○兼岩傳一君 私は
日本共産党を
代表しまして、提案されておりますこの
日華條約が、
戦争への道であることを指摘せんとするものであります。
我が国の財閥及びこれに操られる軍閥が、
中国侵略の第一歩を踏み出しましたのは、遠く明治二十七年、一八九四年以来であります。そうして日露
戦争を
通り、
日本の平和を求める
国民をだまして、
中国への武力干渉が続けられて参つたこと、及びそれが
満州事変を経由いたしまして
中国事変、そして無謀な太平洋
戦争に発展して、幾百万の
中国兵士を殺し、幾千万の
中国の平和な労働者、市民、農民を殺し、痛めつけたということは、我々が深く恥じるところであります。而もこの侵略
戦争のために、
国民も又尊い血を流し、国土は荒廃し、都市も農村も破壊されたのであります。
アメリカがすでに勝敗がきま
つておりましたのにもかかわらず、人道に反する残酷な原子爆彈を
日本に投じましたのは、これによ
つてソヴイエト及び
中国その他の人民、国家に対して、大きな威圧を加えようとする目的であつたことは、誰知らぬ者もない事実なのであります。かくして勝利をいたしました
アメリカ帝国主義は、過去の数々のアジア人民に加えました行為を反省し、アジア侵略政策の失敗を反省し、平和を心から望むところの
日本に生れ替らせるのではなくて、軍服を背広に換えて、平和主義者の装いをしておりました反動的な侵略主義者、又今度の太平洋
戦争は、
戦争が悪いのではなくして、負けたのが悪いのだというところの復讐主義者を育成いたしまして、これを支持して今日に参
つておるのであります。
曾
つて第一次大戦で敗北いたしましたドイツに、同じジヨン・フオスター・ダレスがドルの援助を差伸べまして、反ソ反共のブルドツグを育成し、ヒツトラー
政権を打立てました。そしてそれが実に惨めなる敗北を遂げましたのを反省しないで、アジアにおいて今日再びその手法を施しつつあること、これ又天下の周知の事実であります。
日本の対
中国武力侵略計画の新らしい第一歩は、去る十二月、
サンフランシスコ條約、日米安保條約によ
つて踏み出されました。それが更に発展いたしましたのが十二月二十四日のダレス宛の
吉田書簡であり、それによ
つて締結されたのが、只今上程中の
日華條約であります。即ち
政府は、
中国人民の血て染まつた岡村寧次以下八十八名の第一級戰犯を釈放しました。これは
日本の支配階級が、
戦争犯罪を償う気持が一片だにないことを全
世界に示したものであります。そうして国会においては、
戦争犯罪人と
戦争犠牲者を混同するかのごときで決議その他が行われておる。これも又その一翼であります。
日本が明治二十七年、一八九四年以来追及して参りました
中国への武力による侵略計画を、今や
アメリカ政府に励まされて続けることを決意した。これが
日華條約であります。この
日華條約の意義は、曾
つて近衛総理が蒔
政権を相手にしないと声明し、傀儡注
政権を以て
正統政府であると強要いたしました、あの
中国への大陸侵略の第一歩、この近衛、東條の道の戦後の新らしい歩みであるということは明瞭であります。このようにして
吉田政府は、
アメリカ政府に励まされ、おどされ、アジア侵略の下請をする決意を持
つて、これによ
つて反動的支配をアジア及び
日本の人民の上に
再建しようとしております。このように
戦争と侵略の本質を持つものが
日華條約であり、それは曾
つての悲惨なる
運命を
日本に持ち来たらしましたところの日独伊防共
協定の
アメリカ植民地版であるところの反共太平洋同盟、反荒アジア統一軍へ
日本を駆り立てるための第二歩であると、これが
日華條約の
内容であります。
今ここで
国連憲章を引用するまでもなく、あらゆる民族は、その民族自身のことを自分で決定するところの民族自決の
権利を持
つておるのであります。これを犯すものは侵略者であります。
中国のことは
中国人民自身が決定する
権利を持
つております。
中国四億七千五百万の人民は明かに中華人民共和国中央人民
政府を支持しております。そこでは先ほどの
曾祢君の半世紀ほど遅れました理解とはおよそ正
反対に、労働者、農民のみならず、中小企業者は勿論、大資本家の
代表者も参加しております。それのみではありません。国内の大資本家のみならず、一千万の東南アジアの華僑切
つての大親分、マレーの陳嘉基がこの
政府の協商
会議に参加しておるということを以てしてもわかるのであります。即ち
中国、
中華民国共和国は、四億七千五百万の中から、
アメリカの売国奴財閥の極く少数を除くあらゆる全
国民の各層、冬階級の
代表者を以て建設された極めて安定した
政府であり、輝かしい発展を遂げておることは、これは特別の色眼鏡を掛けない人ならば、イデオロギーの如何にかかわらず、これを
承認せざるを得ないところの歴史的事実であ
つて、(
拍手)それを
吉田政府、
岡崎外務大臣が、好むか好まないかのごときことは問題にならないところであります。
それでは一体
政府が、只今上程しておられまする
日華條約の相手国であるところの
中華民国というものが、現在この世の中にあるかどうか。これは
外務委員会に出られなかつたかたには、非常に唐突な
質問のように感ぜられますが、私が外相並びに政務次官にことごとく問い質しましたところ、
領土はないのであります。
台湾及び澎湖島があるではないかというふうな常識論が感じられますけれども、
台湾及び澎湖島は、
カイロ宣言と
ポツダム宣言によ
つてこれは
中国の所属であるということは明確になり、これは
吉田総理も岡崎外相もこれを認められておるが、これは
平和條約第
二條によ
つて放棄したものである。
従つてこの
台湾と澎湖島の
帰属は、今のところ未定にな
つており、
従つて蒋介石政権は、この全く
国際協定から見て
中国に明確に所属し、
日本の
放棄したところの、この不明なる、不安定なる状況の上にいるのでありまして、明確なる
領土はあり得ない、これは大臣自身が、政務次官自身が、私の
答弁に対して
承認しておられるところである。
第二に人民がない。
国民がない。この條約の第十條に何々を含むものとみなすなぞというあいまい模糊たる表現を使
つておりまするが、人民が八百万であるのか七百万であるのか、四億七千五百万に拡大されるのか、一つも
政府は
説明できないのであります。即ち
国民が不明であり、不安定であり、量的に
規定できないし、質的に
規定ができない、即ち
中華民国には
国民がないのであります。
又第三に、
中華民国と呼ぶためにはなくてはならん独立した
政権、
国民によ
つて支持された
政権がないということであります。
政府はこれは対して
国連の認めておるのは中華人民共和国ではなくて蒋介石
中華民国である。これが
政府の唯一の頼りであります。併しその国の
政権が独立しておるかいないかということは、
国連でおきめを願うことでなくて、
中国人民が決定すべきことであります。(
拍手、「そうだ」と呼ぶ者あり)ところが、
中国の人民は、
蒋介石政権を、先ほど
金子君が言われましたような「犬張り豚来る」、豚の程度、つまり豚はやがて殺して食つたらうまかろうという程度に
台湾の人民は考えておる。いわんや四億七千五百万の
中国人民は、この解放を決意しておりこそすれ、このような
政権を認めていないのであります。
然らばどうして
中華民国の
政府が現在存在し得るか。それは
アメリカに飼われている下僕であるということであります。
アメリカの差向けております第七艦隊と蒋
政権の使います軍事費の六六%、三分の二の資金、武器購入費その他によ
つて支えられておりますところの、独立した
政権でなくて、完全に
アメリカに従属した、植民地としての
政権なのであります。ここに私は去る五月五日、中華人民共和国の
外務大臣周恩来氏の公式声明を持
つて来ております。この公式声明は、この
日本の
サンフランシスコ條約が効果を発効いたしまして以来、初めて正式に発表したものであり、これは北京の新華社の去る六日の発表によ
つて全
世界に伝えられておるものでありまするが、その中で「日台條約は
中国への侵略の準備である」という
意味を、こういうふうに申しております。極く
簡單であるから、私は読んでみます。「
アメリカ政府は
吉田政府に対して
台湾の
国民党反動と
平和條約を結ぶよう命令した、
平和條約によ
つてこの二人の下僕を縁組させる狙いは、中華人民共和国を軍事的に脅威しようとする途方もない考えから来ている。
アメリカと單独
講和條約を結んだ
吉田政府は、今や最後の良心をも外国に売り拂
つて、すべての
中国人民から一蹴された蒋介石の馬丁に
なつた。」こういうのが、まだずつとありますが、周恩来
外務大臣の公式声明であります。二の「蒋介石の馬丁に
なつた」という文句は、これは衆議院で我が党の林代議士が使つたところ、
内容そのものを攻撃するところの能力と決意を持たない衆議院の自由党の諸君は、こういう字句の末をあげつら
つて、懲罰に追い込んでおることも又各位の御
承知の
通りであります。この周恩来外相の公式声明が指示しておりますように、今や
蒋介石政権は生ける屍であります。生ける屍を保つに汲々としておるのであります。この蒋
政権に対する評価については、周恩来外相の公式声明であると言うだけで、もう聞きたくないかたがたのために、私はここで三人の証人に登場して頂く必要があると思う。
第一はアチソン長官であります。アチソンはどう言
つているか。これは恐らく安井君も、アチソンのこの伝達書に盛られましたこの声明に対して私は傾聽されることだろうと思う。或いは国務省の
中国白書の伝達書でアチソンはこう言
つている。「
中国の過去と現在における
状態の現実的評価から導き出される結論は、
米国に許される唯一の道は、自分自身の
軍隊と自分自身の人民の信用を失
つてしま
つている一
政府のためにする全面的な干渉が残
つているということだけである」。こう言
つて、これは一九四九年、数年前の発表でありますが、かような全面的干渉は、なすべきでないということを彼は述べなあとで、更に彼はこういうことを続けて言
つている。「多くの観察者によれば、
国民政府と
国民党は腐敗し、地位と勢力との奪い合い、そうして
米国に頼
つて戦争に勝ち、みずからの国内的な地位を保つことのみを希
つていたらしい。」こういうことを言
つております。つまり
アチソン国務長官は、公式な
中国白書の伝達書を通して、蒋
政権が全く
中国人民から見捨てられて、腐敗堕落したものであるということを確認しております。又マーシヤル元帥はどうか。これも恐らく安井君は、余り野次らないで聞いて下さるところの
発言と存じますが、マーシヤル元帥はその翌々年、一九五一年、昨年上院で、「
国民党軍崩壊の本当の原因はどこにあるか。それは主として
軍隊が人民から支持されなく
なつたからだ」と述べております。一度
アメリカ政府すら、蒋
政権は歴史の舞台から消え去つたことを認め、これを
維持することは内政干渉であり、
アメリカ国民はこれを非としなければならないと言
つております。第三に、一九五〇年一月五日のトルーマン大統領の証言も御紹介申上げましよう。トルーマン大統領は、
従つて、
台湾には介入しないという声明をいたしております。これが一九五〇年一月五日であります。
ところが
国連の名をかた
つておりますところの干渉軍が、
朝鮮への武力侵入を開始すると、これらのアチソン、マーシヤル、トルーマンの一連の発表は弊履のごとくに捨てられまして、アジアに対する武力干渉が開始され、或いは第七艦隊が
台湾水域に派遣されました。
アメリカは現在
中国義勇軍に関してあれこれと言
つておりますが、この
朝鮮における敗け戰を何とか押返そうとして今や細菌戦、更に今や進んで鴨緑江上流の発電所の
爆撃という、歴史に恥ずべき暴挙に出ておることは各位の
承知しておられるところであります。退くに退けず、進むに進まれないところのこの
アメリカのジレンマ。これが、我が
日本政府は
外務委員会並びに本
会議ではどう出ているでありましようか。
政府の、條約を
審議中の
委員会における動揺振りはどうであつたか。
吉田総理はかねてから、これは隣邦友好の
関係で、全
中国と
関係することでないと明言しておつた。ところが
委員会で
曾祢君その他からの
質問に対して、條約局長が、いや、全
中国との條約であります。そうして
岡崎外務大臣は、そうであるという身振りで、これで答えた。そうかと思うと、それから数日たつと、
吉田総理みずから出て来て、これはやはり隣邦友好の
関係であ
つて決して全
中国のものでないという、而も
曾祢君が暴露しておられるように、條約そのものはやはり全
中国との
関係がひそかに忍び込んでおる。この動揺、この裏切り、ごまかし、これはどこから来ておるか。
アメリカが
朝鮮戦争において抜きさしならないところの
状態に追い込まれ、そうして進むに進めず、退くに退けないで、本国においてはストライキ、全
国民の戰争
反対、
朝鮮から手を引けという声及び軍備拡張、原子爆弾の威嚇がきかなくな
つて来たこと等と、あらゆる悪
條件の下に、今や大統領選挙を迎えておるこのトルーマン
政府自身の動揺狼狽が、その━━であるところの
吉田総理、
岡崎外務大臣、條約局長に参りまして、動揺極まりない態度と欺瞞に満ちた條約を作
つておる原因は、まさにここにあるのであります。(「時間だ」と呼ぶ者あり)雑誌「
中国人民」は、この
日華條約、つまり
台湾国との條約こそ、瀕死の床にあるところの病人、これは
吉田内閣のことです、瀕死の人や息を引取りそうな
吉田内閣と、悪臭を放つた死骸、これは蒋
政権のことです、悪臭を放つた蒋
政権が、御主人、これは
アメリカ帝国主義者であります、御主人の命によ
つて契約を結ぼうとしておると、雑誌「
中国人民」は指摘しております。その
通りであります。我々は、
日本の売国
政府及びその強固な支持者自由党以外のすべての
国民は、輝やかしい発展を遂げ、躍進に次ぐ躍進をしておる四億七千五百万の新
中国との新らしい友好
関係に入るということを決意いたしております。我々は断じて
アメリカの賭けごとに使われるようなアジア統一軍、李承晩と
吉田茂と蒋介石とキリノ、この━━━━━━の結成しようとするアジア統一軍の布石に断然
反対であります。恐らく遠くない近いうちに、人民解放軍が
台湾を解放することでしよう。これが正しい本当の
中国の統一であります。それは
吉田政府への脅威であり、
岡崎外務大臣が顔色を変えるような出来事でありましよう。併し断じて八千四百万
日本人民への脅威でもなければ、アジア十億の人民に対する脅威でもありません。