○岩間正男君 私は
日本共産党を代表しまして、
只今議題とな
つておりますところの
警察法の一部
改正法案に反対するものであります。
改正の要点、主な三点につきましては、先ほどの討論者によりましてしばしば指摘されましたように、今まで
国家公安委員会或いは
東京都特別区
公安委員会に属しておりましたところの国警長官並びに
警視総監の任命権を総理が独占しようと、こういうような原案であつたのであります。これについて
衆議院におきましては或る種の
修正がなされておつたのでありますが、この結果におきまして、実際行われる面におきまして殆んど影響がないということは、今更私がこれについて多く
説明を必要としないと思うのであります。こういうような、いわば首相の権限が非常に強化拡大されることによりまして、今まで敗戦後作られましたところのこの
警察の民主化、そしてその
方向に
公安委員会が作られまして、その
指示によりまして、人民のための
警察、こういうようなやり方が、全く性格をここで一変せざるを得ない、こういうことにな
つて来るのであります。無論、現在の
警察のやり方を見ますというと、このような性格はすでにすでに最近のこの実際
運営の面に現われているのであります。例えばメーデー事件や、或いは五・二五事件と呼ばれる事件、更に早大事件なんかによ
つてとられましたところの
警察の態度につきましては、誠にこれは人民の血税によ
つて養われておるところの
警察官としては言語道断のやり方だと言わざるを得ないのであります。(「暴力団だ」と呼ぶ者あり)今や全く
警察は国民のための
警察ではなくして、全く
政府の傭兵或いは私兵的な性格を有し、まさに民族の独立と自主を愛好するところの国民運動を弾圧するところの組織として今国民の前に嚴然と聳えようとしておるのであります。而もこういうようなやり方に対しましても、なお例えば
木村法務総裁のメーデー事件に対するところの当院におけるところの
質問に対する
答弁のごとく、あれでは、まだやり足らなかつた、もつとやればよかつた、こういうような
説明によ
つても明らかなように、又早大事件後におきまするところの吉田総理が一閣僚幹部に漏らしたというのでありますけれ
ども、
警察に多少の行き過ぎはあ
つても士気を沮喪するようなことはやめろ、こういうような、誠にこれは、国民によ
つて選ばれたところの、
国会によ
つて選ばれたところの総理
大臣としては、あるまじきところの言動をや
つておるのでありますが、(「ひどい扇動だ」と呼ぶ者あり)こういう言動そのものによ
つても明らかなように、今や、
はつきりこれは、
政府の私兵的な、傭兵的な彈圧機関として全く国民から遊離したところの存在にな
つておるのであります。
こういう点を指摘しますと同時に、なお今度のこの
法案改正によりまして、特に総理の
警察に対するところの独裁権が非常に強化されておる点、なぜ一体こういうようなことが現実に必要であるかという点におきまして、我々は見逃すことのできない多くのものを感ずるのであります。それは言うまでもなく、吉田内閣の現在の悪政、いわゆる平和、安保の二條約並びに行政協定によりまして、まさに
日本国民の利益に奉仕するのではなく、
日本国民の利益を完全にこれはあえて
アメリカに売渡し、そうしてそれによるところのもろもろの諸惡が今日足下から起
つておる。これに対するところの国民の反対、(「いつも同じことじやないか、そんなことしか言えないのか」と呼ぶ者あり)こういうものが激しく起
つておることは、先ほど
社会党の第二
控室の
松浦君の、例えば
防潜網によるところの
漁業の
損害に対するあの
質問に対しての
外務大臣の
答弁を聞いても明らかだろうと思うのでありますが、これは單なる
漁民にだけ起
つている問題じやなくて、土地取上げに対するところの農民の問題、或いは
警察予備隊が強化されることによ
つていろいろな文化
施設がその土地を取られる問題、或いは平和とい
つて独立が発効したと言われる今日、なお三百幾つの永久或いは一時的な
施設が全面的に
日本のあらゆる所に網の目のようにして、今日行政協定の結果、
日本は全くこれは
アメリカの軍事基地として組織されておるのであります。こういうような形においては、どうしてもこれは民族の生活権を守るということは当然のこれは権利であります。こういうような運動が起るのでありまするから、
政府は現在のその売国的な政策を変えない限り、どうしてもこれを弾圧し、これを圧迫して、彼らが
アメリカの下に番頭として約束したところの任務を遂行しなければならない。又そのためには、最近の行政協定、例えば第二十四條の緊急
規定の発動のようなことも、これは必要な事態が起らないとも限らないのであります。そうして、行政協定第二十四條によりますというと、これは言うまでもなく、米軍の指揮下に
警察予備隊、国警、自治警と、その他すべてを挙げてこれを編入し、そうしてそれを
アメリカ軍の指揮監督の下に委ねる。これは共同防衛
措置ということになるのでありまするが、当然行政協定のこのような
規定によりまして急速に
警察を一本化し、これを総理
大臣の権限下に握るということは、今や
はつきりとしたところの一つの要請とな
つておる。いわゆる
アメリカの要請によりまして、このような性格の
警察の再編成ということは、今の行政協定、二條約を結んだところの
政府としては、当然陷らざるを得ないところの帰結なのであります。このようにしまして、曾
つて行われましたところの東條時代に優るところの、いわゆる行政、軍事、
警察の三権を握りましたところの独裁的な性格がますますここに強化されることに
なつたのであります。これによ
つて何が起るかということは私は多く申上げる必要がない。すでに先ほどから多くの論者が申されたところであります。憲法による基本的人権が完全にこれによ
つて侵害される。破防法とも関連しまして、これは憲法の軽視というような形で現われるであろうということ、又
警察法がそもそも作られましたところの精神というものは完全に蹂躪される。殊にも前文、第一條の
目的、このような国民のために奉仕するところの
警察の姿というものは完全にこれは失われるでありましよう。又地方自治体の自主性というものは、事実上これは、このような
警察権の強化、或いは首相の
指示によるところの命令、指揮系統の統一によりまして、完全にその根拠をなくしてしまうであろうということは、私は、
はつきり指摘せざるを得ないのでありまして、その結果は挙げてこれは
アメリカの軍事基地
日本をして、来たるべき場合におきまして
日本をその侵略基地として、又その手先として戰争に駆り立てるところの、このフアシズム的な体制をもつともつと強力に推し推める結果が、明らかにこれは我々の前に押し付けられているのであります。こういうものに対してどうして一体我々が
賛成することができるかどうか。これは多くの同僚諸君とも、もつと民族を憂える立場から、真にこれは胸襟を開いて話してみたいところだと我々は考えるのであります。(「何を言うんだ」「そうだ」と呼ぶ者あり)而も現在
警察組織がそのようなやり方をしまして彈圧的な
警察体制を強化したとしましても、果してそれなら所期の
目的を達することができるであろうかどうかという問題であります。この点については諸君はこれはうつかりしていられるのではないかと思う。現在
警察の内部を皆さんが真劍にこれは労働者としての
警察官の立場に立
つてこれは一体お聞きにな
つているかどうか。我々は
警察官も労働者だと考えているのです。今日国民の敵のように至る所でこれが糾彈されているのでありますが、労働者としてこの
警察官を見るときに、誠に同情せざるを得ない立場にある。それは言うまでもなく勤労が非常に過剩でありまして、そうしてまさに重労働が押し付けられているのであります。そうして、最近の不当な強権、これらの背後からの強力な圧制によりまして、止むを得ずいろいろな行動をとらざるを得ない結果、そこに傷害事件なんかに金を、これに対して職務による障害
補償の問題なんかも最近きめられたのでありますが、最高百万円というような、いわば
警察官一人の命を償うためにそういうようなことまで決定されて奨励金がこれは付けられているのであります。こういうような態勢をせざれば今や動かないほど、
警察官の内部事情というものは、非常に私は今日これは疲弊消耗していると思うのであります。
警察官のこういうような態勢に対しまして、もうその妻や子供が歎いている。併し
警察官として自分の任務を盡さなければ食えないから止むなくや
つているのだというように
警察官の多くは語
つているだろうと思う。更に、まさに次に来たるべき新らしい時代に対して、根本的な彼らは恐れ、恐怖を持
つている。彼らはしばしばこれはひそかに漏らしている。我々は心からや
つていない。命令だから仕方がなくや
つている。又孫子の将来というようなことを考えると、果して国民を強圧する、こういうような役割をや
つているというと先のことが案じられる。こういうことは、しばしば
警察官の述懐として述べられているのであります。これは自由党の諸君なんかにはこういうことは恐らく伝えないだろうと思う。(笑声)こういうことを伝えるというと、意気地のない
警察官だとか、やり足らない
警察官だとか、こういうようなことにな
つて、そういう
警察官を雇
つては駄目だというので、即刻首にな
つてしまう。諸君のような支配階級に誰が一体真相を漏らすものですか。労働者は労働者の味方であるところの我々にしかこれを漏らさない。だから君たちは残念ながらこれを知ることができない。斎藤国警長官が一生懸命になり、
木村法務総裁がこのようなことを知ろうと思つた
つて、残念ながらあなた方は、これは特権階級としてこういうような警官を使
つて、いわば手足のように使
つて、道具のように使
つておる者に対して、而もこれに違背すれば権力を以て立ちどころにその首を奪うというようなやり方に対しては、絶対こういうような真相は漏らされないだろうと思う。(「知らぬは法務総裁ばかりなり」と呼ぶ者あり)
このような現在のやり方を見ますときに、どうして一体彼らが現在置かれているところの立場について、つらつら胸に手を当て、日夜これは考えざるを得ない。
日本国民の今日落されている姿、(「時間々々」と呼ぶ者あり)この一体、売国的な、植民地的な姿、そうして、その中にあ
つて、外国、
アメリカの、まさに又その手先の
政府の、まさに番犬的な立場をと
つて、而も愛する
日本国民を彈圧しなければならない自分の生活態度の矛盾というものについては、良心あるところの労働者階級でもありますところのこの
警察官としては、絶対にこれは得心の行くはずはない。(笑声)君たちは笑
つておりますけれ
ども、笑う者が笑われるであろうということは、もう時間の問題じやないか。もうすでにそういうふうにな
つておる。従
つて、彼らは良心的に確信を持
つてその任務を遂行するということはない。絶えず良心に恥を感じ、そうして何だか割切れない感じを持
つて今日や
つておる。
警察官の諸君といえ
ども、まさに民族的な一片の良心があるのだということを私は今日信じております。
このような形の中に、一部の悪質幹部は、番犬吉田内閣に奉仕する立場から、ぎりぎりこれらの者に対しまして強制労働を強化して来る、こういう形で今日現在の
警察行政が進められておるのでありますが、このような方式が長く続くはずはない。だから、如何に吉田内閣が独善的な形を以て
アメリカの命ずるままに
警察を強化し、
警察予備隊の下請、或いは破防法の下請的な任務をやらせようとしても、これは、
はつきり下から崩壊せざるを得ないところの、科学的な、社会的な原因、経済的な原因を、
はつきり持
つておるのだということを私は指摘いたしたい。若しこれに対して
異議のあるかたは、十分に、
木村君とか、安井君のごとき、先ず一番先にお調べにな
つて御覧になれば、
はつきりするのであります。
我々はこういうような立場から、このような時代に反した、いわばもう前時代的な
警察国家の体制に再び
日本を戻そうとするようなこの
警察法の
改正に対しましては、絶対にこれは
賛成することができないのでありまして、我々はこのような独裁政治の現われであるところの権力、強権の馬鹿らしい使用に対しましては、飽くまでも反対することを
はつきり声明しまして、私の反対討論を終る次第であります。(
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