44. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 只今鉄鋼産業の労働者の賃金問題に関連しまして七万一千円……、それから戰前の生活水準を今日維持するために二万三千円という数字をお挙げになつたのでありますが、この予算に対しまして、言い換えますと、この文化国民生活に対して幾らの賃金水準が、給與水準が妥当であるかという点につきましてのお考えと、それから若干の御説明をお願いいたしたいと思います。
  45. 柳本美雄

    公述人(柳本美雄君) 今申上げましたように、大体労働者が健康にして平和的な生活、文化的な生活を営むのに必要な物量の数字というものは、七万一千円余りになつたわけです。当面日本の労働者といたしまして、こういう生活をするのが人たる生活に値いする、こういう生活をするのが我々に絶対に必要なことだと考えております。併し日本が戰争前にいわゆるチープレーバー、ダンピング政策でいろいろ問題になつておりましたが、そのときの労働者の賃金ですら、今日の物量で計算いたしますると、二万二、三千円に相成るわけです。今日敗戰の状態の中でいろいろ我々この日本経済の再建について考えておりまするが、そういう條件を考慮いたしましても、少くとも戰争前の賃金水準、生活水準は当面必要である、こういうふうに考えておるわけです。
  46. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そうしますと、先ほど来の御意見は、防衛費が二千億を超すといつたような状態で、それが低賃金、或いは労働強化をもたらし、戰前の低賃金水準すらも織込まない結果になつておる。従つて防衛費を削減をして、そして戰前の生活水準にまあ辛抱するとしても、そういう予算の組替え方をせよ、これが基本的な御意見である、こういうふうに了解してよろしいですか。
  47. 柳本美雄

    公述人(柳本美雄君) 労働組合といたしまして、今日こういう防衛費というものの必要を認めないわけです。こういう措置をとらなければならんという必要を認めないわけです。むしろ我々は今日日本の置かれているこの條件の中で、経済自立のできる途を開く。そうして日本経済自立に重点を置いてものを考えたい。若しこういう厖大な軍事費というものが予算に組まれますると、今日の状態におきましても、今申上げましたような賃金生活水準におるわけですが、こういう状態が低賃金政策で更に抑えられて圧迫を受け、一方においてはインフレーシヨンで物価が上つて行く。そうして平和産業の危機によつて生活必需品、物資の不定の問題が出て来る、こういうところから二重、三重の苛酷な條件から労働者の生活水準低下の問題が出て来るところに反対するわけです。
  48. 和田博雄

    委員長和田博雄君) ちよつと柳本君に伺つておきたいのですが、物価水準の七万一千円ですね。この物価水準はいつ頃のなんですか。
  49. 柳本美雄

    公述人(柳本美雄君) これは細かい資料は今私持つておりませんが……。
  50. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 大体去年の数字ですか。
  51. 柳本美雄

    公述人(柳本美雄君) 大体昨年末の水準で計算してあります。
  52. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それから先ほど実は給與水準のあるべき姿についてお尋ねをしたいのですが、重ねてお尋ねをしたお答えによると、二万三千円という戰前の生活水準、これは極めて非常に低い水準で、そういう数字が出ましたが、前に国鉄の給対部長沢田氏の公述を頂いたのですけれども、そのときにも要求せられるこの給與水準の、国鉄なら国鉄としての数字も出なかつたわけです。そこでその辺今の御答弁をそのままにしておきますと、戰前の生活水準、低いところで、低賃金の水準で二万三千円、こういう数字を我々はこの新年度予算に要求するこういう印象を與えるような気がするのでありますが、その辺について言われております一万六千八百円云々という水準との関連性、それから要求せられる水準を、はつきり数字を挙げて述べて頂いたほうがいいのじやないかと思うのですが、その辺の関連を一つ伺います。
  53. 柳本美雄

    公述人(柳本美雄君) 少くとも日本の労働者の生活水準を引上げるその目標は、当面戰争前のこの額に我々は目標を置いておるわけです。で、今朝沢田君から官公労の場合も、公共企業体の場合も、それから日教組岡委員長のほうからも、官公労、地方公務員法の立場で、そういう点細かく申上げたと思つたので、我々の要求するそれらの問題につきまして私は今これは用意しておりません。
  54. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 有難うございました。  それでは本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十九分散会