○内村清次君 曾
つて大正十四年の二月に、
天下の
悪法と言われました治安維持法が、時の憲政会内閣、
加藤高明
総理大臣、若槻禮次郎内務大臣、小川平吉司法大臣のこの内閣によりまして
審議せられ、且つ二カ月に亘る審査の結果、これが可決をされたのでありましたが、その後三回に亘
つてこの治安維持法が
改正せられた。我々は、この
改正は決してよく
なつたんでなくして、第三回の近衛公の内閣当時におきましては、当時第一條から第六條までの條項が、一條から六十五條までにこれが追加せられまして、遂に警察国家となり、遂に憲兵
政治となり、いわゆる国民の言論を圧迫し、国民の自由を圧迫して、大東亜戰争に突入するこの
悪法と化したことは、
諸君御承知の
通りであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり、
拍手)この
悪法にまさる今回の政府
提案になる
破壊活動防止法案というものが
天下の耳目を聳動して、これに対する
反対の状況は、恐らくこれを、
諸君におきまして強行して可決させようとする
諸君といえども、この世論の動向は決して見失
つてはおられないであろうと思います。このような法案の
審議に当りまして、
参議院は十日間に亘るところの、全く
秩序は乱れてしま
つておる。その原因は、誰が乱したか。(「誰が乱した」「君らが乱したのじやないか」と呼ぶ者あり、その他
発言する者多し)その原因は、即ち
政治道義を
考えない、一方的にこの法案を通過させようとして、
国会法を、これを即ち
政治道義を破
つて決するとか、或いは又お互いが作
つたところの
国会法及び
参議院規則を無視して
動議を強行するというような、こういう
議長職権を(「院議によ
つてや
つたのだ」と呼ぶ者あり)強行し、及びこれをさせたところの與党
諸君の
態度こそ、誠に私たちは後世に悪例を残したものと断ぜざるを得ないのであります。(「その
通り」「紐をつけるのは誰だ」と呼ぶ者あり、
拍手、笑声)この状態におきまして而も又この人民の
国会であり国民の
政治であるというような、この新憲法の下における
国会の存立に対しましても、当然請願をする権利のあるところの国民が、棚の外において、而も衛視から制止をせられて、そうして当然なる権利を行使することができないというがごとき状態の下において私は政府に
最後の
質問をすることにつきまして、誠に悲しむものであります。(「すでに警察国家は始ま
つておる」「しつかりやれ」「本論をやれ」「余計なことを言うな」と呼ぶ者あり)
総理は、この
参議院の今回の
混乱の動機の
一つの重要な点といたしまして、
総理はこの法案に対するところの
熱意が欠けておる。所信を一回も述べておられない。(「
熱意が溢れておる」と呼ぶ者あり)委員会にも出席をしない。本
会議に漸くあの状態からして今回初めてここにおいでにな
つておる。このような状態で、ただお互い
議員の言論を圧迫するばかりでなくして、国民の今後の言論を圧迫して行こうというような、この法案に対しまして、
総理は一体どのようなお
考えを持
つておられるか。(「正しい言論は圧迫しない」と呼ぶ者あり)この点を私は先ず第一点としてお尋ねいたしたいのであります。第二点といたしましては、
総理はこの法案を出されるところの動機におきまして、私の見るところ、
総理の
政治的晩節におきまして、三つの大きな過誤を残しておられます。これは恐らく後世の国民は、
吉田総理の大きな三つの罪悪であろうと言うでありましよう。その三つの大きな
政治的過誤と申しまするのは、この法案の拠点は、私は即ち
総理が強行いたしました平和條約及び
安全保障條約、又これに附随するところの
行政協定の
締結によ
つて、止むなく、我々国民の目を奪うような、或いは又我々国民の言論を奪うような取締を強行せずにはおられないような情勢に、現今の
社会状態の不安を讓成せられたと、私は
考えるものであります。(「その
通り」「誰だ、そんなことをしたのは」と呼ぶ者あり、
拍手)即ちダレス氏とのお約束は、これは当時の国際信義上におきまして、
吉田総理との間に密約が交されたことは、すでに御承知の
通りであります。この密約を、
吉田総理の感情によ
つて、個性によ
つて、いわゆるこれを強行せられた。
吉田総理とダレスさんとの間の信義はこれで済んだかも知れませんが、恐らく済まないのは
日本の大多数の国民であります。今後悲運にな
つて行くところの大多数の国民であります。恐らく今回の條約の
締結によりまして独立をかち得ましたとして、国民が、
日本の繁栄を、
日本の今後即ち伸びて行くところの新建設を、これで安心だ、これでその基礎が成
つたとして、喜んでいるところの国民が何ほどあるでありましようか。(「大多数であるぞ」と呼ぶ者あり)それを喜んでいるは、
吉田内閣及び
自由党の
諸君、これに同調したどころの
諸君だけであると私たちは
考えるのであります。(「扇動だ」と呼ぶ者あり)
行政協定の結果、あの基地の周辺におけるところの森林田畑の接收に対して、国民はどう反撃をしたでありましようか。これには、恐らくその県にあるところの
自由党の
諸君でさえも、これだけは
一つ超党派的に陳情をしてそうしてこの接收を、これを少からしむるか、或いは又これを無くするように努力しようじやないかとして、皆様方の間にも運動を展開されたことがあるでありましよう。この悲惨な事実、この悲惨な事実は何から起きて来ているでありましようか。又こればかりではないのであります。今日にな
つて参りますると、国民の状態というものは、これは條約
締結以前におけるところの、即ち占領下において、お互いは全面的な平和を、この憲法の精神によ
つてこれを打ち立てて行こうと努力をしている。当時の連合国の占領下にあ
つては、連合国のこの
考え方を、これをまとめて、そうして
日本はここに安全なる、本当に真に安全なる平和を確保しようとして念願して来たのでありまするが、これを一方的に引摺
つていたところの
吉田総理の
態度によりましてどう
なつたでありましようか。即ちこの状態におきまして国民は国際的な即ち激突の状態が身近かに国民の身に迫
つて来たではないですか。隣りの朝鮮のあの停戦が、いわゆるこれが停戰が完成をせずして、そうして、これが或いは会談が破裂しはしないか。国連軍が水豊爆撃をや
つた。ダムの爆撃をや
つた。こういうような
一つ一つのことが、これが国民の身近かに迫
つた大きな問題として不安を
考えるような
事態に
なつたではありませんか。このような
事態、まあこのような
事態が醸し出されて、そうしてメーデー事件が起
つて来る。或いは朝鮮人の事件が起
つて来る。
社会不安が起
つて来る。(「お前らが起したのじやないか」と呼ぶ者あり)その起
つてくるところの導因というものは、(「
社会党左派にあり」と呼ぶ者あり)決してこの條約によ
つてこの法制を
考えたところの
自由党の
吉田さんのお
考え方でなくしていわゆるこれによ
つて起
つて来るところの国民の当然な不安の集結であ
つて、両條約の
政治的な非常な失敗であ
つたということを私は断言せざるを得ないのであります。(「
ノーノー」「その
通り」と呼ぶ者あり)私たちは、この
一つの
政治的な大きな
吉田総理の個性から発しました條約に対する
考え方が、今日のような
社会不安を醸成させたということが第一点であります。
第二点、この條約を結んだために、どうですか、憲法に違反するような行動をせなくちやならない。それはいわゆる戦力の充実でありましよう。これは予算面から発しておる。今年の予算にも二一%の再軍備費を、これを計画している。これは当然なる帰結であります。このような憲法第九條のこの問題を、これを伏せておいてそうして予備隊を作
つておる。これはまさしく
吉田総理が憲法を蹂躪しているところの
態度であると私たちは断言せざる得ないのであります。(「
ノーノー」「その
通り」と呼ぶ者あり)
第三の点は、予算的な憲法蹂躪をやる、或いは憲法の條文を、これを実質的に蹂躪をいたしておりますると、更に第三の蹂躪をやらなくてはならない。この蹂躪が、これが即ち今回の
破壊活動防止法案とな
つて、無事の良民に対して、関係のなき良民に対してさえも、いわゆる職権の濫用を許した、常に官憲に脅かされて、自分の思想を無理に統一させられる。或いは自分の言論を抑圧せられ、或いは憲法に規定せられたところの結社の自由を、これを剥奪をせられて行く。このような言論及び結社の自由、出版の自由を抑制するような基本的人権の削減を
考えなくてはならないように追い込まれたところの大きな
政治的過誤であります。
私はこの三つの大きな過誤が、ただ
日本の今回の講和後におけるところのあり方と比べて見ますると、すでに
吉田総理もこの点は自覚しておられるであろうと思いまするが、アチソン長官が申しましたように、
日本は今後アジアにおけるところの防衛基地であると、こう言
つておる。この基地の役目を
日本は背負わされておる。この
事態に対しまして
吉田総理は何と御返答なさるであり
まりしようか。この点がこの三つの点の集約点であ
つて、私は今後の問題というものがいわゆる日華條約になり、日韓條約になり、或いは三国漁業協定になり、いろいろな派生的な問題がアジアの第一線の基地としての
日本の任務という点に集約せられている。今後国民は本当に腹を据えてかか
つてこの内閣の思想を、即ちこの内閣の
考え方を、この内閣の実行を、これを批判して、民主的な方法によ
つて打倒するところの本拠とならなくてはならないと私は信ずるものであります。
第四の点につきましては、今回のこの
暴力に対しまして力で抵抗するというような法案の内容に対しましてはこの点は勿論、あのようなメーデーの事件におきましても、各所に起
つておりまするところの
暴力行為に対しましても、我々は
暴力行為そのものに対しましては、これは絶対に否定するものでございまして、この点はいわゆる民主国家といたしまして生い立ちまする
日本といたしましては、これは恪守いたして行かなくてはならん。厳守いたして行かなくてはなりません。併しながら、この
暴力の行為自体がどの点から起きて来ているか。これは我々国民がひとしく
暴力自体に対しまするところの原因と実相に対して、よくこれを批判して行かなくてはならない。この批判の事実については、言論は言論を以てこれは批判して行かなくてはならない。或いは輿論機関は輿論機関の性格を以てこれを批判して行かなくてはならない。(「批判だけでどうなるか」と呼ぶ者あり)そうしてその良識に従
つて、このような計画をする人たちに対しましては、これはどこまでも民主的な方法によ
つて我々はこれを罰して行かなくてはなりません。而も又この行為自体の発生に対しましては、すでに憲法におきまして基本人権を認めながら、治安を確保するところの刑事立法があります。基本法があります。即ち刑法あり、民法あり、或いは又刑事訴訟法あり、このような基本的なる、即ち治安を乱す現実の行為に対しましては、この法律によ
つて我々はこれを罪を慎んで人を慎まない、罪はどこまでも
社会治安を乱すものとしての見地に立
つてこれを制裁して行かなければならない。
こういうようなことで、私たちは、
民主主義のルールというもの、
民主主義の暢達というものを、これを守
つて行かなくては相成らないのであります。そのようなことをしないと、丁度
吉田総理は今この
国会におきまして、
吉田総理の身辺には、いわゆる委員会に御通行になり、或いは又本
会議に御通行になるときにおいてあの衛視の警備は一体どうでありましよう。誰がああいうことを命じたのでありましよう。これは、そういうような三つの
政治的な過誤の結果におきまして、自分の身が苦しくな
つて来る。身が苦しくな
つて来ますると、それを守
つてもらおうというような欲望が起
つて来る。欲望が起
つて参りましても、決してこの心の咎めということは、決してこれは周辺に如何なる衛視があろうといえども、或いは周辺に如何なる強烈な武器を持
つておるといえども、心のこの迷い、心のこの自由というものは決して剥奪することはできないのであります。このようなことが即ち今回の破防法におきまするところの
暴力に対するに
暴力を以てするというような
政治理念による、即ち
自由党一流の
政治理念によるところの(「嘘つけ」と呼ぶ者あり)この法案に対しまして、
総理は一体このような方法でこの治安対策というものが完全であるかということにつきまして、御
答弁をお願いいたしたいのであります。
我々の国民生活安定の具体的な
考え方といたしましては、即ち先ほど申しましたように、いわゆる治安を乱すところのその行為に対しましては、刑法の規定がある、或いは又民法の規定がある。(「要点を言え」と呼ぶ者あり)このような基本的な法律で十分賄い得るものであるという見地に立
つておるのであります。而もこのような
社会的不安をこれをなくするということは、これはどうしても国民生活を安定させなくちやいかない。あのような憲法を蹂躪するような二千数億の再軍備費用を使わないで、そうしてこれをいわゆる国利民福の、
社会福祉の方面に使
つて行く、教育の予算におきましても、僅か全体に対する三%で、教育、この思想の健全なる発達を望むとするならば、どうしてこの教育の問題が解決するでありましようか。或いは又
社会政策におきましても、厚生費用におきましても、僅か予算の一%三くらいの厚生費用で、一体どうして国民の
社会不安をこれを是正し、これを解消することができるでありましようか。(「もう少し内容のあることを言え」と呼ぶ者あり)或いは又失業対策に至りましても、その
通りであります。このようなことでどうして国民生活の安定というものができるでありましようか。このような
社会不安の導因を投げ捨てて置いて、そうして力でこれを取締
つて行こうというところに、この法案の狙いがあり、又この法案の大きな過誤があり、いわゆる治安維持法の化けて出たところの大きな
悪法であると世の中の
指弾を受けることを、私はここに申上げたいのであります。
第四の点につきましては、これは司法権に対しまして行政権が最近圧迫いたしておる
事態でありまして、今回の法案を見てみましても、すでに憲法におきましてもこれは明らかでありまするように、九十九條には、この憲法を尊重するところの大きな義務につきましては、国務大臣及び
国会議員、裁判官その他公務員は、一切挙げてこの憲法の條項をこれを守
つて行くところの義務を負わされているのであります。而も又七十六條におきましては、すべて司法権というものは、最高裁判所及び法律の定めるところによ
つて設置するところの下級裁判所に属するものでありまして、特別裁判所の設置や、或いは又最終的に行政機関を以て裁判をすることはできないという條項が明確に書いてあるのであります。このような憲法の條項を外して、そうして行政機関というものがいわゆる基本人権の最終的審判をやる、公安審査委員会というものが最終的な審判をやる、このような行政権での侵害をこれで認めておるのであります。而もこの公安審査委員の任命というものは、
吉田総理自体がなされるのである。而もその構成は五名であります。而もこの
会議の成立というものは三名で成立できるのである。同一政党の内閣からいたしまして、二人の委員だけはこれは出すことができるような規定にな
つておる。委員長と二名の委員、この三名で、できるようにな
つております。このような、政府の権力と通謀して、そうして自分の好まざるところの政党団体、これを次々とこの公安審査委員会にかけて、最終的に基本人権を剥奪するような、このような恐ろしい法案というものがどこにあるでありましようか。ここに私は、
総理大臣が意図しておられますところの警察権の掌握におきましても、或いは又、即ち経済権の掌握にいたしましても、或いは今後発展するのでありましようところの再軍備によるところの保安庁設置によ
つての統帥権の掌握、すべて、三権どころではなくして、四つの権力を握
つて行こうという底意がここに現われておるということを、私は、はつきりと申上げたいのであります。(「フアツシヨだよ」「見当違いのことばかり言うな」と呼ぶ者あり)このような行政権が司法権を侵害するところにおきまして正しい最高裁判所の憲法を守るところの裁判というものはできません。又は地方裁判所の基本人権を守るところの裁判というものは、だんだんと侵害されて行くのであります。この点につきまして
吉田総理は一体どのようなお
考えを持
つておられるか。この点を私はお伺いしたい。
次に公安審査委員の任命権につきましては、これは法案の第五條に明記されてありまするが、この問題につきまして先ほど私が
説明いたした
通りであります。
衆議院の修正は、内閣
総理大臣にその任命権を持たせて修正して参りましたが、
吉田総理は一体この任命に当りまして、どのような構想を持
つてこの委員を任命せられようと
考えておるのであるか、この点を私はお尋ねいたしまして、又この点につきましては再
質問をいたしたいと思います。即ち私は、この
民主主義の確立の点につきましては、丁度今回皆様方がこの
参議院の
権威を最も低くするような多数の横暴をせられたことは(「
ノーノー」と呼ぶ者あり)憲政史上におきまして誠に遺憾なことでございますが、私はここに
一言皆様方に提言をしておかなければならない。(「自分で反省をしろ」と呼ぶ者あり)それは即ちアブラハム・リンカーンが申したことであります。「少数の人を永久に欺くことはできる。すべての人を一時だけ欺くことも又できる。併しすべての人を永久に欺くことは何人もなし得ないであろう」ということであります。(「よく聞いておけ」と呼ぶ者あり)「若し国民がその政府に倦いた場合は、彼らはその政府を改造する権利又はこれを廃止し或いは打倒するところの革命的権利を行使することができる」と、リンカーンは喝破いたしております。而も又「若し大多数の人間が、多数の威力を以て憲法に明記せられた権利を蹂躪して、少数者を無視するに至るときには、道義的見地から革命を肯定せざるを得ない。若しこの侵された権利が重要なものであるときには、恐らく革命に至るであろう」と警告を発して、而も又これを守
つて自由の旗を守
つて来ておるアブラハム・リンカーンのこの教えを、皆様方に私はそつくり警告を申上げておきます。而も又私は、この
吉田総理の
考え方が今度のこの破防法に現われておりまするところの基本人権の制限につきまして又特に政府が
考えておりまする基本的な、扇動のこの條項につきまして、私たちは次のような提言を申上げておきたいのであります。即ち、チャールズ・ヒユース最高裁判所長官は、この扇動の問題についてこのような警告を発しております。「我々の制度を
暴力によ
つて打ち倒そうというような扇動行為に対して、
社会を保護する重要性が大きければ大きいほど、自由な
政治的討議の機会を保持するために、自由な
討論、自由な報道、自由な集会等、憲法上の権利を守り抜くことの必要は、ますます緊要のこととなる。こうした権利を守り抜くことによ
つてのみ政府は人民の
意思に応えることができるのだし、又望ましいとあらば
社会の変革も、平和的
手段によ
つてなし遂げられるのである。我が共和国の安泰はそこにあり、立憲国家の基礎もここにある」と喝破いたしておるのであります。即ち、言論に対しては言論を以てする。思想に対しては思想を以てする。いわゆる共産党に対しては、即ち我々は、思想は思想を以て、而もこの共産党に対するところの大きな鬪争を展開しておる。
諸君たちは思想で対抗せずしてそうして
暴力で以て、権力で以て対抗して行こうとしておる。このようなことで、どうして思想の自由ということが確保されるでありましようか。どうしてこの、即ち
民主主義の暢達というものが確保されるでありましようか。私たちはこの結果が戰争の悲惨な状況にな
つて来る。両極端の即ち激突というものが、これが相互いに摩擦を醸成させて行
つて、遂に戰争というような
事態に発火して行くことを私は恐れるものでありまして、その導火線はすでに
吉田総理が作
つておられることを私は
最後に銘記したいのであります。
第二におきまして私は委員長に
質問をいたしたいのであります。法務委員会は、御承知の
通り、委員長も
報告なさいましたように、約一カ月に亘りまして、即ち五月の十五日から六月十九日までに委員会が審査をいたしました。二十七回に亘る審査をいたしました。その間におきまして委員長がとられましたところの
態度に対しましては、理事会の
決定を、或いは各委員の希望をよくお聞きになりまして、その熱心な点につきましては私たちは敬意を表します。併しながら、ただ、委員長も御不満でございましたでしよう。又委員も不満でありました。その点は
吉田総理の出席のなか
つたことであります。この重要な法案に対するところの
吉田総理の所見を聞き得なか
つたことであ
つたはずであります。このような委員会の審査というものがこの本
会議に移されましたときにおきまして、委員長のこの法案に対するところの
質疑の状態の経過
報告が誠に簡單でありました。これは委員長自体も認めて、この
報告の内容に書いてあります。而もこの内容は僅かに六点であります。六点の内容しかこれは
報告してありません。而もこの
報告の要点につきましては、これはあとで私も希望を申上げて委員長の御
答弁を伺いたいのでございまするが、即ちこの委員会は、前例にないような、原案が否決せられて、両修正案が否決されまして今では誰か、政府原案とそれに付けた修正案が出て来ないと
審議の対象にならない。委員長は否決
報告をなさ
つております。而もこの内容の点につきましては、先ほどから申しましたように、
天下の輿論というものがこの法案に対するところの疑惑を持
つておる。
反対の輿論を持
つておる。このような情勢の上におきまして、
委員長報告は、極めて政府と委員とが熱心に
質疑を交わしました状態を、この骨子を委員長は御
報告になる義務があるのであります。その骨子が僅かに六点では、どうしてもこれは、各
議員の方々が如何に御賢明であられるといえども、私はこの内容の点、政府が
考えておる点、この点の詳細なる構想はおわかりにならないであろうと、私はこの点は公平に申上げます。而も又委員会の速記録というものは、御承知のごとくこれは五月二十八日までの分が皆様方のお手許に配
つてあるだけであります。これはここの能力の関係でございましよう。このような情勢におきまして、而も恐らく本
会議の委員長の
報告は、即ち喧騒のためにおいて皆様方は十分な内容の点についてのお話は御承知できなか
つたかもわからないと私は思います。(「その道り」と呼ぶ者あり)このような状況で一体この法案の本
会議を、即ち皆様がただけでこれを
討論採決に持
つて行くところの無謀な計画でよろしいのであるかどうか。私はこの点を皆様方にお訴えいたしたいのであります。そこで私は申上げます。委員長は是非この点だけは各委員の方々に
報告してもらいたい。
第一点は、即ち国民生活の安定のための具体的政策の実現と治安対策との関連性についてであります。これは
吉田総理に今私が
質問を発しておりますこの点で、若し詳細に私たちが納得するような具体的な政策の御発表があれば、これは委員長はそれでよろしいでございましよう。併しながら、若し具体的な御発表がないとすれば、代
つてこれは極く簡単ではございまするが、私はこの法務総裁に、専門的な法務総裁に、政策の問題を
質問する。これも
質問をする或いは又この
答弁を聞いて、満足するものではありません。併しながら、これは各委員から熱心に、即ち、治安対策においてはこれだけではいかない。一体、具体的な政策はどこにあるかということを尋ねておりまするからして、この点を先ず委員長はその
質疑応答を、御
説明して頂きたいのである。
第二点は、
民主主義の擁護とこれの立法精神の違憲性についてであります。この点についても先ほど私は一端を触れました。即ち憲法第十一條、第十二條、第十三條及び第十九條、思想及び良心の自由の侵害、第二十一條集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由の保障に対しましてこの人民の基本権に牴触するかどうかというような、この法案の即ち立法精神、この精神につきましても私たちは詳細なる
質疑応答をや
つておるのでありまするが、この構想につきましての政府の
答弁の状態を御
報告願いたい。
第三点は、基本的人権の不侵害の原則と公共の福祉維持との優位性についてであります。即ち、新憲法の前文にありまするところの、国民主権の自然権、即ち基本権を制限するところの一切の憲法、法令及び詔勅を排除するという、この憲法の前提がなされておるのであります。これは常に政府のほうでは、公共の福祉の維持のためには、これは治安の対策におきましても、基本人権をこれを制限してもよろしいという観念に立
つておる。私たちは、この憲法の即ち精神というものは、基本的人権を、これを尊重せなくてはならない。そのためにこうむるところの公共の福祉というものの優位性というものは、基本的人権の下位にあるものであるということを私たちは
考えております。この点に対しまするところの政府の
答弁につきましてこれは是非とも
一つ委員長は
報告して頂きたい。
第四の点は、憲法第七十六條と行政裁判権の侵害の有無でありましてこの点も私は先ほど触れておきました。いわゆる本法公安審査委員会の権限と性格が司法権の侵害とな
つておる。本法第二十四條第二項の行政事件訴訟(
特例)法第十條第二項但書の適用は、司法裁判権の制限を意味するものではないかということに対するところの政府の
答弁でありまして、これは
衆議院の即ち本案に対する修正の案に対しましてもこの点は触れておらないようでありまして、即ち行政事件訴訟
特例法の第十條によりまして、内閣
総理大臣がいわゆる
異議の申立をして、裁判権に訴えたるところの公安審査委員会の
決定権に対しまして、これも又一方的に行政の支配者であるところの
総理が牴触するところの権利もまだ残
つておるのであります。このようなことで、司法権の侵害、いわゆる行政権の拡張、或いは又行政権の濫用と即ち私たちは叫んでおるのでありまするが、これが叫ばざるを得ないような実態であるかというようなことにつきまして、委員長は是非とも
一つ報告をしてもらいたい。第五の点は、本法第二條第一項、第二項の訓示的規定に対するところの保障規定、—救済規定の不備に対する政府の
答弁であります。この点は、即ち、学者、文化人及び新聞関係、特に又労働組合におきまして最も痛烈にこの点に対しましては関心を寄せておる問題でありまして、即ち第二條におきましては、憲法の十一條、十二條のこの権利の剥奪はこれはしないというようなことは謳
つておりまするけれども、これに対しまして何にも保障規定がない。ただ謳
つておるだけであります。このようなことで、訓示的な、一方的な即ち規定で、本当に文化人たちのおびえておるところの、いわゆる出版の自由にいたしましても、或いは研究の自由にいたしましても、学者が求めておりますような学問の自由にいたしましても、言論の自由にいたしましても、労働組合が
考えておりますような正常な労働運動の組織的な活動におきましても、組織的な正常な機関の即ち
運営におきましても、この條項で本当に保障せらるるかどうかという点につきまして、委員長はこれを
報告して頂きたい。
第六点は、本法第三條、
暴力主義的破壊活動の定義に対しまして、刑法適用範囲拡大の意義及び実例の例示につきまして、即ち刑法第七十七條内乱の罪、第七十八條内乱の予備、隠謀、又は第七十九條内乱等の幇助に規定する行為及びロ項の教唆又はせん動、ハ項の文書、図画の印刷、頒布、公然掲示又は頒布等、更に二号の「
政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに
反対するため」の行為に対する適用及び罰則に対し、何故に範囲を拡張せねばならないかというような私たちの
質問に対しまして、この重要なる問題に対する政府の
答弁の
報告をお願いしたい。
第七点におきましては、特に第三條のロのせん動及び文書、図画に対する適用は思想統制の危険性が濃厚であるに対しての政府の見解であります。即ちこの思想統制の問題につきましては、これは先ほど私は
一言触れましたが、問題は扇動の即ち実行行動に対する政府の認定であります。この点は一松委員からも特に重要な
発言がありまして、いろいろな形におけるところの扇動の取扱方がこれは提示せられております。政府の見解は、時によればこの問題に対するところの誤ま
つた見解をも言
つておりましたが、問題は、政府が
考えておるところの扇動の実行行為に対するところの問題は一体どうな
つて行くかということについて、政府の見解を、これを是非御
答弁をお願いしたい。
第八点は、第三條第一項二号リ、即ち検察若しくは警察の職務執行に対する刑法第九十五條公務執行妨害、職務強要の適用範囲の拡大と人権蹂躪との関連性に対して、更に適用の実例と職権濫用の制裁規定についての政府の
答弁であります。即ちこれは、第三條の問題は、政党といたしましては重要な問題であります。主義政策を即ち持
つたところの
政治行動に対するこの認定権でありまして、これは治安維持法におきましては遂に
反対党を倒すところの策謀に使われました。今回のこの第三條の問題というものが、将来におきまして
反対党の即ち政策批判に対するこの道具に使用しないかというような、基本的
政治団体としての問題でございますが、これに対するところの政府の
答弁をお願いしたいのであります。
第九は、組合活動の制限と労働運動の抑制について、委員長の
報告は不十分であります。この点については、第五点といたしまして、委員長は、組合活動の正常な即ち運行に対しては、これは濫用しないというようなことを言
つておられまするが、この問題に対しましてはフラク活動の状況というものがあります。この状況は重要でございます。現実のアフタ活動の状況に対して、この破防法というものが、どういうような即ち
態度で臨むかという、この政府のこの問題、或いは第二組合結成の場合におけるところの第一と第二組合の運動の実行が異な
つておる場合におけるところの本法適用の基礎、この問題に対しての重要なる政府の
答弁があ
つておるはずでありますから、この点を委員長は
一つ報告してもらいたい。
次に、宗教団体、新聞、学校、文化団体、研究会、社交団体等、その活動と本法の適用の範囲についてであります。この範囲につきましても、これは重要でございますから、この点も
一つ報告願いたい。
第十一は、警察、特審局の非合法活動防止及び禁止の法的措置でありまして、即ち、スパイ活動や或いはおとり活動、おとり検挙、こういうような状況、或いは情報の提供を求め、情報を買うというようなこと、こういうような即ち警察、特審局の非合法な活動自体に対するところの委員の
質問に対する政府の
答弁を是非お願いをしたい。
団体の規制及び団体の解散によ
つて暴力的破壊活動の根絶の徹底が期せられておるか否かという問題につきますところの政府の
答弁でありますが、これは政府は常に
質問をこの立法の本体に向けて参りますと、日共組織の問題を申して参ります。日共の現われておるところの現実の問題と地下に潜入しておるところの問題とを、これを論じております。地下に潜入しておるところの日共組織に対して、果してこの団体の解散、団体の規制というものが完全に適用して、そうして又こういう
暴力主義的な団体を、これを芟除して行くというような基本的な
考え方が出ておるかどうかという問題が大きな問題でございましようが、この問題に対してはこれは秘密会でも
報告をしております。この状況を
報告していらつしやらない。この状態についての政府の
答弁を
報告してもらいたい。
十三点は、破壊的団体の規制に対する公安調査庁長官の最終的認定権の危険性及び審理官制度の可否でありまして、この点も
総理の
質問の中に一点加えておきましたけれども、問題は審理官のこの審理制度の確立でありましてこれは最も危険な問題であります。今回の法案中におきまして最も危険な問題でありまして調査員が、これが職権濫用で調査して行く、而もその書類は審理官がこれを審査して行く、審理官のこの審査したものを、これを認定によ
つて調査庁長官というものが認定をして公安調査委員会のほうに
提出するのでありましてこの審理官制度の可否につきましては、これは各委員会は多くの
質問を展開しておるのでありますから、これに対して是非
一つ答弁をお願いしたいのであります。
十四点は、本法第六章、罰則の適用が重罪であるということ、即ち刑罰の併科の危険性が非常に多いということ、即ち構成分子に対しても、団体そのものに対しましても刑法を適用して行く、こういうような二重刑罰の方式、併科の状態、これを明記されておるのでありまするが、このような、即ちこれに対するところの
反対の
答弁を是非
報告してもらいたい。
それから国家賠償法適用と本法との関係でありまして、即ちこの国家賠償法適用と本法との関係につきましては、即ち、そういうような職権の濫用を受けた者は、国家賠償法の規定によ
つて公務員に対するところの損害賠償の訴えができないのであります。この法律では……。これに対して政府はどのように
考えておられるのであるか。
まだ私は二十一点に対するところの
質問が委員長にあるのでありまするが、この点に対しましては、第一の
質問時間におきましてはこの点にとどめておきましてあと又再
質問をすることにいたします。要するに、この委員会の審査というものが、これが各委員の熱心なる討議によりましてなされております関係上、これだけぐらいの骨子は、この本案を
審議する上につきまして是非とも必要でございまするから、委員長は、
最後の委員長の責務をお果しになる。歴史におきまして委員長の努力されましたところのこの跡を憲政史上に残されて行かれるという見地に立ちまして、是非委員長は各委員にその義務をお盡しにならんことを特にお願いを申上げたいのであります。
〔国務大臣
吉田茂君
登壇、
拍手〕