○河井彌八君
南方連絡事務局設置法案につきまして、内閣委員会における
審議の経過並びに結果を御
報告申し上げます。
この
法律案の
提出の
理由と
法案の内容の概略を
説明いたします。北緯二十九度以南諸島及び小笠原群島その他の南方諸島は、
平和條約の規定によりまして、信託統治協定が結ばれるまでの間はアメリカ合衆国の管理下に置かれることにな
つておるのであります。これらの地域は元来我が国土の一部でありまして、戦争のときにその戰禍の最も甚だしかつた地域であります。政府は一日も早くこれらの地域との緊密な関係を回復すると共に、その復興に対し、できる限りの力をいたすべきであると考えて、その準備を進めて来ておつたというのであります。去る四月十四日にアメリカ合衆国側から日本政府に招請状が参りまして、渡航、貿易、恩給の支拂、戰沒者遺骨の処理等に当るために、早急に現地機関を設置してはどうかという提案があつたのでありますが、政府はこの以上の情勢に鑑みまして、今回これらの地域に関する事務を処理する機関といたしまして、中央に南方
連絡事務局を設け、現地機関として日本政府南方
連絡事務所を設けるために、この
法律案を
提出いたしたのであります。
この案に規定いたしておりまする主な点は、総理府の附属機関として南方
連絡事務局を設け、渡航、貿易、その他、南方地域に関する事務に関して関係行政官庁の事務の総合調整
連絡等の事務を所掌させることといたし、現地機関といたしましては、日本政府南方
連絡事務所を差当り那覇に一カ所設けまして、その出張所を奄美大島の名瀬に置くことにいたしておるのであります。なお現地の職員の
給與につきましては、その現地の特殊の事情を考慮いしたまして、在勤
手当を支給することといたし、又現地における円滑な事務処理を図るために、現地の
連絡事務所長は、主管事務に関しましては各省大臣の指揮監督を受けることとな
つておるのであります。而してこの
法律は本年七月一日から施行することにな
つておるのであります。
委員会は二回に亘
つて慎重に
本案を
審議いたしました。その結果明らかになつたことを概略申上げます。この
法律に言うところの南方地域には、沖繩、奄美大島、宮古、八重山、小笠原の諸群島、硫黄列島等が含まれておるのでありまして、今日内地からこれらの地域へ渡航いたすためには、旅券の代りに身分証明書の発給を受けることが必要とな
つておるのであります。元小笠原住民であ
つて、現在内地に居留しておる約七千名の人々は、終戦以来郷里へ帰還する熱情が抑えがたく、従来アメリカ側へその衷情を熱心に訴え出ておつたのでありますが、政府委員の
説明によりますれば、この希望の申出に対しましてアメリカ側からはまだ何らの回答に接しておらないということでありました。で、この政府委員の答弁に対しまして、松原委員を初めといたしまして、他の委員諸君からも、「この七千名に及ぶところの元小笠原住民の希望の実現方を、政府は今日まで十分にアメリカ側に対して主張いたさずに放
つておいたかのごとき印象を與えるのであるが、それは極めて遺憾である。なお今後政府の一層の努力を望む。それと同時に、これらの人々に対しましては今後十分な援護の措置をとることが必要である」ということを強く述べられたのであります。で、これに関連いたしまして、小笠原島に現在おりまするところの百三十五名、これは昔この島に渡来いたしましたヨーロツパ人との混血の住民でありますが、それらの人は現在そこにおるのである。然るに終戰直後に日本人系の七千人が内地に送還せられて、それがまだ帰ることができなくて、そのままにあるということは、実に不合理なことである。ソ連に対して
帰還者を要求するというその見地から考えましても、どうしてもこの島民が速かにその故郷の地に帰れることを取計らわなければならんという強い意見でありました。又ソ連その他におりまするところの未
帰還者の家族に対しましても
手当を支給するというようなこともあるけれども、これらの人々は現在の生活状況が悲惨を極めておるのに、何ら適当な手段が講ぜられておらぬということは甚だ不合理なことであるということでありました。こういうことにつきまして各委員から熱心な要望を申し出たのであります。
かようなことでありまして、もう一点申上げますれば、この
連絡事務局の設置に伴いまして二十七名の定員が置かれることとな
つておるりのでありまするが、そのうち六名は外務省からの移し替えによるものでありますから、結局定員の純増加は二十一名となるのであります。
一昨日の内閣委員会におきましては、
本案についての
質疑終了の後に、討論の段階に入りましたところ、鈴木委員から修正案が
発議せられたのであります。その修正案を便宜ここで朗読いたします。
南方連絡事務局設置法案に対する修正案
南方連絡事務局設置法案の一部を次のように修正する。
附則第二項を削り、第四項を第三項とする。
これであります。この修正の
理由といたしまするのは、この
法律案附則第三項は、先に
説明いたしました通り、南方
連絡事務局設置に伴う所要の定員につきまして行政機関職員定員法の一部を
改正する規定でありまするが、この第三項によ
つて改正せんとする定員法は、本委員会において目下
審議中の行政機関職員定員法の一部を
改正する
法律案であるのでありまして、
〔
議長退席、副
議長着席〕
この
法律案で定めんとしておるところの定員数を基準にいたしまして定員を
改正するのは失当であるから、この項を削りまして、南方
連絡事務局所要の定員の
改正は、只今申上げましたところの行政機関職員定員法の一部を
改正する
法律案の一部に修正を加えてこれをなすことが適当であると認めたのであります。かようにいたしまして、楠見委員から修正案を含めて
本案に
賛成するという
発言がありました。
最後にこの案につきまして採決をいたしましたところが、只今申しました鈴木委員の修正を入れまして
全会一致を以て可決すべきものと議決いたした次第であります。(
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