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政府委員(
木内信胤君)
最初に堀木さんの
お尋ねにお答えします前に、
加藤さんのおつしやいました、
ポンド切下げになるならば同時に損をするのだから早く買
つておいたらいいだろう、業者のリスクは無理だから
政府のリスクでもいいから買え、このサゼツシヨンは
考える価値は十分ある、
考えてはおりますが、
通産大臣もその旨を御
答弁になりましたが、その点に関して御注意までに申上げたいことがありますから
ちよつと申上けます。それは成るほど
ポンドが切下げになりますれば、今の持値が、私
どもの買持ちで
考えまして何百億ですね、この
只今申しました数十は二百八十億でありますが、二百八十億にも及ぶ損かあるだろうと申します意味は、これは
政府会計の損であります。切下げがあ
つたらそういう損を出すという、そういうことは会計をあずか
つております私
どもとしまして、例えば為替買いというものが、やらなくてもいい為替買をしたために
政府が損をするという
ようなことは悪いと思いまして、為替買いをきちんと本当に商売のあ
つた者だけに認めたいということをしたわけでありますが、先ほどのは切下げがあるから早く
輸入してしまえとおつしやいますが、それはその問題だと少し話が
違つて参ります。と申しますのはすでに打歩のついた
ポンドというものに対して
輸出をしてしま
つたときに、国から見ますれば損が実現している、打歩のついた
輸出ですから、これがそのままに行きますれば、すでに
ドルに比べて下
つておるものを、
ドルと同じ額に認めて
輸出したのですから、その
ポンドを受取
つたとき安い物をもら
つているんです。
輸出したときに損が実現しておる。ですからこれを若し仮に切下げがあるとすれば、恐らく今までの実例でもつと下へやるでし
よう。そうすればやがて又上
つて来るでし
よう。ですからそこまで
見込んで切下げによ
つてやるとするならば、
英国の
物価は上るだろうから早く買えとおつしやいますならわかりますが、そういうふうじやなくて、二百八十億の損になり得るという状態なら、
政府が早く
輸入したらいいだろうというのは
ちよつと違うと思います。それでそうしますとすでに損があるなら、実現してしま
つた損なんですから、これを今あわてて
輸入すれば、今度
英国、
スターリング地域の
物価が更に上ると認めるならば、早く買うに如かず、これは商売の常道ですが、併しこれは必ずしも上るとは限らない、この点もお
考えにな
つて頂きたいと思います。なぜならば
英国自体
ポンドの交換を回復しなければ駄目だという輿論が非常に強いのでありまして、新
政府は恐らくその途にまつしぐらに邁進するであろう、
ポンドの強化ということは
スターリング地域の
物価が下ることであります。ですから切下げるという虞れがあるということは、必ずしも今後の
ポンドの
物価が上るということではありません。ですから私
どもは円の会計が損になりますから、その問題も
考えねばならんのであります。国として
ポンドを使うという問題に対しては、むしろ
ポンド地域の
物価の先行
見込というほうが先に立つ問題ではないかと思います。その点
ちよつと気がつきましたので御注意までに申上げます。
それから堀木さんの御
質問は、どういう
対策があるか
考えろ、言えというのでありますが、
通産大臣から御
答弁もありました
ように、この問題は非常に愼重に扱
つている問題でありますから、仮に
政府がこういう
対策を
考えているということを申上げる段階には来ていないと思うのであります。併しながら私
どもまあ筋としてはこう
考えられるのだということは二、三申しておりますから、これは或いはこの席で申上げてもいいのかも知れませんが、申上げさして頂きます。
第一は
ドル・
クローズ復活問題を、
ドル・
クローズというものは
先方の処置によ
つてポンド過剩が起らない。即ち
日本は今度は逆です。
輸入する範囲しか
輸出できないという状態を向うが作
つてくれておる制度であります。従
つて過剩問題は起らないのでありますが、ただそれだけのことであ
つて、
ポンドは実務以下に落ちてしま
つたにかかわらず、公定相場で取引をしておるために
日本が受けるであろう被害というものは解消いたさないと
考えます。今度
通産省でおとりになりますことに御決定になりました、
日本側において
輸出を
輸入ができた、
程度四半期ごとに区切
つてや
つて行こうということは、いわば
ドル・
クローズによ
つて達成されていたことを
日本側において自主的にやることであり、その意味においては今度のほうがいいのかも知れません。これは利害いろいろあ
つて何とも申せませんが、
先方に勝手にされるよりは自主的のほうがいいという面から見ればいいのかも知れませんが、これは同じく
輸出と
輸入と見合すというものであります。この同じ
輸出入を見合す、同じことでありますが、仮にここに
実勢相場で取引さしてくれるなら、即ちそれに一割五分の打歩なら八百五十円
程度になりますが、おのずから
輸入は盛んになるだろうと
考えられます。従
つて今のままで制限するよりも、或いはそのほうが
輸入量が多いんですから、
輸出入が見合うとするならば、
輸出も今
考えているより高いレベルにおいて平均するかも知れません。これは
ポンドの
地域が一般に
インフレ的であるという
影響を遮断しつつ
輸出入を見合すのでありますから、その意味において更にいい組織……ところがこれは先ほど申しました
通り協定第二條に違反するやの疑いがある。やるにしても了解の下にやらなければならないであろうと
考えますし、
正面切
つて為替相場という形ではなくて、或いは
輸出証明書とか、或いは先ほど税の
お話がありましたが、
輸出税を取
つて、それを
輸入の場合の奨励費に向けるとか、理窟は同じことであります。そういういろいろなほかにも手段がたくさんあると思いますが、これらのことによ
つてやる。皆結果は同じですから、
実勢相場によ
つて輸出入の均衡を図ろうという
考えをこれを一括してしますれば、それは前の二点よりも更にいい点がある。但し
協定関係の問題がある、こうなります。
もう
一つはいわゆるアメリカ勘定に入
つて取引をする行為であります。これは悪い点もたくさんある。恐らくアメリカ勘定というものに、
イギリスの管理法において、
日本をアメリカの勘定に扱
つてもらうという行き方は、
イギリスから見れば、
日本から物を買うのに
ドルを拂うということでありますから、なかなか
日本の物を買
つてくれないかも知れない。その代り
日本が買うときは、本日は
ドルを拂
つて買うと同じことになるのですからこれは理論的には非常に工合がいい。
日本は今度は幾ら
輸出しても一向心配は要らないということになります。従いまして
日本の経済構造というものは、どうしても
ポンド地域に
輸出が勝ち、
輸入が負ける。
ドル地域に対してはその反対だというならば、そこまで行
つて初めてこれは解決がつくのであります。ですから理論的に見ますればそれが一番いいのでありますが、但しそう
なつたなら、向うも
ドルを拂わなければ
輸入ができないのでありますから、
日本の物を買うことが非常に少くなるかも知れません。併しその反対に
日本が買うときは
ドルを拂うのと同じでありますから、或いはよくなるかも知れません。これは
先方のことで何ともわかりません。併しながら理論的に見れば一番事を解決するに近い。但しそれのもう
一つの欠点は、今のスターリングの打歩なるものはどうなるかといいますと、
ドルで売ることにしても、向うは今までよりも高い値段を拂
つてくれないかも知れない。
ドルで買うことにしても、
ポンドで買うより安い値段で売
つてくれるとは限らない。そうなりますと打歩の灘題は解決しないではないか、或いはそうかも知れません。併しこれは
ポンドにもいろいろ相場が立ちますから、それらを利用して同じ
効果を納めることができるかも知れませんが、或いはできないかも知れません。まあ大体理論的な解決の筋というものはそれらに盡きるのであります。その利害得失は概略今申上げた
通りであります。