○中村正雄君 只今議題となりました労働関係調整法等の一部を改正する法律案、地方公営企業労働関係法案、及び労働基準法の一部を改正する法律案につきまして、労働委員会における審議の経過並びに結果を御
報告いたします。
先ず政府の提案理由を見ますると、終戦以来我が国の労働立法は、労働組合法、労働関係調整法、労働基準法、公共企業体労働関係法等が順次制定整備されたのであります。併しながら占領も終結し、平和條約の効力が発生した今日、産業平和を維持し、労働生産性を高め、以て日本経済自立の基盤を築く上に、現行労働法規を見ますと、そこには、かなり再検討の余地があると思われるのであります。即ち、一方においては勤労大衆が安んじて経済再建に協力するために労働者の権利をでき得る限り保障し、その福祉増進を図ると共に、他方、経済再建を妨げるごとき結果を生ずる労使間の紛争はこれを防止し、万一国民生活に重大なる損害を及ぼす大規模の争議の発生を見る場合は、これを合理的な機関において平和的に解決を図り、以て産業平和を確保することが肝要なのであります。
政府はかかる見地より、昨年夏いわゆる政令諮問委員会より労働法規改正に関する答申を得て、特にこの問題の重要性に鑑み、労働組合法その他労働関係法規につきましては労働関係法令審議委員会に、又労働基準法につきましては労働基準審議会に、それぞれ改正すべき諸点を諮問し、それらの答申を得て、これを愼重に検討の上、委員会の会員一致を見ました答申は殆んど全部これを採用し、答申されるに至らなかつた事項については、公益委員の意見を尊重し、おおむねこれに副つて改正案を立案いたしたものであります。以上が政府の提案理由であります。
次に各法案の内容を順次御説明申上げます。
第一に、労働関係調整法等の一部を改正する法律案につきまして申上げます。本法案は、労働関係調整法、公共企業体労働関係法及び労働組合法の三法の改正案を、内容が相互に関連いたしますので、便宜上一本にまとめたものであります。
先ず労働関係調整法の改正の要点は、公益事業の労働争議又はこれに準ずる大規模若しくは特別の性質の事業に関するために公益に著しい損害を及ぼし、放置すれば国民生活に重大なる損害を與える場合には、労働大臣が緊急調整の決定をなし得ることとし、その間五十日間は争議を禁止し、紛争は中央労働委員会の調停、実情調査、その他の手続により、これが平和的解決を図らんとするものでございます。又公営企業の争議については、従来三十日間の冷却期間が定められておりましたが、これを十五日間に短縮することといたしております。以上のほか調停の申請がなされても、当事者間の自主的な交渉が著しく不十分なときは、労働委員会はこれを却下できることといたしております。又労働争議の調停仲裁を行わしめるために特別調整委員制度を設けること、斡旋員と労働委員会の委員の兼職禁止を廃すること、労働委員会による労働争議の仲裁は、仲裁委員会を設け、これによつて処理せんとしたこと、及び公益事業の冷却期間中、緊急調整の期間中の争議行為に関しては、従来は団体の責任者を処罰いたしておりましたが、今回は争議行為を行なつた個人に罰則を適用することに改めた点であります。
次に公共企業体等労働関係法の改正の要点について申上げますと、郵政、印刷、造幣、営林、アルコール専売等の現業
国家公務員並びに近く電通公社に切替えを予想されておりまする電通事業関係職員は、従来団体交渉権を認められていないのでありますが、今回これらの従業員には団体交渉権を認め、公共企業体等労働関係法を適用せんとするものであります。行政簡素化の建前から、従来、国鉄、専売につき別々にあつた調停委員会を一本の公共企業体等調停委員会に統合したほか、組合規約、不当労働行為等につき、労働組合法との重複を整理し、団体交渉事項を明確にする等の技術的改正をせんとしたものであります。
次に労働組合法の改正点について申上げますと、不当労働行為、労働委員会の証人喚問権、労働組合の資格審査及び労働協約について規定を整備すると共に、地方労働委員会の委員の数について事務の繁閑に応じて差異を付けんとするものであります。
第二に、地方公営企業労働関係法案について申上げます。
本法案は、地方公営企業、即ち交通、ガス、電気、水道の事業に従事すむ職員に対して、公共企業体等労働関係法の適用を受ける職員と同様の趣旨の労働関係上の地位を認めんとするもりでありますから、内容もおおむね公分法に準ずるものでありますが、地方公営企業の場合は、その規模が地方的なものであるために、交渉単位制度は採用せず、斡旋、調停、仲裁は別に特別の機関を設けず、地方労働委員会をしてこれに当らしめんとするものであります。第三に、労働基準法の一部を改正する法律案につきまして申上げます。本改正案は、貯蓄金管理や技能者養成の認可を届出に改め、危険有害ではない仮建設物の
設置届を廃止し、又貯蓄金管理、賃金の一部控除或いは有給休暇の賃金につき労使協定の制度を取入れる等、手続の簡素化或いは労使の自主的協定に委ねんとするものであります。次に女子の時間外労働の制限並びに深夜業禁止に多少の緩和を図り、又十六才以上の年少男子につき技能養成のための坑内作業を認める等、実情に即して所要の改正を行わんとするものであります。労働委員会におきましては、五月二十二日、労働大臣より提案理由の説明を求め、次いで議案の重要性に鑑み、六月十一日、六月十二日と公聽会を開き、利害関係者及び学識経験者十八名より意見を聽敬いたしましたほか、六月三日
北海道、同六日九州、同九日近畿地区において、それぞれ利害関係者、学識経験者を招き、その意見を聴取いたしたのであります。又六月十三日には総理大臣の出席を求め、政府の労働行政の根本方針を質し、更に地方行政、人事委員会と連合審査を行うなど、二十回に亘る委員会を開き、愼重に審議を重ねたのであります。
審査の際、問題となりました主なる点を御紹介いたしますと、
第一に、労働関係調整法等の一部を改正する法律案につきまして申上げます。本法案に対しまして質疑の集中されました主なる点は、先ず特別調整委員を中央労働委員会及び地方労働委員会に設ける点、労働委員会が調停の申請を却下できる点、緊急調整の新設の点、従来の団体罰を個人罰に改めんとする点及び公共企業体等労働関係法の仲裁裁定に関する点等であります。特別調整委員制度は法文上簡單に規定されているにとどまり、その権限、機能の一切はすべて政令に任されている。これを法文上明瞭に規定する必要はないかとの質疑に対して各府県の労働事情はそれぞれ実情を異にしているから、
運営に弾力性を持たせるため、法律で定めるもののほかは政令で定めるほうが適当である旨答弁がありました。申請却下制度は、労働委員会の三者構成及び従来の実績から見て又現行法の解釈から見ても、これを新設することは無用であるにとどまらず、むしろ紛争の円満な解決を妨げるものではないかとの質疑に対して現行の冷却期間はその本来の目的を達せず、却つて紛争を長引かすという結果を生じておりますので、本制度を採用することにより、双方の交渉が煮詰つていないときは、これを却下して、自主的交渉を促進せしめんとするものである旨答弁がありました。
緊急調整制度の新設については特に質疑が集中されたのであります。緊急調整は、労働関係法令審議委員会の公益委員案或いはアメリカのタブト・ハートレー法における罷業の差止め命令に比較して憲法に保障された労働基本権を甚だしく侵害するものであるから、これは撤回すべきではないかと質問いたしましたところ、緊急調整によつて争議権を制限する場合は、飽くまで国民生活に対して緊急且つ現実の危険が迫つていると認められる場合に、公共の福祉と国民生活の安全とを保障すべき措置であり、国民の輿論一般もこれを支持する場合に限つて実際に発動されるものであり、独立後の日本経済の自立発展に緊急不可欠の措置と認めるから、これを撤回する意思はない旨の答弁がありました。又緊急調整の期間五十日も争議行為を禁止することは、長期に失するものであり、争議権の著しい弾圧ではないかと質問いたしましたところ、過去の経験に鑑みても、又労働関係法令審議委員会の公益側の意見に徴しても、一応五十日程度あればその目的も達せられると思うので、適当な期間と考える旨答弁がありました。
現行法においては罰則は団体を代表する者に適用していたが、今回これを個人の処罰に置き換えることは極めて苛酷な措置ではないかと質問いたしましたところ、過去の経験より見て労働組合が団体としての違反行為を行なつた例はないが、いわゆる山猫争議という形において無責任な行動をとる者があり、これを処罰する方法がないので、かかる改正が必要であるという答弁がありました。又公労法第十六條、地方公労法第十條の、いわゆる予算上、資金上不可能な支出に関する協定並びに裁定の取扱につき、国会の承認を求めなければならないと法文が明記いたしておるにかかわらず、従来、政府は、條約の承認を求むるの件、或いは地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き何々の
設置に関し国会の承認を求むるの件等と取扱を異にし、国会の議決を求めるの件としてこれを提出しておるということは違法ではないか。又特に今回新たに制定される地方公労法において各地方公営企業ことに本條の解釈が異なる慮れはないかとの質問に対し、公共企業体が当事者として結んだ協定は政府が当事者である国際條約とは別であり、又国会は国の最高機関として、これに関する経費の支出につき自由に決定すべきものであるから、政府は意見を付せずに、国会の自由なる議決に委せる趣旨である旨、又地方においても同様であるべき旨の答弁があり、更に今回新たに公労法の対象となつた現業の
国家公務員並びに地方公営企業の職員については、政府並びに地方公共団体は直接の雇用者であり、従つて団体交渉の当事者であるから、條約の場合と同じ取扱をなすべきではないかとの質問に対しつては、そのように考える旨の答弁がありました。
第二に、地方公営企業労働関係法案について申上げますと、質疑の行われました主なる点は、先ず団体交渉の範囲を更に拡張して詳しく規定する点、及び仲裁裁定の効力を明確に規定する必要はないかとの質問に対しては、それぞれ公共企業体労働関係法運用上の慣行から見ても、この法案の程度が適当である旨の答弁がありました。就業規則は、その内容が主として労働條件を規定するものであるから、当然団体交渉の対象となるものではなやかとの質問に対しては、就業規則それ自体は管理者の定めるもので、団体交渉の対象となり得ないが、その内容において労働條件に関する部分は団体交渉の対象となり得る旨の答弁がありました。又地方
公務員法第五十七條及び同法附則第二十一項に定める軍純労務者に対する特例を定める法律案が未だ提案されない点について質問いたしましたところ、これら単純労務者は、地方
公務員中の現業職員と何ら選ぶところがないので、でき得るだけ早い機会に法案を整備して、団体交渉権を認める措置をとりたい旨の答弁がありました。
第三に労働基準法について申上げます。改正案作成の基本的態度についての質問に対しては、国際水準に比し高過ぎるもの、手続の煩瑣なもの等を実情に印するようにしたものであつて、基本原則を変更していないとの答弁があり、労働生産性が高まつているのに、労働條件を緩和するのは妥当でないではないかとの質問に対しては、決して国際水準を下廻るものではないとの答弁がありました。
中小企業については特例を設けてはどうかという質問に対しましては、大企業も
中小企業も労働者の保護については同一にすべきであり、又現在十名以下の事業場等については例外措置が講ぜられておる旨の答弁がありました。使用者が労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において、これにつき賃金と同一の取扱を受け、先取特権などの保障があるかという質問に対しては、現行法規による保障並びに管理規定にては十分ではないから、勧告助言により極力その保護を図るとの答弁があり、技能者養成については、今後の認可制と届出制との区別を質問したのに対しましては、現在二百三十余の職種のうち、十七職種のみが届出制に改められるのであつて、二百種以上は依然として認可制として存置するとの答弁がありました。その他十六歳以上十八歳未満の男子労働者の坑内労働、女子労働者の超過労働は、若しくは休日労働の制限緩和等についても質疑応答が重ねられたのであります。なお詳しくは速記録によつて御承知願いたいと思います。
以上は委員会におきまする質疑の要点でありますが、七月七日以後は、午前中には委員会を続行すると共に、午後は労働委員全員の秘密懇談会を開きまして本法案に対しまする各派の意向を総合して、共同修正案の作成に努力することといたしました。前述の質疑応答に見られるごとく、各派の主張には相当の隔たりがあり、容易に一致しがたく思われたのでありますが、幸い委員各位の真剣なる御努力により、漸く昨十日午後に至り修正案に関し委員全員意見の一致を見るに至つたわけであります。
次に修正案の内容につきまして御説明申上げます。修正は、今回政府において提案いたしました労働関係調整法等の一部を改正する法律案、地方公営企業労働関係法案、労働基準法の一部を改正する法律案の全部に亘つておりますが、重要な修正点について順次御説明を申上げます。
労働関係調整法におきましては、先ず第一は、特別調整委員の必置制をとつておる政府原案に対し、修正案はこれを改めて、任意
設置制といたしておる点であります。必置制をとりますると、各地方の実情に副わない不便を牛じますので、特別調整委員を置くか置かないかは、労働大臣又は都道府県知事の任意といたしまして、制度の運用に弾力性を持たせんとするものであります。第二は、政府案の申請却下の條項を削除し、現行法の建前で、労働委員会の調整機能を十分活用せんといたした点であります。公益事業の争議に関する現行法の三十日の冷却期間は、争議権獲得の手段として調停申請をするため、本来の使命を果していないという見地から、政府は今回のごとき改正案を出して参つたのではありますが、申すまでもなく、調停の申請を却下することによつて争議は解決されるものではなく、又労働委員会は、その有する調整的機能を発揮することはできないわけであります。又あとに申上げますように、本修正案におきましては、緊急調整制度と争議の予告制を採用いたしましたため、この点から本制度の必要がなくなりました。よつて不当に争議権の制限になるような政府案を削除いたした次第であります。
第三は、緊急調整制度の問題でありますが、修正案の基本的な考え方は、政府が今回の改正案を提案するに当つて專ら諮問いたして参りました労働関係法令審議委員会の公益代表委員の答申案を全面的に採用し、これに基いて原案を修正いたしておるということであります。緊急調整は労働法改正の最も重要なポイントであり、従いまして労働委員会におきましても各派委員によりそれぞれの立場から種々意見が出て、激しく論議が行われたのでありますが、結局前に述べました公益委員の意見は、今日の日本の置かれた諸情勢を考慮し、問題を公正な立場から取上げたものとして、一応妥当なものであると考えて、これを採用するに至つたわけであります。政府案と修正案との主なる相違点は、緊急調整の決定権は内閣総理大臣にありといたしました点、及びその決定に当つては公益側委員五人以上の賛成を含む中央労働委員会の同意を必要とするといたしました点でありまして、軽々にこれを発動することを抑止すると共に、国民経済の円滑な運行と、国民の日常生活の安全を確保するため、必要な措置を講じ得るよう途を開こうという趣旨に出でたものであります。なお緊急調整は、その性質上当然緊急を要するものでありますから、政府より右の同意を求められたときは、中央労働委員会は遅滞なくこれを決しなければならないという一項を新設いたしました。繰返して申上げますが、この條項は、各派委員の間で終始問題となつた難関でありましたが、愼電に審議をいたしました結果、最も公正な見地から修正案のような結論に一致いたしたわけであります。
第四点は、公益事業の争議に関する冷却期間を廃止し、新たにこれら争議に関して十日間の予告期間制度を採用いたした点であります。只今特定の争議について緊急調整制度を取上げたことを申上げましたが、その規定と現行労働関係調整法第三十七條施行の現況と併せて検討いたしました結果、最も実際的な見地からいたしまして予告制に切換えることとし、抜打ちストによる弊害を予防すると共に、労働者の地位の向上を図るため、その労働基本権を尊重しようといたした点であります。
第五点は、改正案中の罰則規定が、労働組合の団体行動を中心にその責任者を対象といたしておりまする現行規定を個人罰に改めておるという点を修正いたしまして、現行法の団体本位の方針を堅持いたしておる点であります。労働組合の団体行動が労働法上の制限範囲を逸脱するようなことがあつた場合には、その団体の責任者が刑事責任を負うのが本来の建前でありまして、政府原案に見るような改正は全く了解に苦しむところであつたわけであります。従つてかような理由に基いて政府案を削除いたしたわけであります。
次に公共企業体労働関係法に関する改正案に対する修正点につきまして主なる点を申上げます。
第一点は公労法十六條に第三項を新たに設けまして、予算上、資金上、不可能な支出を内容とする協定の締結がなされました場合、これが実現に当つての政府の態度に関し、当該協定の実現が国会によつて承認せられるように、でき得る限りの措置を講ずるように努めなければならない旨を明らかにいたした点であります。公労法の公正な運用については従来からも長いこと論議されて参つたのでありますが、この修正條項がよりよき慣行の確立に役立つものであるということを望むものであります。
第二点は、今回の政府案により新たに公労法の適用を受ける郵便、営林、印刷、造幣、アルコール専売等の事業に従事する現業の
国家公務員に対する
国家公務員法の適用除外の問題でありますが、政府案ではその範囲が極めて狭く、却つて無用の紛糾を生ずると考えられましたので、これを修正し、今後公労法の実際の
運営による慣行の確立に任せ得るよう改めたのであります。公労法の適用を受ける現業
国家公務員が
国家公務員法における種々重複した規定の適用を受けることを離れて、即ち現業
公務員が団体交渉又は労働協約によりみずからその地位の向上を図るため、改正法の趣旨が十分生かされるよう考慮してこの修正案は作られたものであることを、特に附け加えておきたいと考える次第であります。
次に地方公営企業労働関係法案に関しまする修正個所につきまして御説明申上げます。
修正の第一点は、第一條の目的規定を本法案の趣旨に副うよう明確にいたした点であります。地方公営企業労働関係法案は地方公営企業とその職員の労働関係に関する法律でありますが、原案ではやや明確を欠きますので、その目的をより明確に表現しようとしたものであります。
修正の第二点は、原案においては、地方公営企業労働関係法は、交通、電気、ガス、水道の事業で地方公共団体の経営する企業の職員だけに適用することになつておるわけであります。この法案と表裏の関係にある地方公営企業法案では、一定の要件の下に條例で事業の範囲を拡げることができるようになつておりますので、この場合はその事業の職員にも地方公労法を適用するのが当然であると考えましたので、この趣旨に副うて修正いたしております。
修正の第三点は、條例に抵触する内容を有する協定が締結された場合における地方公共団体の長がとるべき措置が原案では不明確でありますので、その点を明確にいたし、これに必要な修正を加えたものであります。修正の第四点は、予算上、資金上、不可能な支出を内容とする協定が締結される場合の措置に関するものでありますが、これは先に公労法の改正案に対する修正案の御説明に申上げたと同様の関係でありますので、それと同様必要な修正をいたしたわけであります。修正の第五点は、争議行為の禁止に関しまする政府原案から、共謀、教唆、扇動の行為を削り、職員の正当な組合活動が禁圧されることのないよう修正いたした点であります。修正の第六点は、単純な労務に雇用される地方
公務員に対し、暫定的な措置ではありますが、この地方公営企業労働関係法を準用いたして行こうと考えた点であります。これら単純な労務者に対する法的措置を早急になさなければならないことにつきましては労働大臣も委員会においてしばしば発言いたしておるところでありますけれども、委員会においても、この問題は、地方
公務員法の規定、単純労務の性質寺から考えまして、地方公労法を作るこの際、取りあえず右の形において取上げることが妥当であるとの結論に達したわけであります。次に労働基準法の一部を改正する法律案に対する修正の要点を御説明申上げます。先ず第一は、技能者養成に関する行政官庁の許可制度を届出制とする政府原案に対し、これを削除して現行法通りとすることと修正いたした点であります。その理由に関しましては、前の質疑要点に関する
報告の中に述べてありますので、説明は省略することにいたします。
第二は、新たに労働者の業務上の災害に関する休業補償に関しスライド制を採用し、経済情勢の変化に適応した労働者保護を立法化いたさんとしておる点であります。この問題は労働者災害補償に関する保険経済とも直接関連がありますので、この点十分検討いたしました結果、災害補償の全部に亘つてスライド制をとることは早急には無理な点もあることが明らかになりましたので、一応休業補償に限りこれらを実施することといたした点であります。災害補償の問題は経済的には使用者と直接関係があるのでございましてその意見も十分尊重いたし、かような修正をいたすことに決定いたしたのであります。
以上政府提出の各法案につきましての委員会におきます修正案の大要を御説明申上げたわけであります。
かくして本日午前労働委員会を開き、労働関係調整法等の一部を改正する法律案、地方公営企業労働関係法案、労働基準法の一部を改正する法律案に関する質疑を打切り、只今申上げたところの修正案並びに政府提出の三法案に関し討論に入つたわけでありますが、以下簡単にその要旨を御説明申上げます。討論は社会党第四控室を代表して菊川委員、緑風会を代表して早川委員、自由党を代表して安井委員、社会党第二控室を代表して村尾委員、改進党を代表して堀木委員、労農党を代表して堀委員のそれぞれより賛成討論がなされましたが、皆それぞれの立場より、多少の不満はあるが、今日の日本の実情に即し最も妥当なるものであるとして賛成の意見を述べ、又おのおのの立場と意見を述べられたのであります。その主なるものを申上げますと、菊川委員は、原則的には改正には反対である。特に占領下の軍命令に代える強制措置を今日必要であるという考えの下に緊急調整を立案したのは、今日の労働情勢が軌道に乗りつつある際、却つて無用の刺激を與えるものである。又公労法、地方公労法の適用を受ける職員にも労働三法を適用すべきであると信ずるのであるが、
公務員としての多少の除外例は別として、急速にこの方向に進まれたい旨、又坑内労働につき十六才以上を技能者養成として入坑を認めたについては、特にこれが濫用されざるよう十分なる監督を希望するとの主張がありました。早川委員よりは、緊急調整は、この制度のみを以て今後の労働情勢に対応するに十分であるか疑問があり、又
公務員の一部現業員に公労法を適用せんとすることについては、
公務員の性質上にわかに賛成しがたい等の憾みがあるが、今回共同修正が成立とたことは特筆すべきことであるので、今後労働政策上貢献するところ大なるものがあるので賛成する旨討論がありました。安井委員よりは、修正案につき政府も不満であろうが、その精神、目的は変らぬ旨、又村尾委員よりは、不満ではあるが自分らの主張の大部分が取入れられたことに満足する旨、堀木委員よりは、原案は占領軍に代るべき権力を作り出そうとする答えもあつたようだが、一面、現業員に団体交渉権を與えようというような一進歩も示しているので、これを修正して、申請の却下、個人罰、緊急調整等の原案は遥かに是正されたと信ずる旨討論があり、堀委員よりは、その立場からして、憲法に保障する労働権の尊重、占領下の争議権抑圧の是正等の主張は飽くまでもこれを主張するものである。この修正の程度は不満であるけれども共同修正には賛成する旨の討論があつたわけであります。
かくて討論を終結し、採決に入りましたところ、修正案並びに修正案を除く原案に対しまして全会一致を以て可決すべきものと決定いたしました。
以上御
報告申上げます。(拍手)